説明

インクジェット印刷用被印刷基材の製造方法

【課題】インクジェット印刷のインキ滴が入る溝を、簡便にしかも低コストで形成するための被印刷基材の製造方法の提供。
【解決手段】インクジェット印刷用被印刷基材の製造方法であって、(i)表面にパターンが形成された凸版印刷版、グラビア印刷版、オフセット印刷版から選択される少なくとも1種類の印刷版を用いて、被印刷基材上に樹脂インキを塗布することにより樹脂パターンを形成する工程、その後、(ii)該樹脂パターンから溶剤を除去する方法、該樹脂パターンを熱硬化させる方法、該樹脂パターンを光硬化させる方法から選択される少なくとも1種類の方法によりインクジェット印刷のインキ滴が入る溝を形成する工程を含むインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷のインキ滴を特定の場所に確実に塗布するために、樹脂パターンから形成されるインキ滴が入る溝を有する被印刷基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷技術が、家庭用の印刷機として普及し、産業用装置としても技術が改良されてきている。最近の技術として、インクジェット印刷法をもちいて、導電性インキで回路パターンを形成する方法が注目されている。また、ディスプレイ用途のカラーフィルターや有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の形成にも適用されてきている。
非特許文献1(高分子学会編、微細加工技術[基礎偏]、エヌティーエス発行、ページ101から142、「マイクロリキッドプロセスを用いたデバイスの創成と将来展望」)には、カラーフィルター、有機EL素子の形成プロセスの記載がある。また、インクジェット印刷において微細なパターンを形成するために液滴が微小となると、空気の影響により狙った場所にインキ滴が着弾しない問題が記載されている。そのために、感光性ポリイミド等をパターン化して、インキ滴が入る溝を形成することも記載されている。ポリイミドのパターンからなる溝を形成する技術は、感光性を有するポリアミック酸樹脂を、フォトリソグラフィーを用いて形成することが一般的である。しかしながら、高価な感光性ポリアミック酸樹脂をスピンコート法で均一塗布する場合、90%を越える樹脂は基板の高速回転とともに系外に排出され、無駄に消費されてしまうという大きな問題があった。また、露光、現像、乾燥というフォトリソグラフィーの基本プロセスを経てパターンが形成されるため、プロセスが非常に複雑であり、各装置を置くスペースも多く必要となる。また非特許文献2(超微細パターニング技術、サイエンス&テクノロジー社発行、ページ57から63、「第8章、有機TFTにおける印刷法・インクジェット法パターニング」)には、有機半導体を形成するプロセスの記載がある。ぺージ60、「(5)インクジェット」では、ポリイミドのパターンをフォトリソグラフィーを用いて形成することが明記されている。
【0003】
また、特許文献1(特開2003−45672号公報)には、前記溝を形成する材料としてポリシロキサンを用い、ポリシロキサンのパターンは、露光、現像工程を経て形成されるフォトリソグラフィーを用いる記載がある。パターン化したポリシロキサンの開口部にインクジェット印刷法を用いて有機発光素子の形成材料を注入することも記載されている。
インクジェット印刷法では、使用するインキの粘度を高くすることができないので、形成できるパターンの厚さは非常に薄いものとなる。もし厚膜が必要な場合、何度も同じ場所にインキ滴を塗布することが必要となり、当然のことながらパターンの寸法精度および膜厚分布の精度も大幅に低下する。また、複数回印刷を繰り返し実施することで、生産性は大幅に低下してしまうという大きな問題を抱えていた。したがって、インキ滴が入る前記溝を形成する方法としてインクジェット印刷を用いることは難しい状況であった。
したがって、従来技術では、インクジェット印刷のインキ滴が入る溝を、簡便にしかも低コストで形成できる技術は存在していなかった。
【非特許文献1】高分子学会編、微細加工技術[基礎偏]、エヌティーエス発行、ページ101から142、「マイクロリキッドプロセスを用いたデバイスの創成と将来展望」
【非特許文献2】超微細パターニング技術、サイエンス&テクノロジー社発行、ページ57から63、「第8章、有機TFTにおける印刷法・インクジェット法パターニング」
【特許文献1】特開2003−45672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インクジェット印刷のインキ滴が入る溝を、簡便にしかも低コストで形成するための被印刷基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討し、表面にパターンが形成された凸版印刷版、グラビア印刷版、オフセット印刷版から選択される少なくとも1種類の印刷版を用いて、被印刷基材上に樹脂の溶解あるいは分散している樹脂インキを塗布する方法により、インクジェット印刷用インキ滴が入る溝パターンの形成を簡便にしかも低コストで形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は下記の通りである。
(1)インクジェット印刷用被印刷基材の製造方法であって、(i)表面にパターンが形成された凸版印刷版、グラビア印刷版、オフセット印刷版から選択される少なくとも1種類の印刷版を用いて、被印刷基材上に樹脂インキを塗布することにより樹脂パターンを形成する工程、その後、(ii)該樹脂パターンから溶剤を除去する方法、該樹脂パターンを熱硬化させる方法、該樹脂パターンを光硬化させる方法から選択される少なくとも1種類の方法によりインクジェット印刷のインキ滴が入る溝を形成する工程を含むインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
(2)樹脂インキが、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂を含有する上記(1)のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
(3)樹脂インキが、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シリコーン樹脂から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有する、上記(1)のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
(4)樹脂パターンの厚さが0.1μm以上100μm以下である、上記(1)〜(3)いずれかのインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
