インクジェットインク及びインクジェット記録方法
【課題】本発明は、画像形成装置内で被記録媒体の搬送の障害となる、被記録媒体の初期カール(バックカール)発生を防止する方法であり、特に紙搬送ルートが直進でなくターンするような場合、あるいは高速印刷の場合に、初期カール発生までの時間が長い25℃で15mPas以上の高粘度水性インクを使用するというものである。 一方、高粘度水性インクと低粘度水性インクを両方用意しておき、 マシン内のカールが心配ない場合は、低粘度インクを使用するという方法でもよい。 また、ベタ画像でインク付着量が多くカールが心配される場合は、着色剤のない液体を飛ばして、カールが少なくなるレベルまで液体付着量をむしろ増加させるという方法もある。
【解決手段】
高速印刷あるいは、紙のターン搬送がある場合、高粘度水性インクを使用する。 また、
低粘度インクと高粘度インクを用意し、マシン内でのカールトラブルが心配される場合は、高粘度インクを使用する。 また、インク付着量をカールが大きくなる特定の範囲とならないようにむしろ液体付着量を着色剤のない液体で大きくすることによりカールを減らす。
【解決手段】
高速印刷あるいは、紙のターン搬送がある場合、高粘度水性インクを使用する。 また、
低粘度インクと高粘度インクを用意し、マシン内でのカールトラブルが心配される場合は、高粘度インクを使用する。 また、インク付着量をカールが大きくなる特定の範囲とならないようにむしろ液体付着量を着色剤のない液体で大きくすることによりカールを減らす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機等の画像形成装置として、記録液の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッド(画像形成手段)を用いて、被記録媒体(用紙、記録媒体、転写材なども同義で使用する。)を搬送しながら、記録液の液滴(以下、インク滴ともいう。)を用紙に塗付させて画像形成(記録、印刷、印写も同義語で用いる。)を行なうインクジェット記録方法が知られており、これらのインクジェット記録で用いられるインクは、水を主成分とし、染料、顔料等の色材及び水溶性溶剤、少量の添加剤等から成る水性インクが汎用される。
【0003】
水性インクは、一般のオフセット印刷に用いられる油性インクに比べ、非毒性、環境影響度が少ない等が長所として挙げられ、一般家庭、オフィス内で使用するのに好適である。
【0004】
しかしながら、水性インクは、水を主成分とするため、ホーム、オフィスで多用される「普通紙」への記録に対しては、水が紙の繊維に作用して画像形成装置から排紙された後に紙の変形(カール、しわ)を発生させ、印刷物の品質を低下させる。
【0005】
また、画像形成装置からの排紙前においても、画像形成装置内で紙搬送中に紙を回転させる必要がある場合等、紙にインクを塗付した直後から排紙前の極短時間に生じる紙のカールにより、紙の搬送に障害がおこることがあり、水性インクを用いて画像を形成する場合には、画像形成直後の短時間に生じる紙のカール発生防止も重要な課題である。
【0006】
カール発生のメカニズムは、インク中に含まれる水が紙のセルロース繊維間に浸透し、セルロース繊維間の水素結合を切断し、セルロース繊維の間隔が広がり、紙が特定の方向に伸びて生じると言われている。一般に、セルロースの繊維方向よりもセルロースの繊維と垂直の方向の方がセルロース繊維間の水素結合が多い。
【0007】
ここで、セルロース繊維は、抄紙時に伸縮が少ない長さ方向を軸にして抄紙マシン流れ方向に配列する傾向がある。すなわち、伸縮が大きい繊維の幅方向が抄紙マシンの流れ方向に対し直角にあるため、成紙の場合、紙のマシン流れ方向(縦方向)よりも直角方向(横方向)のほうが、伸縮が大きくなる。
そして、塗付されたインクは紙の表面から浸透するため、インク塗付初期は、印字部分を外側にしてカール(以下、バックカールまたはマイナスカールということがある)し、一定時間の経過した後は、次第に印字部分を内側にしたカール(以下、フェースカールまたはプラスカールということがある)に変化していく。
【0008】
マイナスカールは、水の付着によりインク塗付面のセルロース繊維間の水素結合が切れ、裏面側の水素結合が残っているため引っ張りのバランスが崩れるため発生し、また、水分蒸発後には、セルロース繊維間の水素結合が水分蒸発後に繋がる際に、切断された位置とは別の位置で結合するため、全体として印字前よりも収縮し、プラスカールになると考えられている。
【0009】
特許文献1の特開平9−216389号公報には、水性インクを塗付した被記録材の反対の面に透明水性液を塗付し、かつ加熱によりインクを乾燥するインクジェット記録方法が開示されているが、この方法では被記録材の裏面が汚れる虞があり、また加熱手段が必要であるためインクジェット記録装置が大きくなってしまう。
【0010】
特許文献2の特開2004−136458号公報にはインクでの記録に先立って紙にアルコール液を付与し、紙が実質的に乾燥してからインクで画像を形成するインクジェット記録方法が開示され、特許文献2には次のように記載されている。
「本発明のアルコール液の作用は、セルロース繊維間の水素結合による結合点に存在する水酸基にアルコール液の水酸基が結合することによって、後から水がやってきてもアルコール液の疎水基部分により水分子が排除され繊維同士の結合点に到達できないため、紙が乾燥する過程で、繊維間の結合点の移動が起こりにくくなり、用紙のカールが抑制されると考えている。」
この方法では、アルコール液が乾燥するまでインクを塗付できないため高速印刷には不向きであり、また可燃性の揮発性有機溶媒を用いるため好ましくない。
【0011】
特許文献3の特開2006−82546号公報には、高粘度のインクを用い画像を形成した後にガイド板上でカールが発生しなくなる状態まで停止待機させた後、排紙動作を行うインクジェット記録方法が開示されているが、排紙までに時間がかかり高速印刷には不向きである。
【0012】
特許文献4の特開2004−209759号公報には、炭素数が4以上でOH基を3つ以上もつ化合物または炭素数が7以上でOH基を2つもつ化合物の量と、インク中の水分量とを調節し、インクの水分が蒸発し紙が収縮して生じるプラスカールを防止することが開示されているが、インク付与時の紙が膨潤して生じるマイナスカールを防止できず、記録装置内で被記録媒体が引っ掛かることがある。
【0013】
特許文献5の特開2006−212787号公報には、1,2,6ヘキサントリオールやトリメチロールプロパンをカール抑制剤として15重量%以上含み、かつ粘度が4cps未満の水性インクで画像形成後、被記録媒体の水分を蒸発させてインクの粘度を高め、マイナスカールの発生を抑制すると共に、吐出ノズルの詰まりを防止するインクジェット記録方法が開示されているが、インクの水分が蒸発し紙が収縮して生じるプラスカールの防止が十分ではない。
【0014】
特許文献6の特開2007−91905号公報には、溶解度パラメータSP値が9.0以上12.0未満の水溶性有機溶媒と水の含有量を調節し、カール特性及びコックリング耐性に優れるとされるインクを用いたインクジェット記録方法が開示されているが、カールの発生防止が未だ充分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、インクジェットの印字速度、搬送経路、インクの付着量、インク塗布面積など印字条件が異なっても、カールによるトラブル発生を防止するインクジェット記録方法を提供するものである。また、カールの絶対量を少なくできる溶媒を含むインクジェットインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は本発明の、下記(1)〜(7)によって解決される。
(1)「印刷から排紙までの時間が10秒以下の高速印刷、または、紙の搬送方法が紙をターンさせる印刷に、粘度が25℃で、15mPas以上の水性インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法」、(2)「同一装置内に少なくとも同一系統の色の低粘度インクと高粘度インクを用意しておき、印刷条件に応じ、前記低粘度インクと高粘度インクとを選択使用するインクジェット記録方法」、(3)「吐出後、排紙まで10秒以内の高速プリントにおいて、(速効カールになる)低粘度インクと(緩慢カールになる)高粘度インクを用意しておき、吐出から排紙までのカールによるトラブルが予想される場合は前記高粘度インクを印写し、そうでない場合は低粘度インクを使用する、印刷条件に応じて粘度の異なるインクを使用する、カール対策モードを有する前記第(1)項に記載のインクジェット記録方法」、(4)「カールを防止できる特定の単位面積あたりの塗付量(a)、(b)(但し、a<b)の値を予め定めておき、塗付量がa以下またはb以上となるように印写することを特徴とする前記第(1)項に記載のインクジェット記録方法」、(5)「着色剤を含む液(A)と着色剤を含まない液(B)のそれぞれ単独、あるいは双方の組合せで塗付量を(a)以下または(b)以上になるように印写することを特徴とする前記第(4)項に記載のインクジェット記録方法」、(6)「着色剤を含まない液(B)が、(A)液と混合したとき、(A)液の着色剤を凝集するものであることを特徴とする液であることを特徴とする前記第(4)項に記載のインクジェット記録方法」、(7)「前記低粘度インクは、少なくとも溶解性パラメーターが10以下の水難溶性の溶媒と、水に分散あるいは溶解する着色剤と、水とを含有し、粘度が10mPas以下であることを特徴とする前記第(2)項乃至第(6)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法」。
【発明の効果】
【0017】
本発明で問題としているのは最近の高速印刷マシンにおいて問題となる印字面を外側にして丸まる初期のカール(バックカール)である。このカールのトラブルとしては、まず、第一にマシン内で紙のカールにより紙がマシン内でマシンにひっかかりジャムってしまうトラブルがある。
この場合、紙がターンして大きく搬送経路が曲がるような搬送方法の場合にトラブルが発生しやすい。
搬送経路が直進で曲がらない場合は、たとえ紙がカールする条件になっても、マシンによりまるまるのが機械的に抑制されてジャムトラブルまで至らないことがある。もちろん直進経路でもひっかかる場合はある。
