インクジェットプリンタ

【課題】インクカートリッジの装着状態とインクカートリッジ内のインク残量とを1つの検出手段により検出することが可能なインクジェットプリンタを提供すること。
【解決手段】インクジェットプリンタは、センサ14を備えたホルダ4と、このホルダに着脱可能に装着されるインクカートリッジ3と、センサ14からの出力信号に基づいてインクカートリッジ3の装着状態を判定する制御装置(装着状態判定部)を備えている。また、インクカートリッジ3は、装着状態においてセンサ14により検出される遮光板60と、この遮光板60から装着方向先頭側に離隔した位置に設けられ、着脱時にセンサ14により検出される凸部66とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを貯留するインクカートリッジが装着されるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを貯留するインクカートリッジが装着されるインクジェットプリンタとして、インクカートリッジ内のインク残量を検出するインク残量センサが設けられているものがある。さらに、このようなインク残量センサとしては、例えば、発光体と、この発光体から発光されて透光性のインクカートリッジ内を透過した光を受光する受光体とを備えた、光学式のインク残量センサを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2960614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述の光学式のインク残量センサが設けられているインクジェットプリンタにおいては、実際にインクカートリッジ内のインクの残量が少ない状態だけでなく、インクカートリッジが装着されていない状態もインクの残量が少ない状態として判定されてしまう。また、インクカートリッジ内のインクの残量が少ない状態で、使用者によりインクカートリッジが装着部から取り外されてしまった場合には、インク残量センサのみではインクカートリッジが取り外されたことを検出することができない。従って、インクカートリッジが装着されているか否かをインクジェットプリンタが認識できないことになり、インクの吐出等の、インクジェットプリンタにおける種々の動作に不都合が生じる。また、インクカートリッジの装着状態を検出する為のカートリッジ検出用センサをインク残量センサとは別に設ければ、前述の問題は解決することはできるが、別のセンサを設けることによるコストアップが生じる。
【0005】
本発明の目的は、インクカートリッジの装着状態とインクカートリッジ内のインク残量とを1つの検出手段により検出することが可能なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
第1の発明のインクジェットプリンタは、インクカートリッジと、前記インクカートリッジのインクの残量を検出するインク残量検出手段を有し、前記インクカートリッジが、着脱可能に装着されるカートリッジ装着部を備え、
前記インクカートリッジは、装着状態において前記インク残量検出手段により検出される第1の被検出部と、前記第1の被検出部から装着方向先頭側に離隔した位置に設けられ、着脱時に前記インク残量検出手段により検出される第2の被検出部と、を有し、
さらに、前記インク残量検出手段が前記第2の被検出部を検出したか否かに基づいて前記カートリッジ装着部における前記インクカートリッジの装着状態を判定する装着状態判定手段を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
インクジェットプリンタのカートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されている状態では、インクカートリッジの第1の被検出部がインク残量検出手段により検出されて、インクカートリッジ内のインク残量が検出される。一方、インクカートリッジをカートリッジ装着部に装着する際、あるいは、カートリッジ装着部から取り外す際には、第1の被検出部から装着方向先頭側に離隔した位置に設けられた第2の被検出部が、インク残量検出手段により検出される。そのため、装着状態判定手段により、第2の被検出部がインク残量検出手段に検出されたか否かに基づいて、インクカートリッジがカートリッジ装着部に装着されているかどうかを判定することができ、インクジェットプリンタに、インクカートリッジの装着状態を検出する為の検出手段を、インク残量検出手段とは別に設ける必要がなく、製造コストの面で有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】インクカートリッジを示す図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は底面図である。
