説明

インクジェットプリンターの制御方法、およびインクジェットプリンター

【課題】ヘッドの吐出量ばらつきよる濃淡ムラを、ノズル数を制限することなく平均化させる。
【解決手段】紙送り方向と直交する方向にヘッド90を移動させながら、前記紙送り方向に沿って配列されたノズル92からインクを吐出して情報を印刷するインクジェットプリンター100の制御方法であって、前記ヘッド90の前記ノズル92毎の吐出量を測定する吐出量測定工程S1と、前記吐出量測定工程S1で測定された前記吐出量のばらつきに基づいて、前記ヘッド90をグループ分けするヘッドグルーピング工程S2と、前記ヘッド90の前記グループに対応して予め決められている紙送りパターンをデータとして記憶している記憶部88から、前記ヘッド90の前記グループに応じた前記紙送りパターンを読み出す紙送りパターン読み出し工程S3と、読み出された前記紙送りパターンで紙を送りながら情報を印刷する紙送り印刷工程S4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターの制御方法、およびインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、インクを吐出する複数のノズルが列状に配置されたヘッドを有する。インクジェットプリンターは、用紙を一方向に送りながら、ヘッドを搭載するキャリッジを紙送り方向とは直交する方向に送りながらノズルからインクを吐出して情報を印刷する。ところが、ヘッドは、インクの吐出を行う圧電素子間のクロストークやインク流路の長さの違い等によって、ノズル毎にインク吐出量のばらつきが発生する虞がある。一般にノズル列の両端域の吐出量が多くなる傾向にある。
【0003】
ヘッドのインク吐出量がばらつくことで、ヘッドの重なる部分、主に改行の領域でドット密度の差による濃度ムラ、すなわち濃淡ムラが発生する。このような濃淡ムラを低減させるため、吐出量の安定したノズルを用い、両端域のノズルを不使用とする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−159787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の印刷方法は、インク吐出量の安定しない両端域のノズルを不使用ノズルとするため、印刷に使用できるノズルの数が少なくなり、印刷速度が遅くなってしまう。そのため、作業効率が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
(適用例1)紙送り方向と直交する方向にヘッドを移動させながら、前記紙送り方向に沿って配列されたノズルからインクを吐出して情報を印刷するインクジェットプリンターの制御方法であって、前記ヘッドの前記ノズル毎の吐出量を測定する吐出量測定工程と、前記吐出量測定工程で測定された前記吐出量のばらつきに基づいて、前記ヘッドをグループ分けするヘッドグルーピング工程と、前記ヘッドの前記グループに対応して予め決められている紙送りパターンをデータとして記憶している記憶手段から、前記ヘッドの前記グループに応じた前記紙送りパターンを読み出す紙送りパターン読み出し工程と、読み出された前記紙送りパターンで紙を送りながら情報を印刷する紙送り印刷工程と、を有することを特徴とするインクジェットプリンターの制御方法。
【0008】
(適用例2)前記ヘッドグルーピング工程において、前記吐出量測定工程で測定された前記吐出量のばらつきに基づいて、前記ヘッドをグループ分けして、前記グループを特定する識別記号を前記ヘッドに付与することを特徴とする上記のインクジェットプリンターの制御方法。
【0009】
(適用例3)前記紙送り印刷工程は、前記ヘッドの前記紙送り方向と直交する方向への移動において、前記ヘッドから前記インクが吐出される被吐出領域が前記紙送り方向で重なる領域を有することを特徴とする上記のインクジェットプリンターの制御方法。
【0010】
(適用例4)前記紙送りパターンは、前記グループに代表される前記ヘッドの吐出ばらつきを補正することができるものであることを特徴とする上記のインクジェットプリンターの制御方法。
【0011】
