説明

インクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置および画像形成システム

【課題】被記録媒体に対する処理剤液の塗布ムラを抑制できるインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置を提供する。
【解決手段】被記録媒体Wを搬送する搬送ローラ33、被記録媒体Wに処理剤液22を塗布する塗布ローラ31、塗布ローラ用駆動モータ32を備え、モータ32と塗布ローラ31はワンウェイクラッチ43を介して接続され、モータ32により塗布ローラ31を回転したときの周速度は搬送ローラ33の周速度よりも遅く設定され、塗布ローラ31は搬送ローラ33で搬送される被記録媒体Wに従動して回転し、被記録媒体Wに対して塗布ローラ31がスリップした際はモータ32で回転駆動されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴の吐出を行い被記録媒体上に画像を形成するインクジェットプリンタの画像滲みを抑制する滲み抑制剤などの処理剤液を画像形成に先立って被記録媒体上に塗布するインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置および画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成は、低騒音、低ランニングコストに加えて、カラー化が容易といった利点を有していることから、近年、急速に普及してきている。しかし、専用紙以外の被記録媒体に画像を形成すると、滲み、濃度、色調や裏写りなどといった初期の品質問題に加えて、耐水性、耐候性といった画像の堅牢性に関わる問題を有しているため、これらの問題を解決する提案がなされている。
【0003】
それらの解決手段として、被記録媒体である用紙にインク滴が着弾する前にインクを凝集させる機能を有する処理剤液を塗布して、画質を改善する方法がある。この処理剤液を塗布する方法として、ローラを用いて被記録媒体の全面に塗布する方法が例えば特開平7−156538号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
図7は、ローラを用いて被記録媒体に処理剤液を塗布する従来の処理剤液塗布装置の概略構成図である。
同図に示すように、モータなどの駆動源(図示せず)によって回転駆動するプラテンローラ201の周面には、押さえチャック202を用いて被記録媒体(用紙) 203が巻き付けられている。
【0005】
一方、処理剤液タンク204内には処理剤液205が貯留されており、処理剤液205は攪拌・供給ローラ206、移送・薄膜化ローラ207a,207bによって塗布ローラ208のローラ面に薄膜状に転写される。
【0006】
そして、塗布ローラ208は回転するプラテンローラ201に巻き付けられている被記録媒体203上に押し付けられながら回転し、被記録媒体203の表面に処理剤液205を塗布する。処理剤液205を塗布した被記録媒体203の部分がインクジェット記録ヘッド209と対向する位置に来ると、インクジェット記録ヘッド209からインク滴が吐出されて、記録が行なわれる。
【0007】
このように、画像品質を向上させるための処理剤液205を塗布ローラ208で被記録媒体203の記録領域に塗布する方法は、噴射ヘッドを用いて処理剤液を被記録媒体に吹き付けて処理を行なう方法に比べて、比較的粘度の高い処理剤液205を被記録媒体203上に薄く塗布することができ、画像の滲みなどを一段と低減できるという特長を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の処理剤液塗布装置では、記録走査である主走査に従って被記録媒体203を搬送するプラテンローラ201などの搬送ローラと塗布ローラ208の各駆動が連動しているため、記録走査中も塗布ローラ208をプラテンローラ201で押さえ付けており、特に主走査時は塗布ローラ208の回転が中断されても、塗布ローラ208が被記録媒体203に押し付けられたまま停止することになる。そのため、被記録媒体203の搬送停止中、被記録媒体203の一部に処理剤液205が集中して塗布されることになる。
そのため被記録媒体203上で処理剤液205の塗布ムラができて、それが原因での被記録媒体203の波打ちや画質ムラが発生するという問題がある。
【0009】
特許第4053722号公報(特許文献2)には、前述の塗布ムラを低減する目的で、処理剤液を塗布した被記録媒体を画像記録手段に搬送し、塗布ローラの駆動とは独立に駆動する搬送ローラと前記塗布ローラの間に、被記録媒体を弛ませる弛み用空間を設け、搬送ローラの平均搬送速度が塗布ローラの平均搬送速度よりも速いときには、塗布ローラのみを駆動させて、前記弛み用空間に被記録媒体を所定量弛ませた後、搬送ローラの駆動を開始する方法が開示されている。
