説明

イベント通知手段を備えた薬剤導入ペン

薬剤の導入および薬剤の導入を監視するための装置、システム、および方法が提供される。そのシステム2は薬剤導入装置12,13、使用されていない薬剤導入装置用のホルダー、薬剤導入装置がホルダー内またはホルダーの近くにあることを検出するための検出器21、および、薬剤導入装置の使用者に問い合わせるおよび催促するための少なくともひとつのアルゴリズムを含んでいて、少なくともひとつのアルゴリズムは薬剤導入装置がホルダーから取り出されたときに作動する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス−リファレンス
本出願はその開示内容の全体が本明細書で参照文献として引用される2003年11月6日に出願された米国仮特許出願第60/518,571号の優先権を主張している。
【0002】
本発明は大まかに言って使用者ベースの薬剤導入システムに関する。より詳しく言うと、本発明はコンテナまたはケース内に収容された薬剤導入器具すなわちペンを含みペンがケース内に存在することまたはペンがケースの近くあることがケース内で構成された手段によってまたはシステムに収容されたメーターまたはパーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)のようなシステムのひとつまたは複数の別のコンポーネントによって検出される薬剤導入システムに関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤注入装置および生理的液体特性監視装置は医療分野で知られている。それらの装置の非常に一般的なひとつの用途は糖尿病患者にインスリンを導入し患者の血糖値を監視することである。それらの装置の携帯の容易さおよび用い易さが増加することによって糖尿病患者は自己管理した治療プログラムで服用できるようになりそれによって患者の自律性およびプライバシーのレベルが高められる。このことは糖尿病患者の血糖値は毎日または毎時間変化することもあるのでとりわけ有益である。
【0004】
そのような糖尿病の自己管理した治療プログラムには、例えばインスリンなどのさまざまな薬剤を注入および/または摂取することによる自分自身での投与が含まれることが多い。治療プログラムによく従うことに加えて、そのような自己管理した治療プログラムでは患者は薬剤が服用される時刻を厳密に監視する必要があり、例えば血糖値、インスリンの服用量、などの対応する医療的に関連する自己管理情報を記録すなわち文書化する必要があることもある。そのようなデータの監視は現在の状態およびこれからの治療の行動方針(治療プログラムの変更)の決定を助ける。このような情報を記録することおよびこのような情報に気づくことは特に紙面の日誌を用いて行なわれる場合に時間を費やしかつ不便なので、このようなタイプの情報の記録、編集、観察が利用者にとってできるだけ途切れないそして時間的に効率の良いものであることが望ましい。
【0005】
したがって、患者が管理する以下に限定されないが薬剤の投与(注入)時刻および投薬量、例えば血糖値などの被検体の濃度などの医療情報の監視および記録のための新たな装置および方法を開発することへの関心が継続して持たれている。特に患者に融通性を与え管理を任せ、高められた便利さ、プライバシー、および使い易さを患者に提供し、システムコンポーネント(例えば、血糖値測定メーター、インスリン注入器、試験細片、針、ランセットなど。)の携帯可能性を増加する患者が管理する薬剤投与および監視システムを開発することに関心が持たれている。
【発明の内容の開示】
【0006】
薬剤を導入し薬剤の導入を監視するための装置、システム、および方法が提供される。大まかに言って、本発明のシステムは薬剤導入装置と、使用されていないときに薬剤導入装置を保持するためのホルダーと、薬剤導入装置がホルダー内に存在するか否かまたはホルダーの近くにあるか否かを検出する検出器と、薬剤導入装置の使用者に尋ね促すための少なくともひとつのアルゴリズムとを含み、少なくともひとつのアルゴリズムは薬剤導入装置がホルダーから取り外されたときに作動する。検出器は機械的スイッチ、磁気的スイッチ、濃度スイッチ、容量性スイッチ、電気的センサー、または光学的センサーであることもある。ホルダー、検出器、および少なくともひとつのアルゴリズムはシステムを収容するためのケースに組み込まれている。システムは被検体測定メーターをさらに含んでいることもあり、その場合少なくともひとつのアルゴリズムが被検体測定メーター内に記憶されていて、それによって被検体測定メーターは薬剤導入装置がホルダーから取り外されたときに起動するようにされている。いくつかの実施の形態では、システムは薬剤の投薬量情報などの使用者の情報を記憶するための装置と通信するための手段を含んでいる。