これらの方法によれば、ヘッドの吐出特性に応じて、ヘッドの吐出ばらつきを補正する紙送りパターンを選択することができる。すなわち、紙送りパターンを調整して、インクの吐出量の多いノズルがインクを吐出した被吐出領域に、インクの吐出量の少ないノズルを割り当ててインクを吐出することができる。そして、印刷画像を構成するドットの濃度を平均化することができる。そのため、吐出ばらつきの大きい不使用ノズルも印刷に使用することができる。その結果、使用できるノズルが増加するとともに印刷できる情報量が増え印刷時間が短縮することが可能となる。従って、作業効率の低下を防止することができる。
【0012】
(適用例5)紙送り方向と直交する方向にヘッドを移動させながら、前記紙送り方向に沿って配列されたノズルからインクを吐出して記録用紙に情報を印刷するインクジェットプリンターであって、前記ヘッドの前記ノズル毎の吐出量を測定する検出部を備え、前記検出部で検出された前記吐出量のばらつきに基づいて、前記ヘッドをグループに分けて、前記ヘッドの前記グループに対応して予め決められている紙送りパターンを用いて、紙送りされる記録用紙に、前記ヘッドからインクを吐出して情報を記録することを特徴とするインクジェットプリンター。
【0013】
この構成によれば、ヘッドの吐出特性に応じて、ヘッドの吐出ばらつきを補正する紙送りパターンを選択することができる。すなわち、紙送りパターンを調整して、インクの吐出量の多いノズルがインクを吐出した被吐出領域に、インクの吐出量の少ないノズルを割り当ててインクを吐出することができる。そして、印刷画像を構成するドットの濃度を平均化することができる。そのため、吐出ばらつきの大きい不使用ノズルも印刷に使用することができる。その結果、使用できるノズルが増加するとともに印刷できる情報量が増え印刷時間が短縮することが可能となる。従って、作業効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェットプリンターの外観斜視図。
【図2】プリンター本体の斜視図。
【図3】インクジェットプリンターの紙送り機構を表す概略図。
【図4】検出部の概略構成を示す図。
【図5】インクジェットプリンターの主要構成を示すブロック図。
【図6】ヘッドの構造を表す概略図。
【図7】ヘッドのノズル配置を示す概略平面図。
【図8】ヘッドの吐出ばらつきの一例を示す図。
【図9】本実施形態の印刷動作の手順を示すフローチャート。
【図10】ノズルごとの吐出ばらつきを平均化させる紙送りパターンの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0016】
(インクジェットプリンター全体構成について)
まず、インクジェットプリンターの全体構成について、図1を参照して説明する。図1はインクジェットプリンターの外観斜視図である。なお、図1に示すX方向は記録用紙の紙搬送方向を示し、Y方向は、記録用紙の幅方向を示し、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向を示す。
【0017】
本発明の実施形態の係るインクジェットプリンター100は、記録用紙としての連続帳票Rをプリンター後側から供給してプリンター前側に排紙するタイプの業務用プリンターである。図1に示すように、インクジェットプリンター100は後述するプリンター本体110(図2参照)を、上ケース11と下ケース12とから構成されるケース10の内部に収容している。ケース10の図中X方向前面中央には紙排出口14が開口し、紙排出口14のX方向後面には紙供給口15が開口している。紙排出口14には、印刷が終了した連続帳票Rを受ける排紙トレイ16が設けられている。ケース10の前面のY方向両側には、動作状態を表示するLEDランプ等からなる表示部17が設けられている。
【0018】
この表示部17のZ方向下方には、黒インクカートリッジ21aを収容するカートリッジ収納部22aの前方を覆うインクカバー18aと、複数のカラーインクカートリッジ21bを収納するカートリッジ収納部22b(図2参照)の前方を覆うインクカバー18bとがそれぞれ左右に設けられている。これらのインクカバー18a、18bは、それぞれ開閉可能に取り付けられており、それぞれのインクカバー18a、18bを開くことで、インクカートリッジ21a、21bを交換することができる。
【0019】
(プリンター本体の構成について)
