説明

インキ吐出印刷物及びその製造方法

【課題】
本発明の課題とするところは、インキ吐出方式を利用して簡易なプロセスで安価に印刷物を製造するに際し、混色と白抜けを防止して高品質で信頼性の高い印刷物を提供し、また、その製造方法を提供することである。
【解決手段】
隔壁形成用の樹脂組成物に、樹脂組成物中の樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位との2つの部位を有する化合物(以下、撥インキ化合物とする。)を撥インキ剤として含ませて、この樹脂組成物を用いて基板上に隔壁を形成し、さらに隔壁の臨界表面張力を24〜30mN/mとした。すると、撥インキ化合物は隔壁と外界との界面に集中し、樹脂バインダーとの相溶性を示す部位が隔壁内側に配向し、前記化合物のうち撥インキ性を有する部位が隔壁外側に配向した。そして、このため、該隔壁が良好な撥インキ性を示すことを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインキ吐出装置を用いて製造された印刷物に関するものである。この印刷物としてはカラーフィルタが例示でき、このカラーフィルタの着色層をインキ吐出装置を用いて形成する。また、前記印刷物としてエレクトロルミネセンス素子も例示でき、この有機発光層をインキ吐出装置を用いて形成する。また、この外、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を印刷物として例示することができる。
【背景技術】
【0002】
例えば、前記カラーフィルタの着色層の形成方法は、従来種々の検討が重ねられており、代表的な方法として、フォトリソグラフィー方式、インキ吐出方式などが知られている。フォトリソグラフィー方式によるカラーフィルタの画素パターン形成は、基板全体に各色の感光性樹脂層の塗布膜を形成し、パターン状に露光した後に塗布膜の不要な部分を取りのぞき、残ったパターンを各画素とする。この方法では塗布膜の多くが現像除去されるため、大量の材料が無駄になる。さらに、各画素ごとに露光、現像工程を行うため、工程数が多くなる。このフォトリソグラフィー方式は、カラーフィルタに限らず、エレクトロルミネッセンス素子等、種々の光学素子や電気素子の製造に利用されている。
そして、フォトリソグラフィー方式の上記問題は、基板の大型化に伴い顕著となり、コスト、環境面ともに問題を呈するようになった。この問題を克服する方法として、近年インキ吐出方式により光学素子を製造する方式が注目されている。例えば、インキ吐出方式よってカラーフィルタを製造する場合には、R、G、Bの3色の樹脂組成物をインキとして用い、各色を同時に一度の工程で印刷することができる。このため、顔料等のインキ材料の無駄もほとんど発生せず、また、同時に3色画素の形成工程が短縮されるため、環境負荷の低減と大幅なコストダウンが期待できる。
【0003】
前述したようにインキ吐出方式は製造プロセスの簡略化及びコスト削減を図ることができることから、カラーフィルタやエレクトロルミネッセンス素子といった光学素子の製造へ応用されている。しかしながら、インキ吐出方式の問題として、「混色」、「白抜け」という問題がある。以下、カラーフィルタを製造する場合を例に挙げて説明する。
【0004】
「混色」とは、隣接する画素間において、インキが混ざり合い、異なる色の着色インキが混合してしまう不良である。混色は、吐出されたインキが、隔壁を超えてあふれてしまうことにより発生する。この問題を解決するため、インキ吐出方式を用いたカラーフィルタ基板の製造方法として、特許文献1〜5に記載されている方法が提案されている。特許文献1〜5には、インキのインキ吐出工程におけるインキのにじみ、混色を防止するため、含フッ素化合物等の撥インキ剤を含有させた黒色樹脂層をフォトリソグラフィー法等で形成し、隔壁とすることが記載されている。
【0005】
「白抜け」とは、主に付与されたインキが隔壁によって囲まれた領域内に十分且つ均一に拡散することができないことに起因して発生する不良であり、カラーフィルタにおいて、色ムラやコントラストの低下といった表示不良の原因となり、有機EL素子においては、ショートなどの原因となるピンホールとなる。白抜けは、隔壁の側面から撥インキ剤が滲出した場合に発生する。隔壁の側面からの撥インキ剤の滲出は加熱により促進する。図1を用いて説明すると、隔壁をフォトリソグラフィー法で形成する場合、隔壁となる樹脂組成物20を基板10に塗布後(図1(a))、マスクを用いて露光、現像(図1(b)(c))した後、隔壁を加熱(ポストベーク)する。この際に、図1(d)に示すように、隔壁の一部から撥インキ剤が滲出し、インキ吐出装置のインキ吐出部100(ヘッド部)から吐出したインキ41が濡れ広がらず、白抜けが発生する(図1(e))。
また、基板上に撥インキ剤を含む感光性樹脂組成物を塗布し、これを露光現像して隔壁とする際に、隔壁開口部内に存在する撥インキ剤が現像液により充分に除去されず、画素内に撥インキ剤が残存した場合にも、白抜けが発生する(図2(a)〜(e))。
【0006】
