説明

イプリフラボン可溶化組成物

【課題】
難溶性で高結晶性であるイプリフラボンの結晶析出を有効に防止した、イプリフラボンを高濃度に含有するイプリフラボン可溶化組成物を提供する。
【解決手段】
シソ油やハッカ油等のメントンやペリルアルデヒドを含有する精油を用いることにより、イプリフラボンの製剤中の溶解度を飛躍的に向上させ、経時的にイプリフラボンが結晶化して製剤の性状劣化を防止するイプリフラボン可溶化組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性で高結晶性であるイプリフラボンを高濃度に含有する組成物に関するものであり、また該イプリフラボン含有組成物を用いる化粧品、医薬部外品、医薬品、及び食品に関する。具体的には、水、あるいは食品・医薬品・医薬部外品・化粧品に通常使用される溶剤・油脂等に実質的に不溶であるイプリフラボンを、高濃度においても分離・結晶化させることなく、高度な安定性をもつイプリフラボン含有組成物に関するものであり、また該イプリフラボン含有組成物を利用する化粧品、医薬部外品、医薬品、及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
イプリフラボンは、ハンガリーのキノイン社でカルシウムの保持・増加作用を有する骨粗鬆症治療剤として開発された薬剤で、骨に直接作用することにより、骨吸収抑制作用をあらわし、また、女性ホルモンによるカルシトニン分泌促進作用を増強して骨吸収を抑制する作用を有する骨粗鬆症治療剤である。
【0003】
しかしながらイプリフラボンは難溶性で、結晶性が高く、これを溶解した製剤化には困難性が伴う。例えばイプリフラボンはアセトニトリルに溶解しやすいが、その他の溶媒には極めて溶解しにくく、製剤化は困難であった。また製剤としての効果を確保するにはイプリフラボンの濃度を高くする必要があるが、このような難溶性および結晶性の性質のために溶解型の製剤化が困難なものであった。
【0004】
このイプリフラボンに関しては、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の、多くの成分に対し高い溶解性を有する成分を用いた報告があるものの(特許文献1)、この様な溶解剤でさえ溶解が困難であり、かかる課題を実質的に解決した発明は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特表平5-505800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イプリフラボンを含有する可溶化組成物において、上記の難溶性・高結晶性に伴うイプリフラボンの製剤化の困難性を改良し、容易にイプリフラボンを高濃度に含有する液状化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、カルボニル基を有する単環式モノテルペン誘導体を含有する精油を溶解剤として用いることにより、イプリフラボンを高濃度に含有する安定な液状化物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)イプリフラボンと、カルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体を含有することを特徴とするイプリフラボン可溶化組成物、
(2)カルボニル基を有する環状式モノテルペン誘導体が、ペリルアルデヒド又はメントンであることを特徴とする(1)に記載のイプリフラボン可溶化組成物。
(3)カルボニル基を有する環状式モノテルペン誘導体を成分として含む精油を含有することを特徴とする、イプリフラボン可溶化組成物、
(4)精油がシソ油またはハッカ油であることを特徴とする(3)に記載のイプリフラボン可溶化組成物、
(5)化粧品用、医薬部外品用、医薬品用、食品用である(1)〜(4)のいずれかに記載のイプリフラボン可溶化組成物、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、イプリフラボンの溶解剤として、メントン、ペリルアルデヒドなどのカルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体、またはこれらを含有する精油を用いることにより、イプリフラボンの結晶析出を防止したイプリフラボン可溶化組成物を調製できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における可溶化組成物中のイプリフラボンの含有量は、特に限定されないが、好ましくは可溶化組成物全量に対して2質量%以上である。
【0011】
本発明において、カルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体としては、カンファー、ピペリトン、カルボン、ジヒドロカルボン、メントン、イソメントン、ペリルアルデヒド、プレゴン、ツヨン、シクロシトラール及びサフラナール等が挙げられる。その中でもメントンとペリルアルデヒドが好ましい。
【0012】
カルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体の配合量は、他の溶解剤(例えば脂肪酸トリグリセリドなど)を配合しない場合は、イプリフラボンに対して質量比で10倍以上が好ましい。脂肪酸トリグリセリドなどの溶解剤を配合する場合は、溶解剤中のメントンの含有比率は25質量%以上が好ましく、ペリルアルデヒドの含有比率は10質量%以上が好ましい。