次いで、ケースに収容されるプリンター本体の構成について、図2を参照して説明する。図2は、プリンター本体の斜視図である。なお、図2に示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向およびZ方向と同一な方向を示す。図2に示すように、プリンター本体110は、インク供給機構20と、印刷機構25と、排液タンク35と、紙搬送機構40と、シャーシ50と、検出部79(図3参照)と、制御装置80(図3参照)とを有している。
【0020】
インク供給機構20は、インクカートリッジ21a、21bが収納されるカートリッジ収納部22a、22bと、図示しないインク加圧部と、同じく図示しないインク供給管とを有する。カートリッジ収納部22a、22bは、上述のインクカバー18a、18bの裏側のシャーシ50にそれぞれ設けられる。カートリッジ収納部22a、22bに収納されるインクカートリッジ21a、21bのインクは、インク加圧部により加圧されてインク供給管を介して印刷機構25に送られる。
【0021】
印刷機構25は、インクジェットヘッド90(以下、ヘッド90という)と、キャリッジ28と、キャリッジ送り機構30と、図示しないメンテナンス機構とを有する。ヘッド90は、インク供給機構20によって供給されるインクをインク滴として吐出する複数のノズル92を有し、ノズル92を図2中Z方向下方、すなわち連続帳票R側に向けてキャリッジ28に搭載される。キャリッジ28は、用紙幅方向(Y方向)に延在するキャッジ軸29に移動可能に支持され、キャリッジ送り機構30によってY方向に往復移動される。キャリッジ送り機構30は、キャリッジモーター32と、キャリッジモーター32によって駆動されるタイミングベルト33とを有する。キャリッジ28は、タイミングベルト33に固定されているため、タイミングベルト33の走行に応じて用紙幅方向(Y方向)に往復移動させられる。
【0022】
メンテナンス機構は、図示しない吸引ユニットと同じく図示しないワイピングユニットとを有している。メンテナンス機構は、キャリッジ28がY方向に移動することにより、キャリッジ28に搭載されたヘッド90に対して、吸引ユニットおよびワイピングユニットを対向させることが出来る。吸引ユニットは、非稼動時にヘッド90のノズル92面を封止してノズル92の乾燥を防止するとともに、ヘッド90のノズル92から増粘したインクを吸引除去する役割を果たす。ワイピングユニットは、ヘッド90のノズル92面に付着する汚れを払拭する役割を果たす。排液タンク35は、フェルト等の不織布を有し、プリンター本体110の下部に設けられ、吸引ユニットで吸引された排インクを収容する。
【0023】
(紙搬送機構の構成について)
ここで、紙搬送機構の構成について、図3を参照して説明する。図3は、紙搬送機構の概略構成を示す図である。なお、図3に示すX方向およびZ方向は、図1に示すX方向およびZ方向と同一な方向を示す。なお、この紙搬送機構は、スプロケットホール(係合孔)を有する連続帳票Rを搬送するものである。
【0024】
図3に示すように、紙搬送機構40は、紙搬送経路41と、第1搬送機構43と、第2搬送機構53と、第3搬送機構63とを備える。紙搬送経路41は、図1および図2に示すインクジェットプリンター100およびプリンター本体110の紙供給口15を起点とし、印刷機構25のヘッド90による印刷位置Aを経由し紙排出口14を終点として図3中X方向に沿って伸びるように形成されている。そして、紙搬送経路41に沿って、上流側から下流側に順次、第1搬送機構43、第2搬送機構53、印刷機構25および第3搬送機構63が設けられている。
【0025】
第1搬送機構43は、紙供給口15近傍に設けられ、1対のトラクター44で構成される。トラクター44は、連続帳票Rのスプロケットホールに挿入可能なトラクターピン(係合部)45と、外周面にトラクターピン45が所定間隔で形成されたトラクターベルト46と、トラクターベルト46が架け渡されている駆動スプロケット47および従動スプロケット48を備えている。1対のトラクター44は、搬送される連続帳票Rの幅方向の両端にあるスプロケットホールに対応するように紙搬送経路41のY方向両側に配置されている。また、1対のトラクター44の駆動スプロケット47のそれぞれは、1対のトラクター44が同期して駆動するように駆動スプロケット軸49によって連結されている。
【0026】
