説明

イソペプチドギャップ結合モジュレーター

本発明は、細胞内ギャップ結合コミュニケーションをモジュレートできるイソペプチド類に関する。本発明は、さらにこのようなコミュニケーションを維持するか、増強する該イソペプチド類を用いる方法に関する。一態様において、該イソペプチド類は、AAP、AAP10、HP5、および/またはそれらの機能的類縁体によって標的とされる同一の細胞を標的とする抗不整脈性イソペプチド類である。すなわち、該イソペプチド類は、AAP、AAP10、HP5、および/またはそれらの機能的類縁体の機能性をアゴナイズまたはアンタゴナイズすることによってこれらの細胞の機能をモジュレートできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内ギャップ結合コミュニケーションをモジュレートできるイソペプチドに関する。本発明はさらに、そのようなコミュニケーションを維持または増強するために、該イソペプチドを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞間コミュニケーションが、細胞のホメオスタシス、増殖および分化にとって必須であるという認識は益々増加している。このようなコミュニケーションは、ギャップ結合によって促進されると考えられている。これらの構造は、細胞を結合させ、「クロストーク」を可能にする手段と考えられている。一般的には、N.Sperelakis、William C.Cole(編集者)によるSperelakis,N.,(1989)Cell Interactions and Gap Junctionsを参照されたい。
【0003】
ギャップ結合の構造および機能を理解する努力がなされてきた。例えば、このような結合は隣接細胞間に形成された複合体の1つのタイプであるとの報告がある。多くのギャップ結合は、隣接細胞の内部(細胞質)に直接結合する集合チャネルからなっていると考えられている。成体哺乳動物において、ギャップ結合は、循環血液要素を除いて、たいていの細胞タイプに見出される。
【0004】
より具体的には、ギャップ結合は、高密度に詰められたギャップ結合チャネル(2つのヘミチャネルまたはコネキシンを含む)の数百から数千のクラスターを有する細胞膜の特定領域であるという認識がある。多くは、隣接した2つの細胞の細胞質区画に直接結合すると考えられている。ギャップ結合チャネルは開放状態と閉鎖状態の間を切り替わることができる。開放状態において、イオンおよび小型分子はギャップ結合チャネルの細孔を通過すると考えられる。電気インパルスの伝導およびシグナル分子の細胞間拡散は、ギャップ結合を介して生じる。
【0005】
ギャップ結合間の「クロストーク」は、ギャップ結合細胞内コミュニケーション(GJIC)と称されてきた。それは、細胞代謝の調節、増殖、細胞から細胞へのシグナル伝達、および組織統合性に重要な役割を演じていると考えられる。
【0006】
例えば、GJICは、細胞間の栄養分、イオン、および体液の迅速な均衡化を可能にすると考えられる。ギャップ結合はまた、電気興奮性細胞における電気シナプスとして働いていると考えられる。多くの組織において、電気的結合は、化学的シナプスよりも、活動電位の細胞から細胞へのより迅速な伝達を可能にしていると考えられる。例えば、心筋細胞および平滑筋細胞において、これは、同期収縮を助けていると考えられる。
【0007】
GJICに媒介される他の機能が報告されている。例えば、GJICは、外部刺激に対する組織の応答性を増大させていると考えられる。セカンドメッセンジャーは、ホルモンにより活性化した細胞から、結合チャネルを通って静止細胞へ通過し、後者を活性化する上で十分小さいと一般に考えられる。
【0008】
また、ギャップ結合は、化学的および/または電気的な発生シグナルのための細胞間経路を提供し、発生的区画の境界を規定することを助けることができるとの報告がある。GJICは、胚細胞において特定のパターンで生じ、GJICの障害は、発生的異常および多くの化学薬品の催奇形性作用に関連してきたことが開示されている。さらに、GJICは、細胞活性の調整を助けていると考えられている。
【0009】
GJICの異常と疾患状態の範囲との間の関連性が、in vitroおよびin vivoの両方で確証されていることがいくつかの報告により確立されている。例えば、コネキシンにおける異常と心臓疾患との間の関連性が考えられている。心臓でのCx43の発現および分布についてのいくつかの試験により、Cx43の発現およびこのギャップ結合蛋白質の分布パターンの変化が記載されている。Kaprielian,R.R.ら(1998)Circulation 97:651-660頁およびSaffitz,J.E.ら(1999)Cardiovasc Res.42:309-317頁を参照されたい。
【0010】
したがって、当分野には、ギャップ結合の機能障害または欠如と、不整脈の危険性増大との間の関連性についての認識がある。コネキシンの発現/分布の変化と、慢性心臓疾患との間にさらなる関連があると考えられている。
【非特許文献1】N.Sperelakis、William C.Cole(編集者)によるSperelakis,N.,(1989)Cell Interactions and Gap Junctions
【非特許文献2】Kaprielian,R.R.ら(1998)Circulation 97:651-660頁
【非特許文献3】Saffitz,J.E.ら(1999)Cardiovasc Res.42:309-317頁
【非特許文献4】Bailey,P.D.ら(2000)Angew.Chem.Int.Ed.39:506頁
【非特許文献5】Milo Gibal(1991)Biopharmaceutics and Pharmacology、第4版(LeaおよびSediger)
【特許文献1】PCT/米国特許出願第02/05773号
【非特許文献6】Vinter,J.G.(1996)J.Comput.Aided Des.10:417頁
【非特許文献7】Covitz,K.M.ら(1996)Pharm.Res.13(11):1631-34頁
【非特許文献8】Temple,C.S.ら(1996)J.Physiol.(ロンドン)494:795頁
【非特許文献9】Meredith,D.ら(1998)J.Physiol.(ロンドン)512:629頁
【非特許文献10】Lynchら(1981)J Cardiovasc.Pharmacol.3:49-60頁
【非特許文献11】X.Guanら(1996)Carcinogenesis、17 1791-1798頁
【非特許文献12】R.J.Ruchら(1994)Carcinogenesis、15 301-306頁
【非特許文献13】B.V.Madhukarら(1996)Cancer Lett.106 117-123頁
【非特許文献14】GJIC(W.K.Hongら(1997)Science、278 1073-1077頁
【非特許文献15】E.Meierら(1997)Drug Development Research、40:1-16頁
【非特許文献16】Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack出版社(A.R.Gennaro編集、1985)
【非特許文献17】K.M.Abdullahら(1999)Endocrine、10 35-41頁
【非特許文献18】M.Saitohら(1997)Carcinogenesis、18:1319-1328頁
【非特許文献19】J.A.Goligerら(1995)Mol.Biol.Cell、6 1491-1501頁
【非特許文献20】G.J.Christら(2000)Braz.J Med Biol.Res.、33:423-429頁
【非特許文献21】R.Dermietzel(1998)Brain Res.Brain Res.Rev.、26:176-183頁
【非特許文献22】H.Aldskogiusら(1998)Prog.Neurobiol、55:1-26頁
【非特許文献23】D.Mackayら(1999)Am J Hum.Genet、64 1357-1364頁
【非特許文献24】S.G.Spanakisら(1998)Invest Ophthalmol.Vis.Sci.、39:1320-1328頁
【特許文献2】国際公開番号WO98/11125
【非特許文献25】B.D.Larsen,A.Holm,int.j pept.protein res.1994、43 1-9頁
【非特許文献26】EI Tayar,Nら(Amino Acids(1995)8:125-139頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
抗不整脈ペプチドの多くは、活動電位持続時間または活動電位の形にしばしば影響を与えることなく、GJICにポジティブな影響を与えているという認識が増加している。さらに、このようなペプチドの多くには、望ましくない前不整脈性副作用が無いと考えられる。そのような作用は、現在利用できる多くの抗不整脈薬の使用を制限していると考えられる。さらに、AAPならびにある一定のAAP誘導体は、いくつかの望ましくない特徴、例えば、安定性の低さ、および治療の有効性を得る前に高用量の必要性を有すると考えられる。
【0012】
GJICの有効なイソペプチドモジュレーターを有することが望ましいと考えられる。本発明はそのようなイソペプチドを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一般に、ギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)をモジュレートするイソペプチドに関する。本発明は、GJIC障害に関連した病態の治療または予防における使用を含む広範囲の有用な適用を有する。
【0014】
本発明による好ましいイソペプチドは、以下の一般式(I)によって表される:
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、aが1ならば、bは0であり;
aが0ならば、bは1であり;
xおよびyは、独立して1〜7であり;
【0017】
R1はHまたはCH3、好ましくはHであり、
【0018】
R2は、任意のアミノ酸:例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびサルコシンの側鎖である。R2は、アラニンまたはグリシンの側鎖であることが好ましい。R2は、aが0で、bが1である場合にアミノ酸のグリシンの側鎖、またはaが1で、bが0である場合にアラニンの側鎖であることが好ましい。
【0019】
R3は、H、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、RO、RS、RSO、RSO2、COR、CSR、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、OCOR、SCOR、(R=アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、など)からなる群から選択される。R3は、HまたはNH2であることが好ましく;
【0020】
R4およびR5は、独立して、疎水基を含み、好ましくは、芳香族炭素環を含み、より好ましくは、6員または12員の芳香族炭素環を含む。一態様において、該芳香環は、以下の基の少なくとも1つ(それらのセレノ誘導体およびチオ誘導体を含めて)で置換されている:低級アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミン基、チオール基、ヒドラジド基、アミド基、ハライド基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミン基、ニトリル基、イミン基、ニトロ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、チオール基、アルデヒド基、ケト基、カルボキシ基、エステル基、アミド基。場合によっては置換されている環としてはまた、セレノ基を有する、または有さないスルフィド、スルホキシド、スルホンおよびチオールデリベート類が挙げられる。該芳香環は、以下の少なくとも1つで置換されていることが好ましい:低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基。該芳香環は、アルコキシ基またはニトロ基の少なくとも1つで置換されていることがより好ましい。低級アルキル基はメチル基であることが好ましい。アルコキシ基はメトキシ基であることが好ましい。ハライド基はクロライド基またはフルオライド基であることが好ましい。ニトリル基はシアノ基であることが好ましい。芳香族炭素環が置換されている実施形態において、このような置換は、典型的には、約10未満の置換数、より好ましくは置換数は、約1から5、または1から2となる]。
【0021】
該芳香族炭素環は、ベンジル基、フェニル基およびナフチル基から選択でき、ベンジル基であることが好ましい。
【0022】
好ましくは、R4およびR5は、独立して、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基またはニトロ基の少なくとも1つで置換されているベンジル基を含む。より好ましくは、R4およびR5は、独立して、ニトロ基またはアルコキシ基の少なくとも1つで置換されているベンジル基を含む。低級アルキル基は、好ましくは、メチル基であり、アルコキシ基は、好ましくは、メトキシ基であり、ハライド基は、好ましくは、クロライド基またはフルオライド基であり、ニトリル基は、好ましくは、シアノ基である。
【0023】
本発明のイソペプチドは、R1がHであり、R2がアミノ酸であるアラニンまたはグリシンの側鎖であり、R3がHまたはNH2であり、R4およびR5がニトロ基またはメトキシ基の少なくとも1つで置換されているベンジル基を含む式Iによって表すことができる。
【0024】
R2がアミノ酸であるグリシンの側鎖である場合、aは0であり、bは1であり、R1はHであることが好ましい。R2がアミノ酸であるアラニンの側鎖である場合、aは1であり、bは0であり、R1はHであることが好ましい。
【0025】
aが0であり、bが1である場合、yは4であり、R1はHであることが好ましい。aが0であり、bが1である場合、yは4であり、R1はHであり、R5はベンジル基を含むことがより好ましい。aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、R1はHであることが好ましい。aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、R1はHであり、R4はベンジル基を含むことがより好ましい。
【0026】
R2がアミノ酸であるグリシンの側鎖であり、aが0であり、bが1である場合、yは4であり、R1はHであることが好ましい。R2がアミノ酸であるアラニンの側鎖であり、aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、R1はHであることが好ましい。
【0027】
好ましいイソペプチドは、R1がHであり;R2は、aが0であり、bが1であり、yが4である場合、アミノ酸であるグリシンの側鎖であるか、aが1であり、bが0であり、xが1または2である場合、アミノ酸であるアラニンの側鎖であり;R3はHまたはNH2であり;R4およびR5はベンジル基を含む式Iによって表すことができる。さらに、該ベンジル基はニトロ基またはメトキシ基で置換されていることが好ましい。
【0028】
このようなイソペプチド類はまた、アルキル化されているか、酵素的分解に対してイソペプチドを安定化するために、別の方法で修飾されているペプチド結合を含み得、および/またはD-アミノ酸、アミノ酸のイソ体、またはD-アミノ酸とアミノ酸のイソ体との組合せを含み得る。
【0029】
他の実施形態において、本発明は、以下の一般式(II)で表されるより規定されたイソペプチドに関するものである:
【0030】
【化2】

【0031】
(式中、a=1の場合はb=0であり;
a=0の場合はb=1であり;
xおよびyは独立して=1〜7であり;
z=1〜6であり;
q=0〜6であり;
p=0〜1であり、
【0032】
R1=HまたはCH3、好ましくはHであり、
【0033】
R2=任意のアミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびサルコシンの側鎖である。R2はアラニンまたはグリシンの側鎖であることが好ましい。R2は、aが0であり、bが1である場合、アミノ酸であるグリシンの側鎖であるか、aが1であり、bが0である場合、アミノ酸であるアラニンの側鎖であることが好ましい。
【0034】
R3は、H、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、RO、RS、RSO、RSO2、COR、CSR、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、OCORおよびSCORからなる群から選択され、ここで、R=アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキルである。R3はHまたはNH2であることが好ましく;
【0035】
R6およびR7は、H、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオアラルキルオキシ、+S(CH3)2、SO3H、SO2R、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OH、NCO、NCOR、NHOH、NHNH2、NHNRH、CH2OCOR、CH2OCSR、COR、CSR、CSOR、CF3およびCCl3からなる群から独立して選択され、ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキルである。好ましくは、R6およびR7は、H、アルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシ、CF3からなる群から独立して選択される。より好ましくは、R6およびR7は、H、NO2およびアルコキシからなる群から独立して選択される。アルキルはメチルであることが好ましく、ハロゲンは塩素またはフッ素であることが好ましく、アルコキシはメトキシであることが好ましい)。
【0036】
本発明のイソペプチドは、式IIによって表すことができ、式中、R1はHであり、R2はアミノ酸であるアラニンまたはグリシンの側鎖であり、R3はHまたはNH2であり、R6およびR7は、H、NO2およびメトキシからなる群から独立して選択される。
【0037】
R2がアミノ酸であるグリシンの側鎖である場合、aは0であり、bは1であり、R1はHであることが好ましい。R2がアミノ酸であるアラニンの側鎖である場合、aは1であり、bは0であり、R1はHであることが好ましい。
【0038】
aが0であり、bが1である場合、yは4であり、R1はHであることが好ましい。aが0であり、bが1である場合、yは4であり、pは1であり、qは0であり、R1はHであることがより好ましい。aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、R1はHであることが好ましい。aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、zは1であり、R1はHであることがより好ましい。
