説明

イメージングリガンド

ドーパミンD2レセプターに対する選択的リガンドであると共に、PETによるイメージングのために適した18F放射性標識を担持するナフトオキサジン誘導体が記載される。かくして、本発明の化合物はドーパミンD2レセプターのインビボ診断及びインビボイメージングのために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽電子放出断層撮影法(PET)を用いる医学的診断及びイメージングの分野に関し、中枢神経系(CNS)レセプターを可視化するための化合物及び方法を提供する。特に本発明は、ドーパミンD2レセプターに対する選択的リガンドであると共に、PETによるイメージングのために適した18F放射性標識を担持するナフトオキサジン誘導体に関する。かくして、本発明の化合物はドーパミンD2レセプターのインビボ診断及びインビボイメージングのために有用である。
【背景技術】
【0002】
ドーパミンは、ヒトの脳における重要な神経伝達物質である。ドーパミン神経伝達の機能不全は、多くの神経学的及び精神医学的疾患(例えば、統合失調症、パーキンソン病、精神病、不安及び注意欠陥多動性障害(ADHD))に関係する。CNSでの役割に加え、ドーパミンアゴニストはショック及び心不全の患者において心拍出量及び血圧を高めるためにも使用できる。現在利用できる証拠によれば、ドーパミン伝達を媒介するレセプターの変化は特定のCNS(中枢神経系)疾患と関連していることが示される。ドーパミンレセプターは2つの主要タイプ、即ちD1様レセプター及びD2様レセプターに分けられ、その中にはいくつかのレセプターサブタイプが存在している。上述した神経学的疾患の診断及び治療モニタリングを助けるため、並びに健常なヒト志願者に関する臨床研究及び治療用薬物の開発試験のためには、D2ドーパミンレセプターの調査が特に有用であると考えられている。
【0003】
PETを用いてインビボでドーパミンD2レセプターを調査するための有望な放射性リガンドとして、[11C]−4−プロピル−2H−ナフト[1,2−b][1,4]オキサジン−9−オール([11C]−PHNO)、[11C]−N−メチルスピペロン、[11C]−ラクロプリド、[123I]−ヨードベンズアミド、[123I]−エピジプリド、[18F]−ファリープリド及び[11C]−FLB−457を含む多数の化合物が検討されてきた。
【0004】
次式の構造を有するPHNOの若干の18F標識誘導体が国際公開第2006/084368号に記載されている。
【0005】
【化1】

【0006】
式中、RはC1-6アルキルであって、アルキル鎖上の1つの水素原子がフルオロ又は放射性フルオロで置き換えられている。しかし、これらの化合物はインビボ及びエクスビボでの性能が不良であった。
【0007】
ラットにおけるインビボ生体分布調査では、[18F]F−PHNOは脳への急速な取込みを示したが、脳のD2リッチ領域(例えば、線条体)と低D2レセプター発現領域との間の領域特異性は示さなかった。同様に、エクスビボオートラジオグラフィー調査では、ラット脳の線条体における[18F]F−PHNO結合は、バックグラウンドの非ドーパミン作動性領域と識別できなかった。著者は、[18F]F−PHNOの急速な動態及び特異的結合の欠如がD2レセプターに関する脳イメージング剤としての使用を妨げるであろうと示唆している(N.Vasdev et al.,Nuclear Medicine and Biology 34(2007)195−203)。
【0008】
したがって、D2レセプターの高親和性状態(D2High)を能動的に標的化し得る検出可能な標識リガンドに対するニーズが今なお存在している。本発明は、先行技術のものに比べて改善された性質を有する、インビボでドーパミンD2レセプターを調査するのに適した検出可能な標識リガンドを提供しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
国際公開第2006/084368号パンフレット
【発明の概要】
【0010】
本発明では、次の式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物が提供される。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、
1はC1-6アルキルであり、
2及びR3の一方は[18F]フルオロであり、他方は水素である。
【0013】
本発明の以下の態様では、式(I)の化合物中のR1は好ましくはエチル、n−プロピル又はイソプロピルであり、最も好ましくはn−プロピルである。
【0014】
式(I)の化合物は様々な光学異性体の形態で存在しており、本発明は実質的に純粋な形態のかかる異性体又はラセミ混合物をはじめとして任意の比率で混合されたかかる異性体のすべてを包含する。「実質的に純粋な形態」とは、化合物が鏡像異性的に富化されていて、95モル%以上の所定異性体を含むことを意味する。一実施形態では、複素環の酸素及び窒素はトランス立体配置にある。さらに他の実施形態では、式(I)の化合物の位置1a及び4aは共にR立体配置を有している。
【0015】
かくして、本発明の好ましい態様では、次の式(Ia)を有する式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物が提供される。
【0016】
【化3】