以下、インキ吐出装置を用いた光学素子の代表的な製造方法について特許文献1〜5に記載により説明する。特許文献1〜4にはインキ吐出方式で製造するカラーフィルタの隔壁に含フッ素材料を撥インキ剤として用いる方法が記載されている。この方法によると、インキ吐出装置による混色は防止することができるが、撥インキ剤の樹脂分子が全体的にフッ素原子を含むため、樹脂分子全体の極性が高く、インキ中に含まれる他の樹脂成分、溶媒成分との相溶性が低かった。このため、隔壁パターンの露光、現像後、加熱焼成する工程において、撥インキ剤が隔壁から画素に滲出して「白抜け」の問題が発生した。さらに、この撥インキ剤を用いて隔壁を形成しても、撥インキ成分が隔壁表面に集中せずに、撥インキ剤分子が分散してしまうため、十分な撥インキ性が得られず「混色」が生じることがあり、「混色」の問題を十分に解決したものとはいえなかった。
そこで、撥インキ剤を隔壁に密着させて画素内に滲出することを防止し、同時に充分な撥インキ性を保つため、撥インキ剤に片側を樹脂相溶性のあるアルキル基、反対側を撥インキ性のあるパーフルオロアルキル基とし、分子鎖の片側にのみ撥インキ性を付与した化合物を用いる方法が提案されている(特許文献5)。
【0007】
しかし、樹脂相溶性を有する分子鎖と撥インキ性を有する分子鎖が連結した構造を有する化合物を、撥インキ剤として用いても、撥インキ剤が容易に隔壁側面から滲出してしまい、「白抜け」の問題が解決することができなかった。
【特許文献1】特開平6−347637号公報
【特許文献2】特開平7−35915号公報
【特許文献2】特開平7−35916号公報
【特許文献4】特開平7−35917号公報
【特許文献5】特開平9−203803号公報(段落0030〜0035記載)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、インキ吐出方式を利用して簡易なプロセスで安価に印刷物を製造するに際し、混色と白抜けを防止して高品質で信頼性の高い印刷物を提供し、また、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ところで、本発明者らは、隔壁形成用の樹脂組成物に、樹脂組成物中の樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位との2つの部位を有する化合物(以下、撥インキ化合物とする。)を撥インキ剤として含ませて、この樹脂組成物を用いて基板上に隔壁を形成し、さらに加熱し、隔壁の臨界表面張力を24〜30mN/mに調整した。
このように作製した隔壁は、撥インキ化合物が隔壁表面と外界との界面に集中していた。さらに、撥インキ化合物のうち、樹脂バインダーとの相溶性を示す部位が隔壁内側に配向し、前記化合物のうち撥インキ性を有する部位が隔壁外側に配向した。そして、このため、該隔壁が良好な撥インキ性を示すことを見出した。
また、同時に、隔壁の側面から撥インキ剤が滲出することがないことを見出した。そして、このため、該隔壁を有する基板に対してインキ吐出装置でインキを吐出したところ、混色、白抜け不良を発生しなかった。
【0010】
また、本発明者らは、前記の撥インキ化合物を含み、さらに、臨界表面張力が30〜40mN/mであり、加熱装置を用い200℃で10分加熱した後の臨界表面張力が24〜30mN/mとなる樹脂組成物を、隔壁形成用樹脂組成物として用いた。すなわち、基板上にこの樹脂組成物を塗布した後、隔壁パターンを形成し、加熱した。
【0011】
すると、撥インキ化合物分子が樹脂組成物の中で移動し、前記化合物が隔壁と外界の界面に集中することを見出した。さらに、界面に集中した撥インキ化合物は、樹脂バインダーとの相溶性を示す部位が隔壁内側に配向し、前記化合物のうち撥インキ性を有する部位が隔壁外側に配向した。そして、このため、該隔壁が良好な撥インキ性を示すことを見出した。また、同時に、隔壁の側面から撥インキ剤が滲出することがないことを見出した。
そして、このため、該隔壁を有する基板に対してインキ吐出装置でインキを吐出したところ、混色、白抜け不良を発生しなかった。
【0012】
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
基板と、
この基板の表面を多数の領域に区分けする隔壁と、
前記多数の領域に、インキ吐出装置を用いて吐出形成されたインキ皮膜と、
を有するインキ吐出印刷物において、
前記隔壁が、樹脂バインダーと撥インキ剤とを含む撥インキ性材料から成り、
この撥インキ剤が、前記樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位とを有する化合物であり、
前記隔壁の臨界表面張力が24〜30mN/mであることを特徴とするインキ吐出印刷物である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、基板と、
この基板の表面を多数の領域に区分けする隔壁と、
前記多数の領域に、インキ吐出装置を用いて吐出形成されたインキ皮膜と、
を有するインキ吐出印刷物において、
前記隔壁が、樹脂バインダーと撥インキ剤とを含む撥インキ性材料から成り、
前記撥インキ剤が、前記樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位とを有する化合物であり、
前記撥インキ性材料が、樹脂組成物を加熱したものからなり、
前記樹脂組成物の臨界表面張力が30〜40mN/mであり、
