説明

イパモレリンジアセタートの注射用および輸液用の溶液

下記の組成を有する、イパモレリンの注射用および輸液用の溶液:a)イパモレリンの遊離塩基の重量に基づいて0.001%〜20%の量での、およそ2モル当量の酢酸によって可溶化されたイパモレリン(イパモレリンジアセタート)、b)少なくとも3で、かつ、7未満のpHを与えるために十分な量でのモル過剰の酸(好ましくは酢酸)、c)場合により0.1%〜30%の1つ以上の配合助剤、および、d)100%にするために十分な水(ただし、すべての百分率は溶液の総重量に基づく)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願に対する関連
本出願は米国仮出願番号第61/186,595号(2009年6月12日出願)の優先権を主張する。
本発明はイパモレリン化学の分野に属し、特に、イパモレリンを、好ましくは、注射用および輸液用の溶液における最適な安定性および溶解性のための過剰な酸性残基の存在下で、ジアセタート塩として可溶化する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
イパモレリンは、Novo Nordiskの研究者によって1990年代中頃に最初に合成された選択的な成長ホルモン分泌促進物質であり、欧州特許第0736039号に記載される。その分子は、α−メチルアラニン−L−ヒスチジン−D−β−(2−ナフチル)−アラニン−D−フェニルアラニン−L−リシンアミドまたはH−Aib−His−β−(2−ナフチル)−D−Ala−D−Phe−Lys−NH2として化学的に定義され、下記の化学構造を有する:
【化1】

【0003】
この分子は、報告によれば、トリフルオロアセタート塩として単離される白色の非晶質粉末であり、分子量(遊離塩基)がおよそ711.9g/モルである。ブタ血清アルブミンを含有する生理的食塩水に溶解されるイパモレリントリフルオロアセタートの注射用溶液が、Raunら、EUR.JNL.ENDOCR.(1998)139:552〜561に記載される。欧州特許第0736039号は、イパモレリンと構造的に関連する化合物の数多くの酸付加塩に言及するが、注射用溶液におけるイパモレリンの溶解性を改善し、その一方で、この分子の安定性を改善するための方法については、何ら言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0736039号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Raunら、EUR.JNL.ENDOCR.(1998)139:552〜561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、完成した注射用および輸液用の溶液として有用である、2モル当量の酢酸によって可溶化されたイパモレリン(これは以降、「イパモレリンジアセタート」と言う)の溶液、この完成した溶液を作製する方法、ならびに、イパモレリンの過度な不安定性、沈殿化または分解をもたらさない、この方法で使用される新規な中間体および原料を提供する。本発明は、第1の主要な実施形態において、下記のa)〜d)を含む、イパモレリンジアセタートの新規な注射用および輸液用の溶液を提供する:
a)イパモレリンの遊離塩基の重量に基づいて0.001%〜20%の量での、およそ2モル当量の酢酸によって可溶化されたイパモレリン(イパモレリンジアセタート)、
b)少なくとも3で、かつ、7未満のpHを与えるために十分な量でのモル過剰の酸(好ましくは酢酸)、
c)場合により0.1%〜30%の1つ以上の配合助剤、および
d)100%にするために十分な水;
ただし、すべての百分率は溶液の総重量に基づく。
【0007】
本発明はまた、イパモレリンジアセタートの注射用および輸液用の溶液を、形成後のジアセタート塩を単離することなく、0.001%〜20%のイパモレリンの濃度でその場で製造する方法であって、
a)イパモレリンジアセタートの水溶液を形成するために、イパモレリンの遊離塩基および酢酸をおよそ1:2のモル比で混合する工程、
b)前記イパモレリンジアセタートを、固体形態で単離することなく、0.1%〜30%の1つ以上の配合助剤(これは場合により1つ以上の過剰な酸を含む)と混合する工程、および
c)場合により、前記イパモレリンジアセタートをさらなる水と混合し、その結果、イパモレリンの最終濃度が、溶液と、イパモレリンの遊離塩基の重量との総重量に基づいて0.001%〜20%であるようにする工程
