説明

イソブテン及び第3級ブタノールの製造方法

【課題】本発明の目的は、イソブテンの製造方法について長期間に亘り安定的に、高収率、高選択率でTBAからイソブテンを製造する方法を提供し、また、TBAの製造方法について、長期間安定に、高い反応活性を維持することで長期の連続運転が可能になり、生産量が向上したTBAの製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明によれば、Na含有量がNa2Oに換算して0.6重量%以下であり、Na含有量がNaO2に換算して0.4重量%以下であり、且つ、比表面積が200〜600m2/gであるアルミナ触媒を用い、脱水分解する温度を200〜450℃とすることを特徴とするイソブテンの製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒として特定の物性を持つアルミナ触媒を用いて第3級ブタノール(ターシャリーブタノール:以下、「TBA」と略する)を脱水し、イソブテンを高収率、高選択率で、且つ、長期間安定して製造する方法と、イソブテンとn−ブテンを含むオレフィン混合物と水から、TBAを高収率、高生産性で、且つ、長期間安定して連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソブテンは、イソブテンポリマーやメチルメタクリレート(MMA)の原料として近年脚光を浴びており、重要な工業原料である。また、イソブテンは、通常、n−ブテン等を含むC4オレフィン混合物として存在するため、これらC4オレフィン混合物からイソブテンを分離する必要がある。
【0003】
C4オレフィン混合物からイソブテンの製法の1つとして、水和反応と脱水反応を組み合わせることにより、n−ブテンを含まないイソブテンが製造される。即ち、C4オレフィン混合物からイソブテンを選択的に水和しTBAとして回収することにより分離し、得られたTBAを脱水することによりイソブテンを得る方法である。また、水和され回収分離されたTBAも重要な工業原料である。特にMMAの原料として、脱水せずにTBAのまま用いることができるため、近年、需要が増大している。
【0004】
原料となるオレフィン混合物は、主にナフサ分解工程のC4留分から、ブタジエンを除去したイソブテン及びn−ブテンを主成分とするラフィネート1(慣用名「スペントBB」)である。あるいは、重質油のFCC分解から得られるブテン類を含むC4留分などがある。いずれの原料の場合もイソブテンとn−ブテンを含むが、両者の沸点差が1℃以下と近いため蒸留分離では困難であり、イソブテンを選択的に水和反応させ反応分離する方法の工夫がなされてきた。
【0005】
水和反応の方式には、強酸性イオン交換樹脂を用いた充填式固定床反応がある(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。この水和反応方法は、触媒が固定されているため、触媒との分離が良好である一方、接触効率が低いため反応性が低いという欠点がある。反応性及び水和反応選択性を高めるために適した溶媒を用い、反応液を循環し且つ最適循環の範囲で行うという反応性を改良した方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。一方、均一系の水和反応では、ベンゼンスルホン酸等を触媒にする方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。ヘテロポリ酸水溶液を触媒として接触させる方法も知られている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9参照)。酸性イオン交換樹脂等を用いた固定床反応では、反応器から出た生成物の大半を循環させる必要があること、反応原料の炭化水素と水が混ざり合わないこと、さらに固体であるとイオン交換樹脂との濡れ性を高め接触効率を上げるための溶媒として、有機酸や、反応生成物であるTBAを添加する必要があるなど改良すべき課題が残されている。ヘテロポリ酸は反応性が高くイソブテンへの選択性も高く優れた方法であるが、プロセス全体に全く課題が無いわけではなく、いくつかの残された課題があり、その改善がなされてきた(例えば、特許文献10、特許文献11、及び特許文献12参照)。
【0006】
しかしながら、いずれの製造方法の場合にも依然として長期間安定に製造を継続するには課題が残されている。それぞれの触媒も初期には優れた活性を示すが、年間という時間軸ではわずかではあるが徐々に触媒活性が低下していくという現象や触媒分離器の分離能力が低下するなどの現象、蒸留塔の分離性能低下などが経年変化として生じる。この解決策として、長期間反応に使用した触媒の一部を廃棄し、新しい触媒を追加するという方法などで連続反応が継続される。近年のグリーンケミストリーの観点からこれらの廃棄物となる量の削減が課題になっている。
【0007】
また、脱水反応の方式には、古くは、硫酸等の強酸を用いて均一系で行う方法が一般的であるが、この方法は強酸を使用するため腐食性が高く、耐食性の製造装置が必要であり、また、脱水反応後に排出される廃硫酸の処理が困難であるため工業的な製造法としては好ましくない。近年、この問題を解決する方法として、スルホン酸基を含有する強酸性イオン交換樹脂を触媒として不均一系で該脱水反応を行う方法が、いくつか提案されている。その1つとして、イオン交換樹脂を用いた固定床で、80〜150℃の温度範囲でTBAを脱水する方法を開示している。しかし、この方法で反応温度が120℃以下の場合、TBAとイソブテン、水が平衡関係にあるため、反応後の水の組成比率が上がって反応速度が低下する。そのため、ワンパスの転化率が低く、TBA及び水を多量にリサイクルする必要が生じ、製造プロセスを複雑にしてしまう。また、120℃を超えた温度で反応させようとすると、副反応であるイソブテンの多量化が進み収率が低下してしまう。(例えば、特許文献13参照)
【0008】
他方、気相下で固体酸を触媒に用いるイソブテンの製造についても、多くの方法が知られている。アルコールの脱水反応は多大な吸熱反応であるため、特許文献14で実施されているように、通常、気相で250℃以上の高温で反応を行っている。本脱水反応の特徴として、生成するイソブテンの多量化反応によるジイソブテン等の生成が起こるが、この多量化を抑制するためにはより高温での反応が好ましい。しかしながら、温度が高くなるにつれ触媒表面への炭素析出が加速し、経時的な触媒活性の低下を引き起こし、長期に亘る安定的な工業生産に悪影響を及ぼす。
【0009】
アルコールの脱水によるオレフィンの製造において、気相下での固体酸触媒を用いた反応では、触媒活性を長期に亘って維持できる触媒の開発は工業的に大変意義のあることであり、最近になっていくつかの方法が提案されている。その1つとして、炭素数が2〜4までの低級アルコールを脱水して低級オレフィンを製造する場合に触媒としてγ−アルミナを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献15参照)。しかしながら、特許文献15中の記載によれば、実施例中でのイソブテンの製造方法では原料としてイソブタノールを用いており、TBAを原料とした場合にどのような結果になるかは予想できない。加えて、目的を達成するためには高い圧力を必要とし、また、実施例中のイソブテン収率についても満足できるものではない。
【0010】
上記のように、従来法においては、液相における比較的低温で実施する方法、気相において高温で実施する方法のいずれにも、それぞれに問題点が存在する。また、気相下での固体酸触媒を用いた方法においては、前述の特許文献15に関する記載の通り、気相での固体酸触媒を用いたTBAからイソブテンを製造する方法において、触媒活性を長期に亘って維持できる触媒に関する提案はなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭56−10124号
