説明

インクジェットインク組成物、及びインクジェット記録方法

【課題】得られるインク画像膜の基材密着性及び膜硬度に優れ、吐出安定性に優れたインクジェットインク組成物、及び前記インクジェットインク組成物を使用したインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】(成分A)式(I)で表される構成繰り返し単位を有する重量平均分子量3,000〜100,000の樹状の高分子化合物、(成分B)重合開始剤、及び(成分C)ラジカル重合性化合物を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物。式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R2とR3は連結して環構造を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。これらのうち、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを射出して記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率よく使用でき、ランニングコストが安い。
【0003】
このような記録方式に用いるインク組成物として、例えば特許文献1〜4に記載のインク組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−235121号公報
【特許文献2】特開2007−262177号公報
【特許文献3】特開2007−314632号公報
【特許文献4】特開2007−99830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット方式で印刷する際、プラスチック印画物の成形品(例えばダミー缶、ブリスターパック等)を製造する場合は、得られる画像のプラスチック基材等の被記録媒体への基材密着性が求められている。
しかしながら、特許文献1の技術においては、得られる膜の基材密着性に関して未だ改善の余地がある。また、膜硬度、インク組成物の吐出安定性についても改良の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、得られるインク画像膜の基材密着性及び膜硬度に優れ、吐出安定性に優れたインクジェットインク組成物、及び当該インクジェットインク組成物を使用したインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、下記の<1>及び<17>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<16>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)式(I)で表される構成繰り返し単位を有する重量平均分子量3,000〜100,000の樹状の高分子化合物、(成分B)重合開始剤、及び(成分C)ラジカル重合性化合物、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物、
【0008】
【化1】

(式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R2とR3は連結して環構造を形成してもよい。)
【0009】
<2>成分Cが、(成分C−1)単官能ラジカル重合性化合物を含有する、上記<1>に記載のインクジェットインク組成物、
<3>成分C−1の含有量が成分Cの総重量の80重量%以上である、上記<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<4>成分C−1の含有量が成分Cの総重量の85重量%以上である、上記<2>又は<3>に記載のインクジェットインク組成物、
<5>成分Cが、2官能ラジカル重合性化合物を含有する、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<6>成分Aの重量平均分子量が3,000〜60,000である、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<7>成分Aが、多官能チオール化合物残基を含有する、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<8>成分Aが、4価以上の多官能チオール化合物残基を含有する、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<9>成分Aの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が3以下である、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<10>(成分D)着色剤を更に含有する、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<11>成分Cが、(成分C−2)N−ビニル化合物を含有する、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<12>成分C−2が、N−ビニルカプロラクタムである、上記<11>に記載のインクジェットインク組成物、
<13>成分Aが、前記式(I)で表される構成繰り返し単位と式(II)で表される構成繰り返し単位とを有する共重合体である、上記<1>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
【0010】
【化2】

(式(II)中、R4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5は置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【0011】
<14>成分Aが、少なくとも2種の異なる前記式(I)で表される構成繰り返し単位を有する共重合体である、上記<1>〜<13>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<15>成分Aが、ハイパーブランチポリマーである、上記<1>〜<14>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<16>成分Aが、枝構造として式(I)で表される構成繰り返し単位を有するポリマー鎖を有するハイパーブランチポリマーである、上記<1>〜<15>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<17>(a1)被記録媒体上に、上記<1>〜<16>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインクジェットインク組成物に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、得られるインク画像膜の基材密着性及び膜硬度に優れ、吐出安定性に優れたインクジェットインク組成物、及び当該インクジェットインク組成物を使用したインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
(インクジェットインク組成物)
本発明のインクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)式(I)で表される構成繰り返し単位を有する重量平均分子量3,000〜100,000の樹状の高分子化合物、(成分B)重合開始剤、及び(成分C)ラジカル重合性化合物、を含有することを特徴とする。
【0015】
【化3】

(式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R2とR3は連結して環構造を形成してもよい。)
【0016】
なお、本発明において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は「A以上B以下」と同義である。また、前記「(成分A)式(I)で表される構成繰り返し単位を有する重量平均分子量3,000〜100,000の樹状の高分子化合物」等を単に「成分A」等ともいう。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタアクリル」のいずれか一方、又は、その両方を含む語であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタアクリレート」のいずれか一方、又は、その両方を含む語である。
【0017】
本発明のインク組成物は、活性放射線(「活性エネルギー線」ともいう。)により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0018】
(成分A)式(I)で表される構成繰り返し単位を有する重量平均分子量3,000〜100,000の樹状の高分子化合物
本発明のインク組成物は、式(I)で表される構成繰り返し単位を有する重量平均分子量3,000〜100,000の樹状の高分子化合物を含有する。
【0019】
本発明のインク組成物に含まれる「樹状」の高分子化合物について説明する。
樹状高分子はハイパーブランチポリマーやデンドリチックポリマーとも呼ばれ、枝分かれのある高分子の総称で、分岐型高分子(枝分かれ高分子又は分岐高分子ともいう。)の一種である。多官能連鎖移動剤や多官能開始剤を用いた重合反応や、A−B2型モノマーを用いた重付加反応を用いて合成することができる。樹状高分子は、直鎖構造のポリマーとは異なる物性を示す分岐構造を簡便に導入することができる。
【0020】
成分Aは樹状高分子であることにより、インク膜の硬化時に、ポリアクリルアミドの界面付近、及び空気界面への濃縮性が高まり、界面強度や膜表面の強度が向上するため、インク画像膜の脆性破壊が起こりにくくなり、インク画像膜の基材密着性及び膜硬度が向上すると推定される。また、樹状高分子となることで、直鎖高分子に比べ高分子同士の絡み合いが低減するため、インクの動的表面張力への影響が小さくなり吐出安定性に優れたインク組成物が得られるものと推定されるが定かではない。
【0021】
成分Aの「樹状」高分子化合物は、例えばグラフト重合により得られる「くし(櫛)型」高分子を更に枝分かれさせる方法によっても得られるが、また、リビング反応を含むラジカル重合反応に多官能連鎖移動剤を添加する方法も「樹状」高分子化合物を得る手段として好ましく用いられる。
【0022】
成分Aは、重量平均分子量が3,000〜100,000の高分子化合物である。成分Aは、樹状高分子となるためリビングラジカル重合反応に多官能連鎖移動剤を添加する方法で合成されることが好ましく、この手段により生成する高分子の分子量は比較的小さく抑えられるので、成分Aの合成方法としてはリビングラジカル重合反応に多官能連鎖移動剤を添加する方法が好ましく用いられる。
上記範囲に分子量を低く抑えることにより、インク組成物の粘度上昇を抑え、インク組成物の吐出安定性に寄与していると推定される。
【0023】
また、成分Aは、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が3以下であることが好ましい。成分Aの合成にリビングラジカル重合反応を用いることにより、成分Aは比較的狭い分子量分布に制御することができる。成分Aの分子量分布が3以下であることが、成分Aのインク組成物中の溶解性が向上することに寄与していると推定される。
【0024】
【化4】

