説明

イヌのダイオキシン/アリール炭化水素受容体配列

本発明は、これまで未知のポリペプチドのイヌAHRをコードするcDNA;その遺伝子によってコードされたイヌAHRポリペプチド;そのポリペプチドに対する抗体;および、それらの製造方法および使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌAHRポリペプチドを含む単離されたポリペプチド、および、それらをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、毒性化合物または分子であることを示す代謝的な応答に関して化合物および治療剤をスクリーニングするための分析を提供する。
【背景技術】
【0002】
ダイオキシンのようなハロゲン化芳香族炭化水素に晒されると、ほとんどの脊椎動物において、上皮の変化、ポルフィリン症、肝臓ダメージ、胸腺の衰退、ガン、奇形、重度の消耗症候群および死が発生する可能性がある(Poland等,Schmidt等)。薬理学的および遺伝学的な証明によれば、ダイオキシン/アリール炭化水素受容体(AHR)は、これらの毒性評価項目の多く(全部ではないが)に介在することに直接的に関与していることが示されている。
【0003】
ヒトAHRは、分子量96kDの核受容体である。これは、基本的なヘリックス−ループ−ヘリックス/Per−Arnt−Sim(PAS)ドメインタンパク質ファミリーに属する。現在容認されているイヌAHR活性化の理論は、以下の通りである:細胞がダイオキシンに晒されると、イヌAHR(またはダイオキシン受容体ともいう)は、細胞核に移行し、そのパートナーのAHR核内輸送体(ARNT)と二量体化する。次にこのヘテロダイマーは、DRE(ダイオキシン反応性要素(dioxin responsive element)を意味し、一連の標的遺伝子の上流に位置する)と結合し、それらの転写を活性化する。最も重要な活性化された遺伝子は、異物代謝酵素Cyp1A1、Cyp1A2(XME)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、キノンレダクターゼなどである。前もって多くのPAHに晒されると、続いて晒される際に構造的に関連する化合物の生物学的な半減期が減少する。この適応性の応答は、異物代謝酵素(XME)のアップレギュレーションの直接的な結果である(Whitlock等およびGu等)。
【0004】
発ガン現象の調節におけるAHRの役割を決定するために、Shimizu等(2000年)は、広範囲に分布する環境発ガン性物質であり、イヌAHRのリガンドのベンゾ(ベンザ)ピレンに晒されたAHR欠損マウスを研究した。彼等は、AHR欠損マウスにおいてこの物質の発ガン性が失われていることを発見し、ベンゾ(ベンザ)ピレンの発ガン作用は、まずAHRによって決定される可能性があると結論付けている。
【0005】
多環式芳香族炭化水素(PAH)は、燃料の燃焼の毒性副産物であり、AHRのリガンドである。PAH処理マウスにおいて、卵母細胞の破壊と卵巣の障害が起こる。Matikainen等(2001年)は、マウスがPAHに晒されると、卵母細胞において、BCL2関連Xタンパク質Baxの発現、続いてアポトーシスが誘導されることを実証している。PAHによって生じる卵巣のダメージは、AHRまたはBax不活性化によって防がれる。従って、AHRによって作動するBax転写は、環境毒性物質で誘導される卵巣障害に関与する新規の細胞死シグナル伝達経路であると結論付けている。
【0006】
Andersson等(2002年)は、AHRを構成的に発現するトランスジェニックマウスは、寿命を短くしたことを報告している。腫瘍は胃腺部分で誘導され、これは、AHRの腫瘍発生能力と、細胞増殖の調節においてその受容体が関与していることを実証している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イヌは、薬物の毒物学を調査するための重要な種であるため、イヌAHR遺伝子とに特異的な核酸プローブ、イヌAHRタンパク質に特異的な抗体は、疑わしい毒性化合物に対する代謝的な応答を実証する手段として、工業に関する毒物学において大きな価値がある。本発明は、この必要性を扱うものである。
【0008】
引用文献
1. Poland, A., Knutson, J., and Glover,E. Studies on the mechanism of action of halogenated aromatic hydrocarbons. Clin. Physiol. Biochem. 3: 147-54,1985.
2. Schmidt, J.V., and Bradfield, C.A. Ah receptor signaling pathways. Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 12: 55-89, 1996.
3. Whitlock, J.P., Jr. Induction of cytochrome P4501A1. Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 39: 103-25, 1999.
4. Gu, Y-Z, Hogenesch, J.B. and Bradfield, C.A. The PAS Superfamily: Sensors of Environmental and Developmental Signals. Annual Review of Pharmacology and Toxicology 40: 519-61, 2000.
5. Shimizu, Y., Nakatsuru, Y., Ichinose, M., Takahashi, Y., Kume,H., Mimura, J., Fujii-Kuriyama, Y., Ishikawa, T. Benzo [a] pyrene carcinogenicity is lost in mice lacking the aryl hydrocarbon receptor. Proc. Nat. Acad. Sci. 97: 779-782, 2000.
6. Matikainen, T., Perez, G.I., Jurisicova, A., Pru, J.K., Schlezinger, J.J., Ryu, H.-Y., Laine, J., Sakai, T., Korsmeyer, S.J., Casper, R.F., Sherr, D.H., Tilly, J.L. Aromatic hydrocarbon receptor-driven Bax gene expression is required for premature ovarian failure caused by biohazardous environmental chemicals. Nature Genet. 28: 355-360, 2001.
7. Andersson, P., McGuire, J., Rubio, C., Gradin,K,Whitelaw, M.L., Pettersson, S., Hanberg, A., Poellinger, L. A constitutively activedioxin/aryl hydrocarbon receptor induces stomach tumors. Proc. Nat. Acad Sci. 99: 9990-9995, 2002.
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記で同定された必要性を扱っており、すなわち、本発明は、イヌAHRタンパク質をコードする単離された核酸分子、その単離された核酸分子を含むコンストラクトおよび組換え宿主細胞;その単離された核酸分子によってコードされたイヌAHRポリペプチド;イヌAHRポリペプチドに対する抗体を提供する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む単離されたイヌAHRポリペプチドを提供する。配列番号2のポリペプチドは、特異的なタンパク質分解によるプロセシング現象を受けやすい可能性があり、それにより多数のポリペプチド種が生じると理解されている。
【0011】
加えて、本発明は、イヌAHRポリペプチドのエピトープを含むフラグメントを提供する。「〜に特異的なエピトープ」とは、イヌAHRポリペプチドに特異的な抗体によって認識可能な、イヌAHRポリペプチドの部分を意味し、以下で詳細に定義される。その他の実施形態は、配列番号2に記載の完全アミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。
【0012】
イヌAHRのコードcDNA配列と、予測のアミノ酸配列を以下に転載するが、それぞれ配列番号1および2として示される。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
配列番号1および2は、特定のイヌのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を提供するが、本発明は、その範囲内で、その他のイヌの対立遺伝子変異体も含むものとする。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド(例えば、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、RNA、またはそれらの組合わせであり、これらは一本鎖でも二本鎖でもよい)を提供する。このようなポリヌクレオチドは、受容体を組換え発現することに有用であり、さらに、細胞におけるその受容体の発現を検出すること(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、および、インサイチュハイブリダイゼーション分析を用いて)にも有利である。このようなポリヌクレオチドはまた、治療目的で、培養細胞もしくは組織における、または、動物におけるイヌAHRの発現を抑制するためにアンチセンスおよびその他の分子を設計すること、または、異常なイヌAHR発現を特徴とする疾患モデルを提供することに有用である。特に、上記ポリヌクレオチドが由来する天然の宿主細胞から単離された染色体全体は、本発明のポリヌクレオチドの定義から除外する。配列番号1に記載のポリヌクレオチドは、天然に存在するイヌAHR配列に相当する。当然ながら、普遍的な遺伝子コードの周知の縮重のために、配列番号2のイヌAHRをコードする多数のその他の配列が存在するものとする。他の実施形態において、本発明は、配列番号1に記載の配列以外に、イヌAHRをコードする全てのディジェネレート配列を目的とする。
【0017】
本発明はまた、以下のハイブリダイゼーション条件で、配列番号1に記載のヌクレオチド配列またはそれらに相補的な非コード鎖に特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する:
(a)ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、1%SDS、1MのNaCl、10%硫酸デキストランを含む)中で、42℃で16時間ハイブリダイゼーションする;および、
(b)洗浄溶液(0.1%SSC、1%SDSを含む)で、60℃で30分間、2回洗浄すること。
【0018】
本発明の1種のポリヌクレオチドは、イヌAHRをコードするDNA配列を含む配列番号1に記載の配列、またはそれらのユニークなフラグメントを含む。
【0019】
関連する実施形態において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。このようなベクターは、例えば、宿主細胞中で本ポリヌクレオチドを有用量に達するように増幅するのに有用である。他の実施形態において、ベクターは、本発明のポリヌクレオチドが発現制御配列を含むポリヌクレオチドに操作可能に結合している発現ベクターである。このようなベクターは、本発明のポリペプチドの組換え生産に有用である。
【0020】
その他の関連する実施形態において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされている(安定して、または一時的に)宿主細胞を提供する。上述したように、このような宿主細胞は、ポリヌクレオチドを増幅することに有用であり、さらに、そのポリヌクレオチドによってコードされたイヌAHRポリペプチドまたはそれらのフラグメントを発現するにも有用である。
【0021】
さらにその他の関連する実施形態において、本発明は、イヌAHRポリペプチド(またはそれらのフラグメント)を生産する方法を提供し、本方法は、栄養培地で本発明の宿主細胞を成長させる工程、および、細胞または培地からそのポリペプチドまたはそれらの変異体を単離する工程を含む。
【0022】
さらにその他の実施形態において、本発明は、本発明のイヌAHRに特異的な抗体を提供する。抗体の特異性は、以下でより詳細にで説明する。しかしながら、文献で以前に説明された、イヌAHRと偶然交差反応できる(例えば、両方のポリペプチドに類似のエピトープが偶然存在するために)ポリペプチドから生成し得る抗体を、「交差反応性」抗体とみなすことを強調すべきである。このような交差反応性抗体は、イヌAHRに「特異的な」抗体ではない。抗体が、イヌAHRに特異的であるかどうか、または、その他の既知のタンパク質と交差反応性であるかどうかの決定は、ウェスタンブロッティング分析 または文献で周知のその他の数種の分析を用いてなされる。イヌAHRを発現する細胞を同定するために、さらに、イヌAHR活性を調節するためにも、イヌAHRの活性部位に特異的に結合する抗体は、特に有用であるが、もちろん、その他のエピトープと結合する抗体も同様に、本発明の一部として考慮される。
【0023】
一形態において、本発明は、モノクローナル抗体を提供する。このような抗体を生産するハイブリドーマも、本発明の形態として意図される。
【0024】
その他の形態において、本発明は、ポリクローナル抗体を含む細胞非含有組成物を提供し、その抗体の少なくとも1種は、本発明のイヌAHRに特異的な抗体である。典型的な組成物は、動物から単離された抗血清であり、同様に、水、または、その他の希釈剤、添加剤もしくはキャリアーに再懸濁された抗血清の抗体の分画を含む組成物である。
【0025】
本発明はまた、本発明の抗体を用いる方法を提供する。例えば、本発明は、細胞抽出物内に存在するイヌAHRの量を決定する方法を提供し、本方法は、前記抗体とイヌAHRポリペプチドとが結合する条件下で、イヌAHRポリペプチドと、そのイヌAHRポリペプチドに特異的な抗体とを接触させる工程を含む。
【0026】
本発明はまた、イヌから得られたサンプル内に存在するイヌAHRのポリヌクレオチドの量を決定する方法を提供し、本方法は、以下を含む:1種またはそれ以上の特異的なハイブリダイゼーション複合体を形成するための条件下で、サンプルと、配列番号1を含む核酸分子またはそれらのフラグメントまたはそれらの相補鎖とを接触させること(前記フラグメントは、配列番号1の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである)。
【0027】
本発明はまた、イヌにおける試験物質に対する代謝的な応答を測定する方法を提供し、本方法は、以下を含む:試験物質で処理されたイヌからの核酸を含むサンプルを提供すること;および、前記サンプルにおける、配列番号1を含むポリヌクレオチド、またはそれらのフラグメントまたはそれらの相補鎖の量を決定すること(未処理のイヌからのポリヌクレオチドの量と比べた場合の、処理されたイヌからのポリヌクレオチドの量における変化が、前記試験物質に対する代謝的な応答を示す)。
