説明

インクジェットプリンタ及びインクジェットヘッド洗浄液

【課題】簡単な機構でインクジェットヘッド吐出口付近のインク汚れを除去でき、定着性樹脂の添加量を増量した水性顔料インクや、顔料濃度を高めた水性顔料インクであっても、長期にわたり安定した出射特性を維持できるインクジェットプリンタと、それに用いるインクジェットヘッド洗浄液を提供する。
【解決手段】水性顔料インクを吐出して、記録媒体上に画像を形成するインクジェットヘッド3と、該インクジェットヘッド3の吐出口11を洗浄する洗浄機構5Bを具備したインクジェットプリンタであって、該洗浄機構5Bは、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有するインクジェットヘッド洗浄液16を用いて洗浄する機構を有するインクジェットプリンタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド洗浄機構を備えたインクジェットプリンタとそれに用いるインクジェットヘッド洗浄液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、微小なインク液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録媒体に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。上記インクジェット記録方式では、インク、インクジェット記録媒体及びインクジェット記録装置の各分野で様々な改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、様々な分野に急速に普及している。特に、最近ではプリンターの高画質化が進み写真画質に到達している。
【0003】
インクジェット記録方式で用いられるインクジェットプリンタとしては、印字速度向上のため、複数の記録素子を集積配列した記録ヘッド(以下、マルチヘッドともいう)として、インク吐出口(ノズル部)及びインク液路を複数集積したものが用いられている。更に、カラー対応として、複数個の上記構成からなる記録ヘッドを備えたものも多く用いられている。その場合、各色のインクを射出するヘッドが、主走査方向に並列に配置されるのが一般的である。
【0004】
微小液滴を飛翔させるインクジェット記録においては、細いノズルから色材を含むインク液を記録媒体上に吐出して画像を形成する方式のため、色材の1つとして、水に可溶な水溶性染料が用いられる。この様な水系染料インクは、その吸収スペクトルがシャープであり高純度で鮮明な発色を示す。更に粒子性がなく、散乱光、反射光が発生しないので、透明性が高く色相も鮮明である等の特性を備えている。しかしながら、染料で形成した画像は、染料自身の耐久性が低いために、高い画像保存性を求められる画像を得ることができないという課題を抱えている。
【0005】
一方、高い画像保存性を得る観点から、色材として顔料を使用する顔料インクを用いたインクジェット記録方法が知られている。水性顔料インクは、顔料を水媒体中に微粒子状態で分散してインクを調製するものであり、顔料自身が高い耐光性、耐オゾン褪色性を有しているため、得られる画像の画像保存性は、染料を用いたものに比べ著しく高めることができる。この様な特性を備えた水性顔料インクは、大判のインクジェットプリントを中心に広く使用されている。しかしながら、顔料を用いたインクでは、顔料粒子が記録媒体の中に染み込まず表面に析出する結果、形成した画像面の耐擦過性が劣るという課題を抱えているため、掲示物等で用いた場合、その使用できる期間が制限を受けたり、あるいは表面に更にラミネート加工を施して使用するという煩雑さを伴うことを余儀なくされている。
【0006】
この様な水性顔料インクにより形成した画像の耐擦過性を向上させる手段として、水性顔料インク中に水溶性樹脂や定着性樹脂を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。この様な各樹脂をインク中に添加することで、確かに、形成した画像の耐擦過性向上は図れるものの、インクの液特性が大きく変化し、特に、インクジェットヘッドの吐出口(ノズル部)近傍に付着したインクが乾燥して樹脂皮膜を形成したり、あるいは形成された樹脂皮膜に更にゴミ等が付着することにより、インク出射時に出射曲がりやノズル欠を引き起こすなど、出射安定性という観点での影響が大きい。
【0007】
一方、高速印字適性を付与し、高濃度の画像を得る観点から、吐出するインク液滴量を微小化すると共に、顔料濃度を高めたインクの検討がなされている。しかしながら、顔料濃度を高めたインクは、上記と同様に、インクジェットヘッドの吐出口近傍に付着したインクが乾燥することにより、インク出射時に出射曲がりやノズル欠を引き起こすなど、出射安定性という観点での影響が大きい。
【0008】
上記課題に対し、インクジェットヘッドの吐出口近傍に付着したインクを除去する方法として、特定の界面活性剤を含有するpHが11未満のアルカリ性の水性洗浄液を具備したインクジェットプリンタが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
しかしながら、特許文献3で開示された技術の範囲では、十分にインクジェットヘッドを洗浄することが出来ないのが現状である。特に、上述したような耐擦過性向上を目的とした定着性樹脂等の添加量を増量した水性顔料インクや、顔料濃度を高めた水性顔料インクについては、インクジェットヘッドの吐出面に付着し、固化したインクを十分に洗浄するまでに至らず、早急な技術開発が望まれている。
【特許文献1】特開平10−316907号公報
【特許文献2】特開2007−23161号公報
【特許文献3】特開平11−263022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡単な機構でインクジェットヘッド吐出口付近のインク汚れを除去でき、定着性樹脂の添加量を増量した水性顔料インクや、顔料濃度を高めた水性顔料インクであっても、長期にわたり安定した出射特性を維持できるインクジェットプリンタと、それに用いるインクジェットヘッド洗浄液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.水性顔料インクを吐出して、記録媒体上に画像を形成するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドの吐出口を洗浄する洗浄機構を具備したインクジェットプリンタであって、該洗浄機構は、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有するインクジェットヘッド洗浄液を用いて洗浄する機構を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【0013】
2.前記洗浄機構が、前記インクジェットヘッド洗浄液を付着させたクリーニング部材を用いて、前記インクジェットヘッドの吐出口をワイピングする機構であることを特徴とする前記1に記載のインクジェットプリンタ。
