説明

イワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分を含む抗菌性薬学組成物

【課題】本発明は、イワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aと3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸を含む抗菌用薬学組成物に関する。
【解決手段】本発明は、イワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aと3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸を含む抗菌用薬学組成物に関する。本発明によるイワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aと3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus)、キノロン耐性黄色ブドウ球菌(Quinolone-resistant S. aureus)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、枯草菌(Bacillus subtilis)またはストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、にきび菌(Propionibacterium acnes)に対して、強力な抗菌活性を示すことにより、病原性細菌、耐性菌、虫歯誘発菌およびにきび誘発菌の予防または、治療に有用に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イワヤツデ抽出物(Aceriphyllum rossii extract)およびそれから分離した活性成分を含む抗菌性薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
病原性微生物による直接あるいは間接的な被害は、経済、環境、医学的に多くの問題を引き起こさせている。食品産業における食品流通過程中の腐敗による損失、農産業における農作物に対する過量の化学殺虫剤の使用による人体の有害性および環境汚染、抗生剤の呉濫用による抗生剤耐性菌株の出現など社会全般において多くの問題を引き起こさせている。
【0003】
人体感染の最もありふれている原因菌である黄色ブドウ球菌の最後の治療剤として知られているバンコマイシンに高度の耐性を見せるブドウ球菌(vancomycin-resistant staphylococcus aureus,VRSA)が、2002年アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control)で世界最初に報告されることによって、いわゆるスーパーバクテリアの拡散の可能性が非常に高まっている。これは、バンコマイシンによってのみ治療になるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant s. aureus,MRSA)が1970年代から問題視された以後、19888年バンコマイシンに耐性を見せる腸球菌(vancomycin resistant enterococcus,VRE)がヨーロッパで初めて発見され、1990年後半には日本、アメリカ、フランス、韓国で報告されたバンコマイシンに耐性を見せる黄色ブドウ球菌(vancomycin intermediate-resistant s. aureus,VISA)が発生しながら、全世界的な危機に浮び上がった抗生剤耐性の新しい例として耐性問題がどれくらい深刻なのかを見せており、新しい抗生剤開発が至急に要求されている(Pfeltz, R. F. and Wilkinson, B. J. 2004. The escalating challenge of vancomycin resistance in Staphylococcus aureus. Drug targets-infect. Disord. 4: 273-294.; Levy, S. B. and Marshall, B. 2004. Antibacterial resistance worldwide: causes, challenges and responses. Nature Med. 10: 122-129.)。
【0004】
現在の使用されている大部分の抗生剤は、化学的な合成によって製造されたものであって、高いコストが所要され、副作用を誘発するなどの多くの限界を有する。したがって、最近では、天然物から新しい抗菌物質を分離しようとする研究が活発に進行している。天然物から新しい抗菌物質を分離するためには、抗菌スペクトルが広範囲であり、長期間投与しても副作用の無しで安全でなければならないという点などを考慮しなければならない。
【0005】
一方、一般的に口腔疾患は、口腔に生きている各種細菌などによって発生する。 これらの細菌は、虫歯を発生させる細菌と歯ぐき疾患を誘発させる細菌に区分することができる、代表的に虫歯誘発菌であるストレプトコッカス・ミュータン (S. mutans)菌と歯周疾患誘発菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)が挙げられる。このような口腔菌を除去するために、各種消毒剤などが口腔用製品に多く使用されてきた。口腔用製品に使用される消毒剤には、塩化セチルピリジニウム、塩化ヘキサルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、クロルヘキシジン、トリクロサン、チモール、イソプロピルメチルフェノール、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩などの原料、天然抽出成分であるポリフェノール類、銀成分などがある。最近では、自然抽出物に対する関心が増加しながら各種植物に対する研究が活発に進行しており、口腔への効果などが知られながら多くの植物抽出物などが口腔疾患予防などに係わった口腔用組成物に応用されている。
【0006】
