インクジェットカートリッジおよびその製造方法
【課題】製造時に記録素子基板への振動の影響を抑え、かつ短時間でインクタンクに蓋を振動溶着することが可能なインクジェットカートリッジおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】記録素子基板108を設けたカートリッジ100にインク吸収体104を挿入した後、カートリッジ100の開口部を閉じるための蓋101を振動溶着するインクジェットカートリッジにおいて、蓋101にインク吸収体104に刺し込むリブ109を設けた。
【解決手段】記録素子基板108を設けたカートリッジ100にインク吸収体104を挿入した後、カートリッジ100の開口部を閉じるための蓋101を振動溶着するインクジェットカートリッジにおいて、蓋101にインク吸収体104に刺し込むリブ109を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクを収容するインクタンクとインクの吐出を行う記録素子基板とを一体的に組み付けたインクジェット記録を行うインクジェットカートリッジおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置においては高画質化により小液滴化が進む一方、高速化も求められており、その解決方法としてノズル数の増加が著しくなされている。ノズル数を増加する為には記録素子基板を大きくする必要があり、その内部はインクなどの記録液をノズルに導く為の流路で構成されているため中空部分が占める容積が増加している。また、発色性および耐光性の向上などインクの組成も年々進化している。
【0003】
これらに伴い、記録素子基板をインクタンクに組み付けて両者を一体化したインクジェットカートリッジでは記録素子基板を高精度にマウントする為の精密成形可能な樹脂材料の開発が行われている。また、経時変化によりインク物性を変化させないためにより溶質物の少ない樹脂材料の開発、インク成分の蒸発を抑えるためにガラス繊維を入れるなどのバリア性の高い樹脂材料の開発等も行われている。
【0004】
図16に示すように記録素子基板をマウントし、内部に多孔質体を備えたカートリッジ筐体と蓋の間に、スペーサー部材11を挟み構成されたインクジェットカートリッジが知られている。また、図17に示すように蓋部分にリブ12を備えた構成のインクジェットカートリッジが知られている。スペーサー部材やリブによって多孔質体を押え、多孔質体にインクを含浸させることによって、吐出のための負圧を発生させ毛管力によってノズルにインクを供給していた。これらのカートリッジの製造方法として、記録素子基板をマウントし、多孔質体を備えた筐体に対して蓋部材を位置合わせし、ノズルの並び方向(記録素子基板に沿った方向)に蓋部材を振動させ、筐体に溶着する方法が知られている。
【特許文献1】特開2006−044230公報
【特許文献2】特開2005−193387公報
【特許文献3】特開2001−121715公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、インクジェットカートリッジの製造工程には接着、熱カシメなどの結合方法が用いられている。中でも、ホーンを超音波振動させることで、樹脂同士の接触面に摩擦熱を発生させ相溶した時点で冷却して結合させる超音波溶着は短時間・高精度・高再現性、高気密性や溶着強度の高さから最も一般的に用いられている。外観形態が図13に示すようなインクジェットカートリッジ1の製造において、蓋7と装置に固定されたインクタンク4とを押圧接触させながら、その押圧方向に沿って蓋7に振動を加えることで両者を接合する方法が採られていた。これは、蓋7を押圧方向に沿って振動させるという方法が、蓋7を押圧方向とは異なる方向に振動させるよりも、製造装置との関係上、容易に行えるということによる。この場合、記録素子基板2は、インク吐出方向に沿った(平行な)方向に振動することになる。
【0006】
なお、図14は、インクジェットカートリッジ1の底面に設けられた記録素子基板2のインク吐出構造の概略を示すものである。符号51はインク供給口、符号52はインクを吐出するエネルギーを発生する素子である発熱体、符号53はインク流路、符号54はインク吐出口、符号55はインク吐出口面を示す。このように、インク吐出口面55に沿った方向とインク吐出方向とは交差するものであり、設計上は直交するようになっている。
【0007】
インクタンクに記録素子基板を組み付けた後、蓋7への押圧方向にそった振動を加えるべく超音波溶着を行うと、インクタンク4の蓋7に作用させた高周波の縦振動(20kHz)がダイレクタ8(図15参照)に伝達される。それを受けて外周面に振動が伝達し、インクタンク4の底面が高周波振動する。振動は、さらにインクタンク4の底面に取り付けられた記録素子基板2に伝達する。記録素子基板2の表面に多数集積して構成されたインク流路53や極薄板状のインク吐出口面55といったインク吐出構造物を、インク吐出方向(図14中の矢印方向)へ高周波振動させる。その為、それらの構造物や記録素子基板2そのものにクラックが生じ、破損すると言う課題があった。
【0008】
記録素子基板は、インクジェットカートリッジの構成部品において最も重要かつ高価な部品であり、カートリッジ製造工程におけるクラック等の発生は、製品を安価にユーザーに提供することを困難にするものである。
【0009】
上述のクラック発生の対策として特許文献1に開示された発明がある。これは図18(a)、(b)に示すように振動溶着機13の受け冶具13aの凹部にインクタンク4を固定し、振動溶着機10の上側冶具13bの凹部にて蓋7を吸引して保持させた後、振動溶着を行う方法である。
【0010】
この方法の場合、蓋とインクタンクを、冶具上で別々に扱っている。インクタンクを受け治具13aに固定し、次に蓋を治具13bに吸引保持した後、受け治具に固定したインクタンクを上昇させ、蓋とインクタンクを押圧接触させる。その後、インクタンクの上面に沿う方向に蓋を振動させ、振動溶着を開始するという順番で行うため時間がかかり、生産性が悪い。
【0011】
