説明

インクジェットヘッド

【課題】基板にスルーホールが形成され、かつ、各インク供給口におけるインクの流体抵抗が概ね同等であるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】インクジェットヘッドは、インク供給口の列が形成された第1の領域と吐出エネルギ発生素子の列が形成された第2の領域とが交互に配置された基板と、吐出エネルギ発生素子に対向する位置に吐出口が形成されたオリフィスプレートと、を有する。このインクジェットヘッドは、基板の表面に設けられた第一配線層と第二配線層を導通させる複数のスルーホール備えている。第1の領域のうちの1つは、複数のスルーホールが設けられた導通部であり、該導通部には、2列のインク供給口設けられ、該2列のインク供給口の間に複数のスルーホールが配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口からインクを吐出するインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は特許文献1に示されているインクジェットヘッドの基板102の表面を拡大して示した平面図である。このインクジェットヘッドでは、基板102の表面は、吐出口107a,107bが形成されたオリフィスプレートで覆われているが、基板102における各構成の位置を示すためにオリフィスプレートを透過させて示している。
【0003】
オリフィスプレートに形成された各吐出口107a,107bの列は平行に並べられている。各吐出口107a,107bは、基板102の厚さ方向にオリフィスプレートを貫通している貫通口である。そして、基板102には、2つの吐出口107a,107bの列を挟むように、3つのインク供給口124a,124ab,124bの列が形成されている。各インク供給口124a,124ab,124bは基板102を厚さ方向に貫通しており、概ね同様の形状に形成されている。したがって、インク供給口124a,124ab,124bにおけるインクの流体抵抗は概ね同等である。
【0004】
吐出口107a,107bは、両側に隣接するインク供給口の列の略中間部に配置されている。また、各インク供給口から各吐出口までのインクの流路の流体抵抗も概ね等しい。したがって、吐出口107a,107bとそれらを挟んで配置されている供給口124a、124ab、124bとの間で流れるインクの流れは、それぞれ概ね均等な流れとなる。
【0005】
基板102の、各吐出口107a,107bに対向する位置にはヒータ109a,109bが設けられている。ヒータ109a,109bを駆動することによりインク内に気泡が発生することに伴って、吐出口からインクが吐出される。
【0006】
ここで、基板102において、インク供給口の列が設けられている第1の領域を領域αとし、ヒータの列が設けられている第2の領域を領域βとする。この場合、図6に示すように、基板102には領域αと領域βとが交互に並んでいる。
【0007】
このインクジェットヘッドでは、インク供給口124a,124abから供給されたインクが吐出口107a付近に供給される。また、インク供給口124ab,124bから供給されたインクが吐出口107b付近に供給される。そして、各吐出口107a,107b付近に供給されたインクが、ヒータ109a,109bの駆動により発生させられる熱エネルギにより、各吐出口107a,107bから記録媒体に吐出される。
【0008】
図6に示したインクジェットヘッドでは、ヒータ109a,109bを駆動させるための配線を設ける必要がある。ヒータ109a,109bは基板102のオリフィスプレート側の面(以下、表面と称する)に設けられているため、配線も基板102の表面に設けられる必要がある。このような構成にすることにより、基板102の表面の構成が煩雑になる。すなわち配線のための配線配置面積の確保が必要となり、基板の増大によるコスト上昇を招くこととなる。
【0009】
基板102の表面の配線配置面積を抑制するために、ヒータ109a,109bを駆動させるための配線の一部を多層化して設けることができる。そのためには、基板102の多層化した配線間を導通させるスルーホールを形成する必要がある。特許文献1にスルーホールが設けられたインクジェットヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−179608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図7は、特許文献1に開示されているような、スルーホールが形成されたインクジェットヘッドの基板102の表面を拡大して示した平面図である。
【0012】
図7に示したインクジェットヘッドは、図6に示したインクジェットヘッドと同様に基板102に領域αと領域βとが交互に並べられている。しかしながら、図7に示したインクジェットヘッドの基板102には領域αのうちのひとつ(図7における中央部の領域α)に複数のスルーホールが設けられている。具体的には、インク供給口124abの列の各インク供給口の間にそれぞれ4つのスルーホール132が設けられている。
