イヌFc部分を含む融合タンパク質
本発明は、イヌFcドメインに融合した治療用ペプチド及びタンパク質に関する。それらを使用する方法及び組成物が記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌ抗体Fcドメインに融合した治療用ペプチド及びタンパク質に関する。それらの使用方法及びそれらを使用する組成物が記載されている。
【背景技術】
【0002】
Fc融合タンパク質の使用は現在では、所定の治療薬のin vivoにおける半減期を増大させるための一般的な様式である。ヒトは、4つのヒトIgGサブクラス(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)を有することが理解されており、これらの各IgGのFcドメインは、潜在的な治療用タンパク質の一部として、多様に用いられてきた。抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域又はアミノ酸配列改変体Fc領域)に起因し得る生物学的活性である。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御、等が挙げられる。
【0003】
抗体のこれらのエフェクター機能は、ネイティブなIgGサブクラスに依存して、変動する傾向がある。例えば、IgGは、ヒトFcドメインへのADCC毒性応答は、IgGの特定のサブクラスに依存して変動することが知られている。例えば、IgG1及びIgG3は、IgG2よりもはるかに大きいADCC応答を誘導することが知られており、IgG4は、IgG2に基づいた治療方法よりも低いADCC応答を有する。Fc融合物からのADCC毒性応答を最小化することが望ましいことが認識されている。
【0004】
イヌ、ヒト及びマウスIgGγ鎖の定常領域の系統樹を比較した場合、種内のサブクラスの定常領域においては有意な配列相同性があるものの、種間で定常領域を比較した場合には、相同性は極めて低いことが容易に明らかとなる(非特許文献1;その中の図4を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tengら.Vet.Immunol.Immunopath.80 2001,259−270
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Fcドメインが重要なエフェクター機能を有することを考慮すれば、Fc融合物に基づいた治療用タンパク質の所定の治療効果が、融合タンパク質のFc部分とは対照的に、治療用タンパク質に起因し得ることを決定することが重要である。動物において試験される薬剤については、応答がモニタリングされている種のIgGに由来するFc部分に基づいた、融合タンパク質応答を特徴付けることが有益となるだろう。これは特に、治療薬が、治験において試験されている場合及び投与計画のために試験されている場合に重要である。この点については、イヌにおける所定の治療用組成物の試験及び処置のために使用され得る具体的なFcドメインを作成する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に記載される発明は、治療用ペプチド又はタンパク質及びイヌ抗体Fcドメインを含む融合タンパク質であって、ここで前記治療用ペプチド又はタンパク質が、直接又はリンカーを通してFcドメインと連結されており、ここで前記Fcドメインが、イヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDからなる群から選択されるイヌIgGのヒンジ領域からなる群から選択される配列を有するヒンジ領域を含む、融合タンパク質に関する。
【0008】
好ましくは、前記融合タンパク質は以下の式:X−La−F:F−La−X又はX−La−F:F、を含む、請求項1に記載の融合タンパク質:ここで
【0009】
Xは、治療用ペプチドであり;Lは、a個のアミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;「:」は、化学会合又は架橋であり;かつFは、FcRn結合部位を含むイヌ免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分であり、かつイヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDから選択されるヒンジ領域を含む。
【0010】
具体的な実施態様において、前記イヌヒンジ領域は、CTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択される配列を含む。
【0011】
前記治療用タンパク質は、Fc融合コンストラクトとして送達されるべきである任意の治療用タンパク質であり得、例証的な実施態様では、ANP、BNP、ウロジラチン、DNP又は生物学的に活性なそれらの配列改変体からなる群から選択されるナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである治療用ペプチドが意図される。具体的な実施態様は、治療用ペプチドを、ANP又はBNPとして記載している。前記融合タンパク質は、少なくとも2つの治療用ペプチドを含み得る。両ペプチドは、同一であってもよく、又は異なるペプチドであってもよい。具体的な例において、少なくとも1つのペプチドは、ナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドであり、好ましくは、配列番号8の配列を有する。
【0012】
具体的な実施態様において、前記融合タンパク質は、少なくとも2つのFcドメインを含む。前記Fcドメインは、イヌIgGA、IgGB、IgGC又はIgGD由来である。前記2つのFcドメインは、両方とも同一のサブクラスのIgG由来であってもよく、又は異なるサブクラス由来であってもよい。したがって、第一Fcドメインは、IgGA、IgGB、IgGC又はIgGD由来であり得、第二Fcドメインは独立して、IgGA、IgGB、IgGC又はIgGDから選択され、それは好ましくは第一Fcドメインと同一であるが、異なっていてもよい。
【0013】
発明の融合物における前記リンカーは、任意の長さであり得、それは好ましくは6アミノ酸長、11アミノ酸長、16アミノ酸長又は20アミノ酸長である。他の実施態様は、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長又は20〜30アミノ酸長であるリンカーを意図する。具体的な実施態様は、コハク酸グリシン(glycine succinate)リンカー、アミノ酸リンカー又はそれらの組合せであるリンカーを意図する。
【0014】
前記アミノ酸アミノ酸リンカーは、GlyGly(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGly(L3)(配列番号13)、(GlyGlySer)3GlyGly(L4)(配列番号14)、(GlyGlySer)4GlyGly(配列番号15)、(GlySerGly)5Gly(L5a)(配列番号16)、(GlyGlySer)5Gly(L5)(配列番号17)、又は(GlyGlySer)6GlyGly(L6)(配列番号12)であり得る。
【0015】
CTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択されるヒンジ配列を含むイヌ抗体Fcドメインによって互いから分離されている少なくとも1つ以上の治療用ペプチド(配列番号8の配列を有するぺプチド等)を含む融合タンパク質であって、ここで該治療用ペプチドが、直接又はリンカーを通してFcドメインと結合体化されている融合タンパク質もまた意図される。前記融合タンパク質は好ましくは、式:
【0016】
X−La−F:F−La−Xであって、式中、
【0017】
Xは、1つ以上の治療用ペプチドであり;
【0018】
Lは、アミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;
【0019】
「:」は、化学会合又は架橋であり;かつ
【0020】
Fは、FcRn結合部位並びにCTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択されるヒンジ領域を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。具体的な例において、治療用ペプチドの少なくとも1つは、配列番号8の配列を有する。具体的な実施態様において、Xは、1つより多くのナトリウム利尿ペプチドである。
【0021】
配列番号2、配列番号3;配列番号5又は配列番号6の配列を有する、単離された融合タンパク質、及びそれを含む組成物もまた意図される。
【0022】
別の実施態様は、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される配列を有するポリペプチドと少なくとも99%の配列同一性を示す、単離された融合タンパク質を意図する。
【0023】
さらなる実施態様は、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子を意図する。
【0024】
またさらなる実施態様は、配列番号1及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子を意図する。
【0025】
本明細書中に記載される融合タンパク質は、ほ乳動物発現系、原核生物発現系、酵母発現系、植物発現系、又はトランスジェニック発現系を用いることによって組換え生産され得る。
【0026】
本発明の前記融合タンパク質を含む、医薬組成物が意図される。前記医薬組成物は好ましくは、静脈内、皮下又は経口投与に適合されている。
【0027】
種々の状態の処置における組成物の使用方法もまた意図され、それは、過剰レベルの細胞外液によって特徴付けられる状態の処置又は改善;NPRA受容体の活性化が治療効果を与える病的状態の処置又は改善;異常な利尿(diruretic)、ナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置又は改善;ナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するか又はレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患の処置又は改善;慢性心不全(非虚血性)、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化(cardiac fibrosis)、拡張期心不全、及び肥大型心筋症からなる群から選択される心血管系の病的状態の処置又は改善;高血圧症、肺高血圧症、収縮期高血圧症及び抵抗性高血圧症からなる群から選択される高血圧性疾患の処置又は改善;並びに糖尿病性腎症の処置又は改善を含み、ここでそのような方法は、本明細書中に記載される医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】組換えイヌANP−Fc融合タンパク質のDNA及びタンパク質配列。マウスIgGκ軽鎖シグナル配列は、ボールド体である。これは、切断して外され、最終産物上にはない。CaANP28には下線がひかれている。(GGS)6GGリンカーは、イタリック体にしてある。
【図2】イヌANP−Fc融合物の、A)ベクターマップ及びB)タンパク質マップ例。
【図3】イヌANP−Fc融合タンパク質cGMP誘導アッセイの用量応答曲線。実線はANPであり、破線はイヌANP−Fc融合物である。
【図4】覚醒イヌにおける血漿ANP−caFcレベルに対する、静脈内及び皮下ANP−caFc投与の効果。
【図5】覚醒イヌにおける血漿cGMPレベルに対する、静脈内及び皮下ANP−caFc投与の効果。
【図6】研究番号1において、覚醒遠隔測定用ビーグルにおける血漿cGMPレベルに対する皮下ANP−caFc投与の効果。
【図7A】図7Aは、研究番号1における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対平均動脈圧に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図7B】図7Bは、投薬後第1〜4日目にわたる平均動脈圧(MAP)における絶対的相違を示す。ANPca−Fcは、覚醒イヌにおける平均動脈血圧を、用量依存的に降下させた。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、MAPは予想通りに、覚醒イヌにおいて上昇した。
【図8A】図8Aは、研究番号1における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対心拍数(HR)に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図8B】図8Bは、投薬後第1〜4日目にわたるHRにおける絶対的相違を示す。ANP−caFcは、覚醒イヌにおけるHRを、用量依存的に増加させた。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、HRは予想通りに、覚醒イヌにおいて増加した。
【図9】研究番号2における覚醒遠隔測定用ビーグルにおける、循環cGMPレベルに対する皮下ANP−caFc投与の効果。
【図10A】図10Aは、研究番号2における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対平均動脈圧に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図10B】図10Aは、投薬後第1〜4日目にわたる平均動脈圧(MAP)における絶対的相違を示す。ANPca−Fcは、覚醒イヌにおける平均動脈血圧を、用量依存的に降下させた。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、MAPは予想通りに、覚醒イヌにおいて上昇した。
【図11A】図11Aは、研究番号2における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対心拍数(HR)に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図11B】図11Bは、投薬後第1〜4日目にわたるHRにおける絶対的相違を示す。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、HRは予想通りに、覚醒イヌにおいて増加した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は具体的には、直接か又はリンカーを通してのいずれかでイヌ抗体Fcドメインと連結されている治療用ペプチド又はタンパク質を含む融合タンパク質の、製造及び使用方法、並びに融合タンパク質を製造及び使用するための組成物に関する。治療用ペプチド及び融合タンパク質のFc領域は、融合タンパク質の効力に貢献する2つの別個の生物学的役割を果たす。驚くべきことに、リンカー長もまた、融合タンパク質の効力に影響する。本明細書中に記載される融合タンパク質は、イヌにおける薬物の治療効力の指標を提供し、他の動物における処置の効力を予測するために有用であるだろう。あるいは、発明の融合タンパク質はまた、イヌの処置のための獣医学療法において有用であり得る。
【0030】
イヌ抗体Fcドメインによって互いから分離されている少なくとも2つの治療用ペプチド又はタンパク質を含む融合タンパク質もまた提供され、ここで治療用ペプチド又はタンパク質は、直接又はリンカーを通して、イヌ抗体Fcドメインと結合体化されている。イヌFcドメインが、イヌIgGのヒンジ領域を含むことが、本発明の重要な特徴である。ヒンジ領域は、残りのイヌFcドメインと同一のIgGサブクラス由来であってもよく、あるいは、ヒンジ領域は、Fc部分の残りが由来するIgGとは異なるイヌIgG由来であってもよい。本発明において使用されるイヌFcヒンジ配列の具体的な配列例としては:
【0031】
CTDTPPCP(配列番号18;イヌIgGA由来のヒンジ);CPKCP(配列番号19;イヌIgGB由来のヒンジ);FNECRCTDTPPCP(配列番号20;イヌIgGA由来のヒンジ);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21;イヌIgGB由来のヒンジ);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22;イヌIgGC由来のヒンジ);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23;イヌIgGD由来のヒンジ)が挙げられる。
【0032】
具体的な実施態様において、治療用ペプチド又はタンパク質はナトリウム利尿ぺプチド又はタンパク質であり、これは、イヌナトリウム利尿ぺプチドもしくはタンパク質又は別の種由来のナトリウム利尿ぺプチドもしくはタンパク質であり得る。
【0033】
NPRA受容体の活性化が、対象に治療効果を与える病的状態(異常な利尿、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患を含むが、それらに限定されない)の処置又は改善を含む用途のための、本発明の治療用融合タンパク質をコード化する核酸分子、及びイヌナトリウム利尿融合タンパク質をコード化するポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターもまた本明細書中に提供される。発明の融合タンパク質又は核酸分子は、医薬的に許容可能な添加剤、担体又は希釈剤を含む組成物中に存在し得る。
【0034】
一態様において、本発明は、コハク酸グリシンリンカーによってFcドメインに結合された1つ以上の治療用ペプチドを含む融合タンパク質に関する。本明細書中に意図されるように、治療用ペプチドとイヌFcドメインとを連結するためにコハク酸グリシンリンカーが使用される場合、リンカーのグリシン残基がFcドメインのN末端に連結され、コハク酸部分(moeity)が治療用ペプチドのC末端並びに/又は種々の長さ及び配列のアミノ酸リンカーに連結されている。リンカーに関して、治療用ペプチドの持続された効力を達成するために、前記長さ及び組成が必要である。本明細書中で意図されるように、治療用ペプチドは、異なる配向でFcドメインに連結され得る。1つの配向において、ペプチドのC末端は、FcドメインのN末端に連結されており、別の配向においては、ペプチドのN末端が、FcドメインのN末端に連結されている。Fcドメインは、ヒンジ、IgG分子のCH2及びCH3領域のホモ二量体として存在し、ここでFcドメインはIgGヒンジ領域内の一番目のN末端システイン残基で開始し、ホモ二量体は、ヒンジ中のシステイン残基からの2つのジスルフィド結合によって、結びつけられている。
【0035】
さらなる態様において、発明は、医薬的に許容可能な添加剤、担体又は希釈剤、及び本明細書中に記載される任意の融合ペプチドを含む医薬組成物又は処方物を含む。
【0036】
追加の態様において、発明はまた、本明細書中に開示される融合タンパク質をコード化する核酸分子及び当該タンパク質を発現する発現ベクターに関する。
【0037】
別の態様において、発明は、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患並びに/又はナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するかもしくはレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患を含むがそれらに限定されない、NPRA受容体の活性化が対象に治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法に関する。これらの状態としては、過剰な細胞外液によって特徴付けられ得る状態が挙げられ、肺水腫を含むが、それに限定されない。特に好ましい実施態様において、発明は、慢性心不全(非虚血性)、心筋梗塞後心不全(虚血性CHF)、急性心筋梗塞、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化、拡張期心不全、及び肥大型心筋症を含むが、それらに限定されない心血管系の病的状態の処置又は改善方法を含む。さらに、例えば、肺高血圧症、収縮期高血圧症、抵抗性高血圧症等の高血圧症を含むがそれに限定されない高血圧性疾患、及び糖尿病性腎症等の他の心血管関連疾患が、本発明の方法によって処置又は改善され得る。本発明の融合タンパク質及び医薬組成物が、冠動脈バイパス手術(CABG)を受けている対象に、治療効果を提供し得ることもまた、本明細書中に意図される。
【0038】
発明が、上に提供された任意の病的状態の処置又は改善のための薬の製造における本発明の融合タンパク質の使用を含むこともまた、本明細書中に意図される。
【0039】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、以下の式を含む:
X−La−F:F−La−X又はX−La−F:Fであって、式中、
Xは、例えば、配列SLRRSSCFGGRMDRIGAQSGLGCNSFRY(配列番号8)を有するイヌナトリウム利尿ペプチド等のタンパク質の治療用ペプチドであり;
【0040】
Lは、「a」個のアミノ酸残基を含むリンカーであり;aは、少なくとも0である整数であり;「:」は、化学会合又は架橋であり;かつFは、FcRn結合部位を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。好ましくは、Fcドメインは、CTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVMHETLQNHYTDLSLSHSPGK(配列番号9)の配列を有するか、又はCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPGK(配列番号10)の配列を有する。
【0041】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、以下の式を含む:
X−La−F:F−La−X、式中、Xは、1つ以上の治療用ペプチドであり、ここで少なくともイヌナトリウム利尿ペプチド上は配列番号8の配列を有し;Lは、アミノ酸残基を含むリンカーであり;aは、少なくとも0である整数であり;「:」は、化学会合又は架橋であり;かつFは、(好ましくは、配列番号9又は10の配列を有する)FcRn結合部位を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。大多数のイヌナトリウム利尿ペプチドは、実際には配列番号8の配列の複数のコピー(即ち、X=(配列番号8)n:式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10以上の整数である)であり得ることが意図される。さらに、Xは、複数で存在する配列番号10の断片(即ち、X=(配列番号10の断片)n)であり得る。
【0042】
いくつかの実施態様において、治療用ペプチドは、ANP、BNP、ウロジラチン、DNP又は生物学的に活性なそれらの配列改変体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、イヌナトリウム利尿ペプチドは、ANP又はBNPである。
【0043】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、少なくとも2つの治療用ペプチドを含む。いくつかの実施態様において、Xは、1つより多いイヌナトリウム利尿ペプチドであり得る。いくつかの実施態様において、両イヌナトリウム利尿ペプチドは、ANPである。いくつかの実施態様において、両イヌナトリウム利尿ペプチドは、BNPである。
【0044】
一定の実施態様において、化学会合、即ち(:)、は共有結合である。他の実施態様において、化学会合、即ち(:)、は非共有結合性の相互作用、例えば、イオン性相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用又は水素結合、である。
【0045】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、少なくとも2つのFcドメインを含む。
【0046】
いくつかの実施態様において、リンカーは、少なくとも2、4、6、9、11、16又は20アミノ酸長である。他の実施態様において、リンカーは、少なくとも0、1、5、7、8、10、12、13、14、15、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30アミノ酸であるが、随意にそれよりも長くてもよく、例えば、30と40との間のアミノ酸長又は40と50との間のアミノ酸長であり得る。いくつかの実施態様において、リンカーは、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、9〜20アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長、20〜30アミノ酸長、25〜35アミノ酸長、30〜50アミノ酸長、30〜40アミノ酸長又は35〜45アミノ酸長から選択される。いくつかの実施態様において、リンカーは、10より長い、15より長い、20より長い、25より長い、又は30より長いアミノ酸長である。いくつかの実施態様において、リンカーは、コハク酸グリシンリンカー(L1)、アミノ酸リンカー又はそれらの組合わせから選択される。いくつかの実施態様において、アミノ酸リンカーは、GlyGly(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGly(L3)、(GlyGlySer)3GlyGly(L4)、(GlyGlySer)4GlyGly、(GlySerGly)5Gly(L5a)、(GlyGlySer)5Gly(L5)又は(GlyGlySer)6GlyGly(L6)である。
【0047】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、対応する野生型治療用ペプチド又はタンパク質よりも、タンパク質分解に耐性である。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、対応する野生型治療用ペプチド又はタンパク質よりも長い半減期を示す。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、組換え技術、合成化学又は半合成化学によって作られる。
【0048】
具体的な実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号3及び配列番号6の最終的にプロセシングされたタンパク質配列を有する、配列番号2又は5の任意の1つ(それぞれ、配列番号33〜36によってコードされる)を含む、イヌナトリウム利尿融合タンパク質を提供する。配列番号2及び配列番号4において示される配列は、切断して外され、最終産物上には存在しない、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号7)のマウスIgGκ軽鎖シグナル配列を含む。
【0049】
本開示は、本明細書中に記載されているような、イヌナトリウム利尿融合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、静脈内、皮下又は経口投与に適合されている。
【0050】
本開示は、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるポリペプチドをコード化する単離された核酸分子を提供する。本開示はまた、配列番号1及び配列番号4からなる群から選択されるポリペプチドをコード化する単離された核酸分子を提供する。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、ほ乳動物発現系、原核生物発現系、酵母発現系、植物発現系、又はトランスジェニック発現系を用いることによって組換え生産される。
【0051】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌFcヒンジ領域を含むイヌFcドメインに連結された治療用融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、過剰レベルの細胞外液によって特徴付けられる状態の処置又は改善方法を提供する。
【0052】
ペプチドがナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである実施態様において、本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、NPRA受容体の活性化が治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法を提供する。
【0053】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置又は改善方法を提供する。
【0054】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、ナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するか又はレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患の処置又は改善方法を提供する。
【0055】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、慢性心不全(非虚血性)、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化、拡張期心不全、及び肥大型心筋症からなる群から選択される心血管系の病的状態の処置又は改善方法を提供する。
【0056】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、高血圧症、肺高血圧症、収縮期高血圧症及び抵抗性高血圧症からなる群から選択される高血圧性疾患の処置又は改善方法を提供する。
