説明

インクジェットヘッド用洗浄液

【課題】 優れた洗浄効果を発揮し、長期間に渡って高濃度画像を得ることを可能にするインクジェットヘッド用洗浄液を提供する。
【解決手段】 本発明のインクジェットヘッド用洗浄液は、インクジェットヘッド内を洗浄するために用いる洗浄液であって、下記式(1)
6mN/m<(寿命10msecにおける表面張力)
−(寿命1000msecにおける表面張力)<16mN/m (1)
を満足する表面張力を有し、ロスマイルス法を用いた起泡直後の泡高さが50mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下であり、適用するインクジェットヘッドのインク流路部材に対する接触角が25度以下となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置におけるインクジェットヘッド内を洗浄するために用いられるインクジェットヘッド用洗浄液に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドによりインクを吐出させてインク滴を形成し、これらの一部または全部を紙等の被記録材に付着させて記録を行うものである。このようなインクジェット記録装置においては、インクジェットヘッドのノズル部やインク流路内で目詰まりを起こさず、安定した吐出を行え、鮮明な色調で、かつ十分に高い濃度で記録できることが重要である。
【0003】
このようなインクジェット記録装置に使用するインクとしては、従来から、安全性に優れている点で水性インクが汎用されていた。しかし、水性インクは、主溶媒に水を用いているため、本質的に乾燥しやすく、長期保管時や高温低湿保管時には、ノズル部やインク流路内でインクが乾燥し、色材等の凝集物や乾固物が生じて目詰まりを起こしやすい、という欠点があった。このようにインクジェットヘッド内で目詰まりが生じると、インクの吐出が安定して行なえず、画像濃度が低下するという問題を招く。そのため、一般に、インクジェット記録装置には、例えば、ノズル部にキャップ部材を装備して乾燥を防止するなどの工夫が施されている。しかし、それでもなお、保管条件が厳しい場合には、インクの乾燥を完全に回避することは難しかった。
【0004】
インクジェットヘッド内でインクが乾燥してしまった場合、色材等の凝集物や乾固物がノズル部のみに付着しているのであれば、例えば、ゴムブレードによるワイプ等によって容易に除去することができる。しかし、通常は、インク流路内にまで凝集物や乾固物が付着することが多いため、洗浄液を使用してこれらを除去する必要がある。
【0005】
これまでに、洗浄材を用いてインクジェットヘッド内を洗浄する方法として、例えば、インクジェットヘッドのノズル部を水を主成分とする洗浄液に浸漬する方法(特許文献1参照)や、インクカートリッジとは別にヘッド洗浄用カートリッジを取付け、表面張力が40mN/m以下、粘度が1.1〜7.0m・Pasである洗浄液を用いて、必要に応じて流路全体を洗浄する方法(特許文献2参照)などが提案されている。
【0006】
ところで、インクジェットヘッドには、大きく分けてサーマル方式とピエゾ方式があり、さらに連続噴射型記録装置では吐出したインク液滴を電場で制御するような静電式などがある。詳しくは、サーマル方式では、インクをヒーターで瞬時に加熱してバブルを発生させ、このときの力を利用してインク液滴を吐出させる。ピエゾ方式では、圧電素子を振動させることによりインクに力を加えてインク液滴を吐出させる。ピエゾ方式でインクに力を加える手法としては、縦に振動する圧電素子でインクに力を加える方法と、たわみ振動するピエゾでインクに力を加える方法とがあり、これらにおいては圧電素子を積層することによりインクに加わる力を向上させることができる。このようなピエゾ方式のうち、高密度化、量産性を達成するためには、たわみ振動する圧電素子を使用したほうがよく、かつ積層ではないほうがよいと考えられる。以上のことから、インクジェット記録においては、特にピエゾ方式のインクジェットヘッドを使用する場合には、振動によって発生した圧力波のロスを最小限にし、ノズル部まで効率よく力を伝達する必要があり、インクジェットヘッド内に気泡を残すことなく、完全にインクで満たされた状態を作り出すことが重要であると言える。インクジェットヘッド内に気泡が残留していると、吐出力が十分にインクに伝わらず、不吐出、噴射曲がり等の問題を生じ、インクジェット記録に要求される性能が満足されなくなってしまうからである。
【特許文献1】特開平11−157087号公報
【特許文献2】特許第288511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された方法では、より長期間、より高温低湿である条件で保管して乾燥がさらに進んだ場合などには、洗浄効果が不足することとなり、一部に凝集物や乾固物が残存して目詰まりが生じ、その結果、インクの吐出が安定して行なえず、画像濃度が低下するという問題を招くことがあった。
