説明

イミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物及び当該化合物を含有するメッキ浴

【課題】 各種のメッキ浴において、水への溶解性と消泡性を両立できるとともに、メッキ液の管理を容易にする。
【解決手段】 C2〜C4アルキレンより選ばれたオキシアルキレン鎖を有し、当該オキシアルキレン鎖に3位の窒素原子を介してイミダゾール環が結合するとともに、イミダゾール環が末端に位置する新規のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物を各種メッキ浴に使用すると、従来のノニオン性界面活性剤に比べて、末端へのイミダゾール環基の導入によって水溶性を良好に保持しながら、発泡性を顕著に低減できる。ノニオン界面活性剤の分子中にイミダゾール環基が存在する当該化合物を例えば銅メッキ浴に用いると、界面活性剤の作用とレベリング作用を兼備でき、メッキ液を簡便に管理できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物、並びに当該化合物を含有するメッキ浴に関して、良好な水への溶解性と高い消泡性を兼備できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気メッキ、無電解メッキでは、メッキ浴にノニオン性を初めとする各種の界面活性剤を添加して、メッキ皮膜の緻密化、平滑化、或いはメッキ外観の向上を図っているが、通常のメッキ作業では、この界面活性剤の添加のために激しい溶液移動や空気との混合によって気泡が発生し、次のような弊害をもたらす。
(1)作業性が低下する。
(2)メッキの界面精度が低下する。
(3)高速メッキにおいてリザーブタンクからメッキ液が溢れ出してくる。
(4)被メッキ物の表面のピットの原因になる。
(5)メッキの未着部分が発生する。
そのため、ノニオン性界面活性剤の末端にハロゲンや低級アルキル等を導入したものが知られている。しかし、低起泡性にすると水への溶解度が低下し、逆に、溶解度をあまり落とさないようにすると消泡性が低下して発泡し易くなり、上記弊害が解消されないという問題がある。
【0003】
先に、本出願人は、特許文献1において、メッキ液の低起泡性及び消泡性を向上することを目的として、ビス(ヒドロキシシクロヘキシル)アルカン系(つまり、シクロヘキサノール系)のポリオキシアルキレン化合物をメッキ液に含有することを開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−216845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メッキ液(例えば、銅メッキ液)には界面活性剤とレベリング効果のある添加剤を併用する場合が多いが、複数の薬剤を使用するとそれぞれの化合物についての分析が必要になり、また、それぞれの化合物の減少割合に応じて薬剤を補充しなければならず、メッキ液の管理が複雑になる。
本発明は、各種のメッキ液において、水への溶解性と消泡性を両立できるとともに、メッキ液の管理を容易にすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記特許文献1のように、ポリオキシアルキレン鎖の骨格を有するノニオン性界面活性剤において、このポリオキシアルキレン鎖に各種の縮合環や脂環構造が結合した様々な化合物を鋭意研究した結果、ノニオン性界面活性剤の末端にイミダゾール環基を導入することで水溶性を低下させることなく消泡性を実現できること、ノニオン界面活性剤とイミダゾール環基が1分子中に共存すると、化合物の分析や薬剤の補給が容易になり、メッキ液の管理に手間がかからないことを見い出して、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明1は、C2〜C4アルキレンより選ばれたオキシアルキレン鎖を有し、当該オキシアルキレン鎖に3位の窒素原子を介してイミダゾール環が結合するとともに、イミダゾール環が末端に位置することを特徴とするイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物である。
【0008】
本発明2は、上記本発明1において、オキシアルキレン鎖が付加するイミダゾール環には、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリル、水素よりなる群から選ばれた置換基が結合し、
イミダゾール環の1位の窒素原子には、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニル、水素よりなる群から選ばれた置換基が結合するとともに、
末端にイミダゾール環が結合するオキシアルキレン鎖の他端が、
(a)フェノール、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、ナフトール、アルキルナフトール、アルカノールの酸素原子、或いは、(b)別のイミダゾール環の3位の窒素原子に結合するか、
又は、(c)ビスフェノール構造、(d)アルキレンポリアミン構造、(e)アルキルアミン構造のいずれかを介して、末端にイミダゾール環が結合する別のオキシアルキレン鎖に結合したものであることを特徴とするイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物である。
【0009】
本発明3は、(A)第一スズ塩、銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、金、白金、パラジウム、鉛からなる群より選ばれた金属の塩の一種又は二種以上の混合物よりなる可溶性塩と、
(B)酸又はその塩とを含有するメッキ浴において、
上記本発明1又は2のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物(C)をノニオン性界面活性剤として含有することを特徴とするメッキ浴である。
【0010】
本発明4は、上記本発明3において、金属の可溶性塩が、スズ、銀、銅の塩の一種又は二種以上の混合物よりなる可溶性塩であることを特徴とするメッキ浴である。
【0011】
本発明5は、上記本発明3又は4において、さらに、界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、緩衝剤、酸化防止剤、補助錯化剤、隠蔽錯化剤及び電導性塩よりなる群から選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とするメッキ浴である。
【0012】
本発明6は、上記本発明3〜5のいずれかにおいて、メッキ浴が電気メッキ浴又は無電解メッキ浴であることを特徴とするメッキ浴である。
【0013】
本発明7は、上記本発明3〜6のいずれかのメッキ浴を用いて金属皮膜を形成した電子部品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、末端にイミダゾール環が位置し、このイミダゾール環にオキシアルキレン鎖が結合した新規のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物をノニオン性界面活性剤としてメッキ浴に添加するため、従来のノニオン性界面活性剤に比べて、末端へのイミダゾール環基の導入によって水溶性を良好に保持しながら、発泡性を顕著に低減できる。
また、前述したように、銅メッキ液を初めとして各種メッキ液では、界面活性剤とレベリング効果のある添加剤を併用する場合が多いが、ノニオン界面活性剤の分子中にイミダゾール環基が存在する本発明の新規化合物をメッキ浴に使用すると、界面活性剤の作用とレベリング作用を兼備できるため、化合物の分析や薬剤の補給が容易になって、メッキ液を簡便に管理できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、第一に、末端に位置するイミダゾール環基にオキシアルキレン鎖が結合した新規のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物であり、第二に、このイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物をノニオン性界面活性剤として含有した、スズ、銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、鉛からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属のメッキ浴であり、第三に、当該所定のメッキ浴を用いて金属皮膜を形成した電子部品である。
