インクカートリッジ

【課題】 弁部材が正規のストロークよりも大きく押圧されたとしても、弁部材としての機能を維持し、インクが外部に漏れ出したりインク中の水分等が蒸発するのを防止することができるインクカートリッジを提供すること。
【解決手段】
弁部材54が押し上げられると、側壁部36が引っ張られて伸長するのにともない、張出部37の開口37aが拡大する。過剰に押し上げられると、弁部材54が開口37aから飛び出してしまい、弁座部46aに密着する位置へ復帰することが不可能になるが、弁部材54が過剰に押し上げられようとすると、張出部37がリブ70の下端壁面70aに当接して、弁部材54の過剰な移動を規制することで、弁部材54が開口37aから飛び出すのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に着脱可能に装着されるインクカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の記録装置にインクを供給する為のインクカートリッジに関し、特許文献1には、インクカートリッジが記録装置から取り外された状態において、インクカートリッジ内からのインク漏れを防止できるインクカートリッジが開示されている。このインクカートリッジは、インクを貯留するインク室とそのインク室に貯留されたインクを外部に供給するインク供給口と、そのインク室とインク供給口との間に形成されたインク誘導室とを備えている。
【0003】
インク誘導室には弁部材が収容され、インク供給口には筒状パッキングが嵌合されている。弁部材は、インクの流路を塞ぐために圧縮バネにより筒状パッキングに弾接する方向に付勢され、インク室側からのインク漏れを防止している。インクカートリッジが記録装置に装着されると、インク供給針が筒状パッキング内に侵入し、圧縮バネの付勢に抗して弁部材をインク室側に押すことによりインクの流路が形成され、インクを供給可能に構成されている。
【0004】
しかしながら、上述したインクカートリッジでは、圧縮バネを利用して弁部材を移動させていたので、圧縮バネを取り付けるためにインクカートリッジの内部構造が複雑になるという問題点があった。また、圧縮バネは金属製のものが用いられていたので、樹脂製のインクカートリッジと一緒に廃棄処分できず、インクカーリッジを廃棄処分する場合には、インクカートリッジから圧縮バネを取り外す作業が必要となり廃棄コストが高くなるという問題点があった。
【0005】
そこで、この問題点を解決すべく、本願出願人は、この圧縮バネに代えて、弁部材の外周を包囲し、その弁部材の移動方向に伸縮可能な弾性を有する側壁部、その側壁部の一端から内側に屈曲してその側壁部とは反対側の弁部材の面に当接するように張出部をゴム状の弾性材料で一体に形成した支持部材を備え、側壁部の収縮により弁部材をインク流路を塞ぐ位置に付勢するようにしたものを本願より先に提案している。
【0006】
この支持部材により、インクカートリッジに圧縮バネを取り付ける必要はなくなるので、インクカートリッジの内部構造が複雑化するのを防止することができる。また、支持部材はゴム等の弾性材料で構成することができるので、インクカートリッジを廃棄処分する場合にも、インクカートリッジから支持部材を取り出す必要がなく、廃棄コストが高くなるのを抑制することができるのである。
【特許文献1】特開2001−113723号公報(第4図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した支持部材を備えたインクカートリッジを記録装置に装着する場合には、インク流路を塞いでいる弁部材を記録装置側の中空状のインク抽出管で押圧し、支持部材の側壁部をその付勢力に抗して伸長させ弁部材を移動させてインク流路を開放させていた。そのため支持部材の側壁部が伸長するためのスペースを確保しておく必要があった。
【0008】
