説明

イヌCYP1A2配列

本発明は、イヌCYP1A2と言われるこれまで知られていないポリペプチドをコードするcDNA;上記遺伝子によってコードされるイヌCYP1A2ポリペプチド;上記ポリペプチドに対する抗体;ならびに先に記載のものの全てを作製する方法、および使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌCYP1A2ポリペプチドを含む単離されたポリペプチド、およびそれらをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明は、有毒な化合物または分子の指標となる代謝応答に関する化合物および治療法のスクリーニング・アッセイを同様に提供する。
【背景技術】
【0002】
分子毒物学の中で最もよく理解されている例は、ミクロソーム・シトクロムP450依存性モノオキシゲナーゼ、例えばCYP1A1(シトクロムP450サブファミリーI、メンバーA1、およびCYP1A2(シトクロムP450サブファミリーI、メンバーA2)の誘導である。
【0003】
それは平面芳香族炭化水素(PAHs)またはダイオキシン(1-3)への暴露に対する応答により生じる。これらの化学薬品は、実験動物において催奇形性、免疫抑制、上皮疾患、および腫瘍産生を含む、強力なそして多様な中毒性を引き起こす。これらの全ての生物学的効果がアリール炭化水素レセプター(AHR)によって伝達されると考えられている。
【0004】
同様に、ヒトCYP1A2遺伝子は、P450(PA)(4)として知られるフェナセチンO-脱エチル化酵素をコードする。Butlerらは、カフェインのクリアランスがCYP1A2(4、5)によって主に決定されることをマウスおよびヒトの両方で報告した。
【0005】
ポルフィリン症の最も一般的な形態、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT、176100)を患った個体は、既知の憎悪因子に関係する遺伝子の突然変異および多型を通して、臨床的に明白な病気を発症する遺伝学的な傾向にあると思われている。Cristiansenら(2000)は、CYP1A2のイントロン1におけるC/A多型の存在に関して、PCTのデンマーク人の患者のグループを検査した。その結果は、高誘導性A/A遺伝子型の頻度が家族性および散発的なPCTの両方で高められていることを証明した。その著者らは、A/A遺伝子型がPCTの感受性因子であることを示唆した。
【0006】
CYP1A2遺伝子の機能をよりよく理解するために、CYP1A2欠損マウス系を胚幹細胞の相同組換えによって作製した(6)。前記ノックアウト・マウスは、発生上の異常は示さなかったが、既知のCYP1A2基質、ゾキサゾラミンによる処置は、野生型マウスに対してホモ接合体ノックアウト・マウスの劇的に延びた麻痺時間を示し、そしてヘテロ接合体は、薬物代謝におけるCYP1A2遺伝子の役割を示す中間効果を示した。
【0007】
発癌物質代謝酵素、CYP1A1、CYP1A2、CYP3A、CYP2B、およびCYP2Aの顕著な増加は、高用量のベータカロテンを補給したラットの肺において確認された。Paoliniらは、ヒトのそれに相当する高いレベルのCYPsが固体を、広く生物活性化されたタバコの煙の前発癌物質からの発癌リスクを高める傾向にあることを示唆し、それにより喫煙者のベータカロテンの発癌補助効果を説明した。
【0008】
イヌは薬物の毒物学を調査するために重要な種であるので、イヌCYP1A1遺伝子に特異的な核酸プローブ、およびイヌCYP1A1タンパク質に特異的な抗体は、疑わしい有毒な化合物に対する代謝応答を証明する手段として工業毒物学において大きな価値がある。本発明はこの必要性に対応する。
【0009】
【化1】

【発明の開示】
【0010】
本発明の概要
本発明は、イヌCYP1A2タンパク質をコードする単離された核酸分子、上記単離された核酸分子を内蔵する構成物および組み換え宿主細胞;上記単離された核酸分子によってコードされたイヌCYP1A2ポリペプチド;イヌCYP1A2ポリペプチドに対する抗体を提供することで、先に規定した必要性に対応する。
【0011】
1つの態様において、本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む単離されたイヌCYP1A2ポリペプチドを提供する。配列番号2のポリペプチドが多数のポリペプチド種をもたらす特異的なタンパク質分解処理事件にさらされうることが知られている。
【0012】
さらに、本発明はイヌCYP1A2ポリペプチドのエピトープを含む断片を提供する。「に特有のエピトープ」は、以下に詳細に規定されるように、イヌCYP1A2ポリペプチドに特異的な抗体によって認識可能であるイヌCYP1A2ポリペプチドの一部を意味する。他の態様は、配列番号2に記載の完全なアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。
【0013】
イヌCYP1A2のコーディングcDNA配列および推定アミノ酸配列は以下のとおり再現され、そしてそれらはそれぞれ配列番号1および2によって表される。
【0014】
【化2】

【0015】
配列番号1および2は特別なイヌ・ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を提供するが、本発明は他のイヌの対立遺伝子変異体をその範囲内に含むことを意図する。
【0016】
他の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド(例えば、一本鎖または二本鎖のcDNA、ゲノムDNA、合成DNA、RNA、またはその組み合わせ)を提供する。そのようなポリヌクレオチドは、組み換えによる酵素発現に、および(例えば、ノーザン・ハイブリダイゼーション、およびin situハイブリダイゼーション・アッセイを使った)細胞における酵素表現の検出にも有用である。そのようなポリヌクレオチドは、治療目的、または異常なイヌCYP1A2発現によって特徴づけられた病気に関するモデルを提供するための、培養細胞または組織、あるいは動物のイヌCYP1A2の発現の抑制のためのアンチセンス分子または他の分子の設計に同様に有用である。本発明のポリヌクレオチドの規定から特に除かれたものは、ポリヌクレオチドが元来由来する天然の宿主細胞からの単離された染色体全体である。配列番号1に記載のポリヌクレオチドは、天然のイヌCYP1A2配列に相当する。当然のことながら、一般的な遺伝コードの周知の縮退による、配列番号2のイヌCYP1A2を同様にコードするおびただしい数の他の配列が存在する。他の態様において、本発明は、配列番号1に記載の配列以外の配列をコードした縮退イヌCYP1A2コードの全てに向けられる。
【0017】
本発明は、ヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを同様に提供する、ここで、上記ポリヌクレオチドは、以下のハイブリダイゼーション条件:
(a)50%のホルムアミド、1%のSDS、1MのNaCl、10%の硫酸デキストランを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で16時間のハイブリダイゼーション;そして
(b)0.1%のSSC、1%のSDSを含む洗浄溶液中、60℃で30分間、2回の洗浄、
の下で配列番号1に記載のヌクレオチド配列、またはそれに相補的である非コード鎖に特異的にハイブリダイズする。
【0018】
本発明の1つのポリヌクレオチドが、イヌの1CYP1A2をコードするDNA配列またはその独特な断片を含む配列番号1に記載の配列を含む。
【0019】
関連する態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。そのようなベクターは、例えばその有用な分量を産生するための宿主細胞のポリヌクレオチドの増幅のために、有用である。他の態様において、ベクターは、本発明のポリヌクレオチドが発現制御配列を含むポリヌクレオチドに動作可能なように連結されている発現ベクターである。そのようなベクターは、本発明のポリペプチドの組み換え産生に有用である。
【0020】
他の関連する態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターによって形質転換されたか、または(安定にまたは一時的に)形質移入された宿主細胞を提供する。先に述べられるように、そのような宿主細胞は、前記ポリヌクレオチドを増幅するために、そして同様に前記ポリヌクレオチドによってコードされたイヌCYP1A2ポリペプチドまたはその断片を発現するために有用である。
【0021】
さらに他の関連する態様において、本発明は、本発明の宿主細胞を栄養培地中で培養し、そして上記細胞または培地からポリペプチドまたはその変異体を単離するステップを含む、イヌCYP1A2ポリペプチド(またはその断片)を製造する方法を提供する。
【0022】
さらに他の態様において、本発明は、本発明のイヌCYP1A2に特異的な抗体を提供する。抗体特異性は、以下により詳細に記載されている。しかし、(例えば、両方のポリペプチドの類似したエピトープの偶然の存在のために)先に文献に記載されたポリペプチドから作製することができる抗体と、イヌCYP1A2と偶然に交差反応することができる抗体が「交差反応性の」抗体と考えられることは、重要視されるべきである。そのような交差反応性の抗体はイヌCYP1A2に対する「特異的な」抗体ではない。抗体がイヌCYP1A2に特異的であるか、または他の既知の酵素と交差反応性であるかどうかの判断は、ウェスタンブロッティング・アッセイまたは文献中で周知のいくつかの他のアッセイを使ってなされる。イヌCYP1A2を発現する細胞を確認するために、そして同様にイヌCYP1A2活性を調節するために、イヌCYP1A2の活性部位に特異的に結合する抗体が特に有用であるが、当然、他のエピトープに結合する抗体が同様に本発明の一部と考えられる。
【0023】
1つの変更において、本発明はモノクローナル抗体を提供する。そのような抗体を産生するハイブリドーマが本発明の側面として同様に意図される。
他の変更において、本発明は、その抗体の少なくとも1つがイヌCYP1A2に特異的な本発明の抗体である、ポリクローナル抗体を含む無細胞組成物を提供する。水中、または他の希釈液、賦形剤または担体中に再懸濁された抗血清の抗体画分を含む組成物がそうであるように、動物から単離された抗血清は模範的な組成物である。
【0024】
本発明は本発明の抗体の使用方法を同様に提供する。例えば、本発明は、抗体がイヌCYP1A2ポリペプチドに結合する条件下、イヌCYP1A2ポリペプチドと、上記イヌCYP1A2ポリペプチドに特異的な抗体を接触させるステップを含む、細胞抽出物中に存在するイヌCYP1A2の量の測定方法を提供する。
【0025】
本発明は、1以上の特異的なハイブリダイゼーション複合体の形成のための条件下、サンプルと配列番号1を含む核酸分子、またはその断片もしくは相補体とを接触させるステップを含む、サンプル中に存在するイヌCYP1A2ポリヌクレオチドの量の測定方法を同様に提供する、ここで、上記断片は配列番号1の少なくとも12の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。
【0026】
本発明は、試験物質により処理したイヌからの核酸を含むサンプルを準備し;そして、上記サンプル中の配列番号1を含むポリヌクレオチド、またはその断片もしくはそれらの相補体の量を測定するステップを含む、イヌにおける試験物質に対する代謝応答の計測方法を同様に提供する、ここで、未処理のイヌのポリヌクレオチドの量と比べた場合の処理されたイヌのポリヌクレオチド量の変化が試験物質に対する代謝応答を表わしている。
【0027】
1つの態様において、前記比較は、核酸分子とサンプル核酸分子の間のハイブリダイゼーション複合体の形成に効果的な条件下、核酸分子をサンプル核酸分子と接触させ;そして、ハイブリダイゼーション複合体の存在または不存在を検出するステップを含む。1つの側面において、配列番号1、または配列番号1の断片もしくは配列番号1の相補体は、固体基板アレイまたは固体支持体上の多数の核酸と一緒に存在するかもしれない。
【0028】
本発明は、抗体がイヌCYP1A2ポリペプチドに結合する条件下、イヌCYP1A2ポリペプチドと、イヌCYP1A2ポリペプチドに特異的な抗体を接触させるステップを含む、サンプル中に存在するイヌCYP1A2ポリペプチドの量の測定方法をさらに提供する。
【0029】
本発明は、試験物質により処理したイヌからのサンプルを準備し;そして上記サンプル中の配列番号2を含んでポリペプチド、または上記ポリペプチドに特有のエピトープを含むその断片の量を測定するステップを含む、イヌにおける試験物質に対する代謝応答の計測方法を同様に提供する、ここで、未処理のイヌのポリペプチドの量と比べた場合の処理されたイヌのポリペプチドの量の変化が試験物質に対する代謝応答を表わしている。
【0030】
本発明の詳細な説明
一般的な規定
以下に使用される場合、「ポリヌクレオチド」は、修飾されていないRNAまたはDNA、あるいは修飾されたRNAまたはDNAであるかもしれない、あらゆるポリリボヌクレオチド、またはポリデオキシリボヌクレオチドを一般に示す。「ポリヌクレオチド」は、制限なしに、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、より一般に二本鎖、または一本鎖および二本鎖領域の混合物でありうるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を含む。さらに、「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNA、あるいはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を示す。用語「ポリヌクレオチド」は、1以上の修飾された塩基を含むDNAまたはRNA、および安定性のために、または他の理由のために修飾された骨格をもつDNAまたはRNAを同様に含む。「修飾された」塩基は、例えばトリチル化された塩基、および、例えばイノシンのような珍しい塩基を含む。種々の修飾がDNAおよびRNAに加えられうる;よって、「ポリヌクレオチド」は、天然に一般に見つかるようなポリヌクレオチドの化学的、酵素的、または代謝的に修飾された形態、ならびにウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的な形態を含む。「ポリヌクレオチド」は、多くの場合、オリゴヌクレオチドと呼ばれている、比較的に短いポリヌクレオチドを同様に含む。
【0031】
