説明

イノシトール及びトレハロース誘導体、及びこれを含む退行性脳神経系疾患治療用医薬組成物

中心骨格分子にグアニジン基を多数導入することにより製造された本発明のイノシトール及びトレハロース誘導体は、優れた血液脳関門透過性を有し、結果として脳組織へ容易に伝達できるため、アルツハイマー病及びハンチントン病のような退行性脳神経系疾患の治療に効果的に活用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノシトール及びトレハロースの中心骨格に多数のグアニジン基を導入して製造され、優れた血液脳関門透過性を有するイノシトール及びトレハロース誘導体、及びこれを含む退行性脳神経系疾患治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、全世界的に約2,500万名の人々がアルツハイマー病で苦しんでおり、その数は5年毎に2倍ずつ増加すると予想される。アルツハイマー病患者の脳組織に関する研究で凝集タンパク質、特に老人斑と神経原繊維変化の存在が明かになり、これは変形されたベータアミロイドとタウペプチドによって形成されると報告されている(M.Goedert,M.G.Spillantini,Science,314:777−784(2006))。このような凝集ペプチドは細胞損傷及び細胞死滅を誘導して退行性脳神経系疾患を引き起こす。現在、使われている対症療法(symptomatic therapy)としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤とNMDA受容体の拮抗薬を用いた方法があるが、これら薬剤を用いて前記疾病を治療することはできない。
【0003】
いくつかのイノシトール立体異性質体が試験管内(in vitro)実験でベータアミロイドの凝集を阻害して、またアルツハイマー病のマウスモデルの実験でベータアミロイドの凝集を阻害してアルツハイマー病の病症を減少または緩和させることができると報告されている(J.McLaurin et al.,Nature Medicine,12:801−808(2006);J.McLaurin et al.,J.Biol.Chem.275:18495−18502(2000))。しかし、イノシトールは血液脳関門(BBB)を通過し難く、脳神経系に伝達される量も非常に微々たるものであると知られている(L.M.Lewin et al.,Biochem.Journal,156:375−380(1976);M.Uldry et al.,EMBO Journal,20:4467−4477(2000))。したがって、イノシトールをアルツハイマー病の治療に活用するためには、イノシトールのBBB透過性を増加させる方法を開発しなければならない。
【0004】
米国では約3万名が痴呆症を誘発する退行性脳神経系疾患であるハンチントン病を患っている。大多数のハンチントン病患者は、染色体4番のCAG(グルタミンコード)リピートに変異が起り、これは変形されたハンチンチンタンパク質を生成させるものと明らかになった(H.Y.Zoghbi,H.T.Orr,Annu.Rev.Neuroscie.,23:217−247(2000))。変形されたハンチンチンタンパク質は、脳の特定神経細胞でミトコンドリアの機能障害を誘導して神経細胞の死滅を引き起こすと報告されている。ハンチントン病に対する治療学的に有効な薬剤はまだ開発されていない。
【0005】
トレハロース(Trehalose)を用いると、試験管内マウスモデル試験でポリグルタミンによって誘導される凝集体の形成を効果的に阻害してハンチントン病の病症を緩和させると報告されている(M.Tanaka et al.,Nature Medicine,10:148−154(2004))。しかし、トレハロースはBBBを通過できず、脳に伝達されないと知られている(www.huntingtonproject.org/portals/0/trehalose)。したがって、トレハロースをハンチントン病に対する効果的な治療剤として用いるためには、トレハルロスのBBB通過を可能にする方法を開発しなければならない。
【0006】
したがって、本発明者はアルツハイマー病とハンチントン病それぞれに対する効果的な治療のために、BBBを通過して脳に伝達できるイノシトール及びトレハルロス誘導体を開発するために鋭意努力した。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の目的は、改善されたBBB透過性を有するイノシトール誘導体、トレハロース誘導体、及び単糖類誘導体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記イノシトール誘導体、トレハロース誘導体及び単糖類誘導体を含む、退行性脳神経系疾患治療用医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明の一実施態様によれば、式(1)のイノシトール誘導体またはその塩を提供する:
【化1】

【0010】
前記式中、Rは
【化2】

【0011】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキルまたは−COR’であり、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキルまたはヘテロアルキルである。
【0012】
本発明の他の一実施様態によれば、式(2)のイノシトール誘導体またはその塩を提供する:
【化3】

【0013】
前記式中、Rは
【化4】

【0014】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;
及びRは、それぞれ独立的に水素、アルキルまたは−COR’であるが、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキルまたはヘテロアルキルである。
【0015】
本発明の更なる他の実施様態によれば、式(3)のトレハルロス誘導体またはその塩を提供する:
【化5】

【0016】
前記式中、Rは
【化6】

【0017】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキルまたは−COR’であるが、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたは蛍光物質である。
【0018】
本発明の更なる他の実施様態によれば、式(4)の単糖類誘導体またはその塩を提供する:
【化7】

【0019】
前記式中、Rは
【化8】

【0020】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキルまたはヘテロアルキルであり;
は、水素、R、またはトリチルである。
【0021】
また、本発明の更なる他の実施様態によれば、前記式1〜4の化合物からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物を含む、退行性脳神経系疾患の治療用医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の前記、また他の目的及び特徴と共に、本発明による化合物のBBBを経た脳内への透過能を図示しており、これは、本発明に対する次の詳細な説明によって明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に記載の技術及び科学用語は特別な限定がない限り、関連技術分野において一般的に用いられる意味で使われる。また、本明細書で言及された文献は、全て本発明を説明するための文献であり、それらは本明細書の一部として含まれる。
【0024】
本発明で用いられた用語「アルキル」は、線型または分岐型のC1−12アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、及びオクチルを意味する。
【0025】
用語「アリール」は、単環芳香族基、または一つ以上の芳香族環を含む二環式基を意味し、用語「アリールアルキル」は1〜3個のアリール置換基を有するC1−3アルキルを意味しており、ベンジル及びトリチルを含むが、これらに限定されない。
【0026】
用語「シクロアルキル」は、C3−8の飽和された単環炭化水素基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、及びシクロヘキシルを含むが、これに限定されない。
【0027】
また、用語「ヘテロアルキル」は、一つ以上のヘテロ原子を含むC1−10アルキルを意味し、前記ヘテロ原子は酸素、硫黄、または窒素である。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明は、式(1)のイノシトール誘導体またはその塩を提供する:
【化9】

【0030】
前記式中、Rは
【化10】

【0031】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキル、または−COR’であり、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、またはヘテロアルキルである。
【0032】
前記式(1)の化合物は、scyllo−、myo−、epi−、chiro−、allo−、muco−、neo−、またはcis−イノシトール異性質体に該当する立体化学構造を有する。
【0033】
本発明は、また式(2)のイノシトール誘導体またはその塩を提供する:
【化11】

【0034】
前記式中、Rは
【化12】

【0035】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;
及びRはそれぞれ独立的に水素、アルキル、または−COR’であるが、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、またはヘテロアルキルである。
【0036】
前記式(2)の化合物は、scyllo−、myo−、epi−、またはchiro−イノシトール異性質体に該当する骨格構造を有する。
【0037】
本発明はまた式(3)のトレハロース誘導体またはその塩を提供する:
【化13】

【0038】
前記式中、Rは
【化14】

【0039】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;また
は、水素、R、アルキル、または−COR’であるが、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、または蛍光プローブである。
【0040】
本発明はまた式(4)の単糖類誘導体またはその塩を提供する:
【化15】