インクタンク4と蓋7に仮位置決め用の勘合部を設けておき、あらかじめインクタンク4に蓋7をセットし、仮固定できれば、インクタンク4と蓋7の振動溶着装置への同時供給が可能となる。その結果、溶着工程に掛かる時間が短縮し、振動溶着装置(高価)の台数を減らすことができ装置コストを抑えられる。しかしインクタンク4と蓋7に設ける勘合部には振動溶着させる際の振幅分の隙間が必要となる。この振幅分の隙間は1ミリ程度必要であり、ガタツキが大きく仮固定できない。また、図16で示すように特許文献3に記載された吸収体9を設けたインクタンク部4と蓋7の間にスペーサー11を設けた構成。あるいは、特許文献2に記載されるように、蓋7に図17で示すような吸収体9をインクタンク4のインク流路部に圧接させるように様々なリブ12が設けられている構成がある。そのため蓋7をインクタンク4にセットするために吸収体を押し込んでも、吸収体の反力により蓋が浮き上がったり、傾きが発生したりして位置が定まらないと言う課題があった。
【0012】
本発明の目的は、上述した実状に鑑み、製造時に記録素子基板への振動の影響を抑え、かつ短時間でインクタンクに蓋を振動溶着することが可能なインクジェットカートリッジおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジにおいて、前記蓋の前記インク吸収体と該蓋の対向する面に、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する差し込みリブを設けたことを特徴とするものである。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のインクカートリッジの製造方法は、記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジの製造方法であって、
前記蓋の、前記インク吸収体と該蓋の対向する面に設けられた、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブを前記インク吸収体に刺しこみ、該蓋を前記タンク筐体に対して仮固定した状態で、蓋の上面に沿う方向に振動させ、前記開口部と前記蓋を溶着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓋に設けたリブをインクタンクに挿入してあるインク吸収体に刺し込むことで、インクタンクに蓋を仮固定することが可能となる。そのためあらかじめインクタンクに蓋をセットした状態で振動溶着装置に供給することが可能となる。よって、溶着工程の時間短縮が可能となり、かつ製造時に記録素子基板の破損を押えたインクジェットカートリッジを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(実施例1)
本発明の第1の実施形態について説明する。図1、図4は、本実施形態のインクジェットカートリッジとして、ブラックカートリッジ100とカラーカートリッジ200を模式的に示す斜視図である。図2,図5は、本実施形態のブラックカートリッジ100とカラーカートリッジ200を模式的に示す断面図である。図3、図6は、本実施形態のブラックカートリッジ100用の蓋101とカラーカートリッジ200用の蓋102を模式的に示す斜視図である。
【0018】
また、図7、図8はブラックカートリッジとカラーカートリッジの製造過程を示す模式的斜視図である。
【0019】
インクタンク部103の底部は、記録素子基板108が設けられた部分が、他の部分より突出した形状になっている。インクタンク部103は、インクジェットカートリッジ100の筐体を構成している。ブラックカートリッジ100は、インクジェット記録装置のキャリッジに搭載されて、被記録媒体上を往復移動させながらインクを吐出させ、すなわち主走査させて用いられる。そこで、記録素子基板108が設けられた部分のみが下方に突出した形状とすることによって、記録素子基板108と被記録媒体の記録面とを近接させて主走査することを可能とする。これによって、インクの飛翔距離を適正に設定し、かつ、例えば紙などからなる被記録媒体を、主走査領域で安定して保持して、良好な記録品位を得ることができる。
【0020】
ブラックカートリッジ100は、ブラック(B)の単一色のインク用であり、インクタンク103と蓋101によって形成されたインク収納室内に、ブラックのインクを保持させた吸収体104が収容されている。インクタンク103の底部には、ブラックインク吐出用の記録素子基板108が取り付けられている。また、インクタンク103の底部には、インク収納室から記録素子基板108に接続するインク流路107を形成する筒状のインク導入部106が、記録素子基板108の直上の位置でインク収納室内に突出して設けられている。インク導入部106の、インク収納室内に突出した先端部には、フィルター105が配置されている。インクタンク103は、このインク導入部106が形成された底部に対向する上面が開口しており、この開口が、蓋101によって塞がれている。蓋101の底面には、所定の平面パターンのリブ102が下方に突出して形成されており、これらが、吸収体104の上面に当接している。また、蓋101の底面には刺し込みリブ109も下方に突出して成形されており、蓋101をインクタンク103に供給した際に、刺し込みリブ109が吸収体104に刺し込まれ、蓋101がインクタンク103に仮固定される。リブは、インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブである。
【0021】
このブラックカートリッジ100では、吸収体104に保持されたインク(不図示)が、インク導入部106の先端、インク流路107の入口に設けられたフィルター105を通過し、インク流路107を通って記録素子基板108へ供給される。
【0022】
図7にブラックカートリッジの製造方法を示す。初めに図7(a)に示すようにインクタンク部103に記録素子基板108を接合する。インクタンク103の記録素子基板接合面に接着剤を塗布し、記録素子基板108をマウントした後、接着剤を硬化させ記録素子基板とインクタンク部の接合を完了させる。次に図7(b)、(c)に示すように吸収体104をインクタンク103の開口部から内部へ挿入する。吸収体104はポリプロピレン(PP)繊維を積層したのもからなり、繊維積層方向を圧縮した状態でインクタンク103に挿入される。一般的に吸収体はウレタンスポンジ等の発泡体が利用される場合が多い。しかし、使用するインクによっては長期保存状態などの状況で、ウレタンスポンジなどの発泡体とインクが化学反応し、インク吸収体として必ずしも適さない場合がある。そこで、インク保存適正が好適な材料からなる繊維積層体がインク吸収体として用いられる。この繊維積層体は繊維の積層体を熱成形して形成されたシート状繊維体を複数積層して構成されているものである。