第2搬送機構53は、紙搬送経路41に沿って第1搬送機構43とヘッド90による印刷位置Aとの間、詳しくは、ややヘッド90側に設けられている。第2搬送機構53は、第1紙送りローラー55と、第1紙押えローラー58とを有している。第1紙送りローラー55は、ゴム等の弾性体もしくは粒状体を塗布した焼結体等からなる円柱形状のローラー56とローラー56の軸方向を貫くローラー軸57とから構成され、紙搬送経路41を横断するように紙搬送経路41のZ方向下側に設けられている。
【0027】
第3搬送機構63は、紙搬送経路41に沿ってヘッド90による印刷位置Aと紙排出口14との間、詳しくは、ややヘッド90側に設けられている。第3搬送機構63は、第2紙送りローラー65と第2紙押えローラー68とを有している。第2紙送りローラー65は、ゴム等の弾性体もしくは粒状体を塗布した焼結体等からなる円柱形状のローラー66とローラー66の軸方向を貫くローラー軸67とから構成され、紙搬送経路41を横断するように紙搬送経路41のZ方向下側に設けられている。
【0028】
なお、本実施形態の紙搬送機構40は、第1搬送機構43のトラクター44による搬送をメイン搬送として、第2搬送機構53および第3搬送機構63による搬送を補助としている。さらに、第2搬送機構53と第3搬送機構63との関係においても、第3搬送機構63は第2搬送機構53の補助として位置づけられている。
【0029】
(検出部の構成について)
ここで、検出部の構成について、図4を参照して説明する。図4は、検出部の概略構成を示す図である。図4に示すように、検出部79は、上述のメンテナンス機構が設置される位置に設けられ、受容部71と電子天秤72とを備える。受容部71は、箱状を呈し、内部には吸収材73が充填されている。吸収材73は、インクの吸収能力の優れた材料から構成されており、例えば、ポリビニルアルコールの連続多孔質体などが採用され得る。
【0030】
電子天秤72は、被測定物載置台74に上述の受容部71を保持している。受容部71の開口部71aは、ヘッド90の待機位置で、ヘッド90のノズル92群と対向配置されている。このような構成を有する検出部79は、吸収材73が、ヘッド90からインクの吐出を受けて、吸収材73を介して収集されたインクの重量をノズル92ごとに電子天秤72で測定する。すなわち、ヘッド90のノズル92ごとのインク吐出量を測定してヘッド90全体として吐出状態を把握する。
【0031】
(インクジェットプリンターの制御について)
次いで、上述のインクジェットプリンターの制御系について、図5を参照して説明する。図5は、インクジェットプリンターの主要構成を示すブロック図である。図5に示すように、インクジェットプリンター100は、ヘッド90を有する印刷機構25、キャリッジ送り機構30、紙搬送機構40、検出部79を有するプリンター本体110と、これらを総括制御する制御装置80とを備えている。
【0032】
制御装置80は、制御系の主要部となる制御部81と、ヘッド90を駆動制御するヘッドドライバー82と、インク供給機構20、紙搬送機構40、およびキャリッジ送り機構30を駆動するモータードライバー84と、インターフェイス部85とを備えている。制御部81は、CPU(Central Processing Unit)86と、情報処理部87と、記憶部88とを備えている。CPU86は、検出部79やその他図示しない操作系や検出系からの入力信号、印刷処理などの各種処理を実行する。情報処理部87は各種情報を処理する。
【0033】
記憶部88は、図示しないRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを含んだ構成を有している。RAMは、ホストコンピューター89からインターフェイス部85を介して入力される印刷データなどの各種データを一時的に格納したり、CPU86によって実行される印刷処理などのプログラムを一時的に展開したりする。ここで、印刷データは、ヘッド90で連続帳票Rに印刷すべきパターンを指示するものである。
【0034】
ヘッドドライバー82は、CPU86からの指令に基づいて、ヘッド90を制御する。モータードライバー84は、CPU86からの指令に基づいて、紙搬送機構40およびキャリッジ送り機構30のそれぞれのモーターを個別に制御する。インターフェイス部85は、ホストコンピューター89から受け取った印刷データ等を制御部81に出力したり、制御部81から受け取った各種情報をホストコンピューター89に出力したりする。