以下に使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合によって互いにつながれたアミノ酸を含むあらゆるペプチドまたはタンパク質を示す。「ポリペプチド」は、一般にペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマーと呼ばれる短い鎖、および一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を示す。ポリペプチドは、20の遺伝子によってコードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含むことができる。「ポリペプチド」は、例えば翻訳後プロセスのような天然の過程、または本技術分野で周知の化学修飾技術によって修飾されたアミノ酸配列を含む。そのような修飾は、基本的な教科書、より詳細なモノグラフ、ならびに膨大な調査文献中に十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含めたポリペプチドのあらゆる所でも生じうる。同じ種類の修飾は、与えられたポリペプチドのいくつかの部位にて同じかまたは異なる程度に存在するかもしれないことは認識されている。
【0032】
また、与えられたポリペプチドは多くの種類の修飾を含むかもしれない。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐されるかもしれず、そしてそれらは分枝をもつまたはもたない環状であるかもしれない。環状、分枝、および分枝環状ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスによって生じるか、または合成法によって作製されうる。修飾または修飾された形態は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビン共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、交差結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有交差結合、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシ化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション(selenoylation)、硫酸化、例えばアルギニン化およびユビキチン化のようなトランスファーRNAの介在したタンパク質へのアミノ酸の付加を含む
【0033】
(例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993; Wold, P., Post-translational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in Postranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983;Seifter et al., "Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors", Meth Enzymol (1990) 182: 626-646 and Rattan et al., "Protein Synthesis: Post-translational Modifications and Aging", Ann NY Acad Sci (1992) 663:4842を参照のこと)。
【0034】
本明細書中に使用され、そして本技術分野で理解されているように、「合成された」は、酵素的方法とは対照的に、純粋に化学的方法によって製造されたポリヌクレオチドを示す。従って、「全体的に」合成されたDNA塩基配列は、完全に化学的な手段によって製造され、そして「部分的に」合成されたDNAは得られたDNAの一部だけが化学的な手段によって製造されたものを含む。
【0035】
本明細書中に使用される場合、「単離された」は、天然の状態から人の手によって変えられたことを意味する。「単離された」組成物または物が天然に生じれば、その本来の環境から変更されたかまたは取り除かれたか、あるいはその両方であった。例えば、生きた動物の中に通常存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離されて」いないが、しかし、その天然の状態の共存物質から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書中に使用されるように「単離された」。本明細書中に使用され、そして本技術分野で理解されるように、「単離された」ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを示しているかどうかにかからわず、「単離された」は、そのポリペプチドまたは核酸が通常見つかる本来の細胞環境から分離された意味にとられる。従って本明細書中に使用される場合、例示のみを目的として、本発明のポリヌクレオチドによって構築されたトランスジェニック動物または組み換え細胞系が、「単離された」核酸を使用する。
【0036】
本明細書中に使用される場合、用語「イヌCYP1A2ポリペプチド」は、保存的または非保存的な変更を含む対立遺伝子変異体を含むイヌCYP1A2遺伝子によってコードされたタンパク質を意味する。1つのイヌCYP1A2タンパク質配列は、配列番号2として開示される。
【0037】
イヌCYP1A2ポリペプチドは、組み換え細胞または生体によって産生されうるか、天然の組織または細胞系から実質的に精製されうるか、あるいは化学的にまたは酵素的に合成されうる。従って、用語「イヌCYP1A2ポリペプチド」は、グリコシル化された、部分的にグリコシル化された、または非グリコシル化された形態の、ならびにリン酸化された、部分的にリン酸化された、非リン酸化された、硫酸化された、部分的に硫酸化された、または非硫酸化された形態のタンパク質を含むことを意図する。前記用語は、対立遺伝子変体、生物学的に活性なタンパク質分解性断片または他の断片を含むPS2アミノ酸配列の他の機能的同等物、ならびにイヌCYP1A2ポリペプチドの生理学的および病理学的タンパク質分解性分解産物を同様に含む。
【0038】
本明細書中に使用される場合、用語「試験物質」は、これだけに制限されることなく、小分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸を含めた、あらゆる同定可能な化学物質または分子を意味する。そのような試験物質は、天然または合成であるかもしれない。
【0039】
本明細書中に使用される場合、用語「接触させる」は、化合物を物理的な近接によって本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに、直接的にまたは間接的に、一緒にすることを意味する。前記ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多数のバッファー、塩、溶液などの中に存在するかもしれない。接触は、イオン・チャンネル・ポリペプチドもしくはその断片、またはイオン・チャンネルもしくはその断片をコードしている核酸分子のどちらかを含む、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコ、またはマイクロアレイ、例えば遺伝子チップなど、の中に化合物を移すことを含む。
【0040】
本発明の核酸
本発明は、本明細書中でイヌCYP1A2と呼ばれるイヌCYP1A2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド(例えば、そのスプライス変異体を含む、DNA配列およびRNA転写産物、センスおよび相補的なアンチセンス鎖の両方、一本鎖および二本鎖の両方)を提供する。本発明のDNAポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、および全体または一部が化学的に合成されたDNAを含む。
【0041】
本発明のゲノムDNAは、本発明のポリペプチドのタンパク質コード領域を含み、かつ、その対立遺伝子変異体を含むように同様に意図される。多くの遺伝子に関して、ゲノムDNAが、転写産物のイントロン(すなわち、非コーディング領域の)が取り除かれるか、または「スプライスアウト」される1以上のスプライス事件を受けるRNAに翻訳されることが広く知られている。RNA転写産物は代替の機構によってスプライスされる可能性があり、それにより異なるRNA配列の除去を受けるが、しかしまだイヌCYP1A2ポリペプチドをコードし、本発明に含まれるスプライス変異体と本技術分野で呼ばれる。従って、本発明によって包含されるスプライス変異体は、同じ本来のゲノムDNA配列によってコードされるが、異なるmRNA転写産物から生じる。対立遺伝子変異体は野生型遺伝子配列の修飾された形態であり、上記修飾は染色体分離中の組み換えか、遺伝子突然変異を生じる条件にさらすことで起こる。野生型遺伝子のような対立遺伝子変異体は(インビトロの操作から生じる天然には生じない変異体とは対照的に)天然に生じる配列である。
【0042】
本発明は、イヌCYP1A2をコードするRNAポリヌクレオチドの逆転写を通して得られるcDNAを同様に含む(二本鎖DNAを提供するために相補鎖の2番目の鎖の合成が従来どおりに続く)。
【0043】
イヌCYP1A2ポリペプチドをコードするDNA配列は、配列番号1に記載されている。当業者は、本発明のDNAが二本鎖分子、例えば、DNAについてのワトソン-クリック塩基対合の規則に従って配列番号1の配列から推測可能である配列を持つ相補的な分子(「非コード鎖」または「相補体」)と共に配列番号1に記載された配列を有する分子、を含むことを容易に認識する。同様に本発明によって考慮されるものは、一般的な遺伝コードの周知の縮退により配列番号1のポリヌクレオチドの配列に関して異なる、配列番号2のイヌCYP1A2ポリペプチドをコードしている他のポリヌクレオチドである。
【0044】
遺伝コードの縮退のために、本技術分野で周知のとおり、前述の配列番号1ポリペプチドによってコードしたものと同じポリペプチドをコードすることができる多数の他のDNAおよびRNA分子が存在する。従って、本発明は、発現において、配列番号2のポリペプチドをコードする、それらの他のDNAおよびRNA分子を考慮する。イヌCYP1A2ポリペプチドをコードするアミノ酸残基配列を同定し、および各々の特定のアミノ酸残基に関する全てのトリプレット・コドンの知識によって、全てのそのようなコードRNAとDNA配列について述べることが可能である。そのため、特定のアミノ酸のコドンの変化によって簡単に特徴づけられた特に本明細書中に開示されたもの以外のDNAおよびRNA分子が本願発明の範囲内にある。
アミノ酸、並びにその代表的な略記、記号、およびコドンの表を、以下の表1に記載する。
【0045】
【表1】

【0046】
本技術分野で周知のとおり、コドンは、mRNAにおいてヌクレオチドのトリプレット配列を構成し、そしてそれらの対応するcDNA分子コドンが、mRNA分子に存在する場合、ウラシル(U)塩基によって特徴づけられるが、DNA中に存在する場合、チミジン(T)塩基によって特徴づけられる。ポリヌクレオチド内の同じアミノ酸残基へのコドンの簡単な変化は、コードされたポリペプチドの配列または構造を変えない。特定の3つのヌクレオチド配列がいずれかの特定のアミノ酸を「コードする」ことをフレーズが提示する場合、当業者は上記の表が問題の特定のヌクレオチドを特定する手段を提供することを認識することは明らかである。例として、特定の3つのヌクレオチドの配列がスレオニンをコードする場合、上記の表は可能性のあるトリプレット配列がACA、ACG、ACC、およびACU(DNAの場合にはACT)であることを開示する。
【0047】
本発明は、種、好ましくは哺乳類の、イヌCYP1A2のDNAの相同体をさらに含む。時々「オルソログ」と呼ばれる、種相同体は、本発明の配列番号1と少なくとも99.8%、99.9%の同一性を共有する。本発明のポリヌクレオチドに関する配列「同一性」の百分率は、配列をアラインし、そして最大の配列同一率を達成するために必要ならばギャップを導入した後の、配列番号1に記載されるイヌCYP1A2配列のヌクレオチドと一致する候補配列のヌクレオチド塩基の百分率として規定される。天然と変異体イヌCYP1A2配列間の配列の百分率は、例えばこの目的のために一般に利用されているコンピュータ・プログラム、例えばスミスとウォーターマンのアルゴリズム(Adv.Appl.Math. 2: 482-489 (1981))を使ったギャップ・プログラム(Wisconsin Sequence AnalysisPackage, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group, University Research Park, Madison Wisconsin)のいずれか使って上記2つの配列を比較することによって、同様に決定されうる。
【0048】
本発明によって提供されたポリヌクレオチド配列情報は、本技術分野で周知の、および日常的に実施される技術によるコードされたポリペプチドの大きな規模発現を可能にする。本発明のポリヌクレオチドは、サザンおよび/またはノーザン・ハイブリダイゼーション、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む周知の技術による、例えばヒト対立遺伝子変異体および種相同体のような関連するイヌCYP1A2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの同定と分離を同様に可能にする。関連するポリヌクレオチドの例は、対立遺伝子変異体を含めたヒトおよびヒト以外のゲノム配列、ならびにイヌCYP1A2と生物学的、免疫学的、および/またはイヌCYP1A2に一致したポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および物理的性質の1つ以上を共有している構造的に関連するポリペプチドを含む。イヌCYP1A2のDNAの配列の知識が、サザン・ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を通して、イヌCYP1A2発現管理制御配列、例えばプロモーター、オペレーター、エンハンサー、リプレッサーなどをコードするゲノムDNA配列の同定を同様に可能にする。イヌCYP1A2を発現する細胞の能力を検出するための、またはイヌCYP1A2発現レベルを計測するためのハイブリダイゼーション・アッセイに、本発明のポリヌクレオチドが同様に有用である。同様に、本発明のポリヌクレオチドは、情報が診断にも治療のための戦略の選定にも有用である、病状の根底にあるイヌCYP1A2遺伝子座の遺伝子の変異を同定するために有用である診断上の方法の根拠であるかもしれない。
