インクジェットヘッドキャップユニット

【課題】 物流時のフェイス面についたインクが本体装着時に垂れるのを防止する。
【解決手段】 ノズルの開口から記録液滴を吐出して記録を行なうインクジェットヘッドの、前記ノズルの開口が形成された面に対して着脱可能なキャップユニットであって、前記インクジェットヘッドの前記ノズルの開口が形成された面を保護する保護部材と、前記保護部材に固定され、前記ノズルの開口が形成された面に密着して前記ノズルの領域を覆う弾性キャップと、前記弾性キャップの中に配置された液体吸収部材とを備えたキャップユニットにおいて、キャップユニット着脱時には、キャップ装着時に比べ前記液体吸収部材が前記ノズルの開口が形成された面に対して一旦近づく構造であることを特徴とするキャップユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から記録液体を吐出して記録を行なうインクジェットヘッドの物流時の保管形態に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりの記録方式のうち、吐出口からインクを吐出させて被記録媒体上に記録を行うインクジェット記録方式は、静かで、高密度かつ高速の記録動作が可能であるため、近年では広く採用されている。
【0003】
この方式をとる一般的な記録装置は、被記録媒体への画像記録のためにインクを吐出するインクジェットヘッドと、被記録媒体の搬送装置とを備えている。インクジェットヘッドは、吐出口からインク滴を吐出させるために吐出口と連通するノズル内に、ピエゾ素子等の電気機械変換体素子を用いたもの、発熱抵抗体等の電気熱変換体素子を用いたもの、あるいは電波やレーザの電磁波機械変換体素子,電磁波熱変換体素子を用いたもの等がある。その中でも熱エネルギーを利用してインク滴を吐出させる方式のインクジェット記録装置は、ノズルを高密度に配列させることができるため高解像度の記録を行うことが可能である。
【0004】
特に電気熱変換体素子を熱エネルギー発生素子として用いたインクジェットヘッドは、電気機械変換体素子を用いたものよりも小型化が容易であり、更には、最近の半導体製造分野において進歩と信頼性の向上が著しいIC技術やマイクロ加工技術を応用して、その長所を十分に活用することにより高密度実装化が容易でかつ低コストにて提供可能となる。
【0005】
一般的なインクジェットヘッドは、インクを収容しているインクタンクから、ノズルヘ記録に必要なインク量を安定して供給される。また、吐出口からインクが漏れてこないように、詳しくは吐出口のインクのメニスカスが破れないように維持するために、インクタンクからノズルヘのインク供給圧が負圧に調整されている。インク供給圧を負圧に調整する方法としては、インクを直接収容したインクタンクのインク導出口から吐出口までの水頭差を利用する方法や、インクタンク内に負圧発生部材としてインク吸収体を収納する方法がある。
【0006】
インクジェットヘッドのノズルへインクを供給する方式としては、インクジェットヘッドがインクタンクを一体もしくは分離可能に内蔵することでノズルにインクを供給する方式や、インクジェットヘッドをインクタンクとチューブを介して接続することでノズルにインクを供給するいわゆるチューブ供給方式などがある。大量のインクを消費するインクジェットプリンタにおいては、インクタンクも大容量のものになるため、インクジェットヘッドがインクタンクを備えたものであると、筐体の強度を高めてインクジェット記録装置そのものが重くなる。よって、このようなプリンタではチューブ供給方式が採られる。
【0007】
また、インクジェットヘッドでは、吐出に影響を及ぼしやすい急激な圧力変化を発生させないように、インクタンクとの間にインクを二次的に溜めるインク溜まりやフィルタ等の緩衝部が設けられることが多い。
【0008】
つまり、いずれの方式でもインクジェットヘッドは、概ね、インク滴吐出部となるノズル、インク貯留空間、およびインク導入口を備えている。
【0009】
このようなインクジェットヘッドでは使用時にノズル内が乾燥した状態であると、ヘッド内部にインクを供給した際、各ノズル内に十分にインクが充填されず、ノズルヘのインク充填不足による吐出不良が発生することが考えられる。そのため、製造したヘッドがユーザに渡るまでの物流過程で、ヘッド内に物流用インク(色材を含まない透明インク)を収納することでヘッド内を湿気の雰囲気にしている。具体的には、フィルタとノズルの間に物流インクを充填する方式が一般的である。