【0035】
(ヘッドの構造について)
次いで、ヘッドの構造について、図6を参照して説明する。図6はヘッドの構造を表す概略図であり、(a)は概略分解斜視図、(b)はノズル部の構造を示す断面図である。
【0036】
図6(a)および(b)に示すように、ヘッド90は、液滴Dが吐出される複数のノズル92を有するノズルプレート91と、複数のノズル92がそれぞれ連通するキャビティ95を区画する隔壁94を有するキャビティプレート93と、各キャビティ95に対応する駆動素子としての振動子99を有する振動板98とが、順に積層され接合された構造となっている。
【0037】
インクは、インク供給機構20から配管を通じて供給され、振動板98に設けられた供給孔98aを通じてリザーバに貯留された後に、流路97を通じて各キャビティ95に充填される。
【0038】
図6(b)に示すように、振動子99は、ピエゾ素子99cと、ピエゾ素子99cを挟む一対の電極99a、99bとからなる圧電素子である。外部から一対の電極99a、99bに駆動信号としての駆動波形が印加されることにより接合された振動板98を変形させる。これにより隔壁94で仕切られたキャビティ95の体積が増加して、インクがリザーバからキャビティ95に吸引される。そして、駆動波形の印加が終了すると、振動板98は元に戻り充填されたインクを加圧する。これにより、ノズル92からインクを液滴Dとして吐出できる構造となっている。ピエゾ素子99cへ印加される駆動波形を制御することにより、それぞれのノズル92に対してインクの吐出制御を行うことが出来る。
【0039】
ヘッド90における駆動素子は、圧電素子に限らない。振動板を静電吸着により変異させる電気機械変換素子や、インクを加熱してノズル92から液滴として吐出させる電気熱変換素子(サーマル方式)でもよい。
【0040】
(ヘッドの吐出動作について)
次いで、ヘッドの吐出動作について、図7および図8を参照して説明する。図7は、ヘッドにおけるノズルの配置を示す概略平面図である。図8は、ヘッドの吐出ばらつきの一例を示す図であり、詳しくは、ヘッドの各ノズルの吐出特性を示すグラフである。なお、図7に示すX方向およびY方向は、図1に示すX方向およびY方向と同一な方向を示す。
【0041】
図7に示すように、ヘッド90は、複数(例えば、180個)のノズル92がX方向に一定のピッチPを隔てて列状に配置され、ノズル列92aおよびノズル列92bを形成している。このノズル列92aと、ノズル列92aとは、Y方向に一定の間隔を隔てて配置されるとともに、X方向に互いにハーフピッチ(P/2)ずらした位置に配設されている。このことにより、ヘッド90全体では、実質的なノズルピッチを狭くしている。また、各ノズル列92aおよびノズル列92bは、X方向に長さMとなるように形成されている。
【0042】
図8は、換言すると、一方の軸(横軸)をノズル92の配置番号(例えば、#1から#180)とし、他方の軸(縦軸)をノズル92毎に吐出される液滴Dの吐出量Iw(ng)として、1つのノズル列92aもしくはノズル列92bにおけるインク吐出量の分布を示したグラフである。
【0043】
図6(a)および(b)に示したように、複数のノズル92から吐出される液滴Dの吐出量は、キャビティ95、流路97の設計数法やその加工精度によってキャビティ95毎に流れるインクの流動抵抗が異なることにより、ノズル92毎に変動する可能性がある。また、インクが供給される供給孔98aが複数のキャビティ95に対してどのような位置に形成されたかにも影響される。すなわち、ノズル列92aもしくはノズル列92bから吐出されるインクの吐出量の分布がヘッド90毎に異なる場合がある。
【0044】
図8は、あるヘッド90のノズル列92aの吐出特性を前述の検出部79で調べたものである。図8に示すように、その吐出特性の一つは、例えば、Iwアーチと呼ばれる曲線形状を示し、ノズル列92aの両端側に位置するノズル92から吐出されるインクの吐出量Iwが、中央付近に位置する他のノズル92に対して増加する傾向を有している。
【0045】
(インクジェットプリンターの印刷動作について)
次いで、インクジェットプリンターの動作について、図9および図10を参照して説明する。図9は、本実施形態の印刷動作の手順を示すフローチャートである。図10は、ノズルごとの吐出ばらつきを平均化させる紙送りパターンの一例を示す図である。