にきびは、顔、首、胸、背中などの皮膚表面に炎症を引き起こす皮膚疾患である。主に若い人で発生するが、その原因は、ホルモンの不均衡、細菌感染、ストレス、食品、化粧品など様々である。特に、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)が主なにきび菌である。この菌は、皮膚表面に存在して皮脂腺や毛穴に炎症を誘発する。この菌は、リパーゼ(lipase)を分泌して皮脂を脂肪酸に分解するが、この脂肪酸が強力ににきびを誘発させる。この脂肪酸は、毛嚢(hair follicle)を刺激してにきびが初期症状である面皰(comedo)を形成する。面皰は、皮脂腺の出口が塞がって生じた小さい皮脂嚢をいう。また、にきび細菌は、白血球化学媒介伝達物質(leukocyte chemotatic factors)を分泌して白血球を毛嚢に浸透するようにする。この白血球は、毛嚢を刺激して結局、破壊する。したがって、プロピオニバクテリウム・アクネスは、炎症誘発物質を分泌してにきびを引き起こす菌として知られている。にきびの治療剤としては、炎症を抑制したり抗細菌物質が使用されている。例えば、トリクロサン、過酸化ベンジール、アゼライン酸、レチノイド、テトラサイクリン、エリスロマイシン、マクロライド、クリンダマイシンが使用されている。しかし、これらの抗生剤は、副作用を引き起こす。過酸化ベンジールとレチノイドは、多量使用されると、皮膚乾燥症(xerosis cutis)と皮膚刺激(skin irritation)を引き起こし、テトラサイクリン、エリスロマイシン、マクロライド、クリンダマイシンは、長期間使用時、耐性菌出現、組織損傷、免疫過敏性(immunohypersensitivity)を引き起こす。特に、トリクロサンは、光に曝された時に環境ホルモンに変形されて深刻な環境汚染を引き起こす。したがって、副作用がなく、強力な抗菌活性を示す物質が必要である。
【0007】
一方、イワヤツデ(岩八手、Aceriphyllum rossi)は、バラ目ユキノシタ科の双子葉植物に属する高さが10〜30cmである多年生草本でムクデニア(mukdenia)またはサクシフラガ(Saxifraga)とも呼ばれる。葉が紅葉の葉と類似しており、岩地に生えて石紅葉とも呼ばれる。イワヤツデの花、手の平形の葉は、縁が5〜7個で深く分かれ、鋸歯があり、表面は光沢が出る。特に、幼い葉は食用する。イワヤツデは、強心と利尿作用の効能があるので、心悸亢進、小便不利に一日10〜15gを水で煎じて服用する。民間では、根をセキショウの代用で使用することもある。イワヤツデの有効性分としては、トリテルペン化合物とフラボノイド化合物が含まれている。トリテルペン化合物は、癌細胞(K562,HL-60)に対する細胞毒性とACAT除害活性が知られており、フラボノイド系化合物は、抗酸化活性が報告されている(Han et al., Arch Pharm Res 27:390-395,2004)。
【0008】
前記したように、イワヤツデに対して様々な薬理活性が報告されているが、まだイワヤツデの抗菌活性に対する報告および研究は全くない状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、イワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分を含む抗菌性薬学組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、イワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分を含む抗菌性口腔用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、イワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分を含む抗にきび剤組成物およびにきび改善化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これに、本発明者らは、植物資源から新しい抗菌物質を探索するために、2000種余りの植物抽出物から細菌の生育阻害活性物質をスクリーニングしている中に、イワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性物質が病原性細菌、耐性菌、虫歯誘発菌およびにきび誘発菌に対して強力な抗菌活性を有することを確認して本発明を完成した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、イワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分を含む抗菌性薬学組成物を提供する。
【0014】
以下、本発明に対して、詳細に説明する。
【0015】
本発明によるイワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分は、下記のような方法で抽出分離して製造される。
具体的に、乾燥されたイワヤツデの根をメタノールなどの有機溶媒に加え、攪拌して有効性分を抽出した後、減圧濃縮して有機溶媒を蒸発させてイワヤツデ根のメタノール抽出物を得る。前記イワヤツデ根のメタノール抽出物を酢酸エチルで溶媒抽出し、酢酸エチル層を減圧濃縮および凍結乾燥して粉末形態のイワヤツデ根の酢酸エチル抽出物を得る。前記イワヤツデ根の酢酸エチル抽出物をクロロホルム:メタノール(10:1)溶媒を用いてシリカゲルカラム薄層クロマトグラフィーを行って活性分画を得る。前記活性分画を再びクロロホルム:メタノール(30:1)溶媒を用いてシリカゲルカラム薄層クロマトグラフィーを行って純粋な化合物1および化合物2を得る。前記化合物1および化合物2は、それぞれアセリフィル酸A(aceriphyllic acid A)および3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸(3-oxo-12-oleanen-27-oic acid)で同定した。
【0016】
前記アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用されることができ、通常の方法によって製造されるすべての塩、エステル誘導体、水和物および溶媒化物を含むことができる。前記の塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成される酸付加塩が有用である。遊離酸としては、無機酸と有機酸を使用することができ、無機酸としては、塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸などを使用することができ、有機酸としては、クエン酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、グリコール酸、コハク酸、4−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ガラクツロン酸、エンボン酸、グルタミン酸またはアスパラギン酸などを使用することができる。