【0010】
従来例としては、例えば特許文献1と特許文献2と特許文献3をあげることが出来る。
【特許文献1】特開平6−64160号公報
【特許文献2】特開平10−250091号公報
【特許文献3】特開平10−250091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、フィルタとノズルの間を完全に物流インクで満たすことは難しく、製造後のヘッド内を物流用インクで満した場合、ヘッド製造後から製品出荷までに行われる環境保存試験や、ヘッドの出荷からユーザに渡るまでの物流過程の環境変化等でフィルタとノズルの間の空気の膨張によりヘッド内圧が上昇すると、ノズルの吐出口あるいはインク導入口から物流用インクが漏れ出るおそれがある。また、落下、振動等によってヘッドに与える衝撃でも物流用インクが吐出口から漏れ出る恐れがある。これにより、吐出口から漏れ出しフェイス面に付着したインクが装着時等に垂れる等の危険性があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、物流時にヘッド内のインク貯留空間には出来るだけ物流用インクを収容しないで、ヘッド内、特にノズルを保湿伏態に保つことが可能なインクジェットヘッドの物流時の保管形態を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の態様は、ノズルの開口から記録液滴を吐出して記録を行なうインクジェットヘッドの、前記ノズルの開口が形成された面に対して着脱可能なキャップユニットであって、前記インクジェットヘッドの前記ノズルの開口が形成された面を保護する保護部材と、前記保護部材に固定され、前記ノズルの開口が形成された面に密着して前記ノズルの領域を覆う弾性キャップと、前記弾性キャップの中に配置された液体吸収部材とを備えたキャップユニットにおいて、キャップユニット着脱時には、キャップ装着時に比べ前記液体吸収部材が前記ノズルの開口が形成された面に対して一旦近づく構造であることを特徴とする。
【0014】
上記のキャップユニットが前記インクジェットヘッドに装着されている状態では前記液体吸収部材は、前記ノズルの開口が形成された面に対して非接触となるように配置されていることが好ましい。
【0015】
さらに、上記のキャップユニットにおいて、前記保護部材には、前記インクジェットヘッドに対して位置決めできる位置決め部と、前記インクジェットヘッドに対して一旦拡げて引っ掛けるような、クリップ状の係合部とが設けられていることが好ましい。
【0016】
また、上記のような物流時の保管形態のヘッドは、前記キャップユニットを位置決めするための位置決め部と、前記キャップユニットの一部が係合する係合部とが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、キャップユニットには、インクジェットヘッドに対して位置決めできる位置決め部と、インクジェットヘッドに対して一旦拡げて引っ掛けるような、クリップ状の係合部とが設けられているため、ヘッドに対する正確な脱着操作が容易である。
【0018】
さらに前記係合部の形状によりキャップ取り外し時にヘッドフェイス面の大きなインク滴をキャップ内吸水樹脂が吸い込む形態にすることにより、本体へのヘッド装着時等のインクタレを防止できる。
【0019】
また、本発明のキャップユニットによれば、前記キャップユニットの液体吸収部材を、前記ノズルの開口が形成された面に対して非接触となるように配置しているので、インクジェットヘッドのノズルに対してダメージを与えず、かつ、ノズルの保湿が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
まず、本発明のヘッド物流時の保管方法を適用する一例のインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置の例を述べる。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェット記録装置の概略の構成を示す斜視図である。
【0023】