【特許文献2】特公昭56−2855号
【特許文献3】特開昭55−64534号
【特許文献4】特開平11−193255号
【特許文献5】特開昭55−51028号
【特許文献6】特開昭54−160309号
【特許文献7】特開昭55−7213号
【特許文献8】特開昭55−62031号
【特許文献9】特公昭58−39806号
【特許文献10】特開2000−44497号
【特許文献11】特開2000−43242号
【特許文献12】特開2000−44502号
【特許文献13】特開昭58−116427号
【特許文献14】特公昭48−10121号
【特許文献15】特開平4−300840号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アルミナを触媒とし、TBAからイソブテンを長期間に亘り安定的に、高収率、高選択率で製造する方法と、酸を触媒とし、イソブテンおよびn−ブテンを含有する炭化水素混合物から、イソブテンを選択的に水和しTBAを連続的に長期間安定して製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、経済的な方法によりTBAからイソブテンを製造する方法を開発するにあたり、気相下で固体酸触媒を用いることに着目し、鋭意検討を行った。ところで、脱水反応条件下では、経時的な触媒活性の低下を引き起こす触媒表面への炭素析出は、固体酸の酸強度に依存し、酸強度が強いほど、生成したイソブテンが環化、脱水素、水素移行反応等を起こし炭素析出が促進されることは公知である。シリカアルミナ等の一般的に強酸性である固体酸は、初期活性は高いものの、炭素析出による経時的な活性低下が顕著であった。そこで、一般的に弱酸性であるアルミナ触媒のうち、触媒中のNa等の不純物含有量、比表面積や細孔容積が異なる触媒を用いて具体的に検討した結果、驚くべきことに長期に亘って炭素析出を起こさず高活性を維持し且つイソブテンの選択率も高いことを見出した。
【0014】
また、TBAの製造において、長期間運転を行っていると緩やかではあるが、反応活性の低下や、触媒分離特性の悪化、蒸留塔の分離能力低下が反応時間の経過と共に低下する現象のため、不定期にプラントを停止させ、触媒の一部を入れ替えるなどによって、反応性、運転性を修復させなければならない課題がある。本発明者等は、長期安定運転を実現するために、これらの現象について、徹底的な解析と解決のための研究を行ってきた。その結果、TBAの製造において、触媒活性低下の原因や、触媒分離の悪化、蒸留塔分離性能低下は、蓄積性の不純物が原因であるという知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の第1の態様では、
〔1〕 第3級ブタノールを原料として、イソブテンを製造する方法であって、
Na含有量がNa2Oに換算して0.1〜0.6重量%の範囲であり、Si含有量がSiO2に換算して0.4重量%以下であり、且つ、比表面積が200〜600m2/gであるアルミナ触媒を用いて、200〜450℃の反応温度にて、気相下、脱水反応を行う工程を含むことを特徴とするイソブテンの製造方法、
〔2〕 前記アルミナ触媒が、触媒中の全細孔容積が0.1〜0.5cc/gの範囲にあり、且つ、細孔半径70Å以上の細孔が有する細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める範囲にあることを特徴とする〔1〕に記載のイソブテンの製造方法。
〔3〕 前記第3級ブタノールが、イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から、水及びヘテロポリ酸触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和して、第3級ブタノールを製造する方法によって製造されることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のイソブテンの製造方法、
を提供する。
【0016】
また、本発明の第2の態様では、
〔4〕 イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から、水及び触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和して、第3級ブタノールを連続的に製造する方法であって、
前記炭化水素混合物、前記触媒及び第3級ブタノールのうち少なくとも1種を循環するリサイクル系を用いて、前記少なくとも1種をリサイクルさせる工程と、
該リサイクル系から蓄積性不純物の一部を除去する工程と、
を含むことを特徴とする第3級ブタノールの連続的製造方法、
〔5〕 前記蓄積性不純物を除去する工程において、多孔質吸着剤及び/又はイオン交換樹脂を用いることを特徴とする〔4〕記載の製造方法、
〔6〕 前記多孔質吸着剤の細孔半径が、0.5〜500nmの範囲であることを特徴とする〔4〕又は〔5〕に記載の製造方法、
〔7〕 前記触媒が、Hammettの酸度関数Hoで、−5.6≧Hoで表される強酸又は強酸塩であることを特徴とする〔4〕ないし〔6〕のうち何れか一項に記載の製造方法、
〔8〕 前記触媒が、ヘテロポリ酸であることを特徴とする〔4〕ないし〔7〕のうち何れか一項に記載の製造方法、
〔9〕 前記ヘテロポリ酸が、リンモリブデン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングステン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれ、それぞれ単独で、又は2種類以上のヘテロポリ酸を混合して用いることを特徴とする〔8〕に記載の製造方法、
〔10〕 前記イオン交換樹脂が、陽イオン交換樹脂であることを特徴とする〔5〕に記載の製造方法、
〔11〕 前記触媒水溶液及び前記炭化水素混合物が、向流となるように供給しながら反応させる工程を含むことを特徴とする〔4〕ないし〔10〕のうち何れか一項に記載の製造方法、
〔12〕 酸化剤を、連続的又は不連続的に添加する工程をさらに含むことを特徴とする〔4〕ないし〔11〕のうち何れか一項に記載の製造方法、
を提供する。
【0017】
さらに、本発明の第3の態様では、
〔13〕 少なくとも1つの攪拌槽型反応器と、前記攪拌槽型反応器に接続した蒸留塔と、前記攪拌槽型反応器及び/又は前記蒸留塔と接続し、不純物を除去する分離器と、前記分離器と、前記攪拌槽型反応器及び/又は前記蒸留塔とを連通させるボトム液配管と、を備える、第3級ブタノールの連続製造装置、
〔14〕 前記攪拌槽型反応器が、触媒分離器を備えることを特徴とする〔13〕に記載の第3級ブタノールの連続製造装置、
〔15〕 前記分離器が、前記触媒分離器と連通していることを特徴とする〔14〕に記載の第3級ブタノールの連続製造装置、
〔16〕 前記分離器が、吸着剤カラム及び/又はイオン交換樹脂カラムを備えることを特徴とする〔13〕ないし〔15〕に記載の第3級ブタノールの連続製造装置、
〔17〕 前記攪拌槽型反応器が、触媒水溶液と原料炭化水素混合物が向流となるように供給しながら反応させる向流型反応器であることを特徴とする〔13〕ないし〔16〕のうちいずれか一項に記載の第3級ブタノールの連続製造装置、
〔18〕 前記連続製造装置において、触媒が接触する部位の材質が、少なくともCrを17〜21%、Niを8〜14%含み、Cが0.10%以下であるステンレス鋼から構成されることを特徴とする〔13〕ないし〔17〕のうち何れか一項に記載の第3級ブタノールの連続製造装置、
