説明

イソブチレン系重合体の製造方法

【課題】高価な試薬や工業的に入手しにくい試薬を使用しないだけでなく、多段階に渡る非効率的な反応スキームにもよらずに、容易に(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】リビングカチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体と、(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物との1ステップの反応を用いて、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体を得る製造方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は末端に(メタ)アクリロイル基を有するイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性官能基を有する炭化水素ポリマーが当技術分野において知られている。ポリマーの末端に(メタ)アクリロイル基が導入された化合物は、UV、電子線、熱などの外部刺激によって硬化する硬化性組成物として用いられている。(メタ)アクリロイル基を有し、カチオン重合によって得られる重合体として、ポリイソブチレン系重合体が知られている。特にリビングカチオン重合により、定量的にポリイソブチレンの末端に官能基を導入する技術は知られている。
【0003】
例えば、Kennedyらはリビングカチオン重合によって塩素基を末端に有するポリイソブチレンをまず合成し、次いでt−BuOKを用いて末端の脱塩化水素反応をおこなうことによりイソプロペニル基末端に誘導したり、あるいは四塩化チタン存在下でアリルトリメチルシランを反応させることでアリル基末端ポリイソブチレンを合成したりした後に、末端のイソプロペニル基又はアリル基をBH3または9−BBNでヒドロホウ素化した後に、過酸化水素で処理することでポリイソブチレン末端に水酸基を定量的に導入している(非特許文献1、2)。
【0004】
(メタ)アクリロイル基の導入法としてはまず1つに、上述の方法により得たポリイソブチレンの末端水酸基に(メタ)アクリル酸クロリドを反応させる方法がある(非特許文献3)。この手法では、ヒドリド−ボラン試薬が他の一般的な試薬に比べて工業的に入手困難であることに加えその引火性、また水と激しく反応する性質がある点で取り扱い難いだけでなく過酸化水素の爆発性という問題点がある。
【0005】
この他の導入法としては、上述の方法により得たポリイソブチレンの末端イソプロペニル基又はアリル基に、加水分解性基を有するヒドロシランをヒドロシリル化し加水分解性基を有するシリル基を導入後、加水分解することによりシラノール末端のポリイソブチレンを合成してから、これに、分子内に(メタ)アクリロイル基および加水分解性ケイ素基の両者を有するシラン化合物を反応させることにより(メタ)アクリロイル系基を末端に導入する方法が開示されている(特許文献1)。しかしこの合成法は経路が長く、合成が煩雑であるという問題点を有する。
【0006】
特許文献2では上記の製造プロセスよりも簡便に(メタ)アクリロイル末端炭化水素系重合体を得る技術について報告されている。
【0007】
しかしながら、この製造方法では、(1)保護されたキャップ剤を使用する必要がある(2)炭化水素系重合体の末端をキャップした後に脱保護して単離する必要がある、(3)ヒドロキシ末端炭化水素系重合体を(メタ)アクリロイル系ハライドで処理する必要がある、という多段階のステップを経て製造されるため、依然として容易に(メタ)アクリロイル末端炭化水素系重合体が得られるとは言い難く、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−87726号公報
【特許文献2】特開2001−31714号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B.Ivan, J.P. Kennedy, and V. S. C. Chang, J. Polym.Sci., Polym. Chem, Ed., 1980, 18, 3177
【非特許文献2】B. Ivan,and J. P. Kennedy, Polym. Mater. Sci. Eng., 1988, 58, 866
【非特許文献3】B. Ivan, J.P. Kennedy, CARBOCATIONIC MACROMOLECULAR ENGINEERING, HANSER Publishers, 1992, 179
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、高価な試薬や工業的に入手しにくい試薬を使用しないだけでなく、多段階に渡る非効率的な反応スキームにもよらずに、簡便に(メタ)アクリロイル末端イソブチレン系重合体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法であって、式(1):
1(A−X)a (1)
(式中、R1は単環または複数の芳香環を含む1価から4価までの炭化水素基、Xは塩素基または臭素基、aは1から4の整数。Aは一種又は二種以上のカチオン重合性単量体の重合体であって本質的にポリイソブチレン系重合体であるもの、aが2以上のときAはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)で表される、カチオン重合によって得られるハロゲン末端炭化水素系重合体(イ)と、式(2):
CH2=C(R2)−B−O−C(O)−C(R3)=CH2 (2)
(式中、R2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基を表し、Bは炭素数1から30の2価の炭化水素基を表す)