(式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R2とR3は連結して環構造を形成してもよい。)
【0025】
式(I)において、R1は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、炭素数としては1〜3が好ましく、1がより好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜3のアルコキシル基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メチルカルボニルオキシ基等が好ましく挙げられる。R1としては、水素原子が特に好ましい。
【0026】
式(I)において、R2は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、炭素数としては1〜3が好ましく、1又は2がより好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜3のアルコキシル基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メチルカルボニルオキシ基等が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。これらのうち、R2としては水素原子、メチル基、又はエチル基が特に好ましい。
【0027】
式(I)において、R3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、直鎖、分岐、又は環状でもよい。前記置換基としてはアリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、アリールアミノ基、アミノ基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、イミダゾリル基、ピリジル基、イミダゾリウム基、ピリジニウム基、アンモニオ基等が挙げられ、中でもアリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、イミダゾリル基、ピリジル基が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8が特に好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、アセトキシエチル基、アセトキシブチル基、フェニルオキシエチル基、フェニルオキシブチル基、フェニルエチルオキシエチル基等が好ましく挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基がより好ましい。これらのうち、R3としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、s−ブトキシメチル基、n−ドデシル基が特に好ましい。
【0028】
式(I)において、R2とR3は連結して窒素原子を含む環構造を形成してもよい。前記環構造としては、5員環から7員環が好ましく挙げられ、6員環が特に好ましい。前記環構造は、窒素原子及び炭素原子以外に酸素原子又は硫黄原子を含有してもよい。好ましい環構造としては、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン等の環構造が挙げられ、特に好ましいのはモルフォリンの環構造である。
【0029】
成分Aは、少なくとも2種の異なる式(I)で表される構成繰り返し単位を有する共重合体であることも好ましい。
【0030】
本発明のインク組成物に含まれる、式(I)で表される構成繰り返し単位を有する高分子化合物は、式(I)で表される構成繰り返し単位と式(II)で表される構成繰り返し単位とを有することが好ましい。
【0031】
【化5】

(式(II)中、R4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5は置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【0032】
式(II)において、R4は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、炭素数としては1〜3が好ましく、1がより好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜3のアルコキシル基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メチルカルボニルオキシ基等が好ましく挙げられる。R4としては、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0033】
式(II)において、R5は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。該置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノ基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、ヘテロ環基等が挙げられ、中でもアリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環基が好ましい。アルキル基の炭素数としては1〜32が好ましく、2〜24がより好ましく、4〜18が特に好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、アセトキシエチル基、アセトキシブチル基、フェニルオキシエチル基、フェニルオキシブチル基、フェニルエチルオキシエチル基等が好ましく挙げられ、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基が特に好ましい。アリール基の炭素数としては、6〜32が好ましく、6〜24がより好ましく、6〜18が特に好ましい。アリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、2−メトキシフェニル基、2−デシルオキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−オクチルオキシナフチル基、4−ジメチルアミノフェニル基、2−ドデシルチオフェニル基、4−(4−メチルフェニルチオキシ)フェニル基、2−メトキシ−4−ドデシルチオキシフェニル基、2−フェノキシエトキシフェニル基、2−ドデシルオキシフェニル基、2−オクタデシルオキシフェニル基、2,5−ジベンジルオキシフェニル基、2,5−ジシクロへキシルメチルオキシフェニル基、2−メトキシ−4−(2−エチルヘキサノイルアミノ)フェニル基、2−ブトキシ−4−ベンジルオキシカルボニルアミノフェニル基、2−オクチルオキシ−4−ブチルオキシカルボニルアミノフェニル基が挙げられる。
【0034】
本発明のインク組成物に含まれる、式(I)で表される構成繰り返し単位を有する高分子化合物は、式(I)で表される構成繰り返し単位と式(II)で表される構成繰り返し単位に加え、更に他の共重合可能な単量体に由来する構成繰り返し単位からなる共重合体であってもよい。前記他の共重合可能な単量体としては、例えば芳香族ビニル類(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等)、アリールエステル類(酢酸アリール等)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニル等)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリル等)、オレフィン類(エチレン、プロピレン等)等が挙げられる。
【0035】
成分Aの分子量は、重量平均分子量として3,000〜100,000であり、5,000〜80,000が好ましく、10,000〜50,000が特に好ましい。分子量が3,000未満では硬化性が不十分であり、また分子量が100,000以上では粘度適性が不良となり、インクジェット方式での吐出安定性での不具合を生じることがある。成分Aの重量平均分子量が3,000〜100,000の範囲であることにより、吐出周波数における動的粘度が改良されるものと推定している。
成分Aの重量平均分子量は、ポリスチレン換算による、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
【0036】
(樹状構造の導入方法)
本発明のインク組成物に用いられる成分Aは、樹状高分子となるためにその合成手段として、多官能開始剤、又は多官能連鎖移動剤を添加したラジカル重合反応による方法が好ましく用いられる。更に、リビングラジカル重合反応とすることで、より好ましい成分Aを得ることができる。連鎖移動剤は、重合反応において連鎖移動反応により、反応の活性点を移動させる基(以下、連鎖移動性基ともいう。)を有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。中でも、多官能連鎖移動剤として1分子内に複数個の連鎖移動性基を有する化合物がより効果があり好ましい。また、連鎖移動剤としては、ハロゲン化合物、アルコール類、又はイオウ化合物等があるが、チオール化合物がより好ましい。本発明に用いられる成分Aにおいては、その重合反応において多官能連鎖移動剤として、3個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物がより好ましく用いられる。
以下、多官能チオール化合物について説明する。
【0037】
(多官能チオール化合物)
本発明のインク組成物に用いられる成分Aは、多官能チオール化合物残基を含有することが好ましい。
チオール化合物は、チオール基が連鎖移動剤として作用する連鎖移動剤化合物として一般に公知の化合物である。連鎖移動剤は、重合反応において連鎖移動反応により、反応の活性点を移動させる物質であれば特に制限なく使用することができる。中でも、連鎖移動剤としてはチオール化合物が好ましく用いられるが、本発明に用いられる成分Aにおいては、その重合反応において連鎖移動剤として、一分子内に3個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物がより好ましく用いられる。
【0038】
本発明のインク組成物に用いられる成分Aに好ましく含有される多官能チオール化合物残基を成分Aに導入する多官能チオール化合物としては、下記式(a)で表されるメルカプト基を含有するチオール化合物であることが好ましい。以下、式(a)の化合物を「多官能チオール化合物」とも称する。
【0039】
【化6】