【0008】
また、一般に、洗剤や洗浄液等の洗浄力は、その泡立ち易さに比例すると考えられている。つまり、泡の表面に存在する溶剤や界面活性剤が、汚れを落としたり、凝集物等の溶解や分散を行ったりするのであり、起泡性が高いほど優れた洗浄力を発揮する、というのが常識であった。したがって、これまでは、起泡性が高くなるよう設計された洗浄液が好ましく使用されていた。しかしながら、前述したように、インクジェットヘッド内にインクを導入する際には出来る限り気泡のない状態とすることが望ましいのであり、洗浄後に再びインクジェットヘッド内にインクを導入することを鑑みれば、優れた洗浄効果を得るために起泡性が高い洗浄液を用いることは不利であると言える。
【0009】
そこで、本発明の課題は、優れた洗浄効果を発揮し、長期間に渡って高濃度画像を得ることを可能にするインクジェットヘッド用洗浄液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、まず、特許文献1や特許文献2における従来の洗浄液の洗浄効果が充分ではなかったのは、洗浄液の濡れ性が不足していたからではないかと考えた。そして、これまで、一般に、濡れ性の目安としては、ウィルヘルミ法などによって測定された寿命1000msec以上での表面張力が着目されていたが、それに反し、表面寿命が短い時間での表面張力がインク流路内における濡れ性に大きく影響するのではないかと考え、寿命10msecにおける表面張力と寿命1000msecにおける表面張力との差が特定範囲である洗浄液であれば、優れた洗浄効果を発現させうるだけの充分な濡れ性を有することを見出した。また、洗浄液の起泡性を高くして洗浄力を向上させることと、洗浄後に再びインクを導入した際に気泡が残存しないようにすることの両方を満足させるために、起泡性が高く、かつ消泡速度が速い洗浄液を用いることを着想し、ロスマイルス法を用いた起泡直後および起泡5分後の泡高さがそれぞれ特定範囲になる洗浄液であれば、洗浄力の向上と気泡を残存させないこととを両立させることができることを見出した。さらに、適用するインクジェットヘッドのインク流路部材の素材に応じて、該インク流路部材に対する接触角が25度以下となる洗浄液を用いることも、インク流路内の濡れ性を高め、ひいては洗浄力を向上させるのに重要であることを見出した。そして、これら3つの要件を兼ね備えた洗浄液であれば、前記課題を一挙に解決することができることを見出し、本発明を完成したのである。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)インクジェットヘッド内のインクに起因する汚れを除去するために用いる洗浄液であって、下記式(1)
6mN/m<(寿命10msecにおける表面張力)
−(寿命1000msecにおける表面張力)<16mN/m (1)
を満足する表面張力を有し、ロスマイルス法を用いた起泡直後の泡高さが50mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下であり、適用するインクジェットヘッドのインク流路部材に対する接触角が25度以下となる、ことを特徴とするインクジェットヘッド用洗浄液。
(2)水、界面活性剤および水溶性有機溶剤を必須成分とし、前記水溶性有機溶剤は、炭素数6〜8のジオール、または有機性値(OV)が150以上の多価アルコールアルキルエーテルの少なくとも一方を含有する、前記(1)記載のインクジェットヘッド用洗浄液。
(3)前記界面活性剤は、アセチレンジオールに付加モル数4〜30でエチレンオキサイド(EO)が付加した付加物であり、該付加物の含有量は洗浄液全重量に対して0.1〜3.0重量%である、前記(2)記載のインクジェットヘッド用洗浄液。
(4)前記インク流路部材が、エポキシ樹脂、ステンレス鋼、ニッケル合金、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびシリコン樹脂からなる群より選ばれる1種以上からなる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェットヘッド用洗浄液。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた洗浄効果を発揮し、長期間に渡って高濃度画像を得ることができる、という効果がある。さらに、本発明のインクジェットヘッド用洗浄液は、起泡性が高いものの消泡速度が速いので、洗浄後に再びインクを導入するときに流路内などに気泡が残存してインクの吐出に影響を及ぼすといった問題も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のインクジェットヘッド用洗浄液(以下、単に「本発明の洗浄液」と称する)は、ノズル部やインク流路などインクジェットヘッド内を洗浄するために用いるものであり、これによって、色材等の凝集物や乾固物といったインクに起因する汚れを除去するのである。本発明の洗浄液は、このときの洗浄効果が極めて高いものであり、その結果、長期間に渡って高濃度画像を得ることを実現させるのである。
