説明

インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法

【課題】吐出安定性、硬化性、硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れたインクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤、及び、(成分C)着色剤を含有し、成分Aとして、式(I)で表される単官能重合性化合物と式(II)で表される多官能重合性化合物とを含有することを特徴とするインクジェットインク組成物。式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。式(II)で表される化合物の代表例としてはトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加体に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基が結合した化合物が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェットインク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の被記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
また、従来のインクジェットインク組成物としては、特許文献1〜3に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−131755号公報
【特許文献2】特表2010−522795号公報
【特許文献3】特開2007−131754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化性、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れたインクジェットインク組成物、及び、前記インクジェットインク組成物を使用したインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、下記の<1>及び<8>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤、及び、(成分C)着色剤を含有し、成分Aとして、(成分A−1)単官能ラジカル重合性化合物と(成分A−2)多官能ラジカル重合性化合物とを含有し、成分A−1として、(成分A−1−1)N−ビニル化合物と(成分A−1−2)式(I)で表される化合物とを含有し、成分A−1の含有量が成分Aの総質量に対し50〜90質量%であり、成分A−1−1の含有量が成分A−1の総質量に対し10〜40質量%であり、成分A−1−2の含有量が成分A−1の総質量に対し5〜90質量%であり、成分A−2は、式(II)で表される化合物を少なくとも2種含有し、成分A−2の含有量が成分Aの総質量に対し0.1〜25質量%であることを特徴とするインクジェットインク組成物、
【0006】
【化1】

(式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0007】
【化2】


(式(II)中、R11はそれぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。)
【0008】
<2>成分A−1−1がN−ビニルカプロラクタムである、上記<1>に記載のインクジェットインク組成物、
<3>成分A−1として、更に(成分A−1−3)芳香族炭化水素環を有する(メタ)アクリレート化合物を、成分A−1の総質量に対し5〜40質量%含有する、上記<1>又は<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<4>成分Bとして、(成分B−1)モノアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又は(成分B−2)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、並びに、(成分B−3)チオキサントン化合物を含有する、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<5>式(II)で表される化合物の少なくとも1つがトリメチロールプロパントリアクリレートであり、その含有量が成分Aの総質量に対し0.5〜8質量%である、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<6>成分Bとして、(成分B−1)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有し、その含有量がインク組成物全質量に対し3質量%以下である、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<7>成分A−2として、式(II’)で表される化合物を少なくとも1種含有する、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
【0009】
【化3】

(式(II’)中、R11は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。)
【0010】
<8>(a1)被記録媒体上に、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインクジェットインク組成物に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化性、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れたインクジェットインク組成物、及び、前記インクジェットインク組成物を使用したインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(インクジェットインク組成物)
本発明のインクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」ともいう。)は、以下に示す第一の実施形態又は第二の実施形態を満たすことにより、硬化性、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れた印刷物を得ることができる。
本発明の第一の実施形態におけるインクジェットインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤、及び、(成分C)着色剤を含有し、成分Aとして、(成分A−1)単官能ラジカル重合性化合物と(成分A−2)多官能ラジカル重合性化合物とを含有し、成分A−1として、(成分A−1−1)N−ビニル化合物と(成分A−1−2)式(I)で表される化合物とを含有し、成分A−1の含有量が成分Aの総質量に対し50〜90質量%であり、成分A−1−1の含有量が成分A−1の総質量に対し10〜40質量%であり、成分A−1−2の含有量が成分A−1の総質量に対し5〜90質量%であり、成分A−2は、式(II)で表される化合物を少なくとも2種含有し、成分A−2の含有量が成分Aの総質量に対し0.1〜25質量%であることを特徴とする。
【0014】
【化4】

(式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0015】
【化5】

(式(II)中、R11はそれぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。)
【0016】
本発明の第二の実施形態におけるインクジェットインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤、及び、(成分C)着色剤を含有し、成分Aとして、(成分A−1)単官能ラジカル重合性化合物と(成分A−2)多官能ラジカル重合性化合物とを含有し、成分A−1として、(成分A−1−1)N−ビニル化合物と(成分A−1−2)式(I)で表される化合物とを含有し、成分A−1の含有量が成分Aの総質量に対し50〜90質量%であり、成分A−1−1の含有量が成分A−1の総質量に対し10〜40質量%であり、成分A−1−2の含有量が成分A−1の総質量に対し5〜90質量%であり、成分A−2は、式(II’)で表される化合物を少なくとも1種含有し、成分A−2の含有量が成分Aの総質量に対し0.1〜25質量%であることを特徴とする。
【0017】
【化6】