式(a)中、R1及びR2は、各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、nは0又は1であり、yは3以上の整数を表し、X1はy価の有機残基である。
1は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子であることが好ましい。
【0040】
本発明に使用する多官能チオール化合物は、式(a)で表されるように、メルカプト基含有基が有機残基X1にどのような形で結合していてもよいが、下記の式(b)で表されるように、メルカプト含有基がカルボン酸エステル残基を介して有機残基に結合していることが好ましい。
【0041】
【化7】

【0042】
式中、R1及びR2は、各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、nは0又は1であり、yは3以上の整数を表し、X2はy価の有機残基である。
1は、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子であることが好ましい。
【0043】
式(b)において、nは0であることが好ましく、mは0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
すなわち、メルカプト基は、第1級又は第2級のメルカプト基であることが好ましく、第1級のメルカプト基がより好ましい。更に、多官能チオール化合物がメルカプト基含有基を3個有する(y=3)よりも、4個以上有する(yが4以上の整数である。)ことがより好ましい。なお、一分子中に存在する複数のメルカプト基含有基は、全て同じであっても互いに異なっていてもよい。
【0044】
式(a)又は式(b)において、R1又はR2で表されるアルキル基は、炭素原子数が1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0045】
多官能チオール化合物中の有機残基(母核)X1又はX2は、脂肪族基、芳香族基若しくは複素環基、並びにこれらを組み合わせた基が例示でき、いずれも置換基を有していてもよい。また、脂肪族基、芳香族基又は複素環基は、単結合で結合されても、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−SO2−、及び−SO−並びにこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた二価の連結基を介して結合されてもよい。
以下に、上記の有機残基(母核)の化学構造について、詳述する。
【0046】
脂肪族基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが最も好ましい。脂肪族基は、二重結合又は三重結合を有していてもよい。脂肪族基は、環状構造又は分岐を有していてもよい。
芳香族基は、べンゼン環又はナフタレン環からなることが好ましく、ベンゼン環からなることが更に好ましい。
【0047】
複素環基は、3〜10員の複素環を有することが好ましく、4〜8員の複素環を有することが更に好ましく、5員又は6員の複素環を有することが最も好ましい。複素環の複素原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましい。複素環には、脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合又はスピロ結合していてもよい。複素環の例には、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルフォリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオフェン環、ジオキサン環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環及びイソシアヌル環が含まれる。それらの中でもイソシアヌル環が最も好ましい。
脂肪族基、芳香族基及び複素環基の置換基の例には、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例、塩素原子)、シアノ基、アミノ基、置換アミノ基、複素環基、アシル基及びアシルオキシ基が含まれる。置換アミノ基の置換基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。芳香族基及び複素環基は、アルキル基を置換基として有していてもよい。
ただし、上記の置換基として、メルカプト基又はこれを含有する基は含まない。
【0048】
以下に多官能チオール化合物の母核であるX1又はX2の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、母核にメルカプト含有基〔式(b)のようにカルボン酸エステルを介したメルカプト含有基も含む〕が結合する位置は*により示す。
【0049】
【化8】

【0050】
多官能チオール化合物の有機残基は、付加重合又は重縮合により得られる構造単位を含むことができ、例えば、オリゴビニル基又はポリビニル基が例示できる。多官能チオール化合物は、分子量が10,000以下の低分子であることが好ましい。後に詳しく説明する。
【0051】
本発明に用いられる成分Aの合成に使用される多官能チオール化合物の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
【0052】
1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5−トリチオシアヌル酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート等の3個のメルカプト基を有する化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート等の4個以上のメルカプト基を有する化合物が挙げられる。これらの多官能チオール化合物には、市販のものとして、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(いずれも淀化学(株)製)等がある。
【0053】
上記の例示化合物の他に、特開2009−262370号公報の段落0033〜0035に記載された化合物もまた、本発明に使用できる。
これらの化合物には、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌール酸トリスチオプロピオネート、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)エチル]イソシアヌレート等の3個の官能基を有する3官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等の4官能以上のチオール化合物等が挙げられる。
これらの多官能チオール化合物(式(b))には、市販のものとして、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMTPE1)(商標)、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMTNR1)(商標)(いずれも昭和電工(株)製)や、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)(商標)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)(商標)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)(商標)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)エチル]イソシアヌレート(TEMPIC)(商標)(いずれも堺化学工業(株)製)等がある。
市販品としては、カレンズMTシリーズ(昭和電工(株)製)が好適に用いられる。
【0054】
上記の多官能チオール化合物のうち、一分子中のメルカプト基の個数が多いものが少量の添加で効果が高いことから、一分子中に3個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物が好ましく、4個以上有する、すなわち、4価以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物がより好ましい。
また、カルボン酸エステル結合を有する多官能チオール化合物が好ましい。エステル結合を有する多官能チオール化合物としては、チオグリコール酸、3−メルカプト酪酸、又は3−メルカプトプロピオン酸と多価アルコールとのエステルが好ましい。
【0055】
好ましい具体的な化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等を挙げることができる。
好ましい具体例を化学構造式で以下に示した。
【0056】
【化9】

