説明

インクジェットプリンタ、印刷ユニットおよびその印刷方法

【課題】印刷媒体の表面にUVインクを平滑化した状態で且つ滲まないように重ねて付着させることにより印刷品質を向上させたインクジェットプリンタ、その印刷ユニットおよびその印刷方法を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、印刷媒体を支持するバキュームテーブルと、印刷媒体の表面に向けてインクを吐出して付着させる印刷ヘッド62と、印刷媒体の表面に紫外線を照射してインクを硬化させる右UVLEDユニット70R,左UVLEDユニット70Lと、印刷ヘッド62および右UVLEDユニット70R,左UVLEDユニット70Lをバキュームテーブルと対向させて搭載し、印刷媒体に対して相対移動されるキャリッジ63とを有して構成される。キャリッジ63上において、印刷ヘッド62に対して右UVLEDユニット70R,左UVLEDユニット70Lを相対移動させる前後駆動装置80を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタ、その印刷ユニットおよびその印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラテン上に載置させた印刷媒体に対して、プラテンと対向して配設された印刷ヘッドを左右に往復移動させながら、印刷ヘッドからインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタには、紫外線が照射されることにより硬化する性質を有した紫外線硬化型インク(以下、UVインクと称す)を、印刷ヘッドから吐出させて印刷媒体に印刷を行うものがある。このUVインクは、耐候性および耐水性に優れているため、印刷物を例えば屋外広告宣伝ビラ等に用いることが可能となり、水溶性インクを用いた場合と比較して印刷物の使用用途が格段に広がるという利点がある。
【0003】
ところで、UVインクを吐出させて印刷を行うインクジェットプリンタには、印刷媒体に付着したUVインクに紫外線を照射して硬化させるための紫外線照射装置が設けられている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。近年、この紫外線照射装置における紫外線を発光させる光源として、紫外線発光ダイオード(以下、UVLEDと称する)を用いたインクジェットプリンタが開発されている。ここでUVLEDとは、Ultra Vioret Light Emitting Diodeの略である。
【0004】
従来の印刷ユニット500は、図11(a)に示すように、内部にUVLEDが配設されて、下方に位置した印刷媒体501に向けて紫外線を照射可能に構成された右紫外線照射装置520Rおよび左紫外線照射装置520Lが、印刷ヘッド510の左右に一対となって固定配設されている。説明の便宜上、図11(a)に示す矢印方向を前後および左右と定義して説明する。印刷ヘッド510は、例えば滴状のマゼンタのUVインクを下面に設けられた複数のノズル(図示せず)から、印刷媒体501に向けて吐出するマゼンタ印刷ヘッド510M、同様にイエローのUVインクを吐出するイエロー印刷ヘッド510Y、シアンのUVインクを吐出するシアン印刷ヘッド510CおよびブラックのUVインクを吐出するブラック印刷ヘッド510Kから構成される。
【0005】
印刷媒体501の印刷ライン508に印刷を施すときには、印刷ユニット500を印刷ライン508の上方で所定のパス数だけ左右に往復移動させながら、印刷ヘッド510の各ノズルからUVインクを吐出させて、所望のパターンで印刷ライン508に重ねて付着させる。このとき、右紫外線照射装置520Rおよび左紫外線照射装置520Lから、UVインクを完全に硬化可能な照射強度となった紫外線が発射されており、この紫外線が印刷ライン508に照射されることによって、印刷ライン508に付着したUVインクが硬化されて印刷が施される。
【0006】
上記のようにして、印刷ライン508に印刷を施す途中段階における、ノズルから吐出されたUVインクが印刷ライン508に付着した状態の断面図を、図11(b)および(c)に示している。図11(b)においては、前回のパスにおいて印刷ライン508に付着して、紫外線が照射されて完全に硬化された完全硬化UVインク511の上に、今回のパスにおいて未硬化UVインク512が吐出されて付着した状態を示している。このとき、完全硬化UVインク511は完全に硬化されているため、完全硬化UVインク511と未硬化UVインク512との親和性が悪く、未硬化UVインク512は、表面張力によって粒状に盛り上がった状態となって付着する。また、未硬化UVインク512は粒状となって付着した後、親和性が悪いために紫外線が照射されるまでの間にほとんど拡がらない状態で紫外線が照射されて、完全に硬化される。
【0007】
一方、前回のパスにおいて印刷ライン508に付着して、硬化されていない(または、ほとんど硬化されていない)先の未硬化UVインク513の上に、今回のパスにおいて後の未硬化UVインク514が吐出されて付着した状態を、図11(c)に示している。このとき、先の未硬化UVインク513と後の未硬化UVインク514との親和性は良く、後の未硬化UVインク514は、粒状となって付着した後に先の未硬化UVインク513と混ざり合って滲む。そして、先の未硬化UVインク513と後の未硬化UVインク514とが混ざり合って、混合UVインク515となった状態で紫外線が照射されて、完全に硬化される。
【特許文献1】特開2004−1326号公報
【特許文献2】特開2004−188920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、印刷ユニット500によって印刷媒体501に印刷を施す場合、印刷媒体501の表面に重なって付着したそれぞれのUVインクが、混ざり合って滲むことなく、且つ拡がって平滑化した状態で硬化されることにより、所望の印刷が施された印刷媒体501(所望印刷物)を得ることができる。しかしながら、図11(b)に示すように、完全に硬化された完全硬化UVインク511の上に、硬化されていない未硬化UVインク512が重なって付着すると、完全硬化UVインク511と未硬化UVインク512とが混ざり合うことがない反面、完全硬化UVインク511が未硬化UVインク512を弾き、未硬化UVインク512が完全硬化UVインク511の表面で粒状に盛り上がった状態のまま紫外線が照射されて硬化されることがあった。このように、UVインクが粒状のまま硬化されて印刷された印刷物を所望印刷物と比較すると、印刷物からの光の反射が異なるために見え方が異なり、印刷品質を低下させる虞があった。
【0009】
また、図11(c)に示すように、硬化されていない先の未硬化UVインク513の上に、硬化されていない後の未硬化UVインク514が重なって付着すると、後の未硬化UVインク514は先の未硬化UVインク513と混ざり合って滲んだ状態となり、この状態で紫外線が照射されて硬化されることがあった。このように、UVインク同士が混ざり合って滲んだ状態で硬化されて印刷された印刷物を所望印刷物と比較すると、混ざり合って滲んだ部分の色彩が異なって見えるために、印刷品質を低下させる虞があった。
【0010】
