説明

イソフムロン類含有組成物およびその製造方法

【課題】先苦味だけではなく後苦味も低減されたイソフムロン類含有組成物の提供。
【解決手段】イソフムロン類のγサイクロデキストリン(γCD)包接体と、脂溶性物質および/またはオリゴ糖とを含んでなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、イソフムロン類含有組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロンのようなイソフムロン類は、ホップの毬花に含まれるフムロン、コフムロン、アドフムロンのようなフムロン類を異性化したものであり、ビール、発泡酒等の苦味の主体成分として知られている。ホップは、ビール、発泡酒の醸造において、苦味のみならず独特の芳香の付与、腐敗防止、清澄化、泡持ち性の向上など多様な役割を演じている。ホップ(Humulus lupulus L.)はアサ科に属する雌雄異株、宿根多年生の蔓性植物であり、原産地は西アジアから中央ヨーロッパにかけてとされている。比較的寒冷な地域に自生し、また商品作物としてドイツ、アメリカ、チェコ、中国等において実用栽培されている。多くの栽培種があり、Hersbrucker、 Tettnanger、 Saaz、 Hallertau、 Northern Brewer、 Brewers Gold、 Fuggle、 Cluster、などが代表的である。
【0003】
イソフムロン類は、ビール、発泡酒の醸造における役割に加えて、様々な有用生理作用を有することが確認されている。例えば、抗う蝕作用(特開昭63−211219号公報)、抗骨粗鬆症作用(特開平7−330594号公報)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)増殖抑制作用(特開平10−25247号公報)、アルドースリダクターゼ阻害作用(特開2003−226640号公報)、血糖値改善作用(特開2004−224795号公報)などが挙げられる。これらを背景に、イソフムロン類をいわゆる健康食品、機能性食品などの健康志向の飲料・食品へ応用することが期待されている。
【0004】
しかしながらイソフムロン類は前述の通り、独特の苦味を有する。ビール、発泡酒における含有量は20ppm前後、乃至はそれ以下であり、個人差はあるものの、30ppmを超えると軽度の不快感を伴い、50ppmを超えると強い不快感がある。ところが前述の有用生理作用を期待して飲用もしくは食用に供する場合、不快感を伴う量が必要とされる。加えてイソフムロン類は、保存時に分解しやすい、元来油様の性状であるため食品加工に適さない、などの欠点も有している。以上の点から、イソフムロン類を高含有する飲料・食品の具現化は困難であった。
【0005】
ところで、植物に起原する低分子の生理活性物質は、総じて苦味や渋味を有することが多いため、これまでにこれらを軽減するための技術が幾つか提唱されている。サイクロデキストリン(CD)を利用した技術も報告されている。
【0006】
CDはデンプン類にサイクロデキストリン生成酵素(Cyclodextrin glucanotransferase,CGTase)を作用させて得られる環状オリゴ糖の総称であり、グルコース分子がα−1,4結合で環状に連なる構造を形成している。19世紀後半から自然界において存在することが知られていたが、20世紀初頭になってShardingerにより分離精製法や環状構造が明らかにされた。1970年代になると細菌由来のCGTaseが発見され、結晶性CDの生産技術開発が加速した。現在、グルコースの重合度が6、7、8のものが実用上入手可能であり、それぞれαCD、βCD、γCDと呼称されている。
【0007】
CDは立体的に見れば、いわば底のないバケツ様の構造であり、空洞外部が親水性であるのに対し、空洞内部が疎水性を示すことが特徴的である。このような特性のため、CDは空洞内部に特定の有機分子(いわばゲスト分子)を包み込むように取り込む現象を示すことが知られており、該現象を包接と呼んでいる。包接作用を利用することにより、ゲスト分子の味、溶解性などを変化させることができると言われている。
【0008】
これまでに、イソフムロン類がγサイクロデキストリン(CD)により包接されてなるイソフムロン類包接体が報告されている(特許文献1)。しかし、該イソフムロン類包接体が、イソフムロン類の後苦味を低減させることについては報告されていない。
【特許文献1】WO2007/066773号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、γCDにより包接化されたイソフムロン類と、脂溶性物質および/またはオリゴ糖とを含んでなる組成物が、イソフムロン類特有の苦味のうち、先苦味だけでなく後苦味も大幅に低減させることを見出した(実施例1)。本発明をこれらの知見に基づくものである。
【0010】
本発明は、γCDにより包接化されたイソフムロン類を含んでなり、かつ先苦味だけでなく後苦味も低減されたイソフムロン類含有組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明によれば、イソフムロン類のγサイクロデキストリン包接体と、脂溶性物質および/またはオリゴ糖とを含んでなるイソフムロン類含有組成物(以下、「本発明によるイソフムロン類含有組成物」)が提供される。
【0012】
本発明によれば、(a)イソフムロン類、γサイクロデキストリン、および水性溶媒と、(b)脂溶性物質および/またはオリゴ糖、とを混合し、ホモジナイズすることを含んでなるイソフムロン類含有組成物の製造方法が提供される。
【0013】
本発明によるイソフムロン類含有組成物は、イソフムロン類特有の苦みのうち、先苦味だけでなく後苦味も軽減されるため、生体機能を期待しうる程度の量のイソフムロン類を含有しつつ、イソフムロン類の苦みが実質的に緩和された食品の提供が可能となる点で有利である。また、本発明によるイソフムロン類含有組成物は、ハンドリング性に優れ、製造が容易であるため、工業的生産において有利である。