で表される、(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)とを反応させることを特徴とする、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、前記(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)が、式(3):
CH2=C(R2)−(CH2b−{−CH=CH−(CH2cn−O−C(O)−C(R3)=CH2 (3)
(式中、R2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基を表し、b及びcは1から30の整数、nは0から5の整数を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、(メタ)アクリロイル基によってエステル化された水酸基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)が、炭素−炭素二重結合を有するアルコールと式(4):
XC(O)C(R)=CH2 (4)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
との反応によって得られることを特徴とする、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって得られる重合体は末端に(メタ)アクリロリル基を有するポリイソブチレン重合体であり、従来はヒドリド−ボラン試薬のような特殊な試薬を用いる必要があったり、重合経路が長く煩雑であるという問題点があったが、本法によればカチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体から、1段階で(メタ)アクリロイル基が末端に導入されたポリイソブチレン系重合体を合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法であって、式(1):
1(A−X)a (1)
(式中、R1は単環または複数の芳香環を含む1価から4価までの炭化水素基、Xは塩素基または臭素基、aは1から4の整数。Aは一種又は二種以上のカチオン重合性単量体の重合体であって本質的にポリイソブチレン系重合体であるもの、aが2以上のときAはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)
で表される、カチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン炭化水素系重合体(イ)と、式(2):
CH2=C(R2)−B−OG−C(O)−C(R3)=CH2 (2)
(式中、R2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基を表し、Bは炭素数1から30の2価の炭化水素基を表し、Gは(メタ)アクリロイル基を表す)
で表される、(メタ)アクリロイル基によってエステル化された水酸基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)とを反応させることを特徴とする、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法である。
【0018】
<カチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)>
カチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)は式(1):
1(A−X)a (1)
(式中、R1は単環または複数の芳香環を含む1価から4価までの炭化水素基、Xは塩素基、臭素基またはヨウ素基、aは1から4の整数を表す。Aは一種又は二種以上のカチオン重合性単量体の重合体であって本質的にポリイソブチレン系重合体であるものを表し、aが2以上の時は同じでも異なっていてもよい。)
で表される。
【0019】
式(1)中のR1は単環または複数の芳香環を含む1価から4価までの炭化水素基であるが、具体的には、クミル基、m−ジクミル基、p−ジクミル基、5−tert−ブチル−1,3−ジクミル基、5−メチル−1,3−ジクミル基、1,3,5−トリクミル基等が挙げられる。そのなかでも、クミル基、m−ジクミル基、p−ジクミル基、5−tert−ブチル−1,3−ジクミル基が、入手性の点で好ましい。
【0020】
式(1)中のXは塩素基、または臭素基であるが、塩素基であることが入手性および化合物の安定性の点で好ましい。
【0021】
式(1)中のAは一種又は二種以上のカチオン重合性単量体の重合体であって本質的にポリイソブチレン系重合体であるものである。
【0022】
一種または二種以上のカチオン重合性単量体としてはイソブチレンを主として使用する他には特に制限はないが、好ましいモノマーとしては例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類などがあげられる。イソプレン、アミレン、1,3−ブタジエン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、メトキシスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0023】
ただし、本発明において、本質的にポリイソブチレン系重合体であるものとは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、イソブチレンと共重合が可能な上記の単量体単位と混合していてもよい事を意味し、イソブチレン系重合体中のイソブチレン単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の範囲で含有しているものである。
