説明

イミダゾピリジン−8−オンの製造方法

本発明は、7−(トリアルキル−シラニルオキシ)−2,3−ジメチル−8−フェニル−8,9−ジヒドロ−7H−1,3a,9−トリアザシクロペンタ[a]ナフタレン−6−オン及び関連化合物を、酸化剤としてNBSを用いることによって製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の適用分野
本発明は、医薬品の製造のための中間体の合成で医薬品工業において使用される新規の方法に関する。
【0002】
従来技術
国際特許出願WO98/42707号、WO01/72756号、WO01/72757号及びWO02/34749号は、胃疾患及び腸疾患の治療に適した非常に特化した置換型を有する三環式のイミダゾピリジン誘導体を開示している。前記の特許出願では、イミダゾピリジン−8−オンから出発する最終生成物の合成を概説した反応式が示されている。これらのイミダゾピリジン−8−オンは、国際特許出願WO01/72748号において、より詳細に記載されている。幾つかの文献、例えばKarmakar et al., Journal of the American Chemical Society 77, 55-69(1955)、Zechmeister et al., Journal of the American Chemical Society 75, 4493-4495(1953)及びSnyder et al., Journal of the American Chemical Society 71, 1395-1396(1949)において、脱水素化工程におけるN−ブロモスクシンイミドの使用が記載されている。
【0003】
発明の開示
本発明は、従来技術に挙げられる化合物及び類似の基本構造を有する他の化合物の製造のための重要な中間体の製造のために使用される方法に関する。
【0004】
第一の態様では、本発明は、式1
【0005】
【化1】

[式中、
R1は水素、メチル又はヒドロキシメチルであり、
R2はC〜C−アルキルであり、
R3はC〜C−アルキルであり、かつ
R4はC〜C−アルキルである]の化合物及びそれらの塩の製造方法に関する。
【0006】
〜C−アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状の1〜7個の炭素原子を有するアルキル基を表す。挙げられる例は、ヘプチル基、イソヘプチル基(5−メチルヘキシル基)、ヘキシル基、イソヘキシル基(4−メチルペンチル基)、ネオヘキシル基(3,3−ジメチルブチル基)、ペンチル基、イソペンチル基(3−メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、エチル基又はメチル基である。
【0007】
式1の化合物に適当な塩は、殊に全ての酸付加塩である。慣用に使用される無機酸及び有機酸の塩を特に挙げることができる。適当な塩は、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との水溶性及び水不溶性の酸付加塩であり、その際、前記の酸は塩調製において(一塩基酸又は多塩基酸のどちらが考慮されるかに依存して、そしてどの塩が望ましいかに依存して)等モル量比又はそれとは異なる比で使用される。
【0008】
本発明による化合物及びその塩は、例えばこれらが結晶形で単離される場合に種々の溶剤量を有してよいことは当業者には知られている。従ってまた本発明は、式1の化合物の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物、及びまた式1の化合物の塩の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物を包含する。
【0009】
本方法は、式2
【0010】
【化2】

[式中、R1、R2、R3及びR4は前記の意味を有する]の化合物をNBS(N−ブロモスクシンイミド)で脱水素化(酸化)させることを特徴とする。
【0011】
NBSによる脱水素化(酸化)は、不活性溶剤、例えば塩素化炭化水素、例えば四塩化炭素又はジクロロメタン又はケトン、例えばアセトン又はブタノン又はエーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン又はDMSO又はアセトニトリル中で実施される。
【0012】
NBSと式2の化合物との反応は、適切には、−70℃〜+50℃の温度、有利には0℃〜+30℃の温度で実施され、そして引き続き塩基、有利には有機塩基、例えばアミン、例えばジイソプロピルアミン、メチルジイソプロピルアミン又は、特にトリエチルアミンを用いて実施される。有利には、NBSは式2の化合物の溶液に第一工程で1.0当量のNBSを用いて添加され、その直後に塩基の添加を開始する。
【0013】
本発明による方法によって製造される有利な式1の化合物は、式中で、
R1がメチルであり、
R2がC〜C−アルキルであり、
R3がC〜C−アルキルであり、かつ
R4がC〜C−アルキルである化合物及びそれらの塩である。
【0014】
本発明による方法により製造される特に有利な式1の化合物は、式中で、
R1がメチルであり、
R2がt−ブチルであり、
R3がメチルであり、かつ
R4がメチルである化合物及びそれらの塩である。
【0015】
式2の出発化合物は、以下の反応式に従って製造できる。
【0016】
反応式
【0017】
【化3】

