説明

イムノプロテアソーム阻害のための化合物

本発明の局面の一つは、イムノプロテアソーム活性を構成的
プロテアソーム活性よりも優先的に阻害する阻害剤に関する。いくつかの実施態様では、本発明は、本発明の化合物を投与するステップを含む免疫関連疾患を処置する方法に関する。いくつかの実施態様では、本発明は、本発明の化合物を投与するステップを含む、癌の処置に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、言及をもってその内容全体をここに援用することとする、2010年3月1日出願の米国仮出願第61/309,366号に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
真核生物においては、タンパク質分解は、破壊の標的となったタンパク質が76アミノ酸のポリペプチドであるユビキチンに連結されるユビキチン経路を通じて主に媒介される。標的に決定されたユビキチン化タンパク質は次に、その三つの主要なタンパク質分解活性の作用を通じてタンパク質を切断してより短いペプチドにする、多重触媒性プロテアーゼである26Sプロテアソームの基質として働く。細胞内タンパク質ターンオーバーにおいて一般的な機能を有しながらも、プロテアソーム媒介性分解はまた、主要組織適合性複合体 (MHC) クラスI提示、アポトーシス及び細胞生存、抗原プロセッシング、NFκB 活性化、及び炎症誘発シグナルの伝達など、数多くのプロセスで鍵となる役割を果たす。
【0003】
20Sプロテアソームは700
kDa の筒状の多重触媒性プロテアーゼ複合体であり、4つに積層したヘプタマー環に並んだ、α-及びβ-タイプと分類される28個のサブユニットから成る。酵母及び他の真核生物においては、7種の異なるαサブユニットが外側の環を形成し、7種の異なるβサブユニットが内側の環を含む。αサブユニットは19S (PA700) 及び11S (PA28) 調節性複合体にとっての結合部位や、二つのβサブユニット環によって形成された内側のタンパク質分解チャンバーのための物理的障壁の役目をする。このように、in vivoでは、プロテアソームは 26S 粒子(「26S プロテアソーム」)として存在すると考えられる。In vivo実験では、プロテアソームの20S型の阻害を、26Sプロテアソームの阻害と容易に相関させることができることが示されている。
【0004】
粒子形成中にβサブユニットのアミノ末端側プロ配列が切断すると、触媒性求核として働くアミノ末端側スレオニン残基が露出する。プロテアソーム中で、触媒活性を担うサブユニットは、このように、アミノ末端側求核性残基を持ち、そしてこれらのサブユニットは、N-末端求核試薬 (Ntn) ヒドロラーゼのファミリー(このとき求核性N-末端残基は例えばCys、Ser、Thr、及び他の求核性部分である)に属する。このファミリーには、例えばペニシリンGアシラーゼ (PGA)、ペニシリンV アシラーゼ
(PVA)、グルタミン PRPP アミドトランスフェラーゼ(GAT)、及び細菌性グリコシルアスパラギナーゼが含まれる。広汎発現性のβサブユニットに加え、より高等な脊椎動物は更に、それらの通常の相対物であるそれぞれβ5、β1及びβ2に替わる三つのインターフェロン-γ誘導性βサブユニット(LMP7、LMP2 及びMECLl)を持つ。三つのIFN-γ誘導性サブユニットの全てが存在する場合、そのプロテアソームは「イムノプロテアソーム」と呼ばれる。このように、真核細胞は二つの形のプロテアソームを様々な比率で持つことができる。
【0005】
様々なペプチド基質を用いることで、三つの主要なタンパク質分解活性が真核生物20S プロテアソームについて定義されている:大型の疎水性残基の後ろで切断するキモトリプシン様活性 (CT-L);塩基性残基の後ろで切断するトリプシン様活性 (T-L);そして酸性残基の後ろで切断するペプチジルグルタミルペプチド加水分解活性(PGPH)。プロテアソームについては二つの更なる、特徴付けの進んでいない活性の起因ともされている:分枝鎖アミノ酸の後ろで切断するBrAAP活性:及び小型の中性アミノ酸の後ろで切断する SNAAP活性。両者の型のプロテアソームとも5つの酵素活性を全て持つが、型同士の間での活性の程度の違いが、特定の基質に基づいて解説されてきた。両方の型のプロテアソームにとって、その主要なプロテアソームタンパク質分解活性には、20Sコア内の異なる触媒部位が寄与しているようである。
【0006】
プロテアソーム活性を阻害するために用いられてきた低分子にはいくつかの例がある。しかし、これらの化合物は、概して、二つの型のプロテアソームを区別する特異性に欠ける。このように、細胞及び分子レベルでの各プロテアソーム型の役割を探求し、利用することは可能ではなかった。従って、単一の型のプロテアソームを優先的に阻害する低分子阻害剤の作出が、細胞及び分子レベルでの各プロテアソーム型の役割の探求を可能にするには必要である。
【0007】
発明の概要
本発明の局面の一つは、イムノプロテアソーム活性を構成的プロテアソーム活性よりも優先的に阻害する阻害剤に関する。いくつかの実施態様では、本発明は、本発明の化合物を投与するステップを含む、免疫関連疾患の処置に関する。いくつかの実施態様では、本発明は、本発明の化合物を投与するステップを含む、癌の処置に関する。
【0008】
本発明の局面の一つは、式(I)又は薬学的に許容可能なその塩の構造を有する化合物に関し、
【0009】
【化1】

【0010】
但し式中、各AはC=O、C=S、及びSO2
から個別に選択され;あるいは
Aは、Zに隣接する場合には選択的に共有結合であり;
Y は存在しないか、又は
N(R7)(R8)であり;
M は存在しないか、又はC1-12アルキルであり;
各Z はO、S、NH、及びN-C1-6アルキルから個別に選択され;あるいは
Z はAに隣接する場合には選択的に共有結合であり、
R1 は水素、-C1-6アルキル-Y、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、アリール、及びC1-6アラルキルから選択され;
R2 はアリール、ヘテロアリール、C1-6アラルキル及びC1-6ヘテロアラルキルから選択され;
R3 はアリール、ヘテロアリール、C1-6ヘテロアラルキル、C1-6アラルキル及びC1-6アルキルから選択され;
R4 及びR5 はそれぞれ個別に水素、C1-6アラルキル、及びC1-6アルキルから選択され;あるいは 、
R4 及びR5 は共にC1-12アルキルであることで環を形成し;
R6 は水素、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、N末端保護基、アリール、C1-6アラルキル、ヘテロアリール、C1-6ヘテロアラルキル、R9ZAZ-C1-8アルキル-、R12Z-C1-8アルキル-、(R9O)(R10O)P(=O)O-C1-8アルキル-ZAZ-C1-8アルキル-、9, ヘテロシクリルMZAZ-C1-8アルキル-、 (R9O)(R10O)P(=O)O-C1-8アルキル-、 (R11)2N-C1-12アルキル-、 (R11)3N+-C1-12アルキル-、 ヘテロシクリルM-、 カルボシクリルM-、 R12SO2C1-8アルキル-、及びR12SO2NHから選択され;
R7 は水素、 OH、及びC1-6アルキルから選択され;
R8 はN末端保護基であり、R7 及びR8 は個別に水素、 C1-6アルキル、及びC1-6アラルキルから選択され、好ましくは水素であり;
R9 及びR10
は個別に水素、金属陽イオン、 C1-6アルキル、 C1-6アルケニル、 C1-6アルキニル、 アリール、 ヘテロアリール、 C1-6アラルキル、及びC1-6ヘテロアラルキルから選択され、好ましくは水素、 金属陽イオン、及びC1-6アルキルから選択され、あるいはR11 及びR12 は共にC1-6アルキルであることで環を形成し;
各R11 は個別に水素およびC1-6アルキルから選択され、好ましくはC1-6アルキルであり;そして
R12 は個別に水素、 C1-6アルキル、 C1-6アルケニル、 C1-6アルキニル、 カルボシクリル、 ヘテロシクリル、
アリール、 ヘテロアリール、 C1-6アラルキル、及びC1-6ヘテロアラルキルから選択される。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は酵素阻害剤として有用な化合物に関する。これらの化合物は、概して、N末端に求核性基を有する酵素を阻害するために有用である。例えばスレオニン、セリン、又はシステインなど、求核剤をそれらの側鎖に持つN末端アミノ酸を有する酵素又は酵素サブユニットの活性を、ここで解説する酵素阻害剤により成功裏に阻害することができる。例えば保護基又は糖など、それらのN末端に非アミノ酸求核性基を有する酵素又は酵素サブユニットの活性もまた、ここで解説する酵素阻害剤により成功裏に阻害することができる。
【0012】
いずれの特定の作用理論に縛られる訳ではないが、Ntn型のこのようなN末端求核剤は、ここで解説する酵素阻害剤のボロン酸又はボロン酸エステル官能基と共に共有結合付加体を形成すると考えられる。
【0013】
立体化学に関すると、絶対的立体化学に関するカーン-インゴルド-プレローグの規則に則る。これらの規則は例えば、言及によりこの部分をここに援用することとする
Organic Chemistry, Fox and Whitesell; Jones and Bartlett Publishers, Boston, MA
(1994); Section 5-6, pp 177-178に記載されている。ペプチドは骨格単位から延びる側鎖を持つ反復骨格構造を有する場合がある。一般的には、各骨格単位は、それに関連する側鎖を有し、場合によってはであるが、該側鎖は水素原子である。他の実施態様では、各骨格単位のすべてが、関連する側鎖を有するわけではない。
【0014】
骨格単位から延びる側鎖には、天然の脂肪族又は芳香族アミノ酸側鎖、例えば水素(グリシン)、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、sec-ブチル(イソロイシン)、イソブチル(ロイシン)、フェニルメチル(フェニルアラニン)、及びアミノ酸プロリンを構成する側鎖を含めることができる。更に側鎖は、例えばエチル、n-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、及びアリール置換誘導体、例えば1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、(1-ナフチル)メチル、(2-ナフチル)メチル、1-(1-ナフチル)エチル、1-(2-ナフチル)エチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル、及び同様の化合物など、他の分枝又は非分枝状の脂肪族又は芳香族基であってよい。該アリール基は、分枝状又は非分枝状C1-6アルキル基、又は置換 アルキル基、アセチル等、あるいは更なるアリール基、又は置換アリール基、例えばベンゾイル等で更に置換されていてもよい。更にヘテロアリール基を側鎖置換基として用いることもできる。ヘテロアリール基には、窒素-、酸素-、及び硫黄-含有アリール基、例えばチエニル、ベンゾチエニル、ナフトチエニル、チアスレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、インドリル、プリニル、キノリル等がある。
【0015】
いくつかの実施態様では、極性又は帯電した残基をペプチドボロン酸に導入することができる。例えばヒドロキシ-含有(Thr、Tyr、Ser)又は硫黄-含有(Met、Cys)などの天然発生型のアミノ酸や、タウリン、カルニチン、シトルリン、シスチン、オルニチン、ノルロイシン等の非必須アミノ酸を導入することができる。例えば一つ以上のヒドロキシ、単鎖アルコキシ、スルフィド、チオ、カルボキシル、エステル、ホスホ、アミド又はアミノ基を持つC1-6アルキル鎖又はC6-12アリール基、あるいは、一つ以上のハロゲン原子で置換されたこのような置換基など、帯電した又は極性部分を持つ非天然発生型の側鎖置換基も、含めることができる。いくつかの好適な実施態様では、ペプチド部分の側鎖に少なくとも一つのアリール基が存在する。
【0016】
いくつかの実施態様では、骨格単位は、Rが側鎖であるアミド単位
[-NH-CHR-C(=O)-]である。このような指示は、当業者には認識されるであろうが、天然発生型のアミノ酸プロリン、又は他の非天然発生型の環状二級アミノ酸を除外するものではない。
【0017】
他の実施態様では、骨格単位はN-アルキル化アミド単位(例えばN-メチル等)、オレフィン族類似体(但し一つ以上のアミド結合がオレフィン結合で置換されたもの)、テトラゾール類似体(但しテトラゾール環が骨格上のcis構造を強制するもの)、又はこのような骨格結合の組合せである。更に他の実施態様では、アミノ酸α-炭素は、例えばアミノイソ酪酸などのα-アルキル置換で修飾される。いくつかの更なる実施態様では、例えば二重結合が側鎖のα及びβ原子間に存在するようなΔEもしくはΔZデヒドロ修飾、あるいは、例えばシクロプロピル基が側鎖のα及びβ原子間に存在するようなΔEもしくはΔZシクロプロピル修飾などにより、側鎖が局所的に修飾される。アミノ酸基を利用する更に更なる実施態様では、D型アミノ酸を用いることができる。更なる実施態様には、側鎖対骨格の環化、ジスルフィド結合形成、ラクタム形成、azo結合、及び、言及をもってここに援用することとする “Peptides and Mimics, Design of Conformationally Constrained” by
Hruby and Boteju, in “Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk
Reference”, ed. Robert A. Meyers, VCH Publishers (1995), pp. 658-664に論じられた他の修飾を含めることができる。
【0018】
いくつかの実施態様では、本発明は、式(I)又はその薬学的に許容可能な塩の構造を有する化合物に関し、
【0019】
【化2】