【発明の具体的説明】
【0014】
本発明によるイソフムロン類含有組成物は、イソフムロン類がγサイクロデキストリン(CD)により包接されてなるイソフムロン類包接体(以下、「イソフムロン類包接体」という)と、脂溶性物質および/またはオリゴ糖と、場合によっては、乳化剤とを含んでなり、イソフムロン類特有の苦みのうち、先苦味だけでなく後苦味も軽減されることを特徴とする。以下、イソフムロン類包接体、脂溶性物質、オリゴ糖、乳化剤について説明する。
【0015】
[イソフムロン類包接体]
本発明によるイソフムロン類含有組成物において用いられるイソフムロン類包接体は、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを一定の比率で混合することにより得られる、イソフムロン類包接体または該イソフムロン類包接体を含んでなる組成物を使用することができる。
【0016】
このようなイソフムロン類包接体またはイソフムロン類包接体を含んでなる組成物は、WO2007/066773号公報の記載に従って調製することができる。
【0017】
例えば、イソフムロン類包接体を含んでなる組成物は、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを一定の比率で混合し、得られた混合物を攪拌することにより得ることができる。
【0018】
イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを混合する順番は、特に限定されない。
【0019】
得られた混合物の攪拌強度は、水性溶媒中でイソフムロン類とγCDが均一になればよく、緩やかな攪拌で行うことができる。
【0020】
得られた混合物の攪拌時間は、数秒〜数分とすることができる。
【0021】
攪拌の過程において、水性溶媒を加温することにより、イソフムロン類およびγCDの水性溶媒への溶解や、イソフムロン類とγCDとの接触を促進することができる。
【0022】
イソフムロン類包接体を含んでなる組成物は、水性溶媒の比率が低い場合は、白色スラリーとして、水性溶媒の比率が高い場合は、白濁液として得ることができる。
【0023】
イソフムロン類包接体は、このようにして得られた組成物から濃縮・単離することにより得ることができる。例えば、上記製造法により得られた組成物から遠心分離などの固液分離法により固形分を回収し、必要に応じて加水洗浄、再固液分離を行い、イソフムロン類包接体をペースト状物質として得ることができる。また、上記製造法により得られた組成物およびペースト状物質を、噴霧乾燥、凍結乾燥などに付し、イソフムロン類包接体を固形物質として得ることができる。
【0024】
本発明において用いられる「イソフムロン類包接体」または「イソフムロン類包接体を含んでなる組成物」としては、以下の四つの態様が挙げられる。
【0025】
第一の態様としては、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを、イソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜25:20〜112.5(但し、γCD:水性溶媒=1:2〜9である)、より好ましくは、イソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:6〜12.5:54〜112.5(但し、γCD:水性溶媒=1:2〜9である)の比で混合することにより得ることができる、イソフムロン類包接体またはイソフムロン類包接体を含んでなる組成物が挙げられる。
【0026】
第二の態様としては、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを、pH4.0以下で、イソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜33:20〜627(但し、γCD:水性溶媒=1:2〜19である)の比で混合することにより得ることができる、イソフムロン類包接体またはイソフムロン類包接体を含んでなる組成物が挙げられる。
【0027】
第三の態様としては、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを、pH4.5以下で、イソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜272:20〜1088(但し、γCD:水性溶媒=1:2〜9である)の比で混合することにより得ることができる、イソフムロン類包接体またはイソフムロン類包接体を含んでなる組成物が挙げられる。
【0028】
第四の態様としては、第一の態様の組成物を、pH4.5以下で、かつイソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜272:4000〜20000の比となるように水性溶媒により希釈することにより得られる、イソフムロン類包接体またはイソフムロン類包接体を含んでなる組成物が挙げられる。
【0029】
本発明の第四の態様としてはまた、第二の態様の組成物を、pH4.5以下で、かつイソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜272:4000〜20000の比となるように水性溶媒により希釈することにより得られる、イソフムロン類包接体またはイソフムロン類包接体を含んでなる組成物が挙げられる。
【0030】
本発明の第四の態様としては更に、第三の態様の組成物を、pH4.5以下で、かつイソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜272:4000〜20000の比となるように水性溶媒により希釈することにより得られる、イソフムロン類包接体またはイソフムロン類包接体を含んでなる組成物が挙げられる。