以上のような課題に鑑みて、本発明では印刷媒体の表面にUVインクを平滑化した状態で且つ滲まないように重ねて付着させることにより印刷品質を向上させたインクジェットプリンタ、そのインクジェットプリンタに用いる印刷ユニットおよびそのインクジェットプリンタを用いた印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明に係るインクジェットプリンタは、印刷媒体を支持する媒体支持部材(例えば、実施形態におけるバキュームテーブル12a)と、前記媒体支持部材に支持された印刷媒体の表面に向けてインクを吐出して付着させる印刷ヘッドと、前記媒体支持部材に支持された印刷媒体の表面に紫外線を照射して前記印刷媒体の表面に付着したインクを硬化させる紫外線照射装置(例えば、実施形態における右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70L)とを有し、前記紫外線照射装置は、前記印刷ヘッドが印刷媒体に対して相対往復移動する方向である第1の方向における前記印刷ヘッドの一方側に第1の紫外線照射光源を、他方側に第2の紫外線照射光源を備え、前記第1の方向に対して直交する第2の方向へ前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを独立して移動させて位置させることが可能に構成された装置移動手段を備え、前記第1および第2の紫外線照射光源それぞれの照射紫外線強度を制御する制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ23)を備え、前記制御手段は前記第1および第2の紫外線照射光源に、前記印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射させる制御と、仮硬化させたインクにこれを本硬化させる本硬化用の紫外線を照射させる制御と、が可能に構成され、前記装置移動手段を用いて前記第1および第2の紫外線照射光源の位置関係を変更することによって、前記仮硬化用の紫外線の照射と、前記本硬化用の紫外線の照射との照射タイミングを制御するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
上述の本発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記印刷ヘッドおよび前記紫外線照射装置は、印刷媒体に対して相対移動されるキャリッジに前記媒体支持部材に対向した状態で搭載された構成が好ましく、前記装置移動手段は、前記キャリッジ上において前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを前記第2の方向へ独立して移動させて位置させることが可能に構成されたことが好ましい。
【0013】
また、上述の本発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記キャリッジは、印刷媒体に対して前記第1の方向に相対往復移動されるとともに前記第2の方向に相対移動され、前記装置移動手段は、前記第2の方向において前記印刷ヘッドに隣接する位置と、前記印刷ヘッドから離れて突出した位置とのいずれかに前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを位置させることが可能に構成されたことが好ましい。
【0014】
また、前記紫外線光源は、紫外線の照射強度を少なくとも前記仮硬化用および前記本硬化用の2段階に設定可能な構成が好ましい。さらに、前記紫外線光源は、発光ダイオードを用いた構成が好ましい。また、前記印刷ヘッドは、仮硬化させたインクの上に新たなインクを重ねるように吐出可能であるように、前記制御手段は、新たに吐出されたインクに前記第1および第2の紫外線照射光源から仮硬化用の紫外線を照射する制御が可能に、構成されたことが好ましい。
【0015】
本発明に係る印刷ユニットは、印刷媒体の表面に対向して相対移動しながら前記印刷媒体の表面にインクを吐出して付着させるとともに、付着したインクに紫外線を照射して硬化させ所望の印刷を施すために用いられ、印刷媒体の表面に向けてインクを吐出して付着させる印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドが印刷媒体に対して相対往復移動する方向である第1の方向における前記印刷ヘッドの一方側に第1の紫外線照射光源を、他方側に第2の紫外線照射光源を備え、印刷媒体の表面に紫外線を照射して前記印刷媒体の表面に付着したインクを硬化させる紫外線照射装置と、前記第1の方向に対して直交する第2の方向へ前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを独立して移動させて位置させることが可能に構成された装置移動手段と、前記第1および第2の紫外線照射光源それぞれの照射紫外線強度を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記第1および第2の紫外線照射光源に、前記印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射させる制御と、仮硬化させたインクにこれを本硬化させる本硬化用の紫外線を照射させる制御と、を行うように、前記装置移動手段を用いて前記第1および第2の紫外線照射光源の位置関係を変更することによって、前記仮硬化用の紫外線の照射と、前記本硬化用の紫外線の照射との照射タイミングを制御するように構成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る印刷方法は、印刷媒体を支持する媒体支持部材と、前記媒体支持部材に支持された印刷媒体の表面に向けてインクを吐出して付着させる印刷ヘッドと、前記印刷媒体に対して前記印刷ヘッドが相対往復移動する方向である第1の方向における前記印刷ヘッドの一方側に第1の紫外線照射光源を、他方側に第2の紫外線照射光源を備え、前記第1の方向に対して直交する第2の方向へ、前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを独立して移動させて位置させることが可能に構成された装置移動手段とを備えて構成されたインクジェットプリンタを用いて行う印刷方法であって、前記装置移動手段により前記第1および第2の紫外線照射光源をそれぞれ所定の位置に位置させるステップと、前記媒体支持部材に支持された印刷媒体に対して、前記印刷ヘッドから前記印刷媒体の表面にインクを吐出して所望の印刷を行うとともに前記第1および第2の紫外線照射光源から紫外線を照射して前記印刷媒体の表面に付着したインクを硬化させるステップと、を備え、前記ステップにおいて、前記印刷ヘッドを前記第1の方向に相対往復運動させながら前記印刷ヘッドから前記印刷媒体の表面にインクを吐出して所望の印刷を行うときに、前記印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射するステップと、仮硬化させたインクに本硬化用の紫外線を照射するステップとを有し、前記装置移動手段を用いて前記第1および第2の紫外線照射光源の位置関係を変更することによって、前記仮硬化用の紫外線の照射と、前記本硬化用の紫外線の照射との照射タイミングを制御して印刷が行なわれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、印刷ヘッドが印刷媒体に対して相対往復移動する方向である第1の方向における前記印刷ヘッドの一方側に第1の紫外線照射光源を、他方側に第2の紫外線照射光源を備え、前記第1の方向に対して直交する第2の方向へ前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを独立して移動させて位置させることが可能に構成された装置移動手段を備え、前記第1および第2の紫外線照射光源の照射紫外線強度を制御する制御手段を備え、前記制御手段は前記紫外線照射光源に、前記印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射させる制御と、仮硬化させたインクにこれを本硬化させる本硬化用の紫外線を照射させる制御と、が可能に構成され、前記装置移動手段を用いて前記第1および第2の紫外線照射光源の位置関係を変更することによって、前記仮硬化用の紫外線の照射と、前記本硬化用の紫外線の照射との照射タイミングを制御するように構成される。この構成により、印刷ヘッドと紫外線照射装置との位置関係(距離)を変えることができる。そのため、印刷ヘッドからインクを吐出して印刷媒体に付着させるとともに、紫外線照射装置から紫外線を照射して印刷媒体に付着したインクを硬化させることにより印刷を施す場合において、インクが印刷媒体に付着してから紫外線を照射されるまでの時間間隔が制御可能となる。よって、例えば印刷に用いるインクおよび印刷媒体の種類等に応じて、印刷ヘッドと紫外線照射装置との位置関係を変えて紫外線の照射タイミングを制御することができる。また、印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射させる制御と本硬化用の紫外線を照射させる制御とが可能に構成されているので、例えば、インクの粘度が低い場合などにも印刷媒体の表面にインクを平滑化した状態で且つ滲まないように重ねて固定させることができ、所望印刷物と比較しても見え方にほとんど差異のない高品質な印刷が可能となる。