(式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0018】
【化7】

(式(II’)中、R11は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。)
【0019】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタアクリル」のいずれか一方、又は、その両方を含む語であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタアクリレート」のいずれか一方、又は、その両方を含む語である。
【0020】
本発明のインク組成物は、活性放射線(活性エネルギー線ともいう。)により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0021】
本発明のインク組成物は、第1の実施態様として、成分A−1−1としてN−ビニルカプロラクタム、成分A−1−2としてサイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、成分A−2として式(II)で表される3官能エチレン性不飽和化合物を少なくとも2種含有し、成分Bとして、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はビスアシルホスフィンオキサイド化合物、並びに、チオキサントン化合物を含有することが好ましい。本発明のインク組成物は、硬化性に優れたインクジェットインク組成物を提供することができる。
本発明のインク組成物は、第2の実施態様として、成分A−1−1としてN−ビニルカプロラクタム、成分A−1−2としてサイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、成分A−2として式(II’)で表される3官能エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含有し、成分Bとして、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はビスアシルホスフィンオキサイド化合物、並びに、チオキサントン化合物を含有することが好ましい。本発明のインク組成物は、硬化性に優れたインクジェットインク組成物を提供することができる。
以下、本発明のインク組成物について説明する。
【0022】
本発明のインク組成物は、成分Aとして、以下に説明する成分A−1及び成分A−2の化合物を含み、成分A−1の含有量が成分Aの総質量に対し50〜90質量%であり、成分A−1−1の含有量が成分A−1の総質量に対し10〜40質量%であり、成分A−1−2の含有量が成分A−1の総質量に対し5〜90質量%であり、成分A−2の含有量が成分Aの総質量に対し0.1〜25質量%である。
以下に、成分A−1及びA−2について説明する。
【0023】
(成分A−1)単官能ラジカル重合性化合物
本発明のインク組成物は、(成分A−1)単官能ラジカル重合性化合物を含有する。
成分A−1としては、エチレン性不飽和基を1つ有するラジカル重合性化合物が好ましい。中でも、(成分A−1−1)N−ビニル化合物、及び(成分A−1−2)式(I)で表される化合物がより好ましい。
本発明のインク組成物は、成分A−1として、(成分A−1−1)N−ビニル化合物と(成分A−1−2)式(I)で表される化合物とを含有することが更に好ましい。
以下に、成分A−1−1及び成分A−1−2について説明する。
【0024】
本発明のインク組成物は、(成分A−1−1)N−ビニル化合物を含有する。
成分A−1−1について、以下に説明する。
成分A−1−1としては、N−ビニルラクタム類又はN−ビニルホルムアミドを好ましく含有することができる。また、N−ビニルラクタム類としては、式(a)で表される化合物が好ましい。
【0025】
<N−ビニルラクタム類>
本発明のインク組成物は、成分A−1−1として、式(a)で表される化合物を含有するのが好ましい。
【0026】
【化8】

【0027】
式(a)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは3〜5の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への良好な密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上の水素原子がアルキル基、アリール基等の置換基により置換されていてもよく、ラクタム環と飽和又は不飽和環構造とが連結していてもよい。
式(a)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
<N−ビニルホルムアミド>
N−ビニルホルムアミドとしては、下記構造の化合物が好ましく挙げられる。下記構造の化合物は、市販品として荒川化学工業(株)のビームセット770を入手することができる。
【0029】
【化9】

【0030】
<式(I)で表される化合物>
本発明のインク組成物は、成分A−1−2として、式(I)で表される化合物を含有する。
以下に、本発明のインク組成物の成分A−1−2として用いられる、式(I)で表される化合物について説明する。
【0031】
【化10】

(式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0032】
1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
2及びR3としてはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基が好ましく、R2及びR3が共に水素原子であることがより好ましい。
1における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキレン基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。 X1としては、単結合、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素数1〜20の二価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜8の二価の炭化水素基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
【0033】
以下に成分A−1−2の具体例を挙げるが、これらの化合物に限定されるものではない。なお、下記の具体例中、Rは水素原子、又は、メチル基を表す。
【0034】
【化11】

【0035】
これらの中でも、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートが好ましく、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート(CTFA)が特に好ましい。
成分A−1−2は、市販品であってもよく、市販品の具体例としては、SR531(Sartomer社製)が好ましく挙げられる。
【0036】
本発明のインク組成物における成分A−1の含有量は、成分Aの総質量に対して、50〜90質量%であり、好ましくは50〜80質量%、更に好ましくは60〜80質量%である。
成分A−1の含有量が、50質量%未満又は90質量%を超えると、所望の吐出安定性及び得られる硬化膜の基材密着性が得られなくなる。
成分A−1を上記範囲で含有することにより、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性に優れたインク組成物が得られる。
【0037】
また、本発明のインク組成物における成分A−1−1の含有量は、成分A−1の総質量に対し10〜40質量%であり、好ましくは15〜30質量%である。
【0038】
また、本発明のインク組成物における成分A−1−2の含有量は、成分A−1の総質量に対し5〜90質量%であり、好ましくは30〜90質量%である。
【0039】
(成分A−2)多官能ラジカル重合性化合物
本発明のインク組成物は、(成分A−2)多官能ラジカル重合性化合物を含有する。
成分A−2としては、エチレン性不飽和基を2つ以上有するラジカル重合性化合物が好ましい。また、成分A−2としては、式(II)で表される化合物を含有する。
【0040】
<式(II)で表される化合物>
本発明の第一の実施態様のインク組成物は、成分A−2として、式(II)で表される化合物を少なくとも2種含有する。
以下に、本発明のインク組成物の成分A−2として用いられる、式(II)で表される化合物について説明する。
【0041】
【化12】