【0014】
3.前記インクジェットヘッド洗浄液が含有する表面張力が35mN/m未満の溶剤が、アルキレングリコールモノエーテル類及びアルカンジール類から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤であることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【0015】
4.前記水性顔料インクから構成されるインクセットが、少なくともイエロー顔料インク、マゼンタ顔料インク、シアン顔料インク及びブラック顔料インクから構成され、少なくとも1色の水性顔料インクは、インク全質量に対する顔料固形分量が6.0質量%以上で、かつ総樹脂固形分量が6.0質量%以上であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【0016】
5.画像形成時に、前記記録媒体を加熱する加熱機構を有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【0017】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタに用いるインクジェットヘッド洗浄液であって、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有することを特徴とするインクジェットヘッド洗浄液。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、簡単な機構でインクジェットヘッド吐出口付近のインク汚れを除去でき、定着性樹脂の添加量を増量した水性顔料インクや、顔料濃度を高めた水性顔料インクであっても、長期にわたり安定した出射特性を維持できるインクジェットプリンタと、それに用いるインクジェットヘッド洗浄液を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、水性顔料インクを吐出して、記録媒体上に画像を形成するインクジェットヘッドと、該インクジェット記録ヘッドの吐出口を洗浄する洗浄機構を具備したインクジェットプリンタであって、該洗浄機構は、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有するインクジェットヘッド洗浄液を用いて洗浄する機構を有することを特徴とするインクジェットプリンタにより、インクジェットヘッド吐出口付近のインク汚れを除去でき、定着性樹脂の添加量を増量した水性顔料インクや、顔料濃度を高めた水性顔料インクであっても、長期にわたり安定した出射特性を維持できるインクジェットプリンタを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0021】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0022】
《インクジェットプリンタ》
はじめに、本発明のインクジェットプリンタの構成及び洗浄機構の詳細について説明する。
【0023】
〔インクジェットプリンタ〕
本発明のインクジェットプリンタで、水性顔料インク(以下、単にインクともいう)を吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう)はオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも適用することができる。
【0024】
また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(シングルキャビティ型、ダブルキャビティ型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等何れの吐出方式を用いても構わないが、本発明の好ましい態様では、顔料固形分、樹脂固形分ともに高いインクを用いて高濃度かつ高い定着性を有するが画像を形成するため、ピエゾ方式のほうが好ましい。
【0025】
本発明のインクジェットプリンタは、主に、水性顔料インクを吐出して画像形成するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドのインク吐出口を洗浄する洗浄機構を具備したインクジェットプリンタであって、該洗浄機構は、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有するインクジェット洗浄液(以下、単に洗浄液ともいう)を用いて洗浄するプロセスを含むことを特徴とするインクジェットプリンタである。
【0026】
インクジェットヘッドはキャリッジに搭載され、キャリッジがレール上を移動するいわゆるシャトルタイプが種々のサイズの記録媒体に適応できることで好ましい。インクジェットヘッドが移動しうる範囲に、少なくともキャップを配した部分、記録媒体を配してプリントする印字部分及び、インクジェットヘッド洗浄機構を配することが好ましい態様である。さらに、ヘッド交換などを行うためのメンテナンス部分を配することが好ましい。
【0027】
以下、図を用いて、本発明のインクジェットプリンタの詳細について述べるが、本発明は例示する図に記載の構成のみに限定されるものではない。
【0028】
図1は、インクジェットプリンタの主要構成の一例を示す概略斜視図である。
【0029】
インクジェットプリンタ1は、記録媒体2にインクを吐出し印字を行うものであり、その印字を行う部分の主要構成として、図1に示すように、記録媒体2を印字時に前方へ搬送させる搬送手段(図示省略)と、記録媒体2にインクを吐出するインクジェットヘッド(ヘッド)3と、複数色毎のインクジェットヘッド3を収納するキャリッジ4と、インクジェットヘッド3のメンテナンスを行う吸引キャップ5Aと、本発明に係る洗浄機構5Bを有するメンテナンスユニット5と、印字時或いはメンテナンス時等にキャリッジ4を主走査方向(矢印A)に沿って案内するガイドレール6と、前記キャリッジ4の待機所となる保湿キャップ8を有するホームポジション7と、これら各部の制御を行う制御部(図示省略)とを備えている。Cはインクカートリッジ、インクカートリッジCから送られた各インクは一旦サブタンクTに蓄えられたうえ、供給弁Vを通して、インク供給路Pを通って記録ヘッドに送られる構成となっている。
【0030】
記録媒体の搬送手段は、印字時において、キャリッジ4の動作にタイミングを合わせて、記録媒体2を印字領域9上で搬送し、印字の終了に応じて、記録媒体2は印字領域から下方(矢印B)に向かって搬送される。
【0031】
ホームポジション7には、記録ヘッドのノズル面を保湿する保湿キャップ8が、記録ヘッド3と同数設けられており、キャリッジ4の待機中においては、記録ヘッド3のノズル面を覆って密閉している。
【0032】
加えて、本発明のインクジェットプリンタにおいては、様々な特性からなる記録媒体に対して、インク混じりを抑制する目的から、プリントする記録媒体を予め加熱する、あるいはプリント時に記録媒体を加熱する機構を備えることが好ましい態様の1つである。