【0017】
本発明のアセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、天然生薬材、例えば、イワヤツデから抽出分離して使用したが、化学的な合成方法で製造するかまたは、市販される試薬を購入して使用することもできる。
【0018】
本発明によるイワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus)、キノロン耐性黄色ブドウ球菌(Quinolone-resistant S. aureus)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、枯草菌(Bacillus subtilis)またはストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、にきび菌(プロピオニバクテリウム・アクネス:Propionibacterium acnes)に対して強力な抗菌活性を示す。したがって、本発明によるイワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、病原性細菌、耐性菌、虫歯誘発菌およびにきび誘発菌の予防または治療に有用に使用され得る。
【0019】
本発明の薬学組成物は、イワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸と共に病原性細菌および耐性菌に対して抗菌活性を有する公知の有効性分を1種以上含有することができる。
【0020】
本発明の薬学組成物は、投与のために、前記記載した有効性分の以外に薬学的に許容可能な担体、賦形剤または、希釈剤をさらに含むことができる。前記の担体、賦形剤または、希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油が挙げられる。
【0021】
本発明の薬学組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、座剤、または滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用することができる。詳細には、剤形化する場合、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または、賦形剤を使用して調製され得る。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などを含むが、これに限定されるのではない。このような固形製剤は、前記イワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製され得る。また、単純な賦形剤の以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤なども使用され得る。 経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などを含むが、これに限定されず、よく使用される単純希釈剤である水、リキッド パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味料、芳香剤、保存剤などを添加して調製され得る。非経口投与のための製剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および座剤を含む。非水性溶剤および懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用され得る。座剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0022】
本発明の薬学組成物は、目的とする方法に応じて、経口投与または非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または、局所に適用)することができ、投与量は、患者の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。前記イワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸の一日投与量は、1mg/kg〜0.5g/kg、好ましくは、10mg/kg〜0.05g/kgであり、必要により一日1回〜数回に分けて投与することができる。
【0023】
本発明の薬学組成物は、病原性細菌および耐性菌に対する予防または治療のために、単独で、または手術、ホルモン治療、薬物治療および生学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0024】
本発明の口腔用組成物は、その剤形において、特に限定されず、具体的に歯磨き粉、口腔用洗浄剤、口腔清浄剤などの剤形を有することができる。特に、歯磨き粉の場合には、研磨剤、湿潤剤、起泡剤、結合剤、甘味料、pH調節剤、防腐剤、薬効成分、香料、増白剤、色素、溶剤などを含有することができる。研磨剤としては、炭酸カルシウム、沈降シリカ、水酸化アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウムなどがあり、湿潤制としては、グリセリン、ソルビトール液、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどを単独あるいは2種以上混合して使用する。起泡剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、アルキルグルコシドなどの非イオン界面活性剤や、N−アルキルジアミノエチルグリシンなどの両イオン性界面活性剤などを単独あるいは2種以上混合して使用する。結合剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウムなどがあり、甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、キシリトール、甘草酸(glycyrrhetinic acid)などがあり、単独あるいは2種以上混合して使用する。