【0020】
但し式中、各A は個別にC=O、C=S、及びSO2
から選択され;あるいは
A はZに隣接する場合には選択的に共有結合であり;
Y は存在しないか、又はN(R7)(R8)であり;
Mは存在しないか、又はC1-12アルキルであり;
各Z は個別にO、S、NH、及びN-C1-6アルキルから選択され;あるいは
Z はAに隣接する場合には選択的に共有結合であり、
R1 は水素、-C1-6アルキル-Y、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、アリール、及びC1-6アラルキルから選択され;
R2 はアリール、ヘテロアリール、C1-6アラルキル及びC1-6ヘテロアラルキルから選択され;
R3 はアリール、ヘテロアリール、C1-6ヘテロアラルキル、C1-6アラルキル及びC1-6アルキルから選択され;
R4 及びR5 はそれぞれ個別に水素、 C1-6アラルキル、及びC1-6アルキルから選択され;あるいは
R4 及びR5 は共にC1-12アルキルであることで一個の環を形成し;
R6 は水素、 C1-6アルキル、 C1-6アルケニル、 C1-6アルキニル、 カルボシクリル、 ヘテロシクリル、N末端保護基、アリール、C1-6アラルキル、ヘテロアリール、C1-6ヘテロアラルキル、R9ZAZ-C1-8アルキル-、R12Z-C1-8アルキル-、(R9O)(R10O)P(=O)O-C1-8アルキル-ZAZ-C1-8アルキル-、9, ヘテロシクリルMZAZ-C1-8アルキル-、 (R9O)(R10O)P(=O)O-C1-8アルキル-、(R11)2N-C1-12アルキル-、(R11)3N+-C1-12アルキル-、ヘテロシクリルM-、カルボシクリルM-、R12SO2C1-8アルキル-、及びR12SO2NHから選択され;
R7 は水素、OH、及びC1-6アルキルから選択され;
R8 はN末端保護基でありR7 及び R8 は個別に水素、C1-6アルキル、及びC1-6アラルキルから選択され、好ましくは水素であり;
R9 及びR10
は個別に水素、金属陽イオン、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アラルキル、及びC1-6ヘテロアラルキルから選択され、好ましくは水素、 金属陽イオン、及びC1-6アルキルから選択され、あるいはR11
及び R12 は共にC1-6アルキルであることで一個の環を形成し;
各R11 は個別に水素
及びC1-6アルキルから選択され、好ましくはC1-6アルキルであり;そして
R12 は個別に水素、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アラルキル、及びC1-6ヘテロアラルキルから選択される。
【0021】
いくつかの実施態様では、R1 は-C1-6アルキル-Yである。いくつかのこのような実施態様では、R1 は、アミド、アミン、カルボン酸(又はその塩)、エステル(C1-6アルキルエステル、C1-5アルキルエステル、及びアリールエステルを含む)、チオール、又はチオエーテルから選択される一つ以上の置換基で置換される。いくつかの好適なこのような実施態様では、R1 は、カルボン酸及びエステルから選択される一つ以上の置換基で置換される。いくつかの実施態様では、Y は存在せず、そしてR1
はメチル、エチル、イソプロピル、カルボキシメチル、及びベンジルから選択され、好ましくはメチルである。
【0022】
いくつかの実施態様では、R2
はC1-6アラルキル及びC1-6ヘテロアラルキルから選択される。いくつかのこのような実施態様では、R2
はC1-6アルキル-フェニル、C1-6アルキル-インドリル、C1-6アルキル-チエニル, C1-6アルキル-チアゾリル、及びC1-6アルキル-イソチアゾリルから選択され、この場合のアルキル部分は6個、5個、4個、3個、2個、又は1個の炭素原子を含有していてもよく、又は好ましくは1個又は2個の炭素原子を有していてもよい。いくつかのこのような実施態様では、R2 はヒドロキシ、ハロゲン、アミド、アミン、カルボン酸(又はその塩)、エステル(C1-6アルキルエステル、C1-5アルキルエステル、及びアリールエステルを含む)、チオール、又はチオエーテルから選択される一つ以上の置換基で置換される。いくつかのこのような実施態様では、R2 は、アルキル、トリハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、又はシアノ、好ましくはヒドロキシ又はアルコキシ、例えばメトキシ、から選択される置換基で置換される。いくつかの実施態様では、R2 は、C1-6アルキル-フェニル及びC1-6アルキル-インドリルから選択される。いくつかの好適な実施態様では、R2
【0023】
【化3】

【0024】
R=H又はいずれかの適した保護基
【0025】
から選択され、但し式中、Dは、H、OMe、OBut、OH、CN、CF3 及びCH3から選択される。いくつかの実施態様では、D は、H、OMe、OH、CN、CF3 及び CH3から選択される。
【0026】
Dが6員環に結合した、いくつかの好適なこのような実施態様では、Dは、結合点に対して4位に結合しているが、好ましくは、環の4位がピリジン環の窒素で絞められ居るような実施態様は除外されるとよい。
【0027】
いくつかの実施態様では、R3
は、C1-6アラルキル及びC1-6アルキルから選択される。いくつかの実施態様では、アルキル部分は6個、5個、4個、3個、2個、又は1個の炭素原子を含有してもよいが、好ましくは1個又は2個の炭素原子を含有するとよい。いくつかのこのような実施態様では、R3 は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミド、アミン、カルボン酸(又はその塩)、エステル(C1-6アルキルエステル、C1-5アルキルエステル、及びアリールエステルを含む)、チオール、又はチオエーテルから選択される一つ以上の置換基で置換される。いくつかのこのような実施態様では、R3 は、アルキル、トリハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、又はシアノから選択される置換基で置換される。いくつかの実施態様では、R3はs C1-6アルキル-フェニルである。いくつかの好適なこのような実施態様では、R3 は、
【0028】
【化4】

【0029】
から選択され、但し式中、D は、H、OMe、OBut、OH、CN、CF3 又は CH3から選択される。いくつかの実施態様では、D は、H、OMe、OH、CN、CF3 又はCH3から選択される。
【0030】
いくつかの実施態様では、R4
及びR5 は個別に水素 及び及びC1-6アルキルから選択され、好ましくはR4 及びR5 は両者ともに水素であるとよい。いくつかの代替的な実施態様では、R4 及びR5 は共にC1-12アルキルであることで一個の環を形成する。いくつかの好適なこのような実施態様では、R4
及びR5 は二つの隣接する酸素原子及びホウ素と一緒になってピナコールボロネートエステルを形成する。
【0031】
いくつかの実施態様では、R6
は、カルボシクリル、アリール、及びヘテロシクリルM-から選択される。いくつかのこのような実施態様では、R6 はカルボシクリル又はアリールである。いくつかのこのような実施態様では、R6
は、例えばメチルインデン、特に3-メチルインデンなどのインデンである。いくつかの代替的な実施態様では、R6
はヘテロシクリルM-であり、但しこの場合のヘテロシクリルはモルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びピロリジノから選択され、好ましくはモルホリノである。いくつかの好適なこのような実施態様では、Mは C1-12アルキルである。
【0032】
いくつかの実施態様では、炭素を担持するR1、R2、又はR3 の立体化学構造は個別にD型又はL型である。いくつかの好適な実施態様では、炭素を担持するそれぞれR1、R2、及びR3 のうちの少なくとも一つの立体化学構造がD型である。いくつかの好適なこのような実施態様では、炭素を担持するR1 の立体化学構造がD型である。いくつかのこのような実施態様では、炭素を担持するR2 の立体化学構造がD型である。いくつかのこのような実施態様では、炭素を担持するR3 の立体化学構造がD型である。いくつかの実施態様では、炭素を担持するR1、R2、及びR3 のうちの少なくとも二つの立体化学構造がそれぞれD型である。更に別の好適な実施態様では、炭素を担持するR1、R2、及びR3 の三つ全ての立体化学構造がそれぞれD型である。
【0033】
本発明の局面の一つは、イムノプロテアソーム活性を構成的プロテアソーム活性よりも優先的に阻害する阻害剤に関する。いくつかの実施態様では、構成的プロテアソーム活性の検定における式Iの化合物の、イムノプロテアソーム活性の検定における同じ化合物のEC50に比較したときのEC50比は1より大きい。いくつかのこのような実施態様では、EC50 は2、3、4、又は更には5よりも大きい。構成的プロテアソーム活性及びイムノプロテアソーム活性の判定に適した検定法はここに記載されている(実施例1を参照されたい)。
【0034】
用語「Cx-yアルキル」とは、例えばトリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチル等のハロアルキル基を含め、鎖中にx個乃至y個の炭素を含有する直鎖アルキル及び分枝状アルキル基を含む、置換もしくは非置換飽和炭化水素基を言う。C0アルキルとは、基が末端位置にある場合には水素を、内側にある場合には一個の結合を指す。用語「C2-yアルケニル」及び「C2-yアルキニル」とは、上述したアルキルに長さ及び可能な置換が同じであるが、それぞれ少なくとも一つの二重又は三重結合を含有する、置換もしくは非置換不飽和脂肪族基を言う。
【0035】
用語「アルコキシ」とは、酸素をそれに結合させて有するアルキル基を言う。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシ等がある。「エーテル」とは、酸素により共有結合で連結された二つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにする、アルキルの置換基はアルコキシであるか、又はアルコキシに似ている。
【0036】
用語「C1-6アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されることで一個のエーテルを形成しているC1-6アルキル基を言う。
【0037】
用語「C1-6アラルキル」とは、ここで用いられる場合、アリール基で置換されたC1-6アルキル基を言う。
【0038】
用語「アミン」及び「アミノ」は当業で公知であり、非置換及び置換アミン並びにその塩の両者を言い、例えば一般式:
【0039】
【化5】