【0033】
図2は、インクジェットプリンタのメンテナンス工程及び印字工程の一例を示す概略図である。
【0034】
図2のa)において、休止状態にあるキャリッジ4に搭載されたインクジェットヘッド3は、メンテナンスユニット5上の吸引キャップ5Aが装着された状態にあり、吸引キャップ5Aはインクジェットヘッド3をキャップして、外気と接触している吐出口にあるインクの乾燥を防止する機構になっている。加えて、吸引キャップ5Aはサクション機能を備えており、吐出口より一定量のインクをインクジェットヘッド3から吸い出すこともできる。
【0035】
メンテナンスユニット5には、複数の吸引キャップ5A群に隣接した位置に洗浄機構5Bが設けられており、図2のb)に示すように、印字前のインクジェットヘッド3を、例えば、ゴム製のワーピングブレードを用い、本発明に係るインクジェット洗浄液を保持した状態で、吐出口の洗浄を行う。なお、詳細な洗浄方法に関しては、後述する。
【0036】
上記の吐出口の洗浄操作が完了したキャリッジ4は、図2のc)に示す様に、ガイドレール6により、印字位置に移動した後、記録媒体2上にインクを吐出して、画像形成を行う。この時、本発明においては、記録媒体搬送部の下部に、記録媒体を加熱するヒーターHを設置し、必要に応じて記録媒体背面より加熱処理を施すことが好ましい。
【0037】
〔洗浄機構〕
本発明のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッド吐出口を洗浄する洗浄機構を具備したプリンターであって、該洗浄機構は、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有するインクジェット洗浄液を用いて洗浄するプロセスを含むことを特徴とするのである。
【0038】
本発明で規定する構成からなる洗浄機構を用いることにより、本発明の効果が発現するメカニズムは明らかにはなっていないが、以下のように推測している。
【0039】
水性顔料インク、特に、顔料濃度が高い水性顔料インク、あるいは樹脂成分が多い水性顔料インクを用いる場合、インクジェットヘッドに付着し、乾燥したインク皮膜を除去するには、2つの機能が必要と考えられる。1つは、インクジェットヘッド部材とインク皮膜の界面に作用し、インク皮膜を浮かす役割である。通常、インクジェットヘッドの吐出口付近は、インクをはじきやすくするための撥水コーティングが施されており、そのため、吐出口近傍はインクが付着しにくい状態にあるが、一端インクが付着して乾燥すると、洗浄液がインクジェットヘッド部材とインク皮膜の界面に侵入しにくいためか、除去しにくい。本発明のインクジェット洗浄液の洗浄効果が大きいのは、表面張力が35mN/m未満の溶剤を用いたことで、短時間の接触でも効果的にインクジェットヘッド部材とインク皮膜の界面に浸透するためと考えている。同様の効果は、界面活性剤を用いることによっても期待はできるが、その効果は十分とは言えず、また洗浄液の界面活性剤がヘッドに残留しやすく、インク皮膜等を吐出口から除去した後、射出性等に影響を与える場合があり好ましくない。
【0040】
もう一つの機能は、インク中の樹脂を再溶解あるいは再分散する機能である。インクジェットヘッド部材からインク汚れを除去するとき、同時にインク皮膜成分を溶解または分散することは、インクジェットヘッドへの再付着を防止する効果も期待でき好ましい。また、ワイピングを行う場合でも、固形分をそのまま除去するほどの力を付与しなくても、その場合、汚れを溶解力により液状に戻すことで完全に除去できると思われる。その意味でも、インク中の樹脂を再溶解あるいは再分散する機能が重要である。
【0041】
本発明に係る洗浄機構において、インクジェット洗浄液を用いてインクジェットヘッドを洗浄するプロセスは特に限定されないが、1)洗浄液をヘッド吐出口に付与するプロセス、2)ヘッド吐出口に付着したインク成分を除去するプロセスの両方を含むことが好ましい。特に、インクジェット洗浄液の付着した部材にてヘッドをワイピングする方法は、装置が簡単でかつ洗浄効果が大きく好ましい。ワイピング部材は、ゴムなどの樹脂部材を好ましく用いることができ、例えば、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレンゴムなどを用いることができる、なかでもEPDMが好ましい。
【0042】
図3は、本発明の洗浄機構による吐出口の洗浄プロセスの一例を示す模式図である。
【0043】
本発明においては、図3に記載の洗浄機構を用いて、図2のb)の位置に移動したインクジェットヘッド3に対し、本発明に係る洗浄機構により、インク吐出面をクリーニングブレートを用いたワイピングにより洗浄を施すことが好ましい態様の1つである。
【0044】
図3において、インクジェットヘッド3は、インク貯留部10とそれを吐出する吐出口11を有し、吐出面には撥水プレート12が設けられている。一方、洗浄機構5Bは、洗浄液容器13中に本発明に係るインクジェット洗浄液16が充填されており、インクジェット洗浄液16中には、回転軸14に取り付けられたブレード状のワイピング部材15が設置されている。
【0045】
このワイピング部材15は、回転軸14の回転により、ポジションP1〜P7まで回転をしながら移動していく。ポジションP1、P2はインクジェット洗浄液16中を移動し、液外に移動する時にインクジェット洗浄液13を同伴しながら回転し、ポジションP3でインクジェットヘッド下部に接触を開始し、撥水ブレード12に付着したインク皮膜を、剥離あるいは溶解して、撥水プレート12面の洗浄を行う。洗浄が終了したワイピング部材15は、ポジションP7で再び液中に浸漬して、インクジェット洗浄液16により、ワイピング部材15に付着したインク皮膜等を溶解、除去した後、ポジションP1に戻る。
【0046】
図3においては、回転軸14の1枚のブレード状のワイピング部材15を取り付けた例を示したが、一定の間隔をおいて、2枚、3枚、4枚等の複数枚設置した構成を取っても良い。
【0047】
(インクジェットヘッド洗浄液)
次いで、本発明に係る洗浄機構に適用するインクジェット洗浄液について説明する。
【0048】
本発明に係る洗浄液は、塩基成分を含有しておりインク中に使用される酸成分含有樹脂の再溶解もしくは再分散に効果的である。
【0049】
本発明に係る洗浄液は、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有することを必須の要件とする。
【0050】
インクジェットプリンタに適用する洗浄液に求められる機能としては、長期間にわたり安定して洗浄能力を維持し、かつ洗浄後のインクジェットヘッドの射出特性に影響を与えないことが重要である。
【0051】
本発明に係る洗浄液においては、表面張力が35mN/m未満の溶剤を含有することを1つの特徴とするが、表面張力が35mN/m未満の溶剤としては、アルキレングリコールモノエーテル類あるいはアルカンジオール類が好ましい。