【0049】
イヌCYP1A2ポリペプチドをコードする完全長ポリヌクレオチドの本明細書中での開示は、当業者に上記完全長ポリヌクレオチドの全ての可能性のある断片を容易に利用可能にする。従って、本発明は、イヌCYP1A2の断片−イヌCYP1A2をコードするポリヌクレオチドの連続したヌクレオチド少なくとも12〜2562(その間のあらゆる整数値を含む)を含むポリヌクレオチドをコードする、を提供する。多くの場合、(断片を含めて)本発明のポリヌクレオチドは、イヌCYP1A2に特有な配列−ポリヌクレオチド配列を含み、それによりイヌCYP1A2(またはその断片)をコードするポリヌクレオチドに高いストリンジェント条件かまたは適度なストリンジェント条件下でのみ(すなわち「特異的に」)にハイブリダイズする、を含む。本発明のゲノム配列から成るポリヌクレオチド断片は、コード領域に特有な配列だけを含むわけではないが、しかしイントロン、制御領域、および/または他の非翻訳配列由来の完全長配列の断片を同様に含む。本発明のポリヌクレオチドに特有な配列は、他の既知のポリヌクレオチドとの配列比較を通して認識可能であり、そして本技術分野で日常的に利用されるアラインメント・プログラム、例えば公的な配列データベースで入手可能になったもの、の使用を通して確認されることができる。そのような配列は、ポリヌクレオチドがハイブリダイズするゲノムDNAの断片の数を測定するためにサザン・ハイブリダイゼーション分析から同様に認識可能である。本発明のポリヌクレオチドは、放射性、蛍光性、および酵素的標識を含む、それらの検出を可能にする様式で標識されうる。
【0050】
断片ポリヌクレオチドは、完全長のまたは他の断片のイヌCYP1A2ポリヌクレオチドの検出のためのプローブとして特に有用である。1つ以上の断片ポリヌクレオチドが、イヌCYP1A2をコードするポリヌクレオチドの存在を検出するために使われるキットに含まれうるか、またはイヌCYP1A2をコードするポリヌクレオチド配列の変異を検出するために使われうる。
【0051】
本発明は、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション下、または洗浄条件下、DNAが配列番号1のポリヌクレオチドの非コーディング鎖または相補体にハイブリダイズするイヌCYP1A2ポリペプチドをコードするDNAを同様に含む。
高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの概念は、「本発明のアッセイ」を詳述する項において以下で議論される。
【実施例】
【0052】
実施例1
イヌCYP1A2のクローニング
PCRプライマーを設計するために、ヒト、ラットおよびマウスCYP1A2の各々の遺伝子読み取り枠(ORF)配列を、DNASTARソフトウェア(DNASTAR, WI)を使ってアラインした。3セットのプライマーを、各々の遺伝子について選んだ。それらの間で、2セットがヒトおよびラット・オルソログの開始および停止配列領域にそれぞれ相当する;他のセットを、ヒト、ラット、およびマウス・オルソログの間の保存された配列領域に従って設計した。前記プライマーは、一様に30ヌクレオチドの長さである。
【0053】
選ばれたクローン化候補遺伝子の組織発現パターンを、HumanPSDデータベース(Proteome Inc)を通して、そして(相同ESTsがクローン化された組織を確認することによって)NCBIESTデータベース検索を通して確認した。全12の選ばれた遺伝子をカバーする5つの組織、肝臓、腎臓、結腸、脾臓、および肺を確認した。
【0054】
イヌ肝臓サンプルからのRNAを、Rneasyキット(Qiagen, CA)で用意した。RNAをcDNAに逆転写するために、12.5 μlの全容積中、0.5 μgのRNAを、5.77 μlの32.5 μMのランダム・ヘキサマー(Amersham Biosciences, NJ)と、12.5 μlの10 mMのdNTPと混合した。前記混合物を、65℃で5分間インキュベートし、氷上で冷やした。2 μlのRNase不含の水、5 μlの5×第一鎖バッファー(Invitrogen, CA)、0.5 μlの100 mM DTT、2.5 μlの40 U/μl RNaseOUT(Invitrogen, CA)、および2.5 μlの200 U/μl Superscript II逆転写酵素(Invitrogen, CA)を含む12.5 μlのマスター・ミックスを加えた。最終的な反応混合物を、25℃で10分間、42℃で60分間、そして70℃で15分間、連続してインキュベートした。合成されたcDNAを20倍(約1 ng/ μlの終濃度)に希釈し、PCR反応の鋳型としての直接的な使用のために-20℃冷蔵庫で保存した。
【0055】
RACE(cDNA末端の迅速増幅)反応適合させた条件を用いた修飾されたPCR反応を、イヌ遺伝子または遺伝子断片をクローン化するために使用した。
使用したプライマー配列は以下のとおりであった:
【0056】
【化3】

【0057】
50 μlのPCR反応のために、5 μlの逆転写cDNA、5 μlの10×PCRバッファー(Clontech, CA)、1 μl dNTPsの50×dNTP混合物(各10 mM、最終的に各0.2 mM、Clontech, CA)、1 μlの各々20 μMでの5'および3'プライマー、1 μlのClontech Advantage 2 Taqポリメラーゼ(50×)、および36 μlのPCR水(Clontech, CA)を混合した。前記混合物を、94℃で1分間インキュベートし、94℃で15秒間そして72℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間そして70℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間そして68℃で4分間を25サイクルのタッチダウンPCRプロトコールに供した。1回目のPCR反応からクローン化されない遺伝子のための、より低いストリンジェントなPCR条件は、94℃で15秒間そして68℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間そして65℃で4分間を5サイクル、94℃で15秒間そして62℃で4分間を25サイクルである。PCR断片の長さおよび濃度を、製造業者の使用説明書に従いDNA 7500チップ(Agilent, CA)を使ったAgilent 2100 Bioanalyzerによって調べる。
【0058】
DNA作製および配列決定
PCR産物を、ABI377 蛍光ベースのシーケンサー(Perkin Elmer/Applied Biosystems Division, PE/ABD, Foster City, CA)、および以下のプライマー:
【0059】
【化4】

【0060】
を用いたTaq FSTMポリメラーゼによるABI PRISMTM Ready Dye-Deoxy Terminatorキットを使って配列を決定した。
【0061】
各々のABIサイクル・シークエンシング反応は約0.5 μgのプラスミドDNAを含む。サイクル・シークエンシングは、98℃で1分間の最初の変性、続いて以下の:98℃で30秒間の変性、50℃で30秒間のアニーリング、および60℃で4分間の伸長、50サイクルを使って実施される。温度サイクルおよび時間を、Perkin-Elmer 9600 thermocyclerによって管理した。CentriflexTMゲル濾過カートリッジ(Advanced Genetic Technologies Corp., Gaithersburg, MD)を使って伸長産物を単離した。各々の反応産物を、ピペットによってカラムに添加し、そしてそれを室温にて1500×gで4分間、スイング・バケット遠心分離機(SorvallモデルRT6000B卓上遠心分離機)で遠心分離する。カラム精製サンプルを、約40分間、真空下で乾燥させて、そして5 μlのDNA添加溶液(83%の脱イオン・ホルムアミド、8.3 mMのEDTA、および1.6 mg/ mlのブルーデキストラン)中に溶かす。そして前記サンプルを、90℃で3分間加熱し、ABI377シーケンサーによる配列分析のためにゲル・サンプル・ウェルに添加した。配列分析をDNASTARプログラム(DNASTAR Madison, WI)内にABI377ファイルを取り込むことによっておこなった。一様に、700 bpの配列読み出しを得た。両DNA鎖から配列情報を得ることによって、および全ての配列決定の不明確さが取り除かれるまで異なる位置のプライマーを使った困難な領域の再度の配列決定によって潜在的な配列エラーを最小限にした。配列番号1は、前記産物の正しい配列を表す。
【0062】
配列決定データを、ヒト遺伝子オルソログとアラインし、そして配列痕跡データに従って手作業でキュレーションをおこなった。1回目の配列決定後に完全に終わっていないクローン化遺伝子または遺伝子断片について、全てのプロジェクトを完成させるまでキュレーションした配列データに基づいて、さらなる配列プライマーを特注した。
【0063】
イヌのコード配列は、ヒト、ラット、およびマウス相同体とそれぞれ74%、99%、および93%同一のタンパク質をコードする。イヌDNAコード配列は、ヒト、ラット、およびマウス・コードDNA配列とそれぞれ80.4%、99.7%、93.5%同一である(比較は、mRNAはヒトに関してGenbank NM_000761、マウスに関してNM_009993、およびラットに関してNM_012541、タンパク質はヒトに関してNP_000752、マウスに関してNP_034123、およびラットに関してNP_036673に基づく)。
他の3つの相同体の新しく発見されたイヌ配列のアラインメントを、図1および2に示す。
【0064】
配列番号1の配列を得るこの方法または典型的なもの、そして配列番号1を開示することにより、それが当業者に配列番号1の全配列を得る多数の方法を提供することが認識されるべきである。例として、配列番号1で開示された配列からプローブを作製し、そしてイヌcDNAまたはゲノム・ライブラリをスクリーニングし、それによって配列番号1全体またはそのゲノム均等物を得ることが可能である。Sambrook, et al., (Eds.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York (1989)。同様に例として、配列番号1で開示された配列が規定されれば、配列番号1で表された全配列を得るためにPCR増幅の適切なプライマーを作製することが可能であることを当業者は直ちに認識する(例えば、PCR Technology, H. A. Erlich, ed., Stockton Press, New York, 1989;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, M. A. Innis, David H. Gelfand, John J. Sninsky, and Thomas J. White, eds., Academic Press, Inc., New York, 1990を参照のこと)。
【0065】
本発明の宿主細胞およびベクター
自己複製組み換え発現構築物、例えば本発明のポリヌクレオチドを取り込んだプラスミドおよびウイルスDNAベクターを同様に提供する。ポリヌクレオチドをコードするイヌCYP1A2が動作可能なように内因性または外因性調節DNA配列に連結されている発現構築物、または転写ターミネータを同様に提供する。発現調節DNA配列は、プロモーター、エンハンサー、およびオペレーターを含み、そしてその中で上記発現構築物が利用されるべき発現系に基づいて一般に選ばれている。プロモーターおよびエンハンサー配列は、遺伝子発現を増やす能力に関して一般に選ばれるが、一方、オペレーター配列は、遺伝子発現を制御する能力に関して一般に選ばれる。本発明の発現構築物は、上記構築物を保持する宿主細胞の同定を可能にする1つ以上の選択マーカーをコードする配列を同様に含むかもしれない。発現構築物は、宿主細胞における相同組換えを容易にする、好ましくは促進する配列を同様に含むかもしれない。本発明の構築物は、宿主細胞の複製に必要な配列を同様に含む。
【0066】
発現構築物は、好ましくはコードされたタンパク質の製造のために利用されるが、単純にイヌCYP1A2をコードするポリヌクレオチド配列を増幅するために同様に利用されうる。
【0067】
本発明の他の側面によると、コードされたイヌCYP1A2ポリペプチドの発現を可能にするやり方で本発明のポリヌクレオチド(または本発明のベクター)を含む原核および真核細胞を含む宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、環状プラスミドの一部として、または単離されたタンパク質コード領域もしくはウイルス・ベクターを含む直鎖DNAとして宿主細胞に導入されうる。本技術分野で周知であり、そして日常的に実施されるDNAを宿主細胞に導入する方法は、形質転換、形質移入、電気穿孔法、核注入、または例えばリポソーム、ミセル、ゴースト・セル、およびプロトプラストといった担体との融合を含む。本発明の発現系は、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、無脊椎動物、および哺乳動物細胞系を含む。
【0068】
イヌCYP1A2ポリペプチドの発現のための好適な宿主細胞は、原核生物、酵母、および高等真核細胞を含む。イヌCYP1A2ポリペプチドの発現のために使われる好適な原核ホストは、これだけに制限されることなく、エッシェリシア(Escherichia)、バチルス(Bacillus)、およびサルモネラ(Salmonella)属の細菌、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、およびストレプトコッカス(Staphylococcus)属のメンバーを含む。
【0069】