【0057】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、糖尿病性腎症の処置又は改善方法を提供する。
【0058】
A.定義
他に定義されていない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書中の発明の記載において使用される用語法は、特定の実施態様を説明する目的のためのみであって、発明を限定することを意図しない。見出しは、読者の利便性のために使用されており、これもまた発明を限定することを意図しない。本明細書中で言及されている全ての出版物、特許出願、特許、及び他の文献は、参照することによりそれらの全体が本明細書中に援用され、本明細書中にそれらのブランド名で言及されている任意のブランド薬の添付文書についても同様である。
【0059】
明細書及び本明細書中に示されている実施態様において使用されている場合、以下の用語は、示された意味を有する。
【0060】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示していない限り、複数形もまた含むことが意図される。
【0061】
例えば、本明細書中で「イヌナトリウム利尿融合タンパク質」として用語が使用されているように、「融合タンパク質」は、共有結合している少なくとも2つのポリペプチドを有するタンパク質をいい、ここで、1つのポリペプチドは1つのタンパク質配列又はドメインに由来し、他のポリペプチドは、別のタンパク質配列又はドメインに由来する。一般的に、融合タンパク質のポリペプチドは、直接か又は共有結合リンカーを介してのいずれかで連結され得る。用語(「リンカー」)は、ポリグリシンリンカーなどのアミノ酸リンカー、又は例えば、コハク酸グリシンリンカー、炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー等の別のタイプの化学的リンカーをいう。リンカーは、少なくとも2、4、6、9、11、16又は20アミノ酸長から構成され得る。あるいは、リンカーは、少なくとも0、1、5、7、8、10、12、13、14、15、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30アミノ酸から構成され得るが、随意に、それよりも長くてもよく、例えば、30と40との間のアミノ酸長又は40と50との間のアミノ酸長であり得る。アミノ酸は、例えば、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及びリジン等の、20個の天然に存在するアミノ酸のD又はL異性体のいずれかの中から選択される。リンカーは、グリシン及びアラニン等の、過半数の立体障害のないアミノ酸からなり得る。リンカーは、例えば、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長、20〜30アミノ酸長、30〜35アミノ酸長、35〜40アミノ酸長、40〜45アミノ酸長又は45〜50アミノ酸長等の、広範な長さのアミノ酸残基を含み得る。これらのアミノ酸のいくつかは、糖鎖付加されていてもよい。非ペプチドリンカーもまた、可能である。例えば、−NH−(CH2)S−C(O)−、式中=2〜20、等のアルキルリンカーが使用され得る。これらのアルキルリンカーはさらに、低級アルキル基(例えば、C1〜C6)低級アシル基、ハロゲン基(例えば、Cl、Br)、CN基、NH2基、フェニル基等の、任意の非立体障害基によって置換されていてもよい。例証的な非ペプチドリンカーは、リンカーが、100〜5000kD、好ましくは100〜500kDの分子量を有する、PEGリンカーである。ペプチドリンカーは、改変され得、上記と同一の様式で誘導体を形成し得る。本明細書中の例において記載されているように、本発明の融合タンパク質の好ましいリンカーは、基礎的なリピート(GGS)x又は(GGS)xGGをもつ、ひと続きのアミノ酸である。例えば、xは、0〜16の整数であり得る。具体的な配向は、本明細書中に詳細に記載されているものの、融合タンパク質を形成するポリペプチドは、C末端がN末端に連結されていてもよく、しかしそれらはまたC末端がC末端に、N末端がN末端に、又はN末端がC末端に連結されていてもよく、融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序であり得る。本発明の融合タンパク質は、2つのペプチド融合を含有し得ることもまた、本明細書中で意図される。例えば、融合タンパク質は、2つのFcドメインによって隣接された1つのペプチド(例えば、Fc−イヌナトリウム利尿ペプチド−Fcであって、ここでイヌナトリウム利尿ペプチドが直接又はリンカーを通してFcドメインと結合体化されている)を含み得る。本明細書中で意図されるように、コハク酸グリシンリンカーが使用されて、イヌナトリウム利尿ペプチドとFcドメインとが連結されている場合、リンカーのグリシン残基は、FcドメインのN末端に連結されており、コハク酸部分は、イヌナトリウム利尿ペプチドのC末端に連結されている。
【0062】
用語「タンパク質」は、本明細書中で、「ポリペプチド」及び「タンパク質」と互換的に使用される。
【0063】
「核酸」は、一本鎖か又は二本鎖形態いずれかの、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーをいう。用語は、基準核酸と類似した結合特性を有し、かつ基準ヌクレオチドに類似した様式で代謝される、合成、天然に存在する、及び天然に存在しない、公知のヌクレオチドアナログ又は改変された骨格残基もしくは結合を含有する核酸を包含する。そのようなアナログは、当業者によく知られており、例として、ホスホロチオエート及びホスホロアミダートが挙げられる。他に示されていない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に改変されたそれらの改変体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列、並びに明示的に示されている配列を暗に包含する。本明細書中で使用される時、用語「核酸」はまた、「遺伝子」、「cDNA」、「mRNA」、「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」として言及されていてもよい。
【0064】
本明細書中に意図されるように、本発明の融合タンパク質を含むポリヌクレオチド配列は、融合タンパク質の各個別のポリペプチドをコード化する各々のヌクレオチド配列に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する。融合ポリペプチドの個別のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列はしたがって、保存的に改変された改変体、多形改変体、対立遺伝子、変異体、部分配列、及び種間ホモログを含む。
【0065】
「アミノ酸」は、本明細書中では、他に特定されていない限り、任意の天然に存在する、人工の、又は合成アミノ酸であって、そのLか又はD立体異性体のいずれか、として定義される。用語「残基」は、用語「アミノ酸」と互換的に使用され、しばしば所定のアミノ酸配列における特定の位置を有するように指定される。
【0066】
「生物学的に活性」は、アゴニスト、部分アゴニスト又はアンタゴニスト等の、治療活性又は薬理活性を有する薬剤をいう。
【0067】
本明細書中に提供される「有効量」は、望ましい治療効果を提供するための、無毒性であるが、十分な量をいう。以下に指摘される通り、必要とされる正確な量は、年齢、対象の全身状態、処置されている状態の重症度、投与される特定の生物学的に活性な薬剤等に依存して、対象によって変動する。任意の個別の症例における適切な「有効」量は、関係している文書及び文献の参照によって並びに/又は日常的な実験を使用することによって、当業者によって決定され得る。
【0068】
本明細書中で使用するとき、用語「Fcドメイン」は、「Y」の基部に由来する抗体のその部分をいい、各々2つ〜3つの定常ドメイン(抗体のクラスに依存する)を与える2つの重鎖から構成される。Fc領域は、種々の細胞受容体及び補体タンパク質に結合し、抗体の異なる生理学的作用を媒介する。本明細書中で意図されるように、任意の抗体の、最小限のエフェクター機能を示すか又はエフェクター機能を示さないFcドメインが、本発明で使用され得る。これらとしては、IgG1、IgG2、IgG4が挙げられるが、それらに限定されず、また、当業者によく知られている方法によって、最小限のエフェクター活性を持つようにその配列が改変された任意の抗体の任意のFcドメインもまた含まれ得る。
【0069】
あるいは、用語「Fcドメイン」は、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖として記載され得、ここで、IgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcドメインとホモ二量体を形成する。
【0070】
用語「Fc」はまた、融合タンパク質の部分を記載するのに使用される。この文脈において、Fcは、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むIgG重鎖であり、IgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcとホモ二量体を形成する。換言すれば、Fcホモ二量体の各鎖のN末端アミノ酸配列は、IgGヒンジ領域のCysProProCysPro(配列番号11)で開始し、両Cys残基は、ジスルフィド結合している。
【0071】
本明細書中で使用するとき、ペプチドは、それが実質的に細胞性物質を含んでいないか、又は化学的前駆体もしくは他の化学物質を含んでいない場合に、「単離された」又は「精製された」といわれる。本発明の融合タンパク質は、均質又は他の程度の純度まで、精製され得る。精製のレベルは、意図される用途に基づくだろう。決定的な特徴は、製剤が、かなりの量の他の成分の存在下であっても、ペプチドの望ましい機能を可能とすることである。
【0072】
本明細書中でいう「イヌナトリウム利尿ペプチド」としては、ほ乳動物イヌナトリウム利尿因子(ANP、BNP、CNP)、ウロジラチン及びそれらに類似したペプチド、並びにそれらのアナログ、活性断片、分解産物、塩、改変体、誘導体及び組合せが挙げられる。具体的には、イヌANP及びBNPとしては、「イヌANP28」及び「イヌBNP32」が挙げられ、それらが具体的に意図される。
【0073】
いかなる作用機序によっても限定されるものではないが、本明細書中で言及される場合、「徐放性、又は持効性処方物」の薬物動態は、FcRn結合及び酸性のリソソーム内から全身循環へと戻るFcRn結合型分子の再循環によって、バイオアベイラビリティの上昇を示すこととして特徴付けられ得る(V.Ghetie及びE.S.Ward,Annual Rev. Immunol,18,739−766,(2000))。
【0074】
本明細書中で使用される用語「半合成」は、本発明の融合タンパク質の合成プロセスをいい、合成化学及び組換え技術の両方の使用を含む。例えば、本明細書中で開示される融合タンパク質のFcドメインは、組換えで作られ得、一方で、イヌナトリウム利尿ペプチド及びリンカーは、合成的に作られ得る。
【0075】
B.ペプチド分子
本発明は、イヌを供給源とするIgG又は他の抗体のFc領域に連結した、1つ以上のイヌナトリウム利尿ペプチドから構成される新規の生物学的に活性な融合タンパク質であって、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患を含むが、それらに限定されない、NPRA受容体の活性化が対象に治療効果を与える病的状態の処置又は改善を含む用途のための、融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質は、医薬的に許容可能な添加剤、担体又は希釈剤を含む組成物中に存在し得る。
【0076】
発明は、以下の一般式A又はBのいずれか一方を有し得る、本明細書中に記載された融合タンパク質に関し、
【化1】
【0077】
式中、治療用ペプチド又はタンパク質は、
(i)免疫グロブリンではないポリペプチドであり、かつ
(ii)アミノ酸配列のN’からCの配向、アミノ酸配列のCからN’の配向又は1つより多くの治療用ペプチドの場合、N’からCの配向、CからN’の配向もしくはN’からC及びCからN’の混合した配向であり得;かつFcドメインは、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であり、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcドメインとホモ二量体を形成し、ここでFcドメインは、FCAB又はFCBAによって示され、ここでABは、両FcドメインのN’からCの配向であり、BAは、両FcドメインのCからN’の配向である。FC配列は好ましくは、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式A又は一般式Bのいずれにおいても、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0078】
上記の一般式の治療用タンパク質は、任意の治療用タンパク質であり得る。例えば、それは、サイトカイン、リガンド結合タンパク質、ホルモン、ニューロトロフィン、ニュートロフィン(neutrophin)受容体、体重の制御因子、血清タンパク質、凝固因子、プロテアーゼ、細胞外マトリクス成分、血管新生因子、抗血管新生因子、免疫グロブリン受容体、血液因子、癌抗原、スタチン、成長因子、治療用ペプチド、非ヒトタンパク質、非ほ乳動物タンパク質及びタンパク質毒素からなる群から選択され得る;具体的な例において、治療用ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のイヌANP、イヌBNP、イヌウロジラチン、イヌDNP及びそれらの生物学的に活性な配列改変体からなる群から選択され;好ましくは、配列番号8の配列を有する;さらに他の例証的な治療用タンパク質としては、造血因子、インターフェロン、インターロイキン及び腫瘍壊死因子等のサイトカイン;エリスロポエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子及び顆粒球コロニー刺激因子等の造血因子;CD分子、CTLA−4、TNF受容体、及びインターロイキン受容体等のリガンド結合タンパク質、が挙げられる。
【0079】
本明細書中で意図されるように、一態様において、本発明は、リンカーを経由して抗体のFcドメインに結合体化されている少なくとも1つのイヌナトリウム利尿ペプチドを含む融合タンパク質を包含する。融合タンパク質は実際には、イヌ抗体由来の抗体Fcドメインに結合体化されている1つのイヌナトリウム利尿ペプチド又は2つのイヌナトリウム利尿ペプチドを含み得る。以下に詳述されるように、ペプチドとFcドメインとを結合体化するために用いられているリンカーの配列及び長さは、融合タンパク質が、1つ又は2つのイヌナトリウム利尿ペプチドを含むかによって、変動し得る。
【0080】
発明の一態様は、以下の一般式1又は2のいずれか一方を有する融合タンパク質に関し、
【化2】
【0081】
式中、ナトリウム利尿ペプチドは、(i)1つ以上のイヌANP、イヌBNP、イヌウロジラチン、イヌDNP及びそれらの生物学的に活性な配列改変体からなる群から選択され、かつ好ましくは、配列番号8の配列を有し、(ii)アミノ酸配列のN’からCの配向、アミノ酸配列のCからN’の配向又は1つより多いイヌナトリウム利尿ペプチドの場合、N’からCの配向、CからN’の配向又はN’からC及びCからN’の混合した配向であり得;リンカーは、コハク酸−グリシンリンカー(L1)、GlyGlyリンカー(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGlyリンカー(L3)、(GlyGlySer)yGlyGlyリンカー、(式中、yは3〜6(L4)、及び7(L6)である)、(GlyGlySer)5Gly(L5)並びに(GlySerGly)5Glyリンカー(L5a)からなる群から選択される1つ以上のリンカーであり;かつ、Fcドメインは、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であって、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcドメインとホモ二量体を形成し、ここでFcドメインは、FCAB又はFCBAによって示され、ここでABは、両FcドメインのN’からCの配向であり、BAは、両FcドメインのCからN’の配向である。FC配列は好ましくは、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式1又は一般式2のいずれにおいても、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0082】
本発明の別の態様において、融合タンパク質は、以下の式3を有し;
【化3】
【0083】
式中、ANPは、ANPのアミノ酸配列のN’からCの配向(ANPXY)であるか、又は配列番号8のアミノ酸配列のCからN’の配向であり(ANPYX);リンカーは、L1、L2、L3、L4、L5、L5a及びL6からなる群から選択される1つ以上のリンカーであり、ここで、L1は、本明細書中に記載されるコハク酸グリシンリンカーであり、L2はGlyGlyリンカーであり、L3はGly(SerGlyGly)2SerGlyリンカーであり、L4は(GlyGlySer)3GlyGlyリンカーであり、L5は(GlyGlySer)5Glyリンカーであり、L5aは(SerGlyGly)5Glyであり、かつL6は(GlyGlySer)6GlyGlyリンカーであり;かつFcは(i)ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であって、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcとホモ二量体を形成し、かつ(ii)FCUB、FCIBA、FC2AB又はFc2BAによって示され、ここでFc1はIgGI分子由来であり、Fc2はIgG2分子由来であり、ABは、FcのN’からCの配向であり、かつBAは、FcのCからN’の配向である。FC配列は好ましくは、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式3において、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0084】
本発明のさらに別の態様において、融合タンパク質は以下の式4を有し、
【化4】
【0085】
式中、ANPは、配列番号8のアミノ酸配列のN’からCの配向(ANPXY)であるか、又は配列番号8のアミノ酸配列のCからN’の配向である(ANPyx);リンカーは、L1、L2、L3、L4、L5、L5a及びL6からなる群から選択される1つ以上のリンカーであり、ここで、L1は、本明細書中に記載されるコハク酸グリシンリンカーであり、L2はGlyGlyリンカーであり、L3はGly(SerGlyGly)2SerGlyリンカーであり、L4は(GlyGlySer)3GlyGlyリンカーであり、L5は(GlyGlySer)5Glyリンカーであり、L5aは(SerGlyGly)5Glyであり、かつL6は(GlyGlySer)6GlyGlyリンカーであり;かつFcは(i)ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であって、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcとホモ二量体を形成し、かつ(ii)FCUB、FCIBA、FC2AB又はFc2BAによって示され、ここでFc1はIgGI分子由来であり、Fc2はIgG2分子由来であり、ABは、FcのN’からCの配向であり、かつBAは、FcのCからN’の配向である。好ましくは、FC配列は、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式4において、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0086】
本発明の融合タンパク質は、生物学的に活性な分子であり、例えば、それらは、cGMPを触媒することができるが、それらが大変長い半減期を持ち、またタンパク質分解に対する感受性がより低いため、治療用目的のために、より有用である。その上、FcRn媒介輸送を活用することによって、本明細書中に開示される治療用融合タンパク質は、ボーラス注入によって投与され得、しかしながら、遅効性の持効性処方物の薬物動態特性に似た薬物動態特性を示し得る。
【0087】
本発明の融合タンパク質は、イヌIgG等のイヌ抗体のFc領域に、直接又はリンカーを通して結合体化されている治療用ペプチドであり、Fc領域は、イヌIgG由来のヒンジ領域を具体的に含む。ペプチドを抗体のFc領域に結合体化することによって、これらの融合タンパク質は、結合体化されていないペプチドよりも大変長い半減期を示す。イヌFcヒンジ領域の選択は、治療用タンパク質又はペプチドのin vivo取込みにとって重要である。いかなる作用機序によっても限定されるものではないが、本発明の融合タンパク質は、Fc領域が新生児定常領域断片受容体(FcRn)へと結合すると、飲作用されて隔離され得、FcRn活性型担体系を活用することによって(FcRn経路は、移行抗体(IgG)を、新生仔の腸上皮を通して輸送する)、本明細書中に開示されている融合タンパク質のレベルが、細胞内リソソーム分解から保護され得るとともに、中性エンドペプチダーゼ(NEP)又はNPRクリアランス受容体への曝露が低減される。融合タンパク質は、細胞から正常に放出されると、再循環され、循環へと呈示され得る。この方法では、リガンドのボーラス投薬後に典型的であるようなNPRA受容体のいっせいの活性化が、回避され得る。本発明の融合タンパク質のバイオアベイラビリティは、遅効性の持効性製剤によりよく似ていてもよい。
【0088】
FcRn受容体は、成人において、肺、腎臓及び腸を含むいくつかの異なるタイプの組織における内皮細胞の表面上に発現される。いかなる作用機序によっても限定されるものではないが、FcRn受容体の通常の機能が、無数の臨床用途のために、生物学的活性な治療用Fc融合タンパク質を投与する手段として活用され得る。例えば、心血管系の病的状態の処置又は改善方法に加え、本発明の融合タンパク質は、NPRA受容体の活性化が対象に治療効果を与える、異常な利尿、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置方法においても使用され得る。
【0089】
いくつかの例証的な実施態様において、本発明の融合タンパク質は、イヌANP又はイヌBNPを含むがそれらに限定されない、任意のイヌナトリウム利尿ペプチドを含み得る。
【0090】
配列改変体に加え、当該ペプチドの断片も本明細書中に開示される発明の範囲内に含まれることがまた意図され、そのような断片は、本発明の方法において治療上有効であるために、十分な大きさである。当業者は、過度の実験を行うことなく、生物学的活性及び/又は治療効果に影響しないペプチドの長さにおける変化及び配列の変種を決定し得る。タンパク質は、酸性もしくは塩基性塩の形態であり得、又は中性形態であり得る。個々のアミノ酸残基はまた、酸化又は還元によって改変され得る。
【0091】
発明の範囲内である他の改変体としては、融合タンパク質の一次アミノ酸構造が、他のペプチドもしくはポリペプチド、又はグリコシル基、脂質、リン酸、アセチル基等のような化学的部分、と共有結合性又は凝集性の接合体を形成することによって修飾されている、融合タンパク質が挙げられる。共有結合誘導体は、例えば、アミノ酸側鎖に、又はNもしくはC末端において、特定の官能基を連結することによって、調製され得る。
【0092】
本発明の融合タンパク質は、糖鎖付加されていても、糖鎖付加されていなくてもよい。酵母又はほ乳動物発現系において発現された融合タンパク質は、発現系によって、分子量及び糖鎖付加パターンにおいて、ネイティブな分子と類似しているか、又はネイティブな分子からわずかに異なり得る;大腸菌などの細菌におけるDNAコード化ポリペプチドの発現は、糖鎖付加されていない分子を提供する。
【0093】
一定の実施態様において、本発明の二量体コンストラクトは、単量体コンストラクトと比較した場合に、in vitroで増強された効力を有することが見出されている。本明細書中に記載されているような、イヌ抗体Fcドメインに連結された治療用ペプチドの二量体コンストラクトの増強された効力は、イヌナトリウム利尿ペプチドリガンド(例えば、ANP、BNP等)とそれらの細胞表面受容体との間の単量体相互作用を考慮すると、特に驚くべきことである。本明細書中に記載されているような二量体コンストラクトは、細胞及び/又は受容体と相互作用することからは、立体的に妨害されるであろうことが予想され、したがって、そのような二量体コンストラクトのわずかな活性及び/又は無活性が予測されるだろう。
【0094】
一定の実施態様において、本発明の単量体コンストラクトは、二量体コンストラクトと比較した場合に、増加したin vivo血清濃度(Cmax)を有することが見出されている。明細書中に記載されているような、抗体Fcドメインに連結されたイヌナトリウム利尿ペプチドの単量体コンストラクトの増加したCmaxは、二量体EPO−Fcコンストラクトの静脈内投与と比較した場合により低いCmaxを示した単量体EPO−Fcコンストラクトの静脈内投与からの、以前の結果を考慮すると、驚くべきことである(例えば、米国特許出願公開番号第2007/0172928号の表4を参照のこと)。
【0095】
治療用ペプチドに結合体化されているイヌFcドメインは、好ましくは、IgGA、IgGB、IgGC又はIgGDを含むがそれらに限定されない、イヌIgGのFcドメインである。しかしながら、最小限のエフェクター機能を持つか又はエフェクター機能を持たないように改変された場合には、他の抗体のFcドメインが使用され得る。イヌ抗体Fcドメインが好ましいが、他の種型、野生型形態並びに配列改変体も使用され得、例えば、本明細書中に提供される実施例において、組換えFc分子が記載されている。本発明の一態様において、Fcドメインは、IgGI又はIgG2アイソタイプ由来の2つのFc重鎖からなり、ヒンジ残基は、システイン残基の鎖間ジスルフィド結合を可能とするために、各鎖上のCPPCP配列までが除去されている。理想的には、本発明の融合タンパク質は、FcRn受容体に結合可能であり、この受容体の活性担体機能を惹起可能であり、かつ有害なADCC毒性応答を引き起こすことなく、細胞中への融合タンパク質の送達を引き起こすことが可能である、イヌFcドメインを含む。いったん細胞内に入ると、pHの変化が、FcRn受容体からの融合タンパク質の遊離をもたらし、融合タンパク質は、最終的には細胞から放出され、循環中へと戻され得る。(Roopenian D.C.ら.(2003)J.Immunology 170:3528−3533;Lencer,W.I.ら,Trends in Cell Biology 15(1):5−9(2005))。
【0096】
治療用タンパク質とイヌFcドメインとを結合体化するのに使用されるアミノ酸リンカーの長さ及び配列は、変動し得る。イヌFcドメインに関して結合したイヌANPを含むNPRAの構造モデル化が、NPRAの活性部位へのイヌFc融合イヌANPの挿入を可能とするために必要な最小限のリンカー距離を予測するために使用され得る。リンカー長は、イヌナトリウム利尿ペプチドとFcドメインとの間の立体的及び静電気的な反発を最小化する長さであるべきである。例えば、ANPのC末端からの望ましい最小距離は、Fcホモ二量体の最も近いN末端から12Aであり、Fcホモ二量体の他のN末端から17Aである。さらに、Fcホモ二量体に1つのANPのみが融合している場合は(例えば、単量体)、4〜6アミノ酸の最小リンカー長で足りるであろう。Fcホモ二量体に2つのANPペプチドが結合しており(例えば、二量体)、NPRA受容体に1つのANPのみが結合している(すなわち、1:1のFc二量体:NPRA比で)場合、例えば、各リンカーにつき9アミノ酸の、より長いリンカー長が好ましいかもしれない。両ANPがNPRAに結合するためには(例えば、2つの隣接した受容体に、又は非静的な、交代性の様式で、1つのNPRA受容体に対して)、その場合、12アミノ酸の例証的な長さをもつリンカーが使用され得る。リンカー長を増加することは、融合タンパク質の性質に対して、有益な効果を有し得る。例えば、増加されたリンカー長は、融合タンパク質が、融合されたイヌナトリウム利尿ペプチドの効力に働きかけることを可能とし得る。例えば、より長いリンカー長(例えば、20アミノ酸長)は、イヌナトリウム利尿ペプチドの効力(in vitroでのcGMPの誘導能によって測定されたもの)を増大し得る。
【0097】
したがって、リンカー長を増加することが、融合タンパク質の効力を増大させる場合。本発明の実施態様において、融合タンパク質の効力はしたがって、16と50との間のアミノ酸、好ましくは16と40との間のアミノ酸、最も好ましくは16と30との間のアミノ酸、のリンカー長で改善され得る。
【0098】
(GGS)xのリピート(例えば、ここでxは、0〜16の整数である)を含む、本発明において用いられるリンカー配列は、慣用的な合成、半合成、又は組換え方法に従って作られ得る(例えば、Evers T.H.ら(2006)Biochemistry,45:13183−13192を参照のこと)。用いられるリンカーの実際のアミノ酸配列に関しては、グリシン及びセリンが典型的には好ましく、これは、リンカーにおけるグリシンの存在が可動性を提供し、セリンの存在が溶解性を提供するためである。好ましいリンカー配列は、これらのアミノ酸の連続したリピート(例えば、GGSGGSGGSGG又はGGSGGSGGSGGSGGSGGSGG等の、(GGS)x−GGであって、例えば、ここでxは0〜16の整数である)からなる。この、後者のGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGの配列が特に好ましい。
【0099】
