説明

イマチニブの部位特異的送達のための組成物および使用の方法

本発明は、イマチニブ化合物および腸溶性母材または腸溶性コーティングまたはそれらの組み合わせを含み、それによりイマチニブ化合物の少なくとも80%が対象の小腸で放出される、対象に投与するための経口製剤を提供する。その製剤を用いる方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] この発明は、イマチニブを含む製剤、およびその製剤を使用する方法の分野における。
【背景技術】
【0002】
[0002] イマチニブは、慢性骨髄性白血病(CML)におけるフィラデルフィア染色体異常により作り出される構成的な異常なチロシンキナーゼであるbcr−ablチロシンキナーゼを阻害するタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。イマチニブはbcr−abl陽性細胞系およびフィラデルフィア染色体陽性骨髄性白血病からの新しい白血病細胞において増殖を誘導し、アポトーシスを誘導する。エクスビボ(ex vivo)の末梢血および骨髄の試料を用いるコロニー形成アッセイにおいて、イマチニブはCMLの患者からのbcr−abl陽性コロニーの阻害を示す。
【0003】
[0003] インビボで、イマチニブはbcr−ablを形質移入したマウス骨髄細胞および急性転化期にあるCMLの患者に由来するbcr−abl陽性白血病細胞系の腫瘍増殖を阻害する。イマチニブは血小板由来成長因子(PDGF)および幹細胞因子(SCF)に関する受容体チロシンキナーゼならびにc−kitの阻害剤でもあり、それはPDGFおよびSCFに仲介される細胞のイベントを阻害する。インビトロでは、イマチニブは活性化c−kit変異を発現する消化管間質腫瘍(GIST)細胞において増殖を阻害し、アポトーシスを誘導する。
【0004】
[0004] イマチニブは、イマチニブメシレートの形で患者に投与される。イマチニブメシレートは白色〜灰白色〜茶色がかった、または黄色がかった色を帯びた結晶質の粉末である。イマチニブメシレートは化学的には4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミド メタンスルホネートとして知られており、その分子式はC2931O・CHSOであり、その分子量は589.7である。イマチニブメシレートの構造を下記の式Iに示す:
【0005】
【化1】

【0006】
式I。
[0005] イマチニブメシレートは非常に水に溶けやすくpH5.5以下の水性緩衝液に溶けやすいが、中性/塩基性の水性緩衝液にはごくわずかに溶ける〜溶けない。
非水性溶媒中では、その薬物は、ジメチルスルホキシド、メタノールおよびエタノールに自由に溶ける〜ごくわずかに溶けるが、n−オクタノール、アセトンおよびアセトニトリルには溶けない。イマチニブメシレート化合物は、例えば”ピリミジン誘導体およびその製造のためのプロセス”に関するZimmermannへの米国特許第5,521,184号、および”ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド(Suberoylanilide Hydromaxic Acid)およびイマチニブメシレートの組み合わせを用いて白血病を処置する方法”に関するBhallaらへの米国特許出願公開第2004/0127571号において開示されている。これらの参考文献の両方を本明細書に援用する。
【0007】
[0006] イマチニブメシレートは、Gleevec(登録商標)の商標名の下で販売されている。Gleevec(登録商標)のフィルムコートされた錠剤は、100mgまたは400mgのイマチニブ遊離塩基に相当するイマチニブメシレートを含む。Gleevec(登録商標)は下記の不活性成分も含む:コロイド性二酸化ケイ素(NF)、クロスポビドン(NF)、ステアリン酸マグネシウム(NF)および微結晶セルロース(NF)。錠剤は、酸化第2鉄、赤色(NF);酸化第2鉄、黄色(NF);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(USP);ポリエチレングリコール(NF)およびタルク(USP)でコートされている。
【0008】
[0007] Gleevec(登録商標)は一般に、慢性期CMLにある成人患者に400mg/日、および移行期または急性転化期にある成人患者に600mg/日の投薬量で処方される。加えて、Gleevec(登録商標)は切除不能の、および/または転移した、悪性のGISTを有する成人患者に400mg/日または600mg/日の投薬量で推奨される。Gleevec(登録商標)は一般に、食物および大きなコップ1杯の水と共に、1日1回投与される400mgまたは600mgの用量で、および400mgを1日2回として投与される800mgの投薬量で経口投与されるように処方される。
【0009】
[0008] しかし、イマチニブの摂取は、それに限定するわけではないが浮腫、悪心、嘔吐、倦怠、筋痙攣、下痢、腹痛、および他の不都合な反応を含む望ましくない副作用と関係している。
【0010】
[0009] 従って、イマチニブの有効性に影響を与えずにその副作用の少なくとも一部を減少させる、または無くす、改良されたイマチニブ製剤の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,521,184号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0127571号
【発明の概要】
【0012】
[0010] 発明者らは、イマチニブのIV投与が嘔吐の発生を無くすことを観察し、嘔吐はイマチニブの局所的な胃への作用の結果であるらしいと結論づけた。従って、この望まれない副作用の重さおよび/または頻度は、イマチニブが対象の胃の中でのイマチニブの放出を防ぐ、または減少させる製剤において投与された場合、少なくする、または完全に無くすことができる。加えて、他の上部GIの副作用、例えば消化不良も、イマチニブを腸で放出することにより防がれる、または減少するであろう。
【0013】
[0011] 従って、本発明は、1観点において、イマチニブ化合物および腸溶性母材または腸溶性コーティングまたはそれらの組み合わせを含み、それによりイマチニブ化合物の少なくとも80%が対象の小腸で放出される、対象への投与のための経口製剤を提供することにより、一般に用いられているイマチニブ製剤の欠点に取り組む。
【0014】
[0012] 1組の態様において、経口製剤のイマチニブ化合物の少なくとも一部はナノ粒子の形であり、イマチニブ化合物のナノ粒子はさらに少なくとも1種類の表面安定剤を含む。一部の態様において、製剤は少なくとも第2の有効成分を含み、それは場合によりナノ粒子の形で存在していてよい。一部の態様において、少なくとも第2の有効成分は抗嘔吐化合物、下痢止め化合物、およびH拮抗剤から選択される。
【0015】
[0013] 別の観点において、本発明は、本発明の前の観点のいずれかの態様に従って対象に製剤を投与することを含む、イマチニブ療法が適用できる疾患を有する対象を処置する方法の方法を提供する。1態様において、その方法は約800mg相当のイマチニブを有する1回分の日用量の製剤を投与するものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0014] 本出願のよりよい理解のため、下記の定義を提供する:
[0015] 用語”約”は、当業者により理解され、それが用いられる文脈においてある程度異なるであろう。それが用いられている文脈を与えられた当業者にとって明らかでないその用語の使用があった場合、”約”は特定の語のプラスまたはマイナス10%までを意味するであろう。
【0017】
[0016] ”可溶性の乏しい薬物”という語句は、中性pHにおいて水性の媒体、例えば水中での可溶性が乏しい薬物を指す。例えば、可溶性の乏しい薬物は、中性pHにおいて、水性の媒体中で、約30mg/ml未満、約20mg/ml未満、約10mg/ml未満、または約1mg/ml未満の溶解度を有する薬物である。
【0018】
[0017] 水への溶解度は、当技術で既知のいずれかの適切な方法により決定することができる。例えば、溶解度は、療法薬を恒温水槽中で37℃の温度で維持された攪拌された、または振とうされた媒体に、溶解した、および溶解していない状態の間で平衡が確立されて溶解した薬物の濃度が一定であるまで添加することにより決定することができる。有効薬剤で飽和した得られた溶液を次いで通常は圧力の下で0.8ミクロンMilliporeフィルターを通して濾過し、溶液中の濃度を、重量測定、紫外分光分析、クロマトグラフィーを含むいずれかの適切な分析法により測定することができる。
【0019】
[0018] 本明細書で用いられる用語”約2000nm未満の有効平均粒径”は、ナノ粒子状イマチニブメシレート粒子の少なくとも重量による(または他の適切な測定技法による、例えば数、体積等による)約50%が、例えば沈降フロー分画、光子相関分光法、光散乱、ディスク遠心分離、および当業者に既知の他の技法により測定した場合に、約2000nmよりも小さい大きさを有することを意味する。
【0020】
[0019] 安定なイマチニブメシレートナノ粒子状粒子に関して本明細書で用いられる”安定な”は、次のパラメーターの内の1種類以上を言外に意味するがそれらに限定されない:(1)その粒子は、時間が経つにつれて粒子間引力により容易に感知できるように凝集しない(flocculate)、もしくはかたまりにならない(agglomerate)、またはそうでなければ粒子の大きさが著しく増大しない;(2)その粒子の物理的な構造が時間が経つにつれて、例えば非晶質相から結晶質相への変換により変わらない;(3)その粒子が化学的に安定である;および/または(4)イマチニブメシレートが本発明のナノ粒子の製造においてイマチニブメシレートの融点における、またはそれより上の温度における加熱工程にさらされていない。
