説明

インクジェット印刷用記録シート

【課題】表面変性二酸化ケイ素分散物の製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化ケイ素表面を、水中で、3価アルミニウムの化合物および/または4価ジルコニウムの化合物と少なくとも1つの特定のアミノ有機シランとの反応生成物で変性して表面変性二酸化ケイ素分散物を得る。該分散物はインクジェット印刷用記録シートの受容層用に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化ケイ素(silicium dioxide)の分散物の製造方法に関し、二酸化ケイ素の表面は、3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物と少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物との反応により変性される。これらの反応生成物は、別々の反応段階で形成される。さらに、本発明は、インク受容層中に該分散物を含むインクジェット印刷用の記録シートに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷プロセスには、主として2つのタイプ、すなわち連続流およびドロップ・オン・デマンドがある。
連続流のインクジェット印刷では、連続するインクの流れは、ノズルを通って加圧下発射される。流れは、ノズルから或る距離で小滴に散らばる。もし記録シート上の特定の位置を印刷しようとするとき、個々の小滴は記録シートへ導かれ、そうでなければ、それらは捕集容器へ導かれる。これは、例えば、デジタルデータ信号により不必要な小滴に電荷をかけそして静電気の電場(捕集容器へそれらを導くために、これらの小滴の軌跡を調節する)を通過させることにより、行われる。逆の方法も使用され、その場合電荷をかけない小滴が容器に集められる。
【0003】
連続ではないプロセスすなわちいわゆる「ドロップ・オン・デマンド」プロセスでは、小滴を生じさせ、そして記録シートの上の特定の位置を印刷しなければならない場合に限ってデジタルデータ信号に従ってノズルから小滴が排出される。
【0004】
現在のインクジェットプリンターの印刷速度は、経済的な理由から常に増大している。そのため、これらのプリンターに好適な記録シートは、インクを非常に急速に吸収する必要がある。この目的に特に好適なのは、ナノ細孔の無機化合物好ましくは酸化物例えばアルミニウム酸化物または二酸化ケイ素、または酸化物/水酸化物例えば酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムを含む記録シートである。このような記録シートは、「ナノ細孔」記録シートとして知られている。
【0005】
現在入手できるこのような記録シートは、要求されている需要のすべてを満たしていない。特に、染料に基づくインクが記録に使用される場合、水の堅牢度およびこれらの記録シート上に印刷される像の拡散堅牢度が改善されねばならない。顔料に基づくインクが記録に使用される場合、これらの記録シート上に印刷された像の表面の光沢が改善されねばならない。それは、要求される写真の品質が、非常にしばしば、インク受容層とインクとの間の融和性が不十分のために得られないからである。特に悪い点は、像の異なる部分の間の光沢の相違である。その上、周知のナノ細孔記録シートの製造プロセスは、工業上のスケールで十分に習得されていない。
【0006】
多くの場合、印刷されていない記録シートは、ボール箱内の貯蔵中強い黄色化を示す。
特許文献1は、せいぜい20nmの一次粒子のサイズを有するガス相で製造された二酸化ケイ素を含む記録シートを記述しており、その場合二酸化ケイ素は、ポリアルミニウムヒドロキシクロリドによる処理によって変性されている。
【0007】
特許文献2は、ガス相で製造された二酸化ケイ素とアルミニウムクロロヒドレートとの反応を記述している。変性された二酸化ケイ素は、その後インクジェット印刷用のナノ細孔記録シートのインク受容層中へ配合される。
【0008】
特許文献3は、インクジェット印刷用の記録シートにおけるガス相で製造された二酸化ケイ素の使用を記載しており、その際二酸化ケイ素の表面はアミノ有機シランによる処理によって変性されている。
【0009】
特許文献4は、インクジェット印刷用の記録シートにおける二酸化ケイ素顔料の使用を記述しており、その場合二酸化ケイ素の表面はカチオン性アミノ有機シロキサンによる処理によって変性されている。
【0010】
特許文献5は、インクジェット印刷用の記録シートにおけるコロイド状二酸化ケイ素の使用を記述しており、その際二酸化ケイ素の表面は、一般式(RSi(OR4−n(ただし、置換基Rの少なくとも1つはアミノ基を含む)のシランによる処理によって変性されている。
【0011】
特許文献6は、インクジェット印刷用の記録シートにおけるコロイド状二酸化ケイ素の使用を記述しており、その場合二酸化ケイ素の表面は、3価のアルミニウムの化合物または4価のジルコニウムの化合物またはこれらの混合物と少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物による処理によって変性されている。
【0012】
その請求範囲に記載されているアミノ有機シランは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−プロピルトリエトキシシランおよび(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE 10020346
【特許文献2】WO 00/20221
【特許文献3】WO 02/094673
【特許文献4】WO 01/05599
【特許文献5】EP 0983867
【特許文献6】EP 1655348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明による記録シートは、従来技術の記録シートに比べてほとんどすべてのそれらの性質のかなりな改善を示し、特に二酸化ケイ素の表面は、アルミニウムクロロヒドレートまたはアミノ有機シランによる処理によって変性されている。
【0015】
