説明

インクジェットプリンタのワイパ制御装置

【課題】プリントヘッドのノズル配置面を払拭するワイパが被印刷物と接触干渉することを防止できるインクジェットプリンタが望まれている。
【解決手段】ワイパ制御装置30は、所定速度Vで搬送される被印刷物Cにインク滴を噴きつけるプリントヘッド2をクリーニングするワイパ31の制御装置であって、プリントヘッド2の上流側位置で、且つ、干渉領域Mに在るワイパ31が非干渉領域Pに退避するまでにはプリントヘッド2に到着しない距離の位置に配置されて被印刷物Cの通過を検知する上流側通過検知手段5と、プリントヘッド2の下流側位置に配置されて被印刷物Cの通過を検知する下流側通過検知手段6と、上流側通過検知手段5および下流側通過検知手段6による通過検知に基づいて、それらの間の搬送経路Aに被印刷物Cが在ることを検知する第2被印刷物存在検知手段と、搬送経路A内の被印刷物Cの存在が検知されたときはワイパ31を非干渉領域Pに退避させているワイパ制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の被印刷物にインク滴を噴きつけるプリントヘッドを備えるインクジェットプリンタに係り、特にプリントヘッドのノズル配置面の払拭制御を行なうワイパ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインクジェットプリンタを図6に示す。図示のインクジェットプリンタは、搬送される被印刷物Cの側方位置に配備されたプリントヘッド2を備えている。プリントヘッド2の先端にはノズルNが配置されている。ノズルNは、コンベアBに載置されて一定の速度Vで搬送される被印刷物Cにインク滴を噴きつけて印刷するようになっている。この場合、コンベアB上の被印刷物Cは2本の1点鎖線で囲まれた領域(干渉領域M)内で搬送される。
一方、プリントヘッド2は、ノズルNが配置されているノズル配置面2aを払拭してクリーニングを行なうワイパ31を備えている。ワイパ31は、図中の実線で示されるように、搬送中の被印刷物Cと干渉するおそれのある干渉領域Mに進出してノズル配置面2aを払拭する。また、ワイパ31は、図中の2点鎖線で示されるように、プリントヘッド払拭時以外は搬送中の被印刷物Cと干渉しない非干渉領域P(ワイパ31寄りの1点鎖線Qの外側領域)に退避している。
このように、プリントヘッドのノズル配置面をクリーニングするワイパを備えたインクジェットプリンタとしては、例えば下記の特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−41141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイパ31による拭き取り動作は複数のシーケンス動作により実行され、ワイパ31は数秒間程度であるが干渉領域Mに滞在する。また、ワイパ31が干渉領域Mから非干渉領域Pに移動するまでの時間も多少かかる(例えば3秒間程度)。そして、数多くの被印刷物が密接して搬送されているときに、ワイパ31に対し拭き取り指令がかかることもある。
これらに起因して、非干渉領域Pへのワイパ31の退避が間に合わず、ワイパ31に被印刷物Cが衝突することがあった。このように被印刷物Cとワイパ31が衝突すると、ワイパ31に付着していたインクが被印刷物Cを汚染したり、ひいては被印刷物Cまたはワイパ31を破損させて大きな被害を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、プリントヘッドのノズル配置面を払拭するために被印刷物の搬送経路に進出しなければならないワイパが被印刷物と接触干渉することを防止できるインクジェットプリンタのワイパ制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタのワイパ制御装置は、所定速度で搬送される被印刷物にインク滴を噴きつけるプリントヘッドのノズル配置面に摺接するワイパを備え、プリントヘッドの払拭に際し搬送中の被印刷物と干渉しない非干渉領域から前記被印刷物と干渉する干渉領域にワイパを進出させてノズル配置面を払拭させるインクジェットプリンタのワイパ制御装置において、プリントヘッドに対し被印刷物搬送方向の上流側位置で、且つ、干渉領域に在るワイパが非干渉領域に退避するまでの時間以上に、被印刷物がプリントヘッドまで搬送される時間として予め設定された所定搬送時間がかかる