【0018】
式(3)の出発化合物はWO01/72748号から公知である。式(4)のシリルエーテルは、当業者に公知の方法に従って、例えばフェニルイソセリンエチルエステルと塩化t−ブチルジメチルシリルとを塩基性条件下に反応させることによって製造できる。(3)と(4)との反応は、有利には、適当な触媒、例えばトルエンスルホン酸の存在下に、かつ同時に水を除去して実施される。中間体イミンが最初に形成された後に、強塩基、例えばカリウムt−ブチレート、リチウムt−ブチレート、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド又は、有利にはリチウムジイソプロピルアミドを使用して実施される閉環を行う。
【0019】
式1の化合物は、国際特許出願WO98/42707号及びWO01/72756号に記載される化合物の合成のための有用な中間体である。例えば国際特許出願WO98/42707号の反応式8に示される8−ヒドロキシ−7−オキソ−7,8,9,10−テトラヒドロイミダゾ[1,2−h][1,7]ナフチリジンは化合物1から、例えば塩酸による加水分解によって得られる。
【0020】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものであり、それを制限するものではない。同様に製造方法が明記されていない他の式1の化合物は、同様に又は当業者に公知の方法で慣用の処理技術を用いて製造できる。省略形のminは分を表し、hは時間を表し、かつRTは室温を表す。
【0021】
実施例
1. フェニルイソセリンエチルエステルのt−ブチル−ジメチルシリルエーテル
1323g(4.06モル)の(R,R)−フェニルイソセリンエチルエステルを6.6Lのジクロロメタン中に溶解させる。この溶液に、397.4gのイミダゾール及び724gの塩化t−ブチルジメチルシリルを添加する。この混合物を室温で16時間撹拌する。引き続き該反応混合物を、6Lの水で、そして4Lの水で洗浄する。得られた澄明なジクロロメタン層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、そして減圧下に濃縮する。得られた1509gの表題化合物は更なる精製なくしてそのままで実施例2で使用される。
【0022】
2. 7−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2,3−ジメチル−8−フェニル−5,7,8,9−テトラヒドロ−4H−1,3a,9−トリアザシクロペンタ[a]ナフタレン−6−オン
フェニルイソセリンエチルエステルのt−ブチルジメチルシリルエーテル1509g(実施例1で得られた)を10.5Lのトルエン中に溶解させて、そこに14gのp−トルエンスルホン酸一水和物及び736gの2,3−ジメチル−6,7−ジヒドロ−5H−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−オンを添加する。該混合物を撹拌し、使用されるディーンスタークトラップ中に80mLの水が回収されるまで還流下に沸騰させる。該混合物を−15℃に冷却し、そして6LのTHFを添加する。この溶液に、6Lの2Mのリチウムジイソプロピルアミド(THF/n−ヘプタン中の溶液)を1時間以内に滴加する。該混合物を外部冷却をせずに30分間撹拌し(温度は−5℃まで高まる)、次いで7Lの塩化アンモニウム水溶液で急冷する。2つの層が分離する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして濾過する。溶剤を真空中で除去した後に、1811gの粗製7−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2,3−ジメチル−8−フェニル−5,7,8,9−テトラヒドロ−4H−1,3a,9−トリアザシクロペンタ[a]ナフタレン−6−オンが単離される。この材料を3.9Lの沸騰メタノール中に溶解させ、そして撹拌しながら−5℃まで冷却する。形成した沈殿物を回収し、そして1.75Lの冷メタノールですすぐ。乾燥後に、558gの表題化合物が得られる。母液を1.5Lにまで濃縮し、そして−5℃で数時間撹拌する。沈殿物を回収し、そして0.25Lのメタノールですすぐ。更なる分の96.5gの表題化合物が単離される。全収量は654.5g(38.5%)である。
【0023】
3. 7−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2,3−ジメチル−8−フェニル−8,9−ジヒドロ−7H−1,3a,9−トリアザシクロペンタ[a]ナフタレン−6−オン
25g(59.1ミリモル)の7−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2,3−ジメチル−8−フェニル−5,7,8,9−テトラヒドロ−4H−1,3a,9−トリアザシクロペンタ[a]ナフタレン−6−オンを150mlのアセトニトリル中に懸濁させる。該混合物を撹拌し、15℃に恒温化された反応器中で冷却する。10.52g(1当量)のN−ブロモスクシンイミドを100mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、15℃の温度に保持しながら1時間にわたり添加する。N−ブロモスクシンイミドの添加が完了したら、22.5mlのトリエチルアミンを更に撹拌して15℃で45分にわたり添加する。撹拌を15℃で更に2時間継続する。得られた懸濁液を10℃にまで冷却した後に、138mlの水を30分の間に緩慢に添加する。該懸濁液を5℃に冷却し、更に30分間撹拌し、次いで濾過する。黄色の濾過ケークを125mlのメタノール/水(85:15v/v)で2回洗浄し、次いで乾燥させる。表題化合物が黄色の固体として得られる。
【0024】
4. 7−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−8,9−ジヒドロ−7H−1,3a,9−トリアザシクロペンタ[a]ナフタレン−6−オン
386.5g(0.916モル)の7−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2,3−ジメチル−8−フェニル−8,9−ジヒドロ−7H−1,3a,9−トリアザシクロペンタ[a]ナフタレン−6−オンを1.4Lのメタノール中に懸濁し、そして氷水浴で10℃に冷却する。次いで0.734Lの30%の塩酸水溶液を添加する。懸濁液は澄明になり、そして数秒後に新たな沈殿物が形成する。得られた懸濁液を2時間撹拌する。1.1Lの25%のアンモニア水を添加した後に、塩基性の懸濁液(pH=9.6)を1時間撹拌する。形成された固体を回収し、そして1.1Lの水ですすぎ、そして乾燥させる。残りのシリル出発材料を除去するために、該固体を1Lのジエチルエーテルですすぎ、そしてもう一度乾燥させる。273.5gの表題化合物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】