(式(II)中、R11はそれぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。)
【0042】
式(II)中、R11は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、アルキル基は直鎖でも分岐でもよい。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基が挙げられる。R11は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基であり、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0043】
式(II)中、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、アルキル基は直鎖でも分岐でもよい。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基が挙げられる。R12は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メチロール基、エチロール基が挙げられ、特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、又はメチロール基である。
【0044】
13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
【0045】
式(II)中、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の連結基であることが好ましい。
2としては、単結合、炭素数1〜6の二価の炭化水素基、又は炭素数1〜6のオキシアルキレン基であることが好ましく、単結合又はメチレン基であることが特に好ましい。
【0046】
式(II)中、p、q及びrはそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。p、q及びrはそれぞれ独立に、0〜3が好ましく、0〜2が特に好ましい。また、p、q及びrの値の好ましい組み合わせとしては、例えばp=q=r=0、p=q=r=1、又はp=q=r=2等が挙げられる。
以下に、p、q及びrが好ましい値をとる場合の化合物の具体例について説明するが、これらに制限されるものではない。
【0047】
p=q=r=0を満たす場合の式(II)の化合物の好ましい態様としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(R12はエチル基、R13は水素原子、X2はメチレン基の場合)、トリメチロールプロパントリメタアクリレート(R12はエチル基、R13はメチル基、X2はメチレン基の場合)、トリメチロールエタントリアクリレート(R12はメチル基、R13は水素原子、X2はメチレンの場合)、トリメチロールエタントリメタアクリレート(R12はメチル基、R13はメチル基、X2はメチレンの場合)、テトラメチロールメタントリアクリレート(R12はメチロール基、R13は水素原子、X2はメチレン基の場合)、テトラメチロールメタントリメタアクリレート(R12はメチロール基、R13はメチル基、X2は単結合の場合)、グリセリントリアクリレート(R12は水素原子、R13は水素原子、X2は単結合の場合)、グリセリントリメタアクリレート(R12は水素原子、R13はメチル基、X2はメチレン基の場合)が挙げられる。
これらは、市販品として、Sartomer社からSR351S、SR444、SR350等として入手できる。
【0048】
p=q=r=1の場合の式(II)の化合物の好ましい態様としては、下記構造式の化合物が挙げられる。これらは、市販品として、Sartomer社からSR454、SR9020、SR492、デナコールアクリレートDA−314(ナガセケムテックス(株))等が入手できる。
【0049】
【化13】

【0050】
p、q及びrが、他の値をとる場合の式(II)の化合物の好ましい態様としては、下記構造式の化合物が挙げられる。これらは、市販品として、Sartomer社からSR9021、SR9035、SR415、東亞合成(株)からアロニックスM−320、新中村化学工業(株)からNKエステルA−GLy−9E等が入手できる。
【0051】
【化14】

【0052】
式(II)で表される化合物は、2種類以上を複数組み合わせて使用することが好ましい。その場合の好ましい態様は、(II−a)と(II−d)との混合使用、又は、トリメチロールプロパントリアクリレートと(II−d)との混合使用が挙げられ、トリメチロールプロパントリアクリレートと(II−d)との混合使用が特に好ましい。少なくとも1つがトリメチロールプロパントリアクリレートであることが好ましく、その含有量が成分Aの総質量に対し0.5〜8質量%であることが好ましい。
【0053】
本発明のインク組成物における、成分A−2の含有量は成分Aの総質量に対し0.1〜25質量%であり、より好ましくは、0.5〜10質量%、更に好ましくは、2〜9質量%である。
上記範囲であると、硬化性、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れたインク組成物が得られる。
【0054】
<式(II’)で表される化合物>
本発明の第二の実施態様のインク組成物は、成分A−2として、式(II’)で表される化合物を少なくとも1種含有する。
以下に、本発明のインク組成物の成分A−2として用いられる、式(II’)で表される化合物について説明する。
【0055】
【化15】

(式(II’)中、R11は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。)
【0056】
式(II’)中、R11、R12、R13、及びX2は、式(II)中のR11、R12、R13、及びX2と同義であり、好ましい態様も同様である。p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。p、q及びrはそれぞれ独立に、1〜3が好ましく、1又は2が特に好ましい。
p、q及びrが好ましい値をとる場合の化合物の具体例は、式(II)で表される化合物の好ましい態様で挙げた化合物中の、(II−a)、(II−b)、(II−c)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0057】
(成分A−1−3)芳香族炭化水素環を有する(メタ)アクリレート化合物
本発明のインク組成物は、A−1として更に(成分A−1−3)芳香族炭化水素環を有する(メタ)アクリレート化合物を好ましく含有することができる。
成分A−1−3について、以下に説明する。
【0058】
成分A−1−3として、特開2009−96985号公報の段落0048〜0063に記載された、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーが好ましく挙げられる。本発明においては、芳香族炭化水素環を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、式(a−2)で表される化合物が好ましい。
【0059】
【化16】