本発明の単離された核酸分子は、好ましくは原核細胞における発現のために設計されたベクター中によりも、真核細胞における発現のために設計されたベクター中にクローン化される。真核細胞が高等真核生物から得られた遺伝子の発現のために好まれることがある。なぜならこれらのタンパク質の合成、プロセッシング、および分泌のシグナルが通常認識され、多くの場合、これが原核宿主に当てはまらないからである。(Ausubel, et al, ed., in Short Protocols in Molecular Biology, 2nd edition, John Wiley & Sons, publishers, pg.16-49, 1992)。イヌCYP1A2の場合に、N連結グリコシド化のための2つのコンセンサス配列が存在し、および翻訳後修飾の他の部位がプロテインキナーゼCリン酸化およびO−グリコシド化に関して推定されうる。真核宿主は、これだけに制限されることなく、以下の:昆虫細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト293細胞、およびラット3T3線維芽細胞を含むかもしれない。
【0070】
原核宿主における使用のための発現ベクターは、1以上の発現型選択マーカー遺伝子を一般に含む。そのような遺伝子は、一般に例えば抗生物質耐性を授けるか、または栄養要求性の要求を満たすタンパク質をコードする。幅広い種類のそのようなベクターが商業的な供給元から容易に入手可能である。例は、pSPORTベクター、pGEMベクター(Promega)、pPROEXベクター(LTI, Bethesda, MD)、Bluescriptベクター(Stratagene)、およびpQEベクター(Qiagen)を含む。
【0071】
イヌCYP1A2は、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、およびクルベロマイセス(Kluveromyces)を含む属由来の酵母宿主細胞で同様に発現されうる。酵母宿主は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)およびP.パストリス(P.pastoris)を含む。酵母ベクターは、多くの場合、2ミクロン酵母プラスミド、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写停止配列、および選択マーカー遺伝子からの複製配列の起源を含む。酵母でもE.コリ(E.coli)でも複製可能なベクター(シャトルベクターとも呼ばれる)が使われうる。酵母ベクターの前記特徴に加えて、シャトルベクターは、E.コリにおける複製および選択のための配列を同様に含む。酵母宿主で発現されたイヌCYP1A2ポリペプチドの直接的な分泌は、ヌクレオチド配列をコードするイヌCYP1A2の5'末端の酵母因子リーダー配列をコードするヌクレオチド配列の包含によって達成されうる。
【0072】
昆虫宿主細胞培養系がイヌCYP1A2ポリペプチドの発現のために同様に使用されうる。他の態様において、本発明のイヌCYP1A2ポリペプチドはバキュロウイルス系を使って発現される。昆虫細胞における異種タンパク質の発現のためのバキュロウイルスの系の使用に関するさらなる情報は、Luckow and Summers, Bio/Technology 6:47 (1988)によって検討されている。
【0073】
他の態様において、イヌCYP1A2ポリペプチドは、哺乳動物の宿主細胞で発現される。好適な哺乳動物の細胞株の制限されることのない例は、サル腎臓細胞のCOS-7株(Gluzman et al, Cell 23:175 (1981))、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、およびヒト293細胞を含む。
【0074】
本発明のイヌCYP1A2ポリペプチドの発現のための好適な発現ベクターの選択は、もちろん使用される特定の宿主細胞に依存し、そして当業者の技能の範囲内にある。好適な発現ベクターの例は、pcDNAS(Invitrogen)およびpSVL(Pharmacia Biotech)を含む。哺乳動物の宿主細胞における使用のための発現ベクターは、ウイルスのゲノム由来の転写および翻訳調節配列を含むかもしれない。本発明で使用されうる一般に使用されるプロモーター配列および修飾因子配列は、これだけに制限されることなく、ヒト・サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス2、ポリオーマウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)由来のものを含む。哺乳動物の発現ベクターの構築方法は、例えば、Okayama and Berg (Mol Cell. Biol. 3:280 (1983)); Cosman et al. (Mol. Immunol. 23:935 (1986)); Cosman et al. (Nature 572:768 (1984)); EP-A-0367566;およびWO 91/18982で開示される。
【0075】
実施例2
真核宿主細胞におけるイヌCYP1A2の発現
イヌCYP1A2タンパク質を製造するために、ポリヌクレオチドをコードするイヌCYP1A2を、標準的な遺伝子工学技術を使って、好適な発現ベクターを使った好適な宿主細胞において発現させる。例えば、実施例1に記載の配列をコードするイヌCYP1A2を市販の発現ベクターpzeoSV2(Invitrogen, San Diego, CA)中にサブクローニングし、そして形質移入試薬fuGENE6(Boehringer-Mannheim)および上記製品の挿入物によって提供された形質移入プロトコールを使ってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中に形質移入した。ヒト発生初期腎臓HEK293およびCOS細胞を含む他の真核細胞系が同様に好適である。イヌCYP1A2を安定に発現する細胞は、100 μg/mlのゼオシン(Stratagene, LaJolla, CA)存在下の増殖によって選択される。場合により、イヌCYP1A2は、標準的なクロマトグラフィー技術を使って細胞から分離された。精製を容易にするために、抗血清が上記イヌCYP1A2アミノ酸配列の部分に相当する合成ペプチド配列に対して作製され、その抗血清がイヌCYP1A2の親和性精製に使用される。イヌCYP1A2は、精製を容易にするためにタグ配列(例えば、ポリヒスチジン、血球凝集素、FLAG)と一緒のフレームで同様に発現されうる。
【0076】
本発明の宿主細胞は、イヌCYP1A2と特異的に免疫応答性である抗体の開発のための免疫原性の貴重な源である。本発明の宿主細胞は、イヌCYP1A2ポリペプチドの大規模製造方法に同様に有用である、ここで、上記細胞を好適な培地中で培養し、所望のポリペプチド産物を本技術分野で既知の精製方法、例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、レクチン親和性クロマトグラフィー、サイズ排除ろ過、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLCなどを含む伝統的なクロマトグラフィー法、によって細胞または上記細胞を培養した培地から単離する。精製のさらに他の方法は、所望のタンパク質が特異的な結合パートナーまたは作用物質によって認識される特有のタグ、標識、またはキレート環を形成する部分を有する融合タンパク質として発現および単離されるものを含む。単離されたタンパク質は、所望のタンパク質を生むために分割されるか、またはそのままの融合タンパク質として残されることができる。分割処理の結果として追加のアミノ酸残基を持った所望のタンパク質の形態を、融解成分の分割が生み出すかもしれない。
【0077】
イヌCYP1A2のDNA配列の知識は、内因性のイヌCYP1A2の発現を可能にするまたはそれを増やすための細胞の修飾を可能にする。細胞がより高いレベルのイヌCYP1A2を発現するように、異種プロモーターの全部または一部による天然のイヌCYP1A2プロモーターの全部または一部の置換によって、増加した発現を提供するために(例えば、相同組み換えによって)細胞を修飾することができる。異種プロモーターは、動作可能なように配列をコードする内因性イヌCYP1A2に連結する様式で挿入される[例えば、PCT国際公開番号WO 94/12650, PCT国際公開番号WO 92/20808、およびPCT国際公開番号WO 91/09955を参照のこと]。異種プロモーターDNAに加えて、増幅可能マーカーDNA(例えば、ada、dhfr、およびカルバミルリン酸シンターゼ、アスパルタート・トランスカルバミラーゼ、およびジヒドロオロターゼをコードする多機能CAD遺伝子)および/またはイントロンDNAが異種プロモーターDNAに加えて挿入される可能性があると同様に考慮される。イヌCYP1A2コード配列に連結された場合、標準的な選択方法によるマーカーDNAの増幅は細胞におけるイヌCYP1A2コード配列の同時増幅をもたらす。
【0078】
本発明によって提供されたDNA配列情報は、機能的なイヌCYP1A2の発現を欠く動物、またはイヌCYP1A2の変異体を発現する動物の、例えば相同組み換えまたは「ノックアウト」ストラテジー[Capecchi, Science 244:1288-1292 (1989)]による開発を同様に可能にする。そのような動物(特に例えば、ラット、ウサギ、およびマウスといった実験小動物)が、イヌCYP1A2の生体内の活性、およびイヌCYP1A2のモジュレーターを研究するためのモデルとして有用である。
【0079】
同様に、イヌCYP1A2をコードするポリヌクレオチドを認識し、そしてそれにハイブリダイズするアンチセンス・ポリヌクレオチドが、本発明によって利用可能になった。完全長、そして断片アンチセンス・ポリヌクレオチドが提供される。本発明の断片アンチセンス分子は、(i)(他の既知の分子をコードするDNAと、イヌCYP1A2をコードするDNAの配列比較によって決定される)イヌCYP1A2を特異的に認識し、そしてハイブリダイズするものを含む。ポリヌクレオチドをコードするイヌCYP1A2に特有な配列の同定は、いずれかの公的に利用可能な配列データベースの使用を通して、および/または市販の配列比較プログラムの使用を通して推論されうる。ゲノム全体の中の選ばれた配列の特異性は、ハイブリダイゼーション分析によってさらに確認されることができる。所望の配列の同定後に、制限消化による分離、または本技術分野で周知の様々なポリメラーゼ連鎖反応技術のいずれかを使った増幅が実施されることができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドが、イヌCYP1A2のmRNAを発現するそれらの細胞によるイヌCYP1A2の発現を調節することに特に関連する。
【0080】
特異的にイヌCYP1A2発現制御配列またはイヌCYP1A2のRNAに結合することができるアンチセンス核酸(好ましくは10〜20塩基対のオリゴヌクレオチド)が細胞(例えば、ウイルス・ベクターまたはリポソームのようなコロイド分散系によって)細胞内に導入される。アンチセンス核酸は細胞内のイヌCYP1A2標的ヌクレオチド配列に結合し、そして標的配列の転写または翻訳を妨げる。ホスホロチオエートおよびメチルホスホナート・アンチセンス・オリゴヌクレオチドが、本発明による治療用途のために特に考慮される。アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、それらの5'末端にてポリL−リジン、トランスフェリン・ポリリジン、またはコレステロール部分によってさらに修飾されうる。転写またはか翻訳レベルいずれかのイヌCYP1A2発現の抑制は、異常なイヌCYP1A2発現によって特徴づけられる病気のための、または治療の様式としての細胞または動物モデルを製造するのに有用である。
【0081】
本発明で教示されたイヌCYP1A2配列は、天然の細胞および動物と、イヌCYP1A2ポリヌクレオチドで形質転換または形質移入された細胞におけるイヌCYP1A2発現を調節する新規転写因子の設計を容易にする。例えば、そのジンクフィンガー・ドメインによってDNAに結合するCys2-His2ジンクフィンガー・タンパク質は、異なる標的配列の認識をもたらす構造変化の影響を受けやすいことが示された。これらの人工的なジンクフィンガー・タンパク質は、高い親和性および低い解離定数で特定の標的部位を認識し、そして遺伝子発現を調節する遺伝子スイッチとして作用することができる。本発明の特定のイヌCYP1A2標的配列の知識が、既知の方法、例えば構造に基づくモデル作成とファージ・ディスプレー・ライブラリーのスクリーニングとの組み合わせを使った標的配列に特有のジンクフィンガー・タンパク質工学を容易にする[Segal et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96:2758-2763; Liu et al., (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:5525-30; Greisman and Pabo (1997) Science 275:657-61; Choo et al., (1997) J Mol Biol 273:525-32]。
【0082】
各々のジンクフィンガー・ドメインは、通常3以上の塩基対を認識する。18塩基対の認識配列は、全ての既知のゲノムにおいてそれを独特にするために長さが一般に十分であるので、ジンクフィンガーの6つの縦並びの反復から成るジンクフィンガー・タンパク質は特定の配列に特異性を確保することが期待される[Segal et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96:2758-2763]。イヌCYP1A2配列ベースで設計される人工的なジンクフィンガーの反復は、イヌCYP1A2発現を促進するまたは抑制するための活性化または抑制ドメインに融合される[Liu et al., (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:5525-30]。あるいは、ジンクフィンガー・ドメインは、転写アクチベーターまたはリプレッサーを作製するために、ジンクフィンガー・ペプチドとTBPの間の異なった長さのリンカー領域を用いてTATAボックス結合因子(TBP)に融合されうる[Kim et al., (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:3616-3620]。そのようなタンパク質とそれらをコードするポリヌクレオチドは、天然の細胞、動物およびヒト;および/または配列をコードするイヌCYP1A2で形質移入された細胞の両方における生体内でイヌCYP1A2発現を調節するための有用性がある。
【0083】
