説明

イソファゴミンおよびその誘導体を製造する新規な方法

新規なプロセスを用いて、D−(−)アラビノースおよびL−(−)キシロースからイソファゴミンを製造する、イソファゴミン、その誘導体、その中間体および塩を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が、参照により本明細書に援用される2007年5月22日出願の米国特許仮出願第60/939,519号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、医薬組成物として用いられるイソファゴミン、その誘導体およびその塩を製造する新規な方法および中間体を提供する。
【背景技術】
【0003】
イミノ糖は、グリコシダーゼの強力阻害剤である。イソファゴミン系列のアザ糖は、イミノ糖のアノマー中心にあるプロトン化環内窒素と、酵素の触媒求核試薬との間に強い静電相互作用を形成するため、配置保持型β−グリコシダーゼの阻害剤である。この阻害剤は、グリコシド結合の加水分解における遷移状態を模倣する。IFGとしても知られているイソファゴミン、(3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルピペリジンは、糖尿病の治療用肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤として有効であろうことを期待して合成された1つのグリコシダーゼ阻害剤である(参照により本明細書に援用されるSierksらによる特許文献1およびLundgrenらによる特許文献2参照)。
【0004】
酒石酸IFG、その製造およびゴーシェ病の治療のためのその使用もまた、参照により本明細書に援用される特許文献3に記載されている。
【0005】
IFGおよびIFG誘導体
IFGおよび/またはN−アルキル化IFG誘導体は、Sierksによる特許文献1、Lundgrenによる特許文献2およびKristiansenらによる特許文献4、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12および最近の非特許文献13に記載されている。L立方異性体の合成は、非特許文献14に記載されている。この段落の参考文献は全て、参照により本明細書に援用される。
【0006】
簡潔に述べると、Jespersenが、最初に、1,6:2,3−ジアンヒドロ−4−O−ベンジル−β−D−マンノピラノースから出発する6工程の合成によるIFGの合成について記述した。この方法は、ビニル臭化マグネシウムによるエポキシド開環により、ヒドロキシメチル基をC−7に導入した後、エタノール中でのオゾン分解により、1,6−アンヒドロ−4−O−ベンジル−β−D−グルコピラノースを与えるものであった。硫酸とのアンヒドロ結合の加水分解および酸化的炭素鎖開裂により、ペントジアルドースが得られ、これをアンモニアと還元的アミノ化により環化して、IFGの4−O−ベンジル誘導体を生成した。保護基は、酸条件下(水素およびパラジウム炭素)での水素化により除去されて、IFGのHCl塩が生成された。
【0007】
Dongらは、IFGの二糖誘導体の合成について記述した。
【0008】
Jakobsenは、アクロレインからのIFGおよびN置換IFG誘導体の合成、ならびに、3−Oベンジル化IFGの直接アルキル化によるN−アルキル誘導体の調製について記述した。かかるN−アルキル誘導体としては、N−メチル、ブチル、アリル、プロピン−3−イル、1−ドデシル、アセチル、CHCHCOOH、ベンジル、CHCHPh、NOPhCHCH、CHCHCH−Ph、シクロヘキシルプロパ−3−イルおよびCHCH=CHPhが挙げられる。
【0009】
Pandeyは、イソファゴミンを含む1−N−イミノ糖型グリコシダーゼ阻害剤の合成において、酒石酸から出発して、立体中心(1−[ベンジル(トリメチルシリル−メチル)アミノ]−1,4,5−トリデオキシ−2,3−O−(1−メチルエチリデン)−トレオ−ペント−4−イニトール)に隣接するアミノメチル基を生成するために、テザーアセチレン部分へのPET生成α−トリメチルシリルメチルアミンラジカルカチオンの環化について記述した。
【0010】
AnderschとBolsは、C−4酸化法をベンジルα−D−アラビノ−ピラノシドに適用することにより、D−アラビノースから出発するIFG合成について記述した。得られたアルドケトースとニトロメタンとの後のヘンリー反応により、必要な分岐炭水化物前駆体が得られ、IFGとなった(全収率17〜21%)。
【0011】
Bestらは、D−キシロースからのIFGの合成について記述し、ベンジル2,3−O−イソプロピリデン−β−L−キシロピラノシドに、誘導イミダゾル化により変換し、次にこれをニトリルに変換し、還元および保護基マニピュレーションの際、ベンジル4−C−アミノメチル−4−デオキシ−α−D−アラビノシドを与えた。水素およびパラジウム炭素による還元アミノ化により、イソファゴミンHClが得られた。
【0012】
Huizhenは、IFG類似体(3R、4R、5R)−N−(2−ホスホノエチル)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−ピペリジン、(3R、4R、5R)−N−(2−ホスホノエチル)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシ−メチルピペリジン、(3R、4R、5R)−N−(10−クロロ−9−アントラセンメチル)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシ−メチルピペリジンの、対応のアザ糖の直接アルキル化による合成を記述した。
【0013】
Ouchiらは、N−Boc−5−ヒドロキシ−3−ピペリジンから出発し、中間体tert−ブチルジフェニルシリル塩化ビニル誘導体の立体選択的エポキシ化の後、アルデヒドのビニル基の酸化的開裂、続いて、還元および脱保護によりIFGを生成する、IFGを含む1−アザ糖の合成を記述した。
【0014】
Schusterらは、アルドラーゼ触媒C−C結合形成により生成されたIFGのメチル−およびヒドロキシメチル誘導体を開示した。
【0015】
Mehtaらは、ノルボルニル骨格から抽出された好適な官能基を有するシクロペンテン中間体からのイソファゴミン類似体の立体選択的合成を記述した。二重の還元的アミノ化または分子内および分子間N−アルキル化が、ピペリジン環を構築する主要な工程である。イソファゴミン誘導体は、酵素アッセイにおいて、中程度の阻害活性を示した。
【0016】
Ouchiらは、キラルN−Boc−5−ヒドロキシ−3−ピペリジンから、高度に立体制御された方法での立体選択的エポキシ化および位置選択的な環開裂によるIFGの合成を記述している。
【0017】
Zhouらは、ニコチン酸メチルで始まる置換ピリジンの1,2−還元によるIFGの合成を記述している。
【0018】
疾患治療用IFG
イソファゴミンおよび関連の化合物は、リソソーム酵素β−グルコセレブロシダーゼ(GCアーゼとしても知られている)の活性を増大させるのに有効であることが示されている。特許文献5、特許文献6および特許文献7ならびに2004年11月12日出願の特許文献8および特許文献9を参照のこと(全て参照により本明細書に援用される)。意外なことに、特定の酵素阻害剤が、その合成中、酵素に特異的に結合して、ERにおけるタンパク質折り畳みを安定化するが、リソソームの元の位置で酵素から解離して、分解の代わりに、処理された酵素のレベルを増大することにより、酵素活性を増大することが見出された。GCアーゼの阻害剤であるIFGは、野生型と突然変異体のGCアーゼの両方の活性部位で結合し、合成および処理中、酵素を安定化する(非特許文献15、非特許文献16)。IFGは、活性部位から解離できるため、IFG結合の正味の効果は、GCアーゼ処理、リソソームへの輸送および活性の増大である。
【0019】
重要なのは、IFGは、ミスセンス突然変位体により不安定で、分解するGCアーゼの突然変異体形態に対する処理、輸送および活性の回復を示したことである。「薬理学的シャペロン」がないと、突然変異した酵素タンパク質は、ERにおいて誤った折り畳みとなり(非特許文献17)、最終生成物への成熟を阻害し、後に、ER関連の分解機構により分解される。ホモ接合性突然変異GCアーゼは、リソソーム蓄積病ゴーシェ病に関連している。インビトロで、IFGは、ゴーシェ患者の線維芽細胞において突然変異GCアーゼの活性の増大を示した(参照により本明細書に援用される特許文献10、特許文献11および特許文献7参照)。インビボで、IFGによる治療で、GCアーゼ活性が増大し、β−グルコセレブロシダーゼ遺伝子(Gba)遺伝子における突然変異を表わすゴーシェ病のマウスモデルにおける表現型を改善する(未発表データ)。最近では、酒石酸IFGは、第1相臨床試験において、健康な被験者のヒトGCアーゼ活性の3.5倍増大を示している。第2相臨床試験において、酒石酸IFGは、誤った折り畳みのGCアーゼを形成する特定のミスセンス突然変異体を発現するゴーシェ病におけるGCアーゼ活性の増大も示している。
【0020】
さらに、遺伝子エンコーディングおよびパーキンソン病における突然変異には、確実に関連性がある。ある研究によると、稀な、早発型、治療の効果のないパーキンソニズムは、N370Sについてホモ接合およびヘテロ接合のもの、典型的に、1型に関連する突然変異、非神経病をはじめとするGbaミスセンス突然変異体のある少なくとも1つの対立遺伝子を持つことが分かった(非特許文献18)。他の研究によると、突発性パーキンソン病のアシュケナージ系ユダヤ人について、6つのGba突然変異体(N370S、L444P、84GG、V394LおよびR496H)を評価した。大半は、既知のGba突然変異体についてヘテロ接合である(非特許文献19)。パーキンソンおよびゴーシュ病はまた、ニューロン喪失、星膠症および細胞毒レヴィー小体様α−シヌクレイン封入体の存在をはじめとするいくつかの病理学的な特徴も共有している(CA2−4領域)(非特許文献20)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,844,102号明細書
【特許文献2】米国特許第5,863,903号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/752,658号明細書
【特許文献4】米国特許第6,046,214号明細書
【特許文献5】米国特許第6,158,583号明細書
【特許文献6】米国特許第6,916,839号明細書
【特許文献7】米国特許第7,141,582号明細書
【特許文献8】米国特許出願第10/988,428号
【特許文献9】米国特許出願第10/988,427号明細書
【特許文献10】米国特許第6,583,158号明細書
【特許文献11】米国特許第6,916,829号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Jespersen et al., Angew. Chem., Int. ed. Engl. 1994; 33: 1778-9
【非特許文献2】Dong et al., Biochem. 1996; 35:2788
【非特許文献3】Lundgren et al., Diabetes. 1996; 45:S2 521
【非特許文献4】Schuster et al., Bioorg Med Chem Lett. 1999;9(4):615-8
【非特許文献5】Andersch et al., Chem. Eur. J. 2001; 7: 3744-3747
【非特許文献6】Jakobsen et al., Bioorg Med Chem. 2001; 9: 733-44; 36:435
【非特許文献7】Pandy et al., Synthesis. 2001: 1263-1267
【非特許文献8】Zhou et al., Org Lett. 2001;3(2):201-3
【非特許文献9】Best et al., Can. J. Chem./Rev. Can. Chim. 2002; 80(8): 857-865
【非特許文献10】Huizhen et al., J. Carbohydr Chem. 2004;23: 223-238
【非特許文献11】Mehta et al., Tetrahedron Letters 2005; 41(30):5747-5751
【非特許文献12】Ouchi et al., J Org Chem. 2005;70(13):5207-14
【非特許文献13】Meloncelli et al., Australian Journal of Chemistry. 2006; 59(11) 827-833
【非特許文献14】Panfil et al., J. Carbohydr Chem. 2006; 25: 673-84
【非特許文献15】Biochem Pharmacol. 2007;73(9):1376-83
【非特許文献16】Lieberman et al., Nature Chem Biol. 2007;3(2):101-7
【非特許文献17】Ishii et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 1996; 220: 812-815
【非特許文献18】Tayebi et al., Mol. Genet. Metab. 2003; 79; 104-109
【非特許文献19】Aharon-Peretz et al., New Eng. J. Med. 2004; 351: 1972-77
【非特許文献20】Wong et al., Mol. Genet. Metabol. 2004; 38: 192-207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
医薬組成物として用いられるイソファゴミン、その誘導体およびその塩を製造する新規な方法および中間体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成する工程と、グリコシドの2−および3−ヒドロキシル基を1,2−ジオンを用いて保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成する工程と、アラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換する工程と、キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換する工程と、ニトリルを保護ジオールに変換する工程と、ジオールを脱保護する工程とを含む、イソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法を提供する。
【0025】
他の実施形態において、本発明は、任意で、変換前は任意で単離されている活性化系により、アラビノース誘導体をキシロース誘導体に変換する工程をさらに含む。他の実施形態において、本発明は、任意で、変換前は任意で単離されていて、後に、シアノ源により置換される活性化系を用いて、キシロース誘導体をニトリルに変換する工程をさらに含む。
【0026】
他の実施形態において、本発明は、任意で、キシロース誘導体を精製した後、ニトリルを得る工程をさらに含む。
【0027】
他の実施形態において、本発明は、任意で、光延反転反応により、アラビノース誘導体をキシロース誘導体に変換して、反転エステル誘導体を形成し、鹸化する工程をさらに含む。
【0028】
他の実施形態において、本発明は、D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成する工程と、グリコシドの2−および3−ヒドロキシル基を1,2−ジオンを用いて保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成する工程と、アラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換する工程と、キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換する工程と、ニトリルを保護イソファゴミン塩に変換する工程と、イソファゴミン塩を脱保護する工程とを含む、イソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法を提供する。
【0029】
さらに他の実施形態において、本発明は、D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成する工程と、グリコシドの2−および3−ヒドロキシル基を1,2−ジオンを用いて保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成する工程と、アラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換する工程と、キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換する工程と、ニトリルをトリ保護第1級アミンまで還元する工程と、第1級アミンをジオールに脱保護する工程と、触媒水素化を用いる工程とを含む、イソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法を提供する。
【0030】
他の実施形態において、本発明は、D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成する工程と、ケタールまたはケトンを用いて保護されたグリコシドをアセトニドに変換することによりさらに保護する工程と、アセトニドをアルコキシドに変換して、アルキル化剤と反応させてエーテルを形成する工程と、エーテルを2つの保護基を保護するジオールに変換する工程と、選択的エーテル化を用いてジオールをさらに保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成する工程と、活性化系を用いてアラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換する工程と、活性化系を用いてキシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換する工程と、触媒水素化を用いてニトリルを変換する工程とを含む、イソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法を提供する。
【0031】
他の実施形態において、本発明は、L−(−)−キシロースを、アルコール、活性化剤および任意で溶媒と接触させて、保護されたグリコシドを形成する工程と、グリコシドをトリ保護キシロース誘導体に変換する工程と、キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換する工程と、ニトリルを保護されたジオールに変換する工程と、ジオールを脱保護する工程とを含む、イソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法を提供する。
【0032】
他の実施形態において、本発明は、
【0033】
【化1】