【0018】
また、印刷ヘッドおよび紫外線照射装置は、印刷媒体に対して相対移動されるキャリッジに搭載され、装置移動手段は、キャリッジ上において紫外線照射装置を相対移動させる構成が好ましい。このように構成された場合、装置移動手段は、キャリッジ上において例えば固定された印刷ヘッドに対して移動可能な紫外線照射装置を移動させることにより、紫外線の照射タイミングを制御することが可能となる。よって、シンプルな装置構成によって紫外線の照射タイミングが制御可能となる。
【0019】
紫外線照射光源は、紫外線の照射強度を少なくとも前記仮硬化用および前記本硬化用の2段階に設定可能な構成が好ましい。このように構成された場合、紫外線照射光源から照射される紫外線の強度は、設定された少なくとも2段階の強度のうちから、所望の強度を選択することによって制御可能となる。よって、紫外線の照射強度制御が容易となって、インクジェットプリンタの制御系統を簡易に構成できる。
【0020】
また、紫外線照射光源は、発光ダイオードを用いた構成が好ましい。このように発光ダイオードを用いて構成すると、発光ダイオードに対する例えば供給電流の電流値を変化させると同時に、紫外線の強度が追従して変化する。そのため、紫外線の強度制御に対してタイムラグをほとんど生じることなく、所望の強度の紫外線を照射可能となる。よって、印刷媒体に付着したインクを、ムラなく硬化させることが可能となる。
【0021】
本発明に係る印刷ユニットによれば、印刷ヘッドが印刷媒体に対して相対往復移動する方向である第1の方向における前記印刷ヘッドの一方側に第1の紫外線照射光源を、他方側に第2の紫外線照射光源を備え、前記第1の方向に対して直交する第2の方向へ前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを独立して移動させて位置させることが可能に構成された装置移動手段と、前記第1および第2の紫外線照射光源それぞれの照射紫外線強度を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記紫外線照射光源に、前記印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射させる制御と、仮硬化させたインクにこれを本硬化させる本硬化用の紫外線を照射させる制御と、が可能に構成され、前記装置移動手段を用いて前記第1および第2の紫外線照射光源の位置関係を変更することによって、前記仮硬化用の紫外線の照射と、前記本硬化用の紫外線の照射との照射タイミングを制御するように構成される。これにより、例えば例えば印刷に用いるインクおよび印刷媒体の種類等によって、最適な紫外線の照射タイミングが異なるような場合においても、印刷ヘッドに対して紫外線照射装置を相対移動させて、印刷ヘッドと紫外線照射装置との位置関係を変えることによって、最適なタイミングで紫外線を照射可能となる。また、印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射させる制御と本硬化用の紫外線を照射させる制御とが可能に構成されているので、例えば、インクの粘度が低い場合などにも印刷媒体の表面にインクを平滑化した状態で且つ滲まないように重ねて固定させることができ、所望印刷物と比較しても見え方にほとんど差異のない高品質な印刷が可能となる。
【0022】
本発明に係る印刷方法は、前記印刷媒体に対して前記印刷ヘッドが相対往復移動する方向である第1の方向における前記印刷ヘッドの一方側に第1の紫外線照射光源を、他方側に第2の紫外線照射光源を備え、前記第1の方向に対して直交する第2の方向へ、前記第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを独立して移動させて位置させることが可能に構成された装置移動手段とを備えて構成されたインクジェットプリンタを用いて行う印刷方法であって、前記装置移動手段により前記第1および第2の紫外線照射光源をそれぞれ所定の位置に位置させるステップと、印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射するステップと、仮硬化させたインクに本硬化用の紫外線を照射するステップとを有し、前記装置移動手段を用いて前記第1および第2の紫外線照射光源の位置関係を変更することによって、前記仮硬化用の紫外線の照射と、前記本硬化用の紫外線の照射との照射タイミングを制御して印刷が行なわれるように構成されている。例えば、印刷に用いるインクおよび印刷媒体の種類等に応じて、第1および第2の紫外線照射光源のそれぞれを独立して移動させて位置させる移動させる制御を行うことにより、インクが印刷媒体に付着してから紫外線を照射されるまでの時間間隔が制御可能となる。また、印刷媒体の表面に付着したインクにこれをゲル状に硬化させる仮硬化用の紫外線を照射させるステップと本硬化用の紫外線を照射させるステップとを有し、前記装置移動手段を用いて前記第1および第2の紫外線照射光源の位置関係を変更することによって、前記仮硬化用の紫外線の照射と、前記本硬化用の紫外線の照射との照射タイミングを制御して印刷が行なわれるように構成されているので、例えば、インクの粘度が低い場合などにも印刷媒体の表面にインクを平滑化した状態で且つ滲まないように重ねて固定させることができ、所望印刷物と比較しても見え方にほとんど差異のない高品質な印刷が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1から図10を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について実施例1および実施例2を挙げて説明する。なお、説明の便宜上、各図面に示す矢印の方向をそれぞれ前後、左右および上下と称して説明する。
【実施例1】
【0024】
図1に、本発明を適用したインクジェットプリンタの一例として、テーブル上に固定保持された印刷媒体に対して印刷ヘッドを水平面内の直交二軸(X軸−Y軸)方向に移動させて、印刷媒体に対して所望の印刷を行うインクジェットプリンタ1を斜め前方から見た斜視図を示す。インクジェットプリンタ1は、下部において土台部分を構成する支持部10、および支持部10の上方に移動自在となって配設された印刷部50から構成されている。支持部10は、本体フレーム11、支持テーブル12、真空ブロア13およびコントロールユニット20を主体に構成される。本体フレーム11は、その上方に載置されて固定された支持テーブル12を水平に支持するとともに、各機構の取り付けベースとなっている。
【0025】
支持テーブル12は、平面視矩形状に形成されておりその中央部分には、平板状の印刷媒体2を載置して固定保持するバキュームテーブル12aが形成されている。バキュームテーブル12aの表面には、上下に貫通する微細な空気孔が多数形成されており、これらの空気孔はバキュームテーブル12aの下面側に設けられた減圧室(図示せず)と連通している。また、支持テーブル12の左右側端面には前後に延びるガイド溝12b,12bが形成され、後述する印刷部50の左右に形成された前後ガイド51a,51aと嵌合している。
【0026】
真空ブロア13は、減圧室と連通しており減圧室内の空気を排気して負圧に設定し、または減圧室に空気を送り込み空気孔から吐出させる。印刷媒体2をバキュームテーブル12a上の原点位置に載置して、真空ブロア13により減圧室が負圧に設定され、印刷媒体2がバキュームテーブル12a表面に真空吸着されて固定保持される。また、印刷媒体2に対する所望の印刷が終了して、バキュームテーブル12aから印刷媒体2を取り除く際は、空気を減圧室に送り込むとともに空気孔から吐出させることによって、印刷媒体2を浮かせて簡単に取り除くことができる。
【0027】
