説明

インクジェットヘッド

【課題】容易にダミー室を設けることによるインク吐出への影響を抑制できるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、基材と、オリフィスプレート12と、駆動素子14とを具備する。前記基材は実装面を有する。オリフィスプレート12は、前記実装面に対向して前記基材との間にインクが供給されるインク室を形成し、複数のオリフィス28が設けられる。駆動素子14は、前記インク室に配置されて前記実装面に取り付けられ、オリフィス28が開口するとともに両端が前記インク室に開放された溝状の複数の圧力室31と、オリフィスプレート12に覆われるとともに両端が前記インク室に開放され複数の圧力室31と交互に配置された溝状の複数のダミー室32と、が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シェアモードシェアウォール方式のインクジェットプリンタヘッドでは、隣接する圧力室共通の側壁が駆動する。このため、隣接する圧力室から同時にインクを吐出することができない。さらに、1つおきの圧力室の側壁を同時に駆動させたとしても、インクを吐出する圧力室の間に挟まれた圧力室から、インクが誤って吐出されるおそれがある。
【0003】
インクの誤吐出を防止するため、最低でも2つおきの圧力室の側壁が同時駆動される(3分割駆動)。3分割駆動を行なうとインクジェットヘッドの駆動周波数が遅くなるので、駆動周波数を向上させるために、インクを吐出するための圧力室と、インクを吐出しないダミー室とを交互に設けることがある。圧力室には供給されたインクが吐出するオリフィスが開口する。一方、ダミー室はオリフィスが設けられずに塞がれ、インクが充填されるのみである。
【0004】
圧力室とダミー室とを交互に配置することで、圧力室を形成する駆動素子の側壁がシェアモード変形したとしても、インクの誤吐出が防止される。これにより、各圧力室から同時にインクを吐出でき、インクジェットヘッドの駆動周波数が向上する。
【0005】
また、圧力室と、オリフィスが設けられずに空気が入った空気室とを交互に設けることもある。これによっても、インクの誤吐出が防止され、各圧力室から同時にインクを吐出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−58090号公報
【特許文献2】特開2002−240305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、ダミー室にはオリフィスが設けられないため、ダミー室の中に十分インクが充填されず、空気が溜まるおそれがある。各ダミー室に溜まる空気の量がそれぞれ異なると、各圧力室のクロストーク量が異なってしまう。また、供給されたインクがダミー室に留まるため、ダミー室のインクの温度が上昇して圧力室からのインク吐出に影響を与えるおそれがある。
【0008】
また、空気室を設ける場合、空気室にインクが入らないような構造が必要となる。このため、インクジェットヘッドの構造が複雑となり、製造コストと手間とが増大してしまう。
【0009】
本発明の目的は、容易にダミー室を設けることによるインク吐出への影響を抑制できるインクジェットヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、基材と、オリフィスプレートと、駆動素子とを具備する。前記基材は実装面を有する。前記オリフィスプレートは、前記実装面に対向して前記基材との間にインクが供給されるインク室を形成し、複数のオリフィスが設けられる。前記駆動素子は、前記インク室に配置されて前記実装面に取り付けられ、前記オリフィスが開口するとともに両端が前記インク室に開放された溝状の複数の圧力室と、前記オリフィスプレートに覆われるとともに両端が前記インク室に開放され前記複数の圧力室と交互に配置された溝状の複数のダミー室と、が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図。
【図2】図1のF2−F2線に沿って示すインクジェットヘッドの断面図。
【図3】図2のF3−F3線に沿って示すインクジェットヘッドの断面図。
【図4】図2のF4−F4線に沿って示すインクジェットヘッドの断面図。
【図5】ベースプレートと第1および第2の駆動素子とを拡大して示す平面図。
