説明

イミドイルクロリド化合物の製造方法及びそれを用いた各種化合物の製造方法

【課題】取扱い性に劣る塩素化剤を必要とせず、イミドイルクロリド化合物を合成する新規な製造方法、並びにこれを用い、各種化合物を高収率かつ高純度で得る製造方法を提供する。また、イミドイルクロリド化合物をこれと無水フタル酸化合物との混合物から効率的かつ高純度でイミドイルクロリド化合物を単離する方法を提供する。
【手段】特定のアミド化合物と特定のフタル酸クロリド化合物を反応させ、特定のイミドイルクロリド化合物を生成させるイミドイルクロリド化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイミドイルクロリド化合物の新規製造方法に関し、さらにそれを用いた各種化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イミドイルクロリド化合物は、有用な有機化合物を温和な条件下で合成する反応ツールとして知られている。その適用例は広く多岐にわたり、芳香族へのホルミル基の導入、カルボン酸から酸クロリドへの変換、アルコール類からハロゲン化炭化水素への変換、カルボン酸とアルコール類からのエステルの合成などが挙げられる。その代表的化合物としては、N,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドがあり、これはビルスマイヤー(Vilsmeier)試薬と呼ばれている。非特許文献1は、この化合物を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、塩化チオニル、オキシ塩化リン、ホスゲン、蓚酸ジクロリド等の塩素化剤を作用させて合成する方法を開示する。近年、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)から、同様の塩素化剤を用いて2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリュームクロリドが合成された(非特許文献2参照)。これも幅広い反応に利用することができ、有用な反応ツールとなる。
しかしながら、従来イミドイルクロリド化合物を合成するために提案されている上記塩素化剤は、特殊な排ガス、排水処理設備が必要であったり、安全面で取り扱いが困難であったりする。また、工業的な生産に用いるには高価であり経済性に劣り、実際的な製造材料として広く利用されるには至っていない。
【0003】
最近、アルコール化合物をそのクロル化物に変換する反応において、ピバロイルクロリドとN,N−ジメチルホルムアミドとを反応させ、反応系内にビルスマイヤー・ハック型錯体を生成させることが提案された(非特許文献3参照)。これにより、各種のアルコール化合物をそのクロル化物に変換できるとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Marson,C.M ,Tetrahedron 1992年,48巻,3659頁
【非特許文献2】Isobe,T.&Ishikawa,T.J.Org.Chem.1999年,64巻,6984−6988頁、6989−6992頁、5832−5835頁。
【非特許文献3】Dubeyra,A,et.al. Tetrahedron Letters,2010年,51巻,744−746頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1及び2に開示された塩素化剤であるオキシ塩化リンを使うと燐の排水処理が問題となる。塩化チオニルを使うと二酸化硫黄の排ガス処理設備が必要となる。ホスゲンを使用するには安全上の対策が必須であり、蓚酸ジクロイドは非常に高価であり汎用原料として使用するには難がある。これに対し非特許文献3に開示された方法によれば、アルコール化合物のクロル化反応において上記の塩素化剤を用いる必要はなくなる。しかし、本発明者の確認によると、この反応を通じてビルスマイヤー試薬を単離することはできなかった(後記比較例c51参照)。また、ピバロイルエステルを副生するとされるなど、そこで示された目的化合物の収率は、必ずしも高いものではなかった(同比較例c51参照)。さらに、現実的な問題点として、ピバロイルクロリドの臭気はきつく、結局、工業生産において設備上の対策が必要となってしまう。
本発明は、上記従来技術に鑑み、取扱い性に劣る塩素化剤を必要とせず、イミドイルクロリド化合物を合成する新規な製造方法、並びにこれを用い、各種化合物を高収率かつ高純度で得る製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アミド化合物にフタル酸クロリド類を塩素化剤として作用させると、相当するイミドイルクロリド化合物を合成できることを見出した。そして、本発明の方法で調製したイミドイルクロリド化合物を、従来本化合物により進行することが知られている多くの化学反応に適用し、安全かつ簡便に、しかも安価かつ高収率・高純度でその反応を達成できることを確認した。さらに、目的とする各化合物の合成反応に上記イミドイルクロリド化合物を適用するに当たり、その反応系をそのまま利用することも、イミドイルクロリド化合物を単離して用いることもでき、目的化合物の単離性等を考慮して好適な合成反応条件を選定しうることを見出した。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、上記の課題は以下の手段により解決された。
【0007】
(1)下記一般式(1)で表されるアミド化合物と下記一般式(2)で表されるフタル酸クロリド化合物を反応させ、下記一般式(3)で表されるイミドイルクロリド化合物を生成させるイミドイルクロリド化合物の製造方法。
【0008】
【化1】

(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又は置換アミノ基を表す。RまたはRとRとは環状構造を形成していてもよい。)
【0009】
【化2】

(一般式(2)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は低級アルキル基を表す。nは1〜4の整数を表す。)
【0010】
【化3】

(一般式(3)中、R、R、及びRは一般式(1)及び(2)と同じ意味を表す。)
(2)一般式(1)で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、または1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンであり、一般式(2)で表される化合物がフタル酸クロリドである(1)に記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
(3)前記生成した一般式(3)で表されるイミドイルクロリド化合物をエーテル系溶媒で処理し、無水フタル酸化合物を取り除き、イミドイルクロリド化合物を結晶として取り出す(1)又は(2)に記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
(4)前記エーテル系溶媒が、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、及び1,2−ジメトキシエタンから選ばれる(3)記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
(5)前記生成した一般式(3)で表されるイミドイルクロリド化合物をトルエン化合物と一般式(1)で表されるアミド化合物の混合溶媒で処理し、無水フタル酸化合物を取り除き、イミドイルクロリド化合物を結晶として取り出す(1)又は(2)に記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法で得たイミドイルクロリド化合物を単離し、または単離せずに、あるいは前記イミドイルクロリド化合物の生成の際に、酸素原子を含む有機化合物と接触させ、脱酸素クロル化の反応をさせる脱酸素クロル化生成物の製造方法。
(7)前記酸素原子を含む有機化合物が、カルボン酸化合物、アルコール化合物、アルデヒド化合物、又はケトン化合物である(6)に記載の製造方法。