〔19〕 前記触媒が、ヘテロポリ酸であることを特徴とする〔18〕に記載の第3級ブタノールの連続製造装置、
を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、イソブテンの製造方法について、長期間に亘り、安定的に、高収率、高選択率で第3級ブタノールからイソブテンを製造することができる。また、第3級ブタノールの製造方法について、長期間安定に、高い反応活性を維持することで長期の連続運転が可能になり、生産量が向上した第3級ブタノールの製造方法が提供される。さらに、触媒ロス、運転停止に伴う生産ロスを大幅に削減することができ、廃棄物の削減、省エネルギーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、TBAの製造方法で得られた蓄積性不純物の赤外吸収スペクトルを示す。
【図2】図2は、本発明のTBAの製造方法を実施するための一つの態様としての連続製造装置を示す。
【図3】図3は、本発明のTBAの製造方法に利用される反応器の一例の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明は以下の具体例に制限されるものではない。当業者は、以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができ、かかる変更は本願特許請求の範囲に包含される。
【0021】
本発明の一の態様は、第3級ブタノール(以下、「TBA」という。)を原料として、気相下、脱水反応によりイソブテンを製造する方法に関する。
【0022】
本発明のイソブテンの製造に用いる触媒は、γ型の結晶構造を主成分とするアルミナである。アルミナ触媒中のNa含有量は、Na2Oに換算して0.1〜0.6重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%、より好ましくは0.1〜0.4重量%の範囲であり、Si含有量はSiO2に換算して0.4重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下であり、且つ、比表面積が200〜600m2/g、好ましくは250〜600m2/g、より好ましくは300〜600m2/gである。
【0023】
イソブテンの製造に用いるアルミナ触媒が該脱水反応において特に有効である理由は、脱水反応活性に最適な酸性質を有しているためと推定しているが、アルミナ触媒中に含まれるNaの量が増加していくと、触媒表面の酸点が中和され、脱水反応収率が著しく低下する。これに対し、アルミナ触媒中に不純物としてSiO2が存在する場合、Si含有量の増加に伴い、Si−O−Alに由来する強酸点が発現し、脱水反応収率を低下させ、炭素析出を加速させる。そのため、アルミナ触媒中のNa含有量とSi含有量は少ないほど有利となるが、わずかでもSiO2がアルミナ触媒中に含まれる場合は、Si由来の強酸点を中和するためにある程度のNaが必要となる。通常、脱水反応に用いられるアルミナ触媒からSiを完全に除去することは現実的でないため、Naの含有量については、触媒表面の酸性質を最適な状態に維持するに必要な、最低限の量が存在することが重要となる。一方、ある程度のSiO2を含むアルミナ触媒の場合、存在する強酸点をNaにより中和すれば最適な酸性質が得られると考えることもできる。しかし、この場合、触媒表面のNaとSiが増加するとその分布は不均一となり、脱水反応に活性な酸点を中和してしまい、強酸点は依然として存在するため、脱水反応収率は著しく低下する。
【0024】
イソブテンの製造に用いるアルミナ触媒の比表面積の大きさは脱水反応活性に寄与するだけでなく、炭素析出による経時的な触媒活性の低下を遅滞させる効果を有するため、比表面積は200〜600m2/g、好ましくは250〜600m2/g、より好ましくは300〜600m2/gである。比表面積は600m2/g以下が好ましい理由として、比表面積が600m2/g以下のアルミナ触媒は、全細孔容積に占める細孔半径の小さい細孔の割合が少ないため炭素析出による細孔の閉塞が起きにくく、経時的な触媒活性の低下が遅くなるためである。
【0025】
イソブテンの製造に用いるアルミナ触媒は、上記の性質を持つアルミナ触媒であって、さらに、次のような性質も併せ持つものが好ましい。すなわち、該アルミナ触媒中の全細孔容積が0.1〜0.5cc/gの範囲にあり、且つ、細孔半径70Å以上の細孔が有する細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める範囲にあるアルミナ触媒である。アルミナ触媒の全細孔容積、及び細孔半径70Å以上の細孔が占める細孔容積が上記の範囲内であるものは、脱水反応収率が高く、触媒活性の経時的な低下が小さい。
【0026】
イソブテンの製造に用いるアルミナ触媒の有する性状が上記の範囲内であれば、その製造方法は、公知の方法で製造されたアルミナを用いることができる。例えば、熱分解法、沈殿法、沈着法、混練法又はこれら方法の併用の、いずれかの方法によって容易に製造される。この際、アルミナの原料としては加熱又は加水分解によりアルミナ、あるいはアルミナ水和物を生成する硝酸塩、酢酸塩、アルコキシド、硫酸塩、塩化物、アルミン酸アルカリ、及びミヨウバン等が用いることができる。加水分解のためのアルカリとしてはカ性アルカリ、炭酸アルカリ、アンモニア水、炭酸アンモニウム等がいずれも使用できるが、ナトリウム分を含有しないものが好ましい。
【0027】
イソブテンの製造に用いるアルミナ触媒の形状については特に制限はなく、粉末状、粒状、球状、円柱状、リング状など何れでもよいが、実際には反応器の圧力損失を考慮して決定される。一般的には、直径0.5〜20mmの球状や、直径及び高さが2〜20mmの円柱状、外径4〜20mm、内径2〜16mm、高さ2〜20mmのリング状のものが使用される。
【0028】
イソブテンの製造に用いるアルミナ触媒の成型法については特に制限はなく、触媒成型法については、通常、球状形態を成型する場合は、転動式造粒法、マルメライザー成型法、流動層造粒法などがあり、円柱状又はリング状形態を成型する場合は、押し出し成型法や打錠成型法などが採用されるが、何れの方法を用いてもよい。触媒の前処理は特に必要ないが、焼成処理等の前処理を行ってもよい。
【0029】
本発明のイソブテンの製造方法において、出発物質であるTBAの脱水分解反応の条件は次の通りである。具体的には、反応温度が200〜450℃、好ましくは250〜420℃、より好ましくは300〜400℃である。脱水反応収率、炭素析出の抑制の点から、この範囲の脱水分解温度が好ましい。
【0030】
反応器への原料の供給量は、原料TBAの供給速度(LHSV)として0.1〜10hr-1、好ましくは0.5〜5hr-1である。経済性、脱水反応収率、炭素析出の抑制の点から、この範囲の供給速度が好ましい。反応圧力は、特に限定されず、減圧、常圧、加圧の何れでもよいが、加圧条件下では、工業用常用の冷却剤で凝縮できる点、及び反応器の小型化、触媒の少量化が可能な点から有利である。
【0031】
原料のTBA蒸気は、水蒸気及び/又は窒素のような不活性ガスとともに供給するのが一般的であるが、本発明の方法においてはTBA蒸気のみを通じても運転・操業は可能である。これは、本発明のイソブテンの製造方法においては副反応の生成が少ないため、炭素析出も少なくなるという特徴を有するためである。
【0032】
本発明のイソブテンの製造方法における反応方式は、連続反応が好ましく、反応器の形式としては固定床方式が好ましい。
【0033】