位置に配置されて、被印刷物の通過を検知する上流側通過検知手段と、上流側通過検知手段が被印刷物の通過を検知したときから計時を行なう計時手段と、計時手段により計時された時間が前記所定搬送時間を超えていないときは上流側通過検知手段とプリントヘッドの間の搬送経路に被印刷物が在ることを検知する第1被印刷物存在検知手段と、第1被印刷物存在検知手段により前記搬送経路内の被印刷物の存在が検知されたときはワイパを非干渉領域に退避させているワイパ制御手段とを具備して成ることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明に係るインクジェットプリンタのワイパ制御装置は、所定速度で搬送される被印刷物にインク滴を噴きつけるプリントヘッドのノズル配置面に摺接するワイパを備え、プリントヘッドの払拭に際し搬送中の被印刷物と干渉しない非干渉領域から前記被印刷物と干渉する干渉領域にワイパを進出させてノズル配置面を払拭させるインクジェットプリンタのワイパ制御装置において、プリントヘッドに対し被印刷物搬送方向の上流側位置で、且つ、干渉領域に在るワイパが非干渉領域に退避するまでの時間以上にプリントヘッドまでの被印刷物の搬送時間がかかる位置に配置されて、被印刷物の通過を検知する上流側通過検知手段と、プリントヘッドに対し被印刷物搬送方向の下流側位置で、且つ、ワイパが干渉しない位置に配置されて被印刷物の通過を検知する下流側通過検知手段と、上流側通過検知手段による被印刷物の通過検知および下流側通過検知手段による被印刷物の通過検知に基づいて、上流側通過検知手段と下流側通過検知手段の間の搬送経路に被印刷物が在ることを検知する第2被印刷物存在検知手段と、第2被印刷物存在検知手段により前記搬送経路内の被印刷物の存在が検知されたときはワイパを非干渉領域に退避させているワイパ制御手段とを具備して成るものである。
【0008】
そして、請求項2の構成における第2被印刷物存在検知手段が、計数を行なうカウント手段と、上流側通過検知手段により被印刷物の通過が検知されたときにカウント手段により計数されるカウント数を増やすカウント数増加手段と、下流側通過検知手段により被印刷物の通過が検知されたときにカウント手段により計数されるカウント数を減らすカウント数減少手段とを備え、カウント数増加手段およびカウント数減少手段により増減されたカウント数に基づいて、上流側通過検知手段と下流側通過検知手段の間の搬送経路内に被印刷物が在ることを検知するように構成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、上流側通過検知手段が被印刷物の通過を検知したときから計時手段が計時を行ない、計時された時間が、上流側通過検知手段からプリントヘッドまで搬送される被印刷物の所定搬送時間を超えていないときは、第1被印刷物存在検知手段が上流側通過検知手段とプリントヘッドの間の搬送経路内に被印刷物が在ると検知する。このように搬送経路内に被印刷物が在るときは、ワイパ制御手段がワイパを非干渉領域に退避させて干渉領域へ進出させないので、ワイパが被印刷物と接触干渉することを防ぐことができる。
【0010】
また、上流側通過検知手段に加えて、プリントヘッドに対し被印刷物搬送方向の下流側位置に下流側通過検知手段を設けたものでは、搬送経路に被印刷物が残っているか否かを下流側通過検知手段の通過検知により検知することができる。従って、例えば上流側通過検知手段と下流側通過検知手段の間の搬送経路内に被印刷物が残っている状態で被印刷物の搬送が停止され、その後搬送が再開されるといった場合でも、搬送経路内の被印刷物が下流側通過検知手段を通過するまではワイパを退避させたままで払拭動作は行なわないので、ワイパと被印刷物の接触干渉を確実に防ぐことができる。
【0011】
そして、請求項2における第2被印刷物存在検知手段が、カウント数増加手段とカウント数減少手段を備えるものでは、上流側通過検知手段による被印刷物の通過検知の際に、カウント数増加手段がカウント手段により計数されるカウント数を増やし、下流側通過検知センサによる通過検知の際に、カウント数減少手段がカウント数を減らすので、増減により得られたカウント手段のカウント数に基づいて、例えば0の値以外のときは、上流側通過検知手段と下流側通過検知手段の間の搬送経路内に被印刷物が在ると判定するというように、搬送経路内における被印刷物の存在検知を簡素で安価な構成により実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。図1は本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタとワイパ制御装置と被印刷物を示す概略斜視図、図2は図1に対応した平面構成図である。但し、図6に示した従来技術と同一の構成要素には、同一の符号を付すとともにその詳細な説明を省略することがある。
