説明

イミノおよびアミノ糖の精製

D−1−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)などのイミノまたはアミノ糖の精製のための新規な工程。特に、塩酸を使用する数キログラム規模の糖の精製のための工程が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は2005年6月8日に出願された米国仮特許出願第60/689,130号からの優先権を主張し、その開示はその全体が参照として本明細書に組み入れられている。
【0002】
[発明の背景]
本発明は、イミノまたはアミノ糖、例えば、D−1−デオキシガラクトノジリマイシンヒドロクロライド(DGJ・HCl)の精製のためのプロセスに関するものである。本プロセスは、数キログラム量のこれらの窒素含有糖を産生するために使用されうる。
【0003】
多くの生物プロセスにおいて、糖は各種の酵素機能の選択的阻害に主要な役割を果たすことが見出されているため、糖は薬理学において有用である。糖の1つの重要な種類は、代謝障害の治療に有用であるグリコシダーゼ阻害物質である。ガラクトシダーゼは、グリコシド結合の加水分解を触媒し、複合糖質の代謝において重要である。D−1−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)などのガラクトシダーゼ阻害物質は、糖尿病(例えば、米国特許第4,634,765号)、癌(例えば、米国特許第5,250,545号)、ヘルペス(例えば、米国特許第4,957,926号)、HIVおよびファブリ病(Fan ら,Nat.Med.1999 5:1,112−5)を含む、多くの疾患および状態の治療に使用されうる。
【0004】
一般に糖はクロマトグラフィー分離によって精製される。クロマトグラフィー分離は、実験規模の合成では迅速および効率的に実施されうるが、しかしながら、カラムクロマトグラフィーおよび同様の分離技法は、より大量の糖が精製されるときには、あまり有用でなくなる。カラムのサイズ、溶媒の量、要求される静止相(例えば、シリカゲル)および分離に必要な時間はそれぞれ、精製される生成物の量と共に増加し、カラムクロマトグラフィーを使用する数キログラム規模の合成からの精製を非現実的にしている。
【0005】
糖の別の一般的な精製技法は、イオン交換樹脂を使用する。退屈なイオン交換樹脂の前処理を必要とするので、本技法は退屈なことがある。利用できるイオン交換樹脂も、塩(例えば、NaCl)から糖を必ずしも分離できるわけではない。酸性樹脂は、粗生成物中に見られる金属イオンおよびアミノまたはイミノ糖の両方を溶液から除去する傾向があり、したがって有用ではない。金属カチオンを選択的に除去して、アミノまたはイミノ糖を溶液に残すことができる樹脂を見出すことは、些細なことではない。加えて、イオン交換樹脂を使用する糖の精製後に、希釈された水溶液を濃縮する追加のステップが必要である。本ステップは、糖の分解を引き起こす可能性があり、汚染物質を産生し、収率を低下させる。
【0006】
米国特許第6,740,780号、同第6,683,185号、同第6,653,482号、同第6,653,480号、同第6,649,766号、同第6,605,724号、同第6,590,121号、および同第6,462,197号は、イミノ糖の製剤のためのプロセスを記載している。これらの化合物は一般に、ヘキシトールに還元されるラクタムの生成によってヒドロキシル保護オキシム中間体から調製される。しかしながら、本プロセスは、安全性、アップスケール、取り扱いおよび合成の複雑さに関する、数kg規模での生産のために欠点を有する。例えば、開示された合成のいくつかは、より大きな規模では実際的でない、精製のためのフラッシュクロマトグラフィーまたはイオン交換樹脂処理を使用する。
【0007】
1つの特に有用なイミノ糖はDGJである。刊行物で開示された複数のDGJ製剤があり、その大半は予備規模手順(例えば、>100g)で産業研究所には適切でない。そのような合成の1つとしては、D−ガラクトースからの合成(Santoyo−Gonzalez,ら,Synlett 1999 593−595;Synthesis 1998 1787−1792)が挙げられ、そこではDGJの精製にはもちろんのこと、DGJ中間体の精製にもクロマトグラフィーの使用が教示されている。DGJ精製のためのイオン交換樹脂の使用も開示されているが、樹脂があるとしても、どの樹脂が実験規模でのDGJ精製に実用的かという指示はない。発表されている調製されたDGJの最大規模は13gである(Fred−Robert Heiker,Alfred Matthias Schueller,Carbohydrate Research,1986,119−129を参照)。本刊行物において、DGJは、イオン交換樹脂Lewatit MP 400(OH)と共に撹拌することによって単離され、エタノールによって結晶化された。しかしながら、このプロセスは、数キログラム量には容易に拡大できない。