本発明の目的は、改善された像の品質(色空間の大きさ)、改善された水堅牢度、および染料に基づくインクにより印刷された記録シートの改善された拡散堅牢度を有するナノ細孔記録シートを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、顔料に基づくインクにより印刷された記録シートの、異なる色および密度を有する像の異なる部分の間の光沢の相違が少ないナノ細孔記録シートを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、本発明による分散物の改善された生産性および改善された貯蔵挙動(二酸化ケイ素の表面は、3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物と本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物との反応により変性されている)、被覆溶液の改善された生産性および改善された貯蔵挙動、並びに本発明による記録シートの改善されたコーティング品質である。
【0018】
本発明の非常に重要な目的は、ボール箱内の貯蔵中印刷されない状態で黄色化を示さない記録シートの製造である。
このような記録シートは、ナノ細孔の表面変性二酸化ケイ素を含む少なくとも1つのインク受容層を、その上に被覆された支持体からなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、すべてのこれらの改善が、3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物と本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物によりその表面が変性されている二酸化ケイ素の分散物により得ることができることを、驚くべきことに見いだした。
本発明によるインクジェット印刷用の記録シートは、変性されたナノ細孔の表面変性二酸化ケイ素に加えて、1つ以上の結合剤を含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、そのインク受容層中に二酸化ケイ素の分散物を含むインクジェット印刷用ナノ細孔の記録シート(二酸化ケイ素の表面が、3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリドZrOCl)またはこれらを混合した化合物の少なくとも1つと本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物による処理により変性されている)が、ボール箱内の貯蔵中印刷されていない状態で黄色化を示さないことを、驚くべきことに見いだした。
【0021】
本発明による記録シートで使用されるナノ細孔の合成二酸化ケイ素は、湿式法(沈降した二酸化ケイ素)またはガス相反応(フュームドシリカ)の何れかにおける沈降により製造できる。
【0022】
沈降した二酸化ケイ素は、例えば、酸による珪酸ナトリウムのメタセシスにより、または二酸化ケイ素ゾルとしてイオン交換樹脂の層を通過することにより、この二酸化ケイ素ゾルの加熱および熟成により、または二酸化ケイ素ゾルのゲル化により、湿式法で製造できる。
【0023】
火炎熱分解によるフュームドシリカの製造のためのガス相反応は、また湿式法と対照的に乾式法として知られている。このプロセスでは、例えば、四塩化ケイ素は二酸化ケイ素と塩酸との形成下酸素および水素の存在で反応する。シラン、例えばメチルトリクロロシランまたはトリクロロシランは、四塩化ケイ素の代わりにまたは四塩化ケイ素と組み合わせてこのプロセスで使用される。
【0024】
好ましくは、燻蒸された二酸化ケイ素は、本発明により記録シートで使用される。
燻蒸された二酸化ケイ素は、小さい一次粒子の凝集物からなる。これらの一次粒子それら自体は、多孔性ではない。しかし、凝集物は多孔性でありそしてこの理由のため多量の液体を急速に吸収できる。
【0025】
フュームドシリカの凝集物は、通常、100nmより大きいサイズ(平均直径)を有する。100−500nmのサイズを有する粒子が好ましく、特に好ましいのは150−250nmのサイズを有する粒子である。これらのサイズは凝集物に関する。一次粒子は、1−100nmのサイズを有する。1−30nmのサイズが好ましく、特に好ましいのは5−15nmのサイズである。
【0026】
フュームドシリカは、20m/g−400m/gの比表面積を有する。40m/g−400m/gの比表面積が好ましい。特に好ましいのは、90m/g−330m/gの比表面積である。比表面積は、S.Brunauer、P.H.EmmetおよびI.Teller「Adsorption of Gases in Multimolecular Layers」Journal of the American Chemical Society、60、309(1938)により記載されたBET等温法によって測定される。
【0027】
本発明により記録シート中に配合される、本発明による表面変性二酸化ケイ素の製造方法において、フュームドシリカは、例えば、高いせん断速度で、3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物の少なくとも1つと少なくとも1つの本発明のアミノ有機シランとの反応生成物を含む主として水性の溶液へ添加される。好適な条件下では、表面変性のフュームドシリカ(凝固しない)が得られる。3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物の少なくとも1つと本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物を含む混合物は、高い緩衝能力を示す。アルカリ性のアミノ有機シランは、3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)の加水分解中発生する塩酸を中和する。
【0028】
表面変性の分散物の製造のための好適な装置は、従来の分散装置Nanomizer(商標)、Ultimizer(商標)、Manton−Gaulin(商標)、Ystral Conti(商標)、Dyno−Mill(商標)などである。述べられた装置は、単独で使用されるか、またはこれらの装置の2つ以上の組み合わせで使用される。
【0029】