pH調節剤としては、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸などを使用し、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、安息香酸ナトリウムを単独あるいは2種以上混合して使用する。その他の有効性分としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、クロルヘキシジン、アラントインクロロハイドロキシアルミネート、アミノカプロン酸、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化亜鉛、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロールなどを単独あるいは2種以上混合して使用し、香料としては、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、メントール、アネトールなどを適当量混合して使用し、増白剤としては、酸化チタン、色素としては、食用色素を、溶剤としては、精製水およびエタノールを使用する。
【0025】
本発明の化粧料組成物には、水溶性スキン剤、粘度と硬度調節剤、紫外線吸収剤、顔料、保湿、防腐剤イワヤツデ抽出物を用いた天然美容用品添加剤組成物およびにきびに有効な化粧品として製造され得る。
【0026】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものだけであり、実施例によって本発明の内容が限定されるのではない。
【実施例】
【0027】
実施例1:イワヤツデ根抽出物の製造
乾燥されたイワヤツデ根の2kgをメタノール4kgに加え、攪拌して3時間の間に抽出した。抽出液をろ過し、減圧濃縮してイワヤツデ根のメタノール抽出物を得た。前記イワヤツデ根のメタノール抽出物に酢酸エチル500gを入れて1時間の間に溶媒抽出した。抽出液をろ過し、減圧濃縮および凍結乾燥して粉末形態のイワヤツデ根の酢酸エチル抽出物を得た。
【0028】
実施例2:イワヤツデ根の抽出物から活性成分の分離
前記実施例1で得たイワヤツデ根の酢酸エチル抽出物をクロロホルム:メタノールが10:1である溶媒を使用してシリカゲルカラム薄層クロマトグラフィーを行って活性分画を得た。前記の活性分画をクロロホルム:メタノールが30:1である溶媒を使用してシリカゲルカラム薄層クロマトグラフィーを行って純粋な化合物1および化合物2を得た。前記の化合物1および化合物2は、物質の性状、分子量、分子式、偏光度および13C−NMRスペクトルを測定してそれぞれアセリフィル酸A(aceriphyllic acid A)および3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸(3-oxo-12-oleanen-27-oic acid)で同定した。
<化合物1>アセリフィル酸A

1)性状:白色粉、
2)分子量:472、
3)分子式:C30484、
4)偏光度([α]):84.4(c 1.09,CHCl)、
5)13C−NMR(75MHz,CDCl):36.68(C−1)、26.05(C−2)、75.81(C−3)、40.15(C−4)、46.72(C−5)、18.08(C−6)、33.0(C−7)、35.97(C−8)、49.47(C−9)、39.65(C−10)、22.91(C−11)、124.42(C−12)、139.86(C−13)、57.03(C−14)、22.41(C−15)、28.10(C−16)、31.00 (C−17)、42.13(C−18)、44.21(C−19)、33.4(C−20)、34.29(C−21)、36.82(C−22)、70.24 (C−23)、18.08(C−24)、16.45(C−25)、18.35(C−26)、181.3(C−27)、28.44(C−28)、33.21(C−29)、24.01(C−30)。
<化合物2>3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸

1)性状:白色粉、
2)分子量:454、
3)分子式:C3046
4)偏光度([α]):106.42(c 1.09,CHCl)、
5)13C−NMR(75MHz,CDCl):39.2(C−1)、34.2(C−2)、218.1(C−3)、47.1(C−4)、54.7(C−5)、19.8(C−6)、36.1(C−7)、40.0(C−8)、46.3(C−9)、36.9(C−10)、23.1(C−11)、125.7(C−12)、138.2(C−13)、56.1(C−14)、22.8(C−15)、27.9(C−16)、33.0(C−17)、49.4(C−18)、44.4(C−19)、31.3(C−20)、34.0(C−21)、36.7(C−22)、21.6(C−23)、27.3(C−24)、16.5(C−25)、18.1(C−26)、181.0(C−27)、28.5(C−28)、 33.9(C−29)、23.8(C−30)。
【0029】
比較例1:イワヤツデ地上部抽出物の製造
乾燥されたイワヤツデ地上部を前記の実施例1と同様な方法で抽出してイワヤツデ地上部の抽出物を得た。
【0030】
実験例1:イワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分の抗菌活性測定
本発明のイワヤツデ抽出物およびそれから分離した活性成分の抗菌活性を調べてみるために、下記のような実験を行った。
試験菌は、ミューラーヒントン培地(Mueller Hinton broth)で培養して液体培地希釈法(broth microdilution)により抗菌活性を測定した。対数期中期まで培養した試験菌液を同じ培地に10/mlになるように菌株を合わせた後、96ウェルプレートにウェル当り0.2mlずつ菌株した後に、前記実施例1および2、比較例1で製造した試料を2倍数ずつ希釈して処理した。30℃で18時間培養して細菌の生育を650nmで測定した。細菌の生育を完全に阻害する化合物の最小濃度をMICと定義した。
にきび菌(Propionibacterium acnes)に対しては、RCMI液体培地で嫌気的条件で培養して液体培地希釈法により抗菌活性を測定した。試験菌を液体培地で37℃で1−2日間前培養した。培地3mlにDMSOで溶かした15μlの試験物質を入れて32ppmになるようにし、2倍数希釈して7種類の濃度に作った後、菌の濃度が105−6cfu/mlになるように前培養液を添加して1−3日間培養した後に細菌の生育を調査した。