【0039】
R2がアミノ酸であるグリシンの側鎖であり、aが0であり、bが1である場合、yは4であり、R1はHであることが好ましい。R2がアミノ酸であるアラニンの側鎖であり、aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、R1はHであることが好ましい。
【0040】
好ましいイソペプチドは、R1はHであり;R2は、aが0であり、bが1であり、yが4であり、pが1であり、qが0である場合、アミノ酸であるグリシンの側鎖であるか、aが1であり、bが0であり、xが1または2であり、zが1である場合、アミノ酸であるアラニンの側鎖であり;R3はHまたはNH2である式IIによって表すことができる。さらに、R6およびR7は、H、NO2およびメトキシからなる群から独立して選択される。
【0041】
該芳香族炭素環は、4位に置換基を含むことが好ましい。該置換基は、芳香環の置換基であり得るものとして、本明細書に挙げられた任意の基であり得る。該置換基は、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基からなる群から選択されることが好ましい。該置換基は、ニトロ基またはアルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基はメトキシ基であることが好ましい。式IIにおいて、R6またはR7がHである場合、R7またはR6は、それぞれ、ニトロ基またはメトキシ基であり得る。
【0042】
本発明のイソペプチドは、一般式IIによって表し得る。本発明のイソペプチドは、以下の一般的形態を有し得る:
【0043】
H-第1のアミノ酸部分-第2のアミノ酸部分-OH。
【0044】
「アミノ酸部分」は、アミノ酸を含む部分として定義される。アミノ酸は、任意のアミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびサルコシンであり得る。このような部分は、さらなる化学基(1つまたは複数)、例えば、疎水基、例えば、芳香族炭素環、例えば、6員芳香族炭素環をさらに含み得る。前記定義の中には、アミノ酸からなるような、さらなる化学基を含まない部分が含まれる。すなわち、該アミノ酸部分は、さらなる化学基が追加されていないアミノ酸だけを含む。
【0045】
アミノ酸部分は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アラニンおよびサルコシンからなる群から選択されるアミノ酸を含み得る。アミノ酸部分は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、リジンおよびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を含み得る。アミノ酸部分は、グリシン、グルタミン、リジンおよびアラニンからなる群から選択され得る。
【0046】
第1のアミノ酸部分は、グリシン、アスパラギンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸を含み得る。第2のアミノ酸部分は、リジン、アラニンおよびサルコシンからなる群から選択され得る。第1のアミノ酸部分のアミノ酸は、グリシンまたはグルタミンであることが好ましい。第2のアミノ酸部分のアミノ酸は、リジンまたはアラニンであることが好ましい。
【0047】
アミノ酸を含む第1または第2のアミノ酸部分は、疎水基、例えば、芳香族炭素環、例えば、6員または12員芳香族炭素環をさらに含み得る。該芳香環は、ベンジル基、ベンゾイル基、フェニル基またはナフチル基から選択され得る。該芳香環は、ベンジル基またはベンゾイル基であることが好ましい。第1のアミノ酸部分または第2のアミノ酸部分のいずれかが芳香環を含むことが好ましい。第1のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環はベンジル基であることが好ましい。第2のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環はベンゾイル基であることが好ましい。
【0048】
芳香環は、以下の基の少なくとも1つ(それらのセレノ誘導体およびチオ誘導体を含めて)で置換されていてもよい:低級アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミン基、チオール基、ヒドラジド基、アミド基、ハライド基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミン基、ニトリル基、イミン基、ニトロ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、チオール基、アルデヒド基、ケト基、カルボキシ基、エステル基、アミド基。場合によっては置換されている環としてはまた、セレノ基を有する、または有さないスルフィド、スルホキシド、スルホンおよびチオール誘導体が挙げられる。好ましくは、芳香環は、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基の少なくとも1つで置換されていてもよいし、非置換であってもよい。芳香環は、ニトロ基およびアルコキシ基の少なくとも1つで置換されていることがより好ましい。低級アルキル基はメチル基であることが好ましい。アルコキシ基はメトキシ基であることが好ましい。ハライド基はクロライド基またはフルオライド基であることが好ましい。ニトリル基はシアノ基であることが好ましい。
【0049】
芳香環は、H、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオアラルキルオキシ、+S(CH3)2、SO3H、SO2R、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OH、NCO、NCOR、NHOH、NHNH2、NHNRH、CH2OCOR、CH2OCSR、COR、CSR、CSOR、CF3およびCCl3の少なくとも1つで置換されていてもよく式中、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルおよびシクロアルキルである。好ましくは、芳香環は、アルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシおよびCF3の少なくとも1つで置換されていてもよいし、非置換であってもよい。より好ましくは、芳香環は、NO2およびアルコキシの少なくとも1つで置換されていてもよい。アルキル基はメチル基であることが好ましく、ハロゲンは塩素またはフッ素であることが好ましく、アルコキシ基はメトキシ基であることが好ましい。好ましくは、芳香環は、メチル基、クロロ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基およびメトキシ基の少なくとも1つで置換されていてもよいし、非置換でもよい。より好ましくは、芳香環は、ニトロ基およびメトキシ基の少なくとも1つで置換されていてもよい。
【0050】
芳香環は、4位で置換されていることが好ましい。
【0051】
このようなイソペプチド類は、アルキル化されているか、酵素的分解に対してイソペプチドを安定化するために、他の方法で修飾されているペプチド結合を含み得、および/またはD-アミノ酸、アミノ酸のイソ体、またはD-アミノ酸とアミノ酸のイソ体との組合せを含み得る。
【0052】
第1のアミノ酸部分は、グリシンを含み得るか、グルタミンおよび芳香環を含み得る。第2のアミノ酸部分は、アラニンを含み得るか、リジンおよび芳香環を含み得る。好ましくは、第1のアミノ酸部分は、グリシンを含み得るか、グルタミンおよび芳香環を含み得、第2のアミノ酸部分は、アラニンを含み得るか、リジンおよび芳香環を含み得る。より好ましくは、第1のアミノ酸部分が、グリシンを含み得、第2のアミノ酸部分は、リジンおよび芳香環を含み得るか、第1のアミノ酸部分が、グルタミンおよび芳香環を含み得、第2のアミノ酸部分は、アラニンを含み得る。
【0053】
第1のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環は、好ましくは、ニトロ基またはメトキシ基、より好ましくは、メトキシ基で置換されている。第2のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環は、好ましくは、ニトロ基またはメトキシ基で置換されている。
【0054】
本発明によるイソペプチドは、種々多様な重要な使用および利点を有する。
【0055】
例えば、当該イソペプチドは、ギャップ結合機能障害の結果引き起こされる細胞間コミュニケーションの減少または細胞コミュニケーションの誤調節に関連した病態の予防または治療に使用できる。一態様において、本発明は、そのような病態を有するか、そのような病態を発現させる危険性のある個体に、上記イソペプチドのいずれかの治療有効量を投与する方法を提供する。投与は経口が好ましい。好ましい一態様において、個体はヒトである。該イソペプチドは、表2に示されたイソペプチドからなる群から選択されることが好ましい。
【0056】
治療できる病態の例としては、限定はしないが、心血管疾患、気道上皮の炎症、肺胞組織の障害、膀胱失調、蝸牛疾患による難聴、内皮傷害、糖尿病性網膜症および糖尿病性神経障害、中枢神経系および脊髄の虚血、歯周病などの歯組織障害、腎臓疾患、骨髄移植の失敗、創傷、勃起不全、膀胱失調、神経障害性痛、亜慢性および慢性炎症、癌ならびに骨髄および幹細胞移植の失敗、細胞および組織移植時ならびに外科手術などの医療操作時に生じる病態、;ならびに過剰の活性酸素種および/またはフリーラジカルおよび/または一酸化窒素によって生じる状態が挙げられる。
【0057】
本発明はさらに、上記のいずれかのイソペプチドおよび製薬的に許容できる担体を含む、上記の方法における使用に好適な製薬的組成物を提供する。該担体は、滅菌されており、パイロジェンフリー、ウィルスフリーであることが好ましい。さらに、本発明は、上記医療適応症の治療用薬剤を製造するための当該イソペプチドの使用に関する。該イソペプチドは、表2に示されたイソペプチドからなる群から選択されることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
検討したように、本発明は、ギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)をモジュレートするイソペプチドに関する。本発明は、GJIC障害に関連した病態の治療または予防における使用を含む広範囲の有用な適用を有する。具体的な発明イソペプチドは、上記の式Iで表される。
【0059】
本発明によるより具体的なイソペプチドは、以下の一般式IIで表される:
【0060】
【化3】

【0061】
(式中、a=1の場合、b=0であり;
a=0の場合、b=1であり;
xおよびyは独立して=1〜7であり;
z=1〜6であり;
q=0〜6であり;
p=0〜1であり、
【0062】
R1=HまたはCH3、好ましくはHである、
【0063】
R2=任意のアミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびサルコシンの側鎖である。R2はアラニンまたはグリシンの側鎖であることが好ましい。R2は、aが0であり、bが1の場合、アミノ酸であるグリシンの側鎖であるか、aが1であり、bが0の場合、アミノ酸であるアラニンの側鎖であることが好ましい。
【0064】
R3は、H、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、RO、RS、RSO、RSO2、COR、CSR、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、OCORおよびSCORからなる群から選択され、ここで、R=アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキルである。R3はHまたはNH2であることが好ましく;
【0065】
R6およびR7は、H、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオアラルキルオキシ、+S(CH3)2、SO3H、SO2R、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OH、NCO、NCOR、NHOH、NHNH2、NHNRH、CH2OCOR、CH2OCSR、COR、CSR、CSOR、CF3およびCCl3からなる群から独立して選択され、ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキルである。好ましくは、R6およびR7は、H、アルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシ、CF3からなる群から独立して選択される。より好ましくは、R6およびR7は、H、NO2およびアルコキシからなる群から独立して選択される。アルキルはメチルであることが好ましく、ハロゲンは塩素またはフッ素であることが好ましく、アルコキシはメトキシであることが好ましい)。
【0066】
本発明のイソペプチドは、式IIによって表すことができ、式中、R1はHであり、R2はアミノ酸のアラニンまたはグリシンの側鎖であり、R3はHまたはNH2であり、R6およびR7は、H、NO2およびメトキシからなる群から独立して選択される。
【0067】
R2がアミノ酸であるグリシンの側鎖である場合、aは0であり、bは1であり、R1はHであることが好ましい。R2がアミノ酸であるアラニンの側鎖である場合、aは1であり、bは0であり、R1はHであることが好ましい。
【0068】
aが0であり、bが1である場合、yは4であり、R1はHであることが好ましい。aが0であり、bが1である場合、yは4であり、pは1であり、qは0であり、R1はHであることがより好ましい。aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、R1はHであることが好ましい。aが1であり、bが0である場合、xは1または2であり、zは1であり、R1はHであることがより好ましい。
【0069】
R2がアミノ酸であるグリシンの側鎖であり、aが0であり、bが1である場合、yは4であり、R1はHであることが好ましい。R2がアミノ酸であるアラニンの側鎖であり、aは1であり、bが0である場合、xは1または2であり、R1はHであることが好ましい。
【0070】
好ましいイソペプチドは、R1はHであり;R2は、aが0であり、bが1であり、yが4であり、pが1であり、qが0である場合、アミノ酸であるグリシンの側鎖であるか、aが1であり、bが0であり、xが1または2であり、zが1である場合、アミノ酸であるアラニンの側鎖であり;R3はHまたはNH2である式IIによって表すことができる。さらに、R6およびR7は、H、NO2およびメトキシからなる群から独立して選択される。
【0071】
該芳香族炭素環は、4位に置換基を含むことが好ましい。該置換基は、芳香環の置換基であり得るものとして、本明細書に挙げられた任意の基であり得る。該置換基は、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基からなる群から選択されることが好ましい。該置換基は、ニトロ基またはアルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基はメトキシ基であることが好ましい。式IIにおいて、R6またはR7がHである場合、R7またはR6は、それぞれ、ニトロ基またはメトキシ基であり得る。
【0072】
本発明の特に好ましいイソペプチドは、R1はHであり;R2は、アミノ酸であるグリシンの側鎖であり;aは0、bは1、yは4、pは1、qは0であり;R3はHまたはNH2であり;R6またはR7はHであり、かつ、R7またはR6はそれぞれ、ニトロ基またはメトキシ基である式IIによって表すことができる。本発明の特に好ましいイソペプチドは、R1はHであり;R2は、アミノ酸であるアラニンの側鎖であり;aは1、bは0、かつxは1または2、zは1であり;R3はHまたはNH2であり;R6またはR7はHであり、かつ、R7またはR6はそれぞれ、メトキシ基である式IIによって表すことができる。
【0073】
本発明のイソペプチドは、一般式IIによって表し得る。本発明のイソペプチドは、以下の一般的形態を有し得る:
【0074】
H-第1のアミノ酸部分-第2のアミノ酸部分-OH。
【0075】
「アミノ酸部分」は、アミノ酸を含む部分として定義される。アミノ酸は、任意のアミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびサルコシンであり得る。このような部分は、さらなる化学基(1つまたは複数)、例えば、疎水基、例えば、芳香族炭素環、例えば、6員または12員芳香族炭素環をさらに含み得る。前記定義の中には、アミノ酸からなるような、さらなる化学基を含まない部分が含まれる。すなわち、該アミノ酸部分は、さらなる化学基が追加されていないアミノ酸だけを含む。
【0076】
アミノ酸部分は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アラニンおよびサルコシンからなる群から選択されるアミノ酸を含み得る。アミノ酸部分は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、リジンおよびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を含み得る。アミノ酸部分は、グリシン、グルタミン、リジンおよびアラニンからなる群から選択され得る。
【0077】
第1のアミノ酸部分は、グリシン、アスパラギンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸を含み得る。第2のアミノ酸部分は、リジン、アラニンおよびサルコシンからなる群から選択され得る。第1のアミノ酸部分のアミノ酸は、グリシンまたはグルタミンであることが好ましい。第2のアミノ酸部分のアミノ酸は、リジンまたはアラニンであることが好ましい。
【0078】
アミノ酸を含む第1または第2のアミノ酸部分は、疎水基、例えば、芳香族炭素環、例えば、6員または12員芳香族炭素環をさらに含み得る。該芳香環は、ベンジル基、ベンゾイル基、フェニル基またはナフチル基から選択され得る。該芳香環は、ベンジル基またはベンゾイル基であることが好ましい。第1のアミノ酸部分または第2のアミノ酸部分のいずれかが芳香環を含むことが好ましい。第1のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環はベンジル基であることが好ましい。第2のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環はベンゾイル基であることが好ましい。
【0079】