【0008】
同様に、他の産業的および製薬的に有用な糖は一般に、数キログラム量の精製まで容易にスケールアップできないクロマトグラフィーおよびイオン交換樹脂を使用して精製される。
【0009】
したがって、大規模合成するのに簡単で費用効率的である、窒素含有糖、好ましくはヘキソースアミノまたはイミノ糖を精製するための工程の必要性がある。
【0010】
[発明の概要]
現在、窒素含有糖、すなわちアミノまたはイミノ糖が、粗アミノまたはイミノ糖を濃塩酸で処理することによって大規模工程で効率的に供給されうることが発見されている。イオン交換樹脂が精製に使用されるときに必要とされるような前処理または希釈は不要である。窒素含有糖は濃HCl中で十分に溶解し、安定している。したがってHClは、糖を不溶性アルカリおよびアルカリ土類金属塩化物(例えば、NaCl)から簡単、高速および効率的な工程で分離するために使用されうる。
【0011】
これらのアルカリおよびアルカリ土類金属クロライドは、多様な目的、例えば、保護基除去のためのアミノまたはイミノ糖合成のステップの1つで使用されうる組成物を含有する他のアルカリおよびアルカリ土類金属から生成される。HCl処理は、塩酸に溶解しない他の不純物を除去するために使用されうる。アミノまたはイミノ糖の合成において、組成物を含有するアルカリおよびアルカリ土類金属は、所望のアミノまたはイミノ糖の最終精製で除去されねばならない。アルカリおよびアルカリ土類金属含有化合物の使用の一例は、アミノまたはイミノ糖の合成中にアシル保護基を除去するための塩基の使用である。例えば、メタノール中のナトリウムメトキシドは、ピバロイル保護基を除去するためのエステル交換反応における触媒として、DGJ合成の最後のステップで使用される。
【0012】
本発明の他の特徴、利点および実施形態は、次の説明、付随するデータおよび添付請求項から当業者に明らかとなるであろう。
【0013】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
次の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある態様をさらに説明するために含まれている。本発明は、本明細書に示す具体的な実施形態の詳細な説明と併せた、これらの図面の1つ以上への参照によって、さらに良好に理解されうる。
【0014】
「アルキル」という用語は、炭素および水素原子のみから成り、不飽和を含有せず、単結合によって残りの分子に結合した、直鎖または分岐C〜C20炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)を指す。本明細書で使用するアルキルは、好ましくはC〜Cアルキルである。
【0015】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素間二重結合を含有し、直鎖または分岐鎖でありうるC〜C20脂肪族炭化水素基、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルを指す。
【0016】
「シクロアルキル」という用語は、不飽和、非芳香族単環または多環式炭化水素環系、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを示す。多環式シクロアルキル基の例としては、パーヒドロナフチル、アダマンチルおよびノルボニル基、架橋環式基またはスピロ二環式基、例えば、スピロ(4,4)ノナ−2−イルが挙げられる。
【0017】
「シクロアルカルキル」という用語は、上で定義したようなアルキル基に直接結合した、上で定義したようなシクロアルキルを指し、該シクロアルキルはシクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチルなどの安定した構造の生成をもたらす。
【0018】
「アルキルエーテル」という用語は、アルキル鎖内に包含された少なくとも1個の炭素を有する、上で定義したようなアルキル基またはシクロアルキル基、例えば、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを指す。
【0019】
「アルキルアミン」という用語は、少なくとも1個の窒素原子を有する、上で定義したようなアルキル基またはシクロアルキル基、例えば、n−ブチルアミンおよびテトラヒドロオキサジンを指す。
【0020】
