説明

イソチオシアネート類含有組成物、食品、食品素材、医薬品、化粧品および日用品雑貨類。

【課題】カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用ならびにインスリン様成長因子−1(IGF−1)の分泌促進作用を呈する組成物を提供。
【解決手段】イソチオシアネート類と、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌の群から選択される少なくとも一種とを組み合わせて含有し、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用ならびにインスリン様成長因子−1(IGF−1)の分泌促進作用を呈することで、各種疾患の予防、QRLの向上、美容等に寄与する組成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用、ならびにインスリン様成長因子−1(IGF−1)の分泌促進作用を呈し、各種疾患、例えば高血圧、肥満などの生活習慣病、認知症やうつ病などの予防、QOLの向上、美容を目的とするイソチオシアネート類含有組成物、食品、食品素材、医薬品、および化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、生活習慣や食生活の変化、社会的なストレスの増加により、各種疾患が問題となっている。例えば、高血圧、肥満などの生活習慣や、認知症、うつ病などが挙げられる。これらは、医療費増加や少子高齢化の問題もあり、副作用のある医薬品での治療にたよるのではなく、生活習慣や食生活における予防、再発防止が望まれる。
【0003】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、ホルモンであるカルシトニンと構造が非常に類似した37個のアミノ酸からなるペプチドで、この遺伝子はカルシトニン遺伝子と同じ遺伝子上にあり、そのオルタナティブ・スプライシングにより生成される。
【0004】
CGRPは、血管拡張作用、骨芽細胞の増殖、また破骨細胞の活性化抑制、食欲の抑制、さらにHFkBの活性化を抑制して、TNF−αの産生抑制や癌細胞のアポトーシスを促進する。また、CGRP血管内皮細胞に作用することにより、NOや、PGIなどのプロスタグランジンの産生が亢進するが、これらの物質は、血流増加作用に加えてTNF−α産生抑制作用を発揮する。
【0005】
さらに、CGRPは、循環器系にも重要な作用をおよぼすことが知られており、全身の血管拡張作用、陽性変時および変力作用、NaClの体外排泄作用、冠血管拡張作用、および腎血流増加作用などを有している。
【0006】
さらにCGRPは肝臓ならびにすべての組織においてインスリン様成長因子の産生を促進することが明らかになっている(以上非特許文献1から4参照)。
【0007】
インスリン様成長因子−1(insulin-like growth factor-1)(IGF−1)はインスリンに非常に似た構造および作用を持つ分子量約7500のペプチドホルモンである(例えば、非特許文献5参照)。IGF−1は細胞の分化を促し、細胞の増殖を助ける等、積極的に細胞を健康な状態に維持することが知られている(例えば、非特許文献6、7、8参照。)
【0008】
近年、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用を有する可食性組成物として、カプサイシンによるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの放出促進作用と、イソフラボンによるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生促進作用を組み合わせた胃粘膜障害、生活習慣病、肥満、悪性腫瘍および骨粗鬆症の予防および治療用、臓器移植拒絶反応軽減用、感染等の侵襲要因に対する生体侵襲反応に伴う臓器障害の予防と軽減用、さらには育毛用の、可食性組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
アブラナ科植物に多く含まれることで知られているイソチオシアネート類は、その生理活性が数例報告されている。しかし、イソチオシアネート類がCGRPおよびIGF−1の分泌を促進させる等の言及はなく、またアブラナ科植物やイソチオシアネート類とCGRP、IGF−1との関係を示唆する記載も認められない。
【0010】
IGF−1分泌促進作用のある食品成分、または数種類の食品成分によるIGF−1分泌促進作用については上記のように報告されている。しかしながら、これらの成分は刺激を有する成分である場合もあり、また単一の成分を日常的に多量に摂取することは難しい。栄養学的な見地からも、できるだけ多数の食品、または食品成分を摂取することが望まれる。
【非特許文献1】岡嶋研二著「生体浸襲と疾患−重症敗血症から生活習慣病まで」 現代医療社、2003年
【非特許文献2】Harada N. et al. Am.J.Physiol. Gastrointest. Liver. Physiol. 2003 Jul 31
【非特許文献3】Vignery A. et al. Bone 1996 Vol.18 No.4 331-335
【非特許文献4】Philpott MP. et al. J. Invest. Dermatol. 1994 Vol.102 No.6 857-861
【非特許文献5】グッドマン・ギルマン薬理書[下]薬物治療の基礎と臨床−第 10版−;第61章インスリン、経口血糖降下薬と脾臓内分泌の 薬理学2003、p2144監訳:高折 修二、福田 英臣、赤池 昭紀 東京廣川書店発行
【非特許文献6】Corn K J. et al. J. Biol. Chem. 1996 Vol.271 No.46 28853- 28860
【非特許文献7】Braham C. et al. Dermatology 2002 Vol.20 No.4 325-329
【非特許文献8】Roubenoff R. et al. Am.J.Med. 2003 Vol.115 No.6 501-502
【特許文献1】特開2005−68129公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の課題は、上述の各種疾患の予防、またはQOLの向上、美容を目的としたCGRPおよびIGF−1分泌促進作用を呈する組成物、食品、食品素材、医薬品および化粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するため、本発明の組成物によれば、イソチオシアネート類と、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌の群から選択される少なくとも一種とを組み合わせて含有し、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用またはインスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈することを特徴とする。
【0013】