【0007】
本発明の具体的な応用例は、血液サンプル中の血糖濃度を測定するように構成されたメーターと、インスリン注入器と、インスリン注入器用の収納スペースとを有するインスリン注入システムで、その収納スペースはインスリン注入器が収納スペースから取り出されたときまたは収納されたときにメーター内のアルゴリズムを作動させるように適合されている検出器を有する。メーターを収容し収納スペースを画定するように構成されたケースが設けられている。いくつかの実施の形態では、インスリン注入システムは、携帯電話、PDA、コンピューターなどの外部の装置との間でデータの送信および受信を行うための無線通信手段を含んでいる。
【0008】
本発明はインスリン注入器のような薬剤導入装置の使用を監視する方法をも提供し、その方法は大まかに言って使用されていない薬剤導入装置を収納する過程と、収納された薬剤導入装置を取り出す過程と、収納された薬剤導入装置が取り出されたことを検出する過程と、薬剤導入装置の使用者に薬剤の投薬量の情報のような薬剤導入装置の使用に関する情報を尋ねるアルゴリズムを作動させる過程とを含んでいる。収納された薬剤導入装置が取り出された時刻などのその他のデータが自動的に記録されメモリに記憶されることもある。いくつかの変形例では、上記の方法は情報をデータ記憶装置に送信する過程をも含んでいる。
【0009】
本発明の利点は、薬剤の導入および監視データの記録作業を自動化して自己管理のもとで服用する使用者に加えられるそれらの情報を記録するための労力および時間および忘れずに記録作業を行うという負担を軽減することである。
【0010】
本発明の上記のおよびその他の目的、利点、および特徴は当業者には以下により詳しく記載される本発明の方法およびシステムの詳細を読むことによって明らかになるであろう。
【0011】
本発明の特徴および利点は本発明の原理を用いた例示的な実施の形態を記載した以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによってより良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について記載する前に、本発明は記載された特定の実施の形態に限定されずさまざまな形態があることが理解されなければならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で用いられている用語は特定の実施の形態を記載する目的で用いられているのであって限定を意図するものでないことも理解されなければならない。
【0013】
ある範囲の値が記載されている場合、その記載された範囲の上限値および下限値の間であってその文脈でそうでないと記載されていない限り当該下限値における単位の小数第1位までの値の各値と、その記載された範囲内にある、その他の記載された値あるいは他の範囲内の各値とは、本発明に包含されると理解される。そのようなより狭い範囲の上限値および下限値がそれぞれ別個にそのより狭い範囲に含まれることも、その記載された範囲が特定の上限値または下限値を含まない場合には、本発明に包含される。記載された範囲が上限値および下限値の一方または両方を含む場合、それらの含まれている上限値または下限値の一方または両方を含まない範囲も本発明に含まれる。
【0014】
そうでないと定義されていない限り、本明細書で用いられている全ての技術的用語および科学的用語は本発明の属する分野の当業者によって共通に理解されているのと同じ意味を有している。本明細書に記載されているものと類似または等価な全ての方法および材料も本発明を実施または試験するために用いることができるが、好ましい方法および材料が本明細書では記載されている。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲では単数形の表現(「a」、「an」、および「the」)は文脈でそうでないと記載されていない限り複数形をも含むことが注意されなければならない。したがって、例えば、試験片(a test strip)という表現は複数のそのような試験片をも意味し、装置(the device)という表現はひとつまたは複数の装置またはそのような装置の当業者に知られたひとつまたは複数の等価物をも意味する、などである。
【0016】
本明細書に記載されている刊行物は本出願の出願日前のその刊行物に関してだけ記載されている。それらの刊行物が記載されていることによって本発明が従来の発明のためにそれらの刊行物より以前のものである権利がないことを認めていると解釈されるべきではない。さらに、記載された刊行物の発行日は実際の発行日とは異なることがあるため、個々に確認する必要があるかもしれない。