【0010】
この方法によれば、印刷中の間欠搬送でも、塗布ローラは搬送ローラとは別駆動により一定速度で回転できるので、処理剤液の塗布ムラによる被記録媒体の波打ちや画質ムラがなくなり、塗布ローラによる処理剤液の塗布条件を常に一定に維持することができる。
また、印刷速度と処理剤液の塗布速度の差によって発生する被記録媒体の搬送距離の差も、前記弛み用空間で吸収できるなどの効果も有している。
【0011】
しかし、この装置では、被記録媒体を弛ませる弛み用空間が必要であり、また、搬送ローラの速度制御のために、被記録媒体の弛み量を検出するセンサーが必要となり、そのために部品点数が増え、構成が複雑になり、高価になるなどの問題点を有している。
【0012】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解消し、被記録媒体に対する処理剤液の塗布ムラを有効に抑制することのできるインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置を提供することができ、また適切な前処理が行なわれて品質の高い画像が得られる画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、第1の発明は、
画像形成前の長尺状被記録媒体を所定の方向に搬送する例えば搬送ローラなどの搬送手段と、
その搬送手段によって搬送される前記被記録媒体に対して処理剤液を塗布する塗布ローラと、
その塗布ローラを回転駆動する例えばモータなどの塗布ローラ用駆動源を備えたインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置において、
前記塗布ローラ用駆動源と塗布ローラはワンウェイクラッチを介して接続され、塗布ローラ用駆動源により塗布ローラを回転駆動したときの塗布ローラの周速度は前記搬送手段の周速度よりも遅く設定することにより、
前記塗布ローラは前記搬送手段によって搬送される前記被記録媒体に従動して回転し、そのとき前記塗布ローラ用駆動源との間では空転している状態にあり、
前記被記録媒体に対して塗布ローラがスリップした際には前記塗布ローラ用駆動源により塗布ローラが回転駆動される構成になっていることを特徴とするものである。
【0014】
前記目的を達成するため、第2の発明は、
被記録媒体の搬送方向に沿って、搬送方向上流側に画像形成前の被記録媒体に対して処理剤液を塗布する処理剤液塗布装置が設置され、その処理剤液塗布装置の被記録媒体の搬送方向下流側に処理済の被記録媒体上にインク滴を吐出して画像を形成するインクジェットプリンタが設置された画像形成システムにおいて、
前記処理剤液塗布装置が前記第1の発明の処理剤液塗布装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は前述のような構成になっており、被記録媒体に対する処理剤液の塗布ムラを有効に抑制することのできるインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置を提供することができ、また適切な処理が行なわれて品質の高い画像が得られる画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成システムの流れを示すフローチャートである。
【図2】その画像形成システムに用いられる処理剤液塗布装置の概略構成図である。
【図3】その処理剤液塗布装置における塗布手段の概略構成図である。
【図4】その処理剤液塗布装置における塗布ローラとワンウェイクラッチ機構とモータの連結構造を示す図である。
【図5】その処理剤液塗布装置における塗布ローラと搬送ローラの周速度の関係を説明するための図である。
【図6】その処理剤液塗布装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】従来の処理剤液塗布装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を図面とともに説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成システムの流れを示すフローチャートである。
【0018】