第二のカールトラブルとしては、排紙後に紙がカールしてまるまってしまい排紙した印刷物がうまく重ならない場合である。
【0018】
本発明の第一は高速印刷インクジェットにおいて、マシン内でのカールによるトラブルを防止するため、比較的高粘度の水性インクを使用するというものである。
【0019】
本発明の第二の発明は、本発明者らが見出した、低粘度インクは吐出後、短時間でカールし短時間でカールが収まる(速効カールと呼ぶ)現象になりやすく、高粘度インクはカールが始まるまで時間がかかる(緩慢カールと呼ぶ)現象になりやすいという性質をうまく利用して、上記のような様々な印刷条件に応じて、低粘度インクと高粘度インクをつかいわけ、カールトラブルを防止するものである。
すなわち、排紙後は紙のカールを抑制する装置が用意されていて、排紙後のカールは問題ないが、マシン内で搬送中のカールはトラブルになる場合、すなわち、搬送経路が曲がるような場合で、カールが発生しやすいベタ画像印字の場合は、高粘度インクを使用して、緩慢カールにして、マシン内でカールがおこらないようにする(とくに直進搬送とターン搬送の2ルートがある場合有効)。
一方、マシン内でのカールが心配なく、排紙後のカールが心配な場合、すなわち、マシン内紙搬送が主に直進で、たとえカールがおきるインク付着量でも、マシンと紙の機械的接触によりカールが抑制される場合、あるいは、搬送中に、カールを強制的に防止する装置が設けてある場合(例えば紙の端をおさえつけながら搬送する)であって、排紙後にはそのようなカール防止装置がない場合は、低粘度インクを使用して速効カールとし、排紙後には、カールがすでに終了しているようにすることにより、場合に応じてインクを使い分け、カールを防止するものである。
あるいは、高粘度インクは、場合により、ヘッド加熱の必要もあるので、カールの起こりにくいベタ画像の少ない場合は低粘度インク、どうしてもマシン内でカールが起こりやすい場合のみ高粘度インクという場面も考えられる。
【0020】
本発明の第3の発明は、本発明者らが見出した、同じベタ画像を印字した場合でも、インク付着量が大きくなるとカールは大きくなるが、ある限界を超えてインク付着量がさらに大きくなると、逆にカールが小さくなるという、インク付着量との関係でカールのMAXが存在することを利用するものである。
すなわち、インク付着量がカールがMAXになる条件を避けるため、インク付着量がある値を超えてカールが発生し易くなったら、インク付着量をカールが小さくなる量まで強制的に増やすというものである。
その場合、着色剤量が増えてしまえば画像濃度が上がってしまうので、着色剤のないインク(カール低減補助液)を別に用意し、それで付着量を増やすというものである。
さらに、この液が、顔料を凝集させる材料を含んでいれば、カール防止以外に、顔料を表面に留める高画質化の効果もこの液が担うことになる。
その場合は、カール低減補助液は、着色インク印射の前に付与しておくのが好ましい。
【0021】
次に、紙の種類とカールについてであるが、本発明者らは、同じインクであれば、インクが浸透しにくい紙ほど、紙の伸びの表裏差が大きく、カールが大きいことを見出した。 したがって、浸透しにくい紙ほど上記のような本発明のカール対策が重要である。
【0022】
一方、本発明者らが検討した結果、湿潤剤種については、同じ組成では、湿潤剤の溶解性パラメーター(SP値)が高いほど、すなわち、湿潤剤構造の極性が高いほど、カールが大きくなる傾向にあった。
また、SP値の高い溶媒は、平衡水分量が大きいことは類推できるが、実際にそうなった。
さらに加えて、平衡水分量の大きな湿潤剤は紙への浸透速度が小さいことが判明した。 したがって、SP値の大きな湿潤剤は、浸透速度が小さいために、紙の伸びの表裏差が大きくなり、カールが大きくなったものと考えられる。
すなわち、そのような、湿潤剤を使用する場合は、特に、上記のようなカール対策が有効である。
【0023】
また、本発明者らは、SP値の低い、水に殆ど溶解しない溶媒と、水と着色剤の組み合わせ(水溶性溶剤がない。要するに着色剤のある水溶液と難溶性溶液の相分離したインク)は、カールの要因となる水が多く含まれているにも関わらず、カールは殆ど発生せず(極単に早い速効カールと考える)、しかも、紙面上に着色剤の顔料が多く残り高画質のにじみのない画像が得られることを見出した。
このようなインクを低粘度インクとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インク塗付から5秒後の紙の伸びとインク中の水分量との関係を測定した結果を示す図である。
【図2】インク塗付から3分後の紙の伸びとインク中の水分量との関係を測定した結果を示す図である。
【図3】低粘度インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を示す図である。
【図4】中粘度インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を示す図である。
【図5】高粘度インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を示す図である。
【図6】中粘度インクの塗付量とバックカールの発生量との関係を示す図である。
【図7】高粘度インクの塗付量とバックカールの発生量との関係を示す図である。
【図8】低粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図9】中粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図10】高粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図11】低粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図12】中粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図13】高粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図14】低粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図15】中粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図16】高粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図17】速効カールと緩慢カールとの関係を示す図である。
【図18】紙のカールが搬送台により抑制される図である。
【図19】湿潤剤の溶解度パラメータ(SP値)と平衡水分量との関係を示す図である。
【図20】湿潤剤の無機性/有機性と平衡水分量との関係を示す図である。
【図21】平衡水分量とインクの浸透量との関係を示す図である。
【図22】排紙1分後の平衡水分量と曲率の関係を示す図である。
【図23】排紙1分後の浸透量と曲率の関係を示す図である。
【図24】排紙1分後の湿潤剤のSP値と曲率の関係を示す図である。
【図25】非相溶インクインク9も含めた平衡水分量と相溶インクの平衡水分量の関係を示す図である。
【図26】(a)は、非相溶インクインク9も含めた相溶インクの水分付着量と紙の伸び量との関係を示す図である。(b)は、(a)での時間と紙伸びの関係を示す図である。
【図27】DSAで求めたインクの浸透量とカール量との関係を示す図である。
【図28】DSAで求めたインクの浸透量とカール量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のインクジェットインクについて詳細に説明する。
本発明者らは、水及び湿潤剤を含み、粘度が3mPa・s以上30mPa・s未満のインクジェットインクについて、該湿潤剤が溶解度パラメータSPが8以上20以下であるものを検討した。
【0026】
水との親和性を有し、水と均一に分散でき、顔料粒子の高い分散安定性を維持するためには、SP値が9以上が好ましい。
また、本発明者らは、SP値の大きな湿潤剤ほど紙への浸透速度が小さくカールしやすいことを見出した。本発明の、インク粘度、付着量制御によるカール抑制はそのような、カールのおき易いSP値の大きな湿潤剤ほど有効である。
一方、なるべくカールの小さい湿潤剤を選ぶのであれば、SP値9〜12とSP値の低い湿潤剤が好ましい。
【0027】
溶解度パラメータSPが9以上12以下の湿潤剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=11.6)、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.8)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(SP値=9.2)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=11.6)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.5)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(SP値=9.4)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=10.5)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.6)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=10.4)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(SP値=9.4)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.6)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.1)等がある。
【0028】
ただし、吐出信頼性の高い、平衡水分量の大きな湿潤剤は、どうしてもSP値が大きく(例えばグリセリン(16.4)、1,3−ブタンジオール(12.6)、メチルブタンジオール(12.1)など、カールが起こりやすいが、そのような湿潤剤の場合こそ本発明が有効である。