図1に示すインクジェット記録装置は、インクジェットヘッド201の往復移動(主走査)と、一般記録紙、特殊紙、OHPフィルム等の記録用シートSの所定ピッチごとの搬送(副走査)とを繰り返しつつ、これらの動きと同期させながらインクジェットヘッド201から選択的にインクを吐出させ、記録用シートSに付着させることで、文字や記号、画像等を形成するシリアル型のインクジェットプリンタである。
【0024】
図1において、インクジェットヘッド201は、2本のガイドレールに摺動自在に支持され不図示のモータ等の駆動手段によりガイドレールに沿って往復移動されるキャリッジ202に着脱可能に搭載されている。記録用シートSは、搬送ローラ203により、インクジェットヘッド201のインク吐出面に対面し、かつ、インク吐出面との距離を一定に維持するように、キャリッジ202の移動方向と交差する方向(例えば、直交する方向である矢印A方向)に搬送される。
【0025】
インクジェットヘッド201は、それぞれ異なる色のインクを吐出するための複数のノズル列を有する。インクジェットヘッド201から吐出されるインクの色に対応して、複数の独立したメインタンク204が、インク供給ユニット205に着脱可能に装着される。インク供給ユニット205とインクジェットヘッド201とは、それぞれインクの色に対応した複数のインク供給チューブ206によって接続され、メインタンク204をインク供給ユニット205に装着することで、メインタンク204内に収納された各色のインクを、インクジェットヘッド201の各ノズル列に独立して供給することが可能となる。
【0026】
インクジェットヘッド201の往復移動範囲内で、かつ、記録用シートSの通過範囲外の領域である非記録領域には、回復ユニット207が、インクジェットヘッド201のインク吐出面と対面するように配置されている。
【0027】
次に、このインクジェット記録装置のインク供給系の詳細な構成について図2を参照して説明する。図2は、図1に示すインクジェット記録装置のインク供給経路を説明するための図であり、説明を簡単にするため、1色分の経路についてのみ示している。
【0028】
最初に、インクジェットヘッド201について説明する。
【0029】
インクジェットヘッド201へは、インク供給チューブ206の先端に設けられた液体コネクタが気密接続されるコネクタ挿入口201aからインクが供給される。コネクタ挿入口201aはインクジェットヘッド201の上部に形成されたサブタンク部201bと連通している。サブタンク部201bの重力方向下側には、並列に配列された複数のノズル201gを有するノズル部にインクを直接供給する液室201fが形成されている。サブタンク部201bと液室201fとはフィルタ201cによって区画されているが、サブタンク部201bと液室201fとの境界には開口部201dが形成された仕切部201eを有し、フィルタ201cはこの仕切部201e上に設置されている。
【0030】
上述の構成により、コネクタ挿入口201aからインクジェットヘッド201に供給されたインクは、サブタンク部201b、フィルタ201c、液室201fを経てノズル201gに供給される。コネクタ挿入口201aからノズル201gまでの間は大気に対して気密な状態に保たれている。
【0031】
サブタンク部201bの上面には開口部が形成され、この開口部はドーム状の弾性部材201hで覆われている。この弾性部材201hで囲まれた空間(圧力調整室201i)は、サブタンク部201b内の圧力に応じて容積が変化し、後述するようにサブタンク部201b内の圧力を調整する機能を有する。
【0032】
ノズル201gは、断面幅が20μm程度の筒状の構造を持ち、ノズル201g内のインクに吐出エネルギーを与えることでインクをノズル201gから吐出させ、インクの吐出後、ノズル201gの毛管力によりノズル201g内にインクが満たされる。ノズル201g内のインクに吐出エネルギーを与えるために、インクジェットヘッド201は、ノズル201gごとにエネルギー発生手段を有する。本実施形態では、エネルギー発生手段として、ノズル201g内のインクを加熱する発熱抵抗素子を用いており、インクジェットヘッド201の駆動を制御するヘッド制御部(不図示)からの指令により発熱抵抗素子を選択的に駆動し、所望のノズル201g内のインクを膜沸騰させ、これにより生じる気泡の圧力を利用してノズル201gからインクを吐出させている。
【0033】