同図に示しているように、給紙装置100から繰り出された例えば長尺状の連続紙などからなる被記録媒体Wは、最初、処理剤液塗布装置101に送り込まれ、被記録媒体Wの表裏にそれぞれ前記抑制剤などの処理剤液が塗布されて前処理が行われる。次に処理された被記録媒体Wは第1のインクジェットプリンタ102aに送り込まれて、被記録媒体Wの表側にインク滴を吐出して所望の画像が形成され、その後に反転装置103により被記録媒体Wの表裏が反転され、引き続き被記録媒体Wは第2のインクジェットプリンタ102bに送り込まれて、被記録媒体Wの裏側にインク滴を吐出して所望の画像が形成される。
このようにして被記録媒体Wの両面に印刷が施された後、後処理装置(図示せず)に送られて所定の後処理がなされるシステムになっている。
【0019】
図2はこの画像形成システムに用いられる処理剤液塗布装置101の概略構成図であり、処理剤液の塗布時の状態を示している。
同図に示すように、ローラの端部に軸受け(図示せず)を有し、回転自在のガイドローラ1が処理剤液塗布装置101内に多数本設置されて、被記録媒体Wの搬送パスを確保している。
【0020】
図中の符号2はモータなどの駆動源(図示せず)で回転駆動するFI(フィードインローラ)ローラであり、FIローラ2にはばね(図示せず)の引張力でFIニップローラ(フィードインニップローラ)4が押し付けられるようになっている。
【0021】
被記録媒体WはFIローラ2とFIニップローラ4の間で弾性的に挟持されており、前記駆動源によりFIローラ2を回転することで、この処理剤液塗布装置101の内部に前記給紙装置100から被記録媒体Wを引き込むことができる。
【0022】
また、FIローラ2とFIニップローラ4から送り出された被記録媒体Wは若干弛ませてエアループALを形成している。
エアループALを経た被記録媒体Wは、パスシャフト5とエッジガイド6の間を通る。図示していないが、被記録媒体Wの搬送方向(矢印方向)と直交する方向に2本のパスシャフト5が配置され、被記録媒体Wがそのパスシャフト5の間をSの字状に通る。このパスシャフト5に一対の板状エッジガイド6が支持されており、エッジガイド6の間隔は被記録媒体Wの幅寸法と同寸に設定されている。
【0023】
そのためパスシャフト5とエッジガイド6の働きにより、被記録媒体Wの幅方向の走行位置が規制され、安定した走行が可能となる。なお、エッジガイド6は、パスシャフト5に例えばねじなどの固定手段によって固定されており、使用する被記録媒体Wの幅寸法に応じてエッジガイド6の位置が調整可能になっている。
【0024】
パスシャフト5とエッジガイド6の間を通過した被記録媒体Wは、固定状態にあるテンションシャフト7により走行安定化のための張力が付加される。
【0025】
テンションシャフト7を通過した被記録媒体Wは、モータなどの駆動源(図示せず)で回転駆動するインフィードローラ8とフィードニップローラ9の間を通る。フィードニップローラ9は図示していないが、インフィードローラ8の軸方向に沿って複数個配置されており、各フィードニップローラ9はばね10によりインフィードローラ8側に押し付けられている。
【0026】
インフィードローラ8とフィードニップローラ9の間を通過した被記録媒体Wは、回転自在な1本の第1のダンサーローラ11の下側から巻き掛けられている。
【0027】
第1のダンサーローラ11はローラ端部に設けた軸受け(図示せず)を介して第1の可動フレーム12に回転自在に取り付けられて、第1のダンサーユニット17を構成している。従ってこの第1のダンサーユニット17は被記録媒体Wで吊り下げられた状態になっている。
【0028】
この第1のダンサーユニット17は、重力方向Aに沿って移動可能になっている。第1のダンサーユニット17の位置を検出する第1のダンサーユニット位置検出手段(図示せず)が設けられており、この位置検出手段の出力に応じて前記インフィードローラ8の駆動源を駆動制御することで、第1のダンサーユニット17の位置が調整できる構成になっている。
【0029】
第1のダンサーユニット17を通過した被記録媒体Wは、それの表面側に処理剤液を塗布する表面塗布手段13f、ならびに被記録媒体Wの裏面側に処理剤液を塗布する裏面塗布手段13rを順次通過することにより、被記録媒体Wの両面に処理剤液が塗布される。処理剤液の塗布手段13については、後で説明する。
【0030】
裏面塗布手段13rを通過した被記録媒体Wは、モータなどの駆動源(図示せず)で回転駆動するアウトフィードローラ14とフィードニップローラ9の間を通る。フィードニップローラ9は図示していないが、アウトフィードローラ14の軸方向に沿って複数個配置されており、各フィードニップローラ9はばねによりアウトフィードローラ14側に押し付けられている。
【0031】
アウトフィードローラ14とフィードニップローラ9の間を通過した被記録媒体Wは、回転自在な第2のダンサーローラ15a,15bならびに両ダンサーローラ15a,15bの間に配置されたガイドローラ1にわたってW型に巻き掛けられている。
【0032】
