説明

インクジェットインク及びその製造方法

【課題】本発明は、画像濃度及び画像光沢度が高い画像を紙に形成することが可能なインクジェットインク及び該インクジェットインクの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、該インクジェットインクを用いるインクジェット記録装置及び該インクジェットインクが収容されているインクカートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】インクジェットインクは、カーボンブラック、分散剤、パール顔料及び水を含み、パール顔料は、表面処理されている酸化チタン粒子により雲母粒子の表面が被覆されており、表面処理されている酸化チタン粒子は、平均一次粒径が15nm以上50nm以下である酸化チタン粒子が表面処理剤により表面処理されており、波長が300nmの光の透過率が35%以上40%以下であり、波長が600nmの光の透過率が80%以上100%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク、インクジェットインクの製造方法、インクジェット記録装置及びインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットインクとして、顔料が分散剤により水中に分散しているインクジェットインクが知られている。
【0003】
特許文献1には、着色剤、白色系微粒子、ポリマー粒子、水溶性有機溶媒、及び水を含有するインクジェット用インク組成物が開示されている。このとき、白色系微粒子は、湿式法により製造された水可溶性成分量が0.2重量%以上の酸化チタン粒子を表面処理したものである。また、白色系微粒子の平均一次粒径が0.05μm以下であり、かつUV吸光法における波長300nmの透過率が35%以上、波長600nmの透過率が80%以上である。
【0004】
しかしながら、画像濃度及び画像光沢度が高い画像を紙に形成することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、画像濃度及び画像光沢度が高い画像を紙に形成することが可能なインクジェットインク及び該インクジェットインクの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、該インクジェットインクを用いるインクジェット記録装置及び該インクジェットインクが収容されているインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェットインクは、カーボンブラック、分散剤、パール顔料及び水を含み、前記パール顔料は、表面処理されている酸化チタン粒子により雲母粒子の表面が被覆されており、前記表面処理されている酸化チタン粒子は、平均一次粒径が15nm以上50nm以下である酸化チタン粒子が表面処理剤により表面処理されており、波長が300nmの光の透過率が35%以上40%以下であり、波長が600nmの光の透過率が80%以上100%以下である。
【0008】
本発明のインクジェットインクの製造方法は、平均一次粒径が15nm以上50nm以下であり、水に可溶な成分の含有量が0.20質量%以上0.35質量%以下である酸化チタン粒子を、表面処理剤を用いて表面処理する工程と、該表面処理されている酸化チタン粒子を用いて雲母粒子の表面を被覆してパール顔料を製造する工程と、カーボンブラック、分散剤及び前記パール顔料を含む組成物を水中に分散させる工程を有し、前記表面処理されている酸化チタン粒子は、波長が300nmの光の透過率が35%以上40%以下であり、波長が600nmの光の透過率が80%以上100%以下である。
【0009】
本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクジェットインクを吐出する手段を有する。
【0010】
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクジェットインクが収容されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像濃度及び画像光沢度が高い画像を紙に形成することが可能なインクジェットインク及び該インクジェットインクの製造方法を提供することができる。
【0012】
また、本発明によれば、該インクジェットインクを用いるインクジェット記録装置及び該インクジェットインクが収容されているインクカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明のインクジェットインクは、カーボンブラック、分散剤、パール顔料及び水を含む。
【0015】
一般に、カーボンブラックが分散剤により水中に分散しているインクジェットインクを吐出することにより形成される液滴が紙に着弾すると、水の蒸発に伴って、カーボンブラックが紙の繊維間に埋まってしまい、画像濃度が低下する。
【0016】
このため、本発明においては、カーボンブラックと、表面処理されている酸化チタン粒子により雲母粒子の表面が被覆されているパール顔料を併用する。これにより、カーボンブラックの紙の繊維間への埋まりを抑制すると共に、パール顔料が光を反射するため、画像濃度及び画像光沢度が高い画像を紙に形成することができる。
【0017】
なお、パール顔料の体積平均粒径は、粒度分布測定装置マイクロトラックUPA(日機装社製)を用いて測定される、パール顔料を水中に分散させた分散液の体積平均粒径である。
【0018】
カーボンブラック及びパール顔料の総質量に対するパール顔料の質量の比は、通常、0.05〜0.20であり、0.10〜0.15が好ましい。カーボンブラック及びパール顔料の総質量に対するパール顔料の質量の比が0.05未満であると、画像濃度及び画像光沢度が低下することがある。一方、カーボンブラック及びパール顔料の総質量に対するパール顔料の質量の比が0.20を超えると、黒文字画像が光り過ぎて読みにくくなることがある。
【0019】
表面処理されている酸化チタン粒子は、平均一次粒径が15〜50nmである酸化チタン粒子が表面処理剤により表面処理されている。酸化チタン粒子の平均一次粒径が15nm未満であると、製造することが困難になり、50nmを超えると、雲母粒子の表面を均一に被覆することが困難になって、パール顔料の分散安定性が低下する。
【0020】
なお、酸化チタン粒子の平均一次粒径は、公知の方法を用いて測定することができる。
【0021】
酸化チタンの結晶構造は、アナターゼ型(正方晶)、ルチル型(正方晶)及びブルサイト型(斜方晶)のいずれであってもよい。
【0022】