【0029】
前記湿潤剤の含有量はインク全量に対し、一般には、20重量%以上60重量%未満であることが好ましい。あまり少ないと、乾燥が速く、目つまりし易く、あまり多すぎると粘度が高く噴射不安定になる。
【0030】
本発明においては、溶解性パラメーターを、溶解性パラメーター適用事例集、発行 情報機構(2007年)p13−14(Fedrosの方法)にしたがって計算した。本発明ではグリセリンが16.5(cal/cm3)1/2になるOH基のパラメーターを選んだ。
また、無機性/有機性は、日本エマルジョン Formulation Design with Organic Conceptual Diagramの方法により計算した。
【0031】
また、本発明においては、25℃での粘度が3mPa・s以上30mPa・s未満のものを検討した。
粘度が高い場合、噴射安定化のためには場合によりヘッドを加熱して低粘度化させて吐出する必要がある。
【0032】
本発明のインクは、着色剤を含んでもよい。着色剤の含有量はインク全量に対して10重量%以下であることが好ましい。
本発明のインクに使用できる着色剤としては、従来公知のものを特に制限なく使用できる。例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。
【0033】
本発明で用いられる着色剤は、予め、分散剤及びその他の添加物と共に分散機により分散して用いることが好ましい。
分散機としては従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
【0034】
本発明のインクジェット記録方法で適用できる記録用紙としては、例えば、普通紙、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、インクジェット専用紙等が広く用いることができるが、その中でも吸収性支持体である上質紙、アート紙、コート紙を用いたインクジェット画像方法あることが、本発明の目的効果を発揮させることができ好ましい(カールが起きやすい紙にこそ有効。)。
【0035】
本発明のインクを吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッドは、従来公知のものを使用できる。ピエゾヘッド、サーマル方式のヘッド、薄膜ピエゾヘッドどれでもかまわない。
【実施例】
【0036】
本発明を実施例によりより詳細に説明する。
本発明者らは、まず、紙の伸びとインク中の水分量との関係について調べた(実験1)。
【0037】
<インク調合>
[表面処理顔料分散液の調製]
CTAB比表面積が150m2/g、DBP吸油量100ml/100gのカーボンブラック90gを、2.5Nの硫酸ナトリウム溶液3,000mlに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。
この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。
得られたカーボンブラックを水洗いし乾燥させて、固形分20質量%となるよう純水中に分散させて、ブラック顔料分散液を作製した。
【0038】
(高粘度黒インク(水分量小)の処方)(I)
上記製造例のブラック分散体 25部
湿潤剤 グリセリン 27部
メチルブタンジオール 33部
界面活性剤+浸透剤 4部
防腐防カビ剤 0.05部
水 残部
高粘度黒インクの粘度(25℃)は25.2mPasであった。
【0039】
(中粘度黒インク(水分量中)の処方)
上記高粘度黒インク(I)の湿潤剤の総量を50部にしてその分水を増加して作成した。
中粘度黒インク(水分量中)の粘度(25℃)は13.3mPasであった。
【0040】
(低粘度黒インク(水分量大)の処方)
上記高粘度黒インク(I)の湿潤剤の総量を40部にしてその分水を増加した。
低粘度黒インクの粘度(25℃)は8mPasであった。
【0041】
湿潤剤と水分との比率を変え、水分量が異なる上記の3種類のインクを紙に塗付し紙の伸びを測定した。
なお、測定は、ハイグレード普通紙(株式会社リコー)を使用し、インクの塗付は刷毛を使用して行い、すぐに伸びを測定した。 紙は2cm×11cmの長方形に切断したもので、長軸方向に、1Nの力をかけた場合の伸びをみた。 その方向は繊維方向に直角で伸びやすい方向である。
塗布初期のインク付着量(および水分量)は、水分蒸発後の重量から、既知の湿潤剤平衡水分量値を使用して逆算した。
紙の伸びとインク中の水分量との関係を測定した結果を図1、2に示す。
(HGはハイグレード紙の略)、塗布5秒後、3分後の伸びの値。)
水分含有量が多い(低粘度の)インクほど、紙の伸びが大きく、インク中の水分量と紙伸びとの間に相関があった。
【0042】
また、インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を図3,4,5に示す。
また、水分含有量が多い(低粘度の)インクほど、紙の伸びが速やかに起こり、すぐに伸びの減少モードに移ることがわかる。
水分含有量が少ない(高粘度の)インクは紙の伸びが緩慢で伸びの減少モードには時間内で至っていない(なお図では塗布量を厳密にはあわせていないためMAX値はかならずしも粘度と関係を有した結果になっていない。)。
【0043】
この理由は明らかではないが、水分含有量が多い(低粘度の)インクは、紙への浸透が速く、紙の伸びが速やかに起こるのに対し、水分含有量が少ない(高粘度の)インクは、紙への浸透が遅く、紙中の水素結合部に到達してそれを切断するまでの時間が長いため、伸びがだらだらと緩慢に起こると考えられる。
また、湿潤剤が多い場合、初期水分は少なくても、平衡水分としての水分が蒸発しにくくいつまでも残留するため、いつまでも紙伸びがだらだらと続くことも要因として考えられる。
【0044】
次に、インクの塗付量と初期カール(バックカール)の発生量との関係を以下の方法により調べた(実験2)。
リコーのGX5000ジェルジェットプリンタを使用し、前記高粘度黒インク(水分29%、粘度13.3mPas)と中粘度黒インク(水分39%、粘度25mPas)を使用し、普通紙(リサイクルペーパー)に、インク量一定でベタ印字し、プリンタから排紙された直後からカール量を測定した。
【0045】
カール量の測定は、印字が終わったときを時間0とし、排紙後、印字面を下にふせて、紙の端の上にそった(バックカール)の最大高さ(H)を4点測定し、その平均値から下記式(1)を用いて曲率(1/曲率半径(r))を求め評価した。
r=L2/2H 式(1)
但し、rは曲率半径、Hは高さ、Lは紙の長さ(本発明では5,5cmとした)を表す。
評価結果を図6、7に示す。
【0046】
インク塗付量が10g/m2くらいまでは塗付量が増えるほどカールが大きくなるが、インク塗付量が15g/m2程度を超えると逆にカールが小さくなる。
すなわち付着量とカールのとの関係で最大値が存在する。
注意:図では一部、印刷モードが違うが、付着量とカールの関係は、1分以降は印刷モードの影響を受けないと考える。(実機では高付着量はモードを変えないと得られない。付着量とカールの関係に最大値があることは2cm×11cmサンプルにて手塗り実験で確認済み)。
このような挙動を示す理由は、カールの発生は、紙の伸び(引っ張り)の表裏差で決まるものであり、塗付量が10g/m2くらまでは、インク塗付量が多くなるほど、紙伸びが大きく、カールが大きくなるが、インク塗付量が15g/m2程度を超えると、紙の内部にまで浸透する水分量が増加し、逆に紙の伸び(引っ張り)の表裏差が小さくなり、カールが小さくなるためと思われる。
したがって、全ベタ印字で、インク付着量が5g/cm2程度で、少ないときはよいが、インク付着量が多くなって、カールが発生しやすくなった場合、着色インク以外のインク付着量をもっと増やすための液(低カール化補助液)を吐出し、インク付着量を15g/m2を超えるまで増加させ、カールを小さくする手段があることが本実験結果からえられる。
この場合、(低カール化補助液)は、着色インクそのままで液量を増やすと色調が変化してしまうため、インクから着色剤を除いた液を使用するほうが好ましい。
またそのような液には、顔料を凝集させる性質をもつ化合物、例えば、ポリアリルアミンや、2価の金属塩、あるいは、酸性有機化合物を添加しておき、着色インク吐出の前に吐出付着させておくと、カール防止効果以外に、紙面上顔料凝集・高画質化の効果も得られる。
【0047】
次に、初期カール(バックカール)の発生量とインク塗付からの経過時間との関係を以下の方法により調べた(実験3)。
前記低粘度インク(水分49%、粘度8mPas)、中粘度インク(水分39%、粘度13.3mPas)、及び、高粘度インク(水分29%、粘度25.2mPas)を、それぞれ、ハイグレード普通紙(株式会社リコー)、マイペーパー(株式会社NBSリコー製)、リサイクル紙(リサイクルPPC)に塗布した。
評価結果を図8〜図16に示す。
【0048】
前述のように、インク塗付時の紙の伸びは、水分量が多い(低粘度の)インクと、水分量少ない(高粘度の)インクとでは、水分量が多い(低粘度の)インクの方が紙の伸びは大きくなったが、初期カール(バックカール)の発生量(最大値)は、水分量が多い(低粘度の)インクと水分量が少ない(高粘度の)インクとではそれほど変わらない。
しかし、初期カール(バックカール)の発生時間は、水分量が多い(低粘度の)インクは速やかにカールが発生し、速やかにカールが消失するのに対し、水分量が少ない(高粘度の)インクは、カールが発生が緩慢でカールが最大になるまでの時間が長い。
ここでは、前者を速効カール、後者を緩慢カールと呼ぶ。
このように紙の伸びとカールとは必ずしも相関はしない。 紙の伸びはあくまでも水分量できまるが、カールはあくまでも紙の表裏差が効くため、インクの浸透距離が効いてくると考えられる。
【0049】
図8〜図10に示すように、特にHG紙は、水分量が多い(低粘度の)インクでは速効カールが発生し、水分量少ない(高粘度の)インクでは緩慢カールの発生が顕著であり、粘度の上昇により、初期カール(バックカール)の緩慢化することがわかる。
図17に、速効カールと緩慢カールとの関係を示す。
なお、初期カール(バックカール)が収まったあとは印地面を内部側にして丸まるフェイスカールになる場合があるが、そこまでにはかなり時間がかかり、高速印射の場合は初期のバックカールが問題である。
【0050】