【0028】
一実施形態において、前記決定は、ハイブリダイゼーションによって達成される。ハイブリダイゼーションは、核酸分子とサンプル核酸分子とのハイブリダイゼーション複合体を形成するのに有効な条件下で、核酸分子と、サンプル核酸分子とを接触させること;および、ハイブリダイゼーション複合体の存在または非存在を検出すること、を含む方法によって達成してもよい。一形態において、配列番号1または配列番号1のフラグメントまたは配列番号1の相補鎖は、複数の核酸と共に、固体基板アレイまたはその他の固体支持体上に存在し得る。
【0029】
本発明はさらに、サンプル内に存在するイヌAHRポリペプチドの量を決定する方法を提供し、本方法は、イヌAHRポリペプチドに特異的な抗体とイヌAHRポリペプチドとが結合する条件下で、イヌAHRポリペプチドとイヌAHRポリペプチドに特異的な抗体とを接触させることを含む。場合により、AHRポリペプチドまたは抗体のいずれかは、固体支持体に付着していてもよい。
【0030】
本発明はまた、イヌにおける試験物質に対する代謝的な応答を測定する方法を提供し、本方法は、試験物質で処理されたイヌからのサンプルを提供すること;および、前記サンプルにおける、配列番号2を含むポリペプチド、または、前記ポリペプチドに特異的なエピトープを含むそれらのフラグメントの量を決定すること(未処理のイヌからのポリペプチドの量と比べた場合の、処理されたイヌからのポリペプチドの量における変化は、前記試験物質に対する代謝的な応答を示す)を含む。
【0031】
上記に加えて、さらなる形態として、特に上述した形態よりも多少なりとも狭い範囲の本発明の実施形態も全て、本発明に含まれる。
【0032】
配列表の簡単な説明
配列番号1−イヌAHRをコードするcDNA配列、
配列番号2−イヌAHRの予測されたアミノ酸配列、
配列番号3〜10−クローニングおよび配列解析プライマー、
配列番号11−ヒトAHRをコードするcDNA配列、
配列番号12−ヒトAHRの予測されたアミノ酸配列、
配列番号13−マウスAHRをコードするcDNA配列、
配列番号14−マウスAHRの予測されたアミノ酸配列、
配列番号15−ラットAHRをコードするcDNA配列、
配列番号16−ラットAHRの予測されたアミノ酸配列。
【0033】
図面の説明
図1(A)および図1(B)は、イヌ(配列番号1)、ヒト(配列番号11)、マウス(配列番号13)およびラットAHR(配列番号15)のポリペプチド配列のアライメントであり、
図2(A)〜図2(F)は、イヌ(配列番号2)、ヒト(配列番号12)、マウス(配列番号14)およびラットAHR(配列番号16)のポリヌクレオチド配列のアライメントである。
【0034】
発明の詳細な説明
一般的な定義
以下で用いられる「ポリヌクレオチド」は、一般的に、あらゆるポリリボヌクレオチド、または、ポリデオキシリボヌクレオチドを意味し、これは、改変されていないRNAもしくはDNAでもよいし、または、改変されたRNAもしくはDNAでもよい。「ポリヌクレオチド」としては、これらに限定されないが、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域が混在するDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに、一本鎖領域と二本鎖領域が混在するRNA、一本鎖化された、またはより典型的には二本鎖化されたDNAとRNAを含むハイブリッド分子、または、一本鎖領域と二本鎖領域が混在するDNARとNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNAもしくはDNA、または、RNAとDNAとの両方を含む三本鎖領域を意味する。用語「ポリヌクレオチド」としてはまた、1またはそれ以上の改変塩基を含むDNAまたはRNA、および、安定性またはその他の理由のための改変された主鎖を有するDNAまたはRNAも挙げられる。「改変された」塩基としては、例えば、トリチル化された塩基、および、イノシンのような通常ではない塩基が挙げられる。多種多様の改変がDNAおよびRNAになされ得る;従って、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に改変されたポリヌクレオチドの形態、例えば、典型的には自然に存在する形態、同様に、ウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短いポリヌクレオチドも包含し、これは場合によってはオリゴヌクレオチドとも呼ばれる。
【0035】
以下で用いられる「ポリペプチド」は、ペプチド結合または改変ペプチド結合で互いに連結したアミノ酸を含む、あらゆるペプチドまたはタンパク質を意味する。「ポリペプチド」は、短い鎖(通常はペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーという)、および、より長い鎖(一般的にはタンパク質という)の両方を意味する。ポリペプチドは、遺伝子によってコードされた20種のアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。「ポリペプチド」は、翻訳後プロセシングのような天然のプロセス、または、当業界周知の化学修飾技術のいずれかによって改変されたアミノ酸配列を含む。このような改変は、基本的な教本やより詳細には研究論文でよく説明されており、同様に、多くの学術文献でも説明されている。改変は、ポリペプチドのどこでも(例えばペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、および、アミノまたはカルボキシル末端)起こり得る。当然ながら、所定のポリペプチドにおける複数の部位に、同種の改変が存在してもよく、その程度は、同じでもよいし異なっていてもよい。また、所定のポリペプチドに、多様な改変が含まれていてもよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐していてもよいし、分岐を有する、または有さない環式でもよい。環式ポリペプチド、分岐したポリペプチド、および、分岐した環式ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスによって生じたものでもよいし、または合成方法によって得られたものでもよい。改変または改変型としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合による付着、ヘム成分の共有結合による付着、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合による付着、脂質または脂質誘導体の共有結合による付着、ホスファチジルイノシトールの共有結合による付着、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有結合による架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAが介在する、アミノ酸のタンパク質への付加(例えばアルギニル化およびユビキチン化)が挙げられる(例えば、以下を参照:Proteins−Structure and Molecular Properties,第2版,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,ニューヨーク州,1993年;Wold,F.,Post−translational ProteinModifications:Perspectives and Prospects,1〜12頁 in Postranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson編,アカデミックプレス,ニューヨーク州,1983年;Seifter等,“Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors”,Meth Enzymol(1990年)182:626〜646、および、Rattan等,“Protein Synthesis:Post−translational Modifications and Aging”,Ann NY Acad Sci(1992年)663:4842)。
【0036】
本発明で用いられており、当業界で理解されている「合成(された)」とは、酵素的な方法に対して、単に化学的に製造されたポリヌクレオチドを意味する。それゆえに、「完全に」合成されたDNA配列は、もっぱら化学的手段によって製造されており、「部分的に」合成されたDNAは、得られたDNAの一部のみが化学的手段によって製造されているものを包含する。
【0037】
以下で用いられる「単離(された)」は、人間の手によって天然状態から改変されたことを意味する。「単離された」組成物または物質が天然に存在する場合、それらは、そのもとの環境より変化しているか、または、そのもとの環境から除去されているか、または、その両方である。例えば、生きている動物に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離」されていないが、共存する物質から分離された、その天然状態の同ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本発明で用いられる用語として「単離されている」。本発明で用いられており、当業界で理解されている「単離(された)」は、「単離された」ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味するかどうかに関わらず、そのポリペプチドまたは核酸が通常存在するもとの細胞環境から分離されていることを意味すると解釈される。それゆえに、本発明で用いられるように、単なる一例としては、本発明のポリヌクレオチドを用いて構築されたトランスジェニック動物または組換え細胞系において、「単離された」核酸が利用される。
【0038】
本発明で用いられる用語「イヌAHRポリペプチド」は、イヌAHR遺伝子(保存的または非保存的変化を含む対立遺伝子変異体を含む)によってコードされたタンパク質を意味する。一つのイヌAHRタンパク質配列は、配列番号2として開示されている。
【0039】
イヌAHRポリペプチドは、組換え細胞または生物によって製造してもよく、天然の組織または細胞系から実質的に精製されていてもよく、または、化学的または酵素的に合成されていてもよい。それゆえに、用語「イヌAHRポリペプチドは、グリコシル化された、部分的にグリコシル化された、または、グリコシル化されていない形態、同様に、リン酸化された、部分的にリン酸化された、リン酸化されていない形態、硫酸化された、部分的に硫酸化された、または、硫酸化されていない形態のタンパク質を含むものとする。この用語はまた、PS2アミノ酸配列の対立遺伝子変異体、その他の機能的に同等なものも含み、例えば、イヌAHRポリペプチドの生物学的に活性なタンパク質分解フラグメントまたはその他のフラグメント、および、生理学的および病理学的なタンパク質分解切断産物が挙げられる。
【0040】
本発明で用いられる用語「試験物質」は、あらゆる同定可能な化学物質または分子を意味し、例えば、これらに限定されないが、小さい分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチドまたは核酸が挙げられる。このような試験物質は、天然でもよいし、合成でもよい。
【0041】
本発明で用いられる用語「を接触させる(こと)」は、直接的または間接的のいずれかで、化合物を、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと物理的に近接させることを意味する。本ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多様な緩衝液、塩、溶液などに存在させることができる。接触させることしては、例えば、化合物を、以下のものに置くこと、が挙げられる:ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコ、または、マイクロアレイなど、例えばイオンチャンネルポリペプチドもしくはそれらのフラグメント、または、イオンチャンネルもしくはそれらのフラグメントをコードする核酸分子のいずれかを含む遺伝子チップ、。
【0042】
本発明の核酸
本発明は、イヌAHRポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド(例えば、DNA配列およびRNA転写物、センスおよび相補アンチセンス鎖の両方、一本鎖および二本鎖の両方、例えばそれらのスプライス変異体)を提供し、これらは、本発明においてイヌAHRという。本発明のDNAポリヌクレオチドとしては、ゲノムDNA、cDNA、および、全部または部分的に化学合成されたDNAが挙げられる。
【0043】
本発明のゲノムDNAは、本発明のポリペプチドに関するタンパク質をコードする領域を含み、それらの対立遺伝子変異体も含むものとする。多くの遺伝子にとって、ゲノムDNAはRNA転写物に転写され、その転写物は1またはそれ以上のスプライシング現象を受け、ここで転写物のイントロン(すなわち非コーディング領域)が除去されるか、または、「スプライスして除去される(spliced out)」ことが、広く理解されている。オルタナティブなメカニズムによってスプライシングすることができ、それゆえに異なるRNA配列が除去されやすいが、それでもイヌAHRポリペプチドをコードしているRNA転写物は、当業界ではスプライス変異体と呼ばれており、これも本発明に包含される。それゆえに、本発明によって理解されるスプライス変異体は、同じもとのゲノムDNA配列によってコードされているが、別個のmRNA転写物から生じる。対立遺伝子変異体は、野生型遺伝子配列の改変型であり、その改変は、染色体分離の際の組換えによって、または、遺伝子突然変異を起こすような条件に晒すことによって生じる。対立遺伝子変異体は、野生型遺伝子と同様に、天然に存在する配列である(インビトロでの操作で生じる天然に存在しない変異体とは対照的に)。
【0044】
本発明はまた、イヌAHRをコードするRNAポリヌクレオチドの逆転写から得られたcDNAを包含する(従来、それに続いて、相補鎖の第二鎖が合成され、二本鎖DNAが提供される)。
【0045】
イヌAHRポリペプチドをコードするDNA配列は配列番号1に記載されている。当業者であれば、本発明のDNAは、二本鎖分子を含むことを容易に理解でき、このような二本鎖分子としては、例えば、DNAに関するワトソン−クリック塩基対の規則に従って配列番号1の配列から推測できる配列を有する相補分子(「非コード鎖」または「相補鎖」)との、配列番号1に記載の配列を有する分子である。また、本発明は、配列番号2のイヌAHRポリペプチドをコードし、普遍的な遺伝子コードの周知の縮重に基づいて配列番号1のポリヌクレオチドとは配列が異なるその他のポリヌクレオチドも考慮している。
【0046】
当業界周知であるように、遺伝子コードの縮重のために、上述の配列番号1のポリペプチドによってコードされたポリペプチドと同じポリペプチドをコードし得る多数のその他のDNAおよびRNA分子が存在する。それゆえに、本発明は、発現の際に、配列番号2のポリペプチドをコードするその他のDNAおよびRNA分子を考慮している。イヌAHRポリペプチドをコードするアミノ酸残基配列を同定し、それぞれの特定のアミノ酸残基に関する全てのトリプレットコドンの情報を用いることにより、このようなコードRNAおよびDNA配列全てを示すことができる。それゆえに、本発明において特に開示されたもの以外の、単に特定のアミノ酸に関するコドンが変化していることを特徴とするDNAおよびRNA分子は、本発明の範囲内にある。