ノズル201gは、インクを吐出する先端を下向きにして配列されているが、その先端を閉鎖する弁機構は設けられておらず、インクはメニスカスを形成した状態でノズル201gを満たしている。そのため、インクジェットヘッド201の内部、特にノズル201g内は負圧の状態に保たれている。ただし、負圧が小さすぎると、ノズル201gの先端に異物やインクが付着した場合、インクのメニスカスが崩れてインクがノズル201gから漏れ出てしまうことがある。またこの逆に負圧が大きすぎると、吐出時にインクに与えられるエネルギーよりもノズル201g内にインクを引き戻す力が強くなってしまい、吐出不良となってしまう。よって、ノズル201g内における負圧は、大気圧よりも若干低い一定の範囲に保たれる。この負圧の範囲は、ノズル201gの数、断面積、発熱抵抗素子の性能等により異なる。
【0034】
本実施形態では、インク供給ユニット205とインクジェットヘッド201とをインク供給チューブ206で接続しており、インク供給ユニット205に対するインクジェットヘッド201の位置を比較的に自由に設定できるので、インクジェットヘッド201内を負圧とするために、インクジェットヘッド201をインク供給ユニット205よりも高い位置に配置している。
【0035】
フィルタ201cは、ノズル201gを詰まらせるような異物がサブタンク部201bから液室201fへ流出するのを防止するための、ノズル201gの断面幅よりも小さい10μm以下の微細孔を有する金属メッシュで構成される。フィルタ201cは、フィルタ201cの一方の面のみにインクが接触すると各微細孔に毛管力によるインクのメニスカスが形成され、インクは容易に透過するが空気の流れは困難な性質を持っている。微細孔のサイズが小さいほどメニスカスの強度は強くなり、より空気を通しにくくなる。
【0036】
本実施形態で用いたようなフィルタ201cでは、空気を透過させるのに必要な圧力は0.1atm(10.1325kPa)程度(実験値)である。そのため、インクジェットヘッド1内でのインクの移動方向に関してフィルタ201cの下流に位置する液室201fに空気が存在すると、空気は空気自身の浮力程度ではフィルタ201cを通過することができないので、液室201f内の空気は液室201f内に留まる。本実施形態においてはこの現象を利用しており、液室201fをインクで満たさず、液室201f内のインクとフィルタ201cとの間に空気の層が存在しこの空気層によって液室201f内のインクとフィルタ201cとが隔てられるように、所定の量のインクを液室201f内に蓄えている。
【0037】
液室201f内に蓄えられるインクの量は、最低限、ノズル201gをインクで満たすのに必要な量である。ノズル201g内に液室201fからの空気が侵入すると、インク吐出後のノズル201gにインクが補充されず吐出不良をおこすため、ノズル201g内は常にインクで満たされている必要がある。
【0038】
フィルタ201cの上面にはサブタンク部201b内のインクが接触しているが、このインクと接触している面積がフィルタ201cの有効面積となる。フィルタ201cによる圧力損失はフィルタ201cの有効面積に依存している。本実施形態では、フィルタ201cをインクジェットヘッド201の使用状態において水平となるように配置し、フィルタ201cの上面全体にインクを接触させることによりフィルタの有効面積を最大とし、圧力損失を低くしている。
【0039】
圧力調整室201iは、内部の負圧が高まるにつれてその容積が縮小する部屋であり、圧力調整室201iが本実施形態のように弾性部材201hで構成される場合は、弾性部材201hとしてはゴム材等が好ましく用いられる。また、弾性部材201hの他に、プラスチックシートとばねとの組み合わせによって構成してもよい。このような圧力調整室201iを設けることにより、インクの吐出の安定化を図るとともに、メインタンク204からインクジェットヘッド201までのインクの供給経路での圧力損失の影響が抑えられる。そのため、キャリッジ202に従動させるインク供給チューブ206も直径の細いものを使用することができ、キャリッジ202の移動の負荷低減にも貢献する。
【0040】
次に、インク供給ユニット205およびメインタンク204について説明する。
【0041】
メインタンク204は、供給ユニット205に対して着脱可能な構成であり、その底部に、ゴム栓204bで密封されたインク供給口と、ゴム栓204cで密封された大気導入口とを有する。メインタンク204は、単体では気密な容器であり、インク209はメインタンク204内にそのまま収容される。
【0042】