各図において、この実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、紙箱などで例示される被印刷物C(C(1)〜C(4))を矢印D方向に搬送するコンベアBの側方に配置された、例えばインクジェット式のプリントヘッド2を備えている。プリントヘッド2は例えばその先端のノズル配置面2aに多数のノズルN,N,N,・・・が縦方向に列設されたドットマトリクスタイプの構成であり、コンベアB上を搬送される被印刷物Cの側面にノズルN,N,N,・・・からインク滴U(図3(c)参照)を吹き付けて文字や図形のフォントFを印字するようになっている。プリントヘッド2は、床上などに設置された支持フレームで固定支持されている。また、インクジェットプリンタ1は、プリントヘッド2が内蔵するピエゾ素子を作動させてプリントヘッド2に印字動作を実行させる印字駆動部3を備えている。印字駆動部3は、各ノズルNに対応したプリントヘッド2のピエゾ素子に対し制御部4(後で詳述)からの指令信号に応じてそれぞれ駆動電源を出力する。
【0013】
コンベアBは例えば無端ベルトが左右のローラ26,26(一方のローラ26は図示省略)に掛け回されたものであり、ローラ26の駆動により周回走行する。ローラ26は、搬送速度センサ11により検出されるコンベアBの速度Vを一定とするように回転速度が制御される。そして、プリントヘッド2よりも被印刷物Cの搬送方向上流側(矢印Dと反対の方向)であってコンベアBの側方位置には、被印刷物Cの前端CFの通過を検知する上流側通過検知センサ5(上流側通過検知手段の例)が配備されている。この上流側通過検知センサ5は、干渉領域Mに在るワイパ31が非干渉領域Pに退避するまでの時間よりも、被印刷物Cが上流側通過検知センサ5を通過してプリントヘッド2まで搬送されるにかかる所定搬送時間Tのほうが長くなる位置(プリントヘッド2から距離Lぶん離れた1点鎖線H1で示す位置)に配置されている。
【0014】
この場合、干渉領域Mに在るワイパ31が非干渉領域Pに退避完了するまでの時間を複数回計測してそれらの平均時間を算出し、算出した平均退避時間にいくぶんかの余裕を付加した値(例えば、平均退避時間を1.2倍した値)を前記の所定搬送時間Tとした。この所定搬送時間Tのデータは操作者により設定入力手段7から入力されて演算部8に設定され記憶手段9に格納されて、後で述べる別の実施形態の制御に用いられる。更に、この所定搬送時間Tに一定の速度Vを乗じることにより、前記の距離Lが得られる。
一方、下流側通過検知センサ6(下流側通過検知手段の例)は、プリントヘッド2に対し被印刷物Cの搬送方向下流側位置に配置されている。当然に、その位置はワイパ31が干渉しない位置(1点鎖線H2で示す位置)である。この下流側通過検知センサ6は被印刷物Cの後端CEの通過を検知する。尚、下流側通過検知センサ6はワイパ31と干渉しない範囲で、極力プリントヘッド2に近い位置に配置することが望ましい。
【0015】
これらの上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6としては、搬送中の被印刷物Cが所定位置(図2中の1点鎖線H1で示す位置と1点鎖線H2で示す位置)を通過したことを検知するものであれば特に限定されないが、ここでは例えば光電管式のセンサを採用してある。すなわち、上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6が光電管をそれぞれ内蔵し、コンベアBをはさんだ上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6の対面位置に光源(不図示)をそれぞれ配置し、搬送中の被印刷物Cが光源からの光を遮光したときに被印刷物Cの通過を検知するようになっている。尚、上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6に光源および光電管の双方をそれぞれ設け、光源からの光が被印刷物Cの外面に反射して光電管で検出されたときに被印刷物Cの通過を検知するような構成であっても構わない。この例において、上流側通過検知センサ5の検知信号波形は被印刷物Cの前端CFが通過すると立ち下り、下流側通過検知センサ6の検知信号波形は被印刷物Cの後端CEが通過すると立ち上がるようになっている(図5参照)。
