説明

インクジェットプリンタヘッド用洗浄液、およびそれを用いた洗浄方法

【課題】 感光性インクが適用されるインクジェットプリンタを効率よく洗浄するための洗浄液を提供する。
【解決手段】 粘度の異なる少なくとも2種の重合性化合物、光重合開始剤、および顔料を含有するインクを供給して印字が行なわれるインクジェットプリンタヘッドを洗浄するための洗浄液である。前記インク中の前記重合性化合物のうち、最も粘度の低い重合性化合物、または粘度30mPa・sec以下からなる酸重合性化合物を50重量部以上含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタヘッド用洗浄液、およびそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド印刷機として高速、高画質印刷が可能なインクジェットプリンタが普及している。インクジェットプリンタに使用されるインクとしては、水溶系インク、溶剤系インクおよび感光性インクなどが挙げられ、特に感光性インクは雰囲気中に排出される有害成分がほとんど含まれず、速乾性が良好なことから有望であるとされている。また、耐水性や耐候性などを向上させるために色材としては顔料系が用いられる。
【0003】
インクジェットプリンタにおいては、通常、電気的に制御された圧力壁を駆動させ、直径数十ナノメートルのインク吐出孔(以下ノズルと略す)から、所定量のインク液滴を吐出させる。インク液滴は、良好な形状で直進性よく飛翔することが求められ、また、ノズルの目詰まりによる不吐出は、極力回避することが要求される。ノズル近辺やインクヘッド内にインク成分が固形物として付着した場合、例えば顔料の凝集物やインク溶媒成分などが固化すると吐出性能が低下する。吐出性能は、適切な洗浄液でノズルを清浄することにより回復させることができる。
【0004】
インクジェットプリンタ用洗浄液が、従来から提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4参照。)。これらは、いずれも水溶性インクを用いたインクジェットプリンタ用の洗浄液であり、感光性インクを用いるインクジェットプリンタに適用したところで所望の洗浄力は望めない。インク溶媒とジメチルスルホキシドとを含有する洗浄液もまた、提案されている(例えば、特許文献5参照。)。インク溶媒に起因して、かかる洗浄液はインク固着物などの溶解は優れているものの、ジメチルスルホキシドはプリンタヘッド内に残留すると、不純物として作用するおそれがある。
【特許文献1】特開2002−105500号公報
【特許文献2】特開平9−300637号公報
【特許文献3】特開平4−115954号公報
【特許文献4】特開平10−315487号公報
【特許文献5】特許公報第2708538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、感光性インクが適用されるインクジェットプリンタを効率よく洗浄するための洗浄液、および洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかるインクジェットプリンタヘッド用洗浄液は、粘度の異なる少なくとも2種の重合性化合物、光重合開始剤、および顔料を含有するインクを供給して印字が行なわれるインクジェットプリンタヘッドを洗浄するための洗浄液であって、
前記インク中の前記重合性化合物のうち、最も粘度の低い重合性化合物または粘度30mPa・sec以下からなる酸重合性化合物、を50重量部以上含有することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様にかかるインクジェットプリンタヘッドの洗浄方法は、前述のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液を、前記インクジェットプリンタヘッド内に充填する工程と、
前記インクジェットプリンタヘッド用洗浄液を前記インクジェットプリンタヘッドのノズルから排出する工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、感光性インクが適用されるインクジェットプリンタを効率よく洗浄するための洗浄液、および洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
本発明の実施形態にかかる洗浄液は、感光性インクが供給されるインクジェットプリンタ用であり、この感光性インクは、粘度の異なる少なくとも2種の重合性化合物、光重合開始剤、および顔料を含有する。重合性化合物は、重合性溶媒あるいは感光性溶媒とも称され、モノマーまたはオリゴマーが用いられる。感光性インクにおいて、重合性化合物として粘度の異なる少なくとも2種類が用いられるのは、所定のインク粘度値に制御することが容易なためである。重合性化合物の粘度は、通常、高い方で数10乃至100mPa・sec程度、低い方では数〜数10mPa・sec程度である。
【0011】