本発明のイソブテンの製造方法において使用するTBA原料は、必ずしも純粋でなくてもよく、反応条件下で化学反応を起こさない有機物が少量混入したものも用いることができる。ただし、炭素析出を起こすような有機物はできるだけ含まないことが好ましい。より好ましくは、イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から、水及びヘテロポリ酸触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和して製造されたTBAである。本発明者等が、数種の製法の異なるTBAを用いて検討した結果、ヘテロポリ酸の水和により製造したTBAが最もジイソブテン、含酸素化合物等の不純物が少なく、炭素析出が少ない結果となった。これは、ヘテロポリ酸の水和反応の選択性が高いことが原因の1つと考えられる。一方、その他の製法によるTBAについては、例えば、プロピレンオキサイドを製造する際に副生するTBAの場合は各種ケトン類等の含酸素化合物が多く含まれ、また、イオン交換樹脂にて水和されたTBAについては、接触効率を上げるために添加される有機酸とブテン類とのエステル類が含まれ、有機酸を用いずに製造されたTBAでもジイソブテンが多いために、炭素析出が加速された可能性が考えられる。また、水分を含むTBAを用いることも可能であり、炭素析出の抑制という点から、ある程度の水分を含んだTBA原料を用いることが好ましい。また、水分を含むTBAを原料として使用できると、TBAの共沸水を精製して除去する工程を必要とせず経済的に有利であり、さらには、低温下において凍結しにくく取り扱いが容易である。水分濃度に関して、ヘテロポリ酸を触媒に用いて製造されたTBAは、安定した一定の水分濃度を持つためにより好ましい原料となる。
【0034】
次に、本発明の別の態様であるTBAの製造方法について説明する。本発明のTBSの製造方法は、イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から水と触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和し、TBAを製造する連続的方法において、蓄積性不純物が、触媒活性低下の原因や、触媒分離の悪化、蒸留塔分離性能低下の原因であることを突き止めた。そこで、本発明のTBAの製造方法では、イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物、触媒水溶液又はTBAのうち少なくとも1種を循環するリサイクル系を用いて、蓄積性不純物を一定の濃度以下になるように管理する工程という、新しい技術思想を付与することで、安定したTBAの連続的製造方法を提供するものである。
【0035】
また、本発明のさらに別の態様では、効率的なTBAの生産を確保するための反応システムとして、本発明のTBAの製造に関する第3級ブタノールの連続製造装置を提供する。本発明の第3級ブタノールの連続製造装置は、少なくとも1つの攪拌槽型反応器と、前記攪拌槽型反応器に接続した蒸留塔と、前記攪拌槽型反応器及び/又は前記蒸留塔に接続し、不純物を除去する分離器と、前記分離器と、前記攪拌槽型反応器及び/又は前記蒸留塔とを連通させるボトム液配管と、を備える。本発明の連続製造装置の好ましい態様では、前記攪拌槽型反応器が、触媒分離器を備え、当該触媒分離器も前記分離器と接続している。また、本発明の連続製造装置の別の好ましい態様では、前記分離器が、吸着剤カラム及び/又はイオン交換樹脂カラムを備える。TBAの製造に関して、本発明に係る連続製造装置の好ましい態様では、前記攪拌槽型反応器が、触媒水溶液と原料炭化水素混合物が向流となるように供給しながら反応させる向流型反応器である。このように、触媒水溶液と原料である炭化水素混合物が向流となるように供給しながら反応させることで高い生産性を実現できる。加えて、酸化剤の添加によって低下した活性を復活させることも可能となる。
このようにして、本発明のTBA連続製造装置では、分離器を介して、後述するように、原料、生成物又は触媒のリサイクル系を確立することができる。
【0036】
イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から水と触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和し、TBAを製造する反応条件によって蓄積性不純物は単独の場合もあるが、多くの場合、複数の物質から形成されることが推定されている。例えば、本発明者らは、その一つに、反応器材質が腐食等のよって溶解し金属イオンとして反応系に蓄積することも触媒活性低下の因子の一つであることを解明した。触媒である酸性物質が原因であると推定して、腐食を大きく低減できる金属材料を広く調査し、さらに実験によって、従来のステンレス鋼の耐腐食性概念からは予想できない現象を見出した。すなわち、本発明では、TBAの製造において、反応系での不純物の発生を極力抑制し、発生した微量の蓄積性不純物をリサイクル系で濃縮し効果的に除去するものである。不純物の除去は、本来、不純物が発生又は存在する部位で行うのが好ましいといえるが、実際に実施してみると、微量の不純物を効果的に除去するのは極めて困難であった。ところが、微量なために除去が困難な場合にも、本発明のリサイクル系で蓄積性不純物を濃縮することによって、分離効率が格段に容易になり簡単な設備で効果的な除去が可能になる。
【0037】
本発明のTBAの製造方法における除去工程は、蓄積性不純物を、後述する少なくとも一つのリサイクル系において実施し、反応方法などの違いによって適した場所にて蓄積性不純物の除去工程を行うことができる。蓄積性不純物が触媒水溶液に多く含まれる場合には、触媒のリサイクル系にて除去工程を行うことができる。また、未反応の原料系中に蓄積性不純物が多く含まれる場合にはそのリサイクル系にて除去工程を行うことができる。さらに、生成物の一部を循環する系に蓄積性不純物が多く含まれる場合には、そのリサイクル系にて除去工程を行うことができ、プロセスに応じて効果的な場所のリサイクル系において除去工程を行うことが好ましい。さらに、本発明のTBAの製造方法において、触媒、原料及び製品の全てのリサイクル系において、蓄積性不純物を除去することもできる。
【0038】
次に、本発明のTBAの製造方法において使用する強酸性触媒として、ヘテロポリ酸水溶液を触媒に用いた系を例示して、本発明のTBAの製造方法における蓄積性不純物の除去工程について説明する。
(触媒のリサイクル系において)
まず、触媒であるヘテロポリ酸は、その陰イオンの直径が約1nmであり、一般的な鉱酸である、硝酸、塩酸、硫酸に比べ大きな陰イオンである。このことは、他の鉱酸に比べプロトンとしての酸強度を高める結果となる。イソブテンの水和反応において同じプロトン濃度において硝酸などの一般的な鉱酸に比べ、高い反応活性を示す。また、大きな陰イオンとイソブテンとの相互作用がn−ブテンより強いと推定され、高い選択水和反応特性を引き出すと考えられている。さらに、例えば、100℃程度の反応温度領域では安定であり、熱劣化のあるイオン交換樹脂に比して、寿命の観点からも有利である。したがって、触媒としてはイオン交換樹脂に比べ優れている。しかしながら、近年、年間オーダーの長時間に渡り連続的に反応を継続していると、緩やかではあるが反応活性が低下していくという問題が発生した。本発明者らはその原因や劣化を詳細に検討した結果、本発明のTBAの製造方法では、以下のような解決策を見出した。
【0039】