上記のとおり、Fcドメインと治療用(therapeuitc)ペプチドとの結合体化の配向は異なっていてもよい。例えば、治療用ペプチドのカルボキシ末端は、イヌFcドメインのアミノ末端に、通常のペプチド結合によって連結され得る。あるいは、治療用ペプチドのアミノ末端は、イヌFcドメインのアミノ末端に連結され得る。後者において、その化学作用は、融合物の1つのアミノ酸の代わりに、コハク酸部分を残す。よって当業者は、通常のペプチド結合が2つのアミノ末端間で起こらないため、後者の融合タンパク質は、組換え的に作られ得ないことを理解するであろう。集められたデータは、配向が所定の融合タンパク質の効力には影響しないらしいことを示す。
【0100】
発明の具体的な治療用コンストラクトは、イヌFcドメインに融合したイヌANPを使用して例証されており、ここでは、1つ以上のイヌANP、1つ以上のリンカー及び1つ以上のイヌFcが使用されている。以下のイヌANP−イヌFc融合コンストラクトが、本発明によって意図されている。
【0101】
ANPXY(コンストラクト1)を含む例証的な融合コンストラクト(コンストラクト2)は:
ANPXY−L4−Fc1ab
によって表わされる。
【0102】
コンストラクトは、ANPXY−L4−FC1ABを含み、式中、ANPXYは、配列番号8の配列を有し、LはGGSGGSGGSGGSGGSGGSGG配列番号12であり、かつFC1abは、配列番号9の配列を有する。ANPXY−L−FC1ABは、配列番号3によって表わされる。ANPXY−L−Fc1abコンストラクトが、組換えで作られる場合、ホモ二量体が生産され得、例えば、ANPXY−L−FC1abは、第二のANPXY−L−FC1abコンストラクトに、ジスルフィド結合を介して、連結されていてもよい。
【0103】
例証的な融合コンストラクト(コンストラクト3)は、以下によって表わされ:
【0104】
ANPXY−L−FC2ab
【0105】
式中、ANPXYは、配列番号8の配列を有し、LはGGSGGSGGSGGSGGSGGSGG配列番号12であり、かつFC2abは、配列番号10の配列を有する。ANPXY−L−FC2abは、配列番号6によって表わされる。ANPXY−L−Fc2abコンストラクトが、組換えで作られる場合、ホモ二量体が生産され得、例えば、ANPXY−L−FC2abは、第二のANPXY−L−FC2abコンストラクトに、ジスルフィド結合を介して、連結されていてもよい。
【0106】
別の例証的な融合コンストラクト(コンストラクト4)は:
【化5】
によって表わされる。
【0107】
このコンストラクトにおいて、ANP YXは、そのC末端からN’末端への配向に反転された配列番号8であり、L1は、GGSGGSGGSGGSGGSGGSGG(配列番号12)の配列を有するリンカーであり、かつFC1ABは、配列番号9又は配列番号10である。ANPYX−L1−FC1ABは、第二のFC1ABに、ジスルフィド結合を介して連結されていてもよく、第二のFC1ABは、第一のFC1ABと同一の配列を有していてもよく、又は第一のFC1ABの配列と異なっていてもよい。
【0108】
別の例証的な融合コンストラクト(コンストラクト5)は:
【化6】
によって表わされる。
【0109】
このコンストラクトにおいて、ANP YXは、そのC末端からN’末端への配向に反転された配列番号8であり、L1は、配列番号12であり、かつFC1ABは、配列番号9又は配列番号10である。ANPYX−L1−FC1ABは、第二のANPXY−L1−FCIABコンストラクトに、ジスルフィド結合を介して連結されていてもよく、両ユニットにおけるFC1ABは、配列番号9であってもよく、又は配列番号10であってもよく、又は一方のユニットにおいて配列番号9であり、他方において配列番号10であってもよい。
【0110】
C.融合タンパク質の合成
本明細書中に他に示されない限り、本発明の融合タンパク質は、当業者によく知られているタンパク質化学又は分子生物学の数々の技術の任意のものによって作られ得る。(例えば、Dawsonら,Ann.Rev.Biochem.,69:923−960,2000を参照のこと。)可能な合成のシナリオは、本明細書中に提供される実施例中に記載されており、合成及び半合成化学合成並びに組換え方法が含まれる。
【0111】
融合タンパク質は、化学的方法を全体又は部分的に使用し、古典的又は非古典的なアミノ酸もしくは化学的アミノ酸アナログを適切に使用して、生産され得る。技術としては、固相化学(Merrifield,J.Am.Chem. Soc,85:2149,1964;Houghten,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 82:5132,1985)が挙げられ、そのようなポリペプチドの自動合成のための機器は、市販されている(例えば、アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア州)。合成ペプチドは、高速液体クロマトグラフィー等の従来法を使用して精製され得る。合成融合ポリペプチドの組成は、当業者に公知の技術を使用して、アミノ酸解析又はシークエンシングによって確認され得る。酸化条件下での合成タンパク質のさらなる処置もまた、正常なネイティブのコンフォメーションを得るために利用され得る。例えば、Genetic Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.編,Plenum Press,N.Y.,第12巻,pp1−19,1990のKelley,R.F.& Winkler,M.E.;Stewart,J.M.& Young,J.D. Solid Phase Peptide Synthesis Pierce Chemical Co.,Rockford,111,1984を参照のこと)。
【0112】
本明細書中に開示される融合タンパク質はまた、遺伝子合成、クローニング及び発現方法論が関与する組換え技術によっても、作られ得る。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,第I、II、及びIII巻,1997(F.M.Ausubel編);Sambrookら,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;DNA Cloning:A Practical Approach,第I及びII巻,1985(D.N.Glover編);A Practical Guide to Molecular Cloning;シリーズ、Methods in Enzymology(Academic Press社);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,1987(J.H.Miller及びM.P.Calos編,Cold Spring Harbor Laboratory);並びにMethods in Enzymology 第154巻及び第155巻(それぞれ、Wu及びGrossman編、並びにWu編)において説明されている。
【0113】
簡潔には、本発明の融合タンパク質は、従来のクローニング又は化学合成方法によって、本明細書中に記載された任意のアミノ酸配列をコード化する核酸配列を単離又は合成することによって、組換え的に作られ得る。例えば、異なる融合タンパク質配列をコードするDNA断片は、従来の技術に従ってインフレームに一緒に連結され得、又は自動DNA合成機を含む従来技術によって、合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅が、アンカープライマーを使用して実行され得、これは、2つの連続した遺伝子断片間で相補的なオーバーハングを生じさせ、これらは次いで、アニーリングされ、再増幅され得、キメラ遺伝子配列が作出され得る。組換え核酸はさらに、タンパク質精製のプロトコルを促進するために、アフィニティータグをコード化する配列などの、他のヌクレオチド配列を含み得る。
【0114】
本発明の融合タンパク質をコード化する核酸配列は、適切な宿主中でその核酸配列を発現する能力がある適切な発現ベクター中へと連結され得、その後、核酸配列が連結された発現ベクターで宿主が形質転換され、宿主は核酸配列の発現に適切な条件下で培養され、それによって、選択された核酸配列によってコード化されるタンパク質は、宿主によって発現され、生産されたタンパク質が精製される。この過程において、連結の工程はさらに、核酸が、適切な分泌シグナルに作動可能に連結されるよう、核酸を適切な発現ベクター中へと連結することを意図し得、それによって、アミノ酸配列が宿主によって分泌される。本発明での使用に適切な分泌シグナルとしては、マウスIgGκ軽鎖シグナル配列が挙げられるが、それらに限定されない(Hoら.PNAS(2006)103(25):9637−9642)。
【0115】
上記のとおり、本明細書中に記載される融合タンパク質をコード化する核酸配列は、宿主細胞を形質転換するのに使用され得る、適切なプラスミド又は発現ベクター中へと挿入され得る。一般に、宿主細胞と適合性の種由来の複製配列及び制御配列を含有するプラスミドベクターが、それらの宿主と関連して使用される。ベクターは通常、複製部位、並びに形質転換細胞における表現型選択を提供する能力のあるタンパク質をコード化する配列を保有する。例えば、大腸菌は、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322(Mandel,M.ら,J.Mol.Biol.53:154,1970)を使用して形質転換され得る。プラスミドpBR322は、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有し、したがって、選択のための簡単な手段を提供する。他のベクターは、異なるプロモーター等の異なる特徴を含み、それらはしばしば、発現において重要である。ほ乳動物の発現に使用されるベクターはしばしば、構成的CMVプロモーターを含有し、これは高い組換えタンパク質発現を引き起こす。これらのベクターはまた、安定な発現細胞系の作出に使用される選択配列遺伝子を含有する。
【0116】
宿主細胞は、原核又は真核であり得る。DNA配列をクローニング及び発現させ、親ポリペプチド、セグメント置換ポリペプチド、残基置換ポリペプチド及びポリペプチド改変体を生産するためには、原核生物が好ましい。当業者によく知られているそのような原核細胞はとしては、大腸菌、枯草菌(B subtillus)、及び緑膿菌の細胞株が挙げられるが、それらに限定されない。原核生物に加え、酵母培養物等の真核生物、又は多細胞生物由来の細胞も使用され得る。脊椎動物細胞もまた、有用な宿主細胞系として使用され得る。有用な細胞及び細胞系は、当業者によく知られており、HEK293細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、WI 38、293、BHK、COS−7及びMDCK細胞系が含まれるが、それらに限定されない。
【0117】
発明はまた、本発明のイヌナトリウム利尿融合タンパク質をコード化する、単離又は精製されたポリヌクレオチドに関する。上で議論された通り、融合タンパク質、その断片、又はその機能的同等物をコード化する、発明のポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞において、融合タンパク質、その断片、又はその機能的同等物の発現を指向する組換え核酸分子を作出するために使用され得る。そのようなポリヌクレオチドによってコード化される融合ポリペプチド産物は、コード配列の分子操作によって、変更され得る。
【0118】
遺伝暗号の固有の縮重のため、実質的に同一又は機能的に同等なアミノ酸配列をコード化する他のDNA配列が、融合ポリペプチドの発現のために、発明の実施において使用され得る。そのようなDNA配列としては、本明細書中に記載される低、中又は高ストリンジェントな条件下で、本明細書中に開示されるコード配列又はそれらの相補物(complements)とハイブリッド形成する能力のある配列が挙げられる。
【0119】
発明にしたがって使用され得る変更されたヌクレオチド配列としては、異なるヌクレオチド残基の欠失、付加又は置換であって、同一又は機能的に同等な遺伝子産物をコード化する配列をもたらすものが挙げられる。遺伝子産物自身が、サイレントな変化をもたらすアミノ酸残基の欠失、付加又は置換を含有し得る。
【0120】
発明のヌクレオチド配列は、種々の目標のために、融合タンパク質コード配列を変更するために、操作され得、遺伝子産物のプロセシング及び発現を改変する変更を含むが、それらに限定されない。例えば、制限部位を挿入又は除去するため、糖鎖付加パターン、リン酸化を変更するため、翻訳、開始、及び/もしくは終了配列を作成及び/もしくは破壊するため、又はコード領域に多様性をもたらすため、又はさらなるin vitro修飾を促進するため等、当技術分野において周知の技術を使用して、突然変異が導入され得る。当業者は、所定の核酸コンストラクトにおいて変更を作出する多くの方法を認識するであろう。そのような周知の方法としては、例えば、部位特異的突然変異誘発、縮重オリゴヌクレオチドを使用したPCR増幅、核酸を含有する細胞の、化学的突然変異誘発剤又は放射線への暴露、望ましいオリゴヌクレオチドの化学合成(例えば、大きな核酸を作出するために、ライゲーション及び/又はクローニングと組合わせて)並びに他の周知の技術が挙げられる。
【0121】
精製された融合タンパク質は、本発明のDNAの組換え翻訳産物を発現させるために適切な宿主/ベクター系を培養することによって、調製され得、組換え翻訳産物は次いで、培地又は細胞抽出物から精製される。例えば、培地中へと組換えポリペプチドを分泌する系からの上清は最初に、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニット等の、市販されているタンパク質濃縮フィルターを使用して濃縮され得る。濃縮工程後、濃縮物は、適切な精製マトリクスにアプライされ得る。親和性クロマトグラフィー又は逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)もまた、本発明の融合タンパク質を精製するために使用され得る。
【0122】
D.処方物
本発明の治療用融合タンパク質は、動物における特定の疾患の処置のための動物用組成物として投与され得、又はイヌを動物モデルとして、化合物の投薬及び効力を試験するために使用され得る。例えば組成物は、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連し、かつ/又はナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するかもしくはレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患を含むが、それらに限定されない、NPRA受容体の活性化が、対象に治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法における使用のためである。そのような病的状態としては、上に詳しく説明されているような心血管系の障害が挙げられる。これらの状態としては、過剰の細胞外液によって特徴付けられ得る状態が挙げられ、慢性心不全(CHF)及び肺水腫が含まれるが、それらに限定されない。特に好ましい実施態様において、発明は、慢性心不全(非虚血性)、心筋梗塞後心不全(虚血性CHF)、急性心筋梗塞、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化、拡張期心不全、及び肥大型心筋症を含むが、それらに限定されない心血管系の病的状態の処置又は改善方法を含む。そのうえ、例えば、肺高血圧症、収縮期高血圧症、抵抗性高血圧症等の高血圧症を含むが、それらに限定されない高血圧性疾患、及び糖尿病性腎症等の他の心血管関連疾患も、本発明の方法によって処置又は改善され得る。本発明の融合タンパク質及び医薬組成物は、冠動脈バイパス手術を受けている対象に、治療効果を提供するために使用され得ることもまた、本明細書中に意図される。
【0123】
本発明に従った使用のための医薬組成物は、例えば、吸入もしくは吹送によって(口又は鼻のいずれかを通して)又は局所、経口、口腔、非経口もしくは直腸投与等の、種々の手段による投与のための1つ以上の生理学的に許容可能な担体又は添加剤を使用して、従来の様式で処方され得る。例えば、非経口としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内及び硬膜外投与が挙げられ得る。組成物は、例えば、注入又はボーラス注入によって、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜及び腸管粘膜等)を通した吸収によって、等の任意の都合のよい経路によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身性又は局所的であり得る。好ましい実施態様において、任意の適切な経路によって、発明の医薬組成物を患部組織中へと導入することが望ましいかもしれない。例えば、吸入器又は噴霧器の使用、及びエアロゾル投与剤を含む処方によって、肺投与もまた用いられ得る。
【0124】
医薬組成物はさらに、ビヒクル又は医薬的に許容可能な担体を含む担体、を含み得る。具体的な実施態様において、用語「医薬的に許容可能」は、動物における使用、より詳細にはヒトにおける使用、のために、連邦もしくは州政府の規制当局によって認可されているか又は米国薬局方もしくは他の一般的に認知された薬局方に収載されていることを意味する。用語「担体」は、医薬組成物が共に投与される、希釈剤、アジュバント、添加剤、又はビヒクルをいう。そのような医薬担体は、水及び油(ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、胡麻油等の、石油由来、動物由来、植物由来又は合成由来のものを含む)等の無菌の液体であり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合には、水が好ましい担体である。生理食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、特に注射可能な溶液の、液体担体として用いられ得る。適切な医薬添加剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。望ましい場合、組成物はまた、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有し得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性処方物等の形態を有し得る。組成物は、伝統的な結合剤及びトリグリセリド等の担体と共に、座剤として処方され得る。経口処方物としては、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体が挙げられ得る。適切な医薬担体の例は、参照することによりその全体が本明細書中に援用される、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。処方物は、投与方法に適しているべきである。
【0125】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑択剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等の医薬的に許容可能な添加剤と共に従来法によって調製された、錠剤又はカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当技術分野において周知の方法によって、コーティングされ得る。経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップもしくは懸濁剤の形態をとり得、又はそれらは、使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで構成されるための乾燥製品として与えられ得る。そのような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分別植物油);及び保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸)等の医薬的に許容可能な添加物と共に、従来法によって調製され得る。製剤はまた、必要に応じて、緩衝塩、香料、着色料及び甘味料を含有し得る。
【0126】
適正な場合、経口投与のための製剤は、活性化合物の制御放出を与えるように、適切に処方され得る。
【0127】
適正な場合、組成物は口腔投与のために、従来法で処方された錠剤又はロゼンジの形態をとり得る。
【0128】
別の実施態様において、本発明の融合タンパク質は、吸入もしくは吹送による投与(口又は鼻のいずれかを通して)用である。したがって、本発明による使用のための化合物は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切な気体等の適切な噴霧剤を使用して、加圧包装又は噴霧器からのエアロゾルスプレー体裁の形態で簡便に送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するための弁を提供することによって、決定され得る。例えば、吸入器又は注入器における使用のためのゼラチン、のカプセル剤及び薬包は、化合物の散剤混合物及びラクトース又はデンプンなどの適切な散剤の基剤を含有するよう処方され得る。
【0129】
特に好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、例えば、ボーラス注入又は連続注入等の注入による非経口投与のために処方され得る。そのうえ、本明細書中に意図されるように、本発明の融合タンパク質及び医薬組成物は、それを必要とする対象による自己注射のため(例えば、CHFの長期的治療)に適切であってもよい。注入のための処方物は、例えば、保存剤が添加されたアンプル中又は多用量容器中等の単位投薬形態で、与えられ得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液又はエマルジョン等のような形態をとり得、かつ懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化剤を含有し得る。
【0130】
あるいは、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、無菌の発熱因子を含まない水)による、使用前の構成のための散剤形態であり得る。例えば、凍結乾燥タンパク質組成物は、吸入され得るか、又は適切なビヒクル中で再構成され、次いで注入され得る。
【0131】
化合物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリド等の従来の座剤基剤を含有する、座剤又は保留浣腸剤(retention enemas)等の直腸用組成物中に処方され得る。
【0132】
遅効性処方物に類似した薬物動態を示し得る前記の処方物に加え、化合物はまた、実際の持効性製剤としても処方され得る。そのような長時間作用性の処方物は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、化合物は、適切な重合もしくは疎水性材料と共に(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に処方され得、又は、難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)処方され得る。
【0133】
望ましい場合、組成物は、活性成分を含有する1つ以上の単位投薬形態を含有し得る包装又は調合器装置中に与えられ得る。包装は例えば、ブリスター包装等のように、金属又はプラスチックホイルを含み得る。包装又は調合器装置は、投与のための説明書を伴い得る。
【0134】
発明における使用のために適切な医薬組成物としては、活性成分が、意図される目的を達成するのに有効な量で含有されている組成物が挙げられる。有効な用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、任意の化合物について、治療上有効な用量は、細胞培養アッセイ(例えば、新生細胞の)において、又は通常、マウス、ウサギ、イヌ、又はブタの動物モデルにおいてのいずれかで、初めに推定され得る。動物モデルはまた、適正な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも使用され得る。用量は、IC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて処方され得る。そのような情報は次いで、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定するために使用され得る。
【0135】
治療上有効な用量又は「有効量」は、無毒性であるが、望ましい治療効果を提供するために十分である活性成分の量をいう。例えば、ED50(母集団の50%において治療上有効である用量)及びLD50(母集団の50%に対して致死的である用量)等の治療効力及び毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬的手順によって決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、それは、LD50/ED50比として表わされ得る。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を公式化することにおいて使用される。そのような組成物中に含有される投薬量は好ましくは、ED50を含む循環濃度の範囲内であり、毒性がわずかであるか又は毒性が全くない。投薬量は、用いられる投薬形態、対象の感受性、及び投与経路に依存して、この範囲内で変動する。
【0136】
正確な投薬量は、処置を必要としている対象に関連する要素を踏まえて、医者によって決定されるであろう。投薬量及び投与は、十分なレベルの活性部分が提供されるよう、又は望ましい効果が保持されるよう、調節される。考慮され得る要素としては、疾患状態の重症度、対象の全体的な健康、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ、反応感受性、並びに療法に対する耐性/応答、が挙げられる。長期作用型の医薬組成物は、特定の処方物の半減期及びクリアランス速度によって、3〜4日ごと、毎週、又は2週に一度、投与され得る。
【0137】
通常の投薬量は、投薬経路に依存して、0.1〜100,000μg、最大で約1gの全量まで、異なり得る。特定の投薬量及び送達方法についての案内は、文献中に提供され、かつ当技術分野における医者に一般的に入手可能である。当業者は、タンパク質又はそれらの阻害剤とは異なる処方を、ヌクレオチドについて用いる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的であるだろう。タンパク質の経口投与に適切な医薬処方物は、例えば、米国特許第5,008,114号;同第5,505,962号;同第5,641,515号;同第5,681,811号;同第5,700,486号;同第5,766,633号;同第5,792,451号;同第5,853,748号;同第5,972,387号;同第5,976,569号;及び同第6,051,561号中に記載されている。
【0138】
本発明はさらに、任意の上記方法と共に使用されるキットを提供する。そのようなキットは典型的には、本明細書中に記載される方法を実施するために必要な2つ以上の構成要素を含む。構成要素は、化合物、試薬、容器及び/又は機器であり得る。例えば、キット内の1つの容器は、本発明の融合タンパク質を含む医薬組成物を含有し得る。1つ以上の追加の容器が、試薬もしくは緩衝剤、又は医薬組成物を投与する方法において使用されるべき機器等の要素を封入し得る。
【0139】
本発明の融合タンパク質及び医薬組成物は、単独で、又は本明細書中に記載される任意の病的状態を処置するために使用され得る他の化合物又は物質と組合わせて、投与され得ることが、本明細書中でまた意図される。本発明での併用療法において使用され得るそのような化合物又は処方物としては、例えば、利尿薬、ベータ遮断薬、及びAngII受容体遮断薬が挙げられる。
【0140】
本明細書中に記載される発明は、記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬が変動し得るために、これらの特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されないことが意図される。本明細書中に使用される用語法は、特定の実施態様を説明する目的のみのためであって、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図するものではないこともまた理解されるべきである。
【0141】
本明細書中に記載される方法及び材料と類似した又は等価である任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用され得るものの、好ましい方法、装置及び材料が、これより説明される。本明細書中に記載される全ての文献は、参照することによって明確に援用される。
E.実施例
【実施例1】
【0142】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質生産及び特徴付け:
イヌANP−Fc融合コンストラクトの作出:2つのDNAコンストラクト(配列番号1及び4)を、従来のオリゴヌクレオチド合成技術に従って合成し、ほ乳動物発現ベクターpcDNA3.1(ジーンアート社(Geneart))中へとサブクローニングする。各コンストラクトは、マウスIgGκ軽鎖シグナル配列、イヌANP28配列、リンカー配列とそれに続くイヌFcγ配列という同一の基本的な順番を含有する。利用したマウスIgGκ軽鎖シグナル配列は、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(受入番号AAA38778−配列番号7)である。イヌANP28配列は、NCBIデータベース由来であり、受入番号P07499(配列番号8)である。リンカー配列は、(GGS)6GGモチーフのグリシン及びセリン残基のリピートからなる、20アミノ酸のペプチドをコード化する。1つのコンストラクトにおいては、リンカーを、イヌIgG−A(受入番号AAL3530)のFc領域に連結し、一方で、2つ目のコンストラクトにおいては、リンカーを、イヌIgG−B(受入番号AAL35302)のFc領域に連結する。イヌIgG−A及びIgG−BアイソタイプのFc領域[Vet Immunol and lmmunopath(2001)80(3−4):259−270]が、イヌにおけるそれらの優位性並びにヒトIgG1及びIgG2に対するそれらのヒンジ構造の類似性のために、利用される。IgG−A及びIgG−Bアイソタイプの両方に対するFc融合物を、ヒンジ領域が2つのシステイン残基のみを含むように切断して(IgG−A FcではCTDTPPCP(配列番号18)であり、IgG−B FcではCPKCP(配列番号19)である)、ヒンジにおけるジスルフィド結合が2つのFcアイソタイプで類似することを保証するような方法で、作出する。各コンストラクトを、標準的なコドン表を使用して、ほ乳動物発現のためにコドン最適化した。
【0143】
イヌANP−Fc融合物のほ乳動物発現:全てのイヌANP−Fc融合コンストラクトの最初の発現は、1Lのスケールで一過性形質転換プロトコルを使用して、HEK293細胞系から行う。HEK293細胞を、FreeStyle 293培地中で生育させ、293Fectin試薬及び製造者(インビトロジェン)によって説明されるプロトコルを使用して、形質導入する。一過性形質転換細胞を、37℃で5%CO2にて90rpmで撹拌して、スピナーフラスコ中で生育させる。細胞を、細胞密度、生存率、及び直径、グルコースレベル、乳酸レベル、グルタミンレベル及びpHレベルについて、毎日モニタリングする。馴化培地を、形質導入後72〜96時間で、3600rpmで15分間の遠心分離によって回収し、新鮮な状態で精製にもっていく。発現レベルを、SDS−PAGE及びウエスタンブロット解析によって決定する。各コンストラクトについて、いったん発現レベルを決定したら、必要な場合、必要なタンパク質を生産するために安定なプールを作出する。安定なプールの作出は、フラスコ内で開始して、400μg/mlのG418で安定な細胞を選択し、次いでスピナー中へと移した。これらの条件下でいったん細胞が安定化したら、細胞を増殖させ、ウェーブバイオリアクターにおいて5−25Lのランを実行する。
【0144】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質の精製:全ての精製は、4℃にて、AKTAシステム(GEヘルスケア社)を使用して実施する。1リットルの馴化培地毎に、5ミリリットルのプロテアーゼ阻害剤カクテル(シグマ社)を添加する。カラムに、1リットルの馴化培地毎に3−4mLのProteinA Ceramic HyperD(登録商標)F樹脂(ポール社)を充填し、10CVの平衡化緩衝液(Mg/Caを含まない1×ダルベッコのPBS、pH7.3、インビトロジェン)で、1mL/分にて平衡化する。カラム上に馴化培地を、一晩、培地の容積に依存して、1−5mL/分にてロードする。次いで、洗浄緩衝液1(Mg/Caを含まないDPBS、pH7.3)、洗浄緩衝液2(Mg/Caを含まないDPBS pH7.3+1M NaCl)、次いで、再度の洗浄緩衝液1、の一連の10CVで樹脂を洗浄する。結合されたタンパク質を、10CVの溶出緩衝液(0.1Mグリシン/HCl、dH2O中pH2.5)で、2.5ml/分にて溶出する。3mLの画分を、300μL(画分の10%)の中和緩衝剤(1M Tris−HCl pH8.0、インビトロジェン)で直ちに中和する。イヌANP−Fc融合タンパク質含有画分をプールし、Sセファロース(GEヘルスケア社)陽イオン交換樹脂で充填されたカラムに直列で連結された、Qセファロース(GEヘルスケア社)陰イオン交換樹脂で充填されたカラム上にロードする(両カラムを、20mM クエン酸ナトリウム、pH6.0であらかじめ平衡化した)。ロード後、カラムを10CVの20mM クエン酸ナトリウム、pH6.0で洗浄した。次いで、Qカラムをシステムから切り離し、Sカラムを、最大で1M NaClまでの勾配で溶出した。イヌANP−Fc融合物含有画分を、Amicon Ultra−15 10kDa MWCO濃縮器(ミリポア社)を使用して、およそ3mg/mLまで濃縮した。アリコートを、液体窒素中で急速冷凍し、次いで−80℃にて保管する。最終産物を、生物学的機能のアッセイにかけられる前に、SDS−PAGE(非還元及び還元)、分析用超遠心及び質量分析解析によって特徴付ける。エンドトキシン混入物レベルを、EndoSafe PTSシステム(チャールス・リバー・ラボラトリーズ社)を使用して決定する。
【0145】
イヌANP−Fc融合コンストラクトを、1Lの一過性ほ乳動物発現を使用して、初めに生産する。発現産物を、3工程のプロセス(プロテインA、Q陰イオン交換、S陽イオン交換)を通して精製して、高品質のタンパク質を作出する。この一過性生産プロセスは、>90%純粋(SDS−PAGE)な、わずか〜1mg/LのANP−Fc(CaIgG−A)融合物と25−30mg/LのANP−Fc(CaIgG−B)融合物とをもたらす。増大するタンパク質の需要を満たすために、安定なプールを作出し、大規模なウェーブバイオリアクター生産を実行した。これらの安定なプールは、グラム量のイヌANP−Fc融合物の作出を可能とした。
【0146】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質の分析用超遠心:沈降速度実験を行って、精製されたイヌANP−Fc融合物の純度及び凝集物含量を評価する。イヌANP−Fc融合物を、10mM リン酸ナトリウム、150mM NaClを含有するpH7.3のリン酸緩衝食塩水緩衝液中で、遠心沈降によって評価する。試料を、ダブルセクターチャコール−エポンセンターピース(double−sector charcoal−epon centerpiece)及び石英窓を含有する遠心分離セル中へとロードする。Beckman XLI分析用超遠心機を、280nm、50,000rpmかつ20℃で使用して、データを収集する。自動Anton−Paar AMVn/SP3−V粘度計及びDMA4500/DMA5000濃度計を20℃で使用して、溶液の密度及び粘度を測定する。沈降データを、プログラムSEDFIT(v9.3b)を使用して解析する。
【0147】
組換えイヌANP−Fc融合物の質量分析解析:インタクトな分子量を測定し、酵素消化及びペプチドマッピングを介した部分配列の検証を実施し、かつイヌANP−Fc融合物の分解産物を同定するために、質量分析実験を行う。
【0148】
インタクトな分子量を評価するために、2μlの融合タンパク質を、Agilent Poroshellカラム(5um、1.0×75mm)上へ、100μl/分の流量で注入する。タンパク質を、6分間にわたる20%〜65%Aの勾配で溶出させる[移動相Aは、98/2/0.1(水/アセトニトリル/ギ酸)であり、移動相Bは95/5/0.1(アセトニトリル/水/ギ酸)である]。溶出物を、2秒間のスキャン時間で、600〜2500amuをスキャンしながら、Agilent 6210 LC/TOF質量分析計中へと流し込む。Agilent TOF Protein Confirmationソフトウェアを使用して、データをデコンボリューションし、分子量を得る。
【0149】
ペプチドマッピング及び分解解析のために、融合タンパク質をトリプシン又はEndo−LysC(8010−108)で消化する。簡潔には、25μlの各試料を変性させ、還元し、アルキル化する。トリプシン又はEndo−LysCを添加し、試料を、一晩、37℃の水浴中でインキュベートする。HPLC/FTMSを介して、解析を実施する。装置は、クロマトグラフ分離の間に、およそ50,000の分解能で、複数の走査を行う。各溶出ペプチドの質量は、0.0005%相対誤差の精度で、決定される。酵素特異性に基づいて予測されたペプチドは、理論値が実験的に決定された値の0.0005%以内である場合に、一致する。可能性のあるアミノ酸欠失に対応する質量を探すことによって、Endo−LysCデータもまたN末端切断について探索する。トリプシンとは異なり、Endo−LysC実験は、インタクトなアミノ末端領域の観察を可能とする。
【0150】
試験されている組換え生産されたイヌANP−Fc融合物の品質を保証するために、上記の特徴付けのためのプラットホームを実行した。イヌANP28は、イヌNPRA cGMPアッセイにおいて非常に強力(EC50〜1nM)であるため、質量分析手段を使用して、作出された全てのANP−Fc融合物ロットにおける「遊離」ANP量(インタクトな質量及びトリプシン消化物)をモニタリングすることが重要であった。これらの質量分析解析はまた、イヌANP28構造における機能性のために必要である数々の重要なアミノ酸及びジスルフィドがインタクトであることを発明者らが保証することを可能とした。主要な糖鎖付加構造(G0、G1、及びG2)をインタクト質量解析で同定した一方で、完全な糖鎖解析は、実施しなかった。質量分析Endo−LysC消化プロトコルもまた実行して、ANP−Fc融合ペプチドのN末端を評価した。>90%のインタクトなN末端を持つロットを、さらなる解析のために選択した。生産された全てのロットは、それらのC末端リジン残基が欠損していることが発見された。凝集のレベルを、分析用超遠心機における沈降速度実験によって試験し、ここで全てのロットが>85%の単量体を含有することを発見した。
【実施例2】
【0151】
in vitroでのNPRA細胞アッセイのための安定な細胞系の作出:
全長NPRA配列を含有するプラスミドを、オリジーン・テクノロジーズ社(OriGene Technologies, Inc.)(ロックビル、メリーランド州)から購入し、次いで、pcDNA3.1中へとサブクローニングする。各コンストラクトの挿入の配向及びヌクレオチド配列は、社外のベンダーによって検証される(シークライト(SeqWright)社)。pcDNA3.1−NPRAクローンを、リポフェクタミン(インビトロジェン)を使用して、HEK293細胞中へと形質導入し、ここで、G418を使用してNPRAを発現する安定な細胞系を選択する。下に記載されるナトリウム利尿ペプチド誘導cGMPアッセイを使用して、クローンをスクリーニングする[NPRAクローンは、ANP(シグマ社)で処置する]。cGMP高生産クローンを増殖させる。細胞系を、100μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、L−グルタミン、400μg/mlのG418、及び10%FBS(ハイクローン(Hyclone))を含有するDMEM中で生育させる。
【実施例3】
【0152】
ナトリウム利尿ペプチド融合タンパク質誘導cGMPアッセイ:
>95%のHPLC純度のナトリウム利尿ペプチドを、シグマ社から取得する。90%のコンフルエンスまで生育させたHEK293 NPRA細胞を、HANKSベースの細胞解離培地(GIBCO)を使用して回収する。細胞を洗浄し、事前に温めたダルベッコのPBS、pH7.4、25mM HEPES、0.1%BSA、500μM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)[アッセイ緩衝液]中で、3.3×105細胞毎mLに再懸濁する。アッセイを、オプチプレート96(Optiplate−96)白色不透明96ウェルマイクロプレート(パーキン・エルマー社)中で実施する。15μLの細胞懸濁液を、3連で、アッセイ緩衝液中15μLの2X融合タンパク質に添加し、20分間、37℃にてインキュベートする。cGMP濃度を、ヒットハンター(HitHunter)(登録商標)cGMPアッセイキット(ディスカバーエックス社)を使用して測定する。cGMP生産の用量応答曲線を、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズムを使用してXLfit4.2データ解析ソフトウェア(IDビジネスソリューションズ社)に適合させた4パラメータのロジスティック方程式で作成する。
【実施例4】
【0153】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質を生産するために、ほ乳動物発現コンストラクトを作出する。これらの融合コンストラクトは、共通のシグナル配列、イヌANP28配列、リンカー配列、及びイヌIgG−A又はIgG−BのFc領域のいずれかを含むように設計する。これらの融合タンパク質は各々、切断して外され、最終産物上にはないN末端マウスIgGκ軽鎖シグナル配列(配列番号7)を含有する。グリシンは可動性を高め、一方でセリンは溶解性を高めるため、20アミノ酸のグリシン−セリンリンカーを利用する。イヌにおけるそれらの優位性並びにヒトIgG1及びIgG2に対するそれらのヒンジ構造の類似性のために、イヌIgG−A及びIgG−BアイソタイプのFc領域[Vet Immunol and lmmunopath(2001)80(3−4):259−270]を利用する。IgG−A及びIgG−Bアイソタイプの両方に対するFc融合物を、ヒンジ領域が2つのシステイン残基のみを含むよう切断し(IgG−A FcではCTDTPPCP(配列番号18)であり、IgG−B FcではCPKCP(配列番号19)である)、ヒンジにおけるジスルフィド結合が2つのFcアイソタイプで類似することを保証するような方法で、作出する。作出された組換えイヌANP−Fc融合物それぞれのDNA及びタンパク質配列(配列番号1〜6)を、図1に詳述する。イヌ融合タンパク質コンストラクトの発現は、pcDNA3.1ほ乳動物発現ベクターの強力なCMVプロモーターによって駆動される(図2)。
【0154】
組換えイヌANP−Fc融合物の作出のために、生産プラットホームを開発した。イヌANP−Fc融合コンストラクトを、1Lの一過性ほ乳動物発現を使用して、初めに生産する。発現産物を、3工程のプロセス(プロテインA、Q陰イオン交換、S陽イオン交換)を通して精製して、高品質のタンパク質を作出する。この一過性生産プロセスは、>90%純粋(SDS−PAGE)である、わずか〜1mg/LのANP−Fc(CaIgG−A)融合物と25−30mg/LのANP−Fc(CaIgG−B)融合物とをもたらす。増大するタンパク質の需要を満たすために、安定なプールを作出し、大規模なウェーブバイオリアクター生産を実行した。これらの安定なプールは、グラム量のイヌANP−Fc融合物の作出を可能とした。非還元型CaANP−Fc融合物の推定分子量は60.4kDa及び59.4kDa(それぞれ、IgG−A及びIgG−B Fc融合物)であり、一方で、還元型CaANP−Fc融合物の推定分子量は、30.2kDa及び29.7kDa(それぞれ、IgG−A及びIgG−B Fc融合物)である。
【0155】
試験されている組換え生産されたANP−Fc融合物の品質を保証するために、特徴付けのためのプラットホームを実行した。イヌANP28は、イヌNPRA cGMPアッセイにおいて非常に強力(EC50〜1nM)であるため、質量分析手段を使用して、作出された全てのANP−Fc融合物ロットにおける「遊離」ANP量(インタクトな質量及びトリプシン消化物)をモニタリングすることが重要であった。これらの質量分析解析はまた、イヌANP28構造における機能性のために必要である多くの重要なアミノ酸及びジスルフィドがインタクトであることを発明者らが保証することを可能とした。主要な糖鎖付加構造(G0、G1、及びG2)をインタクト質量解析で同定した一方で、完全な糖鎖解析は、実施しなかった。質量分析Endo−LysC消化プロトコルもまた実行して、ANP−Fc融合ペプチドのN末端を評価した。>90%のインタクトなN末端を持つロットを、さらなる解析のために選択した。生産された全てのロットは、それらのC末端リジン残基が欠損していることが発見された。凝集のレベルを、分析用超遠心機における沈降速度実験によって試験し、ここで全てのロットが>85%の単量体を含有することを発見した。
【0156】
全体的に、これらのプロセスは、in vitro及びin vivo解析のための、グラム量の組換えタンパク質の生産を可能とした。また、これらのランからの最終タンパク質は、少量の凝集物(<10%)を有し、低エンドトキシン(<1EU/ml)であり、インタクトであることが発見された。
【0157】
組換え生産されたイヌANP−Fc融合コンストラクトを、イヌNPRA cGMP誘導アッセイにおいて試験する(表1)。代表的なcGMPアッセイのデータセットを、図3に図示する。組換えイヌANP−Fc融合タンパク質で見られる効力におけるシフトは、曲線における右側へのシフトによって描出されている。イヌANP−Fc融合物は、試験されたロットによって、ANP28から10〜20倍の範囲にシフトされる効力を有する。
【0158】
【表1】
【0159】
ラットにおけるPK研究は、これらのタンパク質が、in vivoで増大した半減期を有したことを示した。
【実施例5】
【0160】
イヌにおけるイヌ融合タンパク質の予備的PKPD評価
イヌに、単一の静脈内用量(1mg/kg又は17nmol/kg)又は皮下用量(2.5mg/kg又は42nmol/kg)のANP−caFcを投与して、4〜7日間の期間にわたるPKPDを評価した。イヌにおいてCardeva(組換えヒト血清アルブミン−BNP融合タンパク質)を評価するのに用いられた用量範囲に類似していたために、これらの用量を選択した。図4は、この研究において達成された血漿ANP−caFcレベルの推定値を示す。イヌ血漿におけるANP−caFcを確かに検出するために使用したELISAの感度は、イヌ血漿において〜50nMの最小検出レベルを有することによって、制限されていた。血漿マトリックス効果を回避するためには、ビーグル犬を評価する場合に、最低でも1:50の希釈が必要であった。PBSにおけるアッセイの線形範囲は、100pMからおよそ100nMである。2%ビーグル血漿において、曲線の線形範囲は、1nMから約80又は90nMである。図4は、推定血漿レベルの推定値を提供するのみであり、表2は、ANP−caFcの薬物動態を示す。
【0161】
【表2】
【0162】
皮下投薬後の血漿cGMPは、投薬後>48時間で、ベースラインを超えて上昇しているようにみえた(図5)。
【実施例6】
【0163】
遠隔測定用イヌにおけるイヌ融合タンパク質の血行動態評価
イヌ心疾患モデルにおいて効力を実証するために使用され得るANP−caFc用量を同定するために、遠隔測定用の覚醒イヌにおける研究を実施した。用量選択のための判定基準は、用量が、ベースラインよりも下に、5−10mmHgを超えて平均動脈血圧を降下させることができず、かつそれが血漿cGMP濃度を、ベースラインより上に、およそ1.5X−2X上昇させるべきことであった。最初の判定基準は、望ましい臨床プロファイルを達成すること、すなわち、いくらかの心不全患者を潜在的に危険にさらすであろう動脈血圧の降下なしに効力が実証され得ること、に基づいて確立された。血漿cGMPにおける1.5X−2Xの上昇というのは、この規模の血漿cGMPの増加を生じさせた用量において好ましい心腎臓効果を実証した、イヌBNPを使用し、ペーシングされたイヌにおいて行われた研究を基にした(H−H Chenら.JACC 2000;36:1706−12)。研究番号1において、合計5匹のイヌに、改変ラテン方格法に基づいて、4週間の期間にわたり、ビヒクル、又はANP−caFcを0.5、1及び2.5mg/kgにて皮下投薬した。この用量範囲を選択したのは、単一用量のイヌ薬物動態研究に基づき、目標とする血漿cGMPの増加と重複することが期待されたためである。投薬の間隔は、7日間であった。研究の間の遠隔測定装置の故障のため、最終的なデータ解析から1匹の動物を除外した。ANP−caFcは、cGMPの血漿レベルのピークにおいて用量依存的な上昇を生じさせ(ビヒクル日価(vehicle day value)の値の3.7倍、3.5倍及び6.6、図6)、用量依存的な平均動脈血圧のピークの減少を生じさせ(MAP;ビヒクルに対し、−13±5、−19±4、及び−20±5mmHg−図7A及び7B)、かつ心拍数のピークは増加した(+30±10、+29±9、及び+25±9拍毎分−図8A及び8B)。
【0164】
全3つの用量のピーク効果の間、MAPが10mmHgを超えて減少したため、研究2は、類似の研究計画を使用して、同じ4匹のイヌにおいて、より低い用量で実施した(0.05及び0.25mg/kg)。研究番号2は、0.25mg/kgのANP−caFc投薬が、MAPの減少(ビヒクルに対して、−6.6±1.6mmH−図10)への閾値効果を及ぼし、心拍数の増加(20±9拍毎分−図11)への閾値効果を及ぼし、かつ血漿cGMPにおける中程度の増加(図9)への閾値効果を及ぼしたことを明らかにした。ANP−caFcの0.05mg/kgの投薬は、MAP(1.9±1.4mmHg)、HR(1.8±0.6拍毎分)、又は血漿cGMPに対する影響を有さなかった。(cGMP排出量測定のために尿試料もまた採取したが、しかしながら、試料は飲料水によって汚染され、使用することができなかった)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌ抗体Fcドメインに融合した治療用ペプチド及びタンパク質に関する。それらの使用方法及びそれらを使用する組成物が記載されている。
【背景技術】
【0002】
Fc融合タンパク質の使用は現在では、所定の治療薬のin vivoにおける半減期を増大させるための一般的な様式である。ヒトは、4つのヒトIgGサブクラス(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)を有することが理解されており、これらの各IgGのFcドメインは、潜在的な治療用タンパク質の一部として、多様に用いられてきた。抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域又はアミノ酸配列改変体Fc領域)に起因し得る生物学的活性である。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御、等が挙げられる。
【0003】
抗体のこれらのエフェクター機能は、ネイティブなIgGサブクラスに依存して、変動する傾向がある。例えば、IgGは、ヒトFcドメインへのADCC毒性応答は、IgGの特定のサブクラスに依存して変動することが知られている。例えば、IgG1及びIgG3は、IgG2よりもはるかに大きいADCC応答を誘導することが知られており、IgG4は、IgG2に基づいた治療方法よりも低いADCC応答を有する。Fc融合物からのADCC毒性応答を最小化することが望ましいことが認識されている。
【0004】
イヌ、ヒト及びマウスIgGγ鎖の定常領域の系統樹を比較した場合、種内のサブクラスの定常領域においては有意な配列相同性があるものの、種間で定常領域を比較した場合には、相同性は極めて低いことが容易に明らかとなる(非特許文献1;その中の図4を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tengら.Vet.Immunol.Immunopath.80 2001,259−270
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Fcドメインが重要なエフェクター機能を有することを考慮すれば、Fc融合物に基づいた治療用タンパク質の所定の治療効果が、融合タンパク質のFc部分とは対照的に、治療用タンパク質に起因し得ることを決定することが重要である。動物において試験される薬剤については、応答がモニタリングされている種のIgGに由来するFc部分に基づいた、融合タンパク質応答を特徴付けることが有益となるだろう。これは特に、治療薬が、治験において試験されている場合及び投与計画のために試験されている場合に重要である。この点については、イヌにおける所定の治療用組成物の試験及び処置のために使用され得る具体的なFcドメインを作成する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に記載される発明は、治療用ペプチド又はタンパク質及びイヌ抗体Fcドメインを含む融合タンパク質であって、ここで前記治療用ペプチド又はタンパク質が、直接又はリンカーを通してFcドメインと連結されており、ここで前記Fcドメインが、イヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDからなる群から選択されるイヌIgGのヒンジ領域からなる群から選択される配列を有するヒンジ領域を含む、融合タンパク質に関する。
【0008】
好ましくは、前記融合タンパク質は以下の式:X−La−F:F−La−X又はX−La−F:F、を含む、請求項1に記載の融合タンパク質:ここで
【0009】
Xは、治療用ペプチドであり;Lは、a個のアミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;「:」は、化学会合又は架橋であり;かつFは、FcRn結合部位を含むイヌ免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分であり、かつイヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDから選択されるヒンジ領域を含む。
【0010】
具体的な実施態様において、前記イヌヒンジ領域は、CTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択される配列を含む。
【0011】
前記治療用タンパク質は、Fc融合コンストラクトとして送達されるべきである任意の治療用タンパク質であり得、例証的な実施態様では、ANP、BNP、ウロジラチン、DNP又は生物学的に活性なそれらの配列改変体からなる群から選択されるナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである治療用ペプチドが意図される。具体的な実施態様は、治療用ペプチドを、ANP又はBNPとして記載している。前記融合タンパク質は、少なくとも2つの治療用ペプチドを含み得る。両ペプチドは、同一であってもよく、又は異なるペプチドであってもよい。具体的な例において、少なくとも1つのペプチドは、ナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドであり、好ましくは、配列番号8の配列を有する。
【0012】
具体的な実施態様において、前記融合タンパク質は、少なくとも2つのFcドメインを含む。前記Fcドメインは、イヌIgGA、IgGB、IgGC又はIgGD由来である。前記2つのFcドメインは、両方とも同一のサブクラスのIgG由来であってもよく、又は異なるサブクラス由来であってもよい。したがって、第一Fcドメインは、IgGA、IgGB、IgGC又はIgGD由来であり得、第二Fcドメインは独立して、IgGA、IgGB、IgGC又はIgGDから選択され、それは好ましくは第一Fcドメインと同一であるが、異なっていてもよい。
【0013】
発明の融合物における前記リンカーは、任意の長さであり得、それは好ましくは6アミノ酸長、11アミノ酸長、16アミノ酸長又は20アミノ酸長である。他の実施態様は、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長又は20〜30アミノ酸長であるリンカーを意図する。具体的な実施態様は、コハク酸グリシン(glycine succinate)リンカー、アミノ酸リンカー又はそれらの組合せであるリンカーを意図する。
【0014】
前記アミノ酸アミノ酸リンカーは、GlyGly(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGly(L3)(配列番号13)、(GlyGlySer)3GlyGly(L4)(配列番号14)、(GlyGlySer)4GlyGly(配列番号15)、(GlySerGly)5Gly(L5a)(配列番号16)、(GlyGlySer)5Gly(L5)(配列番号17)、又は(GlyGlySer)6GlyGly(L6)(配列番号12)であり得る。
【0015】
CTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択されるヒンジ配列を含むイヌ抗体Fcドメインによって互いから分離されている少なくとも1つ以上の治療用ペプチド(配列番号8の配列を有するぺプチド等)を含む融合タンパク質であって、ここで該治療用ペプチドが、直接又はリンカーを通してFcドメインと結合体化されている融合タンパク質もまた意図される。前記融合タンパク質は好ましくは、式:
【0016】
X−La−F:F−La−Xであって、式中、
【0017】
Xは、1つ以上の治療用ペプチドであり;
【0018】
Lは、アミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;
【0019】
「:」は、化学会合又は架橋であり;かつ
【0020】
Fは、FcRn結合部位並びにCTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択されるヒンジ領域を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。具体的な例において、治療用ペプチドの少なくとも1つは、配列番号8の配列を有する。具体的な実施態様において、Xは、1つより多くのナトリウム利尿ペプチドである。
【0021】
配列番号2、配列番号3;配列番号5又は配列番号6の配列を有する、単離された融合タンパク質、及びそれを含む組成物もまた意図される。
【0022】
別の実施態様は、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される配列を有するポリペプチドと少なくとも99%の配列同一性を示す、単離された融合タンパク質を意図する。
【0023】
さらなる実施態様は、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子を意図する。
【0024】
またさらなる実施態様は、配列番号1及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子を意図する。
【0025】
本明細書中に記載される融合タンパク質は、ほ乳動物発現系、原核生物発現系、酵母発現系、植物発現系、又はトランスジェニック発現系を用いることによって組換え生産され得る。
【0026】
本発明の前記融合タンパク質を含む、医薬組成物が意図される。前記医薬組成物は好ましくは、静脈内、皮下又は経口投与に適合されている。
