説明

イミダゾ(1,2−A)ピリジン−3−イル−酢酸ヒドラジド、その製造方法及び医薬としての使用

この発明は、式(I)(式中R,R及びRは異なる意味を持つ)の新規イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジド、及びその医薬として受容し得る塩、多形、水和物、互変異性体、溶媒和物及び立体異性体を提供する。式(I)の化合物は、ヒト及び非ヒト哺乳動物において、GABA受容体変化に関係する疾患、不安、てんかん、不眠症を含む睡眠障害の治療及び予防、及び鎮静−催眠、麻酔、睡眠及び筋弛緩の導入に有用である。また、この発明は該化合物の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GABA受容体に親和性を持つ薬物、特に、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸ヒドラジド、より具体的には、(6−メチル−2−トリル−イミダゾール[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 ヒドラジドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
GABA受容体(γ−アミノ酪酸)は、膜イオンチャネルを形成する5量体タンパク質である。GABA受容体は、鎮静、不安、筋緊張、てんかん発生作用、及び記憶機能の調節に関係する。これらの作用は、GABA受容体を規定するサブユニット、特にα−及びα−サブユニットによるものである。
【0003】
鎮静はα−サブユニットにより調節されている。ゾルピデムはα−サブユニットに対する高親和性を特徴とし、その鎮静及び催眠作用はインビボにおいてこの受容体により仲介されている。同様に、ザレプロンの催眠作用もα−サブユニットに仲介されている。
【0004】
ジアゼパムの抗不安作用は、α−サブユニット受容体を発現する一群のニューロンにおけるGABA作動性伝達の増強により仲介されている。このことは、α−サブユニットが不安の治療のための高度に特異的な標的であることを示している。
【0005】
α−サブユニット受容体は脊髄において高度に特異的な発現を示すので、ジアゼパムの筋弛緩作用は、主にα−サブユニット受容体により仲介されている。
【0006】
ジアゼパムの抗痙攣作用は、部分的にα−サブユニット受容体による。記憶障害化合物であるジアゼパムにおいて、順向性健忘はα−サブユニット受容体により仲介されている。
【0007】
GABA受容体及びそのα−及びα−サブユニットは、H.Mohler et al.(J.Pharmacol.Exp.Ther.,300,2−8,2002);H.Mohler et al.(Curr.Opin.Pharmacol.,1,22−25,2001);U.Rudolph et al.Nature,401,796−800,1999);及びD.J.Nutt et al.(Br.J.Psychiatry,179,390−396,2001)により広範囲にレビューされている。
【0008】
ジアゼパム及びその他の古典的ベンゾジアゼピン類は、抗不安薬、催眠薬、抗痙攣薬および筋弛緩薬として広範囲に使用されている。その副作用は、順向性健忘、運動能力の減少及びエタノールの作用増強である。
【0009】
不眠症は非常に多い疾患である。人口の10%は慢性的に罹患し、一過性の不眠症については同様に30%と計算されている。不眠症は、眠りにつけない或いは睡眠を維持できないなどの悩みのことであり、疲労、活力欠如、集中力低下及びいらいらなどの翌日への持ち越し作用に関係する。この愁訴の社会的及び健康上の影響は重大であり、明らかな社会経済的影響を生じる。
【0010】
不眠を取り扱う薬理学的治療は、最初バルビツレート及び抱水クロラールであったが、それらの薬物は、多数の既知有害反応、例えば、過量毒性、代謝誘導並びに依存性及び耐性の増強を誘発する。さらに、それらは、中でもREM睡眠の持続と数を減少させることにより睡眠の構造に影響する。その後、ベンゾジアゼピンは、低毒性の故に、重要な治療上の進歩をもたらしたが、依然、依存性、筋弛緩、健忘及び投薬中止後のリバウンド不眠症の重大な問題を示した。
【0011】
最近の既知治療方法は、ピロロ[3,4−b]ピラジン(ゾピクロン)、イミダゾ[1,2−a]ピリジン(ゾルピデム)及び最後にピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(ザレプロン)などの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の導入であった。その後、二つの新しいピラゾロ[1,5−a]ピリミジンであるインジプロン及びオシナプロンが開発に入り、後者はどちらかといえば抗不安作用を持っている。これらの化合物は総て、急速な睡眠導入を示し、ベンゾジアゼピンよりも翌日への持ち越し作用が少なく、乱用の可能性が低く、リバウンド不眠症のリスクが少ない。これらの化合物の作用機序は、ベンゾジアゼピン結合部位に対するその結合を介するGABA受容体のアロステリック活性化である(C.F.P.George,The Lancet,358,1623−1626,2001)。ベンゾジアゼピンはGABA受容体結合部位における非特異的リガンドであるが、ゾルピデム及びザレプロンはα1−サブユニットに対して大きな選択性を示す。それにもかかわらず、これらの薬物は未だ睡眠の構造に影響し、長期治療において依存性を誘発する可能性がある。
【0012】
最近導入された睡眠剤であっても、まだ睡眠の構造に影響し、長期治療において依存性を誘発する可能性があるので、不眠の管理における新しい活性化合物の研究が、基にある健康のニーズに応える。
【0013】
したがって、副作用の少ない新しい睡眠薬の開発に焦点を絞ることが望まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明は、GABA、特にそのα1−及びα−サブユニットに対して作用する新しいイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジドに関するものである。したがって、この発明の化合物は、GABA受容体α1−及びα−サブユニットに仲介される疾患の総ての治療及び予防に有用である。そのような疾患の非限定的な例は、睡眠障害、好ましくは不眠症、不安及びてんかんである。本発明の化合物の関連する適応の非限定的例は、睡眠の誘導、鎮静の誘導又は筋弛緩の誘導が必要である不眠症又は麻酔などの疾患又は状態の総てである。
【0015】
本発明の一部の化合物は、US 4,382,938に記載されているN,N,6−トリメチル−2−p−トリルイミダゾ[1.2−a]ピリジン−3−アセトアミド化合物である、ゾルピデムに構造的に関連しているが、「発明の詳細な説明」のセクションに示すように、その改良された性質のために、特許的に区別される。
【0016】
かくして本発明は、式(I):
【化1】