「アリール」という用語は、約6〜約14個の範囲の炭素原子を有する芳香族ラジカル、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニルを指す。
【0021】
「アリールアルキル」という用語は、上で定義したようなアルキル基に直接結合した、上で定義したようなアリール基、例えば、−CH、および−Cを指す。
【0022】
「複素環式」という用語は、炭素原子および窒素、リン、酸素および硫黄から成る群より選択される1〜5個のヘテロ原子より成る、安定な3〜15員環ラジカルを指す。本発明の目的では、複素環式ラジカルは、単環式、二環式または三環式環系であり、縮合、架橋またはスピロ環系を含むことがある。また、複素環式環ラジカル中の窒素、リン、炭素または硫黄原子が様々な酸化状態へ場合により酸化されうる。。加えて、窒素原子は場合により4級化されうる;また環ラジカルは、一部または完全に飽和されうる(すなわちヘテロ芳香族またはヘテロアリール芳香族)。そのような複素環式環ラジカルの例としては、これに限定されるわけではないが、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、パーヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピリジル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾリル、イミダゾリル、テトラヒドロイソキノリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサソリジニル、トリアゾリル、インダニル、イソキサゾリル、イソキサソリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニル、スルホニル、ジオキサホスホラニル、オキサジアゾリル、クロマニル、イソクロマニルが挙げられる。
【0023】
複素環式環ラジカルは、安定な構造の生成をもたらす主構造にいずれかのヘテロ原子または炭素原子にて結合されうる。
【0024】
「ヘテロアリール」という用語は、環が芳香族である複素環式環を指す。
【0025】
「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基に直接結合した、上で定義したようなヘテロアリール環ラジカルを指す。ヘテロアリールアルキルラジカルは、安定な構造の生成をもたらす主構造に、アルキル基からのいずれかの炭素原子にて結合されうる。
【0026】
「ヘテロシクリル」という用語は、上で定義したような複素環式環ラジカルを指す。ヘテロシクリル環ラジカルは、安定な構造の生成をもたらす主構造にいずれかのヘテロ原子または炭素原子にて結合されうる。
【0027】
「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、アルキル基に直接結合した、上で定義したような複素環式環ラジカルを指す。ヘテロシクリルアルキルラジカルは、安定な構造の生成をもたらす主構造に、アルキル基内のいずれかの炭素原子にて結合されうる。
【0028】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルカルキル」、「置換シクロアルケニル」、「置換アリールアルキル」、「置換アリール」、「置換複素環式環」、「置換へテロアリール環」、「置換へテロアリールアルキル」、または「置換ヘテロシクリルアルキル環」における置換基は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオ(=S)の基より選択される1個以上、あるいはアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環式環、−COOR、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)NR、−C(O)ONR、−NRCONR、−N(R)SOR、−N(R)SO、−(=N−N(R)R)、−NRC(O)OR、−NR、−NRC(O)R−、−NRC(S)R、−NRC(S)NR、−SONR−、−SONR−、−OR、−ORC(O)NR、−ORC(O)OR−、−OC(O)R、−OC(O)NR、−RNR、−R、−RCF、−RNRC(O)R、−ROR、−RC(O)OR、−RC(O)NR、−RC(O)R、−ROC(O)R、−SR、−SOR、−SO、−ONOより選択される場合により置換された基と同じまたは異なっており、上の基のそれぞれにおけるR、RおよびRは、水素原子、置換または非置換アルキル、ハロアルキル、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換アルカルキル、置換または非置換複素環式環、置換または非置換ヘテロシクリルアルキル、置換または非置換へテロアリールまたは置換または非置換へテロアリールアルキルでありうる。
