説明

イソフタル酸および/またはテレフタル酸およびオリゴアルキレンオキシドから製造されたポリエステルポリオール

本発明は、(i)第1工程において、(A)必要に応じてC〜Cアルキルエステルの形態でのイソフタル酸、および/または必要に応じてC〜Cアルキルエステルの形態でのテレフタル酸を、(B)式:H−(OCHCH−OHで示され、3.0および9.0の間の範囲のオキシエチレン基の数平均数nを有するオリゴエチレングリコールと、錫(II)塩、ビスマス(II)塩およびチタンテトラアルコキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒の存在下、160℃および240℃の間の範囲の温度および1および1013ミリバールの間の範囲の圧力にて、7および100時間の間の時間反応させる、9.0モル/kgポリエステルポリオールおよび22モル/kgポリエステルポリオールの間の範囲のエーテル基の濃度を有するポリエステルポリオールの製造方法、該方法により得られるポリエステルポリオールおよびPUR/PIR硬質フォームを製造するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソフタル酸および/またはテレフタル酸、オリゴアルキレンオキシドおよびフタル酸または無水フタル酸からのポリエステルポリオールの製造方法、該方法により得られるポリエステルポリオールおよび硬質PUR/PIRフォームを製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、硬質PUR/PIRフォームは、ポリエステルポリオールが、硬質PUR/PIRフォームの耐燃性および熱伝導性について肯定的影響を与えるので、ポリエステルポリオールに基づいて製造される。ポリエステルポリオールの製造における原料として、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸/無水フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸を主に用いる。ポリエステルポリオールの他に、ポリエーテルポリオールが、ポリエステルポリオールについてペンタンの溶解性の性質を向上させるために、またはイソシアヌレート含有硬質PUR/PIRフォームの脆弱性を減少させるために添加される場合がある。
【0003】
しかしながら、ポリエステルポリオールの製造では、芳香族酸の使用、特にテレフタル酸の使用は、これらが周囲温度にて固体形態で存在することがあり、従って、工業的プロセスにおいて処理をより困難にする。
【0004】
US4758607は、これらのポリエステルポリオールの製造について、原料主成分として、分子量減少性反応媒体、例えば低分子量グリコール等により、低分子量ポリカルボン酸の存在下で再生して新たなポリエステルポリオールを形成する高分子量ポリ(エチレンテレフタレート)、PETを開示する。しかしながら、PETを、まず、複雑な方法により集めなければならないことが上記方法の欠点である。さらに、物質を正確に分類し、および汚染しないことを確保しなければならない。再生材料、例えばPET製飲料水用瓶に関する場合、例えばポリ(エチレン)から通常作られた蓋を取り除く必要があり、多大な時間を必要とする。PET製造廃棄物に関する場合、この原料は、普遍的に利用することはできないが、PET製造プラントの存在に結び付く。さらなる欠点は、US4758607の教示に従ってPET分解に用いるグリコールの一部が、蒸留により再び除去されなければならないことであり、グリコールの高沸点の観点からエネルギーについて不利である。
【0005】
US4039487は、テレフタル酸、テトラエチレングリコールおよび無水フタル酸に基づくポリエステルポリオールを開示する。しかしながら、US4039487は、どのようにして、当業者に知られたこれらの成分のエステル化の欠点、すなわちテレフタル酸の低い溶解性による長い反応時間を克服するかを開示しない。更なる欠点は、テレフタル酸のエステル化に使用可能なヒドロキシル基の数が、テトラエチレングリコールと無水フタル酸との急速な反応により反応の開始時にすぐに急速に減少するが、これは、エステル化の速度がとりわけ遊離ヒドロキシル基の濃度に比例するので、あまり反応性ではないテレフタル酸の引き続きの反応に望ましくない影響を有する。従って、エステル化触媒は、上記ポリエステルポリオールとの引き続きの反応、例えばPURフォームの製造に悪影響を与えることがあるので、代替法がエステル化触媒の著しくより多い量の使用について求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4758607号明細書
【特許文献2】米国特許第4039487号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的の1つは、先行技術の上記欠点を解消することであった。
【0008】
しかしながら、多くの従来法によるポリエステルポリオールに基づく硬質PUR/PIRフォームは通常、DIN4102−1に従う防火クラスB3を達成するだけであるので、適切な耐燃性をなお示さない。