【0047】
アミノ酸およびそれらの典型的な略語、記号およびコドンの表を以下の表1に記載する。
【表1】

【0048】
当業界周知であるが、コドンは、mRNAおよびそれらに対応するcDNA分子におけるヌクレオチドのトリプレット配列を構成する。コドンは、mRNA分子に存在する場合、塩基ウラシル(U)を特徴とし、DNAに存在する場合、塩基チミジン(T)を特徴とする。ポリヌクレオチド内の同じアミノ酸残基に関するコドンの単純な変化は、をコードされたポリペプチドの配列または構造を変化させない。特定の3つのヌクレオチド配列が、特定のアミノ酸のいずれかを「コードする」と述べられている場合、当業者であれば、上記の表は、問題の特定のヌクレオチドを同定する手段を提供することが認識できることは明白である。一例として、特定の3つのヌクレオチド配列が、スレオニンをコードする場合、上記の表は、考えられるトリプレット配列は、ACA、ACG、ACCおよびACU(DNAの場合ACT)であることを開示する。
【0049】
本発明はさらに、イヌAHRのDNAの、同族種(好ましくは哺乳動物)を包含する。同族種は、場合によっては、「オーソログ」ともいい、本発明の配列番号1と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する。本発明のポリヌクレオチドに関するパーセント配列「相同性」は、本発明においては、配列を並べ、最大パーセント配列同一性を達成するために必要に応じてギャップを導入した後の、配列番号1に記載のイヌAHR配列におけるヌクレオチドと同一な候補配列におけるヌクレオチド塩基のパーセンテージと定義される。天然イヌAHR配列と、変異体イヌAHR配列との配列のパーセンテージはまた、例えば、この目的のために一般的に用いられているコンピュータープログラムのいずれかを用いて2つの配列を比較することによって決定してもよく、このようなプログラムとしては、例えばGapプログラムが挙げられ(ウィスコンシン・シークエンス・アナリシス・パッケージ,バージョン8(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version8),ユニックス用,ジェネティック・コンピューター・グループ・ユニバーシティ・リサーチ・パーク(Genetics Computer Group,University Research Park),マディソン,ウィスコンシン州)、これは、SmithおよびWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.2:482〜489(1981年))を用いる。
【0050】
本発明によって提供されたポリヌクレオチド配列情報によって、周知で、当業界で習慣的に実施されている技術によって、コードされたポリペプチドを大規模発現させることができる。本発明のポリヌクレオチドはまた、関連するイヌAHRポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばヒト対立遺伝子変異体および同族種)を、周知の技術によって同定および単離することを可能にし、このような技術としては、サザンおよび/またはノーザンハイブリダイゼーション、および、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。関連するポリヌクレオチドの例としては、ヒトおよび非ヒトゲノム配列が挙げられ、例えば、対立遺伝子変異体、同様に、イヌAHRに相同なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および、イヌAHRの生物学的、免疫学的および/または物理特性の1またはそれ以上を有する構造的に関連するポリペプチドである。イヌAHRのDNAの配列の知識はまた、サザンハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用によって、イヌAHR発現コントロール調節配列(例えばプロモーター、オペレーター、エンハンサー、リプレッサーなど)をコードするゲノムDNA配列の同定を可能にする。本発明のポリヌクレオチドはまた、細胞がイヌAHRを発現する能力を検出するため、または、イヌAHRの発現レベルを測定するためのハイブリダイゼーション分析において有用である。本発明のポリヌクレオチドはまた、病状の原因となるイヌAHR遺伝子座における遺伝学的な変更を同定するのに有用な診断方法の基礎とすることもでき、このような情報は、診断と治療戦略の選択との両方に有用である。
【0051】
本発明における、イヌAHRポリペプチドをコードする全長ポリヌクレオチドの開示により、当業者は全長ポリヌクレオチドの全ての可能なフラグメントを容易に利用可能になる。それゆえに、本発明は、イヌAHRをコードするポリヌクレオチドの少なくとも12〜2562(この範囲内のいずれかの整数値)個の連続したヌクレオチドを含むイヌAHRをコードするポリヌクレオチドのフラグメントを提供する。本発明のポリヌクレオチド(フラグメントを含む)は場合によって、イヌAHRをコードするポリヌクレオチド配列に特有な配列を含み、それゆえに、高度にストリンジェントまたは中度にストリンジェントな条件下のみで(すなわち「特異的に」)、イヌAHRをコードするポリヌクレオチド(またはそれらのフラグメント)にハイブリダイズする。本発明のゲノム配列のポリヌクレオチドフラグメントは、コード領域に特有の配列を含むだけでなく、イントロン、調節領域、および/または、その他の非翻訳配列から得られた全長配列のフラグメントも含む。本発明のポリヌクレオチドに特有の配列は、その他の既知のポリヌクレオチドとの配列比較によって認識することができ、当業界で習慣的に利用されるアライメントプログラムの使用によって同定することができ、このようなプログラムとしては、例えば、公共の配列データベースで利用可能のプログラムが挙げられる。このような配列はまた、サザンハイブリダイゼーション解析によって認識可能であり、ポリヌクレオチドがハイブリダイズする可能性があるゲノムDNAのフラグメントの数を決定することができる。本発明のポリヌクレオチドは、それらの検出が可能になるような様式で標識することができ、このような標識としては、放射活性、蛍光および酵素標識が挙げられる。
【0052】
フラグメントのポリヌクレオチドは、全長またはその他のフラグメントのイヌAHRのポリヌクレオチドの検出のためのプローブとして特に有用である。1またはそれ以上のフラグメントのポリヌクレオチドをキットに含めることができ、このキットは、イヌAHRをコードするポリヌクレオチドの存在を検出すること、または、イヌAHRをコードするポリヌクレオチド配列における変化を検出することに用いられる。
【0053】
本発明はまた、高いストリンジェントのハイブリダイゼーションまたは洗浄条件で、非コード鎖または配列番号1のポリヌクレオチドの相補鎖にハイブリダイズする、イヌAHRポリペプチドをコードするDNAも包含する。
【0054】
高いストリンジェントのハイブリダイゼーションの考えは、以下の「本発明の分析」を詳述した章で説明される。
【実施例】
【0055】
実施例1
イヌAHRのクローニング
イヌAHRのPCR産物を生成するプライマーを設計するために、ヒト、ラットおよびマウスAHRに関する各遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)配列を、DNASTARソフトウェア(DNASTAR,ウィスコンシン州)を用いて並べた。各遺伝子に対してプライマー3セットを選択した。それらのなかから、2セットは、それぞれヒトおよびラットオーソログの開始および停止配列領域に対応し、その他のセットは、ヒト、ラットおよびマウスオーソログ間で保存された配列領域に従って設計された。プライマーは、一般的に、長さが30個のヌクレオチドである。
【0056】
ヒトPSDデータベース(プロテオーム社(Proteome Inc.))、および、NCBI ESTデータベースサーチによって、選択されたクローニング候補遺伝子の組織発現パターンを同定した(相同なESTがクローニングされた組織を同定することによって)。5種の組織、すなわち肝臓、腎臓、結腸、脾臓および肺において、12種の選択された遺伝子全てが示されたことを同定した。
【0057】
イヌの肝臓サンプルからのRNAを、Rneasyキット(キアゲン(Qiagen),カリフォルニア州)を用いて製造した。RNAをcDNAに逆転写するために、RNA(0.5μg)を、32.5μMランダムヘキサマー(アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences),ニュージャージー州)(5.77μl)、および、10mMのdNTP(2.5μl)とを混合した(総容積12.5μl)。この混合物を65℃で5分間インキュベートし、氷上で冷却した。RNアーゼ非含有水(2μl)、5×第1鎖緩衝液(インビトロジェン,カリフォルニア州)(5μl)、100mMのDTT(0.5μl)、40U/μlのRNアーゼOUT(インビトロジェン,カリフォルニア州)(2.5μl)、および、200U/μlのスーパースクリプト(Superscript)II逆転写酵素(インビトロジェン(インビトロジェン),カリフォルニア州)(2.5μl)を含むマスターミックス(12.5μl)を、加えた。最終反応混合物を、連続的に、25℃で10分間、42℃で60分間、および、70℃で15分間インキュベートした。PCR反応のテンプレートとして直接的使用するために、合成されたcDNAを20倍希釈し(最終濃度約1ng/μl)、−20℃のフリーザーで保存した。
【0058】
RACE(Rapid Amplification of cDNA ends)反応に由来する条件での改変されたPCR反応を用いて、イヌの遺伝子または遺伝子フラグメントをクローニングした。PCR反応液(50μl)は、逆転写されたcDNA(5μl)、10×PCR緩衝液(クロンテック(Clontech),カリフォルニア州)(5μl)、50×dNTPミックスのdNTP(それぞれ10mM、最終的にはそれぞれ0.2mM、クロンテック,カリフォルニア州)(1μl)、それぞれ20μMの5’および3’プライマー(1μl)である。用いられたプライマー配列は以下の通りである:
ATGAACAGCAGCAGCGCCAACATCACCTACG(配列番号3)
TTACAGGAATCCACTGGATGTCAAATCAGG(配列番号4)
【0059】
クロンテック・アドバンテージ2Taqポリメラーゼ(50×)(1μl)、および、PCR水(クロンテック,カリフォルニア州)(36μl)を混合した。この混合物を94℃で1分間インキュベートし、タッチダウンPCRプロトコール(94℃で15秒間、次に72℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間、次に70℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間、次に68℃で4分間を25サイクル)で処理した。PCR反応の最初のラウンドでクローニングされない遺伝子のための、より低いストリンジェントのPCR条件は、94℃で15秒間、次に68℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間、次に65℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間、次に62℃で4分間を25サイクルである。PCRフラグメントの長さおよび濃度を、アジレント(Agilent)2100バイオアナライザー(Bioanalyzer)で、製造元の説明書に従ってDNA7500チップ(アジレント,カリフォルニア州)を用いて試験する。
【0060】
DNAの製造および配列解析
PCR産物の配列解析は、ABI377蛍光ベースシーケンサー(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)/アプライド・バイオシステムズ・ディビジョン(Applied Biosytems Division)、PE/ABD,フォスターシティ,カリフォルニア州)、および、ABI PRISMTMレディダイ−デオキシターミネーターキット(ABI PRISMTM Dye−Deoxy Terminator kit)をTaq FSTMポリメラーゼと共に用いて、以下のプライマーを用いて行った:
GCCAAGAGCTTCTTTGATGTTGCATTAAA(配列番号5)
AGTACGGTGAAAGAGGTCAGAATTAGTA(配列番号6)
GCCATTCAGAGCCTGTAATAAG(配列番号7)
CAGTAGTCTGTTATAACCCAG(配列番号8)
GGAAATTTTGAACCATCCCC(配列番号9)
AAAGTTCTGTGTACATGGCATAG(配列番号10)
【0061】
各ABIサイクルシーケンス反応液は、プラスミドDNA(約0.5μg)を含む。サイクルシーケンスは、最初に、98℃で1分間変性させ、続いて、98℃で30秒間変性、50℃で30秒間アニーリング、および、60℃で4分間伸長を50サイクルを用いて行われる。温度サイクルおよび回数は、パーキン・エルマー9600サーモサイクラーによって制御される。CentriflexTMゲルろ過カートリッジ(アドバンスト・ジェネティック・テクノロジーズ社(Advanced genetic Technologies Corp.),ゲイザースバーグ,メリーランド州)を用いて、伸長産物を単離する。各反応生成物をピペットでカラムにローディングし、これを次に、振盪バケット遠心分離機(ソーバル(Sorvall)モデルRT6000B卓上遠心分離機)で、1500×gで4分間、室温で遠心分離する。カラムで精製したサンプルを、吸引下で約40分間乾燥させ、次に、DNAローディング溶液(83%脱イオン化ホルムアミド、8.3mMのEDTA、および、1.6mg/mlブルーデキストラン)(5μl)に溶解させる。次に、サンプルを90℃で3分間加熱し、ABI377シーケンサーによる配列解析のために、ゲルサンプルウェルにローディングする。ABI377ファイルをDNASTAR(DNASTAR,マディソン,ウィスコンシン州)プログラムにインポートすることによって配列解析を行った。一般的に、700bpの配列の読み出しが得られた。起こり得る配列エラーは、両方のDNA鎖から配列情報を得ることによって、および、困難なエリアを、全ての配列解析のあいまいさが除去されるまで異なる位置のプライマーを用いて繰り返し配列解析することによって最小化した。配列番号1は、その産物の配列を示す。
【0062】
配列解析データをヒト遺伝子オーソログと並べ、配列トレースデータに従って手動でキュレートした。配列解析の最初のラウンドの後に完全に終わらなかったクローニングされた遺伝子または遺伝子フラグメントのために、プロジェクト全体が完了するまで、キュレートした配列データに基づきさらなる配列解析プライマーを発注した。イヌコード配列は、ヒト、ラットおよびマウス相同体にそれぞれ85%、73%および73%同一なタンパク質をコードする。イヌDNAコード配列は、ヒト、ラットおよびマウスのコードDNA配列と89%、それぞれ77%、77%同一である。(比較は、ヒトmRNAについてはGenbank NM_001621、マウスmRNAについてはNM_013464、ラットmRNAについてはNM_013149、および、ヒトタンパク質についてはNP_001612、マウスタンパク質についてはNP_038492、ラットタンパク質についてはNP_037281に基づく)。