【0041】
前記式中、Rは
【化16】

【0042】
であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、またはヘテロアルキルであり;
は、水素、R、またはトリチルである。
【0043】
前記式(4)の化合物は、D−グルコース、D−マンノース、D−アロース、またはD−ガラクトースの骨格構造を有する。
【0044】
本発明による式(1)及び(2)のイノシトール誘導体は、1)保護基が導入されたイノシトール中間体のヒドロキシ基にアシル化反応(acylation)によってアミノ酸側鎖を導入して中間体化合物を得る段階;2)段階1)で得られた化合物のアミノ酸側鎖末端のアミノ基に保護されたグアニジン基を導入する段階;及び3)段階2)で得られた化合物のグアニジン基の保護基を除去して前記式(1)または(2)のイノシトール誘導体を得る段階を含む方法によって製造され得る。
【0045】
本発明による式(3)のトレハロース誘導体は、1)保護基が導入されたトレハロース中間体のヒドロキシ基にアシル化反応によってアミノ酸側鎖を導入して中間体化合物を得る段階;2)段階1)から得られた化合物のアミノ酸側鎖末端のアミノ基に保護されたグアニジン基を導入する段階;及び3)段階2)で得られた化合物のグアニジン基の保護基を除去して前記式(3)のトレハロース誘導体を得る段階を含む方法によって製造され得る。
【0046】
本発明による式(4)の単糖類誘導体は、1)保護基が導入された単糖類中間体のヒドロキシ基にアシル化反応によってアミノ酸側鎖を導入して中間体化合物が得られる段階;2)段階1)から得られた化合物のアミノ酸側鎖末端のアミノ基に保護されたグアニジン基を導入する段階;及び3)段階2)から得られた化合物のグアニジン基の保護基を除去して前記式(4)の単糖類誘導体を得る段階を含む方法によって製造され得る。
【0047】
具体的に、式(1)の化合物を製造するための中間体化合物は、myo−イノシトールの2−OH基が立体化学的に反転されたscyllo−イノシトール誘導体を出発物質として使用し、反応式(1)の過程に従って製造され得る。
【0048】
反応式(1)
【化17】

【0049】
前記式中、Bzはベンゾイルで、TBSはt−ブチルジメチルシリルであり、Cbzはカルボベンゾキシである。
【0050】
反応式(2)は、前記反応式(1)から得た中間体化合物から式(1)の化合物を製造する過程を例示したものである。
【0051】
反応式(2)
【化18】

【0052】
前記式中、Bocはブチルオキシカルボニルで、TFAはトリフルオロ酢酸であり、Cbz及びTBSは前記で定義した通りである。
【0053】
8個のグアニジン基を有するイノシトール誘導体の代表的な例である式(2)の化合物は、1−O−ベンゾイル−2、3、4、5−テトラベンジル−scyllo−イノシトール(大韓民国特許第578732号)から反応式(3)に示す過程によって製造され得る。
【0054】
反応式(3)
【化19】

【0055】
前記式中、Bnはベンジルで、Bz、Boc、Cbz、及びTFAは前記で定義した通りである。
【0056】
反応式(4)及び(5)はそれぞれトレハロースから式(3)の化合物を製造する過程を例示したものである。
【0057】
反応式(4)
【化20】

【0058】
前記式中、Boc及びTFAは前記で定義した通りである。
【0059】
反応式(5)
【化21】

【0060】
前記式中、Trはトリチルで、FITCはフルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)であり、Boc、Cbz、及びTFAは前記で定義した通りである。
【0061】
前記式(4)の化合物を製造するための核心中間体化合物は、D−グルコースを出発物質として使用し、反応式(6)に示す過程によって製造され得る。
【0062】
反応式(6)
【化22】

【0063】
前記式中、Bz及びCbzは前記で定義した通りである。
【0064】
反応式(7)は前記反応式(6)で得られた中間体化合物から式(4)の化合物を製造する過程を例示したものである。
【0065】
反応式(7)
【化23】

【0066】
前記式中、Cbz、Boc、及びTFAは前記で定義した通りである。
【0067】
本発明は前記式1〜4の化合物から選択されたいずれか一つの化合物、及び薬学的に許容される担体を含む退行性脳神経系疾患を治療するための医薬組成物を提供する。前記退行性脳神経系疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病、及び他の関連疾患を含むことができる。
【0068】
本発明による医薬組成物は、通常的に用いられる賦形剤、崩解剤、甘味剤、滑沢剤及び香味剤をさらに含むことができる。また、前記医薬組成物は通常的な方法により錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、乳化剤またはシロップ剤のような液剤、或いは非経口投与用製剤のような単回投与形態または数回投与形態の薬剤学的製剤に製型化され得る。
【0069】
また、本発明による医薬組成物は目的とするところによって非経口または経口投与されることができ、本発明の化合物の1日投与量は、大人体重1kg当たり0.01〜100mgであり、1回ないし数回に分けて投与することができる。特定患者に対する投与量は体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、及び疾患の重症度によって変わる。
【0070】
以下本発明を下記実施例により更に詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
製造例1:カルボベンゾキシ(Cbz)基によって保護されたリンカーを有するscyllo−イノシトールの製造
<1−1>アセトニド保護基の導入
【化24】

【0072】
1−O−ベンゾイル(Bz)−2、3、4、5、6−ペンタヒドロキシル−scyllo−イノシトール(大韓民国特許第578732号;9.96g、35.05mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(110ml)に溶解させた後、p-トルエンスルホン酸(3.33g)を滴下して混合物を得た。2−メトキシプロペン(33.5ml)を前記混合物に添加した後、室温で16時間攪拌した。
【0073】
反応終決後の混合物をエチルアセテートで抽出して、抽出物を飽和NaHCO水溶液と水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させてから減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:2)を用いて精製して中心骨格に2個のイソプロピリデン基が導入された表題化合物(6.03g)を白色の泡沫状(foamy)の固体として得た。
【0074】
H NMR(CDCl):δ 1.44−1.55(m,12H),3.67−3.95(m,4H),4.10−4.16(m,1H),5.43(dd,J = 7.9,10.4 Hz,1H,for 3a),5.60 (t,J = 9.2 Hz,1H,for 3b),7.42−7.49(m,2H),7.54−7.62 (m,1H),8.07−8.10(m,2H)。
【0075】
<1−2>t−ブチルジメチルシラン(TBS)保護基の導入
【化25】

【0076】
前記製造例<1−1>から得られた化合物(646mg、1.77mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(3ml)に溶解させて、0℃でイミダゾール(534mg,3.54mmol)とt−ブチルジメチルシリルクロライド(534mg,3.54mmol)を添加した。得られた混合物の温度を室温に上げて、10時間攪拌した。
【0077】
反応終決後の混合物をエチルアセテートで抽出して、抽出物を水と飽和NaHCO水溶液で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させてから減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:3)を用いて精製して白色の固体として表題化合物(750mg)を得た。
【0078】
H NMR(CDCl):δ 0.07,0.06(2s,6H,for 4a),0.14 (s,6H,for 4b),0.73(s,9H,for 4a),0.92(s,9H,for 4b),1.41−1.46(m,12H),3.60−4.10(m,5H),5.47−5.56(m,1H),7.41−7.46(m,2H),7.54−7.56(m,1H),8.00−8.09(m,2H)。
【0079】
<1−3>ベンゾイル(Bz)保護基の除去
【化26】

【0080】
前記製造例<1−2>から得られた化合物(700mg,1.46mmol)をメタノールとジクロロメタンの混合物(1:4)(2.5ml)に溶解させ、それにNaOMe溶液(134μl,0.58mmol,25wt%)を添加した後、得られた混合物を3時間還流させた。
【0081】
上記のように得られた混合物を室温に冷やし、ジクロロメタンで希釈した後、シリカゲルによって濾過し、濃縮した。この濃縮物をヘキサンとエチルアセテートの混合物(19:1)で洗浄して真空下で乾燥させて白色の固体として表題化合物(547mg)を得た。
【0082】
H NMR(CDCl): δ 0.07−0.13(m,6H),0.85−0.90(m,9H),1.40−1.46(m,12H),3.43−3.78(m,6H)。
【0083】
<1−4>カルボベンゾキシ(Cbz)基によって保護されたリンカーの導入
【化27】