【0021】
[0020] 用語”一般に用いられている”または”非ナノ粒子状有効薬剤”は、可溶化された、または約2000nmより大きい有効平均粒径を有する有効薬剤を意味するであろう。本明細書で定義されるナノ粒子状有効薬剤は、約2000nm未満の有効平均粒径を有する。
【0022】
[0021] 概して、本発明は、イマチニブ化合物ならびに腸溶性母材、または腸溶性コーティング、または腸溶性母材および腸溶性コーティングの組み合わせを含む製剤を提供する。イマチニブ化合物は遊離塩基(すなわちイマチニブそれ自体)の形で、または限定するわけでは無いがイマチニブメシレートを含むイマチニブの塩として存在していてよい。
【0023】
[0022] イマチニブの誘導体を用いてもよい。1態様において、イマチニブ化合物は下記の式IIにより表される:
【0024】
【化2】

【0025】
式II

[0023] 式IIにより包括される様々な態様において、それぞれの置換基R〜R23は同じまたは異なっていてよく、互いに独立して次のものからなるグループから選択される:−H;−OH;−F;−Cl;−Br;−I;−NH;アルキル−およびジアルキルアミノ;線状または分枝C1−6アルキル、C2−6アルケニルおよびアルキニル;アラルキル;線状または分枝C1−6アルコキシ;アリールオキシ;アラルコキシ;−(アルキレン)オキシ(アルキル);−CN;−NO;−COOH;−COO(アルキル);−COO(アリール);−C(O)NH(C1−6アルキル);−C(O)NH(アリール);スルホニル;(C1−6アルキル)スルホニル;アリールスルホニル;スルファモイル;(C1−6アルキル)スルファモイル;(C1−6アルキル)チオ;(C1−6アルキル)スルホンアミド;アリールスルホンアミド;−NHNH;−NHOH;アリール;ならびにヘテロアリール;ここで、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびヘテロアリール部分は、場合により次のものからなるグループから独立して選択される1個以上の基で置換されていてよい:−OH;−F;−Cl;−Br;−I;−NH;アルキル−およびジアルキルアミノ;線状または分枝C1−6アルキル、C2−6アルケニルおよびアルキニル;アラルキル;線状または分枝C1−6アルコキシ、アリールオキシ;アラルコキシ;−(アルキレン)オキシ(アルキル);−CN、−NO、−COOH、−COO(アルキル);−COO(アリール);−C(O)NH(C1−6アルキル);−C(O)NH(アリール);スルホニル;(C1−6アルキル)スルホニル;アリールスルホニル;スルファモイル;(C1−6アルキル)スルファモイル;(C1−6アルキル)チオ;(C1−6アルキル)スルホンアミド;アリールスルホンアミド;−NHNH;ならびに−NHOH。
【0026】
[0024] イマチニブ化合物は、患者の胃へのその局所的作用を防ぎ、そうして悪心および/または嘔吐の発生を減少させる、または無くすように配合される。1態様において、この結果はイマチニブ化合物を、胃の環境において(例えば2.5未満のpHで)可溶性が乏しい、または溶けないが、例えば約4から約8までのようなより高いpHでは溶ける支持体でコートすることにより成し遂げられる。腸溶性コーティングのこの特徴は、イマチニブ化合物の少なくとも80%が対象の小腸で放出されることを保証する。好ましくは、イマチニブ化合物の少なくとも約85%が対象の小腸で放出され、より好ましくは、イマチニブ化合物の約90%が対象の小腸で放出され、より好ましくは、イマチニブ化合物
の約95%、特に好ましくは、約100%が対象の小腸で放出される。
【0027】
[0025] 適切な腸溶性コーティングは当技術で周知であり、ポリマーコーティング材料、例えばセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリマレテート(trimaletate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、アンモニオメタクリレートコポリマー類、例えば商標名EUDRAGIT(登録商標)RTM、RS、およびRLの下で販売されているそれら、ポリアクリル酸ならびにポリアクリレートおよびメタクリレートコポリマー類、例えば商標名EUDRAGIT(登録商標)SおよびLの下で販売されているそれら、ポリビニルアセトアルジエチルアミノアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、シェラック;ヒドロゲル類およびゲル形成材料、例えばカルボキシビニルポリマー類、アルギン酸ナトリウム、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、デンプン、ならびに水の吸収およびポリマー母材の拡張を促進するために架橋の程度が低いセルロースを基にした架橋ポリマー類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、架橋デンプン、微結晶セルロース、キチン、アミノアクリル−メタクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)RS−PM、Rohm & Haas)、プルラン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、(膨張性親水性ポリマー類)ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)(分子量約5k〜5,000k)、ポリビニルピロリドン(分子量約10k〜360k)、陰イオン性および陽イオン性ヒドロゲル類、低いアセテートの残留を有するポリビニルアルコール、寒天およびカルボキシメチルセルロースの膨張性混合物、マレイン酸無水物およびスチレン、エチレン、プロピレンまたはイソブチレンのコポリマー類、ペクチン(分子量約30k〜300k)、多糖類、例えば寒天、アカシア、カラヤ、トラガカント(tragacanth)、アルギン類およびグアー、ポリアクリルアミド類、POLYOX(登録商標)、ポリエチレンオキシド類(分子量約100k〜5,000k)、AQUAKEEP(登録商標)アクリレートポリマー類、ポリグルカンのジエステル類、架橋ポリビニルアルコールおよびポリN−ビニル−2−ピロリドン、ナトリウムデンプングルコレート(例えばEXPLOTAM(登録商標);Edward Mandell C. Ltd.);親水性ポリマー類、例えば多糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはカルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル類、ポリエチレンオキシド類(例えばPOLYOX(登録商標)、Union Carbide)、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、マルトデキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、グリセロール脂肪酸エステル類、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー類(例えば、EUDRAGIT(登録商標)、Rohm and Haas)、他のアクリル酸誘導体、ソルビタンエステル類、天然ゴム類、レシチン類、ペクチン、アルギネート類、アンモニアアルギネート、ナトリウム、カルシウム、カリウムアルギネート類、プロピレングリコールアルギネート、寒天、およびゴム類、例えばアラビア、カラヤ、イナゴマメ(locust bean)、トラガカント、カラギーン類(carrageens)、グアー、キサンタン、スクレオグルカンならびにそれらの混合物およびブレンドが含まれるが、それらに限定されない。
【0028】
[0026] 当業者には理解されるであろうが、可塑剤、潤滑剤、溶媒等の賦形剤をコーティングに添加してもよい。適切な可塑剤には、例えばアセチル化モノグリセリド類;ブチルフタリルブチルグリコレート;ジブチルタルタレート;ジエチルフタレート;ジメチルフタレート;エチルフタリルエチルグリコレート;グリセリン;プロピレングリコール;トリアセチン;シトレート;トリプロピオイン(tripropioin);ジアセチン;ジブチルフタレート;アセチルモノグリセリド;ポリエチレングリコール類;ヒマシ油;トリエチルシトレート;多価アルコール、グリセロール、アセテートエステル類、グリセロールトリアセテート、アセチルトリエチルシトレート、ジベンジルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジオクチルアゼレート、エポキシ化タレート(tallate)、トリイソオクチルトリメリテート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−i−オクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジ−n−アンデシルフタレート、ジ−n−トリデシルフタレート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、およびジブチルセバケートが含まれる。
【0029】