【図6】側壁がシェアモード変形したインクジェットヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、一つの実施の形態について、図1から図6を参照して説明する。図1は、インクジェットヘッド10を分解して示す斜視図である。図2は、図1のF2−F2線に沿ってインクジェットヘッド10の一部を示す断面図である。図3は、図2のF3−F3線に沿ってインクジェットヘッド10の一部を示す断面図である。図4は、図2のF4−F4線に沿ってインクジェットヘッド10の一部を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、インクジェットヘッド10は、いわゆるサイドシュータ型のシェアモードシェアウォール方式インクジェットヘッドである。インクジェットヘッド10は、インクを吐出するための装置であり、インクジェットプリンタの内部に搭載される。
【0014】
インクジェットヘッド10は、ベースプレート11と、オリフィスプレート12と、枠部材13と、第1の駆動素子14と、第2の駆動素子15とを備えている。ベースプレート11は、基材の一例である。第1の駆動素子14は、駆動素子の一例である。第2の駆動素子15は、他の駆動素子の一例である。図3に示すように、インクジェットヘッド10の内部に、インクが供給されるインク室16が形成される。
【0015】
さらに、図3に二点鎖線で示すように、インクジェットヘッド10に、インクジェットヘッド10を制御する回路基板17や、インクジェットヘッド10とインクタンクとの間の経路の一部を形成するマニホールド18のような、種々の部品が取り付けられる。
【0016】
図1に示すように、ベースプレート11は、例えばアルミナのようなセラミックスによって矩形の板状に形成されている。ベースプレート11は、平坦な実装面21を有している。実装面21に、複数の供給孔25と、複数の排出孔26とが設けられている。
【0017】
供給孔25は、ベースプレート11の中央部において、ベースプレート11の長手方向に並んで設けられている。図3に示すように、供給孔25は、マニホールド18のインク供給部18aに連通している。供給孔25は、インク供給部18aを介して前記インクタンクに接続されている。図3に矢印で示すように、前記インクタンクのインクは、供給孔25からインク室16に供給される。
【0018】
図1に示すように、排出孔26は、供給孔25を挟むように二列に並んで設けられている。図3に示すように、排出孔26は、マニホールド18のインク排出部18bに連通している。排出孔26は、インク排出部18bを介して前記インクタンクに接続されている。図3に矢印で示すように、インク室16のインクは、排出孔26から前記インクタンクに排出される。このように、インクは前記インクタンクとインク室16との間で循環する。
【0019】
図1に示すように、オリフィスプレート12は、例えばポリイミド製の矩形のフィルムによって形成されている。オリフィスプレート12は、ベースプレート11の実装面21に対向している。
【0020】
オリフィスプレート12に、複数のオリフィス28が設けられている。複数のオリフィス28は、オリフィスプレート12の長手方向に沿って二列に並んでいる。オリフィス28は、実装面21の供給孔25と排出孔26との間の部分に対向している。
【0021】
枠部材13は、例えばニッケル合金によって矩形の枠状に形成されている。枠部材13は、ベースプレート11の実装面21とオリフィスプレート12との間に介在している。枠部材13は、実装面21とオリフィスプレート12とにそれぞれ接着されている。すなわち、オリフィスプレート12は、枠部材13を介してベースプレート11に取り付けられている。
【0022】
図3に示すように、インク室16は、ベースプレート11と、オリフィスプレート12と、枠部材13とに囲まれて形成されている。すなわち、インク室16は、ベースプレート11とオリフィスプレート12との間に形成されている。
【0023】
第1および第2の駆動素子14,15は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成された板状の二つの圧電体によってそれぞれ形成されている。前記二つの圧電体は、分極方向がその厚さ方向に互いに逆向きになるように貼り合わされている。
【0024】
第1および第2の駆動素子14,15は、ベースプレート11の実装面21に接着されている。第1および第2の駆動素子14,15は、例えば熱硬化性を有するエポキシ系接着剤によって実装面21に接着される。
【0025】
図1に示すように、第1および第2の駆動素子14,15は、二列に並ぶオリフィス28に対応して、インク室16の中に平行に並んで配置されている。図3に示すように、第1および第2の駆動素子14,15は、インク室16を、供給孔25が開口する供給室16aと、排出孔26が開口する二つの排出室16bとに区切る。