2段階での分散物の製造が好ましく、その場合、第1の段階で、高圧ホモゲナイザー例えばManton−Gaulin(商標)またはNanomizer(商標)が使用される。その後、分散物は、ボールミル例えばDyno−Mill(商標)で処理される。ボールミルで使用されるボールは、好ましくは、二酸化ジルコニウムから製造される。
【0030】
脱イオン水が、好ましくは、主として水性の溶液の製造に使用される。水混和性の溶媒例えば低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)またはケトン例えばアセトンが添加できる。
【0031】
変性段階で使用される、3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物と本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物は、3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物へのアミノ有機シランの添加、またはその逆により製造できる。3価のアルミニウムの化合物および/または4価のジルコニウムの化合物の代わりに、3価のアルミニウムおよび/または4価のジルコニウムを含む錯体化合物(例えば、アルミニウムジルコニウムオクタクロロヒドレート)、または異なるアルミニウムおよび/またはジルコニウムおよび/またはアルミニウムおよびジルコニウムを含む錯体化合物の混合物も、表面の変性に使用できる。3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物と本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応は、5−60分間10−50℃の温度で行われる。反応は、好ましくは、10−15分間室温で行われる。
【0032】
本発明による表面変性の二酸化ケイ素の製造では、3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物と本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物は、また例えば、二酸化ケイ素の水性分散物へ添加できる。
【0033】
フュームドシリカは、3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物と本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物による表面変性に特に好ましい。
【0034】
単一のフュームドシリカ粉末の代わりに、異なるサイズの一次粒子を有する異なる二酸化ケイ素粉末の混合物が使用できる。3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物と本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物による変性段階は、それぞれの二酸化ケイ素粉末について個々に行われるか、または異なる二酸化ケイ素粉末の混合物により同時に行われる。
【0035】
3価のアルミニウムの好ましい化合物は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、蟻酸アルミニウム、乳酸アルミニウムおよびアルミニウムクロロヒドレートである。
好ましいジルコニウム化合物は、ジルコニルクロリド(ZrOCl・8HO)である。
好適なアミノ有機シランは、式(I)
【0036】
【化1】

【0037】
(ただし、R、R、Rは、独立して、水素、ヒドロキシル、未置換または置換した1−6炭素原子のアルキル、未置換または置換したアリール、未置換または置換した1−6炭素原子のアルコキシ或いは未置換または置換したアリールオキシルを表し、
は、少なくとも1つの第1級、第2級または第3級アミノ基により置換された有機基を表す)
のアミノ有機シランであり、そして0.01モルのアルミニウムクロロヒドレート、0.02/kモルのアミノ有機シラン、またはアミノ有機シラン混合物、0.01モルの塩酸および0.02モルのグリオキザールの混合物の室温で調製された水溶液(最終重量200g)の厚さ1cmの層(調製後、室温で24時間貯蔵)は、貯蔵後400nmの波長で0.05より低い吸収増加を示す。ただし、kは、アミノ有機シランのアミノ基の数、またはアミノ有機シラン混合物中の個々のアミノ有機シランのアミノ基の数の平均値である。
【0038】
、R、Rが置換されている場合、置換基は、独立してチオール、スルフィドおよびポリアルキレンオキシドからなる群から選ばれる。好適に選ばれた置換基は、二酸化ケイ素の表面変性を助け(分散物およびコーティング溶液の改善されたレオロジー挙動)、そして記録シートの性質例えば空気汚染に対する安定性、光堅牢度および物理的性質を改善する。
【0039】
アミノ有機シランの縮合生成物は、またモノマー性アミノ有機シランの代わりに使用できる。縮合反応は、同じまたは異なるアミノ有機シランの間で生ずる。
【0040】
特に好適なアミノ有機シランは、N−(n−ブチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン(CASナンバー31024−56−3)、N−(エチル)−アミノイソブチルトリメトキシシラン(CASナンバー227085−51−0)、N−(シクロヘキシル)−アミノメチルトリエトキシシラン(CASナンバー26495−91−0)およびこれらの混合物である。
【0041】
本発明による表面を変性した二酸化ケイ素の分散物は、インクジェット印刷用の記録シートのインク受容層のコーティング溶液の製造に直接有利に使用される。そのため、分散物は、表面を変性された二酸化ケイ素の沈降なしに少なくとも24時間安定でなければならず、そしてその粘度がかなり変化することは許されない。特に、それがゲルになったりまたは凝固することは許されない。
【0042】
分散物は、本発明による表面を変性された二酸化ケイ素を、分散物の全重量に基づいて5−50重量%の量で含む。10−30重量%の量が好ましく、特に好ましいのは、15−25重量%の量である。
【0043】