【0052】
本発明に係る洗浄液に好適に用いることができるアルキレングリコールモノエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(28.2)、エチレングリコールモノブチルエーテル(27.4)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(31.8)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(33.6)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(32.1)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(25.9)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(28.8)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(30.0)等が挙げられる。なお、括弧内の数値は表面張力値(mN/m)を表す。
【0053】
また、本発明に係る洗浄液に好適に用いることができるアルカンジオール類としては、1,2−アルカンジオール類が好ましく、例えば、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール(28.1)、1,2−ヘプタンジオール等が挙げられる。
【0054】
上記各溶剤の中でも、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが、特に好ましい。
【0055】
本発明において、溶剤の表面張力の測定方法としては、一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することができ、具体的には、輪環法(デュヌーイ法)、垂直板法(ウィルヘルミー法)を用いて求めることができる。本発明では、具体的には、表面張力は、表面張力計CBVP式A−3型(協和科学株式会社)を用いて測定した。
【0056】
また、本発明に係る洗浄液は、表面張力が35mN/m未満の溶剤と共に塩基性化合物を含有することを特徴とする。
【0057】
本発明に適用可能な塩基性化合物としては、無機塩基化合物でも有機塩基化合物でもよいが、有機塩基化合物を用いることがより好ましい。
【0058】
無機塩基化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、炭酸水素カリウムや、炭酸水素ナトリウムなどの重炭酸塩を用いることができる。
【0059】
有機塩基化合物としては、アンモニア、アルカノールアミン類、アルキルアミン類等を用いることができる。
【0060】
有機塩基化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N,−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジブチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノールなどを用いることができる。
【0061】
中でも、アンモニア、N,N,−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジブチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、N,N−ジエチルアミノエタノールを好ましく用いることができる。
【0062】
本発明に係る洗浄液には、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、界面活性剤、保湿剤、防培剤などを添加しても良い。
【0063】
《水性顔料インク》
次いで、本発明のインクジェットプリンタに適用する水性顔料インクの構成について説明する。
【0064】
本発明のインクジェットプリンタに適用する水性顔料インクとしては、特に制限はないが、本発明に係る洗浄機構による効果を十分に発揮できる観点から、少なくともイエロー顔料インク、マゼンタ顔料インク、シアン顔料インク及びブラック顔料インクの4色顔料インクから構成されるインクセットを用い、少なくとも1色の水性顔料インクが、インク全質量に対する顔料固形分量が6.0質量%以上で、かつ総樹脂固形分量が6.0質量%以上であることが好ましい。その中でも、特に、ブラック顔料インクの顔料固形分が6.0%以上であることが好ましい。
【0065】
(顔料)
本発明に用いることができる顔料としては、水系で安定に分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、顔料単体の他、高分子樹脂により分散した顔料分散体、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料、顔料表面を修飾し、分散樹脂を用いなくても分散可能な自己分散顔料等を挙げることができる。特に、インクの保存性を重視する場合は、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料を選択することが好ましい。
【0066】
高分子樹脂により分散した顔料分散体を用いる場合、高分子樹脂としては水溶性のものを用いることができる。水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、例えば、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のような水溶性樹脂等を挙げることができる。
【0067】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0068】
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましく用いられる。
【0069】
また、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料を用いる場合、水不溶性樹脂とは弱酸性乃至弱塩基性の範囲の水に対して不溶な樹脂であり、好ましくはpH4乃至10の水溶液に対する溶解度が2%未満の樹脂である。
【0070】
このような樹脂としては、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、酢酸ビニル−塩化ビニル系、ポリウレタン系、シリコン−アクリル系、アクリルシリコン系、ポリエステル系、エポキシ系の各樹脂を挙げることができる。
【0071】
また、樹脂として疎水性モノマーと親水性モノマーとを共重合した樹脂を用いることができる。
【0072】
疎水性モノマーとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等)、スチレン等が挙げられる。