【0024】
式(1)aは、1から4の整数であるが、架橋反応によって架橋性高分子化合物を得る際に充分な強度、耐候性、ゲル分率等を達成するために、2または3であることが好ましい。
【0025】
本発明におけるポリイソブチレン系重合体の分子量は特に制限は無いが、流動性、硬化後の物性などの面からGPC測定による数平均分子量が100〜1,000,000であることが好ましく、300〜500,000であることがより好ましく、1,000〜300,000であることが更に好ましい。
【0026】
ハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)はカチオン重合によって得られるものであるが、リビングカチオン重合によって得られるものが好ましい。
【0027】
本発明を適用することができるリビングカチオン重合についてその詳細は、例えばJ.P.Kennedyらの著書(Carbocationic Polymerization,John Wiley & Sons,1982年)やK.Matyjaszewskiらの著書(Cationic Polymerizations, MarcelDekker,1996年)に合成反応の記載がまとめられている。
【0028】
以下にリビングカチオン重合による製造方法について記載する。
【0029】
イソブチレン系重合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、重合開始剤である下記一般式(I)で表される化合物の存在下に、単量体成分を重合させることにより得られる。
(CRX)(I)
[式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、Rは単環または複数の芳香環を含む1価から4価までの炭化水素基であり、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR、Rは同一であっても異なっていても良く、nは1〜6の自然数を示す。]
上記一般式(I)で表わされる化合物は重合開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。本発明で用いられる一般式(I)の化合物の例としては、次のような化合物等が挙げられる。
【0030】
(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[CC(CHCl]、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,4−Cl(CHCCC(CHCl]、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,3−Cl(CHCCC(CHCl]、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,3,5−(ClC(CH]、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン[1,3−(C(CHCl)-5−(C(CH)C
これらの中でも特に好ましいのは、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンである。
【0031】
なお、(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンはクミルクロライドとも呼ばれ、ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれ、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、トリス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、トリス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはトリクミルクロライドとも呼ばれる。
【0032】
イソブチレン系重合体を製造する際には、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl、TiBr、BCl、BF、BF・OEt、SnCl、SnBr、SbCl、SbBr、SbF、WCl、TaCl、VCl、FeCl、FeBr、ZnCl、ZnBr、AlCl、AlBr等の金属ハロゲン化物;EtAlCl、MeAlCl、EtAlCl、MeAlCl、EtAlBr、MeAlBr、EtAlBr、MeAlBr、Et1.5AlCl1.5、Me1.5AlCl1.5、Et1.5AlBr1.5、Me1.5AlBr1.5等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl、BCl、SnClが好ましく、本発明では触媒活性と入手性のバランスの点でTiClが特に好ましい。
【0033】
ルイス酸の使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等を鑑みて設定することができる。通常は一般式(I)で表される化合物に対して0.01〜300モル当量使用することができ、好ましくは0.05〜200モル当量の範囲である。
【0034】
イソブチレン系重合体の製造に際しては、さらに必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって、分子量分布の狭い、構造が制御された重合体を生成することができる。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、チオエステル類、ジチオエステル類、エーテル類、チオエーテル類、カーバメート類、チオカーバメート類、ジチオカーバメート類、トリチオカーバメート類または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