【0031】
イソフムロン類
本発明において、イソフムロン類は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0032】
ここでイソフムロン類は、市販されている異性化ホップエキスを好ましくは用いることができる。イソフムロン類はまた、公知の方法に従って製造することができ、例えば、Developments in Food Science 27, CHEMISTRY AND ANALYSIS OF HOP AND BEER BITTER ACIDS, M. Verzele, ELSEVIERに記載の方法に従って合成することができる。イソフムロン類は、後述する方法により得られたホップエキスまたは異性化ホップエキスから単離、精製することにより得ることができる。
【0033】
異性化ホップエキスは、ホップのルプリン部に由来する抽出物(ホップエキス)を異性化することにより得ることができる。ホップはアサ科に属する多年生植物であり、その毬花(未受精の雌花が熟成したもの)である。ホップのルプリン部は、ビール醸造原料であり、ビールに苦味、芳香を付与する為に用いる。ビール中の醸造過程においてホップ中のフムロン類(α酸画分、例えば、フムロン、コフムロン、アドフムロン、ポストフムロン、プレフムロン等)は、イソフムロン類(イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン等)に異性化され、ビールに特有の味と香りを付与する。
【0034】
ホップの抽出物は、例えば、毬花やその圧縮物をそのままもしくは粉砕後、抽出操作に供することによって調製することができる。抽出方法としては、例えば、ビール醸造に用いられるホップエキスの調製法として用いられるエタノール溶媒による抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法などがある。このうち超臨界二酸化炭素抽出はポリフェノール成分が少なく、苦味質と精油成分がより高く濃縮されるなどの特徴を有する。また、ホップ抽出法として、その他一般に用いられる方法を採用することができ、例えば、溶媒中にホップの毬花、その粉砕物などを冷浸、温浸等によって浸漬する方法;加温し攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法;またはパーコレーション法等を挙げられる。得られた抽出液は、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去した後、使用の態様により、そのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮若しくは乾燥して用いてもよい。
【0035】
また濃縮または乾燥後、さらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用いることもできる。更に、本発明においては、例えば、上記のようにして得られた溶媒抽出液を、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によりホップ抽出エキス乾燥物として使用することもできる。
【0036】
前記抽出に用いられる溶媒としては、例えば、水;メタノール,エタノール,プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール;酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類;その他エチルエーテル、アセトン、酢酸等の極性溶媒;ベンゼンやヘキサン等の炭化水素;エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒の公知の有機溶媒を挙げることができる。これら溶媒は、二種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
その後必要に応じて不溶物をろ過により除去し、抽出物を減圧等により濃縮し、溶媒を乾固させてもよい。また毬花を粉砕したものを超臨界二酸化炭素抽出、あるいは液化炭酸ガス抽出することも好ましい。
【0038】
これら抽出した粗エキスには、フムロン類に加えその異性化物であるイソフムロン類が含有される。本発明において使用し得るイソフムロン類は、この粗エキスから、慣用の方法を適用して分離精製してもよい。また単離精製したイソフムロン類はほとんど市販されていないため、異性化ホップエキスをそのまま使用してもよい。
【0039】
イソフムロン類をより高含量含むものを得る場合にはこの粗エキスをアルカリ存在下または酸化マグネシウム存在下で加熱化し更に異性化することが好ましい。異性化によりホップ抽出物中のフムロン類はイソフムロン類に完全に変換される。
【0040】
ここで異性化処理をさらに具体例を挙げて説明すると、ホップエキスを、エタノール等のアルコール性溶媒に溶解した後、ここに弱アルカリ性の水を加えて、その存在下において加熱(例えば、92〜93℃程度)して還流することによってホップエキスを熱異性化し、異性化ホップエキスを得ることができる。得られた異性化ホップエキスは、必要に応じて、公知の方法(例えば、ろ過、減圧濃縮、凍結乾燥等)により濃縮したり、精製したりしてもよい。なお、前記異性化処理において使用する弱アルカリ性(例えば、pH8.5〜9.5)の水として、例えば、飲料用アルカリイオン水などのような市販の水(例えば、ボトルドウォーター)を使用することが、安全性の観点からは望ましい。市販の飲料の水であれば、摂取されてきた経験が充分にあるなど、安全性が高い。また、ビール醸造の麦汁煮沸過程で熱異性化されて生成する反応様式と前記異性化処理は本質的に同等であるので、飲食品を提供する観点からは安全性が高い。
【0041】
本発明においては、前述したようにして得られた異性化ホップエキスを組成物および食品等の製造に直接使用してもよいが、さらに有効成分を高濃度に含有する分画物を使用することが好ましい。