【図3】インクカートリッジを下方から見た斜視図である。
【図4】図2(b)のIV-IV線断面図である。
【図5】インク供給弁の断面図であり、(a)は閉弁した状態の図、(b)は開弁した状態の図である。
【図6】弁体の斜視図である。
【図7】図4のVII-VII線断面図である。
【図8】大容量のインクカートリッジを示す図であり、(a)は左側面図、(b)は下方から見た斜視図である。
【図9】インクカートリッジ着脱時における装着状態判定処理のフローチャートである。
【図10】変更形態のインクカートリッジを下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、4色のインクを吐出可能なカラーインクジェットプリンタに本発明を適用したものである。
図1に示すように、カラーインクジェットプリンタ1は、記録用紙Pに対してシアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びブラック(K)の4色のインクを吐出するノズル2aを備えたインクジェットヘッド2と、4色のインクを夫々貯留する4つのインクカートリッジ3(3a,3b,3c,3d(3d’))が装着されるカートリッジ装着部としての4つのホルダ4(4a,4b,4c,4d)と、インクジェットヘッド2をガイド9に沿って一方向(紙面に対して垂直方向)に直線的に往復移動させるキャリッジ5と、記録用紙Pをインクジェットヘッド2の移動方向に対して垂直で且つインクジェットヘッド2のインク吐出面に平行な方向に搬送する搬送機構6と、インクジェットヘッド2内のエアや高粘度化したインクを吸引するパージ機構7と、インクジェットプリンタ1全体の制御を司る制御装置8等を備えている。
【0010】
このインクジェットプリンタ1においては、インクジェットヘッド2がキャリッジ5により図1の紙面垂直方向に往復駆動されつつ、搬送機構6により図1の左右方向に搬送される。これに連動して、インクカートリッジ3が装着されたホルダ4から供給チューブ10を介してインクジェットヘッド2のノズル2aにインクが供給されるとともに、記録用紙Pに向けてノズル2aからインクが吐出されて、記録用紙Pが印刷される。
【0011】
また、パージ装置7は、インク吐出面に対して接近/離隔する方向に移動可能で且つインクジェットヘッド2にインク吐出面を覆うように装着可能なパージキャップ11と、ノズル2aからインクを吸引する吸引ポンプ12を備えている。そして、インクジェットヘッド2が記録用紙Pに印刷可能な印刷範囲外にあるときに、吸引ポンプ12により、インクジェットヘッド2内に混入したエアや、あるいは、水分が蒸発して高粘度化したインクをノズル2aから吸引することが可能になっている。
【0012】
4つのホルダ4a〜4dは、一列に並べて設けられており、これら4つのホルダ4a〜4dには、シアン、イエロー、マゼンタ及びブラックのインクを貯留する4つのインクカートリッジ3a〜3dが夫々装着される。ここで、4色のインクのうち、ブラックのインクは、他の3色のカラーインクに比べて使用頻度が高くなることが多く、その場合には、ブラックのインクカートリッジの容量が、カラーインクのインクカートリッジ3a〜3cよりも大きいことが好ましい。しかし、常に、大容量のブラックのインクカートリッジをホルダに装着していると、インクジェットプリンタ1自体の使用頻度が低い時期には、インクが長期間にわたって使用されずに放置されるため、その間にインクが劣化してしまう。そこで、図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1においては、ブラックのインクカートリッジが装着されるホルダ4dは、カラーインクのインクカートリッジ3a〜3cが装着されるホルダ4a〜4cに比べて幅が広くなっており、ブラックのインクの使用頻度に応じて、ホルダ4dに、小容量(カラーインクと同容量)のインクカートリッジ3dと、それよりも幅の広い大容量のインクカートリッジ3d’(図8参照)の、何れか一方を選択的に装着できるようになっている。
【0013】