【0057】
多官能チオール化合物の分子量は特に限定されるものではないが、100〜10,000が好ましく、200〜5,000がより好ましく、200〜1,000が特に好ましい。
多官能チオール化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、成分Aの合成で使用される多官能チオール化合物の量は、成分Aの目的に応じて適宜選択することができるが、成分Aの重合に使用される重合性化合物100モル%に対し、0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましく、0.1〜5モル%が更に好ましい。
【0058】
成分Aの合成方法は、既存の種々の方法を使用することができるが、主に多官能連鎖移動剤を使用する方法、多官能開始剤としてフリーラジカル重合系に上記多官能チオール化合物などの連鎖移動剤を添加する方法、多官能開始剤による原子移動ラジカル重合、RAFT重合(Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer;可逆的付加開裂連鎖移動重合反応)の様なリビングラジカル重合を行う方法、が挙げられる。リビングラジカル重合による分岐ポリマーの合成方法については、Chem.Rev.2009,109,4963〜5050、Polymer 2008,49,1079〜1131に記載の方法を使用することができる。
【0059】
多官能開始剤による原子移動ラジカル重合(ATRP)による成分Aの合成方法としては、例えば、多官能ハロゲン化アルキル開始剤をコア化合物として重合する方法が好ましく挙げられる。具体的には、多官能ハロゲン化アルキル開始剤に銅触媒を用い、式(I)で表される構成繰り返し単位を形成する(メタ)アクリルアミド化合物等のラジカル重合性化合物を重合する方法が好ましく挙げられる。
銅触媒としては、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6−TREN)やトリス(2−ピリジルメチル)アミン(TPMA)等のポリアミン化合物を配位子として有する一価の銅触媒が好ましく挙げられる。
多官能ハロゲン化アルキル開始剤としては、3官能以上のハロゲン化アルキル開始剤であることが好ましく、3〜6官能のハロゲン化アルキル開始剤であることがより好ましく、以下に示す化合物であることが特に好ましい。また、多官能ハロゲン化アルキル開始剤におけるハロゲン原子は、安定性や合成の容易性、反応性の観点から、臭素原子であることが好ましく、また、第2級又は第3級炭素原子に結合したハロゲン原子であることが好ましい。
【0060】
【化10】

【0061】
また、成分Aは、ハイパーブランチポリマーであることが好ましく、枝構造として式(I)で表される構成繰り返し単位を有するポリマー鎖を有するハイパーブランチポリマーであることがより好ましい。
【0062】
本発明のインク組成物に用いられる成分Aの具体例としては、以下のような化合物を挙げることができる。なお、分岐中心構造中の*印は、枝構造との連結部を表し、Mwは重量平均分子量、Mw/Mnは分子量分布を表す。
【0063】
【化11】

【0064】
成分Aは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のインク組成物における成分Aの含有量は、インク組成物全重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましく、1〜10重量%が特に好ましい。上記範囲であると、基材密着性及び吐出安定性により優れる。
【0065】
(成分B)重合開始剤
本発明のインク組成物は、重合開始剤を含有する。
本発明に用いられる重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれであってもよいが、本発明では、光重合開始剤が好ましく用いられる。光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を、重合性化合物の種類、インク組成物の使用目的に応じて、適宜選択して使用することができる。
本発明のインク組成物に使用する光重合開始剤は、外部エネルギー(光)を吸収して重合開始種であるラジカルを生成する化合物である。光重合開始剤において、重合を開始させる光とは、活性エネルギー線、すなわち、α線、γ線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線等を示し、好ましくは、紫外線である。
また、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0066】
光重合開始剤としては、公知の化合物が使用できるが、本発明で使用し得る好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィンオキサイド化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0067】
これらの光重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明における光重合開始剤は単独若しくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0068】
(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィンオキサイド化合物、及び、(e)チオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」,J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、pp.77〜117記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。また、特開2008−105379号公報、特開2009−114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。
【0069】
これらの中でも、本発明において、光重合開始剤として芳香族ケトン類及び/又はアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することが好ましく、芳香族ケトン類及びアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することがより好ましい。具体的には、例えば、p−フェニルベンゾフェノン(例えば、和光純薬工業(株)から市販されている。)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(例えば、Irgacure 819としてBASF社から市販されている。)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(例えば、Darocur TPOとしてBASF社から、また、Lucirin TPOとしてBASF社から市販されている。)を使用することが好ましく、p−フェニルベンゾフェノンを少なくとも使用することがより好ましく、p−フェニルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドを使用することが特に好ましい。
【0070】
重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のインク組成物における重合開始剤の含有量は、インク組成物全重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜15重量%がより好ましく、1〜10重量%が更に好ましい。
【0071】
(成分C)ラジカル重合性化合物
本発明のインク組成物は、ラジカル重合性化合物を含有する。
本発明のインク組成物に含有されるラジカル重合性化合物は、重合可能な不飽和結合を有する化合物であれば限定されないが、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーであることが好ましい。
本発明のインク組成物における成分Cの含有量は、インク組成物全重量に対して、0.30〜95重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましく、45〜80重量%が更に好ましく、50〜75重量%が特に好ましい。上記範囲であると、基材密着性及び吐出安定性により優れる。
また、エチレン性不飽和結合を1分子内に1個有する、すなわち(成分C−1)単官能ラジカル重合性化合物を含有することがより好ましい。
本発明のインク組成物は、成分C−1を成分Cの総重量の80重量%以上含有することが好ましく、85重量%以上含有することがより好ましく、91〜100重量%が特に好ましい。成分C−1を成分Cの総重量の85重量%以上含有することにより、延伸性の優れたインク組成物が得られる。更に91重量%以上とすることで密着性にも優れたインク組成物が得られる。
また、本発明のインク組成物は、成分Cとして、3官能以上の多官能ラジカル重合性化合物を含有しないことが好ましい。
成分C−1は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0072】
成分Cとして、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーの一例としては、N−ビニル化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド等の含窒素ラジカル重合性化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル及びこれらの塩;エチレン性不飽和基を有する無水物;アクリロニトリル;スチレン等が挙げられる。また、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタンなどのマクロモノマー等も挙げられる。
【0073】
成分C−1としては、例えば、N−ビニルラクタム類、N−ビニルフォルムアミド等のN−ビニル化合物;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン等のアミド化合物;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、サイクリックトリメチロールプロパンフォルマールアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性アクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート等のアクリレート化合物;メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート等のメタクリレート化合物;アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;等が挙げられる。
【0074】
本発明のインク組成物に使用される成分Cとしては、(成分C−2)N−ビニル化合物を含むことが好ましい。
本発明のインク組成物に用いられるN−ビニル化合物としては、N−ビニルラクタム類が好ましく挙げられる。N−ビニルラクタム類としては、式(c)で表される化合物が好ましい。
【0075】
【化12】