【0014】
本発明の洗浄液を用いてインクジェットヘッドを洗浄する際の洗浄の手法については、特に限定されるものではない。例えば、インクジェットヘッドに、洗浄液を充填したカートリッジを接続した状態で、インクジェットヘッドの吐出口側にキャップを被せてポンプで洗浄液を吸引するか、あるいは、ポンプを用いて洗浄液を勢いよく輸送するか、あるいは、カートリッジもしくはサブタンクをエアーで加圧するなどして洗浄液を押出し輸送する、などの方法を採用することができる。勿論、これら以外の洗浄方法(例えば、ゴムブレードによるワイプ等によって洗浄するなど)を上記洗浄方法と併用することも可能である。
【0015】
本発明の洗浄液は、下記式(1)
6mN/m<(寿命10msecにおける表面張力)
−(寿命1000msecにおける表面張力)<16mN/m (1)
を満足する表面張力を有することが重要である。好ましくは、下記式(2)
6mN/m<(寿命10msecにおける表面張力)
−(寿命1000msecにおける表面張力)<12mN/m (2)
を満足する表面張力を有するのがよい。(寿命10msecにおける表面張力)−(寿命1000msecにおける表面張力)の値が16mN/m以上であると、充分な濡れ性が得られず、充分に洗浄効果の向上を図ることができない。他方、本願のようにインクジェットヘッドを洗浄する目的で使用される洗浄液は、通常、水と水溶性有機溶剤とを含有してなるので、水溶性有機溶剤の水への溶解性から、(寿命10msecにおける表面張力)−(寿命1000msecにおける表面張力)の値が6mN/m以下である洗浄液を得ることは実質的に困難である。
【0016】
本発明において、表面寿命に対する表面張力、すなわち寿命10msecにおける表面張力および寿命1000msecにおける表面張力は、バブルプレッシャー法に代表されるようなキャピラリーを使用した動的表面張力の測定法にて測定されるものである。具体的には、キャピラリーから液中に気泡を発生させ、その気泡にかかる圧力から表面張力を測定し、気泡周波数を変化させることで、動的表面張力を測定することができる。
【0017】
本発明の洗浄液は、ロスマイルス法を用いた起泡直後の泡高さが50mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下であることが重要である。好ましくは、スマイルス法を用いた起泡直後の泡高さが100mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下であるのがよい。
ロスマイルス法を用いた起泡直後および起泡5分後の泡高さが前記範囲となるようにするには、後述するように、特定の界面活性剤を特定量含有させるようにすればよい。
本発明において、ロスマイルス法を用いた起泡直後および起泡5分後の泡高さは、具体的には、JIS K3362に従って測定することができる。
【0018】
本発明の洗浄液は、適用するインクジェットヘッドのインク流路部材に対する接触角が25度以下となるものであることが重要である。好ましくは、インク流路部材に対する接触角は20度以下であるのがよい。インク流路部材に対する接触角が25度を超えると、充分な濡れ性が得られず、充分に洗浄効果の向上を図ることができない。なお、インクジェットヘッドが異なる素材からなる複数のインク流路部材で構成されている場合には、全てのインク流路部材に対する接触角が前記範囲であることが肝要である。また、このような場合には、各部材を接着するために用いられる接着剤も、インク流路部材の1つであるものとする。
【0019】
本発明において、インク流路部材に対する接触角は、接触角計(例えば、協和界面科学(株)製「CA−X型」など)を用いて測定することができる。
【0020】
本発明の洗浄液は、水、界面活性剤および水溶性有機溶剤を必須成分とするものであることが好ましい。
必須成分としての水には、脱イオン水(純水)を使用することが望ましい。水の含有量は、洗浄液全重量に対して65〜95重量%であるのが好ましい。
【0021】
必須成分である界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等があるが、これらの中でも特に、アニオン性界面活性剤もしくは非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤の含有量は、洗浄液全重量に対して0.1〜5.0重量%であるのが好ましい。なお、界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