感光性インクが供給されるインクジェットプリンタにおいては、印刷ヘッドからインク液滴を基材に飛翔させて画像の記録が行なわれ、その駆動周波数は、通常、4KHz以上である。印刷ヘッドは、紙面に対して如何なる方法で走引されてもよく、単一方向に1回のみ走査されて高速で大面積に印刷が行なわれることもある。こうしたプリンタは、主として業務用に用いられるインクジェット記録装置であり、パソコンやデジタルカメラの印刷など民生用プリンタよりも、厳しい吐出性能が求められる。単一方向での印字において、吐出時のエラーに起因して画像ぼけやドット抜けによるスジが発生すると、これを補正することができない。このため、得られる印刷物の品質に重大な影響を及ぼす。吐出性能を低下させる原因の一つには、顔料の凝集物やインク成分の固形物がノズル近傍に付着して、インク液滴の飛翔性を変えてしまうことがある。これらの付着物は、速やかに洗浄してヘッドから除去しなければならず、そのために洗浄液を用いて洗浄が行なわれる。
【0012】
したがって、インクジェットプリンタ用の洗浄液は、顔料凝集物やインク成分の固形物などを洗浄することが第一に求められる。その粘度はインクより低いものことが望まれ、ヘッド内のインクと混合した際にインク中の顔料を凝集させてはならない。さらには、他の固形分およびゲル状物を生じないことが重要である。もちろん洗浄液自体に固形分やゲル状物を含まず、紫外線などの光線により硬化しないことも要求される。加えて、ヘッド内に充填して長期間保存した際には、ヘッド性能を損なわないための保存液としての役割も求められる。
【0013】
本発明者らは、感光性インクのインクジェットプリンタヘッド用の洗浄液について鋭意検討した結果、インク液に含有されている重合性化合物のうち、最も粘度の低い成分または粘度30mPa・sec以下からなる成分を50重量部以上含有する洗浄液が、効率よい洗浄力を有することを見出して本発明を成すに至ったものである。粘度の最も低い重合性化合物または粘度30mPa・sec以下からなる重合性化合物を50重量部以上用いることにより、インクとの相溶性を損なうことなく流動性が高められて、ヘッド内に存在しているインク由来の固形分をヘッド外へ容易に排出することが可能となった。
【0014】
本発明の実施形態にかかる洗浄液は、下記数式(1)に示される組成比での粘度、つまり常温常圧で30mPa・s以下になるよう処方することによって、その洗浄効果はよりいっそう高められる。この数式(1)から、粘度の異なる2種以上の重合性化合物を、ある組成比で混合した場合の混合液の粘度を概ね推測することができ、洗浄液を調製したときの有効性を見極める目安となる。粘度は、一般的なコーンプレートタイプの粘度計により容易に測定することができる。
【0015】
ηt=exp(χ1・1n(η1)+χ21n(η2)+χ3・1n(η3)+・・・+χn・1n(ηn))
数式(1)
(上記数式(1)中、χ1,χ2,χ3,・・・,χnは、各成分の重量組成比率であり、η1,η2,η3,・・・,ηnは、各成分単独の常温常圧での粘度である。)
この粘度の範囲を超えると、ヘッド内に生じた固形分が洗浄液中に取り込まれて、排出する能力が低下する。また、洗浄液を排出する際の圧力を高くしなければならないため、ヘッドおよびヘッドに接続しているインク供給系のチューブ、コネクターなどが損傷しやすくなるおそれがある。
【0016】
本発明の実施形態にかかる洗浄液の溶解度パラメーターS2(MPa1/2)は、洗浄対象のインクの溶解度パラメーターS1(MPa1/2)を用いて、下記数式(2)で表わされる範囲内であることが好ましい。
【0017】
S1−2≦S2≦S1+2 数式(2)
n種の重合性化合物(溶媒)を含有するインクでは、各溶媒に固有の溶解度パラメーターを有しているため、洗浄液を処方する際に、上述した範囲内に合わせこむことが可能である。本発明の実施形態にかかる洗浄液には、インクに含有されていない重合性溶媒を配合してもよく、固有の溶解度パラメーターを考慮して上述の範囲になるように処方することができる。溶解度パラメーターS2が上述の範囲から外れた洗浄剤では、インク中の顔料の凝集性が高まるおそれがある。また、インク由来の固形分との濡れ性が低下して、ヘッドの洗浄力も低下する。溶解度パラメーターは、実験的に求められ、「ポリマーハンドブック」などの文献に記載の式に基づいて、化学構造から求めることもできる。
【0018】
インクジェットプリンタヘッド用洗浄液には、固形不純物が含有されていないことが要求される。本発明の実施形態にかかる洗浄液において、直径0.5μm以上の粒子数を10ccあたり5000個以下に規定した場合には、洗浄力はよりいっそう高められる。
【0019】
なお、洗浄対象となる感光性インクにおいては、直径が0.5μm以上の粒子が存在すると吐出性能が極端に低下するため、0.5μm未満に制御して顔料粒子を分散させている。洗浄液の場合も、このような大きな粒子が存在すると機能が低下するので、大きな粒子はできるだけ低減することが求められる。例えば、1μm径のカセットフィルタを用いて循環濾過することにより、直径0.5μm以上の粒子を容易に除去することができ、遠心分離処理により精製してもよい。洗浄液中に存在する粒子数は、例えばアキュサイザー(Particle Sizing Systems社製)により容易にカウントすることができる。