【0023】
その後、蓋101をインクタンク103の上面に供給する。その際、図7(d)に示すように蓋101に設けた刺し込みリブ109がインクタンク103内の吸収体104に刺さり、インクタンク103に仮固定された状態になる。リブの本数が1本(少ない)の場合は、蓋101が回転してしまい、ずれが発生する。また、リブの本数が多い場合には吸収体104に刺す時の抵抗が大きくなり、リブが吸収体表面を通過して刺し込めない可能性が生じる。従って刺し込み不足のため蓋101が浮いて傾き、ずれが発生する可能性がある。このような状況を考慮し、本実施例の刺し込みリブは、図3に示すように針状のリブを4箇所に設けた。
【0024】
蓋101をインクタンク103に仮固定した後、図9に示すように蓋101付きインクタンク103を振動溶着装置14の下治具にセットする。その後下治具が上昇し、上治具にインクタンク付き蓋101が突き当たり吸着固定されるとともに、蓋101をインクタンク103に荷重を加えた状態で蓋の上面に沿った方向に振動を加え、振動溶着が開始される。本実施例では、蓋とインクタンクを別々にしない状態で冶具上取り扱っている。図7(e)、(f)に示すように振動方向は吸収体104のPP繊維積層方向に対し垂直方向に振動する。PP繊維積層方向に対する垂直方向は繊維が裂け易いために刺しこみリブが動き易くなっている。このため吸収体に刺し込んだリブが振動に悪影響を及ぼすことなく溶着することができる。インクタンク筐体と蓋は溶着によって閉じることになる。
【0025】
一方、カラーカートリッジ200は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色のインク用である。インクタンク203内は、T字状の内壁によって3つのインク収納室に仕切られている。各インク収納室内に、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクをそれぞれ保持する吸収体204Y,204M,204Cが収容されている。インクタンク203の底部には、インクジェット記録ヘッド208が設けられている。詳細には図示していないが、この記録素子基板208には、各色のインク用のノズルが形成されており、各色のインクをそれぞれ選択的に画像データ信号に合わせたパターンで吐出可能になっている。あるいは、記録素子基板208は、各色用のヘッドを並べて配置したものであってもよい。
【0026】
カラーカートリッジ200の外形は、底部の、記録素子基板208が設けられた部分が下方に突出した、ブラックカートリッジ100と実質的に同一の形状になっている。したがって、ブラックカートリッジ100とカラーカートリッジ200とは、例えば、インクジェット記録装置の、共通のキャリッジ上に並べて搭載することができるようになっている。
【0027】
各インク収納室の底部には、インク流路207Y,207M,207Cを形成する筒状のインク導入部206Y,206M,206Cがインク収納室内に突出してそれぞれ設けられている。これらの、インク収納室内に突出した先端部には、フィルター205Y,205M,205Cがそれぞれ配置されている。各インク流路207Y,207M,207Cは、必要に応じて屈曲し、詳細には図示していないが、記録素子基板208の、各色のインク用の導入口に接続している。
【0028】
各インク収納室は、それぞれ直方体形状になっており、各インクを保持する吸収体204Y,204M,204Cは、各インク収納室に対応した直方体の形状を有している。
【0029】
このカラーカートリッジ200にも、蓋201が設けられており、蓋201のリブ202が、各吸収体204Y,204M,204Cの上面にそれぞれ当接している。各吸収体204Y,204M,204Cは、各リブ202よって下方に向かって押圧されることによって、各フィルター205Y,205M,205Cに圧接され、それによって、インク流路207Y,207M,207C内にエアが進入するのが防止される。また、蓋201の底面には刺し込みリブ209も記録素子基板側に向かって下方に突出して成形されており、これらは、蓋201をインクタンク203に供給した際に、吸収体204C、204Yに刺し込まれ、仮固定される。
【0030】
このカラーカートリッジ200においても、インクの供給動作は、基本的に、ブラックカートリッジ100と同様である。すなわち、各吸収体204Y,204M,204Cに保持されたインクは、各フィルター205Y,205M,205C、インク流路207Y,207M,207Cを経てインクジェット記録ヘッド208に供給される。
【0031】
図8にカラーカートリッジの製造方法を示す。初めに図8(a)に示すようにインクタンク203に記録素子基板208を接合する。インクタンク203の記録素子基板接合面に接着剤を塗布し、記録素子基板208をマウントした後、接着剤を硬化させ接合を完了させる。次に図8(b)、(c)に示すように吸収体204Y、204M、204Cをインクタンク203に挿入する。ブラックカートリッジと同様に吸収体204Y、204M、204Cはポリプロピレン(PP)繊維を積層したのもからなり、繊維積層方向を圧縮した状態でインクタンク筐体の開口部からインクタンク203に挿入される。その後、蓋201をインクタンク203の上面に供給する。その際、図8(d)に示すように蓋201に設けた刺し込みリブ209がインクタンク203内の吸収体204Y、204Cに刺さり、インクタンク203に仮固定された状態になる。刺し込みリブ209は溶着の振動方向と吸収体のPP繊維積層方向とが交差しているインク吸収体に刺し込む位置に設ける。具体的には、図8(b)で示すイエローとシアンの色に対応する吸収体204Y、204Cの繊維積層方向と、図8(f)で示す蓋溶着の振動方向は交差し、ほぼ垂直の構成になっている。このイエローとシアンの吸収体に対応する蓋の位置に図6で示すような針状の差し込みリブが設けられている。図6では、吸収体205Yと205Cに刺し込む位置の蓋部にそれぞれ2箇所ずつ針状のリブを設けたが、仮固定できれば、何箇所でも良い。その後、図9に示すように蓋201付きインクタンク203(蓋とタンク部が一体として冶具上取り扱われている)を振動溶着装置14の下治具にセットする。その後下治具が上昇し、上治具に蓋201が突き当たり吸着固定されるとともに、蓋201をインクタンク203に荷重を加えた状態で蓋の上面に沿った方向に振動を加え、振動溶着が開始される。