芳香環は、以下の基の少なくとも1つ(それらのセレノ誘導体およびチオ誘導体を含めて)で置換されていてもよい:低級アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミン基、チオール基、ヒドラジド基、アミド基、ハライド基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミン基、ニトリル基、イミン基、ニトロ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、チオール基、アルデヒド基、ケト基、カルボキシ基、エステル基、アミド基。場合によっては置換されている環としてはまた、セレノ基を有する、または有さないスルフィド、スルホキシド、スルホンおよびチオール誘導体が挙げられる。好ましくは、芳香環は、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基の少なくとも1つで置換されていてもよいし、非置換であってもよい。芳香環は、ニトロ基およびアルコキシ基の少なくとも1つで置換されていることがより好ましい。低級アルキル基はメチル基であることが好ましい。アルコキシ基はメトキシ基であることが好ましい。ハライド基はクロライド基またはフルオライド基であることが好ましい。ニトリル基はシアノ基であることが好ましい。
【0080】
芳香環は、H、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオアラルキルオキシ、+S(CH3)2、SO3H、SO2R、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OH、NCO、NCOR、NHOH、NHNH2、NHNRH、CH2OCOR、CH2OCSR、COR、CSR、CSOR、CF3およびCCl3の少なくとも1つで置換されていてもよく式中、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルおよびシクロアルキルである。好ましくは、芳香環は、アルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシおよびCF3の少なくとも1つで置換されていてもよいし、非置換であってもよい。より好ましくは、芳香環は、NO2およびアルコキシの少なくとも1つで置換されていてもよい。アルキル基はメチル基であることが好ましく、ハロゲンは塩素またはフッ素であることが好ましく、アルコキシ基はメトキシ基であることが好ましい。好ましくは、芳香環は、メチル基、クロロ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基およびメトキシ基の少なくとも1つで置換されていてもよいし、非置換でもよい。より好ましくは、芳香環は、ニトロ基およびメトキシ基の少なくとも1つで置換されていてもよい。
【0081】
芳香環は、4位で置換されていることが好ましい。
【0082】
このようなイソペプチド類は、アルキル化されているか、酵素的分解に対してイソペプチドを安定化するために、他の方法で修飾されているペプチド結合を含み得、および/またはD-アミノ酸、アミノ酸のイソ体、またはD-アミノ酸とアミノ酸のイソ体との組合せを含み得る。
【0083】
第1のアミノ酸部分は、グリシンを含み得るか、グルタミンおよび芳香環を含み得る。第2のアミノ酸部分は、アラニンを含み得るか、リジンおよび芳香環を含み得る。好ましくは、第1のアミノ酸部分は、グリシンを含み得るか、グルタミンおよび芳香環を含み得、第2のアミノ酸部分は、アラニンを含み得るか、リジンおよび芳香環を含み得る。より好ましくは、第1のアミノ酸部分が、グリシンを含み得、第2のアミノ酸部分は、リジンおよび芳香環を含み得るか、第1のアミノ酸部分が、グルタミンおよび芳香環を含み得、第2のアミノ酸部分は、アラニンを含み得る。
【0084】
第1のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環は、好ましくは、ニトロ基またはメトキシ基、より好ましくは、メトキシ基で置換されている。第2のアミノ酸部分が芳香環を含む場合、その芳香環は、好ましくは、ニトロ基またはメトキシ基で置換されている。
【0085】
好ましいイソペプチドは、一般形体:H-第1のアミノ酸部分-第2のアミノ酸部分-OHによって表すことができ、式中、第1のアミノ酸部分は、グリシン、アスパラギンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸を含み;第2のアミノ酸部分は、リジン、アラニンおよびサクロシンからなる群から選択されるアミノ酸を含み;第1または第2のアミノ酸部分は、6員芳香族炭素環を含む。好ましくは、第1のアミノ酸部分は、アミノ酸のグリシンまたはグルタミンを含み得、第2のアミノ酸部分は、アミノ酸のリジンまたはアラニンを含み得る。
【0086】
第1のアミノ酸部分が芳香族炭素環を含む場合、該アミノ酸はグルタミンであることが好ましい。第2のアミノ酸部分は、アミノ酸のアラニンを含むことが好ましい。第2のアミノ酸部分が芳香族炭素環を含む場合、該アミノ酸はリジンであることが好ましい。第1のアミノ酸部分は、アミノ酸のグリシンを含むことが好ましい。該芳香族炭素環は、ベンジル基またはベンゾイル基であることが好ましい。該芳香族炭素環は、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基の少なくとも1つで置換されていることが好ましく、アルコキシ基およびニトロ基の少なくとも1つで置換されていることがより好ましい。該芳香族炭素環は4位で置換されていることが好ましい。
【0087】
本発明によるイソペプチドは、種々多様の重要な使用および利点を有する。本明細書に記載された、本発明の方法、使用および組成物にとって特に好ましいイソペプチドは、表2に示されたものである。
【0088】
検討したように、該イソペプチドは、遊離のN末端、または遊離のC末端、または両方を含むことができる。本発明の範囲内のイソペプチドは、本明細書において、遊離のN末端基および/またはC末端基を有して表されることが多い。これらの基は、いくつかの発明の使用では遊離のままであり得る。しかし、他の実施形態において、該イソペプチドは、ブロックされたC末端および遊離のN-基が特徴であり得る。あるいは、これらのイソペプチドは、ブロックされたN-基および遊離のC末端基、またはブロックされたN-およびC-末端基を有し得る。
【0089】
本発明の範囲内にあり、一般式IIを有し、一般形体、H-第1のアミノ酸部分-第2のアミノ酸部分-OHを有するより特定のイソペプチドは表1に示されている。一般式IIを有し、一般形体、H-第1のアミノ酸部分-第2のアミノ酸部分-OHを有する特に好ましいイソペプチドは表2に示されている。
【0090】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0091】
本発明によるより特定のイソペプチドは、ギャップ結合によって媒介された細胞間コミュニケーションを促進および/または維持する。一態様において、該イソペプチドは、AAP、AAP10、HP5、および/またはそれらの機能的類縁体によって標的にされた細胞と同じ細胞を標的にする抗不整脈性のイソペプチドである。すなわち、該イソペプチドは、AAP、AAP10、HP5、および/またはそれらの機能的類縁体の機能にアゴナイズするか、アンタゴナイズすることによって、これらの細胞の機能をモジュレートすることができる。公知のAAP類の記述は、本文脈においては、当該イソペプチド類と比較されるギャップ結合モジュレート化合物の一例として考えられている。しかし、本発明の範囲は、AAPアゴニストの、またはアンタゴニストの性質を有するイソペプチドに限定されない。
【0092】
また本発明は、細胞間ギャップ結合コミュニケーション障害に関連した病態を治療するための製薬組成物の調製および使用、ならびにこれらの組成物を使用するための方法に関する。
【0093】
本発明による好ましいさらなるイソペプチドは、以下のアッセイの1つ以上において、良好な活性を示す。上記の式IおよびIIによって表された経口で利用できるイソペプチドを同定するためとは必ずしも限らずに、これらのアッセイは、イソペプチドの1つまたはイソペプチドのプールの活性をさらに確認し、場合によっては定量化するために使用することができる。
【0094】
したがって、一実施形態において、好ましいさらなるイソペプチドは、本明細書で、「標準的AAP部位結合試験」と称される試験において、組織、細胞、または細胞画分に対する結合、好ましくは特異的結合を示す。該試験によって、対象のペプチド、例えば、AAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体を検出、および場合によっては定量化できる。好ましい一実施形態において、本発明のイソペプチドは、そのような組織、細胞、または細胞画分の機能のモジュレーターである(すなわち、該イソペプチドは、抗不整脈性ペプチドの機能をアゴナイズまたはアンタゴナイズする)。別の実施形態において、該イソペプチドは、坑不整脈性ペプチドの受容体のモジュレーターである(すなわち、該イソペプチドは、該受容体のアゴニストまたはアンタゴニストである)。
【0095】
上記の式IおよびIIによる好ましいさらなるイソペプチドは、ギャップ結合コミュニケーションのモジュレーターとして(例えば、AAPのアゴニストまたはアンタゴニストとして)、良好な機能を示す。一態様において、該イソペプチドは、抗不整脈薬として機能する。
【0096】
本発明の好ましいアゴニストイソペプチドは、本明細書で、「標準的心筋細胞アッセイ」と称されるアッセイにおいて、AAPのGjと実質的に同じか、それを超える細胞内伝導度(Gj)を提供する。好ましいアンタゴニストイソペプチドは、AAPのGjよりも少ない(例えば、少なくとも約10%、または少なくとも約20%少ない)Gjを提供し、および/またはAAPの能力を妨げて、虚血性細胞のGjを正常化し、すなわち、該Gjを、非虚血性細胞に見られるのと実質的に同じ値に戻す。
【0097】
本発明による好ましいさらなるイソペプチドは、本明細書で、「標準的カルシウム誘導不整脈アッセイ」と称されるアッセイにおいて、CaCl2注入後のマウスにおけるAVブロックまでの時間を増加させる。好ましくは、該イソペプチドは、AAPの活性の少なくとも約50%、好ましくは、AAPの活性の少なくとも約70%、より好ましくは、AAPと実質的に同じ活性を提供する(すなわち、およそ同じ時間のタイムラグを示す)。
【0098】
本発明のイソペプチドはさらに、本明細書で、「標準的心室リエントリーアッセイ」と称されるアッセイにおいて見られるリエントリー不整脈の発生または梗塞領域のサイズの減少を示す。好ましくは、該イソペプチドは、このアッセイにおいて、AAPの活性の少なくとも約50%、好ましくは、AAPの活性の少なくとも約70%、より好ましくは、AAPと実質的に同じ活性を提供する(すなわち、同様の発生減少、または同様もしくはより小さなサイズの梗塞領域を提供する)。
【0099】
PepT1と呼ばれる腸管ペプチド輸送蛋白質との接触を増加させることによって、ある一定の化合物の経口利用能を向上させる試みがなされてきた。PepT1輸送系について、多くのことが知られている。Bailey,P.D.ら(2000)Angew.Chem.Int.Ed.39:506頁およびそこに引用された文献を参照されたい。本発明の一態様において、当該イソペプチドの経口利用能の可能性を調べることができる。上記の予測的ベイリーアッセイを確証する1つの実験的アッセイは、「標準的in vivo経口利用能アッセイ」である。このアッセイにおいては、あるイソペプチドが、ある哺乳動物に経口投与され、血液サンプルが経時的に採取される。当技術分野に公知の通例的方法を用いて、血漿蛋白質濃度対時間のプロットから曲線下面積(AUC)を算出するLC/MS/MSなどの標準的な蛋白質定量化アッセイを用い、種々の時間間隔で該イソペプチドの濃度を測定する。種々の用量のイソペプチドを、並行して複数の動物に投与して、用量に比例した最大血漿濃度およびAUC値の増加を示すイソペプチドを同定することが好ましい。対照として、同濃度のイソペプチドを静脈内投与し、経口投与で得られたAUC下面積を静脈内投与で得られたAUCと比較することができる。例えば、Milo Gibal(1991)Biopharmaceutics and Pharmacology、第4版(LeaおよびSediger)を参照されたい。良好な経口利用能を有するイソペプチドは、投与後、約30分未満以内に血漿中に見られるものである。
【0100】
上記の標準的in vivo経口利用能アッセイによる良好な経口利用能を示すイソペプチドは、ベイリーアッセイと実質的に一致してもよいし、一致しなくてもよい。しかし、そのような一致を示さないイソペプチドに関して(および一致を示すイソペプチドに関して)、該イソペプチドは、標準的in vivo経口利用能アッセイにより測定された場合、経口投与後、約30分未満に血漿中に見られる。
【0101】
イソペプチドに対する最初のスクリーンとして、hPepT1結合アッセイを実施し、次いで、該イソペプチドを、標準的in vivo経口利用能アッセイのためにスクリーンしてもよく、および/または、hPepT1結合アッセイを、標準的in vivo経口利用能アッセイの結果の確認を行ってもよいが、標準的in vivo経口利用能アッセイにより、イソペプチド経口利用能の最も有意味な試験が提供される。
【0102】
上記の式IおよびIIで表される好ましいさらなるイソペプチドは、本明細書で、「in vitro血漿安定性アッセイ」または関連した語句で称されるアッセイに従えば、良好な半減期を示す。このようなイソペプチドは、先のPepT1基質テンプレートモデル(ベイリーアッセイ)と実質的に一致し得る。しかし、いくつかのイソペプチドは、前記モデルとわずかしか一致しないか、一致しないことがあり得る。該アッセイにおいて、良好な安定性を示すイソペプチドは、一実施形態において、24時間超などの約48時間超、例えば、6時間超などの12時間超、例えば、1時間超などの3時間超、例えば、20分超などの30分超、例えば、10分超などの15分超、例えば、1分超などの5分超の半減期を有する。この実施形態において、本発明のイソペプチドは、血流における安定性増大を示し得る。
【0103】
(骨粗しょう症)
骨形成においてGJICが重要であることが認識されている。さらなる好ましいイソペプチドは、追加して、または替わりに、イソペプチドの存在下で、骨芽細胞のカルシウム波形成および/またはアルカリホスファターゼ活性を測定する、本明細書で「標準的骨芽細胞活性アッセイ」と称されるアッセイにおいて、骨芽細胞活性を増大させる。このようなイソペプチドは、カルシウム波に関与する細胞数の増加として示されるカルシウム波活性(fura-2などのカルシウム感受性蛍光色素を用いて細胞内Ca2+濃度を測定し、蛍光を発する細胞の数をカウントすることによって測定される)を増加させることが好ましい。標準的比色アッセイを用いて、骨芽細胞活性の測定値を提供するために、アルカリホスファターゼ活性もまた使用できる。本発明によるアゴニストイソペプチドは、そのようなアッセイにおいて、AAPの活性の少なくとも約10%の活性、AAPの活性の少なくとも約20%などの活性、例えば、AAPの活性の少なくとも約30%の活性、少なくとも約40%などの活性、例えば、AAPの活性の少なくとも約50%の活性、好ましくは、AAPの活性の少なくとも約70%の活性、より好ましくは、AAPの活性の100%以上の活性を提供する。
【0104】
(癌)
本発明による好ましいイソペプチドは、替わりに、または追加して、本明細書で「標準的腫瘍プロモーターアッセイ」と称されるアッセイにおいて、DTTなどの腫瘍プロモーターに媒介されたGJIC阻害を減少させる。該イソペプチドは、AAPに関して見られる減少よりも、少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは100%以上、GJIC阻害の減少を示すことが好ましい。
【0105】
検討されたように、ギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)をモジュレートするイソペプチドを提供することが本発明の1つの目的である。したがって、本発明による多くのイソペプチドは、以下の特徴の1つ以上を含み得る:細胞の脱共役を減少させて、活動電位持続時間のばらつきを正常化し、伝導速度を正常化する能力、ギャップ結合の細胞量を制御し、コネキシン類の発現を正常化する(必要に応じて、アップレギュレートまたはダウンレギュレートする)能力;ギャップ結合の分解を正常化(抑制または増大させる)して、血漿膜へのコネキシンの細胞輸送を正常化する(増加または減少させる)こと;機能的ギャップ結合内へのコネキシン集合を促進すること;存在しているギャップ結合の開放、例えば、それらが、阻害物質によって閉鎖またはゲート制御されている場合(例えば、1つ以上のコネキシン(例えば、Cx43など)の細胞質のカルボキシ末端ドメインのリン酸化過剰の媒介または増強などにより)、開放を誘導または増強するか、それらが異常に開放されている場合(例えば、シャルコ-マリー-ツース病におけるように)、これらを閉鎖して、正常化すること。
【0106】
本発明による好ましいイソペプチドは、替わりに、または追加して、本明細書で「標準的腫瘍プロモーターアッセイ」と称されるアッセイにおいて、DTTなどの腫瘍プロモーターに媒介されたGJIC阻害を減少させる。該イソペプチドは、AAPに関して見られる減少よりも、少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは100%以上、GJIC阻害の減少を示すことが好ましい。
【0107】
好ましい本発明のイソペプチド活性を確認、および場合によっては定量化するために有用な特定のアッセイは、下記に記載されている。
【0108】
(A. 標準的血漿安定性アッセイ)
本発明はまた、in vitroまたはin vivoの安定性を増大させたイソペプチドを提供する。一態様において、該ペプチドは、酵素的分解に対して該ペプチドを安定化するために、アルキル化されているか、別の方法で修飾されているペプチド結合を含む。他の態様において、該ペプチドは、1種以上のD-アミノ酸を含む。さらなる一態様において、該ペプチドは、標準的な安定性アッセイにおいて、増大した安定性を有する。
【0109】
一態様において、in vitro血漿安定性アッセイは、2002年、2月22日に出願されたPCT/米国特許出願第02/05773号に記載されている通りに実施される。
【0110】
PCT/米国特許出願第02/05773号に開示されている通り、ペプチドを血漿または血清中でインキュベートし、HPLCまたはLC/MS/MSによる分析用に、規則的な間隔でサンプルを採取し、未分解ペプチドの量を定量化する。ペプチドのピークと血漿のピークが同じ保持時間でないことを確実にするために、そのような分析にとって適切な条件(カラム、溶媒、グラジエント、および温度)を測定しておく。これは、ペプチドおよび血漿の連続注入、ならびに、ペプチドおよび血漿による同時注入に続く、LC法パラメーターの最適化によって、満足な分離が得られるまで行われる。同じ方法で処理されたペプチドなしの対照血漿サンプルもまた採取し、評価できる。該サンプルとしては、限定はしないが、ブランク、好適な濃度(例えば、0.1mg/mL)のペプチド、ペプチドなしの血漿、t=0に関する1種以上のサンプル、および一定の間隔における1種以上のサンプルが挙げられる。複数のサンプルが並行して採取されることが好ましい。該サンプル濃度(mAUまたはイオンカウントにおけるピークの高さ)を時間に対してプロットし、モノ指数関数的減衰を表す関数に適合させることができる(例えば、標準的なExcelパッケージを用いて)。本発明によるペプチドは、24時間超などの約48時間超、例えば6時間超などの12時間超、例えば1時間超などの3時間超、例えば30分超の、このアッセイを用いて測定された半減期を有することが好ましい。