【0034】
で表される化合物およびこの化合物を用いてイソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
本明細書で用いる用語および略記は、各用語が用いられる本発明の文脈内および特定の脈略において、概して、当該技術分野における通常の意味を有している。特定の用語および略記を、本発明の方法および組成を説明するのに実務者のさらなる指針となるよう、以下、あるいは明細書の他の部分に示す。
「CsF」は、フッ化セシウムを意味する。
「DMA」は、N,N−ジメチルアニリンを意味する。
「DMF」は、N,N−ジメチルホルムアミドを意味する。
「NMP」は、N−メチルピロリドンを意味する。
「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを意味する。
「LG」は、脱離基を意味する。
「MTBE」は、メチルtertブチルエーテルを意味する。
「Pd/C」は、パラジウム炭素を意味する。
「Pd(OH)/C」は、パールマン触媒またはデグサ触媒と呼ばれる発現のいずれかを含む様々な形態のいずれかにおける水酸化パラジウム炭素を意味する。
「PG」および「PG」は、ヒドロキシル保護基を意味する。
「PtO」は、水和形態を含む酸化白金を意味する。
「THF」は、テトラヒドロフランを意味する。
「TLC」は、薄層クロマトグラフィーを意味する。
「Bn」は、ベンジルを意味する。
【0036】
「ヒドロキシル保護基」または「PG」または「PG」は、望ましくない反応を避けるため、当業者に知られたヒドロキシルのための任意の一般的な保護基を含み、これらに限られるものではないが、4−メトキシベンジル、ベンジル、トリメチルシリル、アセタール、ケタ―ルおよび縮合ジケタールが挙げられる。「PG」または「PG」は同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
「脱離基」またはLGという用語には、当業者に知られた脱離基、例えば、これらに限られるものではないが、スルホン酸アルキルおよびスルホン酸アリール(例えば、ベンゼンスルホン酸、トシラート、メシラート)、ハロゲン化物(例えば、I、BrおよびCl)、カルボン酸塩(例えば、酢酸およびトリフルオロ酢酸)およびシアン酸塩(例えば、チオシアン酸塩)基が含まれる。
【0038】
「IFG」という略記は、イソファゴミンまたは(3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−ピペリジンを意味する。IFGの分子式はC13NOおよび分子量は147.17である。IFGは、参照により本明細書に援用されるSierksらによる米国特許第5,844,102号明細書およびLundgrenらによる米国特許第5,863,903号明細書に記載されており、以下の構造を有する。
【0039】
【化2】

【0040】
IFG誘導体は、本明細書の出願時に当業者に知られた一般的な化学反応技術を用いて、IFGから調製することのできる分子を有する。
【0041】
本明細書で用いる置換アルキルとは、水素原子の1つ以上が、ハロゲン、酸素、ヒドロキシ、アミン(第1級)、アミン(上述したアルキルにより置換された第2級アルキル)、アミン(上述したアルキルにより置換された第2級−アルキル)、アミン(上述したアルキルにより置換された第3級アルキル)、硫黄、−SHまたはフェニル)により置換されたアルキル基のことを指す。
【0042】
本明細書で用いる置換シクロアルキルとは、アルキル基で置換されたシクロアルキルのことを指し、アルキルは、上述したもの、または水素原子の1つ以上が、ハロゲン、酸素、ヒドロキシ、アミン(第1級)、アミン(上述したアルキルにより置換された第2級アルキル)、アミン(上述したアルキルにより置換された第3級アルキル)、硫黄、−SHまたはフェニル)により置換された基である。本明細書で用いる置換アリールとは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、ニトロ、アルキルチオおよびチオアルキルからなる群から選択される1つ以上の置換機で置換されたアリール環のことを指し、アルキルチオとは、基−S−アルキルのことを指し、チオアルキルとは、1つ以上の−SH基を有するアルキル基のことを指す。
【0043】
IFGおよびIFG誘導体の合成
1,2−ジオンで保護されたD−アラビノースによるIFGの合成
【0044】
【化3】