(5)インクジェット印刷のインキ滴が、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光層材料、電荷移動層材料、下地層材料、有機太陽電池材料、有機半導体材料、カラーフィルター材料、電磁波シールド材料、ブラックマトリックス材料、導電性材料、絶縁性材料からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、上記(1)〜(4)いずれかのインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
(6)更に、樹脂パターン熱処理する工程を含む、上記(1)のインクジェット印刷用印刷基材の製造方法。
(7)工程(i)において、表面にパターンが形成された凸版印刷版又はグラビア印刷版として該印刷版のパターンが、レーザー光を照射して凹パターンを形成するレーザー彫刻法により形成されている印刷版を用いる、上記(6)のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
(8)工程(i)において、表面にパターンが形成された凸版印刷版として、20℃において液状の感光性樹脂組成物を円筒状に塗布し光硬化させ得られた感光性樹脂硬化物層からなる円筒状印刷版を用いる、上記(1)〜(7)いずれかのインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
(9)上記(1)〜(9)いずれかのインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法を用いて作製された被印刷基材に、インクジェット印刷法でインキ滴を付着させて得られる電子材料又は光学材料。
(10)電子材料又は光学材料が、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ、又はカラーフィルターである、上記(9)の電子材料又は光学材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、インクジェット印刷のインキ滴が入る溝を、簡便にしかも低コストで形成するための被印刷基材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、さらに詳細に本発明の好ましい実施態様を説明する。
本発明は、インクジェット印刷においてインキ滴が入る溝を、表面にパターンを有する凸版印刷版、グラビア印刷版、オフセット印刷版から選択される少なくとも1種類の印刷版を用いて、樹脂が溶解あるいは分散している樹脂インキを被印刷基材上に塗布することにより、樹脂パターンを形成する。上記方法を採用することにより、インキ滴が入る溝をフォトリソグラフィーを用いて形成していた従来法に比べて樹脂の無駄な消費がなく、フォトリソグラフィーに必要な複雑な設備を必要としないという効果を奏する。上記3種類の印刷方法は、それぞれ特徴を有する。凸版印刷版の場合、樹脂インキは凸版印刷版表面に形成されている凸部表面にだけ転写される特徴がある。したがって、凸部以外には樹脂インキは存在せず、また凸部以外は被印刷基材表面にも接触することはない。これに対し、グラビア印刷は、表面に形成された凹部に樹脂インキが充填され、凹部以外の表面の樹脂インキはドクターブレードやドクターロールで除去された後、被印刷基材表面に転写される方法である。この方法では、グラビア印刷版表面が被印刷基材表面に接触することになる。また、オフセット印刷は表面に形成された親水性疎水性パターンに樹脂インクを載せ、その後ブランケットに樹脂インキを転写したものを被印刷基材表面に転写する方法である。この方法でも樹脂インキの存在しないブランケット表面が被印刷基材表面に接触することになる。しかし、グラビア印刷版あるいはオフセット印刷版は、凸版印刷版に比較して微細なパターン形成が可能である。したがって、上記の3種類の方法では、印刷版表面と被印刷基材表面の接触の観点から凸版印刷版を用いる印刷方法が最も好ましい。
【0009】
本発明の被印刷基材は、板状、フィルム状の基材である。材質としては、ガラス、セラミックス、金属、紙、プラスチックを挙げることができる。
本発明で用いる樹脂インキは、樹脂を溶剤に溶解あるいは分散させた状態であるものが好ましい。樹脂インキは熱硬化性樹脂、感光性樹脂であることが好ましく、特に熱硬化性液状樹脂、液状感光性樹脂であることが好ましい。樹脂インキは前記印刷版に載せ、被印刷基材上に転写させて樹脂パターンを形成する。
本発明の樹脂インクで用いる樹脂として、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シリコーン樹脂から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有することが耐久性の観点から好ましい。ポリアミック酸樹脂は、樹脂パターンを形成後に加熱処理することによりポリイミド化させることもできる。
【0010】
樹脂インキは、後述するインキジェット印刷用インキの内容に応じて適したものを選択することが好ましい。例えば、樹脂パターンが親水性の性質を持つ場合、インクジェット印刷用インキは疎水性の性質を持つものが好ましく、逆に樹脂パターンが疎水性の性質を持つ場合には、インクジェット印刷用インキは親水性の性質を持つことが好ましい。インクジェット印刷用インキの親水性、疎水性は、含有されている溶剤あるいはモノマー成分等の低分子有機化合物の性質に依存する。インクジェット印刷用インキの親水性、疎水性により、被印刷基材上に形成される樹脂パターン表面の特性をコントロールすることが好ましい。例えば、インクジェット印刷用インキが親水性であれば、樹脂インキ中には有機珪素化合物、有機系フッ素化合物、炭化水素化合物等を添加することが好ましい。また、インクジェット印刷用インキが疎水性であれば、樹脂インキ中には界面活性剤や極性の高い有機化合物を添加することが好ましい。
【0011】
樹脂インキに用いられる溶剤としては、n−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、γ−ブチルラクタム等の含窒素化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、γ−ブチルラクトン等のエステル化合物、テトラヒドロフラン、オキシラン、ジブチルエーテル等のエーテル化合物、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールモノエーテル化合物、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン炭化水素化合物を挙げることができる。
【0012】
本発明で形成される樹脂パターンの膜厚は0.1μm以上100μm以下の範囲が好ましい。より好ましくは、0.5μm以上50μm以下、更に好ましくは0.5μm以上10μm以下である。膜厚がこの範囲であれば、インキ滴が的中するに十分である。また、厚膜が必要な場合は、樹脂インキの粘度を比較的高めに設定するか、重ね塗りにより膜厚を厚くすることも可能である。