【0111】
血漿安定性は、標準的なアッセイを用いて、in vivoで調べることができる。例えば、イソペプチドを、ラットなどの哺乳動物に、静脈内投与および経口投与の両方に関して、約1ml/kgの用量で、ボーラス注入により投与できる。イソペプチドは、緩衝液または公知の安定性を有する抗不整脈性ペプチドなどの対照サンプルと並行して試験されることが好ましい。血液サンプルは、種々の時点(例えば、B.D.5分、15分、30分、60分、90分、120分、180分、および240分に。ここで、B.D.は、投与前を意味する)で採取される。サンプル中のイソペプチドの量は、LC/MS/MSなどの当技術分野で慣例的な方法を用いて定量化できる。例えば、血漿サンプル中のイソペプチドの濃度は、1.00nMから1000nMのペプチドの範囲にわたる外部標準曲線から算出できる。血漿濃度対時間のデータは、非区画化分析を用いて、WinNonLin3.5(Phrsight、カリフォルニア州マウンテンビュー)における薬物動態モデリングに関して使用でき、生じたAUC,Fpo、Clb、t1/2、Cmaxおよびtmaxのパラメーターは、当技術分野に知られた通り決定できる。
【0112】
(B. 標準的経口利用能アッセイ)
in vivoで増大した利用能を有するイソペプチドを提供することは本発明の好ましい一態様である。イソペプチドの経口投与後の吸収は制限されていることが多い。それらが、胃腸(GI)管内の酵素または腸細胞の細胞内腔内の酵素により分解されるからである。さらに、イソペプチドの物理化学的性質、特にそれらの大きな水素結合可能性は、これらの分子が経細胞受動拡散によって腸細胞を透過することを困難にしている。
【0113】
したがって、本発明による好ましいイソペプチドは、hPepT1トランスポーターまたはその類縁体に対する親和性を有するイソペプチドである。PepT1トランスポーターに結合するペプチド化合物の三次元立体配座および重要な結合部位は、上記Bailey,P.D.ら、2000年に記載されており、所望のペプチドは、in silicoでモデル化され、上記のこの結合部位内に最適に適合させることができる(例えば、上記Bailey,P.D.ら、(2000);Vinter,J.G.(1996)J.Comput.Aided Des.10:417頁を参照)。
【0114】
式I、式II、表1に示された構造、またはベイリーアッセイを用いて、より一般的に特定された構造を含むペプチドの経口利用能を、PepT1トランスポーター、好ましくはhPepT1トランスポーターに結合するその能力に関して評価できる。例えば、PepT1cDNA、好ましくはhPepT1cDNA(例えば、Covitz,K.M.ら(1996)Pharm.Res.13(11):1631-34頁を参照)を、Temple,C.S.ら(1996)J.Physiol.(ロンドン)494:795頁;Meredith,D.ら(1998)J.Physiol.(ロンドン)512:629頁に記載されているように、アフリカツメガエルの卵母細胞発現系において発現させ、近似Ki値を得るために、卵母細胞内への標識化ペプチドの取り込みをモニターすることができる。
【0115】
本発明の一態様において、標準的in vivo経口利用能アッセイを実施して、上記で検討したベイリー基質テンプレートに最適に適合化させるようにモデル化したイソペプチドの経口利用能を判定することができる。このアッセイにおいて、イソペプチドを、ラットなどの哺乳動物に、経口的投与形態において(例えば、食餌ペレットの一部として、または水中に)経口投与し、同時に、同じ濃度のペプチドを静脈内投与する(例えば、大腿静脈および動脈内に挿入したカテーテルを通じて)。イソペプチドは、経口投与および静脈内投与の両方で、1ml/kgの容量のボーラス注入として、10-5〜10-10の範囲の濃度で投与できる。動物は、採血5分前に、500I.U.のヘパリンを静脈内投与する。対照血液サンプルである「投与前」すなわちB.D.サンプルを、イソペプチドの投与およそ5分前に採取する。投与溶液(例えば、10-5〜10-10Mのペプチドを含む100μlの水)のサンプルを、濃度測定のために保存する。血液サンプルは、t=B.D.5分、15分、30分、60分、90分、120分、180分、および240分に採取する。
【0116】
血液は、ラベルを付けた氷冷EDTA安定化血液サンプルバイアル内に採取し、4℃で5分間(10,000×g)の急速遠心分離まで、氷上に保存する。血漿(100μl)を採取し、ラベルを付けたポリプロピレンミクロ遠心分離バイアル(例えば、0.5mlエッペンドルフ)に移し、氷上凍結させ、さらなる分析まで、-20℃で保存する。およそ40μlのろ液をHPLCカラム(XterraMS C18、3×50mm、3.5μm粒子)にインジェクトし、0%から100%のリニアグラジエントを用いて、4.0分で溶出させる。このカラムを、緩衝液B(アセトニトリル中、0.1%のギ酸または他の好適な緩衝液)中で2.9分間洗浄し、次のサンプルのインジェクション前に、緩衝液A(水中、0.1%のギ酸または他の好適な緩衝液)中で5分間、平衡化する。当技術分野において慣例的な方法を用い、下記の実施例1および2でさらに記載されている通りに質量分析を実施する。
【0117】
血漿サンプル中の化合物の濃度を、1.00nMから1000nMの範囲をカバーする外部標準曲線から算出する。血漿濃度対時間のデータを、非区画分析を用いて、WinNonLin3.5(Pharsight、カリフォルニア州マウンテンビュー)における薬物動態モデリングに使用し、AUC値は当技術分野で知られている通りに測定する。本発明による経口利用可能なイソペプチドは、約30分以内に、有意な血漿中濃度が見られるこが好ましい。ペプチドの静脈内投与を受けている動物で見られるAUC値を用いて、これら2つの系で同じはずのクリアランスおよび半減期として、このような効果を評価する。
【0118】
(C. 標準的心筋細胞アッセイ)
一態様において、本発明によるイソペプチドを心臓細胞に投与し、ギャップ結合機能を評価する。このような手順に最適なイソペプチドを、標準的な心筋細胞アッセイにおいて同定することができる。一態様において、心臓細胞は、ランゲンドルフ法により、コラーゲナーゼを用いた潅流によって、モルモットなどの哺乳動物の心臓から単離する。該細胞をイソペプチドに曝露し、当技術分野に知られている方法を用いてパッチクランプによりGJICに関して評価する。細胞間伝導度(Gj)は、以下の式:
【0119】
【数1】

【0120】
(式中、Ip,脈動およびIp,静止は、それぞれ、脈動時および脈動前の受動細胞における電流を表し、UpおよびUaは、受動細胞および能動細胞の電圧を表す)を用いて示す。イソペプチド投与の際のGj値の変化は、Gjの相対的変化を比較することによって分析される。例えば、イソペプチドによる刺激(例えば、約10-8Mでの)の前、および刺激時の時間の関数として、相対的Gjを判定できる。該イソペプチドは、AAP、AAP10、HP5、およびそれらの機能的類縁体などの抗不整脈性ペプチドのGjと実質的に同じ(±10%)Gjを提供することが好ましい。一態様において、該細胞は虚血細胞であり、該イソペプチドは、非虚血細胞のGjと実質的に同じ(±20%、好ましくは±10%)Gjを提供する。
【0121】
心筋細胞アッセイの実施に関するさらなる詳細は、2002年2月22日に出願されたPCT/米国特許出願第02/05773号に提供されている。
【0122】
(D. 標準的カルシウム誘導不整脈アッセイ)
心臓細胞への投与に好適なイソペプチドは、Lynchら(1981)J Cardiovasc.Pharmacol.3:49-60頁のモデルにより、カルシウム誘導不整脈のin vivoモデルにおいて同定することができる。マウス(25〜30g)を、神経遮断薬と麻酔薬との組合せによって麻酔し、尾静脈に静脈内カニューレを挿入する。ステンレス鋼ECG電極を右前肢および左後肢に配置することによって先行IIECGシグナルを連続的に記録する。接地電極を右後肢に配置する。前記シグナルを増幅し(×5,000〜10,000)、Hugo Sachs電子モデル689ECGモジュールによりフィルターをかける(0.1〜150Hz)。アナログシグナルを12ビットデータ収集ボード(データ翻訳モデルDT321)によりデジタル化し、ウィンドウズ(登録商標)NT用のNotocord HEM3.1ソフトウェアを用いて、1000Hzでサンプリングする。10分間の平衡化時間後、ペプチドの試験サンプルを尾静脈内に注入する。緩衝液によって前処理されたマウスを未処理動物の対照濃度の目安として試験する。全ての実験で、注入容量は100μlである。
【0123】
薬剤またはベヒクルの静脈内投与3分後に、CaCl2の注入(30mg/ml、0.1ml/分≒100mg/kg/分(塩化カルシウム二水和物、独国Riedel-deHaen)を開始する。第2段階AVブロック発生までの時間遅延を、CaCl2注入の開始から最初の不整脈事象の発生までの時間として測定する。第2段階AVブロック事象は、同時QRS群の無いP波を特徴とするAV伝導の断続的欠損として定義される。
【0124】
応答は、ベヒクル処理マウスにおいて発生した第2段階AVブロックまでの時間に対して、表される。化合物(例えば、イソペプチド類、AAP、AAP10または対照)の最大効果を判定する。本発明によるイソペプチドは、AAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体の化合物と類似の抗不整脈活性を有すること、すなわち、該ペプチドが、CaCl2注入後のマウスにおけるAVブロックまでの時間を増加させることが好ましい。該イソペプチドは、好ましくは、AAPの活性の少なくとも約40%、例えば、AAPの活性の少なくとも約50%、AAPの活性の約60%など、例えば、AAPの活性の少なくとも約70%、AAPの活性の少なくとも約80%など、例えば、AAPの活性の少なくとも約90%、例えば、AAPの活性と少なくともおよそ実質的に同じ活性、AAPの活性の約110%など、例えば、AAPの活性の少なくとも約120%、AAPの活性の少なくとも約130%など、例えば、AAPの活性の少なくとも約140%、AAPの活性の約150%など、例えば、AAPの活性の少なくとも約160%、AAPの活性の少なくとも約170%など、例えば、AAPの活性の少なくとも約180%、好ましくは、AAPの活性の少なくとも約190%、より好ましくは、AAPの活性の少なくとも約200%以上を提供する(すなわち、該ペプチドは、AAPで誘導されたものとおよそ同じ時間遅延を示す)。
【0125】
(E. 標準的骨芽細胞活性アッセイ)
細胞間コミュニケーションのモジュレーションは、オステオトロピック(osteotropic)因子が骨形成細胞の活性を調節する機構を表す。したがって、一態様において、本発明によるイソペプチドは、骨細胞間のギャップ結合コミュニケーションを増加させることによって骨芽細胞活性を増加させ、それによってin vivoで骨形成を増強させるために用いられる。
【0126】
本発明によるイソペプチドの有効性は、例えば、カルシウム波活性および/またはアルカリホスファターゼ活性を測定することによって、ヒト骨芽細胞(hOB)において予備的にアッセイできる。
【0127】
一態様において、細胞は、健康な志願者(年齢20〜36才)の後部腸骨棘の穿刺によって得られたヒト骨髄から単離する:10〜15mlの骨髄材料を、100U/mlのヘパリン(Sigma、カタログ番号H-3149)を添加した15mlのPBS+Ca、Mg(Life Technologies、カタログ番号14040)に採取した。2200rpmで30分間の遠心分離により、Lymphoprep勾配(Nycomed Pharma、カタログ番号1001967)で、該骨髄の単核フラクションを単離する。回収後、単核フラクションを培養培地で1回洗浄し、1800rpmで10分間遠心分離する。引き続き、細胞をカウントし、5×106細胞/100mmディッシュで培養培地に塗布する。hOB培地(試剤は全てLife Technologiesから入手):10%熱不活化ウシ胎仔血清(カタログ番号10106)および0.1%ペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号15140)を添加したMEM w/oPhenol Red w/Glutamax(カタログ番号041-93013)。翌日、培地を交換し、5%CO2中、37℃で、7日おきに培地を交換して細胞を培養する。培養4〜6週間後、該細胞は、70%集密に達する。次いで、培地に7日間、100nMのデキサメタゾン(Sigma、カタログ番号D-4902)を添加する。次いで、細胞を、ビデオ画像実験用に平板培養する:35mmディッシュ(または6ウェルの複数ディッシュの各ウェル)内に、25mm#1カバーガラスを置き、細胞を2.5×105細胞/カバーガラスに塗布し、2〜3日間培養してから使用する。ROS17/2.8細胞を、100mmディッシュ中、5%CO2、37℃で、培地を2〜3日おきに交換して培養する。ROS培地(試剤は全てLife Technologiesから入手):10%熱不活化ウシ胎仔血清(カタログ番号16170)、1%NEAA(カタログ番号11140)、1%ピルビン酸ナトリウム(カタログ番号11360)、1%L-グルタミン(カタログ番号25030)および0.1%ペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号15140)を添加したMEM(カタログ番号31095)。ビデオ画像実験用に、細胞をカバーガラスに、2〜3×105細胞/カバーガラスで塗布し、2〜3日間培養してから使用する。
【0128】
カバーガラス上で培養した細胞に、5μMのfura-2-AM(Molecular Probes、カタログ番号F-1221)を、37℃で30分間加え、新鮮培地中、20分間インキュベートする。次いで、カバーガラスをPDMI-2培養チャンバー(Medical Systems社)に固定し、Zeiss Axiovert顕微鏡上、CO2を潅流させて、37℃に維持する。エッペンドルフ5171マイクロマニピュレーターに固定したホウケイ酸ガラスマイクロピペットを用いて、単一細胞の機械的刺激により、細胞間カルシウム波を誘導する。
【0129】
MetaMorph画像化システム(Universal Imaging)を用いて画像化を実施する。励起光(340nmおよび380nm)を、モノクロメーター(T.I.L.L.Photonics GmbH)により提供する。増感CCDカメラ(Dage MTI)により画像を得て、MatroxMVP画像処理ボードによりデジタル化する。ペプチドの存在下および不在下で、カルシウム波に関与する細胞数を使用して、GJIC増加の測定値を得る。
【0130】
一態様において、イソペプチドの投与により、緩衝液などの対照に曝露させた細胞と比較して、少なくとも約2倍、波に関与した細胞数が増加する。他の態様においては、イソペプチドの投与により、少なくとも約2倍、波に関与した細胞数が減少する。本発明によるアゴニストイソペプチドは、このようなアッセイにおいて、AAPの活性の少なくとも約10%、AAPの活性の少なくとも約20%など、例えば、AAPの活性の少なくとも約30%、AAPの活性の少なくとも約40%、例えば、AAPの活性の少なくとも約50%、好ましくは、AAPの活性の少なくとも約70%、より好ましくは、AAPの活性の100%以上を提供する。
【0131】
細胞はまた、骨芽細胞活性の一般的測定を提供するアルカリホスファターゼ活性の存在に関して測定できる。一態様において、細胞を、200μlの通常培養培地中、8000細胞/ウェル(hOB)または3000細胞/ウェル(ROS)の濃度で96ウェルプレートに塗布する。4日目(または、ROS細胞では3日目)に、細胞を200μlのMEM、0.1%BSA(Sigmaカタログ番号A-9418)で洗浄する。種々の濃度のペプチド類、対照、AAPまたはAAP10を含有する好適な培地(例えば、200μlのMEM、0.1%BSA)を含むサンプルを、該細胞に加え、約4日間(ROS細胞では2日間)、培養を続ける。
【0132】
約8日目(ROS細胞では5日目が好ましい)に、当技術分野に公知のアルカリホスファターゼ(ALP)アッセイなどを用いて、細胞を、アルカリホスファターゼに関してアッセイする。ALPアッセイは、一般に、酵素活性を測定する比色エンドポイント法であり、アルカリホスファターゼキット(Sigma、カタログ番号104-LL)を用いて実施できる。好ましくは、細胞を200μlのPBS+Ca、Mgにより1回洗浄し、100μlのアルカリ緩衝溶液を各ウェルに加え、37℃で10分間、細胞をインキュベートする。引き続き、100μlの基質溶液を各ウェルに加え、該プレートを37℃で30分間、インキュベートする。100μlの2.0N NaOHを各ウェルに加えて反応を停止させる。プレートリーダーを用いて405nmの吸光度を測定する。
【0133】
本発明によるアゴニストイソペプチドは、等張生理食塩水に比較して、アルカリホスファターゼ産生の少なくとも約5%の増加、好ましくは、等張生理食塩水に比較して、アルカリホスファターゼ産生の少なくとも約10%の増加、より好ましくは、等張生理食塩水に比較して、アルカリホスファターゼ産生の15%以上の増加を提供する。アルカリホスファターゼ産生の増加は、骨芽細胞活性増加の目安であり、したがって、骨形成増加の目安である。
【0134】
(F. 標準的腫瘍プロモーターアッセイ)
殺虫剤であるDDTとしても知られている化合物1、1-ビス(p-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタンは、ギャップ結合コミュニケーションの阻害物質であり、腫瘍促進能力を有する。それは、ギャップ結合の数および規模を減少させることによって、細胞から細胞へのコミュニケーションを阻害し、DDTへの曝露は、ギャップ結合蛋白質、Cx43のリン酸化(活性)体の細胞濃度低下に関連している。これらの作用が、該化合物の発癌性に極めて重要であると考えられている(X.Guanら(1996)Carcinogenesis、17 1791-1798頁;R.J.Ruchら(1994)Carcinogenesis、15 301-306頁;B.V.Madhukarら(1996)Cancer Lett.106 117-123頁)。該イソペプチドの治療有効性をモニタリングする手段として、ヒト骨芽細胞におけるDDTに誘導されたアンカップリングに及ぼす該イソペプチドの効果を判定することができる。したがって、一態様において、GJICの減少に誘導される腫瘍プロモーターの抑制または防止するために、本発明によるイソペプチドが用いられる(W.K.Hongら(1997)Science、278 1073-1077頁)。
【0135】
一例示的アッセイにおいて、健康な志願者(年齢20〜36才)の後部腸骨棘の穿刺によって得られたヒト骨髄から、ヒト骨芽細胞を単離する。およそ10〜15mlの骨髄材料を、100U/mlのヘパリン(Sigma、カタログ番号H-3149)を添加した15mlのPBS+Ca、Mg(Life Technologies、カタログ番号14040)に採取した。2200rpmで30分間の遠心分離により、Lymphoprep勾配(Nycomed Pharma、カタログ番号1001967)で、該骨髄の単核フラクションを単離する。