【0076】
式(c)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは3〜5の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への良好な密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上の水素原子がアルキル基、アリール基等の置換基により置換されていてもよく、ラクタム環と飽和又は不飽和環構造とが連結していてもよい。
式(c)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0077】
また、本発明では、(成分C−1)単官能ラジカル重合性化合物以外の重合性化合物を含んでいてもよい。
【0078】
<単官能ラジカル重合性化合物以外の重合性化合物>
本発明のインク組成物はラジカル重合性化合物を必須の成分として含有し、必要に応じて、成分C−1及び成分C−1以外の重合性化合物を含むことが好ましい。成分C−1以外の重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能ラジカル重合性化合物等が挙げられる。
【0079】
上記成分C−1以外の多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(PO変性)トリ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。その他、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物も挙げられる。なお、POはプロピレンオキシド、EOはエチレンオキシドを示す。
【0080】
また、多官能ビニルエーテルも多官能ラジカル重合性モノマーとして好適に挙げられる。多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。これらの多官能ビニルエーテル化合物の中でも、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0081】
また、上記以外にも、多官能ラジカル重合性化合物として、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号、特表2004−514014号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物が知られており、これらも本発明のインク組成物に適用することができる。
【0082】
成分C−1以外の重合性化合物の含有量は、成分Cの総重量に対して、0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜9重量%がより好ましい。
【0083】
成分Cは、単官能ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリルアミド化合物を少なくとも含有することが好ましく、単官能(メタ)アクリルアミド化合物及び単官能(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。上記態様であると、基材密着性により優れる。
単官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドにおけるN−アルキル基の炭素数は、1〜8が好ましい。
また、成分Cは、3種以上の単官能(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、3〜6種の単官能(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート及び2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた化合物が好ましい。
また、成分Cは、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート及び2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた3種以上の化合物を含有することが好ましく、イソボルニルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート及び2−フェノキシエチルアクリレートを含有することが特に好ましい。上記態様であると、基材密着性により優れる。
成分Cは、2官能ラジカル重合性化合物を含有することが好ましく、2官能ラジカル重合性化合物として、ジビニルエーテル化合物を少なくとも含有することが好ましく、ジビニルエーテル化合物及び2官能(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。上記態様であると、基材密着性により優れる。
ジビニルエーテル化合物としては、ポリアルキレングリコールジビニルエーテルが好ましく、トリエチレングリコールジビニルエーテルがより好ましい。
2官能(メタ)アクリレート化合物としては、アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく、直鎖状アルカンジオールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。アルカンジオールジ(メタ)アクリレートのアルカンジオールの炭素数は、4〜18であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
【0084】
(成分D)着色剤
本発明のインク組成物は、(成分D)着色剤を更に含有することが好ましい。インク組成物に着色剤を添加することで、可視画像(有色画像)を形成しうるインク組成物とすることができる。
本発明のインク組成物に用いることのできる着色剤は、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。また、染料としては、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
【0085】
−顔料−
まず、本発明のインク組成物における着色剤として好ましく使用される顔料について述べる。着色剤として顔料を用いた場合、インク組成物を使用して形成された着色画像は耐光性に優れたものとなる。
前記顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0086】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0087】
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0088】
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0089】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
【0090】
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0091】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
【0092】
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)等が利用可能である。
【0093】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0094】
顔料の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
【0095】
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100重量部に対し、1〜50重量部添加することが好ましい。
【0096】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、エネルギー線硬化型のインクであり、インクを記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。
【0097】
インク組成物中の顔料粒子の体積平均粒径は、0.02〜0.60μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.10μmである。また、最大粒径は3μm以下が好ましく、更に好ましくは1μm以下であり、そのような範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及びブロッキング感度を維持することができる。なお、上記体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(LA−920、(株)堀場製作所製)を用いて、トリプロピレングリコールメチルエーテルを測定溶媒として測定されるものである。
【0098】
−染料−
次に、本発明のインク組成物に用いられる着色剤として、好ましく使用される染料について述べる。
染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2002−114930号公報の段落0023〜0089、特開2008−13646号公報の段落0136〜0140に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0099】
前記着色剤の含有量は、インク組成物全重量に対して、0.05〜20重量%が好ましく、0.2〜10重量%がより好ましい。着色剤として油溶性染料を用いた場合には、インク組成物の全重量(溶媒を含む)に対して、0.2〜6重量%が特に好ましい。
【0100】
<その他の成分>
更に、本発明のインク組成物は上記以外の成分を添加することができる。以下順次説明する。
【0101】
(増感剤)
本発明のインク組成物には、重合開始剤の活性光線照射による分解を促進させるために増感剤を添加することができる。増感剤は、特定の活性エネルギー線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸或いは塩基の生成を促進させるものである。
【0102】
増感剤は、インク組成物に使用される光重合開始剤に開始種を発生させる活性エネルギー線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なインク組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ、350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)等が挙げられ、多核芳香族類及びチオキサントン類が好ましい類として挙げられる。
また、特開2008−95086号公報記載の増感色素も好適である。
【0103】
(共増感剤)
本発明のインク組成物は、共増感剤を含有することもできる。本発明において共増感剤は、増感剤の活性エネルギー線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
【0104】
共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Science」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0105】
共増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0106】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0107】
(紫外線吸収剤)
本発明のインク組成物には、得られる画像の耐候性向上、退色防止等の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物全重量に対し0.5〜15重量%であることが好ましい。
【0108】
(酸化防止剤)
本発明のインク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、欧州公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
酸化防止剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物全重量に対し0.1〜8重量%であることが好ましい。
【0109】
(褪色防止剤)
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。
有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。
また、金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
褪色防止剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物全重量に対して0.1〜8重量%であることが好ましい。
【0110】
(導電性塩類)
本発明のインク組成物には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0111】
(溶剤)
本発明のインク組成物には、被記録媒体(基材)との密着性を改良するため、極微量の非硬化性の有機溶剤を添加してもよい。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性又はVOC(Volatile Organic Compound)の問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全重量に対し実質的に含有しないことが好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、更に好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0112】
(高分子化合物)
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、成分A以外の各種油溶性の高分子化合物を併用することもできる。
油溶性高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子化合物の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
また、本発明のインク組成物を膜としたときに、タック性改善等の目的で表面に偏析しやすい高分子化合物の使用も好適である。これらの高分子化合物は特開2008−248119号公報の段落0017〜0037、特開2005−250890号公報の段落0015〜0034などに記載されたSi、F原子を含む高分子、長鎖アルキル基を側鎖に有する高分子などが利用可能である。
【0113】
(界面活性剤)
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
なお、界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。
有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体に対し、0.0001〜1重量%が好ましく、0.001〜0.1重量%がより好ましい。
【0114】
この他にも、必要に応じて、例えば、重合禁止剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)などを含有させることができる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキシベンゾキノン、メトキシフェノール、フェノチアジン、t−ブチルカテコール、メルカプトベンズイミダゾール、アルキルジチオカルバミン酸塩類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、サリチル酸塩類、チオジプロピオン酸エステル類、ホスファイト類、ニトロキサイドアルミニウム錯体などが挙げられる。具体的には、Genorad16、18、20、21、22(Rahn社製)等が挙げられる。重合禁止剤の含有量は限定的でないが、インク組成物全重量に対して、0.01〜5重量%が好ましく、0.02〜1重量%がより好ましい。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0115】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物)
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線(活性エネルギー線、ともいう。)を照射し、インク組成物を硬化して画像を形成する方法である。
【0116】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して前記インク組成物を硬化する工程、を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
【0117】
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0118】
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における被記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
【0119】
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0120】
上述したように、本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。 温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0121】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(東機産業(株)製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0122】
本発明のインクジェット記録方法に使用されるインクジェットヘッドは、インク吐出側の面が親インク処理されたノズルプレートを有するインクジェットヘッドであることが好ましい。
インク吐出側の面が親インク処理されたノズルプレートを有するインクジェットヘッドとしては、例えばFUJIFILM Dimatix社製のピエゾ駆動方式によるオンデマンド・インクジェットヘッドが挙げられる。その具体例として、S−class、Q−class Sapphireが挙げられる。
【0123】
前記ノズルプレートは、インク吐出側の面が親インク処理されたノズルプレートであり、インク吐出側の面の少なくとも一部が親インク処理されたものであればよく、インク吐出側の面の全面が親インク処理されたものが好ましい。
【0124】
親インク処理の方法として、ノズルプレートの表面の少なくとも一部に非撥インク性の層を1層以上形成する方法が挙げられる。
具体的には、前記ノズルプレートが、インク吐出側の面の少なくとも一部に、金、ステンレス、鉄、チタン、タンタル、プラチナ、ロジウム、ニッケル、クロム、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることが好ましく、金、ステンレス、鉄、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることがより好ましく、金、ステンレス及び酸化ケイ素よりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることが更に好ましく、酸化ケイ素により形成された層を備えることが最も好ましい。
【0125】
親インク処理方法としては、公知の方法を用いることができ、限定されないが、例えば(1)シリコン製のノズルプレートの表面を熱酸化して酸化ケイ素膜を形成する方法、(2)シリコンやシリコン以外の酸化膜を酸化的に形成する方法、若しくは、スパッタリングにより形成する方法、(3)金属膜を形成する方法、が挙げられる。これらの方法の詳細については、米国特許出願公開第2010/0141709号明細書を参照することができる。
【0126】
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0127】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性エネルギー線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
【0128】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0129】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学工業(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0130】
本発明のインク組成物は、このような活性エネルギー線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性エネルギー線の照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0131】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の高い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の高いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、基材密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0132】
本発明のインクジェット記録方法は、インクセットを使用することが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の高い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれるインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
【0133】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム(複合アルミ板等)等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体を好適に使用することができる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は重量基準である。
【0135】
実施例及び比較例で使用する化合物のうち、製造元の記載のない化合物は、公知の方法、又は、公知の方法を応用し、合成した。
【0136】
・C.I.ピグメントイエロー12(イエロー顔料、クラリアント社製)
・C.I.ピグメントレッド57:1(マゼンタ顔料、クラリアント社製)
・C.I.ピグメントブルー15:3(シアン顔料、クラリアント社製)
・C.I.ピグメントブラック7(ブラック顔料、クラリアント社製)
・MICROLITH WHITE R−A(ホワイト顔料、チバ・ジャパン(株)製)
・ソルスパース32000(高分子分散剤、日本ルーブリゾール(株)製)
・PEA(2−フェノキシエチルアクリレート、単官能ラジカル重合性化合物、ビスコート#192、大阪有機化学工業(株)製)
・NVC(N−ビニルカプロラクタム、単官能ラジカル重合性化合物、V−CAP、BASF社製)
・IBOA(イソボルニルアクリレート、単官能ラジカル重合性化合物、アロニックスM−156、東亞合成(株)製)
・DMAAM(N,N−ジメチルアクリルアミド、単官能ラジカル重合性化合物、DMAA、(株)興人製)
・EOEOEA(2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、単官能ラジカル重合性化合物、SR256、サートマー社製)
・DVE3(トリエチレングリコールジビニルエーテル、2官能ラジカル重合性化合物、Rapi−Cure DVE−3、ISP Europe社製)
・HDDA:ヘキサンジオールジアクリレート、2官能ラジカル重合性化合物、KS−HDDA、サートマー社製)
・TMP(PO)TA(トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、3官能ラジカル重合性化合物、アロニックスM−310、東亞合成(株)製)
・Lucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、光重合開始剤、BASF社製)
・p−フェニルベンゾフェノン(光重合開始剤、和光純薬工業(株)製)
・カレンズMTPE1(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、連鎖移動剤、多官能チオール化合物、昭和電工(株)製)
・カレンズMTNR1(1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、昭和電工(株)製)
・Byk 307(界面活性剤、BYK Chemie社製)
・Genorad 16(重合禁止剤、Rahn社製)
なお、実施例で合成したポリマーA−1〜A−8は、前述したポリマーA−1〜A−8と同じものである。
【0137】
(ポリマーA−1の合成)
テトラヒドロフラン70g、N−n−ブチルアクリルアミド 30g、カレンズMTPE1 1.5g、V−601(ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、和光純薬工業(株)製) 0.2g、を冷却管を備えた300ml三口フラスコに秤量し、窒素気流下、80℃で5時間反応を行った。その後、V−601 0.2gを追加し、更に4時間反応を行った。放冷したサンプルをヘキサン中へ注ぎ、再沈精製後、真空乾燥しポリマーA−1 約30gを得た。
【0138】
(ポリマーA−2〜A−4の合成)
使用するモノマーを表1のように変更した以外は、ポリマーA−1とほぼ同様に合成を行い、ポリマーA−2〜A−4を得た。
【0139】
(ポリマーA−5の合成)
冷却管を備えた300ml三口フラスコ中へ、テトラヒドロフラン(THF)100g、N,N−ジエチルアクリルアミド32.8g、メチルメタクリレート17.2g、1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチリロキシメチル)エタン 0.81g、酸化銅(I)0.62g、Me6−TREN(トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、アルドリッチ社製) 0.99gを加え、真空ポンプにより減圧脱気を数回繰り返した後、窒素気流下、60℃に加熱し、12時間反応を行った。メタンスルホン酸2gを添加した後、窒素を止め急冷後、THF100gを追加し、大量の水中へ注ぎ再沈精製を行いポリマーA−5 31.2gを得た。
【0140】
(ポリマーA−6〜A−8の合成)
使用する原材料を表1のように変更し、ポリマーA−5とほぼ同様に合成を行い、ポリマーA−6〜A−8を得た。
【0141】
【表1】