[0027] さらに、本発明により意図される典型的な腸溶性コーティングは、下記の特許において開示されている腸溶性コーティングを含み、そのそれぞれを援用する。
[0028] 本発明により意図される典型的な腸溶性コーティング組成物の1種類が、K. G. Wagner et al. , 陽イオン性Euragit RS 30Dフィルムコーティングを通る薬物放出機構としての陰イオンに誘導される水流, The AAPS Journal 2005, 7(3) Article 67, E668-E677により開示されている。Wagnerは、ドイツ、デュッセルドルフのDegussa GmbHにより商標名EUDRAGIT(登録商標)RDの下で販売されている陽イオン性ポリメタクリレートを用いる持続放出性経口剤形のためのポリマーコーティング組成物を開示している。
【0030】
[0029] 本発明により意図される別の典型的な腸溶性コーティング組成物が、N. Huyghebaert et al. , 腸溶性コーティングおよびヒトの回腸のターゲッティングのためのコーティングポリマー類のインビトロでの評価, International Journal of Pharmaceutics, 2898 (2005), 26-27により開示されている。Huyghebaertらは、商標名EUDRAGIT(登録商標)の下で販売されている多数の陽イオン性ポリメタクリレート類を、腸溶性の特性および回腸のターゲッティングの評価のために試験した。
【0031】
[0030] 本発明の別の態様は、錠剤の母材全体に分布するイマチニブ化合物を含む。医薬的に許容できるタイプおよび量の界面活性剤および/または賦形剤と共に、錠剤は、摂取された際に、薬物を生理的に吸収できる形で与えるのに十分な量で薬物を徐々に減らす(erode)であろう。
【0032】
[0031] 本発明により意図される適切な母材物質は、微結晶セルロース(microcrytalline cellulose)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース類、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、アルキルセルロース類、例えばメチルセルロースおよびエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート(acteate)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート(acteate)フタレート、セルロースアセテート(acteate)トリメリテート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリアルキルメタクリレート類、ポリビニルアセテートおよびそれらの混合物を含むがそれらに限定されない親水性ポリマー類、疎水性ポリマー類およびそれらの混合物を含む。
【0033】
[0032] あるその母材物質は、本明細書に援用する米国特許第7,175,854号において教えられているような、脂肪族アルコール、トリグリセリド、部分グリセリドおよび脂肪酸エステルのグループから選択される1種類以上の賦形剤を含む。一例によると、有効成分はi)少なくとも1種類の脂肪族アルコールおよび少なくとも1種類の固形パラフィンを含む混合物からなる賦形剤の母材中で、ii)少なくとも1種類のトリグリセリドおよび少なくとも1種類の固形パラフィンを含む混合物からなる賦形剤の母材中で、iii)少なくとも1種類の部分グリセリドおよび少なくとも1種類の固形パラフィンを含む混合物からなる賦形剤の母材中で、またはiv)少なくとも1種類の脂肪酸エステルおよび少なくとも1種類の固形パラフィンを含む混合物からなる賦形剤の母材中で分散している。これらの母材は高度に安定であり、有効成分を粒径および母材の組成により制御された方式で放出し、有効成分の均一な送達により優れた流動の特性、優れた圧縮性を示す。酸に不安定な(acid−labile)有効成分、例えばイマチニブ化合物の場合、母材の賦形剤の選択により耐酸性を獲得することが可能であり、経口の形の場合、耐酸性コーティング(すなわち腸溶性コーティング)と共に調合することが可能である。
【0034】
[0033] 本発明の別の適切な母材がDoshiらへの米国特許第7,157,100号(”’100号特許)において記述されており、本明細書に援用する。’100号特許は、療法的有効濃度を維持するための有効薬剤の制御された送達のために意図された母材形成ゲル化剤を含む制御放出性多層組成物を開示している。母材形成ゲル化剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、トラガカントゴム、アカシアゴム、グアーゴム、ペクチン、修飾されたデンプン誘導体、キサンタンゴム、イナゴマメゴム、アルギン酸ナトリウムからなるグループから選択され、最も好まれるものはヒドロキシプロピルメチルセルロース、すなわちMethocel(登録商標)であり、それは胃液と接触すると膨張およびゲル化し、放出されたガスを捕え制御された方式で有効薬剤を放出する母材構造を形成する。
【0035】
[0034] ’100特許の別の母材形成ゲル化剤は、4,000cpsから約100,000cpsまでの範囲の粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。適切な商業的に入手できるヒドロキシプロピルメチルセルロース(粘度3000 5600 cP)は、商標Methocel(登録商標)K4Mの下で入手でき、メチルセルロース(粘度80000 120000 cP)は、商標Methocel(登録商標)K100Mの下で入手できる。
【0036】
[0035] 本発明により意図される別の適切な母材組成物には、本明細書に援用するM. Baluom, et al. , HPMC母材からのスルピリドおよびデカン酸ナトリウムの同調した放出:ラットの腸におけるスルピリドの吸収を増進するための合理的アプローチ, Pharmaceutical Research, Vol 17, No. 9, (2000) 1071-1076において記述されている母材組成物が含まれる。Baluomらは異なる量のデカン酸ナトリウムおよびHPMCを含む母材組成物ならびにそれらの異なる侵食速度を開示している。本発明により意図されるさらに別の母材組成物が、M. H. Amaral, et al. , 持続放出性錠剤からのナプロキセンの放出におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび硬化ヒマシ油の作用, AAPS PharmSciTech 2001; 2 (2) article 6およびR.O. Williams III, et al. , ヒドロキシプロピルメチルセルロース母材の錠剤から親油性薬物を回収する方法, AAPS PhramSciTech 2001, 2 (2) article 8において開示されており、その両方を本明細書に援用する。Amaralらは、親水性(HPMC)および疎水性(硬化ヒマシ油)製品、増量剤、および緩衝剤を含む二重圧縮母材錠剤の異なる組成物の、ラットにおけるナプロキセンの放出速度への作用を開示している。
【0037】
[0036] 本発明により意図されるさらに別の適切な分散組成物には、共に表題”タクロリムス(Tacrolimus)の固体分散”を有する米国公開20060177500およびその対応するPCT公開WO2005004848;ならびにK. Yamashita, et al. , タクロリムスの固体分散製剤に関する新規製造法の確立, International journal of Pharmaceutics 267 (2003) 79-91において開示されているそれらの組成物が含まれ、その全てを本明細書に援用する。
【0038】
[0037] さらに別の態様において、イマチニブ化合物は腸溶性コーティングの内部に封入された乳濁液または懸濁液の形であってよい。典型的な乳化剤には次のものが含まれるが、それらに限定されない:エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類、例えば綿実油、ラッカセイ油、コーン胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、ソルビタンの脂肪酸エステル類、またはこれらの物質の混合物、ならびに同様のもの。
【0039】
[0038] 制御放出性母材の追加の限定的でない例が、米国特許第6,326,027;6,340,475;6,905,709;6,645,527;6,576,260;6,326,027;6,254,887;6,306,438;6,129,933;5,891,471;5,849,240;5,965,163;6,162,467;5,567,439;5,552,159;5,510,114;5,476,528;5,453,283;5,443,846;5,403,593;5,378,462;5,350,584;5,283,065;5,273,758;5,266,331;5,202,128;5,183,690;5,178,868;5,126,145;5,073,379;5,023,089;5,007,790;4,970,075;4,959,208;4,59,208;4,861,598;4,844,909;4,834,984;4,828,836;4,806,337;4,801,460;4,764,378;4,421,736;4,344,431;4,343,789;4,346,709;4,230,687;4,132,753;5,591,452;5,965,161;5,958,452;6,254,887;6,156,342;5,395,626;5,474,786;および5,919,826号において記述されている。