【0017】
本発明は主に糖尿病への応用について記載され、特にインスリンの導入および血糖の濃度の測定に関して記載されているが、本発明はそのような用途に限定されずどのような薬剤導入の用途にも、特に薬剤導入プログラムが自己管理されている用途に用いることができることが理解される。その他の用途には、例えばヒト成長ホルモン、ぜん息薬、および血液の粘度低下剤(blood thinners)の投与などがある。
【0018】
ここで図面を参照すると、図1には、患者が血糖値を自分で監視しインスリンを自分で投与するのに用いられるさまざまな装置およびコンポーネントを提供する収納/携行ケースすなわちコンテナ10を含んだ本発明のシステム2が模式的に示されている。より詳しく言うと、そのシステム2は血糖値測定メーター11とインスリン注入ペンまたはインスリン注射器のようなひとつまたは複数の薬剤導入装置12および薬剤導入装置13とを含んでいる。メーター11は本明細書に記載される機能を備えた適切な寸法の任意のメーターであってよい。複数の薬剤導入装置は同じタイプのものでも異なるタイプのものでもよい。当業者にはいくつの薬剤導入装置がケース10に含まれていてもよいことが認識されるであろう。
【0019】
ケース10は皮革、ビニール、プラスチック、または当業者に知られたその他の適切な材料などの柔らかく曲げやすい材料で作られていることもある。代わりに、ケース10は射出成形プラスチックのような硬質の材料で作られていることもある。ケース10はジッパー(zipper)、スナップ(snap)、留め具(catch)、ラッチ(latch)、または任意の適切な締結手段によって閉鎖されることもある。メーター11は、フック・ループ式ファスナー(例えばベルクロ:Velcro)、ループ、接着剤、またはその他の任意の適切な手段によってケース10に取り付けられていて、メーター11が使用者によってケース10から容易に取りはずせるようにされている。ケース10は同じまたは類似の装置または補給材料を収容している別の基準寸法(モジュール)のすなわち補助のケースを取り付けるような形状で構成されていることもある。そのような補助のケースは旅行時にはいつでも使用者自身で治療するために補給材料および薬剤を確実に利用できるようにするのに役立つであろう。
【0020】
必要に応じて、ケース10は、切開器14、ランセット19、および針24のような血液または体液にアクセスしてサンプルを採取するためのさまざまな装置およびコンポーネントを保持するための区画すなわちコンテナをさらに含んでいることもある。ケース10は、アクセスされ採取された血液または体液のサンプルをメーター11へ移送して配置するための試験細片18などの装置をさらに含んでいることもある。
【0021】
ケース10はケース10内に収容されたコンポーネント間で通信を行うように構成されている。例えば、ケース10は薬剤導入装置12および/または薬剤導入装置13がケース10内に存在することまたはケース10から取り出されたことを検出するための検出手段21を含んでいることもある。検出手段21は、機械的スイッチ、磁気的スイッチ、濃度スイッチ、容量スイッチのようなスイッチまたはセンサー、または、赤外線センサーなどの電気的または光学的センサーであることもある。
【0022】
検出手段21は図示されているように構成されすなわち薬剤導入装置をケース10内に保持するためのスナップ嵌め構造のような固定手段を提供するクレードル(cradle)、キャビティ、またはホルダー内に埋め込まれていることもある。例えば、赤外線エミッターおよび赤外線検出器が注入ペンのクレードルの向かい合う側面に別々に取り付けられることもある。注入ペンがクレードル内に存在するときには赤外線エミッターから放射された赤外線ビームは阻止されて赤外線検出器に受信されない。注入ペンがクレードル内に存在しないときには赤外線ビームは赤外線検出器によって検出されてそのことを示す信号がケース10すなわちメーター11に送られる。
【0023】