このように、水分量少ない(高粘度の)インクを用いることにより、インク塗付直後(数秒間)に生じる初期(バック)カールを防止でき、画像形成装置内におけるインク塗付から排紙までの紙の搬送性を向上させることができる。
【0051】
また、薄膜ピエゾヘッドは、高粘度のインクを打つのが難しいため、水分量が多い(低粘度の)インクを用いなければならず、速効カールが生じ、画像形成装置内におけるインク塗付から排紙までの紙の搬送性が低下する。したがって、薄膜ピエゾヘッドを用いた画像形成装置は、画像形成装置内の紙の搬送経路を直線状にして、紙を抑えつけながら搬送することが好ましい。
紙の搬送が直進の場合には、たとえ、バックカールが生じる条件でも、図18のように、搬送台により、機械的にカールが抑制される場合が多い。 初期のカールが問題になるのは主に、紙の搬送方向がターンするような場合である。もし、搬送方向が直進及びターンの両方を有する場合は高粘度インクを使用するということも考えられる。
【0052】
次に、初期(バック)カールについて、速効カールの挙動を示す水分量が多い(低粘度の)インクについて、溶解度パラメータSP値の異なる湿潤剤を用いたインク1〜8を作製し、湿潤剤の溶解度パラメータ(SP値)と平衡水分量との関係、平衡水分量とインクの浸透量との関係、及び平衡水分量と曲率の関係を調べた(実験4)。
インクを以下の処方で作製した。
【0053】
(インク1)
湿潤剤(グリセリン:SP値16.4) 35wt%
ノニオン系界面活性剤 1.25wt%
アミン系pH調整剤 0.6wt%
顔料分散体(カーボンブラック固形分20%) 25wt%
シリコン系消泡剤 0.1wt%
水 38.05wt%
インク1の粘度(25℃)は、4.19mPasであった。
【0054】
(インク2)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(1,3−ブタンジオール:SP値12.7)に代える他はインク1と同様にしてインク2を作製した。
インク2の粘度(25℃)は、5.49mPasであった。
【0055】
(インク3)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(メチルブタンジオール:SP値12.1)に代える他はインク1と同様にしてインク3を作製した。
インク3の粘度(25℃)は、6.56mPasであった。
【0056】
(インク4)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(窒素構造含有系溶剤:SP値推定 12.8)に代える他はインク1と同様にしてインク4を作製した。
インク4の粘度(25℃)は、3.92mPasであった。
【0057】
(インク5)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(窒素構造含有系溶剤:推定SP10.2)に代える他はインク1と同様にしてインク5を作製した。
インク5の粘度(25℃)は、4.54mPasであった。
【0058】
(インク6)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(2−ピロリドン:SP値11.2)に代える他はインク1と同様にしてインク6を作製した。
インク6の粘度(25℃)は、3.55mPasであった。
【0059】
(インク7)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(ジエチレンオキシドエーテル系溶媒:SP値 9.8)に代える他はインク1と同様にしてインク7を作製した。
インク7の粘度(25℃)は、4.79mPasであった。
【0060】
(インク8)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(グリコールエーテル系溶剤:SP値9.4)に代える他はインク1と同様にしてインク2を作製した。
インク8の粘度(25℃)は、5.72mPasであった。
以下のように湿潤剤の種類を変えて実験した。
【0061】
インク1〜8の水分量は一定なので、水分による紙伸び量の違いはないと考えられる。湿潤剤のSP値が大きくなると湿潤剤の平衡水分量も大きくなった。
測定結果を図19、20に示す。図20はSP値でなく無機性/有機性比でプロットしたものである。
【0062】
また、図21に、ブリストー法で求めた100msec後の浸透量と平衡水分量との関係を示す。
平衡水分量が大きくなるSP値の大きな湿潤剤を用いたインクは、浸透量が少なく(浸透速度が小さく)なり、SP値の大きな湿潤剤はインクの浸透を阻害する要因となる。
そして、インクの浸透を阻害するSP値の高い湿潤剤をもちいたインクは、内部への浸透が少ないため、紙のセルロース繊維の引っ張りの表裏差が大きくなり、カールが大きくなるものと考える。
インク1〜8には、いずれも界面活性剤が入っており静的表面張力および接触角に大きな差がない。 また、インクの粘度と浸透量との間には相関関係がなく、ルーカスウオッシュバーンの浸透式に従わない。 むしろ、湿潤剤の平衡水分量(親水性)と浸透速度に関係があった。 この理由としては、セルロースと水が化学反応をするため、ルーカスウオッシュバーンのような単純な物理的浸透とは異なるメカニズムとなるためであると思われる。 つまり、親水性の高い液は、紙の表面でセルロースに捕らわれセルロースを膨張しやすく、孔径が小さくなり、浸透しにくくなるのではないかと思われる。
【0063】
したがって、カールを少なくするには水との相溶性を阻害しない範囲でSP値の小さな湿潤剤を選択するのがよい。
薄膜ピエゾヘッドのような、高粘度のインクの吐出が困難であるヘッドを用いた画像形成装置において、カールによる画像形成装置内での搬送性低下を防止するにはSP値の小さなSP=9〜12程度の湿潤剤が好ましい。
図22に排紙1分後のカール曲率と湿潤剤の平衡水分量との関係を示す。
図23に排紙1分後のカール曲率とDSA(ブリストー法を利用した紙への浸透量測定装置)で求めた浸透量との関係を示す。
また、図24に排紙1分後のカール曲率とSP値との関係を示す。
【0064】
また、溶解パラメーターSP値が10以下の湿潤剤は水難溶性のものがあり、水難溶性の湿潤剤は、水及び水性着色剤の分散体と混合すると相分離する。
下記の処方で水難溶性の湿潤剤を用いたインクを作製した。
(インク9)
インク1の湿潤剤を溶剤(油系構造含有系溶剤:SP値8.9)に代える他はインク1と同様にしてインク9を作製した。
インク9の粘度(25℃)は、1.74mPasであった。
インク9は、着色剤含有水分部と油部が相分離しているが、カールは生じにくく、着色剤が紙表面に留まり、画像濃度が非常に高かった。
【0065】
インク9の非相溶系のインクも含めた9種のインクの湿潤剤の平衡水分量とブリストー法の浸透量の関係を図25に、インク中の水分付着量と紙の伸び量との関係を図26に、DSAで求めたインクの浸透量とカール量との関係を図27、28に示す。
非相溶系のインク9は、図25に示すように平衡水分量に対する浸透量が少なく、また、図26に示すように、紙へのインク塗付量と紙伸びとの関係が相溶インクとは異なり、インク塗付量の増加に伴う紙伸び量が相溶インクよりも少ない。
さらに、インク9は浸透量が少ないにも関わらずカールは少ない。かなり特殊である。
相分離インクは、カールの発生量が少なくなる理由は現状では明らかにされてはいないが、インク塗付後、油分は、紙の内部に速やかに浸透し、一方、水および水に分散した着色剤は紙の表面のセルロース繊維に引っかかり、紙の内部に浸透しないためであると考えられ、併せて画像濃度が高くなったと考えられる。
なおNo9のような水と相溶しない有機溶媒と水とを相分離した状態のインクはエマルジョン状態とした方が好ましい。 そのような有機溶媒は極性基の少ない、脂肪族系、エステル系、芳香族系、アセトン系など各種存在する。 沸点が100℃以上で蒸発しにくいものが好ましい。
図26はインク(1)〜(9)の2cm×11cmのサンプルをレオメーター装置で1Nの力をかけながら片面にインクを付着させ、伸びをみたものであるが、図26に示すような時間と伸びの挙動を示す。 図26はそれの付着インク中水分量と伸びのMAXの関係を示したものである。 このように相分離インクを除いた相溶性のインクは伸びのMAXと水分量の関係は湿潤剤の種類の影響をあまり受けない。 このことも、紙伸びは水分量により決まり湿潤剤種の影響をあまり受けないことを示す。 一方、カールは紙の表裏差のため、湿潤剤種の影響を受ける。その要因はインクの浸透距離の違いが大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開平9−216389号公報
【特許文献2】特開2004−136458号公報
【特許文献3】特開2006−82546号公報
【特許文献4】特開2004−209759号公報
【特許文献5】特開2006−212787号公報
【特許文献6】特開2007−91905号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機等の画像形成装置として、記録液の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッド(画像形成手段)を用いて、被記録媒体(用紙、記録媒体、転写材なども同義で使用する。)を搬送しながら、記録液の液滴(以下、インク滴ともいう。)を用紙に塗付させて画像形成(記録、印刷、印写も同義語で用いる。)を行なうインクジェット記録方法が知られており、これらのインクジェット記録で用いられるインクは、水を主成分とし、染料、顔料等の色材及び水溶性溶剤、少量の添加剤等から成る水性インクが汎用される。
【0003】
水性インクは、一般のオフセット印刷に用いられる油性インクに比べ、非毒性、環境影響度が少ない等が長所として挙げられ、一般家庭、オフィス内で使用するのに好適である。
【0004】
しかしながら、水性インクは、水を主成分とするため、ホーム、オフィスで多用される「普通紙」への記録に対しては、水が紙の繊維に作用して画像形成装置から排紙された後に紙の変形(カール、しわ)を発生させ、印刷物の品質を低下させる。
【0005】
また、画像形成装置からの排紙前においても、画像形成装置内で紙搬送中に紙を回転させる必要がある場合等、紙にインクを塗付した直後から排紙前の極短時間に生じる紙のカールにより、紙の搬送に障害がおこることがあり、水性インクを用いて画像を形成する場合には、画像形成直後の短時間に生じる紙のカール発生防止も重要な課題である。