により示されるGABA受容体のリガンドである化合物の新規クラス、並びにそれらの医薬品として受容し得る塩、多形、水和物、互変異性体、溶媒和物及び立体異性体を記述する。式中R、R及びRは後に定義する通りである。
【0017】
式(I)の化合物又は薬理的に受容されるその塩を製造するための合成方法を提供することは、本発明の別の目的である。
【0018】
不安、てんかん及び不眠症を含む睡眠障害などのGABA受容体調節に関係する疾患の治療及び予防のため、並びに鎮静−催眠、麻酔、睡眠及び筋弛緩を誘導するための医薬品の製造のための、式(I)の化合物又は医薬品として受容し得るその塩の使用も本発明の一部を構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I):
【化2】


[式中、
は、水素、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、アルケニル(C〜C)、アルキニル(C〜C)及びシクロアルキル(C〜C)からなる群から選択され;
及びRは独立して、水素、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、アルケニル(C〜C),アルキニル(C〜C)及びシクロアルキル(C〜C)及びRCOからなる群から選択されるか、又はR及びRの両者が、それらが結合している窒素とともに任意に置換された5〜6員複素環又はNCR基を形成することができ;
は、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、シクロアルキル(C〜C)、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールからなる群から選択され;
は、水素、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、シクロアルキル(C〜C)、任意に置換されたアリールからなる群から選択され;
は、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、シクロアルキル(C〜C)、任意に置換されたアリールからなる群から選択され;又は、
及びRの両者が、それらが結合している炭素原子とともに任意に置換された5〜6員環を形成することができる]
の新規(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)酢酸ヒドラジド化合物、並びにそれらの医薬品として受容し得る塩、多形、水和物、互変異性体、溶媒和物及び立体異性体に関係する。
【0020】
好ましくは、Rは、水素及びメチルからなる群から選択され;及びR及びRは独立して、水素、アセチル及び2−チオフェンカルボニルからなる群から選択されるか、又はR及びRはそれらが結合する窒素原子と一緒に、1−モルフォリニル及び1,2,4−トリアジン−4−イルから選択される複素環又はエチリデンアミノ、イソプロピリデンアミノ及び4−クロロベンジリデンアミノから選択されるNCRを形成する。
【0021】
本明細書で使用される用語「医薬品として受容し得る塩」は、臭化水素酸、塩化水素酸、燐酸、硝酸、硫酸、酢酸、アジピン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマール酸、グルタミン酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、オキザル酸、ピバル酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、コハク酸、酒石酸などの有機及び無機の酸で形成される塩のいずれかを含む。
【0022】
本発明は以下の化合物を含む:
チオフェン−2−カルボン酸 N’−[2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−アセチル]ヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 N’−アセチルヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 ヒドラジド;
2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−N−モルホリン−4−イル−酢酸アミド;
2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−N−[1,2,4]トリアゾール−4−イル−酢酸アミド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 N−メチル−ヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 (4−クロロベンジリデン)−ヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 エチリデン−ヒドラジド;及び
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 イソプロピリデン−ヒドラジド。
【0023】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物及びその医薬品として受容し得る塩を製造する方法を提供することである。
【0024】
一般式(I)の化合物はスキーム1に示される反応にしたがって製造することができる。
【化3】