一方、インク供給ユニット205は、メインタンク204からインク209を取り出すためのインク供給針205aと、メインタンク204内へ大気を導入させるための大気導入針205bとを有する。インク供給針205aおよび大気導入針205bはともに中空の針であり、メインタンク204のインク供給口および大気導入口の位置に対応させて針先を上方に向けて配置されており、メインタンク204がインク供給ユニット205に装着されることで、インク供給針205aおよび大気導入針205bがそれぞれゴム栓204b,204cを貫通し、メインタンク204の内部に侵入する構成となっている。
【0043】
インク供給針205aは、液路205cを経て、インク供給チューブ206と接続される。大気導入針205bは、液路205e、バッファ室205f、大気連通口205gを経て大気と連通する。インク供給針205aからインク供給チューブ206までのインク供給経路のうち最も高さの低い位置にある液路205cと、大気導入針205bから大気連通口205gまでの経路のうち最も高さの低い位置にある液路205eとは、ともに同じ高さである。
【0044】
以上の構成により、インクジェットヘッド201内のインクが消費されると、その負圧により、インクが随時メインタンク204からインク供給ユニット205およびインク供給チューブ206を介してインクジェットヘッド201へ供給される。その際、メインタンク204から供給されたインクと同量の空気が、大気連通口205gからバッファ室205f、大気導入針205bを経て、メインタンク204内に導入される。
【0045】
また、上述したインク供給方式に用いるインクジェットヘッド201の外観は例えば図3および図4に示すものとなる。図3はインクジェットヘッド201を斜め下側から見た外観図、図4はインクジェットヘッド201を斜め上側から見た外観図を示している。
【0046】
図3に示す吐出口210はノズル201gの開口であり、複数個の吐出口で構成した列がキャリッジ移動方向Bに対して平行に複数配設されている。
【0047】
図5はインクジェットヘッド201の物流時の保管形態を示すヘッド縦断面図である。
【0048】
図5において、インクジェットヘッド201のサブタンク部201bと繋がっているコネクタ挿入口201a内部には、ジョイントゴム211が圧入によって挿入されている。インクジョイントゴム211は、インク供給チューブ206の先端に設けられた液体コネクタのジョイント針(針伏の管)が挿入されるスリットを有する。つまり、インクジェットヘッド内へのインク導入部が弾性部材のスリットとなっている。そして、ジョイント針用挿入スリットは、ジョイント針が挿入される時以外はコネクタ挿入口201aを密閉している。
【0049】
物流時は、インクジェットヘッド201gのノズル201gの吐出口が開口するフェイス面(図3に示した吐出口210の形成面)に、キャップユニット212が取り付けられている。
【0050】
(第1の実施の形態)
図6は本発明の上記のフェイス面のキャップユニット212を説明するための図であり、(A)はフェイス面と接合される側を見た平面図、(B)は(A)のA A線断面図、(C)は(A)中の矢印Cの方向の側面図を示している。
【0051】
キャップユニット212は、図6に示すように、ユニット外殻となってフェイス面を保護する保護部材である保護キャップ212aと、保護キャップ212aの凹部に固定されたキャップゴム(弾性キャップ)212bと、キャップゴム212bの凹部に固定された吸水樹脂(液体吸収部材)212cからなる。キャップゴム212bには、インクジェットヘッド201のフェイス面の、複数の吐出口列からなる領域の外周部に密着させるためにリブが環状に形成されている。ここで吸収樹脂212cの最上面はキャップゴム212bの最上面より低い位置にある。その結果、キャップ時のキャップゴム212bは、図5および図7に示すようにノズル201gの吐出口には非接触のまま密閉空間を形成する。このような構成をとれば、ノズル201gに対して外傷を与えず、ノズル201gの保湿が可能となる。
【0052】
保護キャップ212aには、インクジェットヘッド201側に設けられた位置決め用のボス(図3,図4中の符号213)に対する位置決めガイド214が設けられ、かつ、インクジェットヘッド201側に設けられた引っ掛け部(図3,4中の符号215,216)に対して、一旦拡げてからはめ込むことが可能な爪部217,218を有するクリップ部219が設けられている。