コントロールユニット20は、支持テーブル12の前端部に設置されており、操作パネル21、停止ボタン22およびコントローラー23を主体に構成される。操作パネル21には、インクジェットプリンタ1の作動を操作する操作ボタン(図示せず)、および稼動状況を表示する表示パネル(図示せず)等が設けられている。停止ボタン22は、インクジェットプリンタ1の作動を停止させるボタンである。
【0028】
コントローラー23は、コントロールユニット20の内部に構成されており、例えばインクジェットプリンタ1が設置されている作業室の室内温度、印刷に用いる印刷媒体2およびUVインクの種類等が入力される。また、コントローラー23は、後述する前後駆動機構59、左右駆動機構69、右UVLEDユニット70R、左UVLEDユニット70L、色別印刷ヘッド62M,62Y,62C,62Kおよびサーボモータ81等に対して作動信号を出力可能となって接続されている。そして、インクジェットプリンタ1が所望の稼動状況となるように、これらの構成部分に作動信号を出力する。
【0029】
また、コントローラー23は、メモリー(図示せず)を備えている。このメモリーには、実験またはシミュレーションによって求められた室内温度とUVインクの粘度との関係、およびUVインクの粘度と平滑化に要する時間との関係が、データベースとして記憶されている。よって、コントローラー23に、作業室の室内温度、印刷に用いる印刷媒体2およびUVインクの種類が入力されると、データベースを参照することによりUVインクの粘度が求まる。さらに、求まったUVインクの粘度を基にデータベースを参照することにより、平滑化に要する時間が得られる構成となっている。
【0030】
作業室の室内温度がコントローラー23に入力される構成となっているが、これは室内温度がUVインクの平滑化およびUVインク同士の滲みの進行速度等に関係しているためである。一般的に、UVインク等の液体の粘度は室内温度の変化に伴って変化し、例えば、室内温度が上昇するとUVインクの粘度は低下する。このUVインクの粘度が低い場合には、ノズルから吐出されたUVインクは印刷媒体2に付着した後、短時間のうちに拡がって平滑化する。またこのとき、接したUVインク同士は短時間のうちに混ざって滲む。このように、作業室の室内温度はUVインクの粘度に影響を与え、その結果印刷媒体2に付着したUVインクの平滑化および滲みに影響を与える。また、例えば後述する印刷ユニット60の内部における、印刷ヘッド62の近傍の温度を検出するように構成することも可能である。こうすることにより、より正確にUVインクの粘度を検出することが可能となる。
【0031】
印刷部50は、基部51、ガイドレール52および印刷ユニット60を主体に構成される。基部51は、左右に延びた略直方体となっており、左右端部近傍に形成された前後ガイド51a,51aがガイド溝12b,12bと嵌合し、支持テーブル12の上方を跨いで前後にスライド移動自在に支持される。ガイドレール52は、左右に延びるとともに基部51の前面に形成されている。また、後述するキャリッジ63の後面に形成された左右ガイド65がガイドレール52と嵌合しており、印刷ユニット60は左右にスライド移動自在に支持される。なお、基部51を前後にスライド移動させる前後駆動機構59、および印刷ユニット60を左右にスライド移動させる左右駆動機構69については、種々の周知技術を用いることが可能であり、本明細書ではその説明を省略する。
【0032】
印刷ユニット60は、図1および図2に示すように、印刷ヘッド62、キャリッジ63、右UVLEDユニット70R、左UVLEDユニット70Lおよび前後駆動装置80を主体に構成され、外周部がカバー61によって覆われている。印刷ヘッド62は、例えばマゼンタ(M),イエロー(Y),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応した色別印刷ヘッド62M,62Y,62C,62Kから構成されている。そして、これら色別印刷ヘッド62M,62Y,62C,62Kの下面には、各色のUVインクを下方に向けて吐出可能な複数のノズル(図示せず)が、前後左右方向に延びる平面に配設されている。なお、基部51の左端部上面には、各色のUVインクを貯えた貯蔵タンク53が配置されている。この貯蔵タンク53は、例えば、マゼンタ(M),イエロー(Y),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応した貯蔵タンク53M,53Y,53C,53Kから構成される。そして、色ごとに貯蔵タンクと印刷ヘッドとが管路(図示せず)を介して連通しており、適宜貯蔵タンクから印刷ヘッドにUVインクが送られる。
【0033】
キャリッジ63は、印刷ヘッド62、右UVLEDユニット70R、左UVLEDユニット70Lおよび前後駆動装置80の取付ベースとなっている。キャリッジ63の前端部近傍に、印刷ヘッド62が搭載されて固定されている。また、キャリッジ63には、印刷ヘッド62の左右側方において前後に延びた案内溝64,64が形成されており、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、この案内溝64,64にガイドされて前後にスライド移動可能となっている。印刷ヘッド62の後方には、外周部が駆動装置ボックス66に覆われた前後駆動装置80が設置されており、後述するサーボモータ81、駆動軸82、駆動歯車83、従動歯車84および出力軸85は、この駆動装置ボックス66内において回転自在に支持されている。なお、キャリッジ63の後端面には、ガイドレール52と嵌合可能な左右ガイド65が、左右に延びて形成されている。
【0034】
印刷ヘッド62の右方に右UVLEDユニット70Rが配設され、左方に左UVLEDユニット70Lが配設されている。ここで、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは同一構成となっており、以下において右UVLEDユニット70Rについて説明する。右UVLEDユニット70Rは、その上面部分に上方に向けて立設するとともに左右に延びたラック71が取り付けられている。また、右UVLEDユニット70Rの前後側面および左右側面は、平板状のカバー72によって覆われており下方に向けて開口している。また、ラック71およびカバー72によって囲まれた内部には、紫外線を発光可能なUVLED(図示せず)が配設されている。よって、UVLEDを稼動させることにより、右UVLEDユニット70Rの下面から下方に向けて紫外線が照射される構成となっている。なお、右UVLEDユニット70Rの下面から照射される紫外線は、例えばそれぞれの色別印刷ヘッドの下面に形成されたノズルと、略同一の前後幅となっている。
【0035】
UVLEDは、コントローラー23によって例えば供給電流の電流値が制御されて、電流値に応じた照射強度の紫外線を照射可能となっている。例えば電流値A1の電流が供給されたときの照射強度は、未硬化のUVインクを、ゲル状の半硬化状態に仮硬化させる強度となっている(以下において、仮硬化用の紫外線と称する)。また、例えば電流値A2の電流が供給されたときの照射強度は、仮硬化されてゲル状の半硬化状態のUVインクを本硬化させる強度となっている(以下において、本硬化用の紫外線と称する)。また、UVインクは、例えば仮硬化用の照射強度となった紫外線が複数回照射されて、本硬化に必要な積算量の紫外線を受光することによっても本硬化される。なお、コントローラー23は、上記の電流値を変えることによって、UVLEDからの紫外線の照射強度を零、つまり紫外線を照射させないように制御することも可能である。
【0036】
前後駆動装置80は、サーボモータ81、駆動軸82、駆動歯車83、従動歯車84、出力軸85、ピニオン86R,86Lを主体に構成される。サーボモータ81は、コントローラー23から出力される作動信号を入力し、数値制御により回転駆動可能となっている。駆動軸82は、サーボモータ81の回転駆動力が出力される軸である。駆動軸82の左端部には、駆動歯車83が取り付けられており、この駆動歯車83と出力軸85に取り付けられた従動歯車84とが噛合している。出力軸85の端部には、それぞれピニオン86R,86Lが取り付けられており、これらが右UVLEDユニット70Rのラック71および左UVLEDユニット70Lのラック71と噛合している。なお、インクジェットプリンタ1が印刷を行っていないとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、図3(b)に示すように案内溝64,64の前方側に位置している。