3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物の少なくとも1つと本発明の少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物による二酸化ケイ素の表面変性は、二酸化ケイ素の正の表面電荷を導く。インクジェット印刷用のインクに含まれる着色化合物(染料または顔料)は、非常にしばしば、イオン化される基例えばSOH、COOH、POなどを含み、染料の溶解度を上げそして顔料の分散性を改善する。これらの基の解離後、そのため、染料は、主として水性のインク液体中で負に電荷し、それゆえ、変性された二酸化ケイ素の表面での正の電荷により静電気的に引きつけられそして固定される。
【0044】
反応混合物の組成は、pHの所望の値により決定されそしてカチオン化の所望の量は、表面の電荷により特徴づけられる。これらの2つの因子は、アルミニウムおよび/またはジルコニウムの化合物の性質(酸度、緩衝能力)およびアミノ有機シランの性質(アルカリ度、緩衝能力)およびそれらの分子量により影響される。
【0045】
3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物の量は、典型的な例として、二酸化ケイ素の量に基づいて0.1−20重量%である。0.5−10重量%の値が好ましい。
【0046】
アミノ有機シランの混合物のそれぞれのアミノ有機シランの全重量は、典型的な例として、二酸化ケイ素の量に基づいて0.1−10重量%である。0.5−10重量%の値が好ましい。
【0047】
3価アルミニウムの化合物(例えばアルミニウムクロロヒドレート)または4価ジルコニウムの化合物(例えばジルコニルクロリド)またはこれらを混合した化合物と特定のアミノ有機シランとの間の重量比は、好ましくは、2つの試薬の成分が混合されたときpHの望ましい値が達成されるように選ばれる。0.1−2.0のモル比が好ましい。特に好ましいのは、アルミニウムまたはジルコニウムの原子の数、およびアミノ有機シランのアミノ基の数k、またはアミノ有機シランの混合物中の個々のアミノ有機シランのアミノ基の数の平均値を考慮に入れて、0.5−1.5のモル比である。
【0048】
反応生成物を含む混合物のpHの値は、アルミニウムまたはジルコニウムの化合物の酸度およびアミノ基の全数に対するアルミニウムまたはジルコニウムのイオンの数の比により主として決定される。アミノ有機シランの置換基Rは、この点を心に留めて選ばれる。3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物とアミノ有機シランとの反応生成物を含む溶液のpHの値は、好ましくは、3と10との間で選ばれる。
【0049】
分散物のpHの値は、無機または有機の酸例えば酢酸の添加により低下されるか、またはアルカリ性の無機または有機の化合物例えば炭酸ナトリウムの添加により上げられる。酸または塩基の化合物は、3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物とアミノ有機シランとの反応生成物を含む混合物に添加されるか、またはそれらはフュームドシリカの添加後に添加される。
【0050】
ケイ素原子の数とアルミニウムおよび/またはジルコニウムの原子の数との比は、形成された反応生成物の構造に関連して重要である。
記録シートは、本発明による表面を変性した二酸化ケイ素に加えて、他の多孔性または非多孔性の無機化合物を含むことができる。
【0051】
汚染された空気中の像の安定性を改善するために、本発明による記録シートは、表面を変性された二酸化ケイ素に加えて、EP 1231071に記載されたように、1価の銅の塩例えば塩化銅(I)、臭化銅(I)または硫化銅(I)1水和物を含むことができる。汚染された空気中の像の安定性をさらに改善するために、記録シートは、1価の銅の塩に加えて、EP 1197345に記載されたようにジケト化合物を含むことができる。
【0052】
汚染された空気中の像の安定性をさらに改善するために、記録シートは、有機硫黄化合物例えばチオジエチレングリコールをさらに含むことができる。
結合剤は、ほとんどの場合、水溶性のポリマーである。特に好ましいのはフィルム形成性ポリマーである。
【0053】
水溶性のポリマーは、例えば、天然のポリマーまたはその変性された生成物例えばアルブミン、ゼラチン、カゼイン、澱粉、アラビアガム、アルギン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、α−、β−またはγ−シクロデキストリンなどを含む。水溶性ポリマーの1つがゼラチンである場合、すべての周知のタイプのゼラチンが使用でき、例えば酸豚皮または石灰処理骨ゼラチン、酸または塩基により加水分解されたゼラチンばかりか、誘導体化されたゼラチン例えばフタラオイル化、アセチル化またはカルバモイル化のゼラチンまたはトリメリット酸の無水物により誘導体化されたゼラチンを含む。
【0054】
合成結合剤も使用でき、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルと他のモノマーとのコポリマーの完全または一部鹸化生成物、不飽和カルボン酸例えばマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸またはクロトン酸などのホモポリマーまたはコポリマー、スルホン化ビニルモノマー例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのホモポリマーまたはコポリマーを含む。その上、アクリルアミド、メタクリルアミドのビニルモノマーのホモポリマーまたはコポリマー、他のモノマーとエチレンオキシドとのホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、水溶性のナイロンタイプポリマー、ポリエステル、ポリビニルラクタム、アクリルアミドポリマー、置換ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アルキルおよびスルホアルキルアクリレートおよびメタクリレートのポリマー、加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリビニルピリジン、ポリアクリル酸、無水マレイン酸とのコポリマー、ポリアルキレンオキシド、メタクリルアミドとのコポリマーおよびマレイン酸とのコポリマーが使用できる。すべてのこれらのポリマーは、また混合物として使用できる。
【0055】