しかしながら、悪戯や不適当なインクカートリッジの装着等により、所定のストロークよりも大きく弁部材が押圧される事があった。この場合、支持部材の側壁部が過剰に伸長し、弁部材が張出部との当接から外れ前記スペースに飛び出してしまい、弁部材がもとの閉塞位置に戻ることができなくなり、インクが外部に漏れ出し或いはインク中の水分等が蒸発してしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、弁部材が正規のストロークよりも大きく押圧されたとしても、弁部材としての機能を維持でき、インクが外部に漏れ出す或いはインク中の水分等が蒸発するのを防止することができるインクカートリッジを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために請求項1に記載のインクカートリッジは、記録装置本体に着脱可能に装着され、インクを貯留するインク室を備え、前記インク室と外部とを連通する連通室と、その連通室内に、前記インク室と外部との連通を塞ぐ第1状態と前記連通を開放する第2状態とに移動可能に配置される弁部材と、その弁部材の外周を包囲し、その弁部材の移動方向に伸縮可能な弾性を有する側壁部、その側壁部の一端から内側に屈曲してその側壁部とは反対側の前記弁部材の面に当接するように張出部を一体に有し、前記側壁部の弾性により前記弁部材を前記第1状態に付勢する支持部と、前記弁部材が前記側壁部を伸長させる方向に移動したとき、前記張出部が前記弁部材から外れる前に、前記弁部材の移動を規制する規制部とを備えている。
【0011】
請求項2に記載のインクカートリッジは、請求項1に記載のインクカートリッジにおいて、前記規制部は、前記張出部が前記弁部材から離れる前に、前記張出部が当接する壁面である。
【0012】
請求項3に記載のインクカートリッジは、請求項1または2に記載のインクカートリッジにおいて、前記支持部は、前記弁部材が当接する弁座部を有し、その弁座部、前記側壁部及び張出部をゴム状の弾性材料で一体に成形して備えている。
【0013】
請求項4に記載のインクカートリッジは、請求項3に記載のインクカートリッジにおいて、前記支持部の側壁部は、前記弁部材の外周を囲む筒状であって、前記張出部は、その中央に前記側壁部の内外を連通させる前記弁部材よりも小さい開口を有しており、前記張出部と前記規制部との間隔は、前記弁部材の前記移動方向と平行な方向の厚さとほぼ同等かそれよりも小さく構成されている。
【0014】
請求項5に記載のインクカートリッジは、請求項3または4に記載のインクカートリッジにおいて、前記規制部は、前記弁部材の移動方向において前記弁部材と対向する前記連通室の壁面によって構成されている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のインクカートリッジによれば、記録装置に装着されていない状態において、インク室と外部とを連通する連通室内の弁部材は、その外周を支持部の側壁部によって包囲されつつ、その側壁部とは反対側の面が支持部の張出部に当接され、インク室と外部との連通を遮断する第1状態に付勢されている。 一方、記録装置に装着されると、弁部材は側壁部を付勢力に抗して伸長させる方向に移動し、インク室と外部とを連通する第2状態になる。
【0016】
ここで、弁部材が所定のストロークよりも大きく押圧された場合には、弁部材に当接する張出部が弁部材から外れようとするが、張出部が弁部材から外れる前に規制部によって弁部材の移動が規制される。よって、張出部が弁部材から外れるのを防止し、弁部材がもとの遮断位置に戻らなくなることによるインクの漏れ出し或いはインク中の水分等の蒸発を防止することができる。
【0017】
請求項2に記載のインクカートリッジによれば、請求項1に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、規制部は張出部が弁部材から外れる前に張出部が当接する壁面によって構成されているので、壁面から張出部までの間隔を所定の大きさに設定することで壁面を規制部として機能させることができ、インクカートリッジの内部構造を簡略化することができるという効果がある。
【0018】
請求項3に記載のインクカートリッジによれば、請求項1または2に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、支持部は、弁部材が当接する弁座部を有し、その弁座部、側壁部及び張出部をゴム状の弾性材料で一体に成形して備えているので、部品点数を削減することができる。従って、インクカートリッジの製造工程を簡略化することができるという効果がある。
【0019】
また、弁座部を弾性材料で構成することで弁部材との密着性を向上させることができ、弁部材が弁座部に着座した場合に、外部と確実に遮断することができるという効果がある。