【0046】
図9に示すように、インクジェットプリンターの動作は、吐出量測定工程S1と、ヘッドグルーピング工程S2と、紙送りパターン読み出し工程S3と、画像印刷工程S4とを有する。
【0047】
まず、吐出量測定工程S1では、図4に示す検出部79を用いて、ヘッド90のノズル92ごとのインク吐出量を測定する。そして、その測定結果に基づいて、図8に示すように、測定されたヘッド90の吐出特性を示すグラフを作成する。なお、この作業は図5に示すインクジェットプリンター100の制御部81の情報処理部87において行われる。
【0048】
次いで、ヘッドグルーピング工程S2では、吐出量測定工程S1で求められた当該ヘッド90のインク吐出量のばらつき具合に基づいて当該ヘッド90をグループ分けする。なお、ヘッド90のグループについては、予め評価等によって起こり得るばらつきパターンを複数のグループ化してその結果を図5に示すインクジェットプリンター100の制御部81の記憶部88に記憶させておく。本実施形態では、図8に示すインク吐出量のばらつきが得られたとし、このばらつきパターンを有するヘッド90を、例えばAグループに属するヘッド90と規定する。
【0049】
次いで、図9に示す紙送りパターン読み出し工程S3では、ヘッドグルーピング工程S2で得られた結果を元に、インクジェットプリンター100の記憶部88に記憶された紙送りパターンを読み出す。なお、この紙送りパターンは、上述のヘッド90のグループに対応して、インク吐出ばらつきを補正できるような紙送りパターンとして予め設定されている。本実施形態では、例えばAグループに属するヘッド90に対応して、後述する紙送りパターンA´が読み出されたとする。
【0050】
次いで、画像印刷工程S4では、紙送りパターン読み出し工程S3で読み出された紙送りパターンA´に従い、紙搬送機構40を制御し連続帳票Rを紙送りし、ヘッド90を用い情報を連続帳票Rに対して印刷する。
【0051】
ここで、紙送りパターンA´について、図8および図10を参照して説明する。Aグループに属するヘッド90の全ノズル92(#1〜#180)を用いて記録用紙に印刷する(1パス印刷)と、図8に示す吐出ばらつきを有するため、1ライン中において、#1および#180に近い両端部分の印刷が濃くなり、#90を中心とした内側が薄くなってしまう。そのため、図10に示すように、1パス目の印刷が終了した後、図3に示す紙搬送機構40を用い、連続帳票RをX方向にノズル列92aの印刷可能長さMの半分の量(M/2)だけ紙送りする。
【0052】
そして、2パス目の印刷(2パス印刷)を行う。このようにすることにより、図8に示す#90を中心としたインク吐出量の少ないノズル92が印刷した部位に、#1に近い両端部分のインク吐出量の多いノズル92を割り当てることができる。また、#180に近い両端部分のインク吐出量の多いノズル92が印刷した部位に、#90を中心としたインク吐出量の少ないノズル92を割り当てることができる。このようにして、連続帳票RをX方向にノズル列92aの印刷可能長さMの半分の量(M/2)だけ紙送りしながら、3パス印刷、4パス印刷と行う。
【0053】
以下、本実施形態の効果を記載する。
例えば、図8の吐出ばらつきを持つヘッド90を図10の紙送りパターンA´で送りながら印刷することによって、ノズル92のうち、インク吐出量の大きいノズル92と少ないノズル92とを組み合わせることができ、連続帳票R 上の印刷画像のドット濃度を平均化することが可能となる。そのため、インクの吐出ばらつきが大きいヘッド90であっても、ヘッド90の全ノズル92を使用することができる。その結果、使用するノズル92の数を増やすことができ、印刷品質を確保しつつ効率的な印刷を実現できる。
【0054】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0055】
(第1変形例)上記実施形態では、インクジェットプリンター100の内部で検出部79を用いてヘッド90のインク吐出量のばらつきを測定したが、ヘッド90のインク吐出量のばらつきは、組み立てる前にヘッド90単体で測定してもよい。その場合は、ヘッド90をグループ分けしたグループ識別番号をヘッド90に付与する。付与する方法は、例えばバーコードを印刷したラベルでもよいし、IC等に情報として記憶させてもよい。