【0040】
で表すことのできる部分であり、但し式中、R9、R10 及びR10’
はそれぞれ個別に水素、アルキル、アルケニル、- (CH2)m-R8
を表し、あるいはR9 及びR10
は、これらが結合した先のN原子と一緒に捉えると、環構造内に4乃至8個の原子を有する複素環を完成し;R8 はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル又はポリシクリルを表し; そしてm はゼロであるか、又は1乃至8の整数である。好適な実施態様では、R9 又は R10
の一方のみがカルボニルであってよく、例えばR9、R10、及び窒素が一緒になってイミドを形成していないなどである。更により好適な実施態様では、R9 及びR10
(及び選択的にR10’)はそれぞれ個別に水素、アルキル、アルケニル、又は -(CH2)m-R8を表す。いくつかの実施態様では、アミノ基は塩基性であり、つまりそれがpKa > 7.00を有することを意味する。これらの官能基のプロトン化型は7.00を超えるpKas
を有する。
【0041】
用語「アミド」及び「アミド」は当業でアミノ置換カルボニルとして公知であり、一般式:
【0042】
【化6】

【0043】
で表すことのできる部分が含まれ、但し式中、R9、R10 は上に定義した通りである。アミドの好適な実施態様は、不安定な可能性のあるイミドを含まないであろう。
【0044】
ここで用いられる用語「アリール」には、環の各原子が炭素であるような5-、6-、及び7-員環の置換もしくは非置換単環芳香族基が含まれる。用語「アリール」には更に、二つ以上の炭素が、隣り合った二つの環に共通であり、環のうちの少なくとも一つが芳香族であり、例えばその他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってもよいような、二つ以上の環を有する多環式の系が含まれる。アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリン等がある。
【0045】
用語「炭素環」及び「カルボシクリル」は、ここで用いられる場合、環の各原子が炭素であるような非芳香族の置換もしくは非置換環を言う。用語「炭素環」及び「カルボシクリル」には、更に、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であり、環のうちの少なくとも一つが炭素環であり、例えばその他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってもよいような、二つ以上の環を有する多環式の系が含まれる。
【0046】
用語「カルボニル」は当業で公知であり、一般式:
【0047】
【化7】