代わりに、図2に示されているように、検出手段は薬剤導入装置12および/または薬剤導入装置13がケース10またはメーター11の近くにあることを検出するように構成されていることもある。例えば、検出手段は薬剤導入装置12に取り外し可能に固定または接着される近接ラベル25または近接ラベル26とメーター11に設けられた対応する近接ラベル27とを含んでいることもある。近接ラベルは接着性の裏材が取り付けられた磁気的なラベルの形態であることがあり、または薬剤導入ペン12に取り付けられるその他のタイプのセンサーであることもある。メーター11はインスリンペン12のメーター11に対する位置を検出する対応する電気回路を有している。したがって、インスリンペン12の動きはメーター11によって検出され監視される。例えば、注入装置(インスリンペン)がある特定の距離、例えば15.24cm(6インチ)以上メーター11から離されると、メーター11は作動することになる。薬剤導入ペン12がケース10に取り付けられる必要がないのと同時に薬剤導入ペン12の使用開始が監視できることがこの実施の形態の利点である。
【0024】
さらに、薬剤導入装置の検出手段は薬剤導入ペン10内または薬剤導入ペン10に被せられたキャップの裏に組み込まれた無線周波数(RF)発生手段を含んでいることもあり、キャップが薬剤導入ペン10から取り外されるとRF信号がRF受信手段を備えたケース10またはメーター11に送信される。この動作は記録されて自己監視情報と相互に作用するようにされる(グラフに表される)。この実施の形態は患者によって実行される必要な実際の工程を減らし、したがって、処方された治療プランに従うのを容易にする。
【0025】
どのような構成の検出手段21でも、スイッチまたはセンサーがメーター11と通信できるように結合されていること、および/または、ケース自体に組み込まれたマイクロプロセッサーおよびメモリチップまたはそれらに類似したものに通信できるように結合されていていることもあり、メーター11およびマイクロプロセッサー/メモリチップもシリアル通信ポートまたは電気的接続部23によるなどして電気的に結合されていることもある。代わりに、メーター11はケース10に一体化されていることもあり、その場合メーター11およびケース10は全体でPDA装置を形成している。
【0026】
薬剤注入器が導入されるべき薬剤を予め充填されている場合、別のセンサーが薬剤注入器から供給された薬剤の量を自動的に測定するために用いられることもある。このようにして、患者は供給された薬剤の量を日誌に記すまたは記録することから解放される。
【0027】
ケース10にはメーター11がケース10内に存在するかケース10から取り出されたかを検出して患者がインスリン投与の前に血糖値の測定を実施したか否かを判定するためのメーター検出器(図示されていない)が設けられていることもある。このようにして、適切な催促および問い合わせが患者に対して行われる。そのようなメーター検出器はメーター11が保持されているケース10の一部に取り付けられた機械的な単極スイッチであることもある。
【0028】
ケース10はケースカバーが開いているか閉じているかを検出するセンサー(図示されていない。)をさらに含んでいることもある。適切なセンサーはケースカバーの向かい合う側面に配置された2つの柔軟な磁気テープを用いていることもある。ケースが閉じられていると、システムはバッテリーの電力を節約するために「スリープ」モードに入るようにトリガされることもある。
【0029】
ケース10はケース、メーター、および/または、PDAと、ケース10の外部の装置またはシステム16との間の通信をできるようにする手段をさらに含んでいることもある。そのような外部の装置16の例として、携帯電話、PDA、コンピューター、腕時計、ポケットベル、プリンター、または無線通信の送信および/または受信が可能なその他の任意の装置などがある。そのようにするために、無線通信装置15がケースに一体化されていてデータを外部の装置16に送信しそしておそらく外部の装置16からデーターを受信するようになっている。さらに、無線通信装置15はメーター11および/または薬剤導入装置12および薬剤導入装置13との間でデータを交換するようになっていることもある。無線通信装置15は、例えばRF信号(例えば、ブルートゥース・リンク)を介して情報を伝達することもある。
【0030】
使用時には、システム2は図3のブロック図に示されたひとつまたは複数のいずれかのプロトコルに基づいて動作するように構成されている。図3のプロトコル30では、薬剤導入装置12および薬剤導入装置13がケース10から取り出されたとき、またはケース10からある特定の距離だけ離されたとき(ステップ32)、検出器またはセンサー21は薬剤導入装置が取り外されたことを示し好ましくはそのイベント(事象の発生)のタイムスタンプを詰める(crating)信号をメーター11に送る。これによってメーター11がトリガされて作動を開始し映像を(ディスプレー22に)表示し使用者に音響的に(図示されていないマイクロフォンによって)促進しまたは問い合わせる(ステップ34)。例えば、使用者は血糖値の測定を行うようにまたは薬剤導入情報を入力するように問い合わされまたは催促されることもある。