【0063】
図1および2に、新規に発見されたイヌ配列と、その他の3種の相同体とのアライメントを示す。
【0064】
この配列番号1の配列を得る方法は例証であり、配列番号1を開示することによって、当業者に、配列番号1の配列全体を得る多数の方法が提供されることを認識すべきである。一例として、配列番号1で開示されている配列からプローブを生成し、イヌcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングし、それによって配列番号1全体またはそのゲノム同等物を得ることも可能であり得る。Sambrook等(編),Molecular Cloning:A Laboratoiy Manual,コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press):コールドスプリングハーバー,ニューヨーク州(1989年)。また、一例として、当業者であれば容易に理解できるが、配列番号1に開示されている配列と仮定した場合、PCR増幅に適したプライマーを生成し、配列番号1によって示される配列全体を得ることが可能である。(例えば、PCR Technology,H.A.Eriich編,ストックトンプレス(Stockton Press),ニューヨーク州,1989年;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,M.A.Innis,David H.Gelfand,John J.SninskyおよびThomas J.White編,アカデミックプレス社(Academic Press,Inc.),ニューヨーク州,1990年を参照)。
【0065】
本発明の宿主細胞およびベクター
また、自律的に複製する組換え発現コンストラクト、例えば本発明のポリヌクレオチドを取り込んだプラスミドおよびウイルスDNAベクターも提供される。また、イヌAHRをコードするポリヌクレオチドが、内因性または外因性の発現制御DNA配列、および、転写ターミネーターに操作可能に結合している発現コンストラクトも提供される。発現制御DNA配列は、プロモーター、エンハンサーおよびオペレーターを含み、一般的に、発現コンストラクトが利用できる発現系に基づき選択される。プロモーターおよびエンハンサー配列は、一般的に、遺伝子発現を増加させる能力のために選択され、一方、オペレーター配列は、一般的に、遺伝子発現を調節する能力のために選択される。また、本発明の発現コンストラクトは、コンストラクトを有する宿主細胞の同定を可能にする1またはそれ以上の選択マーカーをコードする配列を含んでもよい。また、発現コンストラクトは、宿主細胞における相同組換えを容易にする、好ましくは促進する配列を含んでもよい。また、本発明のコンストラクトは、宿主細胞における複製に必要な配列も含む。
【0066】
発現コンストラクトは、コードされたタンパク質の生産に利用することが好ましいが、単にイヌAHRをコードするポリヌクレオチド配列を増幅するのに利用してもよい。
【0067】
本発明のその他の形態によれば、コードされたイヌAHRポリペプチドの発現を可能にする方法で本発明のポリヌクレオチド(または本発明のベクター)を含む宿主細胞(例えば原核および真核細胞)が提供される。本発明のポリヌクレオチドは、環状プラスミドの一部として、または、単離されたタンパク質のコード領域を含む直線状DNAまたはウイルスベクターとして、宿主細胞に導入されてもよい。当業界で周知であり、習慣的に実施されているDNAを宿主細胞に導入する方法としては、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、核インジェクション、または、キャリアー(例えばリポソーム、ミセル、ゴースト細胞、および、プロトプラスト)との融合が挙げられる。本発明の発現系としては、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、無脊椎動物および哺乳動物細胞系が挙げられる。
【0068】
イヌAHRポリペプチドの発現に適した宿主細胞としては、原核生物、酵母、および、より高度な真核細胞が挙げられる。イヌAHRポリペプチドの発現に用いられ得る適切な原核性の宿主としては、これらに限定されないが、エシェリキア、バシラスおよびサルモネラ属の細菌、同様に、シュードモナス、ストレプトマイセスおよびスタフィロコッカス属のメンバーが挙げられる。
【0069】
本発明の単離された核酸分子は、原核細胞における発現用に設計されたベクターよりむしろ、好ましくは、真核細胞における発現用に設計されたベクターにクローニングされる。場合によっては、より高度な真核生物から得られた遺伝子の発現には真核細胞が好ましいが、なぜなら、通常、これらのタンパク質の合成、プロセシングおよび分泌のシグナルは認識されるが、場合によっては原核性の宿主にはこれが当てはまらないためである(Ausubel等編,Short Protocols in Molecular Biology,第2版,ジョン・ワイリー&サンズ,パブリッシャーズ(John Wiley & Sons,publishers),16〜49頁,1992年)。イヌAHRの場合、N結合型グリコシル化に関する2つのコンセンサス配列が存在し、タンパク質キナーゼCリン酸化とO−グリコシル化に関するその他の翻訳後修飾部位が予測できる。真核性の宿主としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:昆虫細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト293細胞、および、マウス3T3線維芽細胞。
【0070】
一般的に、原核性の宿主で使用するための発現ベクターは、1またはそれ以上の表現型選択マーカー遺伝子を含む。一般的に、このような遺伝子は、例えば抗生物質耐性を付与するタンパク質、または、栄養要求性を供給するタンパク質をコードする。このような多種多様なベクターは、商業的な供給源から容易に利用可能である。例えば、pSPORTベクター、pGEMベクター(プロメガ(Promega))、pPROEXベクター(LTI,ベセスダ,メリーランド州)、ブルースクリプト(Bluescript)ベクター(ストラタジーン(Stratagene))、および、pQEベクター(キアゲン)が挙げられる。
【0071】
また、例えばイヌAHRは、サッカロミセス、ピチアおよびクルイベロマイセス(Kluveromyces)属由来の酵母宿主細胞で発現させてもよい。酵母宿主としては、S.セレビジエ(S.cerevisiae)、および、P.パストリス(P.pastoris)が挙げられる。酵母ベクターは、場合によっては、2ミクロン酵母プラスミド由来の複製配列起点、自律的に複製する配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写停止のための配列、および、選択マーカー遺伝子を含んでもよい。また、酵母とE.coliの両方で複製可能なベクター(シャトルベクターという)も使用できる。上述の酵母ベクターの特徴に加えて、シャトルベクターはまた、E.coliにおける複製および選択のための配列を含み得る。酵母宿主で発現されたイヌAHRポリペプチドの直接的な分泌は、イヌAHRをコードするヌクレオチド配列の5’末端に、酵母因子のリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を封入することによって達成してもよい。
【0072】
また、昆虫宿主細胞の培養系をイヌAHRポリペプチドの発現に用いてもよい。他の実施形態において、本発明のイヌAHRポリペプチドは、バキュロウイルス発現系を用いて発現される。昆虫細胞における異種タンパク質発現のためのバキュロウイルス系の使用に関するさらなる情報は、LuckowおよびSummers,Bio/Techmlogy 6:47(1988年)で総論されている。
【0073】
他の実施形態において、イヌAHRポリペプチドは、哺乳動物宿主細胞で発現される。適切な哺乳動物細胞系の非限定的な例としては、サル腎臓細胞のCOS−7系(Gluizman等,Cell 23:175(1981年))、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、および、ヒト293細胞が挙げられる。
【0074】
もちろん、本発明のイヌAHRポリペプチドの発現に適した発現ベクターの選択は、用いられる特定の宿主細胞に依存し、当業者の技術の範囲内である。適切な発現ベクターの例としては、pcDNA3(インビトロジェン)、および、pSVL(ファルマシアバイオテク(Pharmacia Biotech))が挙げられる。哺乳動物宿主細胞で使用するための発現ベクターは、ウイルスゲノム由来の転写および翻訳制御配列を含んでもよい。本発明において用いることができる、一般的に用いられるプロモーター配列および調節配列としては、これらに限定されないが、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス2、ポリオーマウイルス、および、シミアンウイルス40(SV40)由来のものが挙げられる。哺乳動物発現ベクターの構築方法は、例えば、OkayamaおよびBerg(Mol.Cell.Biol.5:280(1983年));Cosman等(Mol.Immunol.23:935(1986年));Cosman等(Nature 312:763(1984年));EP−A−0367566;および、WO91/18982で開示されている。
【0075】
実施例2
真核宿主細胞におけるイヌAHRの発現
イヌAHRタンパク質を生産するために、イヌAHRをコードするポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞中で、適切な発現ベクターを用いて、標準的な遺伝子操作技術を用いて発現される。例えば、実施例1で説明されているイヌAHRをコードする配列は、市販の発現ベクターpzeoSV2(インビトロジェン,サンディエゴ,カリフォルニア州)にサブクローニングされ、トランスフェクション試薬fuGENE6(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer−Mannheim))を用いてチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクトされる(トランスフェクションプロトコールは、製品の説明書に記載されている)。その他の真核細胞系としては、ヒト胎児腎臓HEK293、および、COS細胞が挙げられ、同様に適切である。100μg/mlのゼオシン(ストラタジーン,ラホヤ,カリフォルニア州)の存在下で成長させることによって、安定してイヌAHRを発現する細胞が選択される。場合により、標準的な クロマトグラフ技術を用いてイヌAHRを細胞から単離する。精製を容易にするために、イヌAHRアミノ酸配列の一部に対応する1またはそれ以上の合成ペプチド配列に対して抗血清を生じさせてもよく、抗血清を用いて、イヌAHRを親和性で精製することができる。精製を容易にするために、イヌAHRを、タグ配列(例えば、ポリヒスチジン、血球凝集素、FLAG)を有するフレームで発現させてもよい。
【0076】
本発明の宿主細胞は、イヌAHRと特異的に免疫活性を有する抗体を開発するための、有用な免疫原の源である。また、本発明の宿主細胞は、イヌAHRポリペプチドの大規模生産方法においても有用であり、この場合、適切な培養培地中で細胞を成長させ、当業界既知の精製方法によって望ましいポリペプチド産物を細胞または細胞を成長させた培地から単離するが、このような精製方法としては、例えば従来のクロマトグラフ方法が挙げられ、例えば免疫親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、レクチン親和性クロマトグラフィー、サイズ除去ろ過、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLCなどである。さらにその他の精製方法としては、望ましいタンパク質が発現され、特異的な結合パートナーまたは物質によって認識される特異的なタグ、標識またはキレート成分を有する融合タンパク質として単離されるような方法が挙げられる。単離されたタンパク質を切断し、望ましいタンパク質を得てもよいし、または、インタクトな融合タンパク質のままでもよい。融合成分の切断により、切断プロセスの結果として追加のアミノ酸残基を有する望ましいタンパク質の形態が生産され得る。
【0077】
内因性イヌAHRの発現を可能にする、または、それらを増加させるために、イヌAHRのDNA配列情報は、細胞の改変を考慮している。細胞を改変して(例えば相同組換えによって)、細胞がより高いレベルでイヌAHRを発現するように、全体または部分的に、天然に存在するイヌAHRプロモーターを、異種プロモーターの全部または一部で置換することによって発現の増加を提供することができる。異種プロモーターは、内因性イヌAHRをコードする配列に操作可能に結合するような様式で挿入される。[例えば、PCT国際公開番号WO94/12650、PCT国際公開番号WO92/20808、および、PCT国際公開番号WO91/09955を参照]。また、異種プロモーターDNAに加えて、増幅可能なマーカーDNA(例えば、ada、dhfr、および、多機能のCAD遺伝子、これは、カルバミルリン酸シンターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ、および、ジヒドロオロターゼをコードする)、および/または、イントロンDNAを、異種プロモーターDNAと共に挿入することも考慮される。イヌAHRコード配列に連結させる場合、標準的な選択方法によるマーカーDNAの増幅により、細胞において、イヌAHRコード配列の共増幅が起こる。
【0078】
また、本発明によって提供されたDNA配列情報によって、例えば、機能的なイヌAHRを発現できない動物、または、イヌAHRの変異体を発現する動物の、相同組換えまたは「ノックアウト」方法による[Capecchi,Science 244:1288〜1292(1989年)]による開発も可能になる。このような動物(特に小さい実験動物、例えばラット、ウサギおよびマウス)は、インビボでのイヌAHRの活性、および、イヌAHRの調節因子を研究するためのモデルとして有用である。
【0079】
また、本発明は、イヌAHRをコードするポリヌクレオチドを認識し、ハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチドを利用可能にする。全長およびフラグメントのアンチセンスポリヌクレオチドが提供される。本発明のフラグメントのアンチセンス分子は、(i)イヌAHRを特異的に認識し、ハイブリダイズするもの(例えば、イヌAHRをコードするDNAと、その他の既知の分子をコードするDNAとの配列比較によって決定されたもの)を含む。イヌAHRをコードするポリヌクレオチドに特有の配列の同定は、あらゆる公共で利用可能な配列データベースの使用、および/または、市販されている利用可能な配列比較プログラムの使用によって、推測することができる。選択された配列のゲノム全体における特有性は、ハイブリダイゼーション解析によってさらに確認することができる。望ましい配列を同定した後、制限消化による単離、または、当業界で周知の様々なポリメラーゼ連鎖反応技術のいずれかを用いた増幅を行うことができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、イヌAHRのmRNAを発現する細胞によってイヌAHRの発現を調節するのに特に適切である。