【0029】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のラジカルを指す。
【0030】
窒素含有糖は、窒素含有基によって置換された少なくとも1個の酸素含有基を有するペントース、ヘキソース、またはヘプトース糖でありうる。好ましい一実施形態において、糖はヘキソース糖である。
【0031】
本発明に従って精製されうる窒素含有糖は、次の式:
【化1】

【0032】
のどちらかによって説明され、式中、Xは、NH、O、NHR、またはN(Rであり;各Rは独立して、OH、NH、NHRまたはN(Rであり;Rは、H、OHであり、またはRは−Oを介して別の糖に結合し;そしてRは、H、CH、CHOHであり、またはRは−CH−O−を介して別の糖に結合し、そして各Rは独立して、Hあるいは置換または非置換C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜C12シクロアルケニル、C〜C12アリール、C〜C12へテロアリール、C〜C12アリールアルキル、C〜C12ヘテロシクリル、C〜C12複素環式アルキル、C〜C12へテロアリールアルキルまたはC〜C12アシルであり、nは、0、1、または2である。本明細書に記載された工程は、極性アミノまたはイミノ糖から極性無機塩化物を分離するために使用されうる。糖中の1個以上のイミノまたはアミノ基の存在は、糖をHClに溶解性にする。したがってXがOであるとき、少なくとも1個のRは、NHまたはNHRまたはN(Rでなければならない。Xおよび/またはR位置に2個以上の独立したNH、NH、NHR、またはN(R部分がありうる。
【0033】
極性無機塩化物は、共通イオン効果のために濃塩酸には溶解性でない。共通イオン効果は、微溶解性塩と共通のイオンを含有する溶解性塩が混合され、微溶解性塩が共通イオンの濃度上昇のために変化したときに発生する。ルシャトリエの原理によって、微溶解性塩平衡に与えられたストレス(加えられた濃度)は、平衡を移動させて共通イオン濃度を低下させ、それにより微溶解性塩の溶解度を低下させる。
【0034】
アミノおよびイミノ糖は、重要および多様な生物機能を有する天然型分子の主要なクラスを構成する(R.W.Jeanloz,Academic Press,New York,1969)。多くは、特に各種の抗生物質および他の重要な生体分子の成分として天然型である。アミノおよびイミノ糖はグリコシドとして存在でき、本明細書に記載する方法によって精製されうる。これらの天然グリコシドは、糖(グリコン)および生物活性成分(アグリコン)を含有する。これらのアミノまたはイミノ糖としては、グルコース類似体の、ストレプトミセス濾液に見出されたノジリマイシンおよびクワ葉に見出された1−デオキシノジリマイシン(DNJ)が挙げられる。他の天然ヘキソースアミノまたはイミノ糖は、これらの親複素環式化合物または糖の誘導体、例えば、1−デオキシノジリマイシン(2S−ヒドロキシメチル−3R,4R,5S−トリヒドロキシ−ピペリジンまたは1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グリシトール)として系統的に記載されている。生物源からの単離に加えて、これらの糖を作製するための各種の合成経路がある。例えば、DGJは、D−グルコース(Legler G,ら,Carbohydr Res.1986 Nov 1;155:119−29);D−ガラクトース(Uriel,C,Santoyo−Gonzalez,F.,ら,Synlett 1999 593−595;Synthesis 1998 1787−1792);ガラクトピラノース(Bernotas RC,ら,Carbohydr Res.1987 Sep 15;167:305−11);L−酒石酸(Aoyagi ら,J.Org.Chem.1991,56,815);ケブラコイトール(Chida ら,J.Chem.Soc,Chem Commun.1994,1247);ガラクトフラノース(Paulsen ら,Chem.Ber.1980,113,2601);ベンゼン(Johnson ら,Tetrahedron Lett.1995,36,653);アラビノ−ヘキソース−5−ウロース(Barili ら,tetrahedron 1997,3407);5−アジド−1,4−ラクトン(Shilvock ら,Synlett,1998,554);デオキシノジリマイシン(Takahashi et al,J.Carbohydr.Chem.1998,17,117);アセチルグルコサミン(Heightman ら,Helv.Chim.Acta 1995,78,514);ミオ−イノシトール(Chida N,ら,Carbohydr Res.1992 Dec 31;237:185−94);ジオキサニルピペリデン(Takahata ら,Org.Lett.2003;5(14);2527−2529);および(E)−2,4−ペンタジエノール(Martin R,ら,Org Lett.2000 Jan;2(1):93−5)(Hughes AB,ら,Nat Prod Rep.1994 Apr;11(2):135−62)から合成されている。