説明

イミダゾール化合物の製造法

【課題】特定の酸化剤を使用することなく、温和な反応条件下でイミダゾリン化合物を効率よく脱水素化してイミダゾール化合物の製造法を提供する。
【解決手段】2位に置換基としてアルキル基、芳香族脂肪族基、芳香族基で表されるイミダゾリン化合物から、上記置換基を有するイミダゾール化合物を製造する方法において、単座配位子がアニオン性や中性であり、中性の配位子がピリジン、ジメチルスルホキシド等からなる群から選択されるルテニウム錯体を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾール化合物を製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、触媒としてルテニウム錯体を使用することで、特定の酸化剤を使用することなく、大気中の酸素を活用して温和な条件下で多様なイミダゾリン化合物を効率よく脱水素化してイミダゾール化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イミダゾール化合物類は、エポキシ樹脂の硬化剤や医農薬および染料の中間体、銅の防錆剤、電解質(イオン性液体)等様々な工業分野に広く利用されている(非特許文献1〜2)。一般に2−位に置換基を有するイミダゾール化合物は相当するイミダゾリン化合物を脱水素化することにより合成される(特許文献3〜8)。また、特開平9−227525号(特許文献1)および2000−178256号(特許文献2)には遷移金属を触媒としてイミダゾリン化合物を脱水素化してイミダゾール化合物を製造する方法が開示されている。しかしながら、従来のイミダゾリン化合物の脱水素化によるイミダゾール化合物の製造には、厳しい反応条件や毒性・爆発性の高い重金属酸化剤の使用を必要とする。
【0003】
ルテニウム錯体はアルコールやオレフィンの水素移動型還元触媒として高い触媒活性を示すと同時に酸化触媒としても報告されている(非特許文献9)。また、遷移金属錯体に配位したアミン配位子はその水素原子の酸性度が大きくなり、酸化が促進される。特に、中心金属としてはルテニウムやオスミウムが有効であることが知られている(非特許文献10〜12;なお非特許文献10および12に関しては、それぞれの文献中で引用された文献も参照)。しかしながら、イミダゾリンがN−位で配位した金属錯体の例は少なく、配位したイミダゾリンが酸化された例は皆無である。
【0004】
上記のように、従来のイミダゾリン化合物の脱水素化によるイミダゾール化合物の製造には厳しい反応条件や毒性の高い重金属酸化剤の使用を必要とすることが多く、効率的で且つ安全性の高い合成法の開発が望まれている。特に、特定の酸化剤を使用せず、大気中の酸素を活用してイミダゾリン化合物を脱水素化できれば工業上非常に有意義である。
【0005】
【特許文献1】特開平9−227525号公報
【特許文献2】特開2000−178256号
【0006】
【非特許文献1】http://www.imidazole.jp/ver_01/product/imidazole/imidazole_01.html
【非特許文献2】http://www.shikoku.co.jp/projects/imida.html
【非特許文献3】M. Ishihara,H. Togo,Synlett(2006)227.
【0007】
【非特許文献4】A. de la Hoz,A. Diaz-Ortiz,M. del C.Mateo,M.Moral,A.Moreno,J. Elguero,C. Foces-Foces,M. L. Rodriguez,A. Sanchez-Migallon,Tetrahedron 62(2006)5868.
【非特許文献5】I.Mohammadpoor-Baltork,M. A. Zolfigol,M. Abdollahi-Albeik,Tetrahedron Lett. 45(2004)8687.
【非特許文献6】K. C. Nicolaou,C. J. N.Mathison,T.Montagnon,J. Am. Chem. Soc. 126(2004)5192.
【0008】
【非特許文献7】K. C. Nicolaou,C. J. N.Mathison,T.Montagnon,Angew. Chem. Int. Ed. 42(2003)4077.
【非特許文献8】M. Anastassiadou,G. Baziard-Mouysset,M. Payard,Synthesis(2000)1814.
【非特許文献9】村橋俊一、有機合成化学協会誌、65(2007)2.