【0142】
(ポリマーB−1の合成:分岐のないポリマー)
テトラヒドロフラン70g、N−n−ブチルアクリルアミド 30g、V−601 0.6g、を冷却管を備えた300ml三口フラスコに秤量し、窒素気流下、80℃で5時間反応を行った。その後、V−601 0.3gを追加し、更に4時間反応を行った。放冷したサンプルをヘキサン中へ注ぎ、再沈精製後、真空乾燥しポリマーB−1 約30gを得た。
(ポリマーB−2の合成:アクリル樹脂)
2−ブタノン70g、メチルメタクリレート30g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)0.4g、V−601 0.3gを、冷却管を備えた300ml三口フラスコに秤量し、窒素気流下、80℃で5時間反応を行った。その後、V−601 1.2gを追加し、更に4時間反応を行った。放冷したサンプルをヘキサン中へ注ぎ、再沈精製後、真空乾燥しポリマーB−2 約30gを得た。
(ポリマーB−3の合成:分岐がなく、分子量が比較的小さい樹脂)
テトラヒドロフラン70g、N−n−ブチルアクリルアミド30g、V−601 3.1gを、冷却管を備えた300ml三口フラスコに秤量し、窒素気流下、80℃で5時間反応を行った。その後、V−601 1.2gを追加し、更に4時間反応を行った。放冷したサンプルをヘキサン中へ注ぎ、再沈精製後、真空乾燥しポリマーB−3 約30gを得た。
【0143】
【化13】