【0025】
ケト酸(II)のFischerのエステル化は、アルコールROHにより行われ、対応するエステル(III)を生じた。このエステルは酢酸中室温においてブロム化されて、ブロモケトエステル(IV)を生じた。2−アミノ−5−メチルピリジン(V)による閉環により、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸エステル(VI)を生じた。最後に、置換ヒドラジン(VII)を使用して適当な溶媒中還流して非環状置換を行い、対応する最終のイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジド(I)を得た。この反応に使用される適当な溶媒は、好ましくは直鎖又は分枝のアルカノール(C〜C),より好ましくはメタノール又はそれらの混合物から選択される。
【0026】
N’−アシルヒドラジド(I,R=RCO)の場合には、適当な溶媒中室温において対応する酸クロリドRCOClと(I,R=H)との反応からなる最終ステップが必要である。この反応に使用される適当な溶媒は、好ましくはハロゲン化アルカンから選択され、より好ましくはジクロロメタンである。この反応は、塩基性化合物の存在下に都合よく生じる。非限定的な塩基性化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は重炭酸塩、又はアルキル−、ジアルキル−又はトリアルキルアミン、特にトリエチルアミン又はそれらの混合物などである。
【0027】
アルキリデン(又はアリーリデン)ヒドラジド(I,NR=NCR)の場合には、適当な溶媒中室温において対応するアルデヒド又はケトンであるRCORと(I,R=R=H)との反応からなる最終ステップが必要である。この反応に使用される適当な溶媒は、好ましくは直鎖又は分枝アルカノール(C〜C)、より好ましいのはメタノール又はそれらの混合物である。
【0028】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物における不安の治療又は予防のための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0029】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるてんかんの治療又は予防のための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0030】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物における睡眠障害の治療又は予防のための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0031】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物における不眠症の治療又は予防のための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0032】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物において鎮静−催眠を誘発するための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0033】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物において麻酔を誘発するための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0034】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物において睡眠を導入するための必要時間及びその持続を調節するための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0035】
本発明の他の態様は、ヒト又は非ヒト哺乳動物において筋弛緩を誘発するための医薬品の製造のための、式(I)の化合物の使用を提供することである。
【0036】
また、本発明は、式(I)の化合物、又はその医薬品として受容し得る塩、多形、水和物、互変異性体、溶媒和物又は立体異性体の必要な治療有効量を、医薬として受容し得る希釈剤又は担体と共に該ヒト及び非ヒト哺乳動物へ投与することを含むGABA受容体の調節に関係する疾患に罹患したヒト又は非ヒト哺乳動物の治療及び予防方法に関係する。特に、GABA受容体の調節に関係する疾患は、α−GABA受容体調節及び/又はα−GABA受容体調節に関係する疾患を含む。そのような疾患の非限定的なリストは、不安、てんかん、不眠症を含む睡眠障害などを含む。
【0037】
本発明の他の態様は、式(I)の化合物又はその医薬品として受容し得る塩、多形、水和物、互変異性体、溶媒和物又は立体異性体を治療上不活性な担体と共に含む医薬組成物を提供することである。
【0038】
最も適する投与経路は治療される状態の性質と重症度によるが、この組成物は経口、直腸及び非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)投与に適する組成物を含む。本発明の最も好ましい経路は経口経路である。組成物は都合よく単位投与量形態で提供され、製剤技術においてよく知られている方法のいずれかにより製造される。