【0048】
で表すことのできる部分などが含まれ、但し式中、X は結合であるか、あるいは酸素又は硫黄を表し、そしてR11 は水素、アルキル、アルケニル, -(CH2)m-R8
又は薬学的に許容可能な塩を表し、R11’ は水素、アルキル、アルケニル 又は -(CH2)m-R8を表す(この場合m 及びR8
は上に定義した通りである)。 X が酸素であり、そしてR11
又はR11’ が 水素でない場合、該式は「エステル」を表す。X が酸素であり、そしてR11
が水素である場合、該式は「カルボン酸」を表す。
【0049】
ここで用いられる場合の「酵素」は、化学反応を触媒的態様で行うことのできる、いずれかの部分的又は全体的タンパク質性分子であってよい。このような酵素は天然酵素、融合酵素、プロ酵素、アポ酵素、変性酵素、ファルネシル化酵素、ユビキチン化酵素、脂肪酸化酵素、ゲランゲラニル化酵素、GPI-結合酵素、脂質-結合酵素、プレニル化酵素、天然発生型又は人工合成型変異酵素、側鎖又は骨格に修飾を持つ酵素、リーダー配列を有する酵素、並びに、例えばプロテオグリカン、プロテオリポソームなど、非タンパク質性物質と複合体形成した酵素、であってよい。天然の発現、促進発現、クローニング、多様な溶液ベース及び固体ベースのペプチド合成、並びに当業者に公知の同様な方法を含め、いずれの手段によっても酵素を作製することもできる。
【0050】
用語「C1-6ヘテロアラルキル」は、ここで用いられる場合、ヘテロアリール基で置換された C1-6アルキル基を言う。
【0051】
用語「ヘテロアリール」には、環構造が1個乃至4個のヘテロ原子を含む置換もしくは非置換芳香族5-乃至7-員環構造、より好ましくは 5- 乃至6-員環を言う。用語「ヘテロアリール」には更に、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であり、環のうちの少なくとも一つがヘテロ芳香族であり、例えばその他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってもよいような、二つ以上の環を有する多環式の系が含まれる。ヘテロアリール基には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン等がある。
【0052】
ここで用いられる場合の用語「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外のいずれかの元素の原子を意味する。好適なヘテロ原子は窒素、酸素、リン、及び硫黄である。
【0053】
用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式基」とは、その間構造が1個乃至4個のヘテロ原子を含む、置換もしくは非置換非芳香族3-乃至 10-員環の環構造、より好ましくは3-乃至7-員環を言う。用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式基」には更に、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であり、環のうちの少なくとも一つが複素環式であり、例えばその他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってもよいような、二つ以上の環を有する多環式の系が含まれる。ヘテロシクリル基には、例えばテトラヒドロピラン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム等がある。
【0054】
用語「C1-6ヒドロキシアルキル」とは、ヒドロキシ基で置換されたC1-6アルキル基を言う。
【0055】
ここで用いられる場合の用語「阻害剤」は、酵素の活性を遮断する又は減少させる化合物を記述することを意図している。阻害剤は、競合的、不競合的、又は非競合的阻害によって作用することができる。阻害剤は、可逆的又は非可逆的に結合することができるため、この用語は、ある酵素の自殺基質である化合物も包含する。阻害剤を、酵素の活性部位上の、又は、活性部位近傍の、箇所以上の部位で修飾することができ、あるいはそれに、酵素上の他の箇所でコンホメーション上の変化を起こさせることができる。
【0056】
ここで用いられる場合の用語「ペプチド」には、以下に詳述するように、標準的なα-置換基を持つ標準的なアミド結合だけでなく、通常用いられるペプチドミメティック、他の修飾された結合、非天然発生型の側鎖、及び側鎖修飾が含まれる。
【0057】
用語「ポリシクリル」又は「多環式」とは、例えば環同士が「縮合環」であるなど、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通である二つ以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリル)を言う。多環の環のそれぞれは置換されていても、又は非置換であってもよい。
【0058】
用語「防止する」は当業で公知であり、例えば局所的再発(例えば疼痛)、癌などの疾患、心不全などの複合症候群、又はいずれか他の医学的状態など、ある状態に関して用いられる場合は、当業で公知であり、その中には、当該組成物を受けていない対象に比較して、対照における医学的状態の症状の頻度を減少させる、又は発症を遅らせる組成物の投与が含まれる。このように、癌の防止には、例えば統計上及び/又は臨床上有意な量、例えば未処置のコントロール集団に比較して、予防的処置を受けた患者集団において検出可能な癌の成長の数を減少させること、及び/又は、未処置のコントロール集団に対して、処置集団における検出可能な癌の成長の出現を遅らせること、が含まれる。
感染の防止には、例えば、未処置のコントロール集団に比較して処置集団において感染の診断数を減少させること、及び/又は、未処置のコントロール集団に比較して処置集団において感染の症状発症を遅らせること、が含まれる。疼痛の防止には、例えば、未処置のコントロール集団に比較して処置集団において対象の経験する疼痛感の程度を低下させること又は代替的には遅らせることが含まれる。
【0059】
用語「プロドラッグ」は、治療上有効な物質に生理条件下で添加される化合物を包含する。プロドラッグを作製する通常の方法は、生理条件下で加水分解して所望の分子を露出させる選択された部分を含めることである。他の実施態様では、プロドラッグは、ホスト動物の酵素活性によって転化される。
【0060】
用語「予防的又は治療的」処置は当業で公知であり、その中には、対象組成物の一つ以上のホストへの投与が含まれる。望ましくない状態(例えばホスト動物の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床上の発現前にそれが投与されるのであれば、その処置は予防的であり、(即ち、それは望ましくない状態をホストが発症することから防御するものであり)、他方、望ましくない状態の発現後にそれが投与されるのであれば、その処置は治療的である、(即ちそれは、既存の望ましくない状態又はその副作用を減じる、改善する、又は安定化させることを意図している)。
【0061】
用語「置換」とは、骨格の一つ以上の炭素に付いた水素を置換する置換基を有する部分を言う。「置換」又は「で置換される」には、このような置換が、置換原子及び置換基の許容される電荷に従ったものであること、そしてこの置換の結果、例えば自発的には再編成、環化、除去等の変換を行わない安定な化合物が出来上がること、が暗黙の条件として含まれることは理解されよう。ここで用いられる場合の用語「置換」には、有機化合物のあらゆる許容可能な置換基が含まれるものと考えられる。広い意味において、許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が含まれる。許容可能な置換基は、適した有機化合物にとっては一つ以上であっても、そして同じもしくは異なっていてもよい。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、及び/又は、ヘテロ原子の電荷を満たす、ここで解説された有機化合物のいずれかの許容可能な置換基、を有していてもよい。置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含めることができる。当業者であれば、炭化水素鎖上で置換された部分は、適当であればそれら自体、置換され得ることを理解されよう。
【0062】
当該処置法に関して、ある化合物の「治療上有効量」とは、所望の投薬計画の一部として(哺乳動物、好ましくはヒト)投与されたときに、例えばいずれかの医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスク比などで、処置しようとする障害又は状態あるいは美容目的にとって臨床上許容可能な標準に従って、疾患状態の症状を軽減する、状態を改善する、又は発症を遅らせる、一製剤中の化合物量を言う。
【0063】
用語「チオエーテル」とは、硫黄部分をそれに結合させて有する、上に定義した通りのアルキル基を言う。好適な実施態様では、「チオエーテル」は-S-アルキルで表される。代表的なチオエーテル基には、メチルチオ、エチルチオ等がある。ここで用いられる場合の用語「処置する」又は「処置」には、対象の状態を向上させる又は安定させる態様で、ある状態の症状、臨床上の兆候、及び基礎病理を逆行させる、減少させる、又は停止させることが含まれる。
【0064】
酵素阻害剤の使用
プロテアソーム阻害の生物学的結果は多数である。プロテアソーム阻害は、限定はしないが、増殖性疾患、神経毒性/変性疾患、虚血状態、炎症、免疫関連疾患、HIV、癌、臓器移植拒絶、敗血性ショック、ウィルス及び寄生生物感染、アシドーシスに関連する状態、黄斑部変性、肺の状態、筋肉疲労疾患、線維性疾患、骨及び毛髪の成長疾患を含め、多数の疾患の防止及び/処置として示唆されてきた。
【0065】
プロテアソーム阻害剤を用いて、筋肉疲労など、プロテアソームのタンパク質分解により直接媒介される、あるいは、NF-κBなど、プロテアソームによりプロセッシングされるタンパク質を通じて間接的に媒介される、状態を処置することができる。プロテアソームは、細胞調節(例えば細胞周期、遺伝子転写、及び代謝経路)、細胞間コミュニケーション、及び免疫応答(例えば抗原提示)に関与するタンパク質(例えば酵素)の急速な除去及び翻訳後プロセッシングに参与する。
【0066】
細胞レベルでは、ポリユビキチン化タンパク質の蓄積、細胞形態の変化、及びアポトーシスが、多様なプロテアソーム阻害剤による細胞処置に対して報告されている。それでも尚、市販のプロテアソーム阻害剤は、構成的及びイムノ型のプロテアソームの両者を阻害することに注目すべきである。再発性多発性骨髄腫患者を処置する唯一のFDA認可済みプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブですら、二つの型を識別しない (Altun et al., Cancer Res 65:7896, 2005)。このように、治療用プロテアソーム阻害について公知であることは、両者の型のプロテアソームを阻害する分子を用いた研究に基づいている。従って、本発明に化合物は、両者の型のプロテアソームを阻害する分子に関連する副作用の重篤度を軽減するために有用であろう。
【0067】
イムノプロテアソーム発現は主に、例えば白血球(白血球)、骨髄、及び胸腺、脾臓及びリンパ節など、リンパ系を構成する細胞や臓器で起きる。いくつかの臓器は構成的プロテアソーム(例えば心臓)を優先的に発現するが、副腎、肝臓、及び腸管などの他の臓器は両者の型を発現するようである。
【0068】
その白血球及びリンパ系組織が主要な役割を果たす免疫系は臓器を外部の生物学的影響から防御することを担う。適正に機能しているときには、それは身体を細菌及びウィルス感染から防御する。免疫系はまた、腫瘍発生性形質転換中の自己由来細胞についてもふるい分けする。細胞内タンパク質分解の結果、Tリンパ球に提示される小型ペプチドが生じて、MHCクラスI媒介型免疫応答が誘導される。プロテアソームはこれらの前駆ペプチドの主要な提供体であるが、抗原性ペプチド間の違いが、各プロテアソーム型の量の異なる細胞間で観察されてきた (Cascio et al., EMBO J 20:2357-2366, 2001)。いくつかの実施態様では、本発明は、ここで解説した化合物に細胞を暴露するステップを含む、細胞内の抗原提示を阻害する方法に関する。いくつかの実施態様では、本発明は、プロテアソームが生じる抗原性ペプチド又は多重触媒活性を持つ他のNtnのレパートリーを変化させる方法に関する。例えば、イムノプロテアソームプロテアソームの活性を選択的に阻害すると、いずれの酵素阻害もない場合に生じ、提示される場合とは異なる組合せの抗原性ペプチドが、残りの構成的プロテアソームにより生じ、細胞表面上でMHC分子に提示されると考えられる。
【0069】
いくつかの障害及び疾患状態が、ここで免疫関連状態と言及される異常な免疫系昨日と関連付けられてきた。おそらく最も普通の免疫関連状態は、アレルギー、喘息及びアトピー性皮膚炎様湿疹などのアレルギー性障害である。これらは、環境中の抗原への暴露に対して免疫系が過剰反応する場合に起きる。このように、更なる実施態様は、プロテアソーム阻害剤化合物を有効量、ここに記載する態様で対象に投与するステップを含む、対象の免疫系を抑制する方法である。
【0070】
免疫不全障害は、免疫系の一部分が適正に働いていないか、又は存在しない場合に起きる。それらはBリンパ球、Tリンパ球、又は貪食細胞に影響することができ、遺伝性(例えばIgA不全、重症複合型免疫不全 (SCID)、胸腺異形成症および慢性肉芽腫性)又は後天性(例えば後天性免疫不全症候群(AIDS)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV) 及び訳武具誘発性免疫不全)のいずれかである。本発明の選択的プロテアソーム阻害剤を用いた投薬戦略を用いて、免疫不全障害などの免疫関連状態を処置してもよい。
【0071】
自己免疫障害においては、免疫系は身体の健康な臓器及び組織を、あたかもそれらが外界からの侵入者であるかのように不適切に攻撃する。自己免疫疾患の一例は、リンパ球の外分泌腺への浸潤及び局所性蓄積を特徴とするシェーグレン症候群である。プロテアソームの発現レベルを調べた研究では、SS患者の唾液腺でのみ、ベータ5i(LMP7)の著しい上方調節が判明した (Egerer et al., Arthritis Rheum 54:1501-8,
2006)。このような免疫関連状態の他の例には、狼瘡(例えば狼瘡腎炎及び全身性エリテマトーデス)、リウマチ様関節炎(例えば若年性リウマチ様関節炎及び乾癬性リウマチ様関節炎)、強皮症、強直性脊椎炎、皮膚筋炎、乾癬、多発性硬化症(再発性弛張性及び慢性進行性型の両者を含む)及び炎症性腸疾患(例えば潰瘍性腸炎及びクローン病)がある。組織/臓器移植片拒絶は、免疫系が、ホストの身体に導入されつつある細胞を誤って攻撃するときに起きる。移植片対宿主疾患 (GVHD)は異種移植が原因であり、ドナー組織由来のT細胞が攻撃的になり、ホストの組織を攻撃するときに生じる。自己免疫疾患、移植片拒絶及びGVHDという三つの状況の全てにおいて、本発明の化合物で対象を処置することで免疫系を調節すると、有益であろう。
【0072】
炎症は、感染又は刺激に対する免疫系の最初の応答である。免疫の細胞成分はイムノプロテアソームを発現する白血球の血管から炎症組織への遊走を含む。これらの細胞は刺激物、細菌、寄生生物又は細胞片を取り除く重要な役割を受け持つ。プロテアソーム阻害剤が抗炎症活性を有することは既に知られている (Meng et al., PNAS 96:10403-10408, 1999)。マクロファージの支配的な存在を特徴とする慢性炎症の場合、当初は防御的作用物質として役立った細胞は、毒素や、TNF-αを含むサイトカインを放出し始め、身体にとって今度は有害となり、組織損傷及び消失に至らせる。いくつかの実施態様では、本発明は、ここに記載した化合物を投与するステップを含む、炎症及び炎症性疾患を処置する方法に関する。炎症性疾患には、急性(例えば気管支炎、結膜炎、膵炎)及び慢性状態(例えば慢性胆嚢炎、気管支拡張症、大動脈弁狭窄症、再狭窄、乾癬及び関節炎)や、例えば線維症、感染及び虚血症などの炎症に伴う状態がある。いくつかの実施態様では、本発明は、例えば自己免疫性心筋炎及び自己免疫性甲状腺炎など、臓器が炎症を起こしている状態を処置する方法に関する。
【0073】
炎症プロセスを原因とした損傷を含め、組織損傷後、再生及び修復の進行が始まる。再生ステップ中、失われた組織は、正常な構造を再構築する、同じ種類の細胞の増殖で置換される。しかしながら、組織構造の不適切な再生が重篤な結果をもたらすこともある。慢性炎症性肝疾患では場合によっては、再生後の組織が異常な結節構造を形成し、肝硬変及び門脈高血圧につながることがある。この修復プロセスの結果、顆粒組織から生じる線維性瘢痕により、失われた組織が置換される。線維症は、線維芽細胞の過剰増殖性成長が原因で起きる瘢痕組織の過剰及び永続的な形成であり、TGF-βシグナル伝達経路の活性化に関連する。線維症は、細胞外マトリックスの広汎な沈着を含み、実質的にあらゆる組織中に、又は複数の異なる組織にわたって、起き得る。正常では、TGF-β刺激時に標的遺伝子の転写を活性化する細胞内シグナル伝達タンパク質(Smad)のレベルは、プロテアソーム活性によって調節される(Xu et al., 2000)。しかしながら、TGF-βシグナル伝達成分の分解加速が、癌及び他の過剰増殖性状態で観察されている。このように、いくつかの実施態様では、本発明は、ここに記載した化合物を投与するステップを含む、糖尿病(例えば1型、2型及び代謝症候群)、糖尿病性網膜症、黄斑変性、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、IgA腎症、肝硬変、胆管閉鎖、うっ血性心不全、強皮症、放射線誘発性線維症、及び肺線維症(特発性肺線維症、コラーゲン血管疾患、サルコイドーシス、間質性肺疾患及び外因性肺障害を含む)から選択される過剰増殖性状態を処置する方法に関する。火傷の被害者の処置は、しばしば線維症が妨げとなるため、いくつかの実施態様では、本発明は、火傷を処置するための、ここに記載する通りの化合物の局所又は全身投与に関する。術後の創傷閉止には、しばしば線維形成の阻害により防止できると思われる、醜い瘢痕が伴う。従って、いくつかの実施態様では、本発明は、ここに記載した通りの化合物を投与するステップを含む、瘢痕を防止する又は減少させる方法に関する。
【0074】
細菌、寄生生物又はウィルスの感染の結果、すべて、炎症プロセスが開始する。結果的な炎症が生物全体に勝てば、全身性炎症応答症候群(SIRS)が起きる。敗血症という用語はこれが感染症を原因とする場合に適用される。TNFαなどのリポ多糖(LPS)誘導性サイトカインが過剰産生することが、敗血症性ショックに伴うプロセスにとって中心だと考えられる。驚くことではないが、LPSはまた、イムノプロテアソームサブユニットLMP2 及びLMP7を含むMHC-I経路のすべての成分で増加を誘導する (MacAry et al., PNAS 98:3982-3987, 2001)。更に、LPSによる細胞の活性化の最初のステップは、特異的膜受容体へのLPSの結合だと広く受け容れられている。20S プロテアソーム複合体のα-及びβ-サブユニットはLPS結合タンパク質として同定されたことから、LPS誘導性シグナル伝達は、敗血症の処置又は防止において重要な治療上のターゲットである可能性が示唆された (Qureshi, N. et al., J. Immun. (2003) 171: 1515-1525)。従って、いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示した通りの化合物を投与するステップを含む、敗血症ショックを防止又は処置することに関する。
【0075】
別の実施態様では、開示された組成物は、原虫寄生体が引き起こす感染など、寄生生物感染の処置に有用である。これらの寄生生物のプロテアソームは、細胞分化及び複製活性に主に関与すると考えられている (Paugam et al., Trends Parasitol. 2003, 19(2): 55-59)。更に、体内寄生性アメーバは、プロテアソーム阻害剤に暴露したときに被嚢能を失うことが示されている (Gonzales, et al., Arch. Med. Res. 1997, 28, Spec No: 139-140)。いくつかのこのような実施態様では、ここに開示した通りの化合物は、プラスモジウム種(マラリアを引き起こすP.ファルシパルム、P.ヴィヴァックス、P.マラリア、及びP.オヴァールを含む)、トリパノソーマ種(シャーガス病を引き起こすT.クルーチ、及びアフリカ睡眠病を引き起こすT.ブルセイを含む)、リーシュマニア種(L.アマゾネシス、L.ドノヴァンニ、L.インファンツム、L.メキシカーナ等を含む)、ニューモシスティス-カリニー(AIDS及び他の免疫抑制患者において肺炎を引き起こすことが公知の原生生物)、トキソプラズマ-ゴンジ、エントアメーバ-ヒストリティカ、エントアメーバ-インヴァデンス、及びジアルジア-ランブリアから選択される原虫寄生体が引き起こす、ヒトにおける寄生生物感染の処置に有用である。いくつかの実施態様では、開示された組成物は、プラスモディウム-ヘルマニ、クリプトスポリジウム種、エキノコッカス-グラニュローサス、エイメリア-テネラ、サルコシスティス-ニューロナ、及びNeurospora crassaから選択される原虫寄生体により引き起こされる、動物及び家畜における寄生生物感染の処置に有用である。寄生生物疾患の処置においてプロテアソーム阻害剤として有用な他の化合物は、引用をもってその全文をここに援用することとするWO 98/10779に記載されている。
【0076】