【0073】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられ、アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
【0074】
樹脂の分子量としては、平均分子量で3000から500000のものを用いることができる。好ましくは7000から200000のものを用いることができる。樹脂のTgは、−30℃から100℃程度のものを用いることができる。好ましくは−10℃から80℃程度のものを用いることができる。
【0075】
重合方法としては、溶液重合、乳化重合を用いることができる。重合は予め顔料と別途合成してもよいし、顔料を分散した系ないにモノマーを供給して、重合してもよい。
【0076】
顔料を樹脂で被覆する方法としては公知の種々の方法を用いることができるが、好ましくは展相乳化法や酸析法の他に顔料を重合性界面活性剤を用いて分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法から選択することがよい。より好ましい方法としては、水不溶性樹脂をメチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解し、更に塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、もしくは完全に中和後、顔料及びイオン交換水を添加し、分散した後、有機溶剤を除去、必要に応じて加水し、調製する製造方法が好ましい。
【0077】
顔料と樹脂の質量比率は、顔料/樹脂比で100/40から100/150の範囲で選択することができる。特に画像耐久性と射出安定性やインク保存性が良好なのは100/60から100/110の範囲である。
【0078】
水不溶性樹脂で被覆された顔料粒子の平均粒子径は、80乃至150nm程度がインク保存安定性、発色性の観点から好ましい。
【0079】
また、自己分散顔料としては表面処理済みの市販品を用いることもでき、例えば、CABO−JET200、CABO−JET300(キャボット社製)、ボンジェットCW1(オリエント化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0080】
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0081】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0082】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0083】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0084】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0085】
(樹脂成分)
本発明に係る水性顔料インクにおいては、記録媒体への定着性を高め、耐擦性、接着性、耐水性などを高めるため、樹脂成分を含有することが好ましい。
【0086】
樹脂成分としては、従来から用いられている顔料分散用樹脂として用いても良いし、インク調製時に追加添加したものでもよい。
【0087】
本発明においては、少なくとも1色の水性顔料インクが、樹脂成分固形分としてインク中に6.0質量%以上含有することが、定着性を高める上で好ましい。
【0088】
本発明でいう樹脂成分とは、水溶性樹脂であっても水分散性樹脂であってもよく、両者を併用しても良い。
【0089】
水溶性樹脂としては、樹脂中に疎水性成分と親水性成分をあるバランスで有するものを設計して用いる。この際、親水性成分としてはイオン性のもの、ノニオン性のものどちらを用いてもよいが、より好ましくはイオン性のものであり、更に好ましくはアニオン性のものである。特に、アニオン性のものを揮発可能な塩基成分で中和することで水溶性を付与したものが好ましい。特に、インク溶解性樹脂の少なくとも1種は酸性基としてカルボキシル基またはスルホン酸基を有しており、且つ酸価が80mgKOH/g以上、300mgKOH/g未満である樹脂が好ましい。酸価としては、90mgKOH/g乃至200mgKOH/g程度のものを用いる。
【0090】
酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数である。
【0091】
このような樹脂としては、例えば、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系の各樹脂を挙げることができ、特に、アクリル共重合体及びスチレン−アクリルが好ましい。
【0092】
疎水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等)、スチレン等が挙げられる。
【0093】
親水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられ、アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
【0094】
樹脂の分子量としては、平均分子量で3000から30000のものを用いることができる。好ましくは7000から20000のものを用いることができる。
【0095】
樹脂のTgは−30℃から100℃程度のものを用いることができる。好ましくは−10℃から80℃程度のものを用いることができる。
【0096】
重合方法としては、溶液重合を用いることが好ましい。
【0097】
樹脂の酸性モノマー由来の酸性基は部分的、あるいは完全に塩基成分で中和することが好ましい。この場合の中和塩基としては、アルカリ金属含有塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等や、アミン類(アンモニア、アルカノールアミン、アルキルアミン等を用いることができる)を用いることができる。特に、沸点が200℃未満のアミン類で中和することは、画像耐久性向上の観点から特に好ましい。
【0098】
本発明のインクは水溶性樹脂の他に水分散性樹脂を併用してもよい。特に、Tgが20−80℃の水分散性樹脂を、水溶性樹脂より少ない量添加することは、いっそうの耐擦性向上する上で好ましい。
【0099】
水性顔料インクは、普通紙やインク吸収層を具備したインクジェット専用紙はもとよりインク吸収性層のない、コート紙やフィルムなどの樹脂素材や布帛、皮革素材などにもプリントできるものが好ましい。このような機能を持つためにも、樹脂成分固形分としてインク中に6.0質量%以上含有することがこのましい。
【0100】
(インクの表面張力)
本発明に係るインクにおいては、表面張力が35mN/m未満の有機溶剤を10質量%から30質量%含有することが好ましい。印刷用コート紙、フィルム基材、樹脂材料、布帛などさまざまな媒体にプリントした場合、十分にインク混じりが防止でき、布帛では繊維にそったにじみをいっそう抑えることが出来好ましい。
【0101】