印刷法を用いて樹脂パターンを形成する場合、樹脂パターンのエッジ部分に突起状に盛り上がったりすることがある。このような場合に、形成された樹脂パターンが熱可塑性を有するものであれば、熱処理によりレベリングしたり、中央部が少し盛り上がって半球状に近い樹脂パターンに成形することも可能となるので、好ましい。熱処理温度は樹脂インキの種類によって異なるが、80〜250℃が好ましい。より好ましくは80〜200℃、更に好ましくは100〜160℃である。更に、該樹脂パターンが感光性樹脂であれば、その後の光照射により光硬化させることも可能である。
【0013】
本発明では、上記工程(i)の後、該樹脂パターンから溶剤を除去する方法、該樹脂パターンを熱硬化させる方法、該樹脂パターンを光硬化させる方法から選択される少なくとも1種類の方法によりインクジェット印刷のインキ滴が入る溝を形成する工程を含む。すなわち、樹脂インキが溶剤を含有する場合、樹脂パターンを形成した後に、含有溶剤成分を乾燥除去する工程を経る。また、熱硬化性樹脂を用いる場合、樹脂パターンを形成後、熱硬化させる工程を経る。更に、感光性樹脂を用いる場合、樹脂パターンを形成した後、光硬化させる工程を経る。
【0014】
インクジェット印刷で被印刷基材上に塗布されるインキは、電子材料あるいは光学材料を含有することが好ましく、具体的にはシクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、金属錯体系材料等の低分子系あるいは高分子系有機エレクトロルミネッセンス素子用発光層材料、クマリン誘導体、ポルフィリン誘導体、スクアリリウム誘導体、キナクドリン誘導体等の低分子系あるいは高分子系電荷移動層材料、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の下地層材料、Graetzel型色素増感型太陽電池等の有機太陽電池材料、ポリアセチレン、ポリチエニレンビニレン、ポリリオフェン、ポリヘキシルチオフェン、金属フタロシアニン誘導体、ペンタセン誘導体、フラーレン等の有機半導体材料、顔料分散カラーレジスト等のカラーフィルター材料、カーボンブラック、金属微粒子等の黒色顔料を分散された黒色レジスト等のブラックマトリックス材料、金属微粒子を分散させたインキ等の電磁波シールド材料、銅、銀、金、パラジウム等の金属微粒子を分散させたインキ等の導電性材料、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル等の有機系高分子材料や、二酸化ケイ素、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等のセラミックス微粒子を分散させたインキ等の絶縁性材料を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の方法により得られた被印刷基材にインクジェット印刷法でインキ滴を付着させて得られる電子材料又は光学材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ、又はカラーフィルター、ブラックマトリックス、電磁波シールド材料、導電性回路等を包含する。
次に、本発明の工程(i)において用いる印刷版の好ましい態様について説明する。
本発明では、上記のとおり、印刷版表面と被印刷基材表面の接触の観点から凸版印刷版を用いる印刷方法が最も好ましい。凸版印刷版は、樹脂インキの溶剤あるいは樹脂に耐性があることが好ましい。溶剤あるいは樹脂に浸漬しても膨潤性が低く、版厚や硬度の変化が少ない材料が好ましい。
【0016】
本発明で用いる凸版印刷版の材料としては、加硫ゴム、感光性樹脂硬化物など挙げることができるが、パターン形成精度の確保の観点からは、感光性樹脂硬化物が好ましい。更に、感光性樹脂硬化物を用いる場合も、感光性樹脂組成物をフォトリソグラフィーを用いて露光、現像工程を経てパターン形成する方法、感光性樹脂組成物を一度全面光硬化させたものをレーザーで彫刻するレーザー彫刻法を挙げることができる。レーザー彫刻法で用いる感光性樹脂硬化物からなる印刷版は、光硬化後、表面を研削、研磨等の処理方法で調整し、版厚精度を向上させることが可能であり、フォトリソグラフィーを用いて感光性樹脂組成物をパターン化する方法の光硬化収縮によるカッピングという光硬化部の中央の版厚が低くなる現象もないので、好ましい方法である。凸版印刷版のショアA硬度は、低いものから高いものまで用意することができる。被印刷基材の材質に応じて柔らかい材料から硬い材料まで使い分けることができる。
【0017】
また、用いるレーザー彫刻可能な印刷版としては、シート状の印刷版であっても円筒状の印刷版であっても構わない。金属シリンダー又は中空円筒状支持体上に感光性樹脂組成物を塗布し、その後、光硬化させて円筒状の印刷版を形成することもできる。この場合、円筒状に成形された感光性樹脂硬化物表面を切削、研削、研磨することにより高い版厚精度を確保することも可能である。
本発明で用いる凸版印刷版をレーザー彫刻する際に使用するレーザーは、炭酸ガスレーザー等の赤外線レーザー、近赤外線領域に発振波長を有するパルス発振の近赤外線レーザー、可視波長領域に発振波長を有するレーザー、紫外線波長領域に発振波長を有するレーザーなどを挙げることができる。
【0018】
本発明に用いられる凸版印刷版は、感光性樹脂硬化物からなることが好ましく、該感光性樹脂硬化物は、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて形成されたものであることが好ましい。感光性樹脂組成物は、樹脂(a)、有機化合物(b)を含んでいることが好ましい。
樹脂(a)は、数平均分子量が1000以上30万以下の化合物であることが好ましい。樹脂(a)の数平均分子量のより好ましい範囲は、2000以上10万以下、更に好ましい範囲は5000以上5万以下である。樹脂(a)の数平均分子量は1000以上であれば、後に架橋して作製する印刷原版が強度を保ち、この原版から作製したレリーフ画像は強く、印刷版などとして用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられる。また、樹脂(a)の数平均分子量が30万以下であれば、感光性樹脂組成物の成形加工時の粘度が過度に上昇することもなく、シート状、あるいは円筒状のレーザー彫刻印刷原版を作製することができる。ここで言う数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
【0019】