【0080】
イヌAHR発現制御配列またはイヌAHRのRNAに特異的に結合することができるアンチセンス核酸(好ましくは10〜20塩基対のオリゴヌクレオチド)は、細胞に導入される(例えば、ウイルスベクターまたはコロイド分散系、例えばリポソームによって)。アンチセンス核酸は、細胞中でイヌAHR標的ヌクレオチド配列に結合し、標的配列の転写または翻訳を妨害する。本発明による治療的な使用には、ホスホロチオエートおよびメチルホスホネートアンチセンスオリゴヌクレオチドが特に考慮される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それらの5’末端の、ポリ−L−リシン、トランスフェリン、ポリリシン、または、コレステロール成分によってさらに改変されてもよい。異常なイヌAHR発現を特徴とする病気のための、または、治療方式としての細胞または動物モデルを生成するには、転写または翻訳レベルいずれかでのイヌAHR発現の抑制が有用である。
【0081】
本発明で示されるイヌAHR配列は、天然の細胞および動物、および、イヌAHRのポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクトされた細胞におけるイヌAHR発現を調節するための、新規の転写因子の設計を容易にする。例えば、Cys2−His2ジンクフィンガータンパク質は、それらのジンクフィンガードメインを介してDNAと結合するが、異なる標的配列の認識をもたらす構造的変化を受けることが示されている。これらの人工ジンクフィンガータンパク質は、高い親和性と低い解離定数を有する特異的な標的部位を認識し、遺伝子切り替えとして作用し、遺伝子発現を調節することができる。本発明の特定のイヌAHR標的配列の情報は、既知の方法(例えば、構造に基づくモデリング、および、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングの組合わせ)を用いた、標的配列に特異的なジンクフィンガータンパク質の加工を容易にする[Segal等(1999年)Proc Natl Acad Sci USA 96:2758〜2763;Liu等(1997年)Proc Natl Acad Sci USA 94:5525〜30;GreismanおよびPabo(1997年)Science 275:657〜61;Choo等(1997年)J Mol Biol 273:525〜32]。各ジンクフィンガードメインは通常、3個またはそれ以上の塩基対を認識する。18塩基対の認識配列は、一般的に、あらゆる既知ゲノムにおいて認識配列を固有にするのに十分な長さであることから、ジンクフィンガーの6個のタンデムリピートからなるジンクフィンガータンパク質が、特定の配列に対する特異性を確実にすると予想される[Segal等(1999年)Proc Natl Acad Sci USA 96:2758〜2763]。イヌAHR配列に基づいて設計された人工ジンクフィンガーリピートが活性化または抑制ドメインに融合して、イヌAHR発現を促進または抑制することができる[Liu等(1997年)Proc Natl Acad Sci USA 94:5525〜30]。あるいは、ジンクフィンガードメインを、TATAボックス結合因子(TBP)に融合させ(ジンクフィンガーペプチドとTBPとの間に様々な長さのリンカー領域を有する)、転写アクチベーターまたはリプレッサーのいずれかを作製することができる[Kirn等(1997年)Proc Natl Acad Sci USA 94:3616〜3620]。このようなタンパク質、および、それらをコードするポリヌクレオチドは、天然の細胞、動物およびヒト;および/または、イヌAHRをコードする配列でトランスフェクトされた細胞の両方において、インビボでイヌAHR発現を調節するための有用性がある。転写因子を発現するコンストラクトをトランスフェクトすることによって(遺伝子治療)、または、タンパク質を導入することによって、新規の転写因子を標的細胞に運搬することができる。また、加工されたジンクフィンガータンパク質は、アンチセンスまたは触媒機能を持つRNAの方法の代わりの治療で使用するためのRNA配列と結合するように設計することができる[McColl等(1999年)Proc Natl Acad Sci USA 96:9521〜6;Wu等(1995年)Proc Natl Acad Sci USA 92:344〜348]。本発明は、このような転写因子を本発明の遺伝子配列に基づいて設計する方法、同様に、細胞(天然または形質転換されている細胞)でイヌAHR発現を調節するのに有用な、カスタマイズされたジンクフィンガータンパク質(その遺伝学的な相補鎖は、これらの配列を含む)を考慮する。
【0082】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドによってコードされた、単離された哺乳動物のイヌAHRポリペプチドを提供する。
【0083】
本発明のポリペプチド
イヌAHRポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2に記載されている。配列番号2で例示される本発明のアミノ酸配列は、数種の興味深い特徴を有する。
【0084】
本発明はまた、配列番号2に記載のポリペプチドと、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性および/または相同性を有するポリペプチドも包含する。本発明において、配列番号2のポリペプチドに関するパーセントアミノ酸配列「同一性」は、最大パーセント配列同一性が達成されるように、両方の配列を並べ、必要に応じてギャップを導入した後の、イヌAHR配列における残基と同一な候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージと定義され、配列同一性の一環としていずれの保存的置換も考慮していない。本発明において、配列番号2のポリペプチドに関するパーセント配列「相同性」は、最大パーセント配列同一性が達成されるように、配列を並べ、必要に応じてギャップを導入した後の、イヌAHR配列における残基と同一な候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージと定義され、配列同一性の一環としてあらゆる保存的置換を考慮している。一形態において、パーセント相同性は、アライメントを最大化するために、長さ100個のアミノ酸につき4つのギャップを導入して、比較される配列において同一なアミノ酸残基で並べた2つの配列の小さいほうにおけるアミノ酸残基のパーセンテージとして計算される[Dayhoff,in Atlas of Protein Sequence and Structure,第5巻,124頁,National Biochemical Research Foundation,ワシントン,D.C.(1972年),参照により本発明に加入させる]。
【0085】
本発明のポリペプチドは、天然の細胞源から単離してもよし、または、化学合成してもよいが、好ましくは、本発明の宿主細胞に関する組換え方法によって製造される。哺乳動物宿主細胞の使用により、本発明の組換え発現産物に最適な生物学的活性を付与するのに必要な可能性がある翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、トランケーション、脂質化およびリン酸化)が提供されると思われる。イヌAHRポリペプチドのグリコシル化型および非グリコシル化型が包含される。
【0086】
上記で説明されている真核性および原核性の宿主における過剰発現は、イヌAHRポリペプチドの単離を容易にする。それゆえに、本発明は、標識された、およびタグを有するポリペプチドを含む、配列番号2に記載の単離されたイヌAHRポリペプチドおよび変異体、ならびに、保存的アミノ酸置換を含む。
【0087】
本発明は、「標識された」イヌAHRポリペプチドを含む。本発明において用いられる用語「標識された」は、標識される化合物に、あらゆる適切な検出可能な基、例えば酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼ、および、β−D−ガラクトシダーゼ)、蛍光標識(例えばフルオレセイン、ルシフェラーゼ)、および、放射標識(例えば、14C、125I、3H、32P、および、35S)が、連結または共有結合することを意味する。タンパク質、ペプチドおよび抗体などの様々な化合物を標識する技術は周知である。例えば、Morrison,Methods in Enzymology 32b,103(1974年);Syvanen等,J.Biol.Chem.284,3762(1973年);BoltonおよびHunter,Biochem.J.133,529(1973年)を参照。用語「標識(された)」はまた、以下で考察されるようなアミノ酸タグを共有結合で付着させたポリペプチドも含み得る。
【0088】
加えて、本発明のイヌAHRポリペプチドは、間接的に標識されてもよい。これは、ポリペプチドへの共有結合による成分の付加、それに続く、付加された成分への特異的な結合を示す標識または標識された化合物への、付加された成分のカップリングを含む。間接的な標識に関して、ペプチドのビオチン化、それに続く、上記標識基の一つにカップリングしたアビジンへの結合を含み得る。その他の例として、ヒスチジンタグに特異的な放射標識された抗体を、ポリヒスチジンタグを含むイヌAHRポリペプチドとインキュベートすることもある。抗体がタグに対してかなりの親和性を有するために、正味の作用は、ポリペプチドに放射活性抗体を結合させることである。
【0089】
本発明はまた、イヌAHRタンパク質の変異体(または類似体)も包含する。一例において、1またはそれ以上のアミノ酸残基がイヌAHRアミノ酸配列に追加された挿入変異体が提供される。挿入は、タンパク質の末端のいずれかに存在してもよいし、または、その両方に存在してもよく、または、イヌAHRタンパク質のアミノ酸配列の内部領域内に位置してもよい。末端のいずれかまたはその両方に追加の残基を含む挿入変異体は、例えば、アミノ酸タグまたは標識を含む融合タンパク質およびタンパク質を含んでもよい。挿入変異体は、1またはそれ以上のアミノ酸残基が、イヌAHRアミノ酸配列またはそれらの生物学的に活性なフラグメントに付加されているイヌAHRポリペプチドを含む。
【0090】
それゆえに、挿入変異体はまた、イヌAHRのアミノおよび/またはカルボキシ末端がその他のポリペプチドに融合した融合タンパク質も含み得る。様々なタグポリペプチドおよびそれらそれぞれの抗体は、当業界周知である。例えば、以下が挙げられる:ポリ−ヒスチジン(ポリ−his)、または、ポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−his−gly)タグ;インフルエンザHAタグポリペプチド、およびその抗体12CA5[Field等,Mol.Cell.Biol.,8:2159〜2165(1988年)];c−mycタグ、ならびに、それらに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan等,Molecular and Cellular Biology,5:3610〜3616(1985年)];および、単純疱疹ウイルス糖タンパク質D(gD)タグ、およびその抗体[Paborsky等,Protein Engineering,3(6):547〜553(1990年)]。その他のタグポリペプチドとしては、以下が挙げられる:Flag−ペプチド[Hopp等,BioTechnology,6:1204〜1210(1988年)];KT3エピトープペプチド[Martin等,Science,255:192〜194(1992年)];α−チューブリンエピトープペプチド[Skinner等,J.Biol.Chem.,266:151
63〜15166(1991年)];および、T7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz−Freyermuth等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393〜6397(1990年)]。加えて、イヌAHRポリペプチドは、酵素タンパク質で(例えばペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼ)タグを付されてもよい。
【0091】
その他の形態において、本発明は、イヌAHRポリペプチド中の1またはそれ以上のアミノ酸残基が除去されている欠失変異体を提供する。欠失は、イヌAHRポリペプチドの末端の一方または両方になされてもよいし、または、イヌAHRアミノ酸配列内で1またはそれ以上の残基が除去されていてもよい。それゆえに、欠失変異体は、イヌAHRポリペプチドの全てのフラグメントを含む。
【0092】
本発明はまた、生物学的(例えば、リガンド結合活性またはDNA結合活性、および/または、その他の生物学的活性)を維持する、配列番号2に記載の配列のポリペプチドフラグメントも包含する。本発明において、配列番号2の少なくとも10〜853(この範囲内のいずれかの整数値)個の連続したアミノ酸を含むフラグメントが考慮される。本発明の望ましい生物学的特性を有するフラグメントは、当業界周知で、習慣的に実施されているいずれかの方法によって製造することができる。
【0093】
本発明はまた、保存的アミノ酸置換によって(すなわち残基が類似の特徴を有するその他の残基で置換されることによって)参照配列と異なるポリペプチドである、上述のポリペプチドの変異体を含む。変異体ポリペプチドとしては、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの改変によって保存的置換が導入されているポリペプチドが挙げられる。アミノ酸は、物理特性、および、二次および三次タンパク質構造への寄与に従って分類することができる。当業界において、保存的置換は、あるアミノ酸を類似の特性を有するその他のアミノ酸で置換することと認識される。典型的な保存的置換を以下の表2に示す(WO97/09433,10頁,1997年3月13日に公開(PCT/GB96/02197,96年6月9日付で出願)より)。
【0094】
【表2】

【0095】
あるいは、保存的アミノ酸は、以下の表3に記載の、Lehninger[Biochemistry,第2版;ワース・パブリッシャーズ社(Worth Publishers,Inc.)ニューヨーク:ニューヨーク州(1975年),71〜77頁]で説明されているように分類することもできる。
【0096】
【表3】

【0097】
さらにその他の案として、典型的な保存的置換を以下の表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
一般的に、イヌAHRポリペプチドは、主として細胞内で見出され、細胞内材料は、当業者既知のあらゆる標準的な技術を用いて宿主細胞から抽出することができると予想される。例えば、宿主細胞は、溶解させて、ホモジナイズおよび/または超音波破砕し、続いて遠心分離することによって細胞質の内容物を放出させることができる。細胞ホモジネートの遠心分離の後、イヌAHRポリペプチドは、主として上清で見出され、イヌAHRポリペプチドは、非限定的な例として、以下の方法のいずれかによって単離することができる。
【0100】