2本のダンサーローラ15a,15bはそれぞれローラ端部に設けた軸受け(図示せず)を介して第2の可動フレーム16に回転自在に取り付けられて、第2のダンサーユニット18を構成している。従ってこの第2のダンサーユニット18も被記録媒体Wによって吊り下げられた状態になっている。
【0033】
この第2のダンサーユニット18も重力方向Aに沿って移動可能になっており、第2のダンサーユニット18の位置を検出する第2のダンサーユニット位置検出手段(図示せず)が設けられており、この位置検出手段の出力に応じて前記アウトフィードローラ14の駆動源を駆動制御することで、第2のダンサーユニット18の位置が調整できる構成になっている。
【0034】
図3は、前記塗布手段13の概略構成図である。
カートリッジ21内に貯留されている処理剤液22は、ポンプ23により汲み上げられ、供給経路24、電磁弁25を経由して供給パン26に供給される。処理剤液22としては、水溶性の色材を凝集させるか又は不溶化させる機能を有する水溶性の凝集剤を水あるいは有機溶剤に溶解又は分散させた液が用いられる。
【0035】
供給パン26内の処理剤液22の量は、供給パン26に付設されている液面検知センサ27により検知され、印刷の繰り返しにより処理剤液22が消費されて、供給パン26内の処理剤液22の液面位置が規定の高さより下がると、電磁弁25が開き、ポンプ23を駆動して、カートリッジ21内の処理剤液22が供給パン26に供給される。供給パン26内の処理剤液22の液面位置が規定の高さに達すると、液面検知センサ27の検知信号に基づいて電磁弁25が閉じ、ポンプ23が停止することにより、供給パン26内の処理剤液22の液量を一定に保持している。
【0036】
このように電磁弁25は、処理剤液22の供給時のみ開き、動作時間が短いため、通電時以外は弁閉鎖となるノーマルクローズドタイプのものを使用すれば、電磁弁25の消費電力を抑え、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0037】
供給パン26に貯留されている処理剤液22は、モータ28により駆動されるスクイーズローラ29の回転により汲み上げられる。このスクイーズローラ29としては、例えばアニロックスローラやワイヤーバーなどのように、ローラ周面に溝加工を施したものを用いると、汲み上げ時に処理剤液22の粘度、印刷速度の影響などを受け難く、液量コントロールが容易であるという特長を有している。
【0038】
スクイーズローラ29により汲み上げられた処理剤液22は、余剰分をメータリングブレード30により掻き落され、規定量が塗布ローラ31とのニップ部に運ばれる。このメータリングブレード30の材質として、ステンレス鋼などの金属、またはプラスチック、ゴムなどが考えられるが、スクイーズローラ29の磨耗、余剰液の掻き落し機能、耐用寿命などの観点からプラスチック材が望ましい。
【0039】
スクイーズローラ29と塗布ローラ31のニップ部に運ばれた処理剤液22は、両ローラ29,31の間で軸方向に均一に引き伸ばされて薄膜化されつつ、塗布ローラ31に転写される。塗布ローラ31は、周面をゴムなどの弾性体で覆われており、ワンウェイクラッチ機構43を介してモータ32により回転駆動される。
【0040】
塗布ローラ31に転写された処理剤液22は、塗布ローラ31と加圧ローラ33の間で挟持・搬送される被記録媒体Wに塗布される。
加圧ローラ33は、揺動可能なアーム34のほぼ中央位置に軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、搬送移動する被記録媒体Wに従動して回転する。アーム34の揺動中心35とは反対側の端部に引張ばね36が接続されており、てこの原理により加圧ローラ33を塗布ローラ31側に押し付けている。
【0041】
加圧ローラ33と引張ばね36の間に設けられた偏芯カム37はアーム34に接触しており、処理剤液22を塗布しないときには、偏芯カム37の回転により引張ばね36の弾性に抗して、加圧ローラ33を塗布ローラ31から離れる方向に移動させることができる。
【0042】
供給パン26には加圧ローラ33が離接する位置付近に開口部38が設けられており、この開口部38には処理剤液22の水分あるいは有機溶剤の蒸発を抑制するためのシャッタ39が開閉可能に設けられている。そして図3に示しているように、加圧ローラ33が塗布ローラ31側に移動している間はシャッタ39は開き、加圧ローラ33が塗布ローラ31から離れている間はシャッタ39は閉じる機構になっている。
塗布ローラ31は、被記録媒体Wに処理剤液22を転写した後、クリーナブレード40により清掃され、次の処理剤液22の塗布に備えられる。
【0043】