【0013】
図7に示したインクジェットヘッドでは、インク供給口124abの間にスルーホール132が設けられているため、インク供給口124abが、図6に記載したインクジェットヘッドよりも小さく、扁平な開口形状となっている。
【0014】
したがって、インク供給口124abのインクの流体抵抗は、インク供給口124a,124bより大きくなる。そのため、インクを吐出した後に、インク供給口にインクが再充填される速度(リフィル速度)がインク供給口124abで124abでの流体抵抗が増加したことで遅くなる。
【0015】
また、インクジェットヘッドにおけるヒータ109a,109bの駆動周波数(吐出口における吐出周波数に対応する。)を高くした場合に、インク供給口124abにおけるリフィルが十分に行われなくなる。その結果、吐出口107a,107bにインクが十分に供給されなくなる場合がある。
【0016】
また、インクが十分に供給された状態であったとしても、インク供給口124abのインクの流体抵抗が、インク供給口124a,124bより大きいため、ヒータを駆動したときの発泡が流体抵抗の低いインク供給口124a,124bの側により広がる。そのため、偏った発泡で吐出が行われることとなる。このことにより、吐出口107a,107bから吐出されるインクの方向が不安定となる場合がある。
【0017】
そこで、本発明は、基板にスルーホールが形成され、かつ、各インク供給口におけるインクの流体抵抗の差を抑制したインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェットヘッドは、厚さ方向に貫通し、インク供給口の列が設けられた第1の領域と、吐出エネルギ発生素子の列が設けられた第2の領域と、が交互に配置された基板と、前記基板の表面に設けられ、前記吐出エネルギ発生素子に対向する位置に吐出口が形成されたオリフィスプレートと、を備え、前記各インク供給口から、該インク供給口に隣接する吐出口に供給されたインクが、前記吐出エネルギ発生素子の駆動力により前記吐出口から吐出されるインクジェットヘッドにおいて、前記基板に設けられた第一の配線層と第二の配線層を導通させる複数のスルーホールを有し、前記第1の領域は、前記複数のスルーホールが設けられた導通部を含み、前記導通部には、2列の前記インク供給口が設けられ、該2列のインク供給口の間に前記複数のスルーホールが配列されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板にスルーホールが形成され、かつ、各インク供給口におけるインクの流体抵抗の差を抑制したインクジェットヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの基板の概略構成図である。
【図2】本発明の比較例に係るインクジェットヘッドの基板の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係るインクジェットヘッドの基板の概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例に係るインクジェットヘッドの基板の概略構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの基板の概略構成図である。
【図6】一般的なインクジェットヘッドの基板の概略構成図である。
【図7】一般的なインクジェットヘッドの基板の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの一部を拡大して示した概略構成図であり、図1(a)および図1(b)は平面図であり、図1(c)は図1(a)のA−A’線に沿った断面図である。図1(c)に示すように、このインクジェットヘッドでは、基板2の表面に、吐出口7a,7bが形成されたオリフィスプレート3が貼り付けられているが、図1(a)および図1(b)では、基板2の構成を透過させて示している。
【0022】
図1(a)に示すように、このインクジェットヘッドでは、オリフィスプレート3に形成された吐出口7a,7bが平行に並べて配列されている。図1(c)に示すように、各吐出口7a,7bは、基板2の厚さ方向にオリフィスプレートが貫通している、径が略等しい貫通口である。
【0023】
また、基板2には、吐出口7a,7bの列に沿って4つのインク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bの列が形成されている。図1(c)に示すように、各インク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bは基板2を貫通している貫通口である。
【0024】