N−メチル−1−デオキシノジリマイシン含有オリゴサッカライドの合成は、Kisoによって記載されており(Bioorg Med Chem.1994 Nov;2(11):1295−308)、そこでは保護された1−デオキシノジリマイシン誘導体がグリコシルプロモータの存在下で、D−ガラクトースのメチル−1−チオグリコシド(グリコシル供与体)およびトリフレートと結合された。
【0035】
第2世代の糖も、本発明の方法によって精製されうる。これらの化合物は、グリコシダーゼ阻害への大幅に改善された特異性およびより少ないまたはより低い強度の副作用(例えば、消化器障害)を有する。本明細書で提供される方法を使用して精製されうる糖の非制限的なリストが表Iに含まれている。
【0036】
【表1】

【0037】
これらの粗化合物の合成および単離は既知であり、例えば、米国特許第4,861,892号;同第4,894,388号;同第4,910,310号;同第4,996,329号;同第5,011,929号;同第5,013,842号;同第5,017,704号;同第5,580,884号;同第5,286,877号;同第5,100,797号;同第6,291,657号、および同第6,599,919号に見出されうる。各種のデオキシノジリマイシン(DNJ)誘導体の合成は、米国特許第5,622,972号;同第5,200,523号;同第5,043,273号;同第4,944,572号;同第4,246,345号;同第4,266,025号;同第4,405,714号;および同第4,806,650号ならびに米国特許出願第10/031,145号に記載されている。追加の糖化合物およびその合成は、Jacob,G.S.,ら,Cur.Opin.Struct.Biol.(1995)5:605−611、およびWinchester,B.,ら,Glycobiol(1992)2:199−210に開示されている。アミノ糖の合成のための追加の方法は、例えば、:A.Golebiowski,J.Jurczak,Synlett 241,1992;J.Du Bois,らJ.Am.Chem.Soc.119:3179,1997;K.C.Nicolaou,らAngew.Chem.Int.Ed.Engl.,39:2525,2000に記載されている。
【0038】
合成の後、本明細書に記載した糖は通常、除去しなければならないアルカリまたはアルカリ土類含有化合物の不純物、例えば、ナトリウムメトキシドを含有する。
【0039】
本発明の方法による精製のための特に興味深い1つのアミノ糖は、DGJである。(2R,3S,4R,5S)−2−ヒドロキシメチル−3,4,5−トリヒドロキシピペリジンおよび1−デオキシ−ガラクトスタチンとも記載される、DGJ、すなわちD−1デオキシガラクトノジリマイシンは:
【化2】


のノジリマイシン(5−アミノ−5−デオキシ−D−ガラクトピラノース)誘導体である。
【0040】
濃塩酸抽出は、残留NaClまたは他の塩および不純物をDGJ生成物から分離するために使用されうる。DGJはこれらの条件では分解または脱水されず、塩化ナトリウムは1回の簡単な濾過で完全に除去される。濃HClを使用してDGJを抽出することおよび再結晶化することによって、DGJ生成物は優れた純度および結晶構造を示す。
【0041】
濃HClは糖(例えば、DGJヒドロクロライド)を溶解させ、NaClまたは他の金属塩汚染物質を溶解させず、DGJの塩からの分離を可能にする。このことは少なくとも一部は、NaClの不溶性で重要な役割を果たす共通イオン効果による。DGJは、濃HCl中では安定であり、他の強酸、例えば、HSO中のように脱水しない。一実施形態において、粗DGJ塩は濃塩酸によって混合物から抽出され、NaClは溶解しないまま残る。濾過後に、DGJ・HClは例えば、酸性溶液をテトラヒドロフラン/ジエチルエーテルの溶液に注入することによって沈殿させることができる。DGJ塩は濃HClによる溶媒和前に生成されうるか、またはDGJ塩は濃HClの添加中に生成される。
【0042】
上述の手順は、糖は最初に濃塩酸の代わりに水に添加され、溶液は次に塩化水素ガスによって飽和されるような方法でも改良されうる。
【0043】
アミノまたはイミノ糖は濃HCl中で数時間から数日間安定であり、イミノ糖の劣化を伴わずにいずれの規模でもワークアップの完了を可能にする。