(8)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法で得たイミドイルクロリド化合物を単離し、または単離せずに、あるいは前記イミドイルクロリド化合物の生成の際に、電子豊富な芳香族化合物と反応させ、加水分解し芳香核にホルミル基を導入するホルミル基保有芳香族化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、取扱い性に劣る塩素化剤を必要とせずに、環境負荷の少ない方法でイミドイルクロリド化合物を合成することができる。また、その反応系内で、あるいはこれを単離して用い、各種化合物を高収率かつ高純度で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[イミドイルクロリド化合物の製造]
本発明の製造方法においては、アミド化合物をフタル酸クロリド化合物と反応させイミドイルクロリド化合物に変換する。必要によりその反応場を所定の塩素化ないしホルミル化反応に適用したり、イミドイルクロリド化合物を単離して上記反応に供することができる。その結果、本発明によれば、従来用いられてきたホスゲン、オキシ塩化リン、塩化チオニル、蓚酸ジクロリドなどの塩素化剤に代えて、安全で安価なフタル酸クロリド化合物を用いることができ、これまで難しかったイミドイルクロリド化合物の合成ないしこれを利用した反応生成物の工業的規模での生産に好適に対応することができる。このような顕著な効果を達成した理由は一部推定を含むが下記のように説明することができる。
【0013】
例えば、ホスゲンなどに比べ取り扱いやすい塩素化剤として、上記特許文献3のようにピバロイルクロリドを用いることが挙げられる。これにより、所定のイミドイルクロリド化合物を系内に生成させることはできるが、対イオンとしてピバロイルアニオンが残り、イミドイルクロリド化合物を単離することは極めて難しい(下記スキーム1参照)。上記イミドイルクロリド化合物(カチオン)が生成した反応場を利用し、そこに反応基質を導入して塩素化やホルミル化を行うことも考えられるが、イミドイルクロリド化合物の生成反応自体が平衡状態にあるため(下式)、収率の向上には自ずと限界がある(後記比較例c51参照)。
【0014】
【化4】

【0015】
一方、オルト位に酸クロリド(クロロカルボニル基)を2個持つフタル酸クロリドを利用する本発明では、DMFとの反応で平衡が圧倒的に右辺(反応生成物側)に片寄り、系内の反応生成物がイミドイルクロリド化合物(Vilsmeier試薬)と無水フタル酸になる方向となる。結果として、カルボキシアニオンが多量に残留して阻害することがなく、必要により、イミドイルクロリド化合物の結晶を析出させ単離することができる。無水フタル酸を溶かす溶媒としてエーテル系溶媒等を用い、高純度のイミドイルクロリド化合物を取得することも可能である。さらに、無水フタル酸になると、系内での逆反応が起こりにくく、その反応場を利用して塩素化ないしホルミル化を進行させる際にも高い収率を実現することができる。
【0016】
以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき詳細に説明する。なお、本明細書において***化合物というときには、***で定義付けられる化合物の総称を意味し、その塩あるいはイオン等を含む意味である。
【0017】
・フタル酸クロリド化合物
本発明で用いられるフタル酸クロリド化合物はその置換基が反応に影響しないものならば特に制限はないが、無水フタル酸から既存の方法で調製できる無置換のフタル酸クロリドを用いることが安価で好ましい。具体的には、上記一般式(2)で表される化合物を用いる。一般式(2)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は低級アルキル基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基)を表し、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基であることが好ましく、水素原子、塩素原子、メチル基であることがより好ましい。nは1〜4の整数を表す。
【0018】
・アミド化合物
アミド化合物にも構造的な制限はないが、ホスゲン等を用いる数多くの例が知られており、それらのいずれにも適応できる。本実施態様においては、上記一般式(1)で表される化合物を用いる。一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。このときのアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、置換フェニル基であることが好ましく、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基であることがより好ましい。アラルキル基としては、ベンジル基、置換ベンジル基であることが好ましく、ベンジル基であることがより好ましい。
は、水素原子、アルキル基、アリール基又は置換アミノ基を表す。このときアルキル基としては、メチル基、エチル基、第3ブチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましい。置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、モノメチルアミノ基、フェニルメチルアミノ基であることが好ましく、ジメチルアミノ基であることがより好ましい。
またはRとRとは環状構造を形成していてもよい。環状構造としては、ピペリジン環、ピロリジン環、アザシクロペンタノン環、ジアザシクロペンタノン環、ジアザシクロヘキサノン環などの構造が挙げられる。
【0019】
代表的なアミド化合物を例示すると、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N―ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルピバロイルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N,N、N’,N’−テトラメチル尿素(TMU)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−ホルミルピペリジン等が挙げられる。なかでも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N―ホルミルピペリジンまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。
【0020】
・反応温度等
フタル酸クロリド化合物とアミド化合物とを等モル量で混合すると、相当するイミドイルクロリド化合物と無水フタル酸誘導体(無水フタル酸化合物)を生成するように速やかに反応が進行する。その反応は基質により室温(約20℃)〜150℃の範囲で行うことができる。N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のようなホルムアミド化合物の場合には室温から50℃の間で反応を行うことが好ましい。DMAC,DMI,TMUのようなケトンタイプのアミド化合物では100〜150℃で反応することが好ましい。
フタル酸クロリド化合物とアミド化合物との供給比率は特に限定されないが、実際的な条件を考慮すると、フタル酸クロリド化合物に対して、単離する場合にはアミド化合物を1〜10当量とすることが好ましい。単離しない場合には0.01〜1当量とすることが好ましい。
【0021】
・反応溶媒
イミドイルクロリド化合物は通常固体となるため、反応変化が目視で観測できる。後の反応に用いることを考慮して、イミドイルクロリド化合物の調製には溶媒を用いてもよいし、アミド化合物を溶媒と兼用したものとして用いてもよい。それらの場合、均一溶液あるいはスラリー状態となり、後の塩素化反応に好都合の形態となる。溶媒を用いる場合は特に制限はないが無水であることが好ましい。水があると、フタル酸クロリド化合物が加水分解されてしまう。それらの例として、DMF,DMAC,DMI、NMP以外に、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、1,4−ジオキサン、エーテル、テトラヒドロフラン,テトラヒドロピラン、トルエン、キシレン、クロロトルエン、塩化ベンゾイル等が挙げられる。