さらに上述の課題を解決するため、本発明の食品、食品素材、医薬品および化粧品によれば、イソチオシアネート類と、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌の群から選択される少なくとも一種とを組み合わせて含有し、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用またはインスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明はイソチオシアネート類と、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌の群から選択される少なくとも一種とを組み合わせて含有せしめ、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用ならびにインスリン様成長因子−1(IGF−1)の分泌促進作用を呈するようにしたから、各種疾患の予防、QOLの向上、美容等の効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に詳述する。
【0016】
本発明の組成物は、先にも述べたように、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌からなる群から選ばれた少なくとも一つと、イソチオシアネート類との組み合わせを特徴とするものであり、これら各成分を必須成分として含有するものである。このような構成によって、カルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生および放出が著明に促進され、IGF−1の分泌が促進されるようになる。ここで、必須成分とは、任意成分に対するものであって、構成上必ず含有される成分のことをいい、量的な制約は受けない。
【0017】
本発明に用いられるイソチオシアネート類は、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルへキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフィニルへプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、第2級ブチルイソチオシアネート、3−ブテニルイソチオシアネート、4−ペンテニルイソチオシアネート、5−ヘキセニルイソチオシアネート、5−メチルチオペンチルイソチオシアネート、6−メチルチオへキシルイソチオシアネート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8−メチルチオオクチルイソチオシアネート、β−フェネチルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、およびフェネチルイソチオシアネート等が挙げられ、これらを単独で、あるいは複数種を組み合わせて使用される。ただし、本発明で使用できるイソチオシアネート類は、上記の化合物に限定されるものではなく、イソチオシアネート類全てが原料として使用できる。
【0018】
上述のイソチオシアネート類は、化学的に合成されたものにおいても有効であり、その合成法、起源物質により効果に違いは無く、本発明には全く影響をおよぼすものではない。
【0019】
イソチオシアネート類の化学合成法を具体的に説明すると、以下のとおりである。
【0020】
原理的にはKiaer等の方法にしたがう。(Kiaer etal. Acta Chem. Scand, 11, 1298, 1957年)。出発物質としてω−クロロアルケノールを用い、CH−SNaと還流してω−メチルチオアルケノールを得、これにSOClを作用させてω−クロロアルケノールメチルサルフアイドを得る。
【0021】
次にガブリエル法を用いてアミノ基を導入し、N−(ω−メチルチオアルキル)−フタルイミドを生成し、これらにヒドラジン水化物を加えて還流し、ω−メチルチオアルキルアミンを得る。さらに、Li等の方法(Lietal. J. Org. Chem., 62, 4539, 1997年)にしたがい、ラウチムジスルフィドを経て得られたω−メチルチオアルキルイソチオシアネートをmCPBAでメチルチオ基を酸化し、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネートを得る。
【0022】
本発明において、イソチオシアネート類はアブラナ科植物を主として天然資源より得ることができる。また、その方法としては粉砕またはすりおろし処理、溶媒による抽出処理、乾燥処理を単独または組み合わせ処理が挙げられるが、本発明に関して、その方法は一切限定されるものではない。
【0023】
上述のイソチオシアネート類を含む原料としては以下のようなものが挙げられる。例えば、バティス科(Bataceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、ブレッシュネイデラ科(Bretschneideraceae)、フウチョウソウ科(Capparaceae)、パパイア科(Caricaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、ギロステモン科(Gyrostemonaceae)、リムナンテス科(Limnanthaceae)、ワサビノキ科(Moringaceae)、ペンタディプランドラ科(Pentadiplandraceae)、ヤマゴボウ科(Phytolaccaceae)、トベラ科(Pittosporaceae)、モクセイソウ科(Resedaceae)、サルウァドラ科(Salvadoraceae)、トウァリア科(Tovariaceae)、ノウゼンハレン科(Tropaeolaceae)、の植物、例えば、Batis maritima(和名不詳)、本わさび(Wasabia japonica)、西洋わさび(Armoracia rusticana)、からし(Brassica juncea)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ナズナ(Capsella bursa-pastoris)、クレソン(Nasturtium officinale)、Bretschneidera sinensis(和名不詳)、ケッパー(Capparis spinosa)、パパイア(Carica papaya)、Drypetes roxburghii(別名);Putranjiva roxburghii(和名不詳)、Tersonia brevipes(和名不詳)、Limnanthes douglasii(和名不詳)、ワサビノキ(Moringa oleifera)、Pentadiplandra brazzeana(和名不詳)、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)、Bursaris spinosa var.incana(和名不詳)、シノブモクセイソウ(Reseda alba)、
Salvadora persica(和名不詳)、Tovaria pendula(和名不詳)、キンレンカ(Tropaeolum majus)等が使用できる。ただし、本発明で使用できるイソチオシアネート類は、上記の植物種から得られるものに限定されるものではなく、イソチオシアネート類を含有する全ての天然資源が原料として使用できる。
【0024】
一方、本発明に用いるイソフラボンの由来は、特に限定されるものではなく、例えば、大豆種子、葛根およびそれらを用いた食品などが挙げられる。なかでも大豆の胚軸にはイソフラボンが多量に含まれるため都合が良い。また、納豆などの食品を用いることも可能である。