【0020】
請求項4に記載のインクカートリッジによれば、請求項3に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、万一、何等かの原因で弁部材が張出部から外れ、規制部と張出部との間の空間に弁部材が飛び出してしまうような事があったとしても、開口は、弁部材よりも小さく構成されており、また、張出部と規制部との間隔は、弁部材の移動方向と平行な方向の厚さとほぼ同等かそれよりも小さく構成されているので、飛び出してしまった弁部材は、規制部によって押圧されつつ開口を塞ぐ状態となり、外部と遮断状態に維持することができるという効果がある。
【0021】
請求項5に記載のインクカートリッジによれば、請求項3または4に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、規制部は、弁部材の移動方向において弁部材と対向する連通室の壁面によって構成されているので、連通室の壁面に規制部としての機能を持たせることができ、インクカートリッジの内部構造を簡略化することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例におけるインクカートリッジ1と、そのインクカートリッジ1を装着するインクジェット記録装置2とを示した概略図である。
【0023】
インクカートリッジ1は、インクを吐出する記録ヘッド7を備えたインクジェット記録装置2に着脱可能に構成され、記録ヘッド7に供給するインクを貯留するためのものである。
【0024】
インクカートリッジ1は、上面を開放した中空箱状の本体ケース1aと、その本体ケース1aの開放上面を密閉する蓋1bとを備え、記録ヘッド7に供給するインクは本体ケース1aの内部に形成されるインク室16(図2参照)に貯留されている。尚、インクジェット記録装置2には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のカラーインクがそれぞれ充填された複数個のインクカートリッジが装着される。
【0025】
インクジェット記録装置2は、インクカートリッジ1を着脱可能に装着する装着部3と、インクカートリッジ1から可撓性のインク供給チューブ4を介して供給されるインクを貯留するタンク5と、そのタンク5に貯留されたインクを記録用紙6に向けて吐出する記録ヘッド7と、タンク5と記録ヘッド7とが搭載され水平方向に往復動作するキャリッジ8と、そのキャリッジ8が往復移動するガイドとなるキャリッジ軸9と、記録用紙6を搬送する搬送機構10と、パージ装置11とを備えている。
【0026】
装着部3は、ベース部3aと、そのベース部3aの両側から立設するガイド部3bとから成り、ガイド部3bに挟まれたベース部3aには、インクカートリッジ1内に貯留されたインクを抽出する中空状の突出したインク抽出管12と、インクカートリッジ1内に大気を供給する大気供給路13とが配設されている。
【0027】
このインク抽出管12の一端側には、インク供給チューブ4が連結され、インク抽出管12は、インク供給チューブ4を介してタンク5と連通されている。大気供給路13には、大気供給チューブ15の一端が連結され、他端は、大気に連通されている。
【0028】
記録ヘッド7には、記録用紙6と対向する面に複数のノズル孔が備えられ、圧電素子からなるアクチュエータを駆動することによって、ノズル孔からタンク5に貯留されたインクが記録用紙6に向けて吐出される。尚、実際に記録動作をする場合には、記録ヘッド7を搭載したキャリッジ8が往復移動しながら、記録用紙6に記録が行われる。
【0029】
また、記録ヘッド7は、装着部3よりも上方に配置されており、ノズル孔内のインクは、装着部3に装着されたインクカートリッジ1とノズル孔との水頭差により負の圧力(背圧)が与えられている。
【0030】
パージ装置11は、記録範囲外であって記録ヘッド7に対向するように配置されており、記録ヘッド7のノズル孔形成面を覆うパージキャップ11aと、パージキャップ11aと連通する廃インクチューブ11bと、廃インクチューブ11bを介してノズル孔からインクを吸引するポンプ11cとを備えている。
【0031】