【0040】
[0039] さらなる典型的な態様において、錠剤は有効薬剤の使用環境への制御された送達のための浸透デバイス(osmotic device)として特徴づけられる。典型的な浸透デバイスには、下記の特許において開示されている浸透性デバイスが含まれ、そのそれぞれを援用する。
【0041】
[0040] Theeuwesらへの米国特許第4,014,334号(”’334号特許”)、それは薬物の制御された、および継続的な送達のための浸透デバイスを開示しており、ここで、そのデバイスは次のものを含む:a)薬物および浸透剤(osmotic agent)を含む中心部;b)外部の半透性の薄層および内部の半透性の薄層を含む、中心部を取り囲む半透性ラミネート;ならびにc)デバイスの中心部と外部を連絡する通路。2種類の半透性の薄層は、薬物および環境からの流体の存在下でそれらの化学的および物理的に完全な状態を維持する。’334号特許において開示されている通路には、機械的な手順により、または使用環境において侵食可能な要素、例えばゼラチンの栓を侵食することにより形成されるラミネートを通る開き口、開口部または穴が含まれる。
【0042】
[0041] Guittardらへの米国特許第4,576,604号(”’604号特許”)は、中心部の中の薬物および中心部を取り囲む少なくとも1つの薄層を有する浸透デバイスのいくつかの異なる態様を開示している。具体的には、浸透デバイスの1態様は、次のものを含む:a)薬物の制御放出のための浸透剤を含むことができる薬物製剤を含む中心部;b)内側の半透性の薄層、中間のミクロ孔性(microporous)の薄層、および薬物を含む外側の水溶性の薄層を含む半透性の壁;ならびにc)デバイスの中心部と外部を連絡する通路。
【0043】
[0042] Guittardらへの米国特許第4,673,405号(”’405号特許”)は、次のものを含む浸透デバイスを開示している:a)有益な薬剤を含む中心部または区画;b)中心部を取り囲む、有益な薬剤を含む不活性な半透性の壁;およびc)浸透デバイスの壁の中の少なくとも1つの通路、それは浸透デバイスが、流体である使用環境中にあり流体が接触する際に形成され、そうして壁の中の有益な薬剤を放出し、ここで、形成された通路は、デバイスが流体である使用環境中にある際に区画から有益な薬剤を分散させるために浸透デバイス中の区画およびデバイスの外部と連絡している。
【0044】
[0043] Chenらへの米国特許第5,558,879号(”’879号特許”)は、通路が使用環境、すなわち製剤を与えられる人の消化管において形成される、水溶性薬物のための制御放出性錠剤を開示している。具体的には、制御放出性錠剤は本質的に次のもので構成される:a)薬物、5〜20重量%の水溶性浸透剤、水溶性ポリマー結合剤および医薬的キャリヤーを含む中心部;ならびにb)コアの周りをコートしている、本質的に次のもので構成される二層の膜:(1)可塑化された水に不溶性のポリマーおよび水溶性のポリマーを含む、内側の持続放出性コーティング;ならびに(2)薬物および水溶性ポリマーを含む、外側の即時放出性コーティング。
【0045】
[0044] Ayerらへの米国特許第4,810,502号(”’502号特許”)は、次のものを含む単独の薬物または有効薬物の組み合わせを送達するための浸透性の剤形を開示している:a)第1および第2薬物を含む中心部;b)セルロースアシレートおよびヒドロキシプロピルセルロースを含む、中心部を取り囲む壁;c)薬物(drug(s))を送達するための、壁の中の通路;ならびにd)有効薬物(drug(s))、壁の機械的に完全な状態および薬物動態を増進するための、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリ(エチレンオキシド)の内の少なくとも1種類を含む、壁の外側の上の薄層。
【0046】
[0045] Hamelらへの米国特許第4,801,461号(”’461号特許”)は、有効薬物の送達のための浸透性の剤形を開示している。具体的には、浸透性の剤形は次のものを含む:a)異なる量の有効薬物を含む中心部;b)異なる量のセルロースアセテートまたはセルローストリアセテートならびに異なる量のヒドロキシプロピルセルロースを含む、中心部を取り囲む半透性の壁;c)薬物を中心部から送達するための、壁の中の通路;ならびに場合によりd)有効薬物を含む、壁の外側の上の薄層。中心部は、塩化ナトリウム、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびポリ(ビニルピロリドン)の内の1種類以上も含んでいることができる。このデバイスの通路は、半透性の壁のみを通って、または半透性の壁および外側の薄層の両方を通って延びることができる。通路は、使用環境において侵食される、またはこされて可溶成分が無くなる(leach)物質も含んでいる。
【0047】
[0046] Savastanoらへの米国特許第5,681,584号(”’584号特許”)は、次のものを含む制御放出性薬物送達デバイスを開示している:a)薬物、任意の浸透剤および任意の賦形剤を含む中心部;b)中心部を取り囲む、結合剤、浸透剤および潤滑剤の内の少なくとも1種類を含む遅延放出性ジャケット;c)遅延放出性ジャケットを取り囲み、場合により通路を有する半透膜;d)半透膜の外側の上または半透膜と遅延放出性ジャケットの間のどちらかにある薬物を含む層;ならびにe)薬物を含む層の外側の上、薬物を含む層と半透膜の間、または薬物を含む層が遅延放出性ジャケットと半透膜の間にある場合に半透膜の外側の上、のいずれかにある任意の腸溶性の被膜。
【0048】
[0047] Faourらへの米国特許第6,004,584号(”Faour’584号特許”)は、特別な向上により、同時に、または連続的にのどちらかで、1種類以上の有効薬剤に関してより広い範囲の独立した放出プロフィールを提供することができる浸透デバイスを開示している。そのデバイスは次のものを含む:第1有効薬剤ならびにその薬物の制御された、および継続的な放出のための浸透剤を含む圧縮された中心部;b)中心部を取り囲み、その中に予め作られた通路を有する半透膜、その膜は使用環境中の流体に対しては透過性であり、第1有効薬剤に対しては実質的に不浸透性である;c)ポリ(ビニルピロリドン)−(ビニルアセテート)コポリマーを含み、部分的に、または実質的に完全に半透膜を取り囲み、壁の中の通路に栓をしている、不活性な、完全に侵食され得る水溶性ポリマー被膜;ならびにd)薬物の即時放出のための第2有効薬剤を含む外部被膜、ここで第1有効薬剤はポリマー被膜が部分的に、または完全に溶解された、または侵食された後に中心部から放出され、第1および第2有効薬剤は同じ、または異なる使用環境の中に放出されてその1種類以上の有効薬剤の制御放出を提供する。Faour’584号特許は、第1および第2有効薬剤は同じ薬物であってよいと教えている。
【0049】
[0048] 本発明に従う医薬組成物には、1種類以上の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味料、香味料、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤も含まれていてよい。その賦形剤は当技術において既知である。
【0050】
[0049] 充填剤の例は、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、および様々なデンプン類であり;結合剤の例は、様々なセルロース類および架橋ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、例えばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102、微結晶セルロース、ならびにケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(商標))である。
【0051】
[0050] 適切な滑沢剤は、圧縮されるべき粉末の流動性に作用する薬剤を含み、コロイド性二酸化ケイ素、例えばAerosil(登録商標)200、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルである。
【0052】
[0051] 甘味料の例は、いずれかの天然または人工の甘味料、例えばショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、およびアクスルフェーム(acsulfame)である。香味料の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガムの香味、および果物の香味、および同様のものである。
【0053】
[0052] 保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩類、パラヒドロキシ安息香酸の他のエステル類、例えばブチルパラベン、アルコール類、例えばエチルもしくはブチルアルコール、フェノール化合物、例えばフェノール、または四級化合物、例えば塩化ベンザルコニウムである。
【0054】
[0053] 適切な希釈剤には、医薬的に許容できる不活性な増量剤、例えば微結晶セルロース、ラクトース、リン酸水素カルシウム、糖類、および/または前記のいずれかの混合物が含まれる。希釈剤の例には、微結晶セルロース、例えばAvicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102;ラクトース、例えばラクトース一水和物、無水ラクトース、およびPharmatosee DCL21;リン酸水素カルシウム、例えばEmcompress(登録商標);マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;およびグルコースが含まれる。