【0045】
式中、RおよびRは、独立して置換または非置換アルキル(例えば、C〜Cアルキル)、置換または非置換アリール(例えば、ベンジルまたはナフチル)であるか、またはRおよびRは一緒になって、シクロヘキサン(シクロヘキサンジオン出発材料から)等の置換または非置換シクロアルキルを形成することができる。
【0046】
D−アラビノースは、溶媒(ニート反応物)あり、またはなしで、適切なアルコールおよび活性化剤を用いて、対応の保護グリコシド(A)に変換することができる。例えば、ヒドロキシ基に用いることのできるアルコールの範囲には、ベンジルアルコール、置換ベンジルアルコール、例えば、メトキシベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ジフェニルメタノール、置換ジフェニルメタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキシルメチルアルコール等が含まれる。保護反応は、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジオキサン、DMF、DMA、NMPまたはこれらの混合物等の溶媒あり、またはなしで実施してよい。活性化剤としては、HCl、HBr、HSO、その他鉱酸、塩化アセチル、塩化プロピニルまたはカルボン酸の他の酸塩化物が挙げられる。ほぼ周囲温度から約100℃の範囲の温度で、約2〜48時間の範囲の時間にわたって、反応を行うことができる。ベンジルまたは置換ベンジルアルコールが好ましく、ベンジルアルコールがより好ましい。好ましい溶媒としては、ジオキサン、THFまたはニート反応物が挙げられ、より好ましいのはニート反応物である。好ましい活性化剤としては、塩化アセチルおよびHSOが挙げられ、より好ましいのは塩化アセチルである。純生成物は、非極性溶媒による沈殿により容易に単離することができる。この生成物について好ましい溶媒はメチル−t−ブチルエーテル、温度は周囲温度である。
【0047】
グリコシド(A)を、プロトン酸またはルイス酸および溶媒としても作用するアルコールの存在下で、1,2ジオンまたはそのジアルキルケタ―ルと反応させることにより、ジケタール(B)としてさらに保護することができる。例えば、脂肪族または芳香族ジオン、例えば、1,2−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ジフェニルエタンジオンまたは9,10−フェナントレンキノンまたはそれらに対応のケタ―ルは、近接ジオールと、プロトン酸、例えば、HCl、HSO、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはルイス酸、例えば、三フッ化ホウ素エーテルまたは四塩化チタンの存在下で反応させることができる。メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールおよびこれらの混合物を溶媒として用いてよい。この反応の好ましい条件は、1,2−ブタンジオンまたは1,2−シクロヘキサンジオン、メタノール中、周囲温度から35℃、カンファースルホン酸または三フッ化ホウ素エーテルである。より好ましい条件は、1,2−ブタンジオン、メタノール中、35℃、カンファースルホン酸である。純生成物は、例えば、イソプロパノール、イソプロパノールとヘプタンまたは酢酸エチルとヘプタンからの結晶化により容易に得られる。
【0048】
トリ保護中間体アラビノース誘導体(B)は、対応のキシロース誘導体(D)へ、活性化系(C)により直接変換することができる。LGは脱離基を表わす。経路には、アラビノースヒドロキシルの、単離可能な別個の活性化系(C)への活性化の後、後述する酸素源を用いた反転による置換が含まれる。活性化系(C)は、キシロース誘導体(D)への変換のために単離されても、されなくてもよい。化合物Bのヒドロキシ基は、ピリジン、コリジン、ヒューニッヒ塩基、トリエチルアミン等の有機塩基の存在下、塩化メチレン、クロロホルムまたはトルエン等の非極性溶媒中で、約−20℃からほぼ周囲温度で、対応の無水物または塩化スルホニルから形成されたp−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート等のエステルにより活性化してよい。好ましい条件は、塩化p−トルエンスルホニルまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを、塩化メチレン中で−20℃で用いた後、精製なしで、スルホネートエステルを単離するものである。より好ましい条件は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを、塩化メチレン中で−20℃で用いた後、精製なしで、トリフラートを単離するものである。配置の反転による置換は、酸素求核試薬、好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属窒化物または亜硝酸テトラアルキルアンモニウムにより、この種の反応に一般的に用いられている溶媒、例えば、塩化メチレン、アセトン、THF、DMF、DMA、NMP等において、約0℃〜約40℃の温度で実施することができる。トリフラートの置換に好ましい条件は、周囲温度でDMF中硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム、DMFまたはアセトン中での硝酸テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラエチルアンモニウム、硝酸テトラプロピルアンモニウムまたは硝酸テトラブチルアンモニウムによる置換である。より好ましい条件は、周囲温度でDMF中硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム、あるいは周囲温度でアセトン中硝酸テトラエチルアンモニウムである。変換が、活性化系(C)の単離なしで実施される本発明の他の実施形態において、好ましい条件は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを塩化メチレン中、−20℃で用いた後、未反応の無水物をイソプロパノールにより分解し、アセトンで希釈し、硝酸テトラエチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムを周囲温度で添加するものである。精製生成物は、極性および非極性成分を用いた2溶媒系からの結晶化により容易に得ることができる。この反応にとって好ましい結晶化溶媒は、イソプロパノールおよびヘプタンである。
【0049】
一般式(D)のトリ保護キシロース誘導体は、活性化系により、配置の反転でニトリル化合物(F)に変換することができる。上述した方法と同様に、経路には、キシロースヒドロキシルの、分離可能な別個の活性化系(E)への活性化の後、シアノ源による置換が含まれる。ニトリル化合物(F)はまた、キシロース誘導体(D)から、活性化系(E)の単離なしでも得られる。キシロース誘導体のヒドロキシ基は、ピリジン、コリジン、ヒューニッヒ塩基、トリエチルアミン等の温和な有機塩基の存在下、塩化メチレン、クロロホルムまたはトルエン等の非極性溶媒中で、約−20℃からほぼ周囲温度で、対応の無水物または塩化スルホニルから形成されたp−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート等のエステルにより活性化してよい。好ましい条件は、塩化p−トルエンスルホニルまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを、塩化メチレン中、−20℃で用いた後、精製なしで、トリフラートを分離するものである。より好ましい条件は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを、塩化メチレン中、−20℃で用いた後、精製なしで、トリフラートを分離するものである。配置の反転による置換は、好ましくは、THF、DMF、DMA、NMP、DMSO等の極性、非プロトン性溶媒中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属シアン化物またはシアン化テトラアルキルアンモニウム等の試薬により、約0℃〜約40℃の温度で実施することができる。トリフラートの置換に好ましい条件は、周囲温度でTHF中、シアン化テトラエチルアンモニウムを用いるものである。変換が、活性化系(E)の分離なしで実施されるとき、好ましい条件は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを塩化メチレン中、−20℃で用いた後、未反応の無水物をイソプロパノールにより分解し、THFで希釈し、シアン化テトラエチルアンモニウムを周囲温度で添加するものである。精製生成物は、抽出の後、アルコール溶媒から、ヘキサン、ヘプタンまたはトルエン等の非極性溶媒あり、またはなしで、結晶化により得ることができる。好ましい溶媒系は、イソプロパノールおよびヘプタンである。
【0050】
キシロース誘導体(D)を精製せずにアラビノース誘導体(B)からニトリル(F)が得られる。
【0051】
一般式(F)のニトリルは、水中酸または水性共溶媒系により、一般式(G)のジオールに変換することができる。酸としては、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。脱保護は、水中で、室温にて、約2〜約24時間にわたって実施することができる。非極性溶媒からの粉砕により、容易にジオールが与えられる。あるいは、生成物(G)は、例えば、アルコールまたは酢酸エチル等の溶媒系からヘキサン、ヘプタンまたはトルエン等の非極性溶媒あり、またはなしで、結晶化することができる。この反応の好ましい条件は、水およびトリフルオロ酢酸を室温で16時間、続いて、反応生成物の溶媒蒸発のヘプタンの粉砕である。
【0052】
一般式(G)のニトリル中間体のイソファゴミン酸塩への変換は、保護基(例えば、ベンジルまたは4−メトキシベンジル基)の適切な選択により一工程で実施できる。ニトリル還元、アノマー中心での脱保護、閉環および環状イミンの水素化は、水素化条件下で、単一工程で実施されて、高収率でイソファゴミン酸塩を与えることができる。触媒水素化は、かかる水素化に用いられる様々な一般的な触媒、例えば、Pd/C、Pd/(OH)/C、PtO、Pd(OAc)または触媒の組み合わせを、1%〜20%の充填量で、14psi〜100psiの水素ガス圧下、プロトンまたは非プロトン極性溶媒中、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール中で、水共溶媒あり、またはなしで実施することができる。酢酸イソプロピル、酢酸エチルまたは酢酸メチル等のエステルも用いることができる。水素化は、HCl、HBr、HClO、HPO、HSO等の鉱酸または酒石酸や酢酸等のカルボン酸を存在させて実施することができる。酢酸は、共溶媒として、水あり、またはなしで、溶媒としても機能し得る。水素化は、変換率により決まる短期間または長期間にわたって実施することができる。好ましい条件は、Pd/(OH)/Cを、5%〜20%の充填量で、40psi〜100psiの圧力下で、アルコール溶媒および水中で、HCl、酢酸または酒石酸と共に用いるものである。より好ましい条件は、20%充填量のPd/(OH)/Cを、80psiの水素ガス下、イソプロパノールおよび水中で、L−(+)−酒石酸ありのものである。イソファゴミンが、塩酸塩またはその他酸塩として形成される場合、遊離塩基へ、そして酒石酸に変換することができる。この方法はまた、酒石酸塩をはじめとする任意の塩形態からイソファゴミンを精製する役割も果たす。
【0053】
【化4】

【0054】
中間体アラビノース誘導体(B)はまた、反転エステル誘導体(C’)への光延反転により、キシロース誘導体(D)に変換し、鹸化することもできる。光延反応は、様々なアルキルアゾジカルボキシレート、例えば、ジエチルアザジカルボキシレート、ジイソプロピル誘導体等により、ホスフィン、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等と一緒に、カルボン酸、例えば、ニトロ安息香酸誘導体と共に実施することができる。光延反応は、概して、その全内容がそれぞれ参照により本明細書に援用されるMitsunobu,O.; Yamada, Y. Bull. Chem. Soc. Japan 1967, 40, 2380-2382, The Use of Diethyl Azodicarboxylate and Triphenylphosphine in Synthesis and Transformation of Natural Products Mitsunobu, O. Synthesis 1981,1-28, Castro, B. R. Org. React. 1983, 29, 1, Hughes, D. L. Org. React. 1992, 42, 335-656, Hughes, D. L. Org. Prep. 1996, 28, 127-164. (Review)に記載されている。
【0055】
好ましい条件は、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、トリフェニル−またはトリブチルホスフィン、4−ニトロ安息香酸または2,4−ジニトロ安息香酸または3,5−ジニトロ安息香酸を用いるものである。より好ましい条件は、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、トリフェニルホスフィンおよび4−ニトロ安息香酸を用いるものである。反応に好ましい溶媒は、THFである。反応の温度は、室温から還流までとすることができる。好ましい温度は、40℃での反応成分の混合の後、60℃まで加熱する。精製は、適切なアルコール溶媒から、非極性溶媒あり、またはなしで、C’の結晶化により実施することができる。好ましい溶媒としては、ヘプタンまたはメタノールあり、またはなしの、イソプロパノールまたはエタノールが挙げられる。より好ましい条件は、メタノールからの結晶化である。中間体エステル(C’)のキシロース誘導体(D)への鹸化は、アルコール溶媒およびアルカリ金属塩基の溶液中で、室温温度から還流の温度で実施することができる。この反応の好ましい条件は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと共に、メタノールまたはイソプロパノール等のアルコールである。より好ましい条件は、室温でメタノールおよび水酸化ナトリウムである。水性ワークアップ後、キシロース誘導体(D)は、非極性溶媒からの結晶化により精製できる、または精製なしで用いることができる。
【0056】
【化5】