図3に示されているように、加圧ローラ33の周辺適所には複数のガイドローラ1a〜1eが回転自在に配置されており、そのうちの1つのガイドローラ1eはモータ41によって回転駆動される搬送ローラ42と対向して設けられている。
【0044】
給紙装置100(図1参照)から供給された長尺状の被記録媒体Wは、ガイドローラ1eと搬送ローラ42の間で挟持され、モータ41によって回転駆動される搬送ローラ42とガイドローラ1eとによって引っ張られ、各ガイドローラ1a〜1eに沿って搬送される。
【0045】
そして被記録媒体Wは、塗布ローラ31によって処理剤液22が塗布された後、インクジェットプリンタ102(図1参照)へ送られる。
【0046】
図4は、塗布ローラ31とワンウェイクラッチ機構43とモータ32の連結構造を示す図である。
前述したように、モータ32と塗布ローラ31はワンウェイクラッチ機構43を介して連結されている。
【0047】
モータ32の回転は、それの駆動軸44に取り付けられたギア45を介してギア46に伝達される。このギア46の回転は、ボールベアリング47に保持された伝達軸48にワンウェイクラッチ49を介して伝達される。さらに伝達軸48の回転は、伝達軸48に取り付けられたプーリ50を介して、ベルト51、塗布ローラ31に取り付けられたプーリ52を経由して、塗布ローラ31に伝達される。塗布ローラ31は両端をボールベアリング53で保持されており、モータ32の駆動に合わせて回転する構造になっている。
【0048】
前記ワンウェイクラッチ49は、モータ32が塗布ローラ31を被記録媒体Wの搬送方向X(図3参照)に回転するように取り付けられており、塗布ローラ31が被記録媒体Wに従動して回転した場合、モータ32との間で空転するようになっている。
【0049】
このように塗布ローラ31をワンウェイクラッチ機構43を介してモータ32で回転駆動できる構成になっており、その塗布ローラ31の周速度(駆動速度)は、前記搬送ローラ42の周速度(駆動速度)の下限値を上回らないように設定されている。
【0050】
図5は、塗布ローラ31と搬送ローラ42の周速度の関係を説明するための図である。
図中の速度帯域Bは搬送ローラ42の周速度の上限値と下限値の範囲、速度帯域Cは塗布ローラ31の周速度の上限値と下限値の範囲、をそれぞれ示している。
【0051】
この図から明らかなように、処理剤液塗布装置の起動時、塗布時ならびに停止時の何れにおいても、塗布ローラ31の周速度の上限値は、搬送ローラ42の周速度の下限値を超えないように設定されており、具体的には塗布ローラ31の平均周速度は搬送ローラ42の平均周速度の約90〜95%に設定されている。
【0052】
前述のようにモータ32と塗布ローラ31の間にワンウェイクラッチ機構43を介して、しかも、その塗布ローラ31の周速度を搬送ローラ42の周速度よりも遅く設定することにより、通常の運転状態では、塗布ローラ31は搬送ローラ42によって搬送される被記録媒体Wに圧接して従動回転しており、塗布ローラ5と被記録媒体Wの間でスリップが発生して塗布ローラ5の回転が遅くなったときのみ、モータ23で塗布ローラ5を回転駆動することができる。
【0053】
図6は、本発明の実施形態に係る処理剤液塗付装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図示しないコントローラからの処理剤液の塗付動作開始信号に基づいて、ステップ(以下、Sと略記する)1でカートリッジ21から供給パン26へ処理剤液22の供給を開始する。S2で供給パン26内の処理剤液22の液面位置が液面検知センサ27で監視されており、液面位置がコントロールライン(規定位置)以上になるまで、処理剤液22の供給が続行され、処理剤液22の液量がコントロールライン以上になれば供給が停止される。
【0054】
次にS3において、メータリングブプレート30ならびにクリーナブレード40を回動させて、それぞれスクイーズローラ29ならびに塗布ローラ31の周面に突き当てる。ブレード30、40の突き当てが終了すると、S4でスクイーズローラ29ならびに塗布ローラ31をそれぞれのモータ28,32で回転駆動させ、供給パン26内の処理剤液22をスクイーズローラ29で汲み上げて、塗布ローラ31に供給する。
【0055】
このときモータ41で搬送ローラ19も回転駆動させ、搬送ローラ42とガイドローラ1eの間で被記録媒体Wが引っ張られ、被記録媒体Wの搬送が開始される。
前記スクイーズローラ29ならびに塗布ローラ31が規定の駆動速度に達したところでシャッタ39を開いて(S5)、処理剤液22の塗布準備が完了する
次に偏芯カム37を回転させることによりばね36によりアーム34が引っ張られ、加圧ローラ33が被記録媒体Wを介して塗布ローラ31に所定の圧力で押さえつけられ、塗布ローラ31上の処理剤液22を被記録媒体Wに塗布する(S6)。