前記樹脂組成物を200℃の条件で、10分加熱した後の前記樹脂組成物の臨界表面張力が24〜30mN/mであることを特徴とするインキ吐出印刷物である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、撥インキ性を有する部位がフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷物である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、撥インキ性を有する部位がパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインキ吐出印刷物である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、樹脂バインダーとの相溶性を有する部位がアルキル基、アルキレン基、ポリビニルアルコール基の主鎖を含む請求項1〜4のいずれかに記載のインキ吐出印刷物である。
【0017】
請求項6に記載のの発明は、前記隔壁が遮光層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインキ吐出印刷物である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記隔壁が黒色遮光部材を含む遮光層である請求項6に記載のインキ吐出印刷物である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が着色剤を含有するインキで形成された着色層であり、複数色の着色層を備えたカラーフィルタであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインキ吐出印刷物である。
【0020】
請求項9に記載の発明は、前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が有機発光材料を含有するインキで形成された有機発光層であり、複数色の有機発光層を備えた有機エレクトロルミネセンス素子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインキ吐出印刷物である。
【0021】
請求項10に記載の発明は、基板の表面に、この表面を多数の領域に区分けする隔壁と、前記多数の領域にインキ皮膜とを有するインキ吐出印刷物を製造する方法であって、
(a)基板上に樹脂組成物により隔壁を形成する工程と、
(b)前記基板を加熱する工程と、
(c)インキ吐出装置により多数の前記領域にインキを吐出してインキ皮膜を形成する工程と、
を含み、
前記樹脂組成物が、樹脂バインダーと、この樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位とを有する撥インキ剤を含み、
加熱工程前における前記隔壁の臨界表面張力が30〜40mN/mであり、
加熱工程後における前記隔壁の臨界表面張力が24〜30mN/mであることを特徴とするインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0022】
請求項11に記載の発明は、撥インキ性を有する部位がフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項10に記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0023】
請求項12に記載の発明は、撥インキ性を有する部位がパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項11に記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0024】
請求項13に記載の発明は、樹脂バインダーとの相溶性を有する部位がアルキル基、アルキレン基、ポリビニルアルコール基の主鎖を含む請求項10〜12のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0025】
請求項14に記載の発明は、前記隔壁が遮光層であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0026】
請求項15に記載の発明は、前記隔壁が黒色遮光部材を含む遮光層である請求項14に記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0027】
請求項16に記載の発明は、前記隔壁形成工程が、
(a1)基板上に感光性樹脂組成物を塗布する工程と、
(a2)前記基板上の感光性樹脂組成物を、隔壁パターンを有するマスクを通して露光する工程と、
(a3)前記基板を現像し、隔壁以外の不要部分を除去する工程と、
を含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0028】
請求項17に記載の発明は、前記隔壁形成工程が、
(a3)印刷法により、基板上に樹脂組成物をパターニングし、隔壁を形成する工程であることを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載のインキ吐出物の製造方法である。
【0029】
請求項18に記載の発明は、前記(d)前記基板を加熱する工程が150℃〜250℃で加熱する工程であることを特徴とする請求項10〜17のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0030】
請求項19に記載の発明は、前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が着色剤を含有するインキで形成された着色層であり、複数色の着色層を備えたカラーフィルタである請求項10〜18のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【0031】