【0020】
直径0.5μm以上の比較的大きな粒子は、上述したように吐出性能を低下させるため、洗浄液とインクとが混合された際にも存在しないことが望まれる。具体的には、インク中に存在する顔料が凝集して大きな粒子にならないような洗浄液であることが求められる。洗浄対象とする感光性インクを洗浄液で20000倍に希釈したとき、この希釈液中に存在する直径0.5μm以上の粒子数が10ccあたり50000個以下になるような洗浄液である。こうした洗浄剤は、感光性インク溶媒と同じ溶媒、またはその溶媒と適当な界面活性剤、好ましくはインクに使用している顔料分散剤と同一なものを選択して、溶媒と適量配合することによって調製することができ、より高い洗浄力が得られる。
【0021】
洗浄液中における比較的大きな粒子の数は、ゼータ電位により制御できることが本発明者らによって見出された。具体的には、洗浄対象とするインクのゼータ電位をZ1(mV)とし、このインクを洗浄液で10ないし数10000倍に希釈した希釈液のゼータ電位をZ2(mV)として、Z2とZ1との差が±10mV以内であれば、直径0.5μm以上の凝集体は実質的にヘッド内に残留することはない。その結果、洗浄力がさらに高められる。一方、ゼータ電位の差が±10mVを越えると顔料の凝集が促進されて、直径0.5μm以上の凝集体がヘッド内に残留するおそれがある。こうした不都合を避けるために、Z1およびZ2は同極性であることが望ましい。なお、ゼータ電位は、例えばELS−8000(大塚電子製)により容易に測定可能である。
【0022】
Z2とZ1との差が±10mV以内となるような洗浄液は、上述と同様に感光性インク溶媒と同じ溶媒、またはその溶媒と適当な界面活性剤、好ましくはインクに使用している顔料分散剤と同一なものを選択し、適量前記溶媒と配合することによって調製することができる。
【0023】
本発明の実施形態にかかる洗浄液が洗浄対象とするインクは、少なくとも2種以上の重合性化合物、光重合開始剤、顔料を含有する感光性インクである。重合性溶媒は、インクを硬化させるに必要な光照射エネルギーよりもかなり低いエネルギーの光照射、例えば、一般的な室内に射し込む日光や蛍光灯の照射においても、少なからず反応を起こす可能性がある。重合性溶媒が重合すると局所的にゲル状物が生成され、熱的および経時的変化が生じた場合も同様の現象が起こる。本発明の実施形態にかかる洗浄液においても、ゲル状物を生成するおそれがあるが、ヘッド内にゲル状物が残留することは好ましくない。洗浄後にインクを充填して印字動作を行なった際、インクの飛翔性能の低下に繋がるので、洗浄液は熱的および経時的変化が生じ難いことが求められる。
【0024】
洗浄液は、ヘッド保管用の保存液としても用いることができる。インクを充填したままヘッドを保管すると、インクの経時的な劣化によりインク固形分がヘッド内やノズル近傍に固着して、ヘッド性能が低下することがあるためである。この場合も、洗浄液の熱的、経時的な変化はできるだけ少ないことが求められ、次のような手法を採用すればよい。
【0025】
例えば、重合禁止剤を含有させて重合性溶媒の重合反応を遅延させることにより、洗浄液効果を高めることができる。重合禁止剤は、ラジカル重合系溶媒およびカチオン系重合溶媒のいずれにも用いることができ、例えばラジカル重合系溶媒に対しては、発生するラジカルを中和する作用を有する。また、カチオン系重合溶媒に対しては、発生する酸を中和する作用を有する。
【0026】
洗浄対象となるインク中に重合性官能基数1の重合性化合物が含有される場合には、この化合物を洗浄液中に含有させる。重合性化合物は、一般的に重合性官能基が多いほど重合が進行しやすくなるため、重合性官能基数の少なく化合物を使用することによって、重合反応の進行が遅くなって洗浄液効果が高められる。
【0027】
さらに、洗浄対象となるインクにビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタン、オキシランを含む基から選択される重合性官能基を有する重合性化合物が含有される場合には、下記一般式(1)で表わされる化合物を配合することが好ましい。
【0028】
(A1m−R−(A2n-m 一般式(1)
(上記一般式(1)中、Rは、脂肪族骨格、脂環式骨格、または酸素原子を含む骨格であり、A1は、前記インクに含有される光重合開始剤に対して不活性な有機基であり、A2は、前記インクに含有される光重合開始剤に対して不活性な有機基、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタン、またはオキシランである。nは2以上の自然数であり、mは1以上n以下である。)
Rとして導入され得る脂肪族骨格としては、例えば、炭素数1ないし6のアルキレン基、または水酸基置換アルキレン基等が挙げられ、脂環式骨格としては、例えば、炭素数6ないし15の脂環式骨格が挙げられる。より具体的には、下記に示す骨格が挙げられる。
【化1】