新規転写因子は、上記転写因子(遺伝子治療)を発現する構築物を形質移入することによって、またはタンパク質を導入することによって標的細胞にデリバリーされることができる。組み換えジンクフィンガー・タンパク質は、アンチセンスまたは触媒RNA法の代わりとして治療法における使用のためのRNA配列に結合するように同様に設計されることができる[McColl et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96:9521-6;Wu et al., (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92:344-348]。本発明は、その遺伝子相補体がこれらの配列を含む(天然または形質転換)細胞におけるイヌCYP1A2発現を調節するのに有用である、本発明の遺伝子配列に基づくそのような転写因子の設計方法、ならびにカスタマイズされたジンクフィンガー・タンパク質を考慮する。
本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされた単離された哺乳動物のイヌCYP1A2ポリペプチドを同様に提供する。
【0084】
本発明のポリペプチド
イヌCYP1A2ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号2に記載する。配列番号2で例示されるように、本発明のアミノ酸配列はいくつかの興味深い機能を持っている。
【0085】
本発明は、配列番号2に記載されたポリペプチドに99%超の同一性および/または相同性があるポリペプチドを同様に含む。配列番号2のポリペプチドに関するアミノ酸配列「同一性」の百分率は、両方の配列をアラインし、そして最大の百分率を達成するために必要ならば、ギャップを導入した後に、イヌCYP1A2配列の残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の百分率と本明細書中で規定され、そして配列同一性の一部としてあらゆる保存的な置換を考慮しない。配列番号2のポリペプチドに関して配列「相同性」の百分率は、配列をアラインし、最大の百分率を達成するために必要ならば、ギャップを導入した後に、イヌCYP1A2配列の残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の百分率と本明細書中で規定され、そして、配列同一性の一部としてのあらゆる保存的な置換を同様に考慮する。
【0086】
1つの側面において、相同性の百分率は、アラインメントを最大にするために100アミノ酸の長さの中の4つのギャップが導入されうる場合に、比較される配列内の同一のアミノ酸残基とアラインする2つの配列のより小さいアミノ酸残基の百分率として計算される[Dayhoff, in Atlas of Protein Sequence and Structure, Vol. 5, p. 124, National Biochemical Research Foundation, Washington, D.C. (1972)本明細書中に援用される]。
【0087】
本発明のポリペプチドは、天然の細胞起源から単離されうるか、または化学的に合成されうるが、好ましくは、本発明の宿主細胞を含む組み換え手法によって製造される。最適な生物活性を本発明の組み換えの発現産物に与えるために必要とされる場合、哺乳動物の宿主細胞の使用が、そのような翻訳後修飾(例えば、グリコシド化、切断(trancation)、脂質付加、およびリン酸化)のために提供されることが期待される。イヌCYP1A2ポリペプチドのグリコシル化形態および非グリコシル化形態が含まれる。
【0088】
先に記載の真核および原核宿主における過剰発現は、イヌCYP1A2ポリペプチドの分離を容易にする。従って、本発明は、配列番号2に記載の単離されたイヌCYP1A2ポリペプチド、そして変異体、ならびにそこに標識およびタグを付加したポリペプチドを含む保存的なアミノ酸置換を含む。
【0089】
本発明は「標識された」イヌCYP1A2ポリペプチドを含む。用語「標識された」は、標識された化合物への、酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびβ-D−ガラクトシダーゼ)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ルシフェラーゼ)、および放射性標識(例えば、14C、125I、3H、32P、および35S)を含むいずれかの好適な検出可能な基の抱合または共有結合を表すために本明細書中に使用される。タンパク質、ペプチド、および抗体を含む様々な化合物を標識する技術は周知である。例えば、Morrison, Methods in Enzymology 32b, 103 (1974); Syvanen et al., J. Biol. Chem. 284, 3762 (1973); Bolton and Hunter, Biochem. J. 133, 529 (1973)を参照のこと。いわゆる標識されたものは、以下に議論されるように、アミノ酸タグを共有結合されたポリペプチドを同様に含むかもしれない。
【0090】
さらに、本発明のイヌCYP1A2ポリペプチドは、間接的に標識されうる。これは、ポリペプチドへの部分の共有付加、そして付加した部分に特異的な結合を示す標識または標識化合物への当該付加した部分の引き続くカップリングを伴う。間接的な標識の可能性は、ペプチドのビオチニル化と、それに続く先の標識の群の1つに結合されたアビジンへの結合を含む。他の例は、放射性標識したヒスチジン・タグに特異的な抗体と、ポリヒスチジン・タグを含むイヌCYP1A21ポリペプチドとのインキュベーションであろう。正味の効果は、タグに対する抗体の相当な親和性のために、ポリペプチドに放射性の抗体を結合することである。
【0091】
本発明はイヌCYP1A2タンパク質の変異体(または相似体)を同様に含む。1つの態様において、挿入変異体は、1以上のアミノ酸残基が補充されたイヌCYP1A2アミノ酸配列を提供する。挿入物は、タンパク質の末端のいずれかもしくは両方に位置するか、またはイヌCYP1A2タンパク質のアミノ酸配列の内部領域内に配置されうる。いずれかもしくは両方の末端に追加の残基をもつ挿入変異体は、例えば融合タンパク質、およびアミノ酸タグまたは標識を含むタンパク質を含むことができる。挿入変異体は、1以上のアミノ酸残基がイヌCYP1A2アミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片に加えられたイヌCYP1A2ポリペプチドを含む。
【0092】
従って、挿入変異体は、イヌCYP1A2のアミドおよび/またはカルボキシ末端が他のポリペプチドに融合した融合タンパク質を同様に含むことができる。様々なタグ・ポリペプチド、およびそれらのそれぞれの抗体は、本技術分野で周知である。例は、ポリヒスチジン(poly-his)またはポリヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;インフルエンザHAタグ・ポリペプチドとその抗体12CA5[Field et al., Mol.Cell.Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグとそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7、および9E10抗体[Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];そして単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグとその抗体[Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグ・ポリペプチドは、Flag−ペプチド[Hopp et al., BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープ・ペプチド[Martin et al., Science, 255:192-194 (1992)];アルファ−チューブリン・エピトープ・ペプチド[Skinner et al., J. Biol.Chem., 266:15163-15166 (1991)];そしてT7遺伝子の10のタンパク質のペプチド・タグ[Lutz-Freyermuth et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 87:6393-6397(1990)]。さらに、イヌCYP1A2ポリペプチドは、例えばペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼのような酵素タンパク質によってタグを付加されうる。
【0093】
他の側面において、本発明は、イヌCYP1A2ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基が取り除かれている欠失変異体を提供する。欠失は、イヌCYP1A2ポリペプチドの一方または両方の末端で、またはイヌCYP1A2アミノ酸配列内の1以上の残基の除去により生じうる。従って、欠失変異体は、イヌCYP1A2ポリペプチドの全ての断片を含む。
【0094】
本発明は、その断片が生物学的な活性(例えば、リガンド結合、またはDNA結合、および/または他の生物活性)を維持する配列番号2に記載の配列のポリペプチド断片を同様に含む。配列番号2の少なくとも10〜853(その間のいずれの整数値も含む)の連続したアミノ酸を含む断片が本発明に包含される。所望の生物学的な特性がある本発明の断片は、本技術分野で周知の、そして日常的に実施される方法のいずれかによって準備される。
【0095】
本発明は、保存的なアミノ酸置換により基準配列から変化し、それにより残基が同様の特性をもつ他のポリペプチドによって置換された前述のポリペプチドの変異体を同様に含む。変異ポリペプチドは、その中に保存的な置換が本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの修飾によって導入されたものを含む。アミノ酸は、物理的性質、ならびに二次、および三次タンパク質構造に対する貢献に従って分類されうる。保存的な置換は、類似した特性がある他のアミノ酸によるあるアミノ酸の置換と本技術分野で認識される。(WO 97/09433、10ページ、1997年3月13日公開(PCT/GB96/02197、9/6/96出願)から)典型的な保存的な置換を、すぐ下の表2に記載する。
【0096】
【表2】

【0097】
あるいは、保存的なアミノ酸は、すぐ下の表3に記載のとおり、Lehninger[Biochemistry, Second Edition; Worth Publishers, Inc. NY: NY (1975), pp.71-77]に記載のとおり分類することができる。
【0098】
【表3】

【0099】
さらに他の選択肢として、典型的な保存的な置換がすぐ下の表4に記載される。
【0100】
【表4】

【0101】
イヌCYP1A2ポリペプチドが元来細胞内に見られることが一般的に予想されて、細胞内物質は、当業者に知られるいずれかの標準的な技術を使って宿主細胞から抽出されうる。例えば、宿主細胞は、細胞質の含有物を放出するために、均質化および/または超音波処理、続く遠心分離によって溶解されることができる。イヌCYP1A2ポリペプチドは、細胞ホモジネートの遠心分離後の上清に主に見られ、イヌCYP1A2ポリペプチドは、以下の制限されることのない例としてのいずれかの方法によって単離される。
【0102】
部分的にまたは完全にイヌCYP1A2ポリペプチドを単離するために好ましい状況下、精製は、当業者に知られた標準的な方法を使って達成されることができる。そのような方法は、これだけに制限されることなく、電気泳動それに続く電気溶出(electroelution)、様々な種類のクロマトグラフィー(免疫親和性、分子ふるい、および/またはイオン交換)、および/または高圧液体クロマトグラフィーによる分離を含む。ある場合には、完全な精製のためにこれらの方法の1つ以上を使うことが好ましいかもしれない。
【0103】
種々の技術を使ってイヌCYP1A2ポリペプチドの精製を達成することができる。前記ポリペプチドがそのカルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかに、例えばHexahistidine(イヌCYP1A2/hexaHis)のようなタグ、またはFLAG(Eastman Kodak Co:, New Haven,.Conn.)またはmyc(Invitrogen,Carlsbad, Calif.)のような他の小ペプチドを含むように合成された場合、それは、その溶液をカラム基質が直接的にタグまたはポリペプチドに高い親和性をもつ(すなわち、イヌCYP1A2を特異的に認識するモノクローナル抗体)アフィニティカラムに通すことによって本質的にワンステップ・プロセスで精製されうる。例えば、ポリヒスチジンは、高い親和性および特異的にニッケルに結合し、そのためニッケル(例えばQiagen Registered TM ニッケルカラム)のアフィニティカラムはイヌCYP1A2/polyHisの精製のために使用されることができる。(例えば、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, Section 10.11.8, John Wiley & Sons, New York [1993]を参照のこと)。
【0104】
イヌCYP1A2ポリペプチドが精製を容易にするための標識またはタグなしで準備されたとしても、本発明のイヌCYP1A2は、免疫親和性クロマトグラフィーによって精製されうる。これを達成するために、イヌCYP1A2ポリペプチドに特異的な抗体を本技術分野で周知の手段によって準備しなくてはならない。本発明のイヌCYP1A2ポリペプチドに対して産生される抗体は、日常的なプロトコールを使って、動物に好ましくはヒト以外に、ポリペプチドまたはエピトープを保持する断片、相似体または細胞を投与することによって得ることができる。モノクローナル抗体の準備のために、継代細胞系培養によって産生された抗体を提供する本技術分野で既知のいずれかの技術を使用することができる。例は、様々な技術、例えばKohler, G. and Milstein, C., Nature 256: 495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., pg. 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985)のものを含む。
【0105】