また、図1(c)に示すように、基板2の表面には、吐出口7a,7bに対向する位置に吐出エネルギ発生素子であるヒータ9a,9bが設けられている。ヒータ9a,9bの列の各ヒータの間には、それぞれ隔壁10aおよび隔壁10bが設けられている。隔壁10a,10bはオリフィスプレート3と一体に形成され、基板2の表面に接着されている。
【0025】
また、ヒータ9aおよび隔壁10aの列と、インク供給口24a,24ab−1の列と、の間にはそれぞれ円柱状のフィルタ13aの列が設けられている。また、ヒータ9bおよび隔壁10bの列と、インク供給口24ab−2,24bの列と、の間にはそれぞれ円柱状のフィルタ13bの列が設けられている。フィルタ13a,13bはオリフィスプレート3と一体に形成され、基板2の表面に接着されている。
【0026】
以上の構成により、吐出口7a,7bとヒータ9a,9bとの間の空間は、オリフィスプレート3、基板2、隔壁10a,10b、およびフィルタ13a,13bによって6方を囲まれた圧力室14a,14b(図1(c)参照)となっている。
【0027】
ここで、基板2において、インク供給口の列が設けられている第1の領域を領域αとし、ヒータの列(圧力室の列に対応する。)が設けられている第2の領域を領域βとする。この場合、図1(a)に示すように、基板2には領域αと領域βとが交互に並んでいる。
【0028】
基板2の中央部の領域αには、インク供給口24b−1の列とインク供給口24b−2の列との間に隔壁12が設けられている。隔壁12はオリフィスプレート3と一体に形成され、基板2の表面に接着されている。
【0029】
図1(a)に示した基板2の中央部の領域αは、図1(b)に示すように、基板2には、隔壁12に沿ってスルーホール32が配列された導通部である。スルーホール32は、隔壁12によって上面を覆われている。
【0030】
基板2の表面の両端には共通電源配線31aが設けられ、該共通電源配線31aから、複数の上層配線31bが引き出されている。各上層配線31bはそれぞれ各インク供給口24a,24bの間を通されてヒータ9a,9bに接続されている。また、ヒータ9a,9bから上層配線31cが引き出され、該上層配線31cはインク供給口24ab−1,24ab−2の間を通されて各スルーホール32に接続されている。
【0031】
各スルーホール32は、第一の配線層である上層配線31と第二の配線層である下層配線33との間の絶縁層間膜を貫通して導通させる導電部が設けられている。これにより、各スルーホール32は、上層配線31cと下層配線33とを導通させている。各下層配線33は供給口24の間を通り各駆動回路30に接続されている。駆動回路30は、各ヒータ9a,9bに対応した駆動トランジスタのアレイから構成されている。これらの駆動トランジスタの制御は制御回路(不図示)にて行われる。
【0032】
以上の構成により、スルーホール32によりヒータ9a,9bの駆動用の配線を基板2の第一層と第二層に設けることができる。そのため、一層の配線のみを設ける場合に比べて、配線を配置させる必要がある領域は小さくて済む。
【0033】
したがって、基板の表面における配線が通る、インク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bの列の各インク供給口の間の領域を狭くすることができる。したがって、各インク供給口を大きくすることにより各インク供給口におけるインクの流体抵抗の低減を図ることができる。インクの流体抵抗の低減を図ることにより、このインクジェットヘッドを搭載した記録装置におけるスループットが向上する。
【0034】
なお、スルーホール32の導電部の直上は、絶縁体の保護膜で覆われており、インクが導電部に接触することが防止されている。これにより、ヒータ9a,9bの駆動の不具合等を防止することができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、スルーホール32の列の上を隔壁12が覆っている。一般的に、スルーホール32を形成するためにはまず第一配線層と絶縁体である層間膜を形成した上で、層間膜にスルーホールとなる貫通口を形成する。その上で第二配線層を形成することで、層間膜が貫通したスルーホール部でのみが導電部となる。この第一配線層と第二配線層の間の層間膜に貫通口を形成することで、基板2の表面には、層間膜の貫通口段差を反映した急峻な段差が発生することがある。一般的な成膜方法で形成した保護膜は急峻な段差部で薄くなり易い傾向があるため、段差部を長期的にインクに曝すことは信頼性の観点で避けた方が望ましい場合がある。
【0036】
スルーホール32の列の上を絶縁体である隔壁12が覆う構成により、基板2の表面のスルーホール32に周囲に急峻な段差がある場合にも、インク供給口24ab−1,24ab−2を流れるインクのスルーホール32への接触を効果的に防止できる。
【0037】
このように本実施形態に係るインクジェットヘッドでは、インクがスルーホール32の導電部に接触することが防止されるため、信頼性が向上する。
【0038】