を含む方法を提供する。
【0008】
これに関連して、用語「混合する」には、広い意味が与えられ、その結果、工程(a)、工程(b)および工程(c)は、同時に、逐次的に、または、任意の順序で行うことができる。特に好ましい実施形態において、上記1つ以上の配合助剤は張性付与(tonicifying)有効量の1つ以上の張性付与剤を含む。別の好ましい実施形態において、上記1つ以上の配合助剤は、pH調節剤を、所定のpHをもたらすために十分な量で含む。
【0009】
さらに別の実施形態において、本発明はイパモレリンジアセタートを提供する。またさらに、本発明は、本発明の医薬用溶液の製造において使用される中間体に関連する。従って、別の実施形態において、本発明は、イパモレリン:酸のモル比が約1:2である、酢酸によって可溶化された中間イパモレリン溶液を提供する。
【0010】
イパモレリンのこれまでに知られている注射用溶液と比較して、本発明による溶液は、長期間にわたって貯蔵されるときの安定性が改善されているという利点を有する。同様に、本発明の製造方法、ならびに、本発明の方法において使用される中間体および原料は、製造物の貯蔵寿命の期間中におけるイパモレリンの安定性を保証する。
【0011】
本発明のさらなる実施形態および利点のいくつかは下記の記載において示され、また、いくつかは記載から明らかであるか、または、本発明の実施によって知ることができる。本発明の実施形態および利点は、添付された請求項において具体的に指摘される構成要素および組み合わせによって理解され、また、達成される。上記の一般的な記載および下記の詳細な記載はともに、例示的かつ説明的であるにすぎず、本発明を主張されるように限定しないことを理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付されている図面は、本明細書に組み込まれ、かつ、本明細書の一部を構成するものであり、本発明のいくつかの実施形態を例示し、また、説明と一緒になって、本発明の原理を説明するために役立つ。
【図1】イパモレリンの遊離塩基の溶解性に対するpHの効果を示す二軸グラフである。
【図2】98%の相対的湿度での12日間の貯蔵の前後におけるイパモレリンの遊離塩基(二水和物の結晶性形態)のX線回折パターンである。
【図3】イパモレリンの遊離塩基(無水の結晶性形態A)のホットステージX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本発明の好ましい実施形態の下記の詳細な記載およびそれに含まれる実施例を参照することによってより容易に理解することができる。
【0014】
用語の定義および使用
本明細書および下記の請求項において使用される場合、「a」、「an」および「the」の単数形態は、文脈がそうでないことを明確に指示する場合を除き、複数の指示対象を包含する。従って、例えば、「an ingredient」(成分)への言及は成分の混合物を包含し、「an active pharmaceutical agent」(活性な医薬剤)への言及は2つ以上の活性な医薬剤を包含する。以下、同様である。
【0015】
本明細書中で別途規定されない限り、本明細書中で示される百分率は重量百分率であり、イパモレリンまたはその塩の重量または百分率は、水和水を全く考慮に入れることなく無水基準で計算される、イパモレリンの遊離塩基の重量に基づく。
【0016】
「医薬的に許容される」は、一般に安全および非毒性であり、かつ、生物学的にも他の場合にも望ましくないことがない医薬組成物を調製することにおいて有用であることを意味し、ヒトでの薬学的使用と同様に、獣医学的使用について許容可能であることを包含する。
【0017】
議論
本明細書中で示されるように、本発明は、投与に容易な、完成した形態でのイパモレリンの注射用および輸液用の液状溶液を提供する。本発明はまた、この完成した溶液を作製する方法、ならびに、イパモレリンの過度な分解をもたらさない、この方法で使用される新規な中間体および原料を提供する。本発明による注射用および輸液用の溶液は、活性物質のイパモレリンを0.001%〜20%の濃度で、好ましくは0.005%〜10%の濃度で、最も好ましくは0.01%〜1%の濃度で含有する。皮下用配合物については、とりわけ好ましい濃度が0.1%〜10%である。本文書の残りと一致して、これらの百分率は、溶液と、イパモレリンの遊離塩基の重量との総重量に基づく。
【0018】