(式(a−2)中、R1は水素原子、又は、メチル基を表し、X1は二価の連結基を表し、Arは一価の芳香族炭化水素基を表す。)
【0060】
式(a−2)中、R1として好ましくは、水素原子である。
1は二価の連結基を表し、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NR’−若しくは−NR’C(O)−)、カルボニル基(−C(O)−)、イミノ基(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
1及びX1を含む部分(H2C=C(R1)−C(O)−X1−)は、芳香族炭化水素環上の任意の位置で結合することができる。また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、X1の芳香族炭化水素環と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましい。式(a−2)におけるX1は、*−O−(LO)q−であることが好ましい。ここで、*は、式(a−2)のカルボニル基との結合位置を示し、qは0〜10の整数であり、Lは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。(LO)qは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖であることが好ましい。
【0061】
Arは、一価の芳香族炭化水素基を表す。
一価の芳香族炭化水素基としては、1〜4つの環を有する一価の単環又は多環芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
中でも、本発明においては、フェニル基、ナフチル基であることが好ましく、単環芳香族炭化水素基、すなわちフェニル基であることがより好ましい。
【0062】
一価の芳香族炭化水素基は、芳香環上に置換基を有していてもよい。
上記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシ基、炭素数1〜10のアシル基、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、更に置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
前記置換基は、更に置換基を有していてもよく、例えば、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
一価の芳香族炭化水素基が複数の置換基を有する場合、前記置換基は同一でも異なっていてもよい。また置換基同士が結合して5員又は6員の環を形成してもよい
また、一価の芳香族炭化水素基は、芳香環上に置換基を有していないことが好ましい。
【0063】
本発明においては、式(a−2)で表される化合物としては、フェニル基を有する化合物が好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2−フェノキシエチルアクリレート(PEA)が特に好ましい。
【0064】
本発明のインク組成物における、成分A−1−3の含有量は、成分A−1の総質量に対し5〜40質量%が好ましく、より好ましくは8〜30質量%である。
上記範囲であると、硬化性、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れたインク組成物が得られる。
【0065】
<他の重合性化合物>
本発明のインク組成物は、成分A−1及びA−2のうちの、成分A−1−1、成分A−1−2、成分A−1−3及び式(II)で表される化合物以外の他の重合性化合物を含有していてもよい。
他の重合性化合物としては、特に制限はないがエチレン性不飽和化合物が好ましい。
他の重合性化合物としては、公知の重合性化合物を用いることができ、成分A−1−1、成分A−1−2、成分A−1−3及び式(II)で表される化合物以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0066】
本発明のインク組成物は、成分A−1−1、成分A−1−2、成分A−1−3及び式(II)で表される化合物以外の2官能(メタ)アクリレート化合物を、好ましく使用できる。2官能(メタ)アクリレート化合物としては、炭素数5以上の分岐を有していてもよい炭化水素鎖を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0067】
2官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、炭素数5以上の炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレート化合物であり、具体的には、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましく挙げられる。
【0068】
本発明のインク組成物は、成分A−1−1、成分A−1−2、成分A−1−3及び式(II)で表される化合物以外の重合性化合物として、更に3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を用いることもできる。4官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
その他の多官能(メタ)アクリレートとしては、ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0070】
また、他の重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0071】
他の重合性化合物として具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
【0072】
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
他の重合性化合物の分子量は、80〜2,000であることが好ましく、80〜1,000であることがより好ましく、80〜800であることが更に好ましい。
【0073】
本発明のインク組成物は、成分A−1−1、成分A−1−2、成分A−1−3及び式(II)で表される化合物以外の他の重合性化合物として、単官能ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。
好適に用いられる単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0074】
また、多官能ビニルエーテル化合物を用いることもできる。好適に用いられる多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0075】
本発明のインク組成物が、成分A−1及びA−2のうちの、成分A−1−1、成分A−1−2、成分A−1−3及び式(II)で表される化合物以外の他の重合性化合物を含有する場合、他の重合性化合物の含有量は、重合性化合物の全質量に対し、1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、2〜30質量%が特に好ましい。
【0076】
(成分B)ラジカル重合開始剤
本発明のインク組成物は、(成分B)ラジカル重合開始剤を含む。支持体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。
なお、本発明におけるラジカル重合開始剤は、活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物だけでなく、特定の活性エネルギー線を吸収して重合開始剤の分解を促進させる化合物(いわゆる、増感剤)も含まれる。本発明のインク組成物において、ラジカル重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、ラジカル重合開始剤と接触することによってラジカル重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。増感剤としては例えば、特開2008−208190号公報に記載のものが挙げられる。
【0077】
本発明のインク組成物は、成分Bとして、(成分B−1)モノアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又は(成分B−2)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、並びに、(成分B−3)チオキサントン化合物を含有することが好ましい。
成分Bと、前記成分A−1、A−2、及び成分Cとの組み合わせにより、硬化性、吐出安定性に優れ、得られる硬化膜の基材密着性及び光沢性に優れたインク組成物が得られる。
以下に、成分B−1〜成分B−3について説明する。
【0078】
(成分B−1)モノアシルホスフィンオキサイド化合物
(成分B−1)モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(b−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0079】
【化17】