本実施形態に係るインクジェットヘッドでは、インク供給口24a,24ab−1から供給されたインクが吐出口7a付近に供給される。また、インク供給口24ab−2,24bから供給されたインクが吐出口7b付近に供給される。そして、各吐出口7a,7b付近に供給されたインクが、ヒータ9a,9bの駆動により発生させられる熱エネルギにより、各吐出口7a,7bから記録媒体に吐出される。
【0039】
また、このインクジェットヘッドでは、図1(c)に示すように共通液室5a,5ab−1,5ab−2,5bが設けられている。
【0040】
インク供給口24a,24ab−1から共通液室5a,5ab−1に流入したインクは、図1(a)に示すフィルタ13aの間を通過して圧力室14aに供給される。そのため、インク供給口24a,24ab−1内のインクにゴミ等の異物が混入していた場合に、当該異物はフィルタ13aにより圧力室14aへの侵入を妨げられる。
【0041】
また、インク供給口24ab−2,24bから共通液室5ab−2,5bに流入したインクは、図1(a)に示すフィルタ13bの間を通過して圧力室14bに供給される。そのため、インク供給口24ab−2,24b内のインクにゴミ等の異物が混入していた場合に、当該異物はフィルタ13aにより圧力室14aへの侵入を妨げられる。
【0042】
このように本実施形態に係るインクジェットヘッドでは、圧力室14a,14bに異物が混入しにくい。そのため、このインクジェットヘッドでは吐出口の目詰まり等の不具合を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態では、図1(a)に示すように、各インク供給口から、該インク供給口からインクが供給される吐出口までの距離dxはいずれも略等しい。換言すると、吐出口7a,7bは圧力室14a,14bの中央部に設けられている。また、図1(c)に示すように、各インク供給口から各吐出口までの間にインクが通過する各共通液室や各圧力室は概ね同等の高さに形成されており、各共通液室や各圧力室におけるインクの流体抵抗は概ね同等である。
【0044】
したがって、吐出口7a,7b付近におけるインクの流れは、各インク供給口におけるインクの流体抵抗に依存する。そのため、各インク供給口におけるインクの流体抵抗を概ね同等にすれば、吐出口7a,7b付近で各インク供給口から供給されたインクが合流し、吐出口7a,7b付近においてインクの流れに偏りが生じにくい。
【0045】
各インク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bにおけるインクの流体抵抗を概ね同等とするため、各インク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bの開口面積は、いずれも略等しいことが望ましい。ここで、図1(a)に示すように、インク供給口24a,24bの隣接する2辺の長さをhx0,hy0とし、インク供給口24ab−1,24ab−2の隣接する2辺の長さをhx1,hy1とすると、以下の式が成り立つことが望ましい。
【0046】
hx0×hy0=hx1×hy1
hx0,hy0とhx1,hy1の値は、それぞれ略等しいことが望ましい。しかし、以上の式が成り立てばhx0,hy0とhx1,hy1の値は互いに近似していればよい。なお、各インク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bにおけるインクの流体抵抗が概ね同等となる構成であれば以上の式を満たすことは必須ではない。
【0047】
以上述べたように、各インク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bの流体抵抗はいずれも概ね同等である。そのため、各インク供給口24a,24ab−1,24ab−2,24bから供給されたインクは吐出口7a,7b付近で合流する。ヒータ9a,9bの駆動による熱エネルギにより発生する気泡は対称的に成長し収縮する。
【0048】
このようにヒータ9a,9bにより対称的に発生させられた気泡により、インクは吐出口7a,7bからオリフィスプレート3の表面に直交する方向に吐出される。これに伴い、吐出口7a,7bから安定的にインクが吐出される。
【0049】
また、図1(a)に示すように、吐出口7a,7bの間の距離をdoeとすると、距離doeは、画素解像度間隔の倍数となる距離、または、画素解像度間隔の略整数分の1の単位で割り切ることが可能な距離であることが望ましい。このように構成することにより、画像形成において画素格子内へのインクの吐出制御を比較的簡単に行うことが可能となる。
【0050】
図2は本実施形態の比較例に係るインクジェットヘッドの一部を拡大して示した概略構成図であり、図2(a)および図2(b)は平面図であり、図2(c)は図2(a)のB−B’線に沿った断面図である。
【0051】
図2に示したインクジェットヘッドは、基板2の中央部の領域α以外の構成は、図1に示したインクジェットヘッドと同様であり、その説明を省略する。
【0052】