混合する順序は変化し得るが、イパモレリンは好ましくは最初に、およそ1:2(イパモレリン:アセタート)のモル比で酢酸の水溶液において可溶化され、それにより、イパモレリンのジアセタート塩、すなわち、イパモレリンジアセタートとして本明細書中では示されるものを与える。この中間水溶液におけるイパモレリンの濃度は好ましくは、0.1mg/mlから100mg/mlにまで、または、0.5mg/mlから20g/mlにまで及ぶ。
【0019】
イパモレリンジアセタートはさらに、モル過剰の医薬的に許容される酸の存在によって安定化される。このようなモル過剰は好ましくは、少なくとも3または4で、かつ、7未満のpH、好ましくは、3〜6.5、4〜6.5、4.5〜6.5、3.5〜4.5、4.5〜5.5、5.5〜6.5、3〜4、4〜5、5〜6、または、6〜7のpHを有する溶液を生じさせるために十分である。クエン酸、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、乳酸およびそれらの混合物を含めて、様々な酸を、イパモレリンジアセタートを安定化するために使用することができる。好ましい実施形態において、イパモレリンジアセタートは過剰な酢酸によって安定化される。
【0020】
上記酢酸は好ましくは、イパモレリンジアセタートに対して0.1〜30のモル過剰で溶液に存在する。従って、例えば、溶液が1molのイパモレリンジアセタートを含有する場合、溶液はさらに、0.1モル〜30モルの過剰な酢酸を含有することになる。好ましい実施形態において、このようなモル過剰は1から10にまで、2から5にまで、または、5から8にまで及ぶ。
【0021】
最終溶液および中間溶液のための希釈剤として水とともに用いることが好ましいが、他の液体希釈剤を注射剤のための水と組み合わせることができ、他の液体希釈剤には、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびトリエチレングリコールが含まれる。好ましい実施形態においては、pH緩衝系が、好適な有機酸のアルカリ塩を含むことによって、好ましくは、過剰な酸成分に対応するアルカリ塩(すなわち、酢酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム)を含むことによって最終的配合物において形成される。緩衝系の好適な濃度は約5ミリモル濃度から20ミリモル濃度または40ミリモル濃度にまで及ぶ。従って、例えば、アセタート緩衝系が用いられる場合、イパモレリンジアセタートに由来するアセタートを除いて、溶液中の過剰なアセタートイオンは約5ミリモル濃度から20ミリモル濃度または40ミリモル濃度にまで及ぶ。
【0022】
水溶液の重量モル浸透圧濃度は、好ましくは200〜900mOsmol/kgであり、より好ましくは260〜390mOsmol/kgである。溶液は、NaCl、グルコース、フルクトース、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、スクロースまたはキシリトール、あるいはこれらの物質の混合物から選択される張性付与剤を加えることによって、等張性状態に適合化することができる。
【0023】
配合助剤、例えば、増粘剤(例えば、とりわけ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびゼラチン)、吸収剤、光安定剤、結晶化遅延剤、錯化剤(例えば、とりわけ、NaEDTA、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩およびクエン酸塩)、酸化防止剤(とりわけ、アスコルビン酸、亜硫酸塩化合物、L−システイン、チオジプロピオン酸、チオ乳酸、モノチオグリセロールおよび没食子酸プロピル)および保存剤(とりわけ、PHBエステル、フェノールおよび誘導体、クロロブタノール、ベンジルアルコール、エタノール、ブタノール、ブタン−1,3−ジオール、クロルヘキシジン塩、安息香酸および塩、ならびに、ソルビン酸)などを使用することもまた可能である。
【0024】