【0029】
また、酸素原子を含む骨格としては、例えば、下記に示す骨格が挙げられる。
【化2】

【0030】
さらに、A1またはA2として導入され得る光重合開始剤に対して不活性な有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基、およびt−ブチル基等を用いることができる。重合性官能基の全てが、こうした不活性有機基で置換されることが最も好ましいが、重合性官能基の1つでも置換されていれば重合性化合物の活性は低下するので、洗浄効果を高めることができる。
【0031】
本発明の実施形態にかかる洗浄液は、インクジェットプリントヘッド内に充填し、ノズルから排出させることによって、ヘッド内およびノズル近傍を清浄にすることができる。この場合、1kPa〜100kPa程度の圧力をかけることが好ましく、具体的には、ヘッドに接続しているインク供給路から洗浄液をヘッド内に送液する。その際、圧力を調整して洗浄液をノズルから排出させたり、あるいは、充填した洗浄液をノズル面からノズル面を傷つけないように、ゴム状チューブなどで強制的に吸引することなども含まれる。場合によっては、プリンタヘッドを駆動し、インク吐出と同様の動作を行なって洗浄液を排出することもできる。さらに、ヘッド内に洗浄液を充填し、超音波による外的振動を加えてヘッド内の固形分の溶解性を促進させた後、洗浄液を排出してもよい。
【0032】
以下、本発明の実施形態にかかる洗浄液の各成分について、詳細に説明する。
【0033】
本発明の実施形態にかかる洗浄液には、感光性インクジェットインクに用いられる重合性化合物のうち、最も粘度の低いものが主成分として、具体的には少なくとも50重量部の割合で含有される。こうした特定の重合性化合物のみによって、本発明の実施形態にかかる洗浄液を構成することもできるが、他の重合性化合物を所定量配合して本発明の実施形態にかかる洗浄液を調製してもよい。
【0034】
主成分として用いられる重合性化合物としては、1価または多価のアクリルまたはメタクリレート系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタンあるいはビニル系、プロペニル系の重合性基を有するモノマー,オリゴマー系化合物などが挙げられる。重合性化合物は、一般的にインク粘度が常温で50mPa・s以下に設計させているため、溶剤としても常温で50mPa・s以下であるものが選択される。
【0035】
アクリレート系モノマーの例としては、例えば、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−エチル,2−ブチル−プロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、イソアミルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、ステアリルアクリレート、t−ブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ウレタンモノアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびジプロピレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0036】
メタクリレート系モノマーとしては、例えば、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヒキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ステアリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、およびテトラエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
【0037】
ビニル系モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール-1,4-ジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、メントールビニルエーテル、1−ヒドロキシ−3,5ジメチルベンゼンビニルエーテル、2−ヒドロナフタレンビニルエーテル、1−tertブチル−4−ビニロキシシクロヘキサノールビニルエーテル、1−tertブチル−4−ビニロキシベンゼンビニルエーテル、トリメチルシクロヘキサノールビニルエーテル、ビニロキシシクロドデカノールビニルエーテル、4−ヒドロキシクミルフェノールビニルエーテル、イソボルネオールビニルエーテル、クメンアルコールビニルエーテル、ビニロキシベンゼンビニルエーテル、P−ジビニロキシベンゼンジビニルエーテル、およびイソソルバイドジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
プロペニル系モノマーとしては、例えば、プロピレンカーボネートプロペニルエーテル、およびジオキソランメタノールイソプロペニルなどが挙げられる。
【0039】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、セロキサイド3000(ダイセルUCB)、セロキサイド2000(ダイセルUCB)、アデカオプトマーKRM2750(旭電化)、アデカオプトマーKRM2722(旭電化)、アデカオプトマーKRM2720(旭電化)、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
オキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、および3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタンなどが挙げられる。
【0041】
さらに、上記の例の溶媒に加えて下記の溶媒についても、対象インクの粘度値を考慮して用いることが可能である。
【0042】
例えば、多価アルコール化合物のポリアクリレート化合物、多価芳香族アルコールのポリアクリレート化合物、多価脂環アルコールのポリアクリレート化合物、および置換基を有するスチレン系化合物などが挙げられる。かかるモノマーとして、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ネオペンチルアルコール、トリメチロールプロパンやペンタエリスト−ル、ビニルアルコール系オリゴマーなどのジ〜ポリアクリレート化合物、ウレタンアクリレート系化合物、フェノールやクレゾール、ナフトール、ビスフェノール、およびそれらのノボラック系縮合化合物やビニルフェノール系オリゴマーのジ〜ポリアクリレート化合物など、およびそれらが水添された、シクロヘキサン、水添ビスフェノール、デカヒドロナフタレン脂環や、テルペン系脂環、ジシクロペンタンやトリシクロデカン系脂環のモノ〜ポリヒドロキシ化合物のモノ〜ポリアクリレート化合物などが例示される。また、上記化合物のアクリレート部位を、ビニルエーテルを含む基に置換した化合物も好適に用いることができる。