【0025】
上記イソフラボンには、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ダイズイン、ゲニスチン、グリシチン、6”−O−マロニルダイズイン、6”−O−マロニルゲニスチン、6”−O−マロニルグリシチン、6”−O−アセチルダイズイン、6”−O−アセチルゲニスチン、6”−O−アセチルグリシチンや納豆にみられる6”−O−サクシニルダイズイン、6”−O−サクシニルゲニスチン、6”−O−サクシニルグリシチンおよびプェラリンなどが含まれる。なお。上記の各種イソフラボンは、本発明において、単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0026】
濃度の高いイソフラボンを使用するため大豆や大豆食品、大豆胚軸、葛根なだの抽出物やその精製物を用いることも可能である。イソフラボンを抽出する溶媒は、特に限定されるものではないが、水またはエタノールなどのアルコールを用いるのが好ましい。また、精製の方法は、合成吸着剤やイオン交換樹脂、限外ろ過などを使用することが可能であるが、特に限定されるものではない。抽出液または精製液は、そのまま使用しても良いが、それらを濃縮した濃縮液、もしくは、抽出液または精製液を乾燥したあと粉末化したものを使用しても良い。
【0027】
本発明に用いるラズベリーケトンは、特に限定されるものではないが、採取が容易で、かつ安全性等の観点から、ラズベリー由来のラズベリーケトンを用いることが望ましい。また、本発明に用いるカプシエイトも、特に限定されるものではないが、採取が容易で、かつ安全性等の観点より、唐辛子から選抜育種された品種「CH−19甘」を用いることが望ましい。
【0028】
なお、上記ラズベリーケトンおよびカプシエイトは、ラズベリーや、上記特定の唐辛子品種を粉砕、粉末化したものをそのまま使用することもできるが、濃度の高いラズベリーケトンやカプシエイトを用いるため、その抽出物やその精製物を用いることも可能である。ラズベリーケトンやカプシエイトを抽出する溶媒は、特に限定されるものではないが、水またはエタノールなどのアルコールを用いるのが好ましい。また、精製の方法は、合成吸着剤やイオン交換樹脂、限外ろ過などを使用することが可能であるが、特に限定されるものではない。抽出液または精製液は、そのまま使用しても良いが、それらを濃縮した濃縮液、もしくは、抽出液または精製液を乾燥したあと粉末化したものを使用しても良い。
【0029】
また、本発明で使用しているカプシエイトは、カプサイシンを使用してもよいし、一般的に栽培されている品種の唐辛子またはその抽出物を使用してもよいが、摂取した際、生体への刺激が強く、長期的、日常的に全ての人が利用することは難しい。よって刺激の少ないとされているカプシエイトを利用することが望ましい。
【0030】
本発明に用いるグルコン酸は、特に限定されるものではないが、摂取が容易でかつ安全性等の観点から、蜂蜜もしくはローヤルゼリー由来のグルコン酸を用いることが望ましい。その他には味噌、酢などを利用しても良い。さらに、本発明に用いるクロロゲン酸も、特に限定されるものではないが、採取が容易でかつ安全性等の観点から、コーヒー豆由来のクロロゲン酸を用いることが望ましい。
【0031】
なお、上記グルコン酸およびクロロゲン酸は、蜂蜜やローヤルゼリー、コーヒー豆を粉砕、粉末化したものをそのまま使用することもできるが、濃度の高いグルコン酸やクロロゲン酸を用いるため、その抽出物やその精製物を用いることも可能である。グルコン酸やクロロゲン酸を抽出する溶媒は、特に限定されるものではないが、水またはエタノール等のアルコールを用いることが好ましい。また、精製の方法は、合成吸着剤やイオン交換樹脂、限外ろ過等を使用することが可能であるが、特に限定されるものではない。抽出液または精製液は、そのまま使用してもよいが、それらを濃縮した濃縮液、もしくは、抽出液または精製液を乾燥したあと粉末化したものを使用してもよい。
【0032】
本発明で用いるグルコン酸は、グルコン酸塩として、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸銅、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、およびグルコン酸マンガン、などを用いることも可能である。
【0033】
本発明で用いるカカオポリフェノールは、カカオを使用した食品、例えばチョコレートやココアなどより摂取することもできる。また、濃度の高いカカオポリフェノールを用いるため、その抽出物やその精製物を用いることも可能である。カカオポリフェノールを抽出する溶媒は、特に特に限定されるものではないが、水またはエタノール等のアルコールを用いることが好ましい。また、精製の方法は、合成吸着剤やイオン交換樹脂、限外ろ過等を使用することが可能であるが、特に限定されるものではない。抽出液または精製液は、そのまま使用してもよいが、それらを濃縮した濃縮液、もしくは、抽出液または精製液を乾燥したあと粉末化したものを使用してもよい。
【0034】
本発明で用いる八丁味噌は、愛知県岡崎市を中心に作られている。豆味噌を2年以上熟成させていることを特徴とするものである。八丁味噌そのものを摂取してもよいし、八丁味噌を利用し調理した味噌汁など各種加工食品を摂取しても良い。また八丁味噌の抽出物を利用しても良い。抽出する溶媒は、特に限定されるものではないが、水またはエタノール等のアルコールを用いることが好ましい。また、精製の方法は、合成吸着剤やイオン交換樹脂、限外ろ過等を使用することが可能であるが、特に限定されるものではない。抽出液または精製液は、そのまま使用してもよいが、それらを濃縮した濃縮液、もしくは、抽出液または精製液を乾燥したあと粉末化したものを使用してもよい。
【0035】
本発明の組成物は、上述のようにして得られたイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌の少なくとも一つと、イソチオシアネート類とを必須成分とするものであり、これらを混合したものをそのまま直接使用してもいが、一般には、これらを、適当な液状担体に溶解あるいは分散させたり、適当な粉末担体に混合させたものを使用する。
【0036】
そして、上記イソチオシアネート類が有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では0.0001〜0.5重量%(以下、「%」と略す)の範囲であると好適であり、粉剤の場合は0.001〜20%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.001〜10%の範囲であると好適である。イソフラボンが有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では0.001〜0.5重量%(以下、「%」と略す)の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.01〜80%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.01〜40%の範囲であると好適である。他方、上記ラズベリーケトンが有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では0.05〜20%の範囲であると好適であり、粉剤の場合は0.05〜100%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.05〜100%の範囲であると好適である。