イヌのAHRポリペプチドを部分的または完全に単離することが好ましい状況においては、精製は、当業者周知の標準的な方法を用いて達成することができる。このような方法としては、これらに限定されないが、電気泳動、続いてエレクトロエルーション、様々なタイプのクロマトグラフィー(免疫親和性、分子ふるい、および/または、イオン交換)、および/または、高圧液体クロマトグラフィーによって分離することが挙げられる。ある種の場合において、完全に精製するためにこれらの方法の2以上を用いることが好ましい場合がある。
【0101】
イヌAHRポリペプチドの精製は、多種多様の技術を用いて達成することができる。そのカルボキシルまたはアミノ末端のいずれかに、タグ、例えばヘキサヒスチジン(イヌAHR/ヘキサHis)、または、その他の小さいペプチド、例えばフラッグ(FLAG)(イーストマンコダック社(Eastman Kodak Co.),ニューヘブン,コ
ネチカット州)、または、myc(インビトロジェン,カールスバッド,カリフォルニア州)を含むようにポリペプチドが合成されている場合、カラムマトリックスがタグまたはポリペプチド(すなわち、イヌAHRを特異的に認識するモノクローナル抗体)に直接的に高い親和性を有する親和性カラムに溶液を通過させることによって、実質的に1工程のプロセスで精製することができる。例えば、ポリヒスチジンは、高い親和性および特異性でニッケルと結合し、従って、ニッケルの親和性カラム(例えばキアゲン登録商標のニッケルカラム)をイヌAHR/ポリHisの精製に用いることができる(例えば、Ausubel等編,Current Protocols in Molecular Biology,10.11.8章,ジョン・ワイリー&サンズ,ニューヨーク州[1993年]を参照)。
【0102】
イヌAHRポリペプチドが標識またはタグなしで製造された場合でも、精製を容易にすることができる。本発明のイヌAHRは、免疫親和性クロマトグラフィーによって精製してもよい。これを達成するために、イヌAHRポリペプチドに特異的な抗体は、当業界で周知の手段によって製造される。本発明のイヌAHRポリペプチドに対して生成した抗体は、ポリペプチドまたはエピトープを含むフラグメント、類似体または細胞を、動物(好ましくは非ヒト)に慣習的なプロトコールを用いて投与することによって得ることができる。モノクローナル抗体の製造のために、継続的な細胞系の培養によって製造された抗体を提供する当業界既知のあらゆる技術を用いることができる。例えば、様々な技術が挙げられ、例えば、Kohler,G.およびMilstein,C.,Nature 25
6:495〜497(1975年);Kozbor等,Immunology Today 4:72(1983年);Cole等,77〜96頁,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R Liss,Inc.(1985年)における技術である。
【0103】
タグの付着なしで、および、利用可能な抗体がなくイヌAHRポリペプチドが製造される場合、その他の周知の精製方法を用いることができる。このような方法としては、これらに限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、HPLC、ゲル溶出と組合わせたネイティブゲル電気泳動、および、分離用等電点分画法(“Isoprime”machme/technique,Hoefer Scientific)が挙げられる。ある種の場合においては、これらの技術の2またはそれ以上を組合わせて、高い純度を達成してもよい。代表的な精製スキームを以下で詳細する。
【0104】
本発明の分析において、天然のイヌAHRの阻害特性を示し、より高いレベルで発現される変異体、および、構成的に活性なイヌAHRポリペプチドを提供する変異体が、特に有用であり、また、異常なイヌAHR発現の活性を特徴とする病気の細胞および動物モデルにも有用である。
【0105】
当然ながら、本発明のポリペプチドの定義は、アミノ酸残基の挿入、欠失または置換以外の改変を有するポリペプチドを含むものとする。一例として、改変は、本質的に共有結合であってもよく、例えば、ポリマー、脂質、その他の有機および無機成分との化学結合が挙げられる。
【0106】
また、本発明において、イヌAHRに特異的な抗体(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二機能の/二重特異的な抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および、相補鎖決定領域(CDR)グラフト化抗体、例えば本発明のポリペプチドを特異的に認識するCDR配列を含む化合物)またはそれらのフラグメントも考慮される。本発明の抗体としては、WO93/11236(1993年6月20日公開)で説明されている方法に従って製造および同定されたヒト抗体が挙げられ、これは、参照によりその全体を本発明に加入させる。また、本発明において、Fab、Fab’、F(ab’)2、および、Fvなどの抗体フラグメントも提供される。用語「〜に特異的な」は、本発明の抗体を説明するのに用いられる場合、本発明の抗体の可変領域が、イヌAHRポリペプチドのみを認識して、それと結合する(すなわち、イヌAHRとこのようなポリペプチドとの局所的な配列同一性、相同性または類似性の存在が考えられるが、測定可能な結合親和性の差に基づき、イヌAHRポリペプチドと、その他の既知のポリペプチドとを区別することができる)ことを示す。当然ながら、抗体の可変領域外の配列との相互作用によって、特に分子の定常領域において、特異的な抗体はまたその他のタンパク質(例えば、S.アウレウス(S.aureus)のプロテインA、または、ELISA技術におけるその他の抗体)と相互作用する。本発明の抗体の結合特異性を決定するためのスクリーニング分析が当業界周知であり、習慣的に実施されている。このような分析の包括的な考察については、Harlow等(編),Antibodies A Laboratory Manual;コールドスプリングハーバーラボラトリー;コールドスプリングハーバー,ニューヨーク州(1988年),6章を参照。また、本発明のイヌAHRポリペプチドのフラグメントを認識しそれと結合する抗体が、まず第一にイヌAHRポリペプチドに特異的であるならば、それらも考慮される。本発明の抗体は、当業界周知であり、習慣的に実施されているあらゆる方法を用いて製造することができる。非ヒト抗体は、当業界既知のあらゆる方法によってヒト化されていてもよい。一つの方法において、非ヒトCDRはヒト抗体またはコンセンサス抗体フレームワーク配列に挿入される。次に、親和性または免疫原性を調節するために、さらなる変化を抗体フレームワークに導入してもよい。
【0107】
本発明の抗体は、イヌAHRを検出または定量するための診断目的に、同様に、イヌAHRの精製に有用である。また、本発明で説明されているあらゆる目的のための、本発明の抗体を含むキットも考慮される。一般的に、本発明のキットはまた、抗体が免疫特異的であるコントロール抗原も含む。
【0108】
実施例3
イヌAHRに対する抗体の生成
標準的な技術を用いて、イヌAHR受容体に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生成することができ、および、それらの有用な抗原結合フラグメントまたはそれらの変異体(例えば「ヒト化」変異体)を生成することができる。このようなプロトコールは、例えば、Sambrook等,Molecular Cloning:a Laboratory Manual,第2版,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク州:コールドスプリングハーバーラボラトリー(1989年);Harlow等(編),Antibodies A Laboratory Manual;コールドスプリングハーバーラボラトリー;コールドスプリングハーバー,ニューヨーク州(1988年);および、以下で引用されるその他の文献に記載されている。一実施形態において、組換えイヌAHRポリペプチド(または、このようなポリペプチドを含む細胞もしくは細胞膜)が、抗体を生成するための抗原として用いられる。他の実施形態において、イヌAHRの免疫原性部分に対応するアミノ酸配列を有する1またはそれ以上のペプチド(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上のアミノ酸)は、抗原として用いられる。小さい合成ペプチドを用いてタンパク質エピトープを模擬するために、親水性で、表面に配向しており、柔軟性がある配列を選択することが重要である。これは、生理学的溶液で見出される天然に存在するタンパク質のほとんどは、表面に親水性残基、および、埋没した疎水性残基を有するためである。一般的に、抗体は、天然に存在するタンパク質の表面でエピトープに結合する。数種の既知のエピトープは、高度の移動性を有する。一般的に、タンパク質のNおよびC末端は、荷電を有する基、すなわちNH3+およびCOO-を含むため、表面に配向している。場合によっては、それらは、末端に存在するために、同様に高度の移動性を有する。これらの末端は、場合によっては、3つ全ての特性を有するため、合成の候補として選択される。イヌAHRの表面残基に対応するペプチド、特に親水性部分が考慮される。また、イヌAHRのアミノおよびカルボキシ末端に存在するペプチドも考慮される。
【0109】
当業者であれば、所定のタンパク質配列内のそれぞれのアミノ酸残基に、親水性、表面接近性および柔軟性値を割り当てるためのアルゴリズムが開発されていることを認識している。抗原性インデックスをそれぞれの残基に割り当て、残基が特異的な配列内にある抗原性の程度の指標を得るために、同じことがなされている。HoppおよびWoods,Mol.Immunol,1983年 20(4):483〜9頁,HoppおよびWoods,Proc.Natl Acad.Sci USA 1981年,78(6)3824〜8頁。しかしながら、天然の抗原と結合させるのに有用な抗ペプチド抗体の生成には、親水性セグメントの選択が広範囲に用いられている。しかしながら、抗体とは異なり、T細胞受容体は、切断およびアンフォールディングの後、タンパク質抗原の比較的小さいセグメントが生じる。T細胞の抗原部位はまた、予想コンピューターモデルで扱われてきた。Margalit,H.等,J.Immunol.1987年 138(7):2213〜29頁。
【0110】
エピトープの予想に有用なコンピュータープログラムは市販されている。例えば、Macベクター(R)(Oxford Molecular,オックスフォード,イギリス)およびプロテアン(Protean)(R)(DNAStar,マディソン,ウィスコンシン州,53715)である。ペプチド抗原が選択され、合成されれば、その抗原は、アジュバントと混合するか、または、ハプテンに連結させ、抗体生産を増加させるることができる。
【0111】
ポリクローナルまたはモノクローナル抗体
1つの典型的なプロトコールとして、組換えイヌAHRまたはそれらの合成フラグメントを用いて、モノクローナル抗体の生成のためにマウス(または、ポリクローナル抗体には、より大きい哺乳動物、例えばウサギ)を免疫化することができる。抗原性を増加させるために、製造元の推奨に従って、ペプチドをキーホールリンペットヘモシニアン(ピアース(Pierce))に結合させる。最初の注射のために、抗原をフロインド完全アジュバントで乳化し、皮下に注射する。2〜3週間のインターバルで、イヌAHR抗原の付加のアリコートをフロインド不完全アジュバントで乳化し、皮下に注射する。最後のブースター注射の前に、血清サンプルを免疫化したマウスから採取し、ウェスタンブロットによって分析し、イヌAHRと免疫反応する抗体の存在を確認する。免疫化した動物からの血清を、ポリクローナル抗血清として用いてもよいし、または、イヌAHRを認識するポリクローナル抗体を単離するのに用いてもよい。あるいは、モノクローナル抗体の生成のために、マウスを殺して、それらの脾臓を採取する。
【0112】
モノクローナル抗体を生成するために、脾臓を、血清非含有RPMI1640(10ml)に置き、2mMのL−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、100ユニット/mlペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(RPMI)(ギブコ(Gibco),カナダ)が添加された血清非含有RPMI1640中で脾臓を砕くことによって単一の細胞懸濁液を形成する。この細胞懸濁液をろ過し、遠心分離で洗浄し、血清非含有RPMIに再懸濁する。同様の方法で3種の天然のBalb/cマウスから採取された胸腺細胞を製造し、供給層として用いる。融合前の3日間、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むRPMI(ハイクローン・ラボラトリーズ社(Hyclone Laboratories,Inc.),ローガン,ユタ州)中で対数期に維持されたNS−1骨髄腫細胞を遠心分離し、同様に洗浄する。
【0113】
ハイブリドーマ融合体を生産するために、免疫化したマウスからの脾臓細胞と、NS−1細胞とを合わせ、遠心分離し、上清を吸引する。チューブをタッピングすることによって細胞ペレットを剥がし、ペレットに対して37℃のPEG1500(50%,75mMのHepes中,pH8.0)(ベーリンガー・マンハイム)(2ml)で撹拌し、続いて血清非含有RPMIを添加する。その後、細胞を遠心分離し、15%FBS、100μMヒポキサンチンナトリウム、0.4μMアミノプテリン、16μMチミジン(HAT)(ギブコ)、25ユニット/mlのIL−6(ベーリンガー・マンハイム)、および、1.5×106個の胸腺細胞/mlを含むRPMIに再懸濁し、10個のコーニング(Corning)製平底96−ウェル組織培養プレート(コーニング,コーニング・ニューヨーク州)にプレーティングする。
【0114】
融合の2、4および6日後に、培地(100μl)を融合プレートのウェルから除去し、新しい培地と置き換える。8日目に、ELISAによって融合をスクリーニングし、イヌAHRと結合するマウスIgGの存在について試験する。選択された融合ウェルをさらに、抗イヌAHR抗体を生産するモノクローナル培養物が得られるまで、希釈によってクローニングする。
【0115】
ファージディスプレイからのイヌAHRに向けられた抗体
イヌAHR抗体は、ファージディスプレイ技術によって生成され、このような技術は、例えば、Aujame等,Human Antibodies,8(4):155〜168(1997年);Hoogenboom,TIBTECH,15:62〜70(1997年);および、Rader等,Curr.Opin.Biotechnol.,8:503〜508(1997年)で説明されており、参照によりその全体は本発明に加入させる。例えば、Fabフラグメント型の抗体の可変領域、または、一本鎖Fvフラグメントに連結した抗体の可変領域は、線状ファージの小コートタンパク質pIIIのアミノ末端に融合する。融合タンパク質の発現と、それらの成熟ファージコートへの取り込みにより、それらの表面に抗体が存在し、抗体をコードする遺伝学的物質を含むファージ粒子が生じる。このようなコンストラクトを含むファージライブラリーは、細菌で発現され、抗原−プローブとして標識または固定されたイヌAHRを用いて、ライブラリーをイヌAHR特異的ファージ−抗体に関して選別する(スクリーニングする)。
【0116】
トランスジェニックマウスからのイヌAHRに向けられた抗体