【0057】
一般式(F)のニトリルの、一般式(IFG HX)の保護イソファゴミン酸塩への変換は、アノマー中心での保護基(例えば、ベンジルまたは4−メトキシベンジル)の適切な選択により、一工程で実施することができる。ニトリル還元、アノマー中心での脱保護、閉環および環状イミンの水素化は、水素化条件下で単一工程で実施して、高収率でイソファゴミン塩を与えることができる。触媒水素化は、様々な触媒、例えば、Pd/C、Pd/(OH)/C、PtO、Pd(OAc)または触媒の組み合わせを、約1%〜約20%の充填量で、約14psi〜約100psiの水素ガス圧下、プロトンまたは非プロトン極性溶媒中、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール中で、水共溶媒あり、またはなしで実施することができる。酢酸イソプロピル、酢酸エチルまたは酢酸メチル等のエステルは、非プロトン溶媒として作用し得る。水素化は、HCl、HBr、HClO、HPO、HSO等の鉱酸または酒石酸や酢酸等のカルボン酸を存在させて実施することができる。酢酸は、共溶媒として、水あり、またはなしで、溶媒として機能し得る。ジケタール保護基は、通常、多くの酸に対して安定で、保護基を無傷のままとしながら、水素化することができる。水素化は、変換率により決まる短期間または長期間にわたって実施することができる。好ましい条件は、Pd/(OH)/Cを、約5%〜約20%の充填量で、約40psi〜約100psiの圧力により、アルコール溶媒および水中で、HCl、酢酸または酒石酸と共に用いるものである。より好ましい条件は、20%充填量のPd/(OH)/Cを、80psiの水素ガス下、イソプロパノールおよび水中で、HClまたは酢酸ありのものである。保護されたイソファゴミンは、精製する、または精製なしで脱保護することができる。
【0058】
一般式(I)のイソファゴミン誘導体は、水中プロトン酸または水性共溶媒系の作用によりイソファゴミンに変換することができる。酸としては、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。反応は、水中で、室温にて、約2〜約24時間にわたって実施することができる。減圧下での溶媒除去は、脱保護工程中に除去される揮発性酸および揮発性ジオンを蒸発するという利点がある。得られるIFGは、遊離塩基形態または酸塩として単離することができる。
【0059】
【化6】

【0060】
一般式(F)の化合物は、水素化物、例えば、水素化リチウムアルミニウム、セレクトライド、ボラン等の作用により、またはアミンを存在させた触媒水素化により、対応の第1級アミン(J)まで還元することができる。かかる条件は、トリエチルアミンまたはヒューニッヒ塩基を存在させたPd/Cである。
【0061】
一般式(K)のジオールの脱保護(J)は、本明細書に前述した、または当該技術分野において公知の条件を用いて実施することができる。
【0062】
一般式(K)の化合物は、本明細書に規定した条件を用いて、触媒水素化により、IFGに変換することができる。IFGは、同じく、本明細書に規定した条件を用いて、さらに、酒石酸IFGに変換することができ、固体担体上での直接変換か精製のいずれかの後、酒石酸IFGに変換される。
【0063】
【化7】

【0064】
一般式(K)の化合物は、一般式(G)の化合物中のニトリルの還元により得られる。還元は、アンモニアを存在させて、金属触媒および水素を用いる水素化により行うことができる。条件は、ラネーニッケルおよび水素ガス、約14psi〜約100psiの圧力、アルコール中、水あり、またはなしのものである。好ましい条件は、ラネーニッケルおよび水素、50psiで、メタノールおよび水中のものである。還元はまた、金属水素化物を用いて行うこともできる。条件には、水素化リチウムアルミニウム等の試薬が含まれる。
【0065】
【化8】

【0066】
上述した工程の2つを逆にして、一般式(J)の化合物を、本明細書に規定した条件を用いて水素化して、一般式(I)の化合物が得られるようにする。この生成物は、IFG、酒石酸IFG等のIFG酸塩へ容易に変換することができる。
【0067】
イソファゴミン酒石酸への変換は、遊離塩基の生成、固体担体での精製、酒石酸の添加および生成物の結晶化により行われる。遊離塩基は、固体担体での精製なしに酒石酸に変換することができる。遊離塩基は、鉱物塩基等の塩基、アンモニアガスまたは液体、水酸化アンモニウム溶液等の添加により、または塩を塩基樹脂に露出することにより形成することができる。固体担体としては、シリカゲル、様々な活性等級の中性または塩基性アルミナ、または塩基性樹脂のカラムが挙げられる。極性または非極性溶媒により溶出を行って、精製された形態の遊離イソファゴミンを与える。酒石酸塩への変換は、酸対塩基比の範囲により行われる。酒石酸は二酸であるため、酒石酸塩は、イソファゴミン遊離塩基に対して、0.5モル当量から1モル当量までの酒石酸を用いて形成することができる。酒石酸は、ラセミ(DまたはL形態)、あるいはL−(+)形態、D−(−)形態およびメソ形態の3つの立体異性形態の1つとすることができる。酒石酸塩を形成するのに好ましい条件は、水酸化アンモニウム溶液を用いて、遊離塩基、9:1エタノール/水酸化アンモニウムを生成し、遊離塩基をシリカゲルカラムに溶出する、溶媒および過剰の水酸化アンモニウムを蒸発する、水/エタノール中で酒石酸塩を形成する、および水/エタノールから結晶化することである。
【0068】
IFGおよび酒石酸は、様々な立体異性体と組み合わせることができる。酒石酸は二酸であるため、2:1〜1:1のIFG/酒石酸のモル比が安定な塩を与える。好ましい比は1:1である。化学量論範囲は、酒石酸の全ての異性体に適用できる。
【0069】
ケタ―ル中間体を用いたIFGおよびその誘導体の合成
【0070】
【化9】