使用者がメーター11を用いて血糖値の測定を行うと、メーター11は使用者にヘルスケアプラクティショナー(Health Care Practitioner:HCP)から入力されたアルゴリズムおよび/または使用者によって予めまたはそのときに入力されたパラメーターに基づいて指定されたインスリンの投薬量を示して催促する(ステップ36)。使用者は指定された投薬量で薬剤導入装置12を用いて自分自身への投与を行うことも行わないこともある。使用者はリアルタイムの状況が指定された投薬量以外での服用を必要とする場合には指定された以外の投薬量での服用を選択することもある。そのような状況は、例えば糖尿病患者による見込まれたすなわち典型的な摂取量の炭水化物に対する変化があった場合、すなわち、食事中に患者が食事の前に見込んでいた量よりも多いまたは少ない量の炭水化物を食べたことに気づいた場合などがある。別の場合には、患者は血糖値の測定を選択しないにもかかわらずある投薬量のインスリンを投与することもある。これは、患者の血糖値が例えば食事の後のように時刻によらずかなり予測できる場合に起こり得るシナリオである。血糖値の測定が行われない場合、メーター11は使用者にある投薬量のインスリンが投与されたか否かを問い合わせて、インスリンが投与されていた場合には使用者に薬剤の投薬量の情報を入力し検証するように要求する(ステップ38)。投薬量の情報の入力を容易にするために、システムは例えば1単位のインスリンというような設定されたデジタル読み取り値を最初に表示するように構成されていて、使用者はその読み取り値を好ましくはメーター11またはPDAのアップ・ダウントグルキーによって調節するようになっていることもある。投薬量が入力されるとメーター11は投薬量データをメーターのメモリに記憶する。投薬量のデータは次に無線通信装置15を介して自動的に外部の装置16に伝達されるか使用者が伝達するように催促される。薬剤導入装置12および薬剤導入装置13がケース10内に戻されると、メーター11はトリガされてターンオフすることもある。
【0031】
図3のプロトコル40のフロー図に示されているように、システム2およびメーター11は使用者によって作動されるスイッチによって作動を開始および停止されて(ステップ42)使用者が利用可能なシステムメモリのチェック、データ、アルゴリズム、またはプログラムのダウンロード、データの送信および入力、メーターまたはPDAのカスタム化すなわちフォーマットのような複数の機能を実行できる(ステップ44)ように構成されている。プロトコル50のフロー図に示されているように、メーター11は試験細片18をメーター11に挿入することによって作動を開始(ステップ52)してそれによってプロトコルのフロー図30に示されているのと同様のプロトコル・ステップ(ステップ54からステップ64)がトリガされるようにも構成されている。
【0032】
図4は、インスリンペン100、ペンキャップ110、および血糖値メーター120を含む本発明の血糖値監視システムの模式図である。インスリンペン100およびペンキャップ110は両方ともさまざまな一般的な家庭用洗剤(漂白剤およびアルコール)および個人用薬剤(ハンドモイスチャークリーム)に対する耐性および摩滅および分裂に対する耐性を備えた耐久性のあるIMプラスチックから作られていることもあるハウジングを有している。インスリンペン100はRF送受信ユニット130(以下「RF Tx/Rxユニット130」と呼ぶ。)、ローカルマイクロコントローラ140、電源150、およびイベントスイッチ160を含んでいる。ペンキャップ110はインスリンペン100に圧力嵌めされるか螺合されるように適合されている。ペンキャップ110はペンキャップ110がインスリンペン100から取り外されたときにイベントスイッチ160が作動するように配置されている。ローカルマイクロコントーラ140は記憶素子を含んでいることもある。さらに、ローカルマイクロコントローラ140は、周波数、タイミング、電力管理、イベントの記憶、及び局所的な電気回路(すなわち、イベントスイッチ160)を制御することもある。イベントスイッチ160は作動したときに回路を閉じる機械的スイッチであることもある。このイベントスイッチ160はペンキャップ110がインスリンペン100から取り外されたときに作動する。イベントスイッチ160が作動している間、RF信号がインスリンペン100から血糖値メーター120に送られることもある。イベントスイッチ160が作動したことがローカルマイクロコントローラ140によって記録されて記憶されることもある。スイッチの分野の当業者に知られた、使用者の動作(例えば圧力の解除)によって作動するさまざまな例がある。電源150はRF Tx/Rxユニット130、ローカルマイクロコントローラ140、およびイベントスイッチ160に電力を供給している。電源150はペンキャップ110に一体化された接触部またはペンキャップに一体化されていない接触部によってさまざまなコンポーネントに電気的に結合されている。