【0042】
また、種々の方法で抽出されたホップエキスおよび異性化されたエキスはビール添加物として市販されている。このため、本発明においては、これら市販のホップエキスまたは異性化ホップエキスを、そのまままたは必要に応じてさらに異性化処理に付した後、使用してもよい。市販の異性化ホップエキスとしては、例えば、ホップ毬花粉砕物から主にフムロン類とルプロン類を超臨界二酸化炭素抽出したホップエキス(例えば、CO2 Pure Resin Extract(Hopsteiner社))、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化したエキス(例えば、Isomerized Kettle Extract (SS. Steiner社)、イソフムロン類とルプロン類が主成分)、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化した後、さらにカリウム塩化して粘性の低い液体とした水溶性エキス(例えば、ISOHOPCO2N(English Hop Products社)、ISOHOPR(Botanix社)、イソフムロン類が主成分)などを用いることができる。
【0043】
またこれらのエキスよりもさらにイソフムロン類を高濃度に含有する分画物を、前記等の方法も含め濃縮できることは言うまでもない。
【0044】
また、酸化還元反応により製造され、ホップの代替品、補完品として一部の地域で使用されている還元型異性化ホップエキスまたはこれに含有される還元型イソフムロンであるテトラハイドロ・イソフムロン、ヘキサハイドロ・イソフムロン、ρ-イソフムロンも本発明の対象と成り得る。
【0045】
γCDおよび溶媒
本発明において、γCDは、市販されているものを入手して用いることができる。γCDの形態は、粉末、顆粒、シロップなどいずれであってもよい。
【0046】
γCDの純度は高い方が好ましいが、αCDやβCD、あるいはグルコースやマルトースなど環状糖以外の糖類は本発明の効果を妨げるものではないので、これらとの混合物であってもよい。また、γCDは、分岐γCD、修飾γCD等の、γCDの類縁化合物であってもよい。
【0047】
本発明において、イソフムロン類とγCDの接触を促す媒体である溶媒としては、水性媒体、特に水、が好ましいが、イソフムロン類とγCDを均一に溶解もしくは分散することができるものであれば特に限定されない。水以外の水性媒体としては、例えば、pH緩衝液、極性有機溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。
【0048】
[脂溶性物質]
本発明による組成物において用いられる脂溶性物質は、食品として使用可能な脂溶性の物質を使用することができる。
【0049】
脂溶性物質としては、例えば、脂肪酸、油脂、脂溶性ビタミン類等が挙げられる。脂溶性物質は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
脂肪酸としては、食品として使用可能な動植物油脂由来の脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)、不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられる。脂肪酸は、好ましくは、炭素数14〜18の飽和および不飽和脂肪酸である。より好ましくは、炭素数14〜18の飽和および不飽和脂肪酸から選択される2種以上の脂肪酸を含む混合物である。
【0051】
油脂としては、食品として使用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等の動物性油脂およびこれらの硬化油、大豆油、ごま油、落花生油、とうもろこし油、なたね油、こめ油、やし油、パーム油等の植物性油およびこれらの硬化油等が挙げられる。油脂は、好ましくは、なたね油である。
【0052】
脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK等が挙げられる。脂溶性ビタミンは、好ましくは、ビタミンE、より好ましくは、トコフェロールである。
【0053】
脂溶性ビタミンは、市販のものを入手することができる。例えば、トコフェロールは、Eオイル705(理研ビタミン社製)、イーミックスA−40(エーザイ社製)等を使用することができる。
【0054】
脂溶性物質は、イソフムロン類100質量部に対して、10〜1000質量部、好ましくは、10〜300質量部、より好ましくは、50〜300質量部とすることができる。
【0055】
本発明において、脂溶性物質は、好ましくは、脂溶性ビタミンである。
【0056】
[オリゴ糖]
本発明による組成物において用いられるオリゴ糖は、単糖が約2〜20分子程度結合した糖類を使用することができる。
【0057】
オリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖およびイソマルトオリゴ糖等が挙げられ、好ましくは、イソマルトオリゴ糖である。オリゴ糖は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
イソマルトオリゴ糖とは、グルコースを構成糖とする分岐オリゴ糖を意味し、例えば、パノース、イソマルトース、イソマルトトリオース等が上げられる。
【0059】
イソマルトオリゴ糖は、パノース、イソマルトース、イソマルトトリオース等の混合物であっても、単一成分であってもよい。イソマルトオリゴ糖の混合物は、イソマルトオリゴ糖中の各成分については、例えば、パノースを28重量%以上とすることができ、あるいは、パノースと、イソマルトースと、イソマルトトリオースとの合計を50重量%以上とすることができる。
【0060】
イソマルトオリゴ糖は、市販のものを入手することができる。例えば、パノラップ(林原商事社製)、オリゴタイム(昭和産業社製)等を使用することができる。