【0037】
印刷ユニット60は、キャリッジ63に印刷ヘッド62、右UVLEDユニット70R、左UVLEDユニット70Lおよび前後駆動装置80を搭載した状態で、印刷媒体2の上方を左右駆動機構69により左右に往復移動されるとともに、前後駆動機構59により前後にスライド移動される。また、サーボモータ81が回転駆動されると、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、印刷ヘッド62に対して一体となって前後にスライド移動される。
【0038】
以上ここまでは、インクジェットプリンタ1の各構成部材について説明したが、以下に、インクジェットプリンタ1を用いて印刷を行う際の各構成部材の作動について、図10に示すフローチャートを参照しながら2つの場合を例示して説明する。なお、印刷開始前において、印刷部50は支持テーブル12の後端部に位置し、また、印刷ユニット60は印刷媒体2の左端部より左方の位置(以下において、ホームポジションと称する)に位置しているものとする。
【0039】
まず、室内温度が低い作業室において、インクジェットプリンタ1を用いて印刷を行う場合を以下に例示して説明する(以下において、低温の場合と称する)。この場合、UVインクの粘度は高くなっており、UVインク同士は未硬化の状態で接してもすぐに滲んだり混ざり合ったりせず、また、印刷媒体2に付着してから平滑化するまでに時間がかかるものと仮定する。
【0040】
ステップ1において、オペレータによって、印刷が施される印刷媒体2の種類および印刷に用いるUVインクの種類が、操作パネル21を介してコントローラー23に入力される。またこのとき、インクジェットプリンタ1が設置されている作業室の室内温度も検出され、コントローラー23に入力される。
【0041】
ステップ2に進み、コントローラー23は、検出された室内温度における印刷に用いるUVインクの平滑化に要する時間を算出する。この算出方法は上述したように、コントローラー23はメモリー内に記憶されたデータベースを参照することにより、まずUVインクの粘度を求め、そしてUVインクの粘度から平滑化に要する時間を求める。
【0042】
ステップ3に進み、ステップ2において得られた平滑化に要する時間を基にして、印刷媒体2に付着した直後に右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lからの紫外線を照射して、印刷媒体2に付着したUVインクを硬化させるか否かの判断を行う。仮にUVインクの粘度が低く平滑化に要する時間が短い場合には、滲み等の発生を抑えるためにも、なるべく付着直後すみやかに紫外線を照射することが好ましく、よって
この場合には、付着直後に紫外線を照射するとの判断がされてステップ5に進む。一方、仮にUVインクの粘度が高く平滑化に要する時間が長い場合には、付着後なるべく時間を空けて平滑化するのを待って紫外線を照射することが好ましく、よってこの場合には、付着直後に紫外線を照射しないとの判断がされてステップ4に進む。上述のように、ここでは平滑化するまでに時間がかかる場合を想定しているので、ステップ3において、UVインクに対して付着直後に紫外線を照射しないとの判断がされてステップ4に進む。
【0043】
ステップ3からステップ4へと進んだ場合、コントローラー23からサーボモータ81に作動信号が出力され、サーボモータ81は作動信号に基づいて回転駆動する。このとき、サーボモータ81において発生した回転駆動力が、駆動軸82に取り付けられた駆動歯車83を介して従動歯車84に伝達される。そして、出力軸85に取り付けられたピニオン86R,86Lが回転駆動され、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、案内溝64,64に沿って後方側にスライド移動される(図3(a)を参照)。
【0044】
ステップ4からステップ5へと進み、ステップ5における印刷手順の一例を、前後駆動装置80の記載を省略した印刷ユニット60の平面図である図4(a)および図4(b)を用いて説明する。印刷手順の概略を説明すると、印刷ユニット60は、左右駆動機構69によって、図4(a)に示すホームポジションから図4(b)に示す印刷媒体2の右端部の右方(以下において、リバースポジションと称する)に移動され、さらにホームポジションに戻るように往復移動される。このとき、印刷媒体2の上方を所定のパス数だけ左右に往復移動しながら、色別印刷ヘッドのノズルから吐出制御されたUVインクが吐出され、印刷媒体2に所望のパターンで付着される。ここでパス数とは、印刷媒体2の同一領域に対して、ノズルからUVインクを吐出させながら通過する回数のことである。さらにこのとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lから、印刷媒体2に向けて紫外線が照射される。
【0045】
ここでは、印刷媒体2の表面において左右に延びる印刷ライン2aに対して、4パスによってUVインクを所望のパターンで付着させる場合について説明する。この印刷ライン2aの後方には、後述するように印刷ライン2aと同一の前後幅となって、所望のパターンでUVインクが付着され未硬化の状態となっている印刷済みライン2bが隣り合っている。
【0046】
1パス目において、印刷ユニット60はホームポジションからリバースポジションまで移動される。このとき、印刷ライン2aに向けてノズルからUVインクが吐出されて付着し、未硬化の状態となっている。さらにこのとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって、仮硬化用の紫外線を発射するように制御されている。よって、印刷済みライン2bに付着して未硬化の状態となっていたUVインクは、仮硬化用の紫外線が照射されてゲル状の半硬化状態に仮硬化される。
【0047】
2パス目において、印刷ユニット60は、リバースポジションからホームポジションまで移動される。このとき、印刷ライン2aに向けてノズルからUVインクが吐出され、1パス目において付着したUVインクに重なるように付着する。しかし、上述したようにUVインクの粘度は高いために、UVインクが未硬化の状態で接しても、ほとんど滲んだり混ざり合ったりしない。さらにこのとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって、紫外線を発射しないように制御されている。2パス目が実行されている間、印刷済みライン2bで仮硬化されていたUVインクは、徐々に平らに拡がっていく。
【0048】
3パス目において、印刷ユニット60は1パス目と同様に移動される。このとき、印刷ライン2aに向けてノズルからUVインクが吐出され、1パス目および2パス目において付着したUVインクに重なるように付着するが、2パス目において説明したように、ほとんど滲んだり混ざり合ったりしない。さらにこのとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって、紫外線を発射しないように制御されている。3パス目が実行されている間、印刷済みライン2bで仮硬化されていたUVインクは徐々に平らに拡がり、3パス目が完了した時点において平滑化したとする。
【0049】
4パス目において、印刷ユニット60は2パス目と同様に移動される。このとき、印刷ライン2aに向けてUVインクが吐出され、1から3パス目において付着したUVインクに重なるように付着するが、2パス目において説明したように、ほとんど滲んだり混ざり合ったりしない。さらにこのとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって、本硬化用の紫外線を発射するように制御されている。よって、4パス目が実行されると、印刷ライン2aには未硬化の状態のUVインクが所望のパターンで付着している。また、印刷済みライン2bで仮硬化されていたUVインクは、平滑化した状態で本硬化用の紫外線が照射されて本硬化され、印刷媒体2に固定されて所望の印刷が施される。