【0084】
前記製造例<1−3>から得られた化合物(360mg,0.960mmol)、6−ベンゾイルオキシカルボニルアミノヘキサン酸(290mg,1.15mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(221mg、1.15mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(35mg,0.288mmol)をジクロロメタン(3ml)に溶解させた後、室温で24時間攪拌した。
【0085】
反応終決後の混合物をエチルアセテートで抽出し、この抽出物を飽和NaHCO水溶液と水で数回洗浄し、有機層をNaSO上で乾燥させて減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:3)を用いて精製して粘液相の表題化合物(485mg)を得た。
【0086】
H NMR(CDCl): δ 0.05(s,3H,for 6a),0.08(s,3H,for 6a),0.11(s,6H,for 6b),0.84 (s,9H,for 6a),0.90(s,9H,for 6b),1.37−1.53(m,16H),1.63−1.68(m,2H),2.32−2.39(m,2H),3.15−3.19(m,2H),3.50−3.62(m,2H),3.63−3.68(m,1H),3.71−3.79(m,1H),3.89(dd,J = 7.8,10.0 Hz,1H),4.81(brs,1H),5.08(s,2H),5.22(dd,J = 7.8,10.7 Hz,1H),7.30−7.36(m,5H)。
【0087】
<1−5>アセトニド保護基とt−ブチルジメチルシラン保護基の除去
【化28】

【0088】
前記製造例<1−4>から得られた化合物(310mg,0.5mmol)をジクロロメタンとメタノールの混合物(1:4,2ml)に溶解させた後、HClガスで飽和されたエチルアセテート溶液(1ml)を添加し、得られた混合物を室温で30分間攪拌した。
【0089】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して溶媒を完全に除去した後、ヘキサンとエーテルを用いて洗浄し、真空下で乾燥させて表題化合物(225mg)を白色の固体として得た。
【0090】
H NMR(DO): δ 1.33−1.37(m,2H),1.48−1.53(m,2H),1.62−1.67(m,2H),2.46(t,J = 7.1 Hz,2H),3.12(t,J = 6.0 Hz,2H),3.34−3.50(m,6H),5.12(s,2H),7.42−7.44(m,5H)。
【0091】
製造例2:ベンゾイル(Bz)基によって保護されたOH基およびカルボベンゾキシ(Cbz)基によって保護されたリンカーを有するscyllo−イノシトールの製造
<2−1>カルボベンゾキシ(Cbz)基によって保護されたリンカーの導入
【化29】

【0092】
1−O−ベンゾイル−2,3,4,5−テトラベンジル−scyllo−イノシトール(大韓民国特許第578732号;2.5g,3.88mmol)、6−ベンゾイルオキシカルボニルアミノヘキサン酸(1.5mg,5.65mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1.1mg,5.65mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(140mg,1.14mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解させた後、室温で24時間攪拌した。
【0093】
反応終決後の混合物をエチルアセテートで抽出し、抽出物を飽和NaHCO水溶液と水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させて減圧下で濃縮させた後、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:3)を用いて精製して白色の固体として表題化合物(3.38g)を得た。
【0094】
H NMR(CDCl): δ 0.91−1.29(m,6H),2.01(t,J=7.1Hz,2H),2.88(br.s,2H),3.66−3.70(m,4H),4.56−4.88(m,8H),5.08(s,2H),5.27−5.37(m,2H),7.03−7.53(m,28H),7.94(d,J=7.2Hz,2H)。
【0095】
<2−2>ベンジル(Bn)保護基とカルボベンゾキシ(Cbz)保護基の除去
【化30】

【0096】
前記製造例<2−1>から得られた化合物(3.38g,3.79mmol)をジクロロメタンとエタノールの混合物(1:1.5,50ml)に溶解させた後、Pd(OH)/C(20wt%)(1.7g)を添加した。得られた混合物を室温で、Hガス(4気圧)下で一日中撹拌した後、セライトにより濾過してPd(OH)/Cを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮して白色の粘つく固体として表題化合物(1.4g)を得た。
【0097】
H NMR(CDOD): δ 1.09−1.20(m,2H),1.37−1.50(m,4H),2.14−2.35(m,2H),2.67(t,J=7.7Hz,2H),3.38−3.45(m,2H),3.54−3.67(m,2H),5.12−5.25(m,2H),7.47−7.52(m,2H),7.61−7.63(m,1H),8.00−8.03(m,2H)。
【0098】
<2−3>カルボベンゾキシ(Cbz)保護基の再導入
【化31】

【0099】
前記製造例<2−2>から得られた化合物(1.3g,3.52mmol)を1,4−ジオキサンと水の混合物(1:1,20ml)に溶解させてトリエチルアミン(594μl,4.22mmol)を添加した後、カルボベンゾキシクロライド(Cbz−Cl)(980μl,7.04mmol)を0℃で30分間滴下した。得られた混合物を室温で12時間攪拌し、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物に水(20ml)を添加してエチルアセテートにより抽出した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させて、減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=12:1)を用いて精製して白色泡沫状(foamy)の固体として表題化合物(1.2g)を得た。
【0100】
H NMR(CDOD): δ 1.04−1.36(m,6H),2,14−2.23(m,2H),2.86−2.89(m,2H),3.38−3.41(m,2H),3.52−3.62(m,2H),5.05(s,2H),5.10−5.20(m,2H),7.35−7.57(m,8H),7.99−8.01(m,2H)。
【0101】
製造例3:二つの同じ隣接保護基を有するscyllo−イノシトールの製造
<3−1>ベンゾイル(Bz)保護基の導入
【化32】

【0102】
1−O−ベンゾイル−2,3,4,5−テトラベンジル−scyllo−イノシトール(大韓民国特許第578732号;150mg、0.233mmol)をピリジン(3ml)に溶解させた後、ベンゾイルクロライド(35μl,0.302mmol)を滴下し、得られた混合物を60℃で24時間攪拌した。
【0103】
反応終決後の混合物に水(5ml)を添加して30分間撹拌した後、エチルアセテートにより希釈し、抽出物をHCl(1M)、NaHCO及びNaSOで洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥させて減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:2)を用いて精製して白色の固体として二つのベンゾイル基を有する表題化合物(174mg)を得た。
【0104】
H NMR(CDCl):δ 3.8−3.82(m,4H),4.63−4.80(dd,4H),4.93(s,4H),5.55−5.57(m,2H),7.05−7.90(m,30H)。
【0105】
<3−2>ベンジル(Bn)保護基の除去
【化33】

【0106】
前記製造例<3−1>から得られた化合物(160mg,0.214mmol)をジクロロメタンとエタノールの混合物(1:2,12ml)に溶解させた後、Pd(OH)/C(20wt%、75mg)を添加した。得られた混合物を室温で、Hガス(4気圧)下で一日中撹拌した後、セライトにより濾過してPd(OH)/Cを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮させて白色の固体として表題化合物(94mg)を得た。
【0107】
H NMR(CDOD):δ 3.45−3.48(m,2H),3.68−3.74(m,2H),5.34−5.39(m,2H),7.33−7.90(m,10H)。
【0108】
製造例4:二つの同じ保護基を有するトレハロースの製造
<4−1>トリチル(Tr)保護基の導入
【化34】

【0109】
トレハロース水和物(2.2g,5.82mmol)とトリチルクロライド(7.7g,27.21mmol)を室温でピリジン(40ml)に溶解させた後、温度を60℃に徐々に高めながら5時間攪拌した。
【0110】
反応終決後の混合物をエチルアセテートで希釈し、抽出物を塩化水素酸水溶液(1N)と飽和NaHCO水溶液で洗浄した。以後、NaCl水溶液を滴下して懸濁液を作った。前記懸濁液をブフナー漏斗(Buchnerfunnel)で濾過した。得られた濾液をジエチルエーテルで洗浄し減圧下で乾燥させて白色の化合物(4.37g)を得た。
【0111】
m.p.275−276℃ (dec.)
H NMR(in MeOD,δ)3.37(app.t,6H,J=3.8 Hz),3.57(dd,2H,J=9.7 and 3.8 Hz),3.79(app.t,2H,J=9.3 Hz),4.02−4.09(m,2H),5.36(d,2H,J=3.8 Hz,anomeric protons),7.14−7.25(m,18H,trityl protons),7.41−7.52(m,12H,trityl protons)。
【0112】
製造例5:カルボベンゾキシ(Cbz)基によって保護されたリンカーを有するグルコース誘導体の製造
<5−1>ペンタ−O−ベンゾイル−D−グルコースの製造
【化35】