【0037】
また、上記カプシエイトが有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では0.0001〜0.05%の範囲であると好適であり、粉剤の場合は0.0001〜5%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.0001〜5%の範囲であると好適である。
【0038】
さらに、上記グルコン酸が有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では0.05〜10%の範囲であると好適であり、粉剤の場合は0.05〜20%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.05〜10%の範囲であると好適である。
【0039】
また、上記クロロゲン酸が有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では0.05〜20%の範囲であると好適であり、粉剤の場合は0.05〜10%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.05〜10%の範囲であると好適である。また、上記カカオポリフェノールが有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では0.5〜20%の範囲であると好適であり、粉剤の場合は0.5〜10%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は0.5〜10%の範囲であると好適である。
【0040】
また、上記八丁味噌が有効成分となり得るための含有量は、通常、液剤では10〜100%の範囲であると好適であり、粉剤の場合は20〜50%の範囲であると好適であり、粒剤の場合は20〜50%の範囲であると好適である。
【0041】
そして、本発明においては、上記イソチオシアネート類と、上記イソフラボン等(イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、八丁味噌)との割合が重要であり、イソチオシアネート類:イソフラボン=1:1〜1:1000の重量比で含有していると好ましく、より好ましくは、イソチオシアネート類:イソフラボン=1:10〜1:500の重量比の範囲である。また、イソチオシアネート類:ラズベリーケトン1:1〜1:10000の重量比で含有していると好ましく、より好ましくは、イソチオシアネート類:ラズベリーケトン1:100〜1:6000の重量比の範囲である。また、イソチオシアネート類:カプシエイト=100:1〜1:100の重量比で含有していると好ましく、より好ましくは、イソチオシアネート類:カプシエイト=20:1〜1:20の重量比の範囲である。
【0042】
さらに、イソチオシアネート類:グルコン酸=10:1〜1:1000の重量比で含有していると好ましく、より好ましくは、イソチオシアネート類:グルコン酸=1:1〜1:200の重量比の範囲である。
【0043】
また、イソチオシアネート類:クロロゲン酸=10:1〜1:1000の重量比で含有していると好ましく、より好ましくは、イソチオシアネート類:クロロゲン酸=1:1〜1:200の重量比の範囲である。さらに、イソチオシアネート類:カカオポリフェノール=10:1〜1:2000の重量比で含有していると好ましく、より好ましくは、イソチオシアネート類:カカオポリフェノール=1:40〜1:400の重量比の範囲である。また、イソチオシアネート類:八丁味噌=1:10〜1:50000の重量比で含有していると好ましく、より好ましくは、イソチオシアネート類:八丁味噌=1:600〜1:6000の重量比の範囲である。すなわち、このような割合で双方が含有していると、双方の相乗効果により、本発明において要求されるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生および放出促進作用が効果的に得られるようになるからである。なお、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌は、上記範囲内において併用することも可能である。
【0044】
本発明の可食性組成物は、人間のみでなく、ペットや家畜等の動物においても、人間に投与した際にみられる前述の作用効果と同様の作用効果が期待されるものである。そして、その投与量は投与対象とする生物の違い、前述の各種作用効果のうちのいずれを得ることを目的とするのかといった違い、投与される者の性別、体重、年齢等の条件に応じて適宜設定される。例えば、成人に対しては上記イソフラボン等とイソチオシアネート類との混合物を1日あたり10〜5000mgとなるよう、数回に分けて投与することができる。また、ペットや家畜等の動物においては、動物用飼料に上記混合物を0.001〜5%の範囲で含有させ、1日当たり1〜5000mg/kg体重の範囲となるよう投与するのが好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、それ単独で摂取することも可能であるが、各種飲食品あるいは医薬品に添加して使用することもできる。具体的には、清涼飲料水、茶飲料、ドリンク剤、アルコール飲料等の液体食品、果子、パン類、麺類、調味料等の固形食品、粉末状、顆粒状、カプセル状、錠剤等の医薬品・医薬部外品等に添加する。
【0046】
本発明の組成物は、含有するイソチオシアネート類の香りを嗅ぐことまたは揮発したイソチオシアネート類に曝露することによっても、経口摂取した場合や塗布した場合と全く同様の効果を得ることが可能である。具体敵意にはアロマオイル、芳香剤、香水の日用品、香粧品類、香料または繊維や樹脂などに配合し、成分を揮発させることにより利用できる。
【0047】
本発明において、揮発させたイソチオシアネートに曝露する場合、その濃度は限定されないが、人が認識できる程度から刺激や不快感のない程度に収めることが望ましい。またその濃度と効果には特に関係がない。
【0048】
本発明において、アロマオイル、芳香剤、香水等の日用品、香粧品類、香料または繊維や樹脂などに配合し、イソチオシアネート類を揮発させて利用する場合、その他に配合する香気成分、香料などは自由に選択でき、その効果に悪影響をおよぼすことはない。使いやすい好みの香りに調合するなどして利用できる。
【0049】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【実施例1】
【0050】
〔試験例1〕
イソチオシアネート類投与によるマウス各臓器のIGF−1、CGRP濃度変化
16群にわけた6−8週齢のC57BL/6マウス(雄、各群5匹)に対し、標準食にくわえ試験品を投与した。4週間投与後、麻酔下に採取した各種臓器は1Nの酢酸溶液につけてホモジネートし、遠心分離後上清中のIGF−1濃度を測定した。また、血液も採取して、血漿中のIGF−1濃度およびCGRP濃度を測定した。マウスの脳および血漿中IGF−1、CGRP濃度を表1に示した。イソチオシアネート類は、実施例においては6−メチルスルフィニルへキシルイソチオシアネート(以下、6−MSITCと略す)を利用した。