いくつかの実施態様では、ここで開示する化合物は、白血球での回収なしに寄生生物のプロテアソーム活性を阻害するであろう。いくつかのこのような実施態様では、血球半減期の長さにより、寄生生物への反復的暴露に対する療法で、長期の防御がもたらされるであろう。いくつかの実施態様では、ここに記載した通りの化合物は、将来の感染に対する化学的予防法の長期の防御がもたらすであろう。
【0077】
ウィルス感染は数多くの疾患の病理に寄与する。進行中の心筋炎及び拡張心筋症などの心臓の状態が、コックサッキーウィルスB3に関連付けられてきた。感染マウス心の相対的全ゲノム・マイクロアレイ分析で、3つのイムノプロテアソーム・サブユニットのすべてが、慢性心筋炎を発症したマウス心臓で均一に上方調節されていた (Szalay et al., Am J Pathol 168:1542-52, 2006)。いくつかのウィルスは、ウィルスがエンドソームからサイトゾル内へと放出されるウィルス進入ステップで、ユビキチン-プロテアソーム系を利用する。マウス肝炎ウィルス (MHV) はコロナウィルス・ファミリーに属するが、このファミリーは重症急性呼吸症候群(SARS) コロンウィルス(原語:coronvirus)も含む。 Yu 及び Lai (J Virol 79:644-648, 2005) は、MHV感染細胞をプロテアソーム阻害剤で処置するとウィルス複製が減少したことを実証し、未処置細胞のそれに比較して減少したウィルス力価を相関させた。ヒトB型肝炎ウィルス (HBV)はヘパドナウィリディー-ウィルス・ファミリーのメンバーであり、増殖するためには、ウィルスにコードされたエンベロープタンパク質を必要とする。プロテアソーム分解経路を阻害すると、分泌されるエンベロープタンパク質の量に著しい減少が起きる (Simsek et al., J Virol 79:12914-12920, 2005)。HBVに加え、他の肝炎ウィルス(A、C、D及びE)もまた、ユビキチン-プロテアソーム分解経路を分泌、形態発生及び病理発生に用いるようである。従って、いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示した通りの化合物を投与するステップを含む、ウィルス感染を処置することに関する。
【0078】
細菌リステリアの単核細胞遺伝子は、軽症(吐き気、嘔吐及び下痢)から重症(敗血症、髄膜炎、脳炎)まで幅広い症状発現であるリステリア症として知られる状態を引き起こす。プロテアソーム・サブユニット組成物中の変化を定量的に解析したところ、マウスがリンパ球性脈絡髄膜炎ウィルス又はリステリア単核細胞遺伝子に感染すると、7日以内に肝臓で構成的プロテアソームがイムノプロテアソームにほぼ完全に置換されることが判明した (Khan et al., J Immunol 167:6859-6868, 2001)。原核生物は真核生物の20S プロテアソーム粒子に対する均等物を有する。原核生物の20S粒子のサブユニット組成は真核生物のそれよりも簡単であるが、それは同様な態様でペプチド結合を加水分解する能力を有する。例えば、ペプチド結合に対する求核性の攻撃はβ-サブユニットのN末端上のスレオニン残基を通じて起きる。従って、いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示する通りの化合物を投与するステップを含む、原核生物感染を処置する方法に関する。原核生物感染には、マイコバクテリア(例えば結核、らい病又はブルーリ潰瘍)又は古細菌のいずれかによる引き起こされる疾患も含まれよう。
【0079】
いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示された通りの化合物に細胞を接触させるステップを含む感染(例えば細菌、寄生生物又はウィルス)を処置する方法に関する。いくつかの代替的な実施態様では、本発明は、ここに開示された通りの化合物を投与するステップを含む、感染を処置する方法に関する。
【0080】
虚血症及び再潅流損傷の結果、身体組織に到達する酸素に欠乏がある状態である低酸素症が起きる。この状態はIκ-Bαの分解増加を引き起こし、ひいてはNF-κB の活性化に至らしめる(Koong et al., 1994)。興味深いことに、イムノプロテアソーム発現を亢進することができると同定された因子である TNF-α及びリポ多糖も、NF-κB活性化を刺激する。低酸素症を引き起こす損傷の重篤度を、プロテアソーム阻害剤の投与で減らすことができることが実証されている (Gao et al., 2000; Bao et al., 2001; Pye et al., 2003)。従って、いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示した通りの化合物を投与するステップを含む、虚血状態又は再潅流損傷を処置する方法に関する。このような状態又は損傷の例には、限定はしないが、急性冠状動脈症候群(脆弱性プラーク)、動脈閉塞性疾患(心臓、脳、末梢動脈及び血管の閉塞)、アテローム性硬化症(冠硬化症、冠状動脈硬化症)、梗塞、心不全、膵炎、心筋肥大症、狭窄、及び再狭窄がある。
【0081】
悪液質は、ユビキチン-プロテアソーム経路を原因とするタンパク質分解亢進に伴う、骨格筋の疲労を特徴とする症候群である。プロテアソームを阻害するとタンパク質分解が減少することで、筋肉タンパク質消失と、腎臓又は肝臓に対する窒素負荷の両方が減少する (Tawa et al., JCI 100:197-203, 1997)。悪液質においては、その両者がイムノプロテアソーム・サブユニットの発現を刺激する炎症誘発性サイトカインであるTNF-α及びIFN-γ の発現が上昇していることが報告されている (Acharyya et al., JCI 114:370-378, 2004)。実際、筋委縮の大半の種類がタンパク質分解速度の上昇を呈する (Lecker et al.,
FASEB J 18:39-51, 2004)。筋肉疲労は、癌、敗血症、腎不全、AIDS、飢餓、除神経、委縮、アシドーシス、糖尿病、廃用委縮及びうっ血性心不全を含め、生命を脅かす複数の疾患で症状発現する。いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示した通りの化合物を投与するステップを含む、悪液質又は筋肉疲労性疾患の処置に関する。本発明の化合物は、例えば癌、慢性感染性疾患、発熱、筋肉廃用(委縮)及び除神経、神経損傷、飢餓、アシドーシスに関連する腎不全、及び肝不全などの状態を処置するために有用であろう。例えばゴールドバーグ氏の米国特許第5,340,736号を参照されたい。
【0082】
プロテアソームによる特定のタンパク質の分解はシグナル伝達機序を行わせ、これがひいては、遺伝子転写、細胞周期及び代謝経路を行わせる。上述したように、プロテアソーム阻害剤は、in vitro及びin vivoでユビキチン化NF-γBの分解及びプロセッシングの両者を遮断する。プロテアソーム阻害剤はまた、IκB-A分解及びNF-κB活性化を遮断する(Palombella
et al., Cell (1994) 78:773-785;
and Traenckner et al., EMBO J.
(1994) 13:5433-5441)。いくつかの実施態様では、本発明は、ここに記載した通りの化合物に細胞を接触させるステップを含む、IκB-α分解を阻害する方法に関する。
【0083】
いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示された通りの化合物に細胞(in vitro又はin vivo)を暴露するステップを含む、サイクリン依存的真核細胞周期に影響を与える方法に関する。サイクリンは細胞周期制御に関与するタンパク質である。プロテアソームはサイクリンの分解に参与する。サイクリンの例には有糸分裂サイクリン、G1サイクリン、及びサイクリンBがある。サイクリンの分解により、細胞は一つの細胞周期(例えば有糸分裂)を出て別の細胞周期(例えば分裂)に入ることができる。全てのサイクリンは、p34cdc2 タンパク質キナーゼ又は関連キナーゼに関連していると考えられている。タンパク質分解ターゲティング・シグナルはアミノ酸42- 50 (破壊ボックス)に局在している。サイクリンがユビキチン・リガーゼに対して弱い形に転化されること、又は、サイクリン特異的リガーゼが有糸分裂中に活性化すること、の証拠がある (Ciechanover, A., Cell, (1994) 79:13-21)。プロテアソームを阻害するとサイクリン分解が阻害されるため、例えばサイクリン依存的癌などで細胞増殖が阻害される (Kumatori et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87:7071-7075)。いくつかの実施態様では、本発明は、ここで開示した通りの化合物を投与するステップを含む、対象において増殖性疾患(例えば癌、感染、又は再狭窄)を処置する方法に関する。いくつかの実施態様では、本発明は更に、ここに記載した通りの化合物を投与するステップを含む、サイクリン関連炎症を処置する方法にも関する。
【0084】
成熟中の網状赤血球及び成長中の線維芽細胞、又はインシュリンもしくは血清を枯渇させた細胞においては、タンパク質分解の速度はほぼ2倍になっており、細胞代謝におけるプロテアソームの役割が示唆される。従って、いくつかの実施態様では、本発明は、細胞中の細胞内タンパク質分解の速度を低下させる方法に関する。これらの方法の各々は、ここに開示した通りの化合物に細胞(in vivo 又はin vitro)を接触させるステップを含む。
【0085】
アルツハイマー病(AD)は、高次認知機能の喪失を伴う進行性の神経変性疾患障害である。該疾患の病理学的特徴には、老人性アミロイド斑、神経原線維濃縮体、異栄養性神経炎や、脳の選択された領域における著しい神経細胞消失がある。脳内の常在マクロファージである小グリア細胞は、神経炎及び血管アミロイド斑に関連するペプチドであるAβ42によって活性化すると、TNF-αを含む多数の炎症誘発性サイトカインを放出する。この小グリア細胞媒介性炎症応答は著しい神経細胞消失に寄与する。細胞ベースの研究では、LPS/INF-γ又は音波破砕Aβ42 ペプチドで刺激した小グリア細胞BV2細胞由来の調整培地で処置された初代皮質神経細胞が、細胞生存率をほぼ60%、減少させたことを実証した (Gan et al., J. Biol. Chem. 279:5565-5572, 2004)。痴呆のない高齢者に比べてAD患者由来の脳組織でイムノプロテアソームの発現上昇が見られる (Mishto et al., Neurobiol Aging 27:54-66, 2006)。
【0086】
もう一つの神経変性障害であるハンチントン病(HD)に罹患した患者は、死に至るまで数年間にわたって運動機能不全及び認知の衰えを示す。検死すると、polyQの延長変異(CAGトリプレット反復延長とも言及される)によって引き起こされる封入もしくは神経細胞内凝集物の存在を、脳の線条体及び皮質部分の著しい委縮と一緒に検出することができる。免疫組織化学検査では、年齢を適合させた正常な成人のそれに比較して、HD患者の脳の線条体及び前頭皮質でイムノプロテアソーム発現が著しく亢進していることが判明している (Diaz-Hernandez et al., J Neurosci
23:11653-1161, 2003)。更に分析したところ、主に変性中の神経細胞で亢進が起きていることが発見された。HDのマウスモデルを用い、この研究者たちは、脳の罹患及び凝集体含有領域、主に皮質及び線条体で、キモトリプシン様及びトリプシン様活性の両者に選択的増加があることをみとめた(Diaz-Hernandez et al, J Neurosci 23:11653-1161,
2003)。
【0087】
従って、本発明のいくつかの実施態様は、ここに開示した通りの化合物を投与するステップを含む、神経変性疾患又は状態を処置する方法に関する。神経変性疾患及び状態には、限定はしないが、卒中、神経系の虚血性損傷、神経外傷(例えば衝撃性脳損傷、脊髄損傷、神経系への外傷)、多発性硬化症及び他の免疫媒介性神経病(例えばギラン-バレー症候群及びその変形例、急性運動軸索ニューロパチー、急性炎症性脱髄性ポリニューロパチー、及びフィッシャー症候群)、HIV/AIDS 痴呆症候群、軸索切断術、糖尿病性ニューロパチー、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、細菌、寄生生物、真菌、及びウィルス性髄膜炎、脳炎、血管性痴呆、多発梗塞性痴呆、レヴィー小体痴呆、ピックス病などの前頭葉痴呆、皮質下痴呆(例えばハンチントン又は進行性核上麻痺)、局所性皮質委縮症候群(例えば原発性失語症)、代謝毒性痴呆(例えば慢性甲状腺機能低下症又はB12欠乏)、及び感染により引き起こされる痴呆(例えば梅毒又は慢性髄膜炎)がある。
【0088】
更に、20Sプロテアソームに結合する阻害剤が骨器官培養物中で骨形成を刺激することも実証されている。更に、このような阻害剤をマウスに全身投与したとき、いくつかのプロテアソーム
阻害剤は骨量及び骨形成速度を70%を超えて上昇させた(Garrett, I. R. et al.,
J. Clin. Invest. (2003) 111: 1771-1782)ことから、ユビキチン-プロテアソーム機序が骨芽細胞分化及び骨形成を調節していることが示唆された。従って、開示されたプロテアソーム阻害剤組成物は、骨粗鬆症など、骨消失に関連する疾患の処置及び/又は防止において有用であろう。
【0089】
癌は、細胞の無制御で異常な成長を特徴とする疾患に関する一般的な用語である。数多くの癌が、腫瘍抑制タンパク質の失活及び腫瘍発生性ペプチドの活性化を含む多段階の経路を通じて起きる。癌細胞は、リンパ系又は血流を通じて身体の他の部分へ広がることができる。通常、癌細胞は主に関与する組織又は細胞の種類に従って分類される。前述したように、プロテアソーム阻害は既に、癌、特に多発性骨髄腫の処置に向けた治療戦略としてバリデートされている。多発性骨髄腫細胞は両方の型のプロテアソームを持つが、その比は幾分、異なる場合がある。多発性骨髄腫は骨髄における過剰な数の異常な形質細胞を特徴とする造血系の疾患である。形質細胞はB細胞から発生するため、他のB細胞悪性腫瘍もいくらかの程度、イムノプロテアソームを発現したとしても驚くべきことではない。二つの慢性骨髄性白血病細胞株を除き、ヘム関連癌(例えば多発性骨髄腫、白血病及びリンパ腫)は一般的にイムノプロテアソームを発現するようである。リンパ系細胞から発生した癌細胞は30%以上のイムノプロテアソームを発現する。いくつかの実施態様では、本発明は、ここに記載した通りの化合物を投与するステップを含む、癌を処置する方法に関する。いくつかの好適な実施態様では、癌はヘム関連障害である。いくつかの実施態様では、癌は充実腫瘍、頭部及び頸部の扁平細胞癌腫、子宮頸管の癌腫、及び扁平細胞肺癌腫から選択される。
【0090】
INF-γで細胞を処置すると、イムノプロテアソーム発現を誘導することができる。従って、いくつかの実施態様では、本発明は、ここに開示した通りの化合物を投与するステップを含む、癌を処置する方法に関する。
【0091】
投与
ここに記載した通りに調製された化合物は、当業で公知の通り、処置しようとする障害、患者の年齢、状態、及び体重に応じて、様々な形で投与することができる。例えば、化合物を経口投与する場合、それらを錠剤、カプセル、顆粒、粉末、又はシロップとして調合してもよく;あるいは非経口投与の場合、それらを注射(静脈内、筋肉内、又は皮下)、液滴輸注製剤、又は座薬として調合してもよい。眼粘膜経路による適用の場合、それらは目薬又は眼用軟膏として調合してもよい。これらの調合物は従来の手段により調製することができ、そして必要であれば、活性成分をいずれの従来の添加剤又は医薬品添加物、例えば結合剤、崩壊剤、潤滑剤、推進薬、可溶化剤、懸濁補助剤、乳化剤、コーティング剤、シクロデキストリン及び/又は緩衝剤など、と混合してもよい。投薬量は、一般的には患者の症状、年齢及び体重、処置又は防止しようとする障害の性質及び重篤度、投与経路、並びに薬物の形に応じて様々であろうが、一日当たり0.01 乃至2000 mg の化合物投薬量が成人のヒトの患者には推奨され、これは単一の用量又は分割された用量で投与されてもよい。担体材料と組み合わせて一回分の剤形を作製することのできる活性成分量は、一般的には、治療効果を生じる化合物量であろう。
【0092】
ある患者において処置の効験という観点で最も有効な結果を生じるであろう、投与の精確な時間、及び/又は、組成物量は、特定の化合物の活性、薬物動態、及び生物学的利用能や、患者の生理条件(年齢、性別、疾患種及び段階、全身の健康状態、投薬量に対する応答性、及び医薬の種類を含む)、投与経路に依るであろう。しかしながら、上述の指針を、例えば最適な時間及び/又は投与量を判断するなど、処置の微調整のための基本として用いることができ、同判断には、対象を観察することと、投薬量及び/又はタイミングを調節することとから成る、慣例的な実験しか必要としないであろう。
【0093】
文言「薬学的に許容可能な」は、ここでは、健全な医学的判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答、又は他の問題もしくは合併症を起こすことなくヒト及び動物の組織に接触させて用いるのに適した、妥当な利益/リスク比に合致した、リガンド、材料、組成物、及び/又は剤形を言うために用いられている。
【0094】
文言「薬学的に許容可能な担体」とは、ここで用いられる場合、例えば液体又は固体の充填剤、希釈剤、医薬品添加物、溶媒又は封入剤など、薬学的に許容可能な材料、組成物、又は賦形剤を意味する。各担体は調合物の他の成分にとって適合性があり、患者に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として役立てることのできる材料のいくつかの例には、:(1)糖類、例えば乳糖、ブドウ糖、及びショ糖;(2)でんぷん、例えばコーンスターチ、いもでんぷん、及び置換もしくは非置換β-シクロデキストリン;(3)セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及びセルロースアセテート;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)医薬品添加物、例えばココアバター及び座薬用ろう;(9)油類、例えばピーナッツ油、綿実油、べにばな油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリル酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)無発熱源水;(17)等張の生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)薬剤調合に用いられる他の非毒性適合性物質、がある。いくつかの実施態様では、本発明の医薬組成物は非発熱源性であり、即ち患者に投与されたときに著しい温度上昇を誘導しない。
【0095】
用語「薬学的に許容可能な塩」とは、当該阻害剤の比較的に非毒性の、無機及び有機酸添加塩を言う。これらの塩は、当該阻害剤の最終的な単離及び精製中にインシツーで調製することも、あるいは、精製済み阻害剤をその遊離塩基形で適した有機もしくは無機酸に別に反応させ、このように形成された塩を単離することでも調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオネート、ラウリルスルホン酸塩、及びアミノ酸塩等々がある。(例えばBerge et al.
(1977) “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66: 1-19.を参照されたい)。
【0096】
他の場合、本発明の方法で有用な阻害剤は、一種以上の酸性官能基を含んでもよく、従って薬学的に許容可能な塩基と一緒に薬学的に許容可能な塩を形成することができる。これらの場合の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、阻害剤の比較的に非毒性の無機及び有機塩基添加塩を言う。これらの塩も同様に、阻害剤の最終的な単離及び精製中にインシツーで調製することも、あるいは、精製済みの阻害剤を遊離酸形のままで適した塩基、例えば薬学的に許容可能な金属陽イオンの水酸化物、炭酸化物、又は重炭酸化物に、アンモニアに、又は薬学的に許容可能な有機一級、二級、又は三級アミンに、別々に反応させることにより調製することもできる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩等がある。塩基添加塩の形成に有用な代表的有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等がある(例えば上記の
Berge et al.を参照されたい)。
【0097】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳濁剤、及び潤滑剤や、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、着香料及び香料、保存剤、及び抗酸化剤も、本組成物中にあってよい。
【0098】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には;(1)水溶性の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等;(2)油溶性の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール (BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン (BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等;及び(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等、がある。