【0006】
カール発生のメカニズムは、インク中に含まれる水が紙のセルロース繊維間に浸透し、セルロース繊維間の水素結合を切断し、セルロース繊維の間隔が広がり、紙が特定の方向に伸びて生じると言われている。一般に、セルロースの繊維方向よりもセルロースの繊維と垂直の方向の方がセルロース繊維間の水素結合が多い。
【0007】
ここで、セルロース繊維は、抄紙時に伸縮が少ない長さ方向を軸にして抄紙マシン流れ方向に配列する傾向がある。すなわち、伸縮が大きい繊維の幅方向が抄紙マシンの流れ方向に対し直角にあるため、成紙の場合、紙のマシン流れ方向(縦方向)よりも直角方向(横方向)のほうが、伸縮が大きくなる。
そして、塗付されたインクは紙の表面から浸透するため、インク塗付初期は、印字部分を外側にしてカール(以下、バックカールまたはマイナスカールということがある)し、一定時間の経過した後は、次第に印字部分を内側にしたカール(以下、フェースカールまたはプラスカールということがある)に変化していく。
【0008】
マイナスカールは、水の付着によりインク塗付面のセルロース繊維間の水素結合が切れ、裏面側の水素結合が残っているため引っ張りのバランスが崩れるため発生し、また、水分蒸発後には、セルロース繊維間の水素結合が水分蒸発後に繋がる際に、切断された位置とは別の位置で結合するため、全体として印字前よりも収縮し、プラスカールになると考えられている。
【0009】
特許文献1の特開平9−216389号公報には、水性インクを塗付した被記録材の反対の面に透明水性液を塗付し、かつ加熱によりインクを乾燥するインクジェット記録方法が開示されているが、この方法では被記録材の裏面が汚れる虞があり、また加熱手段が必要であるためインクジェット記録装置が大きくなってしまう。
【0010】
特許文献2の特開2004−136458号公報にはインクでの記録に先立って紙にアルコール液を付与し、紙が実質的に乾燥してからインクで画像を形成するインクジェット記録方法が開示され、特許文献2には次のように記載されている。
「本発明のアルコール液の作用は、セルロース繊維間の水素結合による結合点に存在する水酸基にアルコール液の水酸基が結合することによって、後から水がやってきてもアルコール液の疎水基部分により水分子が排除され繊維同士の結合点に到達できないため、紙が乾燥する過程で、繊維間の結合点の移動が起こりにくくなり、用紙のカールが抑制されると考えている。」
この方法では、アルコール液が乾燥するまでインクを塗付できないため高速印刷には不向きであり、また可燃性の揮発性有機溶媒を用いるため好ましくない。
【0011】
特許文献3の特開2006−82546号公報には、高粘度のインクを用い画像を形成した後にガイド板上でカールが発生しなくなる状態まで停止待機させた後、排紙動作を行うインクジェット記録方法が開示されているが、排紙までに時間がかかり高速印刷には不向きである。
【0012】
特許文献4の特開2004−209759号公報には、炭素数が4以上でOH基を3つ以上もつ化合物または炭素数が7以上でOH基を2つもつ化合物の量と、インク中の水分量とを調節し、インクの水分が蒸発し紙が収縮して生じるプラスカールを防止することが開示されているが、インク付与時の紙が膨潤して生じるマイナスカールを防止できず、記録装置内で被記録媒体が引っ掛かることがある。
【0013】
特許文献5の特開2006−212787号公報には、1,2,6ヘキサントリオールやトリメチロールプロパンをカール抑制剤として15重量%以上含み、かつ粘度が4cps未満の水性インクで画像形成後、被記録媒体の水分を蒸発させてインクの粘度を高め、マイナスカールの発生を抑制すると共に、吐出ノズルの詰まりを防止するインクジェット記録方法が開示されているが、インクの水分が蒸発し紙が収縮して生じるプラスカールの防止が十分ではない。
【0014】
特許文献6の特開2007−91905号公報には、溶解度パラメータSP値が9.0以上12.0未満の水溶性有機溶媒と水の含有量を調節し、カール特性及びコックリング耐性に優れるとされるインクを用いたインクジェット記録方法が開示されているが、カールの発生防止が未だ充分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、インクジェットの印字速度、搬送経路、インクの付着量、インク塗布面積など印字条件が異なっても、カールによるトラブル発生を防止するインクジェット記録方法を提供するものである。また、カールの絶対量を少なくできる溶媒を含むインクジェットインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は本発明の、下記(1)〜(7)によって解決される。
(1)「印刷から排紙までの時間が10秒以下の高速印刷、または、紙の搬送方法が紙をターンさせる印刷に、粘度が25℃で、15mPas以上の水性インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法」、(2)「同一装置内に少なくとも同一系統の色の低粘度インクと高粘度インクを用意しておき、印刷条件に応じ、前記低粘度インクと高粘度インクとを選択使用するインクジェット記録方法」、(3)「吐出後、排紙まで10秒以内の高速プリントにおいて、(速効カールになる)低粘度インクと(緩慢カールになる)高粘度インクを用意しておき、吐出から排紙までのカールによるトラブルが予想される場合は前記高粘度インクを印写し、そうでない場合は低粘度インクを使用する、印刷条件に応じて粘度の異なるインクを使用する、カール対策モードを有する前記第(1)項に記載のインクジェット記録方法」、(4)「カールを防止できる特定の単位面積あたりの塗付量(a)、(b)(但し、a<b)の値を予め定めておき、塗付量がa以下またはb以上となるように印写することを特徴とする前記第(1)項に記載のインクジェット記録方法」、(5)「着色剤を含む液(A)と着色剤を含まない液(B)のそれぞれ単独、あるいは双方の組合せで塗付量を(a)以下または(b)以上になるように印写することを特徴とする前記第(4)項に記載のインクジェット記録方法」、(6)「着色剤を含まない液(B)が、(A)液と混合したとき、(A)液の着色剤を凝集するものであることを特徴とする液であることを特徴とする前記第(4)項に記載のインクジェット記録方法」、(7)「前記低粘度インクは、少なくとも溶解性パラメーターが10以下の水難溶性の溶媒と、水に分散あるいは溶解する着色剤と、水とを含有し、粘度が10mPas以下であることを特徴とする前記第(2)項乃至第(6)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法」。
【発明の効果】
【0017】
本発明で問題としているのは最近の高速印刷マシンにおいて問題となる印字面を外側にして丸まる初期のカール(バックカール)である。このカールのトラブルとしては、まず、第一にマシン内で紙のカールにより紙がマシン内でマシンにひっかかりジャムってしまうトラブルがある。
この場合、紙がターンして大きく搬送経路が曲がるような搬送方法の場合にトラブルが発生しやすい。
搬送経路が直進で曲がらない場合は、たとえ紙がカールする条件になっても、マシンによりまるまるのが機械的に抑制されてジャムトラブルまで至らないことがある。もちろん直進経路でもひっかかる場合はある。
第二のカールトラブルとしては、排紙後に紙がカールしてまるまってしまい排紙した印刷物がうまく重ならない場合である。
【0018】
本発明の第一は高速印刷インクジェットにおいて、マシン内でのカールによるトラブルを防止するため、比較的高粘度の水性インクを使用するというものである。
【0019】
本発明の第二の発明は、本発明者らが見出した、低粘度インクは吐出後、短時間でカールし短時間でカールが収まる(速効カールと呼ぶ)現象になりやすく、高粘度インクはカールが始まるまで時間がかかる(緩慢カールと呼ぶ)現象になりやすいという性質をうまく利用して、上記のような様々な印刷条件に応じて、低粘度インクと高粘度インクをつかいわけ、カールトラブルを防止するものである。
すなわち、排紙後は紙のカールを抑制する装置が用意されていて、排紙後のカールは問題ないが、マシン内で搬送中のカールはトラブルになる場合、すなわち、搬送経路が曲がるような場合で、カールが発生しやすいベタ画像印字の場合は、高粘度インクを使用して、緩慢カールにして、マシン内でカールがおこらないようにする(とくに直進搬送とターン搬送の2ルートがある場合有効)。
一方、マシン内でのカールが心配なく、排紙後のカールが心配な場合、すなわち、マシン内紙搬送が主に直進で、たとえカールがおきるインク付着量でも、マシンと紙の機械的接触によりカールが抑制される場合、あるいは、搬送中に、カールを強制的に防止する装置が設けてある場合(例えば紙の端をおさえつけながら搬送する)であって、排紙後にはそのようなカール防止装置がない場合は、低粘度インクを使用して速効カールとし、排紙後には、カールがすでに終了しているようにすることにより、場合に応じてインクを使い分け、カールを防止するものである。
あるいは、高粘度インクは、場合により、ヘッド加熱の必要もあるので、カールの起こりにくいベタ画像の少ない場合は低粘度インク、どうしてもマシン内でカールが起こりやすい場合のみ高粘度インクという場面も考えられる。
【0020】
本発明の第3の発明は、本発明者らが見出した、同じベタ画像を印字した場合でも、インク付着量が大きくなるとカールは大きくなるが、ある限界を超えてインク付着量がさらに大きくなると、逆にカールが小さくなるという、インク付着量との関係でカールのMAXが存在することを利用するものである。
すなわち、インク付着量がカールがMAXになる条件を避けるため、インク付着量がある値を超えてカールが発生し易くなったら、インク付着量をカールが小さくなる量まで強制的に増やすというものである。
その場合、着色剤量が増えてしまえば画像濃度が上がってしまうので、着色剤のないインク(カール低減補助液)を別に用意し、それで付着量を増やすというものである。
さらに、この液が、顔料を凝集させる材料を含んでいれば、カール防止以外に、顔料を表面に留める高画質化の効果もこの液が担うことになる。
その場合は、カール低減補助液は、着色インク印射の前に付与しておくのが好ましい。
【0021】