【0017】
式中、R1、R2及びR3は式(I)に関して上記に定義した通りである。
【0018】
式(I)の好ましい特定の化合物には、以下の化合物1及び化合物2或いはそれらの塩又は溶媒和物がある。
【0019】
【化4】

【0020】
式(Ia)の前記化合物、即ち化合物1及び化合物2或いはこれらの塩又は溶媒和物は、好適には実質的に純粋な形態にある。
【0021】
本発明に係る好適な塩には、(i)鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸)から導かれるもの並びに有機酸(例えば、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸)から導かれるもののような生理学的に許容される酸付加塩、並びに(ii)アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩)、有機塩基(例えば、トリエタノールアミン、N−メチル−D−グルカミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン及びモルホリン)との塩、及びアミノ酸(例えば、アルギニン及びリシン)との塩のような生理学的に許容される塩基塩がある。
【0022】
本発明に係る好適な溶媒和物には、エタノール、水、食塩水、生理的緩衝液及びグリコールと共に生成されるものがある。
【0023】
本明細書中において単独で又は他の用語の一部として使用される「アルキル」という用語は、直鎖、枝分れ又は環状アルキル基を意味する。
【0024】
以下で実証される通り、式(I)の化合物はD2レセプター用のPETリガンドとして有用である。したがって、本発明のさらに他の態様では、医薬に使用するための、特にインビボPET診断又はイメージング方法で使用するための、上記に定義した式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物が提供される。好適には、上記に定義した式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物は、例えば臨床研究目的のため、健常なヒト志願者においてD2レセプターをイメージングするために使用できる。
【0025】
本発明の一態様では、被験体におけるD2レセプターの検出方法であって、
(i)上記に定義した式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を前記被験体に投与する段階、及び
(ii)インビボPETイメージングによって前記化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法が提供される。
【0026】
かかる方法は、D2媒介疾患の診断及び臨床研究において有用性を有する情報及びデータを提供する。かかる方法は定量的に実施できる結果、D2レセプターの量又はその量の変化或いは高親和性D2High状態におけるレセプターの密度又はその密度の変化を測定して疾患を診断し又はその進行を追跡することができる。別法として、かかる方法はD2レセプターの位置を探索するためにも使用できる。
【0027】
さらに他の態様では、被験体におけるD2レセプターの検出方法であって、
(i)上記に定義した式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を前記被験体に投与する段階、
(ii)インビボPETイメージングにより、段階(i)で投与した前記式(I)の化合物の取込みを検出する段階、
(iii)段階(i)で投与した化合物が放射性崩壊してしまうような適当な時間を経過させる段階、次いで
(iv)(a)非放射性標識ドーパミンアゴニスト又はドーパミン模倣体、或いは(b)非放射性標識ドーパミン枯渇剤の有効量を投与し、同時に段階(i)で定義した式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を投与する段階、及び
(v)インビボPETイメージングにより、段階(iv)で投与した前記式(I)の化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法が提供される。
【0028】
段階(iii)で経過させる時間は、好適には10時間を超え、さらに好適には16時間以上であり、さらに好適には段階(i)で投与した式(I)の化合物からのPET信号がもはや検出できなくなる約24時間である。本発明の別の態様では、
被験体におけるDレセプターの検出方法であって、
(i)上記に定義した式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を前記被験体に投与する段階、
(ii)インビボPETイメージングにより、段階(i)で投与した前記式(I)の化合物の取込みを検出する段階、
(iii)(a)非放射性標識ドーパミンアゴニスト又はドーパミン模倣体、或いは(b)非放射性標識ドーパミン枯渇剤の有効量を投与する段階、及び
(iv)インビボPETイメージングにより、段階(i)で投与した前記式(I)の化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法が提供される。