【0009】
従って、本発明の目的は、PUR/PIR硬質フォーム中に用いた場合、向上した耐燃性、特にDIN 4102−1に従う防火クラスB2および/またはSBI試験(DIN EN 13823)を達成する硬質PUR/PIRフォームをもたらすポリエステルポリオールを提供することであった。
【0010】
本発明の他の目的は、硬質PUR/PIRフォームの製造における工業的プロセスにおいて容易に加工することができ、および同時に、向上した耐燃性をもたらすポリエステルポリオールを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
意外にも、本発明による目的は、
(i)第1工程において、
(A)イソフタル酸を、必要に応じてC〜Cアルキルエステルの形態でおよび/またはテレフタル酸を、必要に応じてC〜Cアルキルエステルの形態で、
(B)式:H−(OCHCH−OHで示され、3.0および9.0の間の範囲のオキシエチレン基の数平均数nを有するオリゴエチレングリコールと、
錫(II)塩、ビスマス(II)塩およびチタンテトラアルコキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒の存在下、160℃および240℃の間の範囲の温度および1および1013ミリバールの間の範囲の圧力にて、7および100時間の間の範囲の時間反応させ、および
(ii)第2工程において、工程(i)から得られる反応混合物を、(C)フタル酸および/または無水フタル酸と反応させる
ことを特徴とする、9.0モル/kgポリエステルポリオールおよび22モル/kgポリエステルポリオールの間の範囲のエーテル基の濃度を有するポリエステルポリオールを製造するための本発明による方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
イソフタル酸のC〜Cアルキルエステルは、イソフタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジエチルエステル、イソフタル酸ジ−n−ブチルエステルおよびイソフタル酸ジイソブチルエステルからなる群から選択されるエステルである。
【0013】
好ましくは、成分(A)は、必要に応じてC〜Cアルキルエステルの形態でのテレフタル酸である。テレフタル酸のC〜Cアルキルエステルは、テレフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジエチルエステル、テレフタル酸ジ−n−ブチルエステルおよびテレフタル酸ジイソブチルエステルからなる群から選択されるエステルである。
【0014】
本発明では、一般式:H−(OCHCH−OHで示される化合物は、
n=1の場合、1個のオキシエチレン基を有し、およびエーテル基を有さず、
n=2の場合、2個のオキシエチレン基および1個のエーテル基を有し、
n=3の場合、3個のオキシエチレン基および2個のエーテル基を有し、
n=4の場合、4個のオキシエチレン基および3個のエーテル基を有し、
n=5の場合、5個のオキシエチレン基および4個のエーテル基を有し、
n=6の場合、6個のオキシエチレン基および5個のエーテル基を有し、
n=7の場合、7個のオキシエチレン基および6個のエーテル基を有し、
n=8の場合、8個のオキシエチレン基および7個のエーテル基を有し、および
n=9の場合、9個のオキシエチレン基および8個のエーテル基を有する。
【0015】
成分(B)は、好ましくは、種々のオリゴマーエチレングリコールの混合物であり、一般式:H−(OCHCH−OHにおける値nは、成分(B)におけるオキシエチレン基の平均数を示す。n=2での成分(B)は、特に好ましくは、8重量%未満、より特に好ましくは3重量%未満のオリゴマーを含有する。従って、値nについて、整数ではない値、例えば3.1、3.2または3.24等を得ることも可能である。
【0016】
オリゴエチレングリコール(B)は好ましくは、145〜450g/モルの範囲、特に好ましくは150〜250g/モルの範囲の数平均分子量を有する。
【0017】
本発明による方法により製造されたポリエステルポリオールは、好ましくは10モル/kgポリエステルポリオールおよび17モル/kgポリエステルポリオールの間の範囲のエーテル基の量を有する。
【0018】
成分(A)は、好ましくは、用いる成分A、BおよびCの全量を基準として8〜50重量%の量、特に好ましくは10〜35重量%の量で存在させて、本発明によるポリエステルポリオールを製造する。
【0019】
成分(B)は、好ましくは、用いる成分A、BおよびCの全量を基準として50〜92重量%の量、特に好ましくは65〜90重量%の量で存在させて、本発明によるポリエステルポリオールを製造する。
【0020】
成分(C)は、好ましくは、本発明によるポリエステルポリオールを製造するために、用いる成分A、BおよびCの全量を基準として1〜25重量%の量、特に好ましくは1〜22重量%の量、より特に好ましくは5〜18重量%の量で存在させて、本発明によるポリエステルポリオールを製造する。