(式(b−1)中、R1D、R2D、R3Dは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0080】
式(b−1)で表されるモノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、R1D〜R3Dが、それぞれ独立に、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R2D及びR3Dがフェニル基であり、R1Dが1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−1)で表されるモノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバ・ジャパン社製、Lucirin TPO:BASF社製)が好ましい。
【0081】
成分B−1の含有量は、インク組成物全体の0.1〜3質量%が好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0082】
(成分B−2)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物
(成分B−2)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(b−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0083】
【化18】

(式(b−2)中、R1E、R2E及びR3Eはそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0084】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知の化合物が使用できる。例えば、特開平3−101686号公報、特開平5−345790号公報、特開平6−298818号公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0085】
これらの中でも、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:BASFジャパン(株)製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
【0086】
成分B−2の含有量は、インク組成物全体の0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
【0087】
(成分B−3)チオキサントン化合物
本発明のインク組成物は、重合開始剤として(成分B−3)チオキサントン化合物を好ましく含有することができる。
チオキサントン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(b−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0088】
【化19】

【0089】
前記式(b−3)において、R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。なお、以下においても同様である。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0090】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、チオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンが好ましく、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
【0091】
成分B−3の含有量は、インク組成物全体の0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0092】
(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物
本発明のインク組成物は、成分Bとして更に(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物を含有することが好ましい。成分B−4を含有することにより更に硬化性に優れたインク組成物が得られる。成分B−4は、式(b−4)で表される化合物であることが好ましい。
【0093】
【化20】

【0094】
式(b−4)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立にヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよいアミノ基を表し、Xは、水素原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R1、R2、又はR3の少なくとも1つは置換していてもよいアミノ基を表す。なお、R1、R2、R3、及びXがアミノ基である場合の置換基は、互いに結合して複素環基を形成してもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0095】
成分B−4としては、式(b−4−1)及び式(b−4−2)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0096】
【化21】

【0097】
式(b−4−1)中、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4とR5、及びR6とR7の少なくともいずれかが互いに結合して複素環基を形成してもよい。R1、R2、及び、置換基は、式(b−4)におけるR1、R2、及び、置換基とそれぞれ同義である。
【0098】
【化22】