請求項20に記載の発明は、前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が有機発光材料を含有するインキで形成された有機発光層であり、複数色の有機発光層を備えた有機エレクトロルミネセンス素子であることを特徴とする請求項10〜18のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、隔壁を形成する際に、隔壁界面に撥インキ剤を集中でき、撥インキ性を向上させることができる。また、同時に隔壁の側面から撥インキ剤が滲出することを防止することができた。これにより、混色、白抜けの発生しないインキ吐出印刷物をインキ吐出方式により簡易なプロセスによって歩留まり良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
なお、本発明に係る印刷物は、表示ディスプレイの表示画面を構成する光学部品として好適に利用できる。この場合には、多数の前記領域は表示画面を構成する画素に相当する。また、隔壁には黒色遮光部材を混合して遮光層としての機能を併せ持つことができる。
光学部品としては、例えば、カラー液晶ディスプレイの表示画面を構成するカラーフィルタが例示でき、この場合には、インキ皮膜は透過光を着色する着色層を構成し、この着色層は前記領域ごとに異なる色彩を有する複数色のものである。
また、光学部品として、有機エレクトロルミネセンス素子を例示することもでき、この場合には、インキ皮膜は有機発光材料層を構成する。また、前記領域ごとに異なる色彩を有する複数色の有機発光材料層である。
なお、この外、本発明に係る印刷物として、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を例示することができる。
【0034】
本発明の基板は、印刷物の支持基板として用いるものである。具体的には、硝子基板、石英基板、プラスチック基板等、ドライフィルム等、公知の透明基板材料を使用することができる。中でも硝子基板は、透明性、強度、耐熱性、耐候性において優れている。
【0035】
本発明の隔壁は、基板の表面を多数の領域に区分けすると共に、この多数の領域のそれぞれに吐出されたインキの混色を防止する機能を有するものである。本発明では、隔壁の臨界表面張力を24〜30mN/mに調整することにより、インキ混色を防止し、同時に白抜けを防止する。隔壁の臨界表面張力が24mN/m未満だと、撥インキ剤が隔壁から滲出し白抜けの問題が発生し、30mN/mを超えると、撥インキ性が不足し、インキの混色の問題が生ずる。
また、印刷物がディスプレイの表示画面を構成する光学部品である場合には、この隔壁に遮光性を付与することで、表示画面のコントラストを向上させることができる。いずれの場合であっても、隔壁を構成する樹脂組成物、樹脂バインダーと撥インキ剤とを必須成分として含有する必要がある。
樹脂バインダーは、隔壁を基板に固着して固定すると共に、隔壁に耐インキ性を付与するものである。バインダー樹脂としては、アミノ基、アミド基地、カルボキシル基、ヒドロキシル基を含有している樹脂が好ましい。具体的には、クレゾール−ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂バインダーは単独で用いても、2種類以上混合してもよい。
また、撥インキ剤は、隔壁にインキに対する撥インキ性を付与するものである。この撥インキ剤としては、前記樹脂組成物に、樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位とを有する化合物を用いる必要がある。このような両部位を有する撥インキ剤は、経時的に、あるいは加熱により、隔壁表面に表出する。そして、樹脂バインダーとの相溶性を示す部位を内側に、撥インキ性を有する部位を外側にして、隔壁表面に止まり、その表面に前記した最適な臨界表面張力を付与する。
撥水性を有する部位はフルオロアルキル基を用いることができ、より好ましくは、パーフルオロアルキル基であることがより好ましい。樹脂バインダーとの相溶性を示す部位としては、アルキル基、アルキレン基、ポリビニルアルコールなど公知の親油性のポリマーを用いることができる。
撥インキ剤として、その他に、後述する含フッ素化合物もしくは含ケイ素化合物を同時に用いることができる。前記含フッ素化合物の例として、具体的には、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化エチレン等や、これらの共重合体等のフッ化樹脂などを挙げられることができる。また、これらの含フッ素化合物は、単独または二種類以上併用して用いることができる。前記含ケイ素化合物として、主鎖または側鎖に有機シリコンを有するもので、シロキサン成分を含むシリコン樹脂やシリコーンゴムなどを挙げられることができる。また、これらの含ケイ素化合物は、単独または二種類以上併用して用いることができる。さらに、前記含フッ素化合物と含シリコン化合物、あるいはその他のインキ反発性の成分を併用しても良い。
本発明における撥インキ剤は、前記樹脂組成物に対し、好ましくは0.01重量%〜10重量%である。