【0021】
本発明による方法により製造されたポリステルポリオールは、好ましくは100mgKOH/gおよび400mgKOH/gの間の範囲、特に好ましくは110mgKOH/gおよび300mgKOH/gの間の範囲、さらに特に好ましくは150mgKOH/gおよび260mgKOH/gの間の範囲のヒドロキシル価を有する。
【0022】
ポリエステルポリオールのヒドロキシル価は、標準DIN53240に基づいて決定することができる。ポリエステルポリオールの酸価は、標準DIN53402に基づいて決定することができる。
【0023】
本発明によるポリエステルポリオールの分子量は、好ましくは、280〜1120Da、特に好ましくは370〜1020Da、さらに特に好ましくは430〜750Daの範囲である。
【0024】
本発明による方法により製造されるポリエステルポリオールは、好ましくは0.1KOH/g〜4mgKOH/gの範囲、特に好ましくは0.15KOH/g〜2.8KOH/gの範囲の酸価を有する。
【0025】
本発明による方法により製造されるポリエステルポリオールは、25℃にて、好ましくは400mPasおよび10000mPasの間の範囲、特に好ましくは500mPasおよび7000mPasの間の範囲のDIN53019に従って測定された粘度を有する。
【0026】
オリゴエチレングリコール(B)は、好ましくは3.1および9の間の範囲、特に好ましくは3.5および8の間の範囲のオキシエチレン基の平均数を有する。
【0027】
ポリエステルポリオールは、好ましくは−40℃および25℃の間の範囲、特に好ましくは−20および23℃の間の範囲の融点を有する。
【0028】
本発明によるポリエステルポリオールは、好ましくは、
(i)第1工程において、テレフタル酸(A)、および式:H−(OCHCH−OHで示され、3.0および9.0の間の範囲のオキシエチレン基の数平均数nを有するオリゴエチレングリコール(B)、および
(ii)第2工程において、フタル酸および無水フタル酸からなる群から選択される少なくとも1つの成分(C)
を含む混合物から製造される。
【0029】
本発明のある好ましい実施態様は、第1工程(i)において、成分(A)および(B)を、錫(II)塩、ビスマス(II)塩およびチタンテトラアルコキシレートからなる群から選択される触媒の存在下、160℃および240℃の間の範囲の温度および1および1013ミリバールの間の範囲の圧力にて、7および100時間の間の範囲の時間反応させるポリエステルポリオールの製造方法である。
【0030】
成分(C)は、好ましくは、水の80〜95%の反応後にのみ好ましく添加し、必要に応じて、低分子量アルコール(例えばメタノール、エタノールなど、すなわち成分(A)および(B)の反応から形成されたアルコール)を、第1工程(i)において留去した。工程(i)から得られる中間生成物(成分(A)および(B)の反応により形成される)と、後に、すなわち工程(ii)において添加される成分(C)との反応は、好ましくは160および240℃の間の範囲における温度および1および150ミリバールの間の圧力にて、1および22時間の間の範囲の時間行う。
【0031】
本発明によるポリエステルポリオールを製造するために、当業者に既知の全ての触媒を用いることができる。好ましくは、塩化錫(II)、塩化ビスマス(II)およびテトラアルコキシレート(例えばチタンテトラメタノレートまたはチタンテトラエタノレート)を用いる。特に好ましいのは、二塩化錫二水和物の使用である。これらの触媒(必要に応じて、用いる量の合計)は、全ての原料成分A〜Cの重量部の合計を基準として20〜200ppm、より特に好ましくは45〜80ppmの量で用いる。
【0032】
ポリエステルポリオールを製造するための成分の本発明による反応は、好ましくは、物質中で(すなわち、任意の溶媒を添加せずに)行う。
【0033】
本発明はまた、本発明による方法により製造されたポリエステルポリオール、および以下の工程:
a)本発明による方法により製造された少なくとも1つのポリエステルポリオールと、
b)少なくとも1つのポリイソシアネート含有成分、
c)少なくとも1つの発泡剤、
d)少なくとも1以上の触媒、
e)必要に応じて、少なくとも1つの難燃剤および/または他の補助物質および添加剤、
f)必要に応じて、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物
との反応を含むPURまたはPUR/PIRフォームを製造するための方法を提供する。
【0034】
ポリイソシアネート含有成分として、従来法による脂肪族、脂環式、とりわけ芳香族ジ−および/またはポリイソシアネートは適当である。トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、とりわけジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(ポリマーMDI)の混合物を好ましく用いる。イソシアネートは、例えばウレットジオン基、カルバメート基、イソシアヌレート基、カルボジイミド基、アロファネート基、特にウレタン基を組み込むことにより変性してもよい。硬質ポリウレタンフォームを製造するために、ポリマーMDIを特に用いる。先行技術では、イソシアヌレート形成は、実質的に発泡反応の間にのみ起こり、工業硬質フォームに、例えば断熱ボード、サンドイッチ要素、配管断熱および大型トラック車体として建築分野に好ましく用いる難燃性PUR/PIRフォームをもたらす。