ホルダ4の底部において、後述のインクカートリッジ3のインク供給弁21と大気導入弁22に夫々対応する位置には、インク供給管12と大気導入管13が夫々立設されている。また、ホルダ4には、インクカートリッジ3内のインク残量を検出する為の光学式のセンサ14(インク残量検出手段)も設けられている。このセンサ14は、同じ高さ位置でインクカートリッジ3を両側から挟み込むように相対向して取り付けられた発光部14a(発光源)及び受光部14bを有し、発光部14aからの光が後述のインクカートリッジ3内に設けられたシャッター機構23により遮断されたか否かを検出して、制御装置8に出力する。
【0014】
次に、インクカートリッジ3について詳細に説明する。尚、3種類のカラーインクを夫々貯留するインクカートリッジ3a〜3cと、ブラックのインクを貯留する小容量のインクカートリッジ3dは同じ構造を有するため、そのうちの1つについて説明する。また、ブラックのインクを貯留する大容量のインクカートリッジ3d’については、小容量のインクカートリッジ3dと異なる点について説明する。
【0015】
図2〜図4に示すように、インクカートリッジ3は、インクを貯留するカートリッジ本体20と、カートリッジ本体20内のインクをインクカートリッジ3へ供給するインク供給流路を開閉可能なインク供給弁21と、外部からカートリッジ本体20内に大気を導入する大気導入路を開閉可能な大気導入弁22と、インク残量を検出するセンサ14の発光部14aからの光を遮断するシャッター機構23と、カートリッジ本体20の下端部を覆うキャップ24とを備えている。
【0016】
カートリッジ本体20は、光透過性を有する合成樹脂で形成されている。図4に示すように、カートリッジ本体20内には水平に延びる仕切壁30が一体形成されており、この仕切壁30によりカートリッジ本体20の内部空間が、上側のインク室31と下側の2つの弁収容室32,33とに仕切られている。インク室31内には各色のインクが充填され、2つの弁収容室32,33には、インク供給弁21と大気導入弁22とが夫々収容されている。図2(b)に示すように、カートリッジ本体20の側壁部の高さ方向の略中央の位置には、やや外側へ突出する突出部34が形成されている。この突出部34内の空間には、後述のシャッター機構23の遮光板60が配置される。そして、インクカートリッジ3がホルダ4に装着されている状態では、突出部34はセンサ14の発光部14aと受光部14bに挟まれるようになっている。また、カートリッジ本体20の上端部には蓋部材35が溶着されており、カートリッジ本体20内のインク室31が蓋部材35により閉塞されている。
【0017】
2つの弁収容室32,33の間には、空のインクカートリッジ3のインク室31内にインクを注入する為の注入孔36が形成されており、この注入孔36には、合成ゴム製の栓部材37が圧入されている。また、注入孔36の奥端はカートリッジ本体20内のインク室31と連通している。そして、注入孔36内の栓部材37に注入針(図示省略)が貫通され、この注入針を介してインク室31内にインクが充填される。
【0018】
インク供給弁21が収容されている弁収容室32の天井部を構成する仕切壁30の部分には、下方へ突出する筒状部38が一体形成されており、筒状部38の下端には、筒状部38内に形成された連通路を塞ぐ薄膜部39が設けられている。一方、大気導入弁22が収容されている弁収容室33の天井部を構成する仕切壁30の部分には、上方及び下方へ夫々突出する2つの筒状部40,41が一体形成され、下側の筒状部41の下端には、筒状部40,41内に形成された連通路を塞ぐ薄膜部42が設けられている。さらに、筒状部40の上側には、インク室31の上端部まで延びる筒部材43が設けられている。
【0019】
図4、図5に示すように、インク供給弁21は、合成ゴム等で略円筒形に形成され弾力性を有する弁本体45と、この弁本体45内に収納された合成樹脂製の弁体46とを備えている。弁本体45は、上側(インク室が31側)から順に並ぶ、付勢部47、弁座部48及び嵌合部49が一体形成されて構成されている。
【0020】
弁座部48の上面(インク室31側の端面)には、弁体46の下面が当接するようになっており、弁座部48の軸心側の部分には上下方向に延びる貫通孔48aが形成されている。嵌合部49には、貫通孔48aに連通し且つ下方へ延びる誘導孔49aが形成されており、この誘導孔49aは、下方ほど径が大きくなる末広がりの形状に形成されている。誘導孔49aの周囲には、環状の溝49bが形成されており、誘導孔49aを形成する壁部が、誘導孔49aが拡径する方向に容易に弾性変形できるようになっている。従って、誘導孔49aにインク供給管12が挿入されたときに、誘導孔49aとインク供給管12との密着性を向上させてインク漏れを極力防止できる。また、誘導孔49aに対してインク供給管12が傾斜した状態あるいはずれた状態で挿入された場合でも、誘導孔49aが拡径する方向に壁部が変形するため、インク供給管12が誘導孔49aに確実に挿入される。
【0021】
付勢部47は、弁座部48の外周側部分からインク室31側へ立ち上がった円筒形状の側壁部47aと、この側壁部47aの上端から径方向内側に一体的に張り出した張出部47bとを有する。張出部47bの下面は弁体46に当接しており、側壁部47a及び張出部47bの弾性力により、弁体46は下方に付勢されている。さらに、張出部47bの内側には開口47cが形成されており、一体形成された側壁部47aと張出部47bが容易に弾性変形できるように構成されている。
【0022】
図5、図6に示すように、弁体46は、弁座部48に当接する底部50と、この底部50の外周側部分からインク室31側に延びる円筒状の弁側壁部51と、底部50の中心部から弁側壁部51よりもさらにインク室31側に突出した破断部52とを有する。
【0023】
底部50の下面(弁座部48と対向する端面)には、弁座部48側に突出する環状突起50aが形成されている。そして、付勢部47により弁体46が弁座部48側に付勢され、環状突起50aが弁座部48の上面に密着している状態では、弁座部48の貫通孔48aが弁体46により閉塞されて、インク供給流路が閉止されている。さらに、底部50の、環状突起50aよりも外周側で且つ弁側壁部51よりも内周側の部分における周方向等分位置には、弁体46の上側の空間と下側の空間とを連通させる複数(例えば、8つ)の連通路53が形成されている。
【0024】
図5、図6に示すように、破断部52は、平面視で十字形状に組み合わされた4つの板部材52a,52b,52c,52dで構成されており、底部50の略中心部に立設されている。また、4つの板部材52a〜52dの間には上下方向に延びる溝54が夫々形成されている。そして、破断部52は、張出部47bの内側の開口47cを通って上方へ突出しており、図4に示すように、その先端は薄膜部39よりも少し下方の位置に配置されている。
【0025】
インクカートリッジ3がホルダ4に装着されるときには、ホルダ4に設けられたインク供給管12が誘導孔49a内に挿入される。すると、インク供給管12の先端により付勢部47の付勢力に抗して弁体46が押し上げられ、弁体46が付勢部47を変形させながら上方へ移動して、弁体46の環状突起50aが弁座部48から離隔する。このとき、上方へ移動した弁体46の破断部52の先端により薄膜部39が破断されるため、図4、図5(b)に示すように、インク室31内のインクが筒状部38内の連通路を介して弁収容室32内に流入し、さらに、弁体46の連通路53を介してインク供給管12からインクがインクジェットプリンタ1側に供給される。
【0026】
大気導入弁22は、弁本体45と、この弁本体45内に収納された弁体46とを備えており、インク供給弁21と同一の構成を有する。即ち、弁本体45の弁座部48に、付勢部47により下方へ付勢された弁体46が密着して、弁体46が貫通孔48aを塞ぐように構成されている。そして、インクカートリッジ3がホルダ4に装着されるときには、弁本体45に形成された誘導孔49aに大気導入管13が挿入され、インク供給弁21と同様に、弁体46が上方へ移動して破断部52により筒状部41の薄膜部42が破断される。すると、外部の大気が大気導入管13から弁体46の連通路53を介して弁収容室33内に流入し、さらに、筒状部40,41及び筒部材43の内部通路を介してインク室31の上部に大気が導入される。
【0027】
図4に示すように、シャッター機構23は、インク室31の下側の空間に設けられており、このシャッター機構23は、光を透過しない遮光板60(第1の被検出部)と、中空状のフロート61と、遮光板60とフロート61とを連結する連結部材62と、仕切壁30の上側に設けられ連結部材62を枢支する支持台63とを備えている。遮光板60とフロート61は連結部材62の両端部に夫々設けられており、連結部材62は支持台63の枢支点を中心に、図4の紙面に平行な鉛直面内で揺動可能に配設されている。
【0028】
遮光板60は、前記鉛直面に平行で且つ所定の面積を有する薄板状の部材である。ところで、インクカートリッジ3がホルダ4に装着された状態では、ホルダ4に設けられたセンサ14の発光部14a及び受光部14bは、カートリッジ本体20の側壁部に形成された突出部34と等しい高さに位置する。そして、遮光板60が突出部34内の空間に位置するときには、遮光板60は、センサ14の発光部14aから、透光性のカートリッジ本体20の壁部及びインク室31のインクを透過してきた光(直接光)を遮断するようになっている。フロート61は、その内部に空気が満たされた円筒形状の部材であり、フロート61全体の比重はインク室31内のインクの比重よりも小さくなっている。
【0029】
従って、インク室31内のインク残量が多く、連結部材62の一端に設けられたフロート61の全体がインク中に位置する状態では、浮力によりフロート61が浮いて、他端に設けられた遮光板60が、突出部内の発光部14aからの光を遮断する位置(図4の実線の位置)に位置する。しかし、インク室31内のインク残量が少なくなり、フロート61の一部がインクの液面から露出すると、フロート61に作用する浮力が小さくなってフロート61が下降する。すると、遮光板60は突出部34内よりも上方の、遮光板60が発光部14aからの直接光を遮断しない位置(図4の鎖線の位置)に移動するため、発光部14aからの直接光は、直線的な光路中で光透過性の突出部34を透過して直接的に受光部14bに受光されるようになる。このようにして、センサ14によりインク室31内のインクの残量が少ない状態が検出される。
【0030】
キャップ24は、カートリッジ本体20と異なり、光を透過しない非透光性の材料で形成されている。そして、図2〜図4に示すように、このキャップ24は、カートリッジ本体20の下端部を覆った状態で、超音波溶着等によりカートリッジ本体20に固着されている。キャップ24の底部において、インク供給弁21及び大気導入弁22と夫々対応する位置には、下方へ突出する2つの環状突起65が夫々形成されており、インクカートリッジ3を机上に置いたときなどに、インク供給弁21や大気導入弁22の入口付近のインクが机の表面等に付着しにくくなっている。
【0031】
カートリッジ本体20に形成された突出部34と同じ側のキャップ24の側壁部には、上下方向に延びるリブ状の凸部66(第2の被検出部)が形成されている。図2(b)、図4に示すように、この凸部66とカートリッジ本体20の突出部34内の遮光板60は、鉛直方向(インクカートリッジ3の装着方向)に沿って所定距離離隔した位置に配設されており、凸部66は遮光板60よりも下側(装着方向先頭側)に位置している。従って、インクカートリッジ3をホルダ4に装着した状態では、凸部66は、センサ14の発光部14a及び受光部14bよりも下側の位置にある。さらに、図7に示すように、凸部66は、平面視でセンサ14の発光部14aと受光部14bに挟まれる位置にある。
【0032】
従って、凸部66は、インクカートリッジ3がホルダ4に装着される場合、あるいは、ホルダ4からインクカートリッジ3が取り外される場合にのみ、センサ14の発光部14aからの光を瞬間的に遮断することにより検出される。一方、インクカートリッジ3の装着状態においては、センサ14により凸部66は検出されず、インク室31内に配設された遮光板60のみがセンサ14により検出可能となる。即ち、インクカートリッジ3の着脱時にのみセンサ14で凸部66が検出されることで、後述の制御装置8によりインクカートリッジ3が装着されているか否かを認識できることになる。また、インクカートリッジ3を一方向に着脱するだけで、凸部66がセンサ14により検出されるようになっている。そのため、凸部66をセンサ14で検出する為の複雑な操作が不要であり、さらに、外部に露出しており強度的にも弱い凸部66がホルダ4と接触するなどして破損してしまうのを極力防止できる。
【0033】
尚、キャップ24は、カートリッジ本体20とは別の部材で構成されている。従って、例えば、仕様が異なるインクジェットプリンタ1に対しても、装着されるインクカートリッジ3のキャップ24を要求される仕様毎に異なる形状に形成して対応することが可能である。例えば、図3に示すように、あるインクカートリッジ3のキャップ24において、凸部66の幅方向両側部分に上下方向に延びる2つのリブ67を夫々形成し、一方、ホルダ4には、これら2つのリブ67と夫々係合する2つの係合溝(図示略)を形成しておくことにより、このインクカートリッジ3はキャップ24が対応するインクジェットプリンタ1にのみ装着されることになる。そして、リブ67の形状や数、あるいは位置が異なる複数種類のキャップ24をカートリッジ本体20と組み合わせることにより、特定の仕様のインクジェットプリンタ1に対して、対応する特定のインクカートリッジ3として装着されるように構成することができる。
【0034】
以上、カラーインクを貯留するインクカートリッジ3a〜3c及びブラックのインクを貯留する小容量のインクカートリッジ3dについて説明したが、前述したように、ブラックインク用のホルダ4dには、小容量のインクカートリッジ3dの他に、大容量のインクカートリッジ3d’も装着可能である。この大容量のインクカートリッジ3d’は、前述したように、小容量のインクカートリッジ3dと比較して、幅が広くなっている他に、凸部の形状が異なっている。
【0035】
図8に示すように、大容量のインクカートリッジ3d’は、カートリッジ本体70と、このカートリッジ本体20の下端部を覆うキャップ71とを有し、キャップ71に凸部76が設けられている。この凸部76は、上下に並んだ2つの非透光性の被検出部76a,76bを有する二股形状に形成されている。従って、前述の小容量のインクカートリッジ3dの着脱時には、発光部14aからの光は凸部66により1回遮断されるだけであるのに対し、大容量のインクカートリッジ3d’の着脱時には、発光部14aからの光は凸部76の2つの被検出部76a,76bにより2回遮断される。従って、光の遮断回数(凸部の検出回数)の違いにより、小容量のインクカートリッジ3dと大容量のインクカートリッジ3d’の何れがホルダ4dに装着されたかを、次述の制御装置8により判別することが可能となる。
【0036】
次に、制御装置8について説明する。制御装置8は、インクジェットヘッド2のノズル2aからのインクの吐出や、インクジェットヘッド2への給紙、あるいは、インクジェットヘッド2により印字された用紙の排紙等、インクジェットプリンタ1の各種作業の制御を司るものであり、制御装置8は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read-Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)と、書き換え可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリと、入出力インターフェースやバス等で構成されている。そして、図1に示すように、制御装置8は、外部のパーソナルコンピュータ(PC)82から入力された各種信号に基づいて、インクジェットヘッド2、キャリッジ5を駆動する搬送機構6のモータ、パージ装置7の吸引ポンプ12等、インクジェットプリンタ1を構成する種々の装置を制御する。
【0037】
さらに、制御装置8は、センサ14からの出力信号に基づいて、ホルダ4におけるインクカートリッジ3の装着状態を判定する装着状態判定部80(装着状態判定手段)と、インク室31内のインク残量を算出するインク残量算出部81とを備えている。
【0038】
以下、装着状態判定部80とインク残量算出部81の作用について、図9の装着状態判定処理のフローチャートを参照して説明する。ここで、図9におけるSi(i=10,11,12・・・)は各ステップを示す。尚、このフローチャートは、ブラックのインクを貯留するインクカートリッジ3d(3d’)がホルダ4dに装着される際に適用されるものである。
【0039】
まず、インクジェットプリンタ1の電源が投入されている状態で、キャップ24に設けられた凸部66(76)がセンサ14で検出されていない場合には(S10:No)、S16のインク残量算出処理に移行する。凸部66(76)がセンサ14で検出された場合に(S10:Yes)、この凸部66(76)の検出直前に、ホルダ4dにインクカートリッジ3d(3d’)が装着されていた場合には(S11:Yes)、インクカートリッジ3d(3d’)がホルダ4dから取り外されたと判定して(S12)、インクカートリッジ3d(3d’)が非装着状態にあることに対応する情報を記憶する。さらに、インク残量を算出する必要はないため、そのままリターンする。
【0040】