【0009】
【非特許文献10】F. R. Keene,Coord. Chem. Rev. 187(1999)121
【非特許文献11】S.-I.Murahashi,N. Komiya,Catalysis Today 41(1998)339
【非特許文献12】J. Gomez,G. Garcia-Herbosa,J. V. Cuevas,A. Arnaiz,A. Carbayo,A.Munoz,L. Falvello,P. E. Fanwick,Inorg. Chem. 45(2006)2483.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消することができるイミダゾール化合物の製造法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、特定の酸化剤を使用することなく、温和な反応条件下でイミダゾリン化合物を効率よく脱水素化することができるイミダゾール化合物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意研究の結果、従来におけるように特定の酸化剤を使用するのではなく、大気中の酸素を活用して、効率よくイミダゾリン化合物を脱水素化することが、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0013】
本発明のイミダゾール化合物の製造法は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、下記式(1)、
【0014】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、芳香脂肪族基、芳香族基を示す)
で表されるイミダゾリン化合物から、下記式(2)、
【0015】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、芳香脂肪族基、芳香族基を示す)
で表されるイミダゾール化合物を製造する方法であって、且つ、下記式(3)で表されるルテニウム錯体を使用することを特徴とするものである。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、Xはイミダゾリンと置換が可能な単座配位子であり、Lは炭素で結合した配位子であり、L、あるいはLおよびLと連結した二座あるいは三座キレート配位子を形成し;またLおよびLは配位子であり、それぞれ独立な単座配位子でも良く、お互いに連結した二座配位子でも良く、L,L,およびLで連結した三座配位子でも良い)。
【0018】
上記構成を有する本発明のイミダゾール化合物の製造法においては、遷移金属錯体に配位したアミン配位子はその水素原子の酸性度が大きくなり、酸化が促進される事実に注目し、遷移金属にイミダゾリン化合物を配位させることによって、イミダゾリン化合物の脱水素化が促進される。
【0019】
触媒として使用する遷移金属には、アミン配位子の酸化に有効であるルテニウムを使用し、且つ、メタラサイクル型配位子を用いてルテニウム錯体の適当な分子設計を行うことで、中心金属の酸化還元電位を適切に制御し、大気中の酸素を活用したイミダゾリン配位子の脱水素化反応が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、ルテニウム錯体を触媒として使用することで、特定の酸化剤を使用せずに多様なイミダゾール化合物を高収率で生成できる製造法を提供できる。また、温和な条件下で大気中の酸素を活用した脱水素反応によってイミダゾール化合物を生成する製造法を提供できることから、工業上極めて有意義である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0022】
(イミダゾール化合物の製造法)
本発明のイミダゾール化合物の製造法は、下記式(1)で表されるイミダゾリン化合物から、下記式(2)で表されるイミダゾール化合物を製造する際に、ルテニウム錯体であって、下記式(3)で表されるものを使用する。
【0023】
【化4】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、芳香脂肪族基、芳香族基を示す)。
【0024】
【化5】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、芳香脂肪族基、芳香族基を示す)。
【0025】
【化6】

(式中、Xはイミダゾリンと置換が可能な単座配位子であり、Lは炭素で結合した配位子であり、L、あるいはLおよびLと連結した二座あるいは三座キレート配位子を形成し;またLおよびLは配位子であり、それぞれ独立な単座配位子でも良く、お互いに連結した二座配位子でも良く、L,L,およびLで連結した三座配位子でも良い)。
【0026】
(置換基R)