次に、紙の種類とカールについてであるが、本発明者らは、同じインクであれば、インクが浸透しにくい紙ほど、紙の伸びの表裏差が大きく、カールが大きいことを見出した。 したがって、浸透しにくい紙ほど上記のような本発明のカール対策が重要である。
【0022】
一方、本発明者らが検討した結果、湿潤剤種については、同じ組成では、湿潤剤の溶解性パラメーター(SP値)が高いほど、すなわち、湿潤剤構造の極性が高いほど、カールが大きくなる傾向にあった。
また、SP値の高い溶媒は、平衡水分量が大きいことは類推できるが、実際にそうなった。
さらに加えて、平衡水分量の大きな湿潤剤は紙への浸透速度が小さいことが判明した。 したがって、SP値の大きな湿潤剤は、浸透速度が小さいために、紙の伸びの表裏差が大きくなり、カールが大きくなったものと考えられる。
すなわち、そのような、湿潤剤を使用する場合は、特に、上記のようなカール対策が有効である。
【0023】
また、本発明者らは、SP値の低い、水に殆ど溶解しない溶媒と、水と着色剤の組み合わせ(水溶性溶剤がない。要するに着色剤のある水溶液と難溶性溶液の相分離したインク)は、カールの要因となる水が多く含まれているにも関わらず、カールは殆ど発生せず(極単に早い速効カールと考える)、しかも、紙面上に着色剤の顔料が多く残り高画質のにじみのない画像が得られることを見出した。
このようなインクを低粘度インクとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インク塗付から5秒後の紙の伸びとインク中の水分量との関係を測定した結果を示す図である。
【図2】インク塗付から3分後の紙の伸びとインク中の水分量との関係を測定した結果を示す図である。
【図3】低粘度インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を示す図である。
【図4】中粘度インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を示す図である。
【図5】高粘度インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を示す図である。
【図6】中粘度インクの塗付量とバックカールの発生量との関係を示す図である。
【図7】高粘度インクの塗付量とバックカールの発生量との関係を示す図である。
【図8】低粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図9】中粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図10】高粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図11】低粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図12】中粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図13】高粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図14】低粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図15】中粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図16】高粘度インク塗付からの経過時間とバックカールとの発生量との関係を示す図である。
【図17】速効カールと緩慢カールとの関係を示す図である。
【図18】紙のカールが搬送台により抑制される図である。
【図19】湿潤剤の溶解度パラメータ(SP値)と平衡水分量との関係を示す図である。
【図20】湿潤剤の無機性/有機性と平衡水分量との関係を示す図である。
【図21】平衡水分量とインクの浸透量との関係を示す図である。
【図22】排紙1分後の平衡水分量と曲率の関係を示す図である。
【図23】排紙1分後の浸透量と曲率の関係を示す図である。
【図24】排紙1分後の湿潤剤のSP値と曲率の関係を示す図である。
【図25】非相溶インクインク9も含めた平衡水分量と相溶インクの平衡水分量の関係を示す図である。
【図26】(a)は、非相溶インクインク9も含めた相溶インクの水分付着量と紙の伸び量との関係を示す図である。(b)は、(a)での時間と紙伸びの関係を示す図である。
【図27】DSAで求めたインクの浸透量とカール量との関係を示す図である。
【図28】DSAで求めたインクの浸透量とカール量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のインクジェットインクについて詳細に説明する。
本発明者らは、水及び湿潤剤を含み、粘度が3mPa・s以上30mPa・s未満のインクジェットインクについて、該湿潤剤が溶解度パラメータSPが8以上20以下であるものを検討した。
【0026】
水との親和性を有し、水と均一に分散でき、顔料粒子の高い分散安定性を維持するためには、SP値が9以上が好ましい。
また、本発明者らは、SP値の大きな湿潤剤ほど紙への浸透速度が小さくカールしやすいことを見出した。本発明の、インク粘度、付着量制御によるカール抑制はそのような、カールのおき易いSP値の大きな湿潤剤ほど有効である。
一方、なるべくカールの小さい湿潤剤を選ぶのであれば、SP値9〜12とSP値の低い湿潤剤が好ましい。
【0027】
溶解度パラメータSPが9以上12以下の湿潤剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=11.6)、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.8)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(SP値=9.2)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=11.6)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.5)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(SP値=9.4)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=10.5)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.6)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=10.4)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(SP値=9.4)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.6)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.1)等がある。
【0028】
ただし、吐出信頼性の高い、平衡水分量の大きな湿潤剤は、どうしてもSP値が大きく(例えばグリセリン(16.4)、1,3−ブタンジオール(12.6)、メチルブタンジオール(12.1)など、カールが起こりやすいが、そのような湿潤剤の場合こそ本発明が有効である。
【0029】
前記湿潤剤の含有量はインク全量に対し、一般には、20重量%以上60重量%未満であることが好ましい。あまり少ないと、乾燥が速く、目つまりし易く、あまり多すぎると粘度が高く噴射不安定になる。
【0030】
本発明においては、溶解性パラメーターを、溶解性パラメーター適用事例集、発行 情報機構(2007年)p13−14(Fedrosの方法)にしたがって計算した。本発明ではグリセリンが16.5(cal/cm3)1/2になるOH基のパラメーターを選んだ。
また、無機性/有機性は、日本エマルジョン Formulation Design with Organic Conceptual Diagramの方法により計算した。
【0031】
また、本発明においては、25℃での粘度が3mPa・s以上30mPa・s未満のものを検討した。
粘度が高い場合、噴射安定化のためには場合によりヘッドを加熱して低粘度化させて吐出する必要がある。
【0032】
本発明のインクは、着色剤を含んでもよい。着色剤の含有量はインク全量に対して10重量%以下であることが好ましい。
本発明のインクに使用できる着色剤としては、従来公知のものを特に制限なく使用できる。例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。
【0033】
本発明で用いられる着色剤は、予め、分散剤及びその他の添加物と共に分散機により分散して用いることが好ましい。
分散機としては従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
【0034】
本発明のインクジェット記録方法で適用できる記録用紙としては、例えば、普通紙、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、インクジェット専用紙等が広く用いることができるが、その中でも吸収性支持体である上質紙、アート紙、コート紙を用いたインクジェット画像方法あることが、本発明の目的効果を発揮させることができ好ましい(カールが起きやすい紙にこそ有効。)。
【0035】
本発明のインクを吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッドは、従来公知のものを使用できる。ピエゾヘッド、サーマル方式のヘッド、薄膜ピエゾヘッドどれでもかまわない。
【実施例】
【0036】
本発明を実施例によりより詳細に説明する。
本発明者らは、まず、紙の伸びとインク中の水分量との関係について調べた(実験1)。
【0037】
<インク調合>
[表面処理顔料分散液の調製]
CTAB比表面積が150m2/g、DBP吸油量100ml/100gのカーボンブラック90gを、2.5Nの硫酸ナトリウム溶液3,000mlに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。
この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。