【0136】
回収後、単核フラクションを培養培地で1回洗浄し、1800rpmで10分間遠心分離する。引き続き、細胞をカウントし、8×106細胞/100mmディッシュで培養培地に塗布する。翌日、培地を交換し、5%CO2中、37℃で、7日おきに培地を交換して細胞を培養する。培養3〜4週間後、該細胞は、典型的に、70%集密に達する。次いで、培地に7日間、100nMのデキサメタゾン(Sigma、カタログ番号D-4902)を添加する。次いで、細胞を、ビデオ画像実験用に平板培養する。一般的に、細胞を2.5×105細胞/カバーガラスに塗布し、2〜3日間培養してから画像化する。
【0137】
培養後、細胞をPDMI-2培養チャンバー(Medical Systems社)に固定し、Zeiss Axiovert顕微鏡上、CO2を潅流させて、37℃に維持する。10mM Lucifer Yellow溶液(Sigma、カタログ番号L-0259)を入れたマイクロピペットを用いて、微量注入を実施する。単層中の細胞に30秒間かけて慎重にLYを注入する;マイクロピペットを細胞から取り出し、30秒後、色素移行を示す細胞数をカウントする。サブセットの細胞培養では、DDTを、13μMの最終濃度で培地に加え、そのまま60分間放置する。増感CCDカメラ(Dage MTI)により細胞の画像を得て、MetaMorph画像化ソフトウェア(Universal Imaging)を用い、MatroxMVP画像処理ボードによりデジタル化する。
【0138】
制御条件下(DDT処理なし)で、該色素は、一般に、中央値(n=12)が14.5個の細胞へ広がる。DDT曝露細胞は、7の中央値(n=13)を有し、細胞カップリングの減少を典型的に示す。
【0139】
イソペプチドを、10-8mol/l最終濃度で浸漬溶液に加え、10分後、もう1回微量注入を実施する。本発明によるアゴニストイソペプチドは、細胞から細胞への色素移行において増加を示すことが好ましい。この増加が、ウィルコクソン非パラメトリック統計検定などの慣例的な統計検定を用いて測定した際に、対照サンプル(ペプチドなし)と有意に異なっている(p<0.05で)ことがより好ましい。該イソペプチドは、AAPで見られる減少よりも少なくとも約50%、好ましくは約70%、より好ましくは約100%またはそれ以上のGJIC阻害の減少を示すことが好ましい。
【0140】
腫瘍促進に関連した細胞間カップリング減少の反転に、最も高い治療有効性を有するイソペプチド候補化合物を同定するために、このアッセイを用いることができ、一態様において、このようなイソペプチドは、癌を発現する危険にあるか、癌に罹っている個体に投与される。あるイソペプチを、単独で使用することもできるし、他のイソペプチドと組み合わせて、および/または他の抗癌剤を用いた療法と組み合わせて用いることもできる。
【0141】
抗不整脈ペプチド類のAAP、AAP10、HP、およびそれらの機能的類縁体と実質的に同じ生理学的応答を誘導するイソペプチドを同定するために(例えば、アゴニストを同定するために)、またはこれらの生理学的応答を阻害もしくは抑制するイソペプチドを同定するために(例えば、アンタゴニストを同定するために)、さらに他のアッセイを実施できる。好適なアッセイとしては、限定はしないが、細胞(例えば、CHO細胞)におけるcAMP形成を測定するアッセイ;cAMP有効性アッセイ(例えば、CHO細胞におけるAPP様化合物のフォルスコリン(forskoline)刺激cAMP形成の阻害測定);心筋細胞中のホスホイノシトールのターンオーバー(Meierら)(E.Meierら(1997)Drug Development Research、40:1-16頁;ならびにグルコースおよび酸素欠乏への応答が挙げられる。
【0142】
多数の標準的アッセイを上記に詳述してある。さらなるアッセイは、2002年2月22日に出願されたPCT/米国特許出願第02/05773号に記載されており、その全体が参照として本明細書に組み込まれている。これらのアッセイは、単に例示的なものであり、開発され得る、および標準化され得る他の好適なアッセイは、本発明の範囲に包含される。
【0143】
(製薬組成物)
本発明はまた、製薬的に許容できる担体および/または希釈剤と組み合わせた上記イソペプチドのいずれか1種または複数を含む製薬組成物に関する。
【0144】
(製剤/担体)
治療に使用するために、本発明の選択されたイソペプチドは、製薬的に許容でき、選択された投与経路によってイソペプチドを送達する上で適切な担体と共に製剤化される。本発明の目的に関して、末梢非経口経路には、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内の投与経路が含まれる。本発明に用いられる一定の化合物はまた、経口、経直腸、経鼻、または下気道経路による投与が可能である。これらは、いわゆるノンパレンテラル(non-parenteral)経路である。本発明の製薬組成物は、本発明のイソペプチド、またはその塩および製薬的に許容できる担体を含む。製薬的に許容できる好適な担体は、希釈剤、賦形剤などの、ペプチド基剤の薬剤と共に通常用いられるものである。治療使用のための製薬的に許容できる担体は、製薬業界に周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack出版社(A.R.Gennaro編集、1985)に記載されている。例えば、わずかに酸性の、または生理的pHの滅菌生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水が使用できる。Ph緩衝剤は、ヒスチジン、または酢酸ナトリウムであり得る。製薬組成物中には、防腐剤、安定化剤、染料、さらに香料を提供してもよい。例えば、フェノール安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステル類を防腐剤として添加してもよい。さらに、抗酸化剤および懸濁化剤、例えば、SDS、アスコルビン酸、メチオニン、カルボキシメチルセルロース、EDTA,ポリエチレングリコール、およびトロイーン(Troeen)を使用してもよい。
本発明の製薬組成物は、経口投与用には、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤として、直腸投与用には、座剤として、注射投与用には、滅菌溶液および懸濁液などとして製剤化し、使用できる。投与の用量および方法は、最適な有効性を得るために調整できるが、医療業者により認識されるであろう体重、食事、併用薬などの因子および他の因子に依存する。
【0145】
用いられる製薬担体または希釈剤は、従来の固体または液体担体であり得る。固体担体の例としては、乳糖、白土、ショ糖、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはセルロースの低級アルキルエーテル類がある。液体担体の例としては、シロップ、ピーナツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン類、ポリオキシエチレンおよび水がある。
【0146】
同様に、該担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野に知られている持続放出材料を、単独で、またはワックスと混合して含み得る。
【0147】
(非経口投与)
投与が、毎日ベースの皮下などの非経口の場合、注射用製薬組成物を従来の形態で、水溶液または凍結乾燥懸濁液、ミー直前の再構成または注射前の液体中懸濁に好適な固体形態、または乳液として、調製することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、乳糖、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、および塩酸システインである。さらに、所望の場合、注射用製薬組成物は、湿潤剤、またはpH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質を含有し得る。吸収増強製剤(例えば、リポソーム類)を利用してもよい。本発明の一実施形態において、該化合物は、例えば、完全非経口栄養療法を受けている個体(例えば新生児)に対する液体栄養サプリメントとして用いられる場合、注入による投与のために、または、例えば、皮下、腹腔内、静脈内の注射による投与のために製剤化され、したがって、滅菌した、およびパイロジェンフリーの形態、また場合によっては、生理的に許容できるpH、例えば、わずかに酸性または生理的pHに緩衝化された水溶液として利用される。筋肉内投与用製剤は、植物油、例えばアブラナ油、トウモロコシ油または大豆油中の溶液または懸濁液をベースにできる。これらの油ベースの製剤は、抗酸化剤、例えば、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)およびBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)により安定化できる。
したがって、本発明のイソペプチド化合物は、蒸留水または生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、5%デキストロース溶液または油類などのベヒクル中で投与できる。本発明のイソペプチドの溶解度を、所望の場合、界面活性剤および乳化剤などの溶解度増強剤を組み込むことによって増強できる。
【0148】
所望の作用部位への緩徐な放出のために、注射部位またはその近辺におけるイソペプチドの蓄積を助ける一定の量のゼラチンを有する注射剤として使用するために、水性の担体またはベヒクルを補足することができる。ヒアルロン酸などの替わりのゲル化剤もまた、蓄積剤として有用であり得る。
【0149】
本発明のイソペプチドはまた、該イソペプチドの長時間投与および持続投与のための徐放皮下注入装置として製剤化できる。このような持続放出製剤は、身体の外部に配置されるパッチの形態であり得る。持続放出製剤の例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-共-グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、リポソーム類などの生体適合性ポリマーの複合体が挙げられる。本発明のイソペプチドの局所高濃度を提供することが望ましい場合、持続製剤は特に、興味深い。
【0150】
該イソペプチドは、単位用量または多用量における腸管栄養量のペプチドを含有する滅菌充填バイアルまたはアンプルの形態で利用できる。該バイアルまたはアンプルは、即時投与製剤として、該イソペプチドおよび所望の担体を含有し得る。あるいは、該バイアルまたはアンプルは、滅菌水またはリン酸緩衝生理食塩水などの好適な担体中で再構成するのに好適な凍結乾燥形態などの形態で、該イソペプチドを含有し得る。
【0151】
(ノンパレンテラル投与)
注射用製剤の代替として、該イソペプチドは他の経路による投与のために製剤化できる。錠剤、カプセル剤などの経口投与形態は、標準的な製薬慣行にしたがって製剤化できる。
所与の療法に用いられる活性化合物の実際の好ましい量は、例えば、使用される特定の化合物、製剤化された特定の組成物、投与様式および対象の特徴、例えば、対象の種、性別、体重、全身的健康状態および年齢によって変わることが理解されよう。所与のプロトコルに関する最適な投与量は、先行の指針を考慮して行われる従来の用量決定試験を用い、当業者によって容易に確認できる。好適な用量範囲としては、1日当たり、約1mg/kg体重から約100mg/kg体重が挙げられる。
【0152】
(治療方法)
一態様において、本発明は、GJICの欠損に関連した病態を有しているか、それを発現させる危険にある個体に、上記イソペプチドのうちのいずれかの治療有効量を投与する方法を提供する。本発明によるイソペプチドを用いて治療できる個体としては、限定はしないが、動物、好ましくは哺乳動物、例えば、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびウサギなどのウサギ目のもの)、イヌ、ブタ、ヤギ(一般に家畜動物)、および霊長類が挙げられる。好ましい一態様において、個体はヒトである。
【0153】
治療できる病態の例としては、限定はしないが、心血管疾患、気道上皮の炎症、肺胞組織の障害、膀胱失調、蝸牛疾患による難聴、内皮傷害、糖尿病性網膜症および糖尿病性神経障害、中枢神経系および脊髄の虚血、歯周病などの歯組織障害、腎臓疾患、骨髄移植の失敗、創傷、勃起不全、膀胱失調(urinary bladder incontinence)、神経障害性痛、亜慢性および慢性炎症、癌ならびに骨髄および幹細胞移植の失敗、細胞および組織移植時または外科手術などの医療操作時に生じる病態;ならびに過剰の活性酸素種および/またはフリーラジカルおよび/または一酸化窒素によって生じる状態が挙げられる。
【0154】
好ましい一態様において、本発明は、急性虚血性心疾患(例えば、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞)などの心血管障害時に生じる不整脈および血栓性合併症、うっ血性心不全(例えば、収縮期、拡張期、高拍出性、低拍出性、右側または左側心不全)、先天性心疾患、肺性心、心筋症、心筋炎、冠状動脈血管再生時の高血圧性心疾患などの治療用に薬理学的に活性な坑不整脈性イソペプチドおよびその使用を提供する。
【0155】
具体的な実施形態において、徐脈型不整脈(例えば、洞結節、AV結節、ヒス束、右脚または左脚における疾患による)、リエントリーに伴う頻拍型不整脈(例えば、心房性早期複合体、AV接合複合体、心室性早期複合体、心房性細動、心房性粗動、発作性上室性頻拍症、洞結節リエントラント頻拍症、AV結節性リエントラント頻拍症、および非持続性心室性頻拍症)を治療および/または予防するために、本発明による坑不整脈性イソペプチドを単独か、クラスI薬剤(例えば、リドカイン)、クラスII薬剤(例えば、メトプロロールまたはプロプラノール)、クラスIII薬剤(例えば、アミオダロンまたはソタロール)またはクラスIV薬剤(例えば、ベラパミル)など、他の坑不整脈性化合物と併用して用いられる。
【0156】
さらに、または代替として、本発明によるイソペプチド類は、リエントリー不整脈;心室性リエントリー(例えば、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、安定狭心症および不安定狭心症時に起こる);感染性または自立神経性心筋症;心房性細動;再分極交代;単形性心室性頻拍症;T波交代;徐脈型不整脈;および一般に心組織の収縮性の減少、血栓症などの1つまたは複数を治療するために用いられる。
【0157】
(骨粗しょう症)
さらなる一態様において、本発明によるイソペプチドは、骨粗しょう症または骨形成、骨成長または骨維持に影響を与える他の病態を予防および/または治療するために用いられる。低酸素時におけるヒト骨芽細胞間の減弱化したGJICを正常化することのできるイソペプチドは、骨吸収に比べて骨形成障害のある骨疾患の治療にとって特に好適である。そのような方法に使用するための最適なイソペプチドは、骨芽細胞中のアルカリホスファターゼ(ALP)活性の増加に関するアッセイに選択でき、GJICの適切な維持の結果としての細胞生存度および増殖をモニターする手段を提供する。一態様において、ヒト骨芽細胞を、1×10-13mol/lから1×10-6mol/lの種々の濃度のイソペプチドで刺激し、未処理対照と比較する。通常の培養条件下で、イソペプチドは、ALP活性を増加させることが好ましい。該イソペプチドは、10-11mol/lから10-8mol/lの範囲の濃度で、低酸素状態時のALP活性を刺激することがより好ましい。したがって、骨組織における血管新生不良、低酸素症および虚血に関連した骨疾患を治療および/または予防するためのイソペプチド組成物を最適化するために、該アッセイを用いることができる。
【0158】
(関節疾患)
他の態様において、本発明によるイソペプチドは、細胞対細胞のカップリング障害に関係する関節疾患の予防および/または治療のために用いられる。例えば、代謝ストレスに関係する関節疾患の予防および/または治療のために該イソペプチドを用いることができる。これらの創傷には、骨折した軟骨組織の血管新生または治癒の低下に関連した任意の形態の関節炎が含まれる。
【0159】
(癌)
さらに他の一態様において、本発明によるイソペプチドは、癌の治療に用いられる。発癌は、成長因子、発癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子が関与する増殖制御機構の進行的障害を特徴とする。発癌および腫瘍形成における一般的テーマはGJICのダウンレギュレーションである。色素移行アッセイを用いた腫瘍細胞におけるギャップ結合の透過度は、周辺組織におけるGJICよりも典型的に低い。さらに、ギャップ結合のゲーティングは、GJICを減少させる腫瘍プロモーターによって影響されることが知られている。したがって、一態様において、本発明によるイソペプチドは、単独で、または伝統的な抗癌療法と組み合わせて、癌の治療用薬剤として用いられる。
【0160】
(創傷治癒)
さらなる一態様において、本発明によるイソペプチドは、創傷を治療するために、特に、創傷治癒を促進するために用いられる。創傷治癒は、多くのタイプの細胞の相互作用に関係し、ギャップ結合に媒介された細胞間コミュニケーションは、組織の修復および再生に関与する細胞の増殖時および発達時の細胞代謝の調整に重要な役割を演じていると考えられる(K.M.Abdullahら(1999)Endocrine、10 35-41頁;M.Saitohら(1997)Carcinogenesis、18:1319-1328頁;J.A.Goligerら(1995)Mol.Biol.Cell、6 1491-1501頁)。イソペプチドは、当技術分野によく知られている担体を用い、局所投与(例えば、軟膏、クリームなど)により創傷部位に投与できるか、例えば、慢性胃潰瘍病巣の治療など、内部組織の創傷治療のために、全身投与できる。
【0161】
(虚血)
内皮ギャップ結合細胞間コミュニケーションが関係しているさらなる機能は、外傷後の内皮細胞の移動性挙動、血管新生、内皮増殖および老化、ならびに血管運動応答の調整である(G.J.Christら(2000)Braz.J Med Biol.Res.、33:423-429頁)。したがって、一態様において、本発明によるイソペプチドは、伝導血管応答を増強させるために、ならびに代謝需要が増加した状態時(例えば、身体の運動、心悸亢進)、および虚血時の血液供給を改善するために用いられる。
【0162】
また、ギャップ結合は、グリア区域の個々のメンバー間の長距離シグナリング調整のための分子結合を提供すると考えられている。同様に、星状細胞は、一端が血管床に接触し、他極がニューロン実質に近接して機能的に分極化しているため、ニューロンの代謝支持に理想的に適合している。(R.Dermietzel(1998)Brain Res.Brain Res.Rev.、26:176-183頁)。したがって、好ましい一態様において、本発明によるイソペプチドは、グリア細胞とニューロンとの間の代謝支持を増大させることによって、脳内の虚血損傷を防ぐ必要のある個体に投与される。このような個体としては、鬱状態、不安、学習および記憶欠損、恐怖、および幻覚などの徴候を示し得る器質精神病を有する個体、または脳の外傷を被った個体を挙げることができる。このようなイソペプチドは、中枢神経系に利用可能であるように選択され、製剤化されることが好ましい(すなわち、血液-脳関門を通る輸送を促進する担体と共に、または該担体と結合させて提供される)。