樹脂(a)は、分子内に重合性不飽和基を有する化合物であっても構わない。本発明の「重合性不飽和基」の定義は、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。付加重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、環状イミノエーテル基等が挙げられる。特に好ましい樹脂(a)として1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーを挙げることができる。1を越える量がよりに好ましい。1分子あたり平均で0.7以上であれば、樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度に優れ、レーザー彫刻時にレリーフ形状が崩れ難くなる。さらにその耐久性も良好で、繰り返しの使用にも耐えらるのものとなる。樹脂(a)において、重合性不飽和基の位置は、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接結合していることが好ましい。樹脂(a)1分子に含まれる重合性不飽和基の数の平均は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)による分子構造解析法で求めることができる。
【0020】
樹脂(a)として、分子主鎖中、分子末端あるいは側鎖中に重合性不飽和基を有する化合物を用いても良い。特に分子末端に重合性不飽和基を導入する方法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の上記成分の反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法などの方法が好適にあげられる。
【0021】
用いる樹脂(a)としては、レーザー彫刻時に液状化し易い樹脂や分解し易い樹脂が好ましい。分解し易い樹脂としては、分子鎖中に分解し易いモノマー単位としてスチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、アクリルエステル類、メタクリルエステル類、エステル化合物類、エーテル化合物類、ニトロ化合物類、カーボネート化合物類、カルバモイル化合物類、ヘミアセタールエステル化合物類、オキシエチレン化合物類、脂肪族環状化合物類等が含まれていることが好ましい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート類、脂肪族カルバメート類、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ニトロセルロース、ポリオキシエチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロヘキサジエン水添物、あるいは分岐構造の多いデンドリマー等の分子構造を有するポリマーは、分解し易いものの代表例である。また、分子鎖中に酸素原子を多数含有するポリマーが分解性の観点から好ましい。これらの中でも、カーボネート基、カルバメート基、メタクリル基をポリマー主鎖中に有する化合物は、熱分解性が高く好ましい。例えば、(ポリ)カーボネートジオールや(ポリ)カーボネートジカルボン酸を原料として合成したポリエステルやポリウレタン、(ポリ)カーボネートジアミンを原料として合成したポリアミドなどを熱分解性の良好なポリマーの例として挙げることができる。これらのポリマー主鎖、側鎖に重合性不飽和基を含有しているものであっても構わない。特に、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する場合には、主鎖末端に重合性不飽和基を導入することも容易である。特に、分子内にカーボネート結合、エステル結合から選ばれる少なくとも1種類の結合を有し、且つウレタン結合、ウレア結合、アミド結合から選ばれる少なくとも1種類の結合を有する化合物が好ましい。これらの化合物を用いることにより、レーザー彫刻性および機械的物性の高い感光性樹脂硬化物をえることが可能である。
【0022】
樹脂(a)として、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン類等の分子主鎖あるいは側鎖に重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。また、重合性不飽和基を有しない高分子化合物を出発原料として、置換反応、脱離反応、縮合反応、付加反応等の化学反応により重合性不飽和基を分子内に導入した高分子化合物を挙げることもできる。重合性不飽和基を有しない高分子化合物の例としてポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニルポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル等のC-C連鎖高分子の他、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル類、ポリフェニレンチオエーテル等のポリチオエーテル類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリジアルキルシロキサン等の高分子化合物、或いはこれらの高分子化合物の主鎖にヘテロ原子を有する高分子化合物、複数種のモノマー成分から合成されたランダム共重合体、ブロック共重合体を挙げることができる。更に、分子内に重合性不飽和基を導入した高分子化合物を複数種混合して用いることもできる。
【0023】
特にフレキソ印刷版用途のように柔軟なレリーフ画像が必要な場合には、樹脂(a)として、一部、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂が好ましく、ガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を用いることがより好ましい。このような液状樹脂として、例えばポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等の炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類、(メタ)アクリル酸及び/またはその誘導体の重合体及びこれらの混合物やコポリマー類を用いて合成され、分子内に重合性不飽和基を有する化合物を用いることができる。その含有量は、樹脂(a)全体に対して30wt%以上含有することが好ましい。特に耐候性の観点からポリカーボネート構造を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。ここで言う液状樹脂とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対応する言葉である。
【0024】
有機化合物(b)は、数平均分子量が1000未満の重合性不飽和基を有した化合物である。樹脂(a)との希釈のし易さから数平均分子量は1000以下が好ましい。重合性不飽和基の定義は、樹脂(a)の箇所でも記載したように、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。付加重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、環状イミノエーテル基等が挙げられる。