【0061】
オリゴ糖は、イソフムロン類100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは、100〜5000質量部、より好ましくは、500〜5000質量部、好ましくは、500〜3500質量部とすることができる。
【0062】
[乳化剤]
本発明による組成物において用いられる乳化剤は、食品として使用可能な乳化剤を使用することができる。
【0063】
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンが挙げられる。乳化剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの外、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等も含まれる。
【0065】
レシチンとしては、分別レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等が挙げられる。
【0066】
本発明において、乳化剤は、好ましくは、グリセリン脂肪酸エステルであり、より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、またはこれらの組み合わせである。
【0067】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを組み合わせて用いる場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとの割合は、1〜100:1〜10とすることができる。
【0068】
乳化剤は、市販のものを入手することができる。
【0069】
乳化剤の添加量は、当業者であれば適宜決定することができるが、例えば、イソフムロン類100質量部に対して、10〜5000質量部、好ましくは、50〜2000質量部とすることができる。
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、イソフムロン類包接体と、イソフムロン類100質量部に対して100〜10000質量部(例えば、100〜5000質量部、、500〜5000質量部、500〜3500質量部)のオリゴ糖(例えば、イソマルトオリゴ糖)とを含んでなるイソフムロン類含有組成物が提供される。
【0071】
本発明の好ましい態様によれば、イソフムロン類包接体と、イソフムロン類100質量部に対して10〜1000質量部(例えば、10〜300質量部、50〜300質量部)の脂溶性物質(例えば、脂溶性ビタミン)とを含んでなるイソフムロン類含有組成物が提供される。
【0072】
本発明の好ましい態様によれば、イソフムロン類包接体と、イソフムロン類100質量部に対して100〜10000質量部(例えば、100〜5000質量部、、500〜5000質量部、500〜3500質量部)のオリゴ糖(例えば、イソマルトオリゴ糖)と、10〜1000質量部(例えば、10〜300質量部、50〜300質量部)の脂溶性物質(例えば、脂溶性ビタミン)と、場合によっては、さらに10〜5000質量部の乳化剤とを含んでなるイソフムロン類含有組成物が提供される。
【0073】
[イソフムロン類含有組成物の製造方法]
本発明によれば、(a)イソフムロン類、γサイクロデキストリン、および水性溶媒と、(b)脂溶性物質および/またはオリゴ糖と、場合によっては、(c)乳化剤とを混合し、ホモジナイズすることを含んでなる、イソフムロン類含有組成物の製造方法が提供される。
【0074】
ここで、構成成分「(a)イソフムロン類、γサイクロデキストリン、および水性溶媒」は、イソフムロン類包接体を製造可能な比で混合された、イソフムロン類、γサイクロデキストリン、および水性溶媒であってもよいし、イソフムロン類包接体(例えば、イソフムロン類包接体の乾燥体)と水性溶媒との混合物であってもよい。
【0075】
イソフムロン類含有組成物の製造において、各構成成分(a)〜(c)の混合の順番は、最終的にホモジナイズ処理に供する、イソフムロン類包接体を含んでなる混合物を得ることができれば特に限定されない。例えば、まず、構成成分(a)からイソフムロン類包接体を含んでなる組成物を調製した後、これに構成成分(b)、さらには構成成分(c)を添加し、混合し、ホモジナイズ処理することができる。あるいは、構成成分(a)〜(c)を同時に混合し、攪拌し、ホモジナイズ処理することもできる。好ましくは、構成成分(a)の各成分をまず混合、攪拌して、イソフムロン類包接体を含んでなる組成物を調製した後、これに構成成分(b)、さらには構成成分(c)を添加し、混合し、ホモジナイズ処理することができる。
【0076】
ホモジナイズするための装置としては、特に限定されず、例えば、高速回転式ホモジナイザー(例えば、TKホモミクサー(プライミクス社製)、クレアミックス(エムテクニック社製)等)、強制撹拌分散機(例えば、フィルミックス等)、高圧ホモジナイザー、ピストンホモゲナイザー、スターバースト、コロイドミル、アトライター等が挙げられる。
【0077】
ホモジナイズ処理の条件は、混合媒体において脂溶性物質を可溶化することができれば特に限定されないが、例えば、TKホモミクサーであれば2000〜12000rpm、ピストンホモゲナイザーであれば5〜200Mpa、スターバーストであれば50〜250MPaの条件とすることができる。
【0078】
このようなホモジナイズ処理に供することにより、イソフムロン類包接体を含んでなる組成物にオリゴ糖を溶解させることができる。また、このようなホモジナイズ処理に供することにより、乳化剤を使用しなくても、イソフムロン類の苦味(特に、後苦味)を低減させるような形態で脂溶性物質を、イソフムロン類包接体を含んでなる組成物に存在させることができる。
【0079】