本発明に係るインクの表面張力は、23〜30mN/mの範囲に調整することが好ましい。インクの表面張力を上記の範囲に調整する手段としては、表面張力35mN/m未満の有機溶剤を10%から30%含有させ、さらに、シリコン系もしくはフッ素系の界面活性剤を添加することで調整することができる。この様な表面張力値とすることにより、プラスチックフィルムなどの記録媒体に対しても、インク混じりを抑制してプリントすることができる。シリコン系の界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物があり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642やビッグケミー製のBYK347、BYK348などが挙げられる。
【0102】
フッ素系界面活性剤は、通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0103】
フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものは大日本インキ化学工業社からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、それぞれ市販されている。
【0104】
(その他の添加剤)
本発明に係る水性顔料インクには、必要に応じて、吐出安定性、記録ヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
【0105】
《記録媒体》
本発明に係る水性顔料インクは、ポリ塩化ビニルシート等の非吸収性記録媒体、普通紙、コート紙、インクジェット専用紙等に印字するのに適している。
【0106】
非吸収性記録媒体としては、高分子シート、ボード(軟質塩ビ、硬質塩ビ、アクリル板、ポリオレフィン系等)、ガラス、タイル、ゴム、合成紙等が挙げられる。
【0107】
低吸収もしくは吸収性記録媒体としては、種々の布帛(綿、絹、毛、ポリエステル等)、普通紙(コピー紙、印刷用普通紙)、コート紙、アート紙、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙、ダンボール、木材等が挙げられる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0109】
《顔料分散体の調製》
〔顔料分散体1の調製〕
(シアン顔料分散体1の調製)
顔料分散剤としてスチレン−アクリル酸共重合体(ジョンクリル678、分子量:8500、酸価:215mgKOH/g)4.5部、ジメチルアミノエタノール1.3部、イオン交換水80.7部を70℃で攪拌混合して溶解した。
【0110】
次いで、上記溶液に、C.I.ピグメントブルー15:3を15部添加してプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、シアン顔料の含有量が15%のシアン顔料分散体1を調製した。
【0111】
(イエロー顔料分散体1、マゼンタ顔料分散体1、ブラック顔料分散体1の調製)
上記シアン顔料分散体の調製において、シアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3に代えて、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー−74、マゼンタ顔料としてC.I.ピグメントレッド122、ブラック顔料としてカーボンブラックをそれぞれ用いる以外は同様にして、イエロー顔料分散体1、マゼンタ顔料分散体1、ブラック顔料分散体1を調製した。
【0112】
〔顔料分散体2の調製〕
上記シアン顔料分散体1、イエロー顔料分散体1、マゼンタ顔料分散体1、ブラック顔料分散体1の調製において、各顔料の添加量を18部に変更した以外は同様にして、顔料分散体2(シアン顔料分散体2、イエロー顔料分散体2、マゼンタ顔料分散体2、ブラック顔料分散体2)を調製した。
【0113】
〔顔料分散体3の調製〕
上記シアン顔料分散体1、イエロー顔料分散体1、マゼンタ顔料分散体1、ブラック顔料分散体1の調製において、各顔料の添加量を15.8部に変更した以外は同様にして、完了分散体3(シアン顔料分散体3、イエロー顔料分散体3、マゼンタ顔料分散体3、ブラック顔料分散体3)を調製した。
【0114】
《水溶性樹脂の調製》
〔水溶性樹脂1の調製〕
滴下ロート、窒素導入官、還流冷却官、温度計及び攪拌装置を備えたフラスコにメチルエチルケトン50gを加え、窒素バブリングしながら、75℃に加温した。
【0115】
そこへ、メタクリル酸n−ブチル80g、アクリル酸20g、メチルエチルケトン50g、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、AIBN)500mgの混合物を滴下ロートより3時間かけ滴下した。滴下後さらに6時間、加熱還流した。放冷後、減圧下加熱しメチルエチルケトンを留去して重合物残渣を得た。
【0116】
イオン交換水450mlに対して、モノマーとして添加したアクリル酸の1.05倍モル相当の水酸化ナトリウムを溶解し、そこへ上記重合物残渣を溶解した。イオン交換水で濃度を調整し、水溶性樹脂の含有量が20%である水溶性樹脂1(酸価:117mgKOH/g、重量平均分子量:6万)の水溶液を得た。
【0117】
〔水溶性樹脂2の調製〕
滴下ロート、窒素導入官、還流冷却官、温度計及び攪拌装置を備えたフラスコにメチルエチルケトン50gを加え、窒素バブリングしながら、75℃に加温した。
【0118】
そこへ、メタクリル酸n−ブチル80g、アクリル酸20g、メチルエチルケトン50g、重合開始剤(AIBN)500mgからなる混合物を、滴下ロートより3時間かけ滴下した。滴下後、さらに6時間加熱還流した。放冷後、減圧下で加熱し、メチルエチルケトンを留去して重合物残渣を得た。
【0119】
イオン交換水450mlに対して、モノマーとして添加したアクリル酸の1.05倍モル相当のジメチルアミノエタノールを溶解し、そこへ上記重合物残渣を添加して溶解した。次いで、イオン交換水で濃度を調整し、水溶性樹脂の含有量が20%である水溶性樹脂2(酸価:117mgKOH/g、重量平均分子量:6万)の水溶液を得た。
【0120】
《インクセットの調製》
〔インクセット1の調製〕
下記の各添加剤を順次混合して、イエロー顔料インク1、マゼンタ顔料インク1、シアン顔料インク1及びブラック顔料インク1からなるインクセット1を調製した。
【0121】
(各色水性顔料インクの調製)
各顔料分散体1
顔料 固形分5.0質量%
顔料分散剤樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体) 固形分1.5質量%
水溶性樹脂1 固形分1.0質量%
プロピレングリコール(PG) 10.0質量%
グリセリン(Gly) 15.0質量%
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学社製)
0.5質量%
イオン交換水を加えて全量100部に調製し、5μmのフィルターによりろ過を行った。
【0122】