【0032】
この時の振動方向は、インクジェットカートリッジのノズルからの吐出方向に対して垂直な方向である。図8(e)、(f)に示すように振動方向は吸収体205Y、205CのPP繊維積層方向に対し垂直方向に振動する。PP繊維積層方向に対する垂直方向は繊維が裂け易いために刺しこみリブが動き易くなっている。このため吸収体に刺し込んだリブが振動に悪影響を及ぼすことなく溶着することができる。溶着によってインクタンクの開口部は蓋によって閉じることになる。
【0033】
(実施例2)
実施例2は実施例1に対して蓋に設けた刺し込みリブ形状のみ変更させた構成である。
【0034】
実施例2における刺しこみリブは図10(a)に示すようなPP繊維積層方向と垂直方向に幅広なリブとした。PP繊維積層方向と垂直方向に幅広なリブの場合は積層する方向に繊維が倒れるためリブが刺さりやすい。しかし図10(b)に示すような積層方向に幅広なリブでは繊維が倒れにくいため刺さりにくい。そのため図11、図12に示すようにPP繊維積層方向に対して垂直方向に幅広であるとともに、蓋面から吸収体方向に向かい幅が狭くなる鋭角な三角形形状とした。この形状にすることで確実に吸収体に刺し込むことができるとともに、蓋をインクタンクに仮固定した後のハンドリング等による蓋のインクタンクに対するズレをより軽減できる。また、針状のリブよりも強度が増えるため、リブ折れに対して効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施形態に係るブラックインクジェットカートリッジの模式斜視図
【図2】第1の実施形態に係るブラックインクジェットカートリッジの模式断面図
【図3】第1の実施形態に係るブラックインクジェットカートリッジに用蓋の模式斜視図
【図4】第1の実施形態に係るカラーインクジェットカートリッジの模式斜視図
【図5】第1の実施形態に係るカラーインクジェットカートリッジの模式断面図
【図6】第1の実施形態に係るカラーインクジェットカートリッジに用蓋の模式斜視図
【図7】(a)〜(f)第1の実施形態に係るブラックカートリッジと吸収体の模式斜視図
【図8】(a)〜(f)第1の実施形態に係るカラーイカートリッジと吸収体の模式斜視図
【図9】(a)(b)本発明の実施形態に係る蓋の振動溶着方法を示す振動溶着装置の模式図
【図10】(a)(b)第2の実施形態に係るリブの吸収体への刺し込みを示す模式図
【図11】第2の実施形態に係るブラックカートリッジ用蓋の模式斜視図
【図12】第2の実施形態に係るカラーカートリッジ用蓋の模式斜視図
【図13】従来のインクジェットカートリッジの模式斜視図
【図14】記録素子基板のインク吐出構造を示す模式概略図
【図15】従来のカートリッジに用いる蓋の裏面側模式斜視図
【図16】従来のカートリッジでスペーサーを具えた構成の模式断面図
【図17】従来のカートリッジで蓋にリブを備えた構成の模式断面図
【図18】(a)(b)従来の振動溶着装置の模式図
【符号の説明】
【0036】
1 インクジェット記録カートリッジ
14 振動溶着装置
100 ブラックインクジェットカートリッジ
200 カラーインクジェットカートリッジ
7、101、201 蓋
12、102、202 吸収体押えリブ
4、103、203 インクタンク部
104、204Y、204M、204C 吸収体
2、108、208 記録素子基板
109、209 吸収体刺し込みリブ
【技術分野】
【0001】
本発明はインクを収容するインクタンクとインクの吐出を行う記録素子基板とを一体的に組み付けたインクジェット記録を行うインクジェットカートリッジおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置においては高画質化により小液滴化が進む一方、高速化も求められており、その解決方法としてノズル数の増加が著しくなされている。ノズル数を増加する為には記録素子基板を大きくする必要があり、その内部はインクなどの記録液をノズルに導く為の流路で構成されているため中空部分が占める容積が増加している。また、発色性および耐光性の向上などインクの組成も年々進化している。
【0003】
これらに伴い、記録素子基板をインクタンクに組み付けて両者を一体化したインクジェットカートリッジでは記録素子基板を高精度にマウントする為の精密成形可能な樹脂材料の開発が行われている。また、経時変化によりインク物性を変化させないためにより溶質物の少ない樹脂材料の開発、インク成分の蒸発を抑えるためにガラス繊維を入れるなどのバリア性の高い樹脂材料の開発等も行われている。
【0004】
図16に示すように記録素子基板をマウントし、内部に多孔質体を備えたカートリッジ筐体と蓋の間に、スペーサー部材11を挟み構成されたインクジェットカートリッジが知られている。また、図17に示すように蓋部分にリブ12を備えた構成のインクジェットカートリッジが知られている。スペーサー部材やリブによって多孔質体を押え、多孔質体にインクを含浸させることによって、吐出のための負圧を発生させ毛管力によってノズルにインクを供給していた。これらのカートリッジの製造方法として、記録素子基板をマウントし、多孔質体を備えた筐体に対して蓋部材を位置合わせし、ノズルの並び方向(記録素子基板に沿った方向)に蓋部材を振動させ、筐体に溶着する方法が知られている。
【特許文献1】特開2006−044230公報
【特許文献2】特開2005−193387公報
【特許文献3】特開2001−121715公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、インクジェットカートリッジの製造工程には接着、熱カシメなどの結合方法が用いられている。中でも、ホーンを超音波振動させることで、樹脂同士の接触面に摩擦熱を発生させ相溶した時点で冷却して結合させる超音波溶着は短時間・高精度・高再現性、高気密性や溶着強度の高さから最も一般的に用いられている。外観形態が図13に示すようなインクジェットカートリッジ1の製造において、蓋7と装置に固定されたインクタンク4とを押圧接触させながら、その押圧方向に沿って蓋7に振動を加えることで両者を接合する方法が採られていた。これは、蓋7を押圧方向に沿って振動させるという方法が、蓋7を押圧方向とは異なる方向に振動させるよりも、製造装置との関係上、容易に行えるということによる。この場合、記録素子基板2は、インク吐出方向に沿った(平行な)方向に振動することになる。