本発明の好ましい態様によれば、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを、イソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜25:20〜112.5(但し、γCD:水性溶媒=1:2〜9である)の比で混合した後、イソフムロン類100質量部に対して100〜10000質量部(例えば、100〜5000質量部、500〜5000質量部、500〜3500質量部)のオリゴ糖(例えば、イソマルトオリゴ糖)を添加し、混合した後、得られた混合物をホモジナイズすることを含んでなるイソフムロン類含有組成物の製造方法が提供される。
【0080】
本発明の好ましい態様によれば、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを、イソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜25:20〜112.5(但し、γCD:水性溶媒=1:2〜9である)の比で混合した後、イソフムロン類100質量部に対して、10〜1000質量部(例えば、10〜300質量部、50〜300質量部)の脂溶性物質(例えば、脂溶性ビタミン)を添加し、混合した後、得られた混合物をホモジナイズすることを含んでなるイソフムロン類含有組成物の製造方法が提供される。
【0081】
本発明の好ましい態様によれば、イソフムロン類とγCDと水性溶媒とを、イソフムロン類:γCD:水性溶媒=1:5〜25:20〜112.5(但し、γCD:水性溶媒=1:2〜9である)の比で混合した後、イソフムロン類100質量部に対して、100〜10000質量部(例えば、100〜5000質量部、500〜5000質量部、500〜3500質量部)のオリゴ糖(例えば、イソマルトオリゴ糖)、10〜1000質量部(例えば、10〜300質量部、50〜300質量部)の脂溶性物質(例えば、脂溶性ビタミン)、場合によっては、さらに10〜5000質量部の乳化剤(例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)を添加し、混合した後、得られた混合物をホモジナイズすることを含んでなるイソフムロン類含有組成物の製造方法が提供される。
【0082】
[イソフムロン類含有組成物を含んでなる食品]
本発明によるイソフムロン類含有組成物に含まれるイソフムロン類包接体は、適量のブタ膵臓由来のαアミラーゼ(Sigma-Aldrich,Inc.)で処理することにより、γCDが分解されイソフムロン類が遊離する。この現象は、比較的低濃度の白濁状態のイソフムロン類が該処理によって透明化し、該透明液を分析するとグルコース、マルトースおよびマルトトリオースが確認される。このことは、包接体を構成しているγCDがαアミラーゼによりグルコース、マルトースおよびマルトトリオースに分解され、その結果イソフムロン類が遊離することを強く示唆している。
【0083】
これらのことから、本発明によるイソフムロン類含有を利用した飲食物をヒトが摂取した場合、小腸上部でイソフムロン類はγCDと解離し、すみやかに腸管吸収され、イソフムロン類に認められている前記有用生理作用を何ら阻害しないと考えられる。
【0084】
本発明による食品は、本発明によるイソフムロン類含有組成物を添加することにより、イソフムロン類を有効量含有した食品である。ここで「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に、後述するような範囲で有効成分が摂取されるような含有量をいう。本発明による食品には、本発明によるイソフムロン類含有組成物を、組成物の形態で食品に配合することができる。より具体的には、本発明による食品は、本発明によるイソフムロン類含有組成物をそのまま食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を更に配合したもの、液状、半液体状若しくは固体状にしたもの、ペースト状のもの、一般の食品へ添加したものであってもよい。
【0085】
本発明において「食品」は、哺乳動物が摂取可能なものであればその形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料であってもよい。
【0086】
本発明において「食品」とは、健康食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、栄養補助食品)、機能性食品、病者用食品を含む意味で用いられる。
【0087】
上記健康食品はまた、通常の食品の形状(例えば、ヨーグルト、ゼリー)であっても、栄養補助食品の形状(例えば、サプリメント)であってもよい。
【0088】
ここで栄養補助食品の形状とは、錠剤、カプセル(軟カプセル、硬カプセル)等などが挙げられる。
【0089】
本発明による食品は、イソフムロン類の脂質代謝改善機能(WO03/068205号公報)、血圧降下機能および血管柔軟性改善機能(WO2004/064818号公報)などを期待する消費者に適した食品、すなわち、特定保健用食品、として提供することができる。ここでいう「特定保健用食品」とは、上記機能等を表示して食品の製造または販売等を行う場合に、保健上の観点から法上の何らかの制限を受けることがある食品をいう。
【0090】
本発明によれば、イソフムロン類を有効量含んでなる食品であって、上記機能が表示された食品が提供される。ここで、上記の各種機能は、食品の本体、容器、包装、説明書、添付文書、または宣伝物のいずれかに表示することができる。
【0091】
本発明による組成物の添加・配合の対象である日常摂取する食品としては、具体的には、具体的には、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、清涼飲料水、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、コーヒー、ココア、茶飲料、栄養ドリンク、スポーツ飲料、ミネラルウォーターなどの非アルコール飲料;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、酎ハイなどのアルコール飲料等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