酸化チタン粒子の製造方法としては、特に限定されないが、金紅石、鋭錐石、板チタン石、イルメナイト等の鉱石に濃硫酸を加えて溶解させる硫酸法、鉱石を炭素物質と赤熱脱水して塩素ガスにさらす塩素法等の湿式法が挙げられる。
【0023】
湿式法においては、水酸化チタン(Ti(OH))を精製した後、加水分解により酸化チタン(TiO)の結晶を沈殿させる。このため、酸化チタン粒子は、水に可溶な成分を含む。
【0024】
水に可溶な成分としては、PO3−、SO2−、Cl等の無機酸の共役塩基;Na、Mg、Li等の金属イオン等の鉱石、触媒、シランカップリング剤等に含まれる成分が挙げられる。
【0025】
表面処理剤としては、特に限定されないが、イソブチルシラン、メチルシラン、トリメチルシラン、オクチルシラン、フッ素系シラン、γ−アミノシラン、イソブチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルシラン等のシランカップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネートカップリング剤;ジルコニウムカップリング剤;アルミナジルコニウムカップリング剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0026】
表面処理されている酸化チタン粒子の波長が300nmの光の透過率は、35〜40%である。表面処理されている酸化チタン粒子の波長が300nmの光の透過率が35%未満であると、表面処理されている酸化チタン粒子が凝集しているため、雲母粒子の表面を均一に被覆することが困難になる。一方、表面処理されている酸化チタン粒子の波長が300nmの光の透過率が40%を超えると、製造することが困難になる。
【0027】
表面処理されている酸化チタン粒子の波長が600nmの光の透過率は、80〜100%である。表面処理されている酸化チタン粒子の波長が600nmの光の透過率が80%未満であると、表面処理されている酸化チタン粒子が凝集しているため、雲母粒子の表面を均一に被覆することが困難になる。
【0028】
なお、表面処理されている酸化チタン粒子の波長が300nm及び600nmの光の透過率は、以下のようにして測定することができる。具体的には、まず、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル20gをビーカーに入れた後、濃度が1質量%になるように水を添加する。次に、超音波振動機W−113(本田電子社製)を用いて分散させた後、マグネチックスターラーを用いて攪拌し、測定溶媒を調製する。さらに、表面処理されている酸化チタン25mgを300ml三角フラスコに入れた後、測定溶媒250gを加え、マグネチックスターラーを用いて5分間攪拌する。次に、超音波振動機W−113(本田電子社製)を用いて、5分間分散させた後、分散液2gを30mlのサンプル瓶に入れ、水18gを加え、混合する。得られる試料を行路幅1cmのガラスセルに入れた後、紫外可視分光光度計UV−3100(島津製作所社製)にセットし、波長300〜700nmの範囲で光の透過率を測定する。
【0029】
表面処理剤を用いて酸化チタン粒子を表面処理する方法としては、特に限定されないが、表面処理剤を溶媒中に溶解させた溶液中に酸化チタン粒子を分散させる方法(例えば、特開平7−108156号公報参照)等が挙げられる。
【0030】
表面処理剤の添加量は、酸化チタン粒子に対して、通常、0.1〜50質量%である。
【0031】
溶媒としては、表面処理剤を溶解又は分散させることが可能であれば、特に限定されないが、水;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン、ヘキサン等の有機溶媒が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0032】
溶媒の添加量は、酸化チタン粒子100質量部に対して、通常、50〜5000質量部である。
【0033】
酸化チタン粒子の水に可溶な成分の含有量は、0.20〜0.35質量%である。酸化チタン粒子の水に可溶な成分の含有量が0.20質量%未満であると、酸化チタン粒子の溶媒中における分散性が低下して、酸化チタン粒子を均一に表面処理することが困難になる。
【0034】
なお、酸化チタン粒子の水に可溶な成分の含有量は、JIS K5116−1973に準拠して測定することができる。
【0035】
ルチル型の酸化チタン粒子の市販品としては、平均一次粒径が15nm、水に可溶な成分の含有量が0.35質量%のMT−150A(テイカ社製)、平均一次粒径が35nm、水に可溶な成分の含有量が0.20質量%のMT−500B(テイカ社製)、平均一次粒径が50nm、水に可溶な成分の含有量が0.30質量%のMT−600B(テイカ社製)等が挙げられる。
【0036】
表面処理されている酸化チタン粒子を用いて雲母粒子の表面を被覆する方法としては、特に限定されないが、表面処理されている酸化チタン粒子を分散媒中に分散させた分散液中に雲母粒子を分散させる方法等が挙げられる。
【0037】
分散媒としては、表面処理されている酸化チタン粒子及び雲母粒子を分散させることが可能であれば、特に限定されないが、水;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン、ヘキサン等の有機溶媒が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル)吸油量は、100〜180cm/100gであることが好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量が100cm/100g未満であると、ストラクチャーが大きいため、画像濃度が低下することがあり、180cm/100gを超えると、ストラクチャーが小さいため、カーボンブラックの分散安定性が低下することがある。
【0039】
なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217−4に記載されている方法を用いて測定することができる。
【0040】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、110〜350m/gであることが好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が110m/gが未満であると、ストラクチャーが大きいため、画像濃度が低下することがあり、350m/gを超えると、ストラクチャーが小さいため、カーボンブラックの分散安定性が低下することがある。
【0041】
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に記載されている方法を用いて測定することができる。