また、前記黒色遮光部材は、隔壁に遮光性を付与し、表示画面のコントラストを向上させるものである。黒色遮光部材としては、黒色顔料、黒色染料、カーボンブラック、アニリンブラック、黒鉛、鉄黒、酸化チタン、無機顔料、及び有機顔料を用いることができる。これらの黒色遮光部材は単独で用いても、2種類以上混合してもよい。
また、樹脂組成物は、必要に応じて適当な溶媒にて希釈して使用することができる。上記溶媒の一例として具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、アセトン、シクロヘキサノン、エチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エチルエトキシアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2’エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等を用いることができる。溶媒の使用量は、基板上に印刷又は塗布した際に均質であり、ピンホール、塗りむらの無い塗布膜ができる塗布であることが望ましい。このような溶媒の含有割合として、樹脂組成物の全重量に対し、溶媒量が50〜97重量%になるよう調製することが好ましい。
【0036】
この他、樹脂組成物には、必要に応じて相溶性のある添加剤、例えばレベリング剤、連鎖移動剤、安定剤、増感色素、界面活性剤、カップリング剤等を加えることができる。
次に、隔壁の形成は、樹脂組成物を用いて、印刷法、フォトリソグラフィー法、転写法などで形成することができる。隔壁をフォトリソグラフィーによって形成する場合は、樹脂組成物に感光性を付与した感光性樹脂組成物を用いる。また、隔壁を印刷法で形成する場合には熱硬化性樹脂組成物などの樹脂組成物を用いることができる。
【0037】
<印刷法による隔壁形成>
まず、前記隔壁を印刷法で形成する場合を説明する。基板上に印刷装置を用いて、樹脂組成物(以下、印刷材料とする)を印刷する。印刷材料は、樹脂バインダーと撥インキ剤を必須成分とし、さらに、架橋剤、溶媒を含む。また、さらに黒色遮蔽部材、前記添加剤を添加してもよい。印刷材料の臨界表面張力は、30〜40mN/mであることがのぞましい。30mN/mより小さいと、印刷された樹脂組成物が基板表面の凹凸の影響を受けやすく、40mN/mを超えると印刷性が悪化する。続いて、印刷材料を100℃〜250℃、3分〜60分の範囲で加熱する。
【0038】
隔壁の臨界表面張力を最適化するため、印刷材料は特定の加熱条件で加熱した後の臨界表面張力が24〜30mN/mの範囲であることが好ましい。30mN/mを超えると、撥インキ性が足りず、後にインキをインキ吐出装置で吐出した際に白抜けの問題を生じる。一方、24mN/mより小さいと、撥インキ剤が印刷材料(隔壁)表面に集中しすぎるため、撥インキ剤が印刷材料(隔壁)側面から滲出し、白抜けの問題を生じる。特定の加熱条件とは、ホットプレート、熱風炉、遠赤外線炉等を200℃前後に温度設定し、約10分加熱した場合とする。
【0039】
<フォトリソグラフィー法による隔壁形成>
前記隔壁をフォトリソグラフィー法で形成する場合を説明する。基板上にスピンコーター、スリットコーター等を用いて樹脂組成物(以下、感光性樹脂組成物とする)を塗布する。感光性樹脂組成物は大きくポジ型とネガ型に分類され、ネガ型感光性樹脂組成物の場合、樹脂バインダー、モノマー、光重合開始剤、前記撥インキ剤を含む。ポジ型感光性樹脂組成物の場合、ポジ型感光性樹脂、前記撥インキ剤を含む。これら感光性樹脂組成物には、さらに、必要に応じて、架橋剤、黒色遮蔽部材、顔料、前記添加剤を添加してもよい。感光性樹脂組成物の臨界表面張力は、30〜40mN/mであることがのぞましい。30mN/mより小さいと、塗布された樹脂組成物は基板表面の凹凸の影響を受ける。40mN/mを超えると樹脂組成物の塗布性が悪化する。
【0040】
続いて、感光性樹脂組成物が一面に塗布された基板を隔壁パターンのマスクを用いて露光する。基板を現像液で現像し不要な感光性樹脂組成物を除去して、基板上に隔壁を形成する。塗布された樹脂組成物の臨界表面張力が30〜40mN/m以下であると、現像時、表面に撥インキ剤が適度に集中するため、樹脂組成物下部の現像が上部と比べて進行する。この結果、隔壁が逆テーパー形状となるため、インキ吐出装置を用いて吐出形成されたインキ皮膜の形状が平坦になるという効果を奏する。その後、隔壁を100℃〜250℃、3分〜60分程度で加熱する。
【0041】
隔壁の臨界表面張力を最適化するため、感光性樹脂組成物は特定の加熱条件で加熱した後の臨界表面張力が24〜30mN/mの範囲に調整することが好ましい。30mN/mを超えると、感光性樹脂組成物の撥インキ性が足りず、後に光学材料をインキ吐出装置で吐出した際に混色の問題を生じる。一方、24mN/mより小さいと、撥インキ剤が感光性樹脂組成物(隔壁)表面に集中しすぎるため、撥インキ剤が感光性樹脂組成物(隔壁)側面から滲出し、白抜けの問題を生じる。特定の加熱条件とは、前記印刷材料の場合と同様、ホットプレート、熱風炉、遠赤外線炉等を200℃前後に温度設定し、10分間加熱した場合である。
【0042】
<インキ吐出装置によるインキ皮膜の形成>
前記の方法により、基板上に撥インキ性を有する隔壁を形成し、この隔壁の開口部にインキ吐出装置を用いて、インキを吐出し、インキ皮膜を形成する。インキ吐出装置としては、吐出方法の相違によりピエゾ変換方式と熱変換方式があるが、特にピエゾ変換方式が好適である。インキの粒子化周波数は5〜100KHz程度、ノズル径は5〜80μm程度、ヘッドを複数個配置し、1ヘッドに多数個のノズルを組み込んだ装置を用いる事が好適である。その他、インキ吐出装置は公知のものを用いる事ができる。インキ皮膜形成後は必要に応じて、加熱を行い、インキの溶媒を乾燥、硬化することができる。