【0026】
第1および第2の駆動素子14,15は、断面台形状に形成されている。第1および第2の駆動素子14,15の頂部は、オリフィスプレート12に接着されている。
【0027】
図2に示すように、第1の駆動素子14に、複数の圧力室31と、複数のダミー室32とが設けられている。圧力室31とダミー室32とは、それぞれ同一形状に形成された溝である。なお、圧力室31の形状とダミー室32の形状とが異なっていても良い。第1の駆動素子14は、これらの圧力室31およびダミー室32を形成する複数の側壁33を有している。
【0028】
圧力室31とダミー室32とは、交互に配置されている。圧力室31とダミー室32とは、側壁33によってそれぞれ隔てられている。圧力室31およびダミー室32は、第1の駆動素子14の長手方向と交差する方向にそれぞれ延びており、第1の駆動素子14の長手方向に並んでいる。
【0029】
複数の圧力室31に、オリフィスプレート12の複数のオリフィス28が開口している。図3に示すように、圧力室31の一方の端部31aは、インク室16の供給室16aに開口している。圧力室31の他方の端部31bは、インク室16の排出室16bに開口している。すなわち、圧力室31の両端31a,31bがインク室16に開放されている。このため、図3の矢印で示すように、圧力室31の一方の端部31aからインクが流入し、他方の端部31bからインクが流出する。
【0030】
図4に示すように、複数のダミー室32は、オリフィスプレート12に覆われ、その一部が塞がれている。ダミー室32の一方の端部32aは、インク室16の供給室16aに開口している。ダミー室32の他方の端部32bは、インク室16の排出室16bに開口している。すなわち、ダミー室32の両端32a,32bがインク室16に開放されている。このため、ダミー室32の一方の端部32aからインクが流入し、他方の端部32bからインクが流出する。
【0031】
図2に示すように、圧力室31およびダミー室32に、それぞれ電極34が設けられている。電極34は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。電極34は、圧力室31およびダミー室32の内面を覆っている。
【0032】
図1に示すように、ベースプレート11の実装面21から第1の駆動素子14に亘って、複数の第1の配線パターン35が設けられている。第1の配線パターン35は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。
【0033】
第1の配線パターン35は、第1の駆動素子14の圧力室31に形成された電極34から、実装面21の一方の側端部21aまでそれぞれ延びている。なお、側端部21aは、実装面21の縁のみならずその周辺の領域を含む。このため、第1の配線パターン35は、実装面21の縁よりも内側に設けられても良い。
【0034】
図5は、ベースプレート11と、第1および第2の駆動素子14,15とを拡大して示す平面図である。図5において、便宜上、模式的にオリフィス28を示す。
【0035】
図5に示すように、ベースプレート11の実装面21から第1の駆動素子14に亘って、複数の第1の共通パターン36が設けられている。第1の共通パターン36は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。
【0036】
第1の共通パターン36は、第1の駆動素子14のダミー室32に形成された電極34から、実装面21の中央部に向かってそれぞれ延びている。言い換えると、第1の共通パターン36は、第1の配線パターン35の反対方向にそれぞれ延びている。別の表現をすれば、第1の共通パターン36は、第2の駆動素子15に向かって延びている。第1の共通パターン36は、実装面21の中央部に設けられた共通配線37にそれぞれ結合している。
【0037】
共通配線37は、ベースプレート11の長手方向に延びている。共通配線37は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。共通配線37はグランドされている。なお、これに限らず、共通配線37に定常的に一定波形の電圧が印加されていてもよい。この場合、圧力室31,41の電極34,44に一定波形の電圧を印加して電位差を解消させる。
【0038】
第2の駆動素子15に、複数の圧力室41と、複数のダミー室42とが設けられている。圧力室41は、他の圧力室の一例である。ダミー室42は、他のダミー室の一例である。圧力室41とダミー室42とは、それぞれ同一形状に形成された溝である。なお、圧力室41の形状とダミー室42の形状とが異なっていても良い。第2の駆動素子15は、これらの圧力室41およびダミー室42を形成する複数の側壁43を有している。