【0022】
[各種化合物の製造]
本発明の応用に係る実施態様として、上記の方法で調製したイミドイルクロリド化合物の合成反応場を、あるいはこれを単離したものを、従来知られている各種化合物の合成反応に提供することが挙げられる。その化学反応の例として、電子豊富なベンゼン核へのホルミル基の導入、カルボン酸から酸クロリドへの変換、アルコールから塩化物への変換、酸とアルコールからエステルの合成、アルデヒド基をジクロロメチル基へ変換などが挙げられ、幅広く適用できる。上記の公知の反応について説明された文献として、Marson,C.M ,Tetrahedron 1992年,48巻,3659頁 (前記非特許文献1)、Isobe,T.&Ishikawa,T.J.Org.Chem.1999年,64巻,6984頁、6989頁、5832頁(前記非特許文献2)、Fieser&Fieser、Reagent of Organic Synthesis(A Wiley Interscience Publication)4巻186頁,7巻422頁、Beilstein 4巻第IV増補版175頁、富岡清監訳、人名反応に学ぶ有機合成戦略(化学同人 2006年刊)468頁などが挙げられる。
ここで「電子豊富なベンゼン核」とは、電子供与基を置換基に持つベンゼン核という意味であり、その核をもつ芳香族に属する化合物を「電子豊富な芳香族化合物」という。電子豊富な芳香族化合物としては、例えばアニソール、ジメチルアミノベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,2,3−トリメトキシベンゼン1,2―メチレンジオキシベンゼン等が挙げられる。
【0023】
・イミドイルクロリド化合物の合成反応場をそのまま利用する態様
本実施態様においては、アミド化合物とフタル酸クロリド化合物とを用いてイミドイルクロリド化合物を合成する反応場を、そのまま各種化合物の生成等の反応に利用する。この場合、反応生成物中には無水フタル酸誘導体が副生し共存することとなるが、適当な溶媒を用いると溶解度の差により目的化合物を選択的に晶析させることができる。あるいは、目的化合物が液体の場合、蒸留により目的物を分離する方法を採用することが好ましい。また、目的化合物がアルカリ性水溶液により変化を受けない化合物である場合には、炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ水で処理すると無水フタル酸化合物が開環してナトリウム塩となり水層に溶解するので、目的化合物を有機溶媒で抽出する方法を採用することもできる。
分離した無水フタル酸誘導体は通常の有機化合物として廃棄することもできるし、既存の方法によってフタル酸クロリド誘導体に変換し再使用することもできる。このように、本実施態様の方法は、それ自体の安全性、有用性があるのみならず、副生物のリサイクルをも考慮した環境適合型のイミドイルクロリド化合物とそれらを用いる反応形態としても意義を有する。
【0024】
イミドイルクロリド化合物は次工程の反応(これを適用した各種化合物の合成反応)により元のアミド化合物に変化する。従って、フタル酸クロリド化合物と次工程で反応させる基質の中に触媒量のアミド化合物を加えると、反応系内でイミドイルクロリドに変化しながら次工程の反応を行うことができる。その場合、定法により無水フタル酸化合物を分離すれば目的の化合物が高収率で得られる。
【0025】
すなわち、本発明においては、上記の手順で得たイミドイルクロリド化合物を単離し、または単離せずに、あるいは前記イミドイルクロリド化合物の生成の際に、酸素原子を含む有機化合物と接触させ、脱酸素クロル化反応を進行させる実施態様が好ましい。あるいは、上記の手順で得たイミドイルクロリド化合物を単離し、または単離せずに、あるいは前記イミドイルクロリド化合物の生成の際に、電子豊富な芳香族化合物と反応させ、加水分解し芳香核にホルミル基を導入する実施態様が好ましい。特に、上記イミドイルクロリドの生成を無溶媒で行うようなときには、これを単離することが難しい場合があり、本実施態様を好適に用いて所望の反応を行うことができる。
【0026】
・イミドイルクロリド化合物を単離して利用する態様
本実施態様は、アミド化合物とフタル酸クロリド化合物から合成したイミドイルクロリド化合物と無水フタル酸化合物の混合物から、イミドイルクロリド化合物を単離する方法、並びにこれを目的の化合物の合成等の反応に適用することに関する。上記で述べたように無水フタル酸化合物は通常、次工程の塩素化反応に関与しないので、そのままの形で残るが生成物が固体である場合にはそれらの分離に手間がかかったり、収量ロスしたりする。そうした場合には、あらかじめ無水フタル酸化合物が混入していない純粋なイミドイルクロリド化合物を用いることが好ましい。
本実施態様によれば、イミドイルクロリド化合物と無水フタル酸化合物の混合物にエーテル系溶媒またはBTX化合物(ベンゼン、トルエン、キシレンのほか、そのハロゲン置換体を含む。)を用いると無水フタル酸化合物が溶媒に溶解するので、簡単なろ過操作で純粋なイミドイルクロリド化合物を結晶として単離することができる。エーテル系化合物の例としてジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテルなどを挙げることができるが、中でもテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンが無水フタル酸を良く溶かすので好ましい。BTX化合物としてはトルエン、パラクロロトルエン、オルトクロロトルエン、クロロベンゼン、キシレンなどが挙げられる。このとき、溶解度の調整のために一般式(1)で表されるアミド化合物を混合して用いることもできる。溶媒の選定に当たっては、無水フタル酸がよく溶解してイミドイルクロリドが不溶なものほど好ましい。溶解度で規定をするならば、25℃で無水フタル酸を10%以上溶解する溶媒が好ましく、15%以上ならばより好ましく、20%以上ならばさらに好ましい。
【0027】
具体例としていえば、その使用量は25℃〜40℃の間で4〜7重量倍用いると無水フタル酸化合物を完全に溶解できることを溶解度試験により明らかとした。また、その量におけるイミドイルクロリド化合物の溶解度は1%以下であることも併せて確認した。代表的な例を示すと、5重量倍の1,4−ジオキサン中DMFとフタル酸クロリドを等モル混合し室温〜40℃で攪拌すると次第に結晶が析出してくる。析出した結晶はほぼ純粋なN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドであり、無水フタル酸は1,4−ジオキサンに溶解していた。イミドイルクロリド化合物は吸湿性であるので、空気を遮断しながら窒素で加圧ろ過する方法で単離することが好ましい。あるいは、オルトクロロトルエン4重量倍とDMF1重量倍の混合溶媒を用いると35〜40℃で無水フタル酸を完全に溶解することができるので、ほぼ純粋なN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドを簡単なろ過により結晶として単離することができる。
得られた結晶はそのまま用いることもできるし、乾燥して用いることもできる。このようにして得られたN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶はほぼ純品であるので、例えば、等モルの基質と適当な溶媒の中で室温(20℃)〜60℃で攪拌すると容易に次工程の塩素化反応が進行し、簡単なろ過により高純度の塩素化合物が高収率で得られる。
【0028】
本発明に関してその好ましい実施態様に基づき詳細に説明したが、その利点を繰り返すと下記のようになる。
アミド化合物にフタル酸クロリド類を作用させると、イミドイルクロリド化合物と無水フタル酸誘導体に変換されるが、多くの場合無水フタル酸誘導体は次工程の反応に直接関与せず未反応物として残るので、そのまま次工程の反応場に用いることができる。未反応の無水フタル酸誘導体は蒸留あるいは再結晶により容易に取り除くことができ、必要ならば回収しフタル酸クロリド類への再変換原料として用いることができる。従って、本発明の実施態様によれば、特殊な排水、廃棄物処理を必要としないクリーンなイミドイルクロリド化合物の製造方法を提供することができる。無水フタル酸誘導体からフタル酸クロリド類への変換反応は、本発明者らにより完成しており工業原料として安価に市場に供給されている(特開2010−53126号、特開2010−105929号公報)。