【0051】
ここで、上記16群は、投与した飼料等から、6−MSITC(MS)投与群、イソフラボン(IS)投与群、6−MSITC+イソフラボン(MS+IS)投与群、ラズベリーケトン(RA)投与群、6−MSITC+ラズベリーケトン(MS+RA)投与群、カプシエイト(CE)投与群、6−MSITC+カプシエイト(MS+CE)投与群、グルコン酸(GA)投与群、6−MSITC+グルコン酸(MS+GA)投与群、クロロゲン酸(CA)投与群、6−MSITC+クロロゲン酸(MS+CA)投与群、カカオポリフェノール(CP)投与群、6−MSITC+カカオポリフェノール(MS+CP)投与群、八丁味噌(HM)投与群、6−MSITC+八丁味噌(MS+HM)投与群、非投与群(標準食のみ。対照群)のいずれかに属する。
【0052】
すなわち、各群は標準食に加え、MS投与群では、6−MSITCを0.1mg/kg/day投与。IS投与群では、イソフラボンを50mg/kg/day投与。RA投与群では、ラズベリーケトンを400mg/kg/day投与。CE投与群では、カプシエイトを0.1mg/kgの投与。GA投与群では、グルコン酸を1mg/kg/day投与。CA投与群では、クロロゲン酸を1mg/kg/day投与。CP投与群では、カカオポリフェノールを50mg/kg/day投与。HM投与群では、八丁味噌を600mg/kg/day投与。さらに、これらの組み合わせにより、MS+IS投与群、MS+RA投与群、MS+CE投与群、MS+GA投与群、MS+CA投与群、MS+CP投与群、MS+HM投与群の飼育を行った。
【0053】
【表1】

【0054】
この結果より、6−MSITCを摂取することによりIGF−1とCGRPの分泌が促進することが示され、さらにイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノールおよび八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCの併用によりその作用が強まることが確かめられた。
【実施例2】
【0055】
〔試験例2〕
イソチオシアネート類による学習機能の向上作用
16群にわけたマウス(各群5匹)に対し、4週間標準食に加え試験品を投与したのち、モーリス水迷路試験を5日間行い、学習機能に対する影響を評価した。
【0056】
ここで、上記16群は、投与した飼料等から、6−MSITC(MS)投与群、イソフラボン(IS)投与群、6−MSITC+イソフラボン(MS+IS)投与群、ラズベリーケトン(RA)投与群、6−MSITC+ラズベリーケトン(MS+RA)投与群、カプシエイト(CE)投与群、6−MSITC+カプシエイト(MS+CE)投与群、グルコン酸(GA)投与群、6−MSITC+グルコン酸(MS+GA)投与群、クロロゲン酸(CA)投与群、6−MSITC+クロロゲン酸(MS+CA)投与群、カカオポリフェノール(CP)投与群、6−MSITC+カカオポリフェノール(MS+CP)投与群、八丁味噌(HM)投与群、6−MSITC+八丁味噌(MS+HM)投与群、非投与群(標準食のみ。対照群)のいずれかに属する。
【0057】
すなわち、各群は標準食に加え、MS投与群では、6−MSITCを0.1mg/kg/day投与。IS投与群では、イソフラボンを50mg/kg/day投与。RA投与群では、ラズベリーケトンを400mg/kg/day投与。CE投与群では、カプシエイトを0.1mg/kg投与。GA投与群では、グルコン酸を1mg/kg/day投与。CA投与群では、クロロゲン酸を1mg/kg/day投与。CP投与群では、カカオポリフェノール50mg/kg/day投与。HM投与群では、八丁味噌を600mg/kg/day投与。さらに、これらの組み合わせにより、MS+IS投与群、MS+RA投与群、MS+CE投与群、MS+GA投与群、MS+CA投与群、MS+CP投与群、MS+HM投与群の飼育を行った。プラットホームに到達するまでの時間を表2に示した。
【0058】
【表2】

【0059】
この結果より、6−MSITC摂取することにより、学習機能が向上することが確認され、さらにイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCの併用によりその作用が強まることが確かめられた。
【実施例3】
【0060】
〔試験例3〕
6−MSITC投与によるマウス脳における神経再生効果の検定
実施例2終了後、実験に使用したマウスの脳を採取し、神経再生に対する影響を評価した。その際、5−bromo−2−deoxyuridine(Brdu)およびBrdu抗体を用いることにより、新生した神経細胞を検出した。
【0061】
左右の海馬神経細胞層長および神経細胞数を計測し、単位長さ(mm)当たりの個数を算出することによって、組織学的評価を行った。その結果、MS投与群は対照群と比較して有意に新生細胞数が増加していた。またMSと他の試験物質を組み合わせて投与した群ではさらに顕著な増加傾向を示した。例えば、対照群では2.4±0.8個/mmであったのに対し、MS投与群では5.8±1.1個/mmであり、MS+IS投与群では6.7±1.3個/mmであった。
【0062】
この結果より、6−MSITC摂取することにより、神経細胞が再生されることが確認され、さらにイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸クロロゲン酸、カカオポリフェノールおよび八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCの併用によりその作用が強まることが確かめられた。
【実施例4】
【0063】
〔試験例4〕
6−MSITC投与による抗うつ作用の評価
実施例2と同様に16群にわけ、標準食、各試験試料を投与したマウスにおける抗うつ作用への影響をテールサスペンション実験により検討した。体重20−25g、8週齢の雄マウスを使用した。高さ60cmのスタンドに床から35cmの高さで固定した木製クリップにより、マウスの尻尾をはさみ、逆さ吊りした。マウスは最初激しく活動するが、次第に動くことを諦める。サスペンション開始後6分以内の動いていない時間(無働時間)の短縮として、投与した成分の抗うつ効果を評価した。
【0064】
その結果、MS投与群では、対照群と比較して無働時間は有意に30%短縮していた。さらにMSと他の素材を組み合わせて投与した各群では対照群と比較して35%から40%にまで短縮していた。この結果より、6−MSITC摂取することによる、抗うつ効果が示され、さらにイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノールおよび八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCの併用によりその作用が強まることが確かめられた。
【実施例5】
【0065】
〔試験例5〕
卵巣摘出ラットにおける6−MSITCによるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生促進作用と骨粗鬆症に対する効果の検定