【0144】
(顔料分散物の調製)
次に示す顔料、分散剤、重合性化合物を混合して、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて2,500回転/分にて10分撹拌した。その後、ビーズミル分散機DISPERMAT LS(VMA社製)に入れ、直径0.65mmのYTZボール((株)ニッカトー製)を用い、2,500回転/分で6時間分散を行い、各色の顔料分散物(Y、M、C、K、及びW)を調製した。
【0145】
イエロー顔料分散物(Y)
・顔料:C.I.ピグメントイエロー12 10部
・分散剤:ソルスパース32000 5部
・単官能重合性化合物:2−フェノキシエチルアクリレート 85部
【0146】
マゼンタ顔料分散物(M)
・顔料:C.I.ピグメントレッド57:1 15部
・分散剤:ソルスパース32000 5部
・単官能重合性化合物:2−フェノキシエチルアクリレート 80部
【0147】
シアン顔料分散物(C)
・顔料:C.I.ピグメントブルー15:3 20部
・分散剤:ソルスパース32000 5部
・単官能重合性化合物:2−フェノキシエチルアクリレート 75部
【0148】
ブラック顔料分散物(K)
・顔料:C.I.ピグメントブラック7 20部
・分散剤:ソルスパース32000 5部
・単官能重合性化合物:2−フェノキシエチルアクリレート 75部
【0149】
ホワイト顔料分散物(W)
・顔料:MICROLITH WHITE R−A 20部
・分散剤:ソルスパース32000 5部
・単官能重合性化合物:2−フェノキシエチルアクリレート 75部
【0150】
(実施例1〜25及び比較例1〜4)
<インク組成物の調製>
表2に示す成分に下記の成分を更に加えて混合して、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて1,000回転/分にて5分撹拌した。その後、日本ポール(株)製カートリッジフィルター(製品名:プロファイルIIAB01A01014J)を用いてろ過し、実施例1〜25及び比較例1〜4のインク組成物を調製した。
・重合禁止剤:Genorad 16 0.05部
・光重合開始剤(成分B):Lucirin TPO 6.0部
・光重合開始剤(成分B):p−フェニルベンゾフェノン 4.0部
・界面活性剤:Byk 307 0.05部
なお、表2中、「−」は非含有を表す。PEA(*)は、顔料分散物に由来するPEAの量も含む。
【0151】
実施例1〜25及び比較例1〜4のインク組成物について、基材密着性の評価、鉛筆硬度試験による膜硬度の評価、及び、吐出安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0152】
−基材密着性評価−
被記録媒体としてポリカーボネートシート(PC、帝人化成(株)製)及びアクリルシート(Acryl、日本アクリエース(株)製)を用い、各々の表面に、得られた実施例1〜25及び比較例1〜4のインク組成物を、Kハンドコーター(バーNo.2)を用いてウェット膜厚12μmとなるように塗布した。次いで、オゾンレスメタルハライドランプMAN250Lを搭載し、コンベアスピード9.0m/分、露光強度2.0W/cm2に設定した実験用UVミニコンベア装置CSOT((株)ジーエス・ユアサパワーサプライ製)により、エネルギー線により硬化させた。被記録媒体への接着性は、この硬化塗膜を用いてISO2409(クロスカット法)により下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれが生じる。クロスカット部分で影響を受けるのは、5%を上回ることはない。
2:塗膜のカットの縁に沿って、及び/又は、交差点においてはがれる。クロスカット部分で影響を受けるのは、5%を超えるが、15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、15%を超えるが、35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、35%を超えるが、65%を上回ることはない。
5:はがれの程度が65%を超える。
0〜1が許容されるレベルであった。
【0153】
−鉛筆硬度評価−
基材密着性評価に用いたものと同様に作製したインク硬化膜について、JIS K5600−4に基づき、鉛筆硬度試験を行った。結果を表2に示す。
延伸性を有する本発明のインク組成物において、硬度の許容範囲はHB以上であり、H以上であることが好ましい。評価結果がB以下である印刷物は印刷物の取り扱い時にキズが生じる可能性があり好ましくない。
なお、鉛筆は三菱鉛筆(株)製のUNI(登録商標)を使用した。
【0154】
−吐出安定性評価−
インクのヘッドノズルでの吐出安定性を評価するために、下記の条件でピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置により60分間連続吐出におけるノズルロス個数(ノズルが詰まってしまった数)の評価を行った。
実験は、被記録媒体としてPET(ポリエチレンテレフタレート)基板上に実施例1〜25及び比較例1〜4のインク組成物を、下記条件で60分間連続吐出して、露光(露光量:1000mW/cm2)を行った場合のノズルロス数を数えた。
【0155】
<吐出条件>
チャンネル数:318/ヘッド
駆動周波数:4.8kHz/dot
インク滴:7滴、42pl
温度:45℃
【0156】
<評価基準>
A:ノズルロスが0個以上5個未満
B:ノズルロスが5個以上10個未満
C:ノズルロスが10以上
A又はBが許容されるレベルであった。
【0157】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)式(I)で表される構成繰り返し単位を有する重量平均分子量3,000〜100,000の樹状の高分子化合物、
(成分B)重合開始剤、及び
(成分C)ラジカル重合性化合物、を含有することを特徴とする
インクジェットインク組成物。
【化1】