【0035】
上記電子供与体成分としては、種々の化合物の電子供与体(エレクトロンドナー)としての強さを表すパラメーターとして定義されるドナー数が15〜60であるものとして、通常、具体的には、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2−t−ブチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2−メチルピリジン、ピリジン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、リン酸トリメチル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、チタン(III)メトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド等のチタンアルコキシド;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルミニウムアルコキシド等が使用できるが、好ましいものとして、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2−メチルピリジン、ピリジン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド等が挙げられる。上記種々の物質のドナー数については、「ドナーとアクセプター」、グードマン著、大瀧、岡田訳、学会出版センター(1983)に示されている。これらの中でも、添加効果が顕著である2−メチルピリジンが特に好ましい。
【0036】
上記電子供与体成分は、通常、上記重合開始剤に対して0.01〜300倍モル用いられ、0.1〜100倍モルの範囲で用いられるのが好ましい。
【0037】
イソブチレン系重合体の重合は必要に応じて有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ、特に制約なく使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。
【0038】
これらの溶媒は、イソブチレン系重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記溶媒の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0039】
重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0040】
<(メタ)アクリロイル基によってエステル化された水酸基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)>
(メタ)アクリロイル基によってエステル化された水酸基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)は式(2):
CH2=C(R2)−B−O−C(O)−C(R3)=CH2 (2)
(式中、R2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基を、Bは炭素数1から30の2価の炭化水素基を表す。)
で表される。
【0041】
式(2)中のR2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基であるが具体的には、水素原子;メチル基、エチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基があげられる。これらの中では、反応性の高さから、メチル基、または水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0042】
式(2)中のBは、炭素数1から30の2価の炭化水素基であって、1〜5個の炭素−炭素二重結合〔ただしCH2=C(R2)−基(R2は上記と同じ)を有するものを除く〕及び/又は1〜3個の芳香環を有することが好ましく、式(2)中のBは、1〜3個の−CH=CH−で表される2価の基を有することがさらに好ましい。
また前記式(2)の化合物としては、式(3):
CH2=C(R2)−(CH2b−{−CH=CH−(CH2cn−O−C(O)−C(R3)=CH2 (3)
(式中、R2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基を表し、b及びcは1から30の整数であって同一であっても異なっていても良く、nは0から5の整数を表す。)
で表されるものであることが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリロイル基によってエステル化された水酸基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)の具体例としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸4−ペンテニル、(メタ)アクリル酸5−ヘキセニル、(メタ)アクリル酸6−ヘプテニル、(メタ)アクリル酸7−オクテニル、(メタ)アクリル酸8−ノネニル、(メタ)アクリル酸9−デセニルおよび(メタ)アクリル酸10−ウンデセニル、(メタ)アクリル酸2,5−ヘキサジエニル、(メタ)アクリル酸2,6−ヘプタジエニル、(メタ)アクリル酸3,6−ヘプタジエニル、(メタ)アクリル酸2,7-オクタジエニル、(メタ)アクリル酸3,7-オクタジエニル、(メタ)アクリル酸4,7-オクタジエニル、(メタ)アクリル酸2,8-ノナジエニル、(メタ)アクリル酸3,8-ノナジエニル、(メタ)アクリル酸4,8-ノナジエニル、(メタ)アクリル酸5,8-ノナジエニル、(メタ)アクリル酸2,9-デカジエニル、(メタ)アクリル酸3,9-デカジエニル、(メタ)アクリル酸4,9-デカジエニル、(メタ)アクリル酸5,9-デカジエニルまたは(メタ)アクリル酸6,9-デカジエニル等が挙げられるが、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル、(メタ)アクリル酸2,6−ヘプタジエニル、(メタ)アクリル酸2,7-オクタジエニル、が入手性と反応性のバランスの点で好ましい。