すなわち、長時間反応に使用して触媒活性が低下したリサイクル系のヘテロポリ酸水溶液を解析した結果、不純物が蓄積していることがわかった。そこで、例えば溶解したTBAを蒸留分離した蒸留塔のボトムの触媒水溶液の一部を循環リサイクルする場所から、例えば、蓄積性不純物を吸着分離して除去することができる。さらに、酸化剤を添加することで、触媒分離特性や蒸留塔の運転性、活性を回復させることができることを見出した。活性低下や回復の機構の全ては明らかにはできていないが、長時間に及ぶ反応運転で生成した微量の不純物がリサイクル系に留まり蓄積して濃度が高くなり、触媒分離工程の分離性を悪化させる蒸留塔の運転では発泡現象などを起こし分離特性を悪化させると推定される。また、触媒であるヘテロポリ酸に吸着若しくは配位することでイソブテンの反応阻害をすると想定される。その考察の一つとして、触媒水溶液の分析から反応初期には認められなかった鉄イオン等が反応時間の増加に伴って確かに増加していた。すなわち、蓄積性の不純物の一つとしては、反応器、配管材料から溶出する鉄などの金属イオン等が推定される。鉄イオン等の発生は、反応器等の装置材料からの腐食によって引き起こされると考えられる。これらの金属イオン等の除去方法を検討した結果、ほぼ金属イオン等は、イオン交換樹脂で選択的に吸着除去できることを見出した。
【0040】
金属イオンの吸着除去には、活性炭類も利用可能であるが金属イオンを選択的に除去する場合には、イオン交換樹脂類から選定して利用するのが金属イオン除去からは好ましい。具体的には、スルホン基や、カルボキシル基を有するスチレン系ゲル型、スチレン系MR型、メタクリル酸MR型、アクリル酸MR型、アクリル酸ゲル型などの陽イオン交換樹脂等が挙げられ、Na型よりH(酸)型やキレート樹脂から好適なものを選定して使用することが好ましい。
【0041】
(原料のリサイクル系において)
また、原料であるイソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物におけるブテン類は、ビニル基という反応性の官能基を有することから何らかの重合反応等によって高沸点の蓄積性有機化合物の生成が推定される。
【0042】
つぎに、高沸点の蓄積性有機化合物が原因であると推定した、触媒相(水相)と炭化水素相(オイル相)との分離性の悪化現象を解決した方法について詳細に説明する。触媒水溶液相と炭化水素相、すなわち水相、オイル相が悪化する現象は、水と油を乳化するような成分、すなわち、界面活性剤の機能を有する蓄積性不純物が系内で微量生成し、その成分が時間と共に蓄積してくることから起こると仮定した。徹底的な解析の結果、ある特定の吸着剤を用いると不純物を吸着分離することに成功した。この不純物を解析すると界面活性機能を有することが確認できた。さらに、不純物を抽出して、フレッシュな触媒水溶液と炭化水素混合物に添加すると、明らかに分離界面を悪化させる現象を再現した。
【0043】
すなわち、触媒分離界面の悪化や蒸留塔分離(発泡)原因物質は、リサイクル系に蓄積する不純物が原因物質であり、NMR、MS、IR等を用いた解析からも、有機分子成分と陰イオンを有すると推定される界面活性剤と類似した機能を有する不純物であることを突き止めた。
【0044】
(生成物のリサイクル系について)
蒸留塔での分離性能悪化現象では、蓄積性不純物の濃度が高くなると悪くなるなどの関係も実験的にも検証できた。イソブテンの水和反応生成物であるTBAは、触媒水溶液中にある範囲濃度で含まれると、特開2000−44502号に示されているように、蒸留塔において起こる発泡現象を消泡する機能を有することが見出されている。アルコール類は発泡現象を抑制する消泡剤として用いられるため、本反応での目的生成物であるTBAも消泡剤として機能すると考えられる。
【0045】
しかし、本発明のTBAの製造方法では、TBAが無い条件であっても蓄積性不純物を除去することによって、触媒分離悪化や蒸留塔の運転性悪化を抑制できることを見出した。すなわち、界面活性能を有する蓄積性不純物を触媒水溶液中の濃度で10.0〜0.1重量%、好ましくは5.0〜0.1重量%、より好ましくは3.0〜0.1重量%下である。さらに低いレベルに制御することが好ましいが、除去に用いる吸着剤量が多量に必要になるなどの負荷が増大する。したがって、分離状況と、運転条件によるTBAの存在濃度などから最適な濃度レベルを設定することができる。効果的に発泡原因物質と推定される蓄積性不純物を除去する機能材料を鋭意検討した結果、吸着剤の表面積と吸着効果が単純には依存せず、吸着効果の一つには、細孔径が重要な因子であることを見出した。具体的には、多孔質吸着剤が好ましい。吸着剤としては、シリカ、アルミナ、活性炭、ゼオライト類、細孔径の大きなMCM−41等のメソポアゼオライト類などの無機多孔質材料、イオン交換基を持たないスチレン−ジビニルベンゼン、メタクリル酸エステルとエチレングリコールジメタクリレートを原料とする架橋合成有機高分子、キトサン樹脂などが挙げられる。細孔半径は0.5〜500nmの範囲にあるサイズの多孔性の吸着剤であり、好ましくは細孔半径が1〜250nmの範囲、より好ましくは2〜50nmの細孔を有する多孔性材料である。材質的により好ましいのは親水性より新油性材料であり、シランカップリング剤などで有機修飾したシリカゲル、有機修飾したアルミナ、有機修飾したMCM−41等のメソポア、さらに好ましくは合成樹脂系材料が好ましい素材である。
【0046】
このように、本発明のTBAの製造方法では、触媒、原料又は生成物のリサイクル系を採用することにより、当該リサイクル系において、吸着剤及び/又はイオン交換樹脂などの分離器を設けることで、各リサイクル系にて蓄積性不純物を濃縮及び除去する。かかる濃縮及び除去を行うことで、長期間安定に、且つ、触媒の反応活性を維持することが可能となり、TBAの連続的製造が実現される。
【0047】
本発明のTBSの製造方法において用いる触媒は、酸性を示す物質を用いことができるが、反応速度の観点から、Hammettの酸度関数Hoが、−5.6≧Ho表現される強酸性物質から選択して用いることができる。強酸性物質の具体例としては、SiO2−Al2O3、SiO2−ZrO2、SiO2−BeO、SiO2−Y2O3、SiO2−La2O3、Al2O3−ZrO2、TiO2−ZrO2、H−Yゼオライト、H−ZSM−5、80%以上のH2SO4、Nafion−H、強酸性陽イオン交換樹脂、パラトルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸等が挙げられ、これらから選定して酸触媒として使用することができる。
【0048】
本発明のTBAの製造方法に用いられるヘテロポリ酸の具体例としては、H3PMo12O40、H6P2Mo18O62、H9AlMoO24、H3AsMo12O40、H8CeMo12O42、H9GaMoO24、H5IMo12O40、H4SiMo12O40、H4GeMoO12O40、H4PVMo11O40、H5PV2Mo10O40、H5BW12O40、H4PW11AlO40、H3PW12O40、H5AlW12O40、H6SiV2W10O40、H5SiVW11O40、H4SiW12O40、H5GaW12O40、H9NdW18O36、H9CeW18O36、H6P2W18O62、の酸およびH3NaSiW12O40、H3KSiW12O40などの塩類から選択して用いることができ、リンモリブデン酸(H3PMo12O40)、H4PVMo11O40、リンタングステン酸(H3PW12O40)、リンタングステン酸(H4PVW11O40)、ケイタングステン酸(H4SiW12O40)が反応性から好ましい。
【0049】