【0043】
さらに、カチオン重合性とラジカル重合性との双方の特性を有する化合物、例えば、脂環式エポキシ基を有するメタクリレート(例えば、ダイセル化学製CEL2000やサイクロマーなど)や、メチルグリシジル基を有するメタクリレートMGMA、グリシジルメタクリレート、ビニルアルコールとアクリル、メタクリルなどのエステル化合物などを用いてもよい。
【0044】
印刷物に要求される特性はその用途に応じて異なり、高速な印字にも対応する高い硬化速度性能を有する感光性インクが使用される場合がある。例えば、数十m毎分という高速な印字が求められる場合や、溶剤への耐性が要求される場合である。オキセタン骨格を有するアクリレート化合物を用いることによってこれを達成することができ、この感光性インクを対象とする洗浄液には、同様の重合性化合物を使用することが有効である。
【0045】
具体的には、1−アクロイルオキシ,4−(1−エチル−3オキセタニル)メトキシベンゼン、1−アクロイルオキシ,3−(1−エチル−3オキセタニル)メトキシベンゼン、4−アクロイルオキシ,4’−(3−エチル−3オキセタニル)メトキシビフェニル、フェノールノボラックの側鎖にオキセタンやアクリル基を有する化合物、オキセタニル(アクリル)シルセスキオキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンとアクリル酸のエステル化合物、1−アクリロイルオキシ、4−(1−エチル−3オキセタニル)メトキシシクロヘキサン、1−アクリロイルオキシ,4−(3−エチル−3オキセタニル)メトキシシクロヘキサン、1−アクリロイルオキシ、2−(1−エチル−3オキセタニル)メトキシノルボルナン、およびアクリル基とオキセタン基を有する脂肪族あるいは脂環化合物などが例示される。
【0046】
アクリル側鎖にエポキシ骨格を有する化合物も、オキセタン化合物と同様の効果を有する。これらの化合物として、グリシジルアクリレートやメタクリレート、ダイセル化学社製、製品名サイクロマーや、リモネンジオキサイドなどのエポキシ化合物に1つ以上のアクリルを付加した化合物などが挙げられる。
【0047】
またさらに、取り扱いが安全で容易であり、臭気、VOCが少なく且つ高品質な印刷物が得られる感光性インクジェットインクとして、テルペノイド骨格を側鎖に有するビニル化合物を重合性溶媒として含有している場合がある。このようなインクを対象とする洗浄液に用いられる重合性溶媒としては、テルペノイド骨格を側鎖に有するビニル化合物としては、アクリルやビニルエーテル系化合物が例示される。
【0048】
テルペノイド骨格をエステル側鎖に有するアクリル化合物としては、例えば特開平08−82925号公報に開示されたようなアクリル系化合物が、モノマーとして好適に用いられる。例えば、ミルセン,カレン,オシメン,ピネン,リモネン,カンフェン,テルピノレン,トリシクレン,テルピネン,フェンチェン,フェランドレン,シルベストレン,サビネン,ジペンテン、ボルネン、イソプレゴール、カルボン、などの不飽和結合を有するテルペンの2重結合をエポキシ化し、アクリル酸またはメタクリル酸を付加させたエステル化合物が挙げられる。あるいは、シトロネロール,ピノカンフェオール,ゲラニオール,フェンチルアルコール,ネロール,ボルネオール,リナロール,メントール,テルピネオール,ツイルアルコール,シトロネラール,ヨノン,イロン,シネロール,シトラール,ピノール,シクロシトラール,カルボメントン,アスカリドール,サフラナール,ピペリトール、メンテンモノオール、ジヒドロカルボン、カルベオール、スクラレオール,マノール,ヒノキオール,フェルギノール,トタロール,スギオール、ファルネソール,パチュリアルコール,ネロリドール,カロトール,カジノール,ランセオール,オイデスモール、フィトール,などのテルペン由来アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸のエステル化合物、さらにはシトロネロル酸,ヒノキ酸,サンタル酸,エステル側鎖にメントン,カルボタナセトン,フェランドラール,ピメリテノン,ペリルアルデヒド,ツヨン,カロン,ダゲトン,ショウノウ,ビサボレン,サンタレン,ジンギベレン,カリオフィレン,クルクメン,セドレン,カジネン,ロンギホレン,セスキベニヘン,セドロール,グアヨール,ケッソグリコール,シペロン,エレモフィロン,ゼルンボン,カンホレン,ポドカルプレン,ミレン,フィロクラデン,トタレン,ケトマノイルオキシド,マノイルオキシド,アビエチン酸,ピマル酸,ネオアビエチン酸,レボピマル酸,イソ−d−ピマル酸,アガテンジカルボン酸,ルベニン酸,カロチノイド、ペラリアルデヒド、ピペリトン、アスカリドール、ピメン、フェンケン、セスキテルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類などの骨格をエステル側鎖に有するアクリレートまたはメタクリレート化合物が挙げられる。
【0049】
テルペノイド骨格をエーテル側鎖に有するビニルエーテルとしては、シトロネロール,ピノカンフェオール,ゲラニオール,フェンチルアルコール,ネロール,ボルネオール,リナロール,メントール,テルピネオール,ツイルアルコール,シトロネラール,ヨノン,イロン,シネロール,シトラール,ピノール,シクロシトラール,カルボメントン,アスカリドール,サフラナール,ピペリトール、メンテンモノオール、ジヒドロカルボン、カルベオール、スクラレオール,マノール,ヒノキオール,フェルギノール,トタロール,スギオール、ファルネソール,パチュリアルコール,ネロリドール,カロトール,カジノール,ランセオール,オイデスモール、フィトール,などのテルペン由来アルコールの水素原子をビニルエーテルあるいは置換基を有するビニルエーテル化合物に置換した化合物などが挙げられる。
【0050】
さらに、シトロネロル酸,ヒノキ酸,サンタル酸,アビエチン酸,ピマル酸,ネオアビエチン酸などのテルペノイド骨格を有する酸とビニルアルコールとのエステル化合物等も好適に用いられる。
【0051】
上記以外の化合物として、オレフィン構造を置換基に有するテルペン系化合物を用いることができる。
【0052】
テルペノイド骨格をエステル側鎖に有するアクリルまたはテルペノイド骨格をエーテル側鎖に有するビニルエーテル化合物は、下記一般式(2)または(3)で表わされる構造を含むことが好ましい。
【化3】