カチオン性ポリマーまたは媒染剤も使用でき、例えばポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ基により置換されたポリビニルアルコールまたはアミノ基により置換されたポリウレタンがある。
【0056】
好ましい合成の結合剤は、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンまたはこれらの混合物である。
これらのポリマーは、特にアクリレート格子またはスチレンアクリレート格子を有する水不溶性の天然または合成の高分子量化合物とブレンドできる。
【0057】
本発明において特に求められていないが、水不溶性のポリマーは、系の一部と考えられる。
橋かけ剤と反応する可能性のある基を有する上記のポリマーは、橋かけ結合または硬化されて本質的に水不溶性の層を形成する。このような橋かけ結合は、共有結合またはイオン結合の何れかである。層の橋かけ結合または硬化は、層の物理的性質例えばそれらの液体吸収能力またはそれらの層損傷に対する抵抗性の変性を可能にする。
【0058】
橋かけ結合剤または硬化剤は、橋かけ結合されるべき水溶性のポリマーのタイプに応じて選ばれる。
有機の橋かけ結合剤および硬化剤は、例えばアルデヒド(例えばホルムアルデヒド、グリオキザールまたはグルタールアルデヒド)、N−メチロール化合物(例えばジメチロール尿素またはメチロールジメチルヒダントイン)、ジオキサン(例えば2,3−ジヒドロキシジオキサン)、反応性ビニル化合物(例えば1,3,5−トリスアクリロリルヘキサヒドロ−s−トリアジンまたはビス−(ビニルスルホニル)エチルエーテル)、反応性ハロゲン化合物(例えば2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン)、エポキシド、アジリジン、カルバモイルピリジニウム化合物または上記の橋かけ結合剤の2つ以上の混合物を含む。
【0059】
無機の橋かけ結合剤または硬化剤は、例えばクロムアルム、アルミニウムアルムまたは好ましくは硼酸を含む。
層は、また紫外線、電子ビーム、X線または熱の影響下で層を橋かけ結合する反応性物質を含むことができる。
【0060】
層は、さらに充填剤の添加によって変性できる。可能な充填剤は、例えば、カオリン、Ca−またはBa−炭酸塩、二酸化ケイ素、二酸化チタン、ベントナイト、ゼオライト、珪酸アルミニウムまたは珪酸カルシウムである。有機不活性粒子例えばポリマービードも使用できる。これらのビードは、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、またはアクリレートおよびスチレンの異なるコポリマーからなる。充填剤は、印刷像の目的とする用途に従って選択される。これらの化合物のいくつかは、印刷像が透明であることを目的として使用される場合使用できない。しかし、それらは、印刷された像が薄い絵として使用される場合には興味がある。非常にしばしば、これらの充填剤の導入は、望まれるつや消しの表面を生じさせる。
【0061】
本発明の記録シートは、その上に少なくとも1つのインク受容層および任意の補助層をコーティングされた支持体からなる。有利には、200nm以内の平均粒子直径を有する小さい顔料粒子例えばコロイド状二酸化ケイ素、コロイド状酸化アルミニウム、コロイド状酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムまたは有機の顔料を含む光沢改善層がインク受容層上へコーティングされる。5g/m以内好ましくは3g/m以内のこの光沢改善層が、インク受容層上へコーティングされる。この光沢改善層は、さらに、インクジェットプリンターの通過を改善するために、少なくとも1μmのサイズを有する大きな顔料粒子を少量含むことができる。無機または有機の顔料は、少なくとも1μmのサイズを有する顔料粒子として使用できる。有機の粒子特にポリスチレンの粒子が特に好ましい。それは、それらが記録シートの光沢を減らさないからである。
【0062】
広範囲の支持体は、当業者に周知であり通常使用されている。それらは、写真材料の製造に使用されるすべてのこれらの支持体を含む。これは、セルロースエステル例えば三酢酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロースまたは酢酸/酪酸セルロース、ポリエステル例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリビニルアセタール、ポリエーテル、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルスルホンから製造される透明なフィルムを含む。ポリエステルフィルム支持体および特にポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートが、それらの優れた寸法安定性の特徴のために好ましい。写真材料の製造に使用される通常の不透明な支持体が使用でき、例えばバリタペーパー、ポリオレフィン被覆ペーパーまたは有孔ポリエステル例えばDuPontにより製造されるMelinex(商標)を含む。特に好ましいのは、ポリオレフィン被覆ペーパーまたは有孔ポリエステルである。
【0063】
このような支持体特にポリエステルが使用されるとき、下塗り層が、有利には、まず被覆されて支持体へのインク受容層の結合を改善する。この目的に有用な下塗り層は、写真製造において周知であり、そして例えば塩化ビニリデン、アクリロニトリルおよびアクリル酸のターポリマー、または塩化ビニリデン、アクリル酸メチルおよびイタコン酸のターポリマーを含む。下塗り層の使用の代わりに、または下塗り層に加えて、支持体の表面は、コーティングプロセスの前にコロナ放電処理にかけることができる。
【0064】
それらの組成および性質が広く変化しているすべての異なるタイプの紙からなる非コート紙および顔料被覆紙および高光沢仕上げ被覆紙、並びに金属フォイル例えばアルミニウムからつくられたフォイルも使用できる。層は、また例えばポリアミド、ポリエステル、木綿、ビスコースおよび羊毛からなる繊維布帛材料上にコーティングできる。
【0065】