【0053】
このような構成のキャップユニット212は、インクジェットヘッド201に設けられた位置決め部としてのボス213により位置決めされ、さらにインクジェットヘッド201に設けられた引っ掛け部215,216にクリップ部219の爪部217,218を引っ掛けて係合することでインクジェットヘッド201に対して説着可能となる(図7参照)。本実施例の特徴は爪部217,218の先端形状であり、インクタレ防止対策形状となっている。
【0054】
まず初めにキャップユニット212を装着した物流時の保管形態について説明する。図5および図7に示したようにキャップユニット212を装着した物流時の保管形態においては、ヘッド201内には、少なくともノズル201g内に物流用インクが存在し、フィルタ201cを挟んだ上下の空間には物流用インクはほとんど存在しない。この空間は、キャップユニット212とジョイントゴム211によって密閉空間となる。その為ノズル内の物流用インクによってヘッド内は湿気の雰囲気となっている。この時ノズル内の物流インクの量は、“ヘッド+キャップ”の容積に対する飽和水蒸気量よりもやや多い量であることが望ましい。また、吸水樹脂212cはノズル内の物流インク量を十分吸水できる能力を持っている。
【0055】
本実施例の構造では、環境保存試験等によるヘッド内圧上昇が発生した場合、弾性部材201hの変形またはキャップ212が一瞬外気と連連することにより圧力が開放される。また内圧上昇でノズル内の物流インクがフェイス面よりたれた場合でも吸水樹脂212cに吸収されるので、ヘッドの外側にインク漏れが発生することはない。つまり外側にインク漏れは発生していないので、上記密閉空間内のインク量は変わらない為、ノズル内はインクまたは飽和水蒸気で満たされた状態を保っている。
【0056】
このように、フィルタとノズルの間の空気がある構造でも物流時ヘッド外ヘのインク漏れのない信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することができる。
【0057】
特に本実施例のような、フィルタ下に空気が残りやすい構造のヘッドにおいては、従来のようなフィルタとノズルの間を物流インクで満たすことが難しい為、本実施例の形態が有効である。
【0058】
しかしながらフェイス面はキャップされているので、ヘッドの外ヘインクがもれることはないが物流時の環境変化や、落下等の衝撃によりノズルから物流インクが染み出す恐れがある。
【0059】
そこで、フェイス面からのインクタレを防止する為の実施例を図8に示す。
【0060】
図8はインクジェットヘッド201との勘合を模式的に示した図である。図8(A)は物流(キャップ勘合)状態であり、フェイス面にインク滴209aが付着した状態を示している。
【0061】
通常ヘッドフェイス面とキャップの吸水樹脂212cは一定の隙間を有する。それはヘッド201とキャップ212aの位置関係はそれぞれの勘合部との公差があるためである。キャップの設計にあたってはこの公差を考慮した上で、キャップのシール性を確保するキャップゴム212bの先端リブの潰し量やフェイス面と吸水樹脂212cとの隙間を決定する。フェイス面と吸水樹脂は物流時に触れないようにするのが通常である。それはフェイス面は通常撥水されており、吸水樹脂が物流時に触れていると常に物流インクに浸された状態となり撥水性の劣化を招く恐れがあるためである。さらに吸水樹脂212cからの溶出物等の影響やゴミ等の付着の恐れに加えフェイス面への外傷を与える危険性もある。また吸水樹脂212cを固定する為の突起(図6の212d)をキャップゴム212bに設けているが、この突起212dはキャップゴム先端リブの潰れに影響してシール性を阻害することがないように、キャップ先端リブより一定の距離を置く必要がある。
【0062】
上記理由により、ヘッドフェイス面とキャップの吸水樹脂212cは一定の隙間を有することになる。また、上述した物流時の環境変化や、落下等の衝撃によりノズルから物流インクが染み出す恐れがある。
【0063】
図8(A)は物流インクが染みだしフェイス面にインク滴209aが付着した場合を示す図であり、インク滴209aは最大フェイス面と吸水樹脂212cの隙間に相当する大きさまでなる可能性がある。
【0064】