【0029】
「ドーパミン模倣体」という用語は、ドーパミンと同様な生物学的活性を有するか、或いはドーパミンの放出を引き起こす化合物を意味する。上記の方法で使用される非放射性標識ドーパミンアゴニスト又はドーパミン模倣体は、好適にはアンフェタミン、(+)−PHNO、アポモルフィン及びその同族体(例えば、N−プロピル−ノルアポモルフィン)並びにアミノテトラリン(例えば、ジヒドロキシ−2−ジメチルアミノテトラリン)から選択される。一態様では、上記の方法で使用される非放射性標識ドーパミンアゴニスト又はドーパミン模倣体はアンフェタミンである。
【0030】
「非放射性標識ドーパミン枯渇剤」とは、例えば内因性ドーパミンの合成又は放出を阻害することで、被験体におけるドーパミンの利用可能性を一時的かつ激しく低下させる化合物であり、例えばα−メチル−p−チロシン(AMPT)のようなチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤である。
【0031】
上記の方法における「同時に投与する」とは、両化合物が被験体において同時に生物学的に活性であるようにして両化合物を被験体に投与することを意味する。本発明の一態様では、両化合物は実質的に同時に(即ち、互いに30分以内に)投与されるか、或いは両化合物を含む単一の組成物として投与される。
【0032】
好適には、式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物はD2レセプターのインビボイメージングのために有用であり、したがってD2媒介疾患のイメージング又は診断において有用性を有する。
【0033】
「D2媒介疾患」という用語は、統合失調症、パーキンソン病、精神病、不安及びADHDのような神経学的及び精神医学的疾患を意味する。重要なD2媒介疾患の1つは統合失調症である。
【0034】
したがって、D2媒介疾患のインビボ診断又はイメージングで使用するための式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物が提供される。
【0035】
本発明のさらに他の態様では、被験体、好ましくはヒトにおけるD2媒介疾患のインビボ診断又はイメージングのための方法であって、式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を投与する段階、及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法が提供される。かかる方法は、統合失調症、パーキンソン病、精神病、不安又はADHDのインビボ診断又はイメージングのために特に好ましい。さらに他の態様では、被験体、好ましくはヒトにおけるD2媒介疾患のインビボイメージングのための方法であって、式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を前記被験体に予め投与する段階、及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法が提供される。
【0036】
本発明はさらに、D2媒介疾患と戦うための薬物による被験体(好ましくはヒト)の治療の効果をモニターする方法であって、式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を前記被験体に投与する段階、及び上述した方法のようなインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法を提供する。前記投与及び検出は、任意ではあるが好ましくは、例えば前記薬物による治療前、治療中及び治療後に繰り返して実施される。
【0037】
式(I)の化合物又はその塩は、インビボでの使用のためには、好ましくは本発明の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤として投与される。「医薬製剤」とは、本発明では、式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物をヒトへの投与に適した形態で含む製剤として定義される。投与は、好ましくは水溶液としての製剤を注射することで実施される。かかる製剤は、緩衝剤、薬学的に許容される可溶化剤(例えば、シクロデキストリン或いはプルロニック(Pluronic)、ツイーン(Tween)又はリン脂質のような界面活性剤)及び薬学的に許容される安定剤又は酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、ゲンチシン酸又はp−アミノ安息香酸)のような追加成分を任意に含み得る。
【0038】
式(I)又は式(Ia)の化合物或いはその塩の有効なインビボ用量は、投与すべき正確な化合物、患者の体重、及び当技術分野の医師にとって自明であろう他の変量に応じて変化する。一般に、用量は0.001〜10μg/kg、好ましくは0.01〜1.0μg/kgの範囲内にある。
【0039】
式(I)の化合物は、次の式(II)の対応化合物の[18F]フッ素化によって製造できる。
【0040】
【化5】