本発明のインク受容層は、一般に、すべての必要な成分を含む水溶液または分散物からコーティングされる。多くの場合、コーティングの挙動および層の均一さを改善するために、湿潤剤がこれらのコーティング溶液へ添加される。コーティングの目的に必要であることのほかに、これらの化合物は、像の品質に影響をあたえ、そのため、この特定の目的を考えて選ばれる。特に好ましいのは、9−13のHLB(親水性−親油性のバランス)を有する湿潤剤である。本発明で特に請求されていないが、湿潤剤は、本発明の重要な部分を形成する。
【0066】
上記の成分に加えて、本発明の記録シートは、例えば白色性を改善するための光沢剤のような、それらの性能をさらに改善することを目的にした追加の化合物を含むことができる。特に好ましい光学光沢剤は、例えばスチルベン、クマリン、トリアジンおよびオキサゾールである。
【0067】
光安定性は、UV吸収剤例えば2−ヒドロキシベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリアジンの誘導体またはシンナミン酸の誘導体を加えることにより改善できる。UV吸収剤の量は、200−2000mg/m、好ましくは400−1000mg/mである。UV吸収剤は、本発明の記録シートの任意の層へ添加できる。しかし、もしそれが添加されるならば、それは一番上の層へ添加すべきことが好ましい。インクジェット印刷により生成される像が、ラジカルスカベンジャー、安定剤、還元剤および抗酸化剤の添加により劣化から保護できることも周知である。これらの化合物の例は、立体障害フェノール、立体障害アミン、クロマノール、アスコルビン酸、ホスフィン酸およびそれらの誘導体、硫黄含有化合物例えば硫化物、メルカプタン、チオシアネート、チオアミドまたはチオ尿素である。
【0068】
上記の化合物は、水溶液としてコーティング溶液へ添加できる。これらの化合物が十分に水溶性でない場合、それらは、当業者に知られている他の通常の技術によりコーティング溶液中へ配合できる。化合物は、例えば、水と混和できる溶媒例えば低級アルコール、グリコール、ケトン、エステルまたはアミド中に溶解される。別に、化合物は、細かい分散物として、油エマルションとして、シクロデキストリン包接化合物としてコーティング溶液へ添加されるか、またはラテックス粒子中へ配合される。
【0069】
典型的な例として、本発明の記録シートは、乾燥状態で0.5−100μm、好ましくは5−50μmの範囲の厚さを有する。
コーティング溶液は、任意の数の好適な方法により支持体上へコーティングされる。通常のコーティング方法は、例えば、押し出しコーティング、エアナイフコーティング、ドクターブレードコーティング、カスケードコーティングおよびカーテンコーティングを含む。コーティング溶液は、また噴霧の技術を用いて適用できる。インク受容層は、互いにコーティングされるかまたは同時にコーティングされるいくつかの個々の層から形成できる。
【0070】
個々のインク受容層は、使用されるフュームドシリカ(特にその特定の表面)、3価アルミニウムの化合物または4価ジルコニウムの化合物またはこれらを混合した化合物と少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物による変性、結合剤と二酸化ケイ素との間の比並びに硬化剤の量に関して異なる。
【0071】
インク受容層により両面で支持体をコーティングすることも同様に可能である。背面に静電防止層またはカール防止層をコーティングすることもできる。しかし、選ばれたコーティング方法は、本発明を限定するものと考えてはならない。
【0072】
インクジェット印刷用のインクは、本質的に、液状の媒体およびそのなかに溶解または懸濁した染料または顔料からなる。インクジェット印刷用インクのための液状媒体は、一般に、水、または水と水混和性有機溶媒例えばエチレングリコール、高分子量グリコール、グリセロール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アミド、ポリビニルピロリドン、N−メチルピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、カルボン酸およびそれらのエステル、エーテル、アルコール、有機スルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、セロソルブ、ポリウレタンおよびアクリレートの混合物からなる。
【0073】
インクの非水性部分は、一般に、湿潤剤、共溶媒、粘度調節剤、インク浸透添加物または乾燥剤として働く。有機化合物は、ほとんどの場合、水の沸点より高い沸点を有する。さらに、連続流タイプのプリンターに使用される水性インクは、それらの伝導度を高めるために無機または有機の塩を含むことができる。これらの塩の例は、硝酸塩、塩化物、リン酸塩および水溶性の有機酸の水溶性の塩例えば酢酸塩、シュウ酸塩およびクエン酸塩である。本発明の記録シートにおいて使用可能なインクの製造に好適な染料および顔料は、実際上、周知の着色化合物のすべてのクラスをカバーしている。この目的に使用される典型的な例の染料または顔料は、EP 0559324に記載されている。本発明の記録シートは、今の技術レベルを示すインクのほとんどについて使用できることを意味する。
【0074】
インクは、さらに他の添加物例えば界面活性剤、光学光沢剤、UV吸収剤、光安定剤、殺生物剤、沈殿剤例えば多価の金属化合物およびポリマー性添加物を含むことができる。
インクのこの記述は、説明のためのみであり、本発明の目的を限定するものと考えてはならない。
本発明は、本発明の範囲を決して限定することなく、以下の実施例により、より詳しく説明されることになる。
【0075】
(テスト方法)
(1.液体相における黄色化)
22gのアルミニウムクロロヒドレート(Clariant AG、Muttenz、スイスから入手したLocron(商標)P)(0.01モル)を、激しく攪拌しつつ170mLの水に溶解し、5分後、0.02/kモルのアミノ有機シランまたはアミノ有機シランを加える。kは、アミノ有機シランのアミノ基の数、またはアミノ有機シランの混合物中の個々のアミノ有機シランのアミノ基の数の平均値である。さらに5分後に、10.2gの1N塩酸(0.01モル)を加え、次に11.6gのグリオキザール(Fluka AG、Buchs、スイスから入手)の水溶液(10%)を加え、最終の重量を脱ミネラル水により200gに調節する。溶液の吸収は、400nmの波長で1cmの層の厚さで分光光度計Varian Cary100 Bio(Varian AG、Steinhausen、スイスから入手)により直ぐに測定する。吸収は、室温で24時間の貯蔵後再測定する。2つの測定の差は、液体状態での黄色化の程度を示す。