【0039】
圧力室41とダミー室42とは、交互に配置されている。圧力室41とダミー室42とは、側壁43によってそれぞれ隔てられている。圧力室41およびダミー室42は、第2の駆動素子15の長手方向と交差する方向にそれぞれ延びており、第2の駆動素子15の長手方向に並んでいる。
【0040】
複数の圧力室41に、オリフィスプレート12の複数のオリフィス28が開口している。圧力室41の一方の端部41aは、インク室16の供給室16aに開口している。圧力室41の他方の端部41bは、インク室16の排出室16bに開口している。すなわち、圧力室41の両端41a,41bがインク室16に開放されている。このため、圧力室41の一方の端部41aからインクが流入し、他方の端部41bからインクが流出する。
【0041】
複数のダミー室42は、オリフィスプレート12に覆われ、その一部が塞がれている。ダミー室42の一方の端部42aは、インク室16の供給室16aに開口している。ダミー室42の他方の端部42bは、インク室16の排出室16bに開口している。すなわち、ダミー室42の両端42a,42bがインク室16に開放されている。このため、ダミー室42の一方の端部42aからインクが流入し、他方の端部42bからインクが流出する。
【0042】
圧力室41およびダミー室42に、それぞれ電極44が設けられている。電極44は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。電極44は、圧力室41およびダミー室42の内面を覆っている。
【0043】
図1に示すように、ベースプレート11の実装面21から第2の駆動素子15に亘って、複数の第2の配線パターン45が設けられている。第2の配線パターン45は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。
【0044】
第2の配線パターン45は、第2の駆動素子15の圧力室41に形成された電極44から、実装面21の他方の側端部21bまでそれぞれ延びている。なお、側端部21bは、実装面21の縁のみならずその周辺の領域を含む。このため、第2の配線パターン45は、実装面21の縁よりも内側に設けられても良い。
【0045】
図5に示すように、ベースプレート11の実装面21から第2の駆動素子15に亘って、複数の第2の共通パターン46が設けられている。第2の共通パターン46は、他の共通パターンの一例である。第2の共通パターン46は、例えばニッケル薄膜によって形成されている。
【0046】
第2の共通パターン46は、第2の駆動素子15のダミー室42に形成された電極44から、実装面21の中央部に向かってそれぞれ延びている。言い換えると、第2の共通パターン46は、第1の駆動素子14に向かってそれぞれ延びている。
【0047】
第2の共通パターン46は、共通配線37にそれぞれ結合している。第2の共通パターン46は、共通配線37を介して第1の共通パターン36と結合している。これにより、第1および第2の共通パターン36,46と共通配線37とは、同電位となる。
【0048】
図3に示すように、回路基板17は、フィルムキャリアパッケージ(FCP)であり、複数の配線が形成されるとともに柔軟性を有する樹脂製のフィルム51と、フィルム51の前記複数の配線に接続されたIC52(図5に示す)とをそれぞれ有している。なお、FCPは、テープキャリアパッケージ(TCP)とも称される。
【0049】
フィルム51は、テープオートメーテッドボンディング(TAB)である。IC52は、電極34,44に電圧を印加するための部品である。IC52は、例えば樹脂によってフィルム51に固定されている。
【0050】
フィルム51の端部は、異方性導電性フィルム(ACF)53によって、第1および第2の配線パターン35,45に熱圧着接続されている。これにより、フィルム51の前記複数の配線は、第1および第2の配線パターン35,45に電気的に接続される。
【0051】
フィルム51が第1および第2の配線パターン35,45に接続されることで、図5に示すように、IC52が、フィルム51の前記配線を介して電極34,44に電気的に接続される。
【0052】
以下に、インクジェットヘッド10の駆動方法の一例について説明する。図3に示すように、前記インクタンクのインクが、マニホールド18のインク供給部18aを通って、供給孔25からインク室16の供給室16aに供給される。このインクは、第1および第2の駆動素子14,15の複数の圧力室31,41と、複数のダミー室32,42とに供給される。
【0053】