【0042】
カーボンブラックの体積平均粒径は、通常、80〜150nmであり、100〜130nmが好ましい。カーボンブラックの体積平均粒径が80nm未満であると、画像濃度が低下することがあり、150nmを超えると、インクジェットインクの吐出安定性が低下することがある。
【0043】
なお、カーボンブラックの体積平均粒径は、粒度分布測定装置マイクロトラックUPA(日機装社製)を用いて測定される、カーボンブラックを水中に分散させた分散液の体積平均粒径である。
【0044】
カーボンブラックは、カーボンを酸化処理する過程で生成する分解生成物が残存していることが好ましい。これにより、カーボンブラックの水に対する分散安定性を向上させることができる。
【0045】
分解生成物は、−CH、−CH−CH−、−CH−、−NH−、−O−、−S−、−OCH、芳香族環等の疎水基と、−OH、−COOH、−SOH等の親水基を有する。
【0046】
なお、親水基は、カーボンブラックを中和する際に一部が中和され、中和された親水基は、水中で、−O、−COO、−SOとして存在している。
【0047】
分解生成物を確認する方法としては、カーボンブラックの分散液を60℃で48時間程度加熱した後、限外濾過膜を用いて分離することにより得られる液体を乾燥させ、IRを用いて分解生成物の官能基を定性分析する方法が挙げられる。
【0048】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、チャンネル法、オイルファーネス法、ファーネス法、アセチレンブラック法、サーマルブラック法等の公知の製造方法を用いて製造されているものを用いることができる。
【0049】
カーボンブラックの市販品としては、#2200B、#2300、#2350、#2400B、#2450B、#2600、#2650、#2700B、#650B、#750B、MA600、MCF88、#850、#900、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#260、#95、CF9、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#45L、#47、#50、#52、MA7、MA8、MA11、MA14、MA77、MA100、MA100R、MA100S、MA220、MA200RB、MA230(以上、三菱化学社製)、Raven700、同760ULTA、同780ULTRA、同790ULTRA、同820、同850、同860ULTRA、同880ULTRA、同890、同890H、同1000、同1020、同1035、同1040、同1060ULTRA、同1080ULTRA、同1100ULTRA、同1170、同1190ULTRA、同1200、同1250、同1255、同1500、同2000、同2500ULTRA、同3000(以上、Columbian社製)、REGAL99R、同250R、同300R、同330R、同400R、同415R、同500R、同660R、MOGAL L、MONARCH700、同800、同880、同900、同1000、同1100、(以上、CABOT社製)、Color BlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、NIPex35、同60、同70、同90、同150、同160IQ、同170IQ、同180IQ、PRINTEX12、同25、同30、同31、同35、同55、同60、同60A、同75、同80、同85、同90、同95、同140U、同140V、同155C、同200、同300、同300IP、同301、SPECIAL BLACK4、同4A、同5、同6、同100、同250、同350、同550(以上、degussa社製)等が挙げられる。
【0050】
分散剤としては、特に限定されないが、高分子分散剤、界面活性剤等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、カーボンブラック及びパール顔料を効率良く分散させることができるため、一般式(1)で表わされるナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物が好ましい。
【0051】
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物であるが、nは1〜4であることが好ましい。
【0052】
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物中のnが2〜4であるナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物の含有量は、通常、20〜80質量%であり、35〜65質量%が好ましい。nが2〜4であるナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物の含有量が20質量%未満であると、インクジェットインクの分散安定性が低下することがあり、80質量%を超えると、インクジェットインクの粘度が増大することがある。
【0053】
カーボンブラック及びパール顔料の総量に対する分散剤の質量比は、通常、0.02〜2であり、0.25〜1が好ましい。カーボンブラック及びパール顔料の総量に対する分散剤の質量比が0.02未満であると、インクジェットインクの分散安定性が低下することがあり、2を超えると、インクジェットインクの粘度が増大することがある。
【0054】
カーボンブラック、分散剤及びパール顔料を含む組成物を水中に分散させる装置としては、特に限定されないが、ボールミル、サンドミル、アトライタ、ロールミル、ビーズミル、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、振動攪拌機等が挙げられる。
【0055】
本発明のインクジェットインクは、湿潤剤、浸透剤、樹脂粒子、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0056】
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクジェットインクが収容されている。
【0057】
インクジェットインクを収容する容器としては、特に限定されないが、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋等が挙げられる。
【0058】
本発明のインクカートリッジは、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができる。
【0059】