【0016】
そして、ワイパ制御装置30は、プリントヘッド2のノズル配置面2aに摺接するワイパ31を有するヘッド払拭機構12と、ワイパ31の駆動用の電源をヘッド払拭機構12に出力するワイパ駆動部13と、ワイパ31の駆動制御に係る指令信号をワイパ駆動部13に出力する制御部4を備えている。
前記のヘッド払拭機構12は、図3に示すように、プリントヘッド2のノズル配置面2aに摺接して払拭するワイパ31を有している。そして、プリントヘッド2内には直線状のガイド溝35が形成されている。このガイド溝35の一端はプリントヘッド2の側面に開口している。ガイド溝35内にはスライダ34が摺動自在に配備され、スライダ34はプリントヘッド2内に配備された駆動源m1の駆動によりガイド溝35内を往復移動するようになっている。更に、スライダ34には垂直方向の回転軸33が回動自在に軸支されている。回転軸33はプリントヘッド2内に配備された駆動源m2の駆動により回転する。回転軸33には平面U字状に形成されたアーム部32の一端が固設され、アーム部32の他端にワイパ31が固設されている。ワイパ31は例えば合成ゴム製でブレード状に形成されており、摺接側が平断面先細に形成されている。そして、ガイド溝35の開口部近傍に位置する、コンベアB端縁寄りのプリントヘッド2の側壁は内向きに陥入して形成されている。これにより、旋回してきたアーム部32が側壁と接触干渉することを避ける非干渉空間36が形成される。
【0017】
前記のように構成されているヘッド払拭機構12において、ノズル配置面2aのクリーニングに際しては、まず駆動源m2の駆動により回転軸33が回転してアーム部32がガイド溝35と平行の姿勢にされる。そして、駆動源m1の駆動によりスライダ34がガイド溝35の奥部に移動する。このとき、図3(a)に示すように、ワイパ31はノズルNよりも搬送方向下流側位置のノズル配置面2a上にあり、ワイパ31の一部は干渉領域Mに進出している。そして、回転軸33には図中時計回り方向の弾性付勢力をかけておく。この弾性付勢力は、ワイパ31をノズル配置面2a上に摺動可能に密接させ、かつ、十分な払拭を行なえる力であれば足りる。
【0018】
続いて、図3(a)の状態から、駆動源m1を駆動してスライダ34をガイド溝35の開口部近傍位置まで移動させる。すると、図3(b)に示すように、ワイパ31はノズル配置面2a上を矢印S方向に摺動して残存インクを払拭する。尚、図3(a)と図3(b)に示した払拭動作は1回に限らず、複数回繰り返しても構わない。
そして、払拭動作時以外は、図3(c)に示すように、図3(b)の状態から駆動源m2が回転軸33を矢印R方向に回転させることにより、アーム部32およびワイパ31が非干渉領域Pに退避する。このような退避完了状態のときに、被印刷物Cが干渉領域Mを通過し、ノズルNからのインク滴Uが被印刷物Cの表面に噴きつけられて印刷されるのである。
【0019】
前記の制御部4は、図4に示すように、例えばマイクロプロセッサユニットで具現化される演算部8と、ROMやRAMなどで具現化される記憶手段9と、データバス10を備えている。データバス10のデータ入力側には、上流側通過検知センサ5、下流側通過検知センサ6、設定入力手段7、および搬送速度センサ11が信号入力可能に接続されている。設定入力手段7としては、搬送速度Vと所定搬送時間Tを操作者が設定入力できるものであれば特に限定されないが、例えばキーボード、マウス、タブレットなどが例示される。データバス10のデータ出力側には、プリントヘッド2駆動用の印字駆動部3、ヘッド払拭機構12駆動用のワイパ駆動部13、および、拭き取り中や拭き取り禁止中の状況を外部に出力するための外部出力装置14が信号出力可能に接続されている。
【0020】
演算部8は、後でそれぞれ詳述するように、計時手段20、第1被印刷物存在検知手段21A、第2被印刷物存在検知手段21B、およびワイパ制御手段25のそれぞれの機能を備えている。そのうち、第2被印刷物存在検知手段21Bは、それぞれ後述する、カウント手段27、カウント数増加手段22、カウント数減少手段23、および存在判定手段24の機能を備えている。また、第1被印刷物存在検知手段21Aは存在判定手段24の機能を備えている。これらの各機能はプログラムデータとして記憶手段9に予め格納されており、必要に応じて使用される。