2−アミノグルコース
本発明の方法による精製のための特に興味深い他の糖としては、グルコサミンとして一般に既知である2−アミノグルコース、およびその誘導体が挙げられる。2−アミノグルコースは、当分野で既知の方法によって単離または合成されうる。例えば、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコースは、Meyer zu Reckendorfの方法によって(Chem Ber.1969;102(3):1076−9)、D−グルコースおよびアミノ酸の照射によって(Doner L W,ら,Carbohydr.Res.1976 April;47(2):342−4)、および ビオルル酸を使用することによって(Moulik SP,ら,Carbohydr.Res.1972 November;25(1):197−203)作製されうる。既知の技法による合成の後、粗2−アミノグルコースは、最初に加熱された濃HClに溶解させる。このことは、非溶媒和Na+または他の金属イオン不純物の除去および生成物の結晶化によって糖の精製を可能にする。
【0044】
無機不溶性塩からの塩酸アミノまたはイミノ糖溶液の濾過の後、アミノまたはイミノ糖は追加の処理(例えば、濃縮による溶媒の除去)を伴わずに、濃塩酸と混和性の溶媒および溶媒混合物、例えば、テトラヒドロフラン、エタノール、アセトン、またはテトラヒドロフラン/ジエチルエーテルによって希釈することと、結晶化を生じさせることとによって単離されうる。他の溶媒および溶媒混合物も同様に使用されうる。本操作の後、結晶化は他の溶媒および溶媒混合物、例えば、DGJ・HClには水/エタノールを使用して反復されうる。DGJ・HCl精製の収率は、水/エタノールからの2回の結晶化を含めて、約80%である。
【0045】
「不純物」という用語は本明細書で使用するように、最終生成物中で望ましくない窒素含有糖中のいずれかの成分を示す。「汚染された」という用語は、不純物が汚染されたサンプルに存在することを意味する。本明細書で使用するように「濃HCl」は、少なくとも35% HClを有する溶液を指す。本明細書で使用するように、「数キログラム」「数kg」および「予備規模」という用語は、生成物が、1回のパスで生成物1kgを超える量で産生される合成規模を示す。
【0046】
[実施例]
本発明は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない次の実施例でさらに例示される。
【0047】
[実施例1]
DGJの調製および精製
保護された結晶性ガラクトフラノシドは、Santoyo−Gonzalezによって記載された技法から得た。5−アジド−5−デオキシ−1,2,3,6−テトラピバロイル−α−D−ガラクトフラノシド(1250g)を、H 50psiにて炭素担持パラジウム(10%、湿潤、44g)を含むメタノール(10L)を使用して、1〜2日間硬化した。ナトリウムメトキシド(メタノール中25%、1.25L)を添加して、硬化をH 100psiにて1〜2日間続けた。濾過によって触媒を除去して、反応をメタノール性塩化水素溶液(20%、1.9L)で酸性化し、濃縮して、DGJ・HClおよび塩化ナトリウムの粗混合物を固体として得た。DGJの純度は約70%(w/wアッセイ)であり、残りの30%は、ほとんど塩化ナトリウムであった。
【0048】
固体をテトラヒドロフラン(2×0.5L)およびエーテル(1×0.5L)で洗浄して、次に濃塩酸(3L)と合せた。DGJは溶液となって、NaClを未溶解のまま残した。得られた懸濁物を濾過して、塩化ナトリウムを除去した;固体塩化ナトリウムを塩酸の追加部分(2×0.3L)で洗浄した。すべての塩酸溶液を合せて、テトラヒドロフラン(60L)およびエーテル(11.3L)の撹拌溶液にゆっくりと注入した。撹拌を2時間継続する間に沈殿が生成した。固体粗DGJ−HClを濾過して、テトラヒドロフラン(0.5L)およびエーテル(2×0.5L)で洗浄した。NMRスペクトルを図2A〜2Bに示す。
【0049】
固体を乾燥させて、水(1.2mL/g)およびエタノール(10ml/水1ml)から再結晶化させた。本再結晶化ステップは反復されうる。本手順は白色結晶性DGJ・HClを与え、通常、約70〜75%の収率(320〜345g)で得られた。精製の生成物DGJ・HClは白色結晶性固体で、図1に示すようにHPLC>98%(w/wアッセイ)であった。図3A〜3Dおよび図4は、6個の糖炭素を示す、精製DGJのNMRスペクトルを示している。
【0050】
[実施例2]
1−デオキシマンノジリマイシンの精製