【0035】
少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物として、とりわけ、OH基、SH基、NH基、NH基およびCH−酸基、例えばβ−ジケト基等から選択される2以上の反応性基を分子中に有する化合物が適当である。本発明による方法により好ましく製造される硬質ポリウレタンフォームを製造するために、とりわけ、2〜8個のOH基を有する化合物を用いる。ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを好ましく用いる。硬質ポリウレタンフォームの製造では、用いるポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールのヒドロキシル価は、好ましくは25〜850mgKOH/g、特に好ましくは25〜550mgKOH/gであり、分子量は、好ましくは300g/モルより大きい。成分(f)は、好ましくは、既知の方法により、例えば触媒として、アルカリ水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等、またはアルカリアルコレート、例えばナトリウムメチラート、ナトリウムまたはカリウムエチラートまたはカリウムイソプロピレートによる、および2〜8、好ましくは2〜6の結合した反応性水素原子を含有する少なくとも1つの出発分子の添加によるアニオン重量によって、または触媒として、ルイス酸、例えばとりわけ五塩化アンチモン、フッ化ホウ素エーテラート等または漂白粘土による、アルキレン残基中に2〜4個の炭素原子を有する1以上のアルキレンオキシドからのカチオン重量により製造されるポリエーテルポリオールを含有する。さらに、ポリエーテルポリオールの製造は、複金属シアン化物触媒作用により行うことができ、この場合、連続操作も可能である。
【0036】
適当なアルキレンオキシドは、例えばテトラヒドロフラン、1,3−プロピレンオキシド、1,2−および2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドである。アルキレンオキシドは、単独で、連続して交互にまたは混合物として用いることができる。適当な出発分子は、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、スクロース、ソルビトール、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、トルイジン、トルエンジアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−メチレンジアニリン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびオリゴエーテルポリオールであってもよい他の2価アルコール若しくは多価アルコール、または1価アミンまたは多価アミン、および水である。
【0037】
さらに、成分(f)は、必要に応じて、ポリエステルポリオール、鎖延長剤および/または架橋剤を含有し得る。とりわけ、2官能性または3官能性アミンおよびアルコール、特に400g/モル、好ましくは60〜300g/モル未満の分子量を有するジオールおよび/またはトリオールは、鎖延長剤および/または架橋剤として用いることができる。化合物(f)として、好ましくは160を越える、特に好ましくは200mgKOH/gを越えるヒドロキシル化、および特に好ましくは2.9および8の間の官能価を有するポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを用いる。特に好ましくは、当量、すなわち400g/モル未満、好ましくは200g/モル未満の官能価により分けられる分子量を有するポリエーテルポリオールを、イソシアネート反応性化合物(f)として用いる。化合物(f)は、通常、液体形態で存在する。
【0038】
発泡剤成分(c)として、炭化水素を好ましく用いる。これは、水および/または他の物理発泡剤との混合により用いることができる。これは、ポリウレタンの製造に用いる原料中で溶解または乳化させ、ポリウレタン形成の条件下で蒸発させる化合物であると理解される。その例は、炭化水素、ハロゲン化炭化水素および他の化合物、例えばパーフルオロヘキサンのようなパーフッ素化アルカン、クロロフルオロカーボン、およびエーテル、エステル、ケトンおよび/またはアセタール等である。
【0039】