本発明のメッキ浴は電気メッキ浴又は無電解メッキ浴を問わない。
【0016】
本発明のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物は、基本的に次の5種類の基本骨格を有する化合物(A)〜(E)に分類できる(本発明2参照)。
(1)化合物(A)
オキシアルキレン鎖(−(AO)n−)の一端にイミダゾール環の3位の窒素原子が結合するとともに、当該オキシアルキレン鎖の他端にフェノール、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、ナフトール、アルキルナフトール、アルカノールの酸素原子が結合したもので、下記の一般式(a)で表される。
【化1】

(式(a)中、RはC1〜C25アルキル、アリールアルキル置換又は無置換のフェノール、C1〜C25アルキル置換又は無置換のナフトール、C1〜C20アルカノールである;R1、R2、R3はC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリルである;R4はC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニルである;nは1〜20の整数である)
【0017】
即ち、当該化合物(A)において、オキシアルキレン鎖はC2〜C4アルキレン、即ち、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、又はこれらの組み合わせより選ばれる。また、このオキシアルキレン鎖の末端には3位の窒素原子を介してイミダゾール環が結合し、当該オキシアルキレン鎖の他端にはフェノール、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、ナフトール、アルキルナフトール、アルカノールの各酸素原子が結合してエーテル結合を形成する。当該オキシアルキレン鎖の付加数nは1〜40、好ましくは1〜20である。
このイミダゾール環の1位の窒素原子に結合する置換基R4はC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニル、水素から選ばれ、イミダゾール環に結合する置換基R1、R2、R3はC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリル、水素から選ばれる。
【0018】
(2)化合物(B)
オキシアルキレン鎖の末端にイミダゾール環の3位の窒素原子が結合するとともに、当該オキシアルキレン鎖の他端に別のイミダゾール環の3位の窒素原子が結合したもので、下記の一般式(b)で表される。
【化2】

(式(b)中、R1、R2、R3はC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリルである;R4はC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニルである;m、nは夫々1〜20の整数である)
即ち、当該化合物(B)において、オキシアルキレン鎖、イミダゾール環に結合する置換基R1、R2、R3、或いは、イミダゾール環の1位の窒素原子に結合する置換基R4は上記化合物(A)と同様である。
【0019】
(3)化合物(C)
オキシアルキレン鎖の末端にイミダゾール環の3位の窒素原子が結合するとともに、当該オキシアルキレン鎖の他端にビスフェノール構造を介して、末端にイミダゾール環が結合した別のオキシアルキレン鎖が結合したもので、下記の一般式(c)で表される。
【化3】

(式(c)中、Raは下式のビスフェノール構造を意味し、
【化6】

Rc、Rdは夫々水素、C1〜C4アルキルである;R1、R2、R3はC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリルである;R4はC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニルである;nは1〜20の整数である)
即ち、当該化合物(C)において、オキシアルキレン鎖、イミダゾール環に結合する置換基R1、R2、R3、或いは、イミダゾール環の1位の窒素原子に結合する置換基R4は上記化合物(A)と同様である。
【0020】
(4)化合物(D)
オキシアルキレン鎖の末端にイミダゾール環の3位の窒素原子が結合するとともに、当該オキシアルキレン鎖の他端にアルキレンポリアミン構造を介して、末端にイミダゾール環が結合した別のオキシアルキレン鎖が結合したもので、下記の一般式(d)で表される。
【化4】

(式(d)中、R1、R2、R3はC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリルである;R4はC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニルである;nは1〜20の整数である)
即ち、当該化合物(D)において、オキシアルキレン鎖、イミダゾール環に結合する置換基R1、R2、R3、或いは、イミダゾール環の1位の窒素原子に結合する置換基R4は上記化合物(A)と同様である。また、アルキレンポリアミン構造はエチレンジアミン、メチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ペンタエチレントリアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどを意味する。
【0021】
(5)化合物(E)
オキシアルキレン鎖の末端にイミダゾール環の3位の窒素原子が結合するとともに、当該オキシアルキレン鎖の他端にアルキルアミン構造を介して、末端にイミダゾール環が結合した別のオキシアルキレン鎖が結合したもので、下記の一般式(e)で表される。
【化5】

(式(e)中、RbはC1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニルである;R1、R2、R3はC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリルである;R4はC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニルである;nは1〜20の整数である)
即ち、当該化合物(E)において、オキシアルキレン鎖、イミダゾール環に結合する置換基R1、R2、R3、或いは、イミダゾール環の1位の窒素原子に結合する置換基R4は上記化合物(A)と同様である。
【0022】
以上のように、本発明のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物は、フェノール、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、ナフトール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C20アルカノール、ビスフェノール類、C1〜C18脂肪族アミン、アルキレンポリアミンにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を1〜20モル付加縮合させた従来型のノニオン性界面活性剤の末端に、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−アリルイミダゾール、1−メチル−4−クロロイミザドール、1−ビニルイミダゾール、1−エチル−5−メトキシイミダゾールなどの置換又は無置換のイミダゾール化合物が結合して、イミダゾール環基を形成したものである。
【0023】
本発明のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物は常法によって製造する。
例えば、上記従来型のノニオン性界面活性剤の末端水酸基を塩素やメタンスルホネートのような脱離基に置換した後、上記イミダゾール化合物と約50℃〜150℃の温度にて1〜50時間反応させることにより得られる。
【0024】
上記イミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物の具体例を述べると、次の通りである。
(1)化合物1
ω−(1−(2−メトキシエチル)イミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)ラウリルアルコールポリプロポキシレート(PO2)ポリエトキシレート(EO12)