【0006】
なお、図14は、インクジェットカートリッジ1の底面に設けられた記録素子基板2のインク吐出構造の概略を示すものである。符号51はインク供給口、符号52はインクを吐出するエネルギーを発生する素子である発熱体、符号53はインク流路、符号54はインク吐出口、符号55はインク吐出口面を示す。このように、インク吐出口面55に沿った方向とインク吐出方向とは交差するものであり、設計上は直交するようになっている。
【0007】
インクタンクに記録素子基板を組み付けた後、蓋7への押圧方向にそった振動を加えるべく超音波溶着を行うと、インクタンク4の蓋7に作用させた高周波の縦振動(20kHz)がダイレクタ8(図15参照)に伝達される。それを受けて外周面に振動が伝達し、インクタンク4の底面が高周波振動する。振動は、さらにインクタンク4の底面に取り付けられた記録素子基板2に伝達する。記録素子基板2の表面に多数集積して構成されたインク流路53や極薄板状のインク吐出口面55といったインク吐出構造物を、インク吐出方向(図14中の矢印方向)へ高周波振動させる。その為、それらの構造物や記録素子基板2そのものにクラックが生じ、破損すると言う課題があった。
【0008】
記録素子基板は、インクジェットカートリッジの構成部品において最も重要かつ高価な部品であり、カートリッジ製造工程におけるクラック等の発生は、製品を安価にユーザーに提供することを困難にするものである。
【0009】
上述のクラック発生の対策として特許文献1に開示された発明がある。これは図18(a)、(b)に示すように振動溶着機13の受け冶具13aの凹部にインクタンク4を固定し、振動溶着機10の上側冶具13bの凹部にて蓋7を吸引して保持させた後、振動溶着を行う方法である。
【0010】
この方法の場合、蓋とインクタンクを、冶具上で別々に扱っている。インクタンクを受け治具13aに固定し、次に蓋を治具13bに吸引保持した後、受け治具に固定したインクタンクを上昇させ、蓋とインクタンクを押圧接触させる。その後、インクタンクの上面に沿う方向に蓋を振動させ、振動溶着を開始するという順番で行うため時間がかかり、生産性が悪い。
【0011】
インクタンク4と蓋7に仮位置決め用の勘合部を設けておき、あらかじめインクタンク4に蓋7をセットし、仮固定できれば、インクタンク4と蓋7の振動溶着装置への同時供給が可能となる。その結果、溶着工程に掛かる時間が短縮し、振動溶着装置(高価)の台数を減らすことができ装置コストを抑えられる。しかしインクタンク4と蓋7に設ける勘合部には振動溶着させる際の振幅分の隙間が必要となる。この振幅分の隙間は1ミリ程度必要であり、ガタツキが大きく仮固定できない。また、図16で示すように特許文献3に記載された吸収体9を設けたインクタンク部4と蓋7の間にスペーサー11を設けた構成。あるいは、特許文献2に記載されるように、蓋7に図17で示すような吸収体9をインクタンク4のインク流路部に圧接させるように様々なリブ12が設けられている構成がある。そのため蓋7をインクタンク4にセットするために吸収体を押し込んでも、吸収体の反力により蓋が浮き上がったり、傾きが発生したりして位置が定まらないと言う課題があった。
【0012】
本発明の目的は、上述した実状に鑑み、製造時に記録素子基板への振動の影響を抑え、かつ短時間でインクタンクに蓋を振動溶着することが可能なインクジェットカートリッジおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジにおいて、前記蓋の前記インク吸収体と該蓋の対向する面に、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する差し込みリブを設けたことを特徴とするものである。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のインクカートリッジの製造方法は、記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジの製造方法であって、
前記蓋の、前記インク吸収体と該蓋の対向する面に設けられた、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブを前記インク吸収体に刺しこみ、該蓋を前記タンク筐体に対して仮固定した状態で、蓋の上面に沿う方向に振動させ、前記開口部と前記蓋を溶着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓋に設けたリブをインクタンクに挿入してあるインク吸収体に刺し込むことで、インクタンクに蓋を仮固定することが可能となる。そのためあらかじめインクタンクに蓋をセットした状態で振動溶着装置に供給することが可能となる。よって、溶着工程の時間短縮が可能となり、かつ製造時に記録素子基板の破損を押えたインクジェットカートリッジを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(実施例1)
本発明の第1の実施形態について説明する。図1、図4は、本実施形態のインクジェットカートリッジとして、ブラックカートリッジ100とカラーカートリッジ200を模式的に示す斜視図である。図2,図5は、本実施形態のブラックカートリッジ100とカラーカートリッジ200を模式的に示す断面図である。図3、図6は、本実施形態のブラックカートリッジ100用の蓋101とカラーカートリッジ200用の蓋102を模式的に示す斜視図である。
【0018】
また、図7、図8はブラックカートリッジとカラーカートリッジの製造過程を示す模式的斜視図である。
【0019】