インクは、圧力室31,41とダミー室32,42とを通ってインク室16の排出室16bに流入する。このインクは、排出孔26から、マニホールド18のインク排出部18bを通って前記インクタンクに排出される。
【0054】
図6は、側壁33がシェアモード変形したインクジェットヘッド10の断面図である。インクジェットプリンタの制御部から入力された信号に基き、IC52がフィルム51の前記配線を介して圧力室31,41の電極34,44に駆動電圧を印加する。これにより、圧力室31,41の電極34,44と、共通配線37を介してグランドされたダミー室32,42の電極34,44との間に電位差が生じ、側壁33,43がシェアモード変形する。
【0055】
図6に示すように、側壁33,43がシェアモード変形することにより、当該電極34,44が設けられた圧力室31,41の容積が増加し、圧力が減少する。これにより、当該圧力室31,41にインク室16のインクが流入する。
【0056】
一方、当該圧力室31,41に隣接するダミー室32,42の容積が減少し、圧力が増加する。図4の矢印で示すように、ダミー室32,42の圧力が増加すると、ダミー室32,42のインクがダミー室32,42の両端32a,32b,42a,42bからインク室16に流出し、ダミー室32,42の圧力変化を軽減する。
【0057】
圧力室31,41の容積が増加した状態で、IC52が圧力室31,41の電極34,44に逆電位の駆動電圧を印加する。これにより、図6に二点鎖線で示すように、側壁33,43がシェアモード変形して当該電極34,44が設けられた圧力室31,41の容積が減少し、圧力が増加する。これにより、圧力室31,41の中のインクが加圧され、オリフィス28から吐出される。
【0058】
前記構成のインクジェットヘッド10によれば、圧力室31,41とダミー室32,42とが交互に配置されている。これにより、各圧力室31,41から同時にインクを吐出でき、インクジェットヘッド10の駆動周波数が向上する。
【0059】
ダミー室32,42の両端32a,32b,42a,42bは、インク室16にそれぞれ開放されている。このため、ダミー室32,42に容易にインクを充填でき、ダミー室32,42に空気が溜まることを抑制できる。さらに、ダミー室32,42のインクはインク室16の供給室16aから排出室16bに流れるため、ダミー室32,42のインクの温度が上昇することを抑制できる。これにより、ダミー室32,42を設けたとしても、圧力室31,41のクロストーク量が異なったり、ダミー室32,42のインクの温度が上昇したりすることによるインク吐出への影響を抑制することができる。
【0060】
さらに、圧力室31,41とダミー室32,42とは、オリフィス28が開口するか否かという点でのみ異なり、同一形状に形成される。このような簡単な構造によってインク吐出への影響が抑制されるため、インクジェットヘッド10の製造コストを抑制することができる。
【0061】
側壁33,43がシェアモード変形することでダミー室32,42の圧力が増加すると、ダミー室32,42のインクがダミー室32,42の両端32a,32b,42a,42bからインク室16に流出し、ダミー室32,42の圧力変化を軽減する。これにより、クロストークの抑制が期待できる。
【0062】
第1および第2の共通パターン36,46は、第1および第2の配線パターン35,45の反対方向にそれぞれ延びている。これにより、各パターン35,36,45,46の解像度を低減することができ、各パターン35,36,45,46を形成するためのパターニングが容易になる。
【0063】
第1および第2の共通パターン36,46は、共通配線37にそれぞれ結合されている。第1および第2の共通パターン36,46は、インク吐出を行なわないダミー室32,42の電極34,44に接続されているため、同電位であってよい。これにより、実装面21における配線を低減することができ、第1および第2の共通パターン36,46を形成するためのパターニングが容易になる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10…インクジェットヘッド、11…ベースプレート、12…オリフィスプレート、14…第1の駆動素子、15…第2の駆動素子、16…インク室、21…実装面、25…供給孔、26…排出孔、28…オリフィス、31,41…圧力室、31a,41a…一方の端部、31b,41b…他方の端部、32,42…ダミー室、32a,42a…一方の端部、32b,42b…他方の端部、35…第1の配線パターン、36…第1の共通パターン、45…第2の配線パターン、46…第2の共通パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する基材と、