上記した置換基Rは、炭素数1〜10のアルキル基、芳香脂肪族基、芳香族基から選択される。
【0027】
(置換基Rの例示)
上記した置換基Rの使用可能な例は、以下の通りである。
炭素数1〜10のアルキル基:メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソアミル、ネオペンチル、2−メチルブチル
芳香族脂肪族基:ベンジル、フェネチル
芳香族基:フェニル、トリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、アニシル、エトキシフェニル、ピリジル、チエニル、ピロリル、イミダゾリジル、イミダゾリル、1−ナフチル、2−ナフチル
【0028】
(好適な置換基Rの例示)
上記した置換基Rのうち、市販されており入手しやすさの点から好ましい例は、以下の通りである。
炭素数1〜10のアルキル基:メチル
芳香族脂肪族基:ベンジル
芳香族基:フェニル、4−ピリジル
【0029】
(配位子)
上記式中、Xはイミダゾリンと置換が可能な単座配位子、例えばCl、Br、I、アセテート等のアニオン配位子、ピリジン、ジメチルスルホキシド、HO等の中性配位子が挙げられる。Lは炭素で結合した配位子であり、L、あるいはLおよびLと連結した二座あるいは三座キレート配位子を形成し;またLおよびLは配位子であり、それぞれ独立な単座配位子でも良く、お互いに連結した二座配位子でも良く、L,L,およびLで連結した三座配位子でも良い(以下これを「メタラサイクル型配位子」と呼称する)。
【0030】
(配位子の例示)
配位子L1〜の例としては2−フェニルピリジン等が、L1〜−Lの例としては6’−フェニル−2,2’−ビピリジン、2,6−ビス(2−ピリジル)ベンゼン、2,6−ビス(2−イミダゾリル)ベンゼン、2,6−ビス(2−イミダゾリニル)ベンゼン等が挙げられる。上記以外の配位子は中性の配位子が望ましく、反応中に解離を起こさないことが望ましい。
【0031】
を含む配位子が二座である場合(すなわち、L1〜)、L−L−Lの例としては、2,2’:6’,2”−ターピリジン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン等が挙げられ、Lを含む配位子が三座である場合(すなわち、L1〜−L)、L−Lの例としては、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン等が挙げられる。)で表される化合物が触媒として好適に使用される。
【0032】
(配位子L1〜の他の例)
上記した配位子L1〜(更にはL、L−L)として使用可能な他の例は、以下の通りである。
2−イミダゾリルフェニル、4−イミダゾリルフェニル、ピラジルフェニル、2−ピリミリジルフェニル、4−ピリミリジルフェニル、
1,3−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ジメチルアミノメチル)ベンゼン、2−フェニル−1,10−フェナントロリン
【0033】
(配位子L1〜の好ましい例)
上記した配位子L1〜(更にはL、L−L)として、入手しやすさから、市販されているものもしくは合成の簡便性の点から好ましい例は、以下の通りである。
配位子L−Lの例としては、2−フェニルピリジンが好ましい。
配位子L−L−Lの例としては、6’−フェニル−2,2’−ビピリジン、2,6−ビス(2−ピリジル)ベンゼンが好ましい。
【0034】
(中性配位子の例)
上記した中性配位子として使用可能な例は、以下の通りである。
2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピラジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、
2,2’:6’,2”−ターピリジン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン
【0035】
(中性配位子の好ましい例)
上記した中性配位子として、入手しやすさから、市販されているものもしくは合成の簡便性の点から好ましい例は、以下の通りである。
−L−Lとしては、2,2’:6’,2”−ターピリジン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンが好ましい。
−Lとしては、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジンが好ましい。
【0036】
上記したように、本発明においては、式(3)のルテニウム錯体を触媒として使用することにより、特定の酸化剤を添加せず、大気中の酸素で効率よくイミダゾリン化合物を脱水素化してイミダゾールを生成する。
【0037】