【0043】
<感光性樹脂組成物>
前記感光性樹脂組成物に適用されるモノマーとしては、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマー、オリゴマー、末端あるいは側鎖にビニル基あるいはアリル基を有する分子を用いることができる。具体的には(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、N−ビニル複素環類、アリルエーテル類、アリルエステル類、及びこれらの誘導体を挙げることができる。好適な化合物としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートなど比較的低分子量の多官能アクリレート等を挙げることができる。これらのモノマーは単独で用いても、2種類以上混合してもよい。モノマーの量は、バインダー樹脂100重量部に対して1〜200重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは50〜150重量部である。
【0044】
また、前記光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物が挙げられる。また、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン誘導体を使用することもできる。また、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体を使用しても良い。また、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体であっても良い。また、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体を使用することもできる。また、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキシド等のアシルフォスフィン誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(4’−メチルフェニル)イミダゾリル二量体等のロフィン量体、N−フェニルグリシン等のN−アリールグリシン類、4,4’−ジアジドカルコン等の有機アジド類、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボキシ)ベンゾフェノン、キノンジアジド基含有化合物等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種類以上混合してもよい。光重合開始剤の量は、バインダー樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは1〜20重量部である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施形態についてインキ吐出印刷物としてカラーフィルタを製造した例を詳細に説明する。
【0046】
(実施例1〜3、及び比較例1〜3)
以下、実施例1〜3、比較例1〜3について、表1に示す条件に基づいて、カラーフィルタを作製した例について説明する。
(ブラックマトリクス用感光性樹脂組成物の調合)
バインダー樹脂;V259(新日鉄化学社製) 100g
不飽和二重結合を有する化合物;ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.65g
光重合開始剤;オキシム系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル社製CGI−124) 4.95g
分散剤;黒色顔料を分散剤と共に溶剤に分散させた市販の溶液(御国色素社製)EX―2906 159g
撥インキ剤“モディパーF2020”(日本油脂製) (表1欄A参照)
溶剤;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート 201g
レベリング剤;BYK−330(ビックケミー社製) 0.003g
各成分を上記の割合で混ぜ、攪拌、溶解させることでブラックマトリクス(隔壁)形成に用いる感光性樹脂組成物Aを作製した。
【0047】
(ブラックマトリクス(隔壁)の作成)
基板として無アルカリガラス(コーニング社製「♯1737」)を用いた。該基板上に前記感光性樹脂組成物Aを、全面に膜厚2.0μmの薄膜状に塗布した。
【0048】
前記基板をプリベークした。その後格子状のパターンを有するフォトマスクを用いて、超高圧水銀灯により50mJ/cmで露光を行った。30秒間10%炭酸ナトリウム水溶液にて現像処理を行い、樹脂組成物の隔壁パターンを形成した。この樹脂組成物の臨界表面張力を測定した結果を表1欄(B)に示す。この樹脂を200℃/10分オーブン加熱した結果得られた臨界表面張力を表1欄(C)に示す。なお、臨界表面張力測定は、表面張力の異なる3液を滴下した際の接触角を測定し,Zismanプロットして行った。
【0049】