17群に分けた80日齢のSD系雌ラット(1群あたり5匹。なお、上記21群の20群は、卵巣摘出がなされた、摘出後10日目のラット)に標準食〔カルシウム欠乏飼料(Ca:0.004%、P:0.3%)〕等を投与して、28日間飼育した。その後、1晩(18時間)絶食させ、全群のラットを屠殺し、そこから大腿骨を摘出した。
【0066】
卵巣を摘出した16群には、後記の表3に示すように、上記絶食前に投与した飼料等から、6−MSITC(MS)投与群、イソフラボン(IS)投与群、6−MSITC+イソフラボン(MS+IS)投与群、ラズベリーケトン(RA)投与群、6−MSITC+ラズベリーケトン(MS+RA)投与群、カプシエイト(CE)投与群、6−MSITC+カプシエイト(MS+CE)投与群、グルコン酸(GA)投与群、6−MSITC+グルコン酸(MS+GA)投与群、クロロゲン酸(CA)投与群、6−MSITC+クロロゲン酸(MS+CA)投与群、カカオポリフェノール(CP)投与群、6−MSITC+カカオポリフェノール(MS+CP)投与群、八丁味噌(HM)投与群、6−MSITC+八丁味噌(MS+HM)投与群、非投与群(標準食のみ。対照群)のいずれかに属する。
【0067】
すなわち、各群は標準食に加え、MS投与群では、6−MSITCを0.1mg/kg/day投与。IS投与群では、イソフラボンを50mg/kg/day投与。RA投与群では、ラズベリーケトン400mg/kg/day投与。CE投与群では、カプシエイトを0.1mg/kg投与。GA投与群では、グルコン酸を1mg/kg/day投与。CA投与群では、クロロゲン酸1mg/kg/day投与。CP投与群では、カカオポリフェノールを50mg/kg/day投与。HM投与群では、八丁味噌を600mg/kg/day投与。さらに、これらの組み合わせにより、MS+IS投与群、MS+RA投与群、MS+CE投与群、MS+GA投与群、MS+CA投与群、MS+CP投与群、MS+HM投与群の飼育を行った。
【0068】
そして、上記17群、すなわち、正常群(卵巣摘出なし)と対照群(卵巣摘出)と15の試験群(卵巣摘出+6−MSITC等の投与)から摘出された大腿骨をもとに、その湿重量を測定するとともに、ピクノメーターによりその体積を測定し、骨密度を算出した。また、骨組織のカルシトニン遺伝子関連ペプチド濃度(CGRP)の測定も行った。これらの結果を、下記の表3に併せて示す。なお、各データは、それぞれの群での平均値を示すものである。
【0069】
【表3】

【0070】
上記表3の結果より、6−MSITCを摂取することは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生および放出を促進し、骨粗鬆症を予防および治療しうること、さらにイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノールおよび八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCの併用によりその作用が強まることが確かめられた。
【実施例6】
【0071】
〔試験例6〕
脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHR−SP)における6−MSITC投与によるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生促進作用と高血圧に対する効果の検定
18周齢の雄性SHRSP/1zmラットを、実施例2と同様に、1グループ5匹の16グループにわけ、グループ1から15には標準食に加え各試験試料を投与グループ16は対照群とした。
【0072】
そして、投与50日目の尾部血圧測定を行った。その結果、MS投与群(248±6.3mmHg)では対照群(281±5.2mmHg)に比べ有意に血圧が低下していた。さらにMS+各試験食を組み合わせた群では、より顕著な血圧低下傾向を示した。
【0073】
上記の結果より、6−MSITCを摂取することは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生および放出を促進すれため、高血圧に対して効果があることがわかる。さらに、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノールおよび八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCの併用によりその作用が強まることが確かめられた。
【実施例7】
【0074】
〔試験例7〕
イソフラボンとカプサイシンによる毛包中のカルシトニン遺伝子関連ペプチドおよびインスリン様成長因子の産生促進作用と育毛効果の検定
3周齢で購入したC3H/He系マウスを、ランダムに1グループ10匹とし16グループに分け、1週間の馴化飼育後、グループ1は、6−MSITCの摂取量が0.1mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。グループ2は、イソフラボン(IS)の摂取量が40mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。グループ4では、ラズベリーケトン(RA)の摂取量が600mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。グループ6では、カプシエイト(CE)の摂取量が1mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。グループ8では、グルコン酸(GA)の摂取量が4mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。グループ10では、クロロゲン酸(CA)の摂取量が3mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。グループ12では、カカオポリフェノール(CP)の摂取量が200mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。グループ14では、八丁味噌(HM)の摂取量が600mg/kg体重/dayとなるように調製した飼料で飼育した。また、グループ3、5、7、9、11、13、15では、これら飼育方法の組み合わせ(下記の表4に示す組み合わせ)により、飼育した。グループ16は、対照群とした。そして、6周齢で毛刈りを行い、その後の発毛の状況を観察した。
【0075】
すなわち、試験飼料の摂取開始後40日以内に毛の再生が完了したマウスの数の測定を行った。この結果を、下記の表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
上記表4の結果より、6−MSITCを育毛効果のあることが認められた。さらにイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノールおよび八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCの併用によりその作用が強まることが確かめられた。また、毛包中のカルシトニン遺伝子関連ペプチドおよびインスリン様成長因子の量を測定した結果、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCを同時に与えたグループが他のグループと比較して有意に多いことがわかった。
【実施例8】
【0078】
〔試験例8〕