イヌCYP1A2ポリペプチドがタグの結合なしに準備され、そして抗体が入手可能でない場合、精製のための他の周知の手順を使用することができる。そのような手段は、これだけに制限されることなく、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、HPLC、ゲル溶出と組み合わせた未変性ゲル電気泳動法、および調製用等電点集束法("Isoprime"machine/technique, Hoefer Scientific)を含む。ある場合には、高い純度を達成するためにこれらの技術の2つ以上が組み合わされる。典型的な精製スキームを以下に詳述する。
【0106】
天然のイヌCYP1A2の阻害特性を示して、より高いレベルで発現される変異体と、本質的な活性なイヌCYP1A2ポリペプチドを提供する変異体は、本発明のアッセイに特に有用であり、そして異常なイヌCYP1A2発現活性によって特徴づけられる病気のための細胞および動物モデルに同様に有用である。
【0107】
本発明のポリペプチドの規定が、挿入、欠失、またはアミノ酸残基の置換以外の修飾を保持するポリペプチドを含むことを意図することが理解されるべきである。例として、修飾は、天然において共有結合であり、そして例えば、ポリマー、脂質、他の有機、および無機部分との化学結合を含むかもしれない。
【0108】
同様に、本発明に包含されるものは、イヌCYP1A2またはその断片に特異的である、抗体(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、二機能性/二重特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および本発明のポリペプチドを特異的に認識するCDR配列を含む化合物を含む相補性決定領域(CDR)-結合抗体)である。本発明の抗体は、1993年6月20日に公開されたWO 93/11236に記載の方法によって製造および同定されるヒトの抗体を含み、上記文献の全体を本明細書中に援用する。Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvを含む抗体断片が本発明によって同様に提供される。本発明の抗体について説明するのに使用される場合、用語「に特異的」は、本発明の抗体の可変領域が主にイヌCYP1A2ポリペプチドを認識し、そして結合することを示す(すなわち、局所的な配列同一性、相同性、またはイヌCYP1A2とそのポリペプチドの間の類似の見込まれる存在にもかかわらず結合親和性のかなりの相違の効力によって他の既知のポリペプチドとイヌCYP1A2ポリペプチドを区別することができる)。特異的な抗体が、上記抗体の可変領域の外側の配列、そして特に上記分子の不変部での相互作用を通して他のタンパク質(例えばS.アウレウス(S.aureus)プロテインAまたはELISA技術における他の抗体)と同様に相互作用する可能性があることは理解される。
【0109】
本発明の抗体の結合特異性を決定するためのスクリーニング・アッセイは、本技術分野で周知であり、そして日常的に実施される。そのようなアッセイについての包括的な論議のために、Harlow et al. (Eds), Antibodies A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor, NY (1988), Chapter 6を参照のこと。本発明のイヌCYP1A2ポリペプチドの断片を認識し、そして結合する抗体が同様に考慮される、ただし、上記抗体が第一にイヌCYP1A2ポリペプチドに特異的である。本発明の抗体は本技術分野で周知の、そして日常的に実施されるいずれかの方法を使って製造されることができる。非ヒト抗体は、本技術分野で既知のいずれかの方法によってヒト化されうる。1つの方法において、非ヒトCDRsは、ヒト抗体またはコンセンサス抗体フレームワーク配列に挿入される。そして、よりたくさんの変更が、親和性または免疫原性を調節するために抗体フレームワークに導入されることができる。
【0110】
本発明の抗体は、イヌCYP1A2の診断目的の検出または定量、ならびにイヌCYP1A2の精製に有用である。本明細書中に記載のいずれかの目的のための、本発明の抗体を含むキットが同様に含まれる。一般的に、本発明のキットは、抗体がそれに免疫特異的である対照抗原を同様に含む。
【0111】
実施例3
イヌCYP1A2に対する抗体の作製
イヌCYP1A2酵素に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作製するため、およびその有用な抗原結合性断片、または「ヒト化」変異体を含むその変異体を作製するために標準的な技術が使用される。例えば、そのようなプロトコールは、以下のSambrook et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual. Second Edition, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory (1989); Harlow et al. (Eds), Antibodies A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor, NY (1988);および以下に引用される他の文献の中に見られる。1つの態様において、組み換えイヌCYP1A2ポリペプチド(またはそのようなポリペプチドを含む細胞もしくは細胞膜)は、抗体を作製するための抗原として使用される。他の態様において、イヌCYP1A2の免疫原性部分に相当するアミノ酸配列をもつ1以上のペプチド(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のアミノ酸)は、抗原として使用される。
【0112】
小さい合成ペプチドによりタンパク質エピトープを模倣するために、親水性、表面配向、および柔軟である配列を選ぶことは重要である。これは生理的溶液中で見つかるほとんどの天然のタンパク質がそれら表面に親水性残基をもち、そしてそれらの疎水性残基が埋もれているからである。抗体は天然のタンパク質の表面上のエピトープに一般に結合する。いくつかの既知のエピトープは高い可動度を有する。タンパク質のNおよびC末端は一般に表面配向である、なぜならそれら荷電した基、すなわちNH3+およびCOO-を含むからである。それらは末端に位置しているため、それらは多くの場合、同様に高い可動度を持っている。それらは3つの特性の全てを有するので、これらの末端は、多くの場合、合成の候補として選ばれる。イヌCYP1A2の表面残基に相当するペプチド、特に、親水性部分が考慮される。同様に、考慮されるものは、イヌCYP1A2のアミノおよびカルボキシ末端にあるペプチドである。
【0113】
当業者は、与えられたタンパク質配列内の各々のアミノ酸残基に対して親水性、表面接触性、および柔軟性の値を割り当てるためにアルゴリズムが開発されたことを認識する。どの位の抗原性であるか目安を与える、特定の配列の範囲内にある各々の残基に対する抗原性指数を割り当てるためにそれが実施された。Hopp and Woods, Mol. Immunol, 1983 20(4): p.483-9, Hopp and Woods, Proc. Natl Acad. Sci USA 1981, 78(6) p.3824-8。天然の抗原に結合するために有用である親水性セグメントの選定が抗ペプチド抗体を作製するのに広く使用されるが、しかし、抗体と異なりT細胞レセプターは、分割および変性後のタンパク質抗原の比較的に小さいセグメントを調べる。T細胞の抗原性の部位は推定コンピュータ・モデルによって同様に処理された。Margalit, H. etal, J. Immunol. 1987 138(7): pg 2213-29。
【0114】
エピトープの推定に有用であるコンピュータ・プログラムが市販されている。例えば、Mac Vector(登録商標)(Oxford Molecular, Oxford, UK)およびProtean(登録商標)(DNAStar Madison, WI53715)。ペプチド抗原が選ばれて、そして合成されるとすぐに、抗体産生を増やすために、その抗原はアジュバントと混ぜられるか、またはハプテンと連結される。
【0115】
ポリクローナルまたはモノクローナル抗体
1つの典型的なプロトコールとして、組み換えイヌCYP1A2またはその合成断片がモノクローナル抗体の作製のためにマウスに免疫するために使用される(または、ポリクローナル抗体のために、より大きな哺乳動物、例えばウサギ)。抗原性を高めるために、ペプチドを、製造業者の勧めに従って、Keyhole Lympet Hemocyanine (Pierce)に結合する。最初の注射のために、前記抗原を完全フロインド・アジュバントで乳化し、そして皮下に注射した。2〜3週間の間隔で、イヌCYP1A2抗原の追加のアリコートをフロイント不完全アジュバントで乳化し、そして皮下に注射した。最後のブースター注射前に、血清サンプルを免疫マウスから採取し、イヌCYP1A2と免疫反応する抗体の存在を確認するためにウェスタンブロットによってアッセイした。免疫動物からの血清を、ポリクローナル抗血清として使用するか、またはイヌCYP1A2を認識するポリクローナル抗体を単離するために使用することができる。あるいは、そのマウスを屠殺し、そしてモノクローナル抗体の作製のためにその脾臓を取り出した。
【0116】
モノクローナル抗体を作製するために、前記脾臓を10 mlの無血清RPMI1640中に移し、そして2 mMのL−グルタミン、1 mMのピルビン酸ナトリウム、100ユニット/mlのペニシリン、および100 μg/mlストレプトマイシン(RPMI)(Gibco, Canada)を補った無血清RPMI1640中でその脾臓をすり潰すことによって単細胞懸濁液を形成する。前記細胞懸濁液をろ過し、遠心分離と無血清RPMI中への再懸濁によって洗浄する。3匹の実験未使用のBalb/cマウスから採取した胸腺細胞を、類似のやり方で準備し、そして支持細胞層として使用する。融合前の3日間、10%のウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, Utah)を含むRPMI中で対数期に維持されたNS-1骨髄腫細胞を、同様に遠心分離し、そして洗浄する。
【0117】
ハイブリドーマ融合を引き起こすために、免疫マウス由来の脾臓細胞をNS-1細胞と混合し、遠心分離し、そして上清を吸引した。チューブを軽くたたくことによって、細胞ペレットを遊離させ、2 mlの37℃のPEG1500(50%の75 mMのHepes、pH8.0)をペレットの中に混ぜ入れ、続いて無血清RPMIを加える。その後、前記細胞を、遠心分離し、そして15%のFBS、100 μMのヒポキサンチン・ナトリウム、0.4 μMのアミノプテリン、16 μMのチミジン(HAT)(Gibco)、25ユニット/mlのIL-6(Boehringer Mannheim)、および1.5×106個の胸腺細胞/mlを含むRPMI中に再懸濁し、そして10枚のコーニング平底96ウェル組織培養プレート(Corning, Corning New York)内に蒔いた。
【0118】
融合後2、4、および6日目に、培地100 μlを融合プレートのウェルから取り除き、新鮮な培地と交換する。8日目に、イヌCYP1A2に結合するマウスIgGの存在を試験するELISAによって融合体をスクリーニングする。抗イヌCYP1A2抗体を産生するモノクローナル培養が得られるまで希釈によって選ばれた融合ウェルをさらにクローニングする。
【0119】
ファージ・ディスプレイからのイヌCYP1A2特異的抗体
イヌCYP1A2抗体を、例えばAujame et al., Human Antibodies, 8(4): 155-168 (1997); Hoogenboom, TffiTECH, 15:62-70 (1997); and Rader et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8:503-508 (1997)に記載のもののようなファージ・ディスプレイ技術によって作製し、上記文献の全体を本明細書中に援用する。例えばFab断片形態または連結した単鎖Fv断片の抗体可変領域は、糸状ファージの小さな外殻タンパク質pIIIのアミノ末端に融合される。前記融合タンパク質の発現、そして成熟したファージ外殻内へのその取り込みが、それらの表面上に抗体を提示し、かつ、抗体をコードする遺伝物質を含むファージ粒子をもたらす。そのような構築物を含むファージ・ライブラリが、細菌内に発現され、そしてそのライブラリを抗原プローブとして標識または固定化イヌCYP1A2を使って、イヌCYP1A2特異的ファージ抗体を抽出する(スクリーニングする)。
【0120】
トランスジェニック・マウスからのイヌCYP1A2特異的抗体
イヌCYP1A2抗体を、Bruggemann and Neuberger, Immunol. Today, 17(8):391-97 (1996)およびBruggemann and Taussig, Curr. Opin. Biotechnol., 8:455-58 (1997)に本質的に記載のとおり、トランスジェニック・マウスによって作製する。生殖系列配置でヒトV領域遺伝子セグメントを担持し、それらのリンパ系組織にこれらの導入遺伝子を発現するトランスジェニック・マウスを、伝統的な免疫処置プロトコールを使ってイヌCYP1A2組成物によって免疫する。ハイブリドーマを、伝統的なプロトコールを使って免疫マウス由来のB細胞を使って作製し、(例えば、先に記載のとおり)抗イヌCYP1A2抗体を分泌するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングする。
【0121】
本発明のアッセイ
本発明は、イヌにおける試験物質の効果を検出または診断するための方法を提供する。イヌを、好ましくは亜慢性用量で、1以上の既知のまたは疑いのある有毒化合物によって、規定された時間的経過にわたって処理する。そして、CYP1A2を発現する組織のサンプルを得る。そのような処理された生物学的サンプル由来のイヌCYP1A2遺伝子発現レベルを、未処理の生物学的サンプル由来の遺伝子発現パターンと比較して、その化合物への反応においてイヌCYP1A2を上方制御するか、または下方制御する化合物を同定する。前記サンプルは、サンプル核酸分子またはタンパク質を含むあらゆるサンプルでありえ、CYP1A2を発現するあらゆる体組織(腸、肝臓、肺、膵臓、胃など)、培養細胞、バイオプシー、または他の組織標本から得られる。発現レベルを、mRNAのレベルまたはタンパク質の産生レベルのいずれか、またはその両方で評価することができる。
【0122】
核酸ベースの方法