発泡剤成分(c)は、好ましくは、成分(b)〜(f)の全重量を基準として2〜45重量%、好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは4〜20重量%の量で用いる。ある好ましい実施態様では、発泡剤混合物(c)は、炭化水素、特にn−ペンタンおよび/またはシクロペンタンおよび水を含有する。特に好ましい炭化水素は、n−ペンタン、シクロペンタン、イソペンタンおよび/または異性体の混合物である。とりわけ、シクロペンタンおよび/またはn−ペンタンを、発泡剤(c)として用いる。
【0040】
本発明によるポリウレタンまたはポリイソシアヌレートフォームの製造のための触媒(d)として、従来法による既知のポリウレタンまたはポリイソシアヌレート形成性触媒、例えば有機錫化合物、例えば錫二酢酸、錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート等、および/または強塩基アミン、例えば2,2,2−ジアザビシクロオクタン、トリエチルアミンまたは好ましくはトリエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンまたはビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル、およびPIR反応を触媒するために酢酸カリウム、オクタン酸カリウムおよび脂肪族第4級アンモニウム塩を用いる。
【0041】
触媒は、全成分の全重量を基準として0.05〜3重量%、好ましくは0.06〜2重量%の量で好ましく用いる。
【0042】
上記成分の反応は、必要に応じて、(e)添加剤、例えば難燃剤、充填剤、気泡調整剤、気泡安定剤、表面活性化合物および/または酸化、熱または微生物による分解または老化を防止する安定剤、好ましくは難燃剤および/またはフォーム安定剤等の存在下に行う。均一な気泡構造の形成をフォーム形成の間に促進させる物質は、フォーム安定剤と称される。その例を以下に記載する:シリコーン含有フォーム安定剤、例えばシロキサン−オキシアルキレンコポリマーおよび他のオルガノポリシロキサン等、および脂肪アルコール、オキソアルコール、脂肪アミン、アルキルフェノール、ジアルキルフェノール、アルキルクレゾール、アルキルレゾルシノール、ナフトール、アルキルナフトール、ナフチルアミン、アニリン、アルキルアニリン、トルイジン、ビスフェノールA、アルキル化ビスフェノールA、ポリビニルアルコールのアルコキシル化生成物、および更に、ホルムアルデヒドおよびアルキルフェノールの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびジアルキルフェノールの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアルキルクレゾールの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアルキルレゾルシノールの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアニリンの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびトルイジンの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびナフトールの縮合生成物、ホルムアルデヒドおよびアルキルナフトールの縮合生成物、およびホルムアルデヒドおよびビスフェノールAの縮合生成物のアルコキシル化生成物。アルコキシル化試薬として、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリ−THFおよび高級同族体を用いることができる。
【0043】
一般に、先行技術から既知の難燃剤を、難燃剤として用いることができる。適当な難燃剤は、例えば臭素化エーテル(例えばIxol(登録商標) B251)、臭素化アルコール、例えばジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコールおよびPHT−4−ジオール等、並びに塩素化ホスフェート、例えばトリス−(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス−(2−クロロイソプロピル)ホスフェート(TCPP)、トリス(1,3−ジクロロイソプロピル)ホスフェート、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートおよびテトラキス(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート等である。既に記載のハロゲン置換ホスフェートの他に、無機難燃剤、例えば赤リン、赤リンを含有する調製物、酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、ポリリン酸アンモニウムおよび硫酸カルシウムまたはシアヌル酸誘導体、例えばメラミンまたは少なくとも2つの難燃剤、例えばポリリン酸アンモニウムおよびメラミン、必要に応じてデンプン等の混合物等を用いて、本発明による硬質PURまたはPUR/PIR硬質フォームを難燃性とすることができる。さらなるハロゲン不含難燃剤として、ジエチルエタンホスホネート(DEEP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルプロピルホスホネート(DMPP)、リン酸クレジルジフェニル(CDP)等を用いることができる。本発明では、難燃剤は、好ましくは、成分(b)〜(e)の全重量を基準として0〜30重量%、特に好ましくは2〜25重量%、とりわけ2.5〜15重量%の量で本発明の構成内で用いる。