【0039】
活性化合物は従来の医薬品配合技術により医薬担体と配合することができる。担体は、投与、例えば経口又は非経口(静脈内注射又は注入を含め)のために必要な製剤の形に応じる多様な形態をとることができる。経口投与形態の組成物の製造には、通常の医薬品媒体を使用することができる。経口液体製剤(例えば、懸濁剤、溶液、エマルジョン及びエリキシルなど)の場合に、通常の医薬品媒体は、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色料などを含む。噴霧剤;経口固体製剤(例えば、粉末、カプセル及び錠剤)の場合には、澱粉、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などを含む。経口固体製剤は経口液体製剤よりどちらかというと好ましい。
【0040】
その投与の容易さの故に、錠剤及びカプセルが最も有利な経口投与単位形態であり、その場合に固体の医薬品担体が使用される。必要があれば、錠剤は標準的な湿式法又は非湿式法によりコーティングすることができる。
【0041】
使用のための適当な用量範囲は、1日1回投与又は必要があれば分割して、約0.01 mgから約100.00 mgの合計1日量である。
【0042】
本発明の化合物はα−及びα−GABA受容体に対して高い親和性を持つ。これらのインビトロの結果は、鎮静−催眠試験において得られたインビボの結果に一致する。
【0043】
得られた結果によれば、本発明の一定の化合物は、インビトロ及びインビボ両者で先行技術の化合物であるゾルピデムに類似するか、それよりも強い薬理活性を示した。これらの結果は全て、睡眠導入、鎮静の導入又は筋弛緩の導入が必要である不眠症又は麻酔などのα−及びα−GABA受容体の調節による疾患又は状態に使用することを支持している。
【実施例】
【0044】
本発明の化合物の薬理活性は、次に示すように測定された。
【0045】
a)リガンド結合アッセイ。試験化合物のα−及びα−GABA受容体に対する親和性の測定
実験時に、体重200〜250 gのSprague−Dawley雄ラットを使用した。動物を断頭後、小脳(主としてα−GABA受容体を含む組織)及び脊髄(主としてα−GABA受容体を含む組織)を取り出した。J.Lameh et al.(Prog.Neuro−Psychopharmacol.Biol.Psychiatry,24,979−991,2000)及びH.Noguchi et al.(Eur J Pharm,434,21−28,2002)に従い、若干変更を加えて膜を調製した。組織の重量を測った後、50 mM Tris・HCl(pH 7.4)に1:40(v/v)、又は脊髄の場合は蔗糖0.32 M中に懸濁し、ホモジナイズし、次いで20,000 gで10分間7℃において遠心分離した。得られたペレットを同じ条件で再懸濁し、再度遠心分離した。最後に、ペレットを最小容量に懸濁して、終夜〜80℃で保存した。翌日、この操作を繰り返し、最終のペレットを、小脳の場合には1:10(v/v)の比に、脊髄の場合には1:5(v/v)の比に懸濁した。
【0046】
リガンドとして放射能標識フルマゼニルを使用する競合試験により親和性を測定した。この試験は、S.Arbilla et al.(Eur.J.Pharmacol.,130,257−263,1986);及びY.Wu et al.(Eur.J.Pharmacol.,278,125−132,1995)により記述されている方法に従って、96−ウエルミクロタイタープレートを使用して実施された。試験受容体を含む膜、フルマゼニル(最終濃度1 nMで放射能標識)及び増加する濃度の試験化合物(50 nM[pH 7.4]Tris・HCl緩衝液中、合計容量230 μl)をインキュベートした。同時に、膜のみを放射能標識フルマゼニルとインキュベートし(完全結合、100%)、また増加濃度の非放射能標識フルマゼニルの存在下にインキュベートした(非特異的結合、放射能標識リガンドの%推定値)。放射標識リガンドの添加により反応を開始し、60分間4℃でインキュベートした。インキュベーション時間の終りに反応の200 μlをマルチスクリーンプレート(Millipore)に移し、そして真空マニフォールドを使用して濾過し、次いで冷却試験緩衝液で3回洗った。マルチスクリーンプレートはGF/Bフィルターを装着し、受容体を含む膜及び受容体に結合した放射能標識リガンドを保持した。洗浄後プレートを乾燥させた。乾燥した後、シンチレーション液を加え、終夜攪拌した。翌日、Perkin−Elmer Microbetaシンチレーションカウンターを使用してプレートを計測した。
【0047】
結果を分析するために、試験化合物の各濃度における特異的結合のパーセンテージは次のように計算された:
%特異的結合=(X−N/T−N)x 100
式中、
X:化合物の各濃度における結合したリガンドの量
T:総結合、放射能標識リガンドに対する最大結合量
N:非特異的結合、使用した受容体に関係なく非特異的に結合した放射能標識リガンドの量。
【0048】
化合物の全ての濃度について3回試験し、その平均値を化合物の濃度に対する%特異的結合の実験値を決定するために使用した。親和性データは、10−5M及び10−7M濃度における%阻害として示した。この試験の結果を表1及び2に示す。
【表1】