【0044】
前記式(2)で表される化合物(ロ)は炭素−炭素二重結合を有するアルコールと(メタ)アクリロイル基を有する化合物とのエステル化反応により得ることもできる。
【0045】
炭素−炭素二重結合を有するアルコールとしては、1置換あるいは1,1’−2置換の末端に水酸基を有するオレフィンであれば特に制限されるものではないが、反応性の高さから、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、9−デセン−1−オールおよび10−ウンデセン−1−オール、2,5−ヘキサジエノール、2,6−ヘプタジエノール、3,6−ヘプタジエノール、2,7-オクタジエノール、3,7-オクタジエノール、4,7-オクタジエノール、2,8-ノナジエノール、3,8-ノナジエノール、4,8-ノナジエノール、5,8-ノナジエノール、2,9-デカジエノール、3,9-デカジエノール、4,9-デカジエノール、5,9-デカジエノールまたは6,9-デカジエノールから選ばれる化合物が好ましい。
【0046】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては式(4):
XC(O)C(R)=CH2 (4)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
で表される化合物が好ましい。
【0047】
式(4)で表される化合物としては特に限定されないが、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CN、等が挙げられ、好ましくは−H、−CH3である。
【0048】
炭素−炭素二重結合を有するアルコールと式(4)で表される化合物とを反応させるときには、反応を促進する目的で、発生するHXすなわち塩化水素あるいは臭化水素、ヨウ化水素を捕捉する塩基を加えてもよい。加える塩基としてはアミン系化合物、例えばアンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、トリ−i−ブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルアニリンなどが挙げられる。
【0049】
炭素−炭素二重結合を有するアルコールと式(4)で表される化合物とを反応させるときには、溶剤系、無溶剤系いずれでもよいが、溶剤を用いるときは脱水溶媒であることが好ましい。
【0050】
溶媒を使用する場合には、塩化メチレン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロルエタン、n−プロピルクロリド、n−ブチルクロリドなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、その他、アセトニトリル、ピリジン、トリエチルアミンなどを溶媒として使用できる。
【0051】
炭素−炭素二重結合を有するアルコールと式(4)で表される化合物とを反応させるときには、反応温度は−70℃〜200℃で、好ましくは0℃〜100℃で、1分〜24時間反応することにより、(メタ)アクリロイル基によってエステル化した水酸基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)が得られる。
【0052】
<(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法>
(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)は、炭素−炭素単結合を形成するカチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)と、(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)との反応により一段階で得られる。
【0053】
前記式(1)のカチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)に前記式(2)で表される(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)を反応させる際には、触媒としてルイス酸を用いる。この場合一般的なルイス酸であれば特に限定されるものではないが、TiCl4、Ti(OiPr)4、TiBr4、AlCl3、AlBr、EtAlCl、MeAlCl、EtAlCl、MeAlCl、EtAlBr、MeAlBr、EtAlBr、MeAlBr、Et1.5AlCl1.5、Me1.5AlCl1.5、Et1.5AlBr1.5、Me1.5AlBr1.5、BCl3、BF3、BF3(OEt)GaCl3、FeCl3、FeBr,SnCl4、SnBr4、SbCl、SbBr、SbF、WCl、TaCl、VCl、ZnCl、ZnBr、で例示されるルイス酸については反応活性が特に高く、選択性が良好である点から好ましい。
【0054】
工業的な入手性と反応性の点から、TiCl4、Ti(OiPr)4、TiBr4、AlCl3、AlBr、EtAlCl、MeAlCl、EtAlCl、MeAlCl、EtAlBr、MeAlBr、EtAlBr、MeAlBr、Et1.5AlCl1.5、Me1.5AlCl1.5、Et1.5AlBr1.5、Me1.5AlBr1.5、BCl3、BF3、BF3(OEt)、GaCl3、FeCl3、FeBr、SnCl4、ZnCl,ZnBrが特に好ましい。