【0053】
上記一般式(2)中、R22〜R41は同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基、置換または非置換のビニルエーテル基であり、残りは水素原子、アルキル基、水酸基またはアルキルエステルである。ただし、特定の環状の炭素原子とそれに結合した2つのR22〜R41は、ケトンに置換されていてもよく、隣接する炭素原子とそれぞれに結合した2つのR22〜R41は、エポキシやオキセタン等の環状エーテルに置換されていてもよい。
【0054】
上記一般式(3)中、R51〜R64は同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基、置換または非置換のビニルエーテル基であり、残りは水素原子、アルキル基、水酸基またはアルキルエステルである。ただし、特定の環状の炭素原子とそれに結合した2つのR51〜R64は、ケトンに置換されていてもよく、隣接する炭素原子とそれぞれに結合した2つのR51〜R64は、エポキシやオキセタン等の環状エーテルに置換されていてもよい。
【0055】
特にテルペノイド骨格がメンタン骨格である場合には、安全性が極めて高く臭気も十分に低減されるので、申し分のないものとなる。化合物の安全性や低皮膚刺激性はアクリル化合物よりもビニルエーテル化合物が優れるため、ビニルエーテル化合物骨格がさらに望ましい。
【0056】
上述したような重合性化合物から、インク組成で使用する最も低い粘度をもつ重合性化合物を選択し洗浄液中50重量部以上の割合で含有されていれば、粘度の大きな重合性化合物が併用されても効果を得ることができる。最も粘度の低い重合性化合物の割合は、50重量部以上であることが好ましく、70重量部以上であることがより好ましい。20重量部程度であれば、DMSO(ジメチルスルホキシド)やMEK(メチルエチルケトン)のような非重合性化合物が含有されても、本発明の実施形態にかかる洗浄液の効果は損なわれない。
【0057】
本発明の実施形態にかかる洗浄液に配合し得る重合禁止剤としては、ラジカルを補足する任意の化合物を用いることができる。例えば、ハイドロキノンや、4−メトキシヒドロキシベンゼンなどのフェノール誘導体やフェノチアジンなどの含酸素、含硫合物などである。他の具体例としては、メトキノン,DOHQ(Wako),DHHQ(Wako)などがある。
【0058】
カチオン系の重合禁止剤としては、塩基性化合物および塩基性を発現する化合物からなる酸重合性溶媒中に溶解可能な任意の塩基を使用することができ、無機塩基および有機塩基のいずれでもよい。その溶解性から、有機塩基が特に好ましく用いられる。有機塩基としては、アンモニアやアンモニウム化合物、置換または非置換アルキルアミン、置換または非置換の芳香族アミン、ピリジン、ピリミジン、イミダゾールなどのヘテロ環骨格を有する有機アミンが挙げられる。より具体的には、n−ヘキシルアミン、ドデシルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデカン、3−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、ルチジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、4−メチルベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、および1,3−ベンゼンジスルホニルヒドラジドのようなスルホニルヒドラジドなどが挙げられる。塩基性化合物としては、アンモニウム化合物も用いることができる。こうした塩基性化合物は、単独であるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0059】
また、ピリジン誘導体、アニリン誘導体、アミノナフタレン誘導体、その他の含窒素ヘテロ環化合物およびその誘導体も好適に用いることが可能である。
【0060】
ピリジン誘導体としては、例えば、2−フルオロピリジン、3−フルオロピリジン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、3−フェニルピリジン、2−ベンジルピリジン、2−ホルミルピリジン、2−(2’−ピリジル)ピリジン、3−アセチルピリジン、2−ブロモピリジン、3−ブロモピリジン、2−ヨードピリジン、3−ヨードピリジン、および2,6−ジ−tert−ブチルピリジン等を挙げることができる。
【0061】
アニリン誘導体としては、例えば、アニリン、4−(p−アミノベンゾイル)アニリン、4−ベンジルアニリン、4−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、3−5−ジブロモアニリン、2,4−ジクロロアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3−ニトロアニリン、N−エチルアニリン、2−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2−ヨードアニリン、N−メチルアニリン、4−メチルチオアニリン、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、4−ブロモアニリン、4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、3−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2−メトキシアニリン、3−メトキシアニリン、ジフェニルアミン、2−ビフ
ェニルアミン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、および4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン等を挙げることができる。
【0062】
アミノナフタレン誘導体としては、例えば、1−アミノ−6−ヒドロキシナフタレン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、ジエチルアミノナフタレン、および、N−メチル−1−ナフチルアミン等を挙げることができる。
【0063】
その他の窒素ヘテロ環化合物およびその誘導体としては、例えば、シノリン、3−アセチルピペリジン、ピラジン、2−メチルピラジン、メチルアミノピラジン、ピリダジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−5−ニトロピリミジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、ピロール、ピラゾール、1−メチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、インダゾール、ベンゾトリアゾール、キナゾリン、キノリン、3−アミノキノリン、3−ブロモキノリン、8−カルボキシキノリン、3−ヒドロキシキノリン、6−メトキシキノリン、5−メチルキノリン、キノキサリン、チアゾール、2−アミノチアゾール、3,4−ジアザインドール、プリン、8−アザプリン、インドール、およびインドリジン等を挙げることができる。
【0064】
重合禁止剤は、洗浄液中の重合性化合物に対して0.1〜1.0重量部程度の割合で配合されれば、その効果を得ることができる。
【0065】
必要に応じて、本発明の実施形態にかかる洗浄液には、界面活性剤、顔料分散剤を添加することも可能であり、少量のノニオン系またはイオン系界面活性剤や帯電剤といった分散剤を添加してもよい。同様な性質を有するアクリルやビニルアルコールのような高分子系分散剤もまた可能である。いずれの添加剤も、洗浄液としての機能を損なわない程度の配合量で用いられる。
【0066】
以下、具体例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
【0067】
ここでは、以下の処方で調製されたインクを一例として挙げ、このインクに適した洗浄液について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。インクの組成に応じて主成分としての重合性化合物を変更することによって、本発明の実施形態にかかる洗浄液を得ることが可能である。
【0068】
イエロー顔料(PY−180) 5重量部
分散剤(アビシア・ソルスパース32000) 3重量部
分散剤(アビシア・ソルスパース22000) 0.3重量部
重合性溶媒(ダイセル化学・セロキサイド3000) 55重量部
重合性溶媒(阪本薬品工業・SR−NPG) 36.7重量部
これらの材料を混合し、循環式のサンドミルにより0.5mm径のビーズを充填して2時間の分散処理を行なった。次に、5μmのメンブランフィルタで濾過して粗大粒子を除去し、インクサンプル1とした。また、C3000をPGE(フェニルグリシジルエーテル、阪本薬品工業)に変更した以外は上述と同様の処方により、インクサンプル2を調製した。
【0069】
得られたインクサンプルを用いて印字を行ない、以下の手順で洗浄液を評価した。洗浄液の組成は、後述する各実施例に詳細に示した。なお、実施例8ではインクサンプル2を用い、残りの実施例ではインクサンプル1を用いた。
【0070】
(1)まず、インクジェットプリンタを用いてインクサンプルにより印字し、不吐出ノズルが存在しないことを確認する。
【0071】
(2)前述の(1)でインクを充填した状態のヘッドを、60℃で1週間保管する。
【0072】
(3)保管後のヘッドを使用して再度印字を行なうと、不吐出ノズルが発生する。この数をカウントして、E0とする。
【0073】
(4)ヘッドからインクを排出して、洗浄液をプリンタに充填し、排出させることによりヘッドを洗浄する。
【0074】
(5)ヘッド内に再度インクを充填して印字を行なって不吐出ノズルの数をカウントし、この数をE1とする。
【0075】
(6)回復率=(E0−E1)/E0×100(%)を算出した。こうして得られた回復率に基づいて、以下のように洗浄液を評価する。90%以上の回復率が得られていれば、実用上問題ない。
【0076】
A:100%
B:90%以上100%未満
C:80%以上90%未満
D:80%未満
なお、実施例7,8および9においては、(4)の後にヘッド内に洗浄液を充填して60℃で1週間保管した。その後、(6)へ進むことによって洗浄液を評価した。
【0077】
(実施例1)
下記表1に示す処方(重量部)でC3000とSR−NPGとを配合して、5種類の洗浄液を調製した。各洗浄液を上述した手法で評価し、得られた結果を下記表1にまとめる。なお、C3000の常温での粘度は7.1mPa・sであり、SR−NPGの常温での粘度は18.1mPa・sである。
【表1】