特に、ロスマイルス法を用いた起泡直後および起泡5分後の泡高さが前記範囲(起泡直後の泡高さが50mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下)になるようにするためには、界面活性剤として、アセチレンジオールに付加モル数4〜30でエチレンオキサイド(EO)が付加した付加物を用い、該付加物の含有量を洗浄液全重量に対して0.1〜3.0重量%とすることが好ましい。さらに、ロスマイルス法を用いた起泡直後および起泡5分後の泡高さが前記好ましい範囲(起泡直後の泡高さが100mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下)になるようにするためには、アセチレンジオールに付加モル数10〜20でエチレンオキサイド(EO)が付加した付加物を用い、該付加物の含有量を洗浄液全重量に対して0.5〜1.5重量%とすることが好ましい。但し、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物の含有量が多すぎると、臨界ミセル濃度に達し、エマルションとなってしまう恐れがある。
【0023】
必須成分である水溶性有機溶剤は、炭素数6〜8のジオール、または有機性値(OV)が150以上の多価アルコールアルキルエーテルの少なくとも一方(以下「特定溶剤成分」と称することもある)を含有することが好ましい。前記炭素数6〜8のジオールは、その水酸基がどの位置にあってもよく、水酸基の位置は全ての組合せにおいて有効である。前記有機性値(OV)が150以上の多価アルコールアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。前記水溶液有機溶剤に占める前記特定溶剤成分の割合は、特に制限されないが、0.1〜35重量%であるのが好ましい。また、前記特定溶剤成分は2種類以上であってもよく、その場合には、特定溶剤成分の総重量が0.1〜35重量%であるのがよい。なお、水溶性有機溶剤は、前記特定溶剤成分以外の他の溶剤を含有していてもよいが、その場合、当該他の溶剤の含有量は、前記特定溶剤成分の含有割合が前記範囲となる範囲内とすることが望ましい。
【0024】
必須成分である水溶性有機溶剤の含有量は、洗浄液全重量に対して、0.1〜35重量%であるのが好ましく、0.5〜25重量%であるのがより好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が0.1重量%未満であると、インク流路部材に対して接触角25度以下を達成することが困難になる場合が多くなり、一方、35重量%を超えると、洗浄液の粘度が高くなるために、洗浄液をインクジェットヘッド内に充填しにくくなり、洗浄が困難になる恐れがある。
【0025】
本発明の洗浄液は、前述した必須成分のほかに、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等の各種添加剤を含有させることができる。なお、水溶性染料等の着色剤については、多量に存在すると起泡性が高くなる傾向があるので、基本的に含有させない方がよいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、視認性を得る目的で少量添加することは可能である。
【0026】
本発明においては、前記インク流路部材が、エポキシ樹脂、ステンレス鋼、ニッケル合金、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびシリコン樹脂からなる群より選ばれる1種以上からなるものであることが望ましい。インク流路部材が前記群から選ばれる素材からなるものであり、洗浄液が前述した範囲の表面張力を有するものであれば、両者の接触角は容易に25度以下となる。勿論、本発明におけるインク流路部材は、前記群から選ばれるものに限定される訳ではない。
【0027】
本発明の洗浄液で洗浄するインクジェットヘッドは、特に制限されるものではないが、1つのヘッドに対して400ノズル以上を有するインクジェットヘッドであれば、本発明の効果がより顕著に現われるので、好適である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、洗浄液の各物性は以下の方法で測定した。
<表面張力(寿命10msecにおける表面張力−寿命1000msecにおける表面張力)>
25℃における表面張力を、自動表面張力計(協和界面科学(株)製「BP−D4」)を用いて測定し、寿命10msecにおける表面張力および寿命1000msecにおける表面張力を求め、その差(寿命10msecにおける表面張力−寿命1000msecにおける表面張力)を算出した。
<接触角>
接触角計(協和界面科学(株)製「CA−X型」)を用い、常温(25℃)環境下で測定しようとするインク滴5μLを、シリンジから構成部材であるインク供給チューブ内面上に載せて測定した。