【0071】
D−アラビノースは、溶媒(ニート反応物)あり、またはなしで、適切なアルコールおよび活性化剤を用いて、対応の保護されたグリコシド(A)に変換することができる。例えば、様々なアルコールとしては、溶媒中のベンジルアルコール、または置換ベンジルアルコール、例えば、メトキシベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキシルメチルアルコール等が挙げられる。好適な溶媒としては、これらに限られるものではないが、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジオキサン、DMF、DMAまたはNMP、そして、活性化剤、例えば、HCl、HBr、HSOまたはその他鉱酸または塩化アセチル、塩化プロピニルまたはカルボン酸のその他酸塩化物が挙げられる。反応は、周囲温度から約100℃の範囲の温度で、約2〜約48時間の時間にわたって実施することができる。一実施形態において、好ましいアルコールは、ベンジルまたは置換ベンジルアルコールであり、より好ましいのはベンジルアルコールである。好ましい溶媒としては、ジオキサン、THFまたはニート反応物が挙げられ、より好ましいのはニート反応物である。好ましい活性化剤としては、塩化アセチルおよびHSOが挙げられ、より好ましいのは塩化アセチルである。純生成物は、非極性溶媒による沈殿により容易に単離することができる。この生成物について好ましい溶媒はメチル−t−ブチルエーテル、温度は周囲温度である。
【0072】
一般式Aの得られたグリコシドは、ケトンまたはジメチルケタ―ルまたはそのエノールエーテルにより、酸を存在させて、(ニート)極性共溶媒あり、またはなしで(A)をケタ―ル(L)に変換することにより、アセトニドとして、3−および4−ヒドロキシル基でさらに保護することができる。例えば、脂肪族または芳香族ケトン、例えば、アセトン、2−ブタノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン、アセトフェノンまたは対応のジアルキルケタ―ルを、隣接ジオールと、酸、例えば、HSO、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸またはトリメチルシリルトリフラートを存在させて、反応させることができる。共溶媒としては、塩化メチレン、DMSO、DMF、DMAおよびNMPが挙げられる。場合によっては、アセトン等のケトンを溶媒とすることもできる。反応温度は、ほぼ周囲温度から約100℃の範囲とすることができる。この反応について好ましい条件は、アセトンおよび2,2−ジメトキシプロパンとp−トルエンスルホン酸、40℃である。純生成物は、極性および非極性成分を含む2成分系による結晶化により容易に単離することができる。この精製について好ましい条件は、酢酸エチルおよびヘプタンである。
【0073】
アセトニド(L)は、エーテルとして、2−ヒドロキシル基で、対応のアルコキシドへの変換の後、アルキル化剤と反応させて、一般式Mの化合物を与えることにより、さらに保護することができる。前述した保護では、より高価な臭化ベンジルおよび高価な酸化銀を用いていた。アルコキシドの形成は、PGに対応する、極性非プロトン溶媒、例えば、ジアルキルエーテルまたはTHF、DMF、DMA、NMPまたはDMSO中、強塩基、例えば、水素化アルカリで容易に実施される。PGアルキル化剤としては、ハロゲン化ベンジルまたは置換ハロゲン化ベンジルが挙げられる。反応温度は、−20℃〜20℃に及ぶ。この反応について、好ましい条件は、DMF中水素化ナトリウムで、0℃〜10℃でアルコキシドを生成した後、塩化ベンジルによるアルキル化である。純生成物は、水での沈殿および非極性洗浄により過剰の水を除去することにより容易に分離することができる。この精製に好ましい非極性溶媒は、ヘプタンである。
【0074】
一般式(N)のジオールを得るための一般式(M)の化合物中のアセトニドの除去は、希釈鉱酸、例えば、HCl、HBr、HSOにより、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の中で、周囲温度で実施される。この反応について、好ましい条件は、HCl、メタノール中、周囲温度である。純生成物(N)は、水での沈殿および非極性洗浄により過剰の水を除去することにより容易に単離することができる。この精製に好ましい非極性溶媒は、ヘプタンである。
【0075】
標的分子へ変性するためには、ジオールのさらなる保護が必要である。一般式(O)の分子の選択的エーテル化は、水−共沸溶媒中、還流温度での錫によるアプローチを用い、続いて、中温でのエーテル化により行うことができる。錫エーテルは、ジアルキルまたはアリール酸化錫(IV)、例えば、ジフェニル、ジメチル、ジブチル、ジイソブチルまたはジオクチル酸化錫を用いて、非プロトン溶媒、例えば、ベンゼン、トルエンまたはキシレン中で形成することができる。後のアルキル化は、アルキルまたはアルキルアリールハロゲン化物、例えば、臭化ベンジルまたは塩化ベンジルにより行うことができる。反応は、CsFまたはテトラエチル塩化アンモニウム等の溶媒を用いることにより促進することができ、反応温度は、ほぼ周囲温度から約100℃の範囲とすることができる。本発明において、好ましい方法では、酸化ジブチル錫を、トルエンおよび塩化ベンジル中で、テトラブチル塩化アンモニウムを存在させて用いる。精製は、錫試薬の水による沈殿で容易に行うことができる。最終生成物は、2溶媒系からの結晶化により得ることができる。この反応について好ましい結晶溶媒は、エタノールおよびヘプタンである。
【0076】
トリ保護中間体アラビノース誘導体は、対応のキシロース誘導体(Q)に、活性化系(P)により直接変換することができる。これには、アラビノースヒドロキシルの、分離可能な別個の活性化系(Q)への活性化の後、安価な酸素源を用いた反転による置換が含まれる。活性化は、ピリジン、コリジン、ヒューニッヒ塩基、トリエチルアミン等の有機塩基の存在下、塩化メチレン、クロロホルムまたはトルエン等の非極性溶媒中で、約−20℃からほぼ周囲温度で、対応の無水物または塩化スルホニルから形成されたp−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート等のエステルによりなされる。配置の反転による置換は、酸素求核試薬、好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属窒化物により、この種の反応に一般的に用いられている溶媒、例えば、塩化メチレン、アセトン、THF、DMF、DMA、NMP等において、約0℃〜約40℃の温度で実施することができる。好ましい条件は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを、塩化メチレン中、−10℃で用いた後、トリフラートを、精製を必要とすることなく単離するものである。トリフラートの置換に好ましい条件は、周囲温度でDMF中硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムである。精製生成物は、極性および非極性成分を用いた2溶媒系からの結晶化により容易に得ることができる。この反応にとって好ましい結晶化溶媒は、イソプロパノールおよびヘプタンである。
【0077】
一般式(R)のトリ保護キシロース誘導体は、ニトリル(S)に、活性化系により、変換することができる。上述した方法と同様に、経路には、キシロースヒドロキシルの、分離可能な別個の活性化系(R)への活性化の後、シアノ源による置換が含まれる。活性化は、ここでも、ピリジン、コリジン、ヒューニッヒ塩基、トリエチルアミン等の温和な有機塩基の存在下、塩化メチレン、クロロホルムまたはトルエン等の非極性溶媒中で、約−20℃からほぼ周囲温度で、対応の無水物または塩化スルホニルから形成された、スルホン酸アルキルまたはスルホン酸アリール、好ましくはp−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートのエステルによりなされる。配置の反転による置換は、好ましくは、試薬、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属シアン化物またはテトラアルキルアンモニウムシアン化物により、極性、非プロトン溶媒、例えば、THF、DMF、DMA、NMP、DMSO等において、約0℃〜約40℃の温度で実施することができる。好ましい条件は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびピリジンを、塩化メチレン中、−10℃で用いるものである。トリフラートの置換に好ましい条件は、テトラエチルアンモニウムシアン化物、THF中、周囲温度である。精製生成物は、抽出後、アルコール溶媒からの結晶化により得ることができる。好ましい溶媒は、エタノールである。
【0078】
ニトリル中間体のイソファゴミン塩酸塩への変換は、保護基の選択により一工程で実施できる。ニトリル還元、三重脱保護、閉環および環状イミンの水素化は、水素化条件下で、単一工程で実施されて、高収率でイソファゴミンを与えることができる。触媒水素化は、かかる水素化に用いられる様々な一般的な触媒、例えば、Pd/C、Pd/(OH)/C、PtO、Pd(OAc)または触媒の組み合わせを、1%〜20%の充填量で、約14psi〜約100psiの水素ガス圧下、プロトンまたは非プロトン極性溶媒中、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エステルまたは酢酸で実施される。水素化は、HCl、HBr、HClO、HPO、HSO、酢酸、トリフルオロ酢酸または酒石酸等の酸を存在させて実施することができる。水素化は、生成物分解の危険性なしに、短期間または長期間にわたって実施することができる。好ましい条件は、Pd/CおよびPd/(OH)2/Cを、約5%〜約20%の充填量で、約40psi〜約100psiの圧力により、アルコール溶媒中で、HClと共に反応を実施するものである。より好ましい条件は、10%充填量のPd/Cおよび10%充填量のPd/(OH)/Cを、80psiの水素ガス下、エタノール中、HClありのものである。この塩酸塩を、本発明のイソファゴミン酸塩に変換することができる。
【0079】
IFGのL−キシロースによる合成
【0080】
【化10】

【0081】
L−(−)−キシロースを用いてもイソファゴミンを製造することができる。糖は、溶媒(ニート反応物)あり、またはなしで適切なアルコールおよび活性化剤を用いて、対応の保護されたグリコシド(T)に変換することができる。例えば、アルコールの範囲には、塩化メチレン、クロロホルム、THF、ジオキサン、DMF、DMAまたはNMP等の溶媒中、HCl、HBr、HSOまたはその他鉱酸、塩化アセチル、塩化プロピニル、またはカルボン酸のその他酸塩化物等の活性化剤と共に、ベンジルアルコール、置換ベンジルアルコール、例えば、メトキシベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ジフェニルメタノール、置換ジフェニルメタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキシルメチルアルコール等が含まれる。周囲温度から約100℃の範囲の温度で、約2〜約48時間の範囲の時間にわたって、反応を行うことができる。本発明にとって好ましいアルコールは、ベンジルまたは置換ベンジルアルコールであり、より好ましいのはベンジルアルコールである。好ましい溶媒としては、ジオキサン、THFまたはニート反応物が挙げられ、より好ましいのはニート反応物である。好ましい活性化剤としては、塩化アセチルおよびHSOが挙げられ、より好ましいのは塩化アセチルである。純生成物は、非極性溶媒による沈殿により容易に単離することができる。この生成物について好ましい溶媒はメチル−t−ブチルエーテル、温度は周囲温度である。
【0082】
プロトン酸またはルイス酸および溶媒としても作用するアルコールの存在下で、1,2ジオンまたはそのジアルキルケタ―ルと反応させることにより、グリコシド(T)を直接ジケタール(D)にすることができる。例えば、脂肪族または芳香族ジオン、例えば、1,2−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ジフェニルエタンジオンまたは9,10−フェナントレンキノンまたはそれらに対応のケタ―ルは、近接ジオールと、プロトン酸、例えば、HCl、HSO、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはルイス酸、例えば、三フッ化ホウ素エーテルまたは四塩化チタンの存在下で反応させる。アルコールとしては、約0℃から還流の範囲の温度で、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の単純な脂肪族アルコールが挙げられる。この反応の好ましい条件は、1,2−ブタンジオンまたは1,2−シクロヘキサンジオン、メタノール中、周囲温度から35℃、カンファースルホン酸または三フッ化ホウ素エーテルである。より好ましい条件は、1,2−ブタンジオン、メタノール中、周囲温度、カンファースルホン酸である。純生成物は、結晶化により容易に得られる。
【実施例】
【0083】
本発明を、以下に示す実施例によりさらに説明する。かかる実施例の使用は、あくまで例示であり、本発明または例示された用語の範囲および意味を決して限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書に記載された特定の好ましい実施形態に限定されない。従って、本発明の多くの修正および変形は、本明細書を読めば、当業者には明白となり、その趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。よって、本発明は、特許請求の範囲にあるものと等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の文言によってのみ限定される。
【0084】
実施例1:ジオキサン縮合アラビノースによる酒石酸IFGの合成
【0085】
【化11】