この化合物1は下式(f)で表される。
【化7】

尚、この化合物1は前記一般式(a)で表される化合物Aに属する。
【0025】
(2)化合物2
ω−(1−ブチルイミダゾリウムクロリド−3−イル)ポリオキシエチレン(EO14)−α−ナフチルエーテル
この化合物2は下式(g)で表される。
【化8】

尚、この化合物2は前記一般式(a)で表される化合物Aに属する。
【0026】
(3)化合物3
ω−(1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)クミルフェノールポリエトキシレート(EO12)ポリプロポキシレート(PO3)
この化合物3は下式(h)で表される。
【化9】

尚、この化合物3は前記一般式(a)で表される化合物Aに属する。
【0027】
(4)化合物4
ω−(1,4−ジメチルイミダゾリウムクロリド−3−イル)ポリオキシプロピレン(PO5)ポリオキシエチレン(EO15)−ジスチリルフェニルエーテル
この化合物4は前記一般式(a)で表される化合物Aに属する。
(5)化合物5
ω,ω′−ビス(1−アリルイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)ビスフェノールAポリエトキシレート(EO14)
この化合物5は前記一般式(c)で表される化合物Cに属する。
(6)化合物6
ω,ω′−ビス(1−ブチルイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)プルロニック型ポリプロポキシレート(PO30)ポリエトキシレート(EO26)
この化合物6は前記一般式(b)で表される化合物Bに属する。
(7)化合物7
ω,ω′,ω′′′,ω′′′′−テトラ(1−メチル−4−クロロイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)テトロニック型エチレンジアミンポリプロポキシレート(PO20)ポリエトキシレート(EO20)
この化合物7は前記一般式(d)で表される化合物Dに属する。
(8)化合物8
ω,ω′−(1−エチル−5−メトキシイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)オレイルアミンポリプロポキシレート(PO6)ポリエトキシレート(EO18)
この化合物8は前記一般式(e)で表される化合物Eに属する。
【0028】
本発明のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物は、上記化合物A〜Eに属するいずれの化合物についても、後述の消泡性試験の結果に示す通り、従来のノニオン性界面活性剤に比べて顕著な消泡作用を発現するが、一般式(a)で表される化合物(A)の消泡作用は特に優れている。
【0029】
一方、本発明3は、上記本発明1又は2のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物をメッキ浴に適用したものである。
即ち、本発明3は、(A)上記スズ、銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、鉛からなる群より選ばれた所定の金属の可溶性塩と、
(B)有機酸、無機酸、或はその塩と、
(C)上記本発明1又は2のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物とを含有するメッキ浴である。
この場合、上記メッキ浴は電気メッキ浴、無電解メッキ浴を問わず(本発明6)、スズ、銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、金、白金、パラジウム、鉛からなる群より選ばれた所定の金属又はこれらの二種以上の合金のメッキ浴に、本発明1又は2のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物をノニオン性界面活性剤として含有したものである。
二種以上の合金としては、スズ−銅合金、スズ−銀合金、スズ−亜鉛合金、スズ−ビスマス合金、スズ−インジウム合金、スズ−鉛合金、金−ニッケル合金、銀−パラジウム合金、パラジウム−インジウム合金、スズ−銅−銀合金、スズ−銅−ビスマスなどが挙げられる。
このうち、好ましいメッキ浴は、スズ、銀、銅より選ばれた金属又はこれらの2種以上の合金のメッキ浴である(本発明4参照)。
【0030】
上記所定金属の可溶性塩は、メッキ浴中でSn2+、Ag+、Cu+、Cu2+、Bi3+、In3+、Zn2+、Sb3+、Ni2+、Au+、Au3+、Pt2+、Pd2+、Pb2+などの各種金属イオンを生成する任意の可溶性塩を意味し、例えば、当該金属の酸化物、ハロゲン化物、無機酸又は有機酸の当該金属塩、当該金属のリン錯体塩などが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化第一スズ、酸化銅、酸化ニッケル、酸化ビスマス、酸化インジウムなどが挙げられ、金属のハロゲン化物としては、塩化第一スズ、塩化ビスマス、臭化ビスマス、塩化インジウム、ヨウ化インジウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化ニッケル、塩化パラジウム、塩化金などが挙げられる。
無機酸又は有機酸の金属塩としては、硫酸銅、硫酸第一スズ、硫酸ビスマス、硫酸インジウム、硫酸亜鉛、硫酸ニッケル、硝酸ビスマス、硝酸銀、酢酸ニッケル、スズ酸ナトリウム、ホウフッ化第一スズ、ケイフッ化鉛、メタンスルホン酸第一スズ、メタンスルホン酸鉛、メタンスルホン酸亜鉛、メタンスルホン酸ビスマス、メタンスルホン酸ニッケル、メタンスルホン酸パラジウム、メルカプトコハク酸金、エタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸白金、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマス、スルファミン酸インジウムなどが挙げられる。また、白金や金などの貴金属の塩としては、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンなどのリン化合物の錯体塩を使用することもできる。
【0031】
メッキ浴のベースとなる有機酸には、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或いは脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸には、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などが挙げられるが、金属塩の溶解性や排水処理の容易性から有機スルホン酸が好ましい。
【0032】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式CnH2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0033】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0034】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0035】
上記脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0036】
上記所定の可溶性金属塩(A)は単用又は併用でき、メッキ浴中での含有量は0.01〜300g/Lであり、好ましくは0.1〜150g/Lである。
また、無機酸、有機酸又はその塩(B)は単用又は併用でき、メッキ浴中での含有量は0.1〜300g/Lであり、好ましくは10〜200g/Lである。
上記イミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物(C)は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は0.01〜30g/L、好ましくは0.2〜10g/Lである。
尚、本発明のメッキ浴で電気メッキを行う場合、上記各成分の添加濃度はバレルメッキ、ラックメッキ、高速連続メッキ、ラックレスメッキなどのメッキ方式に応じて任意に調整・選択することになる。
【0037】
