説明

インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法

【課題】クロストークを防止することができるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法の提供。
【解決手段】外部から注入されたインクが保存されるマニホールド122と、上記マニホールド122からインクを伝達を受け、ノズルを通じて外部に吐出させるためのインクチャンバ112と、上記マニホールド122と上記インクチャンバ112を相互連結するように形成し、複数の連結通路を提供するレストリクタ150と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法に関するもので、より詳細には印刷品質を向上させることができるインクジェットヘッド及びこのようなインクジェットヘッドを製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェットヘッドは、電気信号を物理的な力に変換し、小さいノズルを通じてインクが液滴の形態で吐出されるようにする構造体である。
【0003】
最近、圧電方式のインクジェットヘッドは、産業用インクジェットプリンターにおいても使用されている。例えば、印刷回路基板(PCB)上に金、銀等の金属を溶かして作ったインクを噴射して回路パターンを直接形成したり、産業グラフィックや液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)の製造、太陽電池等に使用される。
【0004】
一般的に、インクジェットプリンターのインクジェットヘッド内には、カートリッジからインクを流入及び流出する流入口と流出口、流入されるインクを保存するマニホールド、そして上記マニホールド内のインクをノズルに移動させるためにアクチュエータの駆動力を伝達するチャンバ等が形成される。
【0005】
しかし、従来のインクジェットヘッドは、上記チャンバに隣接するように装着されるアクチュエータの振動時にチャンバ内部の液体が駆動波動を発生させ、このような駆動波動がレストリクタによりマニホールドに向かう圧力波となってマニホールドに伝達されるようになる。
【0006】
従って、従来のインクジェットヘッドは、このように伝達された圧力波により隣接したノズルに悪影響を及ぼすクロストーク(crosstalk)現象が発生するため、不安定なメニスカス(meniscus)挙動を見せ、不安定な液滴噴射が進行し、チャンバの固有周波数にノイズとして作用し印刷品質が悪くなるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述された従来技術の問題を解決するためのもので、その目的は、アクチュエータの振動時に発生する駆動波動により他のノズルに悪影響を与えるクロストーク(crosstalk)を防止することができるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるインクジェットヘッドは、外部から注入されたインクが保存されるマニホールドと、上記マニホールドからインクの伝達を受け、ノズルを通じて外部に吐出させるためのインクチャンバと、上記マニホールドと上記インクチャンバを相互連結するように形成され、複数の連結通路を提供するレストリクタと、を含むことができる。
【0009】
また、本発明によるインクジェットヘッドの上記連結通路は、円形で形成されることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明によるインクジェットヘッドの上記連結通路は、対称的に配置されるように形成されることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明によるインクジェットヘッドの上記インクチャンバと上記マニホールドが相互対角線方向に形成され、上記レストリクタは上記インクチャンバから対角線方向に向かうように形成されることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明によるインクジェットヘッドの上記レストリクタは、上記連結通路を通じたインク吐出が、上記ノズルを通じたインク吐出の2倍となるように形成されることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明によるインクジェットヘッドの上記連結通路の直径は、50μm以内で形成されることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明によるインクジェットヘッドの製造方法は、インクチャンバが形成された流路プレートを提供する段階と、外部から注入されたインクが保存されるマニホールド及び、上記インクチャンバと上記マニホールドを連結するための多数の連結通路をノズルプレートに形成させる段階と、上記流路プレートと上記ノズルプレートを相互接着させて多数の連結通路を含むレストリクタを形成させる段階と、を含むことができる。
【0015】
また、本発明によるインクジェットヘッドの製造方法の上記多数の連結通路を形成させる段階は、エッチング工程を通じて共に形成させることを特徴とすることができる。
【0016】