得られたカーボンブラックを水洗いし乾燥させて、固形分20質量%となるよう純水中に分散させて、ブラック顔料分散液を作製した。
【0038】
(高粘度黒インク(水分量小)の処方)(I)
上記製造例のブラック分散体 25部
湿潤剤 グリセリン 27部
メチルブタンジオール 33部
界面活性剤+浸透剤 4部
防腐防カビ剤 0.05部
水 残部
高粘度黒インクの粘度(25℃)は25.2mPasであった。
【0039】
(中粘度黒インク(水分量中)の処方)
上記高粘度黒インク(I)の湿潤剤の総量を50部にしてその分水を増加して作成した。
中粘度黒インク(水分量中)の粘度(25℃)は13.3mPasであった。
【0040】
(低粘度黒インク(水分量大)の処方)
上記高粘度黒インク(I)の湿潤剤の総量を40部にしてその分水を増加した。
低粘度黒インクの粘度(25℃)は8mPasであった。
【0041】
湿潤剤と水分との比率を変え、水分量が異なる上記の3種類のインクを紙に塗付し紙の伸びを測定した。
なお、測定は、ハイグレード普通紙(株式会社リコー)を使用し、インクの塗付は刷毛を使用して行い、すぐに伸びを測定した。 紙は2cm×11cmの長方形に切断したもので、長軸方向に、1Nの力をかけた場合の伸びをみた。 その方向は繊維方向に直角で伸びやすい方向である。
塗布初期のインク付着量(および水分量)は、水分蒸発後の重量から、既知の湿潤剤平衡水分量値を使用して逆算した。
紙の伸びとインク中の水分量との関係を測定した結果を図1、2に示す。
(HGはハイグレード紙の略)、塗布5秒後、3分後の伸びの値。)
水分含有量が多い(低粘度の)インクほど、紙の伸びが大きく、インク中の水分量と紙伸びとの間に相関があった。
【0042】
また、インク塗付後の経過時間と紙の伸びとの関係を図3,4,5に示す。
また、水分含有量が多い(低粘度の)インクほど、紙の伸びが速やかに起こり、すぐに伸びの減少モードに移ることがわかる。
水分含有量が少ない(高粘度の)インクは紙の伸びが緩慢で伸びの減少モードには時間内で至っていない(なお図では塗布量を厳密にはあわせていないためMAX値はかならずしも粘度と関係を有した結果になっていない。)。
【0043】
この理由は明らかではないが、水分含有量が多い(低粘度の)インクは、紙への浸透が速く、紙の伸びが速やかに起こるのに対し、水分含有量が少ない(高粘度の)インクは、紙への浸透が遅く、紙中の水素結合部に到達してそれを切断するまでの時間が長いため、伸びがだらだらと緩慢に起こると考えられる。
また、湿潤剤が多い場合、初期水分は少なくても、平衡水分としての水分が蒸発しにくくいつまでも残留するため、いつまでも紙伸びがだらだらと続くことも要因として考えられる。
【0044】
次に、インクの塗付量と初期カール(バックカール)の発生量との関係を以下の方法により調べた(実験2)。
リコーのGX5000ジェルジェットプリンタを使用し、前記高粘度黒インク(水分29%、粘度13.3mPas)と中粘度黒インク(水分39%、粘度25mPas)を使用し、普通紙(リサイクルペーパー)に、インク量一定でベタ印字し、プリンタから排紙された直後からカール量を測定した。
【0045】
カール量の測定は、印字が終わったときを時間0とし、排紙後、印字面を下にふせて、紙の端の上にそった(バックカール)の最大高さ(H)を4点測定し、その平均値から下記式(1)を用いて曲率(1/曲率半径(r))を求め評価した。
r=L2/2H 式(1)
但し、rは曲率半径、Hは高さ、Lは紙の長さ(本発明では5,5cmとした)を表す。
評価結果を図6、7に示す。
【0046】
インク塗付量が10g/m2くらいまでは塗付量が増えるほどカールが大きくなるが、インク塗付量が15g/m2程度を超えると逆にカールが小さくなる。
すなわち付着量とカールのとの関係で最大値が存在する。
注意:図では一部、印刷モードが違うが、付着量とカールの関係は、1分以降は印刷モードの影響を受けないと考える。(実機では高付着量はモードを変えないと得られない。付着量とカールの関係に最大値があることは2cm×11cmサンプルにて手塗り実験で確認済み)。
このような挙動を示す理由は、カールの発生は、紙の伸び(引っ張り)の表裏差で決まるものであり、塗付量が10g/m2くらまでは、インク塗付量が多くなるほど、紙伸びが大きく、カールが大きくなるが、インク塗付量が15g/m2程度を超えると、紙の内部にまで浸透する水分量が増加し、逆に紙の伸び(引っ張り)の表裏差が小さくなり、カールが小さくなるためと思われる。
したがって、全ベタ印字で、インク付着量が5g/cm2程度で、少ないときはよいが、インク付着量が多くなって、カールが発生しやすくなった場合、着色インク以外のインク付着量をもっと増やすための液(低カール化補助液)を吐出し、インク付着量を15g/m2を超えるまで増加させ、カールを小さくする手段があることが本実験結果からえられる。
この場合、(低カール化補助液)は、着色インクそのままで液量を増やすと色調が変化してしまうため、インクから着色剤を除いた液を使用するほうが好ましい。
またそのような液には、顔料を凝集させる性質をもつ化合物、例えば、ポリアリルアミンや、2価の金属塩、あるいは、酸性有機化合物を添加しておき、着色インク吐出の前に吐出付着させておくと、カール防止効果以外に、紙面上顔料凝集・高画質化の効果も得られる。
【0047】
次に、初期カール(バックカール)の発生量とインク塗付からの経過時間との関係を以下の方法により調べた(実験3)。
前記低粘度インク(水分49%、粘度8mPas)、中粘度インク(水分39%、粘度13.3mPas)、及び、高粘度インク(水分29%、粘度25.2mPas)を、それぞれ、ハイグレード普通紙(株式会社リコー)、マイペーパー(株式会社NBSリコー製)、リサイクル紙(リサイクルPPC)に塗布した。
評価結果を図8〜図16に示す。
【0048】
前述のように、インク塗付時の紙の伸びは、水分量が多い(低粘度の)インクと、水分量少ない(高粘度の)インクとでは、水分量が多い(低粘度の)インクの方が紙の伸びは大きくなったが、初期カール(バックカール)の発生量(最大値)は、水分量が多い(低粘度の)インクと水分量が少ない(高粘度の)インクとではそれほど変わらない。
しかし、初期カール(バックカール)の発生時間は、水分量が多い(低粘度の)インクは速やかにカールが発生し、速やかにカールが消失するのに対し、水分量が少ない(高粘度の)インクは、カールが発生が緩慢でカールが最大になるまでの時間が長い。
ここでは、前者を速効カール、後者を緩慢カールと呼ぶ。
このように紙の伸びとカールとは必ずしも相関はしない。 紙の伸びはあくまでも水分量できまるが、カールはあくまでも紙の表裏差が効くため、インクの浸透距離が効いてくると考えられる。
【0049】
図8〜図10に示すように、特にHG紙は、水分量が多い(低粘度の)インクでは速効カールが発生し、水分量少ない(高粘度の)インクでは緩慢カールの発生が顕著であり、粘度の上昇により、初期カール(バックカール)の緩慢化することがわかる。
図17に、速効カールと緩慢カールとの関係を示す。
なお、初期カール(バックカール)が収まったあとは印地面を内部側にして丸まるフェイスカールになる場合があるが、そこまでにはかなり時間がかかり、高速印射の場合は初期のバックカールが問題である。
【0050】
このように、水分量少ない(高粘度の)インクを用いることにより、インク塗付直後(数秒間)に生じる初期(バック)カールを防止でき、画像形成装置内におけるインク塗付から排紙までの紙の搬送性を向上させることができる。
【0051】
また、薄膜ピエゾヘッドは、高粘度のインクを打つのが難しいため、水分量が多い(低粘度の)インクを用いなければならず、速効カールが生じ、画像形成装置内におけるインク塗付から排紙までの紙の搬送性が低下する。したがって、薄膜ピエゾヘッドを用いた画像形成装置は、画像形成装置内の紙の搬送経路を直線状にして、紙を抑えつけながら搬送することが好ましい。
紙の搬送が直進の場合には、たとえ、バックカールが生じる条件でも、図18のように、搬送台により、機械的にカールが抑制される場合が多い。 初期のカールが問題になるのは主に、紙の搬送方向がターンするような場合である。もし、搬送方向が直進及びターンの両方を有する場合は高粘度インクを使用するということも考えられる。
【0052】
次に、初期(バック)カールについて、速効カールの挙動を示す水分量が多い(低粘度の)インクについて、溶解度パラメータSP値の異なる湿潤剤を用いたインク1〜8を作製し、湿潤剤の溶解度パラメータ(SP値)と平衡水分量との関係、平衡水分量とインクの浸透量との関係、及び平衡水分量と曲率の関係を調べた(実験4)。
インクを以下の処方で作製した。
【0053】
(インク1)
湿潤剤(グリセリン:SP値16.4) 35wt%
ノニオン系界面活性剤 1.25wt%
アミン系pH調整剤 0.6wt%
顔料分散体(カーボンブラック固形分20%) 25wt%
シリコン系消泡剤 0.1wt%
水 38.05wt%
インク1の粘度(25℃)は、4.19mPasであった。
【0054】
(インク2)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(1,3−ブタンジオール:SP値12.7)に代える他はインク1と同様にしてインク2を作製した。
インク2の粘度(25℃)は、5.49mPasであった。
【0055】
(インク3)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(メチルブタンジオール:SP値12.1)に代える他はインク1と同様にしてインク3を作製した。
インク3の粘度(25℃)は、6.56mPasであった。
【0056】
(インク4)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(窒素構造含有系溶剤:SP値推定 12.8)に代える他はインク1と同様にしてインク4を作製した。
インク4の粘度(25℃)は、3.92mPasであった。
【0057】
(インク5)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(窒素構造含有系溶剤:推定SP10.2)に代える他はインク1と同様にしてインク5を作製した。
インク5の粘度(25℃)は、4.54mPasであった。
【0058】