【0055】
前記式(1)のカチオン重合によって得られるハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)に前記式(2)で表される(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)を反応させる際には、ハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)と(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)からなる混合物が低粘度であり、攪拌が可能であり、それらだけで反応が可能である場合には無溶剤条件下に反応させることができる。
【0056】
一方、反応溶剤を使用することもでき、例えばハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、及び脂肪族炭化水素から任意に選ばれる単独又は混合溶剤を用いることが可能である。これらの選択については、ポリマーの重合条件下での溶解性や反応性からハロゲン化炭化水素として塩化メチレン、クロロホルム、1,1−ジクロルエタン、1,2−ジクロルエタン、n−プロピルクロリド、n−ブチルクロリドのなかから選ばれる1種以上の成分であることが好ましい。同様の理由で、芳香族炭化水素はトルエンが好ましく、脂肪族炭化水素としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンのなかから選ばれる1種以上の成分が好ましい。
【0057】
環境への悪影響が心配されるハロゲン化炭化水素を用いない反応溶剤として、例えばトルエン、エチルシクロヘキサン、あるいはこれらの混合溶剤を用いることで、(メタ)アクリロイル基によってエステル化された水酸基を末端に有するポリイソブチレン系重合体の製造が容易に達成できる。
【0058】
ハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)と前記式(2)で表される(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)とを反応させる際には、一旦単離したハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)と(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)とを反応させてもよいし、ハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)の重合中に(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)をその重合系中に添加することによって反応させてもよい。
【0059】
後者の場合、(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)を添加する時期としては、ガスクロマトグラフィーによって測定したイソブチレン単量体の転化率が50%以上に達している時であることが好ましく、80%以上に達している時であることがより好ましく、95%以上に達している時であることが更に好ましい。
【0060】
<用途>
本発明によって得られた(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)は活性エネルギー線及び/又は熱により硬化する硬化性組成物として利用できる。上記硬化性組成物の具体的な用途としては、ポッティング剤、LED用封止剤、シーリング材、接着剤、粘着剤、弾性接着剤、フォトポリマープレート、塗料、粉体塗料、木工用コーティング、ハードコーティング、PVCフロアコーティング、光ファイバーコーティング、ディスクコーティング、金属用コーティング、フィルム用コーティング、タイヤ用インナーライナー、オフセットインキ、グラビアインキ、金属用印刷インキ、シルクスクリーンインキ、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、シルクスクリーンレジスト、ドライフィルムレジスト、リキッドレジスト、電着レジスト、半導体レジスト、カラーフィルターレジスト、各種成形材料、光造形等を挙げることができる。
【実施例】
【0061】
次に実施例を挙げて、本発明をより詳しく説明するが、実施例により本発明は何ら限定されるものではない。
【0062】
(分子量測定)
下記実施例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCシステムとしてWaters社製LC Module1を、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(Shodex GPC K−804;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0063】
(官能化率測定)
得られたポリイソブチレンの官能化率の分析はH−NMRを用いて行った。
<装置>
Valian社製 Gemini−300
<測定溶剤>
四塩化炭素/重アセトン=4/1(v/v)
<定量方法>
開始剤残基のシグナル(7.2ppm)の面積に対する末端のアクリロイル基のビニルプロトンに由来するシグナル(6.1ppm)の面積の比から算出した。
<計算式>
Fn((メタ)アクリロイル基)=4x(6.1ppm付近のビニルプロトン由来のシグナルの面積)/(7.2ppmの開始剤残基由来のシグナルの面積)
【0064】
(総反応時間の定義)
<実施例で説明する本発明の場合>