【0055】
[0054] 適切な崩壊剤には、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および修飾されたデンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0056】
[0055] 発泡剤の例は、有機酸および炭酸塩または重炭酸塩のような発泡性の組み合わせである。適切な有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびに無水物および酸性塩が含まれる。適切な炭酸塩および重炭酸塩には、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム(sodium glycine carbonate)、炭酸L−リシン、および炭酸アルギニンが含まれる。あるいは、発泡性の組み合わせの内の重炭酸ナトリウム構成要素のみが存在していてよい。
【0057】
[0056] 本発明の別の観点において、イマチニブ化合物はナノ粒子の形で存在している。イマチニブメシレートのナノ粒子の形の限定的で無い議論が米国公開20060275372において提供されており、それをそのまま本明細書に援用する。手短に言えば、イマチニブメシレートのナノ粒子の形には、約2000nm未満の有効平均粒径を有する安定なイマチニブメシレート粒子が含まれる。好ましくは、有効平均粒径は、光散乱法、顕微鏡法、または他の適切な方法により測定した際に、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、または約50nm未満である。有効平均粒径を測定するための適切な方法は、当業者には既知である。
【0058】
[0057] イマチニブ化合物のナノ粒子は、少なくとも1種類の表面安定剤も含む。安定剤は、有効薬剤の粒子が中性pHの環境にさらされて溶液から沈殿する際に、望まれる粒径において有効薬剤の粒子を安定化するように作用することができる。
【0059】
[0058] 適切な表面安定剤には、次のものが含まれる:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(今日ではヒプロメロース(hypromellose)として既知である)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシネート(ジオクチルナトリウムスルホスクシネート)、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド類)、デキストラン、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール(cetomacrogol)乳化ろう、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(例えば、セトマクロゴール 1000のようなマクロゴールエーテル類)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、Tween(登録商標)20およびTween(登録商標)80のような商業的に入手できるTween類(登録商標)(ICI Speciality Chemicals));ポリエチレングリコール類(例えば、Carbowaxs3550(登録商標)および934(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイド性二酸化ケイ素、ホスフェート類、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロースフタレート、非結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトリトンとしても既知である)、ポロキサマー類(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー類であるPluronics(登録商標)F68およびF108);ポロキサミン類(例えば、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのエチレンジアミンへの逐次付加に由来する4官能性(tetrafunctional)ブロックコポリマーである、Poloxamine(商標)908としても既知であるTetronic(登録商標)908(BASF Wyandotte Corporation,ニュージャージー州パーシッパニー));Tetronic(登録商標)1508(T−1508) (BASF Wyandotte Corporation)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritons(登録商標)X−200(Rohm and Haas);スクロースステアレートおよびスクロースジステアレートの混合物であるCrodestas(商標)F−110(Croda Inc.);Olin(登録商標)−10GまたはSurfactant(商標)10−G(Olin Chemicals, Stamford, CT)としても既知である、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール);Crodestas(商標)SL−40(Croda, Inc.);ならびにC1837CH(CON(CH)−CH(CHOH)(CH0H)である、SA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル β−D−グルコピラノシド;n−デシル β−D−マルトピラノシド;n−ドデシル β−D−グルコピラノシド;n−ドデシル β−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル β−D−チオグルコシド;n−ヘキシル β−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイル β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチル β−D−チオグルコピラノシド;PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンおよびビニルアセテートのランダムコポリマー類、ならびに同様のもの。
【0060】
[0059] 有用な陽イオン性表面安定化剤の例には次のものが含まれるが、それらに限定されない:ポリマー類、バイオポリマー類、多糖類、セルロース系物質(cellulosics)、アルギネート類、リン脂質、および非ポリマー性化合物、例えば双性イオン性安定剤、ポリ−n−メチルピリジニウム、アンスリウル(anthryul)ピリジニウムクロリド、陽イオン性リン脂質、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド ブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、およびポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルサルフェート。
【0061】
[0060] 他の有用な陽イオン性安定剤には次のものが含まれるが、それらに限定されない:陽イオン性の脂質、スルホニウム、ホスホニウム、および四級アンモニウム化合物、例えばステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナッツ(coconut)トリメチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、C12−15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)アンモニウムクロリドもしくはブロミド、N−アルキル(C12−18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N−アルキル(C14−18)ジメチル−ベンジルアンモニウムクロリド、N−テトラデシリドメチルベンジル(tetradecylidmethylbenzyl)アンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N−アルキルおよび(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル−トリメチルアンモニウム塩類およびジアルキル−ジメチルアンモニウム塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化(ethoxylated)アルキアミドアルキルジアルキルアンモニウム(alkyamidoalkyldialkylammonium)塩および/またはエトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N−ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム,クロリド一水和物、N−アルキル(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリドおよびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12、C15、C17トリメチルアンモニウムブロミド類、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド類、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT 336(商標))、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル類(例えば脂肪酸のコリンエステル類)、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム(stearalkonium)化合物(例えば、塩化ステアリルトリモニウムおよび塩化ジ−ステアリルジモニウム)、臭化もしくは塩化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミン類のハライド塩類、MIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Company)、アルキルピリジニウム塩類;アミン類、例えばアルキルアミン類、ジアルキルアミン類、アルカノールアミン類、ポリエチレンポリアミン類、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート類、およびビニルピリジン、アミン塩類、例えばラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アルキルピリジニウム塩、およびアルキルイミダゾリウム塩、ならびにアミンオキシド類;イミドアゾリニウム塩類;プロトン化四級アクリルアミド類;メチル化四級ポリマー類、例えばポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]およびポリ−[N−メチルビニルピリジニウムクロリド];および陽イオン性グアー。
【0062】
[0061] そのような典型的な陽イオン性表面安定剤および他の有用な陽イオン性表面安定剤は、J. Cross and E. Singer, Cationic Surfactants: Analytical and Biological Evaluation (Marcel Dekker, 1994); P. and D. Rubingh (編集者), Cationic Surfactants: Physical Chemistry(Marcel Dekker, 1991);およびJ. Richmond, Cationic Surfactants: Organic Chemistry, (Marcel Dekker, 1990)において記述されている。
【0063】
[0062] 非ポリマー性表面安定剤は、いずれかの非ポリマー性化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、陽イオン性有機金属化合物、四級亜リン酸化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、一級アンモニウム化合物、二級アンモニウム化合物、三級アンモニウム化合物、および式NR(+)の四級アンモニウム化合物である。式NR(+)の化合物に関して:
[0063] (i)R〜RのいずれもCHでは無い;
[0064] (ii)R〜Rの内の1つがCHである;
[0065] (iii)R〜Rの内の3つがCHである;
[0066] (iv)R〜Rの全てがCHである;
[0067] (v)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の1つがCCHであり、R〜Rの内の1つが7炭素原子以下のアルキル鎖である;
[0068] (vi)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の1つがCCHであり、R〜Rの内の1つが19炭素原子以上のアルキル鎖である;
[0069] (vii)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の1つが基C(CHであり、ここでnは1より大きい;
[0070] (viii)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の1つがCCHであり、R〜Rの内の1つが少なくとも1個のヘテロ原子を含む;
[0071] (ix)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の1つがCCHであり、R〜Rの内の1つが少なくとも1個のハロゲンを含む;
[0072] (x)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の1つがCCHであり、R〜Rの内の1つが少なくとも1個の環状フラグメントを含む;
[0073] (xi)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の1つがフェニル環である;または
[0074] (xii)R〜Rの内の2つがCHであり、R〜Rの内の2つが純粋に脂肪族のフラグメントである。
【0064】
[0075] その化合物には次のものが含まれるが、それらに限定されない:塩化ベヘンアルコニウム(behenalkonium chloride)、塩化ベンゼトニウム(benzethonium chloride)、塩化セチルピリジニウム、塩化ベヘントリモニウム(behentrimonium chloride)、塩化ラウラルコニウム(lauralkonium chloride)、塩化セタルコニウム(cetalkonium chloride)、臭化セトリモニウム(cetrimonium bromide)、塩化セトリモニウム、セチルアミンヒドロフルオリド(cethylamine hydrofluoride)、クロラリルメテナミンクロリド(chlorallylmethenamine chloride)(Quaternium−15)、ジステアリルジモニウムクロリド(Quaternium−5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド(Quaternium−14)、Quaternium−22、Quaternium−26、Quaternium−18ヘクトライト(hectorite)、ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩、システイン塩酸塩、ジエタノールアンモニウム POE (10) オレチル(oletyl)エーテルホスフェート、ジエタノールアンモニウム POE (3)オレイルエーテルホスフェート、獣脂アルコニウムクロリド(tallow alkonium chloride)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、塩化ステアラルコニウム(stearalkonium chloride)、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム(denatonium benzoate)、塩化ミリスタルコニウム(myristalkonium chloride)、塩化ラウルトリモニウム(laurtrimonium chloride)、エチレンジアミン二塩酸塩、グアニジン塩酸塩、ピリドキシン HCl、イオフェタミン(iofetamine)塩酸塩、メグルミン(meglumine)塩酸塩、塩化メチルベンゼトニウム(methylbenzethonium chloride)、臭化ミルトリモニウム(myrtrimonium bromide)、塩化オレイルトリモニウム、ポリクオタニウム−1(polyquaternium−1)、プロカイン塩酸塩、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト(stearalkonium bentonite)、ステアラルコニウムヘクトナイト(stearalkoniumhectonite)、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオリド、獣脂トリモニウムクロリド、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド。
【0065】
[0076] 多くの表面安定剤は商業的に入手でき、および/または当技術で既知の技法により調製することができる。例えば、American Pharmaceutical AssociationおよびThe Pharmaceutical Society of Great Britainにより共同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients (The Pharmaceutical Press, 2000)を参照、これを特に援用する。
【0066】
[0077] 表面安定剤は商業的に入手でき、および/または当技術で既知の技法により調製することができる。これらの表面安定剤のほとんどは既知の医薬賦形剤であり、American Pharmaceutical AssociationおよびThe Pharmaceutical Society of Great Britainにより共同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients (The Pharmaceutical Press, 2000)において詳細に記述されており、これを特に援用する。
【0067】
