説明

インクジェットヘッドの組立方法

【課題】インクジェットヘッドを精度よくアライメントすることのできるインクジェットヘッドの組立方法を提供する。
【解決手段】基準座標データに基づいて、インクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けたヘッドユニットを、姿勢変更して使用状態としたときのインクジェットヘッドの使用状態座標データを取得する使用状態データ取得工程S07と、基準座標データと使用状態座標データとを比較し、インクジェットヘッドの位置ズレ量を取得するズレ量取得工程S11と、基準座標データを位置ズレ量により補正した実装座標データを取得する実装データ取得工程S11と、実装座標データに基づいて、インクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けるヘッド組付け工程S13と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドをヘッドプレートに位置決め状態で組み付けるインクジェットヘッドの組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のインクジェットヘッドを単一のヘッドプレートに位置決め固定するヘッドユニットの組立装置が知られている(特許文献1参照)。この組立装置は、略長方形のヘッドプレートに複数のインクジェットヘッドが仮装着されたヘッドユニットをセットテーブルにセットし、画像認識によりそれぞれのインクジェットヘッドをアライメントして固定する。このとき、ヘッドユニットは、ヘッドプレートの長手方向両端部を、セットテーブル上の帯状ブロックに固定してセットされる。すなわち、複数のインクジェットヘッドが仮装着されたヘッドプレートは、中間部がセットテーブルから浮上した状態でセットされる。この状態で、ヘッド補正装置が上方から臨み、仮装着されたインクジェットヘッドをヘッドプレートに対して位置決め固定する。その後、インクジェットヘッドがアライメントされたヘッドユニットは、ユニットホルダーに固定され、キャリッジユニットが組み立てられる。なお、ヘッドユニットは、インクジェットヘッドのアライメント時において、吐出面が上となるように上下反転された状態でセットテーブルにセットされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−090327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の組立方法において、セットテーブル上のヘッドユニットは、長手方向両端部で支持固定され、この状態でインクジェットヘッドの位置決め(アライメント)が行われる。すなわち、ヘッドユニット(ヘッドプレート)は、長手方向両端部でねじ止めされるため、極端ではないが、その自重により僅かに下方に撓み、この状態でインクジェットヘッドの位置決めが行われる。
一方、組み立てられたヘッドユニットは、上下反転して描画装置に搭載され、この状態で使用される(インク吐出)される。この場合も、上下反転したヘッドユニットは、組立装置にセットしたときに取付け孔(ばか孔)を利用して、描画装置に取り付けられる。
このため、ヘッドユニット(ヘッドプレート)は、描画装置に搭載された状態では、組立時と逆方法に撓むことになり、描画時のインクジェットヘッドの取付け位置と、組立時の設計上の取付け位置とにズレが生じる問題があった。したがって、精度良くアライメントされた(はずの)インクジェットヘッドを用いて描画を実施しても、描画精度(インクの着弾精度)が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、インクジェットヘッドを精度よくアライメントすることのできるインクジェットヘッドの組立方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェットヘッドの組立方法は、基準座標データに基づいて、インクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けたヘッドユニットを、姿勢変更して使用状態としたときのインクジェットヘッドの使用状態座標データを取得する使用状態データ取得工程と、基準座標データと使用状態座標データとを比較し、インクジェットヘッドの位置ズレ量を取得するズレ量取得工程と、基準座標データを位置ズレ量により補正した実装座