パージ処理を実行する場合には、キャリッジ8をパージ処理実行位置に移動させ、記録ヘッド7のノズル孔形成面をパージキャップ11aで覆う。この状態でポンプ11cを駆動して、記録ヘッド7の内部に溜まる気泡などを含んだ不良インクを吸引する。吸引された不良インクは、廃インクチューブ11bを介して図示しない廃インクタンクに貯められる。なお、記録動作やパージ処理は、インクジェット記録装置2に搭載された中央演算装置であるCPU(図示せず)の下で制御される。
【0032】
次に、図2および図3をを参照して、インクカートリッジ1のインクジェット記録装置2へ装着されるジョイント部分(図1のA部分)の構成について説明する。図2は、インクジェット記録装置2に装着する前の状態を、図3は装着した後の状態を示すジョイント部分の断面図である。
【0033】
インクカートリッジ1は、インク室16を形成する底壁1cと周壁1iとを有し上面が開放された本体ケース1aと、その本体ケース1aの開放上面を覆う蓋部材1bと、本体ケース1aの底壁1cをキャップするキャップ部材1eとにより構成され、本体ケース1aに蓋部材1bおよびキャップ部材1eとを溶着してインクカートリッジ1が形成される。キャップ部材1eには、後述する弁装置23、24を外部に露出する2つの露出孔1f、1gがそれぞれ形成されている。
【0034】
底壁1cの下面には、インク室16内のインクを外側に供給するために開口した供給側連通室30と、インク室16内に大気を導入するために開口した大気側連通室50とが形成されている。両連通室30,50は、底壁1cの下面からそれぞれ一体に突出形成された筒壁1h、1k内に画定されている。
【0035】
また、供給側連通室30内の底壁1cには、供給側連通室30とインク室16との間を連通するインク供給口1dが形成されており、大気側連通室50内の底壁1cには、大気側連通室50とインク室16との間を連通する大気導入口1jが形成されている。この大気導入口1jは、実質的に大気側連通室50と実質的に同径に形成されている。大気導入口1jに対応する底壁1cの上面には、中空筒部材62がインク室16内に突出して形成さている。
【0036】
中空筒部材62は、大気導入口1jから連続してインク室16に向けて断面視先窄まり状に延びて形成される第1の内部流路62aと、その第1の内部流路62aから連続してインク室16に向けて帯状に延びる第2の内部流路62bとを内部に有し、この第1の内部流路62aと第2の内部流路62bとを介して大気側連通室50をインク16内のインク液面より上に開口させている。
【0037】
この第1の内部流路62aとそれに隣接する大気側連通室50の上部の各内面に連続して、後述する弁部材65のガイド棒66に向けて張り出す複数枚のリブ70が形成されている。このリブ70の下端の壁面70aと後述する支持部材63の張出部73との間隔T1は、図3に示すように、インクカートリッジ1をインクジェット記録装置2に装着した状態でも張出部73がリブ70の下端の壁面70aと間隔(上記T1よりも小さい)をおくように構成されている。
【0038】
また、供給側連通室30の内面には、底壁1c下面から供給側連通室30内に収容されている後述する支持部材46の張出部37に向けて張り出す所定枚数のリブ71が形成されている。このリブ71の下端の壁面71aと張出部37との間隔T2は、図3に示すように、インクカートリッジ1をインクジェット記録装置2に装着した状態で張出部37がリブ71の下端の壁面71aと間隔(上記T2よりも小さい)をおくように構成されている。
【0039】
更に、連通室30、50には、それぞれ弁装置23,24が配置されている。供給側の弁装置23は、ゴム状の弾性部材で一体に製作された支持部材46と、樹脂材料で構成された弁部材54とを備えている。支持部材46は、ほぼ円筒形の外形をなし、弁座部46a、その弁座部46aよりもインク室16側に付勢部46b、弁座部46aの外周に取付部33を一体に成形して構成される。弁部材54は、付勢部46bによって弁座部46aに当接する方向に付勢されてその付勢部46b内に収容されている。
【0040】
取付部33は、付勢部46bの外径よりも大きく形成されている。また、連通室30は、取付部33を収納するために外側へ径が大きくなる段状面44を有している。支持部材46は、取付部33をキャップ部材1eと段状面44との間に挟持して固着されている。
【0041】
弁座部46aはその中央に軸線方向に貫通した開口41、その開口41の下部に挿入口35、さらにその下部にテーパ状の誘導路40を有する。挿入口35は、インクカートリッジ1が装着部3に装着されたとき、インク抽出管12が密着して挿入される大きさに形成さている。