1−デオキシマンノジリマイシンは、Mariano(J.Org.Chem.,1998,841−859,pg.859を参照、参照として本明細書に組み入れられている)によって記載された方法によって作製される。しかしながら、Marianoによって記載されたようなイオン交換樹脂による精製の代わりに、1−デオキシマンノジリマシインを濃HClと混合する。次に懸濁物を濾過して塩を除去して、1−デオキシマンノジリマイシンの再結晶化で既知の溶媒(結晶化にはTHF、そして次にエタノール/水)を使用して、1−デオキシマンノジリマシインヒドロクロライドを沈殿結晶化させる。
【0051】
[実施例3]
(+)−1−デオキシノジリマイシンの精製
(+)−1−デオキシノジリマイシンは、Kibayashiら(J.Org.Chem.,1987,3337−3342,pg.3341を参照、参照として本明細書に組み入れられている)によって記載された方法によって作製される。(+)−1−デオキシノジリマイシンは、HCl/MeOH中でピペリジン化合物(#14)から合成される。報告された90%の収率は、反応が本質的に清浄であり、他の糖副生成物を含有しないことを示す。したがってKibayashiによって使用されたカラムクロマトグラフィーは、非糖関連不純物からの製品の単離のためである。したがってシリカゲルクロマトグラフィーによる精製の代わりに、(+)−1−デオキシノジリマイシンを濃HClと混合する。次に懸濁物を濾過して塩を除去し、ノジリマイシンの再結晶化で既知の溶媒を使用してノジリマイシンを結晶化させる。
【0052】
[実施例4]
ノジリマイシンの精製
ノジリマイシンは、Kibayashiら(J.Org.Chem.,1987,3337−3342,pg.3342を参照)によって記載された方法によって作製される。しかしながら、減圧下での混合物の蒸発後に、Kibayashiによって記載されたようなアンモニア−メタノール−クロロホルムを用いたシリカゲルクロマトグラフィーによる精製の代わりに、ノジリマイシンを濃HClと混合する。次に懸濁物を濾過してHClに溶解されない不純物を除去し、ノジリマイシンの再結晶化で既知の溶媒を使用してノジリマイシンを結晶化させる。
【0053】
本発明の多くの変形は、上述の説明に照らして当業者にそれ自体を示唆するであろう。そのようなすべての明らかな変形は、添付請求項の十分に意図された範囲内である。
【0054】
当業者は、本開示に照らして、本明細書で開示される具体的な実施形態で変更を実施して、本発明の精神および範囲から逸脱せずに同じまたは同様の結果が得られることを認識すべきである。
【0055】
上記の特許、出願、試験方法、刊行物は、その全体が参照として本明細書に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】結晶化後の精製DGJのHPLC。DGJは99.5%の純度を超える。
【図2A】DMSO中、0〜15ppmのDGJのH NMR(HCl抽出および結晶化後)。
【図2B】DMSO中、0〜5ppmのDGJのH NMR(HCl抽出および結晶化後)。
【図3A】DO中、0〜15ppmの精製DGJのH NMR(再結晶化後)OH部分がODと交換したことに注意する。
【図3B】DO中、0〜4ppmの精製DGJのH NMR(再結晶化後)。OH部分がODと交換したことに注意する。
【図4】45〜76ppmの、精製DGJの13C NMR(再結晶化後)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリまたはアルカリ土類金属含有化合物によって汚染された粗窒素含有糖の精製のための方法であって:
(a)式:
【化1】


(式中、Xは、NH、O、NHR、またはN(Rであり;
各Rは独立して、OH、NH、またはNHRまたはN(Rであり;
は、H、OHまたは−O−糖であり;
は、H、CH、CHOHまたは−CH−O−糖であり;
各Rは独立して、Hあるいは置換または非置換C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜C12シクロアルケニル、C〜C12アリール、C〜C12へテロアリール、C〜C12アリールアルキル、C〜C12ヘテロシクリル、C〜C12複素環式アルキル、C〜C12へテロアリールアルキルまたはC〜C12アシルであり;そして
nは、0、1、または2であり、
ただし、XがOである場合、少なくとも1個のRが、NHまたはNHRまたはN(Rでなければならないという条件である)の窒素含有糖またはそのHCl塩を、
濃塩酸と、または塩化水素ガスと飽和まで混合するステップと;
(b)アルカリまたはアルカリ土類化合物の塩化物であって、固体である塩化物を除去するステップと;
(c)塩酸と混和性である溶媒の添加により糖を結晶化させるステップと;
を備える方法。
【請求項2】