イワヤツデ抽出物の抗菌活性は、黄色ブドウ球菌を対象に測定し、アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸の抗菌活性は、15菌株を対象に測定した。比較物質としては、市販の抗生剤であるトリクロサン(triclosan)、オキサシリン(oxacillin)およびノルフロキサシン(norfloxacin)を使用した。
イワヤツデ抽出物の抗菌活性は、表1に示し、イワヤツデ抽出物、アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸の抗菌活性は、表2に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示されたように、イワヤツデ地上部抽出物の黄色ブドウ球菌に対するMICは、200μg/mlである反面、イワヤツデ根抽出物の黄色ブドウ球菌に対するMICは、6.25μg/mlであって、イワヤツデ地上部抽出物よりも32倍強い抗菌活性を示した。また、イワヤツデ地上部抽出物とイワヤツデ根抽出物とは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus)、キノロン耐性黄色ブドウ球菌(Quinolone-resistant S. aureus)においても黄色ブドウ球菌と類似している抗菌活性を示した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2に示されたように、イワヤツデ抽出物は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus)、キノロン耐性黄色ブドウ球菌(Quinolone-resistant S. aureus)に対して、4〜16μg/mlのMICを示した。アセリフィル酸Aは、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、キノロン耐性黄色ブドウ球菌に対して、2〜4μg/mlのMICを示して強力な抗菌活性を示した。
3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸も黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、キノロン耐性黄色ブドウ球菌に対して、2〜8μg/mlのMICを示してアセリフィル酸Aと類似するか僅か弱い活性を示した。 また、アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、枯草菌(Bacillus subtilis)に対して1〜2μg/mlのMICを示した。
【0035】
また、イワヤツデ抽出物、アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、虫歯誘発菌(Streptococcus mutans)に対して、強力な抗菌活性を示した。イワヤツデ抽出物は、8μg/mlのMICを示し、アセリフィル酸Aは、2〜4μg/mlのMICを示し、3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、4μg/mlのMICを示して虫歯菌に強い抗菌活性を示した。
【0036】
そして、イワヤツデ抽出物、アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、にきび菌(Propionibacterium acnes)に対して強力な抗菌活性を示した。イワヤツデ抽出物は、8μg/mlのMICを示し、アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、2μg/mlのMICを示してにきび菌に対する強い抗菌活性を示した。
したがって、本発明のイワヤツデ抽出物、アセリフィル酸Aおよび3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、虫歯誘発菌およびにきび誘発菌を含む微生物に強力な抗菌活性を有することが分かる。
【0037】
下記に本発明の組成物のための製剤例を例示する。
製剤例1:散剤の製造
イワヤツデ抽出物(または、アセリフィル酸A或いは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸) 0.1g
ラクトース 1.5g
タルク 0.5g
前記の成分などを混合し、気密布に充填して散剤を製造した。
【0038】
製剤例2:錠剤の製造
イワヤツデ抽出物(または、アセリフィル酸A或いは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸) 0.1g
ラクトース 7.9g
結晶性セルロース 1.5g
マグネシウムステアリン酸 0.5g
前記の成分などを混合した後、直打法(direct tableting method)で錠剤を製造した。
【0039】
製剤例3:カプセル剤の製造
イワヤツデ抽出物(または、アセリフィル酸A或いは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸) 0.1g
とうもろこし澱粉 5g
カルボキシセルロース 4.9g
前記の成分などを混合して粉末を製造した後、前記粉末を通常のカプセル剤の製造方法によって硬質カプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0040】
製剤例4:注射剤の製造
イワヤツデ抽出物(または、アセリフィル酸A或いは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸) 0.1g
注射用滅菌蒸留水 適量
pH調節剤 適量
通常の注射剤の製造方法によって1アンプル当り(2ml)に前記の成分含量で製造した。
【0041】
製剤例5:液剤の製造
イワヤツデ抽出物(または、アセリフィル酸A或いは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸) 0.1g
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