【0076】
(2.箱による黄色化)
未印刷の記録シートの黄色化は、長期間後でのみ認められるので、妥当な期間における信頼できる結果を得るために、以下の加速テストを行う。
【0077】
テストされるべき記録シートの2cm×10cmの片を重ね、21.5cm×30.5cm×1.5cmのサイズの白色ボール箱Printec(ILFORD 物品ナンバー116194)に入れる。
【0078】
記録シートの片のこの積み重ねの頂部に、ボール箱で使用されるのと同じボールの密に詰めた片の高さ1.3cmの積み重ねを置く。閉じた箱を、内側に薄いアルミニウム層を有する複合層フィルムで密封し、Salvis乾燥棚で60℃の温度で5日間貯蔵する。
【0079】
貯蔵期間の終わりに、サンプルのL値を、Gretag−Macbeth、Regensdorf、スイスから入手されるSpectrolino分光計により測定し、貯蔵前の値と比較する。b値の差Δbは、乾燥棚内の貯蔵中の記録シートの黄色化の程度を示す。
【0080】
〔実施例〕
(実施例1−10および比較例C1−C8)
3価のアルミニウム、4価のジルコニウムまたはそれらの混合物、アミノ有機シランまたはアミノ有機シランの混合物およびフュームドシリカ(Cab−o−Sil(商標)、Cabot Corporation,Billerica、米国から入手)の使用された各化合物の量および性質は、実施例1−11について表1にリストされる。
【0081】
3価のアルミニウム、4価のジルコニウムまたはそれらの混合物、アミノ有機シランまたはアミノ有機シランの混合物およびフュームドシリカの使用された各化合物の量および性質は、比較例1−8について表2にリストされる。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
(分散物)
3価のアルミニウム、4価のジルコニウムまたはそれらの混合物の各化合物を、脱ミネラル水700g中に20℃の温度で溶解した。アミノ有機シランまたはアミノ有機シランの混合物を激しく攪拌しつつ添加した。15分の反応時間(3価のアルミニウムまたは4価のジルコニウムの各化合物とアミノ有機シランとの反応生成物の形成)後、200gのフュームドシリカを、高いせん断速度で激しく攪拌しつつ少量ずつ添加した。次に、分散物を15分間ローター・スターター・ミキサーにより攪拌した。次に、分散物を50℃の温度に加熱し、そして二酸化ケイ素の表面を変性するために、この温度に1時間保持した。最後に、分散物を室温に冷却しそして重量を脱ミネラル水により1000gに調節した。
【0085】
(コーティング溶液)
0.92gの固体硼酸を120gの上記の分散物に溶解した。66gのポリビニルアルコール(Clariant AG、Muttenz、スイスからMowiolとして入手)の水溶液(8%)を45℃の温度に加熱し、そして0.8gの湿潤剤Olin 10G(Arch Chemicals、Norwalk、米国から入手)の水溶液(5.23%)を加えた。次に、硼酸を含む分散物を、ポリビニルアルコールの上記溶液へ穏やかな攪拌の下加え、そして最終の重量を脱ミネラル水により200gへ調節した。
【0086】
(コーティング)
140g/cmのこのコーティング溶液を、ポリエチレンをコーティングした紙支持体上にバーコーターにより45℃の温度でコーティングした。コーティングした支持体を次に35℃の温度で60分間乾燥した。1mのコーティングした乾燥した記録シートは、16.8gの非変性フュームドシリカを含む。
(結果)
液相における黄色化の測定の結果を表3にリストする。
【0087】
【表3】

【0088】
表3の結果の比較から、EP 1655348のアミノ有機シランN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−アミノプロピルトリエトキシシランが、液相における吸収の強い増加を示し、一方本発明のアミノ有機シランN−(n−ブチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(エチル)−アミノイソブチルトリメトキシシランおよびN−(シクロヘキシル)−アミノメチルトリエトキシシランが吸収の増加を示さないことが容易に分かる。
【0089】
箱による黄色化の結果は、表4に示される。
結果は、3価のアルミニウム、4価のジルコニウムまたはそれらの混合物の使用された各化合物に従って集められる。
【0090】
【表4】

【0091】
表4の結果の比較から、比較する記録シートC−1からC−8が、本発明による記録シート1−15よりも遙かに強い箱による黄色化を示すことが容易に分かる。比較は、同じタイプのフュームドシリカおよび同じ金属塩が使用された場合について行われた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素の表面を、3価アルミニウムの化合物および/または4価ジルコニウムの化合物の少なくとも1つと少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物により処理すると共に、該アミノ有機シランが、0.01モルのアルミニウムクロロヒドレート、0.02/kモルのアミノ有機シラン、0.01モルの塩酸および0.02モルのグリオキザールの混合物の室温で調製された最終重量200gの水溶液の厚さ1cmの層を調製し、室温で24時間貯蔵した後に400nmの波長での吸収増加が0.05より低い値を示す(上記において、kは、アミノ有機シランのアミノ基の数(2種以上のアミノ有機シランの混合物を用いる場合は個々のアミノ有機シランのアミノ基の数の平均値)である)アミノ有機シランであることを特徴とする表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項2】
3価のアルミニウムの化合物が、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、蟻酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムクロロヒドレートまたはこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる請求項1の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項3】