【0021】
上記のように構成されたインクジェットプリンタ1およびワイパ制御装置30の動作を説明する。この実施形態は請求項2と請求項3の発明に対応するものである。この例では、図1および図2のように、被印刷物C(1)〜C(4)がコンベアB上に載置されて矢印D方向に一定の速度Vで搬送されている。そして、被印刷物C(1)が図1および図2中の1点鎖線H1で示した位置に到達する前の状態から説明する。カウンタにおける被印刷物存在数は初期設定により0値にリセットされている。また、この時点では、拭き取り動作禁止指令信号、拭き取り指令信号、拭き取りシーケンス動作指令信号、および拭き取り中表示指令信号はいずれも入出力されていない。
【0022】
そこで、図5のタイムチャートに示すように、まず、被印刷物C(1)の前端CFの通過が上流側通過検知センサ5により検知されると(信号立下り部、時点a)、第2被印刷物存在検知手段21Bのカウント数増加手段22によりカウント手段27のカウント数が1つ増やされて1の値となる。このカウント数は上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6の間の搬送経路Aに在る被印刷物Cの存在数に相当する。すなわち、カウント数増加手段22の機能は、上流側通過検知センサ5により被印刷物Cの通過が検知されたときにカウント手段27のカウント数を1つ増やす。すると、第2被印刷物存在検知手段21Bの存在判定手段24は、搬送経路Aに被印刷物Cが1つあることを検知する。同時に、演算部8のワイパ制御手段25は拭き取り動作禁止指令信号を印字駆動部3に出力してヘッド払拭機構12による拭き取り動作を禁止する。すなわち、ワイパ制御手段25は、第2被印刷物存在検知手段21Bにより搬送経路A内に在る被印刷物Cの存在が検知されたときはワイパ31を非干渉領域Pに退避させたままとし干渉領域Mへは進出させない。続いて、被印刷物C(2),C(3)についてもそれぞれの前端CFの通過が上流側通過検知センサ5により検知されると(時点b、時点c)、カウント数が増やされて3の値となる。その後、外部からワイパ駆動部13に対し拭き取り指令信号が入力されても(時点d)、演算部8で拭き取り動作禁止指令信号が立てられているので、ワイパ駆動部13は拭き取り動作を実行させない。
【0023】
そのうち、被印刷物C(1)の後端CEの通過が下流側通過検知センサ6により検知されると(信号立上がり部、時点e)、カウント数が3から1つ減らされて2の値となる。すなわち、カウント数減少手段23の機能は、下流側通過検知センサ6により被印刷物Cの通過が検知されたときにカウント手段27によるカウント数を減らす。次に、被印刷物C(4)の前端CFの通過が上流側通過検知センサ5により検知されて(時点f)、カウント数が3の値に増やされる。そうして、被印刷物C(2),C(3),C(4)のそれぞれの後端CEの通過が下流側通過検知センサ6により順次検知されることにより(時点g、時点h、時点i)、カウント数が1つずつ減らされて0の値となる。これにより、上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6の間の搬送経路Aに被印刷物Cがないことが存在判定手段24により判定される。
【0024】
そして、時点iにおいて、演算部8からの拭き取り動作禁止指令信号が解除される。このとき、まだ外部からの拭き取り指令信号は入力されているので、演算部8はワイパ駆動部13に拭き取りシーケンス動作指令信号を出力し、ワイパ駆動部13はヘッド払拭機構12の駆動源m1と駆動源m2を駆動させてワイパ31にプリントヘッド2のノズル配置面2aの拭き取りに係るシーケンス動作を行なわせる。同時に、プリントヘッド2の拭き取り中である旨を表示させる拭き取り中表示指令信号が演算部8から外部出力装置14に出力され、外部出力装置14はその旨に係る信号を外部の例えば表示装置に発信し、表示装置によりその旨が表示される。そのうち、外部からの拭き取り指令信号の入力が終了すると(時点j)、演算部8からの拭き取りシーケンス動作指令信号の出力が停止されてヘッド払拭機構12によるプリントヘッド2の拭き取り動作が終了し、ワイパ31が非干渉領域Pに退避する。同時に、演算部8からの拭き取り中表示指令信号の出力も停止される。