【0041】
式中、R1は式(I)の化合物に関して定義した通りであり、R4及びR5の一方は水素であり、他方は脱離基(例えば、C1-6アルキルスルホネート、C1-6ハロアルキルスルホネート又はアリールスルホネート、好適にはメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート又はトリフルオロメチルスルホネート)であり、R6は水素又はC1-4アルキル(好ましくはメチル)である。
【0042】
式(II)の化合物は新規であり、したがって本発明のさらに他の態様をなす。式(II)の好ましい化合物には以下のものがある。
【0043】
【化6】

【0044】
当業者には容易に理解される通り、式(I)の化合物の合成時には、不要の副反応を防止するために保護基が必要となることがある。好適な保護基はProtective Groups in Organic Synthesis,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(John Wiley & Sons Inc.発行)中に見出すことができ、これにはかかる保護基の組込み及び除去のための方法も記載されている。
【0045】
式(II)の化合物のフッ素化は、通常の[18F]放射性フッ素化技法によって行うことができる。[18F]フッ化物イオンは、簡便には(p,n)核反応を用いて18O富化水から製造され(Guillaume et al,Appl.Radiat.Isot.42(1991)749−762)、一般にNa18F、K18F、Cs18F、[18F]フッ化テトラアルキルアンモニウム又は[18F]フッ化テトラアルキルホスホニウムのような塩として単離される。[18F]フッ化物の反応性を高めるためには、アミノポリエーテル又はクラウンエーテル(例えば、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン(Kryptofix 2.2.2))のような相間移動触媒を添加し、適当な溶媒中で反応を実施すればよい。これらの条件は反応性のフッ化物イオンを与える。任意には、国際公開第2005/061415号に記載されているように、フリーラジカル捕捉剤をフッ素化収率を向上させることができる。「フリーラジカル捕捉剤」という用語は、フリーラジカルと相互作用してそれを不活性化する任意の薬剤として定義される。この目的のために好適なフリーラジカル捕捉剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド(TEMPO)、1,2−ジフェニルエチレン(DPE)、アスコルビン酸塩、パラアミノ安息香酸(PABA)、α−トコフェロール、ヒドロキノン、ジ−t−ブチルフェノール、β−カロテン及びゲンチシン酸から選択できる。
【0046】
フッ化物、好適には[18F]フッ化物による処理は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン又はN−メチルピロリジノンのような適当な有機溶媒或いはイミダゾリウム誘導体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)、ピリジニウム誘導体(例えば、1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート)、ホスホニウム化合物又はテトラアルキルアンモニウム化合物のようなイオン性液体の存在下において、例えば15〜180℃の極端でない温度、好ましくは80〜150℃(例えば、約120℃)のような高温で行うことができる。
【0047】
式(I)のための代表的な合成経路をスキーム1及びスキーム2に示す。これらのスキーム中では、以下の略語が使用される。iPr=イソプロピル、n−Pr=n−プロピル、Ph=フェニル、TFAA=トリフルオロ酢酸無水物、DCM=ジクロロメタン、Ts=トシレート。
【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を例示するが、実施例中では以下の略語を用いる。
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
TLC:薄層クロマトグラフィー
MBq:メガベクレル
放射性フッ素化の例
【0051】
【化9】