[0078] イマチニブ化合物および表面安定剤は、本明細書で開示される医薬組成物中にあらゆる適切な比率(w/w)で存在していてよい。例えば、一部の態様において、医薬組成物はイマチニブメシレート組成物および表面安定剤を、約20:1、15:1、10:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1(w/w)の比率、または前記の比率により定められるあらゆる範囲(例えば約20:1〜2:1、約10:1〜4:1、および約8:1〜5:1であるがそれらに限定されない)で含む。
【0068】
[0079] イマチニブ化合物および1種類以上の表面安定剤の相対的な量は広く異なることができる。個々の構成要素の最適な量は、例えば、選択された特定のイマチニブメシレート、親水親油バランス(HLB)、融点、および安定剤の水溶液の表面張力等に依存することができる。
【0069】
[0080] イマチニブメシレートの濃度は、他の賦形剤を含めずに、イマチニブメシレートおよび少なくとも1種類の表面安定剤の全ての合わせた乾燥重量に基づいて、重量により約99.5%から約0.001%まで、約95%から約0.1%まで、または約90%から約0.5%まで変化することができる。
【0070】
[0081] 少なくとも1種類の表面安定剤の濃度は、他の賦形剤を含めずに、イマチニブメシレートおよび少なくとも1種類の表面安定剤の全ての合わせた乾燥重量に基づいて、重量により約0.5%から約99.999%まで、約5.0%から約99.9%まで、または約10%から約99.5%まで変化することができる。
【0071】
[0082] ナノ粒子状イマチニブメシレートまたはその塩もしくは誘導体である組成物は、例えば製粉、均質化、沈殿、冷凍(cryogenic)、またはテンプレートエマルジョンの技法を用いて作ることができる。ナノ粒子状有効薬剤組成物を作る典型的な方法が’684号特許において記述されている。ナノ粒子状有効薬剤組成物を作る方法は、”医薬的な物質を粉砕する方法”に関する米国特許第5,518,187号;”医薬的な物質を粉砕する継続的な方法”に関する米国特許第5,718,388号;”医薬的な物質を粉砕する方法”に関する米国特許第5,862,999号;”ナノ粒子状の医薬的な薬剤の結晶成長調節剤との共微量沈降”に関する米国特許第5,665,331号;”ナノ粒子状の医薬的な薬剤の結晶成長調節剤との共微量沈降”に関する米国特許第5,662,883号;”ナノ粒子状の医薬的な薬剤の微量沈降”に関する米国特許第5,560,932号;”ナノ粒子を含むX線造影組成物を製造するプロセス”に関する米国特許第5,543,133号;”安定な薬物ナノ粒子を製造する方法”に関する米国特許第5,534,270号;”ナノ粒子を含む療法的組成物を製造するプロセス”に関する米国特許第5,510,118号;および”凝集を低減させるための荷電したリン脂質を含むナノ粒子組成物を製造する方法”に関する米国特許第5,470,583号においても記述されており、その全てを特に援用する。イマチニブ化合物のナノ粒子状組成物を製造するための方法のより詳細な議論に関しては、米国20060275372を参照。
【0072】
[0083] イマチニブ化合物のナノ粒子状の形は、イマチニブの一般に用いられる(すなわちナノ粒子状ではない)製剤と比較して多くの利点を提供する。その利点には、イマチニブの安定なナノ粒子がかたまりにならないという事実による増大した再分散性(redispersibility)、増大したCmax(最大血漿中濃度)、増大したAUC(曲線下面積)、および低下したTmaxを含む向上した薬物動態特性が含まれるがそれらに限定されない。
【0073】
[0084] さらに、ナノ粒子状イマチニブ化合物の製剤の絶食状態における対象への投与は、摂食状態における対象へのその組成物の投与と生物学的に同等である。
[0085] 加えて、本発明の組成物は場合により少なくとも第2の有効成分を含んでいてよく、それは場合によりナノ粒子状の形で存在していてよい。一般に、その第2の有効成分は、イマチニブの抗癌作用を強力にする、および/またはイマチニブ化合物の副作用を最小限にするであろう。従って、様々な典型的な態様において、少なくともその第2の有効成分として適した化合物には、抗嘔吐化合物、下痢止め化合物、およびH拮抗剤が含まれる。
【0074】
[0086] 特に、Gleevec(登録商標)の錠剤のコーティングは酸化鉄を含むため、特定の処置計画は患者における鉄の過負荷を引き起こす可能性があるという懸念がある。例えばGleevec(登録商標)の公式ウェブサイト(http://www.gleevec.com)は、患者に、もしその患者が鉄のサプリメントを飲んでいる、または飲むつもりであるなら、彼のまたは彼女の医師に言うように助言している。さらに、そのウェブサイトは、毎日800g(またはより多く)を摂取する患者は彼らの鉄への暴露を低下させるために2個の400mgの錠剤を用いるべきであると開示している。従って、本発明の別の態様は、800mg相当のイマチニブおよび非毒性量の鉄を有する組成物を提供する。
【0075】
[0087] 本明細書における発明は特定の態様に関して記述されたが、これらの態様は単に本発明の原理および適用を説明するだけのものであることは理解されるべきである。従って、下記の特許請求の範囲により定められる本発明の精神および範囲から逸脱すること無く説明的な態様に対して多数の修正がなされてよいことおよび他のアレンジが考案されてよいことが理解されるべきである。
【0076】
[0088] 本明細書中で引用された全ての刊行物は、特許刊行物および非特許刊行物両方とも、この発明が関係する当業者の技術のレベルを示すものである。全てのこれらの刊行物を、それぞれの個別の刊行物を具体的かつ個別に援用したと示した場合と同じ程度まで、完全に本明細書に援用する。
【0077】
[0089] また、そうでは無いと示した場合を除き、態様に関して様々な数値が与えられた場合、あらゆる2個の異なる値を範囲の末端として選ぶことにより追加の態様が記述される。その範囲も記述される発明の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のものを含む、対象に投与するための経口製剤:
a)イマチニブ化合物;および
b)腸溶性母材または腸溶性コーティングまたはそれらの組み合わせ;
それにより、イマチニブ化合物の少なくとも80%が対象の小腸で放出される。
【請求項2】
イマチニブ化合物がイマチニブメシレートである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製剤であって、腸溶性コーティングが次のものから選択される製剤:セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリマレテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、アンモニオメタクリレートコポリマー類、ポリアクリル酸ならびにポリアクリレートおよびメタクリレートコポリマー類、ポリビニルアセトアルジエチルアミノアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、シェラック、ヒドロゲル類およびゲル形成材料、カルボキシビニルポリマー類、アルギン酸ナトリウム、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、架橋デンプン、微結晶セルロース、キチン、アミノアクリル−メタクリレートコポリマー、プルラン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、(膨張性親水性ポリマー類)ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)(分子量約5k〜5,000k)、ポリビニルピロリドン(分子量約10k〜360k)、陰イオン性および陽イオン性ヒドロゲル類、低いアセテートの残留を有するポリビニルアルコール、寒天およびカルボキシメチルセルロースの膨張性混合物、マレイン酸無水物およびスチレン、エチレン、プロピレンまたはイソブチレンのコポリマー類、ペクチン(分子量約30k〜300k)、寒天、アカシア、カラヤ、トラガカント、アルギン類およびグアー、ポリアクリルアミド類、POLYOX(登録商標)、ポリエチレンオキシド類(分子量約100k〜5,000k)、AQUAKEEP(登録商標)アクリレートポリマー類、ポリグルカンのジエステル類、架橋ポリビニルアルコールおよびポリN−ビニル−2−ピロリドン、ナトリウムデンプングルコレート、多糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはカルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル類、ポリエチレンオキシド類、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、マルトデキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、グリセロール脂肪酸エステル類、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー類、ソルビタンエステル類、天然ゴム類、レシチン類、ペクチン、アルギネート類、アンモニアアルギネート、ナトリウム、カルシウム、カリウムアルギネート類、プロピレングリコールアルギネート、寒天、アラビア、カラヤ、イナゴマメ、トラガカント、カラギーン類、グアー、キサンタン、スクレオグルカンならびにそれらの混合物およびブレンドならびにそれらのあらゆる組み合わせ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤であって、それによりイマチニブ化合物の少なくとも85%が対象の小腸で放出される製剤。
