説明

イソマルトの圧縮方法

本発明は、好ましくは250μm以下である体積平均径を有するイソマルトを含有する圧縮製品の改善された製造方法に関する。該方法は、凝集化に基づいており、そしてその凝集物の体積平均径を、製品を圧縮する前に210μm未満に低減させる。許容可能な硬さのかみ砕き可能なタブレットが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブレット化するのに適した組成を含有するイソマルトの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
無糖(ノンシュガー)及び/又は低カロリー製品の使用における現在の関心に伴い、医療用、菓子製造用又は食品用に適用されるタブレットは、ほとんど、糖アルコール、例えば、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール及びエリトリトールを用いて製造されている。
【0003】
このタブレットは、薬物又は試薬だけを含むばかりでなく、乳糖又はリン酸塩のような賦活剤;タルク、ステアリン酸又はパラフィンのような平滑剤、及びカルボキシメチルセルロース又はでんぷんのような崩壊剤として作用するその他の成分も含む。菓子製造目的に関しては、このタブレット類はしばしば芳香剤及び着色剤を低濃度で含む。
【0004】
米国特許第6,224,904号明細書(特許文献1)は、1−グルコピラノジル−ソルビトールを含むか又は1−グルコピラノジル−ソルビトール、6−グルコピラノジル−ソルビトール及び1−グルコピラノジル−マンニトールからなる甘味剤の混合物を含む、圧縮された調合物に関する。増加された1−グルコピラノジル−マンニトールを有する混合物は、かみ砕き可能なタブレット(chewable tablet、チュアブルタブレット)の製造に使用される。
【0005】
米国特許第6,849,286号明細書(特許文献2)は、改善された圧縮製品の製造方法に関し、該方法においては、成分の凝集化が誘発される。この発明は、第一の手順工程によれば、抽出物、すなわち、イソマルツロース、イソマルト及び/又は6−グルコピラノジル−ソルビトールと1−グルコピラノジル−マンニトールとを含有する混合物、が乾燥されながら粉砕され、そしてその顆粒物は100μmの最大寸法を有する方法を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,224,904号明細書
【特許文献2】米国特許第6,849,286号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タブレット中で賦活剤として使用できるイソマルトを含有する圧縮製品の改善された製造方法を有することへの更なる関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、6−グルコピラノジル−ソルビトールが43〜57重量%存在し、そして1−グルコピラノジル−マンニトールが57〜43重量%存在する乾燥イソマルトの圧縮製品を製造する方法であって、該方法は、次の、
a) 250μm以上の体積平均径を有する前記イソマルトを液体バインダーで凝集化する工程、
b) それと同時に、又はその後に、前記凝集物を乾燥する工程、
c) 前記凝集物の体積平均径を180μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは110μm以下に低減させる工程、
d) 前記低減された体積平均径を有する凝集物を圧縮製品に圧縮する工程、
を含む、上記の方法に関する。
【0009】
本発明において、液体バインダーは水、液体ソルビトール、マルトデキストリン及び水、及び/又はそれらの混合物であり、凝集化には、流動床が適用される。
【0010】
本発明は、6−グルコピラノジル−ソルビトールが43〜57重量%存在し、そして1−グルコピラノジル−マンニトールが57〜43重量%存在する乾燥イソマルトの圧縮製品を製造する方法であって、該方法は、次の、
e) 250μm以上の体積平均径を有する前記イソマルトを液体バインダーで凝集化する工程、
f) それと同時に、又はその後に、前記凝集物を乾燥する工程、
g) 前記凝集物の体積平均径を180μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは110μm以下に低減させる工程、
h) 前記低減された体積平均径を有する凝集物を圧縮製品に圧縮する工程、
を含む、上記の方法に関する。
【0011】
イソマルト(isomalt)は、6−グルコピラノジル−ソルビトール(6−GPS)と1−グルコピラノジル−マンニトール(1−GPM)とのほぼ等モル混合物に属すると理解され、そして、その重量百分率は、6−GPSの43〜57%乃至1−GPMの57%〜43%の間で可変である。イソマルトは、少量のその他の物質、例えば、マンニトール、ソルビトール、水素添加された又は水素添加されていないオリゴ糖類並びに任意のグルコース、フルクトース及び/又はショ糖、トレハロース、イソマルツロース又はイソマルトースを更に含むことができる。
