説明

イチョウ葉エキスナノ微粒子による脳細胞活性効果を有する組成物

【課題】 ギンコール酸を含まず、従来のイチョウ葉エキスの有効成分を含み、脳細胞の活性化に顕著な効果を上げるイチョウ葉エキスを提供すること。
【解決手段】 ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した、脳機能活性化効果を有する組成物。イチョウ葉エキス粉末を乾式法と湿式法を組み合わせて砕いていくブレイクダウン法により製造したギンコ−ル酸を含有しないイチョウ葉エキスである。ナノ微粒子が100nm以下の微粒子である。上記組成物が、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。上記健康飲食品が、脳機能活性化効果により症状が予防または改善される脳循環代謝異常の疾患者用飲食品である。上記医薬品・医薬部外品がヒト用または動物用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチョウ葉エキスナノ微粒子による脳細胞活性効果を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イチョウ葉エキスは、イチョウ葉をアルコールで抽出して、多孔性樹脂吸着にて濃縮して、高温で乾燥させた後に粉体にして得られる。イチョウ葉から得られる抽出物には、血管壁に直接作用し、もろくなった血管を修復し、硬化した血管に弾力を持たせる作用、粘ちょう性の血液をサラサラにして末梢血管の抵抗を減少させる作用、免疫機能を高める作用、血小板活性因子抑制作用等の薬理作用のある有効成分を含有することが知られている。特に、フランスやドイツなどでは、脳循環代謝の改善を目的とした治療薬として広く使用されてきた。また、一部にイチョウエキスを含むと称する健康食品も市販されており食品としても利用されている。さらにイチョウエキスを含む皮膚剤は皮膚の末梢の循環を正常化し、促進し、美容上顕著な効果を上げることが認められている。イチョウ葉中の有用成分についてもそれらの作用の解明が進んでおり。例えばサリチル酸誘導体の抗ストレス潰瘍作用 (特許文献1)、イチョウ葉に固有のフラボン配糖体の血圧降下作用 (非特許文献1)、ギンコライド類の血小板活性化因子阻害作用等の報告がある。
【0003】
しかし、一方ではイチョウ葉成分にはアレルギーを引き起こす疎水性のサリチル酸誘導体の一種である銀杏酸や褐変性を有する水溶性のポリフェノール化合物(プロアントシアニジン)が含まれている。そのため、イチョウ葉の抽出物を医薬品、食品、化粧品素材として利用するには、その除去が必須となる。イチョウ葉の有効成分を含有するエキスの製法は、一般に知られているが、いずれもサリチル酸誘導体及びポリフェノール化合物を除去しフラボン配糖体及びテルペンラクトン類等の有効成分の含量を上げるために、低沸点で除去し難く、毒性も高い溶剤を使用している。これら毒性の高い有機溶剤を使用する欠点を回避するための製法として、水性アルコール抽出液を非極性多孔性樹脂により精製する方法が開示されている(特許文献2,3)。この方法によれば、食品製造に適したエタノールのみを使用してイチョウ葉エキスを得る方法であるが、精製に非極性多孔性樹脂を使用しているため、その再生及び溶媒回収に多大なエネルギーを必要とする欠点を有する。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−215629号公報
【特許文献2】特開平3−275629号公報
【特許文献3】特開平4−182434号公報
【非特許文献1】日本薬学会第107年会講演要旨集P345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の市販のイチョウ葉エキス粉末はイチョウ酸が存在するので、アレルギーを起こす原因となる。
また、植物細胞壁を破壊してないから、有効成分をいっぱい出せない。
物理粉砕法で有機物質を粉砕してもナノレベルの粒子になることができず、顆粒が大きいことにより、
・血液脳関門を通過することができない。
・脳細胞に入ることができない。
・海馬まで届かない。
等の原因があるため、脳細胞の活性化に顕著な効果を上げることができない。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決した、接触皮膚炎などを引き起こす原因となる感作性物質であるギンコール酸を含まず、かつ従来のイチョウ葉エキスの有効成分を含み、かつ、脳細胞の活性化に顕著な効果を上げる機能性ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(7)の脳機能活性化効果を有する組成物を要旨とする。
(1)ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した、脳機能活性化効果を有する組成物。
(2)イチョウ葉エキス粉末を乾式法と湿式法を組み合わせて砕いていくブレイクダウン法により製造したギンコ−ル酸を含有しないイチョウ葉エキスである(1)の脳機能活性化効果を有する組成物。
(3)ナノ微粒子が100nm以下の微粒子である(1)または(2)の脳機能活性化効果を有する組成物。
(4)上記組成物が、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである請(1)、(2)または(3)の脳機能活性化効果を有する組成物。
(5)上記健康飲食品が、脳機能活性化効果により症状が予防または改善される脳循環代謝異常の疾患者用飲食品である(4)の脳機能活性化効果を有する組成物。
(6)上記医薬品・医薬部外品がヒト用または動物用である(4)の脳機能活性化効果を有する組成物。
(7)脳機能活性化効果により症状が予防または改善される脳循環代謝異常の疾患が、老人性の痴呆症、脳梗塞・脳卒中、抹梢血管血行障害等の脳循環代謝異常の疾患である(1)ないし(6)のいずれかの脳機能活性化効果を有する組成物。
【発明の効果】
【0008】
従来の加工法で加工した粉末は、第一の課題として、イチョウ酸は存在するのでアレルギーを起こすこと。第二の課題は、植物細胞壁を破壊することができないから、有効成分をいっぱい出せない。第三の課題として、粒子が大きいので、血液脳関門を通過することができない。本発明は、気相粉砕法と液相粉砕法の二重法でイチョウ葉エキス粉末を加工すると、(1)アレルギーを起こすイチョウ酸がなくなる。(2)植物細胞壁を破壊する。(3)ナノレベルの微粒子になることを分かった。