【0013】
本発明における精油は、カルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体を成分として含むものであり、例えば、セージ油、樟脳油、ペパーミント油、シソ油及びハッカ油等が挙げられるが、好ましくはシソ油またはハッカ油である。
【0014】
本発明に係るイプリフラボン可溶化組成物は、精製水の配合の有無に関わらず製造可能である。
【0015】
本発明のイプリフラボン可溶化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で化粧品、医薬部外品、食品、皮膚外用剤等に配合される成分として、動植物油由来の硬化油、天然由来のロウ、炭化水素系の油相成分、動植物由来の油相成分、シリコーン系の油相成分、フッ素系の油相成分、高級アルコール、増粘剤、紫外線吸収剤、粉体、顔料、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、多価アルコール、糖、高分子化合物、生理活性成分、経皮吸収促進剤、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等を配合することができる。
【0016】
本発明のイプリフラボン可溶化組成物は、1)化粧品、2)液剤、ゼリー剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの内服の医薬部外品・医薬品、3)ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、パップ剤などの外用の医薬部外品・医薬品、4)ハーブ茶等の清涼飲料やソフトカプセルのサプリメントなどの食品として使用することができる。
【0017】
本発明のイプリフラボン可溶化組成物はそのまま化粧品、医薬部外品、医薬品、食品として用いても良いが、これらの原料として用い、水性液剤や油脂等で任意の濃度に希釈して用いることもできる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(イプリフラボン可溶化組成物の調製)
表1に示す組成物に従い、所定量のシソ油、ハッカ油、メントンまたはペリルアルデヒドと溶剤(コーン油、中鎖脂肪酸トリグリセリドなど)とイプリフラボンを混合し、これを40〜80℃に加温して均一にし、イプリフラボン可溶化組成物とした。なお組成は質量部で示す。
(イプリフラボン可溶化組成物の評価)
調製したイプリフラボン可溶化組成物を一旦常温まで冷却した後、室温にて5日以上放置して、イプリフラボンの溶解状態を肉眼観察した。
(溶解性の評価基準)
○:全く析出物が見られない。
×:顕著な析出物が見られる、若しくは固化した。
評価結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1に見られるように、シソ油、ハッカ油、メントン、ペリルアルデヒドを配合した組成物はイプリフラボンに対して特異的な溶解性を示し、溶解性が良好とされる中鎖脂肪酸トリグリセリドよりも極めて良好な溶解性を示すことが分かる。また、中鎖脂肪酸グリセリドとともにメントンあるいはペリルアルデヒドを溶解剤として使用した場合も、良好な溶解性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のイプリフラボン可溶化組成物は、1)化粧品、2)液剤、ゼリー剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの内服の医薬部外品・医薬品、3)ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、パップ剤などの外用の医薬部外品・医薬品、4)ハーブ茶等の清涼飲料やソフトカプセルのサプリメントなどの食品として使用することができ、また、これらの原料として用い、水性液剤や油脂等で任意の濃度に希釈して用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イプリフラボンと、カルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体を含有することを特徴とするイプリフラボン可溶化組成物。
【請求項2】
カルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体が、ペリルアルデヒド又はメントンであることを特徴とする請求項1に記載のイプリフラボン可溶化組成物。
【請求項3】
カルボニル基を有する環状モノテルペン誘導体を成分として含む精油を含有することを特徴とする、イプリフラボン可溶化組成物。
【請求項4】
精油がシソ油またはハッカ油であることを特徴とする請求項3に記載のイプリフラボン可溶化組成物。
【請求項5】
化粧品用、医薬部外品用、医薬品用、食品用である請求項1〜4のいずれかに記載のイプリフラボン可溶化組成物。

【公開番号】特開2012−62248(P2012−62248A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205331(P2010−205331)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】