【0027】
種々の状態の処置における組成物の使用方法もまた意図され、それは、過剰レベルの細胞外液によって特徴付けられる状態の処置又は改善;NPRA受容体の活性化が治療効果を与える病的状態の処置又は改善;異常な利尿(diruretic)、ナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置又は改善;ナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するか又はレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患の処置又は改善;慢性心不全(非虚血性)、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化(cardiac fibrosis)、拡張期心不全、及び肥大型心筋症からなる群から選択される心血管系の病的状態の処置又は改善;高血圧症、肺高血圧症、収縮期高血圧症及び抵抗性高血圧症からなる群から選択される高血圧性疾患の処置又は改善;並びに糖尿病性腎症の処置又は改善を含み、ここでそのような方法は、本明細書中に記載される医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】組換えイヌANP−Fc融合タンパク質のDNA及びタンパク質配列。マウスIgGκ軽鎖シグナル配列は、ボールド体である。これは、切断して外され、最終産物上にはない。CaANP28には下線がひかれている。(GGS)6GGリンカーは、イタリック体にしてある。
【図2】イヌANP−Fc融合物の、A)ベクターマップ及びB)タンパク質マップ例。
【図3】イヌANP−Fc融合タンパク質cGMP誘導アッセイの用量応答曲線。実線はANPであり、破線はイヌANP−Fc融合物である。
【図4】覚醒イヌにおける血漿ANP−caFcレベルに対する、静脈内及び皮下ANP−caFc投与の効果。
【図5】覚醒イヌにおける血漿cGMPレベルに対する、静脈内及び皮下ANP−caFc投与の効果。
【図6】研究番号1において、覚醒遠隔測定用ビーグルにおける血漿cGMPレベルに対する皮下ANP−caFc投与の効果。
【図7A】図7Aは、研究番号1における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対平均動脈圧に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図7B】図7Bは、投薬後第1〜4日目にわたる平均動脈圧(MAP)における絶対的相違を示す。ANPca−Fcは、覚醒イヌにおける平均動脈血圧を、用量依存的に降下させた。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、MAPは予想通りに、覚醒イヌにおいて上昇した。
【図8A】図8Aは、研究番号1における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対心拍数(HR)に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図8B】図8Bは、投薬後第1〜4日目にわたるHRにおける絶対的相違を示す。ANP−caFcは、覚醒イヌにおけるHRを、用量依存的に増加させた。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、HRは予想通りに、覚醒イヌにおいて増加した。
【図9】研究番号2における覚醒遠隔測定用ビーグルにおける、循環cGMPレベルに対する皮下ANP−caFc投与の効果。
【図10A】図10Aは、研究番号2における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対平均動脈圧に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図10B】図10Aは、投薬後第1〜4日目にわたる平均動脈圧(MAP)における絶対的相違を示す。ANPca−Fcは、覚醒イヌにおける平均動脈血圧を、用量依存的に降下させた。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、MAPは予想通りに、覚醒イヌにおいて上昇した。
【図11A】図11Aは、研究番号2における覚醒遠隔測定用ビーグルにおいて、投薬後第1日目における、絶対心拍数(HR)に対する皮下ANP−caFc投与の効果を示す。
【図11B】図11Bは、投薬後第1〜4日目にわたるHRにおける絶対的相違を示す。血液試料が、第1日目に取得された場合(↑)、HRは予想通りに、覚醒イヌにおいて増加した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は具体的には、直接か又はリンカーを通してのいずれかでイヌ抗体Fcドメインと連結されている治療用ペプチド又はタンパク質を含む融合タンパク質の、製造及び使用方法、並びに融合タンパク質を製造及び使用するための組成物に関する。治療用ペプチド及び融合タンパク質のFc領域は、融合タンパク質の効力に貢献する2つの別個の生物学的役割を果たす。驚くべきことに、リンカー長もまた、融合タンパク質の効力に影響する。本明細書中に記載される融合タンパク質は、イヌにおける薬物の治療効力の指標を提供し、他の動物における処置の効力を予測するために有用であるだろう。あるいは、発明の融合タンパク質はまた、イヌの処置のための獣医学療法において有用であり得る。
【0030】
イヌ抗体Fcドメインによって互いから分離されている少なくとも2つの治療用ペプチド又はタンパク質を含む融合タンパク質もまた提供され、ここで治療用ペプチド又はタンパク質は、直接又はリンカーを通して、イヌ抗体Fcドメインと結合体化されている。イヌFcドメインが、イヌIgGのヒンジ領域を含むことが、本発明の重要な特徴である。ヒンジ領域は、残りのイヌFcドメインと同一のIgGサブクラス由来であってもよく、あるいは、ヒンジ領域は、Fc部分の残りが由来するIgGとは異なるイヌIgG由来であってもよい。本発明において使用されるイヌFcヒンジ配列の具体的な配列例としては:
【0031】
CTDTPPCP(配列番号18;イヌIgGA由来のヒンジ);CPKCP(配列番号19;イヌIgGB由来のヒンジ);FNECRCTDTPPCP(配列番号20;イヌIgGA由来のヒンジ);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21;イヌIgGB由来のヒンジ);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22;イヌIgGC由来のヒンジ);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23;イヌIgGD由来のヒンジ)が挙げられる。
【0032】
具体的な実施態様において、治療用ペプチド又はタンパク質はナトリウム利尿ぺプチド又はタンパク質であり、これは、イヌナトリウム利尿ぺプチドもしくはタンパク質又は別の種由来のナトリウム利尿ぺプチドもしくはタンパク質であり得る。
【0033】
NPRA受容体の活性化が、対象に治療効果を与える病的状態(異常な利尿、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患を含むが、それらに限定されない)の処置又は改善を含む用途のための、本発明の治療用融合タンパク質をコード化する核酸分子、及びイヌナトリウム利尿融合タンパク質をコード化するポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターもまた本明細書中に提供される。発明の融合タンパク質又は核酸分子は、医薬的に許容可能な添加剤、担体又は希釈剤を含む組成物中に存在し得る。
【0034】
一態様において、本発明は、コハク酸グリシンリンカーによってFcドメインに結合された1つ以上の治療用ペプチドを含む融合タンパク質に関する。本明細書中に意図されるように、治療用ペプチドとイヌFcドメインとを連結するためにコハク酸グリシンリンカーが使用される場合、リンカーのグリシン残基がFcドメインのN末端に連結され、コハク酸部分(moeity)が治療用ペプチドのC末端並びに/又は種々の長さ及び配列のアミノ酸リンカーに連結されている。リンカーに関して、治療用ペプチドの持続された効力を達成するために、前記長さ及び組成が必要である。本明細書中で意図されるように、治療用ペプチドは、異なる配向でFcドメインに連結され得る。1つの配向において、ペプチドのC末端は、FcドメインのN末端に連結されており、別の配向においては、ペプチドのN末端が、FcドメインのN末端に連結されている。Fcドメインは、ヒンジ、IgG分子のCH2及びCH3領域のホモ二量体として存在し、ここでFcドメインはIgGヒンジ領域内の一番目のN末端システイン残基で開始し、ホモ二量体は、ヒンジ中のシステイン残基からの2つのジスルフィド結合によって、結びつけられている。
【0035】
さらなる態様において、発明は、医薬的に許容可能な添加剤、担体又は希釈剤、及び本明細書中に記載される任意の融合ペプチドを含む医薬組成物又は処方物を含む。
【0036】
追加の態様において、発明はまた、本明細書中に開示される融合タンパク質をコード化する核酸分子及び当該タンパク質を発現する発現ベクターに関する。
【0037】
別の態様において、発明は、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患並びに/又はナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するかもしくはレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患を含むがそれらに限定されない、NPRA受容体の活性化が対象に治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法に関する。これらの状態としては、過剰な細胞外液によって特徴付けられ得る状態が挙げられ、肺水腫を含むが、それに限定されない。特に好ましい実施態様において、発明は、慢性心不全(非虚血性)、心筋梗塞後心不全(虚血性CHF)、急性心筋梗塞、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化、拡張期心不全、及び肥大型心筋症を含むが、それらに限定されない心血管系の病的状態の処置又は改善方法を含む。さらに、例えば、肺高血圧症、収縮期高血圧症、抵抗性高血圧症等の高血圧症を含むがそれに限定されない高血圧性疾患、及び糖尿病性腎症等の他の心血管関連疾患が、本発明の方法によって処置又は改善され得る。本発明の融合タンパク質及び医薬組成物が、冠動脈バイパス手術(CABG)を受けている対象に、治療効果を提供し得ることもまた、本明細書中に意図される。
【0038】
発明が、上に提供された任意の病的状態の処置又は改善のための薬の製造における本発明の融合タンパク質の使用を含むこともまた、本明細書中に意図される。
【0039】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、以下の式を含む:
X−La−F:F−La−X又はX−La−F:Fであって、式中、
Xは、例えば、配列SLRRSSCFGGRMDRIGAQSGLGCNSFRY(配列番号8)を有するイヌナトリウム利尿ペプチド等のタンパク質の治療用ペプチドであり;
【0040】
Lは、「a」個のアミノ酸残基を含むリンカーであり;aは、少なくとも0である整数であり;「:」は、化学会合又は架橋であり;かつFは、FcRn結合部位を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。好ましくは、Fcドメインは、CTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVMHETLQNHYTDLSLSHSPGK(配列番号9)の配列を有するか、又はCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPGK(配列番号10)の配列を有する。
【0041】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、以下の式を含む:
X−La−F:F−La−X、式中、Xは、1つ以上の治療用ペプチドであり、ここで少なくともイヌナトリウム利尿ペプチド上は配列番号8の配列を有し;Lは、アミノ酸残基を含むリンカーであり;aは、少なくとも0である整数であり;「:」は、化学会合又は架橋であり;かつFは、(好ましくは、配列番号9又は10の配列を有する)FcRn結合部位を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。大多数のイヌナトリウム利尿ペプチドは、実際には配列番号8の配列の複数のコピー(即ち、X=(配列番号8)n:式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10以上の整数である)であり得ることが意図される。さらに、Xは、複数で存在する配列番号10の断片(即ち、X=(配列番号10の断片)n)であり得る。
【0042】
いくつかの実施態様において、治療用ペプチドは、ANP、BNP、ウロジラチン、DNP又は生物学的に活性なそれらの配列改変体からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、イヌナトリウム利尿ペプチドは、ANP又はBNPである。
【0043】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、少なくとも2つの治療用ペプチドを含む。いくつかの実施態様において、Xは、1つより多いイヌナトリウム利尿ペプチドであり得る。いくつかの実施態様において、両イヌナトリウム利尿ペプチドは、ANPである。いくつかの実施態様において、両イヌナトリウム利尿ペプチドは、BNPである。
【0044】
一定の実施態様において、化学会合、即ち(:)、は共有結合である。他の実施態様において、化学会合、即ち(:)、は非共有結合性の相互作用、例えば、イオン性相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用又は水素結合、である。
【0045】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、少なくとも2つのFcドメインを含む。
【0046】
いくつかの実施態様において、リンカーは、少なくとも2、4、6、9、11、16又は20アミノ酸長である。他の実施態様において、リンカーは、少なくとも0、1、5、7、8、10、12、13、14、15、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30アミノ酸であるが、随意にそれよりも長くてもよく、例えば、30と40との間のアミノ酸長又は40と50との間のアミノ酸長であり得る。いくつかの実施態様において、リンカーは、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、9〜20アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長、20〜30アミノ酸長、25〜35アミノ酸長、30〜50アミノ酸長、30〜40アミノ酸長又は35〜45アミノ酸長から選択される。いくつかの実施態様において、リンカーは、10より長い、15より長い、20より長い、25より長い、又は30より長いアミノ酸長である。いくつかの実施態様において、リンカーは、コハク酸グリシンリンカー(L1)、アミノ酸リンカー又はそれらの組合わせから選択される。いくつかの実施態様において、アミノ酸リンカーは、GlyGly(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGly(L3)、(GlyGlySer)3GlyGly(L4)、(GlyGlySer)4GlyGly、(GlySerGly)5Gly(L5a)、(GlyGlySer)5Gly(L5)又は(GlyGlySer)6GlyGly(L6)である。
【0047】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、対応する野生型治療用ペプチド又はタンパク質よりも、タンパク質分解に耐性である。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、対応する野生型治療用ペプチド又はタンパク質よりも長い半減期を示す。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、組換え技術、合成化学又は半合成化学によって作られる。
【0048】
具体的な実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号3及び配列番号6の最終的にプロセシングされたタンパク質配列を有する、配列番号2又は5の任意の1つ(それぞれ、配列番号33〜36によってコードされる)を含む、イヌナトリウム利尿融合タンパク質を提供する。配列番号2及び配列番号4において示される配列は、切断して外され、最終産物上には存在しない、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号7)のマウスIgGκ軽鎖シグナル配列を含む。
【0049】
本開示は、本明細書中に記載されているような、イヌナトリウム利尿融合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、静脈内、皮下又は経口投与に適合されている。
【0050】
本開示は、配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるポリペプチドをコード化する単離された核酸分子を提供する。本開示はまた、配列番号1及び配列番号4からなる群から選択されるポリペプチドをコード化する単離された核酸分子を提供する。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、ほ乳動物発現系、原核生物発現系、酵母発現系、植物発現系、又はトランスジェニック発現系を用いることによって組換え生産される。
【0051】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌFcヒンジ領域を含むイヌFcドメインに連結された治療用融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、過剰レベルの細胞外液によって特徴付けられる状態の処置又は改善方法を提供する。
【0052】
ペプチドがナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである実施態様において、本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、NPRA受容体の活性化が治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法を提供する。
【0053】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置又は改善方法を提供する。
【0054】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、ナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するか又はレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患の処置又は改善方法を提供する。
【0055】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、慢性心不全(非虚血性)、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化、拡張期心不全、及び肥大型心筋症からなる群から選択される心血管系の病的状態の処置又は改善方法を提供する。
【0056】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、高血圧症、肺高血圧症、収縮期高血圧症及び抵抗性高血圧症からなる群から選択される高血圧性疾患の処置又は改善方法を提供する。
【0057】
本開示は、本明細書中に記載されているようなイヌナトリウム利尿融合ペプチドを1つ以上含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによる、糖尿病性腎症の処置又は改善方法を提供する。
【0058】
A.定義
他に定義されていない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書中の発明の記載において使用される用語法は、特定の実施態様を説明する目的のためのみであって、発明を限定することを意図しない。見出しは、読者の利便性のために使用されており、これもまた発明を限定することを意図しない。本明細書中で言及されている全ての出版物、特許出願、特許、及び他の文献は、参照することによりそれらの全体が本明細書中に援用され、本明細書中にそれらのブランド名で言及されている任意のブランド薬の添付文書についても同様である。
【0059】
明細書及び本明細書中に示されている実施態様において使用されている場合、以下の用語は、示された意味を有する。
【0060】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示していない限り、複数形もまた含むことが意図される。
【0061】
例えば、本明細書中で「イヌナトリウム利尿融合タンパク質」として用語が使用されているように、「融合タンパク質」は、共有結合している少なくとも2つのポリペプチドを有するタンパク質をいい、ここで、1つのポリペプチドは1つのタンパク質配列又はドメインに由来し、他のポリペプチドは、別のタンパク質配列又はドメインに由来する。一般的に、融合タンパク質のポリペプチドは、直接か又は共有結合リンカーを介してのいずれかで連結され得る。用語(「リンカー」)は、ポリグリシンリンカーなどのアミノ酸リンカー、又は例えば、コハク酸グリシンリンカー、炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー等の別のタイプの化学的リンカーをいう。リンカーは、少なくとも2、4、6、9、11、16又は20アミノ酸長から構成され得る。あるいは、リンカーは、少なくとも0、1、5、7、8、10、12、13、14、15、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30アミノ酸から構成され得るが、随意に、それよりも長くてもよく、例えば、30と40との間のアミノ酸長又は40と50との間のアミノ酸長であり得る。アミノ酸は、例えば、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及びリジン等の、20個の天然に存在するアミノ酸のD又はL異性体のいずれかの中から選択される。リンカーは、グリシン及びアラニン等の、過半数の立体障害のないアミノ酸からなり得る。リンカーは、例えば、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長、20〜30アミノ酸長、30〜35アミノ酸長、35〜40アミノ酸長、40〜45アミノ酸長又は45〜50アミノ酸長等の、広範な長さのアミノ酸残基を含み得る。これらのアミノ酸のいくつかは、糖鎖付加されていてもよい。非ペプチドリンカーもまた、可能である。例えば、−NH−(CH2)S−C(O)−、式中=2〜20、等のアルキルリンカーが使用され得る。これらのアルキルリンカーはさらに、低級アルキル基(例えば、C1〜C6)低級アシル基、ハロゲン基(例えば、Cl、Br)、CN基、NH2基、フェニル基等の、任意の非立体障害基によって置換されていてもよい。例証的な非ペプチドリンカーは、リンカーが、100〜5000kD、好ましくは100〜500kDの分子量を有する、PEGリンカーである。ペプチドリンカーは、改変され得、上記と同一の様式で誘導体を形成し得る。本明細書中の例において記載されているように、本発明の融合タンパク質の好ましいリンカーは、基礎的なリピート(GGS)x又は(GGS)xGGをもつ、ひと続きのアミノ酸である。例えば、xは、0〜16の整数であり得る。具体的な配向は、本明細書中に詳細に記載されているものの、融合タンパク質を形成するポリペプチドは、C末端がN末端に連結されていてもよく、しかしそれらはまたC末端がC末端に、N末端がN末端に、又はN末端がC末端に連結されていてもよく、融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序であり得る。本発明の融合タンパク質は、2つのペプチド融合を含有し得ることもまた、本明細書中で意図される。例えば、融合タンパク質は、2つのFcドメインによって隣接された1つのペプチド(例えば、Fc−イヌナトリウム利尿ペプチド−Fcであって、ここでイヌナトリウム利尿ペプチドが直接又はリンカーを通してFcドメインと結合体化されている)を含み得る。本明細書中で意図されるように、コハク酸グリシンリンカーが使用されて、イヌナトリウム利尿ペプチドとFcドメインとが連結されている場合、リンカーのグリシン残基は、FcドメインのN末端に連結されており、コハク酸部分は、イヌナトリウム利尿ペプチドのC末端に連結されている。
【0062】
用語「タンパク質」は、本明細書中で、「ポリペプチド」及び「タンパク質」と互換的に使用される。
【0063】
「核酸」は、一本鎖か又は二本鎖形態いずれかの、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーをいう。用語は、基準核酸と類似した結合特性を有し、かつ基準ヌクレオチドに類似した様式で代謝される、合成、天然に存在する、及び天然に存在しない、公知のヌクレオチドアナログ又は改変された骨格残基もしくは結合を含有する核酸を包含する。そのようなアナログは、当業者によく知られており、例として、ホスホロチオエート及びホスホロアミダートが挙げられる。他に示されていない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に改変されたそれらの改変体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列、並びに明示的に示されている配列を暗に包含する。本明細書中で使用される時、用語「核酸」はまた、「遺伝子」、「cDNA」、「mRNA」、「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」として言及されていてもよい。
【0064】
本明細書中に意図されるように、本発明の融合タンパク質を含むポリヌクレオチド配列は、融合タンパク質の各個別のポリペプチドをコード化する各々のヌクレオチド配列に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する。融合ポリペプチドの個別のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列はしたがって、保存的に改変された改変体、多形改変体、対立遺伝子、変異体、部分配列、及び種間ホモログを含む。
【0065】
「アミノ酸」は、本明細書中では、他に特定されていない限り、任意の天然に存在する、人工の、又は合成アミノ酸であって、そのLか又はD立体異性体のいずれか、として定義される。用語「残基」は、用語「アミノ酸」と互換的に使用され、しばしば所定のアミノ酸配列における特定の位置を有するように指定される。
【0066】
「生物学的に活性」は、アゴニスト、部分アゴニスト又はアンタゴニスト等の、治療活性又は薬理活性を有する薬剤をいう。
【0067】
本明細書中に提供される「有効量」は、望ましい治療効果を提供するための、無毒性であるが、十分な量をいう。以下に指摘される通り、必要とされる正確な量は、年齢、対象の全身状態、処置されている状態の重症度、投与される特定の生物学的に活性な薬剤等に依存して、対象によって変動する。任意の個別の症例における適切な「有効」量は、関係している文書及び文献の参照によって並びに/又は日常的な実験を使用することによって、当業者によって決定され得る。
【0068】
本明細書中で使用するとき、用語「Fcドメイン」は、「Y」の基部に由来する抗体のその部分をいい、各々2つ〜3つの定常ドメイン(抗体のクラスに依存する)を与える2つの重鎖から構成される。Fc領域は、種々の細胞受容体及び補体タンパク質に結合し、抗体の異なる生理学的作用を媒介する。本明細書中で意図されるように、任意の抗体の、最小限のエフェクター機能を示すか又はエフェクター機能を示さないFcドメインが、本発明で使用され得る。これらとしては、IgG1、IgG2、IgG4が挙げられるが、それらに限定されず、また、当業者によく知られている方法によって、最小限のエフェクター活性を持つようにその配列が改変された任意の抗体の任意のFcドメインもまた含まれ得る。
【0069】
あるいは、用語「Fcドメイン」は、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖として記載され得、ここで、IgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcドメインとホモ二量体を形成する。
【0070】
用語「Fc」はまた、融合タンパク質の部分を記載するのに使用される。この文脈において、Fcは、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むIgG重鎖であり、IgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcとホモ二量体を形成する。換言すれば、Fcホモ二量体の各鎖のN末端アミノ酸配列は、IgGヒンジ領域のCysProProCysPro(配列番号11)で開始し、両Cys残基は、ジスルフィド結合している。
【0071】