【0025】
上記したように、この実施形態のワイパ制御装置30は、上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6とを備えているので、上流側通過検知センサ5と下流側通過検知センサ6の間の搬送経路Aに被印刷物Cが入ったか否かを上流側通過検知センサ5で検知することができ、搬送経路Aから被印刷物Cが出たか否かを下流側通過検知センサ6により検知することができる。従って、例えば搬送経路A内に被印刷物Cが残っている状態でコンベアBが駆動停止され、その後コンベアBが再起動されるといった場合でも、搬送経路A内の被印刷物Cが下流側通過検知センサ6を通過するまではワイパ31を退避させて払拭動作を行なわない。その結果、ワイパ31と被印刷物Cの接触干渉を確実に防ぐことができる。
【0026】
そして、ワイパ制御装置30は、カウント数増加手段22とカウント数減少手段23を備えているので、上流側通過検知センサ5による被印刷物Cの通過検知でカウント数増加手段22がカウントアップし、下流側通過検知センサ6による通過検知でカウント数減少手段23がカウントダウンして、カウント手段27によるカウント数を増減させ、得られたカウント数が1以上のときは、搬送経路A内に被印刷物Cが在ると判定するというように、搬送経路A内における被印刷物Cの存在を簡素な構成(ソフトウェアまたは電子回路)により実現することができる。
【0027】
尚、上記の実施形態では、上流側通過検知センサ5による被印刷物Cの通過検知があったときカウント数増加手段22により正の数をカウント手段27のカウント数に加え、下流側通過検知センサ6による被印刷物Cの通過検知があったときカウント数減少手段23により正の数をカウント手段27のカウント数から減らすようにしたが、本発明のワイパ制御装置はそれに限定されるものでない。例えば、カウント数増加手段22で負の数をカウント数に加え、カウント数減少手段23で負の数をカウント数から差し引くように構成しても構わない。その場合でも、カウント数が0のとき以外はワイパ31が非干渉領域Pに退避しているように制御される。
【0028】
そして、請求項1の発明に対応する別の実施形態として、下流側通過検知センサ6を省略するとともに、いずれも演算部8が保有する、計時手段20、第1被印刷物存在検知手段21A、およびワイパ制御手段25の機能を用いる構成を例示する。第1被印刷物存在検知手段21Aは存在判定手段24の機能を有している。
かかる構成のワイパ制御装置によれば、上流側通過検知センサ5が被印刷物Cの前端CFの通過を検知したときから計時手段20が計時を行ない、演算部8は、計時手段20により計時された時間と、予め記憶手段9に格納されている所定搬送時間Tとを比較する。所定搬送時間Tは、既述したように、上流側通過検知センサ5からプリントヘッド2まで被印刷物Cを搬送するにかかる時間であり、干渉領域Mに在るワイパ31が非干渉領域Pに退避するまでの時間よりも長く設定されている。そこで、計時手段20により計時された時間が所定搬送時間Tを超えていない場合、第1被印刷物存在検知手段21Aの存在判定手段24は上流側通過検知センサ5とプリントヘッド2の間の搬送経路AAに被印刷物Cが在ることを検知する。このように搬送経路AA内に被印刷物Cが在るときは、ワイパ制御手段25がワイパ31を非干渉領域Pに退避させて干渉領域Mへは進出させないのである。これにより、ワイパ31が被印刷物Cと接触干渉することを防ぐことができる。また、下流側通過検知センサ6を用いないぶん、簡素で安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタとワイパ制御装置と被印刷物を示す概略斜視図である。
【図2】図1に対応した平面構成図である。
【図3】前記ワイパ制御装置により制御されるヘッド払拭機構の動作を平面に示す動作説明図である。
【図4】前記ワイパ制御装置の制御系統を示すブロック構成図である。
【図5】前記ワイパ制御装置による制御動作を示すタイムチャートである。
【図6】ヘッド払拭機構を備えた一般的なインクジェットプリンタと被印刷物の搬送状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 インクジェットプリンタ
2 プリントヘッド
2a ノズル配置面
4 制御部