本発明による注射用または輸液用の溶液は好ましくは、高い純度を有するイパモレリンの単離された遊離塩基を使用して調製される。水を計算から除外する無水基準で、上記イパモレリンは好ましくは、90重量%を超える純度、95重量%を超える純度、または98重量%を超える純度を有する。イパモレリンのどのような結晶性形態または非晶質形態も機能するが、出発材料は好ましくは、図2および図3において例示されるように、非晶質形態または結晶性形態(AおよびB)とは対照的に、イパモレリンの二水和物の結晶性形態である。または、上記イパモレリンは、1モルのイパモレリンあたり1.5モル〜2.0モルまたは2.5モルの水を有する結晶性形態であってもよい。イパモレリンのこれらの水和形態は好ましくは、水/メタノールからの遊離塩基の沈殿化によって得られる。水和水は、示差走査熱量測定法(DSC)によって明らかにされるように、約110℃〜110℃に加熱したとき、失われる。無水形態Aは、アセトニトリルにおける遊離塩基の沈殿化により得ることができる。無水形態Bは形態Aと互変性であり、形態Aが約110℃を超えて加熱されるときに得られる。
【0025】
その後、塩が好ましくは、上記イパモレリンを、可溶化および塩形成のために要求される量の酢酸と一緒にすることによって、直接に溶液中で調製される。30℃〜60℃の間の温度で作業することによって溶解を加速させることができ、溶液は、酸化を最小限に抑えるために窒素ガス下で調製することができる。
【0026】
その後、イパモレリン塩を固体形態で最初に単離するとともに、または、イパモレリン塩を固体形態で最初に単離することなく、最終溶液を調製することができる。ジアセタート塩が単離される場合、ジアセタート塩は好ましくは、(水を計算から除外する無水基準で)90重量%、95重量%または98重量%を超える純度で、好ましくは非晶質状態で、単離および貯蔵される。イパモレリンの酢酸塩が形成されると、この酢酸塩は、他の配合助剤と、または、最終配合物における所望される濃度への注射用水と一緒にすることができる。
【0027】
溶液が、イパモレリン塩を最初に単離することなく調製されるとき、溶液は、塩が溶媒から沈殿させられるときには一般に残留する溶媒残渣を何ら含まない。従って、別の実施形態において、本発明は、イパモレリン塩の沈殿化のために使用される溶媒残渣が存在しない溶液を提供する。他の方法が、これらの残渣を排除するために使用され得るが、この現場法は、とりわけ有益であることが判明している。溶媒残渣の非存在は、溶媒の検出および定量化のための広く知られている方法を使用して、検出限界未満での残渣の欠如によって証明することができる。
【0028】
このようにして、好適な容器(例えば、アンプル、注射用バイアル、輸液用ボトル、シリンジ)に満たされる活性物質のすぐに使用できる溶液、または、そのような溶液を調製するために好適な前駆体(例えば、濃縮物または凍結乾燥物)をそのどちらでも調製することが可能である。調製物が満たされる容器は、ガラス製またはプラスチック製のどちらでもよく、この場合、容器材料は、特定の保護(例えば、光または酸素からの保護)を内容物に与える物質を含むことが可能である。調製されると、溶液は、そのまま、さらなる再構成を用いることなく、イパモレリンによる処置を必要としている患者に対して注射または輸液により投与することができる。
【0029】
実施例
下記の実施例における溶液の調製は、伝熱ジャケットを有する回分式容器、または、伝熱ジャケットを有しない回分式容器において行うことができる。非加熱型容器を使用するとき、必要ならば、予熱された水を使用することができる。一般には、大量の溶媒が容器に導入され、個々の成分がそれに溶解されるが、溶媒を固体物に加えることもまた可能である。
【0030】
続いて、残りの構成成分が、撹拌とともに、冷却前または冷却後の調製物に溶解されるか、または組み込まれる。溶媒の残りを用いて完成させた後、配合物は、好適な細菌保持フィルターによる滅菌ろ過、および/または、加熱殺菌を行うことができる。
【実施例1】
【0031】
例示的な薬物製造物およびその安定性
ストック溶液の調製
3Lの5.0mg/mLのイパモレリンストック液
1000mLの3つの調製物を、5.01256gm、5.01767gmおよび5.01252gmのイパモレリン(API)をそれぞれ用いて調製した。それぞれの溶液が800μLの氷酢酸を含有し、Milli−Q水により所定量にされた。これら3つの溶液を1つの容器に一緒にし、十分に混合して、最終的なイパモレリンストック溶液を得た。
【0032】
12Lの18mg/mLのNaClストック液
4000mLを、72.0gmのNaClをMilli−Q水とともに加えることによって調製し、溶解するまで混合した。
【0033】
100mM酢酸ナトリウム、pH5
1000mLを、1.71mLの氷酢酸および9.574gmの酢酸ナトリウムを用いて調製した。緩衝液の最終pHがpH5.41であった。
【0034】
100mM酢酸ナトリウム、pH6
1000mLを、0.14mLの氷酢酸および13.262gmの酢酸ナトリウムを用いて調製した。緩衝液の最終pHがpH6.26であった。