凸部66(76)の検出直前にインクカートリッジ3d(3d’)が装着されていなかった場合であって(S11:No)、凸部66(76)が1回だけ検出されたときには(S13:Yes)、図3に示す小容量インクカートリッジ3dの凸部66が検出されたことになるので、ホルダ4dに小容量のインクカートリッジ3dが装着されたと判定して(S14)、インクカートリッジ3dが装着状態にあることに対応する情報を記憶する。さらに、S16のインク残量算出処理に移行する。一方、凸部66(76)が2回検出されたときには(S13:No)、図8に示す大容量インクカートリッジ3d’の二股形状の凸部76が検出されたことになるので、ホルダ4dに大容量のインクカートリッジ3d’が装着されたと判定して(S15)、インクカートリッジ3d’が装着状態にあることに対応する情報を記憶する。さらに、S16のインク残量算出処理に移行する。
【0041】
S16のインク残量算出処理においては、シャッター機構23の遮光板60が検出されている場合(インク残量が十分にある場合)には、インクカートリッジ3d(3d’)の最大容量(小容量のインクカートリッジ3dと大容量のインクカートリッジ3d’とで異なる)と、インクカートリッジ3d(3d’)装着時からの吐出されたインク液滴数の積算値とから概略のインク残量を算出する。一方、シャッター機構23の遮光板60が検出されていない場合(インク残量が少なくなっている場合)には、遮光板60が検出されなくなった状態でのインク残量(最大容量と同様に、小容量のインクカートリッジ3dと大容量のインクカートリッジ3d’とで異なる)と、その状態となったときからの吐出されたインク液滴数の積算値とから、より正確なインク残量を算出する。そして、S16で算出されたインク残量をPC82に転送して(S17)、リターンする。
【0042】
尚、以上の説明において、インクカートリッジ3の装着状態や、吐出されたドットの積算値等の情報は、インクジェットプリンタ1の電源が落ちた状態でも保持されるように、EEPROM等の不揮発性メモリに記憶される。
また、以上の説明は、2種類のインクカートリッジ3d、3d’のうちの何れかが選択的に装着されるホルダ4dに関するものであるが、1種類のカラーインクのインクカートリッジ3a〜3cが夫々装着されるホルダ4a〜3cに関しては、図9のS13〜S15のような判断は不要である。
【0043】
以上説明したインクカートリッジ3及びインクジェットプリンタ1によれば、次のような効果が得られる。
キャップ24に設けられた非透光性の凸部66(76)と、カートリッジ本体20の突出部内の遮光板60とが、インクカートリッジ3の装着方向に沿って配設されており、さらに、凸部66(76)は、遮光板60よりも下側(装着方向先頭側)に位置している。そのため、インクカートリッジ3の着脱時にのみ、インク残量を検出する為のセンサ14により凸部66(76)を検出して、装着状態判定部80によりインクカートリッジ3の装着状態を判定することができるため、インクカートリッジ3の装着状態を検出する為の検出手段をセンサ14とは別に設ける必要はなく、製造コストの面で有利となる。また、インクカートリッジ3を一方向に着脱するだけで、凸部66(76)がセンサ14により検出される。そのため、凸部66をセンサ14で検出する為の複雑な操作が不要であり、さらに、外部に露出しており強度的にも弱い凸部66がホルダ4と接触するなどして破損してしまうのを極力防止できる。
【0044】
ブラックのインクを貯留する小容量のインクカートリッジ3dと、大容量のインクカートリッジ3d’において、装着状態を検出するための凸部66(76)の形状が異なるため、小容量と大容量の何れのインクカートリッジがホルダ4dに装着されたかを、制御装置8の装着状態判定部80により判別することができる。さらに、装着状態判定部80により判定されたインクカートリッジの種類に基づいて、インク残量算出部により正確なインク残量を算出することができる。
【0045】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。尚、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]装着時に凸部が破損してしまうのをさらに確実に防止するために、インクカートリッジに、凸部の少なくとも一部を覆うカバー部を設けてもよい。例えば、図10に示すように、インクカートリッジ90において、キャップ92に凸部93が設けられ、カートリッジ本体91には、上下に延びる角筒状のカバー部94が設けられている。そして、このカバー部94内に凸部93の上端部が挿入されている。このインクカートリッジ90では、カバー部94により凸部93が保護されるため、万が一、装着時に凸部93がホルダ4等に接触しても凸部93が破損しにくくなる。また、凸部全体を透光性の部材で形成されたカバー部で覆うようにしてもよい。これにより、確実に凸部93の破損を防ぐことができる。