【0099】
式(b−4−2)中、R8は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
1、R2、及び、置換基は、式(b−4)におけるR1、R2、及び、置換基と同義であり、R4及びR5は、式(b−4−1)におけるR4及びR5と同義である。
前記複素環基としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、モルホリノ基が好ましい。
【0100】
α−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、市販品として、IRGACURE369(BASFジャパン(株)製)、IRGACURE907(BASFジャパン(株)製)などが好適に挙げられる。
【0101】
成分B−4の含有量は、インク組成物全体の0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0102】
本発明における成分Bの好ましい実施態様は、成分B−1及び/又はB−2、並びにB−3を含有することであり、より好ましくは、少なくとも成分B−1を含有しその含有量がインク組成物全質量の3質量%以下であることである。更に好ましいのは、成分B−1、B−3及びB−4とを組み合わせて含有することであり、特に好ましいのは、成分B−1〜B−3を組み合わせて含有することである。
【0103】
本発明における成分Bの総含有量は、インク組成物全体の1〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましく、8〜10質量%であることが更に好ましい。
【0104】
本発明のインク組成物は、成分B−1〜B−4の重合開始剤以外のその他の重合開始剤を含んでもよい。その他の重合開始剤としては、モノアシルホスフィン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
【0105】
(成分C)着色剤
本発明のインク組成物は、(成分C)着色剤を含有する。
成分Cは、形成された画像部の視認性を向上させることに寄与している。成分Cとしては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。成分Cは、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
以下に、成分Cとして使用される顔料及び染料について説明する。
【0106】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド3(「Pigment Red 3」ともいう。)、5、19、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、202、208、216、226、257、C.I.ピグメントバイオレット3(「Pigment Violet 3」ともいう。)、19、23、29、30、37、50、88、C.I.ピグメントオレンジ13(「Pigment Orange 13」ともいう。)、16、20、36、青又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1(「Pigment Blue 1」ともいう。)、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(「Pigment Green 7」ともいう。)、26、36、50、黄顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(「Pigment Yellow 1」ともいう。)、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、120、137、138、139、150、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、黒顔料としては、C.I.ピグメントブラック7(「Pigment Black 7」ともいう。)、28、26、白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト6(「Pigment White 6」ともいう。)、18、21などが目的に応じて使用できる。
【0107】
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、201、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9等が挙げられる。
【0108】
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0109】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散或いは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。すなわち、溶剤を含まないことが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0110】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
【0111】
インク組成物中における成分Cの含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることが更に好ましい。
【0112】
<分散剤>
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0113】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製);イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
【0114】
<界面活性剤>
本発明のインク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全質量に対し、0.01質量%未満であることが好ましく、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、0.005質量%以下であることがより好ましく、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないことが特に好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
また、本発明のインク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤も、含有しないか、又は、その含有量が、インク組成物の全質量に対し、0.01質量%未満であることが好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、0.005質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
市販品で入手できるシリコ−ン系界面活性剤としては、例えば、BYK−307(BYK Chemie社製)が挙げられる。
【0115】
<オリゴマー>
本発明のインク組成物は、オリゴマーを含有することが好ましい。
オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーと称される公知の化合物を任意に選択可能であるが、本発明においては、重量平均分子量が400〜10,000(より好ましくは500〜5,000)の重合体を選択することが好ましい。
前記オリゴマーは、ラジカル重合性基を有していてもよい。前記ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0116】
本発明におけるオリゴマーとしては、いかなるオリゴマーでもよいが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマー、ブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマー、アクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートが更に好ましい。 ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材の密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
オリゴマーについて、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
【0117】
また、オリゴマーの市販品としては、以下に示すものが例示できる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960、Sartomer社製のCN964A85、CN962、CN983等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
【0118】
オリゴマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物におけるオリゴマーの含有量としては、インク組成物の全質量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。
【0119】
<その他の成分>
本発明のインク組成物は、必要に応じて、前記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、塩基性化合物等を含んでいてもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
【0120】
本発明のインク組成物は、保存性を高める観点から、重合禁止剤を含有することが好ましい。
インク組成物をインクジェット記録用インク組成物として使用する場合には、25〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、ヒンダードアミン等が挙げられ、中でもニトロソ系重合禁止剤、ヒンダードアミン系重合禁止剤が好ましい。
本発明に好ましく使用されるニトロソ系重合禁止剤の具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0121】
【化23】