(式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R2とR3は連結して環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
成分Cが、(成分C−1)単官能ラジカル重合性化合物を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
成分C−1の含有量が成分Cの総重量の80重量%以上である、請求項2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
成分C−1の含有量が成分Cの総重量の85重量%以上である、請求項2又は3に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
成分Cが、2官能ラジカル重合性化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
成分Aの重量平均分子量が3,000〜60,000である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
成分Aが、多官能チオール化合物残基を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
成分Aが、4価以上の多官能チオール化合物残基を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
成分Aの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が3以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
(成分D)着色剤を更に含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
成分Cが、(成分C−2)N−ビニル化合物を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項12】
成分C−2が、N−ビニルカプロラクタムである、請求項11に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項13】
成分Aが、前記式(I)で表される構成繰り返し単位と式(II)で表される構成繰り返し単位とを有する共重合体である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【化2】

(式(II)中、R4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5は置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)
【請求項14】
成分Aが、少なくとも2種の異なる前記式(I)で表される構成繰り返し単位を有する共重合体である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項15】
成分Aが、ハイパーブランチポリマーである、請求項1〜14のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項16】
成分Aが、枝構造として式(I)で表される構成繰り返し単位を有するポリマー鎖を有するハイパーブランチポリマーである、請求項1〜15のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項17】
(a1)被記録媒体上に、請求項1〜16のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、
(b1)吐出されたインクジェットインク組成物に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2013−82916(P2013−82916A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215244(P2012−215244)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】