本明細書中で使用するとき、ペプチドは、それが実質的に細胞性物質を含んでいないか、又は化学的前駆体もしくは他の化学物質を含んでいない場合に、「単離された」又は「精製された」といわれる。本発明の融合タンパク質は、均質又は他の程度の純度まで、精製され得る。精製のレベルは、意図される用途に基づくだろう。決定的な特徴は、製剤が、かなりの量の他の成分の存在下であっても、ペプチドの望ましい機能を可能とすることである。
【0072】
本明細書中でいう「イヌナトリウム利尿ペプチド」としては、ほ乳動物イヌナトリウム利尿因子(ANP、BNP、CNP)、ウロジラチン及びそれらに類似したペプチド、並びにそれらのアナログ、活性断片、分解産物、塩、改変体、誘導体及び組合せが挙げられる。具体的には、イヌANP及びBNPとしては、「イヌANP28」及び「イヌBNP32」が挙げられ、それらが具体的に意図される。
【0073】
いかなる作用機序によっても限定されるものではないが、本明細書中で言及される場合、「徐放性、又は持効性処方物」の薬物動態は、FcRn結合及び酸性のリソソーム内から全身循環へと戻るFcRn結合型分子の再循環によって、バイオアベイラビリティの上昇を示すこととして特徴付けられ得る(V.Ghetie及びE.S.Ward,Annual Rev. Immunol,18,739−766,(2000))。
【0074】
本明細書中で使用される用語「半合成」は、本発明の融合タンパク質の合成プロセスをいい、合成化学及び組換え技術の両方の使用を含む。例えば、本明細書中で開示される融合タンパク質のFcドメインは、組換えで作られ得、一方で、イヌナトリウム利尿ペプチド及びリンカーは、合成的に作られ得る。
【0075】
B.ペプチド分子
本発明は、イヌを供給源とするIgG又は他の抗体のFc領域に連結した、1つ以上のイヌナトリウム利尿ペプチドから構成される新規の生物学的に活性な融合タンパク質であって、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患を含むが、それらに限定されない、NPRA受容体の活性化が対象に治療効果を与える病的状態の処置又は改善を含む用途のための、融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質は、医薬的に許容可能な添加剤、担体又は希釈剤を含む組成物中に存在し得る。
【0076】
発明は、以下の一般式A又はBのいずれか一方を有し得る、本明細書中に記載された融合タンパク質に関し、
【化1】
【0077】
式中、治療用ペプチド又はタンパク質は、
(i)免疫グロブリンではないポリペプチドであり、かつ
(ii)アミノ酸配列のN’からCの配向、アミノ酸配列のCからN’の配向又は1つより多くの治療用ペプチドの場合、N’からCの配向、CからN’の配向もしくはN’からC及びCからN’の混合した配向であり得;かつFcドメインは、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であり、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcドメインとホモ二量体を形成し、ここでFcドメインは、FCAB又はFCBAによって示され、ここでABは、両FcドメインのN’からCの配向であり、BAは、両FcドメインのCからN’の配向である。FC配列は好ましくは、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式A又は一般式Bのいずれにおいても、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0078】
上記の一般式の治療用タンパク質は、任意の治療用タンパク質であり得る。例えば、それは、サイトカイン、リガンド結合タンパク質、ホルモン、ニューロトロフィン、ニュートロフィン(neutrophin)受容体、体重の制御因子、血清タンパク質、凝固因子、プロテアーゼ、細胞外マトリクス成分、血管新生因子、抗血管新生因子、免疫グロブリン受容体、血液因子、癌抗原、スタチン、成長因子、治療用ペプチド、非ヒトタンパク質、非ほ乳動物タンパク質及びタンパク質毒素からなる群から選択され得る;具体的な例において、治療用ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のイヌANP、イヌBNP、イヌウロジラチン、イヌDNP及びそれらの生物学的に活性な配列改変体からなる群から選択され;好ましくは、配列番号8の配列を有する;さらに他の例証的な治療用タンパク質としては、造血因子、インターフェロン、インターロイキン及び腫瘍壊死因子等のサイトカイン;エリスロポエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子及び顆粒球コロニー刺激因子等の造血因子;CD分子、CTLA−4、TNF受容体、及びインターロイキン受容体等のリガンド結合タンパク質、が挙げられる。
【0079】
本明細書中で意図されるように、一態様において、本発明は、リンカーを経由して抗体のFcドメインに結合体化されている少なくとも1つのイヌナトリウム利尿ペプチドを含む融合タンパク質を包含する。融合タンパク質は実際には、イヌ抗体由来の抗体Fcドメインに結合体化されている1つのイヌナトリウム利尿ペプチド又は2つのイヌナトリウム利尿ペプチドを含み得る。以下に詳述されるように、ペプチドとFcドメインとを結合体化するために用いられているリンカーの配列及び長さは、融合タンパク質が、1つ又は2つのイヌナトリウム利尿ペプチドを含むかによって、変動し得る。
【0080】
発明の一態様は、以下の一般式1又は2のいずれか一方を有する融合タンパク質に関し、
【化2】
【0081】
式中、ナトリウム利尿ペプチドは、(i)1つ以上のイヌANP、イヌBNP、イヌウロジラチン、イヌDNP及びそれらの生物学的に活性な配列改変体からなる群から選択され、かつ好ましくは、配列番号8の配列を有し、(ii)アミノ酸配列のN’からCの配向、アミノ酸配列のCからN’の配向又は1つより多いイヌナトリウム利尿ペプチドの場合、N’からCの配向、CからN’の配向又はN’からC及びCからN’の混合した配向であり得;リンカーは、コハク酸−グリシンリンカー(L1)、GlyGlyリンカー(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGlyリンカー(L3)、(GlyGlySer)yGlyGlyリンカー、(式中、yは3〜6(L4)、及び7(L6)である)、(GlyGlySer)5Gly(L5)並びに(GlySerGly)5Glyリンカー(L5a)からなる群から選択される1つ以上のリンカーであり;かつ、Fcドメインは、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であって、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcドメインとホモ二量体を形成し、ここでFcドメインは、FCAB又はFCBAによって示され、ここでABは、両FcドメインのN’からCの配向であり、BAは、両FcドメインのCからN’の配向である。FC配列は好ましくは、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式1又は一般式2のいずれにおいても、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0082】
本発明の別の態様において、融合タンパク質は、以下の式3を有し;
【化3】
【0083】
式中、ANPは、ANPのアミノ酸配列のN’からCの配向(ANPXY)であるか、又は配列番号8のアミノ酸配列のCからN’の配向であり(ANPYX);リンカーは、L1、L2、L3、L4、L5、L5a及びL6からなる群から選択される1つ以上のリンカーであり、ここで、L1は、本明細書中に記載されるコハク酸グリシンリンカーであり、L2はGlyGlyリンカーであり、L3はGly(SerGlyGly)2SerGlyリンカーであり、L4は(GlyGlySer)3GlyGlyリンカーであり、L5は(GlyGlySer)5Glyリンカーであり、L5aは(SerGlyGly)5Glyであり、かつL6は(GlyGlySer)6GlyGlyリンカーであり;かつFcは(i)ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であって、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcとホモ二量体を形成し、かつ(ii)FCUB、FCIBA、FC2AB又はFc2BAによって示され、ここでFc1はIgGI分子由来であり、Fc2はIgG2分子由来であり、ABは、FcのN’からCの配向であり、かつBAは、FcのCからN’の配向である。FC配列は好ましくは、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式3において、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0084】
本発明のさらに別の態様において、融合タンパク質は以下の式4を有し、
【化4】
【0085】
式中、ANPは、配列番号8のアミノ酸配列のN’からCの配向(ANPXY)であるか、又は配列番号8のアミノ酸配列のCからN’の配向である(ANPyx);リンカーは、L1、L2、L3、L4、L5、L5a及びL6からなる群から選択される1つ以上のリンカーであり、ここで、L1は、本明細書中に記載されるコハク酸グリシンリンカーであり、L2はGlyGlyリンカーであり、L3はGly(SerGlyGly)2SerGlyリンカーであり、L4は(GlyGlySer)3GlyGlyリンカーであり、L5は(GlyGlySer)5Glyリンカーであり、L5aは(SerGlyGly)5Glyであり、かつL6は(GlyGlySer)6GlyGlyリンカーであり;かつFcは(i)ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むIgG重鎖であって、ここでIgG重鎖は、ヒンジ領域内の最初のN末端システイン残基で開始し、最初及び二番目のN末端システイン残基において、別のFcとホモ二量体を形成し、かつ(ii)FCUB、FCIBA、FC2AB又はFc2BAによって示され、ここでFc1はIgGI分子由来であり、Fc2はIgG2分子由来であり、ABは、FcのN’からCの配向であり、かつBAは、FcのCからN’の配向である。好ましくは、FC配列は、配列番号9及び/又は配列番号10の配列を有する。例えば、一般式4において、両Fcドメインは、配列番号9の配列を有し得;又は両Fcドメインは、配列番号10の配列を有し得、又はFcドメインの一方は配列番号9の配列を有し得、他方は配列番号10の配列を有し得る。
【0086】
本発明の融合タンパク質は、生物学的に活性な分子であり、例えば、それらは、cGMPを触媒することができるが、それらが大変長い半減期を持ち、またタンパク質分解に対する感受性がより低いため、治療用目的のために、より有用である。その上、FcRn媒介輸送を活用することによって、本明細書中に開示される治療用融合タンパク質は、ボーラス注入によって投与され得、しかしながら、遅効性の持効性処方物の薬物動態特性に似た薬物動態特性を示し得る。
【0087】
本発明の融合タンパク質は、イヌIgG等のイヌ抗体のFc領域に、直接又はリンカーを通して結合体化されている治療用ペプチドであり、Fc領域は、イヌIgG由来のヒンジ領域を具体的に含む。ペプチドを抗体のFc領域に結合体化することによって、これらの融合タンパク質は、結合体化されていないペプチドよりも大変長い半減期を示す。イヌFcヒンジ領域の選択は、治療用タンパク質又はペプチドのin vivo取込みにとって重要である。いかなる作用機序によっても限定されるものではないが、本発明の融合タンパク質は、Fc領域が新生児定常領域断片受容体(FcRn)へと結合すると、飲作用されて隔離され得、FcRn活性型担体系を活用することによって(FcRn経路は、移行抗体(IgG)を、新生仔の腸上皮を通して輸送する)、本明細書中に開示されている融合タンパク質のレベルが、細胞内リソソーム分解から保護され得るとともに、中性エンドペプチダーゼ(NEP)又はNPRクリアランス受容体への曝露が低減される。融合タンパク質は、細胞から正常に放出されると、再循環され、循環へと呈示され得る。この方法では、リガンドのボーラス投薬後に典型的であるようなNPRA受容体のいっせいの活性化が、回避され得る。本発明の融合タンパク質のバイオアベイラビリティは、遅効性の持効性製剤によりよく似ていてもよい。
【0088】
FcRn受容体は、成人において、肺、腎臓及び腸を含むいくつかの異なるタイプの組織における内皮細胞の表面上に発現される。いかなる作用機序によっても限定されるものではないが、FcRn受容体の通常の機能が、無数の臨床用途のために、生物学的活性な治療用Fc融合タンパク質を投与する手段として活用され得る。例えば、心血管系の病的状態の処置又は改善方法に加え、本発明の融合タンパク質は、NPRA受容体の活性化が対象に治療効果を与える、異常な利尿、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置方法においても使用され得る。
【0089】
いくつかの例証的な実施態様において、本発明の融合タンパク質は、イヌANP又はイヌBNPを含むがそれらに限定されない、任意のイヌナトリウム利尿ペプチドを含み得る。
【0090】
配列改変体に加え、当該ペプチドの断片も本明細書中に開示される発明の範囲内に含まれることがまた意図され、そのような断片は、本発明の方法において治療上有効であるために、十分な大きさである。当業者は、過度の実験を行うことなく、生物学的活性及び/又は治療効果に影響しないペプチドの長さにおける変化及び配列の変種を決定し得る。タンパク質は、酸性もしくは塩基性塩の形態であり得、又は中性形態であり得る。個々のアミノ酸残基はまた、酸化又は還元によって改変され得る。
【0091】
発明の範囲内である他の改変体としては、融合タンパク質の一次アミノ酸構造が、他のペプチドもしくはポリペプチド、又はグリコシル基、脂質、リン酸、アセチル基等のような化学的部分、と共有結合性又は凝集性の接合体を形成することによって修飾されている、融合タンパク質が挙げられる。共有結合誘導体は、例えば、アミノ酸側鎖に、又はNもしくはC末端において、特定の官能基を連結することによって、調製され得る。
【0092】
本発明の融合タンパク質は、糖鎖付加されていても、糖鎖付加されていなくてもよい。酵母又はほ乳動物発現系において発現された融合タンパク質は、発現系によって、分子量及び糖鎖付加パターンにおいて、ネイティブな分子と類似しているか、又はネイティブな分子からわずかに異なり得る;大腸菌などの細菌におけるDNAコード化ポリペプチドの発現は、糖鎖付加されていない分子を提供する。
【0093】
一定の実施態様において、本発明の二量体コンストラクトは、単量体コンストラクトと比較した場合に、in vitroで増強された効力を有することが見出されている。本明細書中に記載されているような、イヌ抗体Fcドメインに連結された治療用ペプチドの二量体コンストラクトの増強された効力は、イヌナトリウム利尿ペプチドリガンド(例えば、ANP、BNP等)とそれらの細胞表面受容体との間の単量体相互作用を考慮すると、特に驚くべきことである。本明細書中に記載されているような二量体コンストラクトは、細胞及び/又は受容体と相互作用することからは、立体的に妨害されるであろうことが予想され、したがって、そのような二量体コンストラクトのわずかな活性及び/又は無活性が予測されるだろう。
【0094】
一定の実施態様において、本発明の単量体コンストラクトは、二量体コンストラクトと比較した場合に、増加したin vivo血清濃度(Cmax)を有することが見出されている。明細書中に記載されているような、抗体Fcドメインに連結されたイヌナトリウム利尿ペプチドの単量体コンストラクトの増加したCmaxは、二量体EPO−Fcコンストラクトの静脈内投与と比較した場合により低いCmaxを示した単量体EPO−Fcコンストラクトの静脈内投与からの、以前の結果を考慮すると、驚くべきことである(例えば、米国特許出願公開番号第2007/0172928号の表4を参照のこと)。
【0095】
治療用ペプチドに結合体化されているイヌFcドメインは、好ましくは、IgGA、IgGB、IgGC又はIgGDを含むがそれらに限定されない、イヌIgGのFcドメインである。しかしながら、最小限のエフェクター機能を持つか又はエフェクター機能を持たないように改変された場合には、他の抗体のFcドメインが使用され得る。イヌ抗体Fcドメインが好ましいが、他の種型、野生型形態並びに配列改変体も使用され得、例えば、本明細書中に提供される実施例において、組換えFc分子が記載されている。本発明の一態様において、Fcドメインは、IgGI又はIgG2アイソタイプ由来の2つのFc重鎖からなり、ヒンジ残基は、システイン残基の鎖間ジスルフィド結合を可能とするために、各鎖上のCPPCP配列までが除去されている。理想的には、本発明の融合タンパク質は、FcRn受容体に結合可能であり、この受容体の活性担体機能を惹起可能であり、かつ有害なADCC毒性応答を引き起こすことなく、細胞中への融合タンパク質の送達を引き起こすことが可能である、イヌFcドメインを含む。いったん細胞内に入ると、pHの変化が、FcRn受容体からの融合タンパク質の遊離をもたらし、融合タンパク質は、最終的には細胞から放出され、循環中へと戻され得る。(Roopenian D.C.ら.(2003)J.Immunology 170:3528−3533;Lencer,W.I.ら,Trends in Cell Biology 15(1):5−9(2005))。
【0096】
治療用タンパク質とイヌFcドメインとを結合体化するのに使用されるアミノ酸リンカーの長さ及び配列は、変動し得る。イヌFcドメインに関して結合したイヌANPを含むNPRAの構造モデル化が、NPRAの活性部位へのイヌFc融合イヌANPの挿入を可能とするために必要な最小限のリンカー距離を予測するために使用され得る。リンカー長は、イヌナトリウム利尿ペプチドとFcドメインとの間の立体的及び静電気的な反発を最小化する長さであるべきである。例えば、ANPのC末端からの望ましい最小距離は、Fcホモ二量体の最も近いN末端から12Aであり、Fcホモ二量体の他のN末端から17Aである。さらに、Fcホモ二量体に1つのANPのみが融合している場合は(例えば、単量体)、4〜6アミノ酸の最小リンカー長で足りるであろう。Fcホモ二量体に2つのANPペプチドが結合しており(例えば、二量体)、NPRA受容体に1つのANPのみが結合している(すなわち、1:1のFc二量体:NPRA比で)場合、例えば、各リンカーにつき9アミノ酸の、より長いリンカー長が好ましいかもしれない。両ANPがNPRAに結合するためには(例えば、2つの隣接した受容体に、又は非静的な、交代性の様式で、1つのNPRA受容体に対して)、その場合、12アミノ酸の例証的な長さをもつリンカーが使用され得る。リンカー長を増加することは、融合タンパク質の性質に対して、有益な効果を有し得る。例えば、増加されたリンカー長は、融合タンパク質が、融合されたイヌナトリウム利尿ペプチドの効力に働きかけることを可能とし得る。例えば、より長いリンカー長(例えば、20アミノ酸長)は、イヌナトリウム利尿ペプチドの効力(in vitroでのcGMPの誘導能によって測定されたもの)を増大し得る。
【0097】
したがって、リンカー長を増加することが、融合タンパク質の効力を増大させる場合。本発明の実施態様において、融合タンパク質の効力はしたがって、16と50との間のアミノ酸、好ましくは16と40との間のアミノ酸、最も好ましくは16と30との間のアミノ酸、のリンカー長で改善され得る。
【0098】
(GGS)xのリピート(例えば、ここでxは、0〜16の整数である)を含む、本発明において用いられるリンカー配列は、慣用的な合成、半合成、又は組換え方法に従って作られ得る(例えば、Evers T.H.ら(2006)Biochemistry,45:13183−13192を参照のこと)。用いられるリンカーの実際のアミノ酸配列に関しては、グリシン及びセリンが典型的には好ましく、これは、リンカーにおけるグリシンの存在が可動性を提供し、セリンの存在が溶解性を提供するためである。好ましいリンカー配列は、これらのアミノ酸の連続したリピート(例えば、GGSGGSGGSGG又はGGSGGSGGSGGSGGSGGSGG等の、(GGS)x−GGであって、例えば、ここでxは0〜16の整数である)からなる。この、後者のGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGの配列が特に好ましい。
【0099】
上記のとおり、Fcドメインと治療用(therapeuitc)ペプチドとの結合体化の配向は異なっていてもよい。例えば、治療用ペプチドのカルボキシ末端は、イヌFcドメインのアミノ末端に、通常のペプチド結合によって連結され得る。あるいは、治療用ペプチドのアミノ末端は、イヌFcドメインのアミノ末端に連結され得る。後者において、その化学作用は、融合物の1つのアミノ酸の代わりに、コハク酸部分を残す。よって当業者は、通常のペプチド結合が2つのアミノ末端間で起こらないため、後者の融合タンパク質は、組換え的に作られ得ないことを理解するであろう。集められたデータは、配向が所定の融合タンパク質の効力には影響しないらしいことを示す。
【0100】
発明の具体的な治療用コンストラクトは、イヌFcドメインに融合したイヌANPを使用して例証されており、ここでは、1つ以上のイヌANP、1つ以上のリンカー及び1つ以上のイヌFcが使用されている。以下のイヌANP−イヌFc融合コンストラクトが、本発明によって意図されている。
【0101】
ANPXY(コンストラクト1)を含む例証的な融合コンストラクト(コンストラクト2)は:
ANPXY−L4−Fc1ab
によって表わされる。
【0102】
コンストラクトは、ANPXY−L4−FC1ABを含み、式中、ANPXYは、配列番号8の配列を有し、LはGGSGGSGGSGGSGGSGGSGG配列番号12であり、かつFC1abは、配列番号9の配列を有する。ANPXY−L−FC1ABは、配列番号3によって表わされる。ANPXY−L−Fc1abコンストラクトが、組換えで作られる場合、ホモ二量体が生産され得、例えば、ANPXY−L−FC1abは、第二のANPXY−L−FC1abコンストラクトに、ジスルフィド結合を介して、連結されていてもよい。
【0103】
例証的な融合コンストラクト(コンストラクト3)は、以下によって表わされ:
【0104】
ANPXY−L−FC2ab
【0105】
式中、ANPXYは、配列番号8の配列を有し、LはGGSGGSGGSGGSGGSGGSGG配列番号12であり、かつFC2abは、配列番号10の配列を有する。ANPXY−L−FC2abは、配列番号6によって表わされる。ANPXY−L−Fc2abコンストラクトが、組換えで作られる場合、ホモ二量体が生産され得、例えば、ANPXY−L−FC2abは、第二のANPXY−L−FC2abコンストラクトに、ジスルフィド結合を介して、連結されていてもよい。
【0106】
別の例証的な融合コンストラクト(コンストラクト4)は:
【化5】
によって表わされる。
【0107】
このコンストラクトにおいて、ANP YXは、そのC末端からN’末端への配向に反転された配列番号8であり、L1は、GGSGGSGGSGGSGGSGGSGG(配列番号12)の配列を有するリンカーであり、かつFC1ABは、配列番号9又は配列番号10である。ANPYX−L1−FC1ABは、第二のFC1ABに、ジスルフィド結合を介して連結されていてもよく、第二のFC1ABは、第一のFC1ABと同一の配列を有していてもよく、又は第一のFC1ABの配列と異なっていてもよい。
【0108】
別の例証的な融合コンストラクト(コンストラクト5)は:
【化6】
によって表わされる。
【0109】
このコンストラクトにおいて、ANP YXは、そのC末端からN’末端への配向に反転された配列番号8であり、L1は、配列番号12であり、かつFC1ABは、配列番号9又は配列番号10である。ANPYX−L1−FC1ABは、第二のANPXY−L1−FCIABコンストラクトに、ジスルフィド結合を介して連結されていてもよく、両ユニットにおけるFC1ABは、配列番号9であってもよく、又は配列番号10であってもよく、又は一方のユニットにおいて配列番号9であり、他方において配列番号10であってもよい。
【0110】
C.融合タンパク質の合成
本明細書中に他に示されない限り、本発明の融合タンパク質は、当業者によく知られているタンパク質化学又は分子生物学の数々の技術の任意のものによって作られ得る。(例えば、Dawsonら,Ann.Rev.Biochem.,69:923−960,2000を参照のこと。)可能な合成のシナリオは、本明細書中に提供される実施例中に記載されており、合成及び半合成化学合成並びに組換え方法が含まれる。
【0111】
融合タンパク質は、化学的方法を全体又は部分的に使用し、古典的又は非古典的なアミノ酸もしくは化学的アミノ酸アナログを適切に使用して、生産され得る。技術としては、固相化学(Merrifield,J.Am.Chem. Soc,85:2149,1964;Houghten,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 82:5132,1985)が挙げられ、そのようなポリペプチドの自動合成のための機器は、市販されている(例えば、アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア州)。合成ペプチドは、高速液体クロマトグラフィー等の従来法を使用して精製され得る。合成融合ポリペプチドの組成は、当業者に公知の技術を使用して、アミノ酸解析又はシークエンシングによって確認され得る。酸化条件下での合成タンパク質のさらなる処置もまた、正常なネイティブのコンフォメーションを得るために利用され得る。例えば、Genetic Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.編,Plenum Press,N.Y.,第12巻,pp1−19,1990のKelley,R.F.& Winkler,M.E.;Stewart,J.M.& Young,J.D. Solid Phase Peptide Synthesis Pierce Chemical Co.,Rockford,111,1984を参照のこと)。
【0112】
本明細書中に開示される融合タンパク質はまた、遺伝子合成、クローニング及び発現方法論が関与する組換え技術によっても、作られ得る。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,第I、II、及びIII巻,1997(F.M.Ausubel編);Sambrookら,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;DNA Cloning:A Practical Approach,第I及びII巻,1985(D.N.Glover編);A Practical Guide to Molecular Cloning;シリーズ、Methods in Enzymology(Academic Press社);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,1987(J.H.Miller及びM.P.Calos編,Cold Spring Harbor Laboratory);並びにMethods in Enzymology 第154巻及び第155巻(それぞれ、Wu及びGrossman編、並びにWu編)において説明されている。
【0113】
簡潔には、本発明の融合タンパク質は、従来のクローニング又は化学合成方法によって、本明細書中に記載された任意のアミノ酸配列をコード化する核酸配列を単離又は合成することによって、組換え的に作られ得る。例えば、異なる融合タンパク質配列をコードするDNA断片は、従来の技術に従ってインフレームに一緒に連結され得、又は自動DNA合成機を含む従来技術によって、合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅が、アンカープライマーを使用して実行され得、これは、2つの連続した遺伝子断片間で相補的なオーバーハングを生じさせ、これらは次いで、アニーリングされ、再増幅され得、キメラ遺伝子配列が作出され得る。組換え核酸はさらに、タンパク質精製のプロトコルを促進するために、アフィニティータグをコード化する配列などの、他のヌクレオチド配列を含み得る。
【0114】
本発明の融合タンパク質をコード化する核酸配列は、適切な宿主中でその核酸配列を発現する能力がある適切な発現ベクター中へと連結され得、その後、核酸配列が連結された発現ベクターで宿主が形質転換され、宿主は核酸配列の発現に適切な条件下で培養され、それによって、選択された核酸配列によってコード化されるタンパク質は、宿主によって発現され、生産されたタンパク質が精製される。この過程において、連結の工程はさらに、核酸が、適切な分泌シグナルに作動可能に連結されるよう、核酸を適切な発現ベクター中へと連結することを意図し得、それによって、アミノ酸配列が宿主によって分泌される。本発明での使用に適切な分泌シグナルとしては、マウスIgGκ軽鎖シグナル配列が挙げられるが、それらに限定されない(Hoら.PNAS(2006)103(25):9637−9642)。
【0115】
上記のとおり、本明細書中に記載される融合タンパク質をコード化する核酸配列は、宿主細胞を形質転換するのに使用され得る、適切なプラスミド又は発現ベクター中へと挿入され得る。一般に、宿主細胞と適合性の種由来の複製配列及び制御配列を含有するプラスミドベクターが、それらの宿主と関連して使用される。ベクターは通常、複製部位、並びに形質転換細胞における表現型選択を提供する能力のあるタンパク質をコード化する配列を保有する。例えば、大腸菌は、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322(Mandel,M.ら,J.Mol.Biol.53:154,1970)を使用して形質転換され得る。プラスミドpBR322は、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有し、したがって、選択のための簡単な手段を提供する。他のベクターは、異なるプロモーター等の異なる特徴を含み、それらはしばしば、発現において重要である。ほ乳動物の発現に使用されるベクターはしばしば、構成的CMVプロモーターを含有し、これは高い組換えタンパク質発現を引き起こす。これらのベクターはまた、安定な発現細胞系の作出に使用される選択配列遺伝子を含有する。