【0012】
凝集化工程に使用されるイソマルトは、250μm以上、好ましくは300μm以上、より好ましくは400μm以上の体積平均径を有する。好ましくは、その体積平均径は、1000μmより大きくない。150μm以上のように、ずっと小さい体積平均径を有するイソマルトから出発する場合でさえも、本発明の方法では、凝集物の体積平均径を110μm以下、好ましくは90μm以下の体積平均径に低減する必要が依然としてある。
【0013】
液体バインダーを添加する間、生成物は凝集化され、そしてこの凝集物は、凝集化の間、又はその後に乾燥することができる。
【0014】
凝集化(造粒)法は、二つの基本的なタイプ、すなわち、プロセス中で液体を使用する湿潤法と、液体を使用しない乾燥法とに分類することができる。湿式造粒がほとんどの場合で使用され、これは、次のように多くの工程を含む。
造粒流体の存在下で、低せん断混合機又は高せん断混合機、又は流動床を用いての撹拌下で活性成分及び賦活剤の、乾燥一次粒子を凝集化(造粒)する工程、より大きな塊を取り除くために湿式ふるい分け(ウェットスクリーニング)する工程、造粒された生成物を乾燥させる工程、及び乾燥された造粒生成物を粉砕するか又はふるい分け(スクリーニング)して所望の粒度分布を有する造粒製品を得る工程。得られた造粒製品は続いてタブレット化される。
【0015】
驚くべきことに、250μm以上の体積平均径を有するイソマルトは、凝集物への凝集化に直接使用できることが見出された。粉砕工程が不要である。
【0016】
ほぼ均一な寸法の粒子を得るために、乾燥された凝集物の体積平均径は、210μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下、特に好ましくは110μm以下、最も好ましくは90μm未満の体積にまで低減される。体積平均径は、レーザー技術によって測定される。凝集物の体積平均径を、210μm以下の体積平均径に低減するのにいずれかの方法が適用可能である。本発明の方法の工程c)において形成された顆粒物(凝集物)は、所定寸法のふるいを介して押しつけられる。このふるい分けには、好ましくは、ふるい分け機、より好ましくは振動ふるい分け機が適用される。同時に、又はその後に、生成物は乾燥される。
【0017】
顆粒物を乾燥するのに、いずれかの乾燥機タイプが適用できるが、好ましくは流動床がこの目的に適用される。これらの均一なサイズの粒子は、圧縮製品を得るために典型的なタブレット化装置で圧縮される。
【0018】
本発明は、液体バインダーが水、液体ソルビトール、マルトデキストリン及び水、及び/又はそれらの混合物である方法に関する。
【0019】
その液体バインダーは、イソマルトの乾燥物に基づいて2〜25%の量で添加される。液体バインダーが水である場合には常に、その水は、イソマルトの乾燥物に基づいて2〜10%、好ましくは4〜8%の量で添加される。液体バインダーはまた、少なくとも50%、好ましくは60%、より好ましくは少なくとも70%の濃度で乾燥物中に適用される液体ソルビトールであることもできる。液体バインダー(=液体ソルビトールの全量)は、イソマルトの乾燥物に基づいて2%〜10%、好ましくは4〜7%の量で添加される。
【0020】
マルトデキストリンは乾燥形態で添加することができ、そして造粒の間に水が添加される。あるいはまた、マルトデキストリンと水とが、液体バインダーとして使用される。マルトデキストリンは、食品添加物として使用される多糖類である。これは、でんぷんから生成された加水分解物であり、様々な長さの鎖につながったD−グルコース単位からなる。グルコース単位は、α(1→4)結合で連結している。マルトデキストリンは、典型的には、3個乃至19個のグルコース単位長から変化する鎖の混合物からなる。マルトデキストリンは、DE(デキストロース当量)によって分類され、20以下、大抵は5〜20のDEを有する。液体バインダー(=マルトデキストリン及び水)の全量は、イソマルトの乾燥物に基づいて、15〜25%、好ましくは17%〜23%である。マルトデキストリン及び水からなる液体バインダーは、その液体バインダーの全重量に基づいて、15%〜20%、好ましくは約18%の量でマルトデキストリンを含有している。
【0021】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、凝集化に流動床が適用される。乾燥は、流動床において同様に行うことができ、その際、床は室温より高い温度に加熱される。
【0022】