【0033】
RF Tx/Rxユニット130は、例えばチプコン(Chipcon)のシーシー1000トランシーバーなどのトランシーバーと433MHzのFM帯域の周波数を用いるワイヤループアンテナとを含んでいることもある。適切な電源150の例として、シルバー・オキサイド・レイ・オーバック357(Silver Oxide RayOVac 357)がある。イベントスイッチ160の非限定的な例として、パナソニックのプッシュボタン・スイッチEVQ−PAC04Mがある。
【0034】
インスリンペン100の電気的なコンポーネントを減らした別の実施の形態では、RF Tx/Rxユニット130およびローカルマイクロコントローラ140はひとつのパッケージとして結合されていて使用されるメモリには外部のEEPROMが用いられることもある。RF Tx/Rxユニット130およびローカルマイクロコントローラ140を一体化した非限定的な例としてはテキサス・インスツルメント(Texas Instrument)のミックスト・シグナル・プロセッサー(Mixed Signal Processors:MSP)、またはチプコンのCC1010などがある。
【0035】
インスリンペン100による電力の消費を減らしたさらに別の実施の形態では、ローカルマイクロコントローラ140および電源150は無線周波数特定タグ(radio frequency identification tag:RFID)に置き換えられていることもある。RFIDと通信するために、血糖値メーター120はRFIDに電力を供給できるように十分強いRF信号発生手段を必要とするであろう。さらに、ペンキャップ110が電源150に代わる電力発生器を有するように適合されていることもある。ペンキャップ110がインスリンペン100から取り外されたとき、このペンキャップ110がインスリンペン100から取り外される動きがインスリンペン100用の電力を生み出すために用いられることもある。
【0036】
血糖値メーター120は電子記録日誌および(RF Tx/Rxユニット130と同様の)RF送受信手段をも含んでいることもある。ある実施の形態では、血糖値メーター120は市販されているライフスキャン(LifeScan)のワン・タッチ(One Touch:登録商標)ウルトラスマート(UltraSmart:登録商標)メーターと同様のものであることもある。血糖値メーター120およびインスリンペン100の間の通信はRFプロトコルによって行われる。血糖値メーター120は「マスター」として動作しインスリンペン100内の電気的要素は「スレーブ」として動作する。血糖値メーター120はイベント(事象)、例えばインスリンペンがケースから取り外されたことまたはペンキャップがインスリンペンから取り外されたことが記録されたか否かを判定することを定期的にインスリンペン100に催促する。イベントがスレーブ(インスリンペン)によって記録されていた場合、イベントが起こったことおよびイベントの時刻を示すメッセージが血糖値メーター120に送られることになる。血糖値メーター120はそのイベントを記録し、さらに患者に別の情報を問い合わせたり通知を行ったりすることもある。
【0037】
本発明のある実施の形態では、使用者はペンキャップ110をインスリンペン100から取り外すこともある。取り外されたとき、使用者がインスリンの注入を開始しようとしていることを示すRF信号がインスリンペン100から血糖値メーター120へ送られる。血糖値メーター120は次に使用者に対して使用者の最新の食事前の血糖値および食事後の血糖値をLCD画面上に示すこともある。血糖値メーター120はこれらの血糖値が正しいか否かを確認することを催促して血糖値が正しくない場合には血糖値メーター120はそれに応じて使用者が血糖値を調整できるようにすることもある。本発明のある実施の形態では、血糖値メーター120はインスリンペン100によって注入されるべき推奨されたレベルのインスリンが血糖値メーター120のLCDに表示される大量計算アルゴリズム(bolus calculation algorithm)を実行することもある。状況に応じて、使用者は推奨された投薬量または異なる投薬量のインスリンを注入することもある。血糖値メーター120はインスリンペン100に残っているインスリンの在庫量にアクセスできるようにするために実際に投与されたインスリンの量を入力するように使用者に催促することもある。