また、本発明によるインクジェットヘッドの製造方法の上記ノズルプレートは、上記マニホールド及び上記レストリクタが形成される中間プレート及び、上記インクチャンバと連結されるようにノズルが形成される下部プレートを接着させて形成させることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法は、マニホールドとインクチャンバを相互連結するように形成し、複数の連結通路を提供するレストリクタを含むため、アクチュエータの振動時にインクチャンバ内部において発生する圧力波を相殺し、クロストーク現象を防止することができる効果がある。
【0018】
また、本発明によるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法は、連結通路の直径が小さく形成され、マニホールドからインクチャンバに流入し得る埃をフィルタリングする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例によるインクジェットヘッドを説明するための概略的な斜視図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドを説明するための断面図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明の多様な実施例によるインクジェットヘッドのレストリクタを説明するための概略的な部分透視図である。
【図4】本発明の第1実施例によるインクジェットヘッドの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の第2実施例によるインクジェットヘッドを説明するための概略的な断面図である。
【図6】本発明の第3実施例によるインクジェットヘッドを説明するための概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法に関して、図1から図6を参照して本発明の具体的な実施例を詳細に説明する。
【0021】
但し、本発明の思想は提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は同一の思想の範囲内において他の構成要素を追加、変更、削除等を通し、退歩的な他の発明や本発明の思想の範囲内に含まれる他の実施例を容易に提案することができるが、これも本願発明の思想の範囲内に含まれる。
【0022】
図1は本発明の第1実施例によるインクジェットヘッドを説明するための概略的な斜視図であり、図2は図1のインクジェットヘッドを説明するための断面図である。
【0023】
図1から図2を参照すると、インクジェットヘッドは流路プレート110、中間プレート120、下部プレート130、圧電アクチュエータ140及びレストリクタ150を含む。
【0024】
流路プレート110は、複数のインクチャンバ112が規則的に形成され、インクが流入されるためのインク導入口116が備えられる。この時、インク 導入口116は、マニホールド122と直接連結されるように提供され、マニホールド122はレストリクタ150を通じてインクチャンバ112にインクを供給する役割をする(矢印方向に)。
【0025】
この時、マニホールド122は、1つの大きな空間で形成され複数のインクチャンバ112に夫々連結されることもできるが、これに限定されず、各インクチャンバ112に対応されるように複数形成されることもできる。
【0026】
インク導入口116も同様に、1つのマニホールド122に対応して1つのみ形成されることができるが、複数のマニホールド122が形成される場合は各マニホールド122に対応するように複数形成されることも可能である。
【0027】
そして、インクチャンバ112は圧電アクチュエータ140が装着される位置の下部に備えられる。この時、流路プレート110のうちインクチャンバ112の天井を成す部分は振動板114の役割をする。
【0028】
従って、インクを吐出するために圧電アクチュエータ140に駆動信号を印加すると、圧電アクチュエータ140と共にその下の振動板114が変形してインクチャンバ112の体積が減少する。
【0029】
これによるインクチャンバ112内の圧力の増加により、インクチャンバ112内のインクは、ダンパ126とノズル132を通じて外部に吐出される。
【0030】
そして、圧電アクチュエータ140は、上面及び下面に電気的に連結される電極が形成されることができ、圧電物質であるPZT(Plumbum Zirconate Titanate) セラミック材料から成ることができる。
【0031】
中間プレート120は、長さ方向に長く形成されるマニホールド122及びノズル132とインクチャンバ112を連結するダンパ126を含むことができる。
【0032】
マニホールド122は、インク導入口116からインクの供給を受け、インクチャンバ112にインクを供給するが、マニホールド122及びインクチャンバ112はレストリクタ150により相互連結される。
【0033】
そして、ダンパ126は、インクチャンバ112から圧電アクチュエータ140により吐出されるインクの伝達を受け、ノズル132を通じて外部に吐出させる。
【0034】
また、ダンパ126は、多段状で形成されることができ、このような構造によりインクチャンバ112から受け入れるインクの量とノズル132に流れるインクの量を調節することができるようになる。
【0035】
この時、上記ダンパ126は、選択事項であって削除することもでき、このような場合は、流路プレート110と下部プレート130のみでもインクジェットヘッドを構成することができる。
【0036】