本発明のメッキ浴には、従来型の界面活性剤を初め、光沢剤、半光沢剤、平滑剤、緩衝剤、酸化防止剤、錯化剤、補助錯化剤、隠蔽錯化剤、導電性塩などの各種添加剤を添加することができる。
上記界面活性剤には通常のノニオン系、アニオン系、両性、或はカチオン系などの各種界面活性剤が挙げられ、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善に寄与する。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0038】
上記光沢剤、半光沢剤としては、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリルデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2−メルカトプトベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0039】
上記平滑剤、つまりレベラーは、冒述したように、例えば、銅メッキ浴などで、メッキ皮膜のレベリング性を確保するために添加され、界面活性剤、塩化物、窒素系有機化合物、イオウ化合物よりなる群から選ばれる。
上記界面活性剤の具体例は前述した通りである。
上記塩化物はメッキ浴中で塩素イオンを供給可能な化合物を意味し、塩化ナトリウム、塩化水素、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化銅などが挙げられる。第4アルキルアンモニウムクロリド、クロル酢酸などの塩素系有機化合物などであっても良い。
【0040】
上記窒素系有機化合物は、染料或はその誘導体、アミド系化合物、チオアミド系化合物、アニリン又はピリジン環を有する化合物、各種複素単環式化合物、各種縮合複素環式化合物、アミノカルボン酸類などであり、具体的には、C.I.(Color Index)ベーシックレッド2、トルイジンブルーなどのトルイジン系染料、C.I.ダイレクトイエロー1、C.I.ヤーナスグリーンB、C.I.ベーシックブラック2などのアゾ系染料、3−アミノ−6−ジメチルアミノ−2−メチルフェナジン一塩酸などのフェナジン系染料、コハク酸イミド、2′−ビス(2−イミダゾリン)などのイミダゾリン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、2−ビニルピリジン、4−アセチルピリジン、4−メルカプト−2−カルボキシルピリジン、2,2′−ビピリジル、フェナントロリンなどのピリジン類、キノリン類、イソキノリン類、アニリン、チオ尿素、ジメチルチオ尿素などのチオ尿素類、3,3′,3′′−ニトリロ三プロピオン酸、ジアミノメチレンアミノ酢酸、グリシン、N−メチルグリシン、ジメチルグリシン、β−アラニン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ吉草酸、オルニチンなどが挙げられる。
なかでも、C.I.ベーシックレッド2などのトルイジン染料、C.I.ダイレクトイエロー1、C.I.ヤーナスグリーンBなどのアゾ染料、3−アミノ−6−ジメチルアミノ−2−メチルフェナジン一塩酸などのフェナジン系染料、2′−ビス(2−イミダゾリン)などのイミダゾリン類、ベンゾイミダゾール類、2−ビニルピリジン、4−アセチルピリジン、2,2′−ビピリジル、フェナントロリンなどのピリジン類、キノリン類、アニリン、チオ尿素、ジメチルチオ尿素などのチオ尿素類、アミノメチレンアミノ酢酸などのアミノカルボン酸類が好ましい。
【0041】
上記イオウ化合物は、チオ尿素類、メルカプタン類、メルカプトスルホン酸類、ベンゾチアゾール類、スルフィド類、チオフェン類、ベンゾチオフェン類などであり、具体的には、チオ尿素、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジドなどのチオ尿素誘導体、チオフェノール、o、m又はp−ジメルカプトベンゼン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸などのメルカプタン類、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、2,2′−(又は4,4′−)ジピリジルスルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ジエチルスルフィド、イソプロピルスルフィド、ジフェニルスルフィド、イソブチルエチルスルフィド、2,2′−チオジグリコール酸、3,3′−チオジプロピオン酸、2,2′−チオジグリコール、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジフェニルジスルフィドなどのスルフィド類、チオグリコール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸ナトリウム、ジ−n−ピロピル−チオエーテル−ジ−3−スルホン酸(2ナトリウム塩)、ビス(3−スルホプロピル)ジサルファイド(2ナトリウム塩)、3−(ベンゾチアゾリル−2−チオ)ピロピルスルホン酸(2ナトリウム塩)などのメルカプタン類などが挙げられる。
なかでも、チオ尿素類、ベンゾチアゾール類、メルカプタン類、スルフィド類などが好ましい。
【0042】
上記緩衝剤はメッキ浴のpHを調整するためのもので、例えば、中性スズメッキ浴では重要である。具体的には、塩酸、硫酸等の各種の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸等のジカルボン酸類、乳酸、酒石酸等のオキシカルボン酸類などの有機酸、或は、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、有機アミン塩等の各種の塩基などを使用する。
【0043】
上記酸化防止剤は、例えば、メッキ浴がスズ又はスズ合金浴の場合、可溶性第一スズ塩の第二スズ塩への酸化を防止する目的で含有され、次亜リン酸類を初め、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、ヒドラジン、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、カテコールスルホン酸、ハイドロキノンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、或いはこれらの塩などが使用できる。
【0044】
上記錯化剤は、特に、銀、金、白金などの貴金属を含むメッキ浴(電気メッキ浴と無電解メッキ浴)などで貴金属イオンなどを浴中で安定化させるために用いる。
例えば、チオグリコール酸、チオジグリコール酸、チオグリコール、チオジグリコール、メルカプトコハク酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、3,6,9−トリチアデカン−1,11−ジスルホン酸、チオビス(ドデカエチレングリコール)、ジチオジアニリン、ジピリジルジスルフィド、メルカプトコハク酸、亜硫酸塩、チオ硫酸塩などの含イオウ化合物、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンなどのリン化合物を添加する。
また、例えば、中性スズメッキ浴では、Sn2+を浴中で安定化させて白色沈殿の発生や浴の分解を防止するために錯化剤が必要である。
当該錯化剤は、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、モノカルボン酸などであり、具体的には、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ジグリコール酸、或はこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、或はこれらの塩などである。
また、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)−N,N,N′,N′−テトラ酢酸、グリシン類、ニトリロトリメチルホスホン酸、或はこれらの塩なども有効である。
【0045】
一方、無電解メッキ浴、例えば、無電解スズメッキ浴の場合、被メッキ物の素地金属である銅、銅合金に配位して、銅の電極電位を卑の方向に変移させ、スズとの化学置換反応を促進する目的で錯化剤を添加する必要がある。
この錯化剤にはチオ尿素類が好ましく、チオ尿素類には、チオ尿素、或は、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド等のチオ尿素誘導体が挙げられる。