糖が水と混合され、次に塩化水素ガスによって飽和される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記糖が濃塩酸と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記糖がイミノ糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
がHであり、RがCHOHである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記糖がDGJである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記糖がポリイミノ糖である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記糖がアミノ糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記糖が2−アミノグルコースである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記糖が二糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記金属含有化合物がナトリウムメトキシドの添加から生成された、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記糖を結晶化させるステップが水/エタノール溶媒混合物を添加する工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アルカリまたはアルカリ土類金属の塩化物を濾過によって除去するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記精製が金属含有化合物の量を0.01重量%未満まで低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
精製された糖が少なくとも98%の純度である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
精製された糖が少なくとも99%の純度である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
精製されたヘキソース糖が少なくとも5kg産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
糖開始物質から前記糖を合成するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
アルカリまたはアルカリ土類金属含有化合物によって汚染された粗D−1−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)を精製する方法であって:
(a)DGJまたはそのHCl塩を濃塩酸と混合するステップと;
(b)前記アルカリまたはアルカリ土類金属化合物の塩化物を除去するステップと;
(c)DGJ・HClを結晶化させるステップと;
を備える方法。
【請求項20】
前記DGJを結晶化させるステップが水/エタノール溶媒混合物を添加する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属の前記塩化物を濾過によって除去するステップをさらに備える、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
精製された糖が少なくとも98%の純度である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
精製された糖が少なくとも99%の純度である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
糖開始物質から前記DGJを合成するステップをさらに備える、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記糖開始物質がガラクトースである、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−539834(P2009−539834A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514248(P2009−514248)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/022756
【国際公開番号】WO2008/045015
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】