【0042】
付勢部46bは、弁座部46aの外周からインク室16側に円筒状に立ち上がった側壁部36と、その側壁部36と連接し弁部材54のインク室16側に当接するように内側に張り出した張出部37とにより形成され、張出部37の中央に開口37aを有し、この開口37aの直径d1は、後述する弁部材54の突起部材57aの直径d2(図4参照)よりも小さく構成されている。
【0043】
付勢部46bは、弁部材54を弁座部46aに当接させる方向に、側壁部36と張出部37との弾性力により弁部材54を付勢し、常態では弁部材54を弁座部46aに密着させている。また、インク抽出管12が挿入孔35に挿入されて弁部材54をインク室16側に押し上げることで、側壁部36が伸びて張出部37を押し上げ、弁部材54の底部と弁座部46aとの間にインク流路のための隙間が形成される。
【0044】
弁部材54は、図4に示すように、底部57と、その底部57の外周より垂直で上方にかつ円筒状に延びる弁側壁部56と、底部57と弁側壁部56とに渡って連続して形成された連通路58とを備えている。底部57は、弁座部46aと対向する端面に、連通路58よりも中心側でかつ開口41よりも外側となる位置に、弁座部46a側に突起し環状に形成された突起部材57aを有している。突起部材57aは、付勢部46bの押圧により弁座部46aを弾性変形させてその弁座部46aの上面に密着する。この突起部材57aの直径d2は、上述した張出部37の中央に開口する開口37aの直径d1よりも大きく構成されている。
【0045】
一方、弁装置24は、弁装置23と同様に、ゴム状の弾性部材で一体に製作された支持部材63と、樹脂材料で構成された弁部材65とを備えている。支持部材63は、支持部材46と同様に弁座部63a、付勢部63b、取付部63eを一体に成形して構成されている。また、付勢部63bは、支持部材46の付勢部材46bと同様に弁座部63aの外周からインク室16側に円筒状に立ち上がった側壁部72と、その側壁部72と連接し弁部材65のインク室16側に当接するように内側に張り出した張出部73とにより形成され、張出部73の中央に開口74を有し、この開口74の直径d3は、後述する弁部材65の突起部材57aの直径d4(図4参照)よりも小さく構成されている。尚、これらの構成の機能は、支持部材46のものと同一であるので、その説明を省略する。
【0046】
弁座部63aには、後述する弁部材65の操作部材67が挿通される貫通口63cが形成され、その弁座部63aの下部には、貫通孔63cの周囲を囲むように、円筒状のシール部63dが一体に形成されている。
【0047】
弁部材65は、図5に示すように、上部にガイド棒66と下部に操作部材67とほぼ中央部に弁部68とを有する。弁部68は、図4に示す弁部材54と同様に、底部57と、弁側壁部56と、連通路58と、底部57下面の突起部材57aとを備えている。尚、弁部68は、弁部材54と同様に構成されているので、同様な構成については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
ガイド棒66は、底部57から垂直に立ち上げられた円筒形であり、付勢部63bの開口74を間隔をおいて貫通し、且つ、リブ70にその周囲を囲まれた状態に位置する。
【0049】
操作部材67は、底部57から垂直に下方に延設され突起であり、弁座部63aの貫通孔63cとの間に大気の流通のための間隔をおいて、その貫通孔63cを貫通して下方に突出している。
【0050】
このインクカートリッジ1が装着される装着部3には、インク供給側には、インク抽出管12が突出して形成され、インク抽出管12の下部周囲は、スポンジ等の多孔質弾性体3cが、凹部に埋設されている。この多孔質弾性体3cは、万が一、インクがインク供給側から漏れた場合に、その漏れたインクを吸収するために設けられている。
【0051】
インク抽出管12の上端には、その内部流路と外周とを半径方向に接続する連通口12aが欠切状に形成され、インク抽出管12が弁部材54に当接したとき、インク抽出管12の内部流路とインク室16との連通を確保する。
【0052】