【0025】
有機化合物(b)の具体例としては、ラジカル反応性化合物として、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリールアルコール、アリールイソシアネート等のアリール化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等があげられるが、その種類の豊富さ、価格、レーザー光照射時の分解性等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。前記化合物の誘導体の例としては、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環族骨格を有する化合物、ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−、フルオレン−などの芳香族骨格を有する化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、グリシジル基を有する化合物、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパン等の多価アルコール類とのエステル化合物、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物などがあげられる。また、窒素、硫黄等の元素を含有した複素芳香族化合物であっても構わない。
【0026】
また、付加重合反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、エポキシ変性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商標名「HF−105」)を挙げることができる。
【0027】
本発明において、これら重合性不飽和基を有する有機化合物(b)はその目的に応じて1種若しくは2種以上のものを選択できる。例えば印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるために用いる有機化合物として長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
本発明で用いられる樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度を高めるためには、有機化合物(b)としては脂環族または芳香族の誘導体が少なくとも1種類以上有することが好ましく、この場合、有機化合物(b)の全体量の20wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは50wt%以上である。また、前記芳香族の誘導体として、窒素、硫黄等の元素を有する芳香族化合物であっても構わない。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物を光もしくは電子線の照射により架橋して印刷版などとしての物性を発現させるが、その際に光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤は一般に使用されているものから選択でき、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年培風館発行、に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤等が使用できる。また、光重合開始剤を用いて光重合により架橋を行なうことは、本発明の樹脂組成物の貯蔵安定性を保ちながら、生産性良く印刷原版を生産出来る方法として有用であり、その際に用いる開始剤も公知のものが使用できる。ラジカル重合反応を誘起させる光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤(d)と崩壊型光重合開始剤(e)が、特に効果的な光重合開始剤として用いられる。
【0029】
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、特に限定するものではないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤(d)として励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば何でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノンあるいはその誘導体を指し、具体的には3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等である。ミヒラーケトン類とはミヒラーケトンおよびその誘導体をいう。キサンテン類とはキサンテンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をいう。チオキサントン類とは、チオキサントンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をさし、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とはアントラキノンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体をいう。水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、液状感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、退候性を確保することができる。
【0030】
崩壊型光重合開始剤(e)とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、「感光性高分子」(講談社、1977年出版、頁228)に記載の化合物を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。有機イオウ化合物としては、芳香族チオール、モノおよびジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオカルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネート等を挙げることができる。ジケトン類としては、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。崩壊型光重合開始剤(e)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性は充分に確保できる。