また、この新規イチョウ葉エキス粉末で動物実験をすると、大脳皮質シナプスからのアセチルコリン放出活性が高まること、海馬錐体細胞の刺激応答性が改善すること、肝臓・腎臓ではDNA酸化傷害物が低下する傾向が認められた。また、肝臓のSMP30蛋白質量が増加したことがわかった。
【0009】
ナノ粒子尺度変化により、ナノイチョウ葉エキス粒子は血液の中を自由流動し、血液脳関門にも通過が可能で、直接脳細胞や脳神経に刺激することができると考えられる。
【0010】
ナノ粒子表面効果反応により、ナノイチョウ葉エキス粒子表面原子数は増加した。表面原子配位数が不足になると高い表面能力を出し、脳細胞のある部分と結合すると高い化学活性を持つため、脳細胞が活性化されることが考えられる。
【0011】
本発明により、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスの新規用途(脳細胞が活性化の用途)を提供することができる。
本発明の脳細胞が活性化効果を有する組成物は、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスの脳細胞が活性化効果に基づき、人々に投与することにより、容易に脳細胞の活性化をすることができ、これらの脳循環代謝異常が主たる原因と考えられる疾病の治療や体力・食欲減退の改善に有用である。脳循環代謝異常は人間のみならず、家畜及び飼育動物、特に、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、鳥及び魚にも関連する。本発明の脳機能活性化組成物は、それらの動物における脳循環代謝異常の予防または治療に有用である。
【0012】
本発明により、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料の形態で飲食、あるいは経口投与するだけで、脳機能活性化効果により症状が予防または改善される組成物を提供することができる。
例えば食品の場合、本発明は、普通に食する食事にナノ微粒子のイチョウ葉エキスを混ぜて食事をするだけで脳機能活性化効果を有する組成物およびヒトおよび動物における方法の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[ナノ微粒子]
ナノパーティクルは狭義にはシングルナノ(1nm以上10nm未満)から100nm程度までとされる場合が多いが、広義にはnm領域(1nm以上1μm未満)とサブナノの領域の粒子を全体的に含めてナノパーティクルと呼ばれることがある。本発明においては狭義より少し広い範囲で考え、数100nm以下、好ましくは100nm以下のナノパーティクルをナノ微粒子という。実施例で用いたものは平均30nmのナノ微粒子および平均100nmのナノ微粒子〔いずれも透過型電子顕微鏡(日立H-9000型)による実験のプロトコールによって測定した結果〕である。
【0014】
[ナノ微粒子の製造法]
イチョウ葉エキス粉末を乾式法と湿式法を組み合わせて砕いていくブレイクダウン法によりナノ微粒子を製造する。乾式の超微粉砕には衝撃摩砕式の高速回転型粉砕機やジェットミル、ボールミル、圧縮せん断型ミル(オングミル)やローラミルなどと分級機の組み合わせなどを用いる。湿式法では乾式粉砕にみられるような付着凝集による粉体相の形成を抑えて、微細化の傷害となるクッション効果の低減を図り、乾式法よりもさらに細かい粉砕が可能となっている。イチョウ葉エキス粉末を二重粉砕法(気相粉砕法と液相粉砕法)で植物細胞壁を破裂し、最後30nm(ナノメータ)の微粒子になることが最良の形態と考えられる。
【0015】
本発明は、天利合作工場製の気相・液相二組複合粉砕器で、イチョウ葉エキス粉末が乾式法と湿式法を組み合わせて砕いていくブレイクダウン法により(図1工程図参照)、平均30nm(ナノメータ)の微粒子になる(図2参照)、ナノテクノロジー加工法を利用したイチョウ葉エキス製造法である。上記した従来例の課題を解決する具体的手段として、イチョウ葉エキス粉末を、二重粉砕法、すなわち乾式法(気相粉砕法)と湿式法(液相粉砕法)により特別な射流装置内に入れ、超音速(例、340MPa)、高速回転(例、15,000回転)、加熱70〜80℃、圧力(例、250MPa)、流量(例、20kg/h)を調節しながら、粉末の顆粒を装置内で激しく衝突させ、圧縮と切断の力により粉砕が進み、次第に顆粒が30nm(ナノメータ)の微粒子になるという新たな結果が生まれた。
【0016】
[イチョウ葉エキスの機能性ナノ微粒子]
ナノテクノロジーで加工したイチョウ葉エキスは、生物利用率が高くなるという以下のような特徴がある。イチョウ葉エキスのナノ微粒子は、同じ物質でありながらイチョウ葉エキス粉末とは大きく異なった反応性や溶解性などの種々の特異な性質を持っている。イチョウ葉エキスのナノ微粒子は微細化によりその反応性が飛躍的に増大することが大きな特徴の一つである。このような微細化によって反応性が高まる理由は、比表面積と粒子活性度の増大に起因している。粉粒体の比表面積は、概ね粒径に反比例する。例えば、1cm立方の角砂糖を、1μmの立方体の粒子に分割すると個数は1兆倍に、表面積は1万倍になる。また、粒径が10nmの粒子は、1μmの粒子に比べてさらに100倍比表面積が大きい。粒子の反応、溶解、結合、融合などは粒子界面で生じるので、これらの効果は粒子の比表面積に直接比例して増大する。一方、粒子が微細化する程、粒子表面にある、相互の結合力が弱く、反応しやすい原子の割合が増大するために、粒子の粒子活性度が増大する。イチョウ葉エキスのナノ微粒子は顆粒が小さくなるのでその数が多くなり、総合の顆粒表面積は大きくなり、顆粒は激しい活性を持つようになる。また、イチョウ葉エキスのナノ微粒子は直径が小さく分割されていることにより、体内の分布が増加し、生物利用度は高くなる。
【0017】
ナノテクノロジー加工法で加工したイチョウ葉エキス粉末は植物細胞壁は破裂し〔走査型電子顕微鏡(日立S-3600N型)写真である図3参照〕、最も多く有効成分が放出される。
【0018】
新たな発見として、ナノテクノロジーで加工後、イチョウ葉エキスの形態(顆粒サイズ)が変化していた。そのサイズの効果により、速やかに粒子が入り込み、イチョウ葉エキスの吸収を高めることができると期待される。CQRS-2型量子共振分析測定器で測定すると、表1に示されるように、顆粒サイズが極めて小さくなったことから、人の血管、血液、心臓筋肉に対する効果が大きくなっていることが証明できる。