また、必要ならばイミドイルクロリド化合物を簡単な操作で単離し用いることができる。即ち、イミドイルクロリド化合物と無水フタル酸誘導体の混合物をエーテル系溶媒またはBTX溶媒で処理すると無水フタル酸が溶媒に溶解するために、簡単なろ過操作で高純度のイミドイルクロリド化合物を結晶として得ることができ、様々な化合物の反応に適切な反応条件下で適用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
(実施例I)イミドイルクロリド化合物の製造
(実施例101)
1,4−ジオキサン30mL中、N,N−ジメチルホルムアミド3.0g(41.1ミリモル)とフタル酸クロリド8.3g(41.1ミリモル)を室温で混合した後、40℃で3時間攪拌した。結晶をガラスフィルター上にあけて窒素加圧下でろ取し、1,4−ジオキサン8mLで2回洗浄した。得られた結晶を真空乾燥し、5.24g(99%収率)のN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドを得た。その融点は128℃(分解)であった(文献値 132℃、アルドリッチ社カタログ値)。
生成物のNMR測定から無水フタル酸はほとんど混入していないことを確認した。また、合成したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドのIR測定及びNMR測定を行った結果、アルドリッチ社から販売されている試薬とスペクトルがよく一致した。
IR(CHCl) 1699(C=N)cm−1
300Mz−HNMR(CDCl) δ=3.978(s、6H),11.002(s、1H)
【0030】
(実施例102)
1,2−ジメトキシエタン30mL 中、N,N−ジメチルホルムアミド3.06g(41.9ミリモル)とフタル酸クロリド8.43g(41.7ミリモル)を40℃で1時間攪拌した。結晶をガラスフィルター上にあけて窒素加圧下でろ取し、1,2−ジメトキシエタン10mLで2回洗浄した。得られた結晶を真空乾燥し、3.20g(60%収率)のN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドを得た。その融点は127〜128℃(分解)であった。
【0031】
(実施例103)
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン 3.50g(30.7ミリモル)、フタル酸クロリド6.54g(32.4ミリモル)の混合物を140℃で5時間加熱攪拌した。冷却後、1,4−ジオキサン25mLを加えると結晶が析出したので、ガラスフィルターにてろ過、10mLの1,4−ジオキサンで2回洗浄、5mLのエーテルで1回洗浄後、真空乾燥した。2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリュームクロリド 2.72g(収率53%)を得た。このものの融点(分解点)は94.6℃を示した(文献値融点: 95〜100℃ 非特許文献2)。
合成した2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリュームクロリドのIR測定及びNMR測定を行った結果、東京化成社から販売されている試薬とスペクトルがよく一致した。
IR(CHCl) 1636(C=N)cm−1
300Mz−HNMR(CDCl) δ=3.337(6H),4.317(4H)
【0032】
(実施例104)
1,4−ジオキサン6mL、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素 3.49g(30.1ミリモル)、フタル酸クロリド6.28g(31.1ミリモル)の混合物を100℃で8時間加熱攪拌した。温かいうちに、1,4−ジオキサン18mLを反応液に追加し室温まで冷却した。析出した結晶をガラスフィルターにてろ過、5mLの1,4−ジオキサン、5mLのエーテルで洗浄、真空乾燥した。クロロ−N,N,N’,N’−テトラメチルホルムアミジニウムクロリド2.82g(収率55%)を得た。このものの融点は151−153℃を示した。
文献値融点:150−155℃ J.Med.Chem.,1966年9巻980頁.
【0033】
(実施例105)
1,4−ジオキサン70mL中、N,N−ジエチルホルムアミド10.1g(0.100モル)とフタル酸クロリド21.1g(0.104モル)を室温で混合した後、40℃で3時間攪拌した。結晶をガラスフィルター上にあけて窒素加圧下でろ過し、1,4−ジオキサン20mLで2回洗浄した。得られた結晶を真空乾燥し、14.4g(92%収率)のN,N−ジエチルクロロメチレンイミニウムクロリドを得た。mp114.8−115.3℃(分解)。
【0034】
(実施例106)
1,4−ジオキサン20mL中、N−ホルミルピペリジン3g(26.5ミリモル)とフタル酸クロリド6g(29.7ミリモル)を40℃、2.5時間攪拌した。室温に冷却すると結晶が析出したのでろ過、1,4−ジオキサン洗、エーテル洗を行い真空乾燥し、1−(クロロメチレン)ピペリジニウムクロリドを3.68g(収率82.5%)得た。融点は111−113℃であった。
【0035】
(実施例II)単離試薬を用いた例
(実施例201)
実施例I−101と同様にして合成したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶を1.05g(8.2ミリモル)測り取った。そこに、1,4−ジオキサン6mLと4,4’−スチルベンジカルボン酸1.08g(4.03ミリモル)を加え60℃にて1時間攪拌した。50℃にてろ過し1,4−ジオキサンで洗浄、真空乾燥し1.11g(収率90%)の4,4’−スチルベンジカルボン酸クロリドを得た。HPLC分析は99.5%の純度を示した。無水フタル酸は含まれていなかった。得られた4,4’−スチルベンジカルボン酸クロリドの融点は234℃であった。
文献値融点:227〜230℃:J.Am.Chem.Soc.,1947年,69巻、503頁
文献値融点:238℃:J.Org.Chem.,1990年,55巻、2864頁。
IR(KBr)1748,1591cm−1
300MHz−HNMR(CDCl) δ=7.50(s,2H),7.77(d,J=8.4Hz,4H),7.97(d,J=8.4Hz,4H)
【0036】
(実施例202)
実施例I−101と同様にして合成したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶を1.15g(9.0ミリモル)測り取った。そこに1,4−ジオキサン5mLと4,4‘−ビフェニルジカルボン酸1.04g(4.28ミリモル)を加え、60℃にて1時間攪拌した。冷却後、析出した結晶をろ取し、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸クロリド0.98g(収率82%)を得た。
得られた4,4‘−ビフェニルジカルボン酸クロリドの融点は188℃であった。
文献値融点:184℃:J.Chem.Soc.,1940年1315頁、 USP2856425)。
ジエチルアミン処理によるHPLC内標純度は99.5%であった。
GC−MS(ジエチルアミン処理後)m/z352(M
【0037】
(実施例203)
実施例I−101と同様にして合成したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶を1.11g(8.7ミリモル)測り取った。そこに1,4−ジオキサン5mLと2,6−ナフタレンジカルボン酸0.93g(4.3ミリモル)を加え60℃にて1時間攪拌した。室温まで冷却し2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドの結晶を0.91g(収率84%)得た。この生成物の融点は188−190℃であった。
文献値融点186℃:日本化学会誌 1974年,603頁。
文献値融点189−190℃:J.Am.Chem.Soc.,1996年,118巻、8782頁.