ヒトに対する育毛効果
脱毛、薄毛の悩みを持っているボランティア男性(30〜50歳)を対象とし、1グループ5人の計16グループにわけた。そして、そのうちのグループ1では、6−MSITC(MS)を含む錠剤の投与により1日1mgの6−MSITCを摂取させ、グループ2では、イソフラボン(IS)を含む錠剤の投与により1日50mgのイソフラボンを摂取させた。グループ4ではラズベリーケトン(RA)を含む錠剤の投与により1日600mgのラズベリーケトンを摂取させた。グループ6ではカプシエイト(CE)を含む錠剤の投与により1日2mgのカプシエイトを摂取させた。グループ8ではグルコン酸(GA)を含む錠剤の投与により1日100mgのグルコン酸を摂取させた。グループ10ではクロロゲン酸(CA)を含む錠剤の投与により1日100mgのクロロゲン酸を摂取させた。グループ12ではカカオポリフェノール(CP)を含む錠剤の投与により1日600mgのカカオポリフェノールを摂取させた。グループ14では八調味噌(HM)を1日5000mg摂取させた。またグループ3、5、7、9、11、13、15には表5に示すようなこれらの組み合わせで摂取させた。なお、グループ16には擬似錠剤を摂取させた。これを6ヶ月にわたって行った。
【0079】
次に、上記試験中(試料を摂取する前、3ヶ月摂取後、および6ヶ月摂取後)に採取しておいた抜け毛の本数を測定し、抜け毛改善効果の評価を行った。なお、上記抜け毛の測定方法は、4日間の連続洗髪を行い、後半3日間の抜け毛をメッシュの微細な不織布で採取し、その本数を計数し、行った。そして、上記評価の判定は、試料採取前に対する各々の時期における抜け毛本数の変化から次のように示した。
+++:抜け毛本数が30本以上減っており、著しい効果が認められた。
++:抜け毛本数が20本以上減っており、かなりの効果が認められた。
+:抜け毛本数が10本以上減っており、わずかな効果が認められた。
±:抜け毛本数の減少が10本未満もしくは増加しており、効果が殆ど認められな かった。
【0080】
【表5】

【0081】
上記表5の結果より、6−MSITCを単独でまたはイソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCを組み合わせて摂取した場合では、擬似錠剤を摂取したグループに比べ、抜け毛の改善効果が認められた。あそして、特に6−MSITCとイソフラボンまたはローヤルゼリーとを同時に摂取させたグループでは、抜け毛に対して著明な改善効果が認められた。
【実施例9】
【0082】
〔試験例9〕
イソチオシアネートル類含有ローションによる皮膚IGF−1産生促進作用の検定
4群に分けたヘアレスマウス(各群5匹)のうち3群に対して、6−MSITC0.001%、0.01%、0.1%の各濃度を含有したローションを塗布し、30分後の表皮組織および真皮組織中のIGF−1濃度を測定した。また残りの1群をコントロール群として、6−MSITCを含まないローションを塗布して同様の測定を行った。この結果を表6に示す。
【0083】
【表6】

【0084】
表6の結果より、6−MSITCを0.001%あるいは0.01%含有するローションの塗布により、表皮および真皮中のIGF−1濃度がコントロール群に対して有意に上昇することがわかる。
【実施例10】
【0085】
〔試験例10〕
イソチオシアネート類含有ローション塗布によるヒトに対する育毛効果の検定
脱毛、薄毛の悩みを持っているボランティア男性(30〜50歳)を対象とし、1グループ5人の計9グループにわけた。
【0086】
グループ1から8では、6−MSITCを0.01%含むローションを1日1回、1mlずつ頭皮に塗布させ、さらにグループ2ではイソフラボンを1日50mg錠剤にて摂取、グループ3ではラズベリーケトンを1日600mg錠剤にて摂取させた。グループ4ではカプシエイトを1日2mg錠剤にて摂取、グループ5ではグルコン酸を1日100mg錠剤にて摂取させた。さらにグループ6ではクロロゲン酸を1日100mg錠剤にて摂取、グループ7ではカカオポリフェノールを1日600mg錠剤にて摂取させた。グループ8では八丁味噌を1日5000mg錠剤にて摂取させ、グループ9はコントロール群として、6−MSITCを含まないローションを同様に塗布させ、擬似錠剤を摂取させた。これを6ヶ月にわたって行った。
【0087】
次に上記試験中(ローションの塗布を開始する前、3ヶ月間塗布後、および6ヶ月間塗布後)に採取しておいた抜け毛の本数を測定し、抜け毛改善効果の評価を行った。なお、上記抜け毛の測定方法は、4日間の連続洗髪を行い、後半3日間の抜け毛をメッシュの微細な不織布で採取し、その本数を計数し、行った。そして、上記評価の判定は、ローションの塗布開始前に対する各々の時期における抜け毛本数の変化から次のように表示した。
+++:抜け毛本数が30本以上減っており著しい効果を認めた。
++:抜け毛本数が20本以上減っておりかなりの効果を認めた。
+:抜け毛本数が10本以上減っておりわずかな効果を認めた。
±:抜け毛本数の減少が10本未満もしくは増加しており効果があるとは言えな い。
【0088】
この結果を、下記の表7に示す。
【0089】
【表7】

【0090】
上記表7の結果より、6−MSITCを含有したローションを塗布したグループでは、抜け毛に対して改善効果が認められ、さらにイソフラボン等を同時に摂取させることにより顕著な改善効果が認められた。また、本テストの条件として、使用テスト中に炎症や肌トラブルなどの好ましくはない現象が現れた場合には、速やかにテストを中止すること明記していたが、本テストではこのような好ましくない反応が現れずテスト脱落者はなかった。すなわち、6−MSITCを含有したローションを塗布することで、副作用や悪影響等なく安全に、著明な抜け毛改善効果が得られることが示され、さらにイソフラボン等を同時に摂取することにより、その作用が強化されることが示された。
【実施例11】
【0091】
〔試験例11〕
イソチオシアネート類の曝露による学習機能の向上作用
2群に分けた(各群5匹)に対し、4週間試験品を暴露したのち、モーリス水迷路試験を5日間行い、学習機能に対する影響を評価した。試験品は6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート(6−MTITC)を使用し、対照群には曝露せず、通常の飼育条件とした。6−MTITCはマウスを飼育するケージ内で、市販のアロマオイル用芳香器により揮発させた。
【0092】
この結果、6−MTITCを曝露させた群は、水迷路試験において開始後3日目以降プラットホームに到達するまでの時間が有意に短縮した。これは6−MSITCを摂取させた場合と全く同様の結果であった。このことから、イソチオシアネート類を曝露した場合も摂取した場合と同様の効果が得られることが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の組成物は、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌のうち少なくとも1つと6−MSITCとを必須成分とするものであり、インスリン様成長因子―I誘導する働きを持つカルシトニン遺伝子関連ペプチドの産生を促進することにより、高血圧、認知症、骨粗鬆症を予防および治療する効果を持ち、抗うつ作用、学習機能の向上効果さらには頭髪等の育毛効果を有する。また、作用が穏やかで、副作用がなく、安全性が高い。このような本発明の組成物は、現代の生活において問題となる疾病の予防や治療、あるいは身体的コンプレックスの克服を図る上で、大きく役に立つことが期待される。












