インクタンク部103の底部は、記録素子基板108が設けられた部分が、他の部分より突出した形状になっている。インクタンク部103は、インクジェットカートリッジ100の筐体を構成している。ブラックカートリッジ100は、インクジェット記録装置のキャリッジに搭載されて、被記録媒体上を往復移動させながらインクを吐出させ、すなわち主走査させて用いられる。そこで、記録素子基板108が設けられた部分のみが下方に突出した形状とすることによって、記録素子基板108と被記録媒体の記録面とを近接させて主走査することを可能とする。これによって、インクの飛翔距離を適正に設定し、かつ、例えば紙などからなる被記録媒体を、主走査領域で安定して保持して、良好な記録品位を得ることができる。
【0020】
ブラックカートリッジ100は、ブラック(B)の単一色のインク用であり、インクタンク103と蓋101によって形成されたインク収納室内に、ブラックのインクを保持させた吸収体104が収容されている。インクタンク103の底部には、ブラックインク吐出用の記録素子基板108が取り付けられている。また、インクタンク103の底部には、インク収納室から記録素子基板108に接続するインク流路107を形成する筒状のインク導入部106が、記録素子基板108の直上の位置でインク収納室内に突出して設けられている。インク導入部106の、インク収納室内に突出した先端部には、フィルター105が配置されている。インクタンク103は、このインク導入部106が形成された底部に対向する上面が開口しており、この開口が、蓋101によって塞がれている。蓋101の底面には、所定の平面パターンのリブ102が下方に突出して形成されており、これらが、吸収体104の上面に当接している。また、蓋101の底面には刺し込みリブ109も下方に突出して成形されており、蓋101をインクタンク103に供給した際に、刺し込みリブ109が吸収体104に刺し込まれ、蓋101がインクタンク103に仮固定される。リブは、インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブである。
【0021】
このブラックカートリッジ100では、吸収体104に保持されたインク(不図示)が、インク導入部106の先端、インク流路107の入口に設けられたフィルター105を通過し、インク流路107を通って記録素子基板108へ供給される。
【0022】
図7にブラックカートリッジの製造方法を示す。初めに図7(a)に示すようにインクタンク部103に記録素子基板108を接合する。インクタンク103の記録素子基板接合面に接着剤を塗布し、記録素子基板108をマウントした後、接着剤を硬化させ記録素子基板とインクタンク部の接合を完了させる。次に図7(b)、(c)に示すように吸収体104をインクタンク103の開口部から内部へ挿入する。吸収体104はポリプロピレン(PP)繊維を積層したのもからなり、繊維積層方向を圧縮した状態でインクタンク103に挿入される。一般的に吸収体はウレタンスポンジ等の発泡体が利用される場合が多い。しかし、使用するインクによっては長期保存状態などの状況で、ウレタンスポンジなどの発泡体とインクが化学反応し、インク吸収体として必ずしも適さない場合がある。そこで、インク保存適正が好適な材料からなる繊維積層体がインク吸収体として用いられる。この繊維積層体は繊維の積層体を熱成形して形成されたシート状繊維体を複数積層して構成されているものである。
【0023】
その後、蓋101をインクタンク103の上面に供給する。その際、図7(d)に示すように蓋101に設けた刺し込みリブ109がインクタンク103内の吸収体104に刺さり、インクタンク103に仮固定された状態になる。リブの本数が1本(少ない)の場合は、蓋101が回転してしまい、ずれが発生する。また、リブの本数が多い場合には吸収体104に刺す時の抵抗が大きくなり、リブが吸収体表面を通過して刺し込めない可能性が生じる。従って刺し込み不足のため蓋101が浮いて傾き、ずれが発生する可能性がある。このような状況を考慮し、本実施例の刺し込みリブは、図3に示すように針状のリブを4箇所に設けた。
【0024】
蓋101をインクタンク103に仮固定した後、図9に示すように蓋101付きインクタンク103を振動溶着装置14の下治具にセットする。その後下治具が上昇し、上治具にインクタンク付き蓋101が突き当たり吸着固定されるとともに、蓋101をインクタンク103に荷重を加えた状態で蓋の上面に沿った方向に振動を加え、振動溶着が開始される。本実施例では、蓋とインクタンクを別々にしない状態で冶具上取り扱っている。図7(e)、(f)に示すように振動方向は吸収体104のPP繊維積層方向に対し垂直方向に振動する。PP繊維積層方向に対する垂直方向は繊維が裂け易いために刺しこみリブが動き易くなっている。このため吸収体に刺し込んだリブが振動に悪影響を及ぼすことなく溶着することができる。インクタンク筐体と蓋は溶着によって閉じることになる。
【0025】
一方、カラーカートリッジ200は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色のインク用である。インクタンク203内は、T字状の内壁によって3つのインク収納室に仕切られている。各インク収納室内に、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクをそれぞれ保持する吸収体204Y,204M,204Cが収容されている。インクタンク203の底部には、インクジェット記録ヘッド208が設けられている。詳細には図示していないが、この記録素子基板208には、各色のインク用のノズルが形成されており、各色のインクをそれぞれ選択的に画像データ信号に合わせたパターンで吐出可能になっている。あるいは、記録素子基板208は、各色用のヘッドを並べて配置したものであってもよい。
【0026】
カラーカートリッジ200の外形は、底部の、記録素子基板208が設けられた部分が下方に突出した、ブラックカートリッジ100と実質的に同一の形状になっている。したがって、ブラックカートリッジ100とカラーカートリッジ200とは、例えば、インクジェット記録装置の、共通のキャリッジ上に並べて搭載することができるようになっている。
【0027】
各インク収納室の底部には、インク流路207Y,207M,207Cを形成する筒状のインク導入部206Y,206M,206Cがインク収納室内に突出してそれぞれ設けられている。これらの、インク収納室内に突出した先端部には、フィルター205Y,205M,205Cがそれぞれ配置されている。各インク流路207Y,207M,207Cは、必要に応じて屈曲し、詳細には図示していないが、記録素子基板208の、各色のインク用の導入口に接続している。