【0050】
4パス目が終了すると、印刷ユニット60は、ホームポジションに位置して静止した状態で、前後駆動機構59によって印刷ライン2a分だけ前方にスライド移動される。その後、上述の1〜4パス目と同様にして、印刷ライン2aの前方に隣接する印刷ラインにUVインクが重ねて付着される。またこのとき、印刷ライン2aに付着して未硬化の状態のUVインクは、上述の印刷済みライン2bと同様に、1パス目において仮硬化用の紫外線が照射され仮硬化され、4パス目において平滑化した状態で本硬化されて印刷媒体2に固定される。このようにUVインクの付着、仮硬化および本硬化を、印刷媒体2の前端部に達するまで繰り返して行うことによって、印刷媒体2に対する印刷は完了してこのフローは終了する。
【0051】
次に、室内温度が高い作業室において、インクジェットプリンタ1を用いて印刷を行う場合を以下に例示して説明する(以下において、高温の場合と称する)。この場合、UVインクの粘度は低くなっており、UVインク同士は未硬化の状態で接すると滲んだり混ざり合ったりし易く、印刷媒体2に付着した後、短時間のうちに平滑化するものと仮定する。
【0052】
上述の低温の場合と同様にして、ステップ1で入力された各データを基にして、ステップ2において平滑化に要する時間を求める。上述のように、ここでは短時間のうちに平滑化する場合を想定しているので、ステップ3において、UVインクに対して付着直後に紫外線を照射するとの判断がされてステップ5に進む。このとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、図3(b)に示すように、案内溝64,64の前方側に位置したままの状態となっている。
【0053】
ステップ5における印刷手順の一例を、前後駆動装置80の記載を省略した印刷ユニット60の平面図である図5(a)および図5(b)を用いて説明する。なお、ここでのパスごとの印刷ユニット60の動作およびUVインクの吐出制御は、上述の低温の場合と同様である。
【0054】
1パス目において、印刷ライン2aに向けてUVインクが吐出される。このとき、左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって仮硬化用の紫外線を発射するように制御され、一方、右UVLEDユニット70Rは紫外線を発射しないように制御されている。よって、印刷ライン2aに付着したUVインクは、仮硬化用の紫外線が照射されて仮硬化された状態となる。
【0055】
2パス目において、1パス目で仮硬化されたUVインクに重なるように、UVインクが吐出されて付着する。ここで、1パス目で付着したUVインクは仮硬化されているので、重なって付着するUVインクは、1パス目で付着したUVインクと混ざり合って滲むことがなく、また表面張力によって弾かれることもない。このとき、右UVLEDユニット70Rは、コントローラー23によって仮硬化用の紫外線を発射するように制御され、一方、左UVLEDユニット70Lは紫外線を発射しないように制御されている。よって、2パス目において印刷ライン2aに付着したUVインクは、仮硬化用の紫外線が照射されて仮硬化された状態となる。
【0056】
3パス目において、1パス目および2パス目で仮硬化されたUVインクに対して重なるように、UVインクが吐出されて付着する。ここで、1パス目および2パス目で付着したUVインクは仮硬化されているので、重なって付着するUVインクは、1パス目および2パス目で付着したUVインクと混ざり合って滲むことがなく、また表面張力によって弾かれることもない。このとき、左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって仮硬化用の紫外線を発射するように制御され、一方、右UVLEDユニット70Rは紫外線を発射しないように制御されている。よって、3パス目において印刷ライン2aに付着したUVインクは、仮硬化用の紫外線が照射されて仮硬化された状態となる。
【0057】
4パス目において、1パス目から3パス目で仮硬化されたUVインクに対して重なるように、UVインクが吐出されて付着する。ここで、1パス目から3パス目で付着したUVインクは仮硬化されているので、重なって付着するUVインクは、1パス目から3パス目で付着したUVインクと混ざり合って滲むことがなく、表面張力によって弾かれることもない。このとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって、本硬化用の紫外線を発射するように制御されている。よって、1パス目から4パス目において印刷ライン2aに付着したUVインクは、本硬化用の紫外線が照射されて本硬化された状態となる。ここで用いるUVインクは、上述のように印刷媒体2に付着後、短時間で平滑化するので、本硬化用の紫外線が照射される際には十分に平滑化しており、よって、平滑化した状態で印刷媒体2に固定される。上述の1パス目から4パス目までの動作が、印刷媒体2の印刷領域全体にわたって行われることによって、印刷媒体2に対する印刷が完了してこのフローは終了する。
【0058】
ここで、第1の実施例に係るインクジェットプリンタ1の効果についてまとめると、以下のようになる。第1に、前後駆動装置80によって、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lが、印刷ヘッド62の左右側方から後方へスライド移動可能に構成されている。例えば上述の低温の場合のように、UVインクが印刷媒体2に付着してから平滑化するまでに時間がかかるような場合、前後駆動装置80により右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lを後方へスライド移動させる。このように移動させることにより、印刷ユニット60が前後駆動機構59によって前方に移動される前の左右往復移動において付着したUVインクに対して、紫外線を照射可能となる。つまり、UVインクが付着されてから紫外線が照射されるまでの時間を空けることができる。よって、この間に、印刷媒体2に付着したUVインクは拡がって平滑化できるので、UVインクが平滑化した状態で紫外線を照射して印刷媒体2に固定可能となり、印刷品質を向上させることができる。
【0059】
第2に、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、前後駆動装置80によって印刷ヘッド62の左右側方に位置した状態、または後方へスライド移動された状態とすることが可能となっている。よって、例えばUVインクが印刷媒体2に付着してから平滑化に要する時間を基にして、短時間で平滑化する場合(例えば、上述の高温の場合)には各UVLEDユニットを印刷ヘッド62の左右側方に位置させ、一方、平滑化に時間がかかる場合(例えば、上述の低温の場合)には後方へスライド移動させる制御が可能となっている。このように、平滑化に要する時間に応じて各UVLEDユニットの前後位置を制御して、紫外線の照射タイミングを制御するとともに、このとき照射される紫外線の強度(仮硬化用または本硬化用)を制御することにより、UVインクを印刷媒体2の表面に平滑化した状態で且つ滲まないように重ねて固定することができ、印刷品質を向上させることが可能となる。
【実施例2】
【0060】
以下において、印刷ユニット90が搭載された第2の実施例に係るインクジェットプリンタ5について説明する。印刷ユニット90の前後駆動装置80´は、図6(a)および図6(b)に示すように、上述の実施例1で説明した前後駆動装置80を変形した構成となっている。よって、上述の実施例1と同一の部材には同一の番号を付して説明は省略し、以下において、上述の実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0061】