当該チオ尿素類と同様の錯化作用を奏する化合物として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、ベンジルアミン、2―ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミンなども有効である。
【0046】
補助錯化剤、隠蔽錯化剤は被メッキ物などから溶出した不純物金属イオンが目的とする析出金属と同時に析出したり、浴を劣化させるのを抑制するために添加するものである。その具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチルトリアミン五酢酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、マロン酸、グリコール酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グリシン、ピロリン酸、トリポリリン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸などが挙げられる。
【0047】
また、上記電導性塩としては、メッキ浴において通常使用される化合物を用いることができ、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、スルファミン酸、スルホン酸などのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などを使用できる。
上記pH調整剤についてもメッキ浴において通常使用される化合物を用いることができ、例えば、リン酸、酢酸、ホウ酸、酒石酸などのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などを使用でき、さらに、多塩基酸の場合には、水素イオンを含む酸性塩を単独で、又は適宜混合して使用できる。尚、銀−スズ合金浴のようなスズ塩を含有する銀合金メッキ浴では、カテコール、ハイドロキノン、フェノールスルホン酸、ナフトールスルホン酸、アスコルビン酸などの酸化防止剤を添加することにより第一スズ塩の酸化を有効に抑制できる。
【0048】
本発明のメッキ浴を用いて電気メッキを行う場合、浴温は一般に70℃以下、好ましくは10〜40℃程度である。また、陰極電流密度はメッキ浴の種類により多少の差異はあるが、一般に0.01〜150A/dm2程度、好ましくは0.1〜50A/dm2程度である。
【0049】
本発明7は、本発明の1〜6の電気メッキ浴又は無電解メッキ浴を被メッキ物である電子部品に適用して、電子部品に所定の金属皮膜を形成したものである。
電子部品には、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路、抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物の製造例1〜8、当該製造例1〜8で得られた化合物1〜8(前述の具体的化合物1〜8と同じ)を夫々含有させた電気又は無電解メッキ浴の実施例、前記化合物1〜8を含有する試料水溶液の消泡性試験例を順次説明する。
上記製造例、実施例、試験例の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の製造例、実施例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0051】
《イミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物の製造例》
下記の製造例1〜8のうち、製造例1は前記一般式(a)に属する前記化合物2の例、製造例2は前記一般式(c)に属する前記化合物5の例、製造例3は前記一般式(a)に属する前記化合物1の例、製造例4は前記一般式(a)に属する前記化合物3の例、製造例5は前記一般式(a)に属する前記化合物4の例、製造例6は前記一般式(b)に属する前記化合物6の例、製造例7は前記一般式(d)に属する前記化合物7の例、製造例8は前記一般式(e)に属する前記化合物8の例である。
【0052】
《製造例1》
温度計、攪拌機を取り付けた200mlの3つ口フラスコに、ω−クロロポリオキシエチレン(EO14)−α−ナフチルエーテル20g、1−ブチルイミダゾール3.18gおよびメチルセロソルブ20mlを加えた。系内を窒素置換した後、攪拌下、120℃で18時間反応させた。反応終了後、内容物を2N−水酸化ナトリウム水溶液と塩化メチレンで振り、塩化メチレン層を分液した。この塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去してω−(1−ブチルイミダゾリウムクロリド−3−イル)ポリオキシエチレン(EO14)−α−ナフチルエーテル(前記一般式(a)に属する化合物2)21.5gを得た。尚、この化合物2は前記構造式(g)で表される。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C4575214Clとして
計算値(%) C:59.83 H:8.31 N:3.10 Cl:3.93
実測値(%) C:60.45 H:8.72 N:2.89 Cl:3.61
【0053】
《製造例2》
温度計、攪拌機を取り付けた200mlの3つ口フラスコに、ビスフェノールAポリエトキシレート(EO14)−ω,ω′−ジメシレート20g、1−アリルイミダゾール4.32gおよびメチルセロソルブ20mlを加えた。系内を窒素置換した後、攪拌下、100℃で24時間反応させた。反応終了後、内容物を2N−水酸化ナトリウム水溶液と塩化メチレンで振り、塩化メチレン層を分液した。この塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去してω,ω′−ビス(1−アリルイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)ビスフェノールAポリエトキシレート(EO14)(前記一般式(c)に属する化合物5)23.8gを得た。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C57924202として
計算値(%) C:56.25 H:7.57 N:4.61 S:5.26
実測値(%) C:56.68 H:7.92 N:4.27 S:5.08
【0054】
《製造例3》
上記製造例2と同様にして、ラウリルアルコールポリプロポキシレート(PO2)ポリエトキシレート(EO12)−ω−メシレート20g及び1−(2−メトキシエチル)イミダゾール2.77gから、ω−(1−(2−メトキシエチル)イミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)ラウリルアルコールポリプロポキシレート(PO2)ポリエトキシレート(EO12)(前記一般式(a)に属する化合物1)20.9gを得た。尚、この化合物1は前記構造式(f)で表される。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C4998216Sとして
計算値(%) C:56.87 H:9.48 N:2.71 S:3.09
実測値(%) C:57.02 H:9.54 N:2.51 S:2.86
【0055】
《製造例4》
上記製造例2と同様にして、クミルフェノールポリプロポキシレート(PO3)ポリエトキシレート(EO12)−ω−メシレート20g及び1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール2.25gから、ω−(1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)クミルフェノールポリプロポキシレート(PO3)ポリエトキシレート(EO12)(前記一般式(a)に属する化合物3)21.3gを得た。尚、この化合物3は前記構造式(h)で表される。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C5492219Sとして
計算値(%) C:58.70 H:8.33 N:2.54 S:2.90
実測値(%) C:59.50 H:8.73 N:2.38 S:2.76
【0056】
《製造例5》