【0099】
経口投与に適した調合物は、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(通常はショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントゴムである、着香した基剤を用いて)、粉末、顆粒の形であってよく、あるいは、水性又は非水性の液体に溶かした溶液又は懸濁液として、あるいは水中油又は油中水の液体乳濁液として、あるいはエリキシル又はシロップとして、あるいは、香錠(ゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアゴムなどの不活性のマトリックスを用いて)として、及び/又は、口内洗浄剤としてなど、それぞれ所定量の阻害剤を活性成分として含有する形にしてもよい。更に組成物を巨丸剤、舐剤、又はペーストとして投与してもよい。
【0100】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒等)の場合、活性成分を、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなどの一種以上の薬学的に許容可能な担体、及び/又は、以下のうちのいずれかと混合してもよい:(1)充填剤又は増量剤、例えばでんぷん、シクロデキストリン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、及び/又は珪酸;(2)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、及び/又は、アカシアゴム;(3)湿潤剤、例えばグリセロール;(4)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、いも又はタピオカでんぷん、アルギン酸、特定の珪酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(7)例えばアセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト・クレイなどの吸収剤;(9)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物;並びに(10)着色剤。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合、医薬組成物は更に緩衝剤を含んでもよい。同一の種類の固形組成物も、乳糖又は乳糖などの医薬品添加物や、高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて軟質及び硬質の充填ゼラチン・カプセル中の充填剤として用いてよい。
【0101】
錠剤は、圧縮又は成型により、選択的に一種以上の付属成分と一緒に作成してよい。圧縮錠剤は結合剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性の希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばでんぷんグリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて調製できよう。成型錠剤は不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末状の阻害剤の混合物を適した機械で成型することにより、作成できよう。
【0102】
錠剤や、例えば糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒などの他の固形剤形は、選択に応じ、切り目を入れたり、腸溶コーティング及び薬剤調合業で公知の他のコーティングなど、コーティング及びシェル剤と一緒に調製したりしてもよい。更にこれらは、所望の放出曲線を提供するために様々な比率にしたヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又はマイクロスフィアなどを用いて、中の活性成分の放出を遅くしたり、あるいは制御できるように調合したりしてもよい。これらは、例えば細菌保持フィルターを通したろ過などで滅菌したり、あるいは、無菌水や他の無菌の注射可能な媒質中に使用直前に溶解させることのできる無菌の固形組成物の形の滅菌剤を導入することにより、滅菌したりしてもよい。これらの組成物はさらに選択的に不透明剤を含有してもよく、また、活性成分を、胃腸管の特定の部分でのみ又は優先的に、選択によっては遅れて放出する、組成物であってもよい。使用することのできる包埋組成物の例にはポリマー物質及びろうがある。更に活性成分は、適当であれば上述した医薬品添加物のうちの一種以上と一緒の、マイクロ被包型であってもよい。
【0103】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容可能な乳液、マイクロ乳液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルがある。活性成分に加え、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤、及び乳濁剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油類(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、ごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物など、当業で通常用いられる不活性の希釈剤を液体剤形に含めてもよい。
【0104】
不活性の希釈剤のほかに、経口用組成物には更に、湿潤剤、乳濁剤及び懸濁剤などのアジュバント、甘味料、着香料、着色剤、芳香剤及び保存剤も含めることができる。
【0105】
活性阻害剤に加え、懸濁液には、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物などの懸濁剤を含有させてもよい。
【0106】
直腸又は膣投与に向けた調合物は、座薬として提供してもよく、この座薬は、室温では固体であるが体温では液体であるため直腸又は膣腔内では融解して活性物質を放出するような、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座薬用ろう又はサリチル酸などを含む一種以上の適した非刺激性医薬品添加物又は担体に、一種以上の阻害剤を混合することにより、調製できよう。
【0107】
膣内投与に適した調合物には、更に、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又は、当業において適切であることが公知の担体を含有するスプレー調合物もある。
【0108】
阻害剤の局所又は経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤がある。活性成分を、薬学的に許容可能な担体、そして必要かも知れないいずれかの保存剤、緩衝剤、または推進薬と、無菌条件下で混合してもよい。
【0109】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、阻害剤に加え、例えば動物及び植物性脂肪、油、ろう、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク、及び酸化亜鉛、あるいはこれらの混合物などの医薬品添加物を含んでもよい。
【0110】
粉末及びスプレーには、阻害剤に加え、乳糖、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、及びポリアミド粉末、あるいはこれらの物質の混合物などの医薬品添加物を加えることができる。スプレーには更に、例えばクロロフルオロカーボン並びにブタン及びプロパンなどの揮発性の非置換炭化水素など、従来の推進薬を含めることができる。
【0111】
阻害剤は代替的にはエーロゾルで投与することもできる。これは、本組成物を含有する水性のエーロゾル、リポソーム性製剤、又は固形粒子を調製することにより、達成される。非水性の(例えばフルオロカーボンの推進薬)懸濁液も用いることができよう。当該化合物の分解を引き起こしかねないせん断力への薬剤の暴露が抑えられるため、音波ネブライザーが好ましい。
【0112】
通常、水性のエーロゾルは、従来の薬学的に許容可能な担体及び安定化剤と一緒に薬剤の水溶液又は懸濁液を調合することによって作製される。担体及び安定化剤は、特定の組成物の要件によって異なるであろうが、典型的にはその中には、非イオン性の界面活性剤(トゥイーン、プルロニックス、ソルビタンエステル、レシチン、クレモフォル)、薬学的に許容可能な共溶媒、例えばポリエチレングリコール、血清アルブミンなどの無害のタンパク質、オレイン酸、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩類、糖類、又は糖アルコールがある。エーロゾルは一般に等張液から調製される。
【0113】
経皮パッチは、阻害剤の身体への制御された送達を提供するという付加的な利点を有する。このような剤形は、適した溶媒に薬剤を溶解又は分散させることにより、作製することができる。吸収促進剤を用いて、皮膚を横切る阻害剤のフラックスを増すこともできる。このようなフラックスの速度は、速度制御メンブレンを設けるか、あるいは、ポリマーマトリックス又はゲル中に阻害剤を分散させることにより、制御することができる。
【0114】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、一種以上の阻害剤を、一種以上の薬学的に許容可能な無菌の水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液と組み合わせて、あるいは、使用直前に無菌に注射可能な溶液又は分散液に再構築してもよい無菌粉末と組み合わせて、含み、その中には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、目的のレシピエントの血液又は懸濁剤もしくは増粘剤と調合物を等張にする溶質を含めてもよい。
【0115】
本発明の医薬組成物中に用いてもよい、適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。適した流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料を用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を用いるなどして、維持することができる。
【0116】
これらの組成物には更に、保存剤、湿潤剤、乳濁剤及び分散剤などのアジュバントも含めてよい。微生物の活動を防ぐには、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の多様な抗菌剤及び抗カビ剤を含めることで確実にできよう。更に、糖類、塩化ナトリウム等の張性調節剤を組成物中に含めることも好ましいであろう。加えて、注射可能な薬剤型の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅らせる物質を含めることにより行ってもよい。
【0117】
場合によっては、薬物の効果を長引かせるために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが好ましい。例えば非経口投与された薬物型の吸収を遅らせるには、油性賦形剤中に薬物を溶解又は懸濁させることにより、達成される。
【0118】
注射可能なデポー型はポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性のポリマー中に阻害剤のマイクロカプセル・マトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比、そして用いる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性のポリマーの例にはポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)がある。デポー型の注射用調合物はまた、身体組織と適合性あるリポソーム又はマイクロ乳濁液中に薬物を捕獲することによっても調製される。
【0119】
薬剤の製剤は経口、非経口、局所、又は直腸によって投与されてもよい。これらはもちろん、各投与経路に適した形で投与される。例えば、これらは錠剤又はカプセル型、注射、吸入、眼用ローション、軟膏、座薬、輸注によって投与されたり;ローション又は軟膏によって局所投与されたり;座薬によって直腸投与されたりする。経口投与が好ましい。
【0120】
ここで用いられる場合の文言「非経口投与」及び「非経口投与する」とは通常、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内注射及び輸注を含む、注射による腸管及び局所投与以外の投与形態を意味する。
【0121】
ここで用いられる場合の文言「全身投与」、「全身投与する」、「末梢投与」、及び「末梢投与する」とは、例えば皮下投与など、患者の全身に入り、代謝等のプロセスを受けるようにリガンド、薬物、又は他の物質を、中枢神経系に直接投与する以外の方法で投与することを意味する。
【0122】
これらの阻害剤は、経口、スプレーなどによる鼻腔、直腸、膣内、非経口、槽内、及び、バッカル剤及び舌下剤を含む粉末、軟膏又は滴剤などによる局所などを含め、いずれかの適した投与経路により、治療に向けてヒト及び他の動物に投与できよう。
【0123】
選択された投与経路に関係なく、適した水和型及び/又は本発明の医薬組成物で用いてもよい阻害剤は、当業者に公知の従来の方法により、薬学的に許容可能な剤形に調合される。
【0124】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者にとって毒性となることなく、特定の患者、組成物、及び投与形態にとって所望の治療的応答を達成するのに有効な活性成分量が得られるよう、変更してもよい。
【0125】
開示された化合物の、薬学的に許容可能な混合物中の濃度は、投与しようとする化合物の投薬量、用いる化合物の薬物動態上の特徴、及び投与経路を含め、複数の因子に応じて異なるであろう。一般的には、本発明の組成物は、非経口投与の場合、他の物質の中でもここで開示した化合物を約0.1-10% w/v 含有する水溶液の形で提供されよう。典型的な投薬範囲は、1乃至4回分に分割された用量で、一日当たり体重1キログラム当たり約0.01 乃至約50 mg/kg である。各分割された用量は、本発明の同じ又は異なる化合物を含有していてもよい。投薬量は、患者の全体的健康、調合物、及び選択された化合物の投与経路を含め、複数の因子に応じた有効量となるであろう。
【0126】
本発明の別の局面は、一種以上の他の治療薬がプロテアソーム阻害剤と共に投与される併用療法を提供するものである。このような併用処置は、処置の個々の成分の同時、逐次、又は別々の投与によって達成してよい。
【0127】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物を、一種以上の他のプロテアソーム阻害剤と併用投与する。
【0128】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物を、化学療法薬と併用投与する。適した化学療法薬には、ビンカアルカロイド(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)などの天然生成物;パクリタキセル;エピジポドフィロトキシン(例えばエトポシド、テニポシド);抗生物質(例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン);アントラサイクリン;ミトキサントロン;ブレオマイシン;プリカマイシン(ミトラマイシン)及びミトマイシン;酵素(L-アスパラギナーゼを全身代謝し、それら自体のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を枯渇させるL-アスパラギナーゼ;抗血小板剤;抗増殖性/抗有糸分裂アルキル化剤、例えばナイトロジェン・マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ);アルキルスルホネート(ブスルファン);ニトロソウレア(カルムスチン
(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン);トラゼン(例えばダカルバジン(DTIC));抗増殖性/抗有糸分裂性抗代謝産物、例えば葉酸類似体(メトトレキセート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスリジン、及びシタラビン)、プリン類似体及び関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2-クロロデオキシアデノシン);アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、エクセメスタン、及びレトロゾール)、及びプラチナ配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン);プロカルバジン;ヒドロキシウレア;ミトタン;アミノグルテチミド;ホルモン(例えばエストロゲン);及びホルモンアゴニスト、例えば黄体形成ホルモン分泌促進ホルモン (LHRH) アゴニスト(例えばゴセレリン、ロイプロリド及びトリプトレリン)がある。
【0129】
いくつかの実施態様では、その他の治療薬はHDAC阻害剤(例えばトリコスタチンA、デプシペプチド、アピシジン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、CHAP、酪酸、デプデシン、オキサムフラチン、フェニルブチレート、ヴァルプロ酸、SAHA (Vorinostat)、MS275 (N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イルメトキシ-カルボニル)アミノメチル]ベンズアミド)、LAQ824/LBH589、CI994、又はMGCD0103)である。いくつかのこのような実施態様では、その他の薬剤は SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサミム酸 )である。
【0130】
いくつかの実施態様では、その他の治療薬はタンパク質キナーゼ阻害剤(例えばソラフェニブ、イマチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、パゾパニブ、及びニロチニブ)である。いくつかのこのような実施態様では、タンパク質キナーゼ阻害剤はソラフェニブである。
【0131】
いくつかの実施態様では、その他の化学療法薬はメクロレタミン、カンプトテシン、イフォスファミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ゲムシタビビン、ナベルビン、又は前述のもののいずれかの類似体又は誘導バリアントから選択される。
【0132】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物をステロイドと併用投与する。適したステロイドには、限定はしないが、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、クレプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デゾニド、デゾキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニゾリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセテート、フルプレドニデンアセテート、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾンプロピオネート、フォルモコルタル、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロエート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノアセテート、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チクソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、又はトリアムシノロンヘキサセトニド、あるいはこれらの塩及び/又は誘導体が含まれよう。
【0133】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物を免疫治療薬と併用投与する。適した免疫治療薬には、限定はしないが、シクロスポリン、サリドマイド(又はレナリドミドなどのサリドマイド類似体)、又はモノクローナル抗体が含まれよう。 該モノクローナル抗体は、例えばリツキシマブ、トシツモマブ、アレムツズマブ、エプラツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ゲムツズマブオゾガミシン、ベバシズマブ、セツキシマブ、エルロチニブ又はトラスツズマブなど、裸であっても、又は結合させてあってもよい。
【0134】
実施例
スキーム1: 化合物1の合成
【0135】
【化8】