(インク6)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(2−ピロリドン:SP値11.2)に代える他はインク1と同様にしてインク6を作製した。
インク6の粘度(25℃)は、3.55mPasであった。
【0059】
(インク7)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(ジエチレンオキシドエーテル系溶媒:SP値 9.8)に代える他はインク1と同様にしてインク7を作製した。
インク7の粘度(25℃)は、4.79mPasであった。
【0060】
(インク8)
インク1の湿潤剤を湿潤剤(グリコールエーテル系溶剤:SP値9.4)に代える他はインク1と同様にしてインク2を作製した。
インク8の粘度(25℃)は、5.72mPasであった。
以下のように湿潤剤の種類を変えて実験した。
【0061】
インク1〜8の水分量は一定なので、水分による紙伸び量の違いはないと考えられる。湿潤剤のSP値が大きくなると湿潤剤の平衡水分量も大きくなった。
測定結果を図19、20に示す。図20はSP値でなく無機性/有機性比でプロットしたものである。
【0062】
また、図21に、ブリストー法で求めた100msec後の浸透量と平衡水分量との関係を示す。
平衡水分量が大きくなるSP値の大きな湿潤剤を用いたインクは、浸透量が少なく(浸透速度が小さく)なり、SP値の大きな湿潤剤はインクの浸透を阻害する要因となる。
そして、インクの浸透を阻害するSP値の高い湿潤剤をもちいたインクは、内部への浸透が少ないため、紙のセルロース繊維の引っ張りの表裏差が大きくなり、カールが大きくなるものと考える。
インク1〜8には、いずれも界面活性剤が入っており静的表面張力および接触角に大きな差がない。 また、インクの粘度と浸透量との間には相関関係がなく、ルーカスウオッシュバーンの浸透式に従わない。 むしろ、湿潤剤の平衡水分量(親水性)と浸透速度に関係があった。 この理由としては、セルロースと水が化学反応をするため、ルーカスウオッシュバーンのような単純な物理的浸透とは異なるメカニズムとなるためであると思われる。 つまり、親水性の高い液は、紙の表面でセルロースに捕らわれセルロースを膨張しやすく、孔径が小さくなり、浸透しにくくなるのではないかと思われる。
【0063】
したがって、カールを少なくするには水との相溶性を阻害しない範囲でSP値の小さな湿潤剤を選択するのがよい。
薄膜ピエゾヘッドのような、高粘度のインクの吐出が困難であるヘッドを用いた画像形成装置において、カールによる画像形成装置内での搬送性低下を防止するにはSP値の小さなSP=9〜12程度の湿潤剤が好ましい。
図22に排紙1分後のカール曲率と湿潤剤の平衡水分量との関係を示す。
図23に排紙1分後のカール曲率とDSA(ブリストー法を利用した紙への浸透量測定装置)で求めた浸透量との関係を示す。
また、図24に排紙1分後のカール曲率とSP値との関係を示す。
【0064】
また、溶解パラメーターSP値が10以下の湿潤剤は水難溶性のものがあり、水難溶性の湿潤剤は、水及び水性着色剤の分散体と混合すると相分離する。
下記の処方で水難溶性の湿潤剤を用いたインクを作製した。
(インク9)
インク1の湿潤剤を溶剤(油系構造含有系溶剤:SP値8.9)に代える他はインク1と同様にしてインク9を作製した。
インク9の粘度(25℃)は、1.74mPasであった。
インク9は、着色剤含有水分部と油部が相分離しているが、カールは生じにくく、着色剤が紙表面に留まり、画像濃度が非常に高かった。
【0065】
インク9の非相溶系のインクも含めた9種のインクの湿潤剤の平衡水分量とブリストー法の浸透量の関係を図25に、インク中の水分付着量と紙の伸び量との関係を図26に、DSAで求めたインクの浸透量とカール量との関係を図27、28に示す。
非相溶系のインク9は、図25に示すように平衡水分量に対する浸透量が少なく、また、図26に示すように、紙へのインク塗付量と紙伸びとの関係が相溶インクとは異なり、インク塗付量の増加に伴う紙伸び量が相溶インクよりも少ない。
さらに、インク9は浸透量が少ないにも関わらずカールは少ない。かなり特殊である。
相分離インクは、カールの発生量が少なくなる理由は現状では明らかにされてはいないが、インク塗付後、油分は、紙の内部に速やかに浸透し、一方、水および水に分散した着色剤は紙の表面のセルロース繊維に引っかかり、紙の内部に浸透しないためであると考えられ、併せて画像濃度が高くなったと考えられる。
なおNo9のような水と相溶しない有機溶媒と水とを相分離した状態のインクはエマルジョン状態とした方が好ましい。 そのような有機溶媒は極性基の少ない、脂肪族系、エステル系、芳香族系、アセトン系など各種存在する。 沸点が100℃以上で蒸発しにくいものが好ましい。
図26はインク(1)〜(9)の2cm×11cmのサンプルをレオメーター装置で1Nの力をかけながら片面にインクを付着させ、伸びをみたものであるが、図26に示すような時間と伸びの挙動を示す。 図26はそれの付着インク中水分量と伸びのMAXの関係を示したものである。 このように相分離インクを除いた相溶性のインクは伸びのMAXと水分量の関係は湿潤剤の種類の影響をあまり受けない。 このことも、紙伸びは水分量により決まり湿潤剤種の影響をあまり受けないことを示す。 一方、カールは紙の表裏差のため、湿潤剤種の影響を受ける。その要因はインクの浸透距離の違いが大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開平9−216389号公報
【特許文献2】特開2004−136458号公報
【特許文献3】特開2006−82546号公報
【特許文献4】特開2004−209759号公報
【特許文献5】特開2006−212787号公報
【特許文献6】特開2007−91905号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷から排紙までの時間が10秒以下の高速印刷、または、紙の搬送方法が紙をターンさせる印刷に、粘度が25℃で、15mPas以上の水性インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
同一装置内に少なくとも同一系統の色の低粘度インクと高粘度インクを用意しておき、印刷条件に応じ、前記低粘度インクと高粘度インクとを選択使用するインクジェット記録方法。
【請求項3】
吐出後、排紙まで10秒以内の高速プリントにおいて、(速効カールになる)低粘度インクと(緩慢カールになる)高粘度インクを用意しておき、吐出から排紙までのカールによるトラブルが予想される場合は前記高粘度インクを印写し、そうでない場合は低粘度インクを使用する、印刷条件に応じて粘度の異なるインクを使用する、カール対策モードを有する請求項1のインクジェット記録方法。
【請求項4】
カールを防止できる特定の単位面積あたりの塗付量(a)、(b)(但し、a<b)の値を予め定めておき、塗付量がa以下またはb以上となるように印写することを特徴とする請求項1のインクジェット記録方法。
【請求項5】
着色剤を含む液(A)と着色剤を含まない液(B)のそれぞれ単独、あるいは双方の組合せで塗付量を(a)以下または(b)以上になるように印写することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
着色剤を含まない液(B)が、(A)液と混合したとき、(A)液の着色剤を凝集するものであることを特徴とする液であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記低粘度インクは、少なくとも溶解性パラメーターが10以下の水難溶性の溶媒と、水に分散あるいは溶解する着色剤と、水とを含有し、粘度が10mPas以下であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項1】
印刷から排紙までの時間が10秒以下の高速印刷、または、紙の搬送方法が紙をターンさせる印刷に、粘度が25℃で、15mPas以上の水性インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
同一装置内に少なくとも同一系統の色の低粘度インクと高粘度インクを用意しておき、印刷条件に応じ、前記低粘度インクと高粘度インクとを選択使用するインクジェット記録方法。
【請求項3】
吐出後、排紙まで10秒以内の高速プリントにおいて、(速効カールになる)低粘度インクと(緩慢カールになる)高粘度インクを用意しておき、吐出から排紙までのカールによるトラブルが予想される場合は前記高粘度インクを印写し、そうでない場合は低粘度インクを使用する、印刷条件に応じて粘度の異なるインクを使用する、カール対策モードを有する請求項1のインクジェット記録方法。
【請求項4】
カールを防止できる特定の単位面積あたりの塗付量(a)、(b)(但し、a<b)の値を予め定めておき、塗付量がa以下またはb以上となるように印写することを特徴とする請求項1のインクジェット記録方法。
【請求項5】
着色剤を含む液(A)と着色剤を含まない液(B)のそれぞれ単独、あるいは双方の組合せで塗付量を(a)以下または(b)以上になるように印写することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
着色剤を含まない液(B)が、(A)液と混合したとき、(A)液の着色剤を凝集するものであることを特徴とする液であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記低粘度インクは、少なくとも溶解性パラメーターが10以下の水難溶性の溶媒と、水に分散あるいは溶解する着色剤と、水とを含有し、粘度が10mPas以下であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図22】
【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2013−56489(P2013−56489A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196810(P2011−196810)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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