【0086】
工程1:D−アラビノース(250g、1.67モル)およびベンジルアルコール(606mL、5.83モル)を、20℃で窒素下で攪拌した。塩化アセチル(50mL、0.7モル)を、反応温度が20〜30℃に維持される速度で添加した。反応を、50℃まで16時間かけて加熱し、反応をTLCによりモニターした。バッチを20℃まで冷却し、MTBE(600mL)で希釈した。バッチを、0℃まで3時間さらに冷却してから、ろ過した。固体を3×300mLのMTBEで洗って、減圧下で乾燥した。生成物(1)は、白色固体として得られた(349g、87%)。H NMR(300MHz、DMSO−d):δ7.32(m,5H)、4.76(s,1H)、4.66(d,J=12Hz,1H)、4.59(m,3H)、4.45(d,J=12Hz,1H)、3.70(m,4H)、3.47(dd,J=12,3Hz,1H)。
【0087】
工程2:ベンジルアラビノース(1、225g、0.94モル)、2,3−ブタンジオン(90mL、1.03モル)、オルトギ酸トリメチル(338mL、3.09モル)およびカンファー−10−スルホン酸(β)(10.3g、47モル)を、メタノール(1L)中、窒素下、20℃で混合した。混合物を60℃まで加熱し、反応が完了するまで、典型的には、16時間、TLCによりモニターした(SiOプレート、出発材料についてはジクロロメタン中5%メタノール、生成物についてはヘキサン中35%酢酸エチル)。反応を、トリエチルアミン(20mL)を50℃で添加することにより急冷してから、室温まで冷やした。溶媒を蒸発し、生成物(2)をイソプロパノールから結晶化した(45%)。融点147〜148℃。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.32(m,5H)、4.95(d,J=3Hz,1H)、4.75(d,J=12Hz,1H)、4.68(d,J=12Hz,1H)、4.16(m,2H)、3.93(s,1H)、3.81(d,J=12Hz,1H)、3.70(d,J=12Hz,1H)、3.27(s,3H)、3.22(s,3H)、2.62(s,1H)、1.33(s,3H)、1.31(s,3H)。
【0088】
工程3:(2S,3S,4aS,5R,8R,8aR)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−オール(2、150g、0.423モル)およびピリジン(137mL、1.7モル)を、塩化メチレン(1.5L)中、窒素下、室温で混合した。溶液を−20℃まで冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(114mL、0.68モル)を滴下して加え、温度が−5℃を超えないようにした。混合物を−20℃で、1時間攪拌してから、過剰の試薬を2N HCl(500mL)で急冷した。溶液を、飽和重炭酸ナトリウム(800mL)、水(800mL)および塩水(500mL)でさらに洗った。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(15mL)を有機相に添加した。結合した有機物をMgSOで乾燥し、ろ過し、乾燥するまで20〜30℃で蒸発させた。生成物(3)は、さらに精製することなく用いた。H NMR(300MHz、CDCl):δ7.33(m,5H)、4.99(m,2H)、4.72(s,2H)、4.25(dd,J=12,3Hz,1H)、4.08(dd,J=11,3Hz,1H)、3.91(d,J=14Hz,1H)、3.79(d,J=14Hz,1H)、3.26(s,3H)、3.22(s,3H)、1.32(s,3H)、1.27(s,3H)。
【0089】
工程4:前の工程からの(2S,3S,4aS,5R,8R,8aS)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−イルトリフルオロメタンスルホネート(3)を、DMFに、窒素下で溶かし、15℃まで冷却した。硝酸カリウムを一度で添加し、混合物を30〜35℃で攪拌した。混合物をろ過してから、溶媒を、30〜40℃の溶液温度で蒸発させた。残渣を、シリカゲルで、ヘキサン中30%酢酸エチルを用いてクロマトグラフ測定した。生成物(4)は固体として得られた(105.6g、70%)。融点51〜52℃。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.31(m,5H)、4.86(d,J=4,1H)、4.76(d,J=13Hz,1H)、4.66(d,J=13Hz,1H)、4.03(t,J=10Hz,1H)、3.85(m,1H)、3.68(m,1H)、3.56(t,J=10Hz,1H)、3.30(s,3H)、3.23(s,3H)、2.25(m,1H)、1.34(s,3H)、1.32(s,3H)。
【0090】
工程5:(2S,3S,4aS,5R,8S,8aR)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−オール(4、105g、0.3モル)およびピリジン(96mL、1.2モル)を、塩化メチレン(1L)中、窒素下、室温で混合した。溶液を−20℃まで冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(80mL、0.47モル)を滴下して加え、温度が−5℃を超えないようにした。混合物を−20℃で、1時間攪拌してから、過剰の試薬を2N HCl(350mL)で急冷した。溶液を、飽和重炭酸ナトリウム(500mL)、水(500mL)および塩水(500mL)でさらに洗った。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(10mL)を有機相に添加した。結合した有機物をMgSOで乾燥し、ろ過し、乾燥するまで20〜30℃で蒸発させた。生成物(5)は、さらに精製することなく用いた。
【0091】
工程6:前の工程からの(2S,3S,4aS,5R,8S,8aS)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−イルトリフルオロメタンスルホネート(5)を、乾燥THF(700mL)と、窒素下で混合した。シアン化テトラエチルアンモニウム(50.1g、0.32モル)を一度で添加し、混合物を35℃まで、16時間、加熱した。反応を室温まで冷却し、酢酸エチル(700mL)で希釈した。有機相を塩水(2×500mL)で洗った。結合した水性洗浄物を、酢酸エチル(700mL)で洗った。有機相を結合し、MgSOで乾燥した。有機相を、ろ過し、乾燥するまで蒸発させた。粗混合物(121g)をイソプロパノール(450mL)中50℃で溶解してから、室温まで攪拌しながら冷却した。溶液を5℃まで、16時間冷却した。固体をろ過し、ヘプタン(2×100mL)で洗った。固体を、イソプロパノール(420mL)に、60℃で溶解し、温度を50〜60℃に保ちながら、ヘプタン(120mL)を徐々に添加した。溶液を、室温まで、攪拌しながら16時間冷却した。固体(6)が、ろ過、ヘプタン(100mL)による洗浄および減圧下での乾燥により得られた(60.65g、62%)。融点121〜122℃。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.34(m,5H)、4.97(d,J=3Hz,1H)、4.71(s,2H)、4.21(dd,J=12,5Hz,1H)、4.03(dd,J=9,4Hz,1H)、3.90(dd,J=12,2Hz,1H)、3.79(dd,J=12,1Hz,1H)、3.26(s,3H)、3.25(s,3H)、2.99(m,1H)、1.33(s,3H)、1.32(s,3H)。
【0092】
工程7:(2S,3S,4aS,5S,8R,8aR)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−カルボニトリル(6、20g、0.055モル)を、9:1トリフルオロ酢酸/水(40mL)と、20℃、窒素下で混合し、16時間攪拌した。混合物を乾燥するまで30〜35℃で蒸発した。ヘプタン(50mL)を添加し、混合物を蒸発した。残渣を、ヘプタン(50mL)と混合し、3時間攪拌した。固体生成物(7)を、ろ過により分離し、ヘプタン(2×100mL)で洗い、減圧下(13.6g、99%)で乾燥した。融点103〜104℃。H NMR(300MHz,DO):δ7.30(m,5H)、4.95(d,J=4Hz,1H)、4.61(d,J=12Hz,1H)、4.47(d,J=12Hz,1H)、3.94(dd,J=10,5Hz,1H)、3.87(dd,J=12,2Hz,1H)、3.73(dd,J=12,2Hz,1H)、3.65(dd,J=10,4Hz,1H)、3.29(m,1H)。
【0093】
工程8:(3R,4R,5S,6S)−6−(ベンジルオキシ)−4,5−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−3−カルボニトリル(7、1.0g、0.004モル)を、エタノール(30mL)と混合し、35℃まで加熱し、炭と共に攪拌し、ろ過した。溶液を水(8mL)およびL−(+)−酒石酸(0.662g、4.4ミリモル)およびデグサタイプE101 NE/W(20%Pd(OH)炭素)(0.4g)と混合した。混合物を水素ガス(80psi)下、30℃で、24時間攪拌した。混合物を水(10mL)で希釈し、珪藻土によりろ過した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を、水(15mL)中で溶解し、ジクロロメタン(2×mL)で洗った。水性相を、炭0.6g)、金属除去剤(0.3g)、アルミナ(0.3g)およびフロリジル(0.3g)と共に、16時間、周囲温度で攪拌した。混合物をろ過し、エタノール(75mL)で1時間にわたって滴下して加えた。混合物を0℃まで、3時間冷却し、ろ過した。固体をエタノール(30mL)で洗った。固体を減圧下で乾燥したところ、酒石酸IFGが白色固体として得られた(0.578g、48%)。
【0094】
変形工程8:工程8a:(3R,4R,5S,6S)−6−(ベンジルオキシ)−4,5−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−3−カルボニトリル(7、1.2g、0.005モル)を、エタノール(80mL)、酢酸(0.025mL)およびデグサタイプE101 NE/W(20%Pd(OH)炭素)(0.6g)と混合し、水素ガス(60psi)下、20℃で16時間攪拌した。混合物をろ過(珪藻土)し、乾燥するまで蒸発した。9:1エタノール/29%水性NHOHでのシリカゲルのクロマトグラフィーによれば、遊離塩基として生成物が得られた。溶媒を蒸発し、生成物をエタノール(6mL)に溶解し、攪拌した。L−酒石酸(0.429g)を、エタノール(11mL)に溶解し、一度で45℃で添加した。バッチを室温まで冷却し、1時間攪拌した。酒石酸IFGをろ過し、冷エタノールで洗ってから、減圧下で乾燥した(0.348g、24%)。
【0095】
工程7および8の逆も可能である。
【0096】
【化12】

【0097】
工程8、次に7:(2S,3S,4aS,5S,8R,8aR)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−カルボニトリル(6、2.0g、0.002モル)を、メタノール(100mL)、酢酸(0.025mL)およびデグサタイプE101 NE/W(20%Pd(OH)炭素)(0.985g)と混合し、水素ガス(60psi)下、20℃で、72時間攪拌した。反応をろ過(珪藻土)し、乾燥するまで蒸発した。残渣(IFG酢酸)を、9:1トリフルオロ酢酸/水(5mL)と、20℃で、窒素下で混合し、4時間攪拌した。混合物を乾燥するまで30〜35℃で蒸発した。残渣(トリフルオロ酢酸IFG)を、シリカゲルで、70:30:5塩化メチレン/メタノール/29%水性NHOHによりクロマトグラフ測定した。生成物を、蒸発により単離し、1N HCl(5mL)に溶解し、凍結乾燥したところ、塩酸IFGが得られた。融点128〜129℃。酒石酸への変換は、本出願に記載されている。
【0098】
【化13】

【0099】
2〜4の変形方法:(2S,3S,4aS,5R,8R,8aR)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−オール(2、8g、0.023モル)、トリフェニルホスフィン(11.84g、0.045モル)および4−ニトロ安息香酸(7.54g、0.045モル)を、THF(80mL)中、窒素下で混合し、40℃まで加熱した。ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(9.13g、0.045モル)を、滴下して加え、混合物を62℃まで17時間加熱した。反応を室温まで冷却し、溶媒を蒸発し、生成物(8)をメタノール(86%)から結晶化した。融点170〜171℃。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.21(d,J=9Hz,2H)、8.10(d,J=9Hz,2H)、7.37〜7.19(m,5H)、5.14(m,1H)、4.85(d,J=3.6Hz,1H)、4.71(d,J=12.6Hz,1H)、4.61(d,J=12.6Hz,1H)、4.31(t,J=9.9Hz,1H)、3.89〜3.77(m,2H)、3.58(t,J=10.6Hz,1H)、3.39(s,3H)、3.21(s,3H)、1.28(s,3H)、1.19(s,3H)。
【0100】
(2S,3S,4aS,5R,8S,8aR)−5−(ベンジルオキシ)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルヘキサヒドロ−2H−ピラノ[4,3−b][1,4]ジオキシン−8−イル4−ニトロベンゾエート(8、6.7g、0.013モル)を、イソプロパノール(80mL)において20℃で懸濁した。5N NaOHの溶液(5.4mL)を、滴下して加え、20℃で14時間攪拌した。反応容積を3分の2減じ、塩化メチレンを添加(80mL)し、有機相を水および10%NaClで洗った。溶媒を蒸発したところ、生成物は発泡体(定量的)として得られた。NMRは、本出願に記した化合物4と同じであった。
【0101】
実施例2:ケタ―ル中間体を介したIFGおよび酒石酸IFGの合成
【0102】
【化14】