上記製造例1と同様にして、ω−クロロポリオキシプロピレン(PO5)ポリオキシエチレン(EO15)−ジスチリルフェニルエーテル20g及び1,4−ジメチルイミダゾール1.51gから、ω−(1,4−ジメチルイミダゾリウムクロリド−3−イル)ポリオキシプロピレン(PO5)ポリオキシエチレン(EO15)−ジスチリルフェニルエーテル(前記一般式(a)に属する化合物4)20.4gを得た。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C72119220Clとして
計算値(%) C:63.23 H:8.71 N:2.05 S:2.60
実測値(%) C:63.81 H:8.92 N:1.98 S:2.43
【0057】
《製造例6》
上記製造例2と同様にして、プルロニック型ポリプロポキシレート(PO30)ポリエトキシレート(EO26)−ω,ω′−ジメシレート20g及び1−ブチルイミダゾール1.62gから、ω,ω′−ビス(1−ブチルイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)プルロニック型ポリプロポキシレート(PO30)ポリエトキシレート(EO26)(前記一般式(b)に属する化合物6)19.6gを得た。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C1583144612として
計算値(%) C:57.35 H:9.50 N:1.69 S:1.94
実測値(%) C:58.10 H:9.87 N:1.51 S:1.74
【0058】
《製造例7》
上記製造例2と同様にして、テトロニック型エチレンジアミンポリプロポキシレート(PO20)ポリエトキシレート(EO20)−ω,ω′,ω′′,ω′′′−テトラメシレート20g及び1−メチル−4−クロロイミダゾール3.86gから、ω,ω′,ω′′,ω′′′−テトラ(1−メチル−4−クロロイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)テトロニック型エチレンジアミンポリプロポキシレート(PO20)ポリエトキシレート(EO20)(前記一般式(d)に属する化合物7)20.9gを得た。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C12223610484Cl4として
計算値(%) C:50.87 H:8.20 N:4.86 S:2.22 Cl:4.93
実測値(%) C:51.23 H:8.71 N:4.59 S:2.07 Cl:4.75
【0059】
《製造例8》
上記製造例2と同様にして、オレイルアミンポリプロポキシレート(PO6)ポリエトキシレート(EO18)−ω,ω′−ジメシレート20g及び1−エチル−5−メトキシイミダゾール3.22gから、ω,ω′−(1−エチル−5−メトキシイミダゾリウムメタンスルホネート−3−イル)オレイルアミンポリプロポキシレート(PO6)ポリエトキシレート(EO18)(前記一般式(e)に属する化合物8)21.2gを得た。
そして、元素分析によりその生成を確認した。
元素分析値:C861695302として
計算値(%) C:56.86 H:9.31 N:3.86 S:3.53
実測値(%) C:57.23 H:9.61 N:3.72 S:3.29
【0060】
そこで、上記製造例1〜8で得られたイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物1〜8を用いて各種メッキ浴を調製し、当該電気又は無電解メッキ浴を用いて得られた各メッキ皮膜の組成、或いは外観を評価した。
次いで、本発明のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物である上記化合物1〜8について、従来のオキシアルキレン型ノニオン性界面活性剤を比較化合物として消泡性試験を行って、消泡性の優劣を評価した。
【0061】
《イミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物を含有するメッキ浴の実施例》
実施例1〜18のうち、実施例1は銅メッキ浴、実施例2はスズ−銅合金メッキ浴、実施例3は銀メッキ浴、実施例4はスズ−銀合金メッキ浴、実施例5は金メッキ浴、実施例6は酸性スズメッキ浴、実施例7は金メッキ浴、実施例8は金−ニッケル合金メッキ浴、実施例9はニッケルメッキ浴、実施例10は銀−パラジウム合金メッキ浴、実施例11はパラジウムメッキ浴、実施例12はスズ−亜鉛合金メッキ浴、実施例13はスズ−鉛合金メッキ浴、実施例14は白金メッキ浴、実施例15はパラジウム−インジウム合金メッキ浴、実施例16はビスマスメッキ浴、実施例17は中性スズメッキ浴、実施例18はスズメッキ浴、実施例19は銀メッキ浴の各例である。
このうち、実施例7、実施例11、実施例14、実施例18〜19は各無電解メッキ浴の例、その他の実施例はすべて電気メッキ浴の例である。
【0062】
《実施例1》
下記の組成により電気銅メッキ浴を調製した。
硫酸銅(Cu2+として) 50g/L
硫酸 50g/L
化合物4 0.1g/L
ヤーナスグリーンB 0.002g/L
塩化ナトリウム 0.1g/L
ポリエチレングリコール(平均分子量2,000) 0.1g/L
このメッキ浴を使用して下記条件で銅板上に電気銅メッキを行い、平滑で光沢のある良好な銅メッキ皮膜を得た。
[メッキ条件]
温度 30℃
電流密度 5A/dm2
【0063】
《実施例2》
下記の組成により電気スズ−銅合金メッキ浴を調製した。
メタンスルホン酸スズ(Sn2+として) 20g/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸銅(Cu2+として) 10g/L
メタンスルホン酸 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 10g/L
化合物2 3g/L
化合物6 5g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気銅−スズ合金メッキを行い、良好な銅−スズ合金メッキ皮膜を得た。蛍光X線による半定量の結果、銅含有率は約60重量%であった。
[メッキ条件]
温度 30℃
電流密度 1A/dm2
【0064】
《実施例3》
下記の組成により電気銀メッキ浴を調製した。
2−ヒドロキシプロパンスルホン酸銀(Ag+として) 20g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 20g/L
化合物3 3g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気銀めっきを行い、良好な銀めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH(メタンスルホン酸にて調整) 0.98
温度 25℃
電流密度 1A/dm2
【0065】
《実施例4》
下記の組成により電気スズ−銀合金メッキ浴を調製した。
エタンスルホン酸スズ(Sn2+として) 25g/L
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.6g/L
エタンスルホン酸 70g/L
チオ尿素 5g/L
2−メルカプトベンゾチアゾール 0.2g/L
化合物2 5g/L
カテコール 0.5g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気スズ−銀合金めっきを行い、良好なスズ−銀合金めっき皮膜を得た。蛍光X線による半定量の結果、銀含有率は約5重量%であった。
[メッキ条件]
温度 25℃
電流密度 5A/dm2
【0066】
《実施例5》
下記の組成により電気金メッキ浴を調製した。
メルカプトコハク酸金(Au+として) 7g/L
1,3−ジメチルチオ尿素 5g/L
化合物4 5g/L
この水溶液を使用して下記条件でニッケル板上に電気金めっきを行い、良好な金めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH 6.0
温度 55℃
電流密度 1A/dm2
【0067】
《実施例6》
下記の組成により電気スズメッキ浴を調製した。
メタンスルホン酸スズ(Sn2+として) 30g/L
化合物3 3g/L
ハイドロキノン 0.7g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気スズめっきを行い、白色でムラのない良好なスズめっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
温度 30℃
電流密度 5A/dm2