【0031】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、下記一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、Rは各々独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、Xは炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
【0034】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物の添加量としては、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性は充分に確保できる。
また、光を吸収して酸を発生することにより、付加重合反応を誘起させる光重合開始剤を用いることもできる。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光カチオン重合開始剤、あるいは光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などが挙げられる。これらの光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下の範囲が好ましい。
【0035】
本発明に用いる感光性樹脂組成物における樹脂(a)、有機化合物(b)の割合は、通常、樹脂(a)100重量部に対して、有機化合物(b)は5〜200重量部が好ましく、20〜100重量部の範囲がより好ましい。
有機化合物(b)の割合が、上記の範囲より小さい場合、得られる印刷版などの硬度と引張強伸度のバランスがとりにくいなどの不都合を生じやすく、上記の範囲より大きい場合には架橋硬化の際の収縮が大きくなり、厚み精度が悪化する傾向がある。
その他、本発明に用いる樹脂組成物には用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。
【0036】
本発明に用いる樹脂組成物をシート状、もしくは円筒状に成形する方法は、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法等が例示できる。その際、樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行なうことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などをほどこしても良い。通常はPETやニッケルなどの素材からなるシート状支持体上に成形される場合が多いが、直接印刷機のシリンダー上に成形する場合などもありうる。また、繊維強化プラスチック(FRP)製、プラスチック製あるいは金属製の円筒状支持体を用いることもできる。円筒状支持体は軽量化のために一定厚みで中空のものを使用することができる。シート状支持体あるいは円筒状支持体の役割は、印刷原版の寸法安定性を確保することである。したがって、寸法安定性の高いものを選択する必要がある。線熱膨張係数を用いて評価すると、好ましい材料の上限値は100ppm/℃以下、更に好ましくは70ppm/℃以下である。材料の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂を積層して用いることもできる。
【0037】
成形された感光性樹脂組成物は光照射により架橋せしめ、凸版印刷版を形成する。また、成型しながら光照射により架橋させることもできる。硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。感光性樹脂組成物層に照射される光は、200nmから300nmの波長の光を有することが好ましい。特に水素引き抜き型光重合開始剤(d)は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を充分に確保することができる。硬化に用いる光源は、1種類でも構わないが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
【0038】
レーザー彫刻に用いる原版の厚みは、その使用目的に応じて任意に設定して構わないが、印刷版として用いる場合には、一般的に0.1〜7mmの範囲である。場合によっては、組成の異なる材料を複数積層していても構わない。
本発明では、レーザー彫刻される層の下部にエラストマーからなるクッション層を形成することもできる。一般的にレーザー彫刻される層の厚さは、0.1〜数mmであるため、それ以外の下部層は組成の異なる材料であっても構わない。クッション層としては、ショアA硬度が20から70度のエラストマー層であることが好ましい。ショアA硬度が20度以上である場合、適度に変形するため、印刷品質を確保することができる。また、70度以下であれば、クッション層としての役割を果たすことができる。より好ましいショアA硬度の範囲は、30〜60度である。
【0039】
前記クッション層は、特に限定せず、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマー等ゴム弾性を有するものであれば何でも構わない。ナノメーターレベルの微細孔を有する多孔質エラストマー層であってもよい。特にシート状あるいは円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。
クッション層に用いる熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0040】
光硬化型エラストマーとしては、前記熱可塑性エラストマーに光重合性モノマー、可塑剤および光重合開始剤等を混合したもの、プラストマー樹脂に光重合性モノマー、光重合開始剤等を混合した液状組成物などを挙げることができる。微細パターンの形成機能が重要な要素である感光性樹脂組成物の設計思想とは異なり、光を用いて微細なパターンの形成を行う必要がなく、全面露光により硬化させることにより、ある程度の機械的強度を確保できれば良いため、材料の選定において自由度が極めて高い。
また、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、チオ尿素等の非硫黄架橋型ゴムを用いることもできる。
【0041】
更に、テレケリック液状ゴムを反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものを使用することもできる。
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。レーザー彫刻時に発生するガスあるいは微小な粉末状のカスが舞い上がる場合には、空気あるいは不活性ガスを彫刻部に吹き付けることが除去に効果がある。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去しても良い。
【0042】