[式中、
R1は水素、メチル又はヒドロキシメチルであり、
R2はC〜C−アルキルであり、
R3はC〜C−アルキルであり、かつ
R4はC〜C−アルキルである]の化合物及びそれらの塩の製造方法であって、式2
【化2】

[式中、R1、R2、R3及びR4は前記の意味を有する]の化合物を、NBS(N−ブロモスクシンイミド)を使用することにより脱水素化(酸化)させることを含む方法。
【請求項2】
式1で示され、式中、
R1はメチルであり、
R2は臭素であり、
R2はC〜C−アルキルであり、
R3はC〜C−アルキルであり、かつ
R4はC〜C−アルキルである化合物の製造のための、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式1で示され、式中、
R1はメチルであり、
R2は臭素であり、
R2はt−ブチルであり、
R3はメチルであり、かつ
R4はメチルである化合物の製造のための、請求項1記載の方法。
【請求項4】
使用されるNBSの量が、使用される式2の化合物の量に対して計算してほぼ1当量である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
NBSとの反応に引き続いて、有機塩基をHBrの除去のために使用する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
NBSとの反応に引き続いて、有機アミンをHBrの除去のために使用する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
NBSとの反応に引き続いて、トリエチルアミンをHBrの除去のために使用する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
反応を−70℃〜+50℃の温度で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
反応を0℃〜+30℃の温度で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
反応を不活性有機溶剤中で実施する、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2006−522068(P2006−522068A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505508(P2006−505508)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050414
【国際公開番号】WO2004/087718
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(390019574)アルタナ ファルマ アクチエンゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】ALTANA Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2、 D−78467 Konstanz、 Germany
【Fターム(参考)】