イヌCYP1A2由来の核酸は、溶液中に、または固体支持体上に存在する。ある態様において、それらは、単独でまたは他のアレイ要素分子との組み合わせで、マイクロアレイのアレイ要素として利用されうる。そのようなマイクロアレイは、既知のかまたは有毒であると疑われる試験物質に関連するハイブリダイゼーションによる遺伝子発現パターンの検出および特徴づけに特に有用である。しかし、アレイは膜ベースのハイブリダイゼーション・システム、または同等の溶液ハイブリダイゼーション・アッセイ、あるいは実際、特異的なハイブリダイゼーションを測定することができるあらゆる方法に置き換えられることができるかもしれないことは理解されている。そして、そのような遺伝子発現パターンは、毒物学的応答を同様に引き出す他の化合物を同定する比較のために使用されることができる。核酸ベースの方法は、一般にサンプルからのDNAまたはRNAの分離、そして続くハイブリダイゼーションまたは配列番号1由来の特異的プライマーを使ったPCR増幅を必要とする。DNAまたはRNAを、当業者に周知の多数の方法のいずれかに従ってサンプルから単離することができる。例えば、核酸の精製方法は、Tijssen, P. (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Elsevier, New York, N. Y.に記載される。1つの好ましい態様において、全RNAをTRIZOL全RNA分離試薬(Life Technologies, Inc., Gaithersburg Md.)を使って分離し、そしてmRNAをオリゴd(T)カラム・クロマトグラフィーまたはガラスビーズを使って単離する。サンプル核酸分子を増幅する時、サンプル核酸分子を増幅し、かつ、低存在量の転写産物を含む元のサンプルの相対存在量を維持することが望ましい。RNAは、インビトロ、in situまたはインビボで増幅されることができる(Eberwine U.S. Pat. No. 5,514,545を参照のこと)。
【0123】
増幅と標識手法がサンプル中の核酸分子の真の分配を変えないことを保証するために、サンプル内の対照を含むことは同様に有益である。この目的のために、サンプルは、その相補的なアレイ核酸分子への、および特に対照アレイ核酸分子とハイブリダイズする基準核酸分子を含む核酸分子組成物へのハイブリダイゼーションで検出可能な所定の一定量の対照核酸分子によってスパイクされる。ハイブリダイゼーションおよび処理の後に、得られたハイブリダイゼーション・シグナルは、サンプルに加えた対照アレイ核酸分子の量を正確に反映すべきである。
【0124】
ハイブリダイゼーションより前に、サンプル核酸分子を断片化することが望ましいかもしれない。断片化は、二次構造、およびサンプル中の他のサンプル核酸分子、または非相補的核酸分子への交差ハイブリダイゼーションを最小限にすることでハイブリダイゼーションを改善する。断片化は、機械的または化学的な手段によって実施されることができる。
【0125】
標識
サンプル核酸分子は、ハイブリダイズしたアレイ/サンプル核酸分子複合体の検出を可能にするために1つ以上の標識部分によって標識されうる。標識部分は、分光学的、光化学的、生化学的、生物電子工学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的な手段によって検出されることができる組成物を含むことができる。標識部分は、放射性同位元素、例えば(32)P、(33)P、もしくは(35)S、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、分光学的マーカー、例えば蛍光マーカーおよび染料、磁性標識、連結酵素、質量分析タグ、スピンラベル、電子遷移ドナー、およびアクセプターなどを含む。好ましい蛍光マーカーは、Cy3およびCy5フルオロフォア(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway N.J.)を含む。
【0126】
ハイブリダイゼーション
配列番号1の核酸分子配列およびその断片は、様々な目的のために様々なハイブリダイゼーション技術において使用されることができる。ハイブリダイゼーション・プローブは、配列番号1から設計されるか、または誘導されうる。そのようなプローブは、高度に特有の部位または保存的モチーフから作製され、そしてCYP1A2メッセージ、対立遺伝子変異体、または関連する配列の定量のためのプロトコールで使用されうる。当該発明のハイブリダイゼーション・プローブは、DNAまたはRNAであるかもしれなくて、そして配列番号1の配列からか、または哺乳動物遺伝子のプロモーター、エンハンサーのおよびイントロンを含むゲノム配列に由来する。ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブは、オリゴラベリング、ニックトランスレーション、エンドラベリング、または標識ヌクレオチドの存在下でのPCR増幅を使って作製されうる。核酸配列を含むベクターは、RNAポリメラーゼと標識された核酸分子を加えることによってインビトロでmRNAプローブを作製するために使用されうる。これらの手法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech.によって提供されるもののような市販のキットを使って行われうる。
【0127】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、プローブのG+C含量、塩濃度、温度によって決定される。特に、塩濃度を下げるか、またはハイブリダイゼーション温度を上げることによって、ストリンジェンシーを高くすることができる。ある膜ベースのハイブリダイゼーションに使用される溶液において、有機溶剤、例えばホルムアミドの追加が反応をより低温で起こすことを可能にする。ハイブリダイゼーションは、60℃で、例えば1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む5×SSCのようなバッファーにより低いストリンジェンシーで実施することができるが、それは、いくつかのミスマッチを含むヌクレオチド配列間のハイブリダイゼーション複合体の形成を許す。続く洗浄は、45℃(中程度のストリンジェンシー)または68℃(高いストリンジェンシー)のどちらかで、例えば0.1%のSDSを含む0.2×SSCのようなバッファーを用いてより高いストリンジェンシーで実施される。
【0128】
高いストリンジェンシーにおいて、核酸配列がほとんど完全に相補的な所のみ、ハイブリダイゼーション複合体が安定なままである。いくつかの膜ベースのハイブリダイゼーションにおいて、ハイブリダイゼーションが実施される温度を下げるために、好ましくは35%、または最も好ましくは50%のホルムアミドをハイブリダイゼーション溶液に加えることができ、そして他の界面活性剤、例えばサルコシルまたはトリトンX-100と、ブロッキング剤、例えばサケ精子DNAの使用によってバックグラウンド・シグナルを減らすことができる。ハイブリダイゼーションのための成分と条件の選定は、当業者に周知であり、そしてAusubel (supra) and Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview N. Y.において検討されている。
【0129】
典型的な高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:50%のホルムアミド、1%のSDS、1 MのNaCl、10%の硫酸デキストランを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃でハイブリダイゼーション、そして0.1×SSCと1%SDSを含む洗浄溶液中、60℃で30分間2回洗浄を含む。同等のストリンジェンシー条件が、Ausubel, et al. (Eds.), Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1994), pp.6.0.3 to 6.4.10に記載のとおり、温度およびバッファー、または塩濃度の変更によって達成されてることは本技術分野で知られている。ハイブリダイゼーション条件の修正は、経験的に決定されるか、またはプローブの長さとグアノシン/シトシン(GC)塩基対の百分率に基づいて正確に計算されうる。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook, et al, (Eds.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York (1989), pp. 9.47 to 9.51に記載のとおり計算されることができる。
【0130】
ハイブリダイゼーションの特異性を、特異性対照核酸分子のハイブリダイゼーションを既知の量でサンプルに加えられた特異性対照サンプル核酸分子と比較することによって評価することができる。特異性対照アレイ核酸分子は、対応のアレイ核酸分子と比べて1つ以上の配列ミスマッチを有する。このやり方で、相補的なアレイ核酸分子だけがサンプル核酸分子にハイブリダイズするかどうか、またはミスマッチしたハイブリッド二本鎖が形成されるかどうか決定することが可能である。
【0131】
ハイブリダイゼーション反応は、絶対的または差異的なハイブリダイゼーション・フォーマットで実施されることができる。絶対的なハイブリダイゼーション・フォーマットにおいて、1点のサンプルからの核酸分子がマイクロアレイ・フォーマットの分子とハイブリダイズし、そしてサンプル中の核酸分子レベルと関連するハイブリダイゼーション複合体の形成後にシグナルを検出する。差異的なハイブリダイゼーション・フォーマットにおいて、2点の生物学的なサンプル中の1組の遺伝子の差異的な発現を分析する。差異的なハイブリダイゼーションのために、両方の生物学的なサンプルからの核酸分子を準備し、そして異なる標識部分によって標識する。2つの標識核酸分子の混合物を、マイクロアレイに加える。そして、そのマイクロアレイを2つの異なる標識からの放射が個々に検出可能な条件下で検査する。両方の生物学的なサンプル由来の実質的に同数の核酸分子にハイブリダイズするマイクロアレイ中の分子は、異なった結合蛍光を与える(Shalon et al. PCT公開WO95/35505)。好ましい態様において、標識は、例えばCy3およびCy5フルオロフォアのように識別可能な発光スペクトルをもつ蛍光マーカーである。
【0132】
ハイブリダイゼーションの後に、マイクロアレイを非ハイブリダイズ核酸分子を取り除くために洗浄し、そしてハイブリダイズ可能な配列要素と核酸分子の間の複合体形成を検出する。複合体形成の検出方法は、当業者に周知である。好ましい態様において、核酸分子は蛍光標識で標識されて、そして複合体形成を示す蛍光のレベルおよびパターンの測定は、蛍光顕微鏡検査、好ましくは共焦点式蛍光顕微鏡検査によって達成される。
【0133】
差異的なハイブリダイゼーション実験において、2点以上の異なる生物学的サンプルからの核酸分子を、異なる放射波長をもつ2つ以上の異なる蛍光標識で標識する。蛍光シグナルは、特有の波長を検出するための異なる光電子増倍管セットによって別々に検出される。2点以上のサンプル中の核酸分子の相対的な存在量/発現レベルが得られる。
【0134】
一般に、1つ以上のマイクロアレイが類似した試験条件下で使用される場合、マイクロアレイ蛍光強度は、ハイブリダイゼーション強度の変化を考慮に入れて標準化されることができる。好ましい態様において、個々のアレイ・サンプル核酸分子複合体のハイブリダイゼーション強度は、各々のマイクロアレイに含まれている内部標準化対照由来の強度を使って標準化される。
【0135】
ポリペプチド・ベースのアッセイ
本発明は、イヌCYP1A2ポリペプチドを検出し、定量する方法および試薬を提供する。これらの方法は、例えば電気泳動、質量分光検査法、クロマトグラフィー法などのような生化学の分析的な方法、あるいは、例えば放射免疫測定(RIA)、酵素結合免疫測定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロッティング、親和性捕獲質量分析、生物活性のような様々な免疫学的方法、ならびに以下に記載された、およびこの開示の再考によって当業者に明らかである他の方法を含む。
【0136】
免疫学的アッセイ
本発明は、1つ以上の抗イヌCYP1A2抗体試薬を利用したイヌCYP1A2ポリペプチドの検出方法(すなわち、免疫学的アッセイ)を同様に提供する。本明細書中に使用される場合、免疫学的アッセイは、特にイヌCYP1A2ポリペプチドまたはエピトープに結合する(本明細書中で広く規定され、そして特に断片、キメラ、および他の接着物質を含む)抗体を利用するアッセイである。
【0137】
本発明の実施に好適な多数の十分に確立された免疫学的結合アッセイ・フォーマットが知られている(例えば、米国特許第4,366,241号;同第4,376,110号;同第4,517,288号;そして同第4,837,168号)。例えば、Methods in Cell Biology Volume 37: Antibodies in Cell Biology, Asai, ed. Academic Press, Inc. New York (1993); Basic and Clinical Immunology 7th Edition, Stites & Terr, eds. (1991); Harlow and Lane、上記[例えば、14章]、およびAusubelら、上記[例えば11章]を参照のこと。一般に、免疫学的結合アッセイ(または免疫学的アッセイ)は、分析物に特異的に結合し、そして多くの場合、それを固相に固定する「捕獲物質」を利用する。1つの態様において、捕獲物質は、イヌCYP1A2ポリペプチド、または、例えば抗イヌCYP1A2抗体のようなサブシークエンスに特異的に結合する部分である。
【0138】
通常、アッセイされるイヌCYP1A2遺伝子産物は、検出標識を使って直接的にまたは間接的に検出される。アッセイで使用される特有の標識または検出可能な基は、アッセイで使用される抗体の特異的な結合を顕著に妨害しない限り、通常、本発明の極めて重要な側面ではない。標識は、共有結合で捕獲物質(例えば、抗イヌCYP1A2抗体)に結合されるか、または、第3の部分、例えばイヌCYP1A2ポリペプチドに特異的に結合する他の抗体に結合されうる。
【0139】