本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクジェットインクを吐出する手段を有し、必要に応じて、インクジェットインクに印加する刺激を発生させる手段、制御手段等を有してもよい。
【0060】
インクジェットインクを吐出する手段としては、特に限定されないが、各種のノズル等が挙げられる。
【0061】
インクジェットインクに印加する刺激としては、特に限定されないが、熱、圧力、振動、光等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱、圧力が好ましい。
【0062】
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録用プリンター、ファクシミリ装置、複写装置、プリンター/ファックス/コピア複合機等のインクジェット記録方式による各種記録に適用することができる。
【0063】
本発明のインクジェット記録装置を用いて記録することが可能な記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
[パール顔料aの作製]
イソブチルメトキシシラン35gをトルエン中に溶解させた溶液中に、平均一次粒径が15nm、水に可溶な成分の含有量が0.35質量%の酸化チタン粒子MT−150A(テイカ社製)300gを添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、表面処理酸化チタン粒子を得た。表面処理酸化チタン粒子は、波長が300nmの光の透過率が38%、波長が600nmの光の透過率が97%であった。
【0065】
表面処理酸化チタン粒子をトルエン中に分散させた分散液中に、雲母粒子を添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、パール顔料aを得た。
【0066】
[パール顔料bの作製]
メチルトリメトキシシラン30gをトルエン中に溶解させた溶液中に、平均一次粒径が35nm、水に可溶な成分の含有量が0.20質量%の酸化チタン粒子MT−500B(テイカ社製)300gを添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、表面処理酸化チタン粒子を得た。表面処理酸化チタン粒子は、波長が300nmの光の透過率が37%、波長が600nmの光の透過率が90%であった。
【0067】
表面処理酸化チタン粒子をトルエン中に分散させた分散液中に、雲母粒子を添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、パール顔料bを得た。
【0068】
[パール顔料cの作製]
n−ブチルトリメトキシシラン30gをトルエン中に溶解させた溶液中に、平均一次粒径が50nm、水に可溶な成分の含有量が0.30質量%の酸化チタン粒子MT−600B(テイカ社製)300gを添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、表面処理酸化チタン粒子を得た。表面処理酸化チタン粒子は、波長が300nmの光の透過率が35%、波長が600nmの光の透過率が81%であった。
【0069】
表面処理酸化チタン粒子をトルエン中に分散させた分散液中に、雲母粒子を添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、パール顔料cを得た。
【0070】
[パール顔料dの作製]
平均一次粒径が15nm、水に可溶な成分の含有量が0.35質量%の酸化チタン粒子MT−150A(テイカ社製)を減圧乾燥し、水に可溶な成分の含有量を0.18質量%とした。
【0071】
イソブチルメトキシシラン35gをトルエン中に溶解させた溶液中に、酸化チタン粒子300gを添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、表面処理酸化チタン粒子を得た。表面処理酸化チタン粒子は、波長が300nmの光の透過率が26%、波長が600nmの光の透過率が76%であった。
【0072】
表面処理酸化チタン粒子をトルエン中に分散させた分散液中に、雲母粒子を添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、パール顔料dを得た。
【0073】
[パール顔料eの作製]
平均一次粒径が70nm、水に可溶な成分の含有量が0.15質量%の酸化チタン粒子TTO−S−1(石原産業社製)をトルエン中に分散させた分散液中に、雲母粒子を添加し、分散させた後、乾燥させた。次に、ジェットミルを用いて粉砕し、パール顔料eを得た。また、酸化チタン粒子TTO−S−1(石原産業社製)は、波長が300nmの光の透過率が5%、波長が600nmの光の透過率が56%であった。
【0074】
表1に、パール顔料の作製に用いた酸化チタン粒子及び表面処理酸化チタン粒子の特性を示す。
【0075】
【表1】

[実施例1]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が150cm/100g、窒素吸着比表面積が160m/gのカーボンブラック(Degussa社製)190g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物α及び10gのパール顔料cを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。また、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物αは、nが2〜4であるナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物の含有量が22質量%である。
【0076】
分散液40質量部、3−メチル−1,3−ブタンジオール17質量部、グリセリン17質量部、浸透剤4質量部、防錆剤0.1質量部、界面活性剤2.5質量部、アクリル樹脂エマルション7.5質量部、防黴剤0.2質量部及び水11.7質量部を混合し、インクジェットインクを得た。
【0077】
[実施例2]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が114cm/100g、窒素吸着比表面積が115m/gのカーボンブラック(Degussa社製)160g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物β及び40gのパール顔料bを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。また、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物βは、nが2〜4であるナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物の含有量が78質量%である。