【0044】
上記および他の出発物質の更なる詳細は、専門文献、例えばKunststoffhandbuch、第VII巻、Polyurethane、Carl Hanser Verlag Munich、Vienna、第1版、第2版および第3版、1966年、1983年および1993年から取り込むことができる。
【0045】
ポリウレタン硬質フォームを製造するために、ポリイソシアネート(b)および成分(a)および必要に応じて(f)を、フォームのイソシアネート価が90〜600、好ましくは150〜500、特に好ましくは180〜450となるような量で反応させる。
【0046】
硬質ポリウレタンフォームは、回分式または連続的に既知の方法により製造することができる。当業者に既知の方法は、とりわけ、ブロックフォーム製造法(連続および回分式)、1成分系(回分式)および成形断熱フォーム(回分式)における使用である。本明細書に記載の発明は、全ての方法に関するが、好ましくは軟質および/または硬質材料を、被覆層として用いることができる連続2重ベルト法に関する。
【0047】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、好ましくは90%を越える、特に好ましくは95%を越える不連続気泡割合を有する。
【0048】
本発明によるPURおよびPUR/PIRフォームは、好ましくは28g/m〜300g/m、特に好ましくは30g/m〜50g/mの密度を有する。
【0049】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、とりわけ、例えば冷蔵装置、容器または建築物における断熱のために、例えば断熱管、サンドイッチ要素、断熱ボードまたは冷蔵装置の形態で用いる。
【0050】
また、本特許出願の範囲内のポリウレタンは、ウレタン基に加えて、他の基、例えばイソシアネート基同士の反応により形成されるような基、例えばイソシアヌレート基、またはイソシアネート基とヒドロキシル基以外の基との反応により形成されるような基を含有するポリマーイソシアネート付加物を含むと理解され、前記基は通常、ポリマー中にウレタン基と共に存在する。
【0051】
本発明は、ポリウレタンを製造するための上記の方法により製造されたポリエステルポリオールの使用を更に提供する。ポリウレタンは、多くの分野に用いられる多目的な材料である。用いることができる原料の多くの種類に起因して、極めて種々の特性を有する生成物、例えば断熱のための硬質フォーム、マットレスのための軟質ブロックフォーム、車両座席および座席クッションのための成型軟質フォーム、防音のための音響フォーム、熱可塑性フォーム、靴フォームまたは微小気泡フォームだけでなく、圧縮キャスト系および熱可塑性ポリウレタンを製造することができる。
【実施例】
【0052】
実施例に用いた原料のリスト
テレフタル酸: Interquisa
無水フタル酸(PA): Lanxessからの工業PA
PEG 200: BASF
PEG 180: Ineos
エチレングリコール(EG): Ineos
塩化錫(II)二水和物: Aldrich
チタンテトラブチレート: Aldrich
【0053】
用いた装置および分析法:
粘度: Anton PaarからのMCR 51
ヒドロキシル価: 標準DIN 53240に基づく
酸価: 標準DIN 53402に基づく
【0054】
A)ポリエステルポリオールの製造
実施例A−1(本発明による)
Pilz加熱マントル、機械スターラー、内部温度計、40cm充填カラム、カラムヘッド、下降高効率凝縮器、ならびに膜真空ポンプを有する4リットル4口フラスコ中に、2355g(11.78モル)のPEG 200を、100℃にて窒素ブランケット下で初期充填した。約5分の間に、412g(2.48mol)のテレフタル酸を撹拌投入し、78mgの二塩化錫二水和物を添加した。該混合物を230℃5時間加熱し、その間、水を留去し、反応混合物におけるヘイズは消滅した。次いで367g(2.48モル)の無水フタル酸(PA)を添加し、該混合物を4時間230℃に加熱した。次いで更なる78mgの二塩化錫二水和物を添加し、真空を60ミリバールの最終水準にて適用した。この条件下、濃縮を更なる15時間連続させた。生成物を冷却し、以下の特性を決定した。
【0055】
ポリエステルの分析:
ヒドロキシル価: 236.6mgKOH/g
酸価: 0.2mgKOH/g
粘度: 720mPas(25℃)
【0056】
本発明による実施例A−2〜A−4およびA−6(C)のエステルを同様に製造した。
【0057】
実施例A−5)(比較)