本発明においては、触媒として使用するルテニウム錯体がメタラサイクル型配位子を有する式(3)で表される有機金属化合物であることが好ましい。
【0038】
(塩基の添加)
本発明においては、塩基を添加することにより反応が促進することが好ましい。この場合、塩基性の度合いと反応溶媒への溶解性の点からは、塩基の好適な添加量は、イミダゾリン基準(100質量部)として、1〜1000質量部が好ましく、更には50〜100質量部が好ましい。
【0039】
(塩基の例示)
本発明において使用可能な塩基の例は、以下の通りである。
tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシリチウム、メトキシカリウム、メトキシナトリウム、メトキシリチウム、エトキシカリウム、エトキシナトリウム、エトキシリチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸セシウム
【0040】
(好適な塩基の例示)
本発明において、塩基性の度合いと市販されており入手しやすさの点から好適な塩基の例は、以下の通りである。
tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム
【0041】
(反応の推定メカニズム)
本発明者は、上記の目的が式(3)で表されるルテニウム錯体を触媒として用い、式(1)で表されるイミダゾリン化合物を大気中の酸素を活用して効率よく酸化させることによって式(2)で表されるイミダゾール化合物を生成できることを見出し、本発明に到達した。
【0042】
本発明によれば、ルテニウム錯体の中心金属にイミダゾリン化合物が配位して1〜位の水素原子の脱プロトン化が促進されることによって、特定の酸化剤を添加せずに温和な条件下でもイミダゾリン化合物の脱水素化が可能となりイミダゾール化合物が製造できる。そして、塩基を添加することによりその脱プロトン化が更に促進され、イミダゾリン化合物の脱水素化をより速く進行させることができる。更に、ルテニウム錯体にメタラサイクル型配位子を導入し、ルテニウムの酸化還元電位を適正に制御することによって、初めて大気中の酸素による脱水素化反応が効率よく進行するイミダゾール化合物の製造法を提供することができる。
【0043】
本発明によれば、式(3)で表されるルテニウム錯体を触媒として用いることによって、特定の酸化剤を使用せずに式(2)で表される多様なイミダゾール化合物を生成できる。
【0044】
(ルテニウム錯体)
上記の製造法において、ルテニウム錯体には、反応直前に反応系で合成したものをそのまま用いるか、または予め合成単離したものを用いることもできる。かかるルテニウム錯体はメタラサイクル型配位子と中性配位子存在下での還元反応および配位子交換反応なる方法によって生成される錯体であり、そのメタラサイクル型配位子としては、2−フェニルピリジン等をその中性配位子としては、ターピリジン等を例示することができる。
【0045】
(ルテニウム錯体の使用量)
本発明において、実質的に反応が進行する限り、ルテニウム錯体の使用量は特に制限されない。反応効率と経済的な観点から、ルテニウム触媒の使用量は、イミダゾリンを基準(100質量部)として、0.1〜50質量部が好ましく、更には1〜10質量部が好ましい。
【0046】
(酸素の圧力)
本発明においては、実質的に反応が進行する限り、酸素の圧力は特に制限されない。反応効率と経済的な観点から、酸素分圧は5000Pa以上(更には10000Pa以上)であることが好ましい。本発明の方法は、例えば、下記式(4)に示すように、大気圧下で(すなわち、大気圧の空気中に含まれる酸素分圧下において)好適に行うことができる。
【0047】
【化7】

【0048】
(反応条件)
本発明において、好適な反応条件は、以下の通りである。
反応温度:20〜100℃
反応時間:1〜72時間
【0049】
(収率)
本発明において、好適な収率としては、好適な収率はイミダゾリンを基準として、30%以上が好ましく、更には80%以上が好ましい。
【0050】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0051】
実施例1
[RuCl(ppy)(tpy)]PF(tpy=2,2’:6’,2”−terpyridine,ppy=2−phenylpyridine)の合成
100mlナス型フラスコに[RuCl(tpy)](200mg,0.454mmol)とヘキサフルオロリン酸銀(253mg,1.00mmol)をはかりとり、2−メトキシエタノール40mlを加え70℃で2時間攪拌した。生成した塩化銀をセライトろ過により取り除き、ろ液に2−phenylpyridine(44.0μl,0.454mmol)を加え70℃で12時間攪拌した。得られた緑色溶液を約1mlまで濃縮し、飽和ヘキサフルオロリン酸アンモニウム水溶液を加え、析出した紫色固体をろ取、乾燥させた。収量:303.5mg,収率:100%。