図1に示したインクジェットヘッドでは基板2の中央部の領域αにインク供給口が2列設けられていたが、図2に示したインクジェットヘッドでは基板2の中央部の領域αにはインク供給口が1列のみ設けられている。図2(b)に示すように、各インク供給口24abの間にそれぞれ4つのスルーホール32が設けられている。
【0053】
このインクジェットヘッドでは、インク供給口24a,24ab,24bの開口面積はいずれも略等しい。ここで、図2(a)に示すように、インク供給口24a,24bの隣接する2辺の長さをhx0,hy0とし、インク供給口24abの隣接する2辺の長さをhx3,hy3とすると、以下の式が成り立つ。
【0054】
hx0×hy0=hx3×hy3
図2(b)に示すように、このインクジェットヘッドでは各インク供給口24abの間にそれぞれ4つのスルーホール32が設けられているため、インク供給口24abのhy2の長さを小さくせざるを得ない。ここで、インク供給口24abにおけるインクの流体抵抗をインク供給口24a,24bにおけるインクの流体抵抗と等しくすることを考える。すると、インク供給口24abの開口面積を、インク供給口24a,24bの開口面積と概ね同等にする必要がある。そのためには、hx3の長さを大きくせざるを得ない。
【0055】
したがって、吐出口7a,7bの間の距離をdoeが大きくなる。そのため、基板2が大きくなる。そのため、図2に示したインクジェットヘッドは、図1に示したインクジェットヘッドよりも大型化することがわかった。
【0056】
また、図2に示したインクジェットヘッドでは、インク供給口24abの開口面積をインク供給口24a,24bの開口面積と等しくしても、インクの流体抵抗は、インク供給口24abがインク供給口24a,24bより大きくなった。これは、インク供給口24abの形状が扁平であることに起因する。
【0057】
そのため、図2に示したインクジェットヘッドでは、図1に示したインクジェットヘッドほどスループットの向上は得られなかった。
【0058】
なお、図1に示したインクジェットヘッドでは吐出口の列が2列であったが、吐出口の列の数はこれに限らない。
【0059】
図3は本実施形態の変形例に係るインクジェットヘッドの一部を拡大して示した概略構成図であり、図3(a)および図3(b)は平面図であり、図3(c)は図3(a)のC−C’線に沿った断面図である。
【0060】
図1に示したインクジェットヘッドでは吐出口の列が2列設けられているが、図3に示したインクジェットヘッドでは吐出口の列が4列設けられている。一方、図1に示したインクジェットヘッドと同様に、図3に示したインクジェットヘッドでは基板2の中央部の領域αのみにインク供給口の列が2列設けられている。また、図3(a)に示した基板2の中央部の領域αは、図3(b)に示すように、基板2には、隔壁12に沿ってスルーホール32が配列された導通部である。
【0061】
図3に示したインクジェットヘッドの構成でも、図1に示したインクジェットヘッドと同様にスループットの向上が得られた。
【0062】
なお、導通部となる領域αは、基板2の中央部でなくてもよい。たとえば、図3(a)における左から2番目の領域αを導通部としてもよい。
【0063】
また、導通部となる領域αにおけるスルーホール32の列は、直線的に並んでいなくてもよい。スルーホール32の列の構成は適宜決定可能である。
【0064】
図4は本実施形態の変形例に係るインクジェットヘッドの一部を拡大して示した概略構成図であり、図4(a)および図4(b)は平面図であり、図4(c)は図4(a)のD−D’線に沿った断面図である。
【0065】
図4に示したインクジェットヘッドのように、スルーホール32の一部がインク供給口24a−1,24a−2の列における各インク供給口の間に配置されていても、図1に示したインクジェットヘッドと同様の効果が得られた。
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの一部を拡大して示した概略構成図であり、図5(a)および図5(b)は平面図であり、図5(c)は図5(a)のE−E’線に沿った断面図である。本実施形態に係るインクジェットヘッドでは、以下に説明する構成以外の構成は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドと同じであり、その説明を省略する。
【0066】
本実施形態に係るインクジェットヘッドには、センサ配線34が設けられている。センサ配線34は、スルーホール32と各インク供給口24b−1,24b−2との間を縫うように形成されている。したがって、全てのインク供給口24b−1,24b−2にセンサ配線34が隣接している。また、センサ配線34は隔壁12に覆われており、センサ配線34には微弱な電圧が印加されている。
【0067】
センサ配線34にインクが接触すると、センサ配線34には急激に大きな電流が流れる。これにより、センサ配線34へのインクの接触が検知される。センサ配線34は、たとえば、以下の場合に有用である。