この状態でキャップを取り外されると、フェイス面にインク滴209aが残り、本体装着等のヘッド取り扱い時にインク滴209aが合体しさらに大きくなってフェイス面から垂れる恐れがある。
【0065】
しかしながら本実施例では、キャップ取り外し時にヘッドフェイス面とキャップの吸水樹脂212cが図8(B)に示すようにキャップ時よりも近接した状態となるので、フェイス面についた大きなインク滴209aが吸水樹脂212cに吸い込まれる為、フェイス面に大きなインク滴がなくなる。
【0066】
これによりキャップを取り外し後に大きなインク滴がないので、本体装着等のヘッド取り扱い時にインク滴がフェイス面から垂れる事はない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェット記録装置の概略の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置のインク供給経路を説明するための図である。
【図3】図2に示したインクジェットヘッドを斜め下側から見た外観図である。
【図4】図2に示したインクジェットヘッドを斜め上側から見た外観図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態としてインクジェットヘッドの保管形態を示すヘッド縦断面図である。
【図6】図5のキャップユニットを説明するための図であり、(A)はフェイス面と接合される側を見た平面図、(B)は(A)のA A線断面図、(C)は(A)中矢印Cの方向の側面図を示している。
【図7】図6のキャップユニットを装着したインクジェットヘッドの側面から見た部分断面図である。
【図8】本発明のキャップの動作を示すヘッド縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
201 インクジェットヘッド
201a コネクタ挿入口
201b サブタンク部
201c フィルタ
201d 開口部
201e 仕切部
201f 液室
201g ノズル
201h 弾性部材
201i 圧力調整室
202 キャリッジ
203 搬送ローラ
204 メインタンク
204b,204c ゴム栓
205 インク供給ユニット
205a インク供給針
205b 大気導入針
205f バッファ室
205g 大気連通口
206 インク供給チューブ
207 回復ユニット
209 インク
209a インク滴
210 ノズルの吐出口
211 ジョイントゴム
212 キャップユニット
212a 保護キャップ
212b キャップゴム
212c 吸水樹脂
213 保護キャップ位置決め用ボス
214 位置決めガイド
215,216 引っ掛け部
217,218 爪部
219 クリップ部
A シート搬送方向
B キャリッジ移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの開口から記録液滴を吐出して記録を行なうインクジェットヘッドの、前記ノズルの開口が形成された面に対して着脱可能なキャップユニットであって、前記インクジェットヘッドの前記ノズルの開口が形成された面を保護する保護部材と、前記保護部材に固定され、前記ノズルの開口が形成された面に密着して前記ノズルの領域を覆う弾性キャップと、前記弾性キャップの中に配置された液体吸収部材とを備えたキャップユニットにおいて、該キャップユニット着脱時には、キャップ装着時に比べ前記液体吸収部材が前記ノズルの開口が形成された面に対して一旦近づく構造であることを特徴とするキャップユニット。
【請求項2】
前記キャップユニットが前記インクジェットヘッドに装着されている状態では前記液体吸収部材は、前記ノズルの開口が形成された面に対して非接触となるように配置されている、請求項1に記載のキャップユニット。
【請求項3】
前記保護部材には、前記インクジェットヘッドに対して位置決めできる位置決め部と、前記インクジェットヘッドに対して一旦拡げて引っ掛けるような、クリップ状の係合部とが設けられている、請求項1または2に記載のキャップユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−283548(P2007−283548A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110942(P2006−110942)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】