〔インクセット2の調製〕
下記の各添加剤を順次混合して、イエロー顔料インク2、マゼンタ顔料インク2、シアン顔料インク2及びブラック顔料インク2からなるインクセット2を調製した。
【0123】
(各色水性顔料インクの調製)
各顔料分散体2
顔料 固形分6.0質量%
顔料分散剤樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体) 固形分1.5質量%
水溶性樹脂1 固形分3.5質量%
プロピレングリコール(PG) 10.0質量%
グリセリン(Gly) 15.0質量%
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学社製)
0.5質量%
イオン交換水を加えて全量100部に調製した。
【0124】
〔インクセット3の調製〕
下記の各添加剤を順次混合して、イエロー顔料インク3、マゼンタ顔料インク3、シアン顔料インク3及びブラック顔料インク3からなるインクセット3を調製した。
【0125】
(各色水性顔料インクの調製)
各顔料分散体2
顔料 固形分6.0質量%
顔料分散剤樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体) 固形分1.5質量%
水溶性樹脂1 固形分4.5質量%
プロピレングリコール(PG) 10.0質量%
グリセリン(Gly) 15.0質量%
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学社製)
0.5質量%
イオン交換水を加えて全量100部に調製した。
【0126】
〔インクセット4の調製〕
下記の各添加剤を順次混合して、イエロー顔料インク4、マゼンタ顔料インク4、シアン顔料インク4及びブラック顔料インク4からなるインクセット4を調製した。
【0127】
(各色水性顔料インクの調製)
各顔料分散体2
顔料 固形分6.0質量%
顔料分散剤樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体) 固形分1.5質量%
水溶性樹脂2 固形分4.5質量%
プロピレングリコール(PG) 10.0質量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 15.0質量%
BYK347(ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物、ビッグケミー社製)
0.5質量%
イオン交換水を加えて全量100部に調製した。
【0128】
〔インクセット5の調製〕
下記の各添加剤を順次混合して、イエロー顔料インク5、マゼンタ顔料インク5、シアン顔料インク5及びブラック顔料インク5からなるインクセット5を調製した。
【0129】
(各色水性顔料インクの調製)
各顔料分散体3
顔料 固形分7.0質量%
顔料分散剤樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体) 固形分2.0質量%
水溶性樹脂2 固形分8.0質量%
プロピレングリコール(PG) 5.0質量%
グリセリン(Gly) 2.0質量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 15.0質量%
BYK347(ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物、ビッグケミー社製)
0.5質量%
イオン交換水を加えて全量100部に調製した。
【0130】
【表1】

【0131】
《洗浄液の調製》
〔洗浄液1の調製〕
DEGBEとイオン交換水とを下記の比率で混合して、洗浄液1を調製した。
【0132】
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 5.0質量%
水 95.0質量%
〔洗浄液2〜14の調製〕
表2に記載の溶剤、塩基性化合物を混合して、イオン交換水で100質量%に仕上げて、洗浄液2〜14を調製した。
【0133】
【表2】

【0134】
なお、表2に略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0135】
〈溶剤〉
DEGBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
TEGBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
DEGEE:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
1,2−HD:1,2−ヘキサンジオール
〈塩基性化合物〉
DMAE:ジメチルアミノエタノール
〈界面活性剤〉
E1010:オルフィンE1010、アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学社製
《インクジェットプリンタ》
〔インクジェットプリンタ1の作製〕
駆動周波数10kHz、インク液滴量14pl、1色当たりのノズル数128、ノズル密度180dpi(dpiは2.54cmあたりのドット数を示す)で、最大記録密度720×720dpiのインクジェットヘッドを4基搭載し、それぞれにインクセット1を構成する4色の水性顔料インク1を充填した図1に記載のインクジェットプリンタを用いた。
【0136】
インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド搭載のキャリッジの片端に、ヘッドキャップを具備し、プリント休止時はインクジェットヘッドにキャップをして乾燥を防ぐ機構となっている。キャップ部に隣接する部位には、図3に記載の洗浄機構を備えている。洗浄機構は、回転軸にワイピング部材としてエチレンプロピレンゴム(EPDM)製のブレードを1枚装備し、図3に示すように洗浄液1が充填されている。
【0137】
〔インクジェットプリンタ2〜23の作製〕
上記インクジェットプリンタ1において、インクセットの種類と洗浄液の種類の組み合わせを、表3に記載の様に変更した以外は同様にして、インクジェットプリンタ2〜23を準備した。
【0138】
《インクジェットプリンタの評価》
〔洗浄性の評価〕
上記インクジェットプリンタ1〜23を用いて、全ノズルが正常に射出していることをノズルチェックパターン印字にて確認した後、スーパーファイン専用紙(セイコーエプソン社製)に、100cm幅×100cm幅のフルカラー画像を5枚連続でプリントした(720dpi×720dpi)。この間、クリーニング、メンテナンスは実施しなかった。次いで、キャップポジションにインクジェットヘッドを待機させ、キャップしない状態で10分間放置した後、100cm幅×100cm幅のフルカラー画像を1枚プリントした後、すぐにノズルチェックパターン印字した結果、各インクジェットプリンタ共に、欠パターンが数箇所認められ、インクジェットヘッドの吐出口付近を観察すると、インク跡がところどころ見られた。
【0139】