【表2】


b)予想される鎮静−催眠作用のインビボ測定
【0049】
これらの化合物のインビボ作用は、既に記述されているマウスにおける鎮静−催眠試験により評価された(D.J.Sanger et al.,Eur.J.Pharmacol.,313,35−42,1996;及びG.Griebel et al.,Psychopharmacology,146,205−213,1999)。
【0050】
試験時に、体重22〜26 gのCD1雄マウスの5〜8匹の群を使用した。試験化合物は、10 ml/kgの容量で1滴のTweenを加えた0.25%寒天中に懸濁して、1回等分子量用量を腹腔内投与した。対照動物には基剤のみを投与した。Smart System(Panlab,S.L.,スペイン)を使用して、投与後30分間、5分間隔で各マウスの歩行距離をcmで記録した。対照動物に対する、試験動物の歩行距離の%阻害を計算した(最初の5分間は除外した)。この試験の結果を表3に示す。
【表3】

【0051】
事実、用量−反応曲線が得られた時に、実施例3の化合物はインビボ自発運動活性の抑制において、このアッセイの陽性対照として使用した先行技術化合物であるゾルピデム(ID50=4.4 μmol/kg)に比較して、2倍強い力価(ID50=1.9 μmol/kg)を示した。
【0052】
以下の非限定的実施例は本発明の範囲を説明する。
【0053】
実施例A:中間体ケトエステル化合物(III,R=CH)の製造
【化4】


(II)(1当量)のメタノール溶液に、濃硫酸(0.5当量)のメタノール溶液を滴加した。この混合物を30分間攪拌還流した。真空下に溶媒を除去し、残留物をジクロロメタン/NaOH 1N及びジクロロメタン/水で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去して、ケトエステル(III,R=CH)を得た。
【化5】