標データを取得する実装データ取得工程と、実装座標データに基づいて、インクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けるヘッド組付け工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、実装座標データに基づいて、インクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けるが、この実装座標データは、基準座標データと使用状態座標データとを比較して求めたインクジェットヘッドの位置ズレ量により、基準座標データを補正したものである。このため、インクジェットヘッドの組立時と使用時の相互間において、ヘッドユニットが姿勢変更され、ヘッドプレートに無用な撓み等が生じても、これを見越してインクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けることができる。したがって、ヘッドユニットの姿勢が組立時と使用時とで変更されても、インクジェットヘッドを精度よくアライメントして、ヘッドプレートに組み付けることができる。
【0008】
この場合、ヘッド組付け工程では、インクジェットヘッドを上向き状態でヘッドプレートに組み付け、使用状態データ取得工程では、ヘッド組付け工程時のヘッドユニットとは表裏反転した状態で、使用状態座標データを取得することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、組立時のヘッドユニットを表裏反転して使用時とする(姿勢変更)と、組立時と使用時との間でヘッドユニット(ヘッドプレート)が逆方向に撓む。しかし、実装座標データに基づいて、インクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けるようにしているため、インクジェットヘッドを精度よくアライメントして、ヘッドプレートに組み付けることができる。
【0010】
また、ヘッドユニットは、ヘッドプレートをユニットホルダーに支持固定することで使用状態とされ、ヘッド組付け工程におけるインクジェットヘッドの組付けは、ユニットホルダーに支持固定する以前のヘッドプレートに対し行われることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、インクジェットヘッドの組付けを、ヘッドプレートの状態で行うようにしているため、取り回しが容易で、組立装置の構造の複雑化や大型化を防止することができる。
【0012】
この場合、使用状態データ取得工程は、ヘッドプレートを前記ユニットホルダーに支持固定した状態で行うことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、実使用時の使用状態データを取得することができ、実使用に即して、インクジェットヘッドを精度よくアライメントしヘッドプレートに組み付けることができる。
【0014】
また、使用状態データ取得工程では、複数のヘッドユニットに対して実施した平均の使用状態座標データを取得することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、アライメント精度を損なうことなく、インクジェットヘッドのヘッドプレートへの組み付けを効率良く行うことができる。
【0016】
一方、基準座標データは、アライメントマスク上に形成した基準マークを画像認識して生成されることが好ましい。
【0017】
この場合、ヘッド組付け工程では、都度、基準座標データを生成することが好ましい。
【0018】
これらの構成によれば、画像認識側のキャリブレーション精度(周囲温度の影響を含む)等に影響されることなく、インクジェットヘッドをアライメントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】キャリッジユニットの外観斜視図である。
【図2】キャリッジユニットの側面図である。
【図3】ヘッドプレートの外観斜視図である。
【図4】インクジェットヘッドの外観斜視図である。
【図5】ヘッドユニットの組立装置を模式的に表した構造図である。
【図6】アライメントマスクの平面図である。
【図7】ヘッドユニットの組立装置の制御構成を表したブロック図である。
【図8】描画装置の模式的に表した構造図である。
【図9】ヘッドユニットの組立方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態にかかるヘッドユニットの組立方法について説明する。ヘッドユニットは、微小なインク滴を吐出するインクジェットヘッドが複数組みつけられ、この状態でさらにユニットホルダーに取り付けられ、最終的にはヘッドユニットとユニットホルダーとから成るキャリッジユニットの状態で、描画装置に搭載される。
【0021】
図1ないし図4を参照して、先ずキャリッジユニット1について詳細に説明する。図1および図2に示すように、キャリッジユニット1は、12個のインクジェットヘッド20を搭載したヘッドユニット2と、ヘッドユニット2に取り付けられたユニットホルダー3と、ヘッドユニット2の両短辺側に位置して、各インクジェットヘッド20に機能液(インク)を供給する左右一対の配管接続アッセンブリ4と、キャリッジユニット1の上部に配設され、吐出制御のためにインクジェットヘッド20に接続される配線接続アッセンブリ5と、を備えている。
【0022】
ヘッドユニット2は、12個のインクジェットヘッド20と、これらのインクジェットヘッド20が取り付けられた略方形のヘッドプレート21と、を備えている。一方、ユニットホルダー3は、ヘッドプレート21の両短辺部分に取り付けられた左右一対のプレート支持部材30と、一対のプレート支持部材30の上端部に掛け渡されたキャリッジ取付フレーム31と、を備えている。
【0023】
12個のインクジェットヘッド20は、ヘッドユニット2に対し、6個ずつ左右に二分して組み付けられている。各組6個のインクジェットヘッド20は、それぞれR色、G色およびB色の3種類の機能液滴(インク液滴)を吐出する、3種類のインクジェットヘッド20を2個ずつ組み合わせて、且つ相互に階段状に位置ずれして配設されている。すなわち、各組6個のインクジェットヘッド20は、配色および配置において同一の配列パターンで配設されている。
【0024】
図3に示すように、インクジェットヘッド20は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針40を有する機能液導入部41と、機能液導入部41に連なる2連のヘッド基板42と、ヘッド基板42の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体43と、を備えている(同図(a))。機能液導入部41は、一対の接続針40を有しており、上記の配管接続アッセンブリ4から機能液の供給を受ける。また、ヘッド本体43は、ピエゾ素子等の圧電素子で構成される2連のポンプ部46と、複数の吐出ノズル44が形成されたノズル面45を有するノズルプレート47と、を有している。ヘッド基板42には、2連のコネクタ48が設けられており、各コネクタ48は、上記の各配線接続アッセンブリ5から延びるフレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介して上記の制御部に接続されている。そして、この制御部から出力された駆動波形が各コネクタ48を介して各ポンプ部46(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル44から機能液が吐出される。
【0025】
図4に示すように、ヘッドプレート21は、ステンレス等の厚板で構成され、12個のインクジェットヘッド20を組み付けるヘッド組付部50と、ヘッド組付部50の両側に位置する一対のサイド延設部51と、で一体に形成されている。ヘッド組付部50は、サイド延設部51よりも幅広に形成され、12個のインクジェットヘッド20を取り付けるための12個の装着開口52を有している。また、その裏面には、一対の基準ピン53が突設されている(図2(a)参照)。この一対の基準ピン53は、ヘッドアライメント時に用いられ、画像認識を前提としたヘッドユニット2の位置決め(位置認識)を行うための基準となるものである。なお、インクジェットヘッド20は、そのヘッド本体43を、ヘッドプレート21に形成した装着開口52から、ノズル面45が下向きとなる状態で下方に突出させ、下側からあてがったヘッド保持部材22を介してヘッドプレート21に位置決め状態で固定される(図2(a)および(b)参照)。また、ヘッド保持部材22は、ヘッドプレート21に接着され、その後、機械的な固定手段を使って本固定される。
【0026】
一方、一対のサイド延設部51には、ヘッドプレート21をプレート支持部材30に取り付けるための一対のプレート固定貫通孔54が形成されている。図2および図4に示すように、ヘッドプレート21は、合計4つのプレート固定貫通孔54を介してプレート固定ねじ55により四隅を固定され、プレート支持部材30に取り付けられる。また、後述する組立装置Aにおいては、ヘッドプレート21は、4つのプレート固定貫通孔54を利用して、セットテーブル61に固定される。
【0027】
次に、図5ないし図8を参照して、ヘッドユニット2の組立方法とこれを実施する組立装置Aについて説明する。
本実施形態のヘッドユニット2の組立方法は、ます、各インクジェットヘッド20を単一のヘッドプレート21に仮装着(仮固定)した状態のヘッドユニット2を用意する。すなわち、複数のインクジェットヘッド20を仮組みしたヘッドユニット2を、前工程(外工程)で組み立てる。
【0028】
次に、このヘッドユニット2を組立装置Aに導入するが、その前にアライメントマスクMを導入し、これを画像認識してアライメントのための基準の位置データを取得する。次に、アライメントマスクMに代えて、ヘッドユニット2を組立装置Aに導入し、取得した基準の位置データに基づいて、各インクジェットヘッド20のアライメントおよび固定を行う。そして、この組立装置Aによりインクジェットヘッド20をアライメントおよび固定したヘッドユニット2は、洗浄・検査工程を経た後、上記のユニットホルダー3に組み込み、さらに上記の配線接続アッセンブリ5や配管接続アッセンブリ4等の部品組込み工程を経て、描画装置Bに搭載される。
【0029】
図5は、ヘッドユニット2の組立装置Aを模式的に示した図である。同図に示すように、組立装置Aは、組立対象のヘッドユニット2とアライメントマスクMとを交換可能に搭載し、搭載したヘッドユニット2またはアライメントマスクMをX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させるユニット移動部60と、ヘッドユニット2およびアライメントマスクMをそれぞれ画像認識する認識カメラ80と、を備えている。また、組立装置Aは、認識カメラ80の認識結果に基づいて、インクジェットヘッド20を機械的に位置補正するヘッド補正部90と、位置補正したインクジェットヘッド20を固定(接着)するヘッド固定部91と、上記の各構成を統括制御する制御部92(図6参照)と、を備えている。
【0030】
ユニット移動部60は、上面にヘッドユニット2(アライメントマスクM)が着脱自在に取り付けられる(セット)セットテーブル61と、下側からセットテーブル61を支持するθテーブル62と、下側からθテーブル62を支持するX・Yテーブル63と、下側からX・Yテーブル63を支持する機台64と、を有している。詳細は後述するが、セットテーブル61にセットされたヘッドユニット2(またはアライメントマスクM)は、認識カメラ80の認識結果に基づく位置補正のために、θテーブル62およびX・Yテーブル63により、X軸方向、Y軸方向およびθ方向に微小移動される。
【0031】
ヘッド補正部90は、インクジェットヘッド20を位置決めするために上記のヘッド保持部材22に係合するアームユニット90aと、アームユニット90aを介して、インクジェットヘッド20をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に微小移動せる補正機構部90bとを有している。すなわち、ヘッド補正部90は、認識カメラ80の認識結果に基づいて、ヘッドプレート21に対しインクジェットヘッド20を位置決めする。
【0032】
ヘッド固定部91は、接着剤をヘッド保持部材22の部分に注入するための注入ユニット91aと、注入ユニット91aをヘッド保持部材22に臨ませる注入機構部91bとを有している。ヘッド補正部90により位置決めされ不動としたインクジェットヘッド20に対し、ヘッド保持部材22の部分に注入ユニット91aが臨み、ヘッドプレート21とヘッド保持部材22との界面に接着剤を注入する。
【0033】
ここで、図7を参照し、本実施形態のアライメントマスクMについて説明する。実施形態の組立装置Aでは、常に一定レベルのヘッドアライメント精度を有するヘッドユニット2を供給するため、ヘッドプレート21および12個のインクジェットヘッド20の基準位置をマークしたアライメントマスクMを用いる。すなわち、アライメントマスクMを部品位置の原型(原版)とし、複製としてのヘッドユニット2を、この組立装置Aで組み立てるようにしている。これにより、ヘッドユニット2に対する各組立装置Aが持つ癖や、認識カメラ80の経時変化等の精度的影響を排除するようにしている。
【0034】
アライメントマスクMは、原型として狂いが生じないように厚手の透明な石英ガラスで構成されている。アライメントマスクMの表面には、各インクジェットヘッド20の基準位置を表す各2つのヘッド基準マークMbを1組として、これが両側に6組ずつ計12組形成されている。また、この12組のヘッド基準マークMbの外側には、ヘッドユニット2の基準位置を表す一対のユニット基準マークMaが形成されている。そして、ヘッド基準マークMbは、インクジェットヘッド20における一方のノズル列の最外端の2つの吐出ノズル44に対応し、ユニット基準マークMaは、ヘッドユニット2(ヘッドプレート21)の基準ピン53に対応している。なお、図7では省略したが、アライメントマスクMは、マスクホルダーに取り付けられ、この状態でユニット移動部60にセットされる。
【0035】
本実施形態において、アライメントマスクMは、ヘッドユニット2と入れ替えるようにして組立装置Aにセットされる。そして、ユニット移動部60にセットされた状態のインクジェットヘッド20のノズル面45と、ユニット移動部60にセットされたアライメントマスクMの下面とは、同一平面に位置するように高さ調整されている。また、アライメントマスクMは、上記のマスクホルダーを含め、ヘッドユニット2と同一の重量を有している。これにより、認識カメラ80による画像認識を同じ条件(同じ焦点深度)で行うことができるため、アライメントマスクMの画像認識に基づいたインクジェットヘッド20のアライメントを精度良く行うことができる。
【0036】
図5に示すように、認識カメラ80は、ユニット移動部60の直上部において、フレーム形式の基台81に固定的に設けられている。ユニット移動部60にアライメントマスクMがセットされた状態では、認識カメラ80は、後述する基準座標データ等を取得すべく、アライメントマスクMのユニット基準マークMaおよびヘッド基準マークMbを画像認識する。また、ユニット移動部60にヘッドユニット2がセットされた状態では、認識カメラ80は、後述する使用状態座標データ等を取得すべく、ヘッドユニット2の基準ピン53(の先端面)および各インクジェットヘッド20の最外端の2つの吐出ノズル44を画像認識する。なお、基準ピン53は、ヘッドユニット2から突出したインクジェットヘッド20と略同一高さとなるように、ヘッドプレート21の裏面から突出している。
【0037】
次に、図6を参照して、組立装置Aの制御構成について説明する。同図のブロック図に示すように、組立装置Aは、ヘッドユニット2やインクジェットヘッド20の位置データ等を操作パネル93aを介して入力する入力部93と、ユニット移動部60等の構成装置を駆動する駆動部94と、認識カメラ80による位置認識を行う検出部95と、組立装置Aの各構成装置を統括制御する制御部92と、を備えている。駆動部94は、ユニット移動部60の駆動を制御する移動用ドライバー101と、ヘッド補正部90の駆動を制御する補正用ドライバー102と、ヘッド固定部91の駆動を制御する固定用ドライバー103と、を有している。
【0038】
制御部92は、CPU111、ROM112、RAM113およびP−CON114を有しており、これらは互いにバスを介して接続されている。ROM112には、CPU111で処理する制御プログラムの他、各種の制御データが記憶されている。RAM113は、外部から入力した位置データや、認識カメラ80がアライメントマスクMから取得した位置データ等を記憶する位置データ領域の他、各種レジスター群を有し、制御処理の作業領域として使用される。
【0039】
そして、CPU111は、ROM112内の制御プログラムに従い、P−CON114を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM113内の各種データを処理して、駆動部94に制御信号を出力する。これにより、ユニット移動部60、ヘッド補正部90、ヘッド固定部91等の組立装置A全体が制御される。例えば、認識カメラ80から得たアライメントマスクMの基準座標データ、および認識カメラ80から得たヘッドユニット2の使用状態座標データは、RAM113内の記憶領域に格納され、ROM112内の制御プログラムに従って基準座標データと使用状態座標データとが比較され、その比較結果に基づいて、ユニット移動部60、ヘッド補正部90、ヘッド固定部91等が制御される。
【0040】
次に、図8を参照して、組立装置Aにより組み立てられたヘッドユニット2が搭載される描画装置Bについて、簡単に説明する。図8の模式図に示すように、描画装置Bは、キャリッジユニット1(ヘッドユニット2)を搭載しこれをY軸方向およびθ方向に移動させるヘッド移動テーブル71と、ヘッド移動テーブル71に対峙しカラーフィルタ等のワークWをX軸方向に移動させるワーク移動テーブル72と、ヘッドユニット2(インクジェットヘッド20)を保全するメンテナンス部73と、を備えている。この描画装置Bでは、ワーク移動テーブル72によりワークWをX軸方向に移動させると共に、ヘッド移動テーブル71によりキャリッジユニット1(ヘッドユニット2)をY軸方向に移動させて、主走査および副走査によるフィルター材料等(インク)の吐出(描画)が行われる。
【0041】
また、ワーク移動テーブル72には、ヘッド認識カメラ74が上向きに搭載され、キャリッジユニット1には、ワーク認識カメラ75が下向きに搭載されている。ヘッド認識カメラ74は、ヘッドユニット2の位置決めのために、ヘッドユニット2の基準ピン53を認識し、ワーク認識カメラ75は、ワークWの位置決めのために、ワークWの基準マークを認識する。ヘッド認識カメラ74とワーク認識カメラ75とは、相互に高精度にキャリブレーションされており、ヘッド認識カメラ74の認識結果に基づいて位置決めされたヘッドユニット2(インクジェットヘッド20)と、ワーク認識カメラ75の認識結果に基づいて位置決めされたワークWとが、描画に先立ち相互に精度良く位置決めされるようになっている。
【0042】
ところで、本実施形態のヘッドユニット2は、組立装置Aにおいて、各インクジェットヘッド20を上向きにしてヘッドプレート21に組み付けられる一方、各インクジェットヘッド20を下向きにして描画装置Bに搭載され使用される。上述のように、ヘッドプレート21は厚手のステンレス板で形成されているものの、長手方向の両端部で水平に支持すると微小に撓むことが確認されている。このことは、ノズル面45から視て、ヘッドプレート21が凹状に湾曲した状態で、インクジェットヘッド20が組み付けられ、凸状に湾曲した状態で使用されることを意味している。したがって、インクジェットヘッド20を上向きで高精度に組み付けても、下向きで使用するときには、組付け精度(各インクジェットヘッド20の位置精度)が補償できなくなる問題がある。そこで、本実施形態では、組付け時と使用時との間で生ずるヘッドプレート21の逆方向の撓みを見越して、使用時に設計上の組付け精度となるように逆算して、インクジェットヘッド20を組み付けるようにしている。
【0043】
以下、図9のフローチャートを参照して、上記の問題を解消するヘッドユニット2の組立方法について説明する。
この組立方法では、前工程として、複数のインクジェットヘッド20をヘッドプレート21に仮組みしておくと共に、設計上の基準ピン53の位置を示すユニット基準マークMa、および設計上のインクジェットヘッド20の位置を示すヘッド基準マークMbをマーキングした、上記のアライメントマスクMを用意しておく。最初に、このアライメントマスクMを組立装置Aにセットし(S01)、認識カメラ80によりユニット基準マークMaおよびヘッド基準マークMbを画像認識する。すなわち、ヘッドユニット2の基準座標データを取得する(S02)。
【0044】
次に、アライメントマスクMに代えて、インクジェットヘッド20を仮組みしたヘッドユニット2を組立装置Aにセットする(S03)。そして、認識カメラ80により基準ピン53を画像認識しながら、基準座標データに基づいて、ヘッドユニット2を微小移動し、ヘッドユニット2の位置決め(アライメント)を行う。次に、認識カメラ80により1つ目のインクジェットヘッド20における最外端の2つの吐出ノズル44を画像認識しながら、基準座標データに基づいて、1つ目のインクジェットヘッド20の位置決め(アライメント)を行う。ここで、位置決め状態の1つ目のインクジェットヘッド20に接着剤を注入し、インクジェットヘッド20をヘッドプレート21に接着固定する。接着剤が硬化したら、次に2つ目のインクジェットヘッド20に移行し、上記と同じ動作を行う。このような動作を繰り返して、12個のインクジェットヘッド20をヘッドプレート21に接着固定する(S04)。
【0045】
本実施形態では、接着固定したインクジェットヘッド20を更にねじ止めするようにしているが、このねじ止め作業は、組立装置Aにねじ締め部を設け接着剤が硬化直後に行ってもよいし、ヘッドプレート21をユニットホルダー3に組み込むときに行ってもよい。
【0046】
全てのインクジェットヘッド20をヘッドプレート21に接着固定したら、ヘッドユニット2を組立装置Aから外し、上記のユニットホルダー3に組み込むと共に、配管接続アッセンブリ4および配線接続アッセンブリ5を取り付けて、キャリッジユニット1を組み立てる(S05)。次に、このように組み立てたキャリッジユニット1を描画装置Bに搭載する(S06)。
【0047】
上述のように、描画装置Bには、ヘッド認識カメラ74が搭載されている。そこで、描画装置Bに搭載したヘッドユニット2を、このヘッド認識カメラ74を使って画像認識するようにする。具体的には、ヘッド移動テーブル71およびワーク移動テーブル72を使用し、ヘッド認識カメラ74により、上記と同様に、2つの基準ピン53と12個のインクジェットヘッド20(2つの吐出ノズル44)の画像認識を行う。すなわち、描画装置Bに搭載して使用状態とし、この使用状態としたヘッドユニット2の使用状態座標データを取得する(S07:使用状態データ取得工程)。
【0048】
ここで、取得した使用状態座標データを、操作パネル93aを介して制御部92に入力する(S08)。制御部92では、上記の基準座標データと使用状態座標データが比較され、2つの基準ピン53および12個のインクジェットヘッド20のそれぞれについて位置ズレ量が算定する(ズレ量取得工程)。さらに、この位置ズレ量に基づいて、描画装置搭載時の位置ズレを見越した実装座標データを生成する(S9:実装データ取得工程)。
【0049】
この実装座標データは、組立装置Aで使用するものであり、表裏反転して描画装置Bに搭載したヘッドユニット2が、その撓みに起因してインクジェットヘッド20の位置ズレを見越したデータであり、この実装座標データでヘッドユニット2を組み立てることで、描画装置Bに搭載したインクジェットヘッド20の配置が、基準座標データと合致することを狙ったものである。なお、以上の工程を同種複数のヘッドユニット2について実施し、その平均値をとって実装座標データとすることが好ましい。
【0050】
このようにして、実装座標データを取得したら、改めて描画装置Bに実際に搭載する(実装の)ヘッドユニット2の組立てを実施する。この場合には、基準座標データに代えて、実装座標データに基づきヘッドユニット2の組立てを行うが、実装座標データに基づいて、ユニット基準マークMaおよびヘッド基準マークMbをマーキングした第2のアライメントマスクMを用意することが好ましい。そして、先ずこの第2のアライメントマスクMを組立装置Aにセットする(S10)。そして、上記と同様の手順で、第2のアライメントマスクMを画像認識し、実装座標データを取得する(S11)。
【0051】
次に、第2のアライメントマスクMに代えて、実装用のヘッドユニット2を組立装置Aにセットする(S12)。ここで、実装座標データ基づいて、上記と同様の手順で、各インクジェットヘッド20の位置決め固定を行う(S13:ヘッド組付け工程)。その後、上記のユニットホルダー3に組み込むと共に、配管接続アッセンブリ4および配線接続アッセンブリ5を取り付けて、キャリッジユニット1を組立て(S14)、描画装置Bに搭載する。なお、実装用のヘッドユニット2の組立てにおいても、毎回、第2のアライメントマスクMから実装座標データを取得することが好ましい。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、描画装置Bに搭載し使用状態としたヘッドユニット2から使用状態座標データを取得し、この使用状態座標データに基づいて、基準座標データを補正して実装座標データを生成し、さらにこの実装座標データに基づいて、組立装置Aにてヘッドユニット2の組立てを行っている。このため、インクジェットヘッド20の組立時と使用時の相互間において、ヘッドユニット2が表裏反転され、ヘッドプレート21に逆方向の撓み等が生じても、これを見越してヘッドユニット2を組み立てることができる。したがって、ヘッドユニット2が姿勢変更されても、インクジェットヘッド20を精度よくアライメントして、ヘッドプレート21に組み付けることができる。
【0053】
このように、使用時(描画時)のヘッドプレート21の撓み等を勘案したヘッドユニット2の組立てを行うことができるため、描画装置Bにおいて、高い着弾精度、すなわち高い描画品質を達成することができる。
【0054】
なお、組立装置Aにおいて、ヘッドユニット2をユニットホルダー3に組付けた状態で、インクジェットヘッド20の画像認識やアライメントを行うようにしてもよい(組立装置Aの改造要)。また、第2のアライメントマスクMを使用することなく、直接、生成した実装座標データに基づいて、ヘッドユニット2の組立てを行うようにしてもよい。さらに、本実施形態では、組立時と使用時とでヘッドユニット2を表裏反転する構成であるが、組立時と使用時との間でヘッドユニット2の姿勢が変更されるものであれば(例えば、ヘッドユニット2を鉛直姿勢で使用)、本発明は適用可能である。またさらに、複数のインクジェットヘッド20の数、並び順は、任意である。
【符号の説明】
【0055】
1 キャリッジユニット、2 ヘッドユニット、3 ユニットホルダー、20 インクジェットヘッド、21 ヘッドプレート、22 ヘッド保持部材、44 吐出ノズル、45 ノズル面、53 基準ピン、60 ユニット移動部、71 ヘッド移動テーブル、72 ワーク移動テーブル、74 ヘッド認識カメラ、80 認識カメラ、90 ヘッド補正部、91 ヘッド固定部、92 制御部、A 組立装置、B 描画装置、M アライメントマスク、Ma ユニット基準マーク、Mb ヘッド基準マーク、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準座標データに基づいて、インクジェットヘッドをヘッドプレートに組み付けたヘッドユニットを、姿勢変更して使用状態としたときの前記インクジェットヘッドの使用状態座標データを取得する使用状態データ取得工程と、
前記基準座標データと前記使用状態座標データとを比較し、前記インクジェットヘッドの位置ズレ量を取得するズレ量取得工程と、
前記基準座標データを前記位置ズレ量により補正した実装座標データを取得する実装データ取得工程と、
前記実装座標データに基づいて、前記インクジェットヘッドを前記ヘッドプレートに組み付けるヘッド組付け工程と、を備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの組立方法。
【請求項2】
前記ヘッド組付け工程では、前記インクジェットヘッドを上向き状態で前記ヘッドプレートに組み付け、
前記使用状態データ取得工程では、前記ヘッド組付け工程時の前記ヘッドユニットとは表裏反転した状態で、前記使用状態座標データを取得することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの組立方法。
【請求項3】
前記ヘッドユニットは、前記ヘッドプレートをユニットホルダーに支持固定することで使用状態とされ、
前記ヘッド組付け工程における前記インクジェットヘッドの組付けは、前記ユニットホルダーに支持固定する以前の前記ヘッドプレートに対し行われることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッドの組立方法。
【請求項4】
前記使用状態データ取得工程は、前記ヘッドプレートを前記ユニットホルダーに支持固定した状態で行うことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッドの組立方法。
【請求項5】
前記使用状態データ取得工程では、複数の前記ヘッドユニットに対して実施した平均の前記使用状態座標データを取得することを特徴とする請求項1ないし4に記載のインクジェットヘッドの組立方法。
【請求項6】
前記基準座標データは、アライメントマスク上に形成した基準マークを画像認識して生成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェットヘッドの組立方法。
【請求項7】
前記ヘッド組付け工程では、都度、前記基準座標データを生成することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッドの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95128(P2013−95128A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243341(P2011−243341)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】