前記実装面に対向して前記基材との間にインクが供給されるインク室を形成し、複数のオリフィスが設けられたオリフィスプレートと、
前記インク室に配置されて前記実装面に取り付けられ、前記オリフィスが開口するとともに両端が前記インク室に開放された溝状の複数の圧力室と、前記オリフィスプレートに覆われるとともに両端が前記インク室に開放され前記複数の圧力室と交互に配置された溝状の複数のダミー室と、が設けられた駆動素子と、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記圧力室からそれぞれ延びて前記基材の実装面に設けられた複数の配線パターンと、
前記ダミー室から前記配線パターンの反対方向にそれぞれ延びて前記基材の実装面に設けられた複数の共通パターンと、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記複数の共通パターンが結合したことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記駆動素子と並んで配置されて前記実装面に取り付けられ、前記オリフィスが開口するとともに両端が前記インク室に開放された溝状の複数の他の圧力室と、前記オリフィスプレートに覆われるとともに両端が前記インク室に開放され前記複数の他の圧力室と交互に配置された溝状の複数の他のダミー室と、が設けられた他の駆動素子と、
前記他のダミー室から前記駆動素子に向かってそれぞれ延びて前記基材の実装面に設けられた複数の他の共通パターンと、
をさらに具備し、
前記共通パターンは、前記他の駆動素子に向かって延びたことを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記共通パターンと前記他の共通パターンとが結合したことを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
インクが供給される供給孔と、インクが排出される排出孔と、が設けられた実装面を有する基材と、
前記実装面に対向して前記基材との間に前記供給孔と前記排出孔とが開口するインク室を形成し、複数のオリフィスが設けられたオリフィスプレートと、
前記供給孔と前記排出孔との間に配置されて前記実装面に取り付けられ、前記オリフィスが開口するとともにインクが流入する一方の端部とインクが流出する他方の端部とを有した溝状の複数の圧力室と、前記オリフィスプレートに覆われるとともにインクが流入する一方の端部とインクが流出する他方の端部とを有し前記複数の圧力室と交互に配置された溝状の複数のダミー室と、が設けられた駆動素子と、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記圧力室からそれぞれ延びて前記基材の実装面に設けられた複数の配線パターンと、
前記ダミー室から前記配線パターンの反対方向にそれぞれ延びて前記基材の実装面に設けられた複数の共通パターンと、
をさらに具備することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記複数の共通パターンが結合したことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記駆動素子と並んで配置されて前記実装面に取り付けられ、前記オリフィスが開口するとともにインクが流入する一方の端部とインクが流出する他方の端部とを有した溝状の複数の他の圧力室と、前記オリフィスプレートに覆われるとともにインクが流入する一方の端部とインクが流出する他方の端部とを有し前記複数の他の圧力室と交互に配置された溝状の複数の他のダミー室と、が設けられた他の駆動素子と、
前記他のダミー室から前記駆動素子に向かってそれぞれ延びて前記基材の実装面に設けられた複数の他の共通パターンと、
をさらに具備し、
前記共通パターンは、前記他の駆動素子に向かって延びたことを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記共通パターンと前記他の共通パターンとが結合したことを特徴とする請求項9に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43425(P2013−43425A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184540(P2011−184540)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】