本発明において、レーザー光を照射し微細な凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状あるいは粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。表面のタック除去に効果がある方法である。後露光は大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行っても構わない。用いる感光性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤が含まれている場合、特に効果的である。更に、後露光工程前に印刷版表面を、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液で処理し露光しても構わない。また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光しても構わない。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
(1)粘度
感光性樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(B8H型;日本国、東京計器社製)を用い、20℃で測定した。
(2)数平均分子量の測定
樹脂(a)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(日本国、東ソー社製のHLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標:TSKgelGMHXL;日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1wt%のTHF溶液を調製し、注入量10μlとした。また、検出器としては、樹脂(a)に関しては紫外吸収検出器を使用し、モニター光として254nmの光を用いた。
(3)重合性不飽和基の数の測定
合成した樹脂(a)の分子内に存在する重合性不飽和基の平均数は、未反応の低分子成分を液体クロマトグラフ法を用いて除去した後、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)を用いて分子構造解析し求めた。
【0044】
(実施例1)
樹脂(a)として水添ポリブタジエンジオールとトリレンジイソシアネートとからウレタン化により両末端が水酸基のポリウレタンを合成し、更に、該ポリウレタンの両末端にメタクリロキシイソシアネートを付加させた不飽和ポリウレタンを作製した。合成された不飽和ポリウレタンの数平均分子量は、約20000であった。不飽和ポリウレタン78重量部、有機化合物(b)としてラウリルメタクリレート(分子量245)13重量部と1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(分子量226)3重量部およびポリプロピレングリコールジメタクリレート(分子量660)3重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6重量部、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン1重量部を混合し感光性樹脂組成物(ア)を調製した。感光性樹脂組成物(ア)の20℃における粘度は、35Pa・sであった。不飽和ポリウレタン末端の重合性不飽和基の数は、H−NMR法により2であることを確認した。
【0045】
作製した感光性樹脂組成物(ア)を、表面に接着剤層を形成した厚み125μmのPETフィルム上に厚さ2.67mmのシート状に成形し、その上に厚さ15μmのPETカバーフィルム(表面にシリコーン離型剤処理を施してある)を被覆して、高圧水銀灯から出てくる光を照射して感光性樹脂硬化物を得た。照射したエネルギー量は、4000mJ/cm(UV−35−APRフィルター(商標、オーク製作所社製)で測定した照度を時間積分した値)であった。得られたシート状の感光性樹脂硬化物をレーザー彫刻用の印刷原版とした。
感光性樹脂組成物(ア)を光硬化させて得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、45度であった。ショアA硬度測定に際し、表面のPETカバーフィルムは剥離した。
【0046】
レジストインキを転写するガラス基板の大きさに合わせて、前記レーザー彫刻用の印刷原版の表面にレーザー彫刻機(英国、ZED社製、商標「ZED−mini−1000」)を用いて表面にパターンを有するシート状印刷版を形成した。凹部の直径が50μmの擬似円パターンが、XY方向に50μm間隔で規則的に配列した深さ0.2mmのパターンを形成した。
フレキソ印刷仕様の精密印刷機(日本電子精機社製、商標「JSC−m4050−M」)を用いて、アニロックスロール上の樹脂インキを、前記シート状印刷版をシリンダー表面に貼り付けて形成した円筒状印刷版表面の凸部に転写し、更に、ガラス基板上に樹脂インキを転写することにより印刷を行った。ガラス基板上に塗布した樹脂インキは、溶剤成分としてn−メチルピロリドンを、ポリマー成分としてポリアミック酸を含む、ポリイミド前駆体インキであった。ポリイミド前駆体インキをガラス基板の全面に塗布し、その後、溶剤成分を加熱乾燥除去して、不揮発成分からなる厚さ3μmの皮膜を得た。ポリイミド前駆体インキは、ほぼ100%の収率でガラス基板上に転写された。その後、更に350℃の焼成炉で熱処理することによりポリイミド化した皮膜を得た。ガラス基板上に擬似円形の開口部が規則配列したパターンを得た。
上記のように形成した擬似円形の開口部に、インクジェット印刷法を用いて、赤、青、緑のインキ滴を注入してカラーフィルターを形成した。
【0047】
(実施例2)
ジカルボン酸成分がアジピン酸、フマル酸、イソフタル酸の重量比で2:1:1からなる混合物と、ジオール成分がジエチレングリコール、プロピレングリコールの重量比4:1からなる混合物を、ジカルボン酸成分とジオール成分が等モル比で縮重合させて数平均分子量約3000の不飽和ポリエステル樹脂(イ)を得た。また、ジカルボン酸成分がフマル酸、イソフタル酸、イタコン酸の重量比1:2:1からなる混合物と、ジエチレングリコールとを等モル比で縮重合させて数平均分子量約2500の不飽和ポリエステル樹脂(ウ)を得た。樹脂(a)として、不飽和ポリエステル樹脂(イ)50重量部と不飽和ポリエステル(ウ)50重量部、有機化合物(b)として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(分子量:130)25重量部とジアセトンアクリルアミド(分子量:169)12重量部およびジエチレングリコールジメタクリレート(分子量:242)12重量部、光重合開始剤としてベンゾインイソブチルエーテル4重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2重量部を混合し、感光性樹脂組成物(エ)を得た。得られた感光性樹脂組成物(エ)の20℃の粘度は、12Pa・sであった。