【0078】
インクに含有される重合性化合物のうち、粘度の低いC3000を50重量部以上含有する洗浄剤は、いずれも90%以上の回復率を示している。
【0079】
(実施例2)
下記表2に示す処方(重量部)でC3000とSR−NPGとSR−GLG(グリセリンポリグリシジルエーテル:阪本薬品工業)とを配合して、5種類の洗浄液を調製した。各洗浄液について数式(1)により常温での粘度を求め、洗浄液の評価結果とともに下記表2にまとめる。
【表2】

【0080】
表2の結果から、粘度が30mPa・s以下の洗浄液が、回復率100%という高い洗浄力を有することがわかる。
【0081】
(実施例3)
下記表3に示す処方(重量部)でC3000とPEPC(プロピレンカーボネートプロペニルエーテル、ISP社)とDDVE(ドデシルビニルエーテル、ISP社)とを配合して、7種類の洗浄液を調製した。ポリマーハンドブックに記載の式に基づいて、各洗浄液の溶解度パラメーター(S2)を求め、インクの溶解度パラメーター(S1)との差を、洗浄液の評価結果とともに下記表3にまとめる。
【表3】

【0082】
溶解度パラメーターの差が±2以上であれば、回復率100%を達成でき、より高い洗浄力が得られることが表3に明確に示されている。
【0083】
(実施例4)
1μmカプセルフィルタを用いて前述の実施例1−1の洗浄液を循環ろ過し、ろ過時間を変更して5種類の洗浄液を調製した。各洗浄液に含有される粒子個を、アキュサイザーを用いてカウントし、洗浄液の評価結果とともに下記表4にまとめる。
【表4】

【0084】
表4に示されるように、含有される粒子数が5000個以下であれば、洗浄力はさらに高められて、回復率は100%に達する。
【0085】
(実施例5)
下記表5に示す処方(重量部)でC3000とSol32000とを配合して洗浄液を調製した。Sol32000は、分散剤としてインクに配合したソルスパース32000である。各洗浄液を用いて、インク20000倍の希釈液を調製し、それぞれに含有される粒子数をアキュサイザーによりカウントした。粒子数を、洗浄液の評価結果とともに下記表5にまとめる。
【表5】

【0086】
粒子数が50000個以下であれば、より高い洗浄力が得られることが表5に示されている。
【0087】
(実施例6)
下記表6に示す処方(重量部)でC3000とSol32000とを配合して洗浄液を調製した。各洗浄液を用いてインクを10000倍に希釈し、ζ電位測定用のサンプルを得た。インクおよびインク希釈液のζ電位を、ELS8000(大塚電子製)により測定して差を求め、洗浄液の評価結果とともに下記表6にまとめる。
【表6】

【0088】
表6に示されるように、ζ電位の差が10mV以下の場合には、洗浄力はより高められる。
【0089】
(実施例7)
下記表7に示す処方(重量部)で重合禁止剤としてのN,N−ジメチルアニリンを配合して、洗浄液を調製した。洗浄液の評価結果を、下記表7にまとめる。
【表7】