【0078】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0079】
[実施例3]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が100cm/100g、窒素吸着比表面積が110m/gのカーボンブラック(三菱化学社製)180g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物β及び20gのパール顔料aを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0080】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0081】
[実施例4]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が105cm/100g、窒素吸着比表面積が220m/gのカーボンブラック(CABOT社製)170g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物α及び30gのパール顔料cを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0082】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0083】
[実施例5]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が150cm/100g、窒素吸着比表面積が160m/gのカーボンブラック(Degussa社製)180g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物β及び20gのパール顔料aを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0084】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0085】
[実施例6]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が114cm/100g、窒素吸着比表面積が115m/gのカーボンブラック(Degussa社製)160g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物α及び40gのパール顔料aを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0086】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0087】
[実施例7]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が105cm/100g、窒素吸着比表面積が220m/gのカーボンブラック(CABOT社製)190g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物β及び10gのパール顔料aを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0088】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0089】
[実施例8]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が150cm/100g、窒素吸着比表面積が160m/gのカーボンブラック(Degussa社製)170g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物α及び30gのパール顔料bを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0090】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0091】
[比較例1]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が150cm/100g、窒素吸着比表面積が160m/gのカーボンブラック(Degussa社製)200g及び50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物αを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0092】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0093】
[比較例2]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が76cm/100g、窒素吸着比表面積が85m/gのカーボンブラック(三菱化学社製)200g及び50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物βを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。
【0094】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0095】
[比較例3]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が150cm/100g、窒素吸着比表面積が160m/gのカーボンブラック(Degussa社製)190g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物β及び10gのパール顔料dを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。しかしながら、実施例1の2倍以上の分散時間が必要であった。
【0096】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0097】