【0052】
上記スキーム2に従ってトシレート前駆体を製造する。スキーム1中の出発原料はAldrich社から商業的に入手可能であり、スキーム2中の出発原料はスキーム1の方法に従って合成できる。
【0053】
18F]フッ化物(200μLの富化95%18O水中)、2.5mgのKryptofix 2.2.2(0.5mLのアセトニトリル中)及び50μLの0.1M K2CO3をガラス状炭素反応器に添加する。次いで、窒素流を用いて溶液を蒸発乾固し、反応器を100℃で15分間加熱する。共沸乾燥を助けるため、2×1mLのアセトニトリルをそれぞれ5分後及び10分後に反応器に添加する。反応器を室温に冷却し、1mLの無水ジメチルスルホキシド中のトシレート前駆体を添加する。反応物を密封し、130℃で10分間加熱する。粗混合物をHPLC及びTLCで分析する。
【0054】
生物学的例
化合物のインビトロ親和性を決定するため、Hall and Strange(1997),British J.Pharmacol.,121:731−6の方法に従い、ヒト組換え体(HEK−293)細胞及び参照化合物としてのブタクラモールを用いるインビトロヒトD2Lレセプター結合アッセイで各々を試験する。
【0055】
実験条件
スクリーニングされたレセプター:D2L(h)
起源:ヒト組換え体(HEK−293細胞)
競合リガンド:[3H]スピペロン(0.3nM)
参照対照、非特異的結合:ブタクラモール(10μM)
インキュベーション:60分/22℃
シンチレーションカウンティング
レセプターに対する特異的リガンド結合は、総結合と過剰の非標識リガンドの存在下で測定された非特異的結合との差として定義される。結果は、対照の特異的結合に対するパーセント((測定された特異的結合/対照の特異的結合)×100)、及び試験化合物の存在下で得られた対照の特異的結合の阻止パーセント(100−((測定された特異的結合/対照の特異的結合)×100)として表される。Hill式曲線当てはめ(Y=D+[(A−D)/(1+(C/C50)nH)]を使用しながら、平均反復試験値を用いて作成した競合曲線の非線形回帰分析を行うことで、IC50値(対照の特異的結合の半最大阻止を引き起こす濃度)及びHill係数(nH)を求めた。上記式中、Y=特異的結合、D=最小特異的結合、A=最大特異的結合、C=化合物濃度、C50=IC50、及びnH=勾配係数である。Cheng Prusoff式(Ki=IC50/(1+(L/KD))を用いて阻害定数(Ki)を算出する。上記式中、L=アッセイ中の放射性リガンドの濃度、及びKD=レセプターに対する放射性リガンドの親和性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物。
【化1】

式中、
1はC1-6アルキルであり、
2及びR3の一方は[18F]フルオロであり、他方は水素である。
【請求項2】
1がエチル、n−プロピル又はイソプロピルであり、最も好ましくはn−プロピルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
複素環の酸素及び窒素がトランス立体配置にある、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
次の式(Ia)を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の化合物或いはその塩又は溶媒和物。
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は請求項1又は請求項2に定義した通りである。)
【請求項5】
以下のものから選択される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の化合物或いはその塩又は溶媒和物。
【化3】

【請求項6】
医薬に使用するための、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物或いはその塩又は溶媒和物。
【請求項7】
インビボPET診断又はイメージング方法で使用するための、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物或いはその塩又は溶媒和物。
【請求項8】
被験体、好ましくはヒトにおけるD2媒介疾患のインビボ診断又はイメージングのための方法であって、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物或いはその塩又は溶媒和物を投与する段階、及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法。
【請求項9】
D2媒介疾患が統合失調症、パーキンソン病、精神病、不安及びADHDから選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
被験体におけるD2レセプターの検出方法であって、
(i)請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物を前記被験体に投与する段階、及び
(ii)インビボPETイメージングによって前記化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物或いはその塩又は溶媒和物、及び薬学的に許容される賦形剤を含んでなる医薬製剤。
【請求項12】
次の式(II)の放射性標識前駆体。
【化4】

(式中、R1は請求項1又は請求項2に定義した通りであり、R4及びR5の一方は水素であり、他方は脱離基(例えば、C1-6アルキルスルホネート、C1-6ハロアルキルスルホネート又はアリールスルホネート、好適にはメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート又はトリフルオロメチルスルホネート)であり、R6は水素又はC1-4アルキル(好ましくはメチル)である。)
【請求項13】
以下のものから選択される、請求項12記載の化合物。
【化5】


【公表番号】特表2012−509887(P2012−509887A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537640(P2011−537640)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/065268
【国際公開番号】WO2010/059905
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【出願人】(504000591)ハマースミス・イメイネット・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】Hammersmith Imanet Ltd
【Fターム(参考)】