GC−MS(ジエチルアミン処理後)m/z326(M
【0038】
(実施例204)
実施例I−101と同様にしてN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶を1.80g(14.1ミリモル)得た。そこにオクタン酸2.08g(14.4ミリモル)とDMF2.5mLを加え室温で1時間攪拌した。GC−MSを測定するとオクタノイルクロリドが90%と原料のオクタン酸が10%の混合物であった。
GC−MS:m/z127(M−35
【0039】
(実施例205)
実施例I−101と同様にして合成したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶0.21g(1.64ミリモル)にベンジルアルコール0.16g(1.48ミリモル)を加え室温にて1時間攪拌した。GC−MSを測定するとベンジルクロリドが95.5%の収率で得られていた。
m/z=126(M),128(M+2)=約3:1
【0040】
(実施例206)
実施例I−101と同様にして合成したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶0.60g(4.7ミリモル)にジクロロメタン15mLを加え攪拌したが、スラリー状態であった。そこに2−ヘキサノール(ラセミ体)0.41g(4.0ミリモル)のジクロロメタン溶液4mLを加えると直ちに均一溶液となった。室温にて攪拌し15分後に飽和重曹水でクエンチしGC分析すると、2−ヘキサノールは完全に消失し、99%以上の変換率で2−ヘキシルホルメートに変化していた。GC−MSは親ピークが観測されず、m/z101(M−29)及び85、84が観測された。2−クロロヘキサンの標品GCMSと保持時間とスペクトルが異なっていた。さらに構造を確認するために1MNaOH水溶液3mLを加え室温で1時間攪拌後、GC−MSを測定すると2−ヘキサノールに完全に変化していた。そのスペクトルは試薬標品のそれと完全に一致した。
別途、同じ反応を1,4−ジオキサン溶媒にて80℃で1時間行い、重曹処理後GCMSを測定すると2−クロロヘキサンの標品スペクトルと一致した。変換率は99%以上であった。
【0041】
(実施例207)
実施例I−105に合成したN,N−ジエチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶を10.5g(0.067モル)測り取った。そこに、1,4−ジオキサン40mLと4,4’−ビフェニルジカルボン酸7.8g(0.032モル)を加え60℃にて1時間攪拌した。40℃にてろ過し1,4−ジオキサンで洗浄、真空乾燥し7.1g(収率78%)の4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロリドを得た。HPLC分析は99.4%の純度を示した。無水フタル酸は含まれていなかった。
【0042】
(実施例208)
実施例I−101と同様にしてN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドを合成した。即ち、300mL4つ口フラスコにDMF10g(13.7ミリモル)、1,4−ジオキサン100mL(缶出し)を入れ、攪拌下フタル酸クロリド30g(14.8ミリモル)を室温で5分かかって滴下した。40℃の油浴にて3時間攪拌した。ガラスフィルターにて窒素での加圧ろ過を行ってN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶をろ取、乾燥1,4−ジオキサン30mLで2回洗浄した。
上記のガラスフィルターでろ取したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの全量を乾燥せずに300mL4つ口フラスコに移し、乾燥ジクロロメタン70mLを加え攪拌した。4,4‘−オキシビス安息香酸11.3g(43.8ミリモル)を加え、30mLのジクロロメタンを追加した。40℃の油浴中、攪拌を続けると次第に均一溶液となり2時間で反応終了とし、ガラスフイルターで微量の不溶物を取り除いた。エバポレーターで約1/4になるまで濃縮した。この状態でフラスコ内に結晶が析出し始めていた。5℃まで冷却し、結晶をろ取、乾燥シクロヘキサン5mLで2回結晶を洗浄した。室温真空乾燥1時間で4,4‘−オキシビス安息香酸クロリドの白色結晶9.7g(収率75%)を得た。ろ液から2番晶を2.7g(21%収率)を得た。
HPLC分析1番晶:99.86%、2番晶:99.80%
Mp 89.6−89.8℃。(1番晶)
IR(KBr):1748cm−1
【0043】
文献値融点:mp 89.2―89.8℃:Dokl.Chem. (engl. Transl.) 1984年, 279巻, 388頁
文献値融点:mp88℃:工業化学雑誌1967年, 70巻, 1607頁.