[比較例4]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が114cm/100g、窒素吸着比表面積が115m/gのカーボンブラック(Degussa社製)160g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物α及び40gのパール顔料eを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。しかしながら、実施例1の2倍以上の分散時間が必要であった。
【0098】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0099】
[比較例5]
ビーズミル分散機UAM−015(寿工業社製)を用いて、DBP吸油量が76cm/100g、窒素吸着比表面積が85m/gのカーボンブラック(三菱化学社製)170g、50gのナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物α及び30gのパール顔料eを750gの水中に分散させ、分散液を得た。このとき、粒径が30μm、密度が6.03×10−6g/mのジルコニアビーズを用いて、周速が10m/s、液温が32℃の条件で、分散液を得た。しかしながら、実施例1の2倍以上の分散時間が必要であった。
【0100】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインクを得た。
【0101】
[画像濃度及び画像光沢度]
実施例1〜8及び比較例1〜5のインクジェットインクをインクカートリッジに充填した後、インクジェットプリンターIPSiO GX5000(リコー社製)に装着し、PPC用紙4024(ゼロックス社製)にベタ画像を形成した。
【0102】
X−Rite濃度計(X−Rite社製)を用いて、ベタ画像の画像濃度を測定した。
【0103】
変角光沢度計(日本分光社製)を用いて、ベタ画像の画像光沢度を測定した。
【0104】
[文字品位]
実施例1〜8及び比較例1〜5のインクジェットインクをインクカートリッジに充填した後、インクジェットプリンターIPSiO GX5000(リコー社製)に装着し、PPC用紙4024(ゼロックス社製)文字画像を形成し、文字品位を評価した。なお、文字画像の細線部に滲みが見られない場合を○、文字画像の細線部に滲みが見られる場合を×として、判定した。
【0105】
表2に、インクジェットインクの評価結果を示す。
【0106】
【表2】

表2から、実施例1〜8のインクジェットインクを用いると、画像濃度及び画像光沢度が高いベタ画像及び文字品位に優れる文字画像を紙に形成できることがわかる。
【0107】
これに対して、比較例1、2のインクジェットインクは、パール顔料を含まないため、ベタ画像の画像濃度及び画像光沢度が低下し、文字画像の文字品位が劣化する。特に、比較例2のインクジェットインクは、カーボンブラックのDBP吸油量及び窒素吸着比表面積が小さく、ストラクチャーが大きいため、画像濃度が低下する。
【0108】
また、比較例3のインクジェットインクは、酸化チタン粒子の水に可溶な成分の含有量が小さいため、酸化チタン粒子が均一に表面処理されない。その結果、表面処理酸化チタン粒子が凝集しているため、波長が300nm及び600nmの光の透過率が低下し、雲母粒子の表面を均一に被覆することができない。これにより、パール顔料の分散安定性が低下するため、ベタ画像の画像濃度及び画像光沢度が低下し、文字画像の文字品位が劣化する。
【0109】
さらに、比較例4、5のインクジェットインクは、酸化チタン粒子の平均一次粒径が大きいことに加え、表面処理されていない酸化チタン粒子が用いられている。その結果、酸化チタン粒子が凝集しているため、波長が300nm及び600nmの光の透過率が低下し、雲母粒子の表面を均一に被覆することができない。これにより、パール顔料の分散安定性が低下するため、ベタ画像の画像濃度及び画像光沢度が低下し、文字画像の文字品位が劣化する。特に、比較例5のインクジェットインクは、カーボンブラックのDBP吸油量及び窒素吸着比表面積が小さく、ストラクチャーが大きいため、画像濃度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特開2009−167377号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック、分散剤、パール顔料及び水を含み、
前記パール顔料は、表面処理されている酸化チタン粒子により雲母粒子の表面が被覆されており、
前記表面処理されている酸化チタン粒子は、平均一次粒径が15nm以上50nm以下である酸化チタン粒子が表面処理剤により表面処理されており、波長が300nmの光の透過率が35%以上40%以下であり、波長が600nmの光の透過率が80%以上100%以下であることを特徴とするインクジェットインク。
【請求項2】
前記分散剤は、一般式
【化1】

(式中、mは1以上3以下の整数であり、nは1以上200以下の整数である。)
で表わされるナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記カーボンブラックは、DBP吸油量が100cm/100g以上180cm/100g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が110m/g以上350m/g以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
平均一次粒径が15nm以上50nm以下であり、水に可溶な成分の含有量が0.20質量%以上0.35質量%以下である酸化チタン粒子を、表面処理剤を用いて表面処理する工程と、
該表面処理されている酸化チタン粒子を用いて雲母粒子の表面を被覆してパール顔料を製造する工程と、
カーボンブラック、分散剤及び前記パール顔料を含む組成物を水中に分散させる工程を有し、
前記表面処理されている酸化チタン粒子は、波長が300nmの光の透過率が35%以上40%以下であり、波長が600nmの光の透過率が80%以上100%以下であることを特徴とするインクジェットインクの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェットインクを吐出する手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェットインクが収容されていることを特徴とするインクカートリッジ。

【公開番号】特開2013−60569(P2013−60569A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201689(P2011−201689)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】