大気導入側は、インクカートリッジ1の支持部材63に形成されたシール部63dに対応して、凹部3dが形成され、その凹部3dには、操作部材67の下端とずれた位置に大気供給路13が形成されている。凹部3dは、図3に示すように、インクカートリッジ1が装着部3に装着された場合に、シール部63dが嵌め込まれ、そのシール部63dの先端が弾性変形してこの凹部3dの底部に密着し、大気供給路13と大気導入口1jとを外側に対してシールして連通状態にする。
【0053】
次に、図2および図3を参照して、インクカートリッジ1を装着部3に装着する場合のインクカートリッジ1の状態について説明する。図2に示すように、インクカートリッジ1が、装着部3に装着される前の状態においては、大気導入側は、操作部材67が、キャップ1eの底面から下方に突出し、その下端は、シール部63dの最下端より少し上方に位置するように配設されていて、弁部材65は、付勢部63bにより付勢されて弁座部63aに密着している。一方、インク供給側も同様に、弁部材54が付勢部46bにより付勢されて弁座部46aに密着している。
【0054】
そして、図3に示すように、インクカートリッジ1が装着部3に装着された場合には、インク供給側は、インク抽出管12の先端が、弁部材54を押し上げ、それに伴い、付勢部46bの側壁部36が伸長され、弁部材54が弁座部46aから離れることで、弁装置23が開放される。よって、インク室16内に貯留されているインクは、インク供給口1d、供給側連通室30、張出部37に開口する開口37a、弁部材54の連通路58(図4参照)、インク抽出管12の連通口12aを介して、インク抽出管12内に供給される。
【0055】
一方、大気導入側は、凹部3dの底に操作部材67の先端が当接し、弁部材65が固定された状態で、支持部材63の弁座部63aが下方に移動され、相対的に弁部材65を押し上げられ、それに伴い、付勢部63bの側壁部72が伸長され、弁部材65が弁座部63aから離れることで、弁装置24が開放される。この際、弁部材65のガイド棒66は、リブ70の縦方向の縁をガイド部として、それに沿って移動するので、弁部材65が鉛直方向から傾いた方向に移動しようとしても、その移動がリブ70によって規制されるので、弁部材65を略鉛直方向に移動させることができる。
【0056】
こうして、弁装置24が開放されると、大気供給路13、操作部材67と貫通孔63cとの間の隙間、弁部材65の連通路58(図5参照)、ガイド棒66と張出部73に開口する開口74との隙間、大気連通室50、第1の内部流路62aのリブ70の間、第2の内部流路62bを介してインク室16内と外部とが連通される。
【0057】
次に、図6を参照して、インクカートリッジ1の不適当な装着や悪戯等によって正規のストロークよりも大きく弁部材54,65が押し上げられた場合について説明する。
【0058】
弁部材54,65のそれぞれを支持する支持部材46,63は、ゴム状の弾性部材で構成されているため、弁部材54,65が押し上げられると、側壁部36,72が引っ張られて伸長するのにともない、張出部37,73が傾斜して張出部37,73の開口37a,74が拡大する。側壁部36,72が所定量伸長された状態でさらに押し上げられると、弁部材54,65が張出部37,73を大きく傾斜させて開口37a,74をさらに拡大し、開口37a,74から飛び出してしまう。その結果、弁部材54,65が弁座部46a,63aに密着する位置へ復帰することが不可能になる。
【0059】
本実施例のインクカートリッジでは、リブ71,70の下端壁面71a,70aが弁部材54,65の過剰の移動を規制する規制部として作用する。すなわち、開口37a,74が弁部材54,65よりも大きくなって弁部材54,65が張出部37,73から外れる前に、図6に示すように、張出部37,73の上面がリブ71,70の下端壁面71a,70aに当接するように、張出部37,73の上面とリブ71,70の下端壁面71a,70aとの間隔T1,T2が設定されている。
【0060】
よって、弁部材54,65が過剰に押し上げられようとしても、弁部材54,65が開口37a,74から飛び出すのを防止でき、弁装置23,24が開放状態のまま放置されて、インクが外部に漏れたり、インク中の水分等が蒸発してインクが増粘する等のことがなくなる。なお、インクが漏れるのは、インク供給側の弁装置23からだけではなく、インクカートリッジは持ち運び中に転倒する等して、第1及び第2の内部流路62a,62bにインクが侵入しており、上記のように大気導入側の弁装置24が開放したときには、その弁装置からインクが漏れることもあり得る。また、同様に、インク供給側の弁装置23から水分等が蒸発することもあり得る。