イヌAHR抗体は、実質的にBruggemannおよびNeuberger,Immunol.Today,17(8):391〜97(1996年)、および、BruggemannおよびTaussig,Curr.Opin.Biotechnol.,8:455〜58(1997年)で説明されているようにトランスジェニックマウスで生成する。生殖細胞系の形態でヒトV遺伝子セグメントを有し、そのリンパ組織においてこれらの導入遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを、従来の免疫化プロトコールを用いてイヌAHR組成物で免疫化する。免疫化したマウスからのB細胞を用いて、従来のプロトコールによってハイブリドーマを生成させ、スクリーニングして、抗イヌAHR抗体を分泌するハイブリドーマを同定する(例えば、上述のように)。
【0117】
本発明の分析
本発明は、イヌにおける試験物質の作用を検出または診断する方法を提供する。イヌは、所定の時間経過にわたり、1またはそれ以上の既知の、または、疑わしい毒性化合物で、好ましくは亜慢性投与で処理される。次に、AHRを発現する組織のサンプルが得られる。このような処理された生物学的サンプルから得られたイヌAHR遺伝子発現のレベルを、未処理の生物学的サンプルから得られた遺伝子発現パターンと比較し、化合物に反応してイヌAHRをアップレギュレートするか、またはダウンレギュレートする化合物を同定することができる。サンプルとしては、サンプル核酸分子またはタンパク質を含み、AHRを発現するあらゆる身体組織(脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、胎盤、骨格筋など)、培養細胞、生検、またはその他の組織標品から得られたあらゆるサンプルが可能である。発現のレベルは、生産されたメッセンジャーRNAまたはタンパク質のレベルのいずれか、または、その両方で評価することができる。
【0118】
核酸ベースの分析
イヌAHR由来の核酸は、溶液中、または、固体支持体上に存在させてもよい。数種の実施形態において、イヌAHR由来の核酸を、マイクロアレイにおけるアレイの要素として、単独で、または、その他のアレイの要素分子と組合わせて用いてもよい。このようなマイクロアレイは、毒性であることがわかっている、または、疑わしい試験物質に関連するハイブリダイゼーションによって遺伝子発現パターンを検出し、特徴付けるのに特に有用である。しかしながら、アレイは、メンブレンベースのハイブリダイゼーションシステムと置き換えることができ、さらに、溶液ハイブリダイゼーション分析、または、実際には特異的なハイブリダイゼーションを決定することができるあらゆる方法で置き換えてもよいと認められる。次に、このような遺伝子発現パターンは、毒性反応も引き起こすその他の化合物を同定するための比較に用いることができる。
【0119】
核酸ベースの方法は、一般的に、サンプルからのDNAまたはRNAの単離、それに続く、配列番号1から得られた特異的プライマーを用いたハイブリダイゼーションまたはPCR増幅を必要とする。DNAまたはRNAは、当業者周知の多数の方法のいずれかに従ってサンプルから単離することもできる。例えば、核酸の精製方法は、Tijssen,P.(1993年)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridsation With Nucleic Acid Probes,第I部,Theory and Nucleic Acid Preparation,エルゼビア,ニューヨーク,ニューヨーク州で説明されている。好ましい一実施形態において、TRIZOLトータルRNA単離試薬(ライフテクノロジーズ社(Life Technologies,Inc.),ゲイザースバーグ,メリーランド州)を用いてトータルRNAを単離し、オリゴd(T)カラムクロマトグラフィーまたはガラスビーズを用いてmRNAを単離する。サンプル核酸分子が増幅される場合、サンプル核酸分子を増幅し、もとのサンプルの相対的な発生量(低い発生量の転写物を含む)を維持することが望ましい。RNAは、インビトロ、インサイチュまたはインビボで増幅することができる(Eberwineの米国特許第5,514,545号を参照)。
【0120】
また、増幅および標識方法によって、サンプル中の核酸分子の本来の分布が変化しないことを確認するために、サンプル中にコントロールを含むことも有利である。この目的のために、その相補的な並べられた核酸分子へのハイブリダイゼーションの際に検出可能なコントロール核酸分子の予め決定された量を、サンプルに入れ、その核酸分子の組成物は、コントロールの並べられた核酸分子と特異的にハイブリダイズする参照核酸分子を含む。ハイブリダイゼーションとプロセシングの後、得られたハイブリダイゼーションシグナルは、サンプルに加えられたコントロールの並べられた核酸分子の量を正確に反映しているはずである。
【0121】
ハイブリダイゼーションの前に、サンプル核酸分子を断片化することが望ましいこともある。断片化により、サンプル中での二次構造、および、その他のサンプル核酸分子または非相補的な核酸分子へのクロス−ハイブリダイゼーションが最小化されるので、ハイブリダイゼーションが改善される。断片化は、機械的または化学的手段によって行うことができる。
【0122】
標識
ハイブリダイズした、並べられた/サンプル核酸分子複合体の検出を可能にするために、サンプル核酸分子は、1またはそれ以上の標識成分で標識してもよい。標識成分は、分光分析、光化学、生化学、生体電子工学、免疫化学、電気的、光学的または化学的な手段によって検出することができる組成物を含み得る。標識成分としては、放射性同位体、例えば(32)P、(33)Pまたは(35)S、化学発光化合物、標識された結合タンパク質、重金属原子、分光分析マーカー、例えば蛍光マーカーおよび色素、磁気標識、連結された酵素、マススペクトロメトリータグ、スピン標識、電子移動ドナーおよびアクセプターなどが挙げられる。好ましい蛍光マーカーとしては、Cy3、および、Cy5蛍光団(アマシャム・ファルマシアバイオテク(Amersham Pbarmacia Biotech),ピスカタウェイ,ニュージャージー州)が挙げられる。
【0123】
ハイブリダイゼーション
様々な目的に応じた様々なハイブリダイゼーション技術で、配列番号1の核酸分子配列およびそれらのフラグメントを用いることができる。ハイブリダイゼーションプローブは、設計してもよいし、または、配列番号1から得てもよい。このようなプローブは、極めて特異的な領域または保存されたモチーフから得てもよいし、AHRメッセージ、対立遺伝子変異体または関連配列を定量するプロトコールで用いてもよい。本発明のハイブリダイゼーションプローブは、DNAでもRNAでもよく、配列番号1の配列から得てもよいし、または、哺乳動物遺伝子のプロモーター、エンハンサーおよびイントロン含むゲノム配列から得てもよい。ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブは、オリゴ標識、ニック翻訳、末端標識、または、標識されたヌクレオチドの存在下でのPCR増幅を用いて製造してもよい。上記核酸配列を含むベクターを用いて、インビトロで、RNAポリメラーゼおよび標識された核酸分子を添加することによりmRNAプローブを生産することができる。これらの方法は、市販されて利用可能なキット、例えばアマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pbarmacia Biotech)によって提供されたキットを用いて行ってもよい。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、プローブのG+C含量、塩濃度および温度によって決定される。特に、ストリンジェンシーは、塩濃度を減少させるか、または、ハイブリダイゼーション温度を上昇させることによって高めることができる。数種のメンブレンベースのハイブリダイゼーションに用いられた溶液中に、有機溶媒(例えばホルムアミド)を添加することにより、より低い温度で反応を生じさせることを可能にする。低いストリンジェンシーで、緩衝液(例えば1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む5×SSC)を用いて、60℃でハイブリダイゼーションを行うことができ、それにより、いくつかのミスマッチを含むヌクレオチド配列間でのハイブリダイゼーション複合体の形成を可能にする。それに続く洗浄は、より高いストリンジェンシーで、緩衝液(例えば0.1%SDSを含む0.2×SSC)を用いて、45℃(中度のストリンジェンシー)または68℃(高いストリンジェンシー)のいずれかで行われる。高いストリンジェンシーでは、核酸配列がほとんど完全に相補的な場合にのみハイブリダイゼーション複合体は安定状態のままである。いくつかのメンブレンベースのハイブリダイゼーションにおいて、好ましくは35%、または、最も好ましくは50%のホルムアミドをハイブリダイゼーション溶液に加えることができ、それにより、ハイブリダイゼーションが行われる温度を低くすることができ、および、その他の界面活性剤(例えばサルコシルまたはトリトン(Triton)X−100)およびブロッキング剤(例えばサケ精子DNA)の使用によってバックグラウンドシグナルを減らすことができる。ハイブリダイゼーションのための成分および条件の選択は、当業者周知であり、Ausubel(上記)およびSambrook等,(1989年)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,コールドスプリングハーバープレス,プレインビュー,ニューヨーク州で総論されている。
【0124】
典型的な高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:42℃、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、1%SDS、1MのNaCl、10%硫酸デキストランを含む)中でハイブリダイゼーション、および、洗浄溶液(0.1×SSC、および、1%SDSを含む)で、60℃で30分間、2回洗浄。当業界で、例えばAusubel等(編),Protocols in Molecular Biology,ジョン・ワイリー&サンズ(1994年),6.0.3〜6.4.10頁で説明されているように、温度および緩衝液、または、塩濃度を変動させることによって、同等のストリンジェンシー条件を達成することができると理解されている。ハイブリダイゼーション条件の改変は、経験的に決定してもよいし、または、プローブの長さおよびグアノシン/シトシン(GC)塩基対のパーセンテージに基づいて精密に計算してもよい。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook等(編),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,コールドスプリングハーバーラボラトリープレス:コールドスプリングハーバー,ニューヨーク州(1989年),9.47〜9.51頁で説明されているように計算してもよい。
【0125】
ハイブリダイゼーションの特異性は、特異性−コントロール核酸分子のハイブリダイゼーションと、サンプルに加えられた既知の量の特異性−コントロールサンプル核酸分子とを比較することによって評価することができる。特異性−コントロールの並べられた核酸分子は、対応する並べられた核酸分子と比較して、1またはそれ以上の配列ミスマッチを含む可能性がある。この様式において、相補的な並べられた核酸分子のみがサンプル核酸分子にハイブリッドするかどうか、または、ミスマッチしたハイブリッド二本鎖が形成されているかどうかを決定することが可能である。
【0126】
ハイブリダイゼーション反応は、絶対的な、または、ディファレンシャルハイブリダイゼーション様式で行うことができる。絶対的なハイブリダイゼーション様式においては、1サンプルからの核酸分子は、マイクロアレイ様式の分子にハイブリダイズし、ハイブリダイゼーション複合体形成の後に検出されたシグナルは、サンプル中の核酸分子レベルと相互関係を示す。ディファレンシャルハイブリダイゼーション様式においては、一連の遺伝子の、2つの生物学的サンプルにおける差異的な発現が解析される。ディファレンシャルハイブリダイゼーションに関して、両方の生物学的サンプルからの核酸分子が製造され、異なる標識成分で標識される。2種の標識された核酸分子の混合物が、マイクロアレイに加えられる。次に、このマイクロアレイを、2種の異なる標識からの放出が個々に検出可能な条件下で試験する。マイクロアレイ中の、両方の生物学的サンプルから得られた実質的に同数の核酸分子にハイブリダイズする分子は、別個の組み合わされた蛍光を生じる(Shalon等,PCT公報WO95/35505)。好ましい実施形態において、標識は、識別可能な放出スペクトルを有する蛍光マーカーであり、例えばCy3、および、Cy5蛍光団である。
【0127】
ハイブリダイゼーションの後、マイクロアレイを洗浄して、ハイブリダイズしていない核酸分子を除去し、ハイブリダイズ可能なアレイの要素と核酸分子との複合体形成を検出する。複合体形成を検出する方法は、当業者周知である。好ましい実施形態において、核酸分子は蛍光標識で標識され、複合体形成を示す蛍光のレベルおよびパターンの測定は、蛍光顕微鏡検査法、好ましくは共焦点蛍光顕微鏡検査法によって達成される。
【0128】
ディファレンシャルハイブリダイゼーション実験において、2またはそれ以上の異なる生物学的サンプルからの核酸分子は、異なる放出波長を有する2またはそれ以上の異なる蛍光標識で標識される。蛍光シグナルは、異なる光電子増倍管セットで別々に検出され、特定の波長を検出することができる。2またはそれ以上のサンプルにおける核酸分子の相
対的な発生量/発現レベルが得られる。
【0129】
典型的には、類似の試験条件下で2以上のマイクロアレイが用いられる場合のハイブリダイゼーション強度における変動を考慮するために、マイクロアレイ蛍光強度を標準化することができる。好ましい実施形態において、個々の並べられたサンプル核酸分子複合体のハイブリダイゼーション強度は、各マイクロアレイ上に含まれる内部標準化コントロールから得られた強度を用いて標準化される。
【0130】
ポリペプチドベースの分析
本発明は、イヌAHRポリペプチドを検出および定量するための方法および試薬を提供する。これらの方法としては、分析生化学方法、例えば電気泳動、マススペクトロスコピー、クロマトグラフ方法など、または、様々な免疫学的方法、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、免疫蛍光分析、ウェスタンブロッティング、親和性キャプチャーマススペクトロメトリー、生物学的活性、および、以下で説明されるその他の方法が挙げられ、この開示を参照すれば当業者には明白である。
【0131】
イムノアッセイ
本発明はまた、1またはそれ以上の抗イヌAHR抗体試薬を用いたイヌAHRポリペプチドの検出方法(すなわちイムノアッセイ)を提供する。本発明で用いられるように、イムノアッセイとは、イヌAHRポリペプチドまたはエピトープと特異的に結合する抗体(本発明においては広範囲に定義されており、特定には、フラグメント、キメラおよびその他の結合物質が挙げられる)を利用する分析である。
【0132】