印刷ユニット90の前後駆動装置80´は、サーボモータ81R、駆動軸82R、駆動歯車83R、従動歯車84R、出力軸85R、ピニオン86R、サーボモータ81L、駆動軸82L、駆動歯車83L、従動歯車84L、出力軸85Lおよびピニオン86Lを主体に構成される。そして、サーボモータ81Rが駆動されると、駆動軸82R、駆動歯車83R、従動歯車84R、出力軸85Rおよびピニオン86Rを介して、右UVLEDユニット70Rが前後にスライド移動する構成となっている。同様に、サーボモータ81Lが駆動されると、駆動軸82L、駆動歯車83L、従動歯車84L、出力軸85Lおよびピニオン86Lを介して、左UVLEDユニット70Lが前後にスライド移動する構成となっている。よって、コントローラー23がサーボモータ81Rおよびサーボモータ81Lを独立して作動制御することにより、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lがそれぞれ独立して前後にスライド移動可能となっている。なお、インクジェットプリンタ5が印刷を行っていないとき、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、図6(b)に示すように案内溝64,64の前方側に位置している。
【0062】
以上、第2の実施例に係るインクジェットプリンタ5の構成部材について説明したが、以下に、インクジェットプリンタ5を用いて印刷を行う際の各構成部材の作動について、図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下においては、室内温度が高い作業室で、インクジェットプリンタ5を用いて印刷を行う場合を例示して説明する。この場合UVインクは粘度が低くなっており、UVインク同士が未硬化の状態で接すると滲んだり混ざり合ったりし易いが、印刷媒体2に付着した後平滑化するまでに多少時間がかかるものと仮定する。
【0063】
上述の実施例1の場合と同様にして、ステップ1で入力された各データを基にして、ステップ2において平滑化に要する時間を求めてステップ3に進む。上記仮定のように、この場合のUVインクは滲みやすいが平滑化に多少時間がかかるため、印刷媒体2に付着直後に仮硬化させた後、付着直後ではなく平滑化するのを待って本硬化させるように紫外線を照射することが好ましい。よって、ステップ3からステップ4へと進み、コントローラー23から例えばサーボモータ81Lに作動信号が出力され、サーボモータ81は作動信号に基づいて回転駆動する。そうすることにより、左UVLEDユニット70Lが、案内溝64に沿って後方側にスライド移動される(図6(a)を参照)。
【0064】
ステップ4からステップ5へと進み、印刷媒体2に対して印刷が行われる際の手順の一例を、前後駆動装置80´の記載を省略した印刷ユニット90の平面図を示した図7(a)および図7(b)を用いて説明する。また、図8に、UVインクがパスごとに重ねられていく際の断面図を示しており、図8も併せて参照しながら説明する。以下に、印刷媒体2の表面の印刷ライン2aに対して、UVインクを所望のパターンで付着させる場合を説明する。また、この印刷ライン2aの後方には、所望のパターンで付着したUVインクが仮硬化された状態となっている印刷済みライン2bが隣り合っているとする。なお、印刷ユニット90の左右への往復移動(パス数)、および各パスにおけるノズルからのUVインクの吐出制御は、上述の実施例1と同様であるとする。
【0065】
1パス目において、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって紫外線を発射しないように制御されている。1パス目が実行されると、印刷ライン2aに向けてUVインク62aが吐出されて、未硬化の状態で付着ている(図8(a)を参照)。また、1パス目が実行されている間、印刷済みライン2bに付着して仮硬化されたUVインクは、印刷媒体2の表面で徐々に拡がっていく。
【0066】
2パス目において、右UVLEDユニット70Rは、コントローラー23によって仮硬化用の紫外線を発射するように制御され、左UVLEDユニット70Lは紫外線を発射しないように制御されている。2パス目が実行されると、印刷ライン2aに向けてUVインク62bが吐出され付着するとともに、UVインク62aおよびUVインク62bは、仮硬化用の紫外線が照射されて仮硬化される(図8(b)を参照)。このとき、UVインク62bは印刷ライン2aに付着したとき、未硬化のUVインク62aと接することになるが、付着直後に仮硬化用の紫外線が照射されて仮硬化されるので、滲んだり混ざり合うことがほとんどない。また、2パス目が実行されている間、印刷済みライン2bに付着して仮硬化されたUVインクは、印刷媒体2の表面で徐々に拡がっていく。
【0067】
3パス目において、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、コントローラー23によって紫外線を発射しないように制御されている。3パス目が実行されると、印刷ライン2aに向けてUVインク62cが吐出されて、仮硬化されたUVインク62aおよびUVインク62bに重なるように付着し、未硬化の状態となっている(図8(c)を参照)。UVインク62cは、UVインク62aおよびUVインク62bと親和性が良いために互いに弾き合うことがなく徐々に拡がり、また、混ざり合って滲むこともない。また、3パス目が完了したとき、印刷済みライン2bに付着して仮硬化されたUVインクは、印刷媒体2の表面で拡がって平滑化した状態となっているものとする。
【0068】
4パス目において、右UVLEDユニット70Rは、コントローラー23によって仮硬化用の紫外線を発射するように制御され、左UVLEDユニット70Lは、本硬化用の紫外線を発射するように制御されている。4パス目が実行されると、印刷ライン2aに向けてUVインク62dが吐出され、仮硬化されたUVインク62a、UVインク62bおよびUVインク62cに重なるように付着する。このとき、UVインク62dは印刷ライン2aに付着したとき、未硬化のUVインク62cと接することになるが、付着直後に仮硬化用の紫外線が照射されてUVインク62cおよびUVインク62dは仮硬化されるので、これらは滲んだり混ざり合うことがほとんどない(図8(d)を参照)。また、印刷済みライン2bに付着して仮硬化されたUVインクは、本硬化用の紫外線が照射されて、平滑化した状態で本硬化されて印刷媒体2に固定される。このようにして、印刷済みライン2bに対する印刷が完了する。このようにUVインクの付着、仮硬化および本硬化を、印刷媒体2の前端部に達するまで繰り返して行うことによって、印刷媒体2に対する印刷は完了してこのフローは終了する。
【0069】
ここで、第2の実施例に係るインクジェットプリンタ5の効果についてまとめると、以下のようになる。前後駆動装置80´によって、右UVLEDユニット70Rと左UVLEDユニット70Lとを、キャリッジ63上において異なった前後位置に位置させることが可能となっている。そのため、例えば一方のUVLEDユニットを印刷ヘッド62の左右側方に位置させ、他方のUVLEDユニットを後方側にスライド移動させて位置させて、紫外線を照射して印刷を施すことができる。このように位置させた上で、照射する紫外線の強度を制御して、例えば印刷ヘッド62の左右側方に位置したUVLEDユニットから仮硬化用の紫外線を照射させて、印刷媒体2に付着した直後のUVインクを仮硬化させることにより、UVインク同士が滲んだり混ざり合ったりすることを防止できる。また、仮硬化されたUVインクは、印刷ユニット60が前後駆動機構59によって前方に移動された後の左右往復移動において、後側方にスライド移動されたUVLEDユニットから本硬化用の紫外線が照射されることによって本硬化される。そのため、UVインクは、仮硬化されてから時間を空けた後に本硬化されるので、この間に十分に平滑化できる。よって、UVインクを、印刷媒体2の表面に平滑化した状態で且つ滲まないように重ねて固定することができ、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0070】