【0113】
D−グルコース(2.0g,11mmol)を無水ピリジン(24ml)に溶解させた後、酢酸無水物(8ml,67mmol)を添加し、得られた混合物を60〜65℃で3時間攪拌した。
【0114】
反応終決後の混合物をジクロロメタンで抽出し、抽出物を1NのHCl、飽和NaHCO水溶液及びNaCl水溶液で洗浄した。得られた生成物をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮し、メタノール/アセトン下で再結晶して白色の固体として表題化合物(5.7g)を得た。
【0115】
H NMR(CDCl): δ 4.40−4.46(m,1H,H−5),4.49(dd,J=12.23 Hz,4.70 Hz,1H,H−6b),4.65(dd,J=12.31 Hz,2.82 Hz,1H,H−6a),5.82−5.91(m,2H,H−2,H−4),6.07(t,J=9.4 Hz,1H,H−3),6.31(d,J=7.99 Hz,1H,H−1),7.24−8.05(m,25H,arom)。
【0116】
<5−2>2,3,4,6−テトラ−O−ベンゾイル−D−グルコースの製造
【化36】

【0117】
前記製造例<5−1>から得られた化合物(2.0g,2.8mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解させた後、0℃で臭化水素酸を入れて得られた混合物を室温で7時間攪拌した。
【0118】
氷水を用いて反応を終決させた後、反応混合物をジクロロメタンで抽出して抽出物を飽和NaHCO水溶液及びNaCl水溶液で洗浄した。得られた生成物をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮させた。得られた濃縮物をアセトン/水(6ml/0.3ml)に溶解させた。AgCOを入れた後、得られた混合物を室温で3時間攪拌した。
【0119】
反応終決後の混合物をセライトにより濾過してAgCOを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮させて白色の粘つく固体として表題化合物(1.7g)を得た。
【0120】
H NMR(CDCl): δ 4.16−4.20(m,1H,H−5),4.46(dd,J=12.24 Hz,4.99 Hz,1H,H−6b),4.61(dd,J=12.16 Hz,2.91 Hz,1H,H−6a),5.05(d,J=7.93 Hz,1H,H−1),5.32(t,J=8.0 Hz,1H,H−2),5.67(t,J=9.7 Hz,1H,H−4),5.93(t,J=9.7 Hz,1H,H−3),7.24−8.03(m,20H,arom)。
【0121】
<5−3>2,3,4,6−テトラ−O−ベンゾイル−−D−グルコースアセトイミデートの製造
【化37】

【0122】
前記製造例<5−2>から得られた化合物(1.5g,2.6mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解させた。0℃で1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデス−7−エン(DBU)(20μl,0.13mmol)とトリクロロアセトニトリル(2.6ml,26.1mmol)を添加して、結果の混合物を4時間攪拌した。
【0123】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮させた後、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:3)を用いて精製して白色の固体として表題化合物(1.2g)を得た。
【0124】
H NMR(CDCl): δ 4.46(dd,J=12.9 Hz,5.4 Hz,1H,H−6b),4.16−4.20(m,2H,H−5,H−6a),5.60(dd,J=10.2 Hz,3.7 Hz,1H,H−2),5.83(t,J=9.8 Hz,1H,H−4),6.28(t,J=10.0 Hz,1H,H−3),6.84(d,J=3.7 Hz,1H,H−1),5.93(t,J=9.7 Hz,1H,H−3),7.26−8.05(m,20H,arom),8.64(s,1H,NH)。
【0125】
<5−4>1−O−(N−カルボベンゾキシ6−アミノペンチル)−2,3,4,6−テトラ−O−ベンゾイル−D−グルコピラノシドの製造
【化38】

【0126】
N−カルボベンゾキシ−6−アミノペンタノール(0.32g,1.35mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.25ml,1.35mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解させた後、0℃に冷却した。この溶液に、前記製造例<5−3>から得られた化合物(1g,1.4mmol)をジクロロメタン(25ml)に溶解させて製造した溶液を添加し、得られた混合物を2時間攪拌した。
【0127】
反応終決後の混合物をセライトにより濾過した。得られた濾液を飽和NaHCO水溶液及びNaCl水溶液で洗浄した。得られた生成物をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮してカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:2)を用いて精製して粘つく透明なオイル相の表題化合物(0.8g)を得た。
【0128】
H NMR(CDCl): δ 1.20−1.54(m,6H),2.93−2.95(d,J=6.1 Hz,2H),3.51−3.54(m,1H),3.88−3.95(m,1H),4.10−4.17(m,1H,H−5),4.47(dd,J=12.2 Hz,5.0 Hz,1H,H−6b),4.63(d,J=11.9 Hz,2H,H−6b,NH),4.81(d,J=7.7 Hz,1H,H−1),5.08(s,1H,benzyl),5.52(t,J=9.4 Hz,1H,H−2),5.68(t,J=9.7 Hz,1H,H−4),5.91(t,J=9.6 Hz,1H,H−3),7.26−8.03(m,25H,arom)。
【0129】
<5−5>1−O−(N−カルボベンゾキシ−6−アミノペンチル)−D−グルコピラノースの製造
【化39】

【0130】
前記製造例<5−4>から得られた化合物(0.8g,1.0mmol)をメタノール(30ml)に溶解させた後、メタノール中のナトリウムメトキシド溶液(30μl,0.1mmol)を入れて、得られた混合物を70℃で3時間攪拌した。
【0131】
反応終決後の混合物を酸性の陽イオン交換樹脂(Dowex50WX8−100)で中和させ、減圧下で濃縮させて無色の粘つく固体として表題化合物(369mg)を得た。
【0132】
H−NMR(CDOD): δ 1.35−1.58(m,6H),3.03−3.27(m,J=6.1 Hz 5H),3.44−3.49(m,1H),3.59−3.64(m,1H),3.80−3.85(m,3H),4.18(d,J=7.7 Hz,1H),5.00(s,1H,benzyl),5.52(t,J=9.4 Hz,1H,H−2),5.68(t,J=9.7 Hz,1H,H−4),5.91(t,J=9.6 Hz,1H,H−3),7.29(brs,5H,arom)。
【0133】
実施例1:10個のグアニジン基を有するscyllo−イノシトール誘導体の製造
<1−1>アシル化によるscyllo−イノシトールに測鎖の導入
【化40】

【0134】
前記製造例<1−5>から得られた5個のOH基を有する化合物(34mg,0.079mmol)、二つのグアニジン基を有する分岐型リンカー(大韓民国特許第699279号;464mg,0.636mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(151mg,0.79mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(24mg,0.2mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解させた後、室温で2日間攪拌した。
【0135】
反応終決後の混合物を水とNaHCO水溶液で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させて減圧下で濃縮させた後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製して粘つく固体として、5個のアシル測鎖を有する表題化合物(228mg)を得た。
【0136】
H NMR(CDCl): δ 1.25−1.69(m,236H),2.16−2.25(m,12H),2.30−2.46(m,30H),3.14(m,2H),3.43−3.44(m,18H),5.07(s,2H),5.23(s,6H),7.33(m,5H),8.50(m,10H),11.49(s,10H)。
【0137】
<1−2>リンカーの末端アミン基からカルボベンゾキシ(Cbz)保護基の除去
【化41】