4価のジルコニウムの化合物がジルコニルクロリドである請求項1の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項4】
アミノ有機シランが式(I)
【化1】

(ただし、R、R、Rは、独立して、水素、ヒドロキシル、未置換または置換した1−6炭素原子のアルキル、未置換または置換したアリール、未置換または置換した1−6炭素原子のアルコキシ或いは未置換または置換したアリールオキシルを表し、
は、少なくとも1つの第1級、第2級または第3級のアミノ基により置換された有機基を表す)
のアミノ有機シランである請求項1−3の何れか1つの項の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項5】
、RおよびRの置換基が、独立してチオール、スルフィドおよびポリアルキレンオキシドからなる群から選ばれる請求項1−4の何れか1つの項の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項6】
アミノ有機シランが、N−(n−ブチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(エチル)−アミノイソブチルトリメトキシシランおよびN−(シクロヘキシル)−アミノメチルトリエトキシシランまたはこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1−5の何れか1つの項の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項7】
3価のアルミニウムの化合物および/または4価のジルコニウムの化合物の量が、二酸化ケイ素の量に基づいて0.1−20重量%である請求項1−6の何れか1つの項の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項8】
二酸化ケイ素がフュームドシリカである請求項1−7の何れか1つの項の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項9】
フュームドシリカが20−400m/gの比表面積を有する請求項8の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項10】
異なる比表面積を有する2つ以上の異なるフュームドシリカの混合物が使用される請求項9の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項11】
異なるフュームドシリカの表面の変性が、それらの混合物中で同時に行われる請求項10の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項12】
異なるフュームドシリカの表面の変性が、それぞれのフュームドシリカについて個々に行われる請求項10の表面変性二酸化ケイ素の分散物の製造方法。
【請求項13】
少なくとも1つの結合剤、および請求項1−12の何れか1つの項の表面を変性された二酸化ケイ素の少なくとも1つの分散物を含む少なくとも1つのインク受容層を支持体上へコーティングしたことを特徴とするインクジェット印刷用記録シート。
【請求項14】
結合剤が、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルアルコールの誘導体、ポリビニルピロリドンまたはこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる請求項13のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項15】
記録シートが硼酸により硬化されている請求項13または14のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項16】
記録シートが複数のインク受容層を含む請求項13−15の何れか1つの項のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項17】
各インク受容層が、異なる比表面積を有するフュームドシリカを含む請求項16のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項18】
異なる層に用いられる二酸化ケイ素が、請求項1−7の何れか1つの項の3価アルミニウムの化合物および/または4価ジルコニウムの化合物の少なくとも1つと少なくとも1つのアミノ有機シランとの反応生成物により異なって変性されている請求項16または17のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項19】
異なるインク受容層が、結合剤対二酸化ケイ素の異なる比を有する請求項16−18の何れか1つの項のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項20】
異なるインク受容層が、異なる量の硼酸により硬化される請求項16−19の何れか1つの項のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項21】
支持体が、コート紙、非コート紙、透明または不透明のポリエステルまたはポリプロピレンおよび繊維布帛材料からなる群から選ばれる請求項13−20の何れか1つの項のインクジェット印刷用記録シート。
【請求項22】
記録シートが、押し出しコーティング、エアナイフコーティング、ドクターブレードコーティング、カスケードコーティングまたはカーテンコーティングにより製造される請求項13−21の何れか1つの項のインクジェット印刷用記録シート。

【公開番号】特開2009−209366(P2009−209366A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42017(P2009−42017)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(599085415)イルフォード イメージング スウィツアランド ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】