本発明のTBAの製造方法に用いる装置材質において、酸性を示す触媒水溶液と接触する部位として、例えば、反応容器、攪拌羽、仕切り板、パッキン、デカンター、セトラー、蒸留塔、蒸留塔トレイ、配管、フランジ、測定装置部材、ジョイント類などの接続部材などを挙げることができる。これらの部材としては、炭素鋼などの鉄、銅、黄銅、アルミニウムなどの材料は腐食性が激しく好ましくない。触媒であるヘテロポリ酸が接触する部位にはステンレス鋼が好ましい材料であり、広くステンレス鋼が適用できる。より好ましくは、鉄、クロム、ニッケルを含む合金系のステンレス鋼が腐食性に優れた材料である。さらに好ましくは、Crを17〜21%、Niを8〜14%含み、Cが0.10%以下のオーステナイト系ステンレス鋼が、ヘテロポリ酸が接触する部位に耐腐食性に好適な材料として使用することができる。JISの規格で例示すると、SUS304、304L、305、305L、308、316、316J、316L、317、317L等が挙げられ、より好ましくはSUS304である。これらの材料が耐腐食性を特異的に発現する機構として、本発明者は、ヘテロポリ酸とこれらの材料の構成元素とが材料表面に特異的に反応して不動態層を形成し安定化するため、さらなる腐食の進行を抑制できるのではないかと推定する。
【0050】
また、本発明のTBAの製造方法では、酸化剤を添加することで触媒活性の回復効果が発現すると共に、やや着色した触媒水溶液の着色の程度も薄くなることを見出した。酸化によって還元されていた触媒が酸化されることや反応阻害を起こしていた不純物が酸化分解して除去されたためと推定される。酸化剤としては、空気や酸素で酸化する方法は、活性の改善効果は見られるが、すこし長時間を要する。オゾンや電気化学的な酸化方法も酸化剤として利用できる。好ましくは、過酸化水素などの酸化力が高い酸化剤である。酸化力の指標としては、過酸化水素と同等の酸化力が好ましく、過酸化水素のように反応後に水となるような、水和反応へ大きな影響を与えない酸化剤がより好ましい。添加する酸化剤の量および頻度については、酸化剤の種類や、触媒の使用時間による活性低下の程度、蓄積性不純物の共存量などによって異なるため、一義的には決定できない。しかし、例えば、酸化剤として過酸化水素を使用した場合には、過剰に添加しても、過酸化水素の場合は、時間とともに分解してしまうため、多少過剰に添加しても問題はなく、その点からも過酸化水素は好ましい酸化剤の一つとして選択される。しかし、過剰の過酸化水素の添加は、経済的な観点からは無駄になるため好ましくない。したがって、運転の実績から随時判断して決定されるが、大まかな添加の目安として過酸化水素を利用した場合を例に示すと、触媒水溶液に対して0.01〜5000ppm/h、好ましくは0.1〜3000ppm/h、さらに好ましくは1〜1000ppm/hを、不連続的に又は連続的に添加する。添加する場合の温度は、室温から約100℃程度の温度範囲から選ぶことができる。温度が高いほど酸化反応速度は一般に速くなるが、その一方で、過酸化水素自身の分解も起こり易くなるので、好ましくは30〜80℃、さらに好ましくは40〜80℃が好ましい。酸化剤を添加する部位としては、殆どが触媒と水から形成される水相を形成する場所が好ましく、オレフィン等の炭化水素が極力存在しない部位、場所がより好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範
囲を何等限定するものではない。なお、本発明のイソブテン製造方法の実施例において採用した測定方法は以下の通りである。
(1)アルミナ触媒中のNa含有量、Si含有量の測定
標準試料を用いた蛍光X線分析法にて、リガク製RIX1000を用いて分析を実施した。
(2)アルミナ触媒の比表面積の測定
窒素吸着法にて、島津製Gemini2360を用いて比表面積を測定した。
(3)アルミナ触媒の細孔容積、細孔分布の測定
水銀圧入法にて、QUANTACHROME製Pore Master GT33を用いて細孔容積、細孔分布を測定した。
【0052】
[実施例1]
Na含有量がNa2Oに換算して0.25重量%、Si含有量がSiO2に換算して0.06重量%、比表面積が402m2/g、全細孔容積が0.21cc/g、細孔半径70Å以上の細孔が有する細孔容積が全細孔容積の78%であり、直径2〜5mmの球状に成型されたアルミナ触媒(触媒A)を、外部に電気炉を有する内径10mm、長さ30cmのSUS316製の縦型管状反応管に10ml充填し、電気炉の温度を360℃に設定した。イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から、水及びヘテロポリ酸触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和して製造されたTBAの85重量%水溶液を100℃に予熱して20ml/Hr(LHSV=2.0hr-1)で反応器塔頂部からフィードし、反応管内の圧力が4Kg/cm2Gになるようにして反応を行った。反応管下部より排出される気液混合物を液相部と気相部に分離した。実験開始後、一定時間経過したところの気相部の反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析し、反応成績を求めた。5時間経過したところTBA転化率95%、イソブテン選択率99%、収率94%であった。800時間経過したところTBA転化率94%、イソブテン選択率99%、収率93%であった。
【0053】
[実施例2、比較例1〜5]
物性値が異なる各種アルミナ触媒(触媒B、C、D、E、F、G)を触媒として、実施例1と全く同一の反応条件下で性能評価を行った。その結果を表1に示す。主な副生物はジイソブテンとsec−ブタノールであった。
表1からイソブテンの収率、特に800時間後の収率の高い触媒は、触媒A、Bであることが分かる。
【0054】
[実施例3]
実施例1で用いた反応管に触媒Aを10ml充填し、電気炉の温度を250℃に設定した。実施例1で用いたTBAの85重量%水溶液を100℃に予熱して5ml/Hr(LHSV=0.5hr-1)で反応器塔頂部からフィードし、反応管内の圧力が4Kg/cm2Gになるようにして反応を行った。結果を表2に示した。
【0055】
[実施例4]
実施例1で用いた反応管に触媒Aを10ml充填し、電気炉の温度を400℃に設定した。実施例1で用いたTBAの85重量%水溶液を100℃に予熱して10ml/Hr(LHSV=1.0hr-1)で反応器塔頂部からフィードし、反応管内の圧力が4Kg/cm2Gになるようにして反応を行った。結果を表2に示した。
【0056】
[比較例6及び7]
実施例2、3の電気炉の温度を150℃および500℃に設定し、その他の条件は全て同様にして反応を行った。結果を表2に示した。
【0057】
[実施例5]
外部にオイル加熱槽を有する内径25.4mm、長さ280cmのSUS316製の縦型管状反応管に触媒Aを600ml充填し、電気炉の温度を350℃に設定した。実施例1で用いたTBAの85重量%水溶液を100℃に予熱して600ml/Hr(LHSV=1.5hr-1)でフィードし、反応管内の圧力を4Kg/cm2Gに設定して反応を行った。上記条件における触媒寿命テストを実施し、通算反応時間が1800時間と9000時間における反応結果を表3に示す。
【0058】
[比較例8〜10]
原料であるTBA水溶液を変更した以外は実施例1と全く同一の触媒および反応条件下で性能評価を行った。比較例8ではプロピレンオキサイドを製造する際に副生するTBAを用い、比較例9ではイソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物からイオン交換樹脂にて酢酸存在下にて水和されたTBAを用い、比較例10ではイソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物からイオン交換樹脂にて水和されたTBAを用いた。比較のため、実施例1で用いたTBAの組成と反応の結果を併せて、通算反応時間が800時間における結果を表4に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
次に、本発明のTBA製造の実施例において採用した参考実験は以下の通りである。
〔参考実験1〕蓄積性不純物(界面活性能の原因物質)の解析:
約50重量%のリンモリブデン酸を含み約1年間連続反応に用いた触媒水溶液1000gとビーズ状吸着剤(三菱化学製、セパビーズSP207:修飾スチレン系、比表面積:630m2/g、最高頻度細孔直径:21nm)250gを約60℃で3時間かき混ぜながら接触させた。その後、吸着剤をロ別し、洗浄液が無色透明になるまで、蒸留水で水洗した。吸着剤を風乾したのち、1000mlのアセトン溶液に浸漬し約1時間放置するとアセトン溶液は茶褐色に着色した。茶褐色に着色したアセトン溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、60℃でアセトンを除去すると茶褐色の固体状物質が得られた。茶褐色の固体状物質の元素分析を行った結果、リン、モリブデン、炭素、窒素および水素から構成される物質であった。また、その物質の赤外吸収スペクトルを測定し、スペクトル図を得た。図1は、本発明で得られた蓄積性不純物の赤外吸収スペクトルを示す。この赤外吸収スメクトルには、ケギン型ヘテロポリ酸に特徴的な1062cm-1、960cm-1、880cm-1、808cm-1の吸収、2970cm-1のC−H伸縮振動等、有機物化合物由来の吸収が見られ、アルキル基とアニオンを持つも化合物が蓄積性不純物の一つとして確認できた。
【0064】
〔参考実験2〕分離性の評価:
新しい試薬から調製したリンモリブデン酸50重量%の水溶液50mlとイソブテンを43重量%含有するラフネート50mlを耐圧のガラス容器に採取し、激しく3分間振り混ぜた後に静止して界面が形成される時間を測定した。5回繰り返した結果、2相に分離し界面形成までの時間は平均6秒であった。
【0065】
〔参考実験3〕分離性の評価:
新しい試薬から調製したリンモリブデン酸50重量%の水溶液50mlに参考実験1で得た蓄積性不純物を0.5g加え、イソブテンを43重量%含有するラフネート50mlを耐圧のガラス容器に採取し、激しく3分間振リ混ぜた後に静止して界面が形成される時間を測定した。5回繰り返した結果、2相に分離し界面形成までの時間は平均120秒であり、界面が不明確であった。
[実施例6]
【0066】
図2は、本発明によるTBAの製造方法を実施するための一つの態様としての連続製造装置を例示する。本発明における連続製造装置は、攪拌槽型反応器及び配管等部位全てがSUS304(Cr18.0%、Ni8.0%C:0.08%以下)で構成され、反応容積が10Lの攪拌式反応槽と、2Lの容積の触媒分離部とから構成される攪拌槽型反応器を3つ備える。なお、図2では、3つの攪拌槽型反応器を例示するが、本発明の連続製造装置は攪拌型反応器を3つ備えるものに限定されず、少なくとも一つの攪拌槽型反応器を備える。各反応器に設置した触媒分離器で分離した各炭化水素相(オイル相)と触媒水溶液(水相)を分離し、原料である炭化水素と触媒水溶液が向流となるフローで反応させ、最終反応槽の触媒分離器で分離した生成TBAを含む触媒水溶液を理論段数20段の充填塔式蒸留塔に供給し、蒸留塔の上部からTBAを分離し、ボトム温度が70℃になるように減圧に管理し、ボトムから触媒水溶液を回収する操作を行った。また、ボトム液配管ラインには、三菱化学社製、酸型陽イオン交換樹脂(SK1B)を500ミリリットル充填したカラム及び吸着剤として三菱化学社製合成樹脂系(セパビーズ:P207、最高頻度細孔直径:21nm、充填量500ミリリットル)を設置し、ボトム液量の約1/10の液量を循環させ、不純物金属イオン、蓄積性不純物を連続的に吸着除去しながら触媒水溶液を攪拌槽型反応器へ供給した(図2参照)。触媒として50重量%の新しいリンモリブデン酸(H3PMo12O40)溶液(Hammett酸度関数Ho−5.6≧Ho)を調製し、図2に例示する全ての反応器へ50L/hで供給し、炭化水素原料として、43重量%のイソブテンを含むラフネート1を20L/hで向流となるように供給した。反応温度は、各反応器の攪拌式反応槽が70℃になるように管理した。さらに反応開始から、48時間経過ごとに、蒸留塔ボトム配管に10wt%の過酸化水素水100mlを1時間かけて供給する間欠操作を行ない、約2000時間の連続運転を行った。反応初期のイソブテンの転化率95%、水を除いたTBAの選択率は99%を示し、2000時間経過時点でもほぼ同等の反応成績を維持することができた。また、触媒分離器における触媒分離状態の悪化による未反応炭化水素への触媒流出、及び蒸留塔の差圧上昇を伴う運転性の悪化も全く発生しなかった。このときの触媒水溶液50mlと新しい吸着材セパビーズ30mlと接触させ蓄積不純物量を吸着させた。その後参考例1と同様な操作で吸着材を水洗して分離後、アセトンで吸着剤から蓄積性不純物を溶解させ、アセトンを蒸発させ残渣として不純物の量を求めたところ、触媒水溶液中の蓄積性不純物量は2.1wt%であった。
[比較例11]
【0067】
実施例6のボトム液配管ラインの酸型陽イオン交換樹脂カラム及び吸着剤カラムを設置しない以外は実施例6と同様の操作で連続反応を行った。反応開始から100時間は転化率95%を維持したが、約150時間経過ごろから蒸留塔の差圧の上昇がみられ、さらに未反応炭化水素に若干の濁りが発生した。未反応炭化水素を蒸発させ残渣を蛍光X線で分析したところモリブデンが検出された。触媒分離部の分離性能低下及び蒸留塔の分離悪化により反応継続が困難になったためを停止した。反応停止後、触媒水溶液を抜き出し、参考実験2の触媒分離性能をテストした。5回繰り返した結果、2相に分離した界面形成までの時間は平均160秒であり、界面も不明確であった。このときの触媒水溶液50mlと新しい吸着材セパビーズ30mlと接触させ蓄積不純物量を吸着させた。その後参考例と同様な操作で蓄積性不純物の量を求めたところ、触媒水溶液中の蓄積性不純物量は11.5wt%であった。
[実施例7]
【0068】
過酸化水素による酸化処理を行わなかった以外は、実施例6と同様の操作で反応を行った。反応初期約10時間目のイソブテンの転化率は95%であった。反応運転は安定に維持され長時間運転が可能であった。しかし、約500時間以降緩やかに活性の低下が認められ、約1000時間目のイソブテン転化率は94.2%、2000時間経過時点では93.6%であり、長期反応では活性低下が認められた。
[実施例8]
【0069】
攪拌器の材質をSUS304よりも一般的には、さらに耐酸腐食性に優れるとされるハステロイB(Ni67%、Mo28%、Fe5%)に変更し、イオン交換樹脂を設置しない以外は実施例6と同様操作で行った。反応初期約10時間目のイソブテンの転化率は95%であった。反応運転は安定に維持され長時間運転が可能であった。しかし、約300時間以降緩やかに活性の低下が認められ、約1000時間目のイソブテン転化率は94.5%、2000時間経過時点では94.1%であり、長期反応では活性低下が認められた。反応停止後触媒水溶液を分析した結果、鉄イオンが800ppmと約700ppmの増加し、一般的な耐腐食性から予想した結果となることを確認した。
[実施例9]
【0070】
実施例6の反応器3基を図3に示したような構造の混合反応部8室、各混合反応部の容積15Lの向流型反応器1基に変更した以外は同様で反応を行った。イソブテンの転化率は97.5%と高い値が得られることから、向流に触媒と原料を供給する方法及び向流型反応器の高い反応性が確認できた。
[実施例10]
【0071】
触媒をリンタングステン酸(H3PW12O40)に変更し、プロトン濃度を同じに設定した以外は、実施例6と同様の操作で500時間の反応を行った。反応10時間後のイソブテンの転化率は95.2%であり500時間経過も転化率は95.2%、運転状の問題も全くなかった。
[実施例11]
【0072】
触媒をリンバナドモリブデン酸(H4PVMo11O40)に変更し、プロトン濃度を同じに設定した以外は、実施例6と同様の操作で500時間の反応を行った。反応10時間後のイソブテンの転化率は94.7%であり500時間経過も転化率は94.8%、運転状の問題も全くなかった。