【0028】
各インク収納室は、それぞれ直方体形状になっており、各インクを保持する吸収体204Y,204M,204Cは、各インク収納室に対応した直方体の形状を有している。
【0029】
このカラーカートリッジ200にも、蓋201が設けられており、蓋201のリブ202が、各吸収体204Y,204M,204Cの上面にそれぞれ当接している。各吸収体204Y,204M,204Cは、各リブ202よって下方に向かって押圧されることによって、各フィルター205Y,205M,205Cに圧接され、それによって、インク流路207Y,207M,207C内にエアが進入するのが防止される。また、蓋201の底面には刺し込みリブ209も記録素子基板側に向かって下方に突出して成形されており、これらは、蓋201をインクタンク203に供給した際に、吸収体204C、204Yに刺し込まれ、仮固定される。
【0030】
このカラーカートリッジ200においても、インクの供給動作は、基本的に、ブラックカートリッジ100と同様である。すなわち、各吸収体204Y,204M,204Cに保持されたインクは、各フィルター205Y,205M,205C、インク流路207Y,207M,207Cを経てインクジェット記録ヘッド208に供給される。
【0031】
図8にカラーカートリッジの製造方法を示す。初めに図8(a)に示すようにインクタンク203に記録素子基板208を接合する。インクタンク203の記録素子基板接合面に接着剤を塗布し、記録素子基板208をマウントした後、接着剤を硬化させ接合を完了させる。次に図8(b)、(c)に示すように吸収体204Y、204M、204Cをインクタンク203に挿入する。ブラックカートリッジと同様に吸収体204Y、204M、204Cはポリプロピレン(PP)繊維を積層したのもからなり、繊維積層方向を圧縮した状態でインクタンク筐体の開口部からインクタンク203に挿入される。その後、蓋201をインクタンク203の上面に供給する。その際、図8(d)に示すように蓋201に設けた刺し込みリブ209がインクタンク203内の吸収体204Y、204Cに刺さり、インクタンク203に仮固定された状態になる。刺し込みリブ209は溶着の振動方向と吸収体のPP繊維積層方向とが交差しているインク吸収体に刺し込む位置に設ける。具体的には、図8(b)で示すイエローとシアンの色に対応する吸収体204Y、204Cの繊維積層方向と、図8(f)で示す蓋溶着の振動方向は交差し、ほぼ垂直の構成になっている。このイエローとシアンの吸収体に対応する蓋の位置に図6で示すような針状の差し込みリブが設けられている。図6では、吸収体205Yと205Cに刺し込む位置の蓋部にそれぞれ2箇所ずつ針状のリブを設けたが、仮固定できれば、何箇所でも良い。その後、図9に示すように蓋201付きインクタンク203(蓋とタンク部が一体として冶具上取り扱われている)を振動溶着装置14の下治具にセットする。その後下治具が上昇し、上治具に蓋201が突き当たり吸着固定されるとともに、蓋201をインクタンク203に荷重を加えた状態で蓋の上面に沿った方向に振動を加え、振動溶着が開始される。
【0032】
この時の振動方向は、インクジェットカートリッジのノズルからの吐出方向に対して垂直な方向である。図8(e)、(f)に示すように振動方向は吸収体205Y、205CのPP繊維積層方向に対し垂直方向に振動する。PP繊維積層方向に対する垂直方向は繊維が裂け易いために刺しこみリブが動き易くなっている。このため吸収体に刺し込んだリブが振動に悪影響を及ぼすことなく溶着することができる。溶着によってインクタンクの開口部は蓋によって閉じることになる。
【0033】
(実施例2)
実施例2は実施例1に対して蓋に設けた刺し込みリブ形状のみ変更させた構成である。
【0034】
実施例2における刺しこみリブは図10(a)に示すようなPP繊維積層方向と垂直方向に幅広なリブとした。PP繊維積層方向と垂直方向に幅広なリブの場合は積層する方向に繊維が倒れるためリブが刺さりやすい。しかし図10(b)に示すような積層方向に幅広なリブでは繊維が倒れにくいため刺さりにくい。そのため図11、図12に示すようにPP繊維積層方向に対して垂直方向に幅広であるとともに、蓋面から吸収体方向に向かい幅が狭くなる鋭角な三角形形状とした。この形状にすることで確実に吸収体に刺し込むことができるとともに、蓋をインクタンクに仮固定した後のハンドリング等による蓋のインクタンクに対するズレをより軽減できる。また、針状のリブよりも強度が増えるため、リブ折れに対して効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施形態に係るブラックインクジェットカートリッジの模式斜視図
【図2】第1の実施形態に係るブラックインクジェットカートリッジの模式断面図
【図3】第1の実施形態に係るブラックインクジェットカートリッジに用蓋の模式斜視図
【図4】第1の実施形態に係るカラーインクジェットカートリッジの模式斜視図
【図5】第1の実施形態に係るカラーインクジェットカートリッジの模式断面図
【図6】第1の実施形態に係るカラーインクジェットカートリッジに用蓋の模式斜視図
【図7】(a)〜(f)第1の実施形態に係るブラックカートリッジと吸収体の模式斜視図
【図8】(a)〜(f)第1の実施形態に係るカラーイカートリッジと吸収体の模式斜視図
【図9】(a)(b)本発明の実施形態に係る蓋の振動溶着方法を示す振動溶着装置の模式図
【図10】(a)(b)第2の実施形態に係るリブの吸収体への刺し込みを示す模式図
【図11】第2の実施形態に係るブラックカートリッジ用蓋の模式斜視図
【図12】第2の実施形態に係るカラーカートリッジ用蓋の模式斜視図
【図13】従来のインクジェットカートリッジの模式斜視図
【図14】記録素子基板のインク吐出構造を示す模式概略図
【図15】従来のカートリッジに用いる蓋の裏面側模式斜視図
【図16】従来のカートリッジでスペーサーを具えた構成の模式断面図
【図17】従来のカートリッジで蓋にリブを備えた構成の模式断面図
【図18】(a)(b)従来の振動溶着装置の模式図
【符号の説明】
【0036】
1 インクジェット記録カートリッジ
14 振動溶着装置
100 ブラックインクジェットカートリッジ
200 カラーインクジェットカートリッジ
7、101、201 蓋
12、102、202 吸収体押えリブ