【0056】
この場合は、ヘッド90に付与されたグループ番号をインクジェットプリンター100に設けられたグループ番号読み取り手段で読み取り、紙送りパターン読み出し工程S3で当該ヘッド90に対応する紙送りパターンを読み出せばよい。本第1変形例においても上述の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0057】
(第2変形例)上記実施形態で説明したヘッド90の吐出ばらつき、およびそれに対応する紙送りパターンは例示であり、これに限定されない。ヘッド90の吐出ばらつき、およびそれに対応する紙送りパターンが多くの組み合わせが想定される。パス印刷において、全体として、インク吐出量の大きいノズル92が印刷する部分とインク吐出量の少ないノズル92が印刷する部分とを組み合わせることができればよい。
【符号の説明】
【0058】
10…ケース、20…インク供給機構、25…印刷機構、28…キャリッジ、40…紙搬送機構、79…検出部、80…制御装置、81…制御部、82…ヘッドドライバー、84…モータードライバー、86…CPU、87…情報処理部、88…記憶部、90…ヘッド、92…ノズル、92a、92b…ノズル列、100…インクジェットプリンター、110…プリンター本体、R…連続帳票、S1…吐出量測定工程、S2…ヘッドグルーピング工程、S3…紙送りパターン読み出し工程、S4…画像印刷工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙送り方向と直交する方向にヘッドを移動させながら、前記紙送り方向に沿って配列されたノズルからインクを吐出して情報を印刷するインクジェットプリンターの制御方法であって、
前記ヘッドの前記ノズル毎の吐出量を測定する吐出量測定工程と、
前記吐出量測定工程で測定された前記吐出量のばらつきに基づいて、前記ヘッドをグループ分けするヘッドグルーピング工程と、
前記ヘッドの前記グループに対応して予め決められている紙送りパターンをデータとして記憶している記憶手段から、前記ヘッドの前記グループに応じた前記紙送りパターンを読み出す紙送りパターン読み出し工程と、
読み出された前記紙送りパターンで紙を送りながら情報を印刷する紙送り印刷工程と、を有することを特徴とするインクジェットプリンターの制御方法。
【請求項2】
前記ヘッドグルーピング工程において、前記吐出量測定工程で測定された前記吐出量のばらつきに基づいて、前記ヘッドをグループ分けして、前記グループを特定する識別記号を前記ヘッドに付与することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンターの制御方法。
【請求項3】
前記紙送り印刷工程は、前記ヘッドの前記紙送り方向と直交する方向への移動において、前記ヘッドから前記インクが吐出される被吐出領域が前記紙送り方向で重なる領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンターの制御方法。
【請求項4】
前記紙送りパターンは、前記グループに代表される前記ヘッドの吐出ばらつきを補正することができるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンターの制御方法。
【請求項5】
紙送り方向と直交する方向にヘッドを移動させながら、前記紙送り方向に沿って配列されたノズルからインクを吐出して記録用紙に情報を印刷するインクジェットプリンターであって、
前記ヘッドの前記ノズル毎の吐出量を測定する検出部を備え、
前記検出部で検出された前記吐出量のばらつきに基づいて、前記ヘッドをグループに分けて、
前記ヘッドの前記グループに対応して予め決められている紙送りパターンを用いて、紙送りされる記録用紙に、前記ヘッドからインクを吐出して情報を記録することを特徴とするインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−111846(P2013−111846A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259922(P2011−259922)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】