この基板をオーブンにいれ熱硬化処理を行った。加熱条件を表2欄(D)に示す。このようにして作製した隔壁の着色インキ(表面張力30mN/m)に対する接触角を測定した結果を表2欄(F)に示す。また、基板上の隔壁の臨界表面張力の結果を表2欄(E)に示す。実施例1〜3、比較例1〜3で作製したカラーフィルタの隔壁のOD値(光学濃度)は全て6であり、充分な遮光性を有することから、いずれも遮光層として使用できることを確認した。
【0050】
尚、OD値は、1μmの試料の入射光強度I、透過光強度Iから次式から求めた。
OD=−log(I/I
【0051】
(着色インキの調整)
メタクリル酸 20重量部
メチルメタクリレート 10重量部
ブチルメタクリレート 55重量部
ヒドロキシエチルメタクリレート 15重量部
乳酸ブチル 300重量部
を混合し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75重量部を加え70℃にて5時間の反応によりアクリル共重合体樹脂を得た。得られたアクリル共重合体樹脂を樹脂濃度が10重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し、アクリル共重合体樹脂の希釈液を得た。
【0052】
この希釈液80.1gに対し、顔料19.0g、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル0.9gを添加して、3本ロールにて混練し、赤色、緑色、青色の各着色ワニスを得た。なお、赤色顔料として、ピグメントレッド177を、緑色顔料としてピグメントグリーン36を、青色顔料としてピグメントブルー15を、各々使用した。
【0053】
得られた各着色ワニスに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、その顔料濃度が12〜15重量%、粘度が15cpsになるように、各々調整して添加し、赤色、緑色、及び青色着色インキを得た。
【0054】
(カラーフィルタの作製)
基板上に設けられたブラックマトリクスの開口部に対して、赤色、緑色、及び青色の着色インキを使用し、12pl、180dpiヘッドを搭載したインキ吐出装置により着色インキを吐出し、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)各々の着色層を形成した。実施例1〜3、比較例1〜3のインキ吐出工程による混色、白抜けの発生の有無を表2欄Gに示す。またカラーフィルタの、その他、カラーフィルタを観察した結果を表2欄Hに示す。実施例1〜3、比較例1〜3においては、ΔEab(色差)は良好であり、色むらの少ない良好なカラーフィルタであることがわかった。なお、ΔEab(色差)は、ミクロアナライザーにより測定した。結果を下記、表1、表2に示す。
【表1】

【表2】

【0055】
(実施例4〜6)
(ブラックマトリクス(隔壁)の作成)において、(D)加熱条件を変えた以外は、実施例1と同様の樹脂組成物、製造方法を用いて、基板上に隔壁を形成し、カラーフィルタを得た。このカラーフィルタの隔壁の接触角、臨界表面張力を表3に示す。
実施例4〜6作製したカラーフィルタは、いずれもインキ吐出工程において、混色、白抜けを生じることはなく、また着色層(インキ皮膜)は平坦であり、ΔEab(色差)はいずれも良好であった。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】白抜けが発生したインキ吐出印刷物の一例の説明図である。
【図2】白抜けが発生したインキ吐出印刷物の一例の説明図である。
【図3】本発明のインキ吐出印刷物の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10…基板
20…樹脂組成物
21…隔壁
22…隔壁開口部
23…インキ皮膜
24…インキ吐出印刷物
30…撥インキ剤
41…インキ
100…インキ吐出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
この基板の表面を多数の領域に区分けする隔壁と、
前記多数の領域に、インキ吐出装置を用いて吐出形成されたインキ皮膜と、
を有するインキ吐出印刷物において、
前記隔壁が、樹脂バインダーと撥インキ剤とを含む撥インキ性材料から成り、
この撥インキ剤が、前記樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位とを有する化合物であり、
前記隔壁の臨界表面張力が24〜30mN/mであることを特徴とするインキ吐出印刷物。
【請求項2】
基板と、
この基板の表面を多数の領域に区分けする隔壁と、
前記多数の領域に、インキ吐出装置を用いて吐出形成されたインキ皮膜と、
を有するインキ吐出印刷物において、
前記隔壁が、樹脂バインダーと撥インキ剤とを含む撥インキ性材料から成り、
前記撥インキ剤が、前記樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位とを有する化合物であり、
前記撥インキ性材料が、樹脂組成物を加熱したものからなり、
前記樹脂組成物の臨界表面張力が30〜40mN/mであり、
前記樹脂組成物を200℃の条件で、10分加熱した後の前記樹脂組成物の臨界表面張力が24〜30mN/mであることを特徴とするインキ吐出印刷物。
【請求項3】
撥インキ性を有する部位がフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷物。
【請求項4】