【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソチオシアネート類と、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌の群から選択される少なくとも一種とを組み合わせて含有し、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用またはインスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈することを特徴とするイソチオシアネート類含有組成物。
【請求項2】
請求項1において、イソチオシアネート類が4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルへキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、第2級ブチルイソチオシアネート、3−ブテニルイソチオシアネート、4−ペンテニルイソチオシアネート、5−ヘキセニルイソチオシアネート、5−メチルチオペンチルイソチオシアネート、6−メチルチオへキシルイソチオシアネート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8−メチルチオオクチルイソチオシアネート、β−フェネチルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、およびフェネチルイソチオシアネートの群から選択される一種または複数種である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1において、イソチオシアネート類が化学的に合成され請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1において、イソチオシアネート類がアブラナ科植物の粉砕またはすりおろし処理、溶媒による抽出処理、または乾燥処理を単独で、または組み合わせ処理することにより得られる請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1において、イソチオシアネート類の香りを嗅ぐことにより、インスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1において、揮発したイソチオシアネート類に曝露することにより、インスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
イソチオシアネート類と、イソフラボン、ラズベリーケトン、カプシエイト、グルコン酸、クロロゲン酸、カカオポリフェノール、および八丁味噌の群から選択される少なくとも一種とを組み合わせて含有し、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生および放出促進作用またはインスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈することを特徴とする食品、食品素材または医薬品。
【請求項8】
請求項7において、インスリン様成長因子−1分泌促進作用を呈し、学習機能を向上する請求項7の食品、食品素材または医薬品。
【請求項9】
請求項7において、インスリン様成長因子−1分泌促進作用を呈し、認知症およびパーキンソン病を予防および治療する請求項7の食品、食品素材または医薬品。
【請求項10】
請求項7において、インスリン様成長因子−1分泌促進作用を呈し、うつ病を予防および治療する請求項7の食品、食品素材または医薬品。
【請求項11】
請求項7において、インスリン様成長因子−1分泌促進作用を呈し、骨粗鬆症を治療する請求項7の食品、食品素材または医薬品。
【請求項12】
請求項7において、インスリン様成長因子−1分泌促進作用を呈し、高血圧を予防および治療する請求項7の食品、食品素材または医薬品化粧品。
【請求項13】
請求項7において、インスリン様成長因子−1分泌促進作用を呈し、育毛を施す請求項7の食品、食品素材または医薬品。
【請求項14】
請求項7において、イソチオシアネート類が4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルへキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、第2級ブチルイソチオシアネート、3−ブテニルイソチオシアネート、4−ペンテニルイソチオシアネート、5−ヘキセニルイソチオシアネート、5−メチルチオペンチルイソチオシアネート、6−メチルチオへキシルイソチオシアネート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8−メチルチオオクチルイソチオシアネート、β−フェネチルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、およびフェネチルイソチオシアネートの群から選択される一種または複数種である請求項7に記載の食品、食品素材または医薬品。
【請求項15】
請求項7において、イソチオシアネート類が化学的に合成され請求項7に記載の食品、食品素材または医薬品。
【請求項16】
請求項7において、イソチオシアネート類がアブラナ科植物の粉砕またはすりおろし処理、溶媒による抽出処理、または乾燥処理を単独で、または組み合わせ処理することにより得られる請求項7に記載の食品、食品素材または医薬品。
【請求項17】
請求項7において、イソチオシアネート類の香りを嗅ぐことにより、インスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈する請求項7に記載の食品、食品素材または医薬品。
【請求項18】
請求項7において、揮発したイソチオシアネート類に曝露することにより、インスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈する請求項7に食品、食品素材または医薬品。
【請求項19】
請求項1の組成物または請求項7の食品、食品素材または医薬品を育毛に用い、インスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈する化粧品。
【請求項20】
請求項1の組成物または請求項7の食品、食品素材または医薬品を日用品に用い、イソチオシアネート類の香りを嗅ぐことにより、または揮発したイソチオシアネート類に曝露することにより、インスリン様成長因子−1(IGF−1)分泌促進作用を呈する日用品雑貨類。












【公開番号】特開2010−1282(P2010−1282A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12950(P2009−12950)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(591011007)金印株式会社 (20)
【Fターム(参考)】