イソマルト、又は平滑剤のような補助物質以外の添加剤は、乾燥工程及び圧縮行程の間に、及び体積平均径を低減する工程の前/後に添加される。イソマルト以外の添加剤は、風味を保つために、又は味及び外観を強化するために添加することができる。そのような物質には、甘味料、調味料、味付け料(taste substances)及び着色料、食品適合酸(food−compatible acid)、崩壊剤、単糖類、二糖類、単糖アルコール類、イソマールとは異なる二糖アルコール類、でんぷん、でんぷん誘導体、ペクチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、セルロース誘導体、高甘味度甘味料、ステアリン酸又はそれらの塩、又はイヌリンが包含され得る。好ましくは、タブレット調合物中の平滑剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、及び/又はタルク等を必要に応じて添加することができる。更に、ラウリル硫酸ナトリウム、プロピレングリコール、ドデカンスルホン酸ナトリウム、オレインスルホン酸ナトリウム(sodium oleate sulfonate)、及びステアリン酸塩及びタルクと混合されたラウリン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等のような界面活性剤を必要に応じて添加することができる。イソマルト又は補助物質以外のこれらの添加剤は、同様に、凝集化工程の間に折々添加することができる。
【0023】
圧縮製品(タブレット、錠剤)が医薬用途のために製造される場合、必要であれば、イソマルト及び賦活剤、平滑剤又は崩壊剤は異なる活性成分が添加される。そのような活性成分はイソマルトとは異なるものであり、調合薬又は化粧料、洗剤、肥料又は農薬製品中の生物学的に活性な物質であることができる。好ましくは、その活性成分は凝集化の間に添加される。
【0024】
“タブレット”という用語は、ここで使用される際、いずれの形態、形状の、そしていずれの物理的特性、化学的特性又は感覚特性のいずれかのタブレット、及びいずれの投与経路、適応症、及び適用法のためのタブレットも含む。本発明に従って製造されたタブレットは、かみ砕き可能なタブレット(チュアブルタブレット)である。本発明のチュアブルタブレットは、かみ砕くことによって、タブレット粒子を破壊し、そして嚥下される前に、活性成分、調味料、香料等が口中に放出されるのを助ける、軟らかいタブレットである。チュアブルタブレットは、口中で機械的に崩壊されるように設計される。チュアブルタブレットの投与形態は、柔軟な丸薬(soft pill)、タブレット、ガム及び最近では“チューイースクエア(chewy squares、かみ応えのある四角いもの)”であることができる。タブレットの硬度は、(複数の)活性成分を含み、そして設計可能なかみ砕き可能特性を有するチュアブルタブレットにとっては非常に重要な特性である。
【0025】
本発明の方法に従って得られた圧縮製品(タブレット)は、1cmの面積、11.3mmの径、そして350mgの重量を有するタブレットの場合、10〜20kNの圧縮力において120〜300Nの硬度、好ましくは125〜280Nの硬度、より好ましくは130〜270Nの硬度を示す。
【0026】
上述のタブレットは、食品用途、飼料、医薬用途、化粧料、洗剤、肥料又は農薬製品に適用することができる。事実、制限されることなく、本発明の圧縮製品は、食品製品、動物飼料、健康食品、栄養食製品、動物医薬中に、入浴剤と共に、農薬製品中に、肥料と共に、植物性顆粒剤(plant granules)と共に、植物種子又は種子粒子中に、及びヒト及び/又は動物によって摂取されるその他の製品のいずれか、又は本発明の圧縮製品の改善された特性の貢献を受け得るその他の製品のいずれか中で使用することができる。本発明の圧縮製品は、酵素又は微生物、洗浄剤タブレット、ビタミン類、調味料、香水、酸、イソマルトとは異なる甘味料、又は医薬用途又は非医薬用途での様々な活性成分をベースとする添加剤のための担体として使用することができる。結局、イソマルトとは異なる添加剤の混合物が適用できる。
【0027】
タブレットが、一般に、約99%(w/w)までのイソマルトを含む食品(砂糖菓子)用途のために製造される場合、香料、着色剤、調味料及び平滑剤が添加される。
【0028】
以下に、本発明を次の例の形態で示す。
【実施例】
【0029】
顆粒物及びタブレットの特性の評価方法
顆粒は、それらの体積平均径(サイズ分布)によって特徴付けられた。
以下の測定方法が採用された。
【0030】
サイズ分布
サイズ分布は、欧州薬局方VI 試験法2.9.31に従い、レーザー光粒度測定装置、タイプHelos KF - Rodos T4.1(Sympatec GmbH(ドイツ国))を用いて測定した。粒度は、レーザー光回折によって分析した。
【0031】
タブレットは、それらの硬度によって特徴付けられた。それぞれの圧縮力に対して、10個のタブレットを硬度について分析し、そして平均値を算出した。以下の測定方法を採用した。