【化6】

【0054】
実施例B:中間体ブロモケトエステル化合物(IV,R=CH)の製造
【化7】


(III,R=CH)(1当量)の酢酸溶液に、ブロム(2.2当量)の酢酸溶液を滴加した。この混合物を24時間室温で攪拌した。真空下に溶媒を除去し、残留物をジクロロメタン/NaOH 1N及びジクロロメタン/水で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去して、ブロモケトエステル(IV,R=CH)を得た。
【化8】


【化9】

【0055】
実施例C:中間体イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸エステル化合物(VI,R=CH)の製造
【化10】


(IV,R=CH)(1当量)のアセトニトリル溶液に、(V)(1.2当量)のアセトニトリル溶液を加えた。この混合物を2時間攪拌還流した。溶媒を真空下に除去し、残留物をジクロロメタン/HCl 1N及びジクロロメタン/水で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去して、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸エステル(VI,R=CH)を得た。
【化11】


【化12】

【0056】
実施例D:N’−アシル イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジド(I,R=RCO)の一般的製造方法
【化13】


(I,R=H)(1当量)のジクロロメタン溶液に、N(C(2当量)のジクロロメタン溶液を加えた。この混合物に、RCOCl(1.2当量)のジクロロメタン溶液を滴加した。この混合物を室温で24時間攪拌した。溶媒を真空下に除去して、残留物をジクロロメタン/NaOH 1N、ジクロロメタン/HCl 1N及びジクロロメタン/水で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去して、N’−アシル イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジド(I,R=RCO)を得た。
実施例1及び2の化合物はこの方法に従って製造した。
【0057】
実施例1:チオフェン−2−カルボン酸 N’−[2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−アセチル]ヒドラジド
【化14】


【化15】

【0058】
実施例2:(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 N’−アセチルヒドラジド
【化16】


【化17】

【0059】
実施例E:イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジド(I)の一般的製造方法
【化18】


(VI)(1当量)のメタノール溶液に(置換)ヒドラジン(VII)(5当量)のメタノール溶液を加えた。この混合物を24時間攪拌還流した。溶媒を真空下に除去し、残留物をジクロロメタン/HCl 1N及びジクロロメタン/水で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去して、 イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジド(I)を得た。
【0060】
実施例3〜6の化合物はこの方法に従って製造された。
【0061】
実施例3:(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 ヒドラジド
【化19】


【化20】


【化21】

【0062】
実施例4:(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−N−モルホリン−4−イルアセトアミド
【化22】


【化23】

【0063】
実施例5:2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−N−[1,2,4]トリアゾール−4−イル−アセトアミド
【化24】


【化25】

【0064】
実施例6:(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 N−メチル−ヒドラジド
【化26】


【化27】

【0065】
実施例F:アルキリデン(又はアリーリデン)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸ヒドラジド(I,NR=NCR
【化28】


【化29】


(I,R=R=H)(1当量)のメタノール溶液に、RCOR(アルデヒド又はケトン)(5当量)のメタノール溶液を加えた。この混合物に数滴の酢酸を加えた。この混合物を3時間攪拌還流した。溶媒を真空下に除去し、残留物をジクロロメタン/水で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去して、 アルキリデン(又はアリーリデン) イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−酢酸 ヒドラジド(I,NR=NCR)を得た。
【0066】
実施例7〜9の化合物はこの方法に従って製造した。
【0067】
実施例7:(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 (4−クロロベンジリデン)−ヒドラジド
【化30】


【化31】

【0068】
実施例8:(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 エチリデン−ヒドラジド
【化32】


【化33】

【0069】
実施例9:(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 イソプロピリデン−ヒドラジド
【化34】