GC−MS(ジエチルアミドとして):m/z=368(M、9%)、367(24%)、296(ベースピーク)、196(50%)
【0044】
(実施例209)
実施例II−208のジクロロメタンを4−クロロトリフルオロメチルベンゼンに代えて同じように実施した。結晶が出るまで濃縮し収率69%で4,4‘−オキシビス安息香酸クロリドの白色結晶を得た。
HPLC純度99.72%
【0045】
(実施例210)
実施例I−101の溶媒1,4−ジオキサンをオルトクロロトルエンに代えて同じようにN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドを合成した。即ち、1L4つ口フラスコにN,N−ジメチルホルムアミド90g(1.23モル)、オルトクロロトルエン310mL(缶出し)を入れ、攪拌下フタル酸クロリド84.5g(0.418モル)を室温で5分かかって滴下した。50℃の油浴にて3時間半攪拌を続け、ガラスフィルターにて、窒素での加圧ろ過を行ってN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリド結晶をろ取、オルトクロロトルエン150mLで2回洗浄した。
上記のN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶全量を乾燥せずに1L4つ口フラスコに移し、オルトクロロトルエン300mLと4,4‘−オキシビス安息香酸45g(0.174モル)を加え、70℃の油浴中、攪拌を続けると次第に均一溶液となった。4時間で反応終了とし、底に褐色の液体層(主に未反応のN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドとN,N−ジメチルホルムアミド)が25mLをデカンテーションで取り除いた。
反応液をエバポレーターで70mLになるまで濃縮した。10℃まで冷却し、結晶をろ取、ヘキサン30mLで結晶を洗浄した。室温真空乾燥1時間で4,4‘−オキシビス安息香酸クロリドの白色結晶35.8g(収率70%)を得た。
HPLC分析:99.70%
Mp 89.8℃。
【0046】
(実施例211)
実施例I−106で得た1−(クロロメチレン)ピペリジニウムクロリド2.6g(15.5ミリモル)とアニソール3.7g(34.2ミリモル)を100℃で4時間攪拌したのち、酢酸エチルと1モル濃度の塩酸を加え酢酸エチル層を分離した。飽和重曹水で洗ったのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣は5.2gあり、GC分析の結果、1.75ミリモルの4−メトキシベンズアルデヒドが得られていることがわかった。1−(クロロメチレン)ピペリジニウムクロリド基準で11%の収率であった。
GC−MS:m/z=136(M)、135(ベースピーク)、107,92,77。
【0047】
(実施例212)
実施例I−101に合成したN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶0.44g(3.4ミリモル)を1,4−ジオキサン10mLに懸濁させ、トリフェニルメタノール0.72g(2.8ミリモル)の1,4−ジオキサン4mL溶液を室温で滴下した。80℃にて30分間攪拌すると均一溶液となった。重曹水とジクロロメタンを加え、有機相を分離、溶媒を留去すると0.78gのトリフェニルメチルクロリドが定量的収率で得られた。
融点112−113℃
文献値融点:111−112℃:Org.Synthesis Coll.VolIII,841頁。
GC−MSは試薬標品のそれと一致した。m/z=243(M−35)。
【0048】
(実施例III)単離せずに所定の反応を行う例
(実施例301)
フタル酸クロリド1.09g(5.4ミリモル)と4−フルオロベンズアルデヒド0.52g(4.19ミリモル)の混合物にN,N−ジメチルホルムアミドを0.1g(1.37ミリモル)加え、50℃で3時間攪拌した。反応液のGC−MSを測定すると主生成物のマススペクトルは標品の1−ジクロロメチル−4−フルオロベンゼンのマススペクトルと完全に一致した。
m/z=178(M):180(M+2)=約3:2(二塩素化物)
別途GC分析では1−ジクロロメチル−4−フルオロベンゼンが95%生成していることが明らかとなった。なお、反応後のフタル酸無水物は蒸留残渣から容易に単離して回収することができた。
【0049】
(実施例302)
塩化ベンゾイル8mLにN,N−ジメチルホルムアミド0.36g(4.9ミリモル)、フタル酸クロリド1.12g(5.5ミリモル)を順次加え攪拌した。そこに、4−フルオロベンズアルデヒド0.50g(4.0ミリモル)を加え室温で3.5時間攪拌した。反応液のGC−MS分析は標品の1−ジクロロメチル−4−フルオロベンゼンのマススペクトルと完全に一致し、その変換率(収率)は95%であった。
【0050】
(実施例303)
N,N−ジメチルホルムアミド1.19g(16.3ミリモル)にフタル酸クロリド0.27g(1.34ミリモル)を室温で加え30分間攪拌した。反応液はスラリー状態となった。そこにベンジルアルコール0.12g(1.11ミリモル)を加えると直ちに均一溶液となった。室温で1時間攪拌後、一部をエーテルと水の中に入れ、よく攪拌したのち有機層のGC−MSを測定した。ベンジルアルコールは完全に消失しており、全てベンジルクロリドに変化していた。そのGC−MSのピークは標品のそれと完全に一致した。
m/z 126(M)、128(M+2)。126:128=ca3:1、91(ベースピーク)。
【0051】
(実施例304)
1,3−ジメチル−2−イミダジリジノン(DMI)0.14g(1.23ミリモル)とフタル酸クロリド0.25g(1.24ミリモル)を室温で加え攪拌しながらオイルバス中で30分かかって130℃まで温度を上げた。さらに140℃で1時間攪拌したのち室温まで冷却すると固化した。そこにDMIを1mL加え全体を均一溶液としたのち、ベンジルアルコールを室温で加え1時間攪拌した。反応液の一部をとり、エーテルと水の中に入れ、よく攪拌しその有機層のGC−MSを測定した。その結果、ベンジルアルコールが40%残っており、ベンジルクロリドが60%生成していることがわかった。反応液を室温でさらに15時間攪拌し同様にGC−MSを測定するとベンジルクロリドの生成率(収率)が84%で16%のベンジルアルコールが残っていた。
【0052】
(実施例305)
N,N−ジメチルホルムアミド6.7g(91.8ミリモル)とフタル酸クロリド3.0g(14.8ミリモル)を室温で30分間攪拌した。反応液はスラリー状態であったが、4−メトキシベンジルアルコール1.40g(10.2ミリモル)を加えると直ちに均一溶液となった。そのまま30分間攪拌を続け、GCでモニターすると原料の4−メトキシベンジルアルコールは完全に消失し、4−メトキシベンジルクロリドに変化していた。反応液にジクロロメタンと炭酸ナトリウム水溶液を加え、よく振り混ぜジクロロメタン層を分離し、炭酸ナトリウム水溶液でもう一度洗浄した。この操作を2回繰り返しジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去すると無色の液体が得られ、GC−MSでほぼ純品の4−メトキシベンジルクロリドであることが判明した。
得量1.46g(収率92%)
m/z=156(M),158(M+2).