上述の実施例において、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、前後方向にスライド移動される構成に限定されない。例えば、図9(a)に示すように、各UVLEDユニットを、印刷ヘッド62に対して左右方向へ離れるようにスライド移動させる構成も可能である。このように構成すると、UVインクが印刷媒体2に付着してから紫外線が照射されるまでの時間間隔を変えることができるので、室内温度、UVインクの種類および印刷媒体2の種類等に応じて、最適なタイミングで紫外線を照射可能となる。また、例えば図9(b)に示すように、各UVLEDユニットを印刷ヘッド62に対して後方且つ左右方向(斜め後方)へ離れるようにスライド移動させる構成も可能である。このように構成した場合、UVインクが印刷媒体2に付着してから紫外線が照射されるまでの時間間隔を長く空けることができるので、この間にUVインクは確実に平滑化する。さらに、各UVLEDユニットは、印刷ヘッド62に対して斜め後方へ遠ざかるように離れるので、例えば各UVLEDユニットから照射された紫外線の一部が、印刷媒体2の表面で反射してノズルに照射されて発生する「ノズルの目詰まり」を低減することができる。また、このノズルの目詰まりを低減させる効果については、図9(a)に示すように移動させた場合にも言える。
【0071】
また、上述の第2の実施例において、図7(a)に示すように、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、印刷ライン2aまたは印刷済みライン2bに紫外線を照射可能となるようにスライド移動される構成に限定されない。例えば、印刷済みライン2bの後方に隣接する印刷済みライン2cに対して、紫外線を照射可能となるようにスライド移動される構成も可能である。このように構成すると、UVインクが印刷媒体2に付着してから紫外線が照射されるまでの時間間隔をより長く空けることができ、この間にUVインクは確実に平滑化する。そのため、例えば極端にUVインクの粘度が高い場合においても、平滑化した状態で紫外線を照射して硬化させて印刷媒体に固定可能となる。また、第1の実施例においても同様である。
【0072】
さらに、上述の実施例1および2において、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lの紫外線の照射制御は、印刷媒体2に付着したUVインクに対して仮硬化用の紫外線を照射して、平滑化した後に本硬化されるように照射制御されれば良く、上述の制御方法に限定されない。
【0073】
上述の実施例1および2において、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lから発射される紫外線は、仮硬化用または本硬化用の2段階の強度となっているが、この構成に限定されない。例えば、3段階以上に紫外線の強度が制御される構成でも良く、また、連続的に紫外線の強度が制御される構成でも良い。
【0074】
また、上述の実施例1および2において、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lは、サーボモータによって前後にスライド移動される構成となっているが、この構成に限定されない。例えば、エアシリンダーを用いて、各UVLEDユニットを前後へスライド移動させる構成でも良い。さらに、例えば2つのエアシリンダーを用いることにより、各UVLEDユニットを独立して前後にスライド移動させることも可能となる。
【0075】
上述の実施例1および2において、印刷ヘッド62、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lが、キャリッジ63に搭載されている場合を例示して説明したが、この構成に限定されない。印刷ヘッド62に対して、右UVLEDユニット70Rおよび左UVLEDユニット70Lを独立して相対移動させることができるのであれば、必ずしもキャリッジ63に搭載している必要はない。つまり、印刷ヘッド62と右UVLEDユニット70R,左UVLEDユニット70Lとが、相対移動可能に独立して例えばガイドレール52に支持されていても良い。
【0076】
上述の実施例1および2において、検出された室内温度に対応するUVインクの粘度を求め、さらにUVインクの粘度を基にして平滑化に要する時間を求める場合(図10のステップ2等を参照)を例示して説明したが、必ずしもこのようにして平滑化に要する時間を求める必要はない。例えば、室内温度とUVインクの粘度に応じた平滑化に要する時間とを対応させた「室内温度−平滑化時間対応テーブル」を、データベースとしてコントローラー23のメモリーに記憶させておき、検出された室内温度からデータベースを参照して直接平滑化時間を求めるように構成しても良い。
【0077】
さらに、上述の実施例1および2において、バキュームテーブル12a上に固定保持された印刷媒体2に印刷を行う構成(いわゆるフラットベッド)となっているが、この構成に限定されず、例えば、送り出し機構および巻き取り機構を追加して設けることにより、シート状の印刷媒体を搬送させながら印刷を行うインクジェットプリンタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタを示した斜視図である。
【図2】第1の実施例に係る印刷ユニットの内部(一部省略)を示した斜視図である。
【図3】(a)は各UVLEDユニットが後方にスライド移動された状態を示した印刷ユニットの平面図で、(b)は印刷を行っていないときの印刷ユニットの平面図である。
【図4】第1の実施例に係る印刷ユニットを用いて印刷を行う際の作動を説明するための平面図であって、(a)は1パス目および3パス目、(b)は2パス目および4パス目を示している。
【図5】第1の実施例に係る印刷ユニットを用いて印刷を行う際の作動を説明するための平面図であって、(a)は1パス目および3パス目、(b)は2パス目および4パス目を示している。
【図6】第2の実施例に係る印刷ユニットを示した平面図で、(a)は左UVLEDユニットが後方にスライド移動された状態を示した印刷ユニットの平面図で、(b)は印刷を行っていないときの印刷ユニットの平面図である。
【図7】第2の実施例に係る印刷ユニットを用いて印刷を行う際の作動を説明するための平面図であって、(a)は1パス目および3パス目、(b)は2パス目および4パス目を示している。
【図8】(a)から(d)へと、順にUVインクがパスごとに重ねられていく過程を示した断面図である。
【図9】別の実施例の印刷ユニットを示した平面図である。
【図10】本発明に係る印刷方法を示したフローチャートである。
【図11】(a)は従来の印刷ユニットを示した平面図であり、(b)は完全に硬化されたUVインクの上に別のUVインクが付着した状態を示した断面図であり、(c)は硬化されていないUVインクの上に別のUVインクが付着した状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 インクジェットプリンタ
2 印刷媒体
12a バキュームテーブル(媒体支持部材)
60 印刷ユニット
62 印刷ヘッド
63 キャリッジ
70R 右UVLEDユニット(紫外線照射装置)
70R 左UVLEDユニット(紫外線照射装置)
80 前後駆動装置(装置移動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を支持する媒体支持部材と、
前記媒体支持部材に支持された印刷媒体の表面に向けてインクを吐出して付着させる印刷ヘッドと、
前記媒体支持部材に支持された印刷媒体の表面に紫外線を照射して前記印刷媒体の表面に付着したインクを硬化させる紫外線照射装置とを有したインクジェットプリンタにおいて、
前記印刷ヘッドに対して前記紫外線照射装置を独立して相対移動させる装置移動手段を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−10360(P2013−10360A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−206797(P2012−206797)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【分割の表示】特願2008−71799(P2008−71799)の分割
【原出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】