【請求項5】
請求項4に記載の製剤であって、それによりイマチニブ化合物の少なくとも90%が対象の小腸で放出される製剤。
【請求項6】
請求項5に記載の製剤であって、それによりイマチニブ化合物の少なくとも95%が対象の小腸で放出される製剤。
【請求項7】
請求項6に記載の製剤であって、それによりイマチニブ化合物の少なくとも99%が対象の小腸で放出される製剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤であって、イマチニブ化合物の少なくとも一部がナノ粒子状の形であり、イマチニブ化合物のナノ粒子がさらに少なくとも1種類の表面安定剤を含む製剤。
【請求項9】
請求項8に記載の製剤であって、少なくとも1種類の表面安定剤が次のものからなるグループから選択される製剤:塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド類、デキストラン、グリセロール、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール類、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイド性二酸化ケイ素、ホスフェート類、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース類、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロースフタレート、非結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー、ポロキサマー類;ポロキサミン類、荷電したリン脂質、ジオクチルスルホスクシネート、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホネート類、スクロースステアレートおよびスクロースジステアレートの混合物、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル β−D−グルコピラノシド;n−デシル β−D−マルトピラノシド;n−ドデシル β−D−グルコピラノシド;n−ドデシル β−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル β−D−チオグルコシド;n−ヘキシル β−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイル β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチル β−D−チオグルコピラノシド;リゾチーム、PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、ビニルアセテートおよびビニルピロリドンのランダムコポリマー類、陽イオン性ポリマー、陽イオン性バイオポリマー、陽イオン性多糖、陽イオン性セルロース系物質、陽イオン性アルギネート、陽イオン性非ポリマー性化合物、陽イオン性リン脂質、陽イオン性脂質、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド、スルホニウム化合物、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルサルフェート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ホスホニウム化合物、四級アンモニウム化合物、ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナッツトリメチルアンモニウムクロリド、ココナッツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、C12−15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、C12−15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)アンモニウムクロリド、ラウリルジメチル(エテノキシ)アンモニウムブロミド、N−アルキル(C12−18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N−アルキル(C12−14)ジメチル−ベンジルアンモニウムクロリド、N−テトラデシリドメチルベンジル(tetradecylidmethylbenzyl)アンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N−アルキルおよび(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル−トリメチルアンモニウム塩類、ジアルキル−ジメチルアンモニウム塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキアミドアルキルジアルキルアンモニウム(alkyamidoalkyldialkylammonium)塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N−ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム,クロリド一水和物、N−アルキル(C.sub.12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C.sub.12トリメチルアンモニウムブロミド類、C15トリメチルアンモニウムブロミド類、C17トリメチルアンモニウムブロミド類、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアンモニウムクロリド類、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル類、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物、臭化セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミン類のハライド塩類、アルキルピリジニウム塩類;アミン類、アミン塩類、アミンオキシド類、イミドアゾリニウム塩類、プロトン化四級アクリルアミド類、メチル化四級ポリマー類、および陽イオン性グアー。
【請求項10】
請求項8または9に記載の製剤であって、ナノ粒子が約2000nm未満の平均直径を有する製剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤であって、イマチニブ化合物を含む粒子の第1集団および有効成分を含む粒子の少なくとも1種類の次の集団を含み、イマチニブ化合物および少なくとも第2の有効成分がそれらのそれぞれのピーク血漿中濃度に予め決められた時間間隔で到達するように、その少なくとも第2の有効成分を含む粒子の次の集団がさらに調節放出性コーティングまたは、代わりにもしくは加えて、調節放出性母材物質を含む製剤。
【請求項12】
請求項11に記載の製剤であって、少なくとも第2の有効成分がイマチニブ化合物ではない製剤。
【請求項13】
請求項12に記載の製剤であって、少なくとも第2の有効成分が抗嘔吐化合物、下痢止め化合物、およびH拮抗剤から選択される製剤。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の製剤であって、粒子の第1および次の集団のメンバーがそれぞれおおよそ2000nm未満の直径を有する製剤。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の製剤であって、イマチニブ化合物が少なくとも約400mgのイマチニブに相当する量で存在する製剤。
【請求項16】
請求項15に記載の製剤であって、イマチニブ化合物が少なくとも約600mgのイマチニブに相当する量で存在する製剤。
【請求項17】
請求項16に記載の製剤であって、イマチニブ化合物が少なくとも約800mgのイマチニブに相当する量で存在する製剤。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の製剤であって、さらに非毒性量の鉄を含む製剤。
【請求項19】
イマチニブ療法が適用できる疾患を有する対象を処置する方法であって、対象に請求項1〜18のいずれか1項に記載の製剤を投与することを含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、製剤の1回分の日用量がイマチニブ化合物を約800mgのイマチニブに相当する量で含む方法。

【公表番号】特表2011−520779(P2011−520779A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500895(P2011−500895)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/037379
【国際公開番号】WO2009/117401
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(507250508)エラン・ファルマ・インターナショナル・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】