【0053】
(実施例306)
N,N−ジメチルホルムアミド9.04g(0.12モル)とN、N―ジメチルアニリン5.0g(0.041モル)を混合し、フタル酸クロリド8.4g(0.042モル)を室温で滴下した。反応混合液を70℃まで上昇させ1時間攪拌した。反応液の一部を取りジクロロメタンと水を加え、ジクロロメタン層のGC分析を行うと94%の変換率(収率)で4−(N、N―ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドが生成していた。
【0054】
(実施例307)
2,6−ナフタレンジカルボン酸 12,1g(56ミリモル)を1,4−ジオキサン160mLに懸濁した。室温で撹拝しながらフタル酸クロリド30g(148ミリモル)を滴下、さらにN,N−ジメチルホルムアミド3mLを加えたのち、70℃で3.5時間撹絆した。微量の不溶物を除去するためにG2ガラスフィルターでろ過し、室温で2時間静置した。
析出した結晶をろ取し、エーテル25mLで洗浄後、デシケーター中で2時間真空乾燥した。10.6g(78%収率)の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドを得た。
mp190.3−190.6℃。HPLC純度98.5%。
GC−MS:m/z=252(M):254(M十2)=3:2
ジエチルアミン処理 m/z=304(M
【0055】
(実施例308)
2,6−ナフタレンジカルボン酸 54g(0.25モル)を1,2−ジメトキシエタン465mLに懸濁、N,N−ジメチルホルムアミド5mLを加えたのちフタル酸クロリド125g(0.62モル)を室温で滴下後、75℃で2時間攪拌した。微量の不溶物を除去するためにG2ガラスフィルターでろ過し、室温で14時間静置した。析出した結晶をろ取し、1,2−ジメトキシエタン100mL、ヘキサン200mLで洗浄後、デシケーター中で2時間真空乾燥した。45g(71%収率)の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドを得た。
mp191℃。HPLC純度99.96%。無水フタル酸は含まれていなかった。
【0056】
(実施例309)
1,4−ジオキサン2mL中、N−メチルホルムアミド0.61g(10.3ミリモル)とフタル酸クロリド2.0g(9.9ミリモル)を40℃で2時間攪拌した。室温まで冷却したが相当するイミドイルクロリドの結晶は析出しなかったので、ベンジルアルコール0.95g(9.8ミリモル)を加え50℃で3時間反応し、水を加えて反応を停止した。エーテルで有機物を抽出しGC−MS分析を行った結果、ベンジルアルコールが12%残存し、ベンジルクロリド79%、ベンジルホーメート9%の混合物であった。
【0057】
(実施例310)
N−メチルホルムアニリド1.3g(0.96ミリモル)とフタル酸クロリド2.2g(1.09ミリモル)を無溶媒にて50℃で4時間、さらに80℃で1時間反応させた。室温まで冷却すると全体が固化したが、1,4−ジオキサン4mLを加えると完全に溶解してしまった。相当するイミドイルクロリドを結晶として単離することができなかったので、ベンジルアルコール1g(0.93ミリモル)を加え室温で3時間、さらに70℃で1時間攪拌した。GC−MS分析の結果、ベンジルアルコールは完全に消失し、ベンジルクロリド40%とベンジルホーメート60%が生成していた。
【0058】
(実施例311)
N,N−ジメチルベンズアミド6g(40ミリモル)とフタル酸クロリド9g(44.6ミリモル)を無溶媒にて100℃で3時間攪拌した。室温まで冷却すると全体が固化したが、1,4−ジオキサン10mLを加えると全体が均一となり、相当するイミドイルクロリドを結晶として単離できなかった。ベンジルアルコール2.6g(24ミリモル)を加え室温で1時間攪拌するとベンジルアルコールは消失しベンジルクロリドに完全に変換していた。
【0059】
(実施例312)
N,N−ジメチルアセトアミド 4.3g(49ミリモル)とフタル酸クロリド10.4(51.5ミリモル)を30℃で攪拌した。反応液は直ちに茶褐色に変化し固化し攪拌が不能になった。1,4−ジオキサン50mLを加えると全体が均一となった。2,6−ナフタレンジカルボン酸4.3g(20ミリモル)を加え懸濁状態で70℃3時間攪拌すると均一溶液となった。室温まで冷却して析出した固体をろ取し、1,4−ジオキサンとヘキサンで洗浄後乾燥すると4.5gの2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドが得られた。収率は89%であった。
【0060】
(比較例c31)
ベンゾイルクロリド10g中、4,4’−スチルベンジカルボン酸1.0g(3.73ミリモル)とフタル酸クロリド1.51g(7.48ミリモル)の混合物を70℃で5時間攪拌した。GC分析をすると4,4’−スチルベンジカルボン酸クロリドの収率は1%以下であり、大半の原料を回収した。
【0061】
(比較例c32)
4,4’−スチルベンジカルボン酸30.1g(0.11モル)とフタル酸クロリド47.5g(0.23モル)をベンゾイルクロリド300gを溶媒として140℃で5時間攪拌した。冷却後、結晶をろ取、真空乾燥し33.4gの薄緑色の結晶を得た。HPLC分析により、4,4’−スチルベンジカルボン酸クロリドの純度は98.5%であり、無水フタル酸が0.39%混入していた。HPLC感度補正。
【0062】
(比較例c33)
塩化ベンゾイル73.1g(0.520モル)中、2,6−ナフタレンジカルボン酸5.0g(0.023モル)とフタル酸クロリド10.0g(0.049モル)の混合物を140℃で4時間攪拌した。HPLCで反応をモニターすると2,6−ナフタレンジカルボン酸は完全に消失していたが、さらに2時間攪拌を続けた。室温まで冷却し5.3gの2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドの結晶をろ取した。この結晶を4−クロロ安息香酸を内部標準にしてHPLC分析すると混入している無水フタル酸は31wt%も含まれていた。
【0063】
(実施例IV)
回転子が入った10mLの試験管に温度計を取り付け、無水フタル酸1.0gと1,4−ジオキサン、THF、または1,2−ジメトキシエタン(DME)3mLを入れた。攪拌しながら温めると60〜80℃で無水フタル酸が溶解した。そのままゆっくりと冷却し無水フタル酸の結晶が析出し始める温度を調べた。結晶が析出し始めると、1mLずつ1,4−ジオキサン、THFまたは1,2−ジメトキシエタンを加え、結晶が析出する温度と溶媒量を詳細に調べた。
そのようにして30℃、25℃、20℃での無水フタル酸が1,4−ジオキサン、THF、ジメトキシエタンに溶解する量を求めた。無水フタル酸1gを溶解できる1,4−ジオキサンの量をV、テトラヒドロフランの量をR、1,2−ジメトキシエタンの量をYとすると、以下のようになった。
30℃ 5mL<V<4mL 4mL<R<3.5mL 5mL~Y
25℃ 6mL<V<5mL 5mL<R<4.5mL 5.5mL<Y<5mL
20℃ 7mL~V 5.5mL~R 6mL~Y
【0064】
一方、N,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの1,4−ジオキサン、THF、DMEへの溶解度を調べた。その結果、30℃でN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリド1gを溶解するのに必要な1,4−ジオキサンの量は約400〜500mL,THFは400〜450mL、1,2−ジメトキシエタンは350mL以上であった。
この結果から明らかなとおり、本発明の単離方法によれば、目的のイミドイルクロリド化合物を純度よくエーテル系溶媒から単離して得ることができることが分かる。
【0065】
(実施例V)非特許文献3との対比
(比較例c51)
以下のようにして非特許文献3のエントリー12に記載された反応の追試を行った。
ピバロイルクロリド1.39g(11.54ミリモル)とDMF5mLを室温で1時間攪拌した。特に変化は見られなかった。そこにジクロロメタン35mLと2−オクチルアルコール0.94g(7.23ミリモル)を加え1時間攪拌した。反応液に水20mLを加え有機相を分液、飽和炭酸ナトリウム溶液15mLで2回洗浄、続いて1NHCl、ブラインで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、1.1gの残渣を得た。これをキャピラリーGCで分析した。(分析値は全面積%)