【0138】
前記実施例<1−1>から得られた化合物(100mg,0.025mmol)をメタノールとジクロロメタンの混合物(9:1)(3ml)に溶解させた後、Pd/C(10wt%、50mg)を添加した。得られた混合物を室温で、Hガス(1気圧)下で一日中攪拌し、セライトにより濾過してPd/Cを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮させて白色の粘つく固体として表題化合物(95mg)を得た。
【0139】
H NMR(CDCl): δ 1.21−2.24(m,248H),2.88−3.70(m,50H),5.23−5.27(m,6H),8.47(s,10H),11.43(m,10H)。
【0140】
<1−3>蛍光プローブ(FITC)の導入
【化42】

【0141】
前記実施例<1−2>から得られた化合物(85mg,0.022mmol)をテトラヒドロフランとエタノールの混合物(3:2)(0.675ml)に溶解させた後、フルオレセイン−5−イソシアネート(10.3mg,0.026mmol)とトリエチルアミン(9.1μl,0.067mmol)を添加して、得られた混合物を室温で一日中攪拌した。
【0142】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮してカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製してダークイエローの粘つく表題化合物(100mg)を得た。
【0143】
H NMR(CDCl): δ 1.14−1.89(m,236H),2.14−3.05(m,42H),3.39−3.42(m,20H),5.22(s,6H),6.58−6.94(m,6H),7.80−8.05(m,3H),8.45(s,10H),11.38(s,10H)。
【0144】
<1−4>N,N’−ジ−ブチルオキシカルボニル(Boc)−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化43】

【0145】
前記実施例<1−3>から得られた化合物(100mg)をエチルアセテート(1ml)に溶解させた後、HClガスで飽和したエチルアセテート(2ml)を滴下し、室温で一日中攪拌した。
【0146】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮させて溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した。MPLCクロマトグラフィー(トリフルオロ酢酸0.1%が含有された水:アセトニトリル=1:1〜1:2)を用いて精製してライトグリーンの化合物(35mg)を得た。
【0147】
H NMR(CDOD): δ 1.28−2.40(m,72H),3.30−3.42(m,48 H),5.48(s,6H),7.14−8.56(m,9H)。
【0148】
実施例2:5個のグアニジン基を有するscyllo−イノシトール誘導体の製造
<2−1>アシル化によるscyllo−イノシトールに測鎖の導入
【化44】

【0149】
前記製造例<1−5>から得られた5個のOH基を有する化合物(85.8mg,0.2mmol)、一つのグアニジン基を有する線型リンカー(600mg,1.6mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(383.42mg,2mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(61mg,0.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解させた後、室温で2日間攪拌した。
【0150】
反応終決後の混合物を水とNaHCO水溶液で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製して5個のアシル測鎖を有する粘つく固体として表題化合物(402mg)を得た。
【0151】
H NMR(CDCl,500 MHz): δ 1.28−1.38(m,12H),1.47−1.62(m,114H),2.22−2.42(m,12H),3.18−3.21(m,2H),3.37−3.43(m,10H),5.10(s,2H),5.11−5.13(m,1H),5.25(s,5H),7.29−7.36(m,5H),8.29−8.32(t,J=5.0 Hz,5H),11.51(s,5H)。
【0152】
<2−2>リンカー末端のアミン基からカルボベンゾキシ(Cbz)保護基の除去
【化45】

【0153】
前記実施例<2−1>から得られた化合物(100mg,0.025mmol)をメタノールとジクロロメタンの混合物(9:1)(3ml)に溶解させた後、Pd/C(10wt%,50mg)を添加した。得られた混合物を室温で、Hガス(1気圧)下で一日中撹拌した後、セライトにより濾過してPd/Cを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮させて白色の粘つく固体として表題化合物(87mg)を得た。
【0154】
H NMR(CDCl): δ 1.25−1.56(m,126H),2.21(t,J = 6.8 Hz,12H),2.92−2.99(m,2H),3.36−3.48(m,10H),5.23(s,6H),8.29−8.36(m,5H),11.5(m,5H)。
【0155】
<2−3>蛍光プローブ(FITC)の導入
【化46】

【0156】
前記実施例<2−2>から得られた化合物(85mg,0.04mmol)をテトラヒドロフランとエタノールの混合物(3:2)(0.675ml)に溶解させた後、フルオレセイン−5−イソシアネート(19.1mg,0.049mmol)とトリエチルアミン(17.1μl,0.123mmol)を添加して室温で一日中攪拌した。
【0157】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製してダークイエローの粘つく表題化合物(104mg)を得た。
【0158】
H NMR(CDCl): δ 1.23−1.49(m,126H),2.11−2.25(m,12H),3.05−3.75(m,12H),5.24(s,6H),6.55−7.11(m,6H),7.95−8.17(m,3H),8.35−8.41(m,5H),11.5(m,5H)。
【0159】
<2−4>N,N’−ジ−ブチルオキシカルボニル(Boc)−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化47】

【0160】
前記実施例<2−3>から得られた化合物(104mg)をエチルアセテート(1ml)に溶解させた後、HClガスで飽和したエチルアセテート(2ml)を滴下し、得られた混合物を室温で一日中攪拌した。
【0161】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した。その後、MPLCクロマトグラフィー(トリフルオロ酢酸0.1%が含有された水:アセトニトリル=1:1〜1:2)を用いて精製してライトグリーンの化合物(42mg)を得た。
【0162】
H NMR(CDOD): δ 1.23−1.38(m,12H),1.58−1.72(m,24H),2.23−2.32(m,12H),3.06−3.15(m,10H),3.61(m,1H),3.94(m,1H),5.43(s,6H),6.54−6.74(m,6H),7.15−7.18(m,1H),7.70−7.73(m,1H),8.01−8.25(m,1H)。
【0163】
実施例3:8個のグアニジン基とFITCを有するscyllo−イノシトール誘導体の製造
<3−1>アシル化によるscyllo−イノシトールに測鎖の導入
【化48】

【0164】
前記製造例<2−3>から得られた化合物(300mg,0.59mmol)、二つのグアニジン基を有する分岐型リンカー(大韓民国特許第699279号;2.61g,3.57mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(684mg,3.57mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(87mg,0.71mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(3ml)に溶解させた後、室温で3日間攪拌した。
【0165】
反応終決後の混合物を水とNaHCO水溶液で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製して粘つく固体として表題化合物(1.85g)を得た。
【0166】
H NMR(CDCl): δ 0.91−1.69(m,190H),2.10−2.46(m,32H),2.90−2.95(m,4H),3.38−4.22(m,16H),4.88−5.51(m,6H),5.07(s,2H),7.30−7.36(m,5H),7.39−7.45(m,2H),7.54−7.60(m,1H),7.91−7.95(m,2H),8.49(brs,8H),11.49(brs,8H)。
【0167】
<3−2>リンカー末端のアミン基からカルボベンゾキシ(Cbz)保護基の除去
【化49】

【0168】
前記実施例<3−1>から得られた化合物(1g,0.296mmol)をメタノールとジクロロメタンの混合物(9:1)(25ml)に溶解させた後、Pd/C(10wt%,500mg)を添加した。得られた混合物を室温で、Hガス(4気圧)下で一日中攪拌し、セライトにより濾過してPd/Cを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮して白色の粘つく固体として表題化合物(960mg)を得た。
【0169】
H NMR(CDCl): δ 1.06−2.26(m,202H),2.88−3.70(m,40H),5.31−5.56(m,6H),7.45−7.50(m,2H),7.61−7.64(m,1H),7.93−7.95(m,2H),8.47(s,8H),11.43(m,8H)。
【0170】
<3−3>蛍光プローブ(FITC)の導入
【化50】