本発明の実施に適した多数のよく確立された免疫学的結合分析様式が既知である(例えば、米国特許第4,366,241号;4,376,110号;4,517,288号;および、4,837,168号を参照)。例えば、Methods in Cell Biology第37巻:Antibodies in Cell Biology,Asai編,アカデミックプレス社,ニューヨーク州(1993年);Basic and Clinical Immunology第7版,StitesおよびTerr編(1991年);上述のHarlowおよびLane[例えば14章]、および、上述のAusubel等[例えば11章]を参照。典型的には、免疫学的な結合分析(またはイムノアッセイ)は、分析物に特異的に結合する、場合によっては分析物を固相に固定する「キャプチャー物質」を利用する。一実施形態において、キャプチャー物質は、イヌAHRポリペプチドまたはサブシーケンスに特異的に結合する成分、例えば抗イヌAHR抗体である。
【0133】
通常、分析されるイヌAHR遺伝子産物は、検出可能な標識を用いて直接的または間接的に検出される。一般的に、分析で用いられた特定の標識または検出可能な基は、分析で用いられた抗体の特異的な結合に顕著に干渉しない限り、本発明の重要な観点ではない。標識は、共有結合でキャプチャー物質(例えば抗イヌAHR抗体)に付着していてもよいし、または、イヌAHRポリペプチドと特異的に結合する第三の成分(例えばその他の抗体)に付着してもよい。
【0134】
本発明は、イヌAHRポリペプチドを検出するための競合的および非競合的分析のための方法および試薬を提供する。非競合的イムノアッセイとは、捕獲された分析物(この場合イヌAHR)の量を直接的に測定する分析である。このような分析は、イヌAHRタンパク質上の2種の干渉しないエピトープと反応性を有するモノクローナル抗体を利用する、2サイトのモノクローナルベースのイムノアッセイである。例えば、背景の情報については、Maddox等,1983年,J.Exp.Med.,158:1211を参照。ある「サンドイッチ」分析において、キャプチャー物質(例えば抗イヌAHR抗体)は、固体基板に直接的に結合し、そこで、キャプチャー物質は固定される。次に、これらの固定された抗体は、試験サンプルに存在するあらゆるイヌAHRタンパク質を捕獲する。従って、固定されたイヌAHRを続いて標識することができ、すなわち標識を有する第二のイヌAHR抗体に結合させることによって標識することができる。あるいは、第二のイヌAHR抗体は標識を有さない場合もあるが、第二の抗体を得た種の抗体に特異的な、標識された第三の抗体と結合させてもよい。あるいは、第二の抗体は、検出可能な成分(例えばビオチン)を用いて改変することができ、そこに、第三の標識された分子(例えば酵素標識されたストレプトアビジン)を特異的に結合させることができる。
【0135】
競合的な分析において、サンプルに存在するイヌAHRタンパク質の量は、サンプルに存在するイヌAHRタンパク質によってキャプチャー物質(例えばイヌAHR抗体)から解離した(または競合して外れた)、添加された(外因性)イヌAHRの量を測定することによって間接的に測定される。
【0136】
競合的な分析のその他の例として、ハプテン阻害分析がある。この分析において、イヌAHRタンパク質は、固体基板に固定される。既知の量のイヌAHR抗体をサンプルに加え、次に、サンプルを、固定されたイヌAHRタンパク質と接触させる。この場合、固定されたイヌAHRタンパク質に結合した抗イヌAHR抗体の量は、サンプルに存在するイヌAHRタンパク質の量に逆比例する。固定された抗体の量は、固定された抗体の分画、または、溶液中に残存する抗体の分画のいずれかを検出することによって検出してもよい。この形態において、抗体が標識されている場合は、直接的に検出することができ、または、標識が上述したような抗体と特異的に結合する分子に結合している場合は、間接的に検出することができる。
【0137】
その他の抗体ベースの分析様式
本発明はまた、イムノブロット(ウェスタンブロット)様式を用いることによって、サンプル中のイヌAHRポリペプチドの存在を検出および定量するための試薬および方法を提供する。その他のイムノアッセイとしては、いわゆる 「ラテラルフロークロマトグラフィー」がある。ラテラルフロークロマトグラフィーの非競合的タイプにおいて、サンプルは基板を横切って移動し(例えば毛細管作用によって)、分析物と結合する可動性の標識抗体と接触して、結合体を形成する。次に、この結合体は、基板を横切って移動し、分析物と結合する固定された第二の抗体と接触する。従って、固定された分析物は、標識された抗体を検出することによって検出される。ラテラルフロークロマトグラフィーの競合的なタイプにおいて、分析物の標識されたバージョンは、キャリアーを横切って移動し、固定された抗体との結合について標識されていない分析物と競合する。サンプル中の分析物の量が多ければ、標識された分析物との結合は少なくなり、それゆえに、シグナルも弱くなる。例えば、May等の米国特許第5,622,871号、および、Rosensteinの米国特許第5,591,645号を参照。
【0138】
分析に応じて、様々な成分、例えば抗原、標的抗体、または、抗−カテプシンS抗体が、固体表面または支持体(すなわち基板、メンブレン、または、ろ紙)に結合し得る。多種多様の固体表面へ生体分子を固定するための多くの方法は当業界既知である。例えば、固体表面としては、メンブレン(例えばニトロセルロース)、マイクロタイターディッシュ(例えば、PVC、ポリプロピレンまたはポリスチレン)、試験管(ガラスまたはプラスチック)、ディップスティック(例えばガラス、PVC、ポリプロピレン、ポリスチレン、ラテックスなど)、マイクロ遠沈管、または、ガラスまたはプラスチックビーズが可能である。望ましい成分は、非特異的な結合による共有結合または非共有結合によって付着してもよい。
【0139】
多種多様な有機および無機ポリマー(天然および合成の両方)を、固体表面のための材料として用いてもよい。例証となるポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロースなどが挙げられる。使用可能なその他の材料としては、紙、ガラス、セラミック、金属、メタロイド、半導体材料、セメントなどが挙げられる。加えて、ゲルを形成する物質、例えばタンパク質(例えばゼラチン)、リポ多糖体、シリケート、アガロースおよびポリアクリルアミドを用いることができる。数種の水相を形成するポリマー、例えばデキストラン、ポリアルキレングリコールまたは界面活性剤、例えばリン脂質、長鎖(12〜24個の炭素原子)アルキルアンモニウム塩なども適切である。固体表面が多孔質の場合、系の性質に応じて様々な孔径が使用可能である。
【0140】
マススペクトロメトリー
分子の識別子として、分子の質量をしばしば用いることができる。それゆえに、マススペクトロメトリー方法を用いて、タンパク質分析物を同定することができる。マススペクトロメーターは、イオン化した分析物がフライトチューブ中を移動し、イオン検出器によって検出されるのに必要な時間を決定することによって、質量を測定することができる。タンパク質用のマススペクトロメトリーの一つの方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化マススペクトロメトリー(「MALDI」)である。MALDIにおいて、分析物は、レーザー波長のエネルギーを吸収するエネルギー吸収マトリックス材料と混合され、プローブの表面に置かれる。マトリックスにレーザーを当てると、分析物がプローブ表面から脱離し、イオン化され、イオン検出器によって検出される。例えば、Hfflenkamp等,米国特許第5,118,937号を参照。
【0141】
タンパク質用のその他のマススペクトロメトリー方法は、HutchensおよびYipの米国特許第5,719,060号で説明されている。このような方法の一つの、親和性捕獲に関して強化した表面(Surfaces Enhanced for Affinity Capture,“SEAC”)において、分析物と特異的または非特異的に結合する固相親和性試薬(例えば抗体または金属イオン)を用いて、分析物をサンプル中のその他の物質から分離することができる。次に、捕獲された分析物を、例えばレーザーエネルギー、イオン化によって固相から脱離させ、検出器によって検出する。
【0142】
本発明のさらなる特徴および改変は、詳細な説明などの本願の内容から当業者には明白と思われ、このような特徴の全てが、本発明の形態として意図される。同様に、ここで説明された本発明の特徴を再び組合わせて、さらなる実施形態を形成することができ、このような実施形態もまた、特徴の組合わせが本発明の形態または実施形態として特に上述されているかどうかにかかわらず、本発明の形態として意図される。また、本発明にとって重要であると説明された限定のみが、重要であるとみなされる;本発明で重要であると説明されていない限定を欠く本発明のバリエーションは、本発明の形態として意図される。当然ながら、本発明は、特に前述の説明および実施例で説明されているのとは異なって実施されてもよい。
【0143】
上記の教示の観点から、本発明の多数の改変およびバリエーションが可能であり、それゆえに、本発明の範囲に含まれる。
【0144】
本発明において引用された全ての文献の開示全体は、参照により本発明に加入させる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1A】イヌ(配列番号1)、ヒト(配列番号11)、マウス(配列番号13)およびラットAHR(配列番号15)のポリペプチド配列のアライメントである。
【図1B】図1Aのポリペプチド配列のアライメントの続きである。
【図2A】イヌ(配列番号2)、ヒト(配列番号12)、マウス(配列番号14)およびラットAHR(配列番号16)のポリヌクレオチド配列のアライメントである。
【図2B】図2Aのポリヌクレオチド配列のアライメントの続きである。
【図2C】図2Bのポリヌクレオチド配列のアライメントの続きである。
【図2D】図2Cのポリヌクレオチド配列のアライメントの続きである。
【図2E】図2Dのポリヌクレオチド配列のアライメントの続きである。
【図2F】図2Eのポリヌクレオチド配列のアライメントの続きである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列が配列番号2を含む単離されたイヌAHRポリペプチド、または、該ポリペプチドに特異的なエピトープを含むそのフラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載のイヌAHRポリペプチドに特異的な抗体。
【請求項3】
配列番号1を含む単離されたポリヌクレオチド、もしくは、配列番号1の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含むそのフラグメント、または、それに相補的な非コード鎖(但し、上記フラグメントは、配列番号11、13、15に記載の配列のいずれの部分およびそれらの相補鎖と、少なくとも1個のヌクレオチドで異なるヌクレオチド配列からなる)。
【請求項4】
一本鎖である、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
配列番号1の相補鎖の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項6】
請求項3に記載のポリヌクレオチドを含む、固体支持体に付着した核酸分子のアレイ。
【請求項7】
配列番号2に少なくとも95%相同なアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、AHR核受容体活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号2のポリペプチドをコードする、請求項7に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
イヌから得られたサンプル内に存在するイヌAHRのポリヌクレオチドの量を決定する方法であって、
1種またはそれ以上の特異的なハイブリダイゼーション複合体を形成するための条件下で、サンプルと、配列番号1を含む核酸分子またはそのフラグメントまたはその相補鎖とを接触させること、
を含み、該フラグメントは、配列番号1の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである、上記の方法。
【請求項10】
イヌにおける試験物質に対する代謝的な応答を測定する方法であって、
a)試験物質で処理されたイヌから、核酸を含むサンプルを準備すること、および、
b)該サンプルにおける、配列番号1を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントまたはその相補鎖の量を決定すること(未処理のイヌからのポリヌクレオチドの量と比べた場合の、処理されたイヌからのポリヌクレオチドの量における変化は、上記試験物質に対する代謝的な応答を示す)、
を含む、上記の方法。
【請求項11】
決定は、ハイブリダイゼーションによって達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ハイブリダイゼーションは、
a)1種またはそれ以上の特異的なハイブリダイゼーション複合体を形成するための条件下で、サンプルと、配列番号1を含む核酸分子またはそのフラグメントまたはその相補鎖とを接触させること(該フラグメントは、配列番号1の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである)、および、
b)ハイブリダイゼーション複合体を検出すること(未処理のイヌからの核酸分子から形成されたハイブリダイゼーション複合体の量と比べた場合の、処理されたイヌからの核酸分子から形成されたハイブリダイゼーション複合体の量における変化は、上記試験物質に対する代謝的な応答を示す)、
によって達成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
サンプル内に存在するイヌAHRポリペプチドの量を決定する方法であって、
イヌAHRポリペプチドに特異的な抗体とイヌAHRポリペプチドとが結合する条件下で、イヌAHRポリペプチドとイヌAHRポリペプチドに特異的な抗体とを接触させること、
を含む、上記の方法。
【請求項14】
イヌにおける試験物質に対する代謝的な応答を測定する方法であって、
a)試験物質で処理されたイヌからのサンプルを提供すること、
b)該サンプルにおける、配列番号2を含むポリペプチド、または、該ポリペプチドに特異的なエピトープを含むそのフラグメントの量を決定すること(未処理のイヌからのポリペプチドの量と比べた場合の、処理されたイヌからのポリペプチドの量における変化は、上記試験物質に対する代謝的な応答を示す)、
を含む、上記の方法。
【請求項15】
決定は、イヌAHRポリペプチドに特異的な抗体とイヌAHRポリペプチドとが結合する条件下で、イヌAHRポリペプチドとイヌAHRポリペプチドに特異的な抗体とを接触させることによって達成される、請求項14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【公表番号】特表2006−518989(P2006−518989A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563493(P2004−563493)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/IB2003/006177
【国際公開番号】WO2004/057940
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】