DMF 18%、2−オクチルホルメート31%、2−オクタノール 28%、2−ピバロイルオクタノエート33%の混合物であった。それぞれの化学構造はGC−MSで分析確認した。
【0066】
非特許文献3は、上記エントリー12の反応の結果について、塩素化生成物の収率を60%と示している。上記結果と相違する理由は不明であるが、本発明者らの追試によると塩素化生成物はトレース程度しか確認されなかった。2−オクチルホルメートを塩素化生成物として評価してしまったことが示唆される。
【0067】
(実施例501)
上記比較例c51との対比を考慮して、本発明の好ましい条件を適用した。
まず、ピバロイルクロリドをフタル酸クロリドに代えることが考慮されるが、そうすると、結晶が生成し、N,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドを単離することができることは実施例101に示したとおりである。
そこで、さらに、実施例206と同様にN,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶0.71g(5.6ミリモル)にジクロロメタン15mLを加え5−7℃に冷却した。そこに2−オクタノール(ラセミ体)0.60g(4.6ミリモル)のジクロロメタン溶液5mLを加え、氷浴を取り除き室温で15分攪拌した。反応液をそのままGC−MSに導入し2−オクタノールが完全に消費されていることを確認した。GC−MSによる主成分は2−オクチルクロリドであった。また、反応液の一滴を取り飽和炭酸水素ナトリウム溶液とジクロロメタンの混合物に入れてよく振り混ぜGCMSを測定した場合の主生成物は2−オクチルホルメートであった。また、反応液の一部を試験管に取り少量の1,4−ジオキサンを加え80℃のオイルバスに1時間漬けたのち、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えよく振り混ぜジクロロメタン層をGCMS分析すると2−オクチルクロリドが主生成物であった。
反応液全体を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し0.56gの残渣を得、GC−MSで分析すると2−オクチルクロリドではなく、2−オクチルホルメートが単一成分として得られた。単離収率77%。純度99%以上。なお、単離収率は単離に係るロスを含み上記の値であったが、反応基質が残っていないこと、副生物の生成が見られないことからほぼ100%の反応収率で2−オクチルホルメートが得られていると判断された。下記スキーム2は、このときの反応スキームを整理して示したものである。
【0068】
【化5】

【0069】
(実施例502)
次に、前記比較例c51と基質をそろえ、前記実施例301の条件と同様にして、イミドイルクロリド化合物を単離せずに所定の反応を行った結果を示す。
ジクロロメタン25mLにフタル酸クロリド1.09g(5.4ミリモル)とN,N−ジメチルホルムアミド0.39g(5.4ミリモル)を加え、40℃にて2時間攪拌するとスラリー状態となった。そこに2−オクタノール0.65g(5ミリモル)を加え、室温で0.5時間攪拌した。反応液の一部を取り飽和炭酸水素ナトリウムとよく振り混ぜ、ジクロロメタン層をGCMSで分析した。その結果は2−オクチルホルメートと無水フタル酸のほぼ1:1混合物であった。このとき、反応基質が残っていないこと、副生物の生成が見られないことからほぼ100%の反応収率で2−オクチルホルメートが得られていると判断された。
【0070】
(実施例503)
さらに、脂肪族1級アルコールとの反応についても下記に示しておく。
N,N−ジメチルクロロメチレンイミニウムクロリドの結晶0.68g(5.3ミリモル)にジクロロメタン15mLを加え、5−7℃に冷却した。そこに1−オクタノール0.54g(4.2ミリモル)のジクロロメタン溶液5mLを加え、室温にて10分間攪拌した。反応液を直接GC分析すると原料の1−オクタノールは完全に消費されており、1−クロロオクタンが99%以上の選択率で観測された。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を留去し0.6gの残渣を得た。GC−MSで分析すると1−オクチルホルメート90%と1−クロロオクタン10%の混合物であった。
【0071】
上記実施例Vの結果を下記表にまとめて示す。
【0072】
【表1】

*1: イミドイルクロリド化合物の単離に係る形態
*2:1−オクチルホルメート及び1−オクチルクロリドの収率である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアミド化合物と下記一般式(2)で表されるフタル酸クロリド化合物を反応させ、下記一般式(3)で表されるイミドイルクロリド化合物を生成させるイミドイルクロリド化合物の製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又は置換アミノ基を表す。RまたはRとRとは環状構造を形成していてもよい。)
【化2】

(一般式(2)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は低級アルキル基を表す。nは1〜4の整数を表す。)
【化3】

(一般式(3)中、R、R、及びRは一般式(1)及び(2)と同じ意味を表す。)
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N―ホルミルピペリジンまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンであり、一般式(2)で表される化合物がフタル酸クロリドである請求項1に記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記生成した一般式(3)で表されるイミドイルクロリド化合物をエーテル系溶媒で処理し、無水フタル酸化合物を取り除き、イミドイルクロリド化合物を結晶として取り出す請求項1又は2に記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記エーテル系溶媒が、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン及び1,2−ジメトキシエタンから選ばれる請求項3記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記生成した一般式(3)で表されるイミドイルクロリド化合物をトルエン化合物と一般式(1)で表されるアミド化合物の混合溶媒で処理し、無水フタル酸化合物を取り除き、イミドイルクロリド化合物を結晶として取り出す請求項1又は2に記載のイミドイルクロリド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法で得たイミドイルクロリド化合物を単離し、または単離せずに、あるいは前記イミドイルクロリド化合物の生成の際に、酸素原子を含む有機化合物と接触させ、脱酸素クロル化の反応をさせる脱酸素クロル化生成物の製造方法。
【請求項7】
前記酸素原子を含む有機化合物が、カルボン酸化合物、アルコール化合物、アルデヒド化合物、又はケトン化合物である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法で得たイミドイルクロリド化合物を単離し、または単離せずに、あるいは前記イミドイルクロリド化合物の生成の際に、電子豊富な芳香族化合物と反応させ、加水分解し芳香核にホルミル基を導入するホルミル基保有芳香族化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−136502(P2012−136502A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174074(P2011−174074)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(393021967)イハラニッケイ化学工業株式会社 (13)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】