本発明は、イヌCYP1A2ポリペプチドを検出するための競合および非競合免疫学的アッセイの方法および試薬を提供する。非競合免疫学的アッセイは、捕獲した分析物(この場合イヌCYP1A2)の量を直接的に計測するアッセイである。1つのそのようなアッセイは、イヌCYP1A2タンパク質上の2つの非干渉エピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を利用した、二箇所の、モノクローナル・ベースの免疫学的アッセイである。例えば、基礎的な情報に関してMaddox et al., 1983, J. Exp. Med., 158:1211を参照のこと。ある「サンドイッチ」アッセイにおいて、捕獲物質(例えば、抗イヌCYP1A2抗体)は、それが固定される固体支持体に直接的に結合されている。そして、これらの固定化抗体は、試験サンプル中に存在する全てのイヌCYP1A2タンパク質を捕獲する。そして、このように不動にされたイヌCYP1A2は、すなわち標識を保持したイヌCYP1A2二次抗体が結合することによって標識されることができる。あるいは、イヌCYP1A2二次抗体は標識を欠くこともできるが、二次抗体が誘導された種の抗体に特異的な標識三次抗体が結合する。あるいは、二次抗体は、例えば酵素標識ストレプトアビジンのような標識三次分子がそれに特異的に結合することができる検出可能な部分、例えばビオチンによって修飾されることができる。
【0140】
競合アッセイにおいて、サンプル中に存在するイヌCYP1A2タンパク質の量は、上記サンプル中に存在するイヌCYP1A2タンパク質によって捕獲作用物質(例えば、イヌCYP1A2抗体)から移動した(または競合し離れた)加えられた(外因性の)イヌCYP1A2の量を計測することによって間接的に計測される。ハプテン阻害アッセイは、競合アッセイの他の例である。このアッセイにおいて、イヌCYP1A2タンパク質を、固体支持体上に固定化する。既知の量のイヌCYP1A2抗体をサンプルに加え、そしてサンプルを固定化されたイヌCYP1A2タンパク質と接触させる。この場合、固定化されたイヌCYP1A2タンパク質に結合した抗イヌCYP1A2抗体の量は、サンプル中に存在するイヌCYP1A2タンパク質の量に反比例する。固定化された抗体の量は、固定化された抗体画分または溶液中に残った抗体画分のいずれかを検出することによって検出されうる。この側面において、抗体が標識される場合、検出は直接的であり、または先に記載のとおり標識が上記抗体に特異的に結合する分子に結合される場合、検出は間接的でありうる。
【0141】
他の抗体ベースのアッセイ・フォーマット
本発明は、免疫ブロット(ウェスタンブロット)フォーマットを使った、サンプル中のイヌCYP1A2ポリペプチドの存在を検出し、そして定量するための試薬および方法を同様に提供する。他の免疫学的アッセイは、いわゆる「ラテラル・フロー・クロマトグラフィー(lateral flow chromatography)」である。ラテラル・フロー・クロマトグラフィーの非競合バージョンにおいて、サンプルは、例えば毛細管現象によって基質を横切って移動し、そして複合体を形成する、分析物を結合する可動性標識抗体に遭遇する。そして、前記複合体は、基質を横切って移動し、分析物を結合する固定化された二次抗体に遭遇する。こうして、固定化された分析物は、前記標識された抗体を検出することによって検出される。ラテラル・フロー・クロマトグラフィーの競合バージョンにおいて、分析物の標識バージョンは、担体を横切って移動して、固定化された抗体との結合に関して未標識分析物と競合する。サンプル中の分析物の量が多く、標識分析物による結合がより少ないほど、従ってシグナルはより弱くなる。例えば、Mayらの米国特許第5,622,871号およびRosensteinの米国特許第5,591,645号を参照のこと。
【0142】
アッセイに依存して、抗原、標的抗体、または抗カテプシンS抗体を含めた様々な成分が、固体表面または支持体(すなわち、基質、膜、またはろ紙)に結合されうる。種々の固体表面に生体分子を固定する多くの方法が本技術分野で知られている。例えば、前記固体表面は、膜(例えば、ニトロセルロース)、マイクロタイターディッシュ(例えば、PVC、ポリプロピレン、またはポリスチレン)、試験管(ガラスまたはプラスチック)、計量棒(例えば、ガラス、PVC、ポリプロピレン、ポリスチレン、ラテックスなど)、微量遠沈管、あるいはガラスまたはプラスチックのビーズであるかもしれない。所望の成分は、共有結合されるか、または非特異的な接着によって非共有的に付けられうる。
【0143】
天然および合成の両方の、幅広い種類の有機および無機ポリマーが、固体表面の材料として利用されうる。実例となるポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレン・テレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニル・ブチラート)、ポリビニリデン・ジフルオライド(PVDF)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、セルロース・アセテート、ニトロセルロースなどを含む。利用されうる他の材料は、紙、ガラス、セラミックス、金属、半金属、半導体材料、セメントなどを含む。さらに、ゲルを形成する物質、例えばタンパク質(例えば、ゼラチン)、リポ多糖、ケイ酸塩、アガロース、およびポリアクリルアミドが使用されることができる。いくつかの水相を形成するポリマー、例えばデキストラン、ポリアルキレン・グリコール、または界面活性剤、例えばリン脂質、長鎖(12〜24の炭素原子)アルキル・アンモニウム塩などが同様に好適である。固体表面が多孔性である場合、系の性質によって様々な気孔サイズが使用されうる。
【0144】
質量分析
多くの場合、分子の質量はその分子の同定要素として使用されることができる。従って、質量分析法はタンパク質分析物を同定するために使用されることができる。質量分析計は、イオン化された分析物に関してフライト管を下り、イオン検出器によって検出されるのに必要とされる時間を測定することによって質量を計測することができる。タンパク質のための質量分析の1つの方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(「MALDI」)である。MALDIにおいて、分析物は、レーザー波長のエネルギーを吸収するエネルギー吸収マトリックス材と混合され、プローブ表面上に配置される。レーザーを前記マトリックスにぶつけることによって、前記分析物はプローブ表面から脱着され、イオン化されて、イオン検出器によって検出される。例えばHillenkampらの米国特許第5,118,937号を参照のこと。
【0145】
タンパク質のための質量分析の他の方法は、HutchensおよびYipの米国特許第5,719,060号に記載されている。親和性捕獲のための表面増強(Surfaces Enhanced for Affinity Capture)(「SEAC」)と呼ばれる1つのそのような方法において、特異的にまたは非特異的に分析物を結合する固相親和性試薬、例えば抗体または金属イオンが、サンプル中の他の物質から分析物を分離するために使用される。そして、捕獲された分析物は、例えばレーザー・エネルギーによって固相から脱着され、イオン化されて、検出器に検出される。
【0146】
本発明のさらなる特徴および変更は、詳細な説明を含む当該出願の全体から当業者にとって明白であり、そして全てのそのような特徴が本発明の側面として意図される。同様に、本明細書中に記載の本発明の特徴は、特徴の組み合わせが本発明の側面または態様として先に明確に言及されているかどうかにかかわらず、本発明の側面として同様に意図される追加の態様の中に再結合されることができる。また、必要不可欠なものとして本明細書中に記載されなかった制限を欠いた本発明の変更が本発明の側面として意図されるように;本発明に必要不可欠なものとして本明細書中に記載されるそのような制限のみがそのようにみなされるべきである。
【0147】
本発明が、先の記載および実施例で特に記載された以外の方法で実施されうることが明らかである。
本発明の多数の修飾および変更が前述の教示に照らして可能であり、従ってそれらは本発明の範囲内にある。
本明細書中に引用された全ての刊行物の全開示を本明細書中に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】イヌ(配列番号1)、ヒト(配列番号10)、マウス(配列番号12)、およびラット(配列番号14)CYP1A2ポリペプチド配列のアラインメント。
【図2A】イヌ(配列番号2)、ヒト(配列番号9)、マウス(配列番号11)、およびラット(配列番号13)CYP1A2ポリヌクレオチド配列のアラインメント。
【図2B】イヌ(配列番号2)、ヒト(配列番号9)、マウス(配列番号11)、およびラット(配列番号13)CYP1A2ポリヌクレオチド配列のアラインメント。
【図2C】イヌ(配列番号2)、ヒト(配列番号9)、マウス(配列番号11)、およびラット(配列番号13)CYP1A2ポリヌクレオチド配列のアラインメント。
【配列表フリーテキスト】
【0149】
配列表の簡単な説明
配列番号1−イヌCYP1A2をコードするcDNA配列。
配列番号2−イヌCYP1A2の推定アミノ酸配列。
配列番号3〜8−クローニング・プライマーおよび配列決定プライマー。
配列番号9−ヒトCYP1A2をコードするcDNA配列。
配列番号10−ヒトCYP1A2の推定アミノ酸配列を表す。
配列番号11−マウスCYP1A2をコードするcDNA配列。
配列番号12−マウスCYP1A2の推定アミノ酸配列。
配列番号13−ラットCYP1A2をコードするcDNA配列。
配列番号14−ラットCYP1A2の推定アミノ酸配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのアミノ酸配列が配列番号2を含むか、またはイヌCYP1A2ポリペプチドに特有のエピトープを含む配列番号2の断片を含む、単離されたイヌCYP1A2ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のイヌCYP1A2ポリペプチドに対して特異的な抗体。
【請求項3】
配列番号1を含むか、または配列番号1の少なくとも12の連続したヌクレオチドを含む配列番号1の断片を含むか、あるいは配列番号1に相補的な非コード鎖を含むが、ただし、上記断片が配列番号9、11、13に記載の配列のいずれかの部分で異なり、かつ、少なくとも1つのヌクレオチドによってそれらの相補鎖と異なるヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記核酸が一本鎖である、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
配列番号1の相補体の少なくとも12の連続したヌクレオチドを含む、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項6】
その配列が請求項3に記載のポリヌクレオチドを含む、固体支持体に取り付けられた核酸分子のアレイ。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号1である、請求項7に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
イヌ由来のサンプル中に存在するイヌCYP1A2ポリヌクレオチドの量の測定方法であって、以下のステップ:
上記サンプルと、配列番号1を含む核酸分子、またはその断片、あるいはそれらの相補体とを、1以上の特異的なハイブリダイゼーション複合体の形成のための条件下で接触させる、
を含み、ここで、上記断片が配列番号1の少なくとも12の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである、前記方法。
【請求項10】
イヌにおける試験物質に対する代謝応答の計測方法であって、以下のステップ:
a) 試験物質により処理したイヌからの核酸を含むサンプルを準備し;そして
b) 上記サンプル中の、配列番号1、またはその断片、あるいはその相補体を含むポリヌクレオチドの量を測定する、
を含み、ここで、未処理のイヌからのポリヌクレオチドの量と比べた場合の処理したイヌからのポリヌクレオチドの量の変化が上記試験物質に対する代謝応答を示す、前記方法。
【請求項11】
前記測定がハイブリダイゼーションによって達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハイブリダイゼーションが、以下のステップ:
a) 上記サンプルと、配列番号1、またはその断片、あるいはそれらの相補体を含む核酸分子とを、1以上の特異的なハイブリダイゼーション複合体の形成のための条件下で接触させ、ここで、上記断片は、配列番号1の少なくとも12の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり;そして
b) ハイブリダイゼーション複合体を検出する、ここで、未処理のイヌからの核酸分子から形成されたハイブリダイゼーション複合体の量と比べた場合の処理したイヌからの核酸分子から形成されたハイブリダイゼーション複合体の量の変化が上記試験物質に対する代謝応答を示す、
によって達成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
サンプル中に存在するイヌCYP1A2ポリペプチドの量の測定方法であって、以下のステップ:
イヌCYP1A2ポリペプチドと、イヌCYP1A2ポリペプチドに特異的な抗体とを、当該抗体が上記イヌCYP1A2ポリペプチドに結合する条件下で接触させる、
を含む、前記方法。
【請求項14】
イヌにおける試験物質に対する代謝応答の測定方法であって、以下のステップ:
a) 試験物質により処理したイヌからサンプルを準備し;そして
b) 上記サンプル中の、配列番号2、または上記ポリペプチドに特有のエピトープを含むその断片を含むポリペプチドの量を測定する、
を含み、ここで、未処理のイヌからのポリペプチドの量と比べた場合の処理したイヌからのポリペプチドの量の変化が試験物質に対する代謝応答を示す、前記方法。
【請求項15】
前記測定が、イヌCYP1A2ポリペプチドと、イヌCYP1A2ポリペプチドに結合可能な抗体とを、当該抗体が上記イヌCYP1A2ポリペプチドに結合する条件下で接触させることによって達成される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2006−512075(P2006−512075A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563516(P2004−563516)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2003/006261
【国際公開番号】WO2004/058957
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】