下部プレート130は、各インクチャンバ112と対応されるように形成され、ダンパ126を通過するインクが外部に吐出されるようにノズル132を含む。そして、下部プレート130は中間プレート120の下部に接着される。
【0037】
ノズル132は上記インクジェットヘッド内に形成された流路を通じて移動するインクを液滴で噴射させる。
【0038】
この時、流路プレート110、中間プレート120及び下部プレート130は、半導体直接回路に広く使用されるシリコン基板が使用されることができる。そして、中間プレート120及び下部プレート130を接着し、ノズルプレートと称することもできる。
【0039】
レストリクタ150はインクチャンバ112及びマニホールド122を連結し、多数の連結通路152を含む。この時、レストリクタ150は、インクチャンバ112の下部に延長されるように形成されることができる。しかし、レストリクタの形成位置はこれに限定されない。
【0040】
ここで、レストリクタ150はマニホールド122に保存されたインクがインクチャンバ112に移動することができる通路の役割をするが、液滴を 吐出するための適合した設計としては、上記連結通路152を通じたインク吐出がノズル132を通じたインク吐出の2倍となるように形成されることが好ましい。具体的に、連結通路152の直径は50um以内で設計されることができる。
【0041】
従って、本実施例はこのような直径で形成された連結通路152を含むレストリクタ150により液滴の吐出性能は維持したまま高周波特性が向上する効果がある。
【0042】
図3(a)〜図3(e)は本発明の多様な実施例によるインクジェットヘッドのレストリクタを説明するための概略的な部分透視図である。
【0043】
図3(a)から図3(e)を参照すると、レストリクタ150は多数の連結通路152を含むが、各連結通路152は図3(a)に図示されたように相互接するように位置する形状で形成されることができる。
【0044】
また、図3(b)に図示されたように、多数の連結通路152が相互対称的に位置するように形成されることができ、図3(c)に図示されたように、中間プレート120において一方に偏るように形成されることもできる。
【0045】
そして、図3(d)及び図3(e)に図示されたように、連結通路152は2つ形成されることができ、その形成位置は圧力波の相殺を考慮して設計者の意図により多様に設定されることができる。
【0046】
ここで、図3(a)から図3(e)で説明した中間プレート120は、インクチャンバ112の空間に該当する底面のみを図示したものである。
【0047】
そして、レストリクタ150の形状は図3に図示されたように、円形であることができるが、四角形や多角形等のように圧力波の相殺に適合した多様な形であってもよい。
【0048】
若し、レストリクタ150が大きい直径を有する1つの通路で形成されると、インクチャンバ112に隣接するように装着されるアクチュエータ140の振動時にインクチャンバ112内部の液体が駆動波動を発生させ、このような駆動波動がレストリクタ150によりマニホールドに向かう圧力波となり、マニホールドに伝達されることができる。また、このような力により隣接したノズル132に影響を及ぼすクロストーク現象が発生することがある。
【0049】
しかし、本実施例によるインクジェットヘッドは、マニホールド122とインクチャンバ112を相互連結するように形成され、複数の連結通路152を提供するレストリクタ150を含むため、アクチュエータの振動時にインクチャンバ112内部で発生する圧力波を相殺させてクロストーク現象を防止することができる。
【0050】
また、本実施例によるインクジェットヘッドは、複数の連結通路152の直径が50um以下と小さく形成されるため、マニホールド122からインクチャンバ112に流入し得る埃をフィルタリングする効果がある。そのため、本実施例では上記の問題点を解決し、高周波吐出特性が向上し、印刷品質の向上を図ることができる。
【0051】
図4は本発明の第1実施例によるインクジェットヘッドの製造方法を説明するための断面図である。
【0052】
図4を参照すると、インクジェットヘッドの製造方法は、流路プレート110、中間プレート120及び下部プレート130を提供する段階を含む。
【0053】
この時、中間プレート120及び下部プレート130は接着され、1つのノズルプレートと称されることができる。
【0054】
そして、インクチャンバ112、マニホールド122、ダンパ126及びノズル132等が流路プレート110、中間プレート120及び下部プレート130に夫々形成されることができる。
【0055】
この時、上記多数の連結通路152を形成させる段階は、エッチング工程を通じて共に形成させることを特徴とすることができる。そして、このような構成が形成される際に、複数の連結通路152を有するレストリクタ150を共に 形成させることができる。従って、構成を別途で形成させるという煩わしさが無く、容易にレストリクタ150を生産することができ、その作業時間も減らすことができる。
【0056】
この時、流路プレート110、中間プレート120及び下部プレート130は相互接着される過程を通じて1つの胴体で形成されることができ、その構造は流路プレート110の下部に中間プレート120が接着され、中間プレート120の下部には下部プレート130が接着される。
【0057】
従って、本実施例によるインクジェットヘッドの製造方法は、マニホールド122とインクチャンバ112を相互連結するように形成し、複数の連結通路152を提供するレストリクタ150をより容易に製造することができる。