【0068】
《実施例7》
下記の組成により無電解金メッキ浴を調製した。
トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン金(Au+として) 2g/L
トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン 20g/L
EDTA 5g/L
化合物1 1g/L
この水溶液を使用して下記条件で無電解ニッケル−リン合金めっき上に無電解金めっきを行い、良好な金めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH 7.0
温度 85℃
【0069】
《実施例8》
下記の組成により電気金−ニッケル合金メッキ浴を調製した。
塩化金(Au+として) 5g/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.1g/L
トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン 70g/L
化合物2 2g/L
ニッケル電気めっき皮膜上にこの水溶液を使用して下記条件で電気金−ニッケル合金めっきを行い、白色を帯びた良好な金−ニッケル合金めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH 6.0
温度 30℃
電流密度 3A/dm2
【0070】
《実施例9》
下記の組成により電気ニッケルメッキ浴を調製した。
硫酸ニッケル(Ni2+として) 50g/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 10g/L
ホウ酸 30g/L
1,5−ナフタレンジスルホン酸ナトリウム 8g/L
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1g/L
化合物3 3g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気ニッケルめっきを行い、光沢のある良好なニッケルめっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH 5.0
温度 55℃
電流密度 5A/dm2
【0071】
《実施例10》
下記の組成により電気銀−パラジウム合金メッキ浴を調製した。
塩化パラジウム(パラジウムとして) 6g/L
グリシン 75g/L
硝酸銀(Ag+として) 2g/L
化合物5 5g/L
トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン 160g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気銀−パラジウム合金めっきを行い、良好な銀色の銀−パラジウム合金めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH 9.0
電流密度 1A/dm2
【0072】
《実施例11》
下記の組成により無電解パラジウムメッキ浴を調製した。
塩化パラジウム(パラジウムとして) 1g/L
化合物7 1g/L
トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン 20g/L
電気ニッケルめっきを施した銅板上に、この水溶液を使用して下記条件で無電解パラジウムめっきを行い良好なパラジウム皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH 7.0
温度 50℃
【0073】
《実施例12》
下記の組成により電気スズ−亜鉛合金メッキ浴を調製した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 55g/L
メタンスルホン酸亜鉛(Zn2+として) 18g/L
エタンスルホン酸 85g/L
化合物6 7g/L
カテコール 0.2g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気スズ−亜鉛合金めっきを行い、良好な白色のスズ−亜鉛合金めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
温度 25℃
電流密度 1A/dm2
【0074】
《実施例13》
下記の組成により電気スズ−鉛合金メッキ浴を調製した。
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 54g/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸鉛(Pb2+として) 6g/L
メタンスルホン酸 150g/L
化合物7 10g/L
カテコール 0.5g/L
この水溶液を使用して下記条件で銅板上に電気スズ−鉛合金めっきを行い、良好な灰白色のスズ−鉛合金めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
温度 25℃
電流密度 5A/dm2
【0075】
《実施例14》
下記の組成を無電解白金メッキ浴を調製した。
トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン
−白金錯体溶液(白金として) 2 g/L
トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン 15 g/L
ヒドラジン水和物 2ml/L
塩酸ヒドロキシルアミン 0.1g/L
化合物8 1g/L
電気ニッケルめっきを施した銅板上に、この水溶液を使用して下記の条件で無電解白金めっきを行い、良好な白金めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH(アンモニア水で調整)11.0
温度 60 ℃
【0076】
《実施例15》
下記の組成により電気パラジウム−インジウム合金メッキ浴を調製した。
塩化パラジウム(パラジウムとして) 6g/L
グリシン 75g/L
スルファミン酸インジウム (インジウムとして) 2g/L
トリス(3−ヒドロキシプロピル) ホスフィン 160g/L
化合物1 2g/L
この水溶液を使用して下記の条件で銅板上に電気パラジウム−インジウム合金めっきを行い、良好な銀色のパラジウム−インジウム合金めっき皮膜を得た。EDAXにてパラジウム及びインジウムの両金属が存在することを確認した。
[メッキ条件]
pH 9.0
電流密度 1A/dm2
【0077】
《実施例16》
下記の組成により電気ビスマスメッキ浴を調製した。
2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 20g/L
2−ヒドロキシプロパンスルホン酸 150g/L
化合物5 8g/L
この水溶液を使用して下記の条件で銅板上に電気ビスマスめっきを行い、灰白色で平滑なビスマスめっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
温度 25℃
電流密度 2A/dm2
【0078】
《実施例17》
下記の組成により中性スズメッキ浴を調製した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
メタンスルホン酸 80g/L
クエン酸ナトリウム 200g/L
ポリ(ビニルピペリジニウムクロライド) 5g/L
化合物8 5g/L
アスコルビン酸 5g/L
この水溶液を使用して下記の条件で銅板上に電気中性スズめっきを行い、白色で平滑なスズめっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH(水酸化カリウムで調整)8.0
温度 25℃
電流密度 1A/dm2
【0079】
《実施例18》
下記の組成により無電解スズメッキ浴を調製した。
2−プロパンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
2−プロパンスルホン酸 140g/L
チオ尿素 120g/L
クエン酸 80g/L
次亜リン酸カリウム 80g/L
化合物1 5g/L
圧延銅板( J I S: C 1 0 2 0 P) を被メッキ物として、当該フィルムキャリアのインナリード上にこの水溶液を使用して下記の条件で無電解スズめっきを行い、平滑で均一な白色スズめっき皮膜を得た。
このめっき皮膜の密着性は良好で、顕微鏡観察でもピンホールは全く見られなかった。
[メッキ条件]