本発明のより好ましい態様によれば、添加・配合の対象である食品としては、非アルコール飲料(例えば、清涼飲料、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、茶飲料、乳飲料等)やアルコール飲料(ビール、発泡酒等)が挙げられる。
【0093】
果汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、およびウメが挙げられる。また、野菜汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ、およびスイカが挙げられる。
【0094】
茶飲料とは、ツバキ科の常緑樹である茶樹の葉(茶葉)、または茶樹以外の植物の葉もしくは穀類等を煎じて飲むための飲料をいい、発酵茶、半発酵茶および不発酵茶のいずれも包含される。茶飲料の具体例としては、日本茶(例えば、緑茶、麦茶)、紅茶、ハーブ茶(例えば、ジャスミン茶)、中国茶(例えば、中国緑茶、烏龍茶)、ほうじ茶等が挙げられる。
【0095】
乳飲料とは、生乳、牛乳等またはこれらを原料として製造した食品を主原料とした飲料をいい、牛乳等そのもの材料とするものの他に、例えば、栄養素強化乳、フレーバー添加乳、加糖分解乳等の加工乳を原料とするものも包含される。
【0096】
本発明において提供される飲料(飲料形態の健康食品や機能性食品を含む)の製造に当たっては、通常の飲料の処方設計に用いられている糖類、香料、果汁、食品添加剤などを適宜添加することができる。飲料の製造に当たってはまた、当業界に公知の製造技術を参照することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0097】
本発明による組成物の有効成分であるイソフムロン類は、人類が食品として長年摂取してきたホップ抽出成分に含まれるものであることから、毒性も低く、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いられる。本発明による有効成分の摂取量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、本発明のイソフムロン包接体を食品として摂取する場合には、成人1人1日当たり20mg〜150mg、好ましくは35mg〜55mg程度の摂取量となるように配合することができる。
【0098】
本願明細書において、「先苦味」とは、摂取物が舌と接触してから5秒以内に感じる苦味を意味する。また、「後苦味」とは、摂取物が舌と接触してから15秒以後に感じる苦味を意味する。
【実施例】
【0099】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【0100】
イソフムロン類含有組成物の製造および評価
1.イソフムロン類含有組成物の製造
(1)原材料
使用した原材料は以下の通りである。
γ−CD(商品名:γ−100;パールエース社製)
ホップエキス(イソフムロン含量30%)(商品名:Iso-extract30;Hopsteiner社製)
クエン酸(磐田化学工業社製)
糖類1:イソマルトオリゴ糖(商品名:パノラップ;林原商事社製)
糖類2:グリセリン(ミヨシ油脂社製)
糖類3:デキストリン(商品名:マックス1000;松谷化学工業社製)
脂溶性物質1:トコフェロール(商品名:Eオイル705;理研ビタミン社製)
脂溶性物質2:ナタネ油(日清オイリオグループ社製)
乳化剤1:ポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムJ-0381V;理研ビタミン社製)
乳化剤2:ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名:パルスガード4150;Palsgaard社製)
【0101】
(2)イソフムロン類含有組成物の調製
上記原料を用い、全量1000gとして、下記方法に従って、イソフムロン類含有組成物を調製した(実施例1〜5、比較例1〜3)。各サンプルの配合組成を表2に示した。
【0102】
<実施例1>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し10分間撹拌した。その後、糖類1、脂溶性物質1、乳化剤1および2を加え混合し、再び、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌し、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200Mpa)を施し、実施例1記載のイソフムロン類含有組成物(実施例品1)を585g得た。
【0103】
<実施例2>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し10分間撹拌した。その後、脂溶性物質1を加え混合し、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌した。その後、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200MPa)を施し、実施例2記載のイソフムロン類含有組成物(実施例品2)を610g得た。
【0104】
<実施例3>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し10分間撹拌した。その後、脂溶性物質2を加え混合し、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌した。その後、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200MPa)を施し、実施例3記載のイソフムロン類含有組成物(実施例品3)を600g得た。