撥インキ性を有する部位がパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインキ吐出印刷物。
【請求項5】
樹脂バインダーとの相溶性を有する部位がアルキル基、アルキレン基、ポリビニルアルコール基の主鎖を含む請求項1〜4のいずれかに記載のインキ吐出印刷物。
【請求項6】
前記隔壁が遮光層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインキ吐出印刷物。
【請求項7】
前記隔壁が黒色遮光部材を含む遮光層である請求項6に記載のインキ吐出印刷物。
【請求項8】
前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が着色剤を含有するインキで形成された着色層であり、複数色の着色層を備えたカラーフィルタであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインキ吐出印刷物。
【請求項9】
前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が有機発光材料を含有するインキで形成された有機発光層であり、複数色の有機発光層を備えた有機エレクトロルミネセンス素子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインキ吐出印刷物。
【請求項10】
基板の表面に、この表面を多数の領域に区分けする隔壁と、前記多数の領域にインキ皮膜とを有するインキ吐出印刷物を製造する方法であって、
(a)基板上に樹脂組成物により隔壁を形成する工程と、
(b)前記基板を加熱する工程と、
(c)インキ吐出装置により多数の前記領域にインキを吐出してインキ皮膜を形成する工程と、
を含み、
前記樹脂組成物が、樹脂バインダーと、この樹脂バインダーとの相溶性を示す部位と撥インキ性を有する部位とを有する撥インキ剤を含み、
加熱工程前における前記隔壁の臨界表面張力が30〜40mN/mであり、
加熱工程後における前記隔壁の臨界表面張力が24〜30mN/mであることを特徴とするインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項11】
撥インキ性を有する部位がフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項10に記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項12】
撥インキ性を有する部位がパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項11に記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項13】
樹脂バインダーとの相溶性を有する部位がアルキル基、アルキレン基、ポリビニルアルコール基の主鎖を含む請求項10〜12のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項14】
前記隔壁が遮光層であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項15】
前記隔壁が黒色遮光部材を含む遮光層である請求項14に記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項16】
前記隔壁形成工程が、
(a1)基板上に感光性樹脂組成物を塗布する工程と、
(a2)前記基板上の感光性樹脂組成物を、隔壁パターンを有するマスクを通して露光する工程と、
(a3)前記基板を現像し、隔壁以外の不要部分を除去する工程と、
を含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項17】
前記隔壁形成工程が、
(a3)印刷法により、基板上に樹脂組成物をパターニングし、隔壁を形成する工程であることを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項18】
前記(d)前記基板を加熱する工程が150℃〜250℃で加熱する工程であることを特徴とする請求項10〜17のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項19】
前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が着色剤を含有するインキで形成された着色層であり、複数色の着色層を備えたカラーフィルタである請求項10〜18のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法。
【請求項20】
前記基板が透明基板であり、前記インキ皮膜が有機発光材料を含有するインキで形成された有機発光層であり、複数色の有機発光層を備えた有機エレクトロルミネセンス素子であることを特徴とする請求項10〜18のいずれかに記載のインキ吐出印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−25426(P2007−25426A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209629(P2005−209629)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】