【0171】
前記実施例<3−2>から得られた化合物(879mg,0.27mmol)をテトラヒドロフランとエタノールの混合物(3:1)(5ml)に溶解させた後、フルオレセイン−5−イソシアネート(127mg,0.325mmol)とトリエチルアミン(113μl,0.81mmol)を添加した後、得られた混合物を室温で一日中攪拌した。
【0172】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮してカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製してダークイエローの粘つく化合物(888mg)を得た。
【0173】
H NMR(CDCl): δ 1.02−2.88(m,226H),3.32−3.51(m,16H),3.62−4.12(m,2H),5.05−5.61(m,6H),6.56−7.90(m,14H),8.50(brs,8H),11.44(brs,8H)。
【0174】
<3−4>N,N’−ジ−ブチルオキシカルボニル(Boc)−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化51】

【0175】
前記実施例<3−3>から得られた化合物(888mg)にHClガスで飽和したエチルアセテート(10ml)を滴下した後、得られた溶液を室温で一日中攪拌した。
【0176】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮させて、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した。その後、MPLCクロマトグラフィー(トリフルオロ酢酸0.1%が含有された水:アセトニトリル=1:1〜1:2)を用いて精製してライトグリーンの化合物(412mg)を得た。
【0177】
H NMR(CDOD): δ 1.15−2.38(m,80H),2.88−3.66(m,16H),5.56−5.72(m,6H),7.20−7.70(m,10H),7.91−8.59(m,4H)。
【0178】
実施例4:8個のグアニジン基を有するscyllo−イノシトール誘導体の製造
<4−1>アシル化によるscyllo−イノシトールに測鎖の導入
【化52】

【0179】
前記製造例<3−2>から得られた化合物(30mg,0.0772mmol)、二つのグアニジン基を有する分岐型リンカー(大韓民国特許第699279号;451mg,0.618mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(133mg,0.695mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(19mg,0.154mmol)をジクロロメタン(3ml)に溶解した後、室温で3日間攪拌した。
【0180】
反応終決後の混合物を水とNaHCO水溶液で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製して4個のアシル測鎖を有する粘つく固体として表題化合物(180mg)を得た。
【0181】
H NMR(CDCl): δ 1.33−1.69(m,184H),2.11−2.13(m,8H),2.22−2.47(m,24H),3.41−3.44(m,16H),5.37−5.39(m,2H),5.47−5.52(m,2H),5.64−5.66(m,2H),7.33−7.36(m,4H),7.47−7.52(m,2H),7.83−7.84(m,4H),8.24−8.46(m,8H),11.47(brs,8H);
MS(MALDI−TOF): m/z 3233.606(M)。
【0182】
<4−2>N,N’−ジ−ブチルオキシカルボニル(Boc)−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化53】

【0183】
前記実施例<4−1>から得られた化合物(80mg,0.0247mmol)をエチルアセテート(1ml)に溶解させた後、HClガスで飽和したエチルアセテート(2ml)を滴下し、得られた混合物を室温で一日中攪拌した。
【0184】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した。その後、MPLCクロマトグラフィー(トリフルオロ酢酸0.1%が含有された水:アセトニトリル=70:30)を用いて精製してライトグリーンの化合物(45mg)を得た。
【0185】
H NMR(CDOD): δ 1.25−2.45(m,48H),3.07−3.49(m,40H),5.70−5.72(m,2H),5.80−5.87(m,2H),5.96−5.98(m,2H),7.49(t,4H,J=4.5Hz),7.65(t,2H,J=4.35Hz),7.92(d,4H,J=4.5Hz);
MS(MALDI−TOF): m/z 1633.085(M)。
【0186】
実施例5:6個のグアニジン基とFITCを有するトレハロース誘導体の製造
<5−1>アシル化によるトレハロースに測鎖の導入
【化54】

【0187】
前記製造例<4−1>から得られた化合物(2.19g,2.65mmol)、N−ブチルオキシカルボニル(Boc)−6−アミノヘキサン酸(5.52g,23.87mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(4.58g,23.86mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(0.97g,7.96mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(60ml)に溶解させた後、室温で48時間攪拌した。
【0188】
反応終決後の混合物をトルエンとともに60℃で共沸蒸留して塩化リチウム水溶液(5%)で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出して、抽出物を飽和したNaHCO水溶液で洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:1)を用いて精製してイエローの液相の表題化合物(3.05g)を得た。
【0189】
H NMR(CDCl)δ 1.08−1.75(m,90H,CH and NCHCHCHCH),1.85−2.30(m,12H,CO−CH),2.97−3.03(m,4H),3.05−3.14(m,12H,NCH),4.08−4.16(m,2H),4.73−4.89(m,6H,NH),5.10(app. t,2H,J=10.1 Hz),5.23(dd,2H,J=10.2 and 3.8 Hz),5.43−5.50(m,4H),7.20−7.42(m,30H,trityl protons)。
【0190】
<5−2>測鎖末端のアミノ基からN−Boc保護基の除去
【化55】

【0191】
前記実施例<5−1>から得られた化合物(625mg,0.30μmol)をHClガスで飽和したエチルアセテート(17ml)に溶解させた後、室温で2日間攪拌した。
【0192】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮させて溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去し、白色の粘つく化合物(368mg)を得た。
【0193】
H NMR(MeOD)δ 1.39−1.72(m,36H,NCHCHCHCH),2.29−2.49(m,12H,CO−CH),2.91−3.11(m,12H,NCH),3.56−3.69(m,3H),3.80−3.95(m,2H),4.16−4.42(m,2H),4.90−5.10(m,3H),5.24−5.54(m,4H)。
【0194】
<5−3>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化56】

【0195】
前記実施例<5−2>から得られた化合物(358mg,0.29mmol)を1,4−ジオキサンと水の混合物(5:1,5ml)に溶解させてトリエチルアミン(0.8ml,4.22mmol)とN,N−ジ−Boc−N’−トリフルオロメタンスルホニルグアニジン(1.63g,4.16mmol)を滴下した後、前記混合物を室温で3日間攪拌した。
【0196】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮してエチルアセテートで希釈した後、抽出物を水と飽和NaCl水溶液で洗浄した。得られた生成物をNaSOで乾燥させて減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=2:3)を用いて精製して白色の固体として表題化合物(564mg)を得た。
【0197】
H NMR(CDCl)δ 1.36−1.75(m,144H,CH and NCHCHCHCH),2.25−2.38(m,12H,CO−CH),3.30−3.45(m,12H,NCH),3.62−3.70(m,4H),4.25(dd,2H,J=11.8 and 5.0 Hz),4.38−4.44(m,2H),4.88(dd,2H,J=10.1 and 3.7 Hz),5.31(d,2H,J=3.7 Hz,anomeric protons),5.39(app. t,2H,J=9.9 Hz),8.31(br s,6H),11.49(br s,6H)。
【0198】
<5−4>カルボベンゾキシ(Cbz)基によって保護されたリンカーの導入
【化57】

【0199】
前記実施例<5−3>から得られた化合物(397mg,0.16mmol)、6−ベンジルオキシカルボニルアミノヘキサン酸(512mg,1.92mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(370mg,1.93mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(47mg,0.38mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解させた後、室温で48時間攪拌した。
【0200】
反応終決後の混合物を塩化リチウム水溶液(5%)で希釈した後、エチルアセテートで3回抽出した。得られた生成物をNaSOで乾燥させて減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1)を用いて精製して無色の粘つく化合物(313mg)を得た。
【0201】
H NMR(CDCl)δ 1.23−1.73(m,156H,CH and NCHCHCHCH),2.21−2.39(m,16H,CO−CH),3.10−3.24(m,4H,CHNH−CO),3.35−3.45(m,12H,CHNHCN),3.90−4.05(m,4H),4.17−4.29(m,2H),4.97−5.18(m,8H),5.24−5.37(m,4H),5.47(app. t,2H,J=9.7 Hz),7.28−7.39(m,10H,benzene protons),8.30(br s,6H),11.50(br s,6H)。
【0202】
<5−5>リンカー末端のアミン基からカルボベンゾキシ(Cbz)保護基の除去
【化58】

【0203】
前記実施例<5−4>から得られた化合物(159mg,54μmol)をメタノールとジクロロメタンの混合物(9:1)(19ml)に溶解させてPd/C(10wt%,120mg)を添加した。得られた混合物を室温で、Hガス(50psi)下で16時間攪拌し、セライトにより濾過してPd/Cを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、白色の粘つく固体化合物(130mg)を得た。
【0204】
H NMR(MeOD)δ 1.39−1.78(m,156H,CH and NCHCHCHCH),2.25−2.45(m,16H,CO−CH),2.85−2.99(m,4H,CHNH),3.32−3.39(m,12H,CHNH),3.94−4.11(m,2H),4.09−4.28(m,4H),5.05−5.14(m,4H),5.36(d,2H,J=3.6 Hz,anomeric protons),5.53(app.t,2H,J=9.7 Hz)。
【0205】
<5−6>蛍光プローブ(FITC)の導入
【化59】

【0206】
前記実施例<5−5>から得られた化合物(129mg,47.83μmol)をテトラヒドロフラン、エタノール及びメタノールの混合物(6:4:1)(4ml)に溶解させてフルオレセイン−5−イソシアネート(55mg,0.13mmol)とトリエチルアミン(65μl,0.34mmol)を添加した後、得られた混合物を室温で一日中攪拌した。
【0207】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製してダークイエローの粘つく化合物(95mg)を得た。
【0208】
H NMR(CDCl)δ 1.23−1.66(m,156H,CH and NCHCHCHCH),2.11−2.30(m,12H,CO−CH),3.30−3.48(m,12H,CHNHC=N),3.51−3.69(m,4H,CHNHC=S),3.91−4.01(m,4H),4.10−4.20(m,2H),4.92−5.11(m,4H),5.21−5.31(m,2H),5.49(app. t,2H,J=9.3 Hz),6.57−6.79(m,10H),7.10−7.18(m,2H),7.91−8.11(m,2H),8.31−8.49(m,4H),9.04(br s,2H),11.49(br s,6H)。
【0209】
<5−7>N,N’−ジ−Boc−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化60】

【0210】
前記実施例<5−6>から得られた化合物(92mg,26.52μmol)をHClガスで飽和したエチルアセテート(3.5ml)に溶解させた後、室温で2日間攪拌した。
【0211】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した後、MPLCを用いて精製してイエローの粘つく化合物(42mg)を得た。分析用として前記化合物の少量をprep−HPLC(水:アセトニトリル=75:25,220nm)によりさらに精製した。
【0212】
H NMR(MeOD)δ 1.30−1.75(m,48H,NCHCHCHCH),2.24−2.49(m,16H,CO−CH),3.11−3.28 (m,12H,CHNHC=N),3.59−3.66(m,4H,CHNHC=S),4.00−4.09(m,2H),4.10−4.28(m,4H),5.04−5.18(m,4H),5.35(d,2H,J=3.4 Hz,anomeric protons),5.54(app.t,2H,J=9.8 Hz),6.55−6.73(m,12H),7.15−7.18(m,2H),7.73−7.80(m,2H),8.32(br s,2H)。
【0213】
実施例6:6個のグアニジン基を有するトレハロース誘導体の製造
【化61】

【0214】
前記実施例<5−3>から得られた化合物(26mg,10.59μmol)をHClガスで飽和したエチルアセテート(2ml)に溶解させた後、室温で2日間攪拌した。
【0215】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した後、MPLCを用いて精製して白色の粘つく化合物(13.7mg)を得た。分析用として前記化合物の少量をprep−HPLC(水:アセトニトリル=75:25,220nm)によりさらに精製した。
【0216】
H NMR(DO)δ 1.31−1.73(m,36H,NCHCHCHCH),2.39−2.62(m,12H,CO−CH),3.11−3.28(m,12H,NCH),3.81(app.t,1H,J=9.12Hz),3.95−4.11(m,2H),4.15−4.52(m,5H),4.89−5.12(m,2H),5.19−5.55(m,4H)。
【0217】
実施例7:8個のグアニジン基を有するトレハロース誘導体の製造
<7−1>アシル化によるトレハロースに測鎖の導入
【化62】

【0218】
トレハロース水和物(0.87g,2.30mmol)、N−Boc−6−アミノヘキサン酸(6.37g,27.55mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(5.81g,30.30mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン)(0.84g,6.89mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(24ml)に溶解させた後、室温で48時間攪拌した。
【0219】
反応終決後の混合物をトルエンとともに60℃で共沸蒸留し、エチルアセテートにより希釈した後、抽出物を飽和NaHCO水溶液と水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮してカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:1)を用いて精製して白色の固体化合物(4.03g)を得た。
【0220】
H NMR(CDCl)δ 1.24−1.66(m,120H,CH and NCHCHCHCH),2.20−2.37(m,16H,CO−CH),3.08−3.21(m,16H,NCH),3.83−4.03(m,4H),4.20−4.25(m,2H),4.65−5.00(m,7H,NH),5.01−5.09(m,4H),5.29(d,2H,J=3.7 Hz,anomeric protons),5.48(app.t,2H,J=9.7 Hz)。
【0221】
<7−2>測鎖末端のアミノ基からN−Boc保護基の除去
【化63】

【0222】
前記実施例<7−1>から得られた化合物(1.94g,0.95mmol)をトリフルオロ酢酸(TFA)とジクロロメタンの混合物(1:1,20ml)に溶解させた後、室温で6時間攪拌した。
【0223】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して、抽出物をジエチルエーテルとメタノールの混合物(20:1)で洗浄した。得られた生成物を水に溶解させて凍結乾燥してブラウンの粘つく化合物(3.17g)を得た。
【0224】
H NMR(MeOD)δ 1.25−1.39(m,16H,NCHCHCH),1.42−1.66(m,32H,NCHCHCHCH),2.10−2.35(m,16H,CO−CH),2.71−2.89(m,16H,NCH),3.81−3.93(m,2H),4.00−4.15(m,4H),4.91−5.03(m,4H),5.23(d,2H,J=3.6 Hz,anomeric protons),5.35(app.t,2H,J=9.7 Hz)。
【0225】
<7−3>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化64】

【0226】
前記実施例<7−2>から得られた化合物(86mg,39.59μmol)を1,4−ジオキサンと水の混合物(5:1,2ml)に溶解させてトリエチルアミン(0.5ml,2.64mmol)とN,N−ジ−Boc−N’−トリフルオロメタンスルホニルグアニジン(187mg,0.48mmol)を滴下した後、前記混合物を室温で3日間攪拌した。
【0227】
反応終決後の混合物を減圧下に濃縮し、エチルアセテートに希釈した後、水と飽和NaCl水溶液で洗浄した。得られた生成物をNaSOで乾燥させた後、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:2)を用いて精製して白色の固体として表題化合物(81mg)を得た。
【0228】
H NMR(CDCl)δ 1.28−1.71(m,192H,CH and NCHCHCHCH),2.20−2.39(m,16H,CO−CH),3.33−3.46(m,16H,NCH),3.94−4.01(m,4H),4.16−4.24(m,2H),4.97−5.10(m,4H),5.27(d,2H,J=3.7 Hz,anomeric protons),5.45(app.t,2H,J=9.7 Hz),8.31(br s,8H),11.50(br s,8H)。
【0229】
<7−4>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化65】

【0230】
前記実施例<7−3>から得られた化合物(20mg,6.28μmol)をHClガスで飽和したエチルアセテート(3ml)に溶解した後、室温で2日間攪拌した。
【0231】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した後、MPLCを用いて精製して白色の粘つく化合物(13.7mg)を得た。分析用として前記化合物の少量をprep−HPLC(水:アセトニトリル=75:25,220nm)によりさらに精製した。
【0232】
H NMR(DO)δ 1.29−1.73(m,48H,NCHCHCHCH),2.31−2.49(m,16H,CO−CH),3.12−3.22(m,16H,NCH),4.02−4.13(m,2H),4.21−4.40(m,4H),5.15−5.27(m,4H),5.45(d,2H,J=3.5 Hz,anomeric protons),5.58(app.t,2H,J=9.7 Hz)。
【0233】
実施例8:8個のグアニジン基を有するグルコース誘導体の製造
<8−1>アシル化によるグルコースに測鎖の導入
【化66】

【0234】
前記製造例<5−5>から得られた化合物(50mg,0.125mmol)、二つのグアニジン基を有する分岐型リンカー(757mg,1.000mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(192mg,1.000mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(23mg,0.188mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解した後、室温で3日間攪拌した。
【0235】
反応終決後の混合物を水とNaHCO水溶液で数回洗浄した。得られた有機層をNaSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮してカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)を用いて精製して粘つく固体として表題化合物(306mg)を得た。
【0236】
H NMR(CDCl): δ 1.27−1.75(m,206H),2.04−2.53(m,32H),3.15−3.18(m,2H),3.46(brs,16H),3.64−3.81(m,2H),4.16(brs,2H),4.46(d,J=7.8 Hz,1H),4.94−5.24(m,5H),7.34(s,5H),8.52(s,8H),11.49(s,8H)。
【0237】
<8−2>リンカー末端のアミン基からカルボベンゾキシ(Cbz)保護基の除去
【化67】

【0238】
前記実施例<8−1>から得られた化合物(105mg,0.028mmol)をエタノール(8ml)に溶解させた後、Pd/C(10wt%,100mg)を添加した。得られた混合物を室温で、Hガス(1気圧)下で一日中攪拌し、セライトにより濾過してPd/Cを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、白色の粘つく固体として表題化合物(78mg)を得た。
【0239】
H NMR(CDCl): δ 1.25−1.86(m,206H),2.18−2.26(m,32H),3.15−3.18(m,2H),3.46(brs,18H),3.63−4.16(m,6H),4.11−4.16(m,3H),4.52(brs,1H),4.94−5.09(m,2H),5.21(t,J=9.0 Hz,1H),8.60(s,8H),11.41(s,8H)。
【0240】
<8−3>蛍光プローブ(FITC)の導入
【化68】

【0241】
前記実施例<8−2>から得られた化合物(75mg,0.020mmol)をテトラヒドロフランとエタノールの混合物(5:2)(3.5ml)に溶解し、フルオレセイン−5−イソシアネート(10mg,0.024mmol)とトリエチルアミン(24μl,0.163mmol)を添加した後、混合物を室温で一日中攪拌した。
【0242】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=8:1)を用いて精製してダークイエローの粘つく化合物(29mg)を得た。
【0243】
H NMR(CDCl): δ 1.18−1.61(m,206H),2.15−2.95(m,34H),3.39(brs,18H),3.56−3.80(m,6H),4.00−4.16(m,3H),4.43(brs,1H),4.81−5.27(m,3H),6.42−6.99(m,6H),7.27(brs,1H),7.74−7.78(m,1H),7.89(s,1H),8.43(s,8H),11.37(s,8H)。
【0244】
<8−4>N,N’−ジ−Boc−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化69】

【0245】
前記実施例<8−3>から得られた化合物(29mg)をエチルアセテート(1ml)に溶解させた後、HClガスで飽和したエチルアセテート(3ml)を滴下し、得られた混合物を室温で一日中攪拌した。
【0246】
反応終決後の混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去し、エチルアセテートで洗浄して非極性の不純物を除去した後、MPLCクロマトグラフィー(トリフルオロ酢酸0.1%が含有された水:アセトニトリル=1:1〜1:2)を用いて精製してライトグリーンの化合物(3.5mg)を得た。
【0247】
H NMR(CDOD): δ 1.36−1.71(m,62H),2.01−2.42(m,34H),3.29−3.42(m,18H),3.52−3.89(m,6H),4.11−4.30(m,3H),4.59−4.71(m,1H),4.81−5.26(m,3H),6.52−6.68(m,6H),7.15(d,J=8.3 Hz,1H),7.67(d,J=7.1 Hz,1H),8.37(s,1H)。
【0248】
試験例1:マウスの脳内への透過及び分布測定
実施例1(94.5mg/kg)、実施例2(59.5mg/kg)、実施例3(84.5mg/kg)、実施例5(90.9mg/kg)及び実施例8(83.1mg/kg)において製造した化合物をそれぞれ蒸留水に溶かして、生後8週齢のC57BL/6マウス(Hyochang Science Inc.韓国)に腹腔内注射した。20分後、注射したマウスを溶液(4%パラホルムアルデヒドPBS溶液(pH7.4))で処理して、各マウスから脳を摘出して0.5MスクロースPBS溶液に一日中放置した。
【0249】
低温保持装置で脳を15μm厚さに薄くスライスして、各スライスをスライドガラス上に載せて、37℃で乾燥し、PBSで洗浄して、室温で0.3%トリトンX−100により15分間処理した後、共焦点顕微鏡で観察した。その結果を図1に示した。
【0250】
図1において、(A)は対照群であって、蒸留水のみを注射したマウスから得られた結果を示し、(B)〜(F)は実施例1〜5の化合物を注射したマウスから得られた結果をそれぞれ示す。
【0251】
図1に示すように、本発明により製造されたイノシトール、トレハロース及び単糖類誘導体は血液脳関門を容易に通過して脳組織によく透過した。
【0252】
前記説明のように本発明によると、前記イノシトール及びトレハロース誘導体は、高いBBB透過性を有し、脳組織への伝達が容易であるため、アルツハイマー病、ハンチントン病及び他の関連疾患のような退行性脳神経系疾患の治療に有用に活用され得る。
【0253】
以上、本発明を実施例により説明したが、これらの実施例によって本発明が限定されず、本発明の技術分野における通常の知識を有する者なら添付された特許請求の範囲により定義された本発明の範囲内で多様な変形及び実施できることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)のイノシトール誘導体またはその塩:
【化1】

前記式中、Rは
【化2】

であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキル、または−COR’であり、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、またはヘテロアルキルである。
【請求項2】
前記式(1)の化合物が、scyllo−、myo−、epi−、chiro−、allo−、muco−、neo−、またはcis−イノシトール異性質体に該当する立体化学構造を有することを特徴とする請求項1に記載のイノシトール誘導体またはその塩。
【請求項3】
式(2)のイノシトール誘導体またはその塩:
【化3】

前記式中、Rは
【化4】

であり、ここでnは1〜12の定数であり;また
及びRはそれぞれ独立的に水素、アルキル、または−COR’であるが、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、またはヘテロアルキルである。
【請求項4】
前記式(2)の化合物が、scyllo−、myo−、epi−、またはchiro−イノシトール異性質体に該当する骨格構造を有することを特徴とする請求項3に記載のイノシトール誘導体またはその塩。
【請求項5】
式(3)のトレハロース誘導体またはその塩:
【化5】

前記式中、Rは
【化6】

であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキル、または−COR’であるが、ここでR’は水素、アルキル、アミノアルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、または蛍光物質である。
【請求項6】
式(4)の単糖類誘導体またはその塩:
【化7】

前記式中、Rは
【化8】

であり、ここでnは1〜12の定数であり;
は、水素、R、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、またはヘテロアルキルであり;
は、水素、R、またはトリチルである。
【請求項7】
前記式(4)の化合物が、D−グルコース、D−マンノース、D−アロース、またはD−ガラクトースの骨格構造を有することを特徴とする請求項6に記載の単糖類誘導体またはその塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を有効成分として含む、退行性脳神経系疾患の治療用医薬組成物。
【請求項9】
前記退行性脳神経系疾患が、アルツハイマー病、ハンチントン病、または他の関連疾患を含むことを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2011−529044(P2011−529044A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519969(P2011−519969)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001470
【国際公開番号】WO2010/011012
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505282042)ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション (34)
【Fターム(参考)】