【0056】
この際、塗布ローラ31とそれを駆動するモータ32の間にはワンウェイクラッチ機構43が介在されているため、塗布ローラ31と被記録媒体Wの間でスリップが発生しない通常状態(S7でNO)では、モータ32の回転は継続しているが、塗布ローラ31は被記録媒体Wに従動して回転している(S8)。
【0057】
しかし、処理剤液22の液量が多い、被記録媒体Wの摩擦抵抗が低いなどの原因で、塗布ローラ31と被記録媒体Wの間でスリップが発生して(S7でYES)、塗布ローラ31の回転が遅くなりかけると、ワンウェイクラッチ49が入り、塗布ローラ31は直接、モータ32により駆動される(S9)。
【0058】
このようなシステムを採用することにより、塗布ローラと被記録媒体の間のスリップによる速度差が原因で発生する処理剤液の塗布ムラを最小限に抑えることができる。そのため、被記録媒体の波打ちや画質ムラが抑制され、塗布ローラによる処理剤液の塗布条件を常に一定に維持することができる。
【0059】
図1では被記録媒体Wの両面に画像を形成する場合について説明したが、被記録媒体Wの片面に画像を形成する場合には、図1に示す反転装置103ならびに第2のインクジェットプリンタ102bは使用しないで、図2に示す処理剤液塗布装置101の裏面塗布手段13rの加圧ローラ33を塗布ローラ31から離せば、そのままのシステムで片面印刷が可能である。
【0060】
また、処理剤液塗布装置内に1つの表面塗布手段を設けて、被記録媒体Wの表面に処理剤液を塗布して、片面印刷することもできる。さらに、処理剤液塗布装置内に2つの表面塗布手段を連続して設け、被記録媒体Wの表面に処理剤液を2度塗りして、片面印刷することもできる。
【0061】
前記実施形態では、被記録媒体Wの搬送手段として搬送ローラ42を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば搬送トラクタなど他の搬送手段を用いることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1a〜1e:ガイドローラ、
21:カートリッジ、
22:処理剤液、
26:供給パン、
29:スクイーズローラ、
31:塗布ローラ、
32:モータ、
33:加圧ローラ、
41:モータ、
42:搬送ローラ、
43:ワンウェイクラッチ機構、
49:ワンウェイクラッチ、
100:給紙装置、
101:処理剤液塗布装置、
102:インクジェットプリンタ、
W:被記録媒体、
X:被記録媒体の搬送方向。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開平7−156538号公報
【特許文献2】特許第4053722号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成前の長尺状被記録媒体を所定の方向に搬送する搬送手段と、
その搬送手段によって搬送される前記被記録媒体に対して処理剤液を塗布する塗布ローラと、
その塗布ローラを回転駆動する塗布ローラ用駆動源を備えたインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置において、
前記塗布ローラ用駆動源と塗布ローラはワンウェイクラッチを介して接続され、塗布ローラ用駆動源により塗布ローラを回転駆動したときの塗布ローラの周速度は前記搬送手段の周速度よりも遅く設定することにより、
前記塗布ローラは前記搬送手段によって搬送される前記被記録媒体に従動して回転し、そのとき前記塗布ローラ用駆動源との間では空転している状態にあり、
前記被記録媒体に対して塗布ローラがスリップした際には前記塗布ローラ用駆動源により塗布ローラが回転駆動される構成になっていることを特徴とするインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置において、
前記塗布ローラ用駆動源の回転駆動による塗布ローラの周速度の上限値は、前記搬送手段の周速度の下限値よりも遅く設定されていることを特徴とするインクジェットプリンタ用処理剤液塗布装置。
【請求項3】
被記録媒体の搬送方向に沿って、搬送方向上流側に画像形成前の被記録媒体に対して処理剤液を塗布する処理剤液塗布装置が設置され、その処理剤液塗布装置の被記録媒体の搬送方向下流側に処理済の被記録媒体上にインク滴を吐出して画像を形成するインクジェットプリンタが設置された画像形成システムにおいて、
前記処理剤液塗布装置が請求項1または2に記載の処理剤液塗布装置であることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate