インクジェットヘッドの駆動装置及び駆動方法
【課題】インク吐出体積のばらつきを分解能の高い滑らかな補正によって改善する。
【解決手段】基準信号出力部は、駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号を出力する。補正データ記憶部は、複数のノズル毎にそれぞれ算出される補正データを記憶する。駆動信号生成部は、複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子毎に印加される駆動パルス信号を、その駆動素子に対応するノズルに対して補正データ記憶部で記憶される補正データで基準信号の基準パルス波形を補正して生成する。
【解決手段】基準信号出力部は、駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号を出力する。補正データ記憶部は、複数のノズル毎にそれぞれ算出される補正データを記憶する。駆動信号生成部は、複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子毎に印加される駆動パルス信号を、その駆動素子に対応するノズルに対して補正データ記憶部で記憶される補正データで基準信号の基準パルス波形を補正して生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動装置及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンタ等に用いられるインクジェットヘッドは、インクを収容する複数のインク室と、これらインク室の一端側に設けられ、各インク室にそれぞれ対応してインク液滴を吐出するためのノズルが複数形成されたノズルプレートと、各インク室にそれぞれ対応して設けられた複数の駆動素子とを備える。
【0003】
このようなインクジェットヘッドは、駆動素子が駆動すると、この駆動素子に対応したインク室に圧力振動が与えられる。この圧力振動によって、インク室内部の容積が変化し、このインク室に対応したノズルからインク液滴が吐出される。インク液滴は、記録紙等の記録媒体に着弾して、当該記録媒体にドットを形成する。このようなドットの連続形成により、インクジェットヘッドは、画像データに基づいた文字や画像等を記録媒体上に形成する。
【0004】
ところで、この種のインクジェットヘッドは、例えば画像の端部でインクの吐出量が多くなり、濃度が濃くなってしまうことがある。このような不具合を解決するために、従来、画像の端部に対応したノズルから吐出されるインク液滴のドロップ数を減らすことで濃度を補正する技術は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-160662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インク液滴のドロップ数を制御する従来の濃度補正方法では、補正の分解能が大きいため、滑らかな補正ができないという解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動装置は、基準信号出力部と、補正データ記憶部と、駆動信号生成部とを備える。基準信号出力部は、駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号を出力する。補正データ記憶部は、複数のノズル毎にそれぞれ算出される補正データを記憶する。駆動信号生成部は、複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子毎に印加される駆動パルス信号を、その駆動素子に対応するノズルに対して補正データ記憶部で記憶される補正データで基準信号の基準パルス波形を補正して生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるライン型インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図。
【図2】同ライン型インクジェットヘッドのインク吐出方向である前方部の横断面図。
【図3】同ライン型インクジェットヘッドにおける前方部の縦断面図。
【図4】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において用いる各インク室の状態を示す断面図。
【図5】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において用いる駆動パルス信号の基準パルス波形図。
【図6】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において用いる7階調印字の際の駆動パルス信号を示す波形図。
【図7】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、1つのグループに属する各ノズルに対応した駆動素子に負電圧(−Vs)が印加されたときの各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図8】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、同一グループの隣接する一方のノズルからインクが吐出されないときの各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図9】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、同一グループの隣接する両方のノズルからインクが吐出されないときの各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図10】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、ヘッド端に位置する各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図11】本実施形態における駆動装置の構成を示すブロック図。
【図12】本実施形態における補正方法の説明に用いる波形図。
【図13】本実施形態のライン型インクジェットヘッドにおいて、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を補正データによって段階的に遅延させて、その都度7ドロップのインク液滴を吐出させた場合の吐出体積[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示すグラフ。
【図14】図13のグラフにおいて、7ドロップのインク液滴の吐出体積が38[pl]のときを基準(=0)としたときの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示すグラフ。
【図15】図14のグラフにおいて、7ドロップの吐出体積を1ドロップ毎に等分したときの1ドロップの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示すグラフ。
【図16】本実施形態における駆動装置のCPUが実行するメインルーチンの処理手順を示す流れ図。
【図17】図16におけるステップST4の第1の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図。
【図18】図16におけるステップST6の第2の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図。
【図19】図16におけるステップST8の第3の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図。
【図20】本実施形態の駆動装置に入力された画像データの一例を示す模式図。
【図21】第1の補正データ作成処理で使用するノズル補正量テーブルの一例を示す模式図。
【図22】第1の補正データ作成処理において、図21のノズル補正量テーブルが設定されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の補正量PN1を示す模式図。
【図23】第1の補正データ作成処理において、図22の補正量PN1から算出される補正時間PNT1を示す模式図。
【図24】第1の補正データ作成処理において、図23の補正時間PNT1から算出されるクロック数CLK1を示す模式図。
【図25】第2の補正データ作成処理において、図20の画像データが記憶されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の左差分値ΔP1を示す模式図。
【図26】第2の補正データ作成処理において、図20の画像データが記憶されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の右差分値ΔP2を示す模式図。
【図27】第2の補正データ作成処理において、左差分値ΔP1と右差分値ΔP2とから算出される補正差分値ΣPを示す模式図。
【図28】第2の補正データ作成処理において、補正差分値ΣPから算出される7ドロップあたりの画像端補正量PN2′を示す模式図。
【図29】第2の補正データ作成処理において、7ドロップあたりの画像端補正量PN2′から算出される1ドロップあたりの画像端補正量PN2を示す模式図。
【図30】第2の補正データ作成処理において、1ドロップあたりの画像端補正量PN2から算出される補正時間PNT2を示す模式図。
【図31】第2の補正データ作成処理において、補正時間PNT2から算出されるクロック数CLK2を示す模式図。
【図32】第3の補正データ作成処理において使用するヘッド端補正量テーブルの一例を示す模式図。
【図33】第3の補正データ作成処理において、図32のヘッド端補正量テーブルが設定されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の7ドロップあたりの補正量QN′を示す模式図。
【図34】第3の補正データ作成処理において、7ドロップあたりの補正量QN′から算出される1ドロップに換算した補正量QNを示す模式図。
【図35】第3の補正データ作成処理において、1ドロップに換算した補正量QNから算出される補正時間QNTを示す模式図。
【図36】第3の補正データ作成処理において、補正時間QNTから算出されるクロック数CLK3を示す模式図。
【図37】本実施形態において、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とが有効な場合の補正データを示す模式図。
【図38】本実施形態において、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とが有効な場合の補正データを示す模式図。
【図39】本実施形態において、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正が有効な場合の補正データを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるライン型インクジェットヘッドの駆動装置の一実施形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施形態は、シェアモードタイプのライン型インクジェットヘッド100の駆動装置について説明する。
【0010】
はじめに、ライン型インクジェットヘッド100の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、ライン型インクジェットヘッド100の一部を分解して示す斜視図であり、図2は、同ヘッド100のインク吐出方向である前方部の横断面図、図3は、同ヘッド100における前方部の縦断面図である。
【0011】
ヘッド100は、ベース基板9の前方側の上面に第1の圧電部材1を接合し、この第1の圧電部材1の上に第2の圧電部材2を接合する。ヘッド100は、図2の矢印で示すように、第1の圧電部材1と第2の圧電部材2とを、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極して接合する。そしてヘッド100は、この接合した圧電部材1,2の先端側から後端側に向けて多数の長尺な溝3を設ける。各溝3は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝3は、先端が開口し、後端が上方に傾斜する。
【0012】
ヘッド100は、各溝3の側壁及び底面に電極4を設ける。さらにヘッド100は、各溝3の後端から第2の圧電部材2の後部上面に向けて、電極4から延出された引出し電極10を設ける。
【0013】
ヘッド100は、各溝3の上部を天板6で塞ぎ、各溝3の先端をノズルプレート7で塞ぐ。天板6は、その内側後方に共通インク室5を備える。ヘッド100は、天板6とノズルプレート7とで囲まれた各溝3によって、インクを収容するインク室15を形成する。ヘッド100は、ノズルプレート7の各インク室15と対向する位置にノズル8を開ける。
【0014】
ヘッド100は、ベース基板9の後方側の上面に、導電パターン13が形成されたプリント基板11を接合し、このプリント基板11の上に、ライン型インクジェットヘッド100の駆動装置を内蔵したドライブIC12を搭載する。ドライブIC12は、導電パターン13に接続する。導電パターン13は、各引出し電極10とワイヤボンディングにより導線14で結合する。
【0015】
次に、上記の如く構成されたライン型インクジェットヘッド100の動作原理について、図4及び図5を用いて説明する。
【0016】
図4の(a)は、中央のインク室15aと、このインク室15aに隣接する両隣のインク室15b,15cの電極4がいずれも接地電位の状態を示している。この状態では、インク室15aとインク室15b及びインク室15aとインク室15cとで挟まれた圧電部材1,2からなる側壁16a,16bは、何ら歪み作用を受けない。
【0017】
図4の(b)は、中央のインク室15aの電極4に負電圧(−Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のインク室15b,15cの電極4はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁16a,16bに、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向に電界が作用する。この作用により、各側壁16a,16bは、インク室15aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。
【0018】
図4の(c)は、中央のインク室15aの電極4に正電圧(+Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のインク室15b,15cの電極4はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁16a,16bに、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向で図4(b)のときとは逆の方向に電界が作用する。この作用により、各側壁16a,16bは、インク室15aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形する。
【0019】
図5は、インク室15aからインク液滴を吐出するためにインク室15aの電極4に印加される駆動パルス信号の基準パルス波形を示している。時間Ttによって示される区間は、インク液滴の吐出に必要な時間であり、この時間Ttは、準備区間の時間T1、吐出区間の時間T2及び後処理区間の時間T3に区分される。準備時間T1、吐出時間T2及び後処理時間T3は、使用するインクや温度等の条件により、適切な値に設定される。
【0020】
さらに、準備時間T1は、定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とに細分化され、吐出区間の時間T2は、維持区間の時間Tbと復元区間の時間(T2−Tb)とに細分化される。
【0021】
図5に示すように、駆動装置は、先ず、時点t0において、インク室15a,15b,15cに対応した各電極4にそれぞれ0ボルトの電圧を印加する。そして、定常区間の時間Taが経過するのを待機する。この間、各インク室15a,15b,15cは、図4の(a)の状態となる。
【0022】
定常区間の時間Taが経過して時点t1になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に所定の負電圧(−Vs)を印加する。そして、準備時間T1が経過するのを待機する。負電圧(−Vs)が印加されると、インク室15aの両側の側壁16a,16bが、インク室15aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形して、図4の(b)の状態となる。この変形により、インク室15a内の圧力が低下する。このため、共通インク室5からインク室15a内にインクが流れ込む。
【0023】
準備時間T1が経過して時点t2になると、駆動装置は、さらに維持時間Tbが経過するまで、インク室15aに対応した電極4に負電圧(−Vs)を印加し続ける。この間、各インク室15a,15b,15cは、図4の(b)の状態を維持する。
【0024】
維持時間Tbが経過して時点t3になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に印加する電圧を0ボルトに戻す。そして、吐出時間T2が経過するのを待機する。印加電圧が0ボルトになると、インク室15aの両側の側壁16a,16bが定常状態に復元されて、図4の(a)の状態に戻る。この復元により、インク室15a内の圧力が増大する。このため、インク室15aに対応したノズル8からインク液滴が吐出する。
【0025】
吐出時間T2が経過して時点t4になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に所定の正電圧(+Vs)を印加する。そして、後処理時間T3が経過するのを待機する。正電圧(+Vs)が印加されると、インク室15aの両側の側壁16a,16bが、インク室15aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形して、図4の(c)の状態となる。この変形により、インク室15a内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出によりインク室15a内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
【0026】
後処理時間T3が経過して時点t5になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に印加する電圧を再度0ボルトに戻す。印加電圧が0ボルトに戻されたことに応じて、インク室15aの両側の側壁16a,16bが定常状態に復元される。すなわち、各インク室15a,15b,15cは、図4の(a)の状態に戻る。
【0027】
駆動装置は、図5に示した基準パルス波形の駆動パルス信号をインク室15aの電極4に供給する。そうすると、圧電部材1,2からなる各側壁16a,16bがインク室15の容積を拡大または縮小するように駆動して、当該インク室15aに対応したノズル8からインク液滴が吐出される。ここに、圧電部材1,2からなる各側壁16a,16bとこの側壁16a,16bに設けられた電極4は、各側壁16a,16bで仕切られたインク室15に連通するノズル8の駆動素子を構成する。
【0028】
次に、マルチドロップ方式による階調印刷について、図6を用いて説明する。前述したように、マルチドロップ方式は、インク液滴の大きさを変えずに1ドットに対して打ち込むインク液滴の数を可変して1ドットの濃度を変化させ、階調を表現する。そこで駆動装置は、図5に示した基準パルス波形の駆動パルス電圧を、1つのノズル8に対応した駆動素子に複数回連続して繰り返し与える。そうすると、この駆動素子に対応したノズル8からインク液滴が複数回連続して吐出される。すなわち、マルチドロップ方式による階調印刷が行われる。
【0029】
図6は、最大階調を7階調として印字を行う場合の駆動パルス信号を示す。シェアモードタイプのインクジェットヘッドは、あるノズル8からインクを吐出するとき、そのノズル8のインク室15が側壁を共有する両隣のノズル8は、同時にインクを吐出することはできない。そこで、各ノズル8を、“A”,“B”,“C”の3つのグループに分割する。具体的には、あるノズル8がグループ“A”に属すると仮定すると、このノズル8に対して一方の側に隣接するノズル8がグループ“B”に属し、他方の側に隣接するノズル8がグループ“C”に属するように分割する。そして、図6に示すように、グループ毎にタイミングをずらして、各ノズル8の駆動素子に駆動パルス信号を供給する。
【0030】
図7は、グループ“B”に属する各ノズル8bに対応した駆動素子に負電圧(−Vs)が印加されたときの各側壁16a,16b,16cの状態を示す。この状態では、図7に示すように、グループ“B”に属するノズル8bに連通する各インク室15bの両側の側壁16b,16cが、インク室15bの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。しかし、側壁16bと側壁16cとの間に位置する側壁16bには両方向から同じ圧力が加わるため、側壁16b,16cの圧力が側壁16bより外方へは逃げない。このため、各ノズル8bから吐出されるインク液滴20の体積は略一定である。以下では、この体積を“V[pl]”と仮定する。
【0031】
ところが、1つのインクジェットヘッド100を構成する複数のインク室15aの大きさやノズル8の径の寸法は、必ずしも均一ではない。このため、同一電圧の駆動パルス信号を駆動素子に印加しても、各ノズル8から吐出されるインク液滴20の体積は必ずしも一定にはならない。以下では、このような事象を、「基本構造に起因するばらつき」と称する。
【0032】
また、上記「基本構造に起因するばらつき」が改善されたとしても、各インク室15から吐出されるインク液滴20の体積が均一になるとは限らない。
例えば図8に示すように、グループ“B”に属する各ノズル8b1,8b2,8b3のうち、ノズル8b2,8b3に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されるものの、ノズル8b1に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されないことがある。ノズル8b2から吐出されるインク液滴21で形成される画素が画像の端部となる場合が該当する。あるいは、ノズル8b2から吐出されるインク液滴で形成される画素に対して、ノズル8b1から吐出されるインク液滴で形成される画素の階調が小さい場合が該当する。この場合、インク室15b1とインク室15b2との間の側壁16a2に対しては、インク室15b2の側からしか圧力が加わらない。このため、インク室15b2の容積を拡大するように側壁16b2に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。その結果、ノズル8b2から吐出されるインク液滴21の体積は、外方へ逃げた圧力に相当する体積をα[pl]と仮定すると、“V+α[pl]”に増加する。
【0033】
また、図9に示すように、ノズル8b2に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されるものの、その両隣のノズル8b1,8b3に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されない場合もある。ノズル8b2から吐出されるインク液滴で形成される画素に対して、その両側の画素の階調が小さい場合が該当する。この場合、インク室15b1とインク室15b2との間の側壁16a2に対しては、インク室15b2の側からしか圧力が加わらない。このため、インク室15b2の容積を拡大するように側壁16b2に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。同様に、インク室15b2とインク室15b3との間の側壁16a3に対しても、インク室15b2の側からしか圧力が加わらない。このため、インク室15b2の容積を拡大するように側壁16c2に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。その結果、ノズル8b2から吐出されるインク液滴22の体積は、“V+2α[pl]”に増加する。以下では、これらのような事象を「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と称する。
【0034】
同様な事象は、インクジェットヘッド100の端部に位置するノズル8に対しても生じる。すなわち、図10に示すように、インクジェットヘッド100の端部には、ノズルの空いていないダミーのインク室15xが配置されている。このため、端部に位置するインク室15b0の容積を拡大するように側壁16b0に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。その結果、インク室15b0のノズル8b0から吐出されるインク液滴23の体積は、“V+α[pl]”に増加する。以下では、このような事象を「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」と称する。
【0035】
本実施形態の駆動装置は、上記「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の3つを改善して、ライン型インクジェットヘッド100による高精細な画像形成を実現するものである。
【0036】
図11は、駆動装置の構成を示すブロック図である。駆動装置は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、ワークRAM(Random Access Memory)103、画像メモリ104、補正データメモリ105、第1補正値メモリ106、第2補正値メモリ107、第3補正値メモリ108、通信インターフェース109、画像データ出力部110、補正データ出力部111、基準信号出力部112、駆動順序制御部113、画像データ用シフトレジスタ114、補正データ用シフトレジスタ115、複数の駆動信号生成部116(116-1,…,116-i,116-j,…,116-n)、及び複数のアンプ117(117-1,…,117-i,117-j,…,117-n)を備える。なお、ワークRAM103、画像メモリ104、補正データメモリ105、第1補正値メモリ106、第2補正値メモリ107、第3補正値メモリ108は、1つのRAMで形成されている。
【0037】
各駆動信号生成部116及びアンプ117は、インクジェットヘッド100の各インク室15に対応して備えられる。すなわち、各駆動信号生成部116は、それぞれ対応するノズルの駆動素子118(118-1,…,118-i,118-j,…,118-n)に印加する駆動パルス信号P1,…Pi,Pj,…,Pnを生成する。
【0038】
駆動装置は、通信インターフェース109を介してホスト機器等から受信した画像データを画像メモリ104に記憶する。画像データ出力部110は、画像メモリ104から画像データを1ラインずつ読出し、画像データ用シフトレジスタ114に出力する。画像データ用シフトレジスタ114は、インクジェットヘッド100の各ノズル8に1対1で対応したレジスタ長を有し、1ラインの画像データを画素単位に順次シフトして保持する。
【0039】
補正データ出力部111は、補正データ記憶部である補正データメモリ105で記憶されるノズル8毎の最終補正データD0を1ラインずつ読出し、補正データ用シフトレジスタ115に出力する。補正データ用シフトレジスタ115は、インクジェットヘッド100の各ノズル8に1対1で対応したレジスタ長を有し、1ラインの最終補正データD0を順次シフトして保持する。
【0040】
基準信号出力部112は、インクジェットヘッド100の駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形(図5を参照)を有する基準信号S1を出力する。
【0041】
駆動順序制御部113は、側壁を共有する両隣のインク室15のノズル8が同時にインクを吐出することがないように、各駆動信号生成部116で生成される駆動パルス信号P1〜Pnの出力タイミングを制御する。
【0042】
第1補正値メモリ106は、前記「基本構造に起因するばらつき」の補正に必要な第1の補正データD1を記憶する。第2補正値メモリ107は、前記「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第2の補正データD2を記憶する。第3補正値メモリ108は、前記「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第3の補正データD3を記憶する。前記最終補正データD0及び各第1〜第3の補正データD1,D2,D3の詳細については後述する。
【0043】
その前に本実施形態の補正方法について、図12を用いて説明する。図12において、パルス波形Paは、補正前の駆動パルス信号の波形であり、パルス波形Pbとパルス波形Pcは、補正後の駆動パルス信号の波形である。パルス波形Paは、図5に示した基準信号の基準パルス波形と一致する。
【0044】
パルス波形Paパルス波形Pb及びパルス波形Pcとを対比すればわかるように、本実施形態では、1ドロップのインク液滴の吐出に必要なパルス波形の準備時間T1を補正する。同パルス波形の吐出時間T2及び後処理時間T3は補正しない。具体的には、準備時間T1における定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とを、補正データにしたがって時間“−t”から“+t”の範囲内で可変する。
【0045】
定常区間の時間Taを短くする、すなわち“−t”の方向に補正すると、拡大区間の時間(T1−Ta)が長くなるので、インク液滴の体積は増加する。逆に、定常区間の時間Taを長くする、すなわち“+t”の方向に補正すると、拡大区間の時間(T1−Ta)が短くなるので、インク液滴の体積は減少する。
【0046】
そこで本実施形態では、第1の補正値メモリ106で記憶する第1の補正データD1に従い、ノズル8毎にそのノズル8に対応した駆動素子118に印加される駆動パルス信号を補正してインク液滴の体積を増減させる。そうすることによって、各ノズル8から吐出されるインク液滴の「基本構造に起因するばらつき」を補正する。同様に、第2の補正値メモリ107で記憶する第2の補正データD2に従い、ノズル8毎にそのノズル8に対応した駆動素子118に印加される駆動パルス信号を補正してインク液滴の体積を増減させる。そうすることによって、各ノズル8から吐出されるインク液滴の「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」を補正する。また、第3の補正値メモリ108で記憶する第3の補正データD3に従い、ノズル8毎にそのノズル8に対応した駆動素子118に印加される駆動パルス信号を補正してインク液滴の体積を増減させる。そうすることによって、各ノズル8から吐出されるインク液滴の「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」を補正する。
【0047】
図13のグラフは、本実施形態のインクジェットヘッド100において、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を補正データによって段階的に遅延させて、その都度7ドロップのインク液滴を吐出させた場合の吐出体積[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示す。図13からわかるように、遅延時間[nsec]が大きくなればなるほど吐出体積[pl]は小さくなる。
【0048】
図14のグラフは、図13のグラフに示す対応関係において、7ドロップのインク液滴の吐出体積が38[pl]のときを基準(=0)としたときの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示す。また、図15のグラフは、図14のグラフにおいて、7ドロップの吐出体積を1ドロップ毎に等分したときの1ドロップの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示す。図15のグラフを、1ドロップの吐出体積の差[pl]をyとし、遅延時間[nsec]をxとする一次方程式で表わすと、次の(1)式となる。
【0049】
y=−0.0015x+0.8295 …(1)
したがって、1ドロップの吐出体積の差yが0[pl]のとき、つまり7ドロップの吐出体積が38[pl]のときの遅延時間は553[nsec]である。
【0050】
本実施形態のライン型インクジェットヘッド100は、基準信号S1の基準パルス波形Paと一致する波形の駆動パルス信号で、1つのノズル8から7ドロップを吐出したときの吐出体積を38[pl]と設定する。つまり、基準信号S1の基準パルス波形Paにおいて、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を、基準の時点t0から遅延時間553[nsec]だけ経過した時点とする。そして、補正値が“0”の補正データの場合には、基準パルス波形Paを補正しない。補正値が正の補正データの場合には、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を0〜tの範囲内で補正する。補正値が負の補正データの場合には、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を−t〜0の範囲内で補正する。
【0051】
図16は、CPU101が実行するメインルーチンの処理手順を示す流れ図である。CPU101は、画像データの受信を待機する(ST1)。そして、通信インターフェース109を介して画像データを受信すると(ST1のYES)、CPU101は、その画像データを画像メモリ104で記憶する(ST2)。
【0052】
次に、CPU101は、「基本構造に起因するばらつき」の補正を実行する設定になっているか否かを判断する(ST3)。この設定は、例えばワークRAM103に「基本構造に起因するばらつき」の補正を実行するか否かを識別するオプションフラグが記憶されており、CPU101は、このフラグから判断する。
【0053】
実行する設定になっている場合には(ST3の「する」)、CPU101は、図17の流れ図に示されるサブルーチンを実行して、「基本構造に起因するばらつき」の補正に必要な第1の補正データD1をノズル8毎に作成する(ST4)。実行しない設定になっている場合には(ST3の「しない」)、図17のサブルーチンを実行しない。
【0054】
次に、CPU101は、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行する設定になっているか否かを判断する(ST5)。この設定は、例えばワークRAM103に「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行するか否かを識別するオプションフラグが記憶されており、CPU101は、このフラグから判断する。
【0055】
実行する設定になっている場合には(ST5の「する」)、CPU101は、図18の流れ図に示されるサブルーチンの処理手順を実行して、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第2の補正データD2をノズル8毎に作成する(ST6)。実行しない設定になっている場合には(ST5の「しない」)、図18のサブルーチンを実行しない。
【0056】
次に、CPU101は、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行する設定になっているか否かを判断する(ST7)。この設定は、例えばワークRAM103に「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行するか否かを識別するオプションフラグが記憶されており、CPU101は、このフラグから判断する。
【0057】
実行する設定になっている場合には(ST7の「する」)、CPU101は、図19の流れ図に示されるサブルーチンの処理手順を実行して、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第3の補正データD3をノズル8毎に作成する(ST8)。実行しない設定になっている場合には(ST7の「しない」)、図19のサブルーチンを実行しない。
【0058】
しかる後、CPU101は、前記ステップST4,ST6またはST8のサブルーチンの処理によって作成された第1〜第3の補正データD1,D2,D3を補正データメモリ105上で統合して、最終補正データD0を作成する。すなわち、第1.第2,第3の補正データD1,D2,D3が全て作成されていた場合には、これらの補正データD1,D2,D3をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第1と第2の補正データD1,D2が作成され、第3の補正データD3が作成されていない場合には、第1と第2の補正データD1,D2をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第1と第3の補正データD1,D3が作成され、第2の補正データD2が作成されていない場合には、第1と第3の補正データD1,D3をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第2と第3の補正データD2,D3が作成され、第1の補正データD1が作成されていない場合には、第2と第3の補正データD2,D3をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第1の補正データD1しか作成されていない場合には、この第1の補正データD1をそのまま最終補正データD0とする。第2の補正データD2しか作成されていない場合には、この第2の補正データD2をそのまま最終補正データD0とする。第3の補正データD3しか作成されていない場合には、この第3の補正データD3をそのまま最終補正データD0とする。なお、いずれの補正データD1,D2,D3も作成されていない場合には、最終補正データD0は“0”となる。
【0059】
CPU101は、画像データ出力部110、補正データ出力部111、基準信号出力部112及び駆動順序制御部113をそれぞれ制御して、各駆動信号生成部116に、ライン毎の画像データ及び最終補正データD0を、基準信号とともに与える。この制御により、各駆動信号生成部116は、基準信号の基準パルス波形を、それぞれ対応するノズル8に対する最終補正データD0で補正して、駆動パルス信号P1〜Pnを生成する。生成された各駆動パルス信号P1〜Pnは、対応するノズル8の駆動素子118-1〜118-nに印加される。かくして、インクジェットヘッド100の各ノズル8からインクが吐出されて、画像が形成される。
【0060】
次に、第1〜第3の補正データ作成処理について、具体的に説明する。なお、この説明をするにあたり、画像メモリ104で記憶する画像データの一例を図20に示す。図20において、横の列番号1〜xはノズル番号であり、縦の行番号1〜nはライン番号である。ノズル番号1〜xは、インクジェットヘッド100の各ノズル8に1対1で対応している。ライン番号は、1画像の走査ラインに1対1で対応している。行列のマトリクスで示される各枠は1画素に対応しており、その枠内の数値0〜7は階調度(ドロップ数)を示す。また、各ノズル番号に対応する記号A,B,Cは、そのノズル8が属するグループ“A”,“B”,“C”を示す。
【0061】
図17は、第1の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図である。第1の補正データ作成処理に入ると、CPU101は、先ず、ノズル補正量テーブル200を取得する(ST21)。
【0062】
ノズル補正量テーブル200の一例を図21に示す。図示するように、ノズル補正量テーブル200は、ノズル番号1〜x別に補正量Pと処理フラグとが設定されており、例えばワークRAM103に記憶されている。補正量Pは、各ノズル8からそれぞれ吐出される1ドロップのインク液滴の平均体積に対する差分量である。処理フラグは、対応する補正量Pが“0”のときは補正が不要なので“0”となり、“0”以外のときには補正が必要なので“1”となる。図21の例の場合、ノズル番号「1」のノズル8から吐出される1ドロップのインク液滴の体積は平均値と等しいので補正は不要だが、ノズル番号「2」のノズル8から吐出される1ドロップのインク液滴の体積は平均値よりも0.57[pl]少ないので、補正が必要である。
【0063】
次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“0”にリセットする(ST22)。ライン番号カウンタLは、ワークRAM103に形成されている。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする(ST23)。そしてCPU101は、カウントアップ後のライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えたか否かを判断する(ST24)。超えていない場合(ST24のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“0”にリセットする(ST25)。ノズル番号カウンタNは、ワークRAM103に形成されている。
【0064】
次に、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“1”だけカウントアップする(ST26)。そしてCPU101は、カウントアップ後のノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えたか否かを判断する(ST27)。超えていない場合(ST27のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNのカウント値と一致するノズル番号Nのノズル8Nが補正対象であるか否かを判断する(ST28)。
【0065】
ノズル補正量テーブル200を検索して、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“0”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8Nは補正対象外と判定する(ST28のNO)。この場合、CPU101は、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lでかつノズル番号Nの第1の補正データD1[L,N]を“0”として、第1の補正値メモリ106にセットする(ST29)。
【0066】
これに対し、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“1”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8は補正対象と判定する(ST28のNO)。この場合、CPU101は、ノズル補正量テーブル200からノズル番号Nの補正量PN1を読み出す(ST30)。次いで、CPU101は、この補正量PN1を次の(2)式により補正時間PNT1に変換する(ST31)。なお、(2)式において、数値「553」は、前記遅延時間[nsec]である。
【0067】
PNT1={(0.8295−PN1)/0.0015}−553 …(2)
次いで、CPU101は、この補正時間PNT1を次の(3)式によりクロック数CLK1に変換する(ST32)。なお、(3)式において、数値「40」は、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を−t〜+tの補正範囲内で補正するときの分解能である。
【0068】
CLK1=PNT1/40 …(3)
しかして、CPU101は、このクロック数CLK1を、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第1の補正データD1[L,N]として、第1の補正値メモリ106にセットする(ST33)。
【0069】
こうして、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第1の補正データD1[L,N]を第1の補正値メモリ106にセットしたならば、CPU101は、ステップST26の処理に戻って、ノズル番号カウンタNをさらに“1”だけカウントアップする。こうして、ノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えるまで、CPU101は、ステップST26〜ST33の処理を繰り返し実行する。
【0070】
ノズル番号カウンタNがノズル数xを超えたならば、CPU101は、ステップST23の処理に戻って、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする。こうして、ライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えるまで、CPU101は、ステップST23〜ST33の処理を繰り返し実行する。
【0071】
ライン番号カウンタLが走査ライン数nを超えたならば、CPU101は、第1の補正データ作成処理を終了する。ここに、CPU101が実行する第1の補正データ作成処理のステップST21〜ST33の各処理は、複数のノズルからそれぞれ吐出されるインク液滴のばらつきを均一に補正するための第1の補正データを作成する第1の補正データ作成手段を構成する。
【0072】
本実施形態において、図21のノズル補正量テーブル200が設定されていた場合の、グループBに属するノズル8(ノズル番号2,5,8,11,14,17,…,x−4,x−1)に対するライン番号1〜nのライン毎の補正量PN1を図22に、補正時間PNT1を図23に、クロック数CLK1を図24に示す。第1の補正データ作成処理を実行することによって、図24の値を含む第1の補正データD1[L,N]が、第1の補正値メモリ106にセットされる。
【0073】
図18は、第2の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図である。第2の補正データ作成処理に入ると、CPU101は、先ず、画像メモリ104から画像データを取得し、ワークRAM103にコピーする(ST41)。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“0”にリセットする(ST42)。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする(ST43)。そしてCPU101は、カウントアップ後のライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えたか否かを判断する(ST44)。超えていない場合(ST44のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“0”にリセットする(ST45)。
【0074】
次に、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“1”だけカウントアップする(ST46)。そしてCPU101は、カウントアップ後のノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えたか否かを判断する(ST47)。
【0075】
超えていない場合(ST47のNO)、CPU101は、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lの画像データを参照する。そして、ノズル番号カウンタNのカウント値と一致するノズル番号Nのノズル8Nに対する画像データのドロップ数(階調値)Gxから、当該ノズル8Nと同一のグループに属しており、左側(ノズル番号が小さい側)に隣接しているノズル8(N−3)に対する画像データのドロップ数(階調値)G(x−1)との左差分値ΔP1を算出する(ST48)。また、CPU101は、同ノズル8Nに対する画像データのドロップ数(階調値)Gxから、当該ノズル8Nと同一のグループに属しており、右側(ノズル番号が大きい側を右側と定義する)に隣接しているノズル8(N+3)に対する画像データのドロップ数(階調値)G(x+1)との右差分値ΔP2を算出する(ST49)。そしてCPU101は、左差分値ΔP1と右差分値ΔP2とを加算して、補正差分値ΣPを算出する(ST50)。
【0076】
次に、CPU101は、補正差分値ΣPが“0”であるか否かを判定する(ST51)。補正差分値ΣPが“0”の場合、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lの1ライン画像データを印刷する際に、ノズル番号Nのノズル8Nから吐出されるインク液滴によって形成される画素には、画像端におけるクロストークに起因するばらつきがない。この場合、CPU101は、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第2の補正データD2[L,N]を“0”として、第2の補正値メモリ107にセットする(ST52)。
【0077】
これに対し、補正差分値ΣPが“0”でない場合、ライン番号Lの1ライン画像データを印刷する際に、ノズル番号Nのノズル8Nから吐出されるインク液滴によって形成される画素には、画像端におけるクロストークに起因するばらつきがある。この場合、CPU101は、補正差分値ΣPに予め設定された補正係数(本実施形態では0.26とする)を乗算して、ノズル8Nの7ドロップあたりの画像端補正量PN2′を算出する(ST53)。そしてCPU101は、上記画像端補正量PN2′を“7”で除算して、1ドロップあたりの画像端補正量PN2を算出する(ST54)。次いで、CPU101は、この補正量PN2を前記(2)式と同様の演算式で補正時間PNT2に変換する(ST55)。さらに、CPU101は、この補正時間PNT2を前記(3)式と同様の演算式でクロック数CLK2に変換する(ST56)。しかして、CPU101は、このクロック数CLK2を、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第2の補正データD2[L,N]として、第2の補正値メモリ107にセットする(ST57)。
【0078】
その後、CPU101は、ステップST46の処理に戻って、ノズル番号カウンタNをさらに“1”だけカウントアップする。こうして、ノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えるまで、CPU101は、ステップST46〜ST55の処理を繰り返し実行する。
【0079】
ノズル番号カウンタNがノズル数xを超えたならば、CPU101は、ステップST43の処理に戻って、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする。こうして、ライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えるまで、CPU101は、ステップST43〜ST55の処理を繰り返し実行する。
【0080】
ライン番号カウンタLが走査ライン数nを超えたならば、CPU101は、第2の補正データ作成処理を終了する。
【0081】
ここに、CPU101が実行する第2の補正データ作成処理において、ステップST41〜ステップST48の処理は、画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第1の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第1の差分作成手段を構成する。また、ステップST49の処理は、画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側とは反対側の他方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第2の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第2の差分作成手段を構成する。さらに、ステップST50〜ST57の処理は、前記第1の差分作成手段及び前記第2の差分作成手段で作成された体積量の差分を均一にするための第2の補正データを作成する第2の補正データ作成手段を構成する。
【0082】
本実施形態において、図20の画像データが画像メモリ104に記憶されていた場合の、グループBに属するノズル8(ノズル番号2,5,8,11,14,17,…,x−4,x−1)に対するライン番号1〜nのライン毎の左差分値ΔP1を図25に、右差分値ΔP2を図26に、補正差分値を図27に、7ドロップあたりの画像端補正量PN2′を図28に、1ドロップあたりの画像端補正量PN2を図29に、補正時間PNT2を図30に、クロック数CLK2を図31に示す。第2の補正データ作成処理を実行することによって、図31の値を含む第2の補正データD2[L,N]が、第2の補正値メモリ107にセットされる。
【0083】
図19は、第3の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図である。第3の補正データ作成処理に入ると、CPU101は、先ず、ヘッド端補正量テーブル300を取得する(ST61)。
【0084】
ヘッド端補正量テーブル300の一例を図32に示す。図示するように、ヘッド端補正量テーブル300は、ノズル番号1〜x別に補正量Qと処理フラグとが設定されており、例えばワークRAM103に記憶されている。補正量Qは、ヘッド端に位置するためにクロストークに起因するばらつきを生じるノズル8(ノズル番号1,2,3,x−2,x−1,x)に対して設定される7ドロップあたりの補正係数(本実施形態では0.5とする)である。処理フラグは、対応する補正量Qが“0”のときは補正が不要なので“0”となり、“0”以外のときには補正が必要なので“1”となる。なお、図32では、左右端部の補正係数は0.5で一致しているが、左右で異なる補正係数を設定してもよい。
【0085】
次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“0”にリセットする(ST62)。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする(ST63)。そしてCPU101は、カウントアップ後のライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えたか否かを判断する(ST64)。超えていない場合(ST64のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“0”にリセットする(ST65)。
【0086】
次に、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“1”だけカウントアップする(ST66)。そしてCPU101は、カウントアップ後のノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えたか否かを判断する(ST67)。超えていない場合(ST67のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNのカウント値と一致するノズル番号Nのノズル8Nが補正対象であるか否かを判断する(ST68)。
【0087】
ヘッド端補正量テーブル300を検索して、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“0”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8Nは補正対象外と判定する(ST28のNO)。この場合、CPU101は、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lでかつノズル番号Nの第3の補正データD3[L,N]を“0”として、第3の補正値メモリ108にセットする(ST69)。
【0088】
これに対し、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“1”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8は補正対象と判定する(ST68のNO)。この場合、CPU101は、ヘッド端補正量テーブル300からノズル番号Nの補正量QN′を読み出す(ST70)。この補正量QN′は、7ドロップあたりの補正係数である。そこでCPU101は、この補正量QN′を“7”で除算して、1ドロップあたりの補正量QNを算出する(ST71)
次いで、CPU101は、この補正量QNを前記(2)式と同様の演算式で補正時間QNTに変換する(ST72)。さらに、CPU101は、この補正時間QNTを前記(3)式と同様の演算式でクロック数CLK3に変換する(ST73)。しかして、CPU101は、このクロック数CLK3を、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第3の補正データD3[L,N]として、第3の補正値メモリ108にセットする(ST74)。
【0089】
こうして、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第3の補正データD3[L,N]を第3の補正値メモリ108にセットしたならば、CPU101は、ステップST66の処理に戻って、ノズル番号カウンタNをさらに“1”だけカウントアップする。こうして、ノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えるまで、CPU101は、ステップST66〜ST74の処理を繰り返し実行する。
【0090】
ノズル番号カウンタNがノズル数xを超えたならば、CPU101は、ステップST63の処理に戻って、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする。こうして、ライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えるまで、CPU101は、ステップST63〜ST74の処理を繰り返し実行する。
【0091】
ライン番号カウンタLが走査ライン数nを超えたならば、CPU101は、第3の補正データ作成処理を終了する。
【0092】
ここに、CPU101が実行する第3の補正データ作成処理のステップST61〜ST74の処理は、インクジェットヘッドの端部に位置するノズルから吐出されるインク液滴と端部以外に位置するノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段を構成する。
【0093】
本実施形態において、図32のヘッド端補正量テーブル300が設定されていた場合の、グループBに属するノズル8(ノズル番号2,5,8,11,14,17,…,x−4,x−1)に対するライン番号1〜nのライン毎の7ドロップあたりの補正量QN′を図33に、1ドロップに換算した補正量QNを図34に、補正時間QNTを図35に、クロック数CLK3を図36に示す。第3の補正データ作成処理を実行することによって、図36の値を含む第3の補正データD1[L,N]が、第3の補正値メモリ108にセットされる。
【0094】
仮に、前記オプションフラグの設定において、「基本構造に起因するばらつき」の補正だけを実行し、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とを実行しない設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値が最終補正データD0として、1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。したがって、例えば1ライン目のノズル番号「2」のノズルからインク液滴を吐出する際には、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が10クロック分長くなるので、インク液滴の体積が増加する。
【0095】
図21に示すように、ノズル番号「2」のノズルに対しては補正量Pとして−0.57が設定されている。つまり、このノズルは基本構造上、他の補正量Pが“0”のノズルよりも0.57[pl]だけインク液滴の体積が小さい。このため、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が10クロック分長くなってインク液滴の体積が0.57[pl]だけ増加するので、他の補正量Pが“0”のノズルとインク液滴の体積量が均一化される。
【0096】
一方、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正だけを実行する設定になっていた場合には、図31で示したクロック数の値が最終補正データD0として、1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。したがって、例えば1ライン目のノズル番号「2」のノズルからインク液滴を吐出する際には、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が4クロック分短くなるので、インク液滴の体積が減少する。ノズル番号「2」のノズルから吐出されるインク液滴によって形成される画素は画像端であり、画像端以外のノズルよりもインク液滴の体積が0.26[pl]だけ増加する。そこで、今回の補正により駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が4クロック分短くなってインク液滴の体積が0.26[pl]だけ減少するので、画像端以外のノズルとインク液滴の体積量が均一化される。
【0097】
また、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正だけを実行する設定になっていた場合には、図36で示したクロック数の値が最終補正データD0として、1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。したがって、例えば1ライン目のノズル番号「2」のノズルからインク液滴を吐出する際には、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が1クロック分短くなるので、インク液滴の体積が0.07[pl]だけ減少する。ノズル番号「2」のノズルは、ヘッド端部に位置しており、このノズルから吐出されるインク液滴の体積は、ヘッド端部以外のノズルよりも0.07[pl]だけ増加する。そこで、今回の補正により駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が1クロック分短くなってインク液滴の体積が0.07[pl]だけ減少するので、ヘッド端以外のノズルとインク液滴の体積量が均一化される。
【0098】
また、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とを実行する設定となっており、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行しない設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値と図31で示したクロック数CLK2の値とをライン毎かつ画素ごとに加算した値が最終補正データD0となる。具体的には、図37に示すクロック数CLK4の値が最終補正データD0として補正データメモリ105に記憶される。そして、この最終補正データD0が1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。この補正データにより、「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」とが補正される。
【0099】
同様に、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とを実行する設定となっており、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行しない設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値と図36で示したクロック数CLK3の値とをライン毎かつ画素ごとに加算した値が最終補正データD0となる。具体的には、図38に示すクロック数CLK5の値が最終補正データD0として補正データメモリ105に記憶される。そして、この最終補正データD0が1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。この補正データにより、「基本構造に起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」とが補正される。
【0100】
また、「基本構造に起因するばらつき」の補正、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正及び「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を全て実行する設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値と図31で示したクロック数CLK2の値と図36で示したクロック数CLK3の値とをライン毎かつ画素毎に加算した値が最終補正データD0となる。具体的には、図39に示すクロック数CLK6の値が最終補正データD0として補正データメモリ105に記憶される。そして、この最終補正データD0が1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。この補正データにより、「基本構造に起因するばらつき」、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」及び「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」が補正される。
【0101】
このように本実施形態によれば、「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の3つを分解能の高い滑らかな補正によって改善することができ、ひいては、ライン型インクジェットヘッド100による高精細な画像形成を実現できる効果を奏し得る。
【0102】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
例えば前記実施形態は、「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の3つを改善する場合を示したが、いずれか1つ若しくは2つを改善する駆動装置も本発明は含むものである。例えば、「基本構造に起因するばらつき」のみを補正する駆動装置の場合、第2の補正値メモリ107と第3の補正値メモリ108は不要となる。また、CPU101が実行するメインルーチン(図16を参照)において、ステップST5〜ST8の処理は省略される。また、ステップST9の処理は、単に、第1の補正値メモリ106のデータを補正データメモリ105にコピーすればよい。この場合、第1の補正値メモリ106を補正データメモリ105が兼用してもよい。
【0103】
また、前記実施形態では、図14にて、7ドロップのインク液滴の吐出体積が38[pl]のときを基準(=0)としたときの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示したが、基準とする吐出体積は38[pl]に限定されるものではない。同様に、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を−t〜+tの補正範囲内で補正するときの分解能を「40」としたが、この値も「40」に限定されるものではない。さらに、補正係数を0.26としたが、この値も0.26に限定されるものではない。これらの値は、あくまでも一実施形態のものであり、必要に応じて適宜変更設定されるものである。
【0104】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
100…ライン型インクジェットヘッド、101…CPU、104…画像メモリ、105…補正メモリ、106…第1の補正値メモリ、107…第2の補正値メモリ、108…第3の補正値メモリ、110…画像データ出力部、111…補正データ出力部、112…喜寿信号出力部、113…駆動順序制御部、114…画像データ用シフトレジスタ、115…補正データ用シフトレジスタ、116…駆動信号生成部、200…ノズル補正量テーブル、300…ヘッド端補正量テーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動装置及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンタ等に用いられるインクジェットヘッドは、インクを収容する複数のインク室と、これらインク室の一端側に設けられ、各インク室にそれぞれ対応してインク液滴を吐出するためのノズルが複数形成されたノズルプレートと、各インク室にそれぞれ対応して設けられた複数の駆動素子とを備える。
【0003】
このようなインクジェットヘッドは、駆動素子が駆動すると、この駆動素子に対応したインク室に圧力振動が与えられる。この圧力振動によって、インク室内部の容積が変化し、このインク室に対応したノズルからインク液滴が吐出される。インク液滴は、記録紙等の記録媒体に着弾して、当該記録媒体にドットを形成する。このようなドットの連続形成により、インクジェットヘッドは、画像データに基づいた文字や画像等を記録媒体上に形成する。
【0004】
ところで、この種のインクジェットヘッドは、例えば画像の端部でインクの吐出量が多くなり、濃度が濃くなってしまうことがある。このような不具合を解決するために、従来、画像の端部に対応したノズルから吐出されるインク液滴のドロップ数を減らすことで濃度を補正する技術は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-160662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インク液滴のドロップ数を制御する従来の濃度補正方法では、補正の分解能が大きいため、滑らかな補正ができないという解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動装置は、基準信号出力部と、補正データ記憶部と、駆動信号生成部とを備える。基準信号出力部は、駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号を出力する。補正データ記憶部は、複数のノズル毎にそれぞれ算出される補正データを記憶する。駆動信号生成部は、複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子毎に印加される駆動パルス信号を、その駆動素子に対応するノズルに対して補正データ記憶部で記憶される補正データで基準信号の基準パルス波形を補正して生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるライン型インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図。
【図2】同ライン型インクジェットヘッドのインク吐出方向である前方部の横断面図。
【図3】同ライン型インクジェットヘッドにおける前方部の縦断面図。
【図4】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において用いる各インク室の状態を示す断面図。
【図5】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において用いる駆動パルス信号の基準パルス波形図。
【図6】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において用いる7階調印字の際の駆動パルス信号を示す波形図。
【図7】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、1つのグループに属する各ノズルに対応した駆動素子に負電圧(−Vs)が印加されたときの各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図8】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、同一グループの隣接する一方のノズルからインクが吐出されないときの各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図9】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、同一グループの隣接する両方のノズルからインクが吐出されないときの各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図10】ライン型インクジェットヘッドの動作原理説明において、ヘッド端に位置する各インク室の状態と吐出されるインク液滴とを示す模式図。
【図11】本実施形態における駆動装置の構成を示すブロック図。
【図12】本実施形態における補正方法の説明に用いる波形図。
【図13】本実施形態のライン型インクジェットヘッドにおいて、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を補正データによって段階的に遅延させて、その都度7ドロップのインク液滴を吐出させた場合の吐出体積[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示すグラフ。
【図14】図13のグラフにおいて、7ドロップのインク液滴の吐出体積が38[pl]のときを基準(=0)としたときの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示すグラフ。
【図15】図14のグラフにおいて、7ドロップの吐出体積を1ドロップ毎に等分したときの1ドロップの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示すグラフ。
【図16】本実施形態における駆動装置のCPUが実行するメインルーチンの処理手順を示す流れ図。
【図17】図16におけるステップST4の第1の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図。
【図18】図16におけるステップST6の第2の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図。
【図19】図16におけるステップST8の第3の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図。
【図20】本実施形態の駆動装置に入力された画像データの一例を示す模式図。
【図21】第1の補正データ作成処理で使用するノズル補正量テーブルの一例を示す模式図。
【図22】第1の補正データ作成処理において、図21のノズル補正量テーブルが設定されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の補正量PN1を示す模式図。
【図23】第1の補正データ作成処理において、図22の補正量PN1から算出される補正時間PNT1を示す模式図。
【図24】第1の補正データ作成処理において、図23の補正時間PNT1から算出されるクロック数CLK1を示す模式図。
【図25】第2の補正データ作成処理において、図20の画像データが記憶されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の左差分値ΔP1を示す模式図。
【図26】第2の補正データ作成処理において、図20の画像データが記憶されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の右差分値ΔP2を示す模式図。
【図27】第2の補正データ作成処理において、左差分値ΔP1と右差分値ΔP2とから算出される補正差分値ΣPを示す模式図。
【図28】第2の補正データ作成処理において、補正差分値ΣPから算出される7ドロップあたりの画像端補正量PN2′を示す模式図。
【図29】第2の補正データ作成処理において、7ドロップあたりの画像端補正量PN2′から算出される1ドロップあたりの画像端補正量PN2を示す模式図。
【図30】第2の補正データ作成処理において、1ドロップあたりの画像端補正量PN2から算出される補正時間PNT2を示す模式図。
【図31】第2の補正データ作成処理において、補正時間PNT2から算出されるクロック数CLK2を示す模式図。
【図32】第3の補正データ作成処理において使用するヘッド端補正量テーブルの一例を示す模式図。
【図33】第3の補正データ作成処理において、図32のヘッド端補正量テーブルが設定されていた場合の、グループBに属するノズルに対するライン毎の7ドロップあたりの補正量QN′を示す模式図。
【図34】第3の補正データ作成処理において、7ドロップあたりの補正量QN′から算出される1ドロップに換算した補正量QNを示す模式図。
【図35】第3の補正データ作成処理において、1ドロップに換算した補正量QNから算出される補正時間QNTを示す模式図。
【図36】第3の補正データ作成処理において、補正時間QNTから算出されるクロック数CLK3を示す模式図。
【図37】本実施形態において、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とが有効な場合の補正データを示す模式図。
【図38】本実施形態において、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とが有効な場合の補正データを示す模式図。
【図39】本実施形態において、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正が有効な場合の補正データを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるライン型インクジェットヘッドの駆動装置の一実施形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施形態は、シェアモードタイプのライン型インクジェットヘッド100の駆動装置について説明する。
【0010】
はじめに、ライン型インクジェットヘッド100の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、ライン型インクジェットヘッド100の一部を分解して示す斜視図であり、図2は、同ヘッド100のインク吐出方向である前方部の横断面図、図3は、同ヘッド100における前方部の縦断面図である。
【0011】
ヘッド100は、ベース基板9の前方側の上面に第1の圧電部材1を接合し、この第1の圧電部材1の上に第2の圧電部材2を接合する。ヘッド100は、図2の矢印で示すように、第1の圧電部材1と第2の圧電部材2とを、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極して接合する。そしてヘッド100は、この接合した圧電部材1,2の先端側から後端側に向けて多数の長尺な溝3を設ける。各溝3は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝3は、先端が開口し、後端が上方に傾斜する。
【0012】
ヘッド100は、各溝3の側壁及び底面に電極4を設ける。さらにヘッド100は、各溝3の後端から第2の圧電部材2の後部上面に向けて、電極4から延出された引出し電極10を設ける。
【0013】
ヘッド100は、各溝3の上部を天板6で塞ぎ、各溝3の先端をノズルプレート7で塞ぐ。天板6は、その内側後方に共通インク室5を備える。ヘッド100は、天板6とノズルプレート7とで囲まれた各溝3によって、インクを収容するインク室15を形成する。ヘッド100は、ノズルプレート7の各インク室15と対向する位置にノズル8を開ける。
【0014】
ヘッド100は、ベース基板9の後方側の上面に、導電パターン13が形成されたプリント基板11を接合し、このプリント基板11の上に、ライン型インクジェットヘッド100の駆動装置を内蔵したドライブIC12を搭載する。ドライブIC12は、導電パターン13に接続する。導電パターン13は、各引出し電極10とワイヤボンディングにより導線14で結合する。
【0015】
次に、上記の如く構成されたライン型インクジェットヘッド100の動作原理について、図4及び図5を用いて説明する。
【0016】
図4の(a)は、中央のインク室15aと、このインク室15aに隣接する両隣のインク室15b,15cの電極4がいずれも接地電位の状態を示している。この状態では、インク室15aとインク室15b及びインク室15aとインク室15cとで挟まれた圧電部材1,2からなる側壁16a,16bは、何ら歪み作用を受けない。
【0017】
図4の(b)は、中央のインク室15aの電極4に負電圧(−Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のインク室15b,15cの電極4はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁16a,16bに、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向に電界が作用する。この作用により、各側壁16a,16bは、インク室15aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。
【0018】
図4の(c)は、中央のインク室15aの電極4に正電圧(+Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のインク室15b,15cの電極4はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁16a,16bに、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向で図4(b)のときとは逆の方向に電界が作用する。この作用により、各側壁16a,16bは、インク室15aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形する。
【0019】
図5は、インク室15aからインク液滴を吐出するためにインク室15aの電極4に印加される駆動パルス信号の基準パルス波形を示している。時間Ttによって示される区間は、インク液滴の吐出に必要な時間であり、この時間Ttは、準備区間の時間T1、吐出区間の時間T2及び後処理区間の時間T3に区分される。準備時間T1、吐出時間T2及び後処理時間T3は、使用するインクや温度等の条件により、適切な値に設定される。
【0020】
さらに、準備時間T1は、定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とに細分化され、吐出区間の時間T2は、維持区間の時間Tbと復元区間の時間(T2−Tb)とに細分化される。
【0021】
図5に示すように、駆動装置は、先ず、時点t0において、インク室15a,15b,15cに対応した各電極4にそれぞれ0ボルトの電圧を印加する。そして、定常区間の時間Taが経過するのを待機する。この間、各インク室15a,15b,15cは、図4の(a)の状態となる。
【0022】
定常区間の時間Taが経過して時点t1になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に所定の負電圧(−Vs)を印加する。そして、準備時間T1が経過するのを待機する。負電圧(−Vs)が印加されると、インク室15aの両側の側壁16a,16bが、インク室15aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形して、図4の(b)の状態となる。この変形により、インク室15a内の圧力が低下する。このため、共通インク室5からインク室15a内にインクが流れ込む。
【0023】
準備時間T1が経過して時点t2になると、駆動装置は、さらに維持時間Tbが経過するまで、インク室15aに対応した電極4に負電圧(−Vs)を印加し続ける。この間、各インク室15a,15b,15cは、図4の(b)の状態を維持する。
【0024】
維持時間Tbが経過して時点t3になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に印加する電圧を0ボルトに戻す。そして、吐出時間T2が経過するのを待機する。印加電圧が0ボルトになると、インク室15aの両側の側壁16a,16bが定常状態に復元されて、図4の(a)の状態に戻る。この復元により、インク室15a内の圧力が増大する。このため、インク室15aに対応したノズル8からインク液滴が吐出する。
【0025】
吐出時間T2が経過して時点t4になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に所定の正電圧(+Vs)を印加する。そして、後処理時間T3が経過するのを待機する。正電圧(+Vs)が印加されると、インク室15aの両側の側壁16a,16bが、インク室15aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形して、図4の(c)の状態となる。この変形により、インク室15a内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出によりインク室15a内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
【0026】
後処理時間T3が経過して時点t5になると、駆動装置は、インク室15aに対応した電極4に印加する電圧を再度0ボルトに戻す。印加電圧が0ボルトに戻されたことに応じて、インク室15aの両側の側壁16a,16bが定常状態に復元される。すなわち、各インク室15a,15b,15cは、図4の(a)の状態に戻る。
【0027】
駆動装置は、図5に示した基準パルス波形の駆動パルス信号をインク室15aの電極4に供給する。そうすると、圧電部材1,2からなる各側壁16a,16bがインク室15の容積を拡大または縮小するように駆動して、当該インク室15aに対応したノズル8からインク液滴が吐出される。ここに、圧電部材1,2からなる各側壁16a,16bとこの側壁16a,16bに設けられた電極4は、各側壁16a,16bで仕切られたインク室15に連通するノズル8の駆動素子を構成する。
【0028】
次に、マルチドロップ方式による階調印刷について、図6を用いて説明する。前述したように、マルチドロップ方式は、インク液滴の大きさを変えずに1ドットに対して打ち込むインク液滴の数を可変して1ドットの濃度を変化させ、階調を表現する。そこで駆動装置は、図5に示した基準パルス波形の駆動パルス電圧を、1つのノズル8に対応した駆動素子に複数回連続して繰り返し与える。そうすると、この駆動素子に対応したノズル8からインク液滴が複数回連続して吐出される。すなわち、マルチドロップ方式による階調印刷が行われる。
【0029】
図6は、最大階調を7階調として印字を行う場合の駆動パルス信号を示す。シェアモードタイプのインクジェットヘッドは、あるノズル8からインクを吐出するとき、そのノズル8のインク室15が側壁を共有する両隣のノズル8は、同時にインクを吐出することはできない。そこで、各ノズル8を、“A”,“B”,“C”の3つのグループに分割する。具体的には、あるノズル8がグループ“A”に属すると仮定すると、このノズル8に対して一方の側に隣接するノズル8がグループ“B”に属し、他方の側に隣接するノズル8がグループ“C”に属するように分割する。そして、図6に示すように、グループ毎にタイミングをずらして、各ノズル8の駆動素子に駆動パルス信号を供給する。
【0030】
図7は、グループ“B”に属する各ノズル8bに対応した駆動素子に負電圧(−Vs)が印加されたときの各側壁16a,16b,16cの状態を示す。この状態では、図7に示すように、グループ“B”に属するノズル8bに連通する各インク室15bの両側の側壁16b,16cが、インク室15bの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。しかし、側壁16bと側壁16cとの間に位置する側壁16bには両方向から同じ圧力が加わるため、側壁16b,16cの圧力が側壁16bより外方へは逃げない。このため、各ノズル8bから吐出されるインク液滴20の体積は略一定である。以下では、この体積を“V[pl]”と仮定する。
【0031】
ところが、1つのインクジェットヘッド100を構成する複数のインク室15aの大きさやノズル8の径の寸法は、必ずしも均一ではない。このため、同一電圧の駆動パルス信号を駆動素子に印加しても、各ノズル8から吐出されるインク液滴20の体積は必ずしも一定にはならない。以下では、このような事象を、「基本構造に起因するばらつき」と称する。
【0032】
また、上記「基本構造に起因するばらつき」が改善されたとしても、各インク室15から吐出されるインク液滴20の体積が均一になるとは限らない。
例えば図8に示すように、グループ“B”に属する各ノズル8b1,8b2,8b3のうち、ノズル8b2,8b3に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されるものの、ノズル8b1に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されないことがある。ノズル8b2から吐出されるインク液滴21で形成される画素が画像の端部となる場合が該当する。あるいは、ノズル8b2から吐出されるインク液滴で形成される画素に対して、ノズル8b1から吐出されるインク液滴で形成される画素の階調が小さい場合が該当する。この場合、インク室15b1とインク室15b2との間の側壁16a2に対しては、インク室15b2の側からしか圧力が加わらない。このため、インク室15b2の容積を拡大するように側壁16b2に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。その結果、ノズル8b2から吐出されるインク液滴21の体積は、外方へ逃げた圧力に相当する体積をα[pl]と仮定すると、“V+α[pl]”に増加する。
【0033】
また、図9に示すように、ノズル8b2に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されるものの、その両隣のノズル8b1,8b3に対応する駆動素子に対して負電圧(−Vs)が印加されない場合もある。ノズル8b2から吐出されるインク液滴で形成される画素に対して、その両側の画素の階調が小さい場合が該当する。この場合、インク室15b1とインク室15b2との間の側壁16a2に対しては、インク室15b2の側からしか圧力が加わらない。このため、インク室15b2の容積を拡大するように側壁16b2に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。同様に、インク室15b2とインク室15b3との間の側壁16a3に対しても、インク室15b2の側からしか圧力が加わらない。このため、インク室15b2の容積を拡大するように側壁16c2に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。その結果、ノズル8b2から吐出されるインク液滴22の体積は、“V+2α[pl]”に増加する。以下では、これらのような事象を「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と称する。
【0034】
同様な事象は、インクジェットヘッド100の端部に位置するノズル8に対しても生じる。すなわち、図10に示すように、インクジェットヘッド100の端部には、ノズルの空いていないダミーのインク室15xが配置されている。このため、端部に位置するインク室15b0の容積を拡大するように側壁16b0に加えられた圧力は、さらに外方へ逃げる。その結果、インク室15b0のノズル8b0から吐出されるインク液滴23の体積は、“V+α[pl]”に増加する。以下では、このような事象を「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」と称する。
【0035】
本実施形態の駆動装置は、上記「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の3つを改善して、ライン型インクジェットヘッド100による高精細な画像形成を実現するものである。
【0036】
図11は、駆動装置の構成を示すブロック図である。駆動装置は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、ワークRAM(Random Access Memory)103、画像メモリ104、補正データメモリ105、第1補正値メモリ106、第2補正値メモリ107、第3補正値メモリ108、通信インターフェース109、画像データ出力部110、補正データ出力部111、基準信号出力部112、駆動順序制御部113、画像データ用シフトレジスタ114、補正データ用シフトレジスタ115、複数の駆動信号生成部116(116-1,…,116-i,116-j,…,116-n)、及び複数のアンプ117(117-1,…,117-i,117-j,…,117-n)を備える。なお、ワークRAM103、画像メモリ104、補正データメモリ105、第1補正値メモリ106、第2補正値メモリ107、第3補正値メモリ108は、1つのRAMで形成されている。
【0037】
各駆動信号生成部116及びアンプ117は、インクジェットヘッド100の各インク室15に対応して備えられる。すなわち、各駆動信号生成部116は、それぞれ対応するノズルの駆動素子118(118-1,…,118-i,118-j,…,118-n)に印加する駆動パルス信号P1,…Pi,Pj,…,Pnを生成する。
【0038】
駆動装置は、通信インターフェース109を介してホスト機器等から受信した画像データを画像メモリ104に記憶する。画像データ出力部110は、画像メモリ104から画像データを1ラインずつ読出し、画像データ用シフトレジスタ114に出力する。画像データ用シフトレジスタ114は、インクジェットヘッド100の各ノズル8に1対1で対応したレジスタ長を有し、1ラインの画像データを画素単位に順次シフトして保持する。
【0039】
補正データ出力部111は、補正データ記憶部である補正データメモリ105で記憶されるノズル8毎の最終補正データD0を1ラインずつ読出し、補正データ用シフトレジスタ115に出力する。補正データ用シフトレジスタ115は、インクジェットヘッド100の各ノズル8に1対1で対応したレジスタ長を有し、1ラインの最終補正データD0を順次シフトして保持する。
【0040】
基準信号出力部112は、インクジェットヘッド100の駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形(図5を参照)を有する基準信号S1を出力する。
【0041】
駆動順序制御部113は、側壁を共有する両隣のインク室15のノズル8が同時にインクを吐出することがないように、各駆動信号生成部116で生成される駆動パルス信号P1〜Pnの出力タイミングを制御する。
【0042】
第1補正値メモリ106は、前記「基本構造に起因するばらつき」の補正に必要な第1の補正データD1を記憶する。第2補正値メモリ107は、前記「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第2の補正データD2を記憶する。第3補正値メモリ108は、前記「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第3の補正データD3を記憶する。前記最終補正データD0及び各第1〜第3の補正データD1,D2,D3の詳細については後述する。
【0043】
その前に本実施形態の補正方法について、図12を用いて説明する。図12において、パルス波形Paは、補正前の駆動パルス信号の波形であり、パルス波形Pbとパルス波形Pcは、補正後の駆動パルス信号の波形である。パルス波形Paは、図5に示した基準信号の基準パルス波形と一致する。
【0044】
パルス波形Paパルス波形Pb及びパルス波形Pcとを対比すればわかるように、本実施形態では、1ドロップのインク液滴の吐出に必要なパルス波形の準備時間T1を補正する。同パルス波形の吐出時間T2及び後処理時間T3は補正しない。具体的には、準備時間T1における定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とを、補正データにしたがって時間“−t”から“+t”の範囲内で可変する。
【0045】
定常区間の時間Taを短くする、すなわち“−t”の方向に補正すると、拡大区間の時間(T1−Ta)が長くなるので、インク液滴の体積は増加する。逆に、定常区間の時間Taを長くする、すなわち“+t”の方向に補正すると、拡大区間の時間(T1−Ta)が短くなるので、インク液滴の体積は減少する。
【0046】
そこで本実施形態では、第1の補正値メモリ106で記憶する第1の補正データD1に従い、ノズル8毎にそのノズル8に対応した駆動素子118に印加される駆動パルス信号を補正してインク液滴の体積を増減させる。そうすることによって、各ノズル8から吐出されるインク液滴の「基本構造に起因するばらつき」を補正する。同様に、第2の補正値メモリ107で記憶する第2の補正データD2に従い、ノズル8毎にそのノズル8に対応した駆動素子118に印加される駆動パルス信号を補正してインク液滴の体積を増減させる。そうすることによって、各ノズル8から吐出されるインク液滴の「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」を補正する。また、第3の補正値メモリ108で記憶する第3の補正データD3に従い、ノズル8毎にそのノズル8に対応した駆動素子118に印加される駆動パルス信号を補正してインク液滴の体積を増減させる。そうすることによって、各ノズル8から吐出されるインク液滴の「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」を補正する。
【0047】
図13のグラフは、本実施形態のインクジェットヘッド100において、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を補正データによって段階的に遅延させて、その都度7ドロップのインク液滴を吐出させた場合の吐出体積[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示す。図13からわかるように、遅延時間[nsec]が大きくなればなるほど吐出体積[pl]は小さくなる。
【0048】
図14のグラフは、図13のグラフに示す対応関係において、7ドロップのインク液滴の吐出体積が38[pl]のときを基準(=0)としたときの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示す。また、図15のグラフは、図14のグラフにおいて、7ドロップの吐出体積を1ドロップ毎に等分したときの1ドロップの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示す。図15のグラフを、1ドロップの吐出体積の差[pl]をyとし、遅延時間[nsec]をxとする一次方程式で表わすと、次の(1)式となる。
【0049】
y=−0.0015x+0.8295 …(1)
したがって、1ドロップの吐出体積の差yが0[pl]のとき、つまり7ドロップの吐出体積が38[pl]のときの遅延時間は553[nsec]である。
【0050】
本実施形態のライン型インクジェットヘッド100は、基準信号S1の基準パルス波形Paと一致する波形の駆動パルス信号で、1つのノズル8から7ドロップを吐出したときの吐出体積を38[pl]と設定する。つまり、基準信号S1の基準パルス波形Paにおいて、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を、基準の時点t0から遅延時間553[nsec]だけ経過した時点とする。そして、補正値が“0”の補正データの場合には、基準パルス波形Paを補正しない。補正値が正の補正データの場合には、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を0〜tの範囲内で補正する。補正値が負の補正データの場合には、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を−t〜0の範囲内で補正する。
【0051】
図16は、CPU101が実行するメインルーチンの処理手順を示す流れ図である。CPU101は、画像データの受信を待機する(ST1)。そして、通信インターフェース109を介して画像データを受信すると(ST1のYES)、CPU101は、その画像データを画像メモリ104で記憶する(ST2)。
【0052】
次に、CPU101は、「基本構造に起因するばらつき」の補正を実行する設定になっているか否かを判断する(ST3)。この設定は、例えばワークRAM103に「基本構造に起因するばらつき」の補正を実行するか否かを識別するオプションフラグが記憶されており、CPU101は、このフラグから判断する。
【0053】
実行する設定になっている場合には(ST3の「する」)、CPU101は、図17の流れ図に示されるサブルーチンを実行して、「基本構造に起因するばらつき」の補正に必要な第1の補正データD1をノズル8毎に作成する(ST4)。実行しない設定になっている場合には(ST3の「しない」)、図17のサブルーチンを実行しない。
【0054】
次に、CPU101は、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行する設定になっているか否かを判断する(ST5)。この設定は、例えばワークRAM103に「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行するか否かを識別するオプションフラグが記憶されており、CPU101は、このフラグから判断する。
【0055】
実行する設定になっている場合には(ST5の「する」)、CPU101は、図18の流れ図に示されるサブルーチンの処理手順を実行して、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第2の補正データD2をノズル8毎に作成する(ST6)。実行しない設定になっている場合には(ST5の「しない」)、図18のサブルーチンを実行しない。
【0056】
次に、CPU101は、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行する設定になっているか否かを判断する(ST7)。この設定は、例えばワークRAM103に「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行するか否かを識別するオプションフラグが記憶されており、CPU101は、このフラグから判断する。
【0057】
実行する設定になっている場合には(ST7の「する」)、CPU101は、図19の流れ図に示されるサブルーチンの処理手順を実行して、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正に必要な第3の補正データD3をノズル8毎に作成する(ST8)。実行しない設定になっている場合には(ST7の「しない」)、図19のサブルーチンを実行しない。
【0058】
しかる後、CPU101は、前記ステップST4,ST6またはST8のサブルーチンの処理によって作成された第1〜第3の補正データD1,D2,D3を補正データメモリ105上で統合して、最終補正データD0を作成する。すなわち、第1.第2,第3の補正データD1,D2,D3が全て作成されていた場合には、これらの補正データD1,D2,D3をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第1と第2の補正データD1,D2が作成され、第3の補正データD3が作成されていない場合には、第1と第2の補正データD1,D2をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第1と第3の補正データD1,D3が作成され、第2の補正データD2が作成されていない場合には、第1と第3の補正データD1,D3をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第2と第3の補正データD2,D3が作成され、第1の補正データD1が作成されていない場合には、第2と第3の補正データD2,D3をノズル毎に合算して最終補正データD0とする。第1の補正データD1しか作成されていない場合には、この第1の補正データD1をそのまま最終補正データD0とする。第2の補正データD2しか作成されていない場合には、この第2の補正データD2をそのまま最終補正データD0とする。第3の補正データD3しか作成されていない場合には、この第3の補正データD3をそのまま最終補正データD0とする。なお、いずれの補正データD1,D2,D3も作成されていない場合には、最終補正データD0は“0”となる。
【0059】
CPU101は、画像データ出力部110、補正データ出力部111、基準信号出力部112及び駆動順序制御部113をそれぞれ制御して、各駆動信号生成部116に、ライン毎の画像データ及び最終補正データD0を、基準信号とともに与える。この制御により、各駆動信号生成部116は、基準信号の基準パルス波形を、それぞれ対応するノズル8に対する最終補正データD0で補正して、駆動パルス信号P1〜Pnを生成する。生成された各駆動パルス信号P1〜Pnは、対応するノズル8の駆動素子118-1〜118-nに印加される。かくして、インクジェットヘッド100の各ノズル8からインクが吐出されて、画像が形成される。
【0060】
次に、第1〜第3の補正データ作成処理について、具体的に説明する。なお、この説明をするにあたり、画像メモリ104で記憶する画像データの一例を図20に示す。図20において、横の列番号1〜xはノズル番号であり、縦の行番号1〜nはライン番号である。ノズル番号1〜xは、インクジェットヘッド100の各ノズル8に1対1で対応している。ライン番号は、1画像の走査ラインに1対1で対応している。行列のマトリクスで示される各枠は1画素に対応しており、その枠内の数値0〜7は階調度(ドロップ数)を示す。また、各ノズル番号に対応する記号A,B,Cは、そのノズル8が属するグループ“A”,“B”,“C”を示す。
【0061】
図17は、第1の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図である。第1の補正データ作成処理に入ると、CPU101は、先ず、ノズル補正量テーブル200を取得する(ST21)。
【0062】
ノズル補正量テーブル200の一例を図21に示す。図示するように、ノズル補正量テーブル200は、ノズル番号1〜x別に補正量Pと処理フラグとが設定されており、例えばワークRAM103に記憶されている。補正量Pは、各ノズル8からそれぞれ吐出される1ドロップのインク液滴の平均体積に対する差分量である。処理フラグは、対応する補正量Pが“0”のときは補正が不要なので“0”となり、“0”以外のときには補正が必要なので“1”となる。図21の例の場合、ノズル番号「1」のノズル8から吐出される1ドロップのインク液滴の体積は平均値と等しいので補正は不要だが、ノズル番号「2」のノズル8から吐出される1ドロップのインク液滴の体積は平均値よりも0.57[pl]少ないので、補正が必要である。
【0063】
次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“0”にリセットする(ST22)。ライン番号カウンタLは、ワークRAM103に形成されている。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする(ST23)。そしてCPU101は、カウントアップ後のライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えたか否かを判断する(ST24)。超えていない場合(ST24のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“0”にリセットする(ST25)。ノズル番号カウンタNは、ワークRAM103に形成されている。
【0064】
次に、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“1”だけカウントアップする(ST26)。そしてCPU101は、カウントアップ後のノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えたか否かを判断する(ST27)。超えていない場合(ST27のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNのカウント値と一致するノズル番号Nのノズル8Nが補正対象であるか否かを判断する(ST28)。
【0065】
ノズル補正量テーブル200を検索して、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“0”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8Nは補正対象外と判定する(ST28のNO)。この場合、CPU101は、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lでかつノズル番号Nの第1の補正データD1[L,N]を“0”として、第1の補正値メモリ106にセットする(ST29)。
【0066】
これに対し、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“1”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8は補正対象と判定する(ST28のNO)。この場合、CPU101は、ノズル補正量テーブル200からノズル番号Nの補正量PN1を読み出す(ST30)。次いで、CPU101は、この補正量PN1を次の(2)式により補正時間PNT1に変換する(ST31)。なお、(2)式において、数値「553」は、前記遅延時間[nsec]である。
【0067】
PNT1={(0.8295−PN1)/0.0015}−553 …(2)
次いで、CPU101は、この補正時間PNT1を次の(3)式によりクロック数CLK1に変換する(ST32)。なお、(3)式において、数値「40」は、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を−t〜+tの補正範囲内で補正するときの分解能である。
【0068】
CLK1=PNT1/40 …(3)
しかして、CPU101は、このクロック数CLK1を、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第1の補正データD1[L,N]として、第1の補正値メモリ106にセットする(ST33)。
【0069】
こうして、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第1の補正データD1[L,N]を第1の補正値メモリ106にセットしたならば、CPU101は、ステップST26の処理に戻って、ノズル番号カウンタNをさらに“1”だけカウントアップする。こうして、ノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えるまで、CPU101は、ステップST26〜ST33の処理を繰り返し実行する。
【0070】
ノズル番号カウンタNがノズル数xを超えたならば、CPU101は、ステップST23の処理に戻って、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする。こうして、ライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えるまで、CPU101は、ステップST23〜ST33の処理を繰り返し実行する。
【0071】
ライン番号カウンタLが走査ライン数nを超えたならば、CPU101は、第1の補正データ作成処理を終了する。ここに、CPU101が実行する第1の補正データ作成処理のステップST21〜ST33の各処理は、複数のノズルからそれぞれ吐出されるインク液滴のばらつきを均一に補正するための第1の補正データを作成する第1の補正データ作成手段を構成する。
【0072】
本実施形態において、図21のノズル補正量テーブル200が設定されていた場合の、グループBに属するノズル8(ノズル番号2,5,8,11,14,17,…,x−4,x−1)に対するライン番号1〜nのライン毎の補正量PN1を図22に、補正時間PNT1を図23に、クロック数CLK1を図24に示す。第1の補正データ作成処理を実行することによって、図24の値を含む第1の補正データD1[L,N]が、第1の補正値メモリ106にセットされる。
【0073】
図18は、第2の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図である。第2の補正データ作成処理に入ると、CPU101は、先ず、画像メモリ104から画像データを取得し、ワークRAM103にコピーする(ST41)。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“0”にリセットする(ST42)。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする(ST43)。そしてCPU101は、カウントアップ後のライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えたか否かを判断する(ST44)。超えていない場合(ST44のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“0”にリセットする(ST45)。
【0074】
次に、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“1”だけカウントアップする(ST46)。そしてCPU101は、カウントアップ後のノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えたか否かを判断する(ST47)。
【0075】
超えていない場合(ST47のNO)、CPU101は、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lの画像データを参照する。そして、ノズル番号カウンタNのカウント値と一致するノズル番号Nのノズル8Nに対する画像データのドロップ数(階調値)Gxから、当該ノズル8Nと同一のグループに属しており、左側(ノズル番号が小さい側)に隣接しているノズル8(N−3)に対する画像データのドロップ数(階調値)G(x−1)との左差分値ΔP1を算出する(ST48)。また、CPU101は、同ノズル8Nに対する画像データのドロップ数(階調値)Gxから、当該ノズル8Nと同一のグループに属しており、右側(ノズル番号が大きい側を右側と定義する)に隣接しているノズル8(N+3)に対する画像データのドロップ数(階調値)G(x+1)との右差分値ΔP2を算出する(ST49)。そしてCPU101は、左差分値ΔP1と右差分値ΔP2とを加算して、補正差分値ΣPを算出する(ST50)。
【0076】
次に、CPU101は、補正差分値ΣPが“0”であるか否かを判定する(ST51)。補正差分値ΣPが“0”の場合、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lの1ライン画像データを印刷する際に、ノズル番号Nのノズル8Nから吐出されるインク液滴によって形成される画素には、画像端におけるクロストークに起因するばらつきがない。この場合、CPU101は、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第2の補正データD2[L,N]を“0”として、第2の補正値メモリ107にセットする(ST52)。
【0077】
これに対し、補正差分値ΣPが“0”でない場合、ライン番号Lの1ライン画像データを印刷する際に、ノズル番号Nのノズル8Nから吐出されるインク液滴によって形成される画素には、画像端におけるクロストークに起因するばらつきがある。この場合、CPU101は、補正差分値ΣPに予め設定された補正係数(本実施形態では0.26とする)を乗算して、ノズル8Nの7ドロップあたりの画像端補正量PN2′を算出する(ST53)。そしてCPU101は、上記画像端補正量PN2′を“7”で除算して、1ドロップあたりの画像端補正量PN2を算出する(ST54)。次いで、CPU101は、この補正量PN2を前記(2)式と同様の演算式で補正時間PNT2に変換する(ST55)。さらに、CPU101は、この補正時間PNT2を前記(3)式と同様の演算式でクロック数CLK2に変換する(ST56)。しかして、CPU101は、このクロック数CLK2を、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第2の補正データD2[L,N]として、第2の補正値メモリ107にセットする(ST57)。
【0078】
その後、CPU101は、ステップST46の処理に戻って、ノズル番号カウンタNをさらに“1”だけカウントアップする。こうして、ノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えるまで、CPU101は、ステップST46〜ST55の処理を繰り返し実行する。
【0079】
ノズル番号カウンタNがノズル数xを超えたならば、CPU101は、ステップST43の処理に戻って、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする。こうして、ライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えるまで、CPU101は、ステップST43〜ST55の処理を繰り返し実行する。
【0080】
ライン番号カウンタLが走査ライン数nを超えたならば、CPU101は、第2の補正データ作成処理を終了する。
【0081】
ここに、CPU101が実行する第2の補正データ作成処理において、ステップST41〜ステップST48の処理は、画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第1の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第1の差分作成手段を構成する。また、ステップST49の処理は、画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側とは反対側の他方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第2の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第2の差分作成手段を構成する。さらに、ステップST50〜ST57の処理は、前記第1の差分作成手段及び前記第2の差分作成手段で作成された体積量の差分を均一にするための第2の補正データを作成する第2の補正データ作成手段を構成する。
【0082】
本実施形態において、図20の画像データが画像メモリ104に記憶されていた場合の、グループBに属するノズル8(ノズル番号2,5,8,11,14,17,…,x−4,x−1)に対するライン番号1〜nのライン毎の左差分値ΔP1を図25に、右差分値ΔP2を図26に、補正差分値を図27に、7ドロップあたりの画像端補正量PN2′を図28に、1ドロップあたりの画像端補正量PN2を図29に、補正時間PNT2を図30に、クロック数CLK2を図31に示す。第2の補正データ作成処理を実行することによって、図31の値を含む第2の補正データD2[L,N]が、第2の補正値メモリ107にセットされる。
【0083】
図19は、第3の補正データ作成処理の手順を具体的に示す流れ図である。第3の補正データ作成処理に入ると、CPU101は、先ず、ヘッド端補正量テーブル300を取得する(ST61)。
【0084】
ヘッド端補正量テーブル300の一例を図32に示す。図示するように、ヘッド端補正量テーブル300は、ノズル番号1〜x別に補正量Qと処理フラグとが設定されており、例えばワークRAM103に記憶されている。補正量Qは、ヘッド端に位置するためにクロストークに起因するばらつきを生じるノズル8(ノズル番号1,2,3,x−2,x−1,x)に対して設定される7ドロップあたりの補正係数(本実施形態では0.5とする)である。処理フラグは、対応する補正量Qが“0”のときは補正が不要なので“0”となり、“0”以外のときには補正が必要なので“1”となる。なお、図32では、左右端部の補正係数は0.5で一致しているが、左右で異なる補正係数を設定してもよい。
【0085】
次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“0”にリセットする(ST62)。次に、CPU101は、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする(ST63)。そしてCPU101は、カウントアップ後のライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えたか否かを判断する(ST64)。超えていない場合(ST64のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“0”にリセットする(ST65)。
【0086】
次に、CPU101は、ノズル番号カウンタNを“1”だけカウントアップする(ST66)。そしてCPU101は、カウントアップ後のノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えたか否かを判断する(ST67)。超えていない場合(ST67のNO)、CPU101は、ノズル番号カウンタNのカウント値と一致するノズル番号Nのノズル8Nが補正対象であるか否かを判断する(ST68)。
【0087】
ヘッド端補正量テーブル300を検索して、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“0”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8Nは補正対象外と判定する(ST28のNO)。この場合、CPU101は、ライン番号カウンタLのカウント値に一致するライン番号Lでかつノズル番号Nの第3の補正データD3[L,N]を“0”として、第3の補正値メモリ108にセットする(ST69)。
【0088】
これに対し、ノズル番号カウンタNに対応するフラグが“1”であると、CPU101は、ノズル番号Nのノズル8は補正対象と判定する(ST68のNO)。この場合、CPU101は、ヘッド端補正量テーブル300からノズル番号Nの補正量QN′を読み出す(ST70)。この補正量QN′は、7ドロップあたりの補正係数である。そこでCPU101は、この補正量QN′を“7”で除算して、1ドロップあたりの補正量QNを算出する(ST71)
次いで、CPU101は、この補正量QNを前記(2)式と同様の演算式で補正時間QNTに変換する(ST72)。さらに、CPU101は、この補正時間QNTを前記(3)式と同様の演算式でクロック数CLK3に変換する(ST73)。しかして、CPU101は、このクロック数CLK3を、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第3の補正データD3[L,N]として、第3の補正値メモリ108にセットする(ST74)。
【0089】
こうして、ライン番号Lでかつノズル番号Nの第3の補正データD3[L,N]を第3の補正値メモリ108にセットしたならば、CPU101は、ステップST66の処理に戻って、ノズル番号カウンタNをさらに“1”だけカウントアップする。こうして、ノズル番号カウンタNがインクジェットヘッド1のノズル数xを超えるまで、CPU101は、ステップST66〜ST74の処理を繰り返し実行する。
【0090】
ノズル番号カウンタNがノズル数xを超えたならば、CPU101は、ステップST63の処理に戻って、ライン番号カウンタLを“1”だけカウントアップする。こうして、ライン番号カウンタLが、画像データの走査ライン数nを超えるまで、CPU101は、ステップST63〜ST74の処理を繰り返し実行する。
【0091】
ライン番号カウンタLが走査ライン数nを超えたならば、CPU101は、第3の補正データ作成処理を終了する。
【0092】
ここに、CPU101が実行する第3の補正データ作成処理のステップST61〜ST74の処理は、インクジェットヘッドの端部に位置するノズルから吐出されるインク液滴と端部以外に位置するノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段を構成する。
【0093】
本実施形態において、図32のヘッド端補正量テーブル300が設定されていた場合の、グループBに属するノズル8(ノズル番号2,5,8,11,14,17,…,x−4,x−1)に対するライン番号1〜nのライン毎の7ドロップあたりの補正量QN′を図33に、1ドロップに換算した補正量QNを図34に、補正時間QNTを図35に、クロック数CLK3を図36に示す。第3の補正データ作成処理を実行することによって、図36の値を含む第3の補正データD1[L,N]が、第3の補正値メモリ108にセットされる。
【0094】
仮に、前記オプションフラグの設定において、「基本構造に起因するばらつき」の補正だけを実行し、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とを実行しない設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値が最終補正データD0として、1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。したがって、例えば1ライン目のノズル番号「2」のノズルからインク液滴を吐出する際には、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が10クロック分長くなるので、インク液滴の体積が増加する。
【0095】
図21に示すように、ノズル番号「2」のノズルに対しては補正量Pとして−0.57が設定されている。つまり、このノズルは基本構造上、他の補正量Pが“0”のノズルよりも0.57[pl]だけインク液滴の体積が小さい。このため、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が10クロック分長くなってインク液滴の体積が0.57[pl]だけ増加するので、他の補正量Pが“0”のノズルとインク液滴の体積量が均一化される。
【0096】
一方、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正だけを実行する設定になっていた場合には、図31で示したクロック数の値が最終補正データD0として、1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。したがって、例えば1ライン目のノズル番号「2」のノズルからインク液滴を吐出する際には、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が4クロック分短くなるので、インク液滴の体積が減少する。ノズル番号「2」のノズルから吐出されるインク液滴によって形成される画素は画像端であり、画像端以外のノズルよりもインク液滴の体積が0.26[pl]だけ増加する。そこで、今回の補正により駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が4クロック分短くなってインク液滴の体積が0.26[pl]だけ減少するので、画像端以外のノズルとインク液滴の体積量が均一化される。
【0097】
また、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正だけを実行する設定になっていた場合には、図36で示したクロック数の値が最終補正データD0として、1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。したがって、例えば1ライン目のノズル番号「2」のノズルからインク液滴を吐出する際には、駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が1クロック分短くなるので、インク液滴の体積が0.07[pl]だけ減少する。ノズル番号「2」のノズルは、ヘッド端部に位置しており、このノズルから吐出されるインク液滴の体積は、ヘッド端部以外のノズルよりも0.07[pl]だけ増加する。そこで、今回の補正により駆動パルス信号の拡大区間の時間(T1−Ta)が1クロック分短くなってインク液滴の体積が0.07[pl]だけ減少するので、ヘッド端以外のノズルとインク液滴の体積量が均一化される。
【0098】
また、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とを実行する設定となっており、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行しない設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値と図31で示したクロック数CLK2の値とをライン毎かつ画素ごとに加算した値が最終補正データD0となる。具体的には、図37に示すクロック数CLK4の値が最終補正データD0として補正データメモリ105に記憶される。そして、この最終補正データD0が1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。この補正データにより、「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」とが補正される。
【0099】
同様に、「基本構造に起因するばらつき」の補正と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正とを実行する設定となっており、「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を実行しない設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値と図36で示したクロック数CLK3の値とをライン毎かつ画素ごとに加算した値が最終補正データD0となる。具体的には、図38に示すクロック数CLK5の値が最終補正データD0として補正データメモリ105に記憶される。そして、この最終補正データD0が1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。この補正データにより、「基本構造に起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」とが補正される。
【0100】
また、「基本構造に起因するばらつき」の補正、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正及び「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」の補正を全て実行する設定になっていた場合には、図24で示したクロック数CLK1の値と図31で示したクロック数CLK2の値と図36で示したクロック数CLK3の値とをライン毎かつ画素毎に加算した値が最終補正データD0となる。具体的には、図39に示すクロック数CLK6の値が最終補正データD0として補正データメモリ105に記憶される。そして、この最終補正データD0が1ライン毎に補正データ出力部111から補正データ用シフトレジスタ115に出力される。この補正データにより、「基本構造に起因するばらつき」、「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」及び「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」が補正される。
【0101】
このように本実施形態によれば、「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の3つを分解能の高い滑らかな補正によって改善することができ、ひいては、ライン型インクジェットヘッド100による高精細な画像形成を実現できる効果を奏し得る。
【0102】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
例えば前記実施形態は、「基本構造に起因するばらつき」と「画像端におけるクロストークに起因するばらつき」と「ヘッド端におけるクロストークに起因するばらつき」の3つを改善する場合を示したが、いずれか1つ若しくは2つを改善する駆動装置も本発明は含むものである。例えば、「基本構造に起因するばらつき」のみを補正する駆動装置の場合、第2の補正値メモリ107と第3の補正値メモリ108は不要となる。また、CPU101が実行するメインルーチン(図16を参照)において、ステップST5〜ST8の処理は省略される。また、ステップST9の処理は、単に、第1の補正値メモリ106のデータを補正データメモリ105にコピーすればよい。この場合、第1の補正値メモリ106を補正データメモリ105が兼用してもよい。
【0103】
また、前記実施形態では、図14にて、7ドロップのインク液滴の吐出体積が38[pl]のときを基準(=0)としたときの吐出体積の差[pl]と遅延時間[nsec]との対応関係を示したが、基準とする吐出体積は38[pl]に限定されるものではない。同様に、定常区間から拡大区間に切り替わる時点t1を−t〜+tの補正範囲内で補正するときの分解能を「40」としたが、この値も「40」に限定されるものではない。さらに、補正係数を0.26としたが、この値も0.26に限定されるものではない。これらの値は、あくまでも一実施形態のものであり、必要に応じて適宜変更設定されるものである。
【0104】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
100…ライン型インクジェットヘッド、101…CPU、104…画像メモリ、105…補正メモリ、106…第1の補正値メモリ、107…第2の補正値メモリ、108…第3の補正値メモリ、110…画像データ出力部、111…補正データ出力部、112…喜寿信号出力部、113…駆動順序制御部、114…画像データ用シフトレジスタ、115…補正データ用シフトレジスタ、116…駆動信号生成部、200…ノズル補正量テーブル、300…ヘッド端補正量テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号を出力する基準信号出力部と、
前記複数のノズル毎にそれぞれ作成される補正データを記憶する補正データ記憶部と、
前記複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子毎に印加される駆動パルス信号を、その駆動素子に対応する前記ノズルに対して前記補正データ記憶部で記憶される補正データで前記基準信号の基準パルス波形を補正して生成する駆動信号生成部と、
を具備したことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項2】
前記複数のノズルからそれぞれ吐出されるインク液滴のばらつきを均一に補正するための第1の補正データを作成する第1の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データを記憶することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項3】
画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第1の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第1の差分作成手段と、
前記画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と前記一方の側とは反対側の他方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第2の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第2の差分作成手段と、
前記第1の差分作成手段及び前記第2の差分作成手段で作成された体積量の差分を均一にするための第2の補正データを作成する第2の補正データ作成手段と、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データを記憶することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項4】
画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第1の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第1の差分作成手段と、
前記画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と前記一方の側とは反対側の他方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第2の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第2の差分作成手段と、
前記第1の差分作成手段及び前記第2の差分作成手段で作成された体積量の差分を均一にするための第2の補正データを作成する第2の補正データ作成手段と、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データと前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データを記憶することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データと前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データと前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項3記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データと前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データと前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項9】
対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動方法において、
前記複数のノズル毎にそれぞれ作成される補正データを補正データ記憶部で記憶し、
前記駆動素子を動作させる駆動パルス信号を、その駆動素子に対応する前記ノズルに対して前記補正データ記憶部で記憶される補正データで前記駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号の基準パルス波形を補正して生成し、
前記基準信号の基準パルス波形を補正して生成した前記駆動パルス信号を、前記複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子に印加して前記インクジェットヘッドを駆動することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項1】
対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号を出力する基準信号出力部と、
前記複数のノズル毎にそれぞれ作成される補正データを記憶する補正データ記憶部と、
前記複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子毎に印加される駆動パルス信号を、その駆動素子に対応する前記ノズルに対して前記補正データ記憶部で記憶される補正データで前記基準信号の基準パルス波形を補正して生成する駆動信号生成部と、
を具備したことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項2】
前記複数のノズルからそれぞれ吐出されるインク液滴のばらつきを均一に補正するための第1の補正データを作成する第1の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データを記憶することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項3】
画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第1の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第1の差分作成手段と、
前記画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と前記一方の側とは反対側の他方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第2の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第2の差分作成手段と、
前記第1の差分作成手段及び前記第2の差分作成手段で作成された体積量の差分を均一にするための第2の補正データを作成する第2の補正データ作成手段と、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データを記憶することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項4】
画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と一方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第1の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第1の差分作成手段と、
前記画像データの1ライン毎に、その画像データの各画素にそれぞれ対応する前記複数のノズルに対して、それぞれ自ノズルから吐出されるインク液滴と前記一方の側とは反対側の他方の側に位置して同じタイミングでインクを吐出する第2の隣接ノズルから吐出されるインク液滴との体積量の差分を作成する第2の差分作成手段と、
前記第1の差分作成手段及び前記第2の差分作成手段で作成された体積量の差分を均一にするための第2の補正データを作成する第2の補正データ作成手段と、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データと前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データを記憶することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データと前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データと前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項3記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドの端部に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴と前記端部以外に位置する前記ノズルから吐出されるインク液滴とのばらつきを均一に補正するための第3の補正データを作成する第3の補正データ作成手段、をさらに具備し、
前記補正データ記憶部は、前記第1の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第1の補正データと前記第2の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第2の補正データと前記第3の補正データ作成手段で前記ノズル毎に作成される前記第3の補正データとを前記ノズル毎に合算した値を記憶することを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項9】
対応する駆動素子の動作によりインク液滴を吐出する複数のノズルをライン状に配列してなるインクジェットヘッドの駆動方法において、
前記複数のノズル毎にそれぞれ作成される補正データを補正データ記憶部で記憶し、
前記駆動素子を動作させる駆動パルス信号を、その駆動素子に対応する前記ノズルに対して前記補正データ記憶部で記憶される補正データで前記駆動パルス信号の基準パルス波形を有する基準信号の基準パルス波形を補正して生成し、
前記基準信号の基準パルス波形を補正して生成した前記駆動パルス信号を、前記複数のノズルにそれぞれ対応する駆動素子に印加して前記インクジェットヘッドを駆動することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2013−59961(P2013−59961A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201079(P2011−201079)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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