通常の液剤の製造方法によって精製水に各々の成分を加えて溶解させ、レモン香を適量加えた後に前記の成分を混合した。次いで、精製水を加えて全体100mlに調節した後、褐色瓶に充填して滅菌させて液剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によるイワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aと3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus)、キノロン耐性黄色ブドウ球菌(Quinolone-resistant S. aureus)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、枯草菌(Bacillus subtilis)またはストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、にきび菌(Propionibacterium acnes)に対して、強力な抗菌活性を示した。したがって、本発明によるイワヤツデ抽出物およびそれから分離したアセリフィル酸Aと3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、病原性細菌、耐性菌、虫歯誘発菌およびにきび誘発菌の予防または、治療に有用に使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イワヤツデ抽出物(Aceriphyllum rossii extract)を含む抗菌用薬学組成物。
【請求項2】
前記イワヤツデ抽出物は、イワヤツデ根抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌用薬学組成物。
【請求項3】
前記イワヤツデ抽出物は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus)、キノロン耐性黄色ブドウ球菌(Quinolone-resistant S. aureus)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、枯草菌(Bacillus subtilis)およびストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、にきび菌(Propionibacterium acnes)から構成される群より選択される一つ以上の微生物に対して抗菌活性を示すことを特徴とする請求項1に記載の抗菌用薬学組成物。
【請求項4】
アセリフィル酸A(aceriphyllic acid A)または3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸(3-oxo-12-oleanen-27-oic acid)を含む抗菌用薬学組成物。
【請求項5】
前記アセリフィル酸Aまたは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、イワヤツデ根から抽出分離して得たものであることを特徴とする請求項4に記載の抗菌用薬学組成物。
【請求項6】
前記アセリフィル酸Aまたは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus)、キノロン耐性黄色ブドウ球菌(Quinolone-resistant S. aureus)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、枯草菌(Bacillus subtilis)およびストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、にきび菌(Propionibacterium acnes)から構成される群より選択される一つ以上の微生物に対して抗菌活性を示すことを特徴とする請求項4に記載の抗菌用薬学組成物。
【請求項7】
イワヤツデ抽出物を含む口腔用組成物。
【請求項8】
アセリフィル酸A(aceriphyllic acid A)または3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸(3-oxo-12-oleanen-27-oic acid)を含む口腔用組成物。
【請求項9】
前記アセリフィル酸Aまたは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、イワヤツデ根から抽出分離して得たものであることを特徴とする請求項8に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
請求項7または、請求項8の組成物を含む口腔衛生用品。
【請求項11】
前記口腔衛生用品は、歯磨き粉、口腔用洗浄剤および口腔用清浄剤から構成されるものである請求項10に記載の口腔衛生用品。
【請求項12】
イワヤツデ抽出物を含む抗にきび剤組成物。
【請求項13】
アセリフィル酸A(aceriphyllic acid A)または3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸(3-oxo-12-oleanen-27-oic acid)を含む抗にきび剤組成物。
【請求項14】
前記アセリフィル酸Aまたは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、イワヤツデから抽出分離して得たものであることを特徴とする請求項13に記載の抗にきび剤組成物。
【請求項15】
イワヤツデ抽出物を含むにきび改善化粧料組成物。
【請求項16】
アセリフィル酸A(aceriphyllic acid A)または3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸(3-oxo-12-oleanen-27-oic acid)を含むにきび改善化粧料組成物。
【請求項17】
前記アセリフィル酸Aまたは3−オキソ−12−オレアネン−27−オイック酸は、イワヤツデから抽出分離して得たものであることを特徴とする請求項16に記載のにきび改善化粧料組成物。

【公表番号】特表2012−508689(P2012−508689A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535492(P2011−535492)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006654
【国際公開番号】WO2010/055960
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(308035726)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】