【0105】
<実施例4>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し10分間撹拌した。その後、糖類1を加え混合し、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌した。その後、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200MPa)を施し、実施例4記載のイソフムロン類含有組成物(実施例品4)を585g得た。
【0106】
<実施例5>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し10分間撹拌した。その後、脂溶性物質1、糖類1を加え混合し、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌した。その後、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200MPa)を施し、実施例5記載のイソフムロン類含有組成物(実施例品5)を620g得た。
【0107】
<比較例1>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌した。その後、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200MPa)を施し、比較例1記載のイソフムロン類含有組成物(比較例品1)を612g得た。
【0108】
<比較例2>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し10分間撹拌した。その後、糖類2を加え混合し、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌した。その後、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200MPa)を施し、比較例2記載のイソフムロン類含有組成物(比較例品2)を580g得た。
【0109】
<比較例3>
表2のCD包接体成分記載の各原料を加え混合し10分間撹拌した。その後、糖類3を加え混合し、TKホモミキサー(型式:MARK II型 f−model;プライミクス社製)8000rpmで10分間撹拌した。その後、スターバースト(型式:HJP−25005;スギノマシン社製)により高圧ホモジナイズ処理(200MPa)を施し、比較例3記載のイソフムロン類含有組成物(比較例品3)を590g得た。
【0110】
2.苦味(先苦味、後苦味)低減評価試験
実施例(実施例品1〜5)、比較例(比較例品1〜3)に示す8例の苦味について、以下の方法で11人の社内パネラーを用いて官能評価を行った。
【0111】
実施例品1〜5および比較例品1〜3をイソフムロン類濃度が120ppmとなるように水で溶解してイソフムロン類を含有する水溶液を作製した。
【0112】
官能評価はサンプルを数mL口に含み、5秒以内に感じる苦味を先苦味、15秒以後に感じる苦味を後苦味と定義し、先苦味と後苦味についてそれぞれ表1に示す評価基準に従い評価した。
【表1】

【0113】
また、評価結果は、11名の評価点の平均値として求め、以下の基準に従って記号化した。
判断基準:
◎:非常によい (平均値が0〜1未満)
○:良好 (平均値が1以上〜2未満)
△:やや悪い (平均値が2以上〜3未満)
×:非常に悪い (平均値が3以上〜4)
【0114】
結果は表2に示される通りであった。
【表2】

【0115】
その結果、比較例品1は、先苦味が低減されるが、後苦味については軽減されないことが確認された。これに対し、実施例品1〜5は、先苦味および後苦味のいずれも低減され、非常に良い、または良好との結果が得られた。一方、比較例品2および3は、実施例4と同様に糖類(オリゴ糖以外の糖類)を添加したにも関わらず、先苦味および後苦味のいずれも低減されず、非常に悪いとの結果が得られた。
【0116】
従って、イソフムロン類が有する苦味(特に、後苦味)は、オリゴ糖および/または脂溶性物質の添加により低減された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソフムロン類のγサイクロデキストリン包接体と、脂溶性物質および/またはオリゴ糖とを含んでなる、イソフムロン類含有組成物。
【請求項2】
脂溶性物質が、イソフムロン類100質量部に対して10〜1000質量部である、請求項1に記載のイソフムロン類含有組成物。
【請求項3】
脂溶性物質が、脂溶性ビタミンである、請求項1または2に記載のイソフムロン類含有組成物。
【請求項4】
オリゴ糖が、イソフムロン類100質量部に対して100〜10000質量部である、請求項1に記載のイソフムロン類含有組成物。
【請求項5】
オリゴ糖が、イソマルトオリゴ糖である、請求項1または4に記載のイソフムロン類含有組成物。
【請求項6】
乳化剤を更に含んでなる、請求項1に記載のイソフムロン類含有組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のイソフムロン類含有組成物を含んでなる、食品。
【請求項8】
(a)イソフムロン類、γサイクロデキストリン、および水性溶媒と、(b)脂溶性物質および/またはオリゴ糖とを混合し、ホモジナイズすることを含んでなる、イソフムロン類含有組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−154803(P2010−154803A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334912(P2008−334912)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】