【0058】
図5は本発明の第2実施例によるインクジェットヘッドを説明するための概略的な断面図である。
【0059】
図5を参照すると、インクジェットヘッドは流路プレート110、中間プレート120、下部プレート130、圧電アクチュエータ140及びレストリクタ250を含む。
【0060】
ここで、本実施例で流路プレート110、中間プレート120、下部プレート130及び圧電アクチュエータ140は実質的に第1実施例と同一であるため、その具体的な説明は省略する。
【0061】
レストリクタ250は、インクチャンバ112及びマニホールド122を連結し、多数の連結通路252を含む。この時、マニホールド122はインクチャンバ112の側面に形成されることができる。
【0062】
従って、図5に図示されたように、レストリクタ250はマニホールド122及びインクチャンバ112を連結するためにインクジェットヘッドにおいてインクチャンバ112から側面方向に形成されることができる。
【0063】
図6は、本発明の第3実施例によるインクジェットヘッドを説明するための概略的な断面図である。
【0064】
図6を参照すると、インクジェットヘッドは流路プレート110、中間プレート120、下部プレート130、圧電アクチュエータ140及びレストリクタ350を含む。
【0065】
ここで、本実施例で流路プレート110、中間プレート120、下部プレート130及び圧電アクチュエータ140は実質的に第1実施例と同一であるため、その具体的な説明は省略する。
【0066】
レストリクタ350は、インクチャンバ112及びマニホールド122を連結し、多数の連結通路352を含む。この時、マニホールド122はインクチャンバ112の対角線方向に形成される。
【0067】
従って、図6に図示されたように、レストリクタ350はマニホールド122及びインクチャンバ112を連結するためにインクジェットヘッドにおいてインクチャンバ112から側面方向に形成されることができる。
【0068】
そのため、本実施例によるインクジェットヘッドは、マニホールド122とインクチャンバ112を相互連結するように形成され、複数の連結通路252、352を提供するレストリクタ250、350を含むため、アクチュエータの振動時にインクチャンバ112内部で発生される圧力波を相殺してクロストーク現象を引き起こすことを防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
110 流路プレート
120 中間プレート
130 下部プレート
140 圧電アクチュエータ
150、250、350 レストリクタ
152、252、352 連結通路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から注入されたインクが保存されるマニホールドと、
前記マニホールドから前記インクの伝達を受け、ノズルを通じて外部に吐出させるためのインクチャンバと、
前記マニホールドと前記インクチャンバを相互連結するように形成し、複数の連結通路を提供するレストリクタと、
を含むインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記連結通路は、円形で形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記連結通路は、対称的に配置されるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記インクチャンバと前記マニホールドが相互対角線方向に形成され、前記レストリクタは前記インクチャンバから対角線方向に向かうように形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記レストリクタは、前記連結通路を通じたインク吐出が、前記ノズルを通じたインク吐出の2倍となるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記連結通路の直径は、50μm以内で形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
インクチャンバが形成された流路プレートを提供する段階と、
外部から注入されたインクが保存されるマニホールド及び、前記インクチャンバと前記マニホールドを連結するための多数の連結通路をノズルプレートに形成させる段階と、
前記流路プレートと前記ノズルプレートを相互接着させて多数の連結通路を含むレストリクタを形成させる段階と、
を含むインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記多数の連結通路を形成させる段階は、エッチング工程を通じて各構成を共に形成させることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記ノズルプレートは、
前記マニホールド及び前記レストリクタが形成される中間プレート及び、前記インクチャンバと連結されるようにノズルが形成される下部プレートを接着させて形成されることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31605(P2011−31605A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286338(P2009−286338)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】