【0136】
化合物AはJ. Med. Chem. 2008, 51, 1068の手法に従って合成された。
【0137】
化合物Bは米国特許出願第 11/820,490号の手法に従って合成された。
【0138】
化合物Cの合成
A (100 mg、0.4 mmol) 及び B (238 mg、0.6 mmol) を−10℃の10%
DMF/MeCN (10 mL) に溶かした溶液にHOBT (87
mg、0.6 mmol)、HBTU (245 mg、0.6 mmol) 及び DIEA (300 μL、1.7 mmol)を加えた。できた溶液を45分間、撹拌した。次に該反応混合液をEtOAc (50 mL) で希釈し、飽和NaHCO3
(3 x 25 mL) 及びブライン (1 x 25
mL) で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して泡を生じさせ、この泡をシリカによるクロマトグラフィーにかけて 1-5% MeOH/EtOAc を溶出させてCを油として生じさせた (26
mg、10.4%)。
【0139】
【化9】

【0140】
化合物1の合成
C (26 mg、0.04 mmol) 及び2-メチルプロピルボロン酸 (10
mg、0.1 mmol) を2M HCl (0.4 mL)、MeOH (2 mL) 及びヘキサン (2 mL) に入れた混合液を16時間、撹拌した。次の層を分離し、ヘキサンをMeOH (3 x 2 mL)で洗浄した。配合したMeOH層を濃縮し、飽和NaHCO3 (15 mL)で希釈した。水層をEtOAc (3 x 5 mL) で抽出し、有機層をMgSO4 上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して化合物1を白色の固体として生じさせた (6.3 mg、29.1%)。
【0141】
スキーム2: 化合物2の合成
【0142】
【化10】