[実施例12]
【0073】
触媒をケイタングステン酸(H4SiW12O40)に変更し、プロトン濃度を同じに設定した以外は、実施例6と同様の操作で500時間の反応を行った。反応10時間後のイソブテンの転化率は95.3%であり500時間経過も転化率は95.2%、運転状の問題も全くなかった。
[実施例13]
【0074】
攪拌器の材質をSUS304からモリブデンをさらに少量含むSUS316(Cr:18.0%、Ni:10.0%、C:0.08%以下、Mo:2.0%)に変更し、イオン交換樹脂を設置しない以外は実施例6と同様操作で行った。反応初期約10時間目のイソブテンの転化率は95.2%であった。反応運転は安定に維持され長時間運転が可能で、約300時間以降も変化は見られず約1000時間目のイソブテン転化率は95.1%、2000時間経過時点では95.2%であり、長期反応でも活性低下は認められなかった。反応停止後触媒水溶液を分析した結果、鉄イオンは98ppmと初期から大きな変化は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のイソブテンの製造方法によれば、長期間に亘り、安定的に、高収率、高選択率でTBAからイソブテンを製造する方法が提供される。また、本発明のTBAの製造方法によれば、長期間安定に、高い反応活性を維持することで長期の連続運転が可能になり、生産量が向上したTBAの製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、触媒ロス、運転停止に伴う生産ロスを大幅に削減することができ、廃棄物の削減、省エネルギーを実現される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第3級ブタノールを原料として、イソブテンを製造する方法であって、
Na含有量がNa2Oに換算して0.1〜0.6重量%の範囲であり、Si含有量がSiO2に換算して0.4重量%以下であり、且つ、比表面積が200〜600m2/gであるアルミナ触媒を用いて、200〜450℃の反応温度にて、気相下、脱水反応を行う工程、
を含むことを特徴とするイソブテンの製造方法。
【請求項2】
前記アルミナ触媒が、触媒中の全細孔容積が0.1〜0.5cc/gの範囲にあり、且つ、細孔半径70Å以上の細孔が有する細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のイソブテンの製造方法。
【請求項3】
前記第3級ブタノールが、イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から、水及びヘテロポリ酸触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和して、第3級ブタノールを製造する方法によって製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載のイソブテンの製造方法。
【請求項4】
イソブテン及びn−ブテンを含む炭化水素混合物から、水及び触媒を含む触媒水溶液を用いて、選択的にイソブテンを水和して、第3級ブタノールを連続的に製造する方法であって、
前記炭化水素混合物、前記触媒及び第3級ブタノールのうち少なくとも1種を循環するリサイクル系を用いて、前記少なくとも1種をリサイクルさせる工程と、
該リサイクル系から蓄積性不純物の一部を除去する工程と、
を含むことを特徴とする第3級ブタノールの連続的製造方法。
【請求項5】
前記蓄積性不純物を除去する工程において、多孔質吸着剤及び/又はイオン交換樹脂を用いることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記多孔質吸着剤の細孔半径が、0.5〜500nmの範囲であることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記触媒が、Hammettの酸度関数Hoで、−5.6≧Hoで表される強酸又は強酸塩であることを特徴とする請求項4ないし6のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記触媒が、ヘテロポリ酸であることを特徴とする請求項4ないし7のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ヘテロポリ酸が、リンモリブデン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングステン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれ、それぞれ単独で、又は2種類以上のヘテロポリ酸を混合して用いることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂が、陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒水溶液及び前記炭化水素混合物が、向流となるように供給しながら反応させる工程を含むことを特徴とする請求項4ないし10のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
酸化剤を、連続的又は不連続的に添加する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4ないし11のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
少なくとも1つの攪拌槽型反応器と、
前記攪拌槽型反応器に接続した蒸留塔と、
前記攪拌槽型反応器及び/又は前記蒸留塔と接続し、不純物を除去する分離器と、
前記分離器と、前記攪拌槽型反応器及び/又は前記蒸留塔とを連通させるボトム液配管と、
を備える、第3級ブタノールの連続製造装置。
【請求項14】
前記攪拌槽型反応器が、触媒分離器を備えることを特徴とする請求項13に記載の第3級ブタノールの連続製造装置。
【請求項15】
前記分離器が、前記触媒分離器と連通していることを特徴とする請求項14に記載の第3級ブタノールの連続製造装置。
【請求項16】
前記分離器が、吸着剤カラム及び/又はイオン交換樹脂カラムを備えることを特徴とする請求項13ないし15に記載の第3級ブタノールの連続製造装置。
【請求項17】
前記攪拌槽型反応器が、触媒水溶液と原料炭化水素混合物が向流となるように供給しながら反応させる向流型反応器であることを特徴とする請求項13ないし16のうちいずれか一項に記載の第3級ブタノールの連続製造装置。
【請求項18】
前記連続製造装置において、触媒が接触する部位の材質が、少なくともCrを17〜21%、Niを8〜14%含み、Cが0.10%以下であるステンレス鋼から構成されることを特徴とする請求項13ないし17のうち何れか一項に記載の第3級ブタノールの連続製造装置。
【請求項19】
前記触媒が、ヘテロポリ酸であることを特徴とする請求項18に記載の第3級ブタノールの連続製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6864(P2013−6864A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197535(P2012−197535)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2007−542611(P2007−542611)の分割
【原出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】