【0090】
重合禁止剤を加えることによって洗浄液の熱的、経時的変化が抑制されて、回復率がさらに高められることが表7に示されている。
【0091】
(実施例8)
下記表8に示す処方(重量部)でSR−2EG(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、阪本薬品工業)とSR−NPGとPGE(フェニルグリシジルエーテル、阪本薬品工業)とを混合して、洗浄液を調製した。SR−2EGの官能基数は2であり、PGEの官能基数は1である。洗浄液の評価結果を、下記表8にまとめる。
【表8】

【0092】
表8の結果から、官能基数1のPGEを含有することによって、洗浄力がさらに高められることがわかる。
【0093】
(実施例9)
不活性化合物として、ジエチレングリコールジエチルエーテル(SR−2EG不活性)およびネオペンチルグリコールジエチルエーテル(SR−NPG不活性)を用意した。各化合物を用い、下記表9に示す処方(重量部)で洗浄液を調製した。
【表9】

【0094】
ジエチレングリコールジエチルエーテルは、前記一般式(1)において、Rとして下記に示す二価の基、不活性有機基A1および有機基A2として、いずれもエチル基を有し、n=2、m=1とした化合物である。
【化4】

【0095】
また、ネオペンチルグリコールジエチルエーテルは、前記一般式(1)において、Rとして下記に示す二価の基、不活性有機基A1および有機基A2として、いずれもエチル基を有し、n=2、m=1とした化合物である。
【化5】

【0096】
不活性化合物を含有した洗浄液は、保存時においてもゲル状物などの重合した不純物が生じることはなく、より高い洗浄力が得られることがわかる。
【0097】
(実施例10)
下記表10に示す処方で、C3000、DMSO、MEKを用いて洗浄液を調製し、評価結果をまとめる。
【表10】

【0098】
DMSOやMEKは、非重合性溶媒である。こうした溶媒の含有量が50重量部を越えると洗浄力が低下し、100重量部を占めると洗浄力はさらに低下した。感光性インクを洗浄対象とする洗浄液においては、洗浄作用を有する重合性溶媒が必須であることが示された。
【0099】
(実施例11)
実施例1−1の洗浄液を用い、洗浄液をノズルから排出させるときの圧力を強制的に加えて洗浄を行なったところ、洗浄時間の向上が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度の異なる少なくとも2種の重合性化合物、光重合開始剤、および顔料を含有するインクを供給して印字が行なわれるインクジェットプリンタヘッドを洗浄するための洗浄液であって、
前記インク中の前記重合性化合物のうち、最も粘度の低い重合性化合物、または粘度30mPa・sec以下からなる酸重合性化合物、を50重量部以上含有することを特徴とするインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
【請求項2】
前記インクに含有される重合性化合物の2種以上n種以下を含有し、かつ、下記数式(1)で表わされる固有粘度ηtが、常温常圧において30mPa・sec以下の範囲内の組成であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
ηt=exp(χ1・1n(η1)+χ21n(η2)+χ3・1n(η3)+・・・+χn・1n(ηn))
数式(1)
(上記数式(1)中、χ1,χ2,χ3,・・・,χnは、各成分の重量組成比率であり、η1,η2,η3,・・・,ηnは、各成分単独の常温常圧での粘度である。)
【請求項3】
前記インクの溶解度パラメーターS1(MPa1/2)を用いて、前記洗浄液の溶解度パラメーターS2(MPa1/2)が下記数式(2)で表わされる範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
S1−2≦S2≦S1+2 数式(2)
【請求項4】
直径0.5μm以上の粒子数は、10ccあたり5000個以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
【請求項5】
前記インクを前記洗浄液で20000倍に希釈した際、前記インク中に含有される直径0.5μm以上の粒子数が、10ccあたり50000個以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
【請求項6】
前記インクのゼータ電位をZ1(mV)とし、このインクを前記洗浄液で10ないし数10000倍に希釈したときのゼータ電位をZ2(mV)としたとき、Z2とZ1との差が±10mV以内であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
【請求項7】
重合禁止剤を含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
【請求項8】
前記インクは重合性官能基数が1である化合物を含有し、前記洗浄液はこの化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
【請求項9】
前記インクに含有される前記重合性化合物は、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタン、およびオキシランを含む基から選択される1種の重合性官能基を有し、前記洗浄液は下記一般式(1)で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液。
(A1m−R−(A2n-m 一般式(1)
(上記一般式(1)中、Rは、脂肪族骨格、脂環式骨格、または酸素原子を含む骨格であり、A1は、前記インクに含有される光重合開始剤に対して不活性な有機基であり、A2は、前記インクに含有される光重合開始剤に対して不活性な有機基、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタン、またはオキシランである。nは2以上の自然数であり、mは1以上n以下である。)
【請求項10】
インクジェットプリンタヘッドの洗浄方法であって、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタヘッド用洗浄液を、前記インクジェットプリンタヘッド内に充填する工程と、
前記インクジェットプリンタヘッド用洗浄液を前記インクジェットプリンタヘッドのノズルから排出する工程と
を具備することを特徴とする洗浄方法。

【公開番号】特開2006−35467(P2006−35467A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214816(P2004−214816)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】