【0046】
2]カートリッジ本体とキャップとを一体形成してもよい。この場合には、部品数が少なく、キャップをカートリッジ本体に固着する手間も省けるため、製造コスト的に有利である。
3]インク残量を検出するインク残量検出手段としては、前記実施形態のように、発光源と受光部とが直線的な光路で結ばれており、発光源からの直接光が受光部に到達したか否かに対応して信号が出力されるタイプの光学式センサ14に限定されるものではなく、発光源から放射された光であっても、被検出体の表面から反射してくる光の有無に対応して信号が出力されるタイプの光学式センサであってもよい。この場合、発光源から直線的に放射される光の光路を、所定の反射率を有する部材で一旦遮ることで、この反射率に対応して反射されてくる間接光が受光部に入射することになる。
例えば、第2の被検出部としての凸部66、76、93が所定の反射率を有した非透光性の部材で形成されており、インクカートリッジ3、90の着脱時に、発光源からの光のうち凸部66、76、93により反射されてきた間接光が所定の光量をもって受光部で検出されるように、インクカートリッジ3、90の着脱経路とセンサとが組み合わされている。これにより、前記実施形態と同様の効果が得られる。さらに、キャップ24、71、92の特定の部位に所定の反射率をもたせてもよい。この場合には、発光源と受光部とを対向させ、且つ光路を遮るための特定の構造を被検出部に形成する必要がない。一方、第1の被検出部としては、上述の凸部66、76、93と同様に、遮蔽板60に所定の反射率をもたせるようにしてもよいが、単にインクとカートリッジ本体20、70、91の光透過性の壁面とが組み合わさった部位であってもよい。インクが壁面に接する状態ではインクと壁面との界面で反射してくる間接光が受光部に届き、インクが無くなれば光は壁面を透過してしまい受光部に届かなくなる。このように、インクの残量及びインクカートリッジの装着状態の検出系を、比較的簡単な構成で組むことができる。また、光学式のセンサ14のような非接触式のものに限らず、接触式のセンサを用いることも可能である。
【0047】
4]前記実施形態のインクカートリッジ3は、ホルダ4に対して一方向に装着されるものであるが、例えば、一旦下方へ押し込んでからその後に水平に移動させることによりホルダに装着されるものなど、2以上の方向に移動させることによりホルダに装着されるインクカートリッジに対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェットプリンタ
3 インクカートリッジ
4 ホルダ
8 制御装置
13 大気導入管
14 センサ
14a 発光部
14b 受光部
20,70 カートリッジ本体
24,71 キャップ
60 遮光板
66,76 凸部
80 装着状態判定部
90 インクカートリッジ
91 カートリッジ本体
92 キャップ
93 凸部
94 カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジと、
前記インクカートリッジのインクの残量を検出するインク残量検出手段を有し、前記インクカートリッジが、着脱可能に装着されるカートリッジ装着部を備え、
前記インクカートリッジは、装着状態において前記インク残量検出手段により検出される第1の被検出部と、前記第1の被検出部から装着方向先頭側に離隔した位置に設けられ、着脱時に前記インク残量検出手段により検出される第2の被検出部と、を有し、
さらに、前記インク残量検出手段が前記第2の被検出部を検出したか否かに基づいて前記カートリッジ装着部における前記インクカートリッジの装着状態を判定する装着状態判定手段を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−12804(P2010−12804A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244058(P2009−244058)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【分割の表示】特願2004−60456(P2004−60456)の分割
【原出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】