【0163】
本発明によるイソペプチドはまた、神経外傷後、または脳組織内への未成熟細胞(前駆細胞)の移植時、例えば、神経外傷、脳虚血およびパーキンソン病またはハンチントン病などの慢性神経変性疾患を有している個体などにおいて、修復を促進するために用いることもできる(H.Aldskogiusら(1998)Prog.Neurobiol、55:1-26頁)。
【0164】
特定の実施形態において、本発明によるイソペプチドは、細胞間ギャップ結合チャネルに及ぼす影響により、白内障を治療および/または予防するために(D.Mackayら(1999)Am J Hum.Genet、64 1357-1364頁)、角膜の栄養不良を伴う病態における角膜の血管新生を治療および/または予防し、角膜病巣の治癒を増大させるために(S.G.Spanakisら(1998)Invest Ophthalmol.Vis.Sci.、39:1320-1328頁)、および/または高血圧を予防するために使用できる。
【0165】
本発明によるイソペプチドおよび製薬組成物が、ギャップ結合コミュニケーション障害(異常な減少または増加)に関連した任意の状態または病態を治療するために使用できることは、当業者に明らかであろう。1種または複数のイソペプチドあるいは1種または複数のイソペプチドを含む製薬組成物を、それを必要とする個体に、治療有効量で投与することが好ましい。本明細書に用いられる「治療有効量」とは、所与の状態または病態の症状を軽減する量、好ましくは、その状態または病態を有する個体における生理学的応答を正常化する量を言う。症状の軽減または生理学的応答の正常化は、当技術分野に慣例的な方法を用いて判定でき、また、所与の状態または病態によって変化し得る。一態様において、1種または複数のイソペプチドあるいは1種または複数のイソペプチドを含む製薬組成物の治療有効量は、測定可能な生理学的パラメーターを、その状態または病態の無い個体におけるパラメーターと実質的に同じ値(好ましくは±30%以内、より好ましくは±20%以内、さらに好ましくは±10%以内)に回復させる量である。
【実施例】
【0166】
次に、以下の実施例を参照にして本発明をさらに説明する。以下のものは単に例示のためのものであり、詳細における修飾を行うことができ、それらも本発明の範囲内に入ることは認識されるであろう。
【0167】
(実施例1:イソペプチド合成)
好ましい一般的手順を下記に記載する。しかし、固相イソペプチド合成のより詳細な記載は、本明細書にその全体が組み込まれている国際公開番号WO98/11125に見られる。
【0168】
(a. 一般的イソペプチド合成)
器具および合成法
N-α-アミノ保護基として9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、および側鎖官能基のための好適な一般的保護基を用いて、濾過用にポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器内で、イソペプチドをバッチ式に合成した。
【0169】
溶媒
溶媒DMF(N,N-ジメチルホルムアミド、独国Riedel de-Haen)は、強力なカチオン交換樹脂(LewatitS 100 MB/H強酸、Bayer社、独国Leverkusen)を充填したカラムを通して精製し、使用前に、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(Dhbt-OH) (遊離アミンが存在する場合は黄色(Dhbt-O-アニオン)となる)の添加により、遊離アミンに関して分析した。溶媒DCM(ジクロロメタン、分析用、独国Riedel de-Haen)は精製せずに直接用いた。アセトニトリル(HPLC用、Lab-Scan、アイルランド国ダブリン)は精製せずに直接用いた。
【0170】
アミノ酸
Fmoc-およびBoc-保護アミノ酸は、Advanced ChemTech(ACT)、Bachem、NovaBiochemおよびNeosystemから購入した。
【0171】
安息香酸およびベンジルアミン誘導体
安息香酸およびベンジルアミン誘導体は、Aldrichから購入し、さらに精製することなく使用した。
【0172】
カップリング試剤
カップリング試剤のジイソプロピルカルボジイミド(DIC)は、独国Riedel de-Haenから、PyBopは、Advanced ChemTechから購入した。
【0173】
リンカー
(4-ヒドロキシメチルフェノキシ)酢酸(HMPA)は、スイス国Novabiochemから購入し;DICにより生成した予め形成させた1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステルとして樹脂に結合させた。
【0174】
固体支持体
TentaGel S樹脂0.22〜0.31mmol/g(TentaGel-S-NH2;TentaGel-S-Ram、Rapp ポリマー、独国)上で、Fmoc法によりイソペプチドを合成。
【0175】
触媒および他の試剤
ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)は、ドイツ国のAldrichから、エチレンジアミンは、Flukaから、ピペリジンおよびピリジンは、独国フランクフルトのRiedel de-Haenから、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)は、スイス国のFlukaから購入し、対称無水物を含むカップリング反応における触媒として用いた。エタンジチオールは、独国フランクフルトのRiedel de-Haenから購入し、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(Dhbt-OH)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(HOAt)は、スイス国のFlukaから入手した。
【0176】
カップリング手順
dmf中で、適切なn-α保護アミノ酸およびdicから生成させた対称無水物として、第1のアミノ酸をカップリングさせた。dmf中でdicを用い、適切なn-α保護アミノ酸およびhobtまたはhoatから作製されたin situ生成hobtまたはhoatエステルとして、続くアミノ酸をカップリングさせた。試験中のFmoc脱保護を防ぐため、80℃でニンヒドリン試験を実施してアシル化をチェックした(B.D.Larsen,A.Holm,int.j pept.protein res.1994、43 1-9頁)。
【0177】
N-αアミノ保護基(Fmoc)の脱保護
DMF中で、20%ピペリジンによる処理(1×5分および1×10分)を行い、抜き取ったDMFへのDhbt-OH添加後に黄色が検出できなくなるまでDMFによる洗浄(5×15ml、各5分)を行うことによって、Fmoc基の脱保護を行った。
【0178】
Allyl/Alocの脱保護
15〜20mlのCHCl3、AcOH、NMM(37:2:1)に溶解させた3当量のPd(PPh3)4溶液を、ペプチド樹脂に加えた。該混合物にN2をバブリングしながら、該処理を室温で3時間続けた。
【0179】
HOBt-エステル類のカップリング
3当量のHOBtおよび3当量のDICと共に、3当量のN-αアミノ保護アミノ酸をDMF中に溶解させてから樹脂に加えた。
【0180】
予め形成させた対称無水物
6当量のN-αアミノ保護アミノ酸をDCMに溶解させ、0℃に冷却させた。DIC(3当量)を加え、反応を10分間続けた。溶媒を減圧除去し、残留物をDMFに溶解させた。該溶液を直ちに樹脂に加えた後、0.1当量のDMAPを加えた。
【0181】
酸による樹脂からイソペプチドの開裂
95%のトリフルオロ酢酸(TFA、Riedel de-Haen、独国フランクフルト)-水v/vまたは95%TFAと5%エタンジチオールv/vにより、室温で2時間処理することによってイソペプチドを樹脂から開裂させた。濾過した樹脂を95%TFA-水により洗浄し、ろ液および洗浄液を減圧下、蒸発させた。残渣をエーテルで洗浄し、酢酸-水から凍結乾燥させた。粗製凍結乾燥生成物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESMS)により同定した。
【0182】
TentaGel樹脂上でのバッチ式イソペプチド合成(PEG-PS)
濾過用にポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器にTentaGel樹脂(1g、0.22〜0.31mmol/g)を入れた。該樹脂をDMF(15ml)中で膨潤させ、DMF中、20%のピペリジンにより処理し、樹脂上の非プロトン化アミノ基の存在を確認した。樹脂を排液し、抜き取ったDMFへのDhbt-OH添加後に黄色が検出できなくなるまでDMFにより洗浄した。上記の通り、予め形成させたHOBt-エステルとしてHMPA(3当量)をカップリングし、該カップリングを24時間続けた。樹脂を排液し、DMFで洗浄し(5×5ml、各5分)、ニンヒドリン試験によりアシル化をチェックした。第1のアミノ酸を、上記の通り、予め形成させた対称無水物としてカップリングした。配列にしたがって続くアミノ酸を、上記の通り、予め形成させたFmoc保護HOBtエステル(3当量)としてカップリングした。該カップリングは、別に特定しない限り、2時間続けた。樹脂を排液し、余分な試剤を除去するために、DMFで洗浄した(5×15ml、各5分)。80℃でニンヒドリン試験を実施して全てのアシル化をチェックした。合成が完了したら、イソペプチド-樹脂をDMF(3×15ml、各5分)、DCM(3×15ml、各1分)および最後にジエチルエーテル(3×15ml、各1分)で洗浄し、減圧乾燥した。
【0183】
分取HPLC条件
AFC2000自動フラクションコレクター/オートサンプラーを備えたVISION Workstation(PerSeptive Biosystem)を用いて、分取クロマトグラフィーを実施した。機器制御およびデータ収集のためにVISION-3ソフトウェアを用いた。分取HPLC用に、Kromasil(EKA Chemicals)KR100-10-C8 100Å、C-8、10μm;CER2230、250×50.8mmまたはVYDAC218TP101550、300Å、C-18、10〜15μm、250×50mmなどの種々のカラムを用いた。緩衝液系は、A:MQV中、0.1%TFA;B:0.085%TFA、10%MQV、90%MeCNを含んでいた。流速は35〜40ml/分。好ましいカラム温度は、25℃であった。UV検出は、215nmおよび280nmで実施した。個々のイソペプチドについて好適なグラジエントを用いた。
【0184】
分析用HPLC条件
グラジエントHPLC分析は、HP 1100 Quaternary Pump、HP 1100オートサンプラー、HP 1100カラムサーモスタットおよびHP 1100多波長検出器からなるHewlett Packard HP 1100 HPLCシステムを用いて行われた。LCソフトウェア(A.06.01改訂)用のHewlett Packardケムステーションを、装置コントロールおよびデータ収集のために用いた。分析用HPLCのために、VYDAC 238TP5415、C-18、5μm、300Å、またはJupiter、Phenomenex 00F-4053-E0;5μm C-18、300Å 150x4.6mm他など種々のカラムを用いた。緩衝液系は、A:MQV中0.1% TFA;B:0.085% TFA、10% MQV、90% MeCNを含んでいた。流速は1ml/分であった。好ましいカラム温度は、40℃であった。UV検出は、215nmで実施した。上記の通り、好適なグラジエントを、個々のイソペプチドについて用いた。
【0185】
質量分析
イソペプチド類を、スーパーグラジエントメタノール(super gradient methanol)(Labscan、アイルランド国ダブリン)、Milli-Q水(Mollipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)およびギ酸(Merck、独国ダムスタット)(50:50:0.1v/v/v)に溶解して1μg/mlと10μg/mlとの間の濃度を得た。イソペプチド溶液(20μl)を、+/-0.1m/z精度のLCT質量分析計(Micromass、英国マンチェスター)を用いてESI-TOF-MSによる正極性モードで分析した。
【0186】
例示的な合成スキームを、図1Aおよび図1Bに示す。
【0187】
(b. 個々のイソペプチド類の合成)
H-Gly-イソ-Lys(4-ニトロベンゾイル)-OH(化合物1)の合成
本合成および本明細書に記載された引き続く全ての合成において、乾燥TentaGel-S-NH2(0.23mmol/g、1g)を、濾過用のポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器に入れ、「TentaGel樹脂上でのバッチ式イソペプチド合成」に従って記載された通り処理した。リジンをFmoc-Lys(Aloc)-OHとして、グリシンをBoc誘導体としてカップリングさせた。Aloc保護基を、上記の通り除去した。該リジンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでAloc基を脱保護した。次にグリシンを、リジンのε-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-ニトロ安息香酸を、THF中でDICを用いて、in situ生成したHOBtエステルとしてカップリングさせた。
【0188】
全てのカップリングを、少なくとも2時間続けた。アシル化は、先に記載されたように80℃で実施されたニンヒドリン試験によってチェックした。合成完了後、イソペプチド樹脂を、DMF(3x15ml、各1分)、DCM(3x15ml、各1分)、ジエチルエーテル(3x15ml、各1分)で洗浄し、減圧乾燥した。次いで該イソペプチドを、上記のように樹脂から開裂し、凍結乾燥した。下記に例示された全てのイソペプチド類で、この手順に従った。
【0189】
上記の分取HPLCを用いて精製後、40mgのイソペプチド生成物を、99%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+352.07、計算値MH+352.24)により確認された。
【0190】
H-Gly-イソ-Lys(4-メトキシベンゾイル)-OH(化合物4)の合成
リジンをFmoc-Lys(Aloc)-OHとして、グリシンをBoc誘導体としてカップリングさせた。Aloc保護基を上記の通り除去した。該リジンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでAloc基を脱保護した。次にグリシンを、リジンのε-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-メトキシ安息香酸を、DMF中でDICを用いて、in situ生成したHOBtエステルとしてカップリングさせた。
【0191】
上記の分取HPLCを用いて精製後、25mgのイソペプチド生成物を、98%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+337.16、計算値MH+337.27)により確認された。
【0192】
H-Gly-イソ-D-Lys(4-メトキシベンゾイル)-OH(化合物18)の合成
リジンをFmoc-D-Lys(Aloc)-OHとして、グリシンをBoc誘導体としてカップリングさせた。Aloc保護基を上記の通り除去した。該リジンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでAloc基を脱保護した。次にグリシンを、リジンのε-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-メトキシ安息香酸を、DMF中でDICを用いて、in situ生成したHOBtエステルとしてカップリングさせた。
【0193】
上記の分取HPLCを用いて精製後、35mgのイソペプチド生成物を、99%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+337.13、計算値MH+337.21)により確認された。
【0194】
H-Gly-イソ-D-Lys(4-ニトロベンゾイル)-OH(化合物19)の合成
リジンをFmoc-D-Lys(Aloc)-OHとして、グリシンをBoc誘導体としてカップリングさせた。Aloc保護基を上記の通り除去した。該リジンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでAloc基を脱保護した。次にグリシンを、リジンのε-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-ニトロ安息香酸を、THF中でDICをt用いて、in situe生成したHOBtエステルとしてカップリングさせた。
【0195】
上記の分取HPLCを用いて精製後、31mgのイソペプチド生成物を、99%超の純度で採取した。該イソペプチドの正体は、ES-MS(実測値MH+352.07、計算値MH+352.24)により確認された。
【0196】
H-イソ-Asn(NH((4-メトキシベンジル))-Ala-OH(化合物57)の合成
アラニンをFmoc-Ala-OHとして、アスパラギンをBoc-Asp-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にアスパラギン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-メトキシベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたアスパラギンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0197】
上記の分取HPLCを用いて精製後、20mgのイソペプチド生成物を、98%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+323.16、計算値MH+323.25)により確認された。
【0198】
H-イソ-Asn(NH((4-ニトロベンジル))-Ala-OH(化合物58)の合成
アラニンをFmoc-Ala-OHとして、アスパラギンをBoc-Asp-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にアスパラギン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-ニトロベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたアスパラギンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0199】
上記の分取HPLCを用いて精製後、56mgのイソペプチド生成物を、98%超の純度で採取した。該イソペプチドの正体は、ES-MS(実測値MH+338.12、計算値MH+338.22)により確認された。
【0200】
H-イソ-Asn(NH((4-メトキシベンジル))-D-Ala-OH(化合物72)の合成
アラニンをFmoc-D-Ala-OHとして、アスパラギンをBoc-Asp-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にアスパラギン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-メトキシベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたアスパラギンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0201】
上記の分取HPLCを用いて精製後、16mgのイソペプチド生成物を、99%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+323.16、計算値MH+323.24)により確認された。
【0202】
H-イソ-Asn(NH((4-ニトロベンジル))-D-Ala-OH(化合物73)の合成
アラニンをFmoc-D-Ala-OHとして、アスパラギンをBoc-Asp-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にアスパラギン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-ニトロベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたアスパラギンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0203】
上記の分取HPLCを用いて精製後、31mgのイソペプチド生成物を、99%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+338.12、計算値MH+338.22)により確認された。
【0204】
H-イソ-Gln(NH((4-メトキシベンジル))-Ala-OH(化合物101)の合成
アラニンをFmoc-Ala-OHとして、グルタミンをBoc-Glu-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にグルタミン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-メトキシベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたグルタミンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0205】
上記の分取HPLCを用いて精製後、27mgのイソペプチド生成物を、99%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+337.13、計算値MH+337.25)により確認された。
【0206】
H-イソ-Gln(NH((4-ニトロベンジル))-Ala-OH(化合物102)の合成
アラニンをFmoc-Ala-OHとして、グルタミンをBoc-Glu-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にグルタミン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-ニトロベンジルアミンを、THF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたグルタミンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0207】
上記の分取HPLCを用いて精製後、22mgのイソペプチド生成物を、98%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+352.15、計算値MH+352.2)により確認された。
【0208】
H-イソ-Gln(NH((4-メチルベンジル))-Ala-OH(化合物107)の合成
アラニンをFmoc-Ala-OHとして、グルタミンをBoc-Glu-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にグルタミン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-メチルベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたグルタミンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0209】
上記の分取HPLCを用いて精製後、イソペプチド生成物を採取し、該イソペプチドをES-MSにより確認した。
【0210】
H-イソ-Gln(NH((4-メトキシベンジル))-D-Ala-OH(化合物116)の合成
アラニンをFmoc-D-Ala-OHとして、グルタミンをBoc-Glu-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にグルタミン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-メトキシベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたグルタミンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0211】
上記の分取HPLCを用いて精製後、11mgのイソペプチド生成物を、98%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+337.13、計算値MH+337.28)により確認された。
【0212】
H-イソ-Gln(NH((4-ニトロベンジル))-D-Ala-OH(化合物117)の合成
アラニンをFmoc-D-Ala-OHとして、グルタミンをBoc-Glu-OFm誘導体としてカップリングさせた。Fmoc保護基を上記の通り除去した。アラニンを、対称無水物として固体支持体にカップリングさせ、次いでFmoc基を脱保護した。次にグルタミン酸を、側鎖カルボン酸を介してアラニンのα-アミノ基にカップリングさせた。次いでFmoc基を除去し、引き続き4-ニトロベンジルアミンを、DMF中でDICおよびHOBtを用いて、誘導化されたグルタミンのα-カルボン酸にカップリングさせた。
【0213】
上記の分取HPLCを用いて精製後、24mgのイソペプチド生成物を、96%超の純度で採取した。該イソペプチドは、ES-MS(実測値MH+352.12、計算値MH+352.22)により確認された。
【0214】
(実施例2:カルシウム誘導不整脈に対するイソペプチド類の効果)
イソペプチド類の抗不整脈効果を、Lynchら、J.Cardiovasc.Pharmacol.(1981)、3:49〜60頁のモデルに従ってカルシウム誘導不整脈のモデルで試験した。オスのNMRIマウス(25〜30グラム;Bomholdtgaard、デンマーク国LI.Skendsved)を、神経遮断と麻酔との組合せ(Hynorm(登録商標)(クエン酸フェンタニル0.315mg/mlおよびフアニゾン(fuanisone)10mg/ml)および5mg/mlミダゾラム)により麻酔にかけた。Hynorm(登録商標)およびミダゾラムの市販の溶液を、蒸留水で1:1に希釈し、Hynorm(登録商標)の1部を、希釈ミダゾラムの1部と混合した。50〜75μl/10gマウスの用量でこの溶液の皮下注射によって麻酔を誘導した。
【0215】
静脈内カニューレを、尾静脈内に挿入した。ステンレススチール製ECG電極を、右前肢および左後肢に配置することにより、リードII ECGシグナルを連続して記録した。接地電極を右後肢に設置した。Hugo Sachs電子モデル689 ECGモジュールを介してシグナルを増幅(×5,000〜10,000)し、フィルター(0.1〜150Hz)をかけた。アナログ信号を、12ビットデータ収集ボード(データ翻訳モデルDT321)を介してデジタル化し、ウィンドウズ(登録商標)NTに関するNotocord HEM 3.1ソフトウェアを用いて1000Hzでサンプリングした。10分の平衡時間後、イソペプチドの試験サンプルを、1nmol/kgの用量で尾静脈に注入し、3分後、CaCl2(30mg/ml、0.1ml/分〜100mg/kg/分、塩化カルシウム二水和物、独国Riedel-de Haen)の静脈内注入を開始した。
【0216】
ベヒクル(0.1%ウシアルブミンを有するリン酸緩衝生理食塩水)で前処理したマウスを、未処理動物おける対照レベルの目安として全ての日数にわたり試験した。全ての実験で、注入容量は100μlであった。不整脈発生までの時間遅延を、CaCl2注入の開始から伝導遮断の第1の事象(P波活性化遅延(SA遮断)または同時QRS複合(AV遮断)の無いP波を特徴とするSA伝導またはAV伝導の断続的欠損として定義される)までの時間として測定した。
【0217】
結果:
試験したペプチド化合物の応答%を下記の表2に示す。この応答は、(tarr(試験化合物)-tarr(ベヒクル))×100/tarr(ベヒクル)により求めた。
【0218】
【表2】

【0219】
結論
本発明のペプチド類は、抗不整脈効果を示した。
【0220】
定義
他に明記されない限り、以下の説明に用いられる特定の用語に対して以下の定義が提供される。
【0221】
説明および特許請求の範囲を通して、天然アミノ酸に対する3文字コードが用いられ、かつサルコシン(Sar)などの他のα-アミノ酸に対する3文字コードも一般に受け入られている。L体またはD体が明記されなかった場合、問題のアミノ酸はL体またはD体のいずれかであり得ることを解すべきである。
【0222】
イソペプチドの「機能的類縁体または誘導体または修飾体」とは、内因性のAAPまたはその機能的類縁体(例えば、AAP10またはHP5など)に十分に類似している構造的立体配座および/または結合性を有するか、あるいはギャップ結合機能を維持するか正常化する(すなわち、ギャップ結合コミュニケーションに障害がある場合は増強、あるいはギャップ結合コミュニケーションが、過剰刺激されているか制御されていない場合は抑制)1つまたは複数の有利な効果を提供するために、AAPにより結合された受容体に結合する任意の化学的実体または化合物を意味する。このような類縁体または誘導体はまた、イソペプチド担体hPepT1またはその構造的類縁体に結合できることが好ましい。本明細書および特許請求の範囲を通して用いられる用語の「イソペプチド」は、イソペプチド、あるいは上記に定義されたイソペプチドの機能的類縁体または誘導体を包含する。用語の「イソペプチドの機能的類縁体」は、ペプチド模倣物またはペプトイド類をさらに包含する。
【0223】
用語の「イソペプチド模倣物」は、イソペプチドおよび非イソペプチド性質の両方の化合物を称す。ペプチド模倣物創製の背後にある目的は、イソペプチド主鎖に代わり得る骨格を創製することである。イソペプチド類における第2級アミド結合は、不安定性、および可能性として細胞膜を通るイソペプチドの輸送不良の原因であることが想定される。適切な経路によるアミノ酸側鎖の適切な配置は、生物学的活性を達成するためにイソペプチドのペプチド模倣物における重要なデザイン戦術とみなされている。主鎖の修飾としては、還元アミド結合およびアルキル化アミド結合ならびにチオアミド結合、CH2-CH2、CH=CHなどの等配電子結合が挙げられる。用語の「ペプトイド」とは、ペプトイドの構造式と親のイソペプチドの間の位相的類似性を特徴とし得る化合物を称す。したがって、ペプトイドは、真のイソペプチド類のようにアルファ炭素上ではなくてむしろ、主鎖の窒素原子上に側鎖を有するアミノ酸イソペプチド様の鎖からなる化合物であり得る。ペプチド模倣物およびペプトイド類は、Nal、Dab、およびDapaなどの修飾された側鎖を有するアミノ酸単位を含み得るか、それらは、D-アミノ酸を含み得る。El Tayar,Nら(Amino Acids(1995)8:125-139頁)により記載されたイソペプチドおよびペプチド模倣物構造の種々の修飾は、本明細書の定義に含まれる。
【0224】
用語の「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、およびIを称し、その中でFおよびIが好ましい。
【0225】
用語の「アルキル」とは、任意の炭素原子:CnH2n+1-から水素原子の除去によるアルカン類から誘導される一価の基を称す。非分枝状アルカン類の末端炭素原子から水素原子の除去により誘導される基は、直鎖状アルキル(n-アルキル)基:H[CH2]2-のサブクラスを形成する。RCH2-基、R2CH-基(RはHと等しくない)、およびR3C-基(RはHと等しくない)は、それぞれ1級、2級および3級アルキル基である。C(1〜22)アルキルとは、1個から22個の炭素原子を有する任意のアルキル基を称し、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルおよびそれらの可能な異性体などのC(1〜6)アルキルを含む。
【0226】
語句の「低級アルキル基」とは、約6個未満の炭素原子を有する線状または分枝状アルキル、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルを意味する。
【0227】
用語の「アルケニル」とは、1個または複数の炭素-炭素二重結合を含有する直線状または分枝状または環式炭化水素基を称し、C(2〜22)アルケニルとは、1個から22個の炭素原子を有する任意のアルケニル基を称し、C(2〜6)アルケニル、ビニル、アリル、1-ブテニルなどを含む。
【0228】
用語の「アラルキル」とは、アリールC(1〜22)アルキルを称し、本明細書を通して用語の「アリール」とは、フェニルまたはナフチルを意味する。
【0229】
語句の「疎水基」とは、場合によって置換された芳香族炭素環、好ましくは、6員または12員芳香族炭素環を意味する。語句の「場合によって置換された」とは、低級アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミン基、チオール基、ヒドラジド基、アミド基、ハライド基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミン基、ニトリル基、イミン基、ニトロ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、チオール基、アルデヒド基、ケト基、カルボキシ基、エステル基、アミド基;セレノ基およびそれらのチオ誘導体を含む少なくとも1つを有する置換6員または12員の芳香族炭素環を意味する。また、「場合によって置換された」の定義の中に、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基およびセレノ基を有するか、有さないチオール誘導体が含まれる。該芳香族炭素環が置換されている実施形態において、このような置換は、典型的に約10未満の置換数、より好ましくは約1つから5つの置換数、多くの発明適用については1つまたは2つの置換数が好ましい。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、およびプロポキシが挙げられる。例示となる疎水基としては、非置換ベンジル、フェニル、およびナフチルが挙げられる。
【0230】
語句の「水素結合基」とは、(非共有)水素結合の供与体または受容体を意味する。水素結合基が供与体である実施形態において、典型的にそれは、水素原子に結合した少なくとも1個の電気的陰性原子を含む。このような電気的陰性原子の例としては、限定はしないが、窒素、酸素、ハライド(例えば、Cl、F、Brなど)および硫黄が挙げられる。例示となる水素結合の供与体としては、ヒドロキシル、アミン、チオール、ヒドラジドおよびアミドが挙げられる。第1の水素結合基が受容体である実施形態において、それは、上記のものなどの少なくとも1個の電気的陰性原子を含むことが好ましく、該原子は、非結合電子対を含む。このような対は、しばしば「孤立電子対」と称される。好ましい水素結合受容体の例としては、限定はしないが、ハライド基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミン基、ニトリル基、イミン基、ニトロ基、アルデヒド基、ケト基、カルボキシ基、エステル基、アミド基;およびそれらのセレノ誘導体が挙げられる。スルフィド、スルホキシド、スルホンおよびそれらのセレノ誘導体などのチオール水素結合受容体もまた好適であると想定される。
【0231】
用語の「細胞間コミュニケーションモジュレーター」、「ギャップ結合促進剤」、「ギャップ結合コミュニケーションを促進する化合物」および「ギャップ結合オープナー」など全ては、この作用の背後にある特定の機構に係わりなく、GJICを促進し、または維持し、または正常化する化合物を称する。より具体的には、用語の「ギャップ結合オープナー」は、細胞外空間と細胞内空間との間のギャップ結合を通過できる分子の交換を正常化する(すなわち、増加する)物質および/または増加GJICを正常化できる物質を称し得る。
【0232】
用語の「アゴニスト」とは、AAP、AAP10、HP5イソペプチド、またはそれらの機能的類縁体の標的である組織、細胞または細胞分画と相互作用でき、組織、細胞または細胞分画においてAAP、AAP10、HP5イソペプチド、またはそれらの機能的類縁体と実質的に同一の生理学的応答を引き起こすイソペプチドを称する。一態様において、該生理学的応答は、収縮、弛緩、分泌、酵素活性化などの1つまたは複数である。該イソペプチドは、組織、細胞または細胞分画に結合することが好ましい。一態様において、該イソペプチドは、AAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体に結合する組織、細胞または細胞分画上の受容体に結合する。
【0233】
本明細書に用いられる「坑不整脈性イソペプチドアゴニスト」は、AAP、AAP10、HP5イソペプチド、またはそれらの機能的類縁体の坑不整脈活性と実質的に同じか、より大きな坑不整脈活性を含むイソペプチドである。「より大きな」とは、AAP、AAP10、HP5イソペプチド、またはそれらの機能的類縁体の坑不整脈活性と比較して、より低い濃度のイソペプチドでまたはより短時間で見られる坑不整脈活性を称す。
【0234】
用語の「アンタゴニスト」とは、組織、細胞または細胞分画と、AAP、AAP10、HP5イソペプチド、またはそれらの機能的類縁体との接触後、組織、細胞または細胞分画において見られる1つまたは複数の生理学的応答を阻害するか、アンタゴナイズするイソペプチドを称す。一態様において、該生理学的応答は、収縮、弛緩、分泌、酵素活性化など、1つまたは複数である。好ましくは、イソペプチドは、組織、細胞または細胞分画に結合している。一態様において、該イソペプチドは、AAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体に結合し、および/あるいは1つまたは複数のAAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体の受容体への結合を阻害する組織、細胞または細胞分画上の受容体に結合する。
【0235】
本明細書に用いられる「正常化する」とは、応答が、正常な患者に見られるものとの違いが少なくなるような生理学的応答の変化を称す。したがって、正常化は、関係する病態に依存して、応答における増加または減少を含み得る。
【0236】
本発明によるイソペプチドの「IC50」とは、AAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体などの坑不整脈性イソペプチドにより媒介される応答または活性の50%阻害に必要なイソペプチド濃度を称す。一態様において、AAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体のアンタゴニストであるイソペプチドは、約10-6M未満、好ましくは約10-8M未満のIC50を有するイソペプチドである。
【0237】
本発明によるイソペプチドの「EC50」とは、AAP、AAP10、HP5イソペプチド、またはそれらの機能的類縁体について見られる最大効果の50%を得るのに必要なイソペプチドの血漿中濃度/AUCを称す。一態様において、AAP、AAP10、HP5、またはそれらの機能的類縁体のアゴニストであるイソペプチドは、約10-6M未満、好ましくは約10-8M未満のEC50を有するイソペプチドである。
【0238】
本明細書に用いられる「経口利用能」とは、経口投与された薬物の血流への吸収率および吸収程度を称す。
【0239】
当該出願に用いられる略字が、下記にさらに定義されている。
【0240】
【表3】

【0241】
本明細書に引用された全ての引用文献は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。
【0242】
本明細書に記載されているものの変型、修飾および他の実施は、本発明および本明細書の特許請求の範囲における精神および範囲から逸脱することなく通常の当業者に生じるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1A】式(I)のイソペプチド類を生成させるための例示的な合成スキームを示す図である。
【図1B】式(I)のイソペプチド類を生成させるための例示的な合成スキームを示す図である。
【図2A】式(II)のイソペプチド類を生成させるための例示的な合成スキームを示す常図である。
【図2B】式(II)のイソペプチド類を生成させるための例示的な合成スキームを示す常図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、aが1ならば、bは0であり;
aが0ならば、bは1であり;
xおよびyは、独立して1〜7であり;
R1はHまたはCH3であり;
R2は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンの群から選択されるアミノ酸の側鎖であり;
R3は、H、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、RO、RS、RSO、RSO2、COR、CSR、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、OCOR、およびSCOR(R=アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキルである)からなる群から選択され;
R4およびR5は、独立して疎水基である]
で表されるイソペプチド。
【請求項2】
R1がHである、請求項1に記載のイソペプチド。
【請求項3】
R2がグリシンおよびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖である、請求項1または2に記載のイソペプチド。
【請求項4】
R3がHまたはNH2である、請求項1から3のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項5】
R4およびR5が独立して芳香族炭素環を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項6】
前記芳香環が6員環または12員環またはそれらの置換形態を含む、請求項5に記載のイソペプチド。
【請求項7】
前記環が、低級アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミン基、チオール基、ヒドラジド基、アミド基、ハライド基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミン基、ニトリル基、イミン基、ニトロ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、チオール基、アルデヒド基、ケト基、カルボキシ基、エステル基、アミド基、セレノ基、チオ基およびそれらの誘導体の少なくとも1つで置換されている、請求項6に記載のイソペプチド。
【請求項8】
前記芳香環が、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基のうちの少なくとも1つで置換されている、請求項6に記載のイソペプチド。
【請求項9】
前記環がアルコキシ基およびニトロ基の少なくとも1つで置換されている、請求項6に記載のイソペプチド。
【請求項10】
前記環が約1つから5つの置換基を含む、請求項6に記載のイソペプチド。
【請求項11】
前記環が約1つから2つの置換基を含む、請求項6に記載のイソペプチド。
【請求項12】
前記芳香族炭素環が、ベンジル基、フェニル基およびナフチル基からなる群から選択される、請求項5に記載のイソペプチド。
【請求項13】
前記芳香族炭素環がベンジル基である、請求項12に記載のイソペプチド。
【請求項14】
R1がHであり;R2がアミノ酸であるグリシンまたはアラニンの側鎖であり; R3がHまたはNH2であり;R4およびR5が、ニトロ基またはメトキシ基の少なくとも1つで置換されたベンジル基を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項15】
一般式II:
【化2】

[式中、aが1ならばbはであり;
aが0ならばbは1であり;
xおよびyは、独立して1〜7であり;
zは、1〜6であり;
qは、0〜6であり;
pは、0〜1であり;
R1は、HまたはCH3であり;
R2は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖であり;
R3は、H、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、RO、RS、RSO、RSO2、COR、CSR、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、OCORおよびSCOR(R=アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキル)からなる群から選択され;
R6およびR7は、H、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオアラルキルオキシ、+S(CH3)2、SO3H、SO2R、NH2、NHR、NR2+NR3、OH、SH、COOH、COOR、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OH、NCO、NCOR、NHOH、NHNH2、NHNRH、CH2OCOR、CH2OCSR、COR、CSR、CSOR、CF3およびCCl3(Rは、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキルである)からなる群から独立して選択される]
で表されるイソペプチド。
【請求項16】
R1がHである、請求項15に記載のイソペプチド。
【請求項17】
R2がグリシンおよびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖である、請求項15または16に記載のイソペプチド。
【請求項18】
R3がHまたはNH2である、請求項15から17のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項19】
R6およびR7が、H、アルキル、ハロゲン、CN、NO2、アルコキシおよびCF3からなる群から独立して選択される、請求項15から18のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項20】
R6およびR7が、H、NO2およびアルコキシからなる群から独立して選択される、請求項19に記載のイソペプチド。
【請求項21】
R1がHであり;R2がアミノ酸であるグリシンまたはアラニンの側鎖であり;R3がHまたはNH2であり;R6およびR7が、H、NO2およびメトキシから独立して選択される、請求項15から20のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項22】
前記イソペプチドが、遊離のN-末端、遊離のC-末端、または遊離のN-末端および遊離のC-末端の両方を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項23】
前記疎水基が4位に置換基を含む6員の芳香族炭素環である、請求項1または請求項15に記載のイソペプチド。
【請求項24】
前記置換基が、メチル基、エチル基、t-ブチル基、c-ヘキシル基、フェニル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、ブトキシ基、ベンジルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基およびn-オクチルオキシ基からなる群から選択される、請求項23に記載のイソペプチド。
【請求項25】
前記置換基がアルコキシ基およびニトロ基からなる群から選択される、請求項23に記載のイソペプチド。
【請求項26】
R1がHであり、R2がグリシンまたはアラニンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖であり;R3がHまたはNH2であり;前記6員の芳香族炭素環がベンジル基であり;4位の前記置換基がニトロ基またはアルコキシ基である、請求項23に記載のイソペプチド。
【請求項27】
アルコキシ基がメトキシ基である、請求項9、20、25または26のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項28】
一般的な形:
H-第1のアミノ酸部分-第2のアミノ酸部分-OH:
[式中、
前記第1のアミノ酸部分は、グリシン、アスパラギンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸を含み;
前記第2のアミノ酸部分は、リジン、アラニンおよびサルコシンからなる群から選択されるアミノ酸を含み;
前記第1または第2のアミノ酸部分は6員芳香族炭素環を含む]
で表されるイソペプチド。
【請求項29】
前記第1のアミノ酸部分がアミノ酸であるグリシンまたはグルタミンを含み、前記第2のアミノ酸部分が、アミノ酸であるリジンまたはアラニンを含む、請求項28に記載のイソペプチド。
【請求項30】
前記第1のアミノ酸部分が芳香族炭素環を含み、前記アミノ酸がグルタミンである、請求項28または29に記載のイソペプチド。
【請求項31】
前記第2のアミノ酸部分が、アミノ酸であるアラニンを含む、請求項30に記載のイソペプチド。
【請求項32】
前記第2のアミノ酸部分が芳香族炭素環を含み、前記アミノ酸がリジンである、請求項28または29に記載のイソペプチド。
【請求項33】
前記第1のアミノ酸部分が、アミノ酸であるグリシンを含む、請求項32に記載のイソペプチド。
【請求項34】
前記芳香族炭素環がベンジル基またはベンゾイル基である、請求項28から33のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項35】
前記芳香族炭素環が、低級アルキル基、アルコキシ基、ハライド基、ニトリル基およびニトロ基の少なくとも1つにより置換されている、請求項28から34のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項36】
前記芳香族炭素環がアルコキシ基およびニトロ基の少なくとも1つにより置換されている、請求項35に記載のイソペプチド。
【請求項37】
前記芳香族炭素環は、4位が置換されている、請求項28から36のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項38】
前記イソペプチドが抗不整脈薬である、請求項1から37のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項39】
前記イソペプチドがhPepT1トランスポーターまたは生物学的に活性なその断片に結合する、請求項1から38のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項40】
前記イソペプチドが、in vitro血漿安定性アッセイにおいて約30分超の半減期を有する、請求項1から39のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項41】
前記イソペプチドが、in vitro血漿安定性アッセイにおいて約48時間超の半減期を有する、請求項1から39のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項42】
前記イソペプチドが、抗不整脈性ペプチドの作用部位である組織、細胞または細胞分画に結合する、請求項1から41のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項43】
前記イソペプチドが、組織、細胞または細胞分画の機能のモジュレーターである、請求項42に記載のイソペプチド。
【請求項44】
前記イソペプチドが、抗不整脈性ペプチドの機能をアンタゴナイズする、請求項42に記載のイソペプチド。
【請求項45】
前記イソペプチドが、抗不整脈性ペプチドの機能をアゴナイズする、請求項42に記載のイソペプチド。
【請求項46】
前記イソペプチドが、抗不整脈性ペプチドの受容体のモジュレーターである、請求項42に記載のイソペプチド。
【請求項47】
前記イソペプチドが、標準的カルシウム誘導不整脈アッセイにおいてAVブロックまでの時間を増加させる、請求項42に記載のイソペプチド。
【請求項48】
前記イソペプチドが、表1に示されたイソペプチドからなる群から選択される、請求項1から47のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項49】
前記イソペプチドが、表2に示されたイソペプチドからなる群から選択される、請求項1から48のいずれか一項に記載のイソペプチド。
【請求項50】
請求項1から49のいずれか一項に記載のイソペプチドの有効量を、細胞集団に投与し、それによって細胞間のギャップ結合コミュニケーションをモジュレートすることを含む、細胞集団におけるギャップ結合コミュニケーションをモジュレートする方法。
【請求項51】
前記イソペプチドが請求項49に記載されたものである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記投与がin vivoで実施される、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1から49のいずれか一項に記載のイソペプチドの治療有効量を、ギャップ結合コミュニケーション障害に関連した病態の予防および/または治療を必要とする個体に投与することを含む、ギャップ結合コミュニケーション障害に関連した病態を予防および/または治療する方法。
【請求項54】
前記イソペプチドが請求項48に記載されたものである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記投与が非経口である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記投与が経口である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記個体がヒトである、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記病態が、心血管疾患、気道上皮の炎症、肺胞組織の障害、膀胱失調、聴力障害、内皮傷害、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、CNS、すなわち中枢神経系の虚血、脊髄、脳、脳幹、脊髄の虚血、歯組織障害、腎臓疾患、骨髄移植の失敗、創傷、勃起不全、神経障害性痛、亜慢性および慢性炎症、癌、移植の失敗;過剰の活性酸素種および/またはフリーラジカルおよび/または一酸化窒素によって生じる状態からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
請求項1から49のいずれか一項に記載のイソペプチドの治療有効量を、ギャップ結合コミュニケーション障害を含む病態の予防および/または治療を必要とする個体に投与することを含むギャップ結合コミュニケーション障害に関連した病態の予防用および/または治療用医薬品を製造するための、請求項1から49のいずれか一項に記載のイソペプチドの使用。
【請求項60】
前記イソペプチドが請求項49に記載されたものである、請求項59に記載の使用。
【請求項61】
前記投与が非経口である、請求項59に記載の使用。
【請求項62】
前記投与が経口である、請求項59に記載の使用。
【請求項63】
前記個体がヒトである、請求項59に記載の使用。
【請求項64】
前記病態が、心血管疾患、気道上皮の炎症、肺胞組織の障害、膀胱失調、聴力障害、内皮傷害、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、CNS、すなわち中枢神経系の虚血、脊髄、脳、脳幹、脊髄の虚血、歯組織障害、腎臓疾患、骨髄移植の失敗、創傷、勃起不全、神経障害性痛、亜慢性および慢性炎症、癌、移植の失敗;過剰の活性酸素種および/またはフリーラジカルおよび/または一酸化窒素によって生じる状態からなる群から選択される、請求項59に記載の使用。
【請求項65】
請求項1から49のいずれか一項に記載のイソペプチドおよび製薬用担体を含む製薬組成物。
【請求項66】
前記組成物が非経口投与可能である、請求項65に記載の製薬組成物。
【請求項67】
前記組成物が経口投与可能である、請求項65に記載の製薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2007−522105(P2007−522105A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546320(P2006−546320)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005416
【国際公開番号】WO2005/061437
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(500030987)ワイス (2)
【Fターム(参考)】