【0048】
先ず実施例1で用いた感光性樹脂組成物(ア)を厚さ125μmのPETフィルム状に、厚さ2.5mmで塗布し、その上に作製した感光性樹脂組成物(エ)を厚さ0.2mmで塗布し、その上に厚さ15μmのカバーフィルムを被覆し、超高圧水銀灯の光を照射して光硬化させてシート状のレーザー彫刻用印刷原版を形成した。
得られたレーザー彫刻用印刷原版を、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いてレーザー彫刻して、表面にライン状の凸パターンを形成した。印刷版表面でのラインパターンの幅は5μm、底部でのライン幅は15μmで、ラインパターンが25μmピッチで10本配列させた。また、形成したパターンの深さは50μmであった。
【0049】
数平均分子量が15万のスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)熱可塑性エラストマー60重量部、1,9−ノナンジオールジアクリレート7重量部、液状ポリブタジエン30重量部、2,2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン2重量部、ベンゾフェノン3重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1重量部を150℃に加熱してニーダーで混練して、樹脂インキ用感光性樹脂組成物(オ)を作製した。得られた感光性樹脂組成物(オ)20重量部に対し、トルエン60重量部を混合し、樹脂インキを調整した。
フレキソ印刷仕様の精密印刷機(日本電子精機社製、商標「JSC−m4050−M」)を用いて、アニロックスロール上の樹脂インキを、前記シート状印刷版をシリンダー表面に貼り付けて形成した円筒状印刷版表面の凸部に転写し、更に、ガラス基板上に樹脂インキを転写することにより印刷を行った。得られた樹脂インキパターンから溶剤成分を乾燥除去して樹脂パターンを形成させた。パターン幅は印刷版のパターン幅とほぼ同じ幅で、厚さは約3μmであった。エッジ部で若干盛り上がった形状であった。
【0050】
このようにして得られた樹脂パターンを、更に180℃で熱処理して溶融させることにより中央部が若干盛り上がった樹脂パターンに変形させることができた。熱処理前に存在していたエッジ部の盛り上がりはなくなっていた。
次に、得られた樹脂パターンに超高圧水銀灯の光を照射し、光硬化させて樹脂パターンを固定化した。
このようにして得られたライン状の樹脂パターン間に、インクジェット印刷機を用いて銀ナノ粒子を含有する導電性インキ滴を注入し、更に160℃に熱処理することにより導電性のラインパターンを得ることができた。導電性パターンの厚みは約2μmであって、10箇所を測定した厚みばらつきは、約0.2μmの範囲であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はインクジェット印刷のインキ滴を特定の場所に確実に塗布するために、樹脂パターンから形成されるインキ滴が入る溝を有する被印刷基材の製造方法として最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷用被印刷基材の製造方法であって、(i)表面にパターンが形成された凸版印刷版、グラビア印刷版、オフセット印刷版から選択される少なくとも1種類の印刷版を用いて、被印刷基材上に樹脂インキを塗布することにより樹脂パターンを形成する工程、その後、(ii)該樹脂パターンから溶剤を除去する方法、該樹脂パターンを熱硬化させる方法、該樹脂パターンを光硬化させる方法から選択される少なくとも1種類の方法によりインクジェット印刷のインキ滴が入る溝を形成する工程を含むインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
【請求項2】
樹脂インキが、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂を含有する、請求項1に記載のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
【請求項3】
樹脂インキが、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シリコーン樹脂から選択される少なくとも1種類の樹脂を含有する、請求項1に記載のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
【請求項4】
樹脂パターンの厚さが0.1μm以上100μm以下である、請求項1から3のいずれかに1項記載のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
【請求項5】
インクジェット印刷のインキ滴が、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光層材料、電荷移動層材料、下地層材料、有機太陽電池材料、有機半導体材料、カラーフィルター材料、電磁波シールド材料、ブラックマトリックス材料、導電性材料、絶縁性材料からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
【請求項6】
更に、樹脂パターン熱処理する工程を含む、請求項1に記載のインクジェット印刷用印刷基材の製造方法。
【請求項7】
工程(i)において、表面にパターンが形成された凸版印刷版又はグラビア印刷版として該印刷版のパターンが、レーザー光を照射して凹パターンを形成するレーザー彫刻法により形成されている印刷版を用いる、請求項1に記載のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
【請求項8】
工程(i)において、表面にパターンが形成された凸版印刷版として、20℃において液状の感光性樹脂組成物を円筒状に塗布し光硬化させ得られた感光性樹脂硬化物層からなる円筒状印刷版を用いる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用被印刷基材の製造方法を用いて作製された被印刷基材に、インクジェット印刷法でインキ滴を付着させて得られる電子材料又は光学材料。
【請求項10】
電子材料又は光学材料が、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ、又はカラーフィルターである、請求項9に記載の電子材料又は光学材料。

【公開番号】特開2008−103641(P2008−103641A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286843(P2006−286843)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】