【0103】
工程1:D−アラビノース(50kg、330.04モル)およびベンジルアルコール(132.2kg、4.33当量)を、攪拌し、35℃まで加熱した。塩化アセチル(10.9kg、0.42当量)を、温度<45℃を保ちながら、徐々に添加し、50℃で一晩攪拌した。混合物を20℃まで冷却し、MTBE(600kg)で希釈した。混合物を0.5〜5時間攪拌した。固体を、ろ過により集め、MTBE(2×40kg)で洗った。材料をろ過乾燥機で乾燥した。2−ベンジル−D−アラビノース(1)が、オフホワイトの固体、70.9kg(88.6%)として得られた。H NMR(300MHz,DMSO−d):δ7.32(m,5H)、4.76(s,1H)、4.66(d,J=12Hz,1H)、4.59(m,3H)、4.45(d,J=12Hz,1H)、3.70(m,4H)、3.47(dd,J=12,3Hz,1H)。
【0104】
工程9:2−ベンジル−D−アラビノース(1、73.5kg、305.92モル))を、アセトン(522kg)と混合した。2,2−ジメトキシプロパン(26.6kg、1.9当量)を、一度で添加した後、p−トルエンスルホン酸一水和物(39.3g、0.0007当量)を添加した。混合物を、40℃で18時間攪拌した。反応完了後、トリエチルアミン(193mL、0.0046当量)を添加した。濃い油が得られるまで、溶媒を30℃で、減圧下で除去した。残渣を、酢酸エチル(2×20kg)と共蒸発した。酢酸エチル(19.2kg)を添加して、溶液を形成した。ヘプタン(145.8kg)を、一度で溶液に添加し、−10℃〜0℃で一晩冷却した。固体をろ過により集め、ヘプタン(2×51.5kg)で洗った。材料を、ろ過乾燥機にて、窒素パージして乾燥した。アセトニド誘導体(3aR,6R,7S,7aS)−6−(ベンジルオキシ)−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−[1,3]ジオキソロ[4,5−c]ピラン−7−オール(8)が、オフホワイトの固体、70.4kg(82%)として得られた。融点58〜59℃。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.34(m,5H)、4.92(d,J=4Hz,1H)、4.79(d,J=12Hz,1H)、4.54(d,J=12Hz,1H)、4.20(m,2H)、4.00(dd,J=13,3Hz,1H)、3.92(dd,J=13,2Hz,1H)、3.80(m,1H)、2.24(d,J=7Hz,1H)、1.52(s,3H)、1.35(s,3H)。
【0105】
工程10:アセトニド誘導体(8、78.2kg、278.97モル)をDMF(295kg、3.77kg/出発材料kg)と混合し、5℃まで冷却した。水素化ナトリウム(13.4kg、1.2当量)を、反応混合物を10℃より低く維持しながら、3〜4度でリアクタに添加してから、1.5時間攪拌した。2℃の温度で、塩化ベンジル(45.9kg、1.3当量)を1時間にわたって添加した。反応を、10℃〜15℃で、12時間攪拌した。反応完了後、混合物を2℃まで冷却し、水(20kg)を1時間にわたって添加した。4時間にわたって水(570kg)をさらに添加した。混合物をこの温度で10時間攪拌した。生成物を、遠心ろ過により集め、水(2×10kg)およびヘプタン(2×15kg)で洗い、一晩スパン乾燥した。ジベンジル誘導体(3aR,6R,7S,7aR)−6,7−ビス(ベンジルオキシ)−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−[1,3]ジオキソロ[4,5−c]ピラン(9)が白色固体、74.0kg(71.6%)として得られた。
【0106】
工程11:ジベンジル誘導体(9、37.6kg、101.50モル)をメタノール、AR(259kg、8.7kg/出発材料kg)に添加し、内容物を15℃まで冷却した。2.5N HCl溶液(76.2kg、1.8当量)を1時間にわたって添加した。水(20kg)をさらに添加し、混合物を12時間、15℃で攪拌した。水(1035kg、4×容積メタノール、AR)を、リアクタに添加し、少なくとも0.5時間にわたって攪拌した。生成物を、遠心分離機でろ過し、水(2×10kg)およびヘプタン(2×15kg)で洗い、一晩スパン乾燥した。ジオール(3R,4R,5S,6R)−5,6−ビス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4−ジオール(10)が、白色固体、31.5kg(94%)として得られた。
【0107】
工程12:ジオール誘導体(10、37.5kg、113.51モル)をトルエン(207.6kg、5.5kg/ジオールのkg)およびジブチル錫酸化物(31.1kg、1.1当量)と混合した。リアクタは、ディーン−スターク装置を備えており、水が、除去のために集められなくなるまで(8〜12時間)、リアクタの内容物を還流(約110℃)まで加熱した。リアクタの内容物を35℃まで冷却し、テトラブチル塩化アンモニウム(18.3kg、0.5当量)を一度で添加した。塩化ベンジル(15.8kg、1.1当量)を、温度<40℃を維持する速度で添加し、攪拌を35℃で12時間続けた。添加および12時間攪拌を、反応が完了するまで、4日間毎日繰り返した。反応完了後、混合物を25℃まで冷却し、水(150kg)を一度で添加し、内容物を一晩攪拌した。反応混合物を、セライト(1kg/ジオールのkg)の床を通してろ過し、床をトルエン(10kg)で濯いだ。ろ液を静置し(1時間)、層を分離した。水添加、攪拌、ろ過および分離を繰り返した。水性層を結合し、酢酸エチル(25kg)で抽出し、層を分離した。有機層を結合し、減圧下、45℃で、最低攪拌可能な容積まで濃縮した。ヘプタン(102.6kg)を添加した。混合物を20分間攪拌し、0℃まで冷却し、8〜12時間攪拌した。固体をろ過により集め、ヘプタン(10kg)で洗った。粗固体を、6:1ヘプタン/200pfエタノール(7kg/粗固体kg)中に、35℃で溶解し、−5℃〜0℃まで冷却し、一晩攪拌した。固体を、ろ過により集め、ヘプタン(10kg)で洗った。不純物を除去するには、典型的に、2回以上の再結晶化が必要であった。精製トリベンジル誘導体を、真空オーブン中、30℃で乾燥した。(3R,4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−オール(11)が、白色固体、17.5kg(37%)として得られた。融点59〜60℃。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.38(m,15H)、4.89(d,J=4Hz,1H)、4.82(d,J=12Hz,1H)、4.71(m,3H)、4.57(d,J=12Hz,1H)、4.55(d,J=12Hz,1H)、4.01(br s,1H)、3.95(dd,J=10,3Hz,1H)、3.83(m,2H)、3.71(dd,J=12,2Hz,1H)、2.56(br s,1H)。
【0108】
工程13:トリベンジルアラビノース誘導体(11、12.0kg、28.54モル)を、塩化メチレン(79.2kg、6.6kg/出発材料kg)およびピリジン(11.3kg、5当量)と混合し、−10℃まで冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(10.1kg、1.25当量)を、0℃より低い温度に保つ速度で添加した。出発材料が消費されるまで、反応混合物を、−10℃〜0℃で攪拌した。完了したら、反応混合物を、7.5%HCl溶液(3×68kg、17当量)および水(48kg)で洗った。洗浄中、反応混合物の温度を<5℃に維持した。7.5%NaHCO溶液(55.0kg)で洗うことにより、混合物をpH≧6に調節した。トリエチルアミン(0.4kg、0.3kg/出発材料kg)を添加し、有機相を無水KCO(1.2kg、0.1当量)で乾燥した。混合物をろ過し、減圧下、20℃〜35℃で乾燥するまで濃縮したところ、(3S,4S,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イルトリフルオロメタンスルホネート(12)が得られた。精製なしで、トリフラートを用いた。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.31〜7.16(m,15H)、5.12(br s,1H)、4.83(d,J=4Hz,1H)、4.76(d,J=11Hz,1H)、4.64(m,2H)、4.50(d,J=9Hz,1H)、4.46(d,J=8Hz,1H)、3.97(dd,J=10,3Hz,1H)、3.86(d,J=14Hz,1H)、3.77〜3.72(m,2H)。
【0109】
工程14:トリフラート(12)をDMF(36.2kg、3.02kg/出発材料kg)に溶解し、10℃まで冷却した。亜硝酸ナトリウム(5.9kg、3.0当量)を添加し、溶液を約30℃まで発熱させ、反応混合物を15℃〜25℃まで冷却し、12〜16時間攪拌した。混合物を5℃まで冷却し、水(152kg、4.2kg/DMFkg)を、温度<15℃を保つ速度で添加した。得られた混合物を、10℃で2時間攪拌した。固体をろ過し、水(2×12kg)で洗った。ろ過した固体を、酢酸エチル(21.6kg、1.8kg/出発kg)に溶解した。溶液を塩水(15.5kg)で洗い、MgSO(2.5kg)で乾燥し、ろ過し、ろ液を、減圧下、35℃で乾燥するまで濃縮した。イソプロパノール(9.5kg)を添加し、75℃まで加熱して、粗生成物を溶解した。ヘプタン(24.6kg)を溶液に添加し、混合物を15℃〜25℃まで冷却した。混合物を、0℃までさらに冷却し、一晩攪拌した。固体をろ過し、ヘプタン(2×8.2kg)で洗った。材料を、真空オーブンで乾燥した。(3S,4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−オール(13)が、黄色の固体、5.3kg(44%)として得られた。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.37(m,15H)、4.96(d,J=11Hz,1H)、4.80(m,2H)、4.68(d,J=12Hz,1H)、4.61(m,2H)、4.53(d,J=12Hz,1H)、3.78(m,1H)、3.67(m,3H)、3.50(dd,J=9,3Hz,1H)、2.42(br s,1H)。
【0110】
工程15:トリベンジルキシロース誘導体(13、10.4kg、24.73モル)を、塩化メチレン(68.6kg、6.6kg/出発材料kg)およびピリジン(9.8kg、5当量)と混合し、−10℃まで冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(8.7kg、1.25当量)を、0℃より低い温度に保つ速度で添加した。出発材料が消費されるまで、反応混合物を、−10℃〜0℃で攪拌した。完了したら、反応混合物を7.5%HCl溶液(3×58.9kg、17当量)および水(41.6kg)で洗った。洗浄中、反応混合物の温度を<5℃に維持した。飽和NaHCO溶液(44.6kg)で洗うことにより、混合物を、pH≧6に調節した。トリエチルアミン(0.4kg、0.3kg/出発材料kg)を添加し、有機相を無水KCO(1.2kg、0.1当量)で乾燥した。混合物をろ過し、減圧下、20℃〜35℃で乾燥するまで濃縮したところ、(3S,4S,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イルトリフルオロメタンスルホネート(14)が得られた。
【0111】
工程16:トリフラート(14)を、THF(29kg、2.8kg/出発材料kg)に溶解し、10℃まで冷却した。シアン化テトラエチルアンモニウム(4.6kg、1.2当量)を添加し、溶液を発熱させ、反応混合物を20℃まで冷却し、12時間攪拌した。酢酸エチル(21.8kg)を添加し、有機相を10%NaCl溶液(3×14.3kg)で洗った。結合した水性層を、酢酸エチル(21.8kg)で抽出した。有機層を結合し、MgSO(2kg)で乾燥し、ろ過し、減圧下、乾燥するまで濃縮した。エタノール(200pf、3.23kg/出発材料kg)を添加し、70℃まで加熱して、粗生成物を溶解した。溶液を20℃まで冷却してから、5℃までさらに冷却し、一晩攪拌した。固体をろ過し、ヘプタン(2×10.4kg)で洗った。200pfエタノール(7mL/g固体)からの結晶化を繰り返した。固体をろ過し、ヘプタン(2×10.4kg)で洗った。材料を真空オーブンで乾燥した。(3R,4R,5S,6S)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−カルボニトリル(15)は、淡褐色固体、6.3kg(59%)として得られた。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.31(m,15H)、4.90(d,J=3Hz,1H)、4.81〜4.73(錯体,3H)、4.70(d,J=12Hz,1H)、4.62(d,J=12Hz,1H)、4.55(d,J=12Hz,1H)、3.99(dd,J=9,5Hz,1H)、3.91(dd,J=12,3Hz,1H)、3.82〜3.74(重なり信号、2H)、3.13m,1H)。
【0112】
工程17:ニトリル誘導体(15、2.5kg、5.8モル)を、無水エタノール(138.1kg)に溶解し、透明な溶液が得られるまで35℃で加熱した。湿潤したパラジウム炭素(250g、10%w/w)、次に、水酸化パラジウム(250g、20%w/w)および塩酸(0.6L)を添加した。溶液を窒素で2回、水素で1回パージした。溶液を80psiまで水素で加圧し、攪拌し、35℃まで72時間加熱し、必要に応じて、再加圧した。混合物をろ過し、減圧下、30℃〜35℃で濃縮した。粗イソファゴミン塩酸を、水性NHOH(3L)と混合した。溶液をろ過し、シリカゲルカラム(約20kg)で、9:1EtOH/水性NHOH溶媒系を用いて精製した。生成物を、減圧下、35℃〜40℃で濃縮した。IFG遊離塩基を、無水エタノール(7.7mL/g残渣)に溶解し、ろ過した。L−(+)−酒石酸(1185g、1g/残渣g)を、無水エタノール(7.7mL/残渣g)に溶解し、ろ過し、エタノール中IFGの溶液に徐々に添加した。この溶液を45分間攪拌し、ろ過し、エタノール(2.5L、1mL/出発材料g)で洗った。生成物を、一定重量まで、真空オーブン中、44℃で乾燥した。酒石酸IFGが、白色固体1.2kgとして得られた。H NMR(300MHz,DO):δ4.40(s,2H)、3.70(dd,J=12,4Hz,1H)、3.66〜3.58(m,2H)、3.38(m,3H)、2.83(t,J=13Hz,1H)、2,79(t,J=13Hz,1H)、1.88〜1.77(m,1H)。
【0113】
実施例3:ジオキサン縮合キシロースによるIFGの合成
【0114】
【化15】