この場合は、重合時間、アクリロイル化反応時間、失活時間の和を総反応時間として定義する。ただし、重合時間とは反応容器にモノマー、溶媒、エレクトロンドナーを仕込んだ後、触媒を添加した時間をゼロとし、モノマーが完全に消費されるまでにかかった時間を重合時間とする。ここで、モノマーが完全に消費されたと判定するには、ガスクロマトグラフィーを使用してモノマー残存量を経時的に算出し、モノマーが98.5%以上消費された時点のことを言う。アクリロイル化反応時間とは、モノマーが完全に消費された後に、(メタ)アクリロイル基によりエステル化された水酸基および炭素−炭素二重結合を含む化合物(ロ)を添加した時間をゼロとして、重合およびアクリロイル化反応を終結させるために重合系中に水を添加するか、水中に重合溶液を添加してルイス酸を失活させるまでにかかった時間と定義する。失活時間とは、重合およびアクリロイル化反応に使用したルイス酸触媒を水と反応させて触媒活性を失わせるのに必要な時間と定義するが、従来公知の方法ではおよそ0.5時間必要であることが知られており、本発明では0.5時間とする。
<比較例の場合>
この場合は、重合時間、オレフィン付加反応時間、失活時間、脱保護反応時間、アクリロイル化反応時間の和を総反応時間として定義する。ただし、重合時間とは反応容器にモノマー、溶媒、エレクトロンドナーを仕込んだ後、触媒を添加した時間をゼロとし、モノマーが完全に消費されるまでにかかった時間を重合時間とする。ここで、モノマーが完全に消費されたと判定するには、ガスクロマトグラフィーを使用してモノマー残存量を経時的に算出し、モノマーが98.5%以上消費された時点のことを言う。オレフィン付加反応時間とは、重合終了後に酢酸オクタジエニルおよび四塩化チタンを添加してから、80℃に加熱したイオン交換水に反応混合物を導入するまでにかかった時間と定義する。失活時間とは、重合およびアクリロイル化反応に使用したルイス酸触媒を水と反応させて触媒活性を失わせるのに必要な時間と定義するが、従来公知の方法ではおよそ0.5時間必要であることが知られており、本発明では0.5時間とする。脱保護反応時間とは、先のオレフィン付加反応で得られた生成物の溶液に、水酸化ナトリウム水溶液及び臭化テトラブチルアンモニウムを添加し、100℃下で酢酸エステル部位が完全に加水分解されるまでにかかった時間と定義する。アクリロイル化反応時間とは、先に得られた水酸基を末端に有するポリイソブチレンを溶剤共存下にメタクリル酸クロライドと反応させ、水酸基の95%以上をメタクリル酸エステルとするのに必要な時間と定義する。
【0065】
(生産性)
総反応時間が5時間未満の場合を○、5時間以上10時間未満の場合を△、10時間以上の場合を×と定義する。
【0066】
(実施例1)
5Lのセパラブルフラスコに三方コック、熱電対、および真空用シール付き撹拌機をつけて窒素置換を行った。これにモレキュラーシーブス3Aによって脱水したトルエン592ml、エチルシクロヘキサン73.6mlを加え、さらに1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン(5.56g,24.0mmol)、2−メチルピリジン(264mg,2.83mmol)を加えて−70℃に冷却した。冷却後、イソブチレンモノマー(120ml,1.44mol)を導入し、さらに、この温度で四塩化チタン(2.52ml、23.0mmol)を添加し重合を開始した。この際に約15℃昇温した。約60分で重合は終了した(これに伴い反応系の発熱は観察されなくなった)。重合終了後にメタクリル酸2,7−オクタジエニル(37.5g,193mmol)および四塩化チタン(39.8ml、386mmol)を添加した。2時間反応の後に、80℃に加熱したイオン交換水1.5Lに反応混合物を導入し、30分間攪拌を行った。静置の後に水層を除去したあと、イオン交換水1.0Lを加え室温下で15分攪拌し静置後に水層を除去する工程を2度繰り返した。有機層をわけ取り、減圧下(最終1Torr以下)に溶媒留去を行い、目的とするメタクリロイル基を末端に有するポリイソブチレンを得た(数平均分子量5600、分子量分布1.2、Fn(メタクリロイル基)=1.90)。
【0067】
(実施例2)
5Lのセパラブルフラスコに三方コック、熱電対、および真空用シール付き撹拌機をつけて窒素置換を行った。これにモレキュラーシーブス3Aによって脱水したトルエン592ml、エチルシクロヘキサン73.6mlを加え、さらに1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン(5.56g,24.0mmol)、2−メチルピリジン(264mg,2.83mmol)を加えて−70℃に冷却した。冷却後、イソブチレンモノマー(120ml,1.44mol)を導入し、さらに、この温度で四塩化チタン(2.52ml、23.0mmol)を添加し重合を開始した。この際に約15℃昇温した。約60分で重合は終了した(これに伴い反応系の発熱は観察されなくなった)。重合終了後にアクリル酸2,7−オクタジエニル(34.8g,193mmol)および四塩化チタン(39.8ml、386mmol)を添加した。2時間反応の後に、80℃に加熱したイオン交換水1.5Lに反応混合物を導入し、30分間攪拌を行った。静置の後に水層を除去したあと、イオン交換水1.0Lを加え室温下で15分攪拌し静置後に水層を除去する工程を2度繰り返した。有機層をわけ取り、減圧下(最終1Torr以下)に溶媒留去を行い、目的とするアクリロイル基を末端に有するポリイソブチレンを得た(数平均分子量5600、分子量分布1.2、Fn(アクリロイル基)=2.00)。
【0068】
(比較例)