【0122】
ニトロソ系重合禁止剤の市販品として、FIRSTCURE ST−1(Chem First社製)等が挙げられる。ヒンダードアミン系重合禁止剤の市販品としてTINUVIN292、TINUVIN770DF、TINUVIN765、TINUVIN123が挙げられる。
【0123】
本発明のインク組成物中における重合禁止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましく、0.2〜1.2質量%が更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、インク組成物の調製時、保管時の重合を抑制でき、インクジェットノズルの詰まりを防止できる。
【0124】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物)
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線(活性エネルギー線、ともいう。)を照射し、インク組成物を硬化して画像を形成する方法である。
【0125】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して前記インク組成物を硬化する工程、を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
【0126】
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0127】
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における被記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
【0128】
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0129】
上述したように、本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。 温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0130】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0131】
本発明のインクジェット記録方法に使用されるインクジェットヘッドは、インク吐出側の面が親インク処理されたノズルプレートを有するインクジェットヘッドであることが好ましい。
インク吐出側の面が親インク処理されたノズルプレートを有するインクジェットヘッドとしては、例えばFUJIFILM Dimatix社製のピエゾ駆動方式によるオンデマンド・インクジェットヘッドが挙げられる。その具体例として、S−class、Q−class Sapphireが挙げられる。
【0132】
前記ノズルプレートは、インク吐出側の面が親インク処理されたノズルプレートであり、インク吐出側の面の少なくとも一部が親インク処理されたものであればよく、インク吐出側の面の全面が親インク処理されたものが好ましい。
【0133】
親インク処理の方法として、ノズルプレートの表面の少なくとも一部に非撥インク性の層を1層以上形成する方法が挙げられる。
具体的には、前記ノズルプレートが、インク吐出側の面の少なくとも一部に、金、ステンレス、鉄、チタン、タンタル、プラチナ、ロジウム、ニッケル、クロム、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることが好ましく、金、ステンレス、鉄、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることがより好ましく、金、ステンレス及び酸化ケイ素よりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることが更に好ましく、酸化ケイ素により形成された層を備えることが最も好ましい。
【0134】
親インク処理方法としては、公知の方法を用いることができ、限定されないが、例えば(1)シリコン製のノズルプレートの表面を熱酸化して酸化ケイ素膜を形成する方法、(2)シリコンやシリコン以外の酸化膜を酸化的に形成する方法、若しくは、スパッタリングにより形成する方法、(3)金属膜を形成する方法、が挙げられる。これらの方法の詳細については、米国特許出願公開第2010/0141709号明細書を参照することができる。
【0135】
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0136】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性エネルギー線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
【0137】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0138】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学工業(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0139】
本発明のインク組成物は、このような活性エネルギー線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性エネルギー線の照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0140】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の高い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の高いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0141】
本発明のインクジェット記録方法は、インクセットを使用することが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の高い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれるインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
【0142】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム(複合アルミ板等)等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体を好適に使用することができる。
【実施例】
【0143】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示すものとする。
【0144】
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン(株)製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン(株)製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン(株)製)
・SOLSPERSE32000(分散剤、Noveon社製)
・NVC(V−CAP、N−ビニルカプロラクタム、アイエスピー・ジャパン(株)製)・NVF:N−ビニルホルムアミド(ビームセット770、荒川化学工業(株)製)
・CTFA(SR531、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、5質量%のトリメチロールプロパントリアクリレートを含有、Sartomer社製)・PEA(SR339、フェノキシエチルアクリレート、Sartomer社製)
・IBOA(SR506、イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・SR351S(トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer社製)
・SR454(式(II−a)の化合物、Sartomer社製)
・SR9020(式(II−b)の化合物、Sartomer社製)
・SR9021(式(II−c)の化合物、Sartomer社製)
・DPGDA(SR508、ジプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR9035:エチレンオキシド15モル付加トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer社製)
・CN964A85(オリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレート、15質量%トリプロピレングリコールジアクリレート含有、Sartomer社製)
・CN962(オリゴマー、2官能脂肪族ウレタンアクリレート、Sartomer社製)
・IRGACURE369(α−アミノアルキルケトン光重合開始剤、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、BASFジャパン(株)製)
・IRGACURE819(光重合開始剤、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・TPO(DAROCURE TPO、光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・ITX(増感剤、イソプロピルチオキサントン、シェルケミカルズジャパン(株)製)・ST−1(FIRSTCURE ST−1、重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩(8質量%)とフェノキシエチルアクリレート(92質量%)との混合物、Chem First社製)
・BYK−307(シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製)
【0145】
(マゼンタミルベースの調製)
・マゼンタ顔料:CINQUASIA MAGENTA RT−355D(BASFジャパン(株)製) 30質量部
・SR9003(プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物、SARTOMER社製) 49質量部
・SOLSPERSE32000(分散剤、Noveon社製) 20質量部
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、Chem First社製)1質量部
上記の成分を撹拌混合し、マゼンタミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散した。
【0146】
(シアンミルベースの調製)