【0061】
なお、弁部材54,65が鉛直方向(すなわち正規の方向)から傾いた方向に押し上げられると、側壁部36,72の一部が大きく引っ張られて開口37a,74がそれに対応する方向に変形して伸長し、弁部材54,65が開口37a,74から飛び出しやすくなる。本実施例の大気導入側の弁装置24においては、上記のとおり、ガイド棒66とリブ70との摺動によって略鉛直方向に案内しているので、側壁部36,72の一部のみが大きく引っ張られることがなく、したがって、この構造によって、弁部材54,65が開口37a,74から飛び出してしまうのを少なくすることができる。本実施例では、大気導入側の弁装置24においてこれを実施しているが、インク供給側の弁装置23においてもガイド棒を設けて、インク供給口1dまたはリブ71に案内させるようにすることもできる。
【0062】
さらに、支持部材46,63が製造上の誤差等により、設計上の所定寸法よりも小さく製作されたり、弁部材54,65の押し上げ力に対して側壁部36,72の伸長量が足りなかったりして、弁部材54,65が勢いよく押されて、弁部材54,65が開口37a,74から飛び出してしまったとしても、以下のとおり本実施例のインクカートリッジでは、弁装置23,24が開放状態になることを防止している。
【0063】
上記のように弁部材54,65の突起部57aの直径d2、d4は、開口37a,74の直径d1、d3よりも大きく形成され、また、上記間隔T1,T2は、弁部材54,65の突起部57aから弁側壁部56の上端までの高さ(すなわち弁部材54の移動方向と平行な厚さ)とほぼ同等またはそれよりも少し小さく形成されている。このため、図7に示すように、弁部材54,65が開口37a,74から飛び出すと、側壁部36,72が収縮し、張出部37,73が弁部材54,65の下面に沿ってもとの形状に復帰しようとし、その結果、弁部材54,65は、張出部37,73の上面とリブ71,70の下端壁面71a,70aとの間に挟まれ、弁部材54,65の下面によって開口37a,74を塞ぐ状態になる。よって、万が一、弁部材54,65が開口37a,74から飛び出してしまったとしても、弁装置23,24が開放状態(通常では復帰不可能であるが)のまま放置され、インクが外部に漏れる等のことがなくなる。
【0064】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0065】
例えば、上記実施例では、リブ70,71によって弁部材65,54の移動を規制する場合について説明したが、このリブ70に代えて、図8に示すように、大気側連通室50の天井壁面50aや、供給側連通室30の天井壁面30aに張出部37,73を当てて弁部材54の移動を規制するように構成しても良い。
【0066】
また、図8に示すように、第1の内部流路62aの内面を、ガイド棒66の外周から微少間隔をおいた円筒状とし、ガイド棒66をその第1の内部流路62aの内面に沿って摺動可能に案内するようにしてもよい。
【0067】
また、図9に示すように、供給側連通室30の天井壁から垂下するリブ72の下端壁面を張出部37の開口37aを介して弁部材54に直接対向させ、弁部材54が上昇したとき、リブ72が張出部37の開口37aに侵入して弁部材54に直接当接し、その弁部材54の過剰な移動を阻止するように構成してもよい。さらに、大気側連通室50の天井壁面73に、弁部材65のガイド棒66の上端を直接当接させて弁部材65の過剰な移動を阻止するように構成してもよい。この場合、天井壁面73とガイド棒66との当接状態において、大気との連通を確保できるように、その両者の一方に連通路66aを設けておく。
【0068】
また、上記実施例では、インクや大気の流通のために支持部材46,63の内外を連通させる開口37a,74を弁部材54,65の移動方向に開口させた場合について説明したが、この開口37a、74を設ける位置としては、かかる位置に限定されるものではなく、弁部材54,65を収容する支持部材46,63の内外を連通することができれば、例えば、支持部材46,63の側壁部36,72に設けるように構成しても良い。かかる場合には、弁部材54,65の連通孔58が不要になる。