インスリンペン100のインスリンが少ない(例えば、10%の残量)場合には、血糖値メーター120は必要な場合に別のインスリンペンを調達することを使用者に催促することもある。本発明の別の実施の形態では、血糖値メーター120は、朝食、昼食、夕食、間食、アルコール、炭水化物、脂肪、カロリー、たんぱく質、薬剤、ピル、インスリン、ポンプ・ボラス(pump bolus)、健康メモ(health notes)、ケトン、HBA1C、ミクロアルブミン、コレステロール、血圧、および運動などの別のタイプの情報をイベントスイッチ160を作動したのちに入力するように催促することもある。
【0038】
本発明の利点は、使用者がインスリンペン100を用いてインスリンが注入された時刻を手作業で記録する必要がないことである。これによって使用者がデータをより効率的に収集して自分の疾病を管理することを容易にする。本発明の別の利点は、スイッチ160が作動することにより使用者の糖尿病治療に使用者が従うことを容易にするあるいくつかのステップを実行することを促す無線信号が血糖値メーター120に送られることである。血糖値メーター120は、途切れることなく最新のおよび関連する血糖濃度を表示し、使用者に血糖濃度を更新することを催促し、最新の血糖値の測定値に基づくインスリンの服用を薦め、使用者にその他の関連するデータを入力することを催促することもある。
【0039】
本発明の別の実施の形態では、インスリンペン100は薬剤(薬剤は例えばグルコトロールXL(Glucotrol XL:登録商標))を収容している「ピルボトル」に置き換えられることもある。そのような実施の形態では、「ピルボトル」はTx/Rxユニット130、ローカルマイクロコントローラ140、電源150、およびイベントスイッチ160を含んでいるだろう。さらに、ペンキャップ110はその場合にはピルボトルキャップに置き換えられなければならない。
【0040】
本発明によって、本発明の方法を実行するのに用いるためのキットも提供される。そのキットはCD−ROMまたはその類似物に記憶されたソフトウェアプログラムをさらに含むこともあり、そのソフトウェアプログラムは血糖値メーター、PDA、および/または、システムで用いるための外部のデータ装置にダウンロードされることもある。最後に、キットは本発明の装置およびシステムを使用するための使用説明書をさらに含んでいることもある。これらの使用説明書は、キット内のパッケージ、ラベルインサート、またはコンテナのうちのひとつまたは複数のものに配置されていることもあり、また、CD−ROMまたはその類似物に設けられていることもある。
【0041】
これまでの記載は本発明の原理を単に例示したものである。当業者は本明細書に明らかに記載または例示されていないが本発明の原理を具現化し本発明の精神および範囲に包含されるさまざまな構成を考案できるであろうことが適切に認識されるであろう。さらに、本明細書に記載された全ての例および限定的な文言は本発明の原理および本発明の分野を促進するために発明者が貢献した概念を読者が理解するのを助けることを主として意図していてそれらの具体的に記載された例および限定条件へ限定されずに解釈されなければならない。さらに、本発明の原理、側面、実施の形態および本発明の具体的な例を述べた全ての文言はそれらの構造上および機能上の等価物の両方を包含することが意図されている。さらに、そのような等価物は現在公知の等価物および将来に開発される等価物すなわち構造にかかわらず同じ機能を実行する全ての開発された要素の両方を包含することが意図されている。したがって、本発明の範囲は本明細書に図示され記載された例示的な実施の形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲および精神は特許請求の範囲によって表現されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に基づくシステムの例示的な実施の形態の模式図である。
【図2】本発明に基づくシステムの別の例示的な実施の形態の斜視図である。
【図3】本発明の方法のひとつまたはいくつかの例示的な実施の形態に基づくプロセスの一連の過程を示したフロー図である。
【図4】本発明のある実施の形態に基づくシステムの別の例示的な実施の形態の模式図である。
【符号の説明】
【0043】
2 システム
10 コンテナ
11 血糖値測定メーター
12 薬剤導入装置
13 薬剤導入装置
14 切開器
15 無線通信装置
16 外部の装置
18 試験細片
19 ランセット
21 検出手段
22 ディスプレー
23 電気的接続部