【0032】
硬度
硬度、すなわち、径方向での破砕力は、欧州薬局方VI 試験法2.9.8のタブレットの破砕に対する抵抗性に従い、従来の医薬用硬度試験器(硬度試験器モデルMulticheck V(Erweka GmbH(ドイツ国)から入手可能)を用いて測定した。異なるサイズのタブレットにわたる値を比較するために、破壊力を、破壊の面積について標準化した。標準値は、N/mmで表され、ここでは引張り強度(Ts)と称し、そして次のように算出される。
Ts = 2H/pTD
(式中、Hはタブレットの硬度、Tは厚さ、そしてDは径である。)
【0033】
各圧縮力に対して、10個のタブレットを硬度(H)、厚さ(T)及び径(D)について分析した。
【0034】
例1
流動床(Aeromatic−Fielder GEA - Strea−1)の床を、300g(Cargill C*PharmIsoMaltidex(商標) new grade 2009(386μmの体積平均径を有する))で充填し、そして25gの水を、1Bar、2.8g/分、床温度60℃で粉末上に噴霧した。
【0035】
顆粒の乾燥は、同じ装置により、追加の60分間50℃で行った。
【0036】
乾燥した顆粒を、造粒器(Erweka (FGS + AR400E))において、0.125mm〜0.250mmのふるいを介して、10〜15分間、1分当たり100往復(turns)で、ふるいにかけた。顆粒の体積平均径は78μmであった。
【0037】
乾燥したふるい分けされた顆粒を、その後に、28rpmのPharmatech Equipmentにおいて1%のステアリン酸マグネシウムと混ぜ合わせた。
【0038】
例2
例1で得られた造粒製品を、今度は、タブレット成形機(Korsch − PH100)において、5kNから30kNまで変化する圧縮力でタブレット化した。
【0039】
タブレットは、1cmの面積を有しており、そのタブレットの径は11.3mmであり、そして重量は350mgであった。
【0040】
そのようにして得られたタブレットを次のように分析した。
【0041】
【表1】

【0042】
例3
例1及び例2を繰り返したが、イソマルト(Cargill C*PharmIsoMaltidex(商標) new grade 2009)を使用する代わりに、イソマルト(C*IsoMaltidex 16506(Cargillより))を適用した。実験の処方、手順、並びに結果は、例1及び例2で示したのと全く同じであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−グルコピラノジル−ソルビトールが43〜57重量%存在し、そして1−グルコピラノジル−マンニトールが57〜43重量%存在する乾燥イソマルトの圧縮製品を製造する方法であって、該方法は、次の、
a) 250μm以上の体積平均径を有する前記イソマルトを液体バインダーで凝集化する工程、
b) それと同時に、又はその後に、前記凝集物を乾燥する工程、
c) 前記凝集物の体積平均径を180μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは110μm以下に低減させる工程、
d) 前記低減された体積平均径を有する凝集物を圧縮製品に圧縮する工程、
を含む、上記の方法。
【請求項2】
前記液体バインダーが水、液体ソルビトール、マルトデキストリン及び水、及び/又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体バインダーが、前記イソマルトの乾燥物に基づいて2〜25%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記凝集物が流動床に適用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記イソマルトとは異なる活性成分が工程a)において添加されることを特徴とする,請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記工程c)と工程d)との間で、イソマルトとは異なる添加剤及び/又は調味料が添加されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。

【公表番号】特表2013−502384(P2013−502384A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525054(P2012−525054)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004224
【国際公開番号】WO2011/020527
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】