【0115】
工程18:L−キシロース(150g、1モル)およびベンジルアルコール(450mL、4.3モル)を、0℃、窒素下で攪拌した。塩化アセチル(30mL、0.42モル)を、反応温度が0℃に維持される速度で添加した。反応を40℃まで、16時間加熱し、TLCによれば、反応は完了した。過剰のベンジルアルコールを減圧下で除去した。バッチをMTBE(1200mL)で希釈し、0℃まで16時間冷却した。固体をろ過し、350mLのMTBEで洗い、減圧下で乾燥した。ベンジルキシロース(16)が、白色固体として得られた(118g、49%)。融点120℃。H NMR(400MHz,DMSO−d):δ7.40−7.28(m,5H)、4.93(d,1H,J=4.8Hz)、4.71(d,1H,J=3.6Hz)、4.82−4.78(m,2H)、4.65(d,1H,J=12.4Hz)、4.44(d,1H,J=12Hz)、3.47−3.38(m,2H)、3.36−3.27(m,3H)、3.25−3.21(m,1H)。
【0116】
工程19:ベンジルキシロース(16、1g、4.2ミリモル)、2,3−ブタンジオン(0.4mL、4.6ミリモル)、トリメチルオルトギ酸(1.5mL、14.7ミリモル)およびカンファー−10−スルホン酸(β)(0.116g、0.5ミリモル)を、メタノール(10mL)中、窒素下、20℃で混合した。混合物を60℃まで加熱し、反応が完了するまで、TLCによりモニターした。反応を室温まで冷却した。溶媒を蒸発し、ジクロロメタン(427mg、29%)中7%酢酸エチルでのクロマトグラフィーによれば、生成物(4)が得られた。H NMR(300MHz,CDCl):化合物3の反転から得られたスペクトルと同一である。
【0117】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態により範囲が限定されるものではない。従って、本明細書に記載したものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明および添付の図面から当業者には明白となろう。かかる変形は、添付の特許請求の範囲内に入るものとする。さらに、値は全て近似値であり、説明のために提供されたものと考えられる。
【0118】
特許、特許出願、文献、商品説明および手順が、本明細書全体に挙げられており、その開示内容は、全てについて全内容が参照により本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成し;前記グリコシドの2−および3−ヒドロキシル基を1,2−ジオンを用いて保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成し;前記アラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換し;前記キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換し;前記ニトリルを保護ジオールに変換し、次いで、前記ジオールを脱保護することを含むことを特徴とするイソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法。
【請求項2】
変換前は任意で分離されている活性化系により、前記アラビノース誘導体を前記キシロース誘導体に変換することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変換前は任意で分離されていて、後に、シアノ源により置換される活性化系を用いて、前記キシロース誘導体を前記ニトリルに変換することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キシロース誘導体を精製した後、前記ニトリルを得ることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
光延反転反応により、前記アラビノース誘導体を前記キシロース誘導体に変換して、反転エステル誘導体を形成し、鹸化することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成し;前記グリコシドの2−および3−ヒドロキシル基を1,2−ジオンを用いて保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成し;前記アラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換し;前記キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換する工程と、前記ニトリルを保護イソファゴミン塩に変換し、次いで、前記イソファゴミン塩を脱保護することを含むことを特徴とするイソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法。
【請求項7】
D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成し;前記グリコシドの2−および3−ヒドロキシル基を1,2−ジオンを用いて保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成し;前記アラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換し;前記キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換し;前記ニトリルをトリ保護第1級アミンまで還元し;前記第1級アミンをジオールに脱保護し、次いで、触媒水素化を用いることを含むことを特徴とするイソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法。
【請求項8】
D−(−)−アラビノースの前記アノマーヒドロキシル基の保護が、アルコール、活性化剤および任意で溶媒を用いて行われ、前記アラビノース誘導体の形成が、酸およびアルコールを用いて行われることを特徴とする請求項1、6および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
D−(−)−アラビノースのアノマーヒドロキシル基を保護基により保護して、グリコシドを形成し;ケタールまたはケトンを用いて前記保護されたグリコシドをアセトニドに変換することによりさらに保護し;前記アセトニドをアルコキシドに変換して、アルキル化剤と反応させてエーテルを形成し;前記エーテルを2つの保護基を保護するジオールに変換し;選択的エーテル化を用いて前記ジオールをさらに保護して、トリ保護アラビノース誘導体を形成し;活性化系を用いて前記アラビノース誘導体をトリ保護キシロース誘導体に変換し;活性化系を用いて前記キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換し、次いで、触媒水素化を用いて前記ニトリルを変換することを含むことを特徴とするイソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法。
【請求項10】
L−(−)−キシロースを、アルコール、活性化剤および任意で溶媒と接触させて、保護されたグリコシドを形成し;前記グリコシドをトリ保護キシロース誘導体に変換し;前記キシロース誘導体をトリ保護ニトリルに変換し;前記ニトリルを保護されたジオールに変換し、次いで、前記ジオールを脱保護することを含むことを特徴とするイソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法。
【請求項11】
【化1】

で表される化合物。
【請求項12】
PGがベンジルである請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
【化2】

からなる群から選択される化合物。
【請求項14】
PGがベンジルである請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の化合物を変換して、イソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する工程を含むことを特徴とするイソファゴミン、その誘導体またはその酸塩を製造する方法。

【公表番号】特表2010−528048(P2010−528048A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509556(P2010−509556)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/064559
【国際公開番号】WO2008/144773
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】