・シアン顔料:IRGALITE BLUE GLVO(BASFジャパン(株)製) 30質量部
・SR9003 49質量部
・SOLSPERSE32000 20質量部
・FIRSTCURE ST−1 1質量部
上記の成分を、マゼンタミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌混合し、シアンミルベースを得た。
【0147】
(イエローミルベースの調製)
・イエロー顔料:NOVOPERM YELLOW H2G(クラリアント社製)
30質量部
・SR9003 29質量部
・BYK168(分散剤、BYK Chemie社製) 40質量部
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、Chem First社製)1質量部
上記の成分をマゼンタミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌混合し、イエローミルベースを得た。
【0148】
(ブラックミルベースの調製)
・ブラック顔料:SPECIAL BLACK 250(BASFジャパン(株)製) 30質量部
・SR9003 49質量部
・SOLSPERSE32000 20質量部
・FIRSTCURE ST−1 1質量部
上記の成分を、マゼンタミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌混合し、ブラックミルベースを得た。
【0149】
(実施例1〜22及び比較例1〜10のインク組成物)
<インク組成物の作製方法>
表1及び表2に記載の素材を混合、撹拌することで、各インク組成物を調製し、実施例1〜22、及び、比較例1〜10のインクをそれぞれ得た。なお、表中の数値は各成分の配合量(質量部)を表す。
【0150】
<インクジェット記録方法>
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録実験装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。前記インクジェット記録装置は、計8つのインク供給系を有し、前記インク供給系は、それぞれ各インク供給系で独立して元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成る。作製したインクをインクタンクに充填し、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。
8つ有するピエゾ型のインクジェットヘッドには、インクジェットヘッドQ−class Sapphire QS−256/10(FUJIFILM DIMATIX社製、ノズル数256個)を用い、並列に配列し、10〜30plのマルチサイズドットを600×400dpiの解像度で射出できるよう同時に駆動し、両方向印刷8パスで描画するマルチパスモードで印刷した。前記プリンターにはUV−LEDランプ光源(NC4U134、発光波長385nm、日亜化学工業(株)製)がヘッドユニットの左右に装着されており、被記録媒体上にインク着弾した0.05秒〜0.3秒後に露光される。画像は両方向印刷モード8回のマルチパスにおいて描画し、この場合画像同一部分に、16回のUV露光が施される。
【0151】
<硬化性の評価>
上記印刷方法によりポリ塩化ビニル製のシート上に12μm膜厚の100%ベタ画像を印刷した。このときの基材表面での照度は0.8W/cm2であり、露光量は350mJ/cm2であった。
印刷後の表面の色移りとベトツキが無くなる露光エネルギーによって硬化感度を定義した。印刷後の表面のベトツキの有無は触診で、色移りは印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け判断した。色移り、ベトツキがないほど感度が高いと評価し、以下の基準で評価した。3以上が実用上問題がない。
5:色移りなし、ベトツキなし。
4:色移りなし、ベトツキもほとんどなし。
3:色移りなし、ややベトツキあり。
2:若干色移りあり、ややベトツキあり。
1:色移りあり、ベトツキあり。
【0152】
<基材密着性の評価>
ポリ塩化ビニル性基材との密着性評価方法としてクロスハッチテスト(JIS K5600−5−6、2004年)を行った。上記インクジェット記録方法に従い、画像部の平均膜厚が12μmのベタ画像を描画した。その後、各々の印刷物に対して、クロスハッチテストを実施した。なお、評価は、JIS K5600−5−6(2004年)に従い、0〜5の6段階に評価し分類した。ここで、評価分類0がカットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがないことを意味し以下の分類で評価した。
格子に切り込みを入れる際インク−基材間評価の時は基材に達する深さまで切り込みをいれ評価を行った。下記評価1〜5の3以上であれば実用上問題がない。
5:JIS K5600−5−6 分類 0
4:JIS K5600−5−6 分類 1
3:JIS K5600−5−6 分類 2
2:JIS K5600−5−6 分類 3
1:JIS K5600−5−6 分類 4、5
【0153】
<吐出安定性の評価>
得られたインク組成物を室温(25℃)で二週間保存後、上記インクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行い、常温(25℃)で3時間連続印字したときの、ドット抜け及びインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。
5:ドット抜け又はインクの曲がりが発生しない。
4:ドット抜け又はインクの飛び散りの発生が1〜2回発生する。
3:ドット抜け又はインクの飛び散りが3〜4回発生する。
2:ドット抜け又はインクの飛び散りが5回以上発生する。
1:ドット抜け又はインクの飛び散りが10回以上発生する。
評価3以上が実用上許容できる。
【0154】
<光沢性の評価>
被記録媒体として、三菱製紙製の特菱アート紙(坪量104g/m2)を用い、上記インクジェット記録方法に従い、ベタ画像を描画した。得られたベタ画像について、JIS Z8741に基づき、Sheen Instruments社製光沢度計を用い、測定角60°で測定を行った。下記基準に従い評価点をつけた。
5:光沢度25以上
4:光沢度20以上25未満
3:光沢度15以上20未満
2:光沢度10以上15未満
1:光沢度10未満
評価3以上が実用上許容できる。
【0155】
以上の評価結果を表1及び表2に記した。なお、表中の「−」は当該成分が非含有であることを表す。また、表中の(*)印は、下記を意味する。(*1)は、ST−1中に含まれる92質量%のPEA(溶剤)の量を含むことを表す。(*2)は、CTF中の不純物である5質量%のTMPTAの量を含むことを表す。(*3)は、各ミルベース中のSR9003の量を含むことを表す。
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤、及び、(成分C)着色剤を含有し、
成分Aとして、(成分A−1)単官能ラジカル重合性化合物と(成分A−2)多官能ラジカル重合性化合物とを含有し、
成分A−1として、(成分A−1−1)N−ビニル化合物と(成分A−1−2)式(I)で表される化合物とを含有し、
成分A−1の含有量が成分Aの総質量に対し50〜90質量%であり、
成分A−1−1の含有量が成分A−1の総質量に対し10〜40質量%であり、
成分A−1−2の含有量が成分A−1の総質量に対し5〜90質量%であり、
成分A−2は、式(II)で表される化合物を少なくとも2種含有し、
成分A−2の含有量が成分Aの総質量に対し0.1〜25質量%であることを特徴とする
インクジェットインク組成物。
【化1】

(式(I)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X1は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【化2】

(式(II)中、R11はそれぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。)
【請求項2】
成分A−1−1がN−ビニルカプロラクタムである、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
成分A−1として、更に(成分A−1−3)芳香族炭化水素環を有する(メタ)アクリレート化合物を、成分A−1の総質量に対し5〜40質量%含有する、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
成分Bとして、(成分B−1)モノアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又は(成分B−2)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、並びに、(成分B−3)チオキサントン化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
式(II)で表される化合物の少なくとも1つがトリメチロールプロパントリアクリレートであり、その含有量が成分Aの総質量に対し0.5〜8質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
成分Bとして、(成分B−1)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有し、その含有量がインク組成物全質量に対し3質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
成分A−2として、式(II’)で表される化合物を少なくとも1種含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【化3】

(式(II’)中、R11は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R12は水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、X2は単結合、又は二価の連結基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、p+q+r≧1の関係を満たす。)
【請求項8】
(a1)被記録媒体上に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、
(b1)吐出されたインクジェットインク組成物に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2013−57043(P2013−57043A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197570(P2011−197570)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】