【化35】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


[式中
は、水素、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、アルケニル(C〜C),アルキニル(C〜C)及びシクロアルキル(C〜C)からなる群から選択され;
及びRは独立して、水素、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、アルケニル(C〜C),アルキニル(C〜C)、シクロアルキル(C〜C)及びRCOからなる群から選択されるか、又はR及びRの両者が、それらが結合している窒素とともに任意に置換された5〜6員複素環又はNCR基を形成することができ;
は、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、シクロアルキル(C〜C)、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールからなる群から選択され;
は、水素、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、シクロアルキル(C〜C)及び任意に置換されたアリールからなる群から選択され;
は、直鎖又は分枝のアルキル(C〜C)、シクロアルキル(C〜C)及び任意に置換されたアリールからなる群から選択されるか;又は、
及びRの両者が、それらが結合している炭素原子とともに任意に置換された5〜6員環を形成することができる]
のイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)酢酸ヒドラジド化合物及びそれらの医薬品として受容し得る塩、多形、水和物、互変異性体、溶媒和物及び立体異性体。
【請求項2】
は、水素及びメチルからなる群から選択され;R及びRは独立して、水素、アセチル及び2−チオフェンカルボニルからなる群から選択されるか、又はR及びRの両者が、それらが結合している窒素とともに1−モルホリニル及び1,2,4−トリアジン−4−イルから選択される複素環、又はエチリデンアミノ、イソプロピリデンアミノ及び4−クロロベンジリデンアミノから選択されるNCR基を形成するか請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、
チオフェン−2−カルボン酸 N’−[2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−アセチル]ヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 N’−アセチルヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 ヒドラジド;
2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−N−モルホリン−4−イル−酢酸アミド;
2−(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−N−[1,2,4]トリアゾール−4−イル−酢酸アミド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 N−メチル−ヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 (4−クロロベンジリデン)−ヒドラジド;
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 エチリデン−ヒドラジド;及び
(6−メチル−2−p−トリル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−酢酸 イソプロピリデン−ヒドラジド:
からなる群から選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(VI):
【化2】


[式中Rは直鎖又は分枝アルキル(C〜C)又はフェニルアルキル(C〜C)である]
の中間化合物と、式(VII):
【化3】


[式中R,R及びRは(I)に対して定義したとおりである]
の適当なヒドラジン化合物とを反応させ、択一的に遊離塩基として得られた化合物を適当な酸で処理して医薬品として受容し得るその塩を形成することを含む請求項1に定義された式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
式(IV)
【化4】


[式中Rは(VI)において定義されている通りである]
の化合物を、2−アミノ−5−メチルピリジン(V)と反応させる更なるステップにおいて化合物(VI)を得る請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Rがメチルである式(VI)の中間化合物を使用することを含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
Rがメチルである式(IV)の中間化合物を使用することを含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
がRCOである請求項1において定義した式(I)の化合物を製造する方法であって、対応する酸クロリドRCOCl(このRは既に定義した通りである)を化合物(I,R=H)と反応させることを含む、方法。
【請求項9】
NRがNCRであるときの請求項1において定義した式(I)の化合物を製造する方法であって、対応するアルデヒド又はケトンRCOR(このRとRは既に定義されている通りである)と化合物(I,R=R=H)とを反応させることを含む、方法。
【請求項10】
ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるGABA受容体調節に関係する疾患の治療又は予防のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項11】
前記GABA受容体がα−GABA受容体である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記GABA受容体がα−GABA受容体である請求項10に記載の使用。
【請求項13】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における不安の治療又は予防のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項14】
ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるてんかんの治療又は予防のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項15】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における睡眠障害の治療又は予防のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項16】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における不眠症の治療又は予防のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項17】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における鎮静−催眠の導入のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項18】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における麻酔導入のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項19】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における睡眠を導入するために必要な時間及びその持続を調節するための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項20】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における筋弛緩の導入のための医薬品を製造するための、請求項1に記載する化合物の使用。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を医薬品賦形剤又は担体の適切な量と共に含む医薬組成物。

【公表番号】特表2009−522327(P2009−522327A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548979(P2008−548979)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070130
【国際公開番号】WO2007/077159
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(501108452)フエルレル インターナショナル,ソシエダッド アノニマ (39)
【Fターム(参考)】