24 針
25,26,27 近接ラベル
100 インスリンペン
110 ペンキャップ
120 血糖値メーター
130 RF送受信ユニット
140 ローカルマイクロコントローラ
150 電源
160 イベントスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤導入システムであって、
薬剤導入装置と、
使用されていない上記薬剤導入装置を収容するためのホルダーと、
上記薬剤導入装置が、上記ホルダー内にまたは上記ホルダーの近くにあることを検出する検出器と、
上記薬剤導入装置の使用者に問い合わせおよび催促するための少なくともひとつのアルゴリズムと、
を有し、
上記少なくともひとつのアルゴリズムが上記薬剤導入装置が上記ホルダーから取り出されたときに駆動される、薬剤導入システム。
【請求項2】
上記ホルダー、上記検出器、および上記少なくともひとつのアルゴリズムが上記薬剤導入システムを収容するためのケース内に組み込まれている、請求項1記載の薬剤導入システム。
【請求項3】
被検体測定メーターをさらに有する、請求項1記載の薬剤導入システム。
【請求項4】
上記少なくともひとつのアルゴリズムが上記被検体測定メーター内に記憶されていて、
上記被検体測定メーターが上記薬剤導入装置が上記ホルダーから取り出されたときに作動を開始する、請求項3記載の薬剤導入システム。
【請求項5】
使用者情報を記憶するための装置と通信するための手段をさらに有する、請求項1記載の薬剤導入システム。
【請求項6】
上記使用者情報が薬剤の投薬量情報を含む、請求項5記載の薬剤導入システム。
【請求項7】
通信するための手段が無線通信手段を含む、請求項5記載の薬剤導入システム。
【請求項8】
上記検出器が、機械的スイッチ、磁気的スイッチ、濃度スイッチ、容量スイッチ、電気的センサー、および光学的センサーからなる集合から選択されている、請求項1記載の薬剤導入システム。
【請求項9】
インスリン注入システムであって、
血液サンプル中の血糖濃度を測定するように構成されたメーターと、
インスリン注入器と、
上記インスリンペンの保管スペースであって、上記インスリン注入器が上記保管スペースから取り出されたときおよび上記保管スペース内に配置さたときに上記メーター内のアルゴリズムを作動させるように適合された検出器を含む、上記保管スペースと、
を有する、インスリン注入システム。
【請求項10】
上記メーターを収容し上記保管スペースを画定するように構成されたケースをさらに有する、請求項9記載のインスリン注入システム。
【請求項11】
データを外部の装置に送りデータを上記外部の装置から受け取るための無線通信手段をさらに有する、請求項9記載のインスリン注入システム。
【請求項12】
上記無線通信手段がRF信号を含む、請求項11記載のインスリン注入システム。
【請求項13】
薬剤導入装置の使用を監視する方法であって、
使用されていない上記薬剤導入装置を保管する過程と、
保管された上記薬剤導入装置を取り出す過程と、
保管された上記薬剤導入装置が取り出されたことを検出する過程と、
上記薬剤導入装置の使用者に上記薬剤導入装置の使用に関する情報を問い合わせるアルゴリズムを作動させる過程と、
を有する、薬剤導入装置の使用を監視する方法。
【請求項14】
上記情報が薬剤の投薬量情報を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
保管された上記薬剤導入装置が取り出された時刻を記録する過程をさらに有する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
上記情報をデータ記憶装置に送る過程をさらに有する、請求項13記載の方法。
【請求項17】
インスリン注入キットであって、
請求項10記載のインスリン注入システムと、
切開器、ランセット、針、および試験細片からなる集合から選択された複数の装置と、
上記インスリン注入システムを用いるための使用説明書と、
を有する、インスリン注入キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−510469(P2007−510469A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538489(P2006−538489)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/036829
【国際公開番号】WO2005/046559
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America