【0116】
宿主細胞は、原核又は真核であり得る。DNA配列をクローニング及び発現させ、親ポリペプチド、セグメント置換ポリペプチド、残基置換ポリペプチド及びポリペプチド改変体を生産するためには、原核生物が好ましい。当業者によく知られているそのような原核細胞はとしては、大腸菌、枯草菌(B subtillus)、及び緑膿菌の細胞株が挙げられるが、それらに限定されない。原核生物に加え、酵母培養物等の真核生物、又は多細胞生物由来の細胞も使用され得る。脊椎動物細胞もまた、有用な宿主細胞系として使用され得る。有用な細胞及び細胞系は、当業者によく知られており、HEK293細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、WI 38、293、BHK、COS−7及びMDCK細胞系が含まれるが、それらに限定されない。
【0117】
発明はまた、本発明のイヌナトリウム利尿融合タンパク質をコード化する、単離又は精製されたポリヌクレオチドに関する。上で議論された通り、融合タンパク質、その断片、又はその機能的同等物をコード化する、発明のポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞において、融合タンパク質、その断片、又はその機能的同等物の発現を指向する組換え核酸分子を作出するために使用され得る。そのようなポリヌクレオチドによってコード化される融合ポリペプチド産物は、コード配列の分子操作によって、変更され得る。
【0118】
遺伝暗号の固有の縮重のため、実質的に同一又は機能的に同等なアミノ酸配列をコード化する他のDNA配列が、融合ポリペプチドの発現のために、発明の実施において使用され得る。そのようなDNA配列としては、本明細書中に記載される低、中又は高ストリンジェントな条件下で、本明細書中に開示されるコード配列又はそれらの相補物(complements)とハイブリッド形成する能力のある配列が挙げられる。
【0119】
発明にしたがって使用され得る変更されたヌクレオチド配列としては、異なるヌクレオチド残基の欠失、付加又は置換であって、同一又は機能的に同等な遺伝子産物をコード化する配列をもたらすものが挙げられる。遺伝子産物自身が、サイレントな変化をもたらすアミノ酸残基の欠失、付加又は置換を含有し得る。
【0120】
発明のヌクレオチド配列は、種々の目標のために、融合タンパク質コード配列を変更するために、操作され得、遺伝子産物のプロセシング及び発現を改変する変更を含むが、それらに限定されない。例えば、制限部位を挿入又は除去するため、糖鎖付加パターン、リン酸化を変更するため、翻訳、開始、及び/もしくは終了配列を作成及び/もしくは破壊するため、又はコード領域に多様性をもたらすため、又はさらなるin vitro修飾を促進するため等、当技術分野において周知の技術を使用して、突然変異が導入され得る。当業者は、所定の核酸コンストラクトにおいて変更を作出する多くの方法を認識するであろう。そのような周知の方法としては、例えば、部位特異的突然変異誘発、縮重オリゴヌクレオチドを使用したPCR増幅、核酸を含有する細胞の、化学的突然変異誘発剤又は放射線への暴露、望ましいオリゴヌクレオチドの化学合成(例えば、大きな核酸を作出するために、ライゲーション及び/又はクローニングと組合わせて)並びに他の周知の技術が挙げられる。
【0121】
精製された融合タンパク質は、本発明のDNAの組換え翻訳産物を発現させるために適切な宿主/ベクター系を培養することによって、調製され得、組換え翻訳産物は次いで、培地又は細胞抽出物から精製される。例えば、培地中へと組換えポリペプチドを分泌する系からの上清は最初に、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニット等の、市販されているタンパク質濃縮フィルターを使用して濃縮され得る。濃縮工程後、濃縮物は、適切な精製マトリクスにアプライされ得る。親和性クロマトグラフィー又は逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)もまた、本発明の融合タンパク質を精製するために使用され得る。
【0122】
D.処方物
本発明の治療用融合タンパク質は、動物における特定の疾患の処置のための動物用組成物として投与され得、又はイヌを動物モデルとして、化合物の投薬及び効力を試験するために使用され得る。例えば組成物は、異常な利尿(diruretic)、イヌナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連し、かつ/又はナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するかもしくはレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患を含むが、それらに限定されない、NPRA受容体の活性化が、対象に治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法における使用のためである。そのような病的状態としては、上に詳しく説明されているような心血管系の障害が挙げられる。これらの状態としては、過剰の細胞外液によって特徴付けられ得る状態が挙げられ、慢性心不全(CHF)及び肺水腫が含まれるが、それらに限定されない。特に好ましい実施態様において、発明は、慢性心不全(非虚血性)、心筋梗塞後心不全(虚血性CHF)、急性心筋梗塞、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化、拡張期心不全、及び肥大型心筋症を含むが、それらに限定されない心血管系の病的状態の処置又は改善方法を含む。そのうえ、例えば、肺高血圧症、収縮期高血圧症、抵抗性高血圧症等の高血圧症を含むが、それらに限定されない高血圧性疾患、及び糖尿病性腎症等の他の心血管関連疾患も、本発明の方法によって処置又は改善され得る。本発明の融合タンパク質及び医薬組成物は、冠動脈バイパス手術を受けている対象に、治療効果を提供するために使用され得ることもまた、本明細書中に意図される。
【0123】
本発明に従った使用のための医薬組成物は、例えば、吸入もしくは吹送によって(口又は鼻のいずれかを通して)又は局所、経口、口腔、非経口もしくは直腸投与等の、種々の手段による投与のための1つ以上の生理学的に許容可能な担体又は添加剤を使用して、従来の様式で処方され得る。例えば、非経口としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内及び硬膜外投与が挙げられ得る。組成物は、例えば、注入又はボーラス注入によって、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜及び腸管粘膜等)を通した吸収によって、等の任意の都合のよい経路によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身性又は局所的であり得る。好ましい実施態様において、任意の適切な経路によって、発明の医薬組成物を患部組織中へと導入することが望ましいかもしれない。例えば、吸入器又は噴霧器の使用、及びエアロゾル投与剤を含む処方によって、肺投与もまた用いられ得る。
【0124】
医薬組成物はさらに、ビヒクル又は医薬的に許容可能な担体を含む担体、を含み得る。具体的な実施態様において、用語「医薬的に許容可能」は、動物における使用、より詳細にはヒトにおける使用、のために、連邦もしくは州政府の規制当局によって認可されているか又は米国薬局方もしくは他の一般的に認知された薬局方に収載されていることを意味する。用語「担体」は、医薬組成物が共に投与される、希釈剤、アジュバント、添加剤、又はビヒクルをいう。そのような医薬担体は、水及び油(ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、胡麻油等の、石油由来、動物由来、植物由来又は合成由来のものを含む)等の無菌の液体であり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合には、水が好ましい担体である。生理食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、特に注射可能な溶液の、液体担体として用いられ得る。適切な医薬添加剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。望ましい場合、組成物はまた、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有し得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性処方物等の形態を有し得る。組成物は、伝統的な結合剤及びトリグリセリド等の担体と共に、座剤として処方され得る。経口処方物としては、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体が挙げられ得る。適切な医薬担体の例は、参照することによりその全体が本明細書中に援用される、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。処方物は、投与方法に適しているべきである。
【0125】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑択剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等の医薬的に許容可能な添加剤と共に従来法によって調製された、錠剤又はカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当技術分野において周知の方法によって、コーティングされ得る。経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップもしくは懸濁剤の形態をとり得、又はそれらは、使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで構成されるための乾燥製品として与えられ得る。そのような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分別植物油);及び保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸)等の医薬的に許容可能な添加物と共に、従来法によって調製され得る。製剤はまた、必要に応じて、緩衝塩、香料、着色料及び甘味料を含有し得る。
【0126】
適正な場合、経口投与のための製剤は、活性化合物の制御放出を与えるように、適切に処方され得る。
【0127】
適正な場合、組成物は口腔投与のために、従来法で処方された錠剤又はロゼンジの形態をとり得る。
【0128】
別の実施態様において、本発明の融合タンパク質は、吸入もしくは吹送による投与(口又は鼻のいずれかを通して)用である。したがって、本発明による使用のための化合物は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切な気体等の適切な噴霧剤を使用して、加圧包装又は噴霧器からのエアロゾルスプレー体裁の形態で簡便に送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するための弁を提供することによって、決定され得る。例えば、吸入器又は注入器における使用のためのゼラチン、のカプセル剤及び薬包は、化合物の散剤混合物及びラクトース又はデンプンなどの適切な散剤の基剤を含有するよう処方され得る。
【0129】
特に好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、例えば、ボーラス注入又は連続注入等の注入による非経口投与のために処方され得る。そのうえ、本明細書中に意図されるように、本発明の融合タンパク質及び医薬組成物は、それを必要とする対象による自己注射のため(例えば、CHFの長期的治療)に適切であってもよい。注入のための処方物は、例えば、保存剤が添加されたアンプル中又は多用量容器中等の単位投薬形態で、与えられ得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液又はエマルジョン等のような形態をとり得、かつ懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化剤を含有し得る。
【0130】
あるいは、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、無菌の発熱因子を含まない水)による、使用前の構成のための散剤形態であり得る。例えば、凍結乾燥タンパク質組成物は、吸入され得るか、又は適切なビヒクル中で再構成され、次いで注入され得る。
【0131】
化合物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリド等の従来の座剤基剤を含有する、座剤又は保留浣腸剤(retention enemas)等の直腸用組成物中に処方され得る。
【0132】
遅効性処方物に類似した薬物動態を示し得る前記の処方物に加え、化合物はまた、実際の持効性製剤としても処方され得る。そのような長時間作用性の処方物は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、化合物は、適切な重合もしくは疎水性材料と共に(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に処方され得、又は、難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)処方され得る。
【0133】
望ましい場合、組成物は、活性成分を含有する1つ以上の単位投薬形態を含有し得る包装又は調合器装置中に与えられ得る。包装は例えば、ブリスター包装等のように、金属又はプラスチックホイルを含み得る。包装又は調合器装置は、投与のための説明書を伴い得る。
【0134】
発明における使用のために適切な医薬組成物としては、活性成分が、意図される目的を達成するのに有効な量で含有されている組成物が挙げられる。有効な用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、任意の化合物について、治療上有効な用量は、細胞培養アッセイ(例えば、新生細胞の)において、又は通常、マウス、ウサギ、イヌ、又はブタの動物モデルにおいてのいずれかで、初めに推定され得る。動物モデルはまた、適正な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも使用され得る。用量は、IC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて処方され得る。そのような情報は次いで、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定するために使用され得る。
【0135】
治療上有効な用量又は「有効量」は、無毒性であるが、望ましい治療効果を提供するために十分である活性成分の量をいう。例えば、ED50(母集団の50%において治療上有効である用量)及びLD50(母集団の50%に対して致死的である用量)等の治療効力及び毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬的手順によって決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、それは、LD50/ED50比として表わされ得る。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を公式化することにおいて使用される。そのような組成物中に含有される投薬量は好ましくは、ED50を含む循環濃度の範囲内であり、毒性がわずかであるか又は毒性が全くない。投薬量は、用いられる投薬形態、対象の感受性、及び投与経路に依存して、この範囲内で変動する。
【0136】
正確な投薬量は、処置を必要としている対象に関連する要素を踏まえて、医者によって決定されるであろう。投薬量及び投与は、十分なレベルの活性部分が提供されるよう、又は望ましい効果が保持されるよう、調節される。考慮され得る要素としては、疾患状態の重症度、対象の全体的な健康、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ、反応感受性、並びに療法に対する耐性/応答、が挙げられる。長期作用型の医薬組成物は、特定の処方物の半減期及びクリアランス速度によって、3〜4日ごと、毎週、又は2週に一度、投与され得る。
【0137】
通常の投薬量は、投薬経路に依存して、0.1〜100,000μg、最大で約1gの全量まで、異なり得る。特定の投薬量及び送達方法についての案内は、文献中に提供され、かつ当技術分野における医者に一般的に入手可能である。当業者は、タンパク質又はそれらの阻害剤とは異なる処方を、ヌクレオチドについて用いる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的であるだろう。タンパク質の経口投与に適切な医薬処方物は、例えば、米国特許第5,008,114号;同第5,505,962号;同第5,641,515号;同第5,681,811号;同第5,700,486号;同第5,766,633号;同第5,792,451号;同第5,853,748号;同第5,972,387号;同第5,976,569号;及び同第6,051,561号中に記載されている。
【0138】
本発明はさらに、任意の上記方法と共に使用されるキットを提供する。そのようなキットは典型的には、本明細書中に記載される方法を実施するために必要な2つ以上の構成要素を含む。構成要素は、化合物、試薬、容器及び/又は機器であり得る。例えば、キット内の1つの容器は、本発明の融合タンパク質を含む医薬組成物を含有し得る。1つ以上の追加の容器が、試薬もしくは緩衝剤、又は医薬組成物を投与する方法において使用されるべき機器等の要素を封入し得る。
【0139】
本発明の融合タンパク質及び医薬組成物は、単独で、又は本明細書中に記載される任意の病的状態を処置するために使用され得る他の化合物又は物質と組合わせて、投与され得ることが、本明細書中でまた意図される。本発明での併用療法において使用され得るそのような化合物又は処方物としては、例えば、利尿薬、ベータ遮断薬、及びAngII受容体遮断薬が挙げられる。
【0140】
本明細書中に記載される発明は、記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬が変動し得るために、これらの特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されないことが意図される。本明細書中に使用される用語法は、特定の実施態様を説明する目的のみのためであって、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図するものではないこともまた理解されるべきである。
【0141】
本明細書中に記載される方法及び材料と類似した又は等価である任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用され得るものの、好ましい方法、装置及び材料が、これより説明される。本明細書中に記載される全ての文献は、参照することによって明確に援用される。
E.実施例
【実施例1】
【0142】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質生産及び特徴付け:
イヌANP−Fc融合コンストラクトの作出:2つのDNAコンストラクト(配列番号1及び4)を、従来のオリゴヌクレオチド合成技術に従って合成し、ほ乳動物発現ベクターpcDNA3.1(ジーンアート社(Geneart))中へとサブクローニングする。各コンストラクトは、マウスIgGκ軽鎖シグナル配列、イヌANP28配列、リンカー配列とそれに続くイヌFcγ配列という同一の基本的な順番を含有する。利用したマウスIgGκ軽鎖シグナル配列は、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(受入番号AAA38778−配列番号7)である。イヌANP28配列は、NCBIデータベース由来であり、受入番号P07499(配列番号8)である。リンカー配列は、(GGS)6GGモチーフのグリシン及びセリン残基のリピートからなる、20アミノ酸のペプチドをコード化する。1つのコンストラクトにおいては、リンカーを、イヌIgG−A(受入番号AAL3530)のFc領域に連結し、一方で、2つ目のコンストラクトにおいては、リンカーを、イヌIgG−B(受入番号AAL35302)のFc領域に連結する。イヌIgG−A及びIgG−BアイソタイプのFc領域[Vet Immunol and lmmunopath(2001)80(3−4):259−270]が、イヌにおけるそれらの優位性並びにヒトIgG1及びIgG2に対するそれらのヒンジ構造の類似性のために、利用される。IgG−A及びIgG−Bアイソタイプの両方に対するFc融合物を、ヒンジ領域が2つのシステイン残基のみを含むように切断して(IgG−A FcではCTDTPPCP(配列番号18)であり、IgG−B FcではCPKCP(配列番号19)である)、ヒンジにおけるジスルフィド結合が2つのFcアイソタイプで類似することを保証するような方法で、作出する。各コンストラクトを、標準的なコドン表を使用して、ほ乳動物発現のためにコドン最適化した。
【0143】
イヌANP−Fc融合物のほ乳動物発現:全てのイヌANP−Fc融合コンストラクトの最初の発現は、1Lのスケールで一過性形質転換プロトコルを使用して、HEK293細胞系から行う。HEK293細胞を、FreeStyle 293培地中で生育させ、293Fectin試薬及び製造者(インビトロジェン)によって説明されるプロトコルを使用して、形質導入する。一過性形質転換細胞を、37℃で5%CO2にて90rpmで撹拌して、スピナーフラスコ中で生育させる。細胞を、細胞密度、生存率、及び直径、グルコースレベル、乳酸レベル、グルタミンレベル及びpHレベルについて、毎日モニタリングする。馴化培地を、形質導入後72〜96時間で、3600rpmで15分間の遠心分離によって回収し、新鮮な状態で精製にもっていく。発現レベルを、SDS−PAGE及びウエスタンブロット解析によって決定する。各コンストラクトについて、いったん発現レベルを決定したら、必要な場合、必要なタンパク質を生産するために安定なプールを作出する。安定なプールの作出は、フラスコ内で開始して、400μg/mlのG418で安定な細胞を選択し、次いでスピナー中へと移した。これらの条件下でいったん細胞が安定化したら、細胞を増殖させ、ウェーブバイオリアクターにおいて5−25Lのランを実行する。
【0144】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質の精製:全ての精製は、4℃にて、AKTAシステム(GEヘルスケア社)を使用して実施する。1リットルの馴化培地毎に、5ミリリットルのプロテアーゼ阻害剤カクテル(シグマ社)を添加する。カラムに、1リットルの馴化培地毎に3−4mLのProteinA Ceramic HyperD(登録商標)F樹脂(ポール社)を充填し、10CVの平衡化緩衝液(Mg/Caを含まない1×ダルベッコのPBS、pH7.3、インビトロジェン)で、1mL/分にて平衡化する。カラム上に馴化培地を、一晩、培地の容積に依存して、1−5mL/分にてロードする。次いで、洗浄緩衝液1(Mg/Caを含まないDPBS、pH7.3)、洗浄緩衝液2(Mg/Caを含まないDPBS pH7.3+1M NaCl)、次いで、再度の洗浄緩衝液1、の一連の10CVで樹脂を洗浄する。結合されたタンパク質を、10CVの溶出緩衝液(0.1Mグリシン/HCl、dH2O中pH2.5)で、2.5ml/分にて溶出する。3mLの画分を、300μL(画分の10%)の中和緩衝剤(1M Tris−HCl pH8.0、インビトロジェン)で直ちに中和する。イヌANP−Fc融合タンパク質含有画分をプールし、Sセファロース(GEヘルスケア社)陽イオン交換樹脂で充填されたカラムに直列で連結された、Qセファロース(GEヘルスケア社)陰イオン交換樹脂で充填されたカラム上にロードする(両カラムを、20mM クエン酸ナトリウム、pH6.0であらかじめ平衡化した)。ロード後、カラムを10CVの20mM クエン酸ナトリウム、pH6.0で洗浄した。次いで、Qカラムをシステムから切り離し、Sカラムを、最大で1M NaClまでの勾配で溶出した。イヌANP−Fc融合物含有画分を、Amicon Ultra−15 10kDa MWCO濃縮器(ミリポア社)を使用して、およそ3mg/mLまで濃縮した。アリコートを、液体窒素中で急速冷凍し、次いで−80℃にて保管する。最終産物を、生物学的機能のアッセイにかけられる前に、SDS−PAGE(非還元及び還元)、分析用超遠心及び質量分析解析によって特徴付ける。エンドトキシン混入物レベルを、EndoSafe PTSシステム(チャールス・リバー・ラボラトリーズ社)を使用して決定する。
【0145】
イヌANP−Fc融合コンストラクトを、1Lの一過性ほ乳動物発現を使用して、初めに生産する。発現産物を、3工程のプロセス(プロテインA、Q陰イオン交換、S陽イオン交換)を通して精製して、高品質のタンパク質を作出する。この一過性生産プロセスは、>90%純粋(SDS−PAGE)な、わずか〜1mg/LのANP−Fc(CaIgG−A)融合物と25−30mg/LのANP−Fc(CaIgG−B)融合物とをもたらす。増大するタンパク質の需要を満たすために、安定なプールを作出し、大規模なウェーブバイオリアクター生産を実行した。これらの安定なプールは、グラム量のイヌANP−Fc融合物の作出を可能とした。
【0146】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質の分析用超遠心:沈降速度実験を行って、精製されたイヌANP−Fc融合物の純度及び凝集物含量を評価する。イヌANP−Fc融合物を、10mM リン酸ナトリウム、150mM NaClを含有するpH7.3のリン酸緩衝食塩水緩衝液中で、遠心沈降によって評価する。試料を、ダブルセクターチャコール−エポンセンターピース(double−sector charcoal−epon centerpiece)及び石英窓を含有する遠心分離セル中へとロードする。Beckman XLI分析用超遠心機を、280nm、50,000rpmかつ20℃で使用して、データを収集する。自動Anton−Paar AMVn/SP3−V粘度計及びDMA4500/DMA5000濃度計を20℃で使用して、溶液の密度及び粘度を測定する。沈降データを、プログラムSEDFIT(v9.3b)を使用して解析する。
【0147】
組換えイヌANP−Fc融合物の質量分析解析:インタクトな分子量を測定し、酵素消化及びペプチドマッピングを介した部分配列の検証を実施し、かつイヌANP−Fc融合物の分解産物を同定するために、質量分析実験を行う。
【0148】
インタクトな分子量を評価するために、2μlの融合タンパク質を、Agilent Poroshellカラム(5um、1.0×75mm)上へ、100μl/分の流量で注入する。タンパク質を、6分間にわたる20%〜65%Aの勾配で溶出させる[移動相Aは、98/2/0.1(水/アセトニトリル/ギ酸)であり、移動相Bは95/5/0.1(アセトニトリル/水/ギ酸)である]。溶出物を、2秒間のスキャン時間で、600〜2500amuをスキャンしながら、Agilent 6210 LC/TOF質量分析計中へと流し込む。Agilent TOF Protein Confirmationソフトウェアを使用して、データをデコンボリューションし、分子量を得る。
【0149】
ペプチドマッピング及び分解解析のために、融合タンパク質をトリプシン又はEndo−LysC(8010−108)で消化する。簡潔には、25μlの各試料を変性させ、還元し、アルキル化する。トリプシン又はEndo−LysCを添加し、試料を、一晩、37℃の水浴中でインキュベートする。HPLC/FTMSを介して、解析を実施する。装置は、クロマトグラフ分離の間に、およそ50,000の分解能で、複数の走査を行う。各溶出ペプチドの質量は、0.0005%相対誤差の精度で、決定される。酵素特異性に基づいて予測されたペプチドは、理論値が実験的に決定された値の0.0005%以内である場合に、一致する。可能性のあるアミノ酸欠失に対応する質量を探すことによって、Endo−LysCデータもまたN末端切断について探索する。トリプシンとは異なり、Endo−LysC実験は、インタクトなアミノ末端領域の観察を可能とする。
【0150】
試験されている組換え生産されたイヌANP−Fc融合物の品質を保証するために、上記の特徴付けのためのプラットホームを実行した。イヌANP28は、イヌNPRA cGMPアッセイにおいて非常に強力(EC50〜1nM)であるため、質量分析手段を使用して、作出された全てのANP−Fc融合物ロットにおける「遊離」ANP量(インタクトな質量及びトリプシン消化物)をモニタリングすることが重要であった。これらの質量分析解析はまた、イヌANP28構造における機能性のために必要である数々の重要なアミノ酸及びジスルフィドがインタクトであることを発明者らが保証することを可能とした。主要な糖鎖付加構造(G0、G1、及びG2)をインタクト質量解析で同定した一方で、完全な糖鎖解析は、実施しなかった。質量分析Endo−LysC消化プロトコルもまた実行して、ANP−Fc融合ペプチドのN末端を評価した。>90%のインタクトなN末端を持つロットを、さらなる解析のために選択した。生産された全てのロットは、それらのC末端リジン残基が欠損していることが発見された。凝集のレベルを、分析用超遠心機における沈降速度実験によって試験し、ここで全てのロットが>85%の単量体を含有することを発見した。
【実施例2】
【0151】
in vitroでのNPRA細胞アッセイのための安定な細胞系の作出:
全長NPRA配列を含有するプラスミドを、オリジーン・テクノロジーズ社(OriGene Technologies, Inc.)(ロックビル、メリーランド州)から購入し、次いで、pcDNA3.1中へとサブクローニングする。各コンストラクトの挿入の配向及びヌクレオチド配列は、社外のベンダーによって検証される(シークライト(SeqWright)社)。pcDNA3.1−NPRAクローンを、リポフェクタミン(インビトロジェン)を使用して、HEK293細胞中へと形質導入し、ここで、G418を使用してNPRAを発現する安定な細胞系を選択する。下に記載されるナトリウム利尿ペプチド誘導cGMPアッセイを使用して、クローンをスクリーニングする[NPRAクローンは、ANP(シグマ社)で処置する]。cGMP高生産クローンを増殖させる。細胞系を、100μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、L−グルタミン、400μg/mlのG418、及び10%FBS(ハイクローン(Hyclone))を含有するDMEM中で生育させる。
【実施例3】
【0152】
ナトリウム利尿ペプチド融合タンパク質誘導cGMPアッセイ:
>95%のHPLC純度のナトリウム利尿ペプチドを、シグマ社から取得する。90%のコンフルエンスまで生育させたHEK293 NPRA細胞を、HANKSベースの細胞解離培地(GIBCO)を使用して回収する。細胞を洗浄し、事前に温めたダルベッコのPBS、pH7.4、25mM HEPES、0.1%BSA、500μM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)[アッセイ緩衝液]中で、3.3×105細胞毎mLに再懸濁する。アッセイを、オプチプレート96(Optiplate−96)白色不透明96ウェルマイクロプレート(パーキン・エルマー社)中で実施する。15μLの細胞懸濁液を、3連で、アッセイ緩衝液中15μLの2X融合タンパク質に添加し、20分間、37℃にてインキュベートする。cGMP濃度を、ヒットハンター(HitHunter)(登録商標)cGMPアッセイキット(ディスカバーエックス社)を使用して測定する。cGMP生産の用量応答曲線を、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズムを使用してXLfit4.2データ解析ソフトウェア(IDビジネスソリューションズ社)に適合させた4パラメータのロジスティック方程式で作成する。
【実施例4】
【0153】
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質
組換えイヌANP−Fc融合タンパク質を生産するために、ほ乳動物発現コンストラクトを作出する。これらの融合コンストラクトは、共通のシグナル配列、イヌANP28配列、リンカー配列、及びイヌIgG−A又はIgG−BのFc領域のいずれかを含むように設計する。これらの融合タンパク質は各々、切断して外され、最終産物上にはないN末端マウスIgGκ軽鎖シグナル配列(配列番号7)を含有する。グリシンは可動性を高め、一方でセリンは溶解性を高めるため、20アミノ酸のグリシン−セリンリンカーを利用する。イヌにおけるそれらの優位性並びにヒトIgG1及びIgG2に対するそれらのヒンジ構造の類似性のために、イヌIgG−A及びIgG−BアイソタイプのFc領域[Vet Immunol and lmmunopath(2001)80(3−4):259−270]を利用する。IgG−A及びIgG−Bアイソタイプの両方に対するFc融合物を、ヒンジ領域が2つのシステイン残基のみを含むよう切断し(IgG−A FcではCTDTPPCP(配列番号18)であり、IgG−B FcではCPKCP(配列番号19)である)、ヒンジにおけるジスルフィド結合が2つのFcアイソタイプで類似することを保証するような方法で、作出する。作出された組換えイヌANP−Fc融合物それぞれのDNA及びタンパク質配列(配列番号1〜6)を、図1に詳述する。イヌ融合タンパク質コンストラクトの発現は、pcDNA3.1ほ乳動物発現ベクターの強力なCMVプロモーターによって駆動される(図2)。
【0154】
組換えイヌANP−Fc融合物の作出のために、生産プラットホームを開発した。イヌANP−Fc融合コンストラクトを、1Lの一過性ほ乳動物発現を使用して、初めに生産する。発現産物を、3工程のプロセス(プロテインA、Q陰イオン交換、S陽イオン交換)を通して精製して、高品質のタンパク質を作出する。この一過性生産プロセスは、>90%純粋(SDS−PAGE)である、わずか〜1mg/LのANP−Fc(CaIgG−A)融合物と25−30mg/LのANP−Fc(CaIgG−B)融合物とをもたらす。増大するタンパク質の需要を満たすために、安定なプールを作出し、大規模なウェーブバイオリアクター生産を実行した。これらの安定なプールは、グラム量のイヌANP−Fc融合物の作出を可能とした。非還元型CaANP−Fc融合物の推定分子量は60.4kDa及び59.4kDa(それぞれ、IgG−A及びIgG−B Fc融合物)であり、一方で、還元型CaANP−Fc融合物の推定分子量は、30.2kDa及び29.7kDa(それぞれ、IgG−A及びIgG−B Fc融合物)である。
【0155】
試験されている組換え生産されたANP−Fc融合物の品質を保証するために、特徴付けのためのプラットホームを実行した。イヌANP28は、イヌNPRA cGMPアッセイにおいて非常に強力(EC50〜1nM)であるため、質量分析手段を使用して、作出された全てのANP−Fc融合物ロットにおける「遊離」ANP量(インタクトな質量及びトリプシン消化物)をモニタリングすることが重要であった。これらの質量分析解析はまた、イヌANP28構造における機能性のために必要である多くの重要なアミノ酸及びジスルフィドがインタクトであることを発明者らが保証することを可能とした。主要な糖鎖付加構造(G0、G1、及びG2)をインタクト質量解析で同定した一方で、完全な糖鎖解析は、実施しなかった。質量分析Endo−LysC消化プロトコルもまた実行して、ANP−Fc融合ペプチドのN末端を評価した。>90%のインタクトなN末端を持つロットを、さらなる解析のために選択した。生産された全てのロットは、それらのC末端リジン残基が欠損していることが発見された。凝集のレベルを、分析用超遠心機における沈降速度実験によって試験し、ここで全てのロットが>85%の単量体を含有することを発見した。
【0156】
全体的に、これらのプロセスは、in vitro及びin vivo解析のための、グラム量の組換えタンパク質の生産を可能とした。また、これらのランからの最終タンパク質は、少量の凝集物(<10%)を有し、低エンドトキシン(<1EU/ml)であり、インタクトであることが発見された。
【0157】
組換え生産されたイヌANP−Fc融合コンストラクトを、イヌNPRA cGMP誘導アッセイにおいて試験する(表1)。代表的なcGMPアッセイのデータセットを、図3に図示する。組換えイヌANP−Fc融合タンパク質で見られる効力におけるシフトは、曲線における右側へのシフトによって描出されている。イヌANP−Fc融合物は、試験されたロットによって、ANP28から10〜20倍の範囲にシフトされる効力を有する。
【0158】
【表1】
【0159】
ラットにおけるPK研究は、これらのタンパク質が、in vivoで増大した半減期を有したことを示した。
【実施例5】
【0160】
イヌにおけるイヌ融合タンパク質の予備的PKPD評価
イヌに、単一の静脈内用量(1mg/kg又は17nmol/kg)又は皮下用量(2.5mg/kg又は42nmol/kg)のANP−caFcを投与して、4〜7日間の期間にわたるPKPDを評価した。イヌにおいてCardeva(組換えヒト血清アルブミン−BNP融合タンパク質)を評価するのに用いられた用量範囲に類似していたために、これらの用量を選択した。図4は、この研究において達成された血漿ANP−caFcレベルの推定値を示す。イヌ血漿におけるANP−caFcを確かに検出するために使用したELISAの感度は、イヌ血漿において〜50nMの最小検出レベルを有することによって、制限されていた。血漿マトリックス効果を回避するためには、ビーグル犬を評価する場合に、最低でも1:50の希釈が必要であった。PBSにおけるアッセイの線形範囲は、100pMからおよそ100nMである。2%ビーグル血漿において、曲線の線形範囲は、1nMから約80又は90nMである。図4は、推定血漿レベルの推定値を提供するのみであり、表2は、ANP−caFcの薬物動態を示す。
【0161】
【表2】
【0162】
皮下投薬後の血漿cGMPは、投薬後>48時間で、ベースラインを超えて上昇しているようにみえた(図5)。
【実施例6】
【0163】
遠隔測定用イヌにおけるイヌ融合タンパク質の血行動態評価
イヌ心疾患モデルにおいて効力を実証するために使用され得るANP−caFc用量を同定するために、遠隔測定用の覚醒イヌにおける研究を実施した。用量選択のための判定基準は、用量が、ベースラインよりも下に、5−10mmHgを超えて平均動脈血圧を降下させることができず、かつそれが血漿cGMP濃度を、ベースラインより上に、およそ1.5X−2X上昇させるべきことであった。最初の判定基準は、望ましい臨床プロファイルを達成すること、すなわち、いくらかの心不全患者を潜在的に危険にさらすであろう動脈血圧の降下なしに効力が実証され得ること、に基づいて確立された。血漿cGMPにおける1.5X−2Xの上昇というのは、この規模の血漿cGMPの増加を生じさせた用量において好ましい心腎臓効果を実証した、イヌBNPを使用し、ペーシングされたイヌにおいて行われた研究を基にした(H−H Chenら.JACC 2000;36:1706−12)。研究番号1において、合計5匹のイヌに、改変ラテン方格法に基づいて、4週間の期間にわたり、ビヒクル、又はANP−caFcを0.5、1及び2.5mg/kgにて皮下投薬した。この用量範囲を選択したのは、単一用量のイヌ薬物動態研究に基づき、目標とする血漿cGMPの増加と重複することが期待されたためである。投薬の間隔は、7日間であった。研究の間の遠隔測定装置の故障のため、最終的なデータ解析から1匹の動物を除外した。ANP−caFcは、cGMPの血漿レベルのピークにおいて用量依存的な上昇を生じさせ(ビヒクル日価(vehicle day value)の値の3.7倍、3.5倍及び6.6、図6)、用量依存的な平均動脈血圧のピークの減少を生じさせ(MAP;ビヒクルに対し、−13±5、−19±4、及び−20±5mmHg−図7A及び7B)、かつ心拍数のピークは増加した(+30±10、+29±9、及び+25±9拍毎分−図8A及び8B)。
【0164】
全3つの用量のピーク効果の間、MAPが10mmHgを超えて減少したため、研究2は、類似の研究計画を使用して、同じ4匹のイヌにおいて、より低い用量で実施した(0.05及び0.25mg/kg)。研究番号2は、0.25mg/kgのANP−caFc投薬が、MAPの減少(ビヒクルに対して、−6.6±1.6mmH−図10)への閾値効果を及ぼし、心拍数の増加(20±9拍毎分−図11)への閾値効果を及ぼし、かつ血漿cGMPにおける中程度の増加(図9)への閾値効果を及ぼしたことを明らかにした。ANP−caFcの0.05mg/kgの投薬は、MAP(1.9±1.4mmHg)、HR(1.8±0.6拍毎分)、又は血漿cGMPに対する影響を有さなかった。(cGMP排出量測定のために尿試料もまた採取したが、しかしながら、試料は飲料水によって汚染され、使用することができなかった)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ペプチド又はタンパク質及びイヌ抗体Fcドメインを含む融合タンパク質であって、ここで前記治療用ペプチド又はタンパク質は、直接又はリンカーを通してFcドメインと連結されており、ここで前記Fcドメインは、イヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDからなる群から選択されるイヌIgGのヒンジ領域からなる群から選択される配列を有するヒンジ領域を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が以下の式を含む、請求項1に記載の融合タンパク質:
X−La−F:F−La−X又はX−La−F:F、であって、式中、
Xは、治療用ペプチド又はタンパク質であり;
Lは、a個のアミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;
「:」は、化学会合又は架橋であり;かつ
Fは、FcRn結合部位を含むイヌ免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分であり、かつイヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDから選択されるヒンジ領域を含む。
【請求項3】
前記ヒンジ領域が、CTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択される配列を含む、請求項1又は請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記治療用ペプチドが、ANP、BNP、ウロジラチン、DNP又は生物学的に活性なそれらの配列改変体からなる群から選択されるナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記治療用ペプチドが、ANP又はBNPである、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記融合タンパク質が、少なくとも2つの治療用ペプチドを含む、請求項1のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
両治療用ペプチドが同一である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
少なくとも1つのペプチドがナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
該ナトリウムペプチドが、配列番号8の配列を含む、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、少なくとも2つのFcドメインを含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記リンカーが、6アミノ酸長、11アミノ酸長、16アミノ酸長又は20アミノ酸長である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記リンカーが、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長又は20〜30アミノ酸長である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記リンカーが、コハク酸グリシン(glycine succinate)リンカー、アミノ酸リンカー又はそれらの組合せである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記アミノ酸リンカーが、GlyGly(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGly(L3)(配列番号13)、(GlyGlySer)3GlyGly(L4)(配列番号14)、(GlyGlySer)4GlyGly(配列番号15)、(GlySerGly)5Gly(L5a)(配列番号16)、(GlyGlySer)5Gly(L5)(配列番号17)、又は(GlyGlySer)6GlyGly(L6)(配列番号12)である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
CTDTPPCP;CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択されるヒンジ配列を含むイヌ抗体Fcドメインによって互いから分離されている少なくとも1つ以上の治療用ペプチドを含む融合タンパク質であって、該治療用ペプチドが、直接又はリンカーを通してFcドメインと結合体化されている、融合タンパク質。
【請求項16】
前記融合タンパク質が以下の式を含む、請求項15に記載の融合タンパク質:
X−La−F:F−La−Xであって、式中、
Xは、1つ以上の治療用ペプチド又はタンパク質であり;
Lは、アミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;
「:」は、化学会合又は架橋であり;かつ
Fは、FcRn結合部位を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。
【請求項17】
前記治療用ペプチドの少なくとも1つが、配列番号8の配列を有する、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
Xが1つより多くのナトリウム利尿ペプチドである、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
配列番号2、配列番号3;配列番号5又は配列番号6の配列を有する、単離された融合タンパク質。
【請求項20】
配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される配列を有するポリペプチドと少なくとも99%の配列同一性を示す、単離された融合タンパク質。
【請求項21】
配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子。
【請求項22】
配列番号1及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子。
【請求項23】
該融合タンパク質が、ほ乳動物発現系、原核生物発現系、酵母発現系、植物発現系、又はトランスジェニック発現系を用いることによって組換え生産される、請求項1、2、又は16のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
請求項1、2、又は16のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項25】
前記融合タンパク質が、静脈内、皮下又は経口投与に適合されている、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記融合タンパク質が、静脈内投与に適合されている、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
過剰レベルの細胞外液によって特徴付けられる状態の処置又は改善方法であって、前記方法が、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
NPRA受容体の活性化が治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項29】
異常な利尿(diruretic)、ナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項30】
ナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するか又はレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項31】
慢性心不全(非虚血性)、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化(cardiac fibrosis)、拡張期心不全、及び肥大型心筋症からなる群から選択される心血管系の病的状態の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
高血圧症、肺高血圧症、収縮期高血圧症及び抵抗性高血圧症からなる群から選択される高血圧性疾患の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項33】
糖尿病性腎症の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項1】
治療用ペプチド又はタンパク質及びイヌ抗体Fcドメインを含む融合タンパク質であって、ここで前記治療用ペプチド又はタンパク質は、直接又はリンカーを通してFcドメインと連結されており、ここで前記Fcドメインは、イヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDからなる群から選択されるイヌIgGのヒンジ領域からなる群から選択される配列を有するヒンジ領域を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が以下の式を含む、請求項1に記載の融合タンパク質:
X−La−F:F−La−X又はX−La−F:F、であって、式中、
Xは、治療用ペプチド又はタンパク質であり;
Lは、a個のアミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;
「:」は、化学会合又は架橋であり;かつ
Fは、FcRn結合部位を含むイヌ免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分であり、かつイヌIgGA、イヌIgGB、イヌIgGC及びイヌIgGDから選択されるヒンジ領域を含む。
【請求項3】
前記ヒンジ領域が、CTDTPPCP(配列番号18);CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択される配列を含む、請求項1又は請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記治療用ペプチドが、ANP、BNP、ウロジラチン、DNP又は生物学的に活性なそれらの配列改変体からなる群から選択されるナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記治療用ペプチドが、ANP又はBNPである、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記融合タンパク質が、少なくとも2つの治療用ペプチドを含む、請求項1のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
両治療用ペプチドが同一である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
少なくとも1つのペプチドがナトリウム利尿(natiuretic)ペプチドである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
該ナトリウムペプチドが、配列番号8の配列を含む、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、少なくとも2つのFcドメインを含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記リンカーが、6アミノ酸長、11アミノ酸長、16アミノ酸長又は20アミノ酸長である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記リンカーが、6〜11アミノ酸長、11〜16アミノ酸長、16〜20アミノ酸長、16〜25アミノ酸長又は20〜30アミノ酸長である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記リンカーが、コハク酸グリシン(glycine succinate)リンカー、アミノ酸リンカー又はそれらの組合せである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記アミノ酸リンカーが、GlyGly(L2)、Gly(SerGlyGly)2SerGly(L3)(配列番号13)、(GlyGlySer)3GlyGly(L4)(配列番号14)、(GlyGlySer)4GlyGly(配列番号15)、(GlySerGly)5Gly(L5a)(配列番号16)、(GlyGlySer)5Gly(L5)(配列番号17)、又は(GlyGlySer)6GlyGly(L6)(配列番号12)である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
CTDTPPCP;CPKCP(配列番号19);FNECRCTDTPPCP(配列番号20);PKRENGRVPRPPDCPKCP(配列番号21);AKECECKCNCNNCPCPGCGL(配列番号22);及びPKESTCKCISPCP(配列番号23)からなる群から選択されるヒンジ配列を含むイヌ抗体Fcドメインによって互いから分離されている少なくとも1つ以上の治療用ペプチドを含む融合タンパク質であって、該治療用ペプチドが、直接又はリンカーを通してFcドメインと結合体化されている、融合タンパク質。
【請求項16】
前記融合タンパク質が以下の式を含む、請求項15に記載の融合タンパク質:
X−La−F:F−La−Xであって、式中、
Xは、1つ以上の治療用ペプチド又はタンパク質であり;
Lは、アミノ酸残基を含むリンカーであり;aは少なくとも0である整数であり;
「:」は、化学会合又は架橋であり;かつ
Fは、FcRn結合部位を含む免疫グロブリンFcドメインの少なくとも一部分である。
【請求項17】
前記治療用ペプチドの少なくとも1つが、配列番号8の配列を有する、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
Xが1つより多くのナトリウム利尿ペプチドである、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
配列番号2、配列番号3;配列番号5又は配列番号6の配列を有する、単離された融合タンパク質。
【請求項20】
配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される配列を有するポリペプチドと少なくとも99%の配列同一性を示す、単離された融合タンパク質。
【請求項21】
配列番号2、配列番号3、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子。
【請求項22】
配列番号1及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する、単離された核酸分子。
【請求項23】
該融合タンパク質が、ほ乳動物発現系、原核生物発現系、酵母発現系、植物発現系、又はトランスジェニック発現系を用いることによって組換え生産される、請求項1、2、又は16のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
請求項1、2、又は16のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項25】
前記融合タンパク質が、静脈内、皮下又は経口投与に適合されている、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記融合タンパク質が、静脈内投与に適合されている、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
過剰レベルの細胞外液によって特徴付けられる状態の処置又は改善方法であって、前記方法が、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
NPRA受容体の活性化が治療効果を与える病的状態の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項29】
異常な利尿(diruretic)、ナトリウム利尿及び血管拡張作用に関連する疾患の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項30】
ナトリウム利尿(naturesis)、利尿、血管拡張を誘導するか又はレニン−アンギオテンシンII及びアルドステロン系を調節することが望ましい疾患の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項31】
慢性心不全(非虚血性)、再灌流障害、左心室機能不全(LVD)、心線維化(cardiac fibrosis)、拡張期心不全、及び肥大型心筋症からなる群から選択される心血管系の病的状態の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
高血圧症、肺高血圧症、収縮期高血圧症及び抵抗性高血圧症からなる群から選択される高血圧性疾患の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項33】
糖尿病性腎症の処置又は改善方法であって、請求項24に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2012−521784(P2012−521784A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503592(P2012−503592)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029151
【国際公開番号】WO2010/117760
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507291512)
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim International GmbH
【住所又は居所原語表記】Binger Strasse 173, 55216 Ingelheim, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029151
【国際公開番号】WO2010/117760
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507291512)
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim International GmbH
【住所又は居所原語表記】Binger Strasse 173, 55216 Ingelheim, Germany
【Fターム(参考)】
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