【0035】
100mMクエン酸ナトリウム、pH5
1000mLを、8.614gmのクエン酸一水和物および17.352gmのクエン酸ナトリウムを用いて調製した。緩衝液の最終pHがpH4.99であった。
【0036】
100mMクエン酸ナトリウム、pH6
1000mLを、3.992gmのクエン酸一水和物および24.410gmのクエン酸ナトリウムを用いて調製した。緩衝液の最終pHがpH5.58であった。
【0037】
100mMクエン酸ナトリウム、pH7
1000mLを、8.81の初期pHで29.410gmのクエン酸ナトリウムを用いて調製し、0.1N塩酸によりpH7.33に調節した。
【0038】
100mMリン酸ナトリウム、20mM EDTA、pH6
100mLを、5.382gmの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、16.352gmのクエン酸ナトリウムおよび7.445gmのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを用いて調製した。緩衝液の最終pHがpH5.98であった。
【0039】
薬物製造物の調製
対照、2×当量の酢酸における0.5mg/mLのイパモレリン(pH7.5)および9mg/mL
1000mLを、6.95の初期pHで、500mLの2×塩化ナトリウム、100mLの10×イパモレリン(API)ストック溶液を用いて調製し、6滴の1N水酸化ナトリウムを使用してpH7.53に調節した。反転(15×)によって混合し、Duraporeの0.22μmのMilliporeフィルターでろ過した。10mLのアリコートを、Eppendorf反復ピペッターおよびBiopurの50mLのCombitipを用いて分注した。
【0040】
DP#1:0.5mg/mLのイパモレリン、10mM酢酸ナトリウム(pH5)および9mg/mL NaCl
900mLの上記配合物を、100mLの10×酢酸ナトリウム(pH約5)ストック溶液を、500mLのNaClストック溶液と一緒に、100mLの5mg/mLのイパモレリン(API)ストック溶液と200mLのMilli−Q水に混合することによって調製した。ほぼ完全な体積において、5.18の初期pHを氷酢酸により5.01に調節した。
【0041】
DP#4:1.0mg/mLのイパモレリン、10mM酢酸ナトリウム(pH6)および9mg/mL NaCl
900mLの上記配合物を、100mLの10×酢酸ナトリウム(pH約5)ストック溶液を、500mLのNaClストック溶液と一緒に、200mLの5mg/mLのイパモレリン(API)ストック溶液と100mLのMilli−Q水に混合することによって調製した。ほぼ完全な体積において、6.79の初期pHを氷酢酸により5.96に調節した。
【0042】
DP#5:0.5mg/mLのイパモレリン、10mMクエン酸ナトリウム(pH5)および9mg/mL NaCl
900mLの上記配合物を、100mLの10×クエン酸ナトリウム(pH約5)ストック溶液を、500mLのNaClストック溶液と一緒に、100mLの5mg/mLのイパモレリン(API)ストック溶液と200mLのMilli−Q水に混合することによって調製した。ほぼ完全な体積において、4.75の初期pHを、1N水酸化ナトリウムを使用して5.00に調節した。
【0043】
DP#8:1.0mg/mLのイパモレリン、10mMクエン酸ナトリウム(pH6)および9mg/mL NaCl
900mLの上記配合物を、100mLの10×酢酸ナトリウム(pH約6)ストック溶液を、500mLのNaClストック溶液と一緒に、200mLの5mg/mLのイパモレリン(API)ストック溶液と100mLのMilli−Q水に混合することによって調製した。ほぼ完全な体積において、5.67の初期pHを、1N水酸化ナトリウムを使用して6.02に調節した。
【0044】
DP#10:1.0mg/mLのイパモレリン、10mMクエン酸ナトリウム(pH7)および9mg/mL NaCl
900mLの上記配合物を、100mLの10×酢酸ナトリウム(pH約7)ストック溶液を、500mLのNaClストック溶液と一緒に、200mLの5mg/mLのイパモレリン(API)ストック溶液と100mLのMilli−Q水に混合することによって調製した。ほぼ完全な体積において、7.16の初期pHを1N水酸化ナトリウムにより7.02に調節した。
【0045】