【0068】
第一の例としては、インクジェットヘッドの製造時における検品に用いることができる。インクジェットヘッドの製造時に、基板2におけるインク供給口24b−1またはインク供給口24b−2の位置がずれていた場合、センサ配線34がインク供給口24b−1またはインク供給口24b−2に露出してインクに接触する。
【0069】
このように、インクジェットヘッドの製造時に、センサ配線24へのインクの接触を検知することで、基板2におけるインク供給口の位置がずれたインクジェットヘッドを不良品として除去することができる。これにより、インクジェットヘッドの信頼性が向上する。
【0070】
第二の例としては、第一の例で良品と判断されたインクジェットヘッドの使用に伴う、インクの流動によるインク供給口の浸食を検知することに用いることができる。インクによってインク供給口が浸食されてゆくと、センサ配線34はインク供給口24b−1,24b−2に露出してインクに接触する。
【0071】
このように、インクジェットヘッドの使用に伴うインク供給口の浸食を検知することができる。これにより、インク供給口のインクによる浸食が進み、インクがヒータ等に接触することを効果的に防ぐことができる。これにより、インクジェットヘッドの信頼性が向上する。
【0072】
なお、本実施形態に係るインクジェットヘッドのように、スルーホール32の列が設けられた導通部となる領域αを設けない場合には、センサ配線を基板2の表面上をインク供給口とヒータとの間を縫うように設けることとなり、センサ配線が非常に長くなる。また、センサ配線を、ヒータ用の配線と同様の位置に設ける必要があるため、基板2の表面の構成が煩雑になる。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るインクジェットヘッドでは、基板2の表面の構成を煩雑にすることなく、信頼性を向上することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 基板
3 オリフィスプレート
7 吐出口
9 ヒータ
10 隔壁
12 隔壁
13 フィルタ
24 インク供給口
32 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通し、インク供給口の列が設けられた第1の領域と、吐出エネルギ発生素子の列が設けられた第2の領域と、が交互に配置された基板と、
前記基板の表面に設けられ、前記吐出エネルギ発生素子に対向する位置に吐出口が形成されたオリフィスプレートと、
を備え、
前記各インク供給口から、該インク供給口に隣接する吐出口に供給されたインクが、前記吐出エネルギ発生素子の駆動力により前記吐出口から吐出されるインクジェットヘッドにおいて、
前記基板に設けられた第一の配線層と第二の配線層を導通させる複数のスルーホールを有し、
前記第1の領域は、前記複数のスルーホールが設けられた導通部を含み、
前記導通部には、2列の前記インク供給口が設けられ、該2列のインク供給口の間に前記複数のスルーホールが配列されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記複数のスルーホールが直線的に配列されている、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
3つの前記第1の領域と2つの前記第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが交互に配置されたときに中央に位置する前記第1の領域が前記導通部である、請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
5つの前記第1の領域と4つの前記第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが交互に配置されたときに中央に位置する前記第1の領域が前記導通部である、請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記複数のスルーホールが絶縁体によって覆われている、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記複数のスルーホールは、絶縁体からなる前記オリフィスプレートの一部に覆われている、請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記導通部には、前記各インク供給口にそれぞれ隣接するセンサ配線が設けられている、請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254527(P2012−254527A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127253(P2011−127253)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】