【0019】
【表1】

【0020】
ギンコール酸はイチョウの実「ギンナン」の採取中に接触皮膚炎などを引き起こす原因となる感作性物質であり、イチョウ葉にも1.0%前後含まれ、通常は抽出精製によりギンコール酸などのアルキルフェノールを除去する。本発明によると、ナノテクノロジーで加工すると、“ギンコール酸は検出せず”という驚異的な結果が出た。
試験方法1:健康補助食品規格基準の方法による。
試験方法2:食品衛生検査指針(微生物編)による。
結果を表2に示す。
【0021】
【表2】

財団法人食品環境検査協会 試験成績証明書による。
【0022】
実施例に示すように、本発明により、ナノテクノロジー加工イチョウ葉エキスの実験解析データから、イチョウ葉エキス標品G1(平均30nm)をラットに投与によって大脳皮質シナプスからのアセチルコリン放出活性が高まること、イチョウ葉エキス標品G3(平均100nm)をラットに投与によって海馬錐体細胞の刺激応答が改善することが明らかになった。
【0023】
本発明の脳循環代謝の改善効果を有する組成物は、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。特に上記組成物が、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した、脳循環代謝の改善効果により症状が改善される、あるいは発病が予防される疾患である脳循環代謝異常の予防および治療に用いることができる食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。
【0024】
優れた脳循環代謝の効果を、医薬品としてだけではなく、脳循環代謝の効果を謳った食品の開発が可能となった。
例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼き肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなど各種調味料への甘味、呈味、および/または品質改良のための食品添加剤として有利に利用できる。
また、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンデーなどの各種洋菓子、アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓子、果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのペースト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓などの果実、野菜の加工食品類、パン類、麺類、米飯類、人造肉などの穀類加工食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬などの漬物類、たくあん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素類、ハム、ソーセージなどの畜産製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、天ぷらなどの魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、ふぐのみりん干しなどの各種珍味類、のり、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類、煮豆、ポテトサラダ、コンブ巻などの惣菜食品、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜の瓶詰め、缶詰類、合成酒、果実酒、洋酒、リキュールなどの酒類、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックスなどのプレミックス粉類、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープなど即席飲食品などの各種飲食物への品質改良などのための食品添加剤などとして有利に利用できる。
【0025】
ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した組成物は、小麦粉やデンプンを用いて作るラーメン、ヌードル類、うどん、またジャガイモを主原料として作るマッシュポテトやサラダ、コロッケなど甘味をあまり要求しない食品に利用できる。これらの食品の炭水化物量(糖質量)に対し、一例として50kgの成人につきナノ微粒子のイチョウ葉エキスを240mg以下/一日を目安に、混合することにより苦い味が感じなくなり、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスの脳循環代謝の改善効果に基づき、脳循環代謝の改善作用を有する食品となる。また、主原料として、小麦粉、デンプンや米粉を用いて作られ、甘味を余り要求しない菓子類やパン類にも同じ目的で利用できる。このように本発明のナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した、組成物は、使用量の範囲の幅が非常に広いものであることがわかる。
【0026】
本発明の脳循環代謝の改善効果を有する食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものは、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスが組成物中に0.01〜50重量%含まれるように配合されている組成物であることを特徴とする。配合割合について、通常飲食品には下限に近い配合割合で用いることができるが、医薬品、錠剤やカプセルに入れて用いるような場合は上限に近い配合割合で用いることができる。本発明の組成物、例えば飲食品が摂取されたとき、脳循環代謝の改善効果により症状が改善される、あるいは発病が予防される疾患「脳循環代謝異常」を予防および治療することができる。
本発明の食品が機能性食品である場合は、脳循環代謝異常を予防する健康食品の分野の利用に適している。健康食品においては、必須成分であるナノ微粒子のイチョウ葉エキスの他に、任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。食品は液状または固形の任意の形態で食することができる。ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤として食することができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D-ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜でつくられる。
【0027】
本発明の飼料は、家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、魚などの飼育動物のための飼料であって、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスが組成物中に0.01〜50重量%含まれるように配合されている組成物であることを特徴とする。配合割合について、通常は下限に近い配合割合で用いることができるが、錠剤やカプセルに入れて用いるような場合は上限に近い配合割合で用いることができる。
このような飼料を家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、魚などの飼育動物のための飼料動物に投与した場合、脳循環代謝の改善効果により症状が改善される、あるいは発病が予防される疾患「脳循環代謝異常」を予防および治療することができる。
【0028】
以上述べたような食品添加物、食品素材、飲食品、医薬品、医薬部外品、および飼料にナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した組成物の形態で含有せしめる方法は、その製品が完成するまでの工程でナノ微粒子のイチョウ葉エキスを0.01〜50重量%含まれるようにすればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶析、固化などの公知の方法が適宜選ばれる。
【0029】
本発明のナノ微粒子のイチョウ葉エキスは、組成物中に0. 01〜50重量%含まれるように配合されている。好ましくは0. 05〜30重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。特に食品、飲料または飼料における配合量は特に制限されないが0. 01〜5重量%程度が好ましい。組成物中において、0. 01重量%未満だと、脳循環代謝の改善効果が充分ではない。また、組成物中において、50重量%を越えると、経済的な意味で好ましくない。ただし、イチョウ葉エキスは一日に50kgの成人につき240mg以下の摂取になるように、他の材料と混合され。組成物中の配合割合は、該組成物をどのように摂取あるいはどのように食する、あるいはどのように適用するかなどにより、決められる。
医薬品の場合、カプセルや粉末、錠剤などとして経口投与することができ、水に溶けることから経口投与以外に、筋肉注射などの投与方法を採用することが可能である。静脈注射、筋肉注射などで投与する場合、投与量は脳循環代謝異常の症状の度合いや体重、年齢、性別などにより異なるものであり、使用に際して適当な量を症状に応じて決めることが望ましい。医薬品における配合量は特に制限はされないが、50kgの成人につきナノ微粒子のイチョウ葉エキスを240mg以下/一日を目安に、体重1kgあたり、経口投与の場合、静脈注射投与の場合、筋肉注射投与の場合の投与量が定められる。
【0030】
また本発明のイチョウ葉エキスは食品としてもすでに利用されており、安全性が高く、本発明の製造方法に拠ればコスト面でも利用価値は高いものである。なお急性経口毒性試験では5,000mg/kg以上であった。
【0031】
医薬品においては、有効成分であるナノ微粒子のイチョウ葉エキスはそれ自体のみならずそれの薬剤として許容される塩として使用される。該薬剤は、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを単独で製剤として用いることができるほか、製薬上使用できる担体もしくは希釈剤を加えた製剤組成物に加工したものを用いることもできる。このような製剤または薬剤組成物は、経口または非経口で投与することができる。例えば、経口投与用の固体または流体(ゲルおよび液体)の製剤または薬剤組成物は、タブレット、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、顆粒もしくはゲル調製品の形態をとる。製剤または薬剤組成物の正確な投与量は、その目的とする使用形態および処置時間により変化するため、担当の医師または獣医が適当であると考える量になる。服用および投与用量は製剤形態によって適宜調整できる。錠剤などの経口固形製剤、経口液剤などとして1日服用量を1回ないし数回に分けて服用してもよい。また、例えばシロップやトローチ、チュアブル錠などの幼児頓服として、局所で作用させるとともに内服による全身性作用をも発揮させる製剤形態では1日服用量の1/2〜1/10を1回量として配合し服用すればよく、この場合全服用量が1日量に満たなくてもよい。
【0032】
逆に、製剤形態からみて無理な服用容量とならなければ1日服用量に相当する量を1回分として配合してもよい。製剤の調製にあたっては、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、コーティング剤、徐放化剤など、希釈剤や賦形剤を用いることができる。この他、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、吸着剤、香料、着色剤、矯味剤、抗酸化剤、保湿剤、遮光剤、光沢剤、帯電防止剤などを使用することができる。
すなわち、ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合したヒトまたは動物用製剤の場合は、単独または賦形剤あるいは担体と混合して注射剤、経口剤、または坐剤などとして投与される。賦形剤及び担体としては薬剤学的に許容されるものが選ばれ、その種類及び組成物は投与経路や投与方法によって決まる。例えば液状担体として水、アルコール類もしくは大豆油、ピーナツ油、ゴマ油、ミネラル油等の動植物油、または合成油が用いられる。固体担体としてマルトース、シュクロースなどの糖類、アミノ酸類、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウムなどの有機塩などが使用される。