【0052】
実施例2
(触媒反応:2−メチルイミダゾールの合成−1)
NMR管に[RuCl(ppy)(tpy)]PF(4.0mg,0.006mmol)と2−メチルイミダゾリン(5.0mg,0.06mmol)をはかりとり、重メタノール1mlを加え55℃で加熱した。反応の様子をH−NMRにより追跡した。84時間後、25%の2−メチルイミダゾールが生成した。
【0053】
実施例3
(2−メチルイミダゾールの合成−2)
NMR管に[RuCl(ppy)(tpy)]PF(4.0mg,0.006mmol)と2−メチルイミダゾリン(5.0mg,0.06mmol)、カリウムtert−ブトキシド(7.3mg,0.06mmol)をはかりとり、重メタノール1mlを加え55℃で加熱した。反応の様子をH−NMRにより追跡した。48時間後、60%の2−メチルイミダゾールが、288時間後では、97%の2−メチルイミダゾールが生成した。
【0054】
比較例1
(シクロメタル化した錯体の必要性)
NMR管に[RuCl(bpy)(tpy)]PF](bpy=2,2’−bipyridine)(4.0mg,0.006mmol)、2−メチルイミダゾリン(5.0mg,0.06mmol)、およびカリウムtert−ブトキシド(7.3mg,0.06mmol)をはかりとり、重メタノール1mlを加え55℃で加熱した結果、48時間後、2−メチルイミダゾールの生成は全く確認されず、1ヶ月経過しても2−メチルイミダゾリンの酸化反応は観測されなかった。
【0055】
比較例2
(配位座が空いている必要性)
NMR管に[Ru(ppy)(bpy)](PF)(3.4mg,0.006mmol)、2−メチルイミダゾリン(5.0mg,0.06mmol)、およびカリウムtert−ブトキシド(7.3mg,0.06mmol)をはかりとり、重メタノール1mlを加え55℃で加熱した結果、48時間後、2−メチルイミダゾールの生成は全く確認されず、2週間経過しても2−メチルイミダゾリンの酸化反応は観測されなかった。
【0056】
比較例3
(空気の必要性)
窒素雰囲気下、NMR管に[RuCl(ppy)(tpy)]PF(4.0mg,0.006mmol)と2−メチルイミダゾリン(5.0mg,0.06mmol)、カリウムtert−ブトキシド(7.3mg,0.06mmol)をはかりとり、重メタノール1mlを加え55℃で加熱した結果、48時間後、4%の2−メチルイミダゾールが、3日後では6%、と2−メチルイミダゾールの生成が低収率で確認されたのみであった。
【0057】
実施例4
(2−フェニルイミダゾールの合成)
NMR管に[RuCl(ppy)(tpy)]PF(4.0mg,0.006mmol)、2−フェニルイミダゾリン(8.8mg,0.06mmol)、カリウムtert−ブトキシド(7.3mg,0.06mmol)をはかりとり、重メタノール1mlを加え55℃で加熱した。反応の様子をH−NMRにより追跡した。48時間後、55%の2−フェニルイミダゾールが、408時間後では、90%の2−フェニルイミダゾールが生成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、芳香脂肪族基、芳香族基を示す)
で表されるイミダゾリン化合物から、下記式(2)、
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、芳香脂肪族基、芳香族基を示す)
で表されるイミダゾール化合物を製造する方法であって、且つ、下記式(3)で表されるルテニウム錯体を使用することを特徴とするイミダゾール化合物の製造法。
【化3】

(式中、Xはイミダゾリンと置換が可能な単座配位子であり、Lは炭素で結合した配位子であり、L、あるいはLおよびLと連結した二座あるいは三座キレート配位子を形成し;またLおよびLは配位子であり、それぞれ独立な単座配位子でも良く、お互いに連結した二座配位子でも良く、L,L,およびLで連結した三座配位子でも良い)。
【請求項2】
前記単座配位子Xがアニオン配位子である請求項1に記載のイミダゾール化合物の製造法。
【請求項3】
前記アニオン配位子が、Cl、Br、I、アセテートからなる群から選択される請求項2に記載のイミダゾール化合物の製造法。
【請求項4】
前記単座配位子Xが中性配位子である請求項1に記載のイミダゾール化合物の製造法。
【請求項5】
前記中性配位子が、ピリジン、ジメチルスルホキシド、HOからなる群から選択される請求項2に記載のイミダゾール化合物の製造法。

【公開番号】特開2008−285454(P2008−285454A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134098(P2007−134098)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】