【0143】
化合物Dは米国特許出願第11/820,490号の手法に従って合成された。
【0144】
化合物Eの合成
A (100 mg、0.4 mmol) 及びD (156 mg、0.6 mmol) を、−10℃の10% DMF/MeCN (10 mL) に溶かした溶液に、HOBT (87 mg、0.6 mmol)、HBTU (245 mg、0.6 mmol) 及び DIEA (300 μL、1.7 mmol)を加えた。できた溶液を45分間、撹拌した。次にこの反応液をEtOAc (50 mL) で希釈し、飽和NaHCO3
(3 x 25 mL) 及び (1 x 25 mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して油を生成し、この油を、25-50% EtOAc/Hexを用いたシリカによるクロマトグラフィにかけてEを油として生じさせた (13 mg、4.9%)。
【0145】
【化11】

【0146】
化合物2の合成:
E (13 mg、0.02 mmol) 及び 2-メチルプロピルボロン酸 (10 mg、0.1 mmol)を2M HCl (0.4 mL)、MeOH (2 mL) 及びヘキサン(2 mL) に入れた混合液を16時間、撹拌した。次に層を分離し、ヘキサン層をMeOH (3 x 2
mL)で洗浄した。配合した MeOH 層を濃縮し、飽和 NaHCO3 (15 mL)で希釈した。次に水層を EtOAc (3 x 5 mL) で抽出し、有機層を MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して化合物2を白色の固体として生じさせた (1.3 mg、11.2%)。
【0147】
実施例1: 阻害優先性を判定するための検定
ある分子が構成的 (B5) 又はイムノプロテアソーム
(L7)のCT-Lを優先的に阻害するかどうかを判定するために用いることのできる生化学検定は、各サブユニットについてEC50をまず判定することに依拠する。これは、米国出願番号第09/569748号、実施例2及びStein et al., Biochem. (1996), 35,
3899-3908に開示されたものなど、判定用に90%を超える構成的プロテアソーム・サブユニット又はイムノプロテアソーム・サブユニットを持つ単離20S プロテアソーム標品を用いた酵素カイネティック・アッセイを用いて達成することができる。こうして、当該分子の阻害優先性は構成的プロテアソームの(イムノプロテアソームのそれに対する)キモトリプシン様活性のEC50比(20S比)に基づくことになる。
【0148】
1未満の比は、当該分子が 構成的プロテアソームのCT-L活性をイムノプロテアソームのそれよりも良好に阻害することを指し示す。1を超える比は、当該分子が、イムノプロテアソームのキモトリプシン用活性を構成的プロテアソームのそれよりも良好に阻害することを意味する。比の数が大きいほど、当該化合物はイムノプロテアソーム阻害剤に対してより特異的である。
【0149】
実施例2: 生物学的結果
【0150】
【表1】

【0151】
均等物
当業者であれば、ごく慣例的な実験を用いるのみで、ここに記載された化合物及びその使用法の均等物を数多く、認識され、あるいは確認できることであろう。このような均等物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、また以下の請求の範囲の包含するところである。
【0152】
上記の引例及び公開文献のすべてを、言及をもってここに援用することとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化12】

又は薬学的に許容可能なその塩の構造を有する化合物であって、
但し式中、C=O、C=S、及びSO2 から個別に選択され;又は
A はZに隣接する場合には選択的に共有結合であり;
Y は存在しないか、又はN(R7)(R8)であり;
M は存在しないか、又はC1-12アルキルであり;
各Z はO、S、NH、及びN-C1-6アルキルから個別に選択され;又は
Z はAに隣接する場合には選択的に共有結合であり
R1 は水素、-C1-6アルキル-Y、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、アリール、及びC1-6アラルキルから選択され;
R2 はアリール、ヘテロアリール、C1-6アラルキル及び1-6ヘテロアラルキルから選択され;
R3 はアリール、ヘテロアリール、C1-6ヘテロアラルキル、C1-6アラルキル及びC1-6アルキルから選択され;
R4 及びR5 はそれぞれ個別に水素、C1-6アラルキル、及びC1-6アルキルから選択され;あるいは
R4 及びR5 は共に C1-12アルキルであることで一個の環を形成し;
R6 は水素、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、N末端保護基、アリール、C1-6アラルキル、ヘテロアリール、C1-6ヘテロアラルキル、R9ZAZ-C1-8アルキル-、R12Z-C1-8アルキル-、(R9O)(R10O)P(=O)O-C1-8アルキル-ZAZ-C1-8アルキル-、9、ヘテロシクリルMZAZ-C1-8アルキル-、(R9O)(R10O)P(=O)O-C1-8アルキル-、(R11)2N-C1-12アルキル-、(R11)3N+-C1-12アルキル-、ヘテロシクリルM-、カルボシクリルM-、R12SO2C1-8アルキル-、及びR12SO2NHから選択され;
R7 は水素、OH、及びC1-6アルキルから選択され;
R8 はN末端保護基であり、R7 及びR8 は個別に水素、C1-6アルキル、及びC1-6アラルキルから選択され、好ましくは水素であり;
R9 及びR10
は個別に水素、金属陽イオン、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アラルキル、及びC1-6ヘテロアラルキルから選択され、好ましくは水素、金属陽イオン、及びC1-6アルキルから選択され、あるいはR11 及び R12 は共にC1-6アルキルであることで一個の環を形成し;
各R11 は個別に水素及びC1-6アルキルから選択され、好ましくは
C1-6アルキルであり;そして
R12 は個別に水素、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アラルキル、及びC1-6ヘテロアラルキルから選択される、
化合物。
【請求項2】
R1 が-C1-6アルキル-Yである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yが存在せず、そしてR1 がメチル、エチル、イソプロピル、カルボキシメチル、及びベンジルから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1 がメチルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R2 がC1-6アラルキル及びC1-6ヘテロアラルキルから選択される、請求項1乃至4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
R2 がC1-6アルキル-フェニル、C1-6アルキル-インドリル、C1-6アルキル-チエニル、C1-6アルキル-チアゾリル、及びC1-6アルキル-イソチアゾリルから選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R2 が、選択的にアルキル、トリハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、又はシアノで置換されたC1-6アルキル-フェニル及びC1-6アルキル-インドリルから選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R3 がC1-6アラルキル及びC1-6アルキルから選択される、請求項1乃至7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
R3 がC1-6アラルキルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R3 がC1-6アルキル-フェニルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R4 及びR5 が個別に水素及び及びC1-6アルキルから選択される、請求項1乃至10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
R4 及びR5 が両者とも水素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R4 及びR5 が共にC1-12アルキルであることで一個の環を形成する、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
R4 及びR5 が、二つの隣接する酸素原子及びホウ素と共に一個のピナコールボロネートエステルを形成する、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
R6 がカルボシクリル、アリール、及びヘテロシクリルM-から選択される、請求項1乃至14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
R6 がカルボシクリル又はアリールである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
R6 がインデンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R6 が 3-メチリンデン(原語:methylindene)である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
R6 がヘテロシクリルM-である、請求項15に記載の化合物。
【請求項20】
ヘテロシクリルがモルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びピロリジノから選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
ヘテロシクリルがモルホリノであり、そしてMがC1-12アルキルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
構造:
【化13】

を有する化合物。
【請求項23】
構造:
【化14】

を有する化合物。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む、免疫関連疾患を処置する方法。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物を投与するステップを含む、癌を処置する方法。
【請求項26】
請求項1乃至23のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む、炎症を処置する方法。
【請求項27】
請求項1乃至23のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む、感染を処置する方法。
【請求項28】
請求項1乃至23のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む、増殖性疾患を処置する方法。
【請求項29】
請求項1乃至23のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む、神経変性疾患を処置する方法。
【請求項30】
構成的プロテアソーム活性の検定における化合物のEC50を、イムノプロテアソームの検定における化合物のEC50に比較したときの比が1.0を超える、請求項1乃至23のいずれかに記載の化合物。
【請求項31】
EC50比が3.0を超える、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、請求項1乃至23のいずれかに記載の化合物とを含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2013−521295(P2013−521295A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556160(P2012−556160)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/026629
【国際公開番号】WO2011/109355
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(510094115)オニキス セラピューティクス, インク. (5)
【氏名又は名称原語表記】ONYX THERAPEUTICS, INC.
【Fターム(参考)】