固型製剤用の賦形剤としては例えば小麦粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉等の澱粉類、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、オリゴ糖等の糖類、コメヌカ油粕、ダイズ油粕、等の油粕類、魚粉、畜肉粉末、脱脂粉乳等の動物質類、ビール酵母、ふすま等の製造粕類、ダイズ粉、トウモロコシ粉、小麦粉等の植物質類、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム等の無機塩類等を使用できる。また、必要に応じて崩壊剤、結合剤、滑沢剤を用いる。固型製剤としては、散剤、錠剤、細粒剤、カプセル剤、ペレット剤等の剤形があげられる。又、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖液糖等の注射用の適当な溶剤、また必要に応じて溶解補助剤を用いて溶解し、注射剤としても良い。
【0033】
本発明の製剤はヒトまたは動物用であり、投与する動物は、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、フェレット、マウス及びラットを含むげっ歯類、ニワトリ、ガチョウ及びシチメンチョウを含む鳥類、有袋類、魚類、霊長類及び爬虫類から成る群から選ばれる動物があげられる。動物に投与する方法は、経口製剤をそのまま経口投与しても良く、飼料、飲水に混合して投与しても良い。注射剤は、皮下、筋肉、静脈、腹腔いずれの部位に投与しても良い。投与量としてはいずれの製剤においても、有効成分として一日に50kgの成人につき240mg以下が基準となる。
【0034】
本発明の組成物は、皮膚外用剤の成分とすることができる。
ここで皮膚外用剤とは、特に限定されず、医薬品、医薬部外品、化粧品などの化粧料およびトイレタリー製品などを広く包含する。例えば、化粧水、クリーム、乳液、パック、ファンデーション、化粧油、軟膏、ジェル、防臭消臭剤、養毛トニック、ヘアミスト、ヘアジェル、ヘアシャンプー、ヘアリンス、洗顔料、ボディーソープなどが挙げられる。
皮膚外用剤におけるイチョウ葉エキスの含有量は、その効果の観点から、一日に50kgの成人につき240mg以下の摂取になるように、固形分として、一般に0.01〜30重量%が適当で、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0035】
本発明の皮膚外用剤には、さらに抗炎症剤を併用することにより、相乗的に皮膚の炎症を抑えることができる。好ましく用いられる抗炎症剤の例に、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びその誘導体、メフェナム酸、アラントイン、ビタミンE、ビタミンCおよびその誘導体、アミノカプロン酸、グアイアズレン、その誘導体、その塩類、例えばグアイアズレンスルホン酸ナトリウム及び酸化亜鉛などがある。
【0036】
本発明の皮膚外用剤にはイチョウ葉エキスの他に、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、酢酸トコフェロール、グアイアズレン、アスコルビン酸ナトリウム、アミノカプロン酸、カンゾウ抽出物、アロエ抽出物、ローズマリーエキス、オウゴンエキス、緑茶エキス、マロニエエキス、海草エキス、スギナエキス、マツエキス、ホップエキス、レモンエキス、ブッチャーブルームエキス、アルニカエキス、ハマメリス水、ソウハクヒエキス、米発酵エキス、シコン抽出物、ムクロジ抽出物及びユーカリ抽出物から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤において、上述の抗炎症剤あるいは他の植物抽出物を1種、又は2種以上を含ませることができ、その含有量は一般には0.0001〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%である。
【0038】
本発明の皮膚外用剤の基剤としては、皮膚外用剤の形態に応じた基剤を用いることができる。具体的には、鉱物油、動植物油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、エステル油、界面活性剤、湿潤剤、高分子化合物、動植物抽出物、アミノ酸類、溶剤、防腐剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、pH調整剤、色素・顔料、香料などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。以下にそれらの具体例を挙げる。
【0039】
<鉱物油>
流動パラフィン、流動イソパラフィン等。
<動植物油>
スクワラン、オリブ油、ツバキ油、コムギ胚芽油、ホホバ油、アボカド油、カロット油、シア脂、パーム油、硬化油、馬油、ラノリン類、卵黄油、チョウジ油、ローズヒップ油、ラベンダー油、ハッカ油、スペアミント油、ローズマリー油等。
<ワックス>
マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、ミツロウ等。
【0040】
<脂肪酸>
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等。
<脂肪アルコール>
ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ラノリンアルコール等。
<エステル油>
トリカプリル酸グリセリル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクタン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、ジオクタン酸エチレングリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、パルミチン酸セチル、炭酸ジアルキル等。
【0041】
<界面活性剤>
ラウリル硫酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、テトラデセンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩、ラウロイルサルコシン塩、アルキルメチル−アラニン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸石けん、N−アシルグルタミン酸塩、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルメチルタウリン塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルグルコシド、ポリエーテル変性シリコン等。
塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アミドアミン、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム。
アルキルジメチル酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン。
レシチン(大豆又は卵黄)誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩。
【0042】
<湿潤剤>
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビット、マルチトール、トレハロース、キシリット等。
<高分子化合物>
メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カチオン化セルロース、カチオン化グァガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン等。
【0043】
<動植物抽出物>
プラセンタエキス、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、加水分解エラスチン、酵母エキス、アロエエキス、コンフリーエキス、シャクヤクエキス、シソエキス、センブリエキス、ハマメリス水、ヒキオコシエキス、ホップエキス、セージエキス、マロニエエキス、モモ葉エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、ヨモギエキス、ローズマリーエキス、コメヌカ発酵エキス等。
<アミノ酸類>
L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−システイン、L−セリン、L−チロシン、L−プロリン、ピロリドンカルボン酸塩、グリシン等。
【0044】
<溶剤>
精製水、常水、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等。
<ビタミン類>
ビタミンA、酢酸レチノール、塩酸ピリドキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、ビオチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、エルゴカルシフェロール、ビタミンE、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE等。
<防腐剤>
メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、フェノキシエタノール、ビサボロール、ヒノキチオール、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ウンデシレン酸、ピオニン、lーメントール、d−カンフル等。
【0045】
<紫外線吸収剤>
パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、オキシベンゾン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、サリチル酸オクチル等。
<金属イオン封鎖剤>
エデト酸、エデト酸塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、エチレンジアミンテトラキス(2−ヒドロキシイソプロピル)ジオレイン酸塩、ヒドロキシエタンジスルホン酸、ヒドロキシエタンジスルホン酸四ナトリウム、フィチン酸等。
<酸化防止剤>
ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、トコフェロール等。
本発明の皮膚外用剤はその形態に応じて、常法に従って製造することができる。
【0046】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例により、何ら限定されることはない。
【実施例1】
【0047】
[ナノイチョウ葉エキスの製造法]
従来の一般的なイチョウ葉エキスの製造方法としては、次のようなフローによっている。
原料→抽出→蒸留→(ヘキサン転溶)→濃縮→疎水性吸着樹脂精製→脱着→蒸留→疎水性吸着樹脂精製→濃縮→乾燥→製品(粉末)
本発明は、天利合作工場で従来の方法を利用し、イチョウ葉エキス粉末は、イチョウ葉からアルコールでイチョウ葉エキスを抽出し、吸着樹脂で吸着にて濃縮して、高温で乾燥させた後に200メッシュの粉末にする。イチョウ葉エキス標品G2(200mesh)を得た。
【0048】
ナノ微粒子を以下のように調製した。
イチョウ葉エキス粉末は水で希釈(濃度は20重量%)し、気相粉砕機(天利合作工場製)のじょうごに投入し、重力で液体は精細化ルームに入る、流量調節、乳濁液微細調節、濾過膜に精細濾過。気流化ルームに高圧力(200MPa)、高速回転(15,000回転)、超音速(340m/s)。加熱(70−80℃)で気流は装置の下5つ入り口に進入、高速気流中に顆粒を巻き込み、顆粒は相互衝突させて粉砕し、合格した粒子は装置の上にある出口から排出、不合格した粒子は精細化ルームに戻って、再度粉砕する。
【0049】
排出した粒子は(約500nm)すぐ、液相粉砕機(天利合作工場製)の射流ルームに入れ、増圧器を通して、〔高圧力(250MPa)空気で圧力を増加する〕噴射器の吹き口から高速度で装置中の板へ噴出する、顆粒は高いスピードで、板にぶつかる、また、高速度衝突力で板は激しい超音振動を起こすので、顆粒はどんどん小さくなる、ずっと微粒子(平均30nm程度)になる。その後、クリーンルームに粒子を洗浄し、噴霧乾燥装置に蒸発すると粉末になる。最後、粉末集合ルームにナノ粒子を回収する。イチョウ葉エキス標品〔G1(30nm)、透過型電子顕微鏡(日立H-9000型)により確認した結果〕を得た。
また、同様にしてナノテクノロジーでイチョウ葉エキス標品G3(100nm)を得た。 本実施例で調整したナノテクノロジー加工イチョウ葉エキスを用いて、実施例2〜5の実験をした。
【実施例2】
【0050】
[大脳皮質シナプスからアセチルコリン放出活性を高める作用]
動物実験に伴う、試験手順と解析データ結果を示す。