【0069】
また、装着部の大気導入路13を、インク供給管12と同様に中空筒状に突出させるとともに大気連通側の弁装置24をインク供給側の弁装置23と同一構造のものにすることもできる。また、インク供給管12を装着部から突出しない形状とするとともにインク供給側の弁装置23を大気連通側の弁装置24と同一構造のものにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のインクカートリッジを装着するインクジェット記録装置を示した概略図である。
【図2】インクカートリッジをインクジェット記録装置に装着する前の状態を示す断面図である。
【図3】インクカートリッジをインクジェット記録装置に装着した状態を示す断面図である。
【図4】弁部材を示した図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はA−A線断面図、(d)は底面図である。
【図5】弁部材を示した図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【図6】弁装置の動作状態を説明するインクカートリッジの断面図である。
【図7】弁装置の動作状態を説明するインクカートリッジの断面図である。
【図8】第2実施例のインクカートリッジの部分的な断面図である。
【図9】第3実施例のインクカートリッジの部分的な断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 インクカートリッジ
2 インクジェット記録装置
16 インク室
30 供給側連通室
37 張出部
37a 開口
36 側壁部
46 付勢部
46a 弁座部
50 大気側連通室
54 弁部材
65 弁部材
70 リブ
70a リブの下端壁面
71 リブ
71a リブの下端壁面
73 張出部
72 側壁部
63a 弁座部
74 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置本体に着脱可能に装着され、インクを貯留するインク室を備えたインクカートリッジにおいて、
前記インク室と外部とを連通する連通室と、
その連通室内に、前記インク室と外部との連通を塞ぐ第1状態と前記連通を開放する第2状態とに移動可能に配置される弁部材と、
その弁部材の外周を包囲し、その弁部材の移動方向に伸縮可能な弾性を有する側壁部、その側壁部の一端から内側に屈曲してその側壁部とは反対側の前記弁部材の面に当接するように張出部を一体に有し、前記側壁部の弾性により前記弁部材を前記第1状態に付勢する支持部と、
前記弁部材が前記側壁部を伸長させる方向に移動したとき、前記張出部が前記弁部材から外れる前に、前記弁部材の移動を規制する規制部とを備えていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記規制部は、前記張出部が前記弁部材から離れる前に、前記張出部が当接する壁面であることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記支持部は、前記弁部材が当接する弁座部を有し、その弁座部、前記側壁部及び張出部をゴム状の弾性材料で一体に成形して備える請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記支持部の側壁部は、前記弁部材の外周を囲む筒状であって、前記張出部は、その中央に前記側壁部の内外を連通させる前記弁部材よりも小さい開口を有しており、
前記張出部と前記規制部との間隔は、前記弁部材の前記移動方向と平行な方向の厚さとほぼ同等かそれよりも小さく構成されていることを特徴とする請求項3に記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記規制部は、前記弁部材の移動方向において前記弁部材と対向する前記連通室の壁面によって構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−167950(P2006−167950A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359742(P2004−359742)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】