DP#15:0.5mg/mLのイパモレリン、10mMリン酸ナトリウム、2mMナトリウムEDTA(pH6)および9mg/mL NaCl
900mLの上記配合物を、100mLの10×リン酸ナトリウム/EDTA(pH約6)ストック溶液を、500mLのNaClストック溶液と一緒に、100mLの5mg/mLのイパモレリン(API)ストック溶液と200mLのMilli−Q水に混合することによって調製した。ほぼ完全な体積において、6.06の初期pHを1N塩酸により6.00に調節した。
【表1】

【表2】

【実施例2】
【0046】
pHの関数としての溶解性
種々のpH値におけるイパモレリンの遊離塩基の溶解性が図1にグラフで示される。pH値がおよそ10未満である場合、この薬物は水性媒体において非常に可溶性である(>100mg/ml)。
【0047】
pH10付近での溶解性におけるこの劇的変化は、純水におけるイパモレリンの遊離塩基およびそのジアセタート塩の溶解性において反映される。ジアセタート塩は容易に溶解するため、約7.5の最終pHにより、100mg/mlを超える溶液をもたらすことができる。遊離塩基は溶解性がはるかにより低いため、ほんの約1.5mg/mlが飽和溶液(pH=9.83)において測定されただけであった。しかしながら、はるかに高濃度の溶液を、HClまたは同様な酸の溶液を使用し、pHを中性付近に単に調節することによって得ることができる。
【実施例3】
【0048】
X線回折(XRD)
イパモレリンの遊離塩基の結晶性形態の室温でのXRD実験が、図2および図3において例示される。実験を、測定のための下記の条件を使用して、Scintag XDS2000粉末X線回折計で行った:
ゴニオメータータイプ: θ/θ
ゴニオメーター半径: 250mm
検出器: 液体窒素冷却のエネルギー分散型
Ge検出器
電圧: 45KV
電流: 40mA
フィルター: フィルターセットなし
放射線: CuKα1線(λ=1.540598Å)
ターゲットサイズ: 1.0×10mm
連続走査、ステップサイズ: 0.02°
速度: 1°/分
発散ビーム−スリット: 2mm
受光−スリット: 0.2mm
発散ビームスキャッター−スリット:4mm
スキャッター−スリット: 0.5mm
XRDプロフィルを室温で測定した。サンプルスピナーは使用されなかった。すべての回折図を2度(2θ)から40度(2θ)まで測定した。
【0049】
ホットステージXRD実験のために、およそ40mgの材料をサンプルホルダー(直径20mm×深さ0.2mm)に置き、サンプルホルダーを、Scintag XDS2000粉末X線回折計において可変温度装置に固定した。温度を、回折図の取得を可能にするために、予め選択された温度で中断しながら、1℃/分の割合で上げ下げした。回折図を2度(2θ)から30度(2θ)まで測定した。
【0050】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これにより、これらの刊行物のすべての記載が本出願に組み込まれ、本発明が関連する技術がより詳細に説明される。本発明において、様々な改変および変更が、本発明の範囲または精神から逸脱することなくなされ得ることが当業者には明らかである。本発明の他の実施形態が、本明細書の検討、および、本明細書中に開示される本発明の実施から当業者には明らかである。本明細書および実施例は例示としてのみ考慮されることが意図され、本発明の真の範囲および精神は下記の請求項によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)イパモレリンの遊離塩基の重量に基づいて0.001%〜20%の量での、およそ2モル当量の酢酸によって可溶化されたイパモレリン(イパモレリンジアセタート)、
b)少なくとも3で、かつ、7未満のpHを与えるために十分な量でのモル過剰の酸(好ましくは酢酸)、
c)場合により0.1%〜30%の1つ以上の配合助剤、および
d)100%にするために十分な水(ただし、すべての百分率は溶液の総重量に基づく)
を含む、イパモレリンの注射用または輸液用の溶液。
【請求項2】
1モル当量〜10モル当量の過剰な酢酸を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
過剰なリン酸、クエン酸、酒石酸または乳酸を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
pHが4〜6.5である、請求項1、2または3に記載の溶液。
【請求項5】
イパモレリンジアセタートの沈殿化に由来する溶媒残渣が何ら存在しない、請求項1、2、3または4に記載の溶液。