Pilz加熱マントル、機械スターラー、内部温度計、40cm充填カラム、カラムヘッド、下降高効率凝縮器、ならびに膜真空ポンプを有する4リットル4口フラスコ中に、1444g(9.76モル)のPAを、180℃にて初期充填した。約30分の間に、1034g(9.76mol)のジエチレングリコールを添加し、該混合物を60分間180℃にて撹拌した。次いで356g(2.44モル)のアジピン酸および429g(6.92モル)のエチレングリコールを添加した。該混合物から、水を3.5時間標準気圧にて留去した。65mgの二塩化錫二水和物を添加し、該反応を更に30時間200℃および70ミリバールにて完了し、次いで352g(3.32モル)のジエチレングリコールを添加し、該混合物を更に6時間200℃および標準気圧にて反応を継続させた。該生成物を、冷却し、以下の特性を決定した。
ポリエステルの分析:
ヒドロキシル価: 235.2mgKOH/g
酸価: 0.7mgKOH/g
粘度: 9150mPas(25℃)
【0058】
【表1】

【0059】
比較例A−5および比較例A−6は、A−5(比較)においてテレフタル酸もオリゴエチレングリコールも用いておらず、A−5(比較)およびA−6(比較)においてオリゴエチレングリコールからのエーテル基の割合は、9モル/kgエステル未満であるので本発明に従わない。さらに、A−6(比較)は周囲温度にて液体ではない。
【0060】
硬質PUR/PIRフォームのための原料:
a)実施例A−1、A−2、A−3、A−4およびA−5(C)からのポリエステル
【0061】
b)〜f)からなるフォーム添加剤:
b)TCPP、Lanxessからのトリス(1−クロロ−2−プロピル)ホスフェート
c)TEP、Levagardからのトリエチルホスフェート
d)Bayer MaterialScienceからの添加剤1132
e)PET V 657、Bayer MaterialScience AGからの約660Daの分子量を有する3官能性ポリエーテルポリオール
f)Evonikからの安定剤ポリエーテル−ポリシロキサンコポリマー
【0062】
表2に示したフォーム添加剤(b〜f)は、成分(b)20重量部、成分(c)5重量部、成分(d)2.2重量部、成分(e)5重量部および成分(f)4重量部からなる。
【0063】
活性剤(g) カルボン酸塩(PIR触媒): Bayer MaterialScience AG、レーバークーゼン、独国からのGDesmorapid(登録商標) VP.PU 30HB13
イソシアネート: (h)Desmodur(登録商標) VP.PU 44V70L、Bayer MaterialScience AG、レーバークーゼン、独国からの約31.5重量%のNCO含有量を有する4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートに基づくポリマーポリイソシアネート
発泡剤(i) n−ペンタン、Kremer&Martin
【0064】
【表2】

【0065】
指数は、全ツェレビチノフ活性水素原子に対する全イソシアネート基のモル比である。
【0066】
実験室規模により、ポリイソシアネート成分とは別の硬質フォーム処方物のための全ての原料を、紙カップ中へ計量投入し、23℃にて温度制御し、Pendraulik実験室ミキサー(例えばPendraulikからの型LM−34)を用いて混合し、および揮発した発泡剤(ペンタン)を必要に応じて添加する。次に、撹拌しながら、ポリイソシアネート成分(同様に23℃にて温度制御)をポリオール混合物に添加し、これを激しく混合し、該反応混合物を、紙で覆われた木型へ注いだ。発泡操作中に、硬化時間およびタックフリー時間を決定した。24時間後、9cmのエッジ長さを有する立方体形試験片をフォームブランクから切り取った。
【0067】
以下の特性を決定した:
寸法安定性: 24時間+80℃にて貯蔵後の立方体形試験片の寸法変化を計測することにより決定。本発明によるフォームは、各空間方向について1%(絶対)以下の長さの相対変化を示す。
【0068】
中心密度: 切り取った立方体形試験片の体積および重量から決定。
【0069】
KBT: DIN 4102−1によるKleinbrenner試験(小型バーナー試験)。本発明による硬質フォームは、防火クラスB2を達成する。
【0070】
BVD試験: 1998年の版における、1990年、1994年、1995年および2005年の補足(Vereinigung kantonaler Feuerversicherungen、Bundesstr、20、3011、ベルン、スイスから得られる)によるVereinigung kantonaler Feuerversicherungen(州の火災保険協会)からの建築材料の可燃性を決定するスイス基礎試験に従う。
【0071】
硬化時間:木製棒を反応性ポリマー溶融物中へ浸漬し、再び取り出すことにより決定。該ポリマー溶融物が硬化する時間を特性化する。
【0072】