温度 70℃
浸漬時間 5分間
【0080】
《実施例19》
下記の組成により無電解銀メッキ浴を調製した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸 80g/L
3,6,9−トリチアデカン−1,11−ジスルホン酸 17.2g/L
化合物2 5g/L
この水溶液を使用して下記の条件で銅板上に無電解銀めっきを行い、白色で緻密かつ均一な光沢銀めっき皮膜を得た。
[メッキ条件]
pH(水酸化カリウムで調整)3.5
温度 50℃
浸漬時間 1分間
【0081】
《消泡性試験例》
本発明の前記化合物1〜8(イミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物)及び比較化合物1〜8(従来型のノニオン性界面活性剤)を水で希釈して濃度0.5%の各試料水溶液を調製した。
次いで、100mLの栓付メスシリンダーにこの各試料水溶液(0.5%)50mL及びメチルセロソルブ1mLを入れて100回振盪し、振盪直後および1分後の泡の高さ(cm)を測定して、本発明の化合物1〜8の比較化合物1〜8に対する消泡性の優劣を評価した。
【0082】
但し、従来型のノニオン性界面活性剤である比較化合物1〜8は次の通りである。
(1)比較化合物1:ラウリルアルコールポリプロポキシレート(PO2)ポリエトキシレート(EO12)
(2)比較化合物2:ポリオキシエチレン(EO14)−α−ナフチルエーテル
(3)比較化合物3:クミルフェノールポリエトキシレート(EO12)ポリプロポキシレート(PO3)
(4)比較化合物4:ポリオキシプロピレン(PO5)ポリオキシエチレン(EO15)−ジスチリルフェニルエーテル
(5)比較化合物5:ビスフェノールAポリエトキシレート(EO14)
(6)比較化合物6:プルロニック型ポリプロポキシレート(PO30)ポリエトキシレート(EO26)
(7)比較化合物7:テトロニック型エチレンジアミンポリプロポキシレート(PO20)ポリエトキシレート(EO20)
(8)比較化合物8:オレイルアミンポリプロポキシレート(PO6)ポリエトキシレート(EO18)
【0083】
下表Aはその試験結果である。
但し、下表Aで化n(n=1〜8)は本発明化合物nを表し、比化n(n=1〜8)は比較化合物nを表す。
下表Aの見方については、例えば、n=1の横欄のうち、「振盪直後」での「本発明化合物」の数値=8cmは本発明化合物1(n=1)の振盪直後の泡の高さ、「振盪直後」での「比較化合物」の数値=10cmは比較化合物1(n=1)の振盪直後の泡の高さを示す。また、同じく、n=1の横欄のうち、振盪から「1分後」での「本発明化合物」の数値=1cmは本発明化合物1の1分後の泡の高さ、「1分後」での「比較化合物」の数値=7cmは比較化合物1の1分後の泡の高さを示す。
【0084】
[表A]
化n/比化n 振盪直後(cm) 1分後(cm)
(n=1〜8) 本発明化合物 比較化合物 本発明化合物 比較化合物
n=1 8 10 1 7
n=2 7 8 0 5
n=3 4 6 0 3
n=4 6 9 1 8
n=5 5 6 0 5
n=6 1 3 0 1
n=7 1 3 0 1
n=8 9 12 2 10
【0085】
《消泡性試験の評価》
従来型のノニオン性界面活性剤である上記比較化合物1〜8を見ると、例えば、比較化合物1や8では振盪直後の泡の高さは10cm又は12cmであり、それが1分経過しても7cm又は10cmであって、泡の高さはあまり低減しないことから消泡作用はきわめて低いことが分かる。また、比較化合物6〜7を除いて、比較化合物2〜5でも、振盪直後の泡の高さは6〜9cm、1分後では3〜8cmであり、やはり消泡作用は低いことが分かる。
これに対して、本発明のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物である化合物1〜8を見ると、化合物1、4、8では、振盪直後の泡の高さは6〜9cm、1分後では1〜2cmであり、従属型ノニオン性界面活性剤の比較化合物1〜8に比べると、泡は急速に減っており消泡性がきわめて高いことが分かる。また、本発明化合物2〜3、5〜7にあっては、振盪直後の泡の高さは1〜7cm、1分後では0cm、つまり泡は消えており、特に、本発明化合物2では、振盪直後の7cmが1分後には消えており、優れた消泡性が明らかになった。
これにより、本発明の化合物を各種メッキ浴に添加すると、その水への高い溶解性により、前記実施例1〜19に示すように、優れた皮膜外観と、合金メッキ浴の場合には良好な組成の合金皮膜を付与できるとともに、優れた消泡作用を示し、従来のノニオン性界面活性剤で問題になった消泡性と水への溶解性の二律背反を解消できた。
また、例えば、銅メッキ液では、界面活性剤とレベリング効果のある添加剤を併用するが、本発明の新規化合物を銅メッキ浴に使用すると、界面活性剤の作用とレベリング作用を兼備でき、本発明の化合物ではノニオン界面活性剤の分子中にイミダゾール環基が存在するため、分析の容易化によりメッキ液を簡便に管理できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜C4アルキレンより選ばれたオキシアルキレン鎖を有し、当該オキシアルキレン鎖に3位の窒素原子を介してイミダゾール環が結合するとともに、イミダゾール環が末端に位置することを特徴とするイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物。
【請求項2】
オキシアルキレン鎖が付加するイミダゾール環には、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アリル、水素よりなる群から選ばれた置換基が結合し、
イミダゾール環の1位の窒素原子には、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリル、ビニル、水素よりなる群から選ばれた置換基が結合するとともに、
末端にイミダゾール環が結合するオキシアルキレン鎖の他端が、
(a)フェノール、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、ナフトール、アルキルナフトール、アルカノールの酸素原子、或いは、(b)別のイミダゾール環の3位の窒素原子に結合するか、
又は、(c)ビスフェノール構造、(d)アルキレンポリアミン構造、(e)アルキルアミン構造のいずれかを介して、末端にイミダゾール環が結合する別のオキシアルキレン鎖に結合したものであることを特徴とする請求項1に記載のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物。
【請求項3】
(A)第一スズ塩、銀、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ニッケル、金、白金、パラジウム、鉛からなる群より選ばれた金属の塩の一種又は二種以上の混合物よりなる可溶性塩と、
(B)酸又はその塩とを含有するメッキ浴において、
請求項1又は2に記載のイミダゾール環結合型オキシアルキレン化合物(C)をノニオン性界面活性剤として含有することを特徴とするメッキ浴。
【請求項4】
金属の可溶性塩が、スズ、銀、銅の塩の一種又は二種以上の混合物よりなる可溶性塩であることを特徴とする請求項3に記載のメッキ浴。
【請求項5】
さらに、界面活性剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、緩衝剤、酸化防止剤、補助錯化剤、隠蔽錯化剤及び電導性塩よりなる群から選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載のメッキ浴。
【請求項6】
メッキ浴が電気メッキ浴又は無電解メッキ浴であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のメッキ浴。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のメッキ浴を用いて金属皮膜を形成した電子部品。

【公開番号】特開2013−23693(P2013−23693A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155990(P2011−155990)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【出願人】(593002540)株式会社大和化成研究所 (29)
【Fターム(参考)】