実験には生後27ヵ月齢の雄性Wistarラット(平均体重、409g)を用いた。投与時のストレスを軽減するため、投与1週間前よりハンドリングを行った。イチョウ葉エキス標品〔G1(30nm)、G2(200mesh)、G3(100nm)〕を水に懸濁(1.96 mg/0.25ml)し、240mg/50kg体重の同懸濁液を胃ゾンデ(feeding needle)を用いて1日1回投与した(各群n=4)。コントロールラット(n=5)には水を投与した。投与期間は1ヵ月とした。投与期間中、固形飼料および飲料水を自由摂取させた。
【0051】
ラット大脳皮質よりFicollの不連続密度勾配遠心法によってシナプトソームを調製した。
【0052】
シナプトソームを200uMのeserine(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)を含むKrebs−Ringer液に懸濁し37℃で30分間インキュベートした。インキュベート終了後0.1N過塩素酸を添加して反応を停止させた。既知量のエチルホモコリン(ethylhomocholine, EHC)を内部標準物質として加えて遠心し、その上清を得た。
【0053】
37℃で30分間インキュベートしたシナプトソームの一部をeserineを含むKrebs−Ringer液で洗浄した後、更に同緩衝液に懸濁した。この懸濁液に高濃度カリウムを含むKrebs−Ringer液を添加してカリウム最終濃度を10mMおよび40mMに調整し、37℃で5分間インキュベートした。EHCを添加後、遠心しその上清を得た。これらの試料を電気化学検出器付きの高速液体クロマトグラフィーグラフィ(EICOM300)によってAChの合成量と放出量を測定した。
【0054】
[実験の考察]
以上の実験から見る実施例2の結果と考察をまとめた。
図4に大脳皮質シナプスにおけるACh合成活性に対する各イチョウ葉エキス標品の投与効果を示す。イチョウ葉エキス投与ラットのACh合成活性はコントロールラットとほぼ同様であったことから、どのイチョウ葉エキス標品とも大脳皮質シナプスにおけるACh合成活性には影響を与えないものと考えられる。
次に、高カリウムの脱分極刺激によるシナプスからのACh放出活性への効果をみた(図5参照)。イチョウ葉エキスを投与したラットの大脳皮質シナプスからのACh放出がコントロールラットに比べて促進されている傾向が認められた。特にG1投与ラットで有意にACh放出が促進されていた。
【0055】
[実験の結果]
実施例2の結果として、イチョウ葉エキスは老齢ラット脳シナプスにおけるACh合成を促進することなしに、脱分極刺激によるACh放出効率を促進することが示唆された。
【実施例3】
【0056】
[海馬錐体細胞の刺激応答の改善作用]
海馬を摘出しロータリースライサーで厚さ400umの海馬スライスを作製した。これを混合ガス(95% O2 + 5% CO2)を充分に溶存させた人工脳脊髄液(ACSF)中で2時間インキュベートし実験に供した。海馬スライスを測定チャンバーに移し刺激電極をシャーファー側枝に刺入し、記録電極をCA1錐体細胞層と放線層に刺入した。10秒間に1回の電気パルス刺激を与えて集合電位(Population spike)と興奮性後シナプス電位(Excitatory postsynaptic potential)を記録した。安定したベースラインが得られることを確認した後、電気パルス刺激を0.04mA〜0.25mAの間で変化させそれぞれの刺激強度に対する応答を測定した。
【0057】
[実験の考察]
図6は、海馬CA1錐体細胞層における集合電位(Population Spike)の大きさを示すものである。イチョウ葉エキス投与群ではこの集合電位のamplitudeがコントロール群に比べて増大していることが明らかになった。特にG3投与ラットでは集合電位の有意な増幅が認められた。また、細胞の興奮性の指標である興奮性後シナプス電位(Excitatory PostSynaptic Potential : EPSP)もイチョウ葉エキス投与群ではコントロール群に比べて増加傾向を認めた。即ちイチョウ葉エキスの投与によって海馬錐体細胞の刺激に対する応答性が亢進されたか、あるいは刺激に応答する細胞集団が増加したことを示唆する結果と考えられる。
【0058】
[実験の結果]
実施例3の結果として、イチョウ葉エキス標品G3によって海馬錐体細胞の刺激応答性が改善することが明らかになり、海馬におけるニューロン活性への効果がみられた。
【実施例4】
【0059】
[抗DNA酸化傷害作用]
ナノテクノロジー加工イチョウ葉エキスの抗老化作用の解析実験において、老齢ラット肝、腎のDNA酸化傷害への影響に関する結果を下記に示す。
ナノテクノロジー加工による新規イチョウ葉エキス標品を投与したラットの肝臓、腎臓における酸化傷害の程度をDNA酸化傷害物を測定することにより調べた。
【0060】
イチョウ葉エキスを1ヶ月投与された27月齢Wistarラットから肝臓と腎臓をとり、核DNAを抽出して酸化傷害物(8-オキソデオキシグアノシン;8−oxodG)量をHPLC/ECD(電気化学検出器)にて定量した。コントロール(n=5)、Group1(n=2)、Group2(n=3)、Group3(n=2)と分類した。
【0061】
核のDNAを既報告の方法で分離した。組織(ca.150mg)を0.3Mのスクロース溶液で均質化し、遠心分離機にかけてミトコンドリアを含む細胞画分を取り除く。ペレットをアルゴン下でプロテイナーゼKおよびSDS/EDTA(pH8.0)の混合物中で培養し、7Mヨウ化ナトリウムおよびイソプロピルアルコールを添加し、その混合物を遠心分離機にかける。DNAペレットは、0.01×SSC/EDTAで溶解し、アルゴン下でリボヌクレアーゼT1及びAの混合物とともに培養する。サンプルをクロロホルムとイソアミルアルコールの混合物(24:1, v/v)で抽出する。水相をヨウ化ナトリウムおよびイソプロピルアルコールと混和し、混合物を−20℃で静置した。混合物を遠心分離機にかけ、DNAペレットを40%イソプロピルアルコールと70%(v/v)エタノールで洗浄し、キレックス100溶液で溶解する。DNAの量および純度を、既報告のとおり紫外線の吸収量により決定する。
DNAはアルゴン下でヌクレアーゼP1及びアルカリ・ホスファターゼで加水分解し、Symmetry C18カラムを使用したHPLCシステムおよびESA社のCoulochem II5200電気化学検出器(ECD)で8−oxodGを分析した。