タックフリー時間: フォームの表面の条件を特性化する。フォームがライズし終わった際、フォームを木製棒で軽く叩くことにより決定する。材料が粘着しなくなる時間を、タックフリー時間とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
9.0モル/kgポリエステルポリオールおよび22モル/kgポリエステルポリオールの間の範囲のエーテル基の濃度を有するポリエステルポリオールの製造方法であって、
(i)第1工程において、
(A)必要に応じてC〜Cアルキルエステルの形態でのイソフタル酸、および/または必要に応じてC〜Cアルキルエステルの形態でのテレフタル酸を、
(B)式:H−(OCHCH−OHで示され、3.0および9.0の間の範囲のオキシエチレン基の数平均数nを有するオリゴエチレングリコールと、
錫(II)塩、ビスマス(II)塩およびチタンテトラアルコキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒の存在下、160℃および240℃の間の範囲の温度および1および1013ミリバールの間の範囲の圧力にて、7および100時間の間の範囲の時間反応させ、および
(ii)第2工程において、工程(i)から得られる反応混合物を、(C)フタル酸および/または無水フタル酸と反応させる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
成分(A)は、混合物の全量を基準として8〜50重量%の量で存在させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分(B)は、混合物の全量を基準として50〜92重量%の量で存在させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
成分(C)は、混合物の全量を基準として1〜25重量%の量で存在させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリステルポリオールは、100mgKOH/gおよび400mgKOH/gの間の範囲のヒドロキシル価を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ポリエステルポリオールは、DIN53019に従って計測した、25℃にて400mPasおよび10000mPasの間の範囲の粘度を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
オリゴエチレングリコール(B)は、3.1および9の間の範囲のオキシエチレン基nの数平均数を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ポリエステルポリオールは、−40℃および25℃の間の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
成分(A)および(B)を、塩化錫(II)、塩化ビスマス(II)、チタンテトラメタノレートおよびチタンテトラエタノレートからなる群から選択される少なくとも1つの触媒の存在下で反応させることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
錫(II)塩、ビスマス(II)塩およびチタンテトラアルコキシレートからなる群から選択される触媒を、合計20〜200ppm(全ての原料成分A〜Cの重量部の合計を基準)の量で用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法により得られるポリエステルポリオール。
【請求項12】
PURまたはPUR/PIRフォームを製造するための、請求項11に記載のポリエステルポリオールの使用。
【請求項13】
PURまたはPUR/PIRフォームの製造方法であって、工程:
a)請求項11に記載の少なくとも1つのポリエステルポリオールと、
b)少なくとも1つのポリイソシアネート含有成分、
c)少なくとも1つの発泡剤、
d)少なくとも1以上の触媒、
e)必要に応じて、少なくとも1つの難燃剤および/または他の補助物質および添加剤、
f)必要に応じて、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物
との反応を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得られるPURまたはPUR/PIRフォーム。
【請求項15】
断熱管、サンドイッチ要素、断熱ボードまたは冷蔵装置を製造するための、請求項13に記載の方法により得られるPURまたはPUR/PIRフォームの使用。

【公表番号】特表2012−528894(P2012−528894A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512233(P2012−512233)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003021
【国際公開番号】WO2010/139395
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】