4、103、203 インクタンク部
104、204Y、204M、204C 吸収体
2、108、208 記録素子基板
109、209 吸収体刺し込みリブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジにおいて、
前記蓋の、前記インク吸収体と該蓋の対向する面に、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブを設けたことを特徴とするインクジェットカートリッジ。
【請求項2】
前記筐体の開口部と前記蓋が振動溶着にて溶着され、前記振動溶着の振動方向が前記蓋の上面に沿った方向であることを特徴とする請求項1に記載されたインクジェットカートリッジ。
【請求項3】
前記インク吸収体は、ポリプロピレン繊維が積層してなることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項4】
前記刺し込みリブは、前記振動方向と前記インク吸収体の繊維積層方向とが交差している前記インク吸収体に差し込み可能な前記蓋の対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項5】
前記刺し込みリブは、前記振動方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項6】
前記刺し込みリブは、前記インク吸収体の繊維積層方向と交差する方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項7】
記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジの製造方法であって、
前記蓋の、前記インク吸収体と該蓋の対向する面に設けられた、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブを前記インク吸収体に刺しこみ、該蓋を前記タンク筐体に対して仮固定した状態で、蓋の上面に沿う方向に振動させ、前記開口部と前記蓋を溶着させることを特徴とするインクジェットカートリッジの製造方法。
【請求項8】
前記インク吸収体が、ポリプロピレン繊維が積層して成ることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットカートリッジの製造方法。
【請求項9】
前記刺し込みリブは、前記振動方向と前記インク吸収体の繊維積層方向とが交差している前記インク吸収体に差し込み可能な前記蓋の対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項10】
前記刺し込みリブは、前記振動方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項11】
前記刺し込みリブは、前記インク吸収体の繊維積層方向と交差する方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項1】
記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジにおいて、
前記蓋の、前記インク吸収体と該蓋の対向する面に、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブを設けたことを特徴とするインクジェットカートリッジ。
【請求項2】
前記筐体の開口部と前記蓋が振動溶着にて溶着され、前記振動溶着の振動方向が前記蓋の上面に沿った方向であることを特徴とする請求項1に記載されたインクジェットカートリッジ。
【請求項3】
前記インク吸収体は、ポリプロピレン繊維が積層してなることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項4】
前記刺し込みリブは、前記振動方向と前記インク吸収体の繊維積層方向とが交差している前記インク吸収体に差し込み可能な前記蓋の対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項5】
前記刺し込みリブは、前記振動方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項6】
前記刺し込みリブは、前記インク吸収体の繊維積層方向と交差する方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項7】
記録素子基板とインク吸収体とを具えたタンク筐体と、前記筐体の開口部を閉じるための蓋を具えたインクジェットカートリッジの製造方法であって、
前記蓋の、前記インク吸収体と該蓋の対向する面に設けられた、前記インク吸収体の表面を通過し内部へと到達する刺し込みリブを前記インク吸収体に刺しこみ、該蓋を前記タンク筐体に対して仮固定した状態で、蓋の上面に沿う方向に振動させ、前記開口部と前記蓋を溶着させることを特徴とするインクジェットカートリッジの製造方法。
【請求項8】
前記インク吸収体が、ポリプロピレン繊維が積層して成ることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットカートリッジの製造方法。
【請求項9】
前記刺し込みリブは、前記振動方向と前記インク吸収体の繊維積層方向とが交差している前記インク吸収体に差し込み可能な前記蓋の対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項10】
前記刺し込みリブは、前記振動方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項11】
前記刺し込みリブは、前記インク吸収体の繊維積層方向と交差する方向に幅広な形状であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−307785(P2008−307785A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157606(P2007−157606)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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