次いで、洗浄機構を用いて、各洗浄液にるワイピングを行った。1インクジェットヘッドにつき、ワイピングを5回行った。この後、ノズルチェックパターン印字を行い、欠パターンの有無を確認した。確認後、まだ欠パターンがあるものは、キャップのサクション機能を使用してインクサクションを行った後、再度ワイピングを行った。
【0140】
上記ワイピング操作による洗浄結果を、下記の基準に従って評価し、これを洗浄性の尺度とした。
【0141】
5:1回目のワイピングで、ノズル欠は解消される
4:1回目のワイピングではノズル欠は解消されないが、2回目のワイピングでノズル欠はなくなる
3:2回目のワイピングではノズル欠は解消されないが、3回目のワイピングでノズル欠はなくなる
2:3回目のワイピングではノズル欠は解消されないが、4回目のワイピングでノズル欠はなくなる
1:4回目のワイピングでもノズル欠は解消されず、洗浄液を軟性ポリウレタン樹脂(商品名:ルビセル、東洋ポリマー(株)製)に付着させ、インクジェットヘッドの吐出面を直接手で洗浄して、ノズル欠がなくなった。
【0142】
〔印字画像の評価〕
(耐擦過性の評価)
上記洗浄性の評価と同様にして、100cm幅×100cm幅のフルカラー画像を形成した後、各色画像面を、綿布(カナキン3号)を用いて9Nの荷重をかけながら20往復させて画像面を擦り、綿布への画像の転写状態を目視観察し、下記の基準に従って耐擦過性を評価した。
【0143】
5:20往復擦っても、綿布の着色はほとんど認められない
4:20往復擦ると綿布の着色は見られるが、15往復では極僅かである
3:15往復擦ると綿布の着色は見られるが、10往復では極僅かである
2:10往復擦ると綿布の着色は見られるが、5往復では極僅かである
1:5往復でも綿布の着色が認められる
(耐水性の評価)
上記洗浄性の評価と同様にして、100cm幅×100cm幅のフルカラー画像を形成した後、各色画像試料を、25℃のイオン交換水に1時間浸漬し、その後、イオン交換水より引き上げて、吊した状態で乾燥を行った。各工程での形成画像の滲み状態を目視観察し、下記の基準に従って耐水性を評価した。
【0144】
5:25℃のイオン交換水に1時間浸漬した直後に、形成画像面を綿布(カナキン3号)で擦っても、綿布の着色は認められない
4:25℃のイオン交換水に1時間浸漬しても画像滲みの発生はなく、また、吊して乾燥を行う過程でもインク跡は残らないが、乾燥前に綿布(カナキン3号)で擦ると、綿布が着色
3:25℃のイオン交換水への1時間浸漬では画像滲みの発生はないが、吊して乾燥を行う過程でインクの流れた跡が発生する
2:25℃のイオン交換水へ10分以上浸漬した段階で滲みが発生する
1:25℃のイオン交換水へ10分未満浸漬した段階で滲みが発生する
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0145】
【表3】

【0146】
表3に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する洗浄機構を備えてインクジェットプリンタは、比較例に対し、顔料濃度が高いインクあるいは樹脂含有量が高いインクを用いても、インクジェットヘッド吐出面の洗浄性に優れ、耐擦過性及び耐水性に優れた画像を安定して形成することができた。
【0147】
更に、上記印字方法と同様にして、記録媒体であるスーパーファイン専用紙(セイコーエプソン社製)を、インクジェットプリンタの記録媒体搬送部の下部設けたヒーターHにより、50℃に加熱しながら印字を行った結果、優れた洗浄性、形成した画像の耐擦過性及び耐水性が得られると共に、より画像滲みのない鮮明な画像を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】インクジェットプリンタの主要構成の一例を示す概略斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタのメンテナンス工程及び印字工程の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の洗浄機構による吐出口の洗浄プロセスの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0149】
1 インクジェットプリンタ
2 記録媒体
3 インクジェットヘッド
4 キャリッジ
5 メンテナンスユニット
5A 吸引キャップ
5B 洗浄機構
6 ガイドレール
12 撥水プレート
13 洗浄液容器
14 回転軸
15 ワイピング部材
16 インクジェット洗浄液
P1〜P7 ワイピング部材の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性顔料インクを吐出して、記録媒体上に画像を形成するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドの吐出口を洗浄する洗浄機構を具備したインクジェットプリンタであって、該洗浄機構は、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有するインクジェットヘッド洗浄液を用いて洗浄する機構を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記洗浄機構が、前記インクジェットヘッド洗浄液を付着させたクリーニング部材を用いて、前記インクジェットヘッドの吐出口をワイピングする機構であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インクジェットヘッド洗浄液が含有する表面張力が35mN/m未満の溶剤が、アルキレングリコールモノエーテル類及びアルカンジール類から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記水性顔料インクから構成されるインクセットが、少なくともイエロー顔料インク、マゼンタ顔料インク、シアン顔料インク及びブラック顔料インクから構成され、少なくとも1色の水性顔料インクは、インク全質量に対する顔料固形分量が6.0質量%以上で、かつ総樹脂固形分量が6.0質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
画像形成時に、前記記録媒体を加熱する加熱機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタに用いるインクジェットヘッド洗浄液であって、少なくとも表面張力が35mN/m未満の溶剤と塩基性化合物とを含有することを特徴とするインクジェットヘッド洗浄液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−233911(P2009−233911A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80082(P2008−80082)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】