5 上流側通過検知センサ(上流側通過検知手段)
6 下流側通過検知センサ(下流側通過検知手段)
8 演算部
12 ヘッド払拭機構
13 ワイパ駆動部
20 計時手段
21A 第1被印刷物存在検知手段
21B 第2被印刷物存在検知手段
22 カウント数増加手段
23 カウント数減少手段
25 ワイパ制御手段
27 カウント手段
30 ワイパ制御装置
31 ワイパ
A,AA 搬送経路
B コンベア
C,C(1),C(2),C(3),C(4) 被印刷物
D 矢印
H1 1点鎖線
H2 1点鎖線
L 距離
N ノズル
M 干渉領域
P 非干渉領域
T 所定搬送時間
U インク滴
V 速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定速度で搬送される被印刷物にインク滴を噴きつけるプリントヘッドのノズル配置面に摺接するワイパを備え、プリントヘッドの払拭に際し搬送中の被印刷物と干渉しない非干渉領域から前記被印刷物と干渉する干渉領域にワイパを進出させてノズル配置面を払拭させるインクジェットプリンタのワイパ制御装置において、
プリントヘッドに対し被印刷物搬送方向の上流側位置で、且つ、干渉領域に在るワイパが非干渉領域に退避するまでの時間以上に、被印刷物がプリントヘッドまで搬送される時間として予め設定された所定搬送時間がかかる位置に配置されて、被印刷物の通過を検知する上流側通過検知手段と、
上流側通過検知手段が被印刷物の通過を検知したときから計時を行なう計時手段と、
計時手段により計時された時間が前記所定搬送時間を超えていないときは上流側通過検知手段とプリントヘッドの間の搬送経路に被印刷物が在ることを検知する第1被印刷物存在検知手段と、
第1被印刷物存在検知手段により前記搬送経路内の被印刷物の存在が検知されたときはワイパを非干渉領域に退避させているワイパ制御手段とを具備して成ることを特徴とするインクジェットプリンタのワイパ制御装置。
【請求項2】
所定速度で搬送される被印刷物にインク滴を噴きつけるプリントヘッドのノズル配置面に摺接するワイパを備え、プリントヘッドの払拭に際し搬送中の被印刷物と干渉しない非干渉領域から前記被印刷物と干渉する干渉領域にワイパを進出させてノズル配置面を払拭させるインクジェットプリンタのワイパ制御装置において、
プリントヘッドに対し被印刷物搬送方向の上流側位置で、且つ、干渉領域に在るワイパが非干渉領域に退避するまでの時間以上にプリントヘッドまでの被印刷物の搬送時間がかかる位置に配置されて、被印刷物の通過を検知する上流側通過検知手段と、
プリントヘッドに対し被印刷物搬送方向の下流側位置で、且つ、ワイパが干渉しない位置に配置されて被印刷物の通過を検知する下流側通過検知手段と、
上流側通過検知手段による被印刷物の通過検知および下流側通過検知手段による被印刷物の通過検知に基づいて、上流側通過検知手段と下流側通過検知手段の間の搬送経路に被印刷物が在ることを検知する第2被印刷物存在検知手段と、
第2被印刷物存在検知手段により前記搬送経路内の被印刷物の存在が検知されたときはワイパを非干渉領域に退避させているワイパ制御手段とを具備して成ることを特徴とするインクジェットプリンタのワイパ制御装置。
【請求項3】
第2被印刷物存在検知手段は、計数を行なうカウント手段と、上流側通過検知手段により被印刷物の通過が検知されたときにカウント手段により計数されるカウント数を増やすカウント数増加手段と、下流側通過検知手段により被印刷物の通過が検知されたときにカウント手段により計数されるカウント数を減らすカウント数減少手段とを備え、カウント数増加手段およびカウント数減少手段により増減されたカウント数に基づいて、上流側通過検知手段と下流側通過検知手段の間の搬送経路に被印刷物が在ることを検知するように構成されている請求項2に記載のインクジェットプリンタのワイパ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−58282(P2010−58282A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223498(P2008−223498)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(391040870)紀州技研工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】