<泡高さ(起泡直後および起泡5分後)>
JIS K3362に従いロスマイル法によって測定した。すなわち、200mLの試験液(インク)を90cmの高さから内径2.9mmの細孔を通じ、50mLの同試験液を入れた内径50mmの目盛管中に流下させ、全ての試験液が流下した直後の泡高さ(起泡直後の泡高さ)と、全ての試験液が流下した直後から5分後の泡高さ(起泡5分後の泡高さ)とを測定した。
【0029】
(実施例1〜4および比較例1〜3)
表1に示す組成で各成分を十分に混合、攪拌した後、1.0μmのメンブランフィルタで濾過し、洗浄液を得た。なお、表1に示した各成分のうち、「アセチレンジオールのEO付加物」は、アセチレンジオールにエチレンオキサイドを10モル付加させた付加物(エアープロダクツ社製「サーフィノール465」)である。また、表1に示した各成分のうち、エチレングリコールモノブチルエーテルの有機性値(OV)は120であり、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの有機性値(OV)は200である。得られた各洗浄液の物性は表1に示す通りであった。
【0030】
得られた洗浄液を用いてインクジェットヘッドを洗浄し、次のようにして評価した。結果を表1に示す。なお、インクジェットヘッドとしては、たわみ振動するピエゾでインクに力を加える方式のもので、周波数1〜40kHz、駆動電圧10〜30Vの範囲で駆動可能であり、400ノズル以上を有し、そのインク流路部材はステンレス鋼(SUS)またはエポキシ樹脂からなるものを用いた。
【0031】
まず、周波数20kHz、駆動電圧20Vにて、普通紙および光沢紙にそれぞれベタを印画し、画像濃度(これを「初期画像濃度」とする)を測定した。
次に、周波数20kHz、駆動電圧20Vにて48時間連続吐出を行った後、各洗浄液を用いてインクジェットヘッド内を洗浄した。詳しくは、インクジェットヘッド内の洗浄は、カートリッジに洗浄液を充填し、このカートリッジをインクジェットヘッドに取り付けた後、加圧ポンプで洗浄液を勢いよく輸送するとともに、ゴムブレードを用いノズルから押し出された洗浄液でノズル表面をワイプすることにより行なった。
洗浄後、インクカートリッジを取り付け、周波数20kHz、駆動電圧20Vにて、普通紙および光沢紙にそれぞれベタを印画し、画像濃度(これを「洗浄後画像濃度」とする)を測定した。
【0032】
そして、初期画像濃度および洗浄後画像濃度をそれぞれ分光光度計(グレタグマクベス社製「SpectroEye」)にて測定し、下記基準に従い評価した。なお、下記基準においては、普通紙の場合は1.2、光沢紙の場合は2.0を規定濃度とした。
○:普通紙および光沢紙の両方が規定濃度以上である。
△:普通紙および光沢紙のいずれか一方は規定濃度以上であるが、他の一方は規定濃度未満である。
×:普通紙および光沢紙の両方が規定濃度未満である。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッド内を洗浄するために用いる洗浄液であって、下記式(1)
6mN/m<(寿命10msecにおける表面張力)
−(寿命1000msecにおける表面張力)<16mN/m (1)
を満足する表面張力を有し、ロスマイルス法を用いた起泡直後の泡高さが50mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下であり、適用するインクジェットヘッドのインク流路部材に対する接触角が25度以下となる、ことを特徴とするインクジェットヘッド用洗浄液。
【請求項2】
水、界面活性剤および水溶性有機溶剤を必須成分とし、前記水溶性有機溶剤は、炭素数6〜8のジオール、または有機性値(OV)が150以上の多価アルコールアルキルエーテルの少なくとも一方を含有する、請求項1記載のインクジェットヘッド用洗浄液。
【請求項3】
前記界面活性剤は、アセチレンジオールに付加モル数4〜30でエチレンオキサイド(EO)が付加した付加物であり、該付加物の含有量は洗浄液全重量に対して0.1〜3.0重量%である、請求項2記載のインクジェットヘッド用洗浄液。
【請求項4】
前記インク流路部材が、エポキシ樹脂、ステンレス鋼、ニッケル合金、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびシリコン樹脂からなる群より選ばれる1種以上からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットヘッド用洗浄液。

【公開番号】特開2007−313716(P2007−313716A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144345(P2006−144345)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】