5Lのセパラブルフラスコに三方コック、熱電対、および真空用シール付き撹拌機をつけて窒素置換を行った。これにモレキュラーシーブス3Aによって脱水したトルエン592ml、エチルシクロヘキサン73.6mlを加え、さらに1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン(5.56g,24.0mmol)、2−メチルピリジン(264mg,2.83mmol)を加えて−70℃に冷却した。冷却後、イソブチレンモノマー(120ml,1.44mol)を導入し、さらに、この温度で四塩化チタン(2.52ml、23.0mmol)を添加し重合を開始した。この際に約15℃昇温した。約60分で重合は終了した(これに伴い反応系の発熱は観察されなくなった)。重合終了後に酢酸オクタジエニル(32.4g,193mmol)および四塩化チタン(39.8ml、386mmol)を添加した。5時間反応の後に、80℃に加熱したイオン交換水1.5Lに反応混合物を導入し、30分間攪拌を行った。静置の後に水層を除去し、1Lの2N水酸化ナトリウム水溶液及び臭化テトラブチルアンモニウム10.0gを添加し、100℃にて12時間攪拌を行った。反応終了後、アルカリ水溶液を除去し、1Lのイオン交換水で3回水洗した後に、有機層を単離した。これに10Lのアセトンを加えてポリマーを再沈殿させ、低分子化合物を除去した。沈殿物をさらにアセトン1Lで2回洗浄し、さらにヘキサン500mlに溶解した。溶液を1Lのなす型フラスコに移液し、オイルバスによる加熱条件下(180℃)、減圧(最終1Torr以下)によって溶媒留去を行い、目的とする水酸基を末端に有するポリイソブチレンを得た(数平均分子量5600、分子量分布1.2、Fn(CH2OH)=1.90。)。
【0069】
先に得られた水酸基を末端に有するポリイソブチレン(数平均分子量5600、分子量分布1.2、Fn(CH2OH)=1.90)15.01g(水酸基当量5.1mmol)を200mlのセパラブルフラスコに入れ、モレキュラーシーブス3Aによって脱水したn−ブチルクロライド30ml、ピリジン0.6ml(7.6mmol)を加え、三方コック、熱電対、および真空用シール付き撹拌機をつけて窒素置換を行った。0℃に冷却後、メタクリル酸クロライド0.75ml(7.6mmol)を加え、添加終了後23℃に昇温し2時間攪拌した。NMRにおいて反応が完結していなかったので、0℃に冷却後、メタクリル酸クロライド0.5ml(5.1mmol)、ピリジン0.4ml(5.1mmol)を加え添加終了後23℃に昇温し1時間攪拌し、NMRにおいて反応が完結しているのを確認した。その後、水200mlで4回洗浄し、目的とする(メタ)アクリロイル基を末端に有するポリイソブチレンの18重量%n−ブチルクロライド溶液を得た。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜2で示す本発明の製造方法は比較例で示す製造方法に比べ、末端官能化率の点では同等であるが総反応時間が極めて短く生産性に非常に優れていることが明らかである。
【0072】
従って、本発明は、高価な試薬や工業的に入手しにくい試薬を使用するだけでなく、多段階に渡る非効率的な反応スキームにもよらずに、容易に(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法であって、式(1):
1(A−X)a (1)
(式中、R1は単環または複数の芳香環を含む1価から4価までの炭化水素基、Xは塩素基または臭素基、aは1から4の整数。Aは一種又は二種以上のカチオン重合性単量体の重合体であって本質的にポリイソブチレン系重合体であるもの、aが2以上のときAはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)
で表される、ハロゲン末端ポリイソブチレン系重合体(イ)と、
式(2):
CH2=C(R2)−B−O−C(O)−C(R3)=CH2 (2)
(式中、R2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基を表し、Bは炭素数1から30の2価の炭化水素基を表す)
で表される、(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)とを反応させることを特徴とする、(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法。
【請求項2】
(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)が、式(3):
CH2=C(R2)−(CH2b−{−CH=CH−(CH2cn−O−C(O)−C(R3)=CH2 (3)
(式中、R2、R3は水素または炭素数1から18の炭化水素基を表し、b及びcは1から30の整数、nは0から5の整数を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法。
【請求項3】
(メタ)アクリロイル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(ロ)が、炭素−炭素二重結合を有するアルコールと式(4):
XC(O)C(R)=CH2 (4)
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
との反応によって得られることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載の(メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体(ハ)の製造方法。


【公開番号】特開2013−35901(P2013−35901A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171075(P2011−171075)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】