説明

インクジェットヘッドの洗浄方法および洗浄装置

【課題】 ノズルの目詰まりの原因物質を効果的に除去できるインクジェットヘッドの洗浄方法および洗浄装置を提供する。
【解決手段】 インク供給口と、インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、インク室からインクが供給される圧力室と、圧力発生部による圧力室内での圧力の発生によって、圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備え、インク室からノズル先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッド100の洗浄方法において、ノズルの先端部が洗浄液wに浸された状態で、圧力発生部が圧力を発生することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドの洗浄方法、およびインクジェットヘッドの洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク供給口と、該インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、インク室からインクが供給される圧力室と、該圧力発生部による圧力室内での圧力の発生によって、該圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備えたインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置が、広く知られている。このようなインクジェット記録装置では、インク供給口に取り付けられたインクタンク(図略)から、該インク供給口及びインク室を介して、圧力室内にインクが供給される。この状態で、圧力発生部が駆動回路部によって駆動されて、圧力室内に圧力が発生し、この圧力に押し出されることよって、ノズルからインク滴が吐出される。この吐出されたインク滴によって、紙やフィルム等の記録対象に記録がなされる。
【0003】
このような、インクジェット記録装置において、インクジェットヘッド内に異物やノズルの目詰まりが生じては、安定的なインクの吐出が得られない。最近、インクジェット記録装置が、民生用やオフィス用だけでなく、例えば、プリント基板の配線形成や、液晶パネルのカラーフィルタの製造等のような、産業用として用いられることも多くなっているが、このような産業を用途とした使用では、特に、長期間の使用によって、ノズルに目詰まりが生じ易い。すなわち、産業用に用いられるインクは、乾燥後の膜の性質への影響から、目詰まりを十分に防止するに足る条件のものを採用することができない場合があり、また、インクの塗布対象との密着性等のために特殊な材料が含まれる場合も多く、長期間の使用によって、インクジェットヘッド内でインクが凝固し易いからである。
【0004】
このような、異物除去やノズルの目詰まり解消の第1の手段として、吸引ポンプによって、インク室に吸引圧を作用させて、ノズルから洗浄液と空気を交互に吸引し、洗浄液とともに異物を除去する方法がある(特許文献1を参照)。また、第2の手段として、超音波洗浄器により発生した超音波をインクジェットヘッドに与えながら、吸引ポンプによって、吸引圧をインク室に作用させることで、超音波によって浮上させた異物を、吸引圧によって除去する方法もある(特許文献2を参照)。さらに、第3の手段として、インクカートリッジに代えて、洗浄液を含むカートリッジをインクジェットヘッドに取り付け、ノズルから、カートリッジに含まれる洗浄液を吸引した後に、該洗浄液を噴射させることで、洗浄液とともに異物を排出させる方法がある(特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開平6−8471号公報
【特許文献2】特開平9−254397号公報
【特許文献3】特開平9−39260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の異物除去やノズルの目詰まり解消の手段では、下記の不都合があった。すなわち、第1の手段のようにインク室を一括して吸引する方法では、ノズル数の多いインクジェットヘッドにおいては、一部のノズルが詰まった場合に、詰まっていない他のノズルに洗浄液や空気が流れてしまう。ゆえに、詰まったノズルには吸引力が殆ど生じず、このため、ノズルの詰まりを除去することができない場合がある。また、第2の手段では、インクジェットヘッド内部における超音波の伝達量にばらつきがあるため、超音波が届きにくい部位(例えば、インク室の隅)では、異物を十分に除去することが困難な場合があった。さらに、第3の手段では、インク供給路の中で最も開口面積の小さいノズルから、異物が除去されるため、洗浄液で異物をノズル径以下に分解せずして異物を除去することができない。ゆえに、混入の可能性のある、様々な異物に対応した洗浄液を準備することが必要となるが、このような洗浄液を準備することは困難であるため、異物を十分に除去することができない場合があった。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、吐出不安定の原因となるインクジェットヘッド内の異物除去やノズルの目詰まり解消を効果的に行なうことができるインクジェットヘッドの洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の手段では、インク供給口と、該インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、前記インク室からインクが供給される圧力室と、該圧力発生部による前記圧力室内での圧力の発生によって、該圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、前記圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備え、前記インク室から前記ノズル先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄方法において、前記ノズルの先端部が洗浄液に浸された状態で、前記圧力発生部が圧力を発生することを特徴とする。
【0008】
この構成によると、圧力発生部を連続的に駆動することで、圧力室内の洗浄液に圧力波を繰返し発生させることができる。この繰返し発生する圧力波の衝撃により、ノズルの目詰まりの原因物質を粉砕したり、固着したものを浮上させることができる。また、この圧力波の繰り返しは、洗浄液をノズルの先端から圧力室内に流入させ、インク室及びインク供給口を介して、外部へ流出させることができる。これは、インク供給路の少なくとも一部の断面積がインクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されているため、圧力波に伴う洗浄液の移動の際に、洗浄液がノズルから流入する場合よりも、流出する場合の方が、流路抵抗が大きくなり、これによって、洗浄液が、ノズルの先端から圧力室内に流入され、インク室及びインク供給口を介して、外部へ流出されるように方向づけされるためである。つまり、ノズルの先端部が洗浄液に浸された状態で、インクジェットヘッドを駆動することによって、ノズルの目詰まりの原因物質を粉砕したり、浮上させることができる一方で、ノズル先端部から流入した洗浄液とともに外部へ排出させることができるため、インクジェットヘッドの内部を効率的に洗浄することが可能になっている。
【0009】
また、多チャンネル化されたヘッドにおいて、一部のチャンネルに異物やノズル詰まりがあった場合であっても、チャンネル毎に圧力波を発生させることができるため、先行技術の第1の手段のように他のチャンネルに洗浄作用を妨げられることがなく、洗浄することが可能である。インク室及びインク供給口を介して、外部へ流出される。
【0010】
上記インクジェットヘッドの洗浄方法において、ノズルの断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されているインクジェットの洗浄方法であることを特徴とする。また、上記インクジェットヘッドの洗浄方法において、圧力室のうちの少なくとも一部における断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されているインクジェットヘッドの洗浄方法であることを特徴とする。上記インクジェットヘッドの洗浄方法において、上記インク室と上記圧力室との間には、インク流路が形成され、該インク流路のうち少なくとも一部(特に、圧力室側端部が好ましい)における断面積が、通常のインクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッドの洗浄方法であることを特徴とする。
【0011】
これらの構成によると、洗浄液がノズルから流入する場合よりも、流出する場合の方が、流路抵抗が大きくなるため、洗浄液の流れが、ノズルの先端から、洗浄液が圧力室内に流入され、インク室及びインク供給口を介して、外部へ流出されるように方向づけることが可能になる。
【0012】
上記圧力発生部は、上記圧力室を構成する側壁であり、駆動回路部から電圧が印加されることで変形し、上記圧力室を拡張乃至は縮小させて圧力を発生させることを特徴とする。この構成によれば、圧力室の側壁に付着した異物を、側壁の変形によって剥離させることが可能になり、更に洗浄効果を向上させることが可能になる。
【0013】
上記インクジェットヘッドの洗浄方法において、インクの主溶媒と同じ主成分の前記洗浄液を用いることを特徴とする。この構成によると、洗浄液がインクジェットヘッド内に残存している場合であっても、洗浄液中の成分とインクの主溶媒とが化学反応して、凝集することを効果的に防止することが可能になる。
【0014】
上記インクジェットヘッドの洗浄方法において、上記圧力発生部は、印加される電圧レベルの大きさに応じて上記圧力室内に圧力を発生させ、上記駆動回路部は、駆動信号に基づいて、圧力発生部に電圧を印加し、インクを吐出するための駆動信号に比較して、駆動波形の電圧レベルの大きい駆動信号を用いることを特徴とする。この構成によると、インクジェットヘッドを用いてインクを吐出させることで、ノズル詰まりが生じた場合に、このノズルに詰まった異物を効果的に除去することが可能になる。
【0015】
上記インクジェットヘッドの洗浄方法において、上記圧力発生部は、印加される電圧レベルの大きさに応じて、上記圧力室内に圧力を発生させ、上記駆動回路部は、駆動信号に基づいて、上記圧力発生部に電圧を印加し、駆動波形のパルス幅が、洗浄液で充填された上記圧力室における圧力波の振動周期:T0の1/2と略等しい(略等しいとは、T0の1/2と、前後20%以内の誤差であることとする)、駆動信号を用いることを特徴とする。
【0016】
この構成によると、圧力発生部によって圧力室内に圧力が発生されることに起因して、既に、圧力波が発生している場合に、駆動信号を用いて圧力発生部が駆動されることで、新たに発生する圧力波と、既存の圧力波とを共振させ、更に大きな圧力を、圧力室内に発生させることが可能となる。ゆえに、より洗浄効果を向上させることが可能になる。
【0017】
上記多チャンネル化されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄方法において、一部のチャンネルの圧力発生部のみを選択的に駆動することを特徴とする。
【0018】
この構成によると、洗浄の必要があるノズルが特定できる場合に、洗浄の必要があるノズルのみを集中的に洗浄することで、洗浄液の消費量を抑えることができる。
【0019】
前記ノズルの先端部が浸される洗浄液を収容する洗浄液供給部に、前記ノズルの先端部から吸引される液量以上の洗浄液を供給することを特徴とする。
【0020】
この構成によると、ノズルの先端部が常に洗浄液に浸された状態になるので、ノズルの先端部から洗浄液が吸引されることによる洗浄液の液面の低下が防止される。このため、ノズルの先端部が洗浄液に浸されない状態での駆動(空駆動)を防ぐことができるので、空駆動によるインク流路への空気の混入や、インクジェットヘッドの温度上昇による劣化を防ぐことができる。
【0021】
前記洗浄液供給部は、前記ノズルの先端部が浸される洗浄液を収容する洗浄液容器を含み、前記洗浄液容器から前記洗浄液をオーバーフローさせることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、洗浄液が洗浄液容器からあふれ出すため、洗浄液容器内の粉塵等の異物が、あふれ出した洗浄液とともに洗浄液容器の外へ流れ出される。このため、洗浄液容器内の洗浄液から異物が除去され、ノズルの先端部からインクジェットヘッド内部への異物の混入を防ぐことができる。
【0023】
前記オーバーフローした洗浄液を、回収し、ろ過した後で、前記洗浄液容器に再供給することを特徴とする。
【0024】
この構成によると、オーバーフローした洗浄液を回収し、ろ過した後で、再利用するため、廃液として排出される洗浄液の量が減少し、洗浄液の総使用量を抑えることができる。このため、インクジェットヘッドの洗浄に要するコストを抑制することができる。
【0025】
本発明の第2の手段では、インク供給口と、該インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、前記インク室からインクが供給される圧力室と、該圧力発生部による前記圧力室内での圧力の発生によって、該圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、前記圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備え、前記インク室から前記ノズル先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄装置において、前記ノズルの先端部を洗浄液で被覆させる洗浄液供給部と、該洗浄液供給部から前記圧力室に供給された洗浄液の廃液を、前記インク供給口から回収するための廃液回収部と、前記駆動回路部による前記圧力発生部の駆動を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0026】
上記構成によると、洗浄液供給部からの洗浄液が、ノズルの先端を介してインクジェットヘッド内に流入され、圧力室及びインク室を介して、インク供給口から、廃液回収部に排出されることになる。これによって、インクジェットヘッド内を、洗浄液で効果的に洗浄することが可能となる。
【0027】
本発明の第3の手段では、インク供給口と、該インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、前記インク室からインクが供給される圧力室と、該圧力発生部による前記圧力室内での圧力の発生によって、該圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、前記圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備え、前記インク室から前記ノズル先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッドであって、廃液排出口が前記インク室に形成されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄装置において、前記ノズルの先端部を洗浄液で被覆させる洗浄液供給部と、該洗浄液供給部から前記圧力室に供給された洗浄液の廃液を、前記廃液排出口から回収するための廃液回収部と、前記駆動回路部による前記圧力発生部の駆動を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0028】
上記構成によると、インクジェットヘッドを用いて、インク供給口を介して供給されたインクで、描画を行うことが可能になる。そして、描画中に、ノズル詰まり等が生じることで、描画ができなくなったときに、描画を中断して、ノズルの先端を介して、洗浄液供給部からの洗浄液を圧力室内に流入させ、圧力室からインク室を通って、廃液回収口を介して排出された廃液を、廃液回収部で回収させることが可能になる。
【0029】
本発明のインクジェットヘッドの洗浄装置は、前記洗浄液供給部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0030】
上記構成によると、洗浄液供給部に洗浄液を簡便に補充することができる。このため、インクジェットヘッドのノズルの先端部から洗浄液が吸い上げられ、洗浄液の液面が低下したために、ノズルの先端部が洗浄液に浸漬しなくなることによるインクジェットヘッドの空駆動を防ぐことができる。したがって、空駆動によるインク流路内への空気の混入や、空駆動によるインクジェットヘッドの劣化を防ぐことができる。
【0031】
前記洗浄液供給部は、前記ノズルの先端部を被覆する洗浄液を収容する洗浄液容器と、前記洗浄液容器からオーバーフローした洗浄液を回収する回収容器とを含み、前記回収容器に回収された洗浄液を前記洗浄液容器へ再供給する循環機構を備えたことを特徴とする。
【0032】
上記構成によると、オーバーフローした洗浄液が回収容器によって確実に回収され、この洗浄液を循環機構によって洗浄液容器へ再供給することができる。このため、インクジェットヘッドの洗浄に必要な洗浄液の液量を大幅に減少させることができる。したがって、インクジェットヘッドの洗浄に要するコストを抑制することができる。
【0033】
前記インク供給口から前記インク室に流入する方向における前記インク供給口の上流側、及び、前記インク室から前記廃液排出口を経由して排出される方向における前記廃液排出口の下流側のそれぞれに、前記洗浄液の流量を測定する流量測定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0034】
上記構成によると、廃液排出口の下流側に配置された流量測定手段では、ノズルの先端部から吸い上げられた洗浄液の流量と、インク供給口からインク室に流入した洗浄液の流量との合計量が測定される。このため、廃液排出口の下流側に配置された流量測定手段の測定値から、インク供給口の上流側に配置された流量測定手段の測定値を減算することによって、ノズルの先端部から吸い上げられた洗浄液の液量を測定することができる。したがって、ノズルの先端部から吸い上げられた液量以上の液量の洗浄液を洗浄液容器に供給することが可能となる。これによって、洗浄液の供給不足による洗浄液容器内の洗浄液の液面の低下を防ぐことができる。したがって、インクジェットヘッドの空駆動によるインク流路内への空気の混入や、空駆動によるインクジェットヘッドの劣化を確実に防ぐことができる。
【0035】
前記洗浄液容器の上方に配置され、平面視において前記洗浄液容器内の洗浄液の液面の少なくとも一部を覆う洗浄液供給部保護部材をさらに備えたことを特徴とする。
【0036】
上記構成によると、ノズルの先端部が浸される洗浄液の上方に洗浄液供給部保護部材が配置されるので、洗浄液容器内への粉塵等の異物の落下を抑制することができる。このため、ノズルの先端部から洗浄液とともに異物が吸い上げられることによるインクジェットヘッド内部への異物の侵入を抑制することができる。さらに、洗浄液容器内の洗浄液の蒸発を抑えることができ、洗浄液の使用量を減少させることができる。
【発明の効果】
【0037】
上記発明によれば、多チャンネル化されたヘッドの一部のチャンネルに異物やノズル詰まりがあった場合であっても、チャンネル毎に圧力波を発生させることでできるため、効果的にインクジェットヘッド内部を洗浄液で洗浄することができる。これによって、本発明にかかるインクジェットヘッドの洗浄方法を用いて、インクジェットヘッドの製造工程で混入した異物を効果的に除去することができ、歩留りの向上を図ることができる。また、使用によりインクの老廃物等によって、インクの吐出ができなくなった場合に、本インクジェットヘッドの洗浄方法を用いて、洗浄することで、インクジェットヘッドの長寿化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、同一の符号が付された構成は、同一の構成を有するものとして、説明を省略する。
【0039】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるインクジェットヘッド100を概略的に示す斜視構成図である。インクジェットヘッド100は、略直方体状の、流路基板101、カバープレート102、マニホールド103が積層されて成る。マニホールド103には、管状のインク供給路1031aが形成されており、インクジェットヘッド100で描画を行う場合(以下「描画状態」と記載する)には、このインク供給路1031aは、インク供給路1031aの入口であるインク供給口1031を介して、インクタンク(図略)に連通される。カバープレート102は、マニホールド103より縦寸法(図中の左右寸法)及び横寸法(図中の奥行き寸法)ともに大サイズであり、インク供給口1031の下方の部分に、横方向に長尺状の開口部が形成されている。この開口部は、描画状態では、インク供給口1031を介してインクタンク(図略)からインクが供給され、供給されたインクを一時的に貯える共通インク室1021(インク室の一例)となっている。
【0040】
流路基板101は、分極方向(図中の矢印方向)で対向配置された、一対の圧電体基板101a、101bを備える。圧電体基板101aの表面には、圧電体基板101bに至る深さを有する複数の溝1011が、互いに略平行になるように、縦方向に延びるように形成されている。溝1011は、カバープレート102で閉塞されている部分が、圧力室1011aとなるとともに、カバープレート102で覆われていない部分、すなわち共通インク室1021と接している部分が、圧力室1011aに共通インク室1021からインクを供給するためのインク流路1011bとなる。
【0041】
溝1011の間は、隔壁1012(圧力発生部の一例)となっており、隔壁1012における溝1011に臨む両面には、電極1013が形成されている。電極1013は、電極引き出し部1014を介してフレキシブル基板200に電気的に接続され、これによって、電極1013は、フレキシブル基板200上に搭載されたドライバIC201(駆動回路部の一例)に電気的に接続されている。インクジェットヘッド100は、いわゆるシェアモードタイプであり、ドライバIC201が、後述する制御部4から出力される駆動信号に従って、電極1013の各々に、選択的に電圧を印加する(駆動する)ことで、隔壁1012に電界を生じさせてシェア変形させる。これによって、圧力室1011aが拡張乃至は収縮して、圧力室1011a内に圧力が発生する。なお、シェアモードタイプのインクジェットヘッド100における圧力発生のメカニズムは、特公表6−61936等に記載されているように、周知であるため、説明を省略する。
【0042】
流路基板101における他方の端面(電極引き出し部1014の他端側)には、ノズルプレート104が取り付けられている。ノズルプレート104には、溝1011と同方向に延びる複数のノズル1041が形成されている。ノズル1041は、流路基板101に取り付けられた状態で、溝1011の端部と重なる位置に形成されている。描画状態において、圧力室1011aの拡張乃至は収縮によって圧力室1011a内に圧力が発生することで、圧力室1011a内のインクが押出され、これによって、インクが、ノズル1041から吐出されるようになっている。共通インク室1021からノズル1041の先端までを、以下、「インク供給路」と記載する。
【0043】
図2(a)は、図1に示すインクジェットヘッド100のインク供給路の形状を示す平面断面図であり、(b)(c)は、第1の実施形態の変形例にかかるインク供給路の形状を示す図である。(a)で示すインク供給路において、インク流路1011b及び圧力室1011aでは、縦方向(長手方向)からの断面積がほほ同一であるが、ノズル1041では、縦方向からの断面積が例えば連続的にインク供給方向に向かって減少するような、概テーパ形状になっている。このような形状は、インクの吐出効率や吐出方向の安定性を考慮しての一般的な形状であるが、本実施形態における、インクジェットヘッド100の洗浄のために必要な構成である(詳しくは後述する)。なお、図2(b)、(c)における、第1の実施形態の変形例についても後述する。
【0044】
図3は、図1で示すインクジェットヘッド100の洗浄装置1を概略的に示す構成図である。洗浄装置1は、洗浄液供給部2と、廃液回収部3と、制御部4とを備える。洗浄液供給部2は、インクジェットヘッド100を洗浄するための洗浄液wを入れる容器21を備える。容器21は、上部が開口し、この開口部は、ノズル1041の先端を、洗浄液wに浸して被覆できる間口寸法に設定されている。洗浄液wには、インクの主溶媒が用いられる。この理由は、例えば、洗浄液wが残存した状態で、インクタンク(図略)よりインクが供給された場合でも、インクの主溶媒と洗浄液w中の成分とが化学反応することで、凝集して新たな異物を発生させることがないからである。これによって、インクジェットヘッド100の長寿命化を更に図ることができるとともに、洗浄後に、洗浄液wを完全に除去するための処理(例えば、乾燥処理)を行うことなく、インクジェットヘッド100を描画状態にすることができ、洗浄後の処理を簡易にすることができるという利点がある。
【0045】
廃液回収部3は、インク供給口1031に取り付けられたチューブ31と、チューブ31が導入され、チューブ31を介して洗浄液wを廃液として排出するための、容器32とからなる。制御部4は、ドライバIC201に対して駆動信号を出力するためのものであり、この駆動信号に従って、上述したように、ドライバIC201が電極1013間の隔壁1012に電圧を印加して、隔壁1012を収縮及び拡張させて、圧力室1011a内に圧力波を発生させる。なお、チューブ31は、洗浄専用のものに限定されず、描画状態において、インクタンク(図略)からのインクの供給のためのものとして兼用してもよく、制御部4についても、同様に、描画状態で使用されるものと兼用してもよい。
【0046】
洗浄装置1では、圧力室1011a内に圧力波が発生されることで、容器21内の洗浄液wが、ノズル1041の先端から圧力室1011a内に流入され、インク供給口1031を通って、チューブ31を介して廃液として容器32に排出される。また、隔壁1012が変形するため、隔壁1012の側壁に付着した異物等を剥離・浮上させることできる。これによって、浮上させた異物を浮上させながら、洗浄液wの流入によって、インク供給路を洗浄液wで洗い流すことができ、インクジェットヘッド100の洗浄効果を高めることができる。
【0047】
図4は、圧力室1011a内の洗浄液wの流れを説明するための模式図である。図4(a)は、中央のチャネル部における圧力室1011aが拡張されるとともに、両側のチャネル部における圧力室1011aが収縮された状態を示す模式図である。図4(b)は、中央のチャネル部における圧力室1011aが収縮された状態であり、両側のチャネル部における圧力室1011aが拡張された状態を示す模式図である。
【0048】
当初インクジェットヘッド内が空の状態であっても、ノズルの先端を容器21の洗浄液wに浸すことで、毛細管力により洗浄液wが圧力室1011aや共通インク室1021内に流入する。そして、 図4(a)の状態では、中央のチャネル部における圧力室1011aで、拡張による負圧が発生し、これによって、容器21からの洗浄液wがノズル1041の先端から流入するとともに、既に共通インク室1021に洗浄液wが流入している場合には、洗浄液wが共通インク室1021からも流入する。一方、両側のチャネル部における圧力室1011aでは、収縮による正圧が発生して、既に圧力室1011a内に流入していた洗浄液wが、共通インク室1021及びノズル1041の先端を介して流出する。
【0049】
図4(b)の状態では、図4(a)とは逆に、中央のチャネル部から洗浄液wが流出し、両側のチャネル部には洗浄液wが流入する。このような、図4(a)の状態と図4(b)の状態とが交互に繰り返される。
【0050】
このような、圧力室1011aの圧縮及び拡張の過程において、ノズル1041からの洗浄液wの流出量は、その流入量よりも少なくなる。このことは、ノズル1041の形状が、上述したようにインクの供給の下流側に向かって断面積が順次減少するようになっているため、洗浄液wの流出の方向でかかる流路抵抗が、洗浄液wの流入の方向でかかる流路抵抗より大きいことを理由とする。そして、共通インク室1021側の流路抵抗は、ノズル1041での流路抵抗と比較して非常に小さいため、この流出量と流入量との差分が、共通インク室1021側に加算されて流出する。これによって、ノズル1041から流入した洗浄液wが、インク供給口1031を介して流出されるようになっている。圧力室1011aの一回分の収縮及び拡張では、共通インク室1021への洗浄液wの流量は、微少であるが、圧力室1011aに拡張及び収縮を繰り返させることで、インクジェットヘッド100を洗浄するのに足る十分な流量を得ることができるようになっている。
【0051】
なお、本実施形態では、ノズル1041の断面が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状であることで、上述のような、ノズル1041からの洗浄液wの流入における流路抵抗より、洗浄液wの流出における流路抵抗を大きくする構成であるが、本発明は、この構成に限定されず、インク供給路の何れかの位置において、共通インク室1021からノズル1041先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されていればよい。例えば、図2(b)で示すように、圧力室1011aのうちの少なくとも一部における断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状であってもよく、同図面(c)で示すように、圧力室1011aの近傍におけるインク流路1011bが、かかる形状であってもよい。また、図2(a)〜(c)の形状を全て備え、ノズル1041、圧力室1011a、インク流路1011bの一部における断面積がインクの流れの下流側に向かって順次減少する形状であってもよい。
【0052】
以下に、圧力室1011a内に生じる圧力波の振動周期との関係から、圧力室1011a内への洗浄液wの流入量を高めるのに効果的な、圧力室1011aの拡張及び収縮タイミングを説明する。
【0053】
図5は、圧力室1011a内の圧力波の振動周期を説明するための図である。なお、本来、ノズルプレート104側でノズル1041による開口部があるが、その面積は溝1011の長手方向の断面積と比較して、無視できる程に小さいことから、圧力波の伝播の説明においては、閉塞された状態とみなすことができる。
【0054】
図5(a)で示すように、圧力室1011aが拡張すると、圧力室1011a内全体に負圧が発生する(図中では、負圧の状態を“−”の丸印で表現している)。なお、負圧発生時を基準として経過した時間を、時間tとする。
【0055】
この負圧の発生によって、図5(b)で示すように、共通インク室1021内に既に流入されている洗浄液wが、矢印で示すように圧力室1011a内に流入する。この洗浄液wの流れある処と、流れのない処との界面が圧力波となり圧力室1011a内をノズルプレート104方向に伝播する。図5(c)は、圧力波が最初にノズルプレート104に到達した状態を示す。圧力室1011aの長さをL、洗浄液w中の圧力波の音速をaとすると、この状態になるまでには、時間t=L/aを要する。
【0056】
その後も、洗浄液wの流入が持続し、圧力波は、ノズルプレート104に反射されて、共通インク室1021側へ向きを代えて伝播する。これによって、図5(d)で示すように、圧力室1011a内は、ノズルプレート104側より次第に正圧になっていく(図中では、正圧の状態を“+”の丸印で表現している)。図5(e)で示すように、時間t=2L/aが経過したときに、洗浄液wの流れが止まり、圧力室1011a内全体が正圧となる。
【0057】
この正圧によって、図5(f)で示すように、洗浄液wが、共通インク室1021を介して圧力室1011aから流出し始めるとともに、圧力波がノズルプレート104側に向かって伝播する。そして、図5(g)で示すように、時間t=3L/aが経過したときに、圧力波はノズルプレート104に到達する。更に、洗浄液wの流出が持続するため、圧力波は、ノズルプレート104に反射されて、共通インク室1021方向に向かって伝播し、図5(h)に示すように、圧力室1011a内のノズルプレート104側より次第に負圧になる。そして、図5(i)で示すように、時間t=4L/aが経過したときに、圧力波が共通インク室1021に到達して、圧力室1011a内全体は、負圧となり、図5(a)で示す、時間t=0における状態と同じ状態となる。
【0058】
上記のように、損失による減衰はあるものの、圧力波は振動周期T0=4L/aで振動を繰り返す。本実施形態では、このような圧力波の振動が圧力室1011a内にある状態で、再び圧力室1011aを縮小及び拡張させる構成であるため、この縮小乃至は拡張のタイミングを既存の圧力波の振動と同調させることで、圧力室1011aの縮小乃至は拡張によって生じる新たな圧力波と、既存の圧力波とを共振させ、より大きい圧力を発生させることができる。すなわち、駆動波形のパルス幅が、洗浄液wが流入された圧力室1011aにおける圧力波の振動周期:T0の1/2と略等しい、駆動波形を用いることで、新たな圧力波と既存の圧力波とを共振させる。これによって、圧力室1011a内への洗浄液wの流入量を、多くすることができるため、インクジェットヘッド100の洗浄効果を高めることができる。パルス幅が振動周期:T0の1/2と略等しい、駆動波形を用いることで、かかる効果を奏することは、図6で示す実験結果においても立証されている。
【0059】
図6は、実験結果を示すグラフである。本実験では、駆動周波数を一定(37kHz)にした状態で、圧力室1011aの拡張及び縮小の保持時間(駆動信号のパルス幅)を変化させ、排出された洗浄液wの量を計量した。本実験で用いた圧力室1011aの長さ寸法L=1.15mmであり、圧力波の洗浄液w中の音速a≒1000m/secである。
【0060】
実験結果では、圧力室1011aの拡張及び縮小の保持時間が2.25μsecの場合に、排出された洗浄液w量が最大となることを示す。本実験では、既存の圧力波の振動周期T0は、4L/a=4×1.15(mm)/1000(m)=4.6μsecであるため、振動周期:T0の1/2は、2.3μsecである。ゆえに、本実験において、排出された洗浄液w量が最大となるパルス波形のパルス幅(2.25μsec)は、振動周期:T0の1/2(2.3μsec)と略等しいため、かかるパルス幅の駆動波形を用いることが好ましいことが立証されている。
【0061】
以下、上述した洗浄装置1の動作を説明する。準備として、容器21に洗浄液wを入れ、インクジェットヘッド100を洗浄装置1に取り付ける。インクジェットヘッド100の洗浄装置1への取り付けは、容器21中の洗浄液wに、ノズル1041の先端を浸し、チューブ31をインク供給口1031に取り付けるとともに、ドライバIC201に配線5を介して制御部4を電気的に接続することで行う。
【0062】
駆動信号が制御部4よりドライバIC201に出力される。ドライバIC201によって、この駆動信号に基づいて電極1013間に電圧が印加される。これによって、圧力室1011aにおけるチャネル部が、1つおきに拡張し、拡張したチャネル部に隣接するチャネル部が縮小するように、隔壁1012をシェア変形させる。この圧力室1011aの拡張及び縮小が交互に繰り返されるように、ドライバIC201によって、隔壁1012に電圧が印加される。これによって、洗浄液wが、ノズル1041を介して圧力室1011aに流入し、共通インク室1021及びインク供給口1031を介して、容器32に排出される。
【0063】
上記構成によって、圧力室1011aが拡張及び縮小を交互に繰り返すことで生じる圧力波によって、異物等を浮上させることができる。さらに、洗浄液wをノズル1041から流入させて、インク供給口1031から廃液として排出させることができる。このため、浮上した異物を洗浄液wで洗い流すことができるため、インクジェットヘッド100を効果的に洗浄することができる。ゆえに、洗浄液wは、異物を分解するなどの特殊な洗浄成分の含まれたものでなく、インクの主溶媒であっても、比較的十分にインクジェットヘッド100を洗浄することができる。
【0064】
また、各圧力室1011aおよび各ノズル1041に対して、均等に圧力波が生じるため、各チャンネルの隅々を均等に洗浄することができる。
【0065】
従って、インクジェットヘッド100の出荷前に、洗浄装置1で洗浄することで、製造工程で混入した異物を除去することができるため、歩留り向上を図ることができる。また、使用により、インクの老廃物等の異物で目詰まりを生じてしまった場合に、インクジェットヘッド100を洗浄装置1で洗浄することで、インクジェットヘッド100の目詰まりを効果的に解消することができ、インクジェットヘッド100を再生させ、長寿命化を図ることができる。
【0066】
また、制御部4にて、駆動するチャンネルを選択することで、一部のチャンネルのみを選択的に洗浄できる。これにより、描画途中に吐出不能になるなど、洗浄の必要があるチャンネルが特定できる場合には、そのチャンネルを集中的に洗浄することで、全チャンネル同時に洗浄する場合に比べて、洗浄液の消費量を抑えることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、インクジェットヘッド100は、シェアモードタイプであるが、これに限定されず、例えば、撓みモード型,縦モード型等の他のピエゾ方式や、静電アクチュエータ方式等のように、圧力室1011a内に圧力を発生させることができる構成であればよい。また、本実施形態では、圧力室1011aが拡張及び縮小する構成であるが、拡張及び縮小の双方が必須ではなく、拡張と中立(拡張前の状態)、或いは、縮小と中立(縮小前の状態)のみであっても、本発明を実現することができる。もっとも、圧力室1011a内における圧力変動が大きい程、洗浄液の流入量を多くすることができるため、本実施形態のように、圧力室1011aが、拡張及び収縮を繰り返す構成とすることがより好ましい。
【0068】
本実施形態では、洗浄液には、インクの主溶媒を用いたが、これに限定されず、洗浄効果を有する成分が含まれた、他の洗浄液が用いられてもよい。
【0069】
なお、本実施形態では、駆動波形が、圧力波の振動周期T0の1/2のパルス幅を有する駆動波形を用いたが、この駆動波形に限定されず、圧力室1011aを拡張又は収縮させることができる駆動波形であればよい。
【0070】
(第2の実施形態)
以下に、図7を用いて、本発明の第2の実施形態にかかるインクジェットヘッド100の洗浄装置1Aを説明する。図7は、第2の実施形態にかかるインクジェットヘッド100の洗浄装置1Aを概略的に示す構成図である。第1の実施形態にかかる廃液回収部3では、容器32の上部が開口していたが、第2の実施形態にかかる廃液回収部3Aでは、容器32Aは密閉されており、容器32A内に挿入されたチューブ33を介して真空ポンプ34に接続されている。
【0071】
上記構成によって、真空ポンプ34を作動させて、容器32A内の密閉空間を減圧させることで、インクジェットヘッド100内への洗浄液wへの流入や流出を調節することができる。これによって、洗浄処理を始めるにあたって、洗浄液wをインクジェットヘッド100に容易かつ迅速に流入させたり、洗浄処理の終了にあたって、洗浄液wをインクジェットヘッド100から容易かつ迅速に排出させることができる。また、圧力室1011aへの洗浄液wの流入量が、圧力室1011aの拡張及び収縮による流入量だけでは不足している場合に、真空ポンプ34を作動させることで、洗浄液wの流入量を補うことができる。
【0072】
(第3の実施形態)
以下に、図8及び図9を用いて、本発明の第3の実施形態にかかるインクジェットヘッド100’の洗浄装置1Bを説明する。第1の実施形態では、インク供給口1031から洗浄液wの廃液が排出される構成であるが、第3の実施形態では、インク供給口1015aとは別途に設けられた廃液排出口1016aから廃液が排出される。
【0073】
図8は、第3の実施形態にかかるインクジェットヘッド100’の構成を概略的に示す斜視図である。インクジェットヘッド100’は、流路基板101’に、カバープレート102’が積層された構成である。カバープレート102’には、第1の実施形態のような開口が形成されておらず、流路基板101’上には、溝1011と交差する方向にわたって切欠きが形成され、この切欠きによって、共通インク室1021’が構成されている。共通インク室1021’の一端には、インク供給口1015aの形成された封止部材1015が取り付けられるとともに、他端には、廃液排出口1016aの形成された封止部材1016が取り付けられることで、共通インク室1021’が両端で封止されている。
【0074】
図9は、図8に示すインクジェットヘッド100’の洗浄装置1Bを概略的に示す構成図である。インク供給口1015aには、インクタンク(図略)に接続されるためのインク供給用チューブ6が取り付けられ、これによって、インク供給用チューブ6を介して共通インク室1021’内に、インクが供給されるようになっている。インク供給用チューブ6には、インク供給用開閉弁7及びフィルタ8が介在し、インク供給用開閉弁7の開閉によって、供給されるインク量を調節できるようになっている。
【0075】
廃液排出口1016aには、廃液回収部3Bが取り付けられている。廃液回収部3Bは、廃液排出口1016aに一端が取り付けられた廃液排出用チューブ31Bと、廃液排出用チューブ31Bの他端が導入され、廃液排出用チューブ31Bから排出される廃液を入れるための容器32とを備える。廃液排出用チューブ31Bの途中には、廃液用開閉弁35が介在され、廃液用開閉弁35の開閉によって、廃液の排出可否の切り替えを行うことができるようになっている。
【0076】
以下に、第3の実施形態にかかるインクジェットヘッド100’の洗浄装置の動作を説明する。インクジェットヘッド100’を用いて描画を行う場合に、インク供給用チューブ6がインクタンク(図略)を取り付けられ、この状態でインク供給用開閉弁7が開放される。そして、制御部4によって、描画のための駆動信号がドライバIC201に出力され、駆動信号に従って、インクジェットヘッド100’は、描画動作を行う。
【0077】
そして、インクジェットヘッド100’を洗浄する場合に、インク供給用開閉弁7が閉じられ、廃液用開閉弁35が開放されるとともに、ノズル1041の先端が容器21内の洗浄液wに被覆される状態にする。この状態で、制御部4は、洗浄用の駆動信号をドライバIC201に出力する。これによって、インクジェットヘッド100’が洗浄される。インクジェットヘッド100’の洗浄方法については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。洗浄処理の終了後には、インク供給用開閉弁7を開放してインクの供給が可能となるとともに、インク記録装置で一般的に用いられているノズル吸引手段や、インクの供給側に取り付けられた押圧手段によって、インクジェットヘッド100’のインク供給路内部が、洗浄液wからインクに置換され、さらに、少なくとも廃液用開閉弁35に至るまで置換された後、廃液用開閉弁35が閉鎖される。
【0078】
上記構成によると、第3の実施形態では、インクジェットヘッド100’をインクジェット装置(描画装置)から取り外すことなく、洗浄することができる。このため、インクジェット装置が描画することで、インク詰まり等が発生した場合に、インク供給用開閉弁7を閉鎖してインクの供給を一時停止し、廃液用開閉弁35を開放して洗浄を行うことで、無駄にインクを浪費することなく、かつ洗浄液wをインク供給側に逆流させることなく、インクジェットヘッド100’を洗浄することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、インクの主溶媒と同じ成分の洗浄液wを用いているため、洗浄状態から描画状態に復帰させるにあたって、洗浄液wが残存していても描画に影響を与えないため、インクジェットヘッド100’を速やかに描画状態に復帰させることができる。
【0080】
(第4の実施形態)
以下に、図10を用いて、本発明の第4の実施形態にかかるインクジェットヘッド100の洗浄装置1Cを説明する。図10は、第4の実施形態にかかるインクジェットヘッド100’の洗浄装置1Cを概略的に示す構成図である。第3の実施形態では、上部の開口した容器32を備えた廃液回収部3Bが用いられるが、第4の実施形態では、第2の実施形態で用いられる容器32A、チューブ33及び真空ポンプ34を備えた廃液回収部3Cが用いられる。その他の構成については、第3の実施形態と同様である。
【0081】
上記構成によると、真空ポンプ34を作動させることで、インクジェットヘッド100’を更に速やかに、描画状態から洗浄状態に、或いは洗浄状態から描画状態にすることができる。すなわち、インクジェットヘッド100’を洗浄状態から描画状態に復帰させる場合に、インク供給用開閉弁7を開放し、真空ポンプ34を作動させて、洗浄液wを廃液用開閉弁35まで吸引することで、インクジェットヘッド100’内を洗浄液wからインクに速やかに置換することができる。また、インクジェットヘッド100’を描画状態から洗浄状態にする場合に、インク供給用開閉弁7を閉鎖するとともに、廃液用開閉弁35を開放し、ノズル1041の先端が容器21内の洗浄液wに被覆される状態にし、この状態で真空ポンプ34を作動させる。これによって、速やかに洗浄液wをインクジェットヘッド100’内に流入させることができる。
【0082】
(第5の実施形態)
以下に、図11を用いて、本発明の第5の実施形態にかかるインクジェットヘッドの洗浄装置1Dを説明する。図11は、第5の実施形態にかかるインクジェットヘッド100、100’の洗浄装置1Dを概略的に示す構成図である。第5の実施形態では、容器21の代わりに、ノズル1041の先端を密閉するキャッピング部材21Dが用いられる。キャッピング部材21Dは、例えば、ノズルプレート104の先端面(ノズル1041の先端側の面)と同サイズの開口を上部に有する容器である。キャッピング部材21Dは、洗浄液wが満たされた状態でノズルプレート104と接して配置されることで、内部が密閉される。
【0083】
キャッピング部材21Dの一部(例えば、底部)には、チューブ22の一端が連通され、これによって、キャッピング部材21Dと、チューブ22の他端に連通されている洗浄液タンク23とが連通されている。チューブ22の途中には、フィルタ24とポンプ25とが取り付けられ、ポンプ25が作動されることで、洗浄液タンク23内の洗浄液wが、キャッピング部材21D内に補充されるようになっている。なお、図11では、キャッピング部材21D及びその周辺部材以外の構成として、第3の実施形態における構成が用いられているが、説明の便宜のためであり、第1〜第4の実施形態にかかる構成が用いられてもよい。
【0084】
上記構成によって、第5の実施形態にかかる洗浄装置1Dでは、必要に応じて洗浄液タンク23から洗浄液wをキャッピング部材21D内へ補充することができるため、洗浄液が蒸発してしまうことを防止できる。
【0085】
(第6の実施形態)
以下に、図12を用いて、本発明の第6の実施形態にかかるインクジェットヘッドの洗浄装置1Eを説明する。図12は、第6の実施形態にかかるインクジェットヘッド100’の洗浄装置1Eを概略的に示す構成図である。
【0086】
第6の実施形態では、洗浄液供給部2は、二層構造の容器21Eを備える。容器21Eは、内側容器21E1と外側容器21E2とを含む。内側容器21E1は、この発明の洗浄液容器に相当する。外側容器21E2は、この発明の回収容器に相当する。
【0087】
内側容器21E1には、一部(例えば底面)にチューブ等で構成された液体流路220が接続されている。液体流路220には、ポンプ250が配置されている。ポンプ250が駆動することによって、洗浄液タンク23に収容された洗浄液wは、液体流路220を介して内側容器21E1に供給される。
【0088】
ポンプ250と内側容器21E1との間に、フィルタ240が配置されている。フィルタ240は、ポンプ250から内側容器21E1に供給される洗浄液wをろ過し、洗浄液w中に混入している異物を捕集する。
【0089】
内側容器21E1は、底面に微小な貫通口を有する。貫通口には、例えば雌ネジが切られており、ネジが嵌め込まれている。ネジが緩められ又は締め付けられることで、貫通口が開閉される。貫通口が開かれると、内側容器21E1に収容された洗浄液wは、外側容器21E2に排出される。
【0090】
外側容器21E2には、一部(例えば底面)にチューブ等で構成された液体流路260が接続されている。外側容器21E2に収容された洗浄液wは、液体流路260を介して洗浄液タンク23に排出される。
【0091】
内側容器21E1の上方には、洗浄液供給部保護部材270が配置されている。洗浄液供給部保護部材270は、インクジェットヘッド100’のノズルプレート104と略同サイズの開口部を有する。洗浄液供給部保護部材270は、容器21Eの一部(例えば外側容器21E2)に固定されている。
【0092】
インク供給用開閉弁7とフィルタ8との間には、単位時間当たりにインク供給用チューブ6を通る液体の流量を測定するフローメータ280が配置されている。また、廃液排出口1016aに接続された廃液排出用チューブ31Bには、単位時間当たりに廃液排出用チューブ31Bを通る液体の流量を測定するフローメータ290が配置されている。フローメータ280及びフローメータ290は、この発明の流量測定手段に相当する。
【0093】
液体流路220、260、洗浄液タンク23、ポンプ250及びフィルタ240は、この発明の循環機構を構成している。
【0094】
次に、洗浄装置1Eを用いたインクジェットヘッド100’の洗浄方法について説明する。なお、上述の実施形態で説明した洗浄方法と異なる部分についてのみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0095】
本実施形態の洗浄方法では、洗浄液タンク23に収容された洗浄液wを内側容器21E1にポンプ250によって供給し、内側容器21E1から洗浄液wをオーバーフローさせる。この際、内側容器21E1に供給される洗浄液wは、フィルタ240を通ることでろ過されるため、洗浄液w中に混在する異物は、フィルタ240で捕集される。また、オーバーフローした洗浄液wは、外側容器21E2に回収され、液体流路260を介して洗浄液タンク23に排出される。
【0096】
次に、洗浄液供給部保護部材270の開口部にインクジェットヘッド100’を挿入し、ノズル1041の先端部を内側容器21E1に収容された洗浄液wに浸漬する。次に、インクジェットヘッド100’を駆動させることで、インクジェットヘッド100’の洗浄を開始する。この際、ノズル1041の先端部から吸い上げられた洗浄液wの単位時間あたりの流量を、フローメータ290による測定値からフローメータ280による測定値を減算することで測定し、その流量以上の流量の洗浄液wを内側容器21E1に供給するように、ポンプ250の駆動を調整する。
【0097】
具体的には例えば、インク供給口1015aから共通インク室1021’に流入する方向においてインク供給用開閉弁7の上流側に洗浄液w以外の液体(インク等)が収容されている場合、その液体と洗浄液wとの混合を防ぐためにインク供給用開閉弁7を閉じた状態で洗浄動作が行われる。このため、フローメータ280による測定値は0となるので、フローメータ290による測定値以上の流量の洗浄液wを内側容器21E1に供給するように、ポンプ250の駆動を調整する。
【0098】
また、インク供給口1015aから共通インク室1021’に流入する方向においてインク供給用開閉弁7の上流側に洗浄液wが収容されている場合、インク供給用開閉弁7を開いた状態で洗浄動作が行われる。インク供給用開閉弁7を開いた状態で洗浄動作を行うことで、共通インク室1021’内部にインク供給用開閉弁7から廃液用開閉弁35へ向かう方向の洗浄液wの流れが発生する。この流れに乗せて、ノズル1041の先端部から吸い上げられた洗浄液wを廃液排出口1016aから排出する。これによって、共通インク室1021’内のインク供給口1015a近傍における異物の滞留が抑制される。
【0099】
上述のようにインク供給用開閉弁7を開いた状態で洗浄動作が行われた場合、フローメータ290では、フローメータ280を通る洗浄液wとノズル1041の先端部から吸い上げられた洗浄液wとの両方の合計の流量が測定される。このため、ノズル1041の先端部から吸い上げられた洗浄液wの流量は、フローメータ290による測定値からフローメータ280による測定値を減算することで算出される。したがって、フローメータ290による測定値からフローメータ280による測定値を減算した流量以上の流量の洗浄液wを内側容器21E1に供給するように、ポンプ250の駆動を調整する。
【0100】
上記構成によると、インクジェットヘッド100’のノズル1041の先端部は、常に洗浄液wに浸された状態になる。このため、ノズル1041の先端部が洗浄液wに浸されずに駆動(空駆動)するという問題が発生しない。したがって、空駆動によるインク流路内部への空気の混入や、インクジェットヘッド100’の温度上昇による劣化を抑制することができ、より信頼性の高い洗浄を行うことができる。
【0101】
また、洗浄液供給部保護部材270が内側容器21E1の上方に配置されているため、内側容器21E1に収容された洗浄液wに粉塵等の異物が入ることを抑制でき、ノズル1041の先端部から洗浄液wとともに異物がインク流路内部に混入することを抑制することができる。このため、より信頼性の高い洗浄を行うことができる。また、洗浄液供給部保護部材270が内側容器21E1の上方に配置されているため、洗浄液wの自然乾燥を抑制することができ、洗浄液wの使用量を少なく抑えることができる。
【0102】
さらに、洗浄液wは、内側容器21E1の底面から供給され、内側容器21E1の上部からオーバーフローするため、内側容器21E1内の洗浄液wには、底面から上側に向かい、上部からあふれ出す方向の流れが発生する。
【0103】
このため、内側容器21E1内の液面に浮遊する粉塵等の異物を、オーバーフローの流れに乗せて内側容器21E1の外側へ排出することができる。さらに、洗浄液wを内側容器21E1からオーバーフローさせない場合は、ノズル1041の先端部から洗浄液wが吸い上げられる流れに乗って、ノズル1041の先端部の近傍に異物が集まる場合があるが、洗浄液wをオーバーフローさせることで、ノズル1041の先端部の近傍に異物が集まることがなく、上述の洗浄液wの流れに乗せて洗浄液wとともに異物を内側容器21E1の外側へ排出することができる。したがって、ノズル1041の先端部からの異物の混入を防ぎ、より信頼性の高い洗浄を行うことができる。
【0104】
また、オーバーフローさせた洗浄液wを外側容器21E2で回収し、これを洗浄液タンク23に排出した後、フィルタ240を経由して再び内側容器21E1に供給することで、洗浄液wを循環させることができる。このため、洗浄液wの無駄を抑制し、インクジェットヘッド100’の洗浄に必要な洗浄液wの液量を大幅に減少させることができる。
【0105】
さらに、フローメータ290による洗浄液wの流量の測定値に基づいて、ポンプ250の流量を調整することで、洗浄液wの供給不足による内側容器21E1内の洗浄液wの液面の低下を防ぐことができる。このため、インクジェットヘッド100’の空駆動によるインク流路内部への空気の混入や、インクジェットヘッド100’の温度上昇による劣化を抑制することができ、より信頼性の高い洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるインクジェットヘッドを概略的に示す斜視構成図である。
【図2】(a)は、図1に示すインクジェットヘッドのインク供給路の形状を示す平面断面図であり、(b)(c)は、第1の実施形態の変形例にかかるインク供給路の形状を示す図である。
【図3】図1で示すインクジェットヘッドの洗浄装置を概略的に示す構成図である。
【図4】圧力室内の洗浄液の流れを説明するための模式図である。(a)は、中央のチャネル部における圧力室が拡張されるとともに、両側のチャネル部における圧力室が収縮された状態を示す模式図である。(b)は、中央のチャネル部における圧力室が収縮された状態であり、両側のチャネル部における圧力室が拡張された状態を示す模式図である。
【図5】圧力室内の圧力波の振動周期を説明するための図である。
【図6】実験結果を示すグラフである。
【図7】第2の実施形態にかかるインクジェットヘッドの洗浄装置を概略的に示す構成図である。
【図8】第3の実施形態にかかるインクジェットヘッドの構成を概略的に示す斜視図である。
【図9】図8に示すインクジェットヘッドの洗浄装置を概略的に示す構成図である。
【図10】第4の実施形態にかかるインクジェットヘッドの洗浄装置を概略的に示す構成図である。
【図11】第5の実施形態にかかるインクジェットヘッドの洗浄装置を概略的に示す構成図である。
【図12】第6の実施形態にかかるインクジェットヘッドの洗浄装置を概略的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0107】
1、1A、1B、1C、1D 洗浄装置(インクジェットヘッドの洗浄装置の一例)
2、2D 洗浄液供給部
3、3A、3B、3C 廃液回収部
4 制御部
100、100’ インクジェットヘッド
1011a 圧力室
1011b インク流路
1016a 廃液排出口
1021、1021’ 共通インク室(インク室の一例)
1031、1015a インク供給口
201 ドライバIC(駆動回路部の一例)
220 液体流路
240 フィルタ
250 ポンプ
260 液体流路
270 洗浄液供給部保護部材
280 フローメータ
290 フローメータ(流量測定手段の一例)
1041 ノズル
w 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク供給口と、該インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、前記インク室からインクが供給される圧力室と、該圧力発生部による前記圧力室内での圧力の発生によって、該圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、前記圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備え、前記インク室から前記ノズル先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄方法において、
前記ノズルの先端部が洗浄液に浸された状態で、前記圧力発生部が圧力を発生することを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項2】
前記ノズルの断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成された請求項1に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項3】
前記圧力室のうちの少なくとも一部における断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成された請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項4】
前記インク室と前記圧力室との間には、インク流路が形成され、該インク流路のうち少なくとも一部における断面積が、通常のインクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成された請求項1〜3の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項5】
前記圧力発生部は、前記圧力室を構成する側壁であり、駆動回路部から電圧が印加されることで変形して、前記圧力室を拡張乃至は縮小させて圧力を発生させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項6】
インクの主溶媒と同じ主成分の前記洗浄液を用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項7】
前記圧力発生部は、印加される電圧レベルの大きさに応じて前記圧力室内に圧力を発生させ、前記駆動回路部は、駆動信号に基づいて、前記圧力発生部に電圧を印加し、
インクを吐出するための駆動信号に比較して、駆動波形の電圧レベルの大きい駆動信号を用いることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項8】
前記圧力発生部は、印加される電圧レベルの大きさに応じて、前記圧力室内に圧力を発生させ、前記駆動回路部は、駆動信号に基づいて、前記圧力発生部に電圧を印加し、
駆動波形のパルス幅が、洗浄液で充填された前記圧力室における圧力波の振動周期:T0の1/2と略等しい、前記駆動信号を用いることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項9】
前記圧力発生部、および、前記圧力室、前記ノズルを並列して複数有する多チャンネル化されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄方法において、
一部のチャンネルの圧力発生部のみを選択的に駆動することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項10】
前記ノズルの先端部が浸される洗浄液を収容する洗浄液供給部に、前記ノズルの先端部から吸引される液量以上の洗浄液を供給することを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄液供給部は、前記ノズルの先端部が浸される洗浄液を収容する洗浄液容器を含み、
前記洗浄液容器から前記洗浄液をオーバーフローさせることを特徴とする請求項10に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項12】
前記オーバーフローした洗浄液を、回収し、ろ過した後で、前記洗浄液容器に再供給することを特徴とする請求項11に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項13】
インク供給口と、該インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、前記インク室からインクが供給される圧力室と、該圧力発生部による前記圧力室内での圧力の発生によって、該圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、前記圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備え、前記インク室から前記ノズル先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄装置において、
前記ノズルの先端部を洗浄液で被覆させる洗浄液供給部と、該洗浄液供給部から前記圧力室に供給された洗浄液の廃液を、前記インク供給口から回収するための廃液回収部と、前記駆動回路部による前記圧力発生部の駆動を制御する制御部とを備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項14】
インク供給口と、該インク供給口からインクが供給されるインク室と、圧力発生部を有し、前記インク室からインクが供給される圧力室と、該圧力発生部による前記圧力室内での圧力の発生によって、該圧力室内のインクを外部へ吐出するためのノズルと、前記圧力発生部を駆動する駆動回路部とを備え、前記インク室から前記ノズル先端までのインク供給路の少なくとも一部の断面積が、インクの流れの下流側に向かって順次減少する形状に形成されたインクジェットヘッドであって、廃液排出口が前記インク室に形成されたインクジェットヘッドを洗浄する洗浄装置において、
前記ノズルの先端部を洗浄液で被覆させる洗浄液供給部と、該洗浄液供給部から前記圧力室に供給された洗浄液の廃液を、前記廃液排出口から回収するための廃液回収部と、前記駆動回路部による前記圧力発生部の駆動を制御する制御部とを備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項15】
前記洗浄液供給部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項13又は14に記載のインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項16】
前記洗浄液供給部は、前記ノズルの先端部を被覆する洗浄液を収容する洗浄液容器と、前記洗浄液容器からオーバーフローした洗浄液を回収する回収容器とを含み、
前記回収容器に回収された洗浄液を前記洗浄液容器へ再供給する循環機構を備えたことを特徴とする請求項15に記載のインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項17】
前記インク供給口から前記インク室に流入する方向における前記インク供給口の上流側、及び、前記インク室から前記廃液排出口を経由して排出される方向における前記廃液排出口の下流側のそれぞれに、前記洗浄液の流量を測定する流量測定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項15又は16に記載のインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項18】
前記洗浄液容器の上方に配置され、平面視において前記洗浄液容器内の洗浄液の液面の少なくとも一部を覆う洗浄液供給部保護部材をさらに備えたことを特徴とする15〜17の何れかに記載のインクジェットヘッドの洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−150937(P2006−150937A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261628(P2005−261628)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】