【請求項6】
前記イパモレリンジアセタートが、イパモレリンおよび酢酸および水をおよそ1:2のイパモレリン:酢酸のモル比および0.1mg/ml〜100mg/mlのイパモレリン濃度で混合することを含む方法によって調製される、請求項1、2、3、4または5に記載の溶液。
【請求項7】
前記イパモレリンジアセタートが、イパモレリンおよび酢酸および水をおよそ1:2のイパモレリン:酢酸のモル比および1mg/ml〜10mg/mlのイパモレリン濃度で混合することを含む方法によって調製され、かつ、前記イパモレリンが、二水和物の結晶性形態を有する遊離塩基である、請求項1、2、3、4、5または6に記載の溶液。
【請求項8】
前記イパモレリンジアセタートが、イパモレリンおよび酢酸および水をおよそ1:2のイパモレリン:酢酸のモル比および1mg/ml〜10mg/mlのイパモレリン濃度で混合することを含む方法によって調製され、かつ、前記イパモレリンが、結晶性形態Aを有する遊離塩基である、請求項1、2、3、4、5または6に記載の溶液。
【請求項9】
イパモレリンジアセタートの注射用および輸液用の溶液を、形成後のジアセタート塩を単離することなく、0.001%〜20%のイパモレリンの濃度でその場で製造する方法であって、
a)イパモレリンジアセタートの水溶液を形成するために、イパモレリンの遊離塩基および酢酸をおよそ1:2のモル比で混合する工程、
b)前記イパモレリンジアセタートを固体形態で単離することなく、前記イパモレリンジアセタートを0.1%〜30%の1つ以上の配合助剤と混合する工程、および
c)場合により、前記イパモレリンジアセタートをさらなる水と混合し、その結果、イパモレリンの最終濃度が、溶液と、イパモレリンの遊離塩基の重量との総重量に基づいて0.001%〜20%であるようにすること
を含み、
ただし、工程(a)、工程(b)および工程(c)が、同時に、逐次的に、または、任意の順序で行われる方法。
【請求項10】
前記配合助剤が前記イパモレリンジアセタートに対して1モル当量〜10モル当量の過剰な酢酸またはクエン酸を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記1つ以上の配合助剤が、前記溶液のpHを少なくとも3で、かつ、7未満に調節するために十分なpH調節剤を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
前記1つ以上の配合助剤が張性付与(tonicifying)有効量の1つ以上の張性付与剤を含む、請求項9、10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
工程(a)における前記イパモレリンが、1モルのイパモレリンあたり1.5モル〜2.5モルの水を含む水和された結晶性形態での遊離塩基である、請求項9、10、11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
工程(a)における前記イパモレリンが結晶性形態Aとしての遊離塩基である、請求項9、10、11または12に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項9、10、11、12、13または14に記載される方法によって作製される、イパモレリンジアセタートの医薬的に許容される注射用または輸液用の溶液。
【請求項16】
イパモレリンジアセタート。
【請求項17】
単離された非晶質形態での請求項16に記載のイパモレリンジアセタート。
【請求項18】
イパモレリンジアセタートおよび1つ以上の液体キャリアを含む注射用または輸液用の溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529510(P2012−529510A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514986(P2012−514986)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/036365
【国際公開番号】WO2010/144265
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(509227632)ヘルシン セラピューティクス(ユー.エス.),インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】