8−oxodG量は、102‘−デオキシグアノシン(dG)に対するモル比で表した。dG量は紫外線検出器で測定したサンプルの260nmでの吸光度から算出した。
【0062】
[実験の結果]
実施例4の結果として、定常状態で有意差が出るとは予想されにくいが、Group1の肝臓、腎臓ではDNA酸化傷害物が低下する傾向が認められた(図7参照)。
【実施例5】
【0063】
[肝臓のSMP30蛋白質量の増加作用]
ホモジネートの作製と免疫ブロットの分析をする。
新規イチョウ葉エキスを投与したラットと対照ラットの肝臓と腎臓にホモジナイズ用氷冷緩衝液〔10mM Tris−HCl (pH8.0)、 1mM DTT (ジチオスレイトール)、1mM PMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド) 〕を添加して、ポリトロンホモジナイザーを使用し、30秒間高速で均質化した。ホモジネートは遠心分離(10,000×g, 30分間)した。新規イチョウ葉エキスを投与したラットと対照ラットの肝臓と腎臓から得た上清(7.5μg)から精製した蛋白質は、4〜20%グラジエントゲル(Daiichi Pure Chemicals Co., Tokyo, Japan)を使用して、SDS−PAGEに供した。蛋白質濃度は、BCA蛋白質定量試薬(Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL, USA)を使用し、ウシ血清アルブミンを標準物質として測定した。蛋白質を電子移動させ、ニトロセルロース膜に転写した。多クローン性ウサギ抗体(1:5000希釈)によりラットのSMP30が検出された。標識物の検出は、ECLウェスタンブロッティング検出試薬(Amersham Biosciences Corp)を使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合した抗ウサギIgG(1:5000希釈、BIO RAD)を第二抗体として行った。SMP30に相当するバンドをLAS−3000mini(FUJIFILM)を使用して撮影し、定量した。
【0064】
肝臓中可溶性分画中のSMP30を、ポリクロナール抗体を用いたウェスタンブロッティング法により検出し、解析ソフトでバンドを定量した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
図8は投与ラット群における肝臓のSMP30蛋白質量変化を測定し、G3投与ラットに増加した結果を示す。
【0067】
[実験の結果]
実施例5の結果として、肝臓のSMP30の蛋白質量変化を測定し、ラットにSMP30蛋白質量が増加した結果が示された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
二重粉砕法(気相粉砕法と液相粉砕法)で加工したイチョウ葉エキスは、ナノレベル粒子になるので、新規機能が生まれることから、将来産業上の利用可能性は非常に高い。ナノ粒子尺度変化により、ナノイチョウ葉エキス粒子は血液の中を自由流動し、血液脳関門にも通過が可能で、直接脳細胞や脳神経に刺激することができると考えられる。ナノ粒子表面効果反応により、ナノイチョウ葉エキス粒子表面原子数は増加した。表面原子配位数が不足になると高い表面能力を出し、脳細胞のある部分と結合すると高い化学活性を持つため、脳細胞が活性化されることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】イチョウ葉エキス粉末ナノ化工程図である。
【図2】液相粉砕法で加工したイチョウ葉エキスが30nmの微粒子になった状態を表した透過型電子顕微鏡(日立H-9000型)写真である。
【図3】気相粉砕法で加工したイチョウ葉エキス粉末が、植物細胞壁を破裂する状態を表した走査型電子顕微鏡(日立S-3600N型)写真である。
【図4】大脳皮質シナプスでのACh合成に対するイチョウ葉エキス投与効果を表した棒グラフである。
【図5】大脳皮質シナプスでのACh放出に対するイチョウ葉エキス投与効果を表した棒グラフである。
【図6】海馬錐体細胞の刺激に対する応答性を表した棒グラフである。
【図7】肝臓、腎臓におけるDNA酸化傷害物の測定を表した棒グラフである。
【図8】肝臓のSMP30蛋白質量の変化を示した棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ微粒子のイチョウ葉エキスを有効成分として配合した、脳機能活性化効果を有する組成物。
【請求項2】
イチョウ葉エキス粉末を乾式法と湿式法を組み合わせて砕いていくブレイクダウン法により製造したギンコ−ル酸を含有しないイチョウ葉エキスである請求項1の脳機能活性化効果を有する組成物。
【請求項3】
ナノ微粒子が100nm以下の微粒子である請求項1または2の脳機能活性化効果を有する組成物。
【請求項4】
上記組成物が、調味料、食品添加物、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品・医薬部外品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである請求項1,2または3の脳機能活性化効果を有する組成物。
【請求項5】
上記健康飲食品が、脳機能活性化効果により症状が予防または改善される脳循環代謝異常の疾患者用飲食品である請求項4の脳機能活性化効果を有する組成物。
【請求項6】
上記医薬品・医薬部外品がヒト用または動物用である請求項4の脳機能活性化効果を有する組成物。
【請求項7】
脳機能活性化効果により症状が予防または改善される脳循環代謝異常の疾患が、老人性の痴呆症、脳梗塞・脳卒中、抹梢血管血行障害等の脳循環代謝異常の疾患である請求項1ないし6のいずれかの脳機能活性化効果を有する組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−277183(P2007−277183A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106821(P